ハイブリッド車両の制御装置
【課題】走行中、モータ走行モードによる走行領域を拡大し、回生エネルギーの回収量向上と燃費の向上を図ること。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置は、エンジンENGと、モータジェネレータMGと、プライマリプーリ31と、セカンダリプーリ32と、第1クラッチCL1と、第2クラッチCL2と、エンジン始動制御手段(図6)と、を備える。エンジン始動制御手段(図6)は、モータ走行モードからのエンジン始動時、第2クラッチCL2を開放してプライマリプーリ31およびセカンダリプーリ32をモータジェネレータMGから切り離した状態で、第1クラッチCL1を締結し、プライマリプーリ31およびセカンダリプーリ32に蓄積されたエネルギーを使ってエンジンENGを始動する。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置は、エンジンENGと、モータジェネレータMGと、プライマリプーリ31と、セカンダリプーリ32と、第1クラッチCL1と、第2クラッチCL2と、エンジン始動制御手段(図6)と、を備える。エンジン始動制御手段(図6)は、モータ走行モードからのエンジン始動時、第2クラッチCL2を開放してプライマリプーリ31およびセカンダリプーリ32をモータジェネレータMGから切り離した状態で、第1クラッチCL1を締結し、プライマリプーリ31およびセカンダリプーリ32に蓄積されたエネルギーを使ってエンジンENGを始動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ走行モードからエンジン始動制御を経過してエンジンを用いる走行モードへモード遷移するハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車両の制御装置としては、駆動系にエンジンとモータジェネレータとベルト式無段変速機を備え、走行モードとして、モータジェネレータのみを用いるモータ走行モードを含む、複数の走行モードを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−224714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のハイブリッド車両の制御装置にあっては、モータジェネレータのみを用いるモータ走行モード中、エンジン始動要求があったらモータジェネレータをエンジン始動モータとしてエンジンを始動するようにしている。したがって、モータ走行モード中、エンジン始動に備えてモータ出力からエンジントルクを残す必要がある。つまり、走行トルク(駆動トルク)とエンジン始動トルクを加えたトルクが、モータ最大トルク以上になると、自動的にモータ走行モードからエンジン始動制御を経過し、エンジンを用いる走行モードへモード遷移する必要があった。このため、モータ走行モードによる走行領域を狭くしてしまい、十分な燃費の向上を望めない、という問題があった。
【0005】
特に、大排気量のエンジンを搭載したハイブリッド車両では、停止しているエンジンをクランキングさせるのに必要なトルク(エンジン始動トルク)が大きくなり、モータ走行モードによる走行領域を狭くする大きな原因となっていた。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、走行中、モータ走行モードによる走行領域を拡大し、回生エネルギーの回収量向上と燃費の向上を図ることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド車両の制御装置では、エンジンと、モータジェネレータと、慣性体と、第1クラッチと、第2クラッチと、エンジン始動制御手段と、を備える手段とした。
前記慣性体は、前記モータジェネレータのみによるモータ走行モードにて前記モータジェネレータからのエネルギーを蓄積する。
前記第1クラッチは、前記慣性体と前記エンジンを断接する。
前記第2クラッチは、前記慣性体と前記モータジェネレータを断接する。
前記エンジン始動制御手段は、前記モータ走行モードからのエンジン始動時、前記第2クラッチを開放して慣性体を前記モータジェネレータから切り離した状態で、前記第1クラッチを締結し、前記慣性体に蓄積されたエネルギーを使って前記エンジンを始動する。
【発明の効果】
【0008】
よって、モータ走行モードからのエンジン始動時、エンジン始動制御手段において、第2クラッチを開放して慣性体をモータジェネレータから切り離した状態で、第1クラッチを締結し、慣性体に蓄積されたエネルギーを使ってエンジンが始動される。
すなわち、走行中、慣性体に蓄積されたエネルギー(イナーシャトルク)を、エンジン始動トルクとして使うことで、エンジンを始動するようにしている。
したがって、モータ走行モードによる走行中、モータジェネレータをエンジン始動モータとする場合のように、モータジェネレータの出力から、エンジン始動に備えてエンジン始動トルクを残しておく必要がない。このため、例えば、慣性体に蓄積されたエネルギー(イナーシャトルク)と、モータジェネレータの余剰トルクと、によってエンジン始動トルクの確保が見込める間は、エンジンを停止したままのモータ走行モードを維持することが可能となる。
この結果、走行中、モータ走行モードによる走行領域が拡大され、エンジン負荷のない回生頻度が高くなることによる回生エネルギーの回収量の向上と、エンジンを停止する頻度が高くなることによる燃費の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の制御装置が適用された前輪駆動によるハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【図2】実施例1の統合コントローラ10にて実行される走行モード遷移制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施例1の走行モード遷移制御処理においてモータ出力限界の判断に用いられる走行トルクとエンジン始動トルクとモータ最大トルクの関係を示すモータトルク特性図である。
【図4】実施例1の走行モード遷移制御処理においてエンジン始動限界の判断に用いられるプーリ回転数とプーリ比とイナーシャトルクの関係を示すイナーシャトルクマップ図である。
【図5】実施例1の走行モード遷移制御処理におけるモータ出力走行制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例1の走行モード遷移制御処理におけるエンジン始動制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】実施例1の走行モード遷移制御処理におけるエンジン出力走行制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】発進時のモータ発進モードにおけるハイブリッド駆動系でのトルク流れ作用を示す発進モード作用説明図である。
【図9】走行時のモータ走行モードにおけるハイブリッド駆動系でのトルク流れ作用を示す走行モード作用説明図である。
【図10】回生時のモータ回生モードにおけるハイブリッド駆動系でのトルク流れ作用を示す回生モード作用説明図である。
【図11】エンジン始動時のパターン1におけるハイブリッド駆動系でのトルク流れ作用を示すパターン1始動作用説明図である。
【図12】エンジン始動時のパターン2におけるハイブリッド駆動系でのトルク流れ作用を示すパターン2始動作用説明図である。
【図13】エンジン始動時のパターン3におけるハイブリッド駆動系でのトルク流れ作用を示すパターン3始動作用説明図である。
【図14】エンジン走行時のエンジン走行モードにおけるハイブリッド駆動系でのトルク流れ作用を示す走行モード作用説明図である。
【図15】ハイブリッド走行時のハイブリッド走行モードにおけるハイブリッド駆動系でのトルク流れ作用を示す走行モード作用説明図である。
【図16】ハイブリッド駆動系の他例1を示すハイブリッド駆動系構成図である。
【図17】ハイブリッド駆動系の他例2を示すハイブリッド駆動系構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用された前輪駆動によるハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【0012】
実施例1のハイブリッド駆動系は、図1に示すように、エンジンENGと、モータジェネレータMGと、ベルト式無段変速機CVTと、固定ギヤ機構GTと、ファイナルデファレンシャルFDと、左前輪FL(駆動輪)と、右前輪FR(駆動輪)と、を備えている。
【0013】
このハイブリッド駆動系は、駆動力を駆動輪FL,FRへ伝達する駆動力伝達経路(以下、「ドライブライン」という。)として、
(a) エンジンENG→ベルト式無段変速機CVT→駆動輪FL,FR
(b) エンジンENG+モータジェネレータMG→ベルト式無段変速機CVT→駆動輪FL,FR
(c) エンジンENG+モータジェネレータMG→固定ギヤ機構GT→駆動輪FL,FR
(d) モータジェネレータMG→ベルト式無段変速機CVT→駆動輪FL,FR
(e) モータジェネレータMG→固定ギヤ機構GT→駆動輪FL,FR
を有する。
【0014】
前記エンジンEngは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジンコントローラ1からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御やスロットルバルブのバルブ開度制御や燃料カット制御、等が行われる。
【0015】
前記モータ/ジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータ/ジェネレータであり、モータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータ/ジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(力行)、ロータがエンジンEngや駆動輪から回転エネルギーを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、バッテリ4を充電することもできる(回生)。
【0016】
前記ベルト式無段変速機CVTは、変速機入力軸30に固定されたプライマリプーリ31と、変速機出力軸33に固定されたセカンダリプーリ32と、両プーリ31,32に掛け渡したベルト34と、を有する。実施例1では、プラマリプーリ31およびセカンダリプーリ32を慣性体とする。このベルト式無段変速機CVTは、ポンプ圧に基づいてプライマリプーリ圧とセカンダリプーリ圧を作り出し、このプーリ圧によりプライマリプーリ31の可動プーリとセカンダリプーリ32の可動プーリを軸方向に動かし、ベルト34のプーリ接触半径を変化させることで、プーリ比(変速比)を無段階に変更する。
【0017】
前記固定ギヤ機構GTは、ベルト式無段変速機CVTと並列に設けられ、ギヤ入力軸35とギヤ出力軸36との間のギヤ比を固定ギヤ比とする機構であり、この固定ギヤ機構GTは、固定ギヤ比を固定減速ギヤ比としている。この固定ギヤ機構GTは、ギヤ入力軸35に固定された第1ギヤ37と、アイドラー軸38に固定された第2ギヤ39と、ギヤ出力軸36に固定された第3ギヤ40と、を有する。
【0018】
前記ファイナルデファレンシャルFDは、第3ギヤ40に噛み合うファイナルギヤ41からの回転駆動力を、左ドライブシャフト42を介して左前輪FLに伝達し、右ドライブシャフト43を介して右前輪FRに伝達する。
【0019】
実施例1のハイブリッド駆動系は、図1に示すように、第1クラッチCL1と、第2クラッチCL2と、第3クラッチCL3と、第4クラッチCL4と、を備えている。
【0020】
前記第1クラッチCL1は、エンジンENGのエンジン出力軸44とベルト式無段変速機CVTの変速機入力軸30を断接する。この第1クラッチCL1としては、締結・開放・スリップ締結の制御が可能な摩擦クラッチが用いられる。
【0021】
前記第2クラッチCL2は、モータジェネレータMGのモータ軸45とベルト式無段変速機CVTの変速機入力軸30を断接する。
【0022】
前記第3クラッチCL3は、モータジェネレータMGのモータ軸45と固定ギヤ機構GTのギヤ入力軸35を断接する。
【0023】
前記第4クラッチCL4は、ベルト式無段変速機CVTの変速機出力軸33と、固定ギヤ機構GTのギヤ出力軸36を断接する。
【0024】
次に、ハイブリッド車両の制御系を説明する。
