説明

キャパシタ、キャパシタの製造方法および半導体装置

【課題】静電容量が大きく、リーク特性に優れたキャパシタを容易に形成する。これにより、データ保持特性にすぐれ、集積度の高いDRAM等の半導体装置を容易に形成する。
【解決手段】キャパシタの容量絶縁膜は、第1領域と第2領域を有する。第1領域は、Sr/Tiの原子組成比が1.2以上1.6以下の範囲であるチタン酸ストロンチウムからなる。第2領域は、Sr/Tiの原子組成比が0.8以上1.2未満の範囲であるチタン酸ストロンチウムからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタ、キャパシタの製造方法および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、DRAMでは微細化が進んでおり、設計ルール40nm以降の世代では、キャパシタ用の誘電体膜として誘電率の高い絶縁膜が必要となっている。現在、その候補の1つとしてSrTiOx(チタン酸ストロンチウム;以下、「STO」と記載)の利用が検討されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−111000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、STO膜は100nm程度の厚膜では高い誘電率を示すが、薄膜化するに従い誘電率の低下することが知られている。これは薄膜化することによって、結晶化に必要な温度が上昇して十分な結晶化が進行せず、STO膜の改質が十分に行われないためと考えられる。また、薄膜化するに従いキャパシタのリーク電流も増加してしまう。このため、微細化したDRAMのメモリセルに適した誘電体膜としての利用が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態は、
下部電極と、
Sr/Tiの原子組成比が1.2以上1.6以下の範囲であるチタン酸ストロンチウムからなる第1領域と、Sr/Tiの原子組成比が0.8以上1.2未満の範囲であるチタン酸ストロンチウムからなる第2領域と、を有する容量絶縁膜と、
上部電極と、
をこの順に有するキャパシタに関する。
【0006】
他の実施形態は、
下部電極を形成する工程と、
1回以上の下記工程(1)と、1回以上の下記工程(2)とを有する、第1領域及び第2領域を形成する工程と、
(1)ALD法により、チタン酸ストロンチウムからなる第1領域を形成する工程、
(2)ALD法により、チタン酸ストロンチウムからなると共に前記第1領域よりもSr/Tiの原子組成比が小さい第2領域を形成する工程、
前記第1と第2の領域に対してアニール処理を行うことにより、第1と第2の領域を有する容量絶縁膜を形成する工程と、
上部電極を形成する工程と、
を有し、
前記アニール処理後において、前記第1領域のSr/Tiの原子組成比が1.2以上1.6以下の範囲となり、前記第2領域のSr/Tiの原子組成比が0.8以上1.2未満の範囲となるように、前記工程(1)の第1領域の形成、前記工程(2)の第2領域の形成、及び前記アニール処理を行う、キャパシタの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
STO膜を容量絶縁膜として用いたキャパシタにおいて、静電容量が大きく、リーク特性に優れたキャパシタを容易に形成できる。これにより、データ保持特性にすぐれ、集積度の高いDRAM等の半導体装置を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施例のキャパシタを表す図である。
【図2】第1実施例の容量絶縁膜のSr/Ti比と膜厚の関係を表す図である。
【図3】第1実施例の容量絶縁膜の成膜シーケンスを表すフローチャートである。
【図4】容量絶縁膜の結晶化温度とSr/Ti比の関係を表す図である。
【図5】容量絶縁膜のリーク電流とSr/Ti比の関係を表す図である。
【図6】容量絶縁膜の比誘電率とSr/Ti比の関係を表す図である。
【図7】第1実施例の変形例のキャパシタを表す図である。
【図8】第1実施例の変形例の容量絶縁膜のSr/Ti比と膜厚の関係を表す図である。
【図9】第1実施例の変形例のキャパシタを表す図である。
【図10】第1実施例の変形例の容量絶縁膜のSr/Ti比と膜厚の関係を表す図である。
【図11】電流比とEOT比の関係を表す図である。
【図12】第2実施例の半導体装置を表す図である。
