説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】切り替え機構の故障時における好適なフェールセーフを実現する。
【解決手段】
内燃機関(200)と、動力伝達機構(400)と、第1電動発電機(MG1)と、駆動軸(600)との間で動力の入出力が可能に構成された第2電動発電機(MG2)と、蓄電手段(12)と、動力伝達機構に備わる一の回転要素(S2)の状態をロック状態と非ロック状態との間で選択的に切り替え可能なロック機構(500)とを備えたハイブリッド車両は、ロック機構が固定変速モードから無段変速モードへ変速モードを切り替え可能な正常状態にあるか否かを判別する判別手段(100)と、ロック機構が正常状態にないと判別され且つ変速モードとして固定変速モードが選択されるフェールセーフ要求期間において、第2電動発電機の電力回生量をロック機構が正常状態にある場合と較べて増加側へ補正する補正手段(100)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速比を切り替える機構を備えたハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両の制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の機構としての締結要素により固定変速比及び無段変速比を実現可能なハイブリッド車両を制御する装置が提案されている(特許文献1参照)。この装置によれば、締結要素がON故障(即ち、締結要素を解放できない故障)或いはOFF故障(即ち、締結要素が締結できない故障)に陥った場合に、代替モード制御手段により代替モードを実行することによって、車両を走行させることが可能であるとされている。
【0003】
尚、固定変速比と無段変速比とを切り替える車両構成については、特許文献2にも開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、シリーズハイブリッド車両においてクラッチが故障した場合に、モータジェネレータにより車両を走行させ、且つエンジン回転数が所定回転数以上であればエンジンを始動させる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−22844号公報
【特許文献2】特開2004−345527号公報
【特許文献3】特開2002−51407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固定変速比が選択された状態において、この変速比の切り替えを担う切り替え機構が故障した場合(即ち、上記のON故障に類する故障である)、変速比が固定されるが故に、内燃機関の回転速度は車速に直接影響される。これは、上記特許文献1に開示されるが如く代替モードを選択したところで基本的に変わるものではない。
【0007】
一方、車速が低下する等して内燃機関の回転速度が安定回転可能な下限値を下回る場合であっても、例えば、上記特許文献3に例示されるように、車軸に連結された駆動軸に独立して動力を供給可能な、例えばモータジェネレータ等の動力源を備える構成においては、この動力源からの動力供給により、ハイブリッド車両は所謂EV走行を行うことができる。
【0008】
ところが、ハイブリッド車両がEV走行を行う場合、基本的に減速時以外の電力回生が難しくなるから、蓄電手段のSOC(State Of Charge:充電状態或いは充電状態を規定する規格化された状態量)は低下し易い。ここで、このように変速比が固定された状態では、車両の発進に要する動力も内燃機関以外の動力源から賄わざるを得ないが、蓄電手段のSOCが極端に不足した状態では、この発進に要する動力を賄うことが出来ずに、ハイブリッド車両が発進できなくなる可能性がある。
【0009】
即ち、上述した各種特許文献に例示される従来の技術では、変速比の切り替え機構がON故障した場合に、車両の発進が困難となる可能性があるという技術的問題点がある。
【0010】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、切り替え機構の故障時における好適なフェールセーフを実現可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関と、第1回転要素、車軸に繋がる駆動軸に連結された第2回転要素及び前記内燃機関に連結された第3回転要素を含む相互に差動回転可能な複数の回転要素を備えた動力伝達機構と、前記第1回転要素に連結され、前記内燃機関の回転速度を調整可能な第1電動発電機と、前記駆動軸との間で動力の入出力が可能に構成された第2電動発電機と、前記第1及び第2電動発電機の電源として機能し且つ前記第1及び第2電動発電機における電力回生により充電可能な蓄電手段と、前記動力伝達機構に備わる一の前記回転要素の状態を回転不能なロック状態と回転可能な非ロック状態との間で選択的に切り替え可能に構成されると共に、(1)前記一の回転要素を前記非ロック状態とすることにより前記内燃機関の回転速度と前記駆動軸の回転速度との比たる変速比が連続的に可変とされる無段変速モードを、また(2)前記一の回転要素を前記ロック状態とすることにより前記変速比が固定される固定変速モードを、夫々変速モードとして選択可能なロック機構とを備えたハイブリッド車両を制御する装置であって、前記ロック機構が前記固定変速モードから前記無段変速モードへ前記変速モードを切り替え可能な正常状態にあるか否かを判別する判別手段と、前記ロック機構が前記正常状態にないと判別され且つ前記変速モードとして前記固定変速モードが選択されるフェールセーフ要求期間において、前記第2電動発電機の電力回生量を前記ロック機構が前記正常状態にある場合と較べて増加側へ補正する補正手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るハイブリッド車両は、駆動軸に対し動力供給可能な動力要素として、燃料種別、燃料の供給態様、燃料の燃焼態様、吸排気系の構成及び気筒配列等、その物理的、機械的又は電気的構成を問わない各種の態様を採り得る、燃料の燃焼により動力を生成可能な機関としての内燃機関と、力行及び発電(即ち、電力回生である)が可能な、各種モータジェネレータ等の第1及び第2電動発電機とを少なくとも備えた車両である。
【0013】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、このようなハイブリッド車両を制御する制御装置であって、例えば、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、各種プロセッサ又は各種コントローラ、或いは更にROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バッファメモリ又はフラッシュメモリ等の各種記憶手段等を適宜に含み得る、単体の或いは複数のECU(Electronic Controlled Unit)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る。
【0014】
本発明に係るハイブリッド車両は、動力伝達機構を備える。動力伝達機構は、第1回転要素と、駆動軸に連結された第2回転要素と、内燃機関に連結された第3回転要素とを含む、相互に差動作用をなし得る複数の回転要素を備えており、係る差動作用により、各回転要素の状態(端的には、回転可能であるか否か及び他の回転要素又は固定要素と連結された状態にあるか否か等を含む)に応じた、上記動力要素と駆動軸との間の各種動力伝達(端的にはトルクの伝達である)を可能とする機構である。動力伝達機構は、好適な一形態として、遊星歯車機構等の各種差動ギア機構を一又は複数の備え得るものであって、複数の遊星歯車機構を含む場合には、各遊星歯車機構を構成する回転要素の一部が複数の遊星歯車機構相互間で適宜共有され得る。
【0015】
ここで、動力要素としての第1電動発電機は、この第1回転要素に連結されており、内燃機関の回転速度を調整可能に構成される。より具体的には、動力伝達機構に備わる複数の回転要素のうち、少なくとも第1、第2及び第3回転要素は、常時或いは選択的に、これらのうち二要素の回転速度が定まれば自ずと残余の一回転要素の回転速度が定まる回転二自由度の差動機構(尚、この差動機構に含まれる回転要素は必ずしもこれら三要素に限定されない)を構築する。このような構成においては、駆動軸に連結された第2回転要素が車速と一対一、一対多、多対一又は多対多を問わず一義的となり得るため、第1電動発電機により第1回転要素の回転速度を制御することによって、内燃機関の回転速度を調整することが可能となるのである。また、この場合、第1電動発電機は、内燃機関に反力トルクを付与する反力要素として機能し得る。
【0016】
一方、第2電動発電機は、駆動軸に連結された第2回転要素に、直接、又は変速機構や減速機構等を介して間接的に連結されている。従って、第2電動発電機は、駆動軸との間で動力(端的には、トルクである)の入出力が可能となっている。第2電動発電機は、例えば正回転領域において、例えば駆動輪、車軸及び駆動軸を順次介する動力伝達経路で動力が入力された場合(即ち、負トルクである)、入力された動力を電力として回生する、即ち、発電することが可能である。
【0017】
本発明に係るハイブリッド車両は、動力伝達機構に備わる回転要素のうち一の回転要素(以下、適宜「ロック対象回転要素」と称する)の状態を、例えば物理的、機械的、電気的又は磁気的な各種係合力(端的には、例えば油圧係合力や電磁係合力等)により所定の固定要素に回転不能に固定された回転不能なロック状態と、このロック状態に係る係合力の影響を少なくとも実質的に受けない状態としての回転可能な非ロック状態との間で切り替え可能な、例えば湿式多板ブレーキ装置若しくはクラッチ装置、電磁ドグクラッチ装置又は電磁カムロック式クラッチ装置等の各種態様を採り得るロック機構を備える。本発明に係るハイブリッド車両において、このロック対象回転要素に係るロック状態及び非ロック状態は、夫々、相互に異なる変速モードとしての、固定変速モード及び無段変速モードに対応する構成となっている。