実施例1におけるハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、CVTコントローラ7と、第2〜4クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。なお、各コントローラ1,2,5,7,9と、統合コントローラ10とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線11を介して接続されている。
【0025】
前記エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報と、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、エンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する。
【0026】
前記モータコントローラ2は、モータ/ジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報と、統合コントローラ10からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報を入力する。そして、モータ/ジェネレータMGのモータ動作点(Nm,Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2は、トルク制御と回転数制御を行う。また、このモータコントローラ2は、バッテリ4の充電容量をあらわすバッテリSOCを監視していて、このバッテリSOC情報を、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
【0027】
前記第1クラッチコントローラ5は、第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの目標CL1トルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、第1クラッチCL1の締結・スリップ締結・開放を制御する指令を第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。
【0028】
前記CVTコントローラ7は、アクセル開度センサ16と、車速センサ17と、他のセンサ類18等からの情報を入力する。そして、Dレンジを選択しての走行時、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる目標入力回転数をシフトマップにより検索し、検索された目標入力回転数(プーリ比)を得る制御指令を出力する。他のセンサ類18として、プライマリプーリ回転数センサやセカンダリプーリ回転数センサなどを有する。そして、エンジン始動制御において、統合コントローラ10から変速制御指令が出力された場合、通常の変速制御に優先して変速制御を行う。また、統合コントローラ10からの目標CL2〜CL4トルク指令を入力すると、第2〜4クラッチCL2〜CL4の締結・開放を制御する指令を第2〜4クラッチ油圧ユニット8に出力する。
【0029】
前記ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19と、ブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの回生協調制御指令と、他の必要情報を入力する。そして、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモータ制動力)で補うように、回生協調ブレーキ制御を行う。
【0030】
前記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギーを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21や他のセンサ・スイッチ類22からの必要情報およびCAN通信線11を介して情報を入力する。そして、エンジンコントローラ1へ目標エンジントルク指令、モータコントローラ2へ目標MGトルク指令および目標MG回転数指令、第1クラッチコントローラ5へ目標CL1トルク指令、CVTコントローラ7へ目標CL2〜CL4トルク指令、ブレーキコントローラ9へ回生協調制御指令を出力する。
【0031】
図2は、実施例1の統合コントローラ10にて実行される走行モード遷移制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、図2の各ステップについて説明する。
【0032】
ステップS1では、走行開始によりスタートすると第1クラッチCL1を開放し、ステップS2へ進む。
【0033】
ステップS2では、ステップS1でのCL1開放、あるいは、ステップS5での車両走行であるとの判断、ステップS11でのエンジン停止に続き、図5のフローチャートにしたがってモータ出力走行制御を実行し、ステップS3へ進む。
【0034】
ステップS3では、ステップS2でのモータ出力走行制御に続き、モータ出力限界条件(走行トルクTd+エンジン始動トルクTe≧モータ最大トルクTMmax)が成立するか否かを判断する。YES(Td+Te≧TMmax)の場合はステップS4へ進み、NO(Td+Te<TMmax)の場合はステップS5へ進む。
すなわち、モータ最大トルクTMmaxは、図3に示すように、モータ回転数が高いほど低くなるというようにモータ回転数やモータ温度によって決まる値である。エンジン始動トルクTeは、モータ回転数などにかかわらず、エンジンENGの排気量などによって決まる固定値である。これに対し、走行トルクTdは、車両を駆動させるために使われるトルクであり、ドライバーの駆動力要求によって変わる値である。よって、高アクセル開度域や高車速域では、Td+Te≧TMmaxというモータ出力限界条件が成立する。
【0035】
ステップS4では、ステップS3でのTd+Te≧TMmaxであるとの判断に続き、エンジン始動限界条件(エンジン始動トルクTe≧モータトルク余剰分ΔTM+イナーシャ予測トルクTpm)が成立するか否かを判断する。YES(Te≧ΔTM+Tpm)の場合はステップS7へ進み、NO(Te<ΔTM+Tpm)の場合はステップS5へ進む。
ここで、モータトルク余剰分ΔTMは、判断時点でのモータ最大トルクTMmaxから走行トルクTdを差し引くことで算出される。イナーシャ予測トルクTpmは、判断時点でのプーリ回転数およびプーリ比に基づき、図4に示すイナーシャトルクマップを検索することにより求められる値である。つまり、イナーシャ予測トルクTpmは、現時点でエンジン始動を行ったと仮定した場合、プーリのイナーシャにより見込まれるイナーシャトルクの値である。
【0036】
ステップS5では、ステップS3でのTd+Te<TMmaxであるとの判断、あるいは、ステップS4でのTe<ΔTM+Tpmであるとの判断に続き、車両停止か否かを判断し、YES(車両停止)の場合はステップS6へ進み、NO(車両走行)の場合はステップS2へ戻る。
【0037】
ステップS6では、ステップS5での車両停止であるとの判断に続き、モータジェネレータMGを停止し、エンドへ進む。
【0038】
ステップS7では、ステップS4でのTe≧ΔTM+Tpmであるとの判断に続き、図6に示すフローチャートにしたがってエンジン始動制御を行い、ステップS8へ進む。
つまり、ステップS7では、エンジン始動限界条件の成立によるエンジン始動要求にしたがってエンジン始動制御を行う。
【0039】
ステップS8では、ステップS7でのエンジン始動制御、あるいは、ステップS9でのモータ出力余裕条件の不成立判断に続き、図7に示すフローチャートにしたがってエンジン出力走行制御を行い、ステップS9へ進む。
【0040】
ステップS9では、ステップS8でのエンジン出力走行制御に続き、モータ出力余裕条件(走行トルクTd+エンジン始動トルクTe<モータ最大トルクTMmax)が成立するか否かを判断する。YES(Td+Te<TMmax)の場合はステップS10へ進み、NO(Td+Te≧TMmax)の場合はステップS8へ戻る。
【0041】
ステップS10では、ステップS9でのTd+Te<TMmaxであるとの判断に続き、第1クラッチCL1を開放し、ステップS11へ進む。
【0042】
ステップS11では、ステップS10での第1クラッチCL1の開放に続き、エンジンENGを停止し、ステップS2へ戻る。
【0043】
図5は、実施例1の走行モード遷移制御処理におけるモータ出力走行制御処理(図2のステップS2)の流れを示すフローチャートである。以下、図5の各ステップについて説明する。
【0044】
ステップS201では、ステップS2に入っての処理開始、あるいは、ステップS205またはステップS207での回生要求無しの判断に続き、発進時か否かを判断する。YES(発進時)の場合はステップS203へ進み、NO(走行時)の場合はステップS202へ進む。
【0045】
ステップS202では、ステップS201での走行時であるとの判断に続き、ベルト式無段変速機CVTのプーリ比が固定ギヤ機構GTの固定ギヤ比に達したか否かを判断する。YES(プーリ比が固定ギヤ比に到達)の場合はステップS204へ進み、NO(プーリ比が固定ギヤ比に未達)の場合はステップS203へ進む。
【0046】
ステップS203では、ステップS201での発進時であるとの判断、あるいは、ステップS202でのプーリ比が固定ギヤ比に未達であるとの判断に続き、ベルト式無段変速機CVTをドライブラインに有するモータ発進モード(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)による走行とし、ステップS205へ進む。
【0047】
ステップS204では、ステップS202でのプーリ比が固定ギヤ比に到達したとの判断に続き、固定ギヤ機構GTをドライブラインに有するモータ走行モード(第2クラッチCL2:OFF、第3クラッチCL3:ON、第4クラッチCL4:ON)による走行とし、ステップS205へ進む。
【0048】
ステップS205では、ステップS203でのモータ発進モード、あるいは、ステップS204でのモータ走行モードに続き、減速/制動操作に基づく回生要求有りか否かを判断する。YES(回生要求有り)の場合はステップS206へ進み、NO(回生要求無し)の場合はステップS201へ戻る。
【0049】
ステップS206では、ステップS205での回生要求有りとの判断、あるいは、ステップS207での回生要求継続との判断に続き、ベルト式無段変速機CVTのプーリ回転を維持したままで、固定ギヤ機構GTを回生ラインに有するモータ回生モード(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:ON、第4クラッチCL4:OFF)による走行とし、ステップS207へ進む。
【0050】
ステップS207では、ステップS206でのモータ回生モードに続き、回生要求無しか否かを判断する。YES(回生要求無し)の場合はステップS201へ戻り、NO(回生要求継続)の場合はステップS206へ戻る。
【0051】
図6は、実施例1の走行モード遷移制御処理におけるエンジン始動制御処理(図2のステップS7)の流れを示すフローチャートである。以下、図6の各ステップについて説明する。
【0052】
ステップS701では、ステップS7に入っての処理開始に続き、プーリ比が固定ギヤ比に達する前のエンジン始動要求か否かを判断する。YES(モータ発進モードからのエンジン始動要求)の場合はステップS702へ進み、NO(モータ走行モードからのエンジン始動要求)の場合はステップS703へ進む。
【0053】
ステップS702では、ステップS701でのモータ発進モードからのエンジン始動要求であるとの判断に続き、モータジェネレータMGをエンジン始動モータとしてエンジンENGを始動するパターン1(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)によるエンジン始動を行い、ステップS709へ進む。
【0054】
ステップS703では、ステップS701でのモータ走行モードからのエンジン始動要求であるとの判断に続き、両プーリ31,32のイナーシャIpri,Isecによるイナーシャ発生トルクTpを算出し、ステップS704へ進む。
ここで、イナーシャ発生トルクTpの算出式は、
Tp=(1/2){Ipri・Δω2pri+Isec・(Δωpri/ip)2}・(1/Δt)・(60/2πNpri)
である。但し、Δtは回転同期時間、Δωpriは回転変動分角速度、Npriは回転減少後のプライマリプーリ回転数、ipはプーリ比である。
【0055】
ステップS704では、ステップS703でのイナーシャ発生トルクTpの算出に続き、算出したイナーシャ発生トルクTpが、エンジン始動トルクTeより大きいか否かを判断する。YES(Tp>Te)の場合はステップS708へ進み、NO(Tp≦Te)の場合はステップS705へ進む。