【図13】第2実施例の半導体装置を表す図である。
【図14】第2実施例の半導体装置の製造方法の一工程を表す図である。
【図15】第2実施例の半導体装置の製造方法の一工程を表す図である。
【図16】第2実施例の半導体装置の製造方法の一工程を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施例について詳細に説明する。なお、下記実施例は、本発明のより一層の深い理解のために示される具体例であって、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0010】
(第1実施例)
図1に、本実施例のキャパシタの断面模式図を示す。ルテニウム(Ru)等の金属膜からなる下部電極1および上部電極2の間に、STO膜3を挟んでキャパシタが形成されている。STO膜3は、含有されているSr元素のTi元素に対する組成比(Sr/Ti)が異なる第1領域3aと第2領域3bとから構成されている。
【0011】
第1領域3aは、STO膜の組成比(Sr/Ti)が1.2以上1.6以下の範囲に設定されている領域である。本実施例では、主として組成比(Sr/Ti)が1.55となるように形成した。第2領域3bは、第1領域3aとは異なる組成比(Sr/Ti)に設定され、その組成比(Sr/Ti)が0.8以上1.2未満の範囲に設定されている領域である。本実施例では、主として組成比(Sr/Ti)が1.0となるように形成した。
【0012】
具体的なSTO膜の組成比を図2に示す。図2は10nmの膜厚のSTO膜を形成した場合の組成比(Sr/Ti)を、膜厚方向の位置依存を示したものである。第1領域3aと第2領域3bの境界部分では、組成比(Sr/Ti)がなだらかに変化する。この例では、膜厚0nm以上3nm以下の部分が第1領域3aで、膜厚3nmを超え10nm以下の部分が第2領域3bとなっている。
【0013】
本実施例のキャパシタで用いるSTO膜の具体的な製造方法を説明する。まず、ルテニウム等の金属膜を用いて、半導体基板(図示せず)上に下部電極1を形成する。下部電極としてはルテニウムの他に、白金(Pt)や、窒化チタン(TiN)等も使用可能である。
【0014】
次にALD法を用いて、下部電極1上にSTO膜の第1領域3aとなる部分の形成を行う。図3にALD法のシーケンスを示す。
【0015】
工程S1:
ALD装置の反応室の温度を300℃に設定し、Sr原料ガスを10秒間、供給する。Sr原料ガスとしては、Sr(DPM)2を例示できる。他のSr原料ガスとして、Sr(C5(CH352、Sr(METHD)2、Sr(Oet)2、Sr(Opr)2、Sr(HfA)2等を用いることもできる。供給されたSr原料は、下部電極1の表面に化学的に吸着し、概略Sr原子1層分の薄膜が形成される。
【0016】
工程S2:
反応室にパージガスとして窒素(N2)を供給し、工程S1で吸着せずに残存しているSr原料ガスを反応室から排出する。
【0017】
工程S3:
反応室の温度を300℃に設定したまま、酸化ガスとしてオゾン(O3)(第1の酸化ガスに相当する)を反応室に10秒間程度供給する。供給されたオゾンによって、工程S1で下部電極表面に吸着しているSr原子が酸化される。
【0018】
工程S4:
反応室にパージガスとして窒素(N2)を供給し、工程S3で酸化反応に寄与せずに残存しているオゾンガスを反応室から排出する。
【0019】
工程S5:
反応室の温度を300℃に設定したまま、Ti原料ガスを10秒間、供給する。Ti原料ガスとしては、Ti(OCH(CH324を例示できる。他のTi原料ガスとして、Ti(MMP)4[テトラキス(1−メトキシ−2−エチル−2−プロポキシ)チタン]、TiO(tmhd)2[tmhdは2,2,6,6−テトラメチルヘブタン−3,5−ジオシを示す]、Ti(depd)(tmhd)2[depdはジエチルペンタジオールを示す]等を用いることもできる。供給されたTi原料は、下地の表面に化学的に吸着し、概略Ti原子1層分の薄膜が形成される。
【0020】
工程S6:
反応室にパージガスとして窒素(N2)を供給し、工程S5で吸着せずに残存しているTi原料ガスを反応室から排出する。
【0021】
工程S7:
反応室の温度を300℃に設定したまま、酸化ガスとしてオゾン(O3)(第2の酸化ガスに相当する)を反応室に10秒間程度供給する。供給されたオゾンによって、工程S5で表面に吸着しているTi原子が酸化される。
【0022】
工程S8:
反応室にパージガスとして窒素(N2)を供給し、工程S7で酸化反応に寄与せずに残存しているオゾンガスを反応室から排出する。
【0023】
本実施例では、工程S1〜S8を連続して1回実施することにより、約0.05nm程度の膜厚を有するSTO膜が形成される。また、工程S1〜S4を1サイクルとして、そのサイクルをL回(Lは1以上の整数)実施し、工程S5〜S8を1サイクルとして、そのサイクルをM回(Mは1以上の整数)実施し、各サイクルの回数(LとM)を変更することで、STO膜の組成比(Sr/Ti)を変更することができる。最終的に成膜されるSTOの膜厚は、全体のサイクルをN回(Nは1以上の整数)実施するとして、各サイクルの実施回数L、M、Nを変更することで調節することができる。本実施例では、第1領域3aの組成比(Sr/Ti)が主として約1.55となるようにし、膜厚が約3nmとなるように形成した。なお、第1領域3aを形成する際の工程S1〜S4を第1のサイクル、工程S5〜S8を第2のサイクルとしたとき、STO膜の組成比(Sr/Ti)を1.2以上1.6以下の範囲とするためには、第2のサイクルのサイクル数に対する第1のサイクルのサイクル数の比が0.55〜0.75であることが好ましい。
【0024】
STO膜の第1領域3aの堆積後に、引き続き、第2領域3bの形成を行う。第2領域3bの形成時に工程S3及びS7で使用するオゾン(O3)はそれぞれ、第3及び第4の酸化ガスに相当する。第2領域3bの形成は、第1領域3aと同様にALD法を用いて、サイクル数の設定を調節して組成比(Sr/Ti)の設定を行う。本実施例では、第2領域3bの組成比(Sr/Ti)が主として約1.0となるようにし、第2領域3b部分の膜厚が約7nmとなるように形成した。なお、第2領域3bを形成する際の工程S1〜S4を第3のサイクル、工程S5〜S8を第4のサイクルとしたとき、STO膜の組成比(Sr/Ti)を0.8以上1.2未満の範囲とするためには、第4のサイクルのサイクル数に対する第3のサイクルのサイクル数の比が0.40〜0.55であることが好ましい。
【0025】
以上の工程により堆積されたSTO膜3は非晶質状態であり、引き続き結晶化のアニールを行う。結晶化のアニール処理には、ファーネス型の熱処理装置を用い、600℃の窒素雰囲気で10分間の処理を例示できる。アニール温度は500〜700℃の範囲で設定が可能である。
【0026】
結晶化のアニール処理には、ランプアニール装置を用いることも可能であり、500〜700℃の窒素雰囲気で10秒〜10分間の範囲の加熱処理を行えばよく、好ましいアニール条件として、600℃の窒素雰囲気で1分間の処理を例示できる。
【0027】
また、結晶化のアニール処理に際しては、下部電極として耐酸化性を備えた材料(例えば白金、ルテニウム等)を用いている場合には、酸素ガスを含有した雰囲気でアニール処理を実施してもよい。酸素ガスを含有した雰囲気でアニール処理を実施することにより、STO膜が改質されてリーク特性をさらに改善(リーク電流を低減)することが可能となるため好ましい。
【0028】
アニール処理によって第1領域3aおよび第2領域3bのSTO膜が結晶化すると共に、第1領域3aと第2領域3bの境界部分でも反応が生じ、図2に示したように組成比(Sr/Ti)がなだらかに変化する領域が形成される。以上の工程により、トータルで10nmの厚さを有するSTO膜3が形成される。
【0029】
なお、アニール処理は、第1領域3aの形成後と、第2領域3bの形成後に、それぞれ独立して2回実施してもよい。独立してアニール処理を実施する場合には、必ずしも同じ条件でアニールを行わなくてもよい。
【0030】
STO膜3上に、金属膜を用いて上部電極2を形成すればキャパシタが完成する。上部電極2としては、ルテニウム、白金(Pt)、窒化チタン(TiN)等を使用可能である。また下部電極1と上部電極2は必ずしも同じ金属材料でなくてもかまわない。
【0031】
以下では、STO膜の組成比(Sr/Ti)が1.2以上1.6以下の範囲に設定されている、第1領域3aの特性について説明する。図4にSTO膜の組成比(Sr/Ti)に対する結晶化温度を示す。測定は、各組成比のSTO膜を用意し、窒素雰囲気でのアニールを各設定温度の条件で10分間、実施(昇温速度は10℃/分に設定)して、X線回折法を用いて結晶化の有無を判定した。電極にはルテニウムを用いた。
【0032】