【0018】
無段変速モードは、上述の回転二自由度の差動機構において、第1電動発電機を内燃機関の回転速度制御機構として機能させることにより、内燃機関の回転速度と駆動軸の回転速度との比たる変速比を理論的に、実質的に或いは予め規定された物理的、機械的、機構的又は電気的な制約の範囲内で、連続的に(実践上連続的であるのと同等に段階的な態様を含む)変化させることが可能な変速モードである。
【0019】
この場合、好適な一形態として、内燃機関の動作点(例えば、機関回転速度とトルクとにより規定される内燃機関の一運転条件を規定する点)は、例えば、理論的に、実質的に又は何らかの制約の範囲で自由に選択され、例えば、燃料消費率が理論的に、実質的に又は何らかの制約の範囲で最小となる、或いはハイブリッド車両のシステム効率(例えば、動力伝達機構の伝達効率と内燃機関の熱効率等に基づいて算出される総合的な効率である)が理論的に、実質的に又は何らかの制約の範囲で最大となる、最適燃費動作点等に制御され得る。
【0020】
一方、固定変速モードは、回転二自由度の差動機構において、ロック対象回転要素を上記ロック状態に維持することによって実現される、上記変速比が一義に規定される変速モードである。即ち、ロック対象回転要素がロック状態にある場合、このロック対象回転要素の回転速度(即ち、ゼロ)と、車速と一義的な回転状態を採る第2回転要素の回転速度とによって、残余の回転要素の少なくとも一つである第3回転要素の回転速度は一義に規定され、内燃機関の回転速度は、この一義的に規定される値に収束するのである。
【0021】
この際、ロック対象回転要素が第1回転要素であれば、第1電動発電機はゼロ回転となり、所謂MG1ロック等と称される状態が実現される。また、ロック対象回転要素が、第1、第2及び第3回転要素とは異なり且つこれらと差動関係にある回転要素であれば、第1電動発電機の回転速度は、これら相互間のギア比に応じて定まる一の値に固定される。後者においては、好適には、内燃機関の回転速度が駆動軸の回転速度未満となる、所謂O/Dロックと称される状態が実現され得る。いずれにせよ、固定変速モードにおいては、第1電動発電機の回転速度は自由度を失い、ロック機構に係る係合要素から反力トルクを付与することができるため、第1電動発電機を上述した反力要素として機能させる必要はなくなる。従って、動力循環等と称される、動力要素及び動力伝達機構を含むハイブリッド駆動装置全体のシステム効率を低下させ得る非効率な電気パスの発生を回避することが可能となる。
【0022】
ここで、本発明に係るロック機構は、物理的にせよ、機械的にせよ、電気的にせよ磁気的にせよ、係合要素間に一種の係合力を作用させることによってロック対象回転要素をロック状態に維持する構成を採る。従って、ロック状態と非ロック状態との間の状態の切り替えが、例えば、物理的、機械的、電気的又は磁気的な各種の理由に起因して、実践上無視し得ない程度に良好に機能しなくなる場合がある。
【0023】
特に、ロック状態から非ロック状態への切り替えが困難である場合(即ち、所謂ON故障であり、例えば、係合要素同士が摩擦力により、癒着又は固着により、部分的な噛み込みにより、或いは電気的又は磁気的な動作機構の不備(例えば、電磁アクチュエータの電磁力が制御できない等)により、係合要素同士が、係合力を及ぼし合う関係に維持される場合を含む)には、変速モードが実質的に固定変速モードに固定されるため、非ロック状態からロック状態への切り替えが不能である場合(即ち、所謂OFF故障である場合)と較べて実践上看過し難い問題として顕在化し易い。
【0024】
例えば、内燃機関には、予め安定回転又は自立回転可能な回転領域を規定する回転速度の下限値が設定され得るが、内燃機関の回転速度が車速に対し一義的である場合には、そのような制約とは無関係に内燃機関の回転速度が低下する懸念がある。このような内燃機関の回転速度に係る問題は、固定変速モード下で選択されるハイブリッド車両の走行モードを、複数の動力要素を動力源として機能させ得るHVモードから、第2電動発電機のみを動力源として機能させるEVモードへと切り替えれば回避され得るが、EVモードは基本的に蓄電手段からの電力の持ち出しを必要とするため、蓄電手段に対する電力収支はマイナス側に傾き易く、蓄電手段のSOCは低下し易い。また、固定変速モード下のHVモードは、元よりこのような不測の事態を念頭に置いておらず、第2電動発電機は、停止しているか、或いは電装補器類の駆動電力を確保する程度の比較的小規模の電力回生を行っているに過ぎないという側面もある。
【0025】
ここで特に、ロック機構によりロック対象回転要素がロックされた状態でハイブリッド車両が停止した場合、内燃機関を始動回転(即ち、クランキングである)させることは困難であり、第2電動機からの動力供給により車両を発進させる必要が生じる。ところが、元よりEV走行が継続的に選択されている状況においては、蓄電手段からの電力持ち出し量は増加傾向を辿るから、発進要求が生じた時点で、蓄電手段のSOCが十分に確保されている保証はない。従って、ロック機構が正常状態にない場合(即ち、ロック対象回転要素を非ロック状態に移行させることが困難である場合)、一旦停止したハイブリッド車両を再発進させることが困難となる可能性がある。
【0026】
そこで、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、判別手段と補正手段とを備え、判別手段によりロック機構が正常状態にあるか否かが判別されると共に、ロック機構が正常状態にないと判別された場合に、補正手段が、ロック機構が正常状態にないと判別され且つ固定変速モードが選択されている期間としてのフェールセーフ要求期間において、第2電動発電機の電力回生量を、ロック機構が正常状態にある場合と較べて増加側へ補正する構成となっている。
【0027】
ここで、補正手段が第2電動発電機の電力回生量を増加側に補正するにあたっての実践的態様は、フェールセーフ要求期間においてハイブリッド車両を再発進させるのに必要な電力を確保し得る限りにおいて、「電力回生量」なる文言から一般的に想起される技術範囲を超え得る趣旨である。即ち、「電力回生量を増加側に補正する」とは、内燃機関の出力トルクのうち駆動軸に現れる直達成分(直達トルク)を増加させる等して、単位時間当たりの電力回生量を増加させるといった純然たる意味合いの他に、蓄電手段の最終的な蓄電目標をより高い側へ設定し直すといった意味合い(この場合、総合的な電力回生量が増加する)や、或いは第2電動発電機により電力回生を行う運転領域を拡大するといった意味合い(この場合、電力回生頻度が増加する)を好適に含むものである。
【0028】
従って、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、蓄電手段の蓄電量が確保されていないことに起因してハイブリッド車両を再発進させることが困難になるといった事態を未然に且つ確実に防止することが可能となり、ロック機構が正常状態にない場合の好適なフェールセーフが実現されるのである。
【0029】
補足すると、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、ロック機構が正常状態(ロック対象回転要素をロック状態から非ロック状態へ移行させることが可能である状態)になく且つ固定変速モードが選択されている場合(即ち、判別手段に係る判別動作自体は、理論的には如何なるタイミングでなされてもよく、例えば、IGオン時に始動制御の一環としてなされてもよいのであり、固定変速モードへの移行前にロック機構が正常状態にない旨の判別を獲得できた場合には、単に固定変速モードへの移行を禁止する等の措置を講じることもまた可能である)に、車両を再発進させるにあたって蓄電手段が電力不足に陥る可能性があるといった問題点を見出しており、このフェールセーフ要求期間において、車両の再発進が要求されるのに先立って第2電動発電機の電力回生量を補正する旨の技術思想によって、蓄電手段の的確な電力確保を可能としたものである。言い換えれば、上記問題点に想到しない限り、フェールセーフ要求期間において蓄電手段のSOCを速やかに回復或いは通常時と較べて上昇させることの技術的意義を見出すことは容易ではない。何故なら、ロック機構が正常状態にある場合の第2電動発電機のこの種の電力回生量もまた、例えば予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて最適化される性質のものだからである。
【0030】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の一の態様では、所定の回生条件に基づいて前記電力回生量を制御する第1制御手段を更に具備し、前記補正手段は、(1)前記蓄電手段の目標充電量、(2)時間当りの前記電力回生量及び(3)前記第2電動発電機の電力回生頻度の少なくとも一つを補正し、前記第1制御手段は、前記回生条件として、前記補正された少なくとも一つに基づいて前記電力回生量を制御する。
【0031】
この態様によれば、第1制御手段が第2電動発電機の電力回生量を制御するにあたって参照する回生条件を規定する、蓄電手段の目標充電量、時間当たりの電力回生量及び電力回生頻度のうち少なくとも一つが補正される。
【0032】
蓄電手段の目標充電量とは、好適には第1制御手段により実行されるSOCのフィードバック制御の収束目標値であり、補正手段は、例えば、蓄電手段に制御上規定される通常のSOC上限値(例えば、満充電を100%として70〜80%程度)よりも高くなるように(例えば、90%程度)当該目標値を補正する。この場合、電力回生頻度や時間当たりの電力回生量が通常時と同一であっても、最終的にはより多くの電力を確保することが可能となる。一方、時間当たりの電力回生量及び電力回生頻度は、主として蓄電手段の充電速度に関係するから、例え蓄電手段の目標充電量が通常時と同一であっても、蓄電手段のSOCを迅速に回復させることが可能となり、何らの対策も講じない場合と較べれば明らかに多くの電力を確保することが可能となる。
【0033】