【0056】
ステップS705では、ステップS704でのTp≦Teであるとの判断に続き、両プーリ31,32によるイナーシャ発生トルクTp(慣性トルク)を、モータトルクのアシストトルクとしてエンジンENGを始動するパターン2(第2クラッチCL2:OFF、第3クラッチCL3:ON、第4クラッチCL4:ON)によるエンジン始動を行い、ステップS706へ進む。
【0057】
ステップS706では、ステップS705でのパターン2によるエンジン始動に続き、回転同期時間Δt(=第1クラッチCL1を締結する時間)中に降下するプライマリプーリ31の回転数を目標回転数ΔREVとし、この目標回転数ΔREVにより目標プーリ比ipを算出し、ステップS707へ進む。
すなわち、図4において、エンジン始動制御での回転同期時間Δt中に降下させることになるプライマリプーリ31の回転数を目標回転数ΔREVとする。そして、この目標回転数ΔREVの回転数降下があってもエンジン始動開始時のイナーシャ発生トルクTpを維持することができるプーリ比を目標プーリ比ipとする。なお、最大の目標回転数ΔREVは、現状プーリ比(固定ギヤ比と同じ)から最HIGHまでのプーリ比で決まる。
【0058】
ステップS707では、ステップS706での目標プーリ比ipの算出に続き、ベルト式無段変速機CVTのプーリ比ip(=固定ギヤ比)を、目標プーリ比ipにするように高プーリ比側へシフトし、ステップS709へ進む。
【0059】
ステップS708では、ステップS704でのTp>Teであるとの判断に続き、ベルト式無段変速機CVTの両プーリ31,32によるイナーシャトルクのみによってエンジンENGを始動するパターン3(第2クラッチCL2:OFF、第3クラッチCL3:ON、第4クラッチCL4:OFF)によるエンジン始動を行い、ステップS709へ進む。
【0060】
ステップS709では、ステップS702でのパターン1によるエンジン始動制御、あるいは、ステップS707でのパターン2によるエンジン始動制御、あるいは、ステップS708でのパターン3によるエンジン始動制御、あるいは、ステップS710でのΔtが経過していないとの判断に続き、第1クラッチCL1をスリップ締結し、ステップS710へ進む。
【0061】
ステップS710では、ステップS709でのCL1スリップ締結に続き、回転同期時間Δtを経過したか否かを判断し、YES(Δtを経過した)の場合はステップS711へ進み、NO(Δtを経過していない)の場合はステップS709へ戻る。
【0062】
ステップS711では、ステップS710での回転同期時間Δtを経過したとの判断に続き、第1クラッチCL1を締結し、エンドへ進む。
【0063】
図7は、実施例1の走行モード遷移制御処理におけるエンジン出力走行制御処理(図2のステップS8)の流れを示すフローチャートである。以下、図7の各ステップについて説明する。
【0064】
ステップS801では、図6のフローチャートにしたがってエンジン始動が完了すると、要求駆動トルクTd*が、設定駆動トルクTdo以上であるか否かを判断する。YES(Td*≧Tdo)の場合はステップS806へ進み、NO(Td*<Tdo)の場合はステップS802へ進む。
ここで、要求駆動トルクは、アクセル開度APOや車速VSPから算出される。設定駆動トルクTdoは、エンジンENGのみでの駆動力では駆動力不足になるトルク値に設定される。
【0065】
ステップS802では、ステップS801でのTd*<Tdoであるとの判断に続き、エンジンENGを駆動源とし、ドライブラインにベルト式無段変速機CVTを有するエンジン走行モード(第2クラッチCL2:OFF、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)による走行とし、ステップS803へ進む。
【0066】
ステップS803では、ステップS802でのエンジン走行モードによる走行に続き、発電要求有りか否かを判断する。YES(発電要求有り)の場合はステップS804へ進み、NO(発電要求無し)の場合はステップS801へ戻る。
【0067】
ステップS804では、ステップS803での発電要求有りとの判断、あるいは、ステップS805での発電要求継続判断に続き、エンジンENGからの出力の一部を発電に用いるエンジン走行発電モード(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)による走行とし、ステップS805へ進む。
【0068】
ステップS805では、ステップS804でのエンジン走行発電モードによる走行に続き、発電要求無しか否かを判断する。YES(発電要求無し)の場合はステップS801へ戻り、NO(発電要求継続)の場合はステップS804へ戻る。
【0069】
ステップS806では、ステップS801でのTd*≧Tdoであるとの判断に続き、エンジンENGとモータジェネレータMGを駆動源とし、ドライブラインにベルト式無段変速機CVTを有するハイブリッド走行モード(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)による走行とし、ステップS801へ戻る。なお、ハイブリッド走行モードの選択時に発電要求があった場合は、クラッチ締結/開放の関係はそのままで発電要求に応える。
【0070】
次に、作用を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の制御装置における作用を、「走行モード遷移制御作用」、「モータ出力走行制御作用」、「エンジン始動制御作用」、「エンジン出力走行制御作用」に分けて説明する。
【0071】
[走行モード遷移制御作用]
車両走行を開始すると、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3へと進み、モータ出力走行制御が開始される。そして、ステップS3にてモータ出力限界条件が不成立であると判断されるとステップS5へ進み、モータ出力限界条件が不成立である間、ステップS2→ステップS3→ステップS5へと進む流れが繰り返され、ステップS2でのモータ出力走行制御が維持される。
【0072】
このモータ出力走行制御中にステップS3のモータ出力限界条件が成立すると、ステップS3からステップS4へ進み、ステップS4にてエンジン始動限界条件が判断される。そして、エンジン始動限界条件が不成立である間、ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5へと進む流れが繰り返され、ステップS2でのモータ出力走行制御が維持される。
【0073】
さらに、モータ出力走行制御中にモータ出力限界条件とエンジン始動限界条件が共に成立するとエンジン始動要求が出され、図2のフローチャートにおいて、ステップS4からステップS7へ進み、ステップS7にてエンジン始動制御が行われる。そして、エンジン始動が完了すると、ステップS7からステップS8→ステップS9へと進み、ステップS8にてエンジン出力走行制御が開始され、走行モードがモータ出力走行モードからエンジン出力走行モードへとモード遷移する。
【0074】
このエンジン出力走行制御中において、ステップS9でのモータ出力余裕条件が不成立の間、ステップS8→ステップS9へと進む流れが繰り返され、エンジン出力走行制御が維持される。そして、ステップS9でのモータ出力余裕条件が成立すると、ステップS9からステップS10へ進み、第1クラッチCL1が開放され、さらに、ステップS11へ進み、エンジンENGが停止され、ステップS2に戻り、走行モードがエンジン出力走行モードからモータ出力走行モードへとモード遷移する。この走行モード遷移動作は、車両走行中に繰り返される。なお、モータ出力走行制御中に車両停止が判断されると、図2のフローチャートにおいて、ステップS5からステップS6へ進み、モータジェネレータMGを停止して走行モード遷移制御を終了する。
【0075】
実施例1では、モータ出力走行モードからのエンジン始動時、ステップS7のエンジン始動制御において、第2クラッチCL2を開放して慣性体であるベルト式無段変速機CVTの両プーリ31,32をモータジェネレータMGから切り離した状態とする。そして、第1クラッチCL1を締結し、走行中、両プーリ31,32に蓄積されたエネルギー(イナーシャトルク)を、エンジン始動トルクとして使うことで、エンジンENGを始動するようにしている。
【0076】
したがって、モータ出力走行モードによる走行中、モータジェネレータをエンジン始動モータとする場合のように、モータジェネレータMGの出力から、エンジン始動に備えてエンジン始動トルクTeを残しておく必要がない。
例えば、モータジェネレータをエンジン始動モータとする場合には、ステップS3のモータ出力限界条件が成立すると、直ちにエンジン始動要求を出し、エンジン始動制御を開始する必要がある。このため、例えば、バッテリ容量に余裕があり、モータ出力走行モードを維持できるような走行状態であっても、エンジン出力走行モードへのモード遷移を余儀なくされていた。
【0077】
これに対し、実施例1では、ステップS3のモータ出力限界条件が成立しても、ステップS4でのエンジン始動限界条件が不成立である間は、エンジンENGを停止したままのモータ出力走行モードを維持することができる。その理由は、実施例1では、両プーリ31,32のイナーシャトルクをエンジン始動トルクとして使うようにした。このため、イナーシャ予測トルクTpmとモータジェネレータMGの余剰トルクΔTMの和によってエンジン始動トルクTeの確保が見込める間は、エンジン出力走行モードへモード遷移する必要がないことによる。この結果、走行中、モータ出力走行モードによる走行領域が拡大され、エンジン負荷のない回生頻度が高くなることによる回生エネルギーの回収量の向上と、エンジンENGを停止する頻度が高くなることによる燃費の向上が図られる。
【0078】
実施例1では、ベルト式無段変速機CVTのプライマリプーリ31およびセカンダリプーリ32を慣性体として用いる構成を採用した。
したがって、慣性体として、別部品によるフライホイールを追加する必要が無く、コスト的にもスペース的にも有利としながら、エンジン始動に用いるイナーシャトルクが得られる。
【0079】
[モータ出力走行制御作用]
第1クラッチCL1を開放し、車両を発進させると、図5のフローチャートにおいて、ステップS201→ステップS203へと進む。このステップS203では、ベルト式無段変速機CVTをドライブラインに有するモータ発進モード(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)による走行とされる。そして、次の制御周期からベルト式無段変速機CVTのプーリ比が固定ギヤ比に達するまでの間は、図5のフローチャートにおいて、ステップS201→ステップS202→ステップS203→ステップS205へと進む流れが繰り返され、モータ発進モードによる走行が維持される。
【0080】
このモータ発進モードの選択時には、図8の矢印に示すエネルギーフローとなり、減速プーリ比によるベルト式無段変速機CVTをドライブラインに通すことで、モータジェネレータMGによるモータトルクを増幅した駆動トルクが駆動輪FL,FRに伝達され、発進性が確保される。
【0081】
そして、モータ発進モードでの走行を続け、ベルト式無段変速機CVTのプーリ比が固定ギヤ比まで達すると、図5のフローチャートにおいて、ステップS201→ステップS202→ステップS204→ステップS205へと進む流れが繰り返される。このステップS204では、固定ギヤ機構GTをドライブラインに有するモータ走行モード(第2クラッチCL2:OFF、第3クラッチCL3:ON、第4クラッチCL4:ON)による走行とされる。
【0082】
このモータ走行モードの選択時には、図9の矢印に示すエネルギーフローとなり、固定減速比による固定ギヤ機構GTをドライブラインに通すことで、ベルト式無段変速機CVTに比べトルク伝達損失を抑えながら、モータジェネレータMGによるモータトルクを増幅した駆動トルクが駆動輪FL,FRに伝達され、走行性が確保される。なお、このモータ走行モードにおいては、エンジン始動制御に備え、第4クラッチCL4の締結によりベルト式無段変速機CVTの回転動作を確保しておく。このとき、ベルト式無段変速機CVTのプーリ比は、固定ギヤ機構GTの固定ギヤ比と同じ比にしておく。これにより、モータジェネレータMGの回転数とプライマリプーリ31の回転数が同じ回転数となる。
【0083】