STO膜厚が3nmの場合には、Sr/Ti=1.0の試料では約650℃から結晶化し、Sr/Ti=1.6の試料では約540℃で結晶化する。膜厚を5nmまで厚くすると、どの組成比においても結晶化温度は下がり、Srの含有比が多い(Srリッチ)ほど、結晶化温度の下がる傾向も維持される。すなわち、STOの膜厚を薄くした場合でも、Srの含有比を増やすことで、結晶化温度を低下させることが可能となる。なお、Sr/Ti=1.6以上では、ほぼ一定の結晶化温度となる。
【0033】
図5にSTO膜の組成比(Sr/Ti)に対するリーク特性を示す。縦軸は、キャパシタ電極間に1Vの電圧を印加した場合の、単位面積あたりのリーク電流の測定値を示す。キャパシタの電極にはルテニウムを用いた。測定には膜厚20nmのSTO膜を用い、結晶化アニールは650℃の窒素雰囲気で10分間、実施した。図5より、Srの含有比を増やすに従ってリーク電流が低下し、Sr/Ti=1.6以上では、ほぼ一定のリーク電流値となる。STO膜に含有されるSr比を増加させるに従い、結晶化温度が低下し、リーク電流の少ない良好な特性の誘電体膜を容易に形成することが可能となる。
【0034】
図6に、STO膜の組成比(Sr/Ti)に対する比誘電率を示す。STOの結晶化アニールは650℃の窒素雰囲気で10分間、実施した。キャパシタの電極にはルテニウムを用いた。図6より、Sr/Ti=1.0以上では誘電率が低下し、Sr/Ti=1.6以上ではほぼ一定の誘電率となることが分かる。
【0035】
図5、図6より、STO膜に含有されるSr比を増加させるに従い、リーク電流は低下するものの、誘電率も低下してしまう。このため例えば、Sr/Ti=1.6となる組成比のSTOを単層で用いた場合には、キャパシタの静電容量が低下してしまうため、例えば設計ルール40nm世代以降の微細化したDRAMのメモリセルに用いることはできない。
【0036】
そこで、本発明者はSr/Tiの組成比を変えた少なくとも2つ以上の領域の積層構造でSTO膜を形成することを検討した。この結果、組成比(Sr/Ti)が1.2以上1.6以下の範囲に設定されている領域と、STO膜の組成比(Sr/Ti)が0.8以上1.2未満の範囲に設定されている少なくとも2つの領域を有するように形成することで、静電容量とリーク特性の双方で必要な特性を満たすことが可能なSTO膜を形成することができた。
【0037】
本実施例で用いるSTO膜は、Sr/Tiの組成比を変えた少なくとも2つ以上の領域を有していればよい。別の例として、図7にSTO膜3の中央部に組成比(Sr/Ti)が0.8以上1.2未満の範囲に設定されている第2領域3bを備え、その上下に組成比(Sr/Ti)が1.2以上1.6以下の範囲に設定されている第1領域3aを備えた場合を示す。
【0038】
図8に、このSTO膜中の組成比(Sr/Ti)の分布を示す。下部電極の界面から膜厚3nmまでの範囲が第1領域3aであり、膜厚3nmを超え7nm未満までの範囲が第2領域3bであり、膜厚7nm以上10nm以下までの範囲が第1領域3aとなっている。3層の領域を有する場合にも、先に説明したALD法を用いて、異なる組成比の領域を順次堆積して行くことでSTO膜3が形成される。
【0039】
さらに別の例として、図9に、STO膜3の中央部に組成比(Sr/Ti)が1.2以上1.6以下の範囲に設定されている第1領域3aを備え、その上下に組成比(Sr/Ti)が0.8以上1.2未満の範囲に設定されている第2領域3bを備えた場合を示す。
【0040】
図10に、このSTO膜中の組成比(Sr/Ti)の分布を示す。下部電極の界面から膜厚3nm未満の範囲が第2領域3bであり、膜厚3nm以上7nm以下までの範囲が第1領域3aであり、膜厚7nmを超え10nm以下までの範囲が第2領域3bとなっている。この場合にも、先に説明したALD法を用いて、異なる組成比の領域を順次堆積して行くことでSTO膜3が形成される。
【0041】
さらに、第1領域3aおよび第2領域3bを、それぞれ2つ以上の複数層、設けるようにSTO膜を形成してもよい。STO膜の結晶化アニールは、STO膜の全体が形成された後に1回だけ実施、または各領域の形成後にそれぞれ独立して実施のいずれでもよい。
【0042】
また、図1に示した第1領域3aおよび第2領域3bが1つずつの場合には、どちらの領域を下方に配置してもよい。すなわち、第2領域の上方に第1領域が配置された膜構造としてもよい。また、組成比(Sr/Ti)が1.2以上1.6以下の範囲に設定されている第1領域の膜厚を厚くするほどSTO膜全体の誘電率が低下するため、STO膜中の第1領域のトータル膜厚は全体の膜厚中の50%以下とすることが好ましく、30%以下とすることがさらに好ましい。