いずれにせよ、これらは、第1制御手段が電力回生量を制御するにあたって参照するアルゴリズム、演算式、又は制御マップの夫々少なくとも一部を書き換える或いは切り替える等の比較的軽負荷な処理で補正することが可能であり、本発明に係る実践上の利益をより簡便に享受することを可能とする点において極めて妥当且つ有益である。
【0034】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記ロック機構が前記正常状態にない旨をドライバに報知する報知手段を更に具備する。
【0035】
この態様によれば、ロック機構が正常状態にない旨が、例えばディスプレイ装置、音声案内装置、警報装置又は警告灯等の各種態様を有し得る報知手段により、ドライバに対し、視覚的に、聴覚的に又は触覚的に、或いはそれらが複合した状態で報知される。従って、ドライバ側では、ロック機構が正常状態にないことに起因してハイブリッド車両が通常時と異なる走行態様を採り得る点に対し違和感を覚えずに済み、ドライバビリティの低下が効果的に抑制される。また、このように、通常ドライバ側が知り得ない車両の不具合についてのインフォメーションが得られることにより、ドライバ側では、その点を踏まえた運転を心掛けることができ、より好適なフェールセーフを得ることが可能となる。
【0036】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記ハイブリッド車両は、走行モードとして、前記ハイブリッド車両の要求駆動力を前記第2電動機から前記駆動軸への動力供給により賄うEV走行モードを選択可能であり、前記ハイブリッド車両の制御装置は、前記フェールセーフ要求期間において前記内燃機関の回転速度が下限値以下となる場合に前記内燃機関の機関動作を停止させる停止手段と、前記機関動作の停止に伴って前記走行モードが前記EV走行モードに切り替わるように前記第2電動発電機を制御する第2制御手段とを更に具備する。
【0037】
この態様によれば、フェールセーフ要求期間において内燃機関の回転速度が下限値以下となる場合に、停止手段により内燃機関の機関動作が停止せしめられる。このため、下限値以下の回転領域で内燃機関が動作を余儀なくされることによる、失火、振動、騒音及びエミッションの悪化等が回避され好適である。一方、この態様によれば、第2制御手段が走行モードをEV走行モードへ切り替えることによって、このように内燃機関の機関動作が停止されることによる駆動力不足が抑制され、ハイブリッド車両の走行性能が低下することによるドライバビリティの低下もまた抑制される。
【0038】
第2制御手段を備える本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の一の態様では、前記機関動作の停止後に前記内燃機関の回転速度が前記下限値より大きい基準値以上に達するか又は前記内燃機関の回転速度が継続して前記下限値より大きい回転速度範囲に滞留した場合に、前記内燃機関を再始動させる始動手段を更に具備する。
【0039】
フェールセーフ要求期間におけるEV走行モードの遂行は、蓄電手段の電力収支をマイナス側へ転じる作用を有するため、車両再発進時の電力確保の面からは必ずしも好ましくない。その一方で、上述の下限値を内燃機関の始動及び機関停止のタイミングを規定する基準として利用すると、内燃機関の回転速度がこの下限値を挟んで上下に変動するような速度領域でハイブリッド車両が走行している場合等に、内燃機関が機関停止と再始動とを繰り返すこととなる。このような内燃機関の始動頻度の増加は、ドライバビリティの面からもエネルギ消費効率の面からも好ましくない。
【0040】
その点、この態様では、始動手段が、内燃機関の回転速度が下限値よりも大きい基準値以上に達するか、又は内燃機関の回転速度が下限値より大きい回転速度範囲に然るべき滞留時間を伴って滞留している場合に内燃機関を再始動させるため、内燃機関の始動頻度の増加を抑制しつつ、第2電動発電機における電力消費も可及的に抑制することが可能となる。
【0041】
尚、この態様では、前記内燃機関を再始動させる場合に、前記内燃機関を再始動させるにあたって生じる振動が抑制されるように前記第1電動発電機を制御する第3制御手段を更に具備してもよい。
【0042】
この場合、第3制御手段により、第1電動発電機から所謂制振トルク(例えば、内燃機関を起震源とする振動と時間軸上で位相が反転したトルク)が供給され、内燃機関を再始動させるにあたっての物理的振動が抑制されるため、内燃機関の再始動を円滑に行うことが可能となる。
【0043】
第2制御手段を備える本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記判別手段は、所定周期で前記ロック機構が前記正常状態にあるか否かを判別し、前記ハイブリッド車両の制御装置は、前記走行モードとして前記EV走行モードが選択されている場合において前記ロック機構が前記正常状態へ復帰したと判別された場合に前記変速モードを前記無段変速モードへ切り替える切り替え手段を更に具備する。
【0044】
この態様によれば、判別手段が周期的に(尚、周期的とは、必ずしもそのインタバルが一定であることのみに限定されない)ロック機構が正常状態にあるか否かに係る判別を繰り返しており、ロック機構が正常状態へ復帰した旨が判別された場合には、切り替え手段により変速モードが迅速に無段変速モードへ切り替えられる。このため、蓄電手段の蓄電量の低下を可及的に抑制することが可能となる。
【0045】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記ロック機構が前記正常状態にないと判別された場合に前記無段変速モードから前記固定変速モードへの前記変速モードの切り替えを禁止する禁止手段を更に具備する。
【0046】
この態様によれば、ロック機構が正常状態にないと判別された場合には、禁止手段により無段変速モードから固定変速モードへの変速モードの切り替えが禁止される。このため、固定変速モードへの移行前にロック機構が正常状態にない旨が判別された場合であれ、正常状態ないロック機構が何らかの理由で正常状態に復帰した場合であれ、ロック機構が再度解放不可な状態に移行する事態が防止され、好適なフェールセーフが実現される。
【0047】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記フェールセーフ要求期間において前記ハイブリッド車両に後進走行が要求された場合に、前記ハイブリッド車両の車速を所定値以下に制限する制限手段を更に具備する。
【0048】
フェールセーフ期間においては、ロック対象回転要素がロックされた状態で第2電動発電機からの動力供給により後進走行が行われるが、この場合、内燃機関は、動力伝達機構の構成上、逆方向への回転を余儀なくされる。この態様によれば、フェールセーフ要求期間において後進走行が要求された場合に、禁止手段によりハイブリッド車両の車速が所定値以下に制限されるため、内燃機関が過度な逆回転状態に陥ることはなくなり、ハイブリッド車両の負担を軽減することが可能となる。
【0049】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【図2】図1のハイブリッド車両におけるハイブリッド駆動装置の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【図3】図2のハイブリッド駆動装置の一動作状態を例示する動作共線図である。
【図4】図1のハイブリッド車両においてECUにより実行されるフェールセーフ制御のフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0052】
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照し、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両1の構成について説明する。ここに、図1は、ハイブリッド車両1の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【0053】
図1において、ハイブリッド車両1は、ECU100、PCU(Power Control Unit)11、バッテリ12、アクセル開度センサ13及び車速センサ14並びにハイブリッド駆動装置10を備えた、本発明に係る「ハイブリッド車両」の一例である。
【0054】
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM等を備え、ハイブリッド車両1の各部の動作を制御することが可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の制御装置」の一例である。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述するフェールセーフ制御を実行可能に構成されている。尚、ECU100は、本発明に係る「判別手段」、「補正手段」、「第1制御手段」、「報知手段」、「停止手段」、「第2制御手段」、「始動手段」、「第3制御手段」、「切り替え手段」、「禁止手段」及び「制限手段」の夫々一例として機能するように構成された一体の電子制御ユニットであり、これら各手段に係る動作は、全てECU100によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係るこれら各手段の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各手段は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
【0055】
PCU11は、バッテリ12から取り出した直流電力を交流電力に変換して後述するモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給すると共に、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ12に供給することが可能に構成された不図示のインバータを含み、バッテリ12と各モータジェネレータとの間の電力の入出力を、或いは各モータジェネレータ相互間の電力の入出力(即ち、この場合、バッテリ12を介さずに各モータジェネレータ相互間で電力の授受が行われる)を制御することが可能に構成された制御ユニットである。PCU11は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される構成となっている。