一方、モータ発進モードやモータ走行モードでの走行中に、ドライバーが減速操作や制動操作を行うことで、回生要求があると、図5のフローチャートにおいて、テップS205からステップS206→ステップS207へと進む。このステップS206では、ベルト式無段変速機CVTのプーリ回転を維持したままで、固定ギヤ機構GTを回生ラインに有するモータ回生モード(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:ON、第4クラッチCL4:OFF)による走行とされる。そして、ステップS207にて回生要求無しと判断されるまでステップS206→ステップS207へと進む流れが繰り返され、モータ回生モードが維持される。
【0084】
このモータ回生モードの選択時には、図10の矢印に示すエネルギーフローとなり、固定減速比による固定ギヤ機構GTを回生ラインに通すことで、ベルト式無段変速機CVTに比べトルク伝達損失を抑えながら、駆動輪FL,FRの回転を増速した増速回転がモータジェネレータMGに入力されることで、高い回生効率が確保される。なお、このモータ回生モードにおいても、エンジン始動制御に備え、第2クラッチCL2の締結によりベルト式無段変速機CVTの回転動作を確保しておく。
【0085】
[エンジン始動制御作用]
エンジン始動制御は、エンジン始動パターン1(図11)とエンジン始動パターン2(図12)とエンジン始動パターン3(図13)の3パターン存在する。
【0086】
(エンジン始動パターン1)
ベルト式無段変速機CVTのプーリ比が、固定ギヤ比まで達する前にエンジン始動要求が出された場合は、図6のフローチャートにおいて、ステップS701→ステップS702→ステップS709→ステップS710へと進む。そして、ステップS702では、モータジェネレータMGをエンジン始動モータとしてエンジンENGを始動するパターン1(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)によるエンジン始動が行われる。そして、回転同期時間Δtを経過するまでは、ステップS709→ステップS710へと進む流れが繰り返され、第1クラッチCL1がスリップ締結される。回転同期時間Δtを経過すると、ステップS711へ進み、第1クラッチCL1を締結し、エンジン始動を完了する。
【0087】
このエンジン始動パターン1では、図11の矢印に示すエネルギーフローとなり、モータジェネレータMGからの出力の一部が、第2クラッチCL2の締結により、ベルト式無段変速機CVTおよび第4クラッチCL4を介して駆動輪FL,FRに伝達される。同時に、モータジェネレータMGからの出力の残りが、第1クラッチCL1をスリップ締結することによりエンジンENGに伝達され、エンジンENGを始動する。
【0088】
(エンジン始動パターン2)
ベルト式無段変速機CVTのプーリ比が、固定ギヤ比まで達した後にエンジン始動要求が出され、かつ、イナーシャ発生トルクTpがエンジン始動トルクTe以下の場合は、図6のフローチャートにおいて、ステップS701→ステップS703→ステップS704→ステップS705→ステップS706→ステップS707→ステップS709→ステップS710へと進む。そして、ステップS705では、両プーリ31,32によるイナーシャ発生トルクTpを、モータトルクのアシストトルクとしてエンジンENGを始動するパターン2(第2クラッチCL2:OFF、第3クラッチCL3:ON、第4クラッチCL4:ON)によるエンジン始動が行われる。
【0089】
このエンジン始動中、ステップS706とステップS707により、ベルト式無段変速機CVTのプーリ比ipをハイ側にシフトさせる変速制御が併せて行われる。つまり、ステップS706では、回転同期時間Δt中に降下するプライマリプーリ31の回転数が目標回転数ΔREVとされ、この目標回転数ΔREVにより目標プーリ比ipが算出される。ステップS707では、ベルト式無段変速機CVTのプーリ比ip(=固定ギヤ比)を、目標プーリ比ipにするように高プーリ比側へシフトさせる変速制御が行われる。
【0090】
そして、回転同期時間Δtを経過するまでは、ステップS709→ステップS710へと進む流れが繰り返され、第1クラッチCL1がスリップ締結される。回転同期時間Δtを経過すると、ステップS711へ進み、第1クラッチCL1を締結し、エンジン始動を完了する。
【0091】
このエンジン始動パターン2では、図12の矢印に示すエネルギーフローとなり、モータジェネレータMGからの出力の一部が、第3クラッチCL3の締結により、固定ギヤ機構GTを介して駆動輪FL,FRに伝達される。同時に、モータジェネレータMGからの出力の残りが、第4クラッチCL4を締結し、第1クラッチCL1をスリップ締結することにより、エンジンENGに伝達され、エンジンENGを始動する。このとき、目標回転数ΔREV分の回転降下をキャンセルするため、ベルト式無段変速機CVTをハイ側にシフトする。
【0092】
つまり、Tp≦Teのときには、ベルト式無段変速機CVTの両プーリ31,32によるイナーシャだけでエンジンENGを始動できないため、当然、モータジェネレータMGのトルクでエンジン始動が行なわれる。しかし、エンジン始動パターン2におけるエンジン方向に流れるトルクは、固定ギヤ機構GTと、ハイシフトされたベルト式無段変速機CVTと、を通るため、2段階にトルクが増幅され、小さいモータトルクで、エンジン始動が行なわれる。その後、第3クラッチCL3を切ることで、図14のエンジン走行モードになる。
【0093】
(エンジン始動パターン3)
ベルト式無段変速機CVTのプーリ比が、固定ギヤ比まで達した後にエンジン始動要求が出され、かつ、イナーシャ発生トルクTpがエンジン始動トルクTeよりも大きい場合は、図6のフローチャートにおいて、ステップS701→ステップS703→ステップS704→ステップS708→ステップS709→ステップS710へと進む。そして、ステップS708では、ベルト式無段変速機CVTの両プーリ31,32によるイナーシャトルクのみによってエンジンENGを始動するパターン3(第2クラッチCL2:OFF、第3クラッチCL3:ON、第4クラッチCL4:OFF)によるエンジン始動が行われる。
【0094】
そして、回転同期時間Δtを経過するまでは、ステップS709→ステップS710へと進む流れが繰り返され、第1クラッチCL1がスリップ締結される。回転同期時間Δtを経過すると、ステップS711へ進み、第1クラッチCL1を締結し、エンジン始動を完了する。
【0095】
このエンジン始動パターン3では、図13の矢印に示すエネルギーフローとなり、モータジェネレータMGからの出力が、第3クラッチCL3の締結により、固定ギヤ機構GTを介して駆動輪FL,FRに伝達される。そして、第2クラッチCL2と第4クラッチCL4を開放していることにより、モータ駆動系から、エンジンENGおよびベルト式無段変速機CVTが完全に切り離される。したがって、モータ駆動系から切り離され、十分に回転が上昇しているベルト式無段変速機CVTによるイナーシャトルクを利用し、第1クラッチCL1をスリップ締結することにより、エンジンENGが始動される。
【0096】
このとき、モータジェネレータMGからの駆動トルクで走行しているため、車両加速度は落ちない。また、エンジンENGを始動した後、ベルト式無段変速機CVTのプーリ比を固定ギヤ比に戻し、駆動軸の回転にあわせる。その後、第4クラッチCL4を締結し、第3クラッチCL3を開放する。この状態で、図14に示すエンジン走行モードになる。
【0097】
[エンジン出力走行制御作用]
エンジン始動が完了したとき、要求駆動トルクTd*が設定駆動トルクTdo未満であると、図7のフローチャートにおいて、ステップS801→ステップS802へと進み、エンジンENGを駆動源とし、ドライブラインにベルト式無段変速機CVTを有するエンジン走行モード(第2クラッチCL2:OFF、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)による走行とされる。そして、要求駆動トルクTd*が設定駆動トルクTdo未満で、かつ、発電要求がない限り、図7のフローチャートにおいて、ステップS801→ステップS802→ステップS803へ進む流れが繰り返され、エンジン走行モードが維持される。
【0098】
このエンジン走行モードの選択時には、図14の矢印に示すエネルギーフローとなり、第1クラッチCL1と第4クラッチCL4の締結により、エンジンENGからの出力が、ベルト式無段変速機CVTを経過して駆動輪FL,FRに伝達され、エンジン走行による加速性などが確保される。
【0099】
エンジン走行モードでの走行中に発電要求が出されると、ステップS803からステップS804→ステップS805へと進み、発電要求の継続時間、ステップS804→ステップS805へと進む流れが繰り返される。すなわち、ステップS804では、エンジンENGからの出力の一部を発電に用いるエンジン走行発電モード(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)による走行とされる。
し、ステップS805へ進む。
このエンジン走行モードの選択時には、図14の矢印に示すエネルギーフロー状態において、第2クラッチCL2を締結することにより、エンジンENGからの出力の一部を発電に用いることができる。
【0100】
エンジン走行モードでの走行中、ドライバーによる加速操作などにより、要求駆動トルクTd*が設定駆動トルクTdo以上になると、図7のフローチャートにおいて、ステップS801→ステップS806へと進む流れが繰り返される。そして、ステップS806では、エンジンENGとモータジェネレータMGを駆動源とし、ドライブラインにベルト式無段変速機CVTを有するハイブリッド走行モード(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)による走行とされる。
【0101】
このハイブリッド走行モードの選択時には、図15の矢印に示すエネルギーフローとなり、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2と第4クラッチCL4の締結により、エンジンENGとモータジェネレータMGからの出力が、ベルト式無段変速機CVTを経過して駆動輪FL,FRに伝達され、ハイブリッド走行による高い加速性が確保される。そして、このハイブリッド走行モードの選択時に発電要求があった場合は、クラッチ締結/開放の関係はそのままで発電要求に応えることができる。
【0102】
なお、ハイブリッド走行モードにおいて、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2と第3クラッチCL3の締結(第4クラッチCL4開放)により、エンジンENGとモータジェネレータMGからの出力が、固定ギヤ機構GTを経過して駆動輪FL,FRに伝達されるモードを追加しても良い。
【0103】
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0104】
(1) エンジンENGと、
モータジェネレータMGと、
前記モータジェネレータMGのみによるモータ走行モードにて前記モータジェネレータMGからのエネルギーを蓄積する慣性体(プーリ31,32)と、
前記慣性体(プーリ31,32)と前記エンジンENGを断接する第1クラッチCL1と、
前記慣性体(プーリ31,32)と前記モータジェネレータMGを断接する第2クラッチCL2と、
前記モータ走行モードからのエンジン始動時、前記第2クラッチCL2を開放して慣性体(プーリ31,32)を前記モータジェネレータMGから切り離した状態で、前記第1クラッチCL1を締結し、前記慣性体(プーリ31,32)に蓄積されたエネルギーを使って前記エンジンENGを始動するエンジン始動制御手段(図6)と、
を備える。
このため、走行中、モータ走行モードによる走行領域を拡大し、回生エネルギーの回収量向上と燃費の向上を図ることができる。
【0105】
(2) 変速機入力軸30に固定されたプライマリプーリ31と、変速機出力軸33に固定されたセカンダリプーリ32と、両プーリ31,32に掛け渡したベルト34と、を有するベルト式無段変速機CVTを有し、
前記慣性体は、前記プラマリプーリ31および前記セカンダリプーリ32である。
このため、(1)の効果に加え、慣性体として、別部品によるフライホイールを追加する必要が無く、コスト的にもスペース的にも有利としながら、エンジン始動に用いるイナーシャトルクを得ることができる。
【0106】