【0043】
図11に、図1、7、9で示した構造のSTO膜を用いたキャパシタで測定した静電容量とリーク電流の特性を示す。キャパシタの電極にはルテニウムを用いた。横軸および縦軸は、設計ルール40nm世代のDRAMで想定されるEOT(Equivalent Oxide Thickness:SiO2膜換算膜厚)およびリーク電流の許容値で規格化した値を示す。破線で示した四角内が、静電容量およびリーク電流の双方共に許容範囲内である領域を示す。比較例1として、Sr/Ti=1.2の単層構造のSTO膜の場合を示す。比較例2として、Sr/Ti=1.6の単層構造のSTO膜の場合を示す。
【0044】
本実施例のSTO膜を用いたキャパシタでは、図1、7、9のいずれの構造でも、静電容量およびリーク電流の双方共に許容範囲内である良好な特性が得られている。これに対して、従来の単層構造のSTO膜の場合には、規格範囲外であり、設計ルール40nm世代のDRAMのメモリセル用のキャパシタとして用いることができないことが分かる。
【0045】
(第2実施例)
本実施例を半導体デバイスに適用した具体例として、DRAM素子のメモリセルを構成するキャパシタ素子の容量絶縁膜に用いた場合について説明する。図12は、本発明を適用した半導体装置であるDRAM素子について、メモリセル部の平面レイアウトを示す概念図である。図12の右手側は、後述する、ワード配線Wとなるゲート電極105とサイドウォール105bとを切断する面を基準とした透過断面図として示している。また、簡略化のために、キャパシタ素子の記載は図5においては省略し、断面図(図13)にのみ記載した。
【0046】
図13は、メモリセル部(図12)のA−A’線に対応する断面模式図である。尚、これらの図は半導体装置の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや寸法等は、実際の半導体装置の寸法関係とは異なっている。メモリセル部は、図13に示すように、メモリセル用のMOSトランジスタTr1と、MOSトランジスタTr1に複数のコンタクトプラグを介して接続されたキャパシタ素子Capとから概略構成されている。
【0047】
図12、図13において、半導体基板101は、所定濃度のP型不純物を含有するシリコン(Si)によって形成されている。この半導体基板101には、素子分離領域103が形成されている。素子分離領域103は、半導体基板101の表面にSTI(Shallow Trench Isolation)法によりシリコン酸化膜(SiO2)等の絶縁膜を埋設することで、活性領域K以外の部分に形成され、隣接する活性領域Kとの間を絶縁分離している。本実施形態では、1つの活性領域Kに2ビットのメモリセルが配置されるセル構造に本発明を適用した場合の例を示している。
【0048】
本実施例では、図12に示す平面構造のように、細長い短冊状の活性領域Kが複数、個々に所定間隔をあけて右斜め下向きに整列して配置されており、一般に6F2型メモリセルと呼ばれるレイアウトに沿って配列されている。各活性領域Kの両端部と中央部には個々に不純物拡散層が形成され、MOSトランジスタTr1のソース・ドレイン領域として機能する。ソース・ドレイン領域(不純物拡散層)の真上に配置されるように基板コンタクト部205a、205b、205cの位置が規定されている。
【0049】
図12の横(X)方向には、折れ線形状(湾曲形状)にビット配線106が延設され、このビット配線106が縦(Y)方向に所定の間隔で複数配置されている。また、図12の縦(Y)方向に延在する直線形状のワード配線Wが配置されている。個々のワード配線Wは図12の横(X)方向に所定の間隔で複数配置され、ワード配線Wは各活性領域Kと交差する部分において、図13に示されるゲート電極105を含むように構成されている。本実施例では、MOSトランジスタTr1は、溝型のゲート電極を備えている。
【0050】
図13の断面構造に示すように、半導体基板101において素子分離領域103に区画された活性領域Kにソース・ドレイン領域として機能する不純物拡散層108が離間して形成され、個々の不純物拡散層108の間に、溝型のゲート電極105が形成されている。
【0051】