【0056】
バッテリ12は、複数の単位電池セルを直列接続した構成を有し、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を力行するための電力に係る電力供給源として機能する電池ユニットであり、本発明に係る「蓄電手段」の一例である。
【0057】
アクセル開度センサ13は、ハイブリッド車両1の図示せぬアクセルペダルの操作量たるアクセル開度Taを検出することが可能に構成されたセンサである。アクセル開度センサ13は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度Taは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
【0058】
車速センサ14は、ハイブリッド車両1の車速Vを検出することが可能に構成されたセンサである。車速センサ14は、ECU100と電気的に接続されており、検出された車速Vは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
【0059】
MIL(Multi Information Lump)15は、ハイブリッド車両1のメータパネル上に構築されたインジケータである。MIL15は、ハイブリッド車両1の状態に関するインフォメーションをドライバに対し視覚的に報知可能に構成されている。MIL15は、ECU100により駆動制御される構成となっており、ECU100と共に、本発明に係る「報知手段」の一例を構成する。尚、MIL15は、その機能の一部として、ロック機構500が正常状態にあるか否かを表すインフォメーションを表示可能である。このインフォメーションは、後述するフェールセーフ制御において適宜活用される。
【0060】
尚、MIL15は、本発明に係る報知手段の実践的態様の一例に過ぎず、本発明に係る報知手段は、例えば、ハイブリッド車両1にカーナビゲーション装置が備わる場合には、当該カーナビゲーション装置に付帯するディスプレイ装置であってもよい。また、ディスプレイ装置に限らず、各種音声案内装置や、警報装置又はアラーム装置等であってもよい。
【0061】
特に、カーナビゲーション装置の一部機能を利用してドライバにインフォメーションを与えることが可能である場合、後述するロック機構500が正常状態にない旨の報知に加えて、ハイブリッド車両1に固有の共振帯域(例えば、20km/h程度の低車速領域における駆動系の共振帯域)に関する情報をドライバに提供してもよい。この場合、ドライバに心理的な準備を促すことによるドライバビリティの改善を行うことも可能である。
【0062】
ハイブリッド駆動装置10は、ハイブリッド車両1のパワートレインとして機能する動力ユニットである。ハイブリッド駆動装置10の動力出力軸たる駆動軸600(即ち、本発明に係る「駆動軸」の一例である)は、デファレンシャルDGを介して、駆動輪たる左前輪FL及び右前輪FRに夫々連結された左車軸SFL及び右車軸SFRに連結されている。従って、駆動軸600の回転速度たる出力回転速度Noutは、ハイブリッド車両10の車速Vと一義的な関係を有する。
【0063】
ここで、図2を参照し、ハイブリッド駆動装置10の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、ハイブリッド駆動装置10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0064】
図2において、ハイブリッド駆動装置10は、エンジン200、動力分割機構400、モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と略称する)、モータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と略称する)、ロック機構500及びMG2変速機構600を備える。
【0065】
エンジン200は、ハイブリッド車両1の主たる動力源として機能するように構成された、本発明に係る「内燃機関」の一例たる直列4気筒ガソリンエンジンである。エンジン200は、公知のガソリンエンジンであり、ここでは、その詳細な構成を割愛するが、エンジン200の出力動力たるエンジントルクTeは、不図示のクランク軸を介してハイブリッド駆動装置10の入力軸300に連結されている。尚、エンジン200は、本発明に係る内燃機関の採り得る実践的態様の一例に過ぎず、本発明に係る内燃機関の実践的態様としては、エンジン200に限らず、公知の各種エンジンを採用可能である。
【0066】
モータジェネレータMG1は、本発明に係る「第1電動発電機」の一例たる電動発電機であり、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた構成となっている。モータジェネレータMG2は、モータジェネレータMG1よりも体格の大きい、本発明に係る「第2電動発電機」の一例たる電動発電機であり、モータジェネレータMG1と同様に、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた構成となっている。
【0067】
尚、モータジェネレータMG1及びMG2は、同期電動発電機として構成され、例えば外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える構成を有するが、無論他の構成を有していてもよい。
【0068】
動力分割機構400は、第1遊星歯車機構と第2遊星歯車機構とが組み合わされた、本発明に係る「動力伝達機構」の一例たる複合型遊星歯車機構である。
【0069】
第1遊星歯車機構は、中心部に設けられた、本発明に係る「第1回転要素」の一例たるサンギアS1と、サンギアS1の外周に同心円状に設けられた、本発明に係る「第2回転要素」の一例たるリングギアR1と、サンギアS1とリングギアR1との間に配置されてサンギアS1の外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギア(不図示)と、これら各ピニオンギアの回転軸を軸支する、本発明に係る「第3回転要素」の一例たるキャリアC1とを備える。
【0070】
第2遊星歯車機構は、中心部に設けられた、サンギアS2と、サンギアS2の外周に同心円状に設けられた、リングギアR2と、サンギアS2とリングギアR2との間に配置されてサンギアS2の外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギア(不図示)と、これら各ピニオンギアの回転軸を軸支するキャリアC2とを備える。
【0071】
ここで、第2遊星歯車機構のリングギアR2及びキャリアC2は、夫々第1遊星歯車機構のキャリアC1及びリングギアR1に直結されている。従って、リングギアR2は、キャリアC1と共に本発明に係る「第3回転要素」の一例として、またキャリアC2は、リングギアR1と共に本発明に係る「第2回転要素」の一例として、夫々機能する。
【0072】
一方、第2遊星歯車機構のサンギアS2は、後述するロック機構500と連結されており、ロック機構500の作用によりその状態がロック状態と非ロック状態との間で選択的に切り替え可能に構成されている。即ち、サンギアS2は、本発明に係る「一の回転要素」、即ちロック対象回転要素の一例である。尚、動力分割機構400に備わるこれら各ギアは、夫々が相互に差動関係にあり、本発明に係る「回転要素」の一例を構成している。
【0073】
ここで、サンギアS1は、モータジェネレータMG1のロータに、その回転軸を共有する形で連結されており、その回転速度はMG1の回転速度たるMG1回転速度Nmg1と等価である。また、リングギアR1は、先述した駆動軸600及びMG2変速機構700を介してモータジェネレータMG2のロータに連結されており、その回転速度は、先述した出力回転速度Noutと等価である。更に、キャリアC1は、エンジン200のクランク軸に連結された入力軸300と連結されており、その回転速度は、エンジン200の機関回転速度Neと等価である。
【0074】
MG2変速機構700は、駆動軸600とモータジェネレータMG2との間に介装された、有段の変速機構である。MG2変速機構700は、その時点で選択される変速段のギア比に応じて、駆動軸600とモータジェネレータMG2との間の回転速度比を変化させることが可能である。但し、本実施形態においては、MG2変速機構700の変速段は固定されているものとし、モータジェネレータMG2の回転速度たるMG2回転速度Nmg2は、出力回転速度Noutと一義的な関係を有するものとする。即ち、MG2回転速度Nmg2は、ハイブリッド車両1の車速Vと一義的な関係にあるものとする。
【0075】
尚、モータジェネレータMG2は、モータジェネレータMG1及びエンジン200と異なり、駆動軸600に対し、その出力トルクであるモータトルクTm2を直接作用させることができる。従って、モータジェネレータMG2は、駆動軸600にトルクを付加してハイブリッド車両1の走行をアシストすることも、駆動軸600からのトルクの入力により電力回生を行うことも可能である。
【0076】
尚、ハイブリッド駆動装置10においては、図示破線枠A1、A2及びA3に相当する部位に、レゾルバ等の回転センサが付設されており、検出部位の回転速度を検出可能な構成となっている。これら回転センサは、ECU100と電気的に接続された状態にあり、検出された回転速度は、夫々ECU100に対し一定又は不定の周期で送出されている。補足すると、図示破線枠A1に相当する部位の回転速度とは、即ち上述したMG1回転速度Nmg1であり、図示破線枠A3に相当する部位の回転速度とは、即ち上述したMG2回転速度Nmg2である。また、図示破線枠A2の回転速度は、サンギアS2の回転速度と等価であり、これは、ロック機構500の動作を制御する際に参照される。
【0077】