(3) 前記エンジン始動制御手段(図6)は、エンジン始動要求時、前記両プーリ31,32で発生可能なイナーシャ発生トルクTpが、前記エンジンENGを始動するのに必要なエンジン始動トルクTeよりも大きいか否かを判断し(ステップS704)、前記イナーシャ発生トルクTpが前記エンジン始動トルクTeよりも大きいと判断された場合、イナーシャ発生トルクTpのみにより前記エンジンENGを始動し(ステップS708)、前記イナーシャ発生トルクTpが前記エンジン始動トルクTe以下と判断された場合、前記両プーリ31,32がモータ走行モードのドライブラインと繋がっている状態で前記エンジンENGを始動する(ステップS705)。
このため、(1)または(2)の効果に加え、イナーシャ発生トルクTpとエンジン始動トルクTeの大きさ判断を行うことで、モータトルクを用いることなくエンジン始動を行う際、確実にエンジンENGを始動することができる。加えて、イナーシャ発生トルクTpがエンジン始動トルクTe以下であっても、イナーシャ発生トルクTpを用い、モータトルクを小さく抑えてエンジン始動を行うことで、モータ走行モードによる走行領域を拡大することができる。
【0107】
(4) 前記エンジン始動制御手段(図6)は、前記両プーリ31,32がモータ走行モードのドライブラインと繋がっている状態で前記エンジンENGを始動する際、前記ベルト式無段変速機CVTのプーリ比ipを高プーリ比側にシフトする変速を行う。
このため、(3)の効果に加え、駆動力(加速度)に影響を与えず、イナーシャ発生トルクTpがエンジン始動トルクTe以下のとき、確実にエンジンENGを始動することができる。
【0108】
(5) 前記エンジン始動制御手段(図6)は、エンジン始動パターンとして、
・前記モータジェネレータMGをエンジン始動モータとして前記エンジンENGを始動するパターン1(ステップS702)と、
・前記慣性体(プーリ31,32)による慣性トルクをモータトルクのアシストトルクとして前記エンジンENGを始動するパターン2(ステップS705)と、
・前記慣性体(プーリ31,32)による慣性トルクのみによって前記エンジンENGを始動するパターン3(ステップS708)と、
を有する。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、ドライバーの要求駆動力や現在の車速VSPやモータ回転などを考慮してエンジン始動パターンを選択するというように、高い選択自由度を持つことで、走行要求や車両状態に合わせてエンジンENGを始動することができる。
【0109】
(6) ハイブリッド駆動系に、エンジンENGと、モータジェネレータMGと、ベルト式無段変速機CVTと、固定ギヤ機構GTと、駆動輪FL,FRと、を有し、
前記固定ギヤ機構GTは、前記ベルト式無段変速機CVTと並列に設けられ、ギヤ入力軸35とギヤ出力軸36との間のギヤ比を固定ギヤ比とする機構であり、
駆動力を駆動輪FL,FRへ伝達するドライブラインとして、
(a) エンジンENG→ベルト式無段変速機CVT→駆動輪FL,FR
(b) エンジンENG+モータジェネレータMG→ベルト式無段変速機CVT→駆動輪FL,FR
(c) エンジンENG+モータジェネレータMG→固定ギヤ機構GT→駆動輪FL,FR
(d) モータジェネレータMG→ベルト式無段変速機CVT→駆動輪FL,FR
(e) モータジェネレータMG→固定ギヤ機構GT→駆動輪FL,FR
を有する。
このため、(2)〜(5)の効果に加え、高いドライブラインの選択自由度により、ドライバーの要求駆動力を満たしつつ、燃費向上に最適なドライブラインを選択することができる。
【0110】
(7) ハイブリッド駆動系に、第1クラッチCL1と、第2クラッチCL2と、第3クラッチCL3と、第4クラッチCL4と、を有し、
前記第1クラッチCL1は、前記エンジンENGのエンジン出力軸44と前記ベルト式無段変速機CVTの変速機入力軸30を断接し、
前記第2クラッチCL2は、前記モータジェネレータMGのモータ軸45と前記ベルト式無段変速機CVTの変速機入力軸30を断接し、
前記第3クラッチCL3は、前記モータジェネレータMGのモータ軸45と前記固定ギヤ機構GTのギヤ入力軸35を断接し、
前記第4クラッチCL4は、前記ベルト式無段変速機CVTの変速機出力軸33と、前記固定ギヤ機構GTのギヤ出力軸36を断接する。
このため、(6)の効果に加え、エンジン始動パターンの変更や走行モードの変更や回生モードの際、適切なエネルギーフローとすることで、高いエネルギー効率によるエンジン始動やモード設定を行うことができる。例えば、エンジン始動パターン3では、第2クラッチCL2と第4クラッチCL4を開放することで、エンジンENGとベルト式無段変速機CVTをモータジェネレータMGのドライブラインから切り離すことができる(図13)。また、モータ回生モードでは、ベルト式無段変速機CVTを回生ラインに含まずに、回生エネルギーを効率良く回収することができる。
【0111】
(8) 前記固定ギヤ機構GTは、固定ギヤ比を固定減速ギヤ比とする機構とし、
前記エンジン始動制御手段(図6)は、前記パターン2を選択してエンジン始動する際、前記第3クラッチCL3と前記第4クラッチCL4とを締結し、前記モータジェネレータMGからのモータトルクを、前記固定ギヤ機構GTの固定減速ギヤ比と前記ベルト式無段変速機CVTの減速プーリ比により2段階にて増幅する。
このため、(7)の効果に加え、パターン2を選択してのエンジン始動時、エンジン始動のために使われるモータジェネレータMGからのトルクを小さく抑えることができ、この結果、モータ走行モードによる走行領域を拡大することができる。
【0112】
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0113】
実施例1では、固定ギヤ機構として、固定減速ギヤ比を有する固定ギヤ機構GTの例を示した。しかし、固定ギヤ機構としては、図16に示すように、固定増速ギヤ比を有する固定ギヤ機構GT'としても良い。さらに、固定ギヤ機構として、ギヤ比が1の固定等速ギヤ比を有する固定ギヤ機構としても良い。
【0114】
実施例1では、第3クラッチCL3と第4クラッチCL4として、油圧力や電磁力により締結/開放する摩擦クラッチを用いる例を示した。しかし、第3クラッチと第4クラッチとして、図17に示すように、ワンウェイクラッチによる第3ワンウェイクラッチOWC3と第4ワンウェイクラッチOWC4を用いるような例としても良い。さらに、図17に示すように、モータジェネレータMGを変速機出力軸側に設け、固定ギヤ機構GT"以外に、変速機入力軸と変速機出力軸の間を噛み合いギヤにより連結するような構造としても良い。
実施例1では、慣性体として、ベルト式無段変速機CVTのプライマリプーリ31およびセカンダリプーリ32を用いる例を示した。しかし、ベルト式無段変速機のプーリを用いるのみでなく、慣性体として、単にフライホイールを用いて、エンジン始動時、フライホイールをモータ走行モードのドライブラインから切り離す構成としても良い。この場合、例えば、モータジェネレータと駆動輪との間に段階的な複数の変速段を有する自動変速機(AT)を配置し、エンジンとモータジェネレータとの間にフライホイールを配置する構成としても良い。さらに、ベルト式無段変速機CVTや自動変速機ATの無い駆動系を持つハイブリッド車両にも適用することができる。要するに、エンジン、モータジェネレータ、慣性体、第1クラッチ、第2クラッチ、駆動輪を駆動系に有するハイブリッド車両であれば、実施例1以外の型式を持つハイブリッド車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0115】
ENG エンジン
MG モータジェネレータ
CVT ベルト式無段変速機
GT 固定ギヤ機構
FD ファイナルデファレンシャル
FL 左前輪(駆動輪)
FR 右前輪(駆動輪)
CL1 第1クラッチ
CL2 第2クラッチ
CL3 第3クラッチ
CL4 第4クラッチ
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 インバータ
4 バッテリ
5 第1クラッチコントローラ
6 第1クラッチ油圧ユニット
7 CVTコントローラ
8 第2〜4クラッチ油圧ユニット
9 ブレーキコントローラ
10 統合コントローラ
31 プラマリプーリ(慣性体)
32 セカンダリプーリ(慣性体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ走行モードからエンジン始動制御を経過してエンジンを用いる走行モードへモード遷移するハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車両の制御装置としては、駆動系にエンジンとモータジェネレータとベルト式無段変速機を備え、走行モードとして、モータジェネレータのみを用いるモータ走行モードを含む、複数の走行モードを有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−224714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のハイブリッド車両の制御装置にあっては、モータジェネレータのみを用いるモータ走行モード中、エンジン始動要求があったらモータジェネレータをエンジン始動モータとしてエンジンを始動するようにしている。したがって、モータ走行モード中、エンジン始動に備えてモータ出力からエンジントルクを残す必要がある。つまり、走行トルク(駆動トルク)とエンジン始動トルクを加えたトルクが、モータ最大トルク以上になると、自動的にモータ走行モードからエンジン始動制御を経過し、エンジンを用いる走行モードへモード遷移する必要があった。このため、モータ走行モードによる走行領域を狭くしてしまい、十分な燃費の向上を望めない、という問題があった。
【0005】
特に、大排気量のエンジンを搭載したハイブリッド車両では、停止しているエンジンをクランキングさせるのに必要なトルク(エンジン始動トルク)が大きくなり、モータ走行モードによる走行領域を狭くする大きな原因となっていた。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、走行中、モータ走行モードによる走行領域を拡大し、回生エネルギーの回収量向上と燃費の向上を図ることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド車両の制御装置では、エンジンと、モータジェネレータと、慣性体と、第1クラッチと、第2クラッチと、エンジン始動制御手段と、を備える手段とした。
前記慣性体は、前記モータジェネレータのみによるモータ走行モードにて前記モータジェネレータからのエネルギーを蓄積する。
前記第1クラッチは、前記慣性体と前記エンジンを断接する。
前記第2クラッチは、前記慣性体と前記モータジェネレータを断接する。
前記エンジン始動制御手段は、前記モータ走行モードからのエンジン始動時、前記第2クラッチを開放して慣性体を前記モータジェネレータから切り離した状態で、前記第1クラッチを締結し、前記慣性体に蓄積されたエネルギーを使って前記エンジンを始動する。
【発明の効果】
【0008】
よって、モータ走行モードからのエンジン始動時、エンジン始動制御手段において、第2クラッチを開放して慣性体をモータジェネレータから切り離した状態で、第1クラッチを締結し、慣性体に蓄積されたエネルギーを使ってエンジンが始動される。
すなわち、走行中、慣性体に蓄積されたエネルギー(イナーシャトルク)を、エンジン始動トルクとして使うことで、エンジンを始動するようにしている。
したがって、モータ走行モードによる走行中、モータジェネレータをエンジン始動モータとする場合のように、モータジェネレータの出力から、エンジン始動に備えてエンジン始動トルクを残しておく必要がない。このため、例えば、慣性体に蓄積されたエネルギー(イナーシャトルク)と、モータジェネレータの余剰トルクと、によってエンジン始動トルクの確保が見込める間は、エンジンを停止したままのモータ走行モードを維持することが可能となる。
この結果、走行中、モータ走行モードによる走行領域が拡大され、エンジン負荷のない回生頻度が高くなることによる回生エネルギーの回収量の向上と、エンジンを停止する頻度が高くなることによる燃費の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の制御装置が適用された前輪駆動によるハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【図2】実施例1の統合コントローラ10にて実行される走行モード遷移制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施例1の走行モード遷移制御処理においてモータ出力限界の判断に用いられる走行トルクとエンジン始動トルクとモータ最大トルクの関係を示すモータトルク特性図である。