ゲート電極105は、多結晶シリコン膜と金属膜との多層膜により半導体基板101の上部に突出するように形成されており、多結晶シリコン膜はCVD法での成膜時にリン等の不純物を含有させて形成することができる。ゲート電極用の金属膜には、タングステン(W)や窒化タングステン(WN)、タングステンシリサイド(WSi)等の高融点金属を用いることができる。
【0052】
また、ゲート電極105と半導体基板101との間にはゲート絶縁膜105aが形成されている。また、ゲート電極105の側壁には窒化シリコン(Si34)などの絶縁膜によるサイドウォール105bが形成されている。ゲート電極105上にも窒化シリコンなどの絶縁膜105cが形成されており、ゲート電極105の上面を保護している。
【0053】
不純物拡散層108は、半導体基板101にN型不純物として、例えばリンを導入することで形成されている。不純物拡散層108と接触するように基板コンタクトプラグ109が形成されている。この基板コンタクトプラグ109は、図12に示した基板コンタクト部205c、205a、205bの位置にそれぞれ配置され、例えば、リンを含有した多結晶シリコンから形成される。基板コンタクトプラグ109の横(X)方向の幅は、隣接するゲート配線Wに設けられたサイドウォール105bによって規定される、セルフアライン構造となっている。
【0054】
図13に示すように、ゲート電極上の絶縁膜105c及び基板コンタクトプラグ109を覆うように第1の層間絶縁膜104が形成され、第1の層間絶縁膜104を貫通するようにビット線コンタクトプラグ104Aが形成されている。ビット線コンタクトプラグ104Aは、基板コンタク部205aの位置に配置され、基板コンタクトプラグ109と導通している。ビット線コンタクトプラグ104Aは、チタン(Ti)及び窒化チタン(TiN)の積層膜からなるバリア膜(TiN/Ti)上にタングステン(W)等を積層して形成されている。ビット線コンタクトプラグ104Aに接続するようにビット配線106が形成されている。ビット配線106は窒化タングステン(WN)およびタングステン(W)からなる積層膜で構成されている。
【0055】
ビット配線106を覆うように、第2の層間絶縁膜107が形成されている。第1の層間絶縁膜104及び第2の層間絶縁膜107を貫通して、基板コンタクトプラグ109に接続するように容量コンタクトプラグ107Aが形成されている。容量コンタクトプラグ107Aは、基板コンタクト部205b、205cの位置に配置される。
【0056】
第2の層間絶縁膜107上には、窒化シリコンを用いた第3の層間絶縁膜111およびシリコン酸化膜を用いた第4の層間絶縁膜112が形成されている。第3の層間絶縁膜111および第4の層間絶縁膜112を貫通して、容量コンタクトプラグ107Aと接続するようにキャパシタ素子Capが形成されている。
【0057】
キャパシタ素子Capは下部電極113と上部電極115の間に、第1実施例で詳細に説明した方法を用いて容量絶縁膜114を形成する。すなわち、ルテニウム膜を用いて下部電極を113と上部電極115を形成し、STO膜を容量絶縁膜114として挟んだ構造となっている。下部電極113が容量コンタクトプラグ107Aと導通している。
【0058】
第4の層間絶縁膜112上には、酸化シリコン等で形成した第5の層間絶縁膜120、アルミニウム(Al)、銅(Cu)等で形成した上層の配線層121、表面保護膜122が形成されている。キャパシタ素子の上部電極115には、所定の電位が与えられており、キャパシタ素子に保持された電荷の有無を判定することによって、情報の記憶動作を行うDRAM素子として機能する。
【0059】
次に、キャパシタ素子Capの具体的な形成方法について説明する。図14〜16に、第3の層間絶縁膜111から上の部分のみを断面図として記載した。まず、図14に示したように、第3の層間絶縁膜111および第4の層間絶縁膜112を、所定の膜厚で堆積した後に、フォトリソグラフィ技術を用いて、キャパシタ素子を形成するための開孔112Aを形成する。ドライエッチング技術またはCMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を用いて、下部電極113を開孔112Aの内壁部分にのみ残すように形成する。下部電極の材料としては、ルテニウムを用いたが、他の金属膜でもよい。
【0060】
次に、図15に示したようにALD法を用いて、組成比(Sr/Ti)の異なる領域を少なくとも2つ以上有するSTO膜を堆積して容量絶縁膜114を形成する。STO膜の膜厚は7〜10nm程度となるようにする。例えば、STO膜の膜厚が7nmの場合は、第1領域が3nm、第2領域が4nmになるようにするのが好ましい。