動力分割機構400は、上述した構成の下で、エンジン200から入力軸300に供給されるエンジントルクTeを、キャリアC1によってサンギアS1及びリングギアR1に所定の比率(各ギア相互間のギア比に応じた比率)で分配し、エンジン200の動力を2系統に分割することが可能である。この際、動力分割機構400の動作を分かり易くするため、リングギアR1の歯数に対するサンギアS1の歯数としてのギア比ρを定義すると、エンジン200からキャリアC1に対しエンジントルクTeを作用させた場合に、サンギアS1に作用するトルクTesは下記(1)式により、また駆動軸600に現れる直達トルクTerは下記(2)式により、夫々表される。
【0078】
Tes=−Te×ρ/(1+ρ)・・・(1)
Ter=Te×1/(1+ρ)・・・(2)
尚、本発明に係る「動力伝達機構」に係る実施形態上の構成は、動力分割機構400のものに限定されない。例えば、本発明に係る動力伝達機構は、上述の第1遊星歯車機構又は第2遊星歯車機構に類する一の遊星歯車機構のみを備えていてもよい。この場合、例えば、サンギアS1(S2)がMG1に、キャリアC1(C2)がエンジン200に、リングギアR1(R2)が駆動軸600に、夫々連結され、サンギアS1(S2)がロック機構500に接続されることにより、モータジェネレータMG1の回転動作が直接ロックされる構成を有していてもよい。また、MG2変速機構700に代えて、モータジェネレータMG2と駆動軸600との間に、第1又は第2遊星歯車機構に類する遊星歯車機構を介在させ、例えばこの遊星歯車機構のサンギアにMG2のロータを、リングギアにリングギアR1を夫々連結すると共に、キャリアを回転不能に固定することによって、出力回転速度Noutに対しMG2回転速度Nmg2を減速させる構成であってもよい。
【0079】
ロック機構500は、ハブ501、外歯502、スリーブSL、内歯503、外歯504、リターンスプリング505、環状部材506及びアクチュエータ507を備え、第2遊星歯車機構のサンギアS2の状態を、回転可能な非ロック状態と、回転不能なロック状態との間で選択的に切り替え可能に構成された、本発明に係る「ロック機構」の一例たる電磁ドグクラッチ機構である。
【0080】
ハブ501は、サンギアS2と一体回転可能な環状部材である。外歯502は、このハブ501の外周面に形成された噛合用の歯状部材である。
【0081】
スリーブSLは、図示ストローク方向に移動可能に構成された環状部材である。内歯503は、このスリーブSLの内周面に形成された噛合用の歯状部材である。
【0082】
環状部材406は、その外周面に、スリーブSLに形成された内歯403と常時噛合する外歯504を備える。また、この環状部材506は、固定要素であるケース(符合省略)に固定されており、回転不能に構成されている。従って、この環状部材506の外周面に形成された外歯504と噛合する内歯503を備えたスリーブSLもまた、回転不能な固定要素である。
【0083】
アクチュエータ507は、スリーブSLに対し、スリーブSLをストローク方向に移動させるための電磁力を付与可能な公知の電磁アクチュエータである。
【0084】
アクチュエータ507は、その駆動力源としてソレノイド(電磁石)を備えており、このソレノイドに対し、励磁電流たる駆動電流が供給されることにより、スリーブSLをストローク方向に変位させる電磁力が発生する仕組みとなっている。尚、アクチュエータ507は、PCU11と電気的に接続されており、PCU11からの電力供給により駆動電流を供給可能である。従って、アクチュエータ507の動作状態もまた、ECU100により制御される構成となっている。尚、駆動電流の符合が逆転した場合、スリーブSLの移動方向は逆転する。
【0085】
ここで、スリーブSLに駆動力が供給され、スリーブSLがストローク方向を図示右方向へ変位すると、スリーブSLの内周面に形成された内歯503と、ハブ501の外周面に形成された外歯502とが噛合する。先に述べたように、スリーブSLは、内歯503が常時外歯504と噛合する構成を採るため回転不能であり、内歯503と外歯502とが噛合した状態においては、ハブ501もまた回転不能となる。ハブ501は、サンギアS2と連結されているから、この状態では、サンギアS2もまた回転不能なロック状態となる。
【0086】
一方、スリーブSLには、リターンスプリング505が連結されている。リターンスプリング505は、一端部がケースに固定され、他端部がスリーブSLに連結された弾性部材であり、スリーブSLを常時ハブ501から引き離す方向へ付勢している。従って、アクチュエータ507への通電が停止されると、スリーブSLは、この付勢力により、内歯503と外歯502とが噛合しない解放位置まで移動する。スリーブSLが当該解放位置まで移動すると、ハブ501は再び回転可能となり、サンギアS2は非ロック状態へ復帰する。
【0087】
尚、本発明の「ロック機構」に係る実践上の態様は、ロック機構500の如きドグクラッチ機構に限定されない。例えば、本発明に係るロック機構は、油圧により係合要素同士を押し付けることにより係合力を生じさせる湿式多板型のクラッチ或いはブレーキ機構であってもよいし、所謂電磁カムロック式の係合装置であってもよい。また、ドグクラッチ機構であるにせよ、係合要素相互間の係合態様は、本実施形態のものに限定されない。例えば、本実施形態では、係合要素が夫々環状部材として構成され、一方の外周面に形成された歯状部材と、他方の内周面に形成された歯状部材とが係合する構成とされるが、係合要素の各々における対向面に歯状部材が形成される構成であってもよい。
【0088】
<実施形態の動作>
<変速モードの詳細>
本実施形態に係るハイブリッド車両1は、ロック対象回転要素たるサンギアS2の状態に応じて、本発明に係る変速モードとして固定変速モード及び無段変速モードを選択可能である。ここで、図3を参照し、ハイブリッド車両1の変速モードについて説明する。ここに、図3は、ハイブリッド駆動装置10の動作共線図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0089】
図3(a)において、縦軸は回転速度を表しており、横軸には、左から順にモータジェネレータMG1(一義的にサンギアS1)、サンギアS2、エンジン200(一義的にキャリアC1)及びモータジェネレータMG2(一義的に出力回転速度Nout)が表されている。
【0090】
ここで、動力分割機構400は、相互に差動関係にある4個の回転要素により構築された回転二自由度の遊星歯車機構であり、サンギアS1、サンギアS2、キャリアC1(リングギアR2)及びリングギアR1(キャリアC2)のうち二要素の回転速度が定まった場合に、残余の二回転要素の回転速度が必然的に定まる構成となっている。即ち、動作共線図上において、各回転要素の動作状態は、ハイブリッド駆動装置10の一動作状態に一対一に対応する一の動作共線によって表すことができる。
【0091】
図3(a)において、車速Vと一義的な関係にあるモータジェネレータMG2の動作点が動作点m1であるとする。この場合、モータジェネレータMG1の動作点が動作点g1であれば、残余の回転要素の一たるキャリアC1に連結されたエンジン200の動作点は、動作点e1となる。この際、駆動軸600の回転速度たる出力回転速度Noutを維持したままモータジェネレータMG1の動作点を動作点g2及び動作点g3に変化させれば、エンジン200の動作点は夫々動作点e2及び動作点e3へと変化する。
【0092】
即ち、この場合、モータジェネレータMG1を回転速度制御装置とすることによって、エンジン200を所望の動作点で動作させることが可能となる。この状態に対応する変速モードが、無段変速モードである。無段変速モードでは、エンジン200の動作点(この場合の動作点とは、機関回転速度とエンジントルクTeとの組み合わせによって規定されるエンジン200の一動作条件を意味する)は、基本的にエンジン200の燃料消費率が最小となる最適燃費動作点に制御される。
【0093】
ここで、無段変速モードにおいては、当然ながらMG1回転速度Nmg1は可変である必要がある。MG1回転速度Nmg1が可変であるならば、回転二自由度の差動機構の構成上、サンギアS2の回転速度もまた可変でなければならない。このため、無段変速モードが選択される場合、ロック機構500は、サンギアS2が非ロック状態となるように、その駆動状態が制御される。尚、非ロック状態にあるサンギアS2は、他の三回転要素の回転状態に応じて一義に定まる回転速度で空転するのみであり、無段変速モードにおける動力伝達には寄与しない。
【0094】
動力分割機構400において、駆動軸600に先に述べたエンジントルクTeに対応するトルクTerを供給するためには、エンジントルクTeに応じてサンギアS1の回転軸(ここでは、便宜的に「サンギア軸」とする)に現れる先述のトルクTesと大きさが等しく且つ符合が反転した(即ち、負トルクである)反力トルクを、モータジェネレータMG1からこのサンギア軸に供給する必要がある。この場合、動作点g1或いは動作点g2といった正回転領域の動作点において、MG1は正回転負トルクの電力回生状態(即ち、発電状態)となる。このように、無段変速モードにおいては、モータジェネレータMG1を反力要素として機能させることにより、駆動軸600にエンジントルクTeの一部を供給しつつ、サンギア軸に分配されるエンジントルクTeの一部で電力回生(発電)が行われる。駆動軸600に対し要求されるトルク(即ち、ハイブリッド車両1の要求トルク)が、エンジン200からの直達トルクで不足する場合には、この回生電力を利用する形でモータジェネレータMG2から駆動軸600に対し適宜アシストトルクTmg2が供給される。
【0095】
一方、例えば高速軽負荷走行時等、例えば出力回転速度Noutが高い割に機関回転速度Neが低く済むような運転条件においては、MG1が、例えば動作点g3の如き負回転領域の動作点となる。モータジェネレータMG1は、エンジントルクTeの反力トルクとして負トルクを出力しているから、この場合、MG1は、負回転負トルクの状態となって力行状態となる。即ち、この場合、モータジェネレータMG1からのトルクTmg1は、ハイブリッド車両1の駆動トルクとして駆動軸600に伝達されてしまう。