【図4】実施例1の走行モード遷移制御処理においてエンジン始動限界の判断に用いられるプーリ回転数とプーリ比とイナーシャトルクの関係を示すイナーシャトルクマップ図である。
【図5】実施例1の走行モード遷移制御処理におけるモータ出力走行制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例1の走行モード遷移制御処理におけるエンジン始動制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】実施例1の走行モード遷移制御処理におけるエンジン出力走行制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】発進時のモータ発進モードにおけるハイブリッド駆動系でのトルク流れ作用を示す発進モード作用説明図である。
【図9】走行時のモータ走行モードにおけるハイブリッド駆動系でのトルク流れ作用を示す走行モード作用説明図である。
【図10】回生時のモータ回生モードにおけるハイブリッド駆動系でのトルク流れ作用を示す回生モード作用説明図である。
【図11】エンジン始動時のパターン1におけるハイブリッド駆動系でのトルク流れ作用を示すパターン1始動作用説明図である。
【図12】エンジン始動時のパターン2におけるハイブリッド駆動系でのトルク流れ作用を示すパターン2始動作用説明図である。
【図13】エンジン始動時のパターン3におけるハイブリッド駆動系でのトルク流れ作用を示すパターン3始動作用説明図である。
【図14】エンジン走行時のエンジン走行モードにおけるハイブリッド駆動系でのトルク流れ作用を示す走行モード作用説明図である。
【図15】ハイブリッド走行時のハイブリッド走行モードにおけるハイブリッド駆動系でのトルク流れ作用を示す走行モード作用説明図である。
【図16】ハイブリッド駆動系の他例1を示すハイブリッド駆動系構成図である。
【図17】ハイブリッド駆動系の他例2を示すハイブリッド駆動系構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用された前輪駆動によるハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【0012】
実施例1のハイブリッド駆動系は、図1に示すように、エンジンENGと、モータジェネレータMGと、ベルト式無段変速機CVTと、固定ギヤ機構GTと、ファイナルデファレンシャルFDと、左前輪FL(駆動輪)と、右前輪FR(駆動輪)と、を備えている。
【0013】
このハイブリッド駆動系は、駆動力を駆動輪FL,FRへ伝達する駆動力伝達経路(以下、「ドライブライン」という。)として、
(a) エンジンENG→ベルト式無段変速機CVT→駆動輪FL,FR
(b) エンジンENG+モータジェネレータMG→ベルト式無段変速機CVT→駆動輪FL,FR
(c) エンジンENG+モータジェネレータMG→固定ギヤ機構GT→駆動輪FL,FR
(d) モータジェネレータMG→ベルト式無段変速機CVT→駆動輪FL,FR
(e) モータジェネレータMG→固定ギヤ機構GT→駆動輪FL,FR
を有する。
【0014】
前記エンジンEngは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジンコントローラ1からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御やスロットルバルブのバルブ開度制御や燃料カット制御、等が行われる。
【0015】
前記モータ/ジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータ/ジェネレータであり、モータコントローラ2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータ/ジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(力行)、ロータがエンジンEngや駆動輪から回転エネルギーを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、バッテリ4を充電することもできる(回生)。
【0016】
前記ベルト式無段変速機CVTは、変速機入力軸30に固定されたプライマリプーリ31と、変速機出力軸33に固定されたセカンダリプーリ32と、両プーリ31,32に掛け渡したベルト34と、を有する。実施例1では、プラマリプーリ31およびセカンダリプーリ32を慣性体とする。このベルト式無段変速機CVTは、ポンプ圧に基づいてプライマリプーリ圧とセカンダリプーリ圧を作り出し、このプーリ圧によりプライマリプーリ31の可動プーリとセカンダリプーリ32の可動プーリを軸方向に動かし、ベルト34のプーリ接触半径を変化させることで、プーリ比(変速比)を無段階に変更する。
【0017】
前記固定ギヤ機構GTは、ベルト式無段変速機CVTと並列に設けられ、ギヤ入力軸35とギヤ出力軸36との間のギヤ比を固定ギヤ比とする機構であり、この固定ギヤ機構GTは、固定ギヤ比を固定減速ギヤ比としている。この固定ギヤ機構GTは、ギヤ入力軸35に固定された第1ギヤ37と、アイドラー軸38に固定された第2ギヤ39と、ギヤ出力軸36に固定された第3ギヤ40と、を有する。
【0018】
前記ファイナルデファレンシャルFDは、第3ギヤ40に噛み合うファイナルギヤ41からの回転駆動力を、左ドライブシャフト42を介して左前輪FLに伝達し、右ドライブシャフト43を介して右前輪FRに伝達する。
【0019】
実施例1のハイブリッド駆動系は、図1に示すように、第1クラッチCL1と、第2クラッチCL2と、第3クラッチCL3と、第4クラッチCL4と、を備えている。
【0020】
前記第1クラッチCL1は、エンジンENGのエンジン出力軸44とベルト式無段変速機CVTの変速機入力軸30を断接する。この第1クラッチCL1としては、締結・開放・スリップ締結の制御が可能な摩擦クラッチが用いられる。
【0021】
前記第2クラッチCL2は、モータジェネレータMGのモータ軸45とベルト式無段変速機CVTの変速機入力軸30を断接する。
【0022】
前記第3クラッチCL3は、モータジェネレータMGのモータ軸45と固定ギヤ機構GTのギヤ入力軸35を断接する。
【0023】
前記第4クラッチCL4は、ベルト式無段変速機CVTの変速機出力軸33と、固定ギヤ機構GTのギヤ出力軸36を断接する。
【0024】
次に、ハイブリッド車両の制御系を説明する。
実施例1におけるハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、CVTコントローラ7と、第2〜4クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ9と、統合コントローラ10と、を有して構成されている。なお、各コントローラ1,2,5,7,9と、統合コントローラ10とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線11を介して接続されている。
【0025】
前記エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報と、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、エンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する。
【0026】
前記モータコントローラ2は、モータ/ジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報と、統合コントローラ10からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報を入力する。そして、モータ/ジェネレータMGのモータ動作点(Nm,Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2は、トルク制御と回転数制御を行う。また、このモータコントローラ2は、バッテリ4の充電容量をあらわすバッテリSOCを監視していて、このバッテリSOC情報を、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
【0027】
前記第1クラッチコントローラ5は、第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの目標CL1トルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、第1クラッチCL1の締結・スリップ締結・開放を制御する指令を第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。
【0028】
前記CVTコントローラ7は、アクセル開度センサ16と、車速センサ17と、他のセンサ類18等からの情報を入力する。そして、Dレンジを選択しての走行時、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる目標入力回転数をシフトマップにより検索し、検索された目標入力回転数(プーリ比)を得る制御指令を出力する。他のセンサ類18として、プライマリプーリ回転数センサやセカンダリプーリ回転数センサなどを有する。そして、エンジン始動制御において、統合コントローラ10から変速制御指令が出力された場合、通常の変速制御に優先して変速制御を行う。また、統合コントローラ10からの目標CL2〜CL4トルク指令を入力すると、第2〜4クラッチCL2〜CL4の締結・開放を制御する指令を第2〜4クラッチ油圧ユニット8に出力する。
【0029】
前記ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19と、ブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの回生協調制御指令と、他の必要情報を入力する。そして、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモータ制動力)で補うように、回生協調ブレーキ制御を行う。
【0030】
前記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギーを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21や他のセンサ・スイッチ類22からの必要情報およびCAN通信線11を介して情報を入力する。そして、エンジンコントローラ1へ目標エンジントルク指令、モータコントローラ2へ目標MGトルク指令および目標MG回転数指令、第1クラッチコントローラ5へ目標CL1トルク指令、CVTコントローラ7へ目標CL2〜CL4トルク指令、ブレーキコントローラ9へ回生協調制御指令を出力する。
【0031】
図2は、実施例1の統合コントローラ10にて実行される走行モード遷移制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、図2の各ステップについて説明する。
【0032】
ステップS1では、走行開始によりスタートすると第1クラッチCL1を開放し、ステップS2へ進む。
【0033】
ステップS2では、ステップS1でのCL1開放、あるいは、ステップS5での車両走行であるとの判断、ステップS11でのエンジン停止に続き、図5のフローチャートにしたがってモータ出力走行制御を実行し、ステップS3へ進む。
【0034】
ステップS3では、ステップS2でのモータ出力走行制御に続き、モータ出力限界条件(走行トルクTd+エンジン始動トルクTe≧モータ最大トルクTMmax)が成立するか否かを判断する。YES(Td+Te≧TMmax)の場合はステップS4へ進み、NO(Td+Te<TMmax)の場合はステップS5へ進む。
すなわち、モータ最大トルクTMmaxは、図3に示すように、モータ回転数が高いほど低くなるというようにモータ回転数やモータ温度によって決まる値である。エンジン始動トルクTeは、モータ回転数などにかかわらず、エンジンENGの排気量などによって決まる固定値である。これに対し、走行トルクTdは、車両を駆動させるために使われるトルクであり、ドライバーの駆動力要求によって変わる値である。よって、高アクセル開度域や高車速域では、Td+Te≧TMmaxというモータ出力限界条件が成立する。
【0035】
ステップS4では、ステップS3でのTd+Te≧TMmaxであるとの判断に続き、エンジン始動限界条件(エンジン始動トルクTe≧モータトルク余剰分ΔTM+イナーシャ予測トルクTpm)が成立するか否かを判断する。YES(Te≧ΔTM+Tpm)の場合はステップS7へ進み、NO(Te<ΔTM+Tpm)の場合はステップS5へ進む。