【0061】
次に、図16に示したように、容量絶縁膜114の表面を覆い、開孔(112A)内を充填するように、下部電極と同じ金属膜を堆積して、上部電極115を形成する。上部電極115の材料は下部電極113と異なっていてもよい。また、下部および上部電極は複数の金属の積層膜で形成してもよい。これにより、キャパシタ素子Capが完成する。
【0062】
本実施例を適用することにより、リーク電流値が少なく、静電容量値の大きいキャパシタ素子を形成することが可能となる。本実施例を用いてDRAM素子を形成することにより、高集積化(微細化)した場合でも、データの保持特性に優れた高性能の素子を容易に形成できる。
【符号の説明】
【0063】
1 下部電極
3 STO膜
3a 第1領域
3b 第2領域
101 半導体基板
103 素子分離領域
104 第1の層間絶縁膜
104A ビット線コンタクトプラグ
105 ゲート電極
105a ゲート絶縁膜
105b サイドウォール
105c 絶縁膜
106 ビット配線
107 第2の層間絶縁膜
107A 容量コンタクトプラグ
108 不純物拡散層
109 基板コンタクトプラグ
111 第3の層間絶縁膜
112 第4の層間絶縁膜
112A 開孔
113 下部電極
114 容量絶縁膜
115 上部電極
120 第5の層間絶縁膜
121 配線層
122 表面保護膜
205a、205b、205c 基板コンタクト部
Cap キャパシタ素子
K 活性領域
Tr1 MOSトランジスタ
W ワード配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極と、
Sr/Tiの原子組成比が1.2以上1.6以下の範囲であるチタン酸ストロンチウムからなる第1領域と、Sr/Tiの原子組成比が0.8以上1.2未満の範囲であるチタン酸ストロンチウムからなる第2領域と、を有する容量絶縁膜と、
上部電極と、
をこの順に有するキャパシタ。
【請求項2】
前記容量絶縁膜は、下部電極に接する前記第1領域、前記第2領域、及び、上部電極に接する前記第1領域、をこの順に有する、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項3】
前記容量絶縁膜は、下部電極に接する前記第2領域、前記第1領域、及び、上部電極に接する前記第2領域、をこの順に有する、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項4】
前記容量絶縁膜は、複数の前記第1領域、及び複数の前記第2領域を有し、
前記第1領域と前記第2領域は交互に積層されている、請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項5】
前記容量絶縁膜の膜厚に対する、前記第1領域の膜厚の占める割合は、0.5以下である、請求項1〜4の何れか1項に記載のキャパシタ。
【請求項6】
MOSトランジスタと、
前記MOSトランジスタの第1不純物拡散層に電気的に接続された、請求項1〜5の何れか1項に記載の前記キャパシタと、
前記MOSトランジスタの第2不純物拡散層に電気的に接続されたビット線と、
を有し、
DRAM(Dynamic Random Access Memory)を構成する、半導体装置。
【請求項7】
下部電極を形成する工程と、
1回以上の下記工程(1)と、1回以上の下記工程(2)とを有する、第1領域及び第2領域を形成する工程と、
(1)ALD法により、チタン酸ストロンチウムからなる第1領域を形成する工程、
(2)ALD法により、チタン酸ストロンチウムからなると共に前記第1領域よりもSr/Tiの原子組成比が小さい第2領域を形成する工程、
前記第1と第2の領域に対してアニール処理を行うことにより、第1と第2の領域を有する容量絶縁膜を形成する工程と、
上部電極を形成する工程と、
を有し、
前記アニール処理後において、前記第1領域のSr/Tiの原子組成比が1.2以上1.6以下の範囲となり、前記第2領域のSr/Tiの原子組成比が0.8以上1.2未満の範囲となるように、前記工程(1)の第1領域の形成、前記工程(2)の第2領域の形成、及び前記アニール処理を行う、キャパシタの製造方法。
【請求項8】
前記工程(1)の第1領域を形成する工程は、
下記工程(a1)〜(a4)からなる第1のサイクルを行う工程と、
(a1)Sr原料ガスを供給することにより、Sr原料を堆積させる工程、