【0096】
他方で、モータジェネレータMG2は、駆動軸600に出力される、要求トルクに対し過剰なトルクを吸収するため、負トルク状態となる。この場合、モータジェネレータMG2は、正回転負トルクの状態となって電力回生状態となる。このような状態においては、MG1からの駆動力をMG2での電力回生に利用し、この回生電力によりMG1を力行駆動する、といった所謂動力循環と称される非効率な電気パスが生じることとなる。動力循環が生じた状態では、ハイブリッド駆動装置10のシステム効率が低下する。
【0097】
そこで、ハイブリッド車両1では、予めこのような動力循環が生じ得るものとして定められた運転領域において、ロック機構500によりサンギアS2がロック状態に制御される。その様子が図3(b)に示される。ロック機構500によりサンギアS2がロック状態に移行すると、サンギアS2の動作点は、回転速度ゼロに対応する図示動作点c1に固定される。
【0098】
この場合、出力回転速度Noutとこのゼロ回転とにより、残余の機関回転速度Ne及びMG1回転速度Nmg1は一義的に固定され、夫々動作点は図示e4及びg4となる。即ち、サンギアS2がロックされた場合、機関回転速度Neは、車速Vと一義的なMG2回転速度Nmg2により一義的に決定される(即ち、変速比が一定となる)。この状態に対応する変速モードが固定変速モードである。尚、この状態では、機関回転速度NEは、出力回転速度Nout(図では便宜的にMG2回転速度Nmg2)よりも低くなり、所謂オーバードライブ状態が実現される。従って、ロック機構500により実現されるサンギアS2のロックは、「O/Dロック」等と称される。
【0099】
固定変速モードでは、本来モータジェネレータMG1が負担すべきエンジントルクTeの反力トルクを、ロック機構500の物理的な係合力により代替させることができる。即ち、この場合、モータジェネレータMG1を電力回生状態にも力行状態にも制御する必要はなくなり、モータジェネレータMG1を停止させることが可能となる。従って、基本的には、モータジェネレータMG2を稼動させる必要もなくなり、MG1とMG2とは、言わば空転状態となる。結局、固定変速モードでは、駆動軸600に現れる駆動トルクが、エンジントルクTeのうち、動力分割機構400により駆動軸600側に分割された直達成分(上記(2)式参照)のみとなり、ハイブリッド駆動装置10は、機械的な動力伝達を行うのみとなって、その伝達効率が向上する。
【0100】
尚、固定変速モードにおいて、モータジェネレータMG2は必ずしも停止させる必要はない。例えば、ハイブリッド車両1には、各種の電装補器類が備わっており、それら電装補器類の駆動には然るべき駆動電力が必要となる。モータジェネレータMG2は、この駆動電力に対応する電力をバッテリ12に供給するために、小規模の電力回生を行ってもよい。この場合、エンジントルクTeの直達成分が車両を走行させるために要求されるトルクに対し余剰となるように、ECU100がエンジントルクTeを制御し、余剰分のトルクがモータジェネレータMG2で回生される。
【0101】
また、それとは別に、ECU100は、絶えずバッテリ12のSOCを目標値に維持するためのSOCフィードバック制御を実行している。ECU100は、無段変速モードであれ固定変速モードであれ、バッテリ12のSOCが、例えば70%〜80%程度の目標値に維持されるようにモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2の電力回生量を制御しており、例えば、SOCが目標値に対し低ければ電力回生量は相対的に大きく、目標値に対し高ければバッテリ12からの電力の持ち出し量が増えるように、エンジン200、MG1及びMG2の動作状態が制御される。
【0102】
<フェールセーフ制御の詳細>
ロック機構500は、スリーブSLとハブ501との間で歯状部材を噛合させることにより係合力を発揮するドグクラッチ機構であるが、例えば、偶発的に生じる何らかの理由により、経年変化により、或いは製造上のバラツキ等により、例えば歯状部材同士が噛み込みを起こす、癒着する又は固着する、アクチュエータ507の電磁力がオフされない、或いはリターンスプリング505が円滑に動作しない等、サンギアS2を非ロック状態に移行させることができなくなる場合がある。或いは逆に、歯状部材同士が噛み合わない、アクチュエータ507の電磁力がオンされない、或いはリターンスプリング505の付勢力が過剰である等、サンギアS2をロック状態に移行させることができなくなる場合がある。
【0103】
後者の場合、変速モードが無段変速モードに固定されるだけであり、実践上さしたる問題は生じないものの、前者の如く解放側の動作不良が生じた場合、変速モードは固定変速モードに固定されてしまうため、固定変速モードによる上述した実践上利益が部分的に享受され反面、解消すべき問題が生じ得る。
【0104】
例えば、固定変速モードが選択された状態でハイブリッド車両1が停止した場合、ハイブリッド車両1を再発進させるためには、MG2からの動力供給が不可欠となる(尚、無段変速モードにおいても、好適にはMG2からの動力供給により車両を発進させることになるが、無段変速モードにおいては、MG1からのクランキングトルクの供給によりエンジン200をクランキングし、エンジン200の始動後にエンジントルクTeにより車両を発進させることも可能である)。
【0105】
一方で、固定変速モード以外の選択が不可能な状況においては、エンジン200が下限回転速度以下の回転領域で稼動することを要求される場合がある。このような場合には、ドライバビリティの低下を防ぐ必要があり、エンジン200を機関停止させ、走行モードをHV(Hybrid Vehicle)モードからEV(Electric Vehicle)モードへ切り替える必要が生じる。ここで、EVモードは、バッテリ12からの電力供給によりMG2の動力のみにより車両を走行させるモードであるから、基本的に減速時以外の電力回生は行われない。他方で、固定変速モードでの走行がなされる場合、上述したように、基本的にMG2による電力回生は小規模であり、相応にEV走行がなされた後のバッテリ12のSOCは、極端に低下している可能性がある。
【0106】
従って、ロック機構500が解放側の動作不良によりサンギアS2を非ロック状態へ移行させることが可能な正常状態にない場合(このような状態を適宜「非正常状態」と称する)、ハイブリッド車両1は、再発進に必要となる電力が不足して、場合により発進が困難になる可能性がある。そのような問題を解決すべく、本実施形態に係るハイブリッド車両1では、ECU100によりフェールセーフ制御が実行される。
【0107】
ここで、図4を参照し、フェールセーフ制御の詳細について説明する。ここに、図4は、フェールセーフ制御のフローチャートである。
【0108】
図4において、ECU100は、判定タイミングであるか否かを判別する(ステップS101)。ここで、「判定タイミング」とは、ロック機構500が正常状態(サンギアS2を非ロック状態に移行させることが可能である状態)にあるか否かの判定処理を実行すべきものとして規定されたタイミングであり、本実施形態では、ハイブリッド車両1の始動入力時たるイグニッションオン時と、固定変速モードから無段変速モードへの変速モードの切り替えが要求された変速要求時とがこれに該当する。判定タイミングでない場合(ステップS101:NO)、ECU100は、処理をステップS103に移行させる。
【0109】
判定タイミングである場合(ステップS101:YES)、ECU100は、判定処理を実行する(ステップS102)。
【0110】
固定変速モードが既に選択された状態でなされる判定処理においては、ECU100は、アクチュエータ507を制御して、スリーブSLを解放位置まで移動させる通常の解放制御を行う。一方、イグニッションオン時になされる判定処理であれば、解放位置にあるスリーブSLをハブの方向へストロークさせ、一旦サンギアS2をロックした後、再びスリーブSLを解放位置に復帰させる。いずれにせよ、最終的にスリーブSLが復帰位置に正常に移動した場合には、ロック機構500は正常状態にあると判定され、ロック機構500が正常状態にあるか否かを規定する解放不可フラグがオフ状態に制御される。一方、所定時間内にスリーブSLが復帰位置まで正常に移動しなかった場合には、ロック機構500は正常状態にないと判別され、上記解放不可フラグがオン状態に制御される。
【0111】
尚、判定処理は、ロック機構500が正常状態にあるか否かを判定可能な限りにおいて如何なる態様を有していてもよく、例えば、予め判定処理用に定められた駆動条件でアクチュエータ507を駆動制御してもよい。
【0112】
ステップS103では、解放不可フラグがオン状態であるか否かが判別される。解放不可フラグがオフ状態である場合(ステップS103:NO)、即ち、ロック機構500が正常状態にある場合、ECU100は、処理をステップS101に戻す。即ち、この場合、フェールセーフ制御としては実質的に何もなされないのと同等であり、別途ECU100により実行される各種の制御により、ハイブリッド車両1の走行状態が制御される。
【0113】
一方、解放不可フラグがオン状態である場合(ステップS103:YES)、ECU100は、MIL15を点灯させ(ステップS104)、ドライバに対しロック機構500が正常状態にない旨を報知すると共に、回生マップを変更する(ステップS105)。尚、ステップS103が「YES」側へ分岐して以降の期間は、本発明に係る「フェールセーフ要求期間」の一例となる。
【0114】
ここで、「回生マップ」とは、ROMに格納された、固定変速モードにおける電力回生の実践態様を規定する制御マップである。回生マップは、ハイブリッド車両1の運転条件(例えば、車速V及び要求駆動力Ft等)と、電力回生の実行可否とを対応付けたマップとして、ロック機構500が正常状態にある場合に使用される基準回生マップと、ロック機構500が正常状態にない場合に使用されるフェールセーフ用回生マップとの二種類が記憶されている。ステップS105において、ECU100は、回生マップを、この基準回生マップからフェールセーフ用回生マップへと変更する。