ここで、モータトルク余剰分ΔTMは、判断時点でのモータ最大トルクTMmaxから走行トルクTdを差し引くことで算出される。イナーシャ予測トルクTpmは、判断時点でのプーリ回転数およびプーリ比に基づき、図4に示すイナーシャトルクマップを検索することにより求められる値である。つまり、イナーシャ予測トルクTpmは、現時点でエンジン始動を行ったと仮定した場合、プーリのイナーシャにより見込まれるイナーシャトルクの値である。
【0036】
ステップS5では、ステップS3でのTd+Te<TMmaxであるとの判断、あるいは、ステップS4でのTe<ΔTM+Tpmであるとの判断に続き、車両停止か否かを判断し、YES(車両停止)の場合はステップS6へ進み、NO(車両走行)の場合はステップS2へ戻る。
【0037】
ステップS6では、ステップS5での車両停止であるとの判断に続き、モータジェネレータMGを停止し、エンドへ進む。
【0038】
ステップS7では、ステップS4でのTe≧ΔTM+Tpmであるとの判断に続き、図6に示すフローチャートにしたがってエンジン始動制御を行い、ステップS8へ進む。
つまり、ステップS7では、エンジン始動限界条件の成立によるエンジン始動要求にしたがってエンジン始動制御を行う。
【0039】
ステップS8では、ステップS7でのエンジン始動制御、あるいは、ステップS9でのモータ出力余裕条件の不成立判断に続き、図7に示すフローチャートにしたがってエンジン出力走行制御を行い、ステップS9へ進む。
【0040】
ステップS9では、ステップS8でのエンジン出力走行制御に続き、モータ出力余裕条件(走行トルクTd+エンジン始動トルクTe<モータ最大トルクTMmax)が成立するか否かを判断する。YES(Td+Te<TMmax)の場合はステップS10へ進み、NO(Td+Te≧TMmax)の場合はステップS8へ戻る。
【0041】
ステップS10では、ステップS9でのTd+Te<TMmaxであるとの判断に続き、第1クラッチCL1を開放し、ステップS11へ進む。
【0042】
ステップS11では、ステップS10での第1クラッチCL1の開放に続き、エンジンENGを停止し、ステップS2へ戻る。
【0043】
図5は、実施例1の走行モード遷移制御処理におけるモータ出力走行制御処理(図2のステップS2)の流れを示すフローチャートである。以下、図5の各ステップについて説明する。
【0044】
ステップS201では、ステップS2に入っての処理開始、あるいは、ステップS205またはステップS207での回生要求無しの判断に続き、発進時か否かを判断する。YES(発進時)の場合はステップS203へ進み、NO(走行時)の場合はステップS202へ進む。
【0045】
ステップS202では、ステップS201での走行時であるとの判断に続き、ベルト式無段変速機CVTのプーリ比が固定ギヤ機構GTの固定ギヤ比に達したか否かを判断する。YES(プーリ比が固定ギヤ比に到達)の場合はステップS204へ進み、NO(プーリ比が固定ギヤ比に未達)の場合はステップS203へ進む。
【0046】
ステップS203では、ステップS201での発進時であるとの判断、あるいは、ステップS202でのプーリ比が固定ギヤ比に未達であるとの判断に続き、ベルト式無段変速機CVTをドライブラインに有するモータ発進モード(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)による走行とし、ステップS205へ進む。
【0047】
ステップS204では、ステップS202でのプーリ比が固定ギヤ比に到達したとの判断に続き、固定ギヤ機構GTをドライブラインに有するモータ走行モード(第2クラッチCL2:OFF、第3クラッチCL3:ON、第4クラッチCL4:ON)による走行とし、ステップS205へ進む。
【0048】
ステップS205では、ステップS203でのモータ発進モード、あるいは、ステップS204でのモータ走行モードに続き、減速/制動操作に基づく回生要求有りか否かを判断する。YES(回生要求有り)の場合はステップS206へ進み、NO(回生要求無し)の場合はステップS201へ戻る。
【0049】
ステップS206では、ステップS205での回生要求有りとの判断、あるいは、ステップS207での回生要求継続との判断に続き、ベルト式無段変速機CVTのプーリ回転を維持したままで、固定ギヤ機構GTを回生ラインに有するモータ回生モード(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:ON、第4クラッチCL4:OFF)による走行とし、ステップS207へ進む。
【0050】
ステップS207では、ステップS206でのモータ回生モードに続き、回生要求無しか否かを判断する。YES(回生要求無し)の場合はステップS201へ戻り、NO(回生要求継続)の場合はステップS206へ戻る。
【0051】
図6は、実施例1の走行モード遷移制御処理におけるエンジン始動制御処理(図2のステップS7)の流れを示すフローチャートである。以下、図6の各ステップについて説明する。
【0052】
ステップS701では、ステップS7に入っての処理開始に続き、プーリ比が固定ギヤ比に達する前のエンジン始動要求か否かを判断する。YES(モータ発進モードからのエンジン始動要求)の場合はステップS702へ進み、NO(モータ走行モードからのエンジン始動要求)の場合はステップS703へ進む。
【0053】
ステップS702では、ステップS701でのモータ発進モードからのエンジン始動要求であるとの判断に続き、モータジェネレータMGをエンジン始動モータとしてエンジンENGを始動するパターン1(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)によるエンジン始動を行い、ステップS709へ進む。
【0054】
ステップS703では、ステップS701でのモータ走行モードからのエンジン始動要求であるとの判断に続き、両プーリ31,32のイナーシャIpri,Isecによるイナーシャ発生トルクTpを算出し、ステップS704へ進む。
ここで、イナーシャ発生トルクTpの算出式は、
Tp=(1/2){Ipri・Δω2pri+Isec・(Δωpri/ip)2}・(1/Δt)・(60/2πNpri)
である。但し、Δtは回転同期時間、Δωpriは回転変動分角速度、Npriは回転減少後のプライマリプーリ回転数、ipはプーリ比である。
【0055】
ステップS704では、ステップS703でのイナーシャ発生トルクTpの算出に続き、算出したイナーシャ発生トルクTpが、エンジン始動トルクTeより大きいか否かを判断する。YES(Tp>Te)の場合はステップS708へ進み、NO(Tp≦Te)の場合はステップS705へ進む。
【0056】
ステップS705では、ステップS704でのTp≦Teであるとの判断に続き、両プーリ31,32によるイナーシャ発生トルクTp(慣性トルク)を、モータトルクのアシストトルクとしてエンジンENGを始動するパターン2(第2クラッチCL2:OFF、第3クラッチCL3:ON、第4クラッチCL4:ON)によるエンジン始動を行い、ステップS706へ進む。
【0057】
ステップS706では、ステップS705でのパターン2によるエンジン始動に続き、回転同期時間Δt(=第1クラッチCL1を締結する時間)中に降下するプライマリプーリ31の回転数を目標回転数ΔREVとし、この目標回転数ΔREVにより目標プーリ比ipを算出し、ステップS707へ進む。
すなわち、図4において、エンジン始動制御での回転同期時間Δt中に降下させることになるプライマリプーリ31の回転数を目標回転数ΔREVとする。そして、この目標回転数ΔREVの回転数降下があってもエンジン始動開始時のイナーシャ発生トルクTpを維持することができるプーリ比を目標プーリ比ipとする。なお、最大の目標回転数ΔREVは、現状プーリ比(固定ギヤ比と同じ)から最HIGHまでのプーリ比で決まる。
【0058】
ステップS707では、ステップS706での目標プーリ比ipの算出に続き、ベルト式無段変速機CVTのプーリ比ip(=固定ギヤ比)を、目標プーリ比ipにするように高プーリ比側へシフトし、ステップS709へ進む。
【0059】
ステップS708では、ステップS704でのTp>Teであるとの判断に続き、ベルト式無段変速機CVTの両プーリ31,32によるイナーシャトルクのみによってエンジンENGを始動するパターン3(第2クラッチCL2:OFF、第3クラッチCL3:ON、第4クラッチCL4:OFF)によるエンジン始動を行い、ステップS709へ進む。
【0060】
ステップS709では、ステップS702でのパターン1によるエンジン始動制御、あるいは、ステップS707でのパターン2によるエンジン始動制御、あるいは、ステップS708でのパターン3によるエンジン始動制御、あるいは、ステップS710でのΔtが経過していないとの判断に続き、第1クラッチCL1をスリップ締結し、ステップS710へ進む。
【0061】
ステップS710では、ステップS709でのCL1スリップ締結に続き、回転同期時間Δtを経過したか否かを判断し、YES(Δtを経過した)の場合はステップS711へ進み、NO(Δtを経過していない)の場合はステップS709へ戻る。
【0062】
ステップS711では、ステップS710での回転同期時間Δtを経過したとの判断に続き、第1クラッチCL1を締結し、エンドへ進む。
【0063】
図7は、実施例1の走行モード遷移制御処理におけるエンジン出力走行制御処理(図2のステップS8)の流れを示すフローチャートである。以下、図7の各ステップについて説明する。
【0064】
ステップS801では、図6のフローチャートにしたがってエンジン始動が完了すると、要求駆動トルクTd*が、設定駆動トルクTdo以上であるか否かを判断する。YES(Td*≧Tdo)の場合はステップS806へ進み、NO(Td*<Tdo)の場合はステップS802へ進む。
ここで、要求駆動トルクは、アクセル開度APOや車速VSPから算出される。設定駆動トルクTdoは、エンジンENGのみでの駆動力では駆動力不足になるトルク値に設定される。
【0065】
ステップS802では、ステップS801でのTd*<Tdoであるとの判断に続き、エンジンENGを駆動源とし、ドライブラインにベルト式無段変速機CVTを有するエンジン走行モード(第2クラッチCL2:OFF、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)による走行とし、ステップS803へ進む。
【0066】
ステップS803では、ステップS802でのエンジン走行モードによる走行に続き、発電要求有りか否かを判断する。YES(発電要求有り)の場合はステップS804へ進み、NO(発電要求無し)の場合はステップS801へ戻る。
【0067】
ステップS804では、ステップS803での発電要求有りとの判断、あるいは、ステップS805での発電要求継続判断に続き、エンジンENGからの出力の一部を発電に用いるエンジン走行発電モード(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)による走行とし、ステップS805へ進む。
【0068】
ステップS805では、ステップS804でのエンジン走行発電モードによる走行に続き、発電要求無しか否かを判断する。YES(発電要求無し)の場合はステップS801へ戻り、NO(発電要求継続)の場合はステップS804へ戻る。
【0069】
ステップS806では、ステップS801でのTd*≧Tdoであるとの判断に続き、エンジンENGとモータジェネレータMGを駆動源とし、ドライブラインにベルト式無段変速機CVTを有するハイブリッド走行モード(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)による走行とし、ステップS801へ戻る。なお、ハイブリッド走行モードの選択時に発電要求があった場合は、クラッチ締結/開放の関係はそのままで発電要求に応える。
【0070】
次に、作用を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の制御装置における作用を、「走行モード遷移制御作用」、「モータ出力走行制御作用」、「エンジン始動制御作用」、「エンジン出力走行制御作用」に分けて説明する。
【0071】
[走行モード遷移制御作用]
車両走行を開始すると、図2のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2→ステップS3へと進み、モータ出力走行制御が開始される。そして、ステップS3にてモータ出力限界条件が不成立であると判断されるとステップS5へ進み、モータ出力限界条件が不成立である間、ステップS2→ステップS3→ステップS5へと進む流れが繰り返され、ステップS2でのモータ出力走行制御が維持される。