(a2)前記Sr原料ガスをパージする工程、
(a3)第1の酸化ガスを供給することにより、前記Sr原料を酸化する工程、
(a4)前記第1の酸化ガスをパージする工程、
下記工程(b1)〜(b4)からなる第2のサイクルを行う工程と、
(b1)Ti原料ガスを供給することにより、Ti原料を堆積させる工程、
(b2)前記Ti原料ガスをパージする工程、
(b3)第2の酸化ガスを供給することにより、前記Ti原料を酸化する工程、
(b4)前記第2の酸化ガスをパージする工程、
を有し、
前記第2のサイクルのサイクル数に対する前記第1のサイクルのサイクル数の比が0.55〜0.75である、請求項7に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項9】
前記工程(2)の第2領域を形成する工程は、
下記工程(c1)〜(c4)からなる第3のサイクルを行う工程と、
(c1)Sr原料ガスを供給することにより、Sr原料を堆積させる工程、
(c2)前記Sr原料ガスをパージする工程、
(c3)第3の酸化ガスを供給することにより、前記Sr原料を酸化する工程、
(c4)前記第3の酸化ガスをパージする工程、
下記工程(d1)〜(d4)からなる第4のサイクルを行う工程と、
(d1)Ti原料ガスを供給することにより、Ti原料を堆積させる工程、
(d2)前記Ti原料ガスをパージする工程、
(d3)第4の酸化ガスを供給することにより、前記Ti原料を酸化する工程、
(d4)前記第4の酸化ガスをパージする工程、
を有し、
前記第4のサイクルのサイクル数に対する前記第3のサイクルのサイクル数の比が0.40〜0.55である、請求項7又は8に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項10】
前記第1領域及び第2領域を形成する工程は、前記工程(1)、前記工程(2)、
前記工程(1)をこの順に有する、請求項7〜9の何れか1項に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項11】
前記第1領域及び第2領域を形成する工程は、前記工程(2)、前記工程(1)、前記工程(2)をこの順に有する、請求項7〜9の何れか1項に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項12】
前記第1領域及び第2領域を形成する工程は、複数の前記工程(1)と、複数の前記工程(2)を交互に有する、請求項7〜9の何れか1項に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項13】
前記第1領域及び第2領域を形成する工程において、前記第1領域の膜厚の占める割合は0.5以下となるように前記第1領域と第2領域を形成する、請求項7〜12の何れか1項に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項14】
全ての前記工程(1)及び(2)を終了した後に、前記アニール処理を行う、請求項7〜13の何れか1項に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項15】
前記工程(1)及び(2)をそれぞれ終了する度に、前記アニール処理を行う、請求項7〜13の何れか1項に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項16】
前記容量絶縁膜を形成する工程において、500〜700℃の温度で前記アニール処理を行う、請求項7〜15の何れか1項に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項17】
前記容量絶縁膜を形成する工程において、酸素ガスの存在下で、前記アニール処理を行う、請求項7〜16の何れか1項に記載のキャパシタの製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図2】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−124254(P2012−124254A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272525(P2010−272525)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】