【0115】
より具体的には、フェールセーフ用回生マップは、基準回生マップと較べて、電力回生を行うべきものとして定められた電力回生領域が拡大されている。
【0116】
従って、回生マップがフェールセーフ用回生マップに切り替えられた場合、固定変速モードにおいて、モータジェネレータMG2がエンジントルクTeの一部を利用した電力回生を行う頻度が増加する。従って、バッテリ12のSOCを迅速に復帰させることが可能となるのである。
【0117】
また、ステップS105においてECU100は、上述したバッテリ12のSOCフィードバック制御における各種フィードバック制御項を補正する等して、時間当たりの電力回生量を増加側へ補正する。この場合、エンジントルクTeの直達成分は、ロック機構500が正常状態にある場合と較べて増加側へ補正され、電力回生に使用される余剰なトルクが増加する。その結果、モータジェネレータMG2における時間当たりの電力回生量を増加させることができる。尚、このような電力回生量の増加は、フィードバック制御項の補正を行わずとも、例えば、現状のSOCと目標SOCとの偏差に応じて定まる目標電力回生量に対しオフセットを与えたり、1以上の補正係数を乗じたりすることによって実現されてもよい。
【0118】
更に、ステップS105においてECU100は、このような電力回生領域の拡大及び時間当たりの電力回生量の増加に加えて、先に述べたバッテリ12のSOCフィードバック制御に係る目標SOCを、正常時の値(例えば、70〜80%程度の値)よりも高く(例えば、90%程度に)なるように補正する。その結果、バッテリ12は、最終的により多くの電力を蓄積することができる。これらステップS105に係る各動作は、本発明に係る「補正手段」の動作の一例である。
【0119】
尚、本実施形態では、本発明に係る補正手段の動作として、電力回生領域の拡大、時間当たりの電力回生量の増加側への補正、及び目標SOCの増加側への補正がなされるが、これらは、夫々が本発明に係る「補正手段」の動作の一例となり得る。
【0120】
回生マップが変更されると、ECU100は、エンジン200が稼動状態にあるか否かを判別する(ステップS106)。エンジン200が稼働状態にある場合(ステップS106:YES)、ECU100は、エンジン200の機関回転速度Neが、予め設定された下限値Ne1以下であるか否かを判別する(ステップS107)。
【0121】
ここで、下限値Ne1とは、エンジン200の安定回転が保証され得る最低の機関回転速度であり、エンジン200に固有の値として予め実験的に定められている。即ち、エンジン200は、下限値Ne1よりも高回転側での動作のみ許可される。下限値Ne1以下の極低回転領域でエンジン200が動作する場合、例えば、エンジンストール、失火、振動の増大或いはエミッションの悪化等が顕在化して、主としてドライバビリティの低下を招来しかねないのである。尚、下限値Ne1は、例えば、概ね800rpm程度の値に設定される。
【0122】
機関回転速度Neが基準値Ne1以下である場合(ステップS107:YES)、ECU100は、稼働状態にあるエンジン200を停止させ(具体的には、燃料の供給を停止することにより機関停止状態に制御することを意味する)、固定変速モード下での走行モードを、従前のHVモード(尚、この場合、主としてエンジン200の動力のみでエンジン走行が行われているが、MG2からの動力供給が可能である点に鑑みれば、走行モードはHVモードとして扱ってよい)からEVモードへ切り替える(ステップS108)。即ち、この時点で、ハイブリッド車両1は、モータジェネレータMG2からの動力供給のみにより所謂EV走行を開始する。
【0123】
走行モードがEVモードへ切り換えられるか、或いはステップS106においてエンジン200が稼働状態にないと判別された場合(ステップS106:NO)、即ち、既にハイブリッド車両1がEV走行を行っている場合、ECU100は、機関回転速度Neが始動基準値Ne2(Ne2>Ne1)以上であるか否かを判別する(ステップS109)。始動基準値Ne2は、上述した下限値Ne1よりも高回転側の値であり、エンジン200の再始動を許可するか否かを規定する値として、予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて設定されている。尚、始動基準値Ne2は、例えば、概ね1000rpm程度の値であってもよい。
【0124】
ここで、機関停止状態にあるエンジン200を再始動させるか否かを規定する始動基準値を、上述の下限値Ne1に設定すると、ハイブリッド車両1の車速Vが、機関回転速度Neがこの下限値Ne1付近で変動する回転領域にある場合等に、エンジン200が始動と停止を繰り返すことになりかねない。
【0125】
このようにエンジン200の始動頻度が高い場合、例えばバッテリ12の電力収支及びドライバビリティが夫々悪化しかねない。そこで、始動基準値Ne2は、下限値Ne1よりも高回転側で設定され、エンジン200の始動頻度の増加が抑制されているのである。
【0126】
尚、このようなエンジン200の始動頻度抑制に係る効果は、始動基準値を下限値Ne1よりも高回転側で設定することの他に、機関回転速度Neが下限値Ne1よりも高回転側の回転領域に十分な時間滞留している場合に始動を許可する等の手法によっても担保される。この場合、係る高回転側の回転領域を規定する基準値は、始動基準値Ne2よりも低回転側の値であってよい。また、これら異なる始動条件のいずれか一方が満たされた場合にエンジン200の始動が許可されてもよい。いずれにせよ、下限値Ne1のみにて始動と機関停止とを制御する場合と較べて、エンジン200の始動頻度を抑制することが可能である。
【0127】
ECU100は、機関回転速度Neが始動基準値Ne2以上である場合(ステップS109:YES)、エンジン200を始動させ(ステップS110)、サンギアS2がロックされたO/Dロック状態での走行制御を実行する(ステップS111)。尚、先のステップS107において、機関回転速度Neが下限値Ne1よりも高回転側にある場合(ステップS107:NO)、即ち、エンジン200を機関停止状態とする必要がない場合、ECU100は、処理をこのステップS111に移行させる。
【0128】
ここで、ステップS110においてエンジン200を始動させるにあたっては、各気筒の燃焼行程が開始されるのに伴い、エンジン200を起振源とする物理振動が発生する。この物理振動は、固定変速モード下では特に、直結状態にある駆動軸600に所謂トルクショックとして伝達され、ドライバビリティを低下させる要因となる。
【0129】
そこで、ECU100は、ステップS110においてエンジン200を始動させるにあたっては、モータジェネレータMG1を利用した制振制御を付帯させる。
【0130】
より具体的には、始動時におけるエンジン200の時間軸上の振動態様、例えば、振動波形は、予め実験的に把握可能であるから、予めこの始動波形を相殺する波形を有する制振トルクをモータジェネレータMG1から供給すれば、エンジン200を起振源とする物理振動を抑制することができるのである。尚、このような制振トルクの波形は、予めマップ化されて格納されている。
【0131】
一方、このような制振トルクをモータジェネレータMG1から供給すると、この制振トルクの一部は、駆動軸600へ駆動トルクとして伝達される可能性がある。そこで、ECU100は、モータジェネレータMG1による制振制御を実行する過程において、この余剰なトルクをモータジェネレータMG2により吸収する。即ち、電力回生を実行する。このように各モータジェネレータを協調的に制御することによって、駆動軸600へドライバビリティの悪化として顕在化する程度のトルクショックを与えることなくエンジン200を始動させることが可能となるのである。
【0132】
ECU100は、ロック機構500が正常状態になく且つ固定変速モードが選択されたフェールセーフ要求期間において、ハイブリッド車両1の後進走行要求の有無を判別する(ステップS112)。後進走行要求がない場合(ステップS112:NO)、処理は、ステップS115に移行される。
【0133】
一方、後進走行要求がある場合(ステップS112:YES)、ECU100は、モータジェネレータMG2の出力トルクであるMG2トルクTmg2を制限し(ステップS115)、且つハイブリッド車両1の車速Vを、例えば、20km/h程度の上限値により制限する(ステップS116)。このように駆動軸600に供給されるトルクと車速Vとに一定の制限を与えることによって、逆回転を余儀なくされるエンジン200の好適な保護が図られる。尚、トルクの制限は、逆回転状態にあるエンジン200が十分な余裕を持って受け止められる程度の値として予め実験的に定められている。
【0134】
車速制限がなされるか、或いは後進走行要求がない場合(ステップS112:NO)、ECU100は、ロック機構500が正常状態へ復帰したか否かを判別する(ステップS115)。補足すると、ステップS102における判定処理の実行以降、ECU100は、ロック機構500の駆動条件を、サンギアS2を非ロック状態とするための駆動条件に維持固定している。従って、ロック機構500が、何らかの原因により一時的に或いは偶発的に非正常状態に陥った場合には、偶発的にその原因が解消する等して、ロック機構500が正常状態に復帰することも十分にあり得る。そこで、ECU100は、サンギアS2の回転速度を周期的に参照し、絶えずロック機構500の最新の状態を把握する構成となっているのである。ロック機構500が正常状態にない場合(ステップS115:NO)、即ち、サンギアS2がロック状態を継続している場合、ECU100は、処理をステップS101へ移行させる。
【0135】
一方、ロック機構500が正常状態に復帰した場合(ステップS115:YES)、即ち、変速モードが固定変速モードから無段変速モードへ切り替わる場合、ECU100は、解放不可判定フラグをオフ状態に制御すると共に、ショック低減処理を実行する(ステップS116)。ここで、ショック低減処理とは、固定変速モードから無段変速モードへの変速モードの切り替えを円滑に且つショックレスに実行するための処理を意味する。
【0136】