【0072】
このモータ出力走行制御中にステップS3のモータ出力限界条件が成立すると、ステップS3からステップS4へ進み、ステップS4にてエンジン始動限界条件が判断される。そして、エンジン始動限界条件が不成立である間、ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5へと進む流れが繰り返され、ステップS2でのモータ出力走行制御が維持される。
【0073】
さらに、モータ出力走行制御中にモータ出力限界条件とエンジン始動限界条件が共に成立するとエンジン始動要求が出され、図2のフローチャートにおいて、ステップS4からステップS7へ進み、ステップS7にてエンジン始動制御が行われる。そして、エンジン始動が完了すると、ステップS7からステップS8→ステップS9へと進み、ステップS8にてエンジン出力走行制御が開始され、走行モードがモータ出力走行モードからエンジン出力走行モードへとモード遷移する。
【0074】
このエンジン出力走行制御中において、ステップS9でのモータ出力余裕条件が不成立の間、ステップS8→ステップS9へと進む流れが繰り返され、エンジン出力走行制御が維持される。そして、ステップS9でのモータ出力余裕条件が成立すると、ステップS9からステップS10へ進み、第1クラッチCL1が開放され、さらに、ステップS11へ進み、エンジンENGが停止され、ステップS2に戻り、走行モードがエンジン出力走行モードからモータ出力走行モードへとモード遷移する。この走行モード遷移動作は、車両走行中に繰り返される。なお、モータ出力走行制御中に車両停止が判断されると、図2のフローチャートにおいて、ステップS5からステップS6へ進み、モータジェネレータMGを停止して走行モード遷移制御を終了する。
【0075】
実施例1では、モータ出力走行モードからのエンジン始動時、ステップS7のエンジン始動制御において、第2クラッチCL2を開放して慣性体であるベルト式無段変速機CVTの両プーリ31,32をモータジェネレータMGから切り離した状態とする。そして、第1クラッチCL1を締結し、走行中、両プーリ31,32に蓄積されたエネルギー(イナーシャトルク)を、エンジン始動トルクとして使うことで、エンジンENGを始動するようにしている。
【0076】
したがって、モータ出力走行モードによる走行中、モータジェネレータをエンジン始動モータとする場合のように、モータジェネレータMGの出力から、エンジン始動に備えてエンジン始動トルクTeを残しておく必要がない。
例えば、モータジェネレータをエンジン始動モータとする場合には、ステップS3のモータ出力限界条件が成立すると、直ちにエンジン始動要求を出し、エンジン始動制御を開始する必要がある。このため、例えば、バッテリ容量に余裕があり、モータ出力走行モードを維持できるような走行状態であっても、エンジン出力走行モードへのモード遷移を余儀なくされていた。
【0077】
これに対し、実施例1では、ステップS3のモータ出力限界条件が成立しても、ステップS4でのエンジン始動限界条件が不成立である間は、エンジンENGを停止したままのモータ出力走行モードを維持することができる。その理由は、実施例1では、両プーリ31,32のイナーシャトルクをエンジン始動トルクとして使うようにした。このため、イナーシャ予測トルクTpmとモータジェネレータMGの余剰トルクΔTMの和によってエンジン始動トルクTeの確保が見込める間は、エンジン出力走行モードへモード遷移する必要がないことによる。この結果、走行中、モータ出力走行モードによる走行領域が拡大され、エンジン負荷のない回生頻度が高くなることによる回生エネルギーの回収量の向上と、エンジンENGを停止する頻度が高くなることによる燃費の向上が図られる。
【0078】
実施例1では、ベルト式無段変速機CVTのプライマリプーリ31およびセカンダリプーリ32を慣性体として用いる構成を採用した。
したがって、慣性体として、別部品によるフライホイールを追加する必要が無く、コスト的にもスペース的にも有利としながら、エンジン始動に用いるイナーシャトルクが得られる。
【0079】
[モータ出力走行制御作用]
第1クラッチCL1を開放し、車両を発進させると、図5のフローチャートにおいて、ステップS201→ステップS203へと進む。このステップS203では、ベルト式無段変速機CVTをドライブラインに有するモータ発進モード(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)による走行とされる。そして、次の制御周期からベルト式無段変速機CVTのプーリ比が固定ギヤ比に達するまでの間は、図5のフローチャートにおいて、ステップS201→ステップS202→ステップS203→ステップS205へと進む流れが繰り返され、モータ発進モードによる走行が維持される。
【0080】
このモータ発進モードの選択時には、図8の矢印に示すエネルギーフローとなり、減速プーリ比によるベルト式無段変速機CVTをドライブラインに通すことで、モータジェネレータMGによるモータトルクを増幅した駆動トルクが駆動輪FL,FRに伝達され、発進性が確保される。
【0081】
そして、モータ発進モードでの走行を続け、ベルト式無段変速機CVTのプーリ比が固定ギヤ比まで達すると、図5のフローチャートにおいて、ステップS201→ステップS202→ステップS204→ステップS205へと進む流れが繰り返される。このステップS204では、固定ギヤ機構GTをドライブラインに有するモータ走行モード(第2クラッチCL2:OFF、第3クラッチCL3:ON、第4クラッチCL4:ON)による走行とされる。
【0082】
このモータ走行モードの選択時には、図9の矢印に示すエネルギーフローとなり、固定減速比による固定ギヤ機構GTをドライブラインに通すことで、ベルト式無段変速機CVTに比べトルク伝達損失を抑えながら、モータジェネレータMGによるモータトルクを増幅した駆動トルクが駆動輪FL,FRに伝達され、走行性が確保される。なお、このモータ走行モードにおいては、エンジン始動制御に備え、第4クラッチCL4の締結によりベルト式無段変速機CVTの回転動作を確保しておく。このとき、ベルト式無段変速機CVTのプーリ比は、固定ギヤ機構GTの固定ギヤ比と同じ比にしておく。これにより、モータジェネレータMGの回転数とプライマリプーリ31の回転数が同じ回転数となる。
【0083】
一方、モータ発進モードやモータ走行モードでの走行中に、ドライバーが減速操作や制動操作を行うことで、回生要求があると、図5のフローチャートにおいて、テップS205からステップS206→ステップS207へと進む。このステップS206では、ベルト式無段変速機CVTのプーリ回転を維持したままで、固定ギヤ機構GTを回生ラインに有するモータ回生モード(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:ON、第4クラッチCL4:OFF)による走行とされる。そして、ステップS207にて回生要求無しと判断されるまでステップS206→ステップS207へと進む流れが繰り返され、モータ回生モードが維持される。
【0084】
このモータ回生モードの選択時には、図10の矢印に示すエネルギーフローとなり、固定減速比による固定ギヤ機構GTを回生ラインに通すことで、ベルト式無段変速機CVTに比べトルク伝達損失を抑えながら、駆動輪FL,FRの回転を増速した増速回転がモータジェネレータMGに入力されることで、高い回生効率が確保される。なお、このモータ回生モードにおいても、エンジン始動制御に備え、第2クラッチCL2の締結によりベルト式無段変速機CVTの回転動作を確保しておく。
【0085】
[エンジン始動制御作用]
エンジン始動制御は、エンジン始動パターン1(図11)とエンジン始動パターン2(図12)とエンジン始動パターン3(図13)の3パターン存在する。
【0086】
(エンジン始動パターン1)
ベルト式無段変速機CVTのプーリ比が、固定ギヤ比まで達する前にエンジン始動要求が出された場合は、図6のフローチャートにおいて、ステップS701→ステップS702→ステップS709→ステップS710へと進む。そして、ステップS702では、モータジェネレータMGをエンジン始動モータとしてエンジンENGを始動するパターン1(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)によるエンジン始動が行われる。そして、回転同期時間Δtを経過するまでは、ステップS709→ステップS710へと進む流れが繰り返され、第1クラッチCL1がスリップ締結される。回転同期時間Δtを経過すると、ステップS711へ進み、第1クラッチCL1を締結し、エンジン始動を完了する。
【0087】
このエンジン始動パターン1では、図11の矢印に示すエネルギーフローとなり、モータジェネレータMGからの出力の一部が、第2クラッチCL2の締結により、ベルト式無段変速機CVTおよび第4クラッチCL4を介して駆動輪FL,FRに伝達される。同時に、モータジェネレータMGからの出力の残りが、第1クラッチCL1をスリップ締結することによりエンジンENGに伝達され、エンジンENGを始動する。
【0088】
(エンジン始動パターン2)
ベルト式無段変速機CVTのプーリ比が、固定ギヤ比まで達した後にエンジン始動要求が出され、かつ、イナーシャ発生トルクTpがエンジン始動トルクTe以下の場合は、図6のフローチャートにおいて、ステップS701→ステップS703→ステップS704→ステップS705→ステップS706→ステップS707→ステップS709→ステップS710へと進む。そして、ステップS705では、両プーリ31,32によるイナーシャ発生トルクTpを、モータトルクのアシストトルクとしてエンジンENGを始動するパターン2(第2クラッチCL2:OFF、第3クラッチCL3:ON、第4クラッチCL4:ON)によるエンジン始動が行われる。
【0089】
このエンジン始動中、ステップS706とステップS707により、ベルト式無段変速機CVTのプーリ比ipをハイ側にシフトさせる変速制御が併せて行われる。つまり、ステップS706では、回転同期時間Δt中に降下するプライマリプーリ31の回転数が目標回転数ΔREVとされ、この目標回転数ΔREVにより目標プーリ比ipが算出される。ステップS707では、ベルト式無段変速機CVTのプーリ比ip(=固定ギヤ比)を、目標プーリ比ipにするように高プーリ比側へシフトさせる変速制御が行われる。
【0090】
そして、回転同期時間Δtを経過するまでは、ステップS709→ステップS710へと進む流れが繰り返され、第1クラッチCL1がスリップ締結される。回転同期時間Δtを経過すると、ステップS711へ進み、第1クラッチCL1を締結し、エンジン始動を完了する。
【0091】
このエンジン始動パターン2では、図12の矢印に示すエネルギーフローとなり、モータジェネレータMGからの出力の一部が、第3クラッチCL3の締結により、固定ギヤ機構GTを介して駆動輪FL,FRに伝達される。同時に、モータジェネレータMGからの出力の残りが、第4クラッチCL4を締結し、第1クラッチCL1をスリップ締結することにより、エンジンENGに伝達され、エンジンENGを始動する。このとき、目標回転数ΔREV分の回転降下をキャンセルするため、ベルト式無段変速機CVTをハイ側にシフトする。
【0092】
つまり、Tp≦Teのときには、ベルト式無段変速機CVTの両プーリ31,32によるイナーシャだけでエンジンENGを始動できないため、当然、モータジェネレータMGのトルクでエンジン始動が行なわれる。しかし、エンジン始動パターン2におけるエンジン方向に流れるトルクは、固定ギヤ機構GTと、ハイシフトされたベルト式無段変速機CVTと、を通るため、2段階にトルクが増幅され、小さいモータトルクで、エンジン始動が行なわれる。その後、第3クラッチCL3を切ることで、図14のエンジン走行モードになる。
【0093】
(エンジン始動パターン3)
ベルト式無段変速機CVTのプーリ比が、固定ギヤ比まで達した後にエンジン始動要求が出され、かつ、イナーシャ発生トルクTpがエンジン始動トルクTeよりも大きい場合は、図6のフローチャートにおいて、ステップS701→ステップS703→ステップS704→ステップS708→ステップS709→ステップS710へと進む。そして、ステップS708では、ベルト式無段変速機CVTの両プーリ31,32によるイナーシャトルクのみによってエンジンENGを始動するパターン3(第2クラッチCL2:OFF、第3クラッチCL3:ON、第4クラッチCL4:OFF)によるエンジン始動が行われる。
【0094】
そして、回転同期時間Δtを経過するまでは