このショック低減処理は、ステップS115が「YES」側に分岐した時点でハイブリッド車両1がEVモードにあるかHVモードにあるかによって若干異なり得る。即ち、ハイブリッド車両1がEVモード下でEV走行を行っている場合、ECU100は、エンジン200に反力トルクを与えるモータジェネレータMG1を始動させ、続いてエンジン200を始動させる。この際、反力要素がサンギアS2からMG1に切り替わる過渡期において駆動軸600に現れる駆動トルクが不連続とならないように、モータジェネレータMG2とモータジェネレータMG1とを協調的に制御する。ハイブリッド車両1がHVモードで主としてエンジン直達トルクのみで走行している場合には、エンジン200の始動プロセスは不要であり、ECU100は、反力要素の切り替わりに起因するトルクショックが顕在化しないように、モータジェネレータMG1とモータジェネレータMG2とを協調制御する。
【0137】
このように反力要素の切り替わり過渡期におけるトルクショックを緩和すると、ECU100は、切り替え禁止フラグをオン状態に制御する(ステップS117)。ここで、切り替え禁止フラグとは、無段変速モードから固定変速モードへの変速モードの切り替えを禁止すべきか否かを規定するフラグであり、切り替えが禁止される場合にはオン状態に制御される構成となっている。
【0138】
即ち、フェールセーフ制御においては、一旦ロック機構500が非正常状態に陥った場合には、再度固定変速モード下での不自由な走行制御を強いられぬように、固定変速モードへの変速モードの切り替えが禁止されるのである。この場合、MIL15は点灯状態に制御されたままであり、ドライバに早期の対処が促される構成となっている。切り替え禁止フラグがオン状態に制御されると、ECU100は、処理をステップS101へ戻して一連の処理を繰り返す。
【0139】
尚、切り替え禁止フラグがオン状態に制御されている場合、ステップS101の判別処理では無条件に判定タイミングではないと判別される。このため、ロック機構500が非正常状態に陥った履歴がある場合、次回のイグニッションオン時には判定処理は実行されない。また、ロック機構500が正常状態に復帰した後は、固定変速モードへの切り替えは禁止されるから、固定変速モードから無段変速モードへの変速モードの切り替えも生じない。即ち、ロック機構500が非正常状態から正常状態へ復帰して変速モードとして無段変速モードのみが許可されると、フェールセーフ制御はステップS101とステップS103との間をループするのみとなり、実質的にその役割を終了する。
【0140】
以上説明したように、本実施形態に係るフェールセーフ制御によれば、ロック機構500が、サンギアS2をロック状態から非ロック状態へ移行させることが可能な正常状態になく、且つ変速モードとして固定変速モードが選択されているフェールセーフ要求期間において、モータジェネレータMG2における電力回生量が増加側に補正される。
【0141】
このため、固定変速モード下で、例えばエンジン200側の制約等によりハイブリッド車両1がEV走行状態を採る期間が長期にわたったとしても、次回発進時にハイブリッド車両1を発進させるのに必要な電力をバッテリ12に十分確保しておくことが可能となる。このため、次回発進時にハイブリッド車両1を確実に発進させることができる。このように再発進の確実性が担保されることにより、退避走行の自由度及び安全性はより向上し、好適なフェールセーフが実現されるのである。
【0142】
尚、本実施形態に係るフェールセーフ制御では、ステップS102に係る判定処理において、ロック機構500が正常状態にない旨の判定が下された場合には、変速モードは既に固定変速モードに移行している。従って、本発明に係る「ロック機構が正常状態にないと判別され且つ変速モードとして固定変速モードが選択されるフェールセーフ要求期間」とは、ロック機構500が正常状態にないと判別されている期間、即ち、解放不可フラグがオン状態に制御される期間と同等である。然るに、実践的運用面においては、ロック機構500が正常状態にあるか否かを、サンギアS2をロック状態に移行させることなく判別することができる場合(例えば、アクチュエータ507が明らかに故障している、等の場合)もあり、そのような場合には、そのような判定が下された時点で固定変速モードへの切り替えを禁止すれば、敢えて回生マップを基準回生マップからフェールセーフ用回生マップに切り替える必要は生じないのである。
【0143】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明は、無段変速モードと固定変速モードとの間で変速モードを切り替え可能なハイブリッド車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0145】
1…ハイブリッド車両、10…ハイブリッド駆動装置、100…ECU、200…エンジン、300…入力軸、400…動力分割機構、MG1…モータジェネレータ、MG2…モータジェネレータ、500…ロック機構、600…駆動軸、700…MG2変速機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
第1回転要素、車軸に繋がる駆動軸に連結された第2回転要素及び前記内燃機関に連結された第3回転要素を含む相互に差動回転可能な複数の回転要素を備えた動力伝達機構と、
前記第1回転要素に連結され、前記内燃機関の回転速度を調整可能な第1電動発電機と、
前記駆動軸との間で動力の入出力が可能に構成された第2電動発電機と、
前記第1及び第2電動発電機の電源として機能し且つ前記第1及び第2電動発電機における電力回生により充電可能な蓄電手段と、
前記動力伝達機構に備わる一の前記回転要素の状態を回転不能なロック状態と回転可能な非ロック状態との間で選択的に切り替え可能に構成されると共に、(1)前記一の回転要素を前記非ロック状態とすることにより前記内燃機関の回転速度と前記駆動軸の回転速度との比たる変速比が連続的に可変とされる無段変速モードを、また(2)前記一の回転要素を前記ロック状態とすることにより前記変速比が固定される固定変速モードを、夫々変速モードとして選択可能なロック機構と
を備えたハイブリッド車両を制御する装置であって、
前記ロック機構が前記固定変速モードから前記無段変速モードへ前記変速モードを切り替え可能な正常状態にあるか否かを判別する判別手段と、
前記ロック機構が前記正常状態にないと判別され且つ前記変速モードとして前記固定変速モードが選択されるフェールセーフ要求期間において、前記第2電動発電機の電力回生量を前記ロック機構が前記正常状態にある場合と較べて増加側へ補正する補正手段と
を具備することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
所定の回生条件に基づいて前記電力回生量を制御する第1制御手段を更に具備し、
前記補正手段は、(1)前記蓄電手段の目標充電量、(2)時間当りの前記電力回生量及び(3)前記第2電動発電機の電力回生頻度の少なくとも一つを補正し、
前記第1制御手段は、前記回生条件として前記補正された少なくとも一つに基づいて前記電力回生量を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記ロック機構が前記正常状態にない旨をドライバに報知する報知手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記ハイブリッド車両は、走行モードとして、前記ハイブリッド車両の要求駆動力を前記第2電動機から前記駆動軸への動力供給により賄うEV走行モードを選択可能であり、
前記ハイブリッド車両の制御装置は、
前記フェールセーフ要求期間において前記内燃機関の回転速度が下限値以下となる場合に前記内燃機関の機関動作を停止させる停止手段と、
前記機関動作の停止に伴って前記走行モードが前記EV走行モードに切り替わるように前記第2電動発電機を制御する第2制御手段と
を更に具備する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記機関動作の停止後に前記内燃機関の回転速度が前記下限値より大きい基準値以上に達するか又は前記内燃機関の回転速度が継続して前記下限値より大きい回転速度範囲に滞留した場合に、前記内燃機関を再始動させる始動手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
前記内燃機関を再始動させる場合に、前記内燃機関を再始動させるにあたって生じる振動が抑制されるように前記第1電動発電機を制御する第3制御手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項5に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
前記判別手段は、所定周期で前記ロック機構が前記正常状態にあるか否かを判別し、
前記ハイブリッド車両の制御装置は、
前記走行モードとして前記EV走行モードが選択されている場合において前記ロック機構が前記正常状態へ復帰したと判別された場合に前記変速モードを前記無段変速モードへ切り替える切り替え手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
前記ロック機構が前記正常状態にないと判別された場合に前記無段変速モードから前記固定変速モードへの前記変速モードの切り替えを禁止する禁止手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項9】
前記フェールセーフ要求期間において前記ハイブリッド車両に後進走行が要求された場合に、前記ハイブリッド車両の車速を所定値以下に制限する制限手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−63063(P2011−63063A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213445(P2009−213445)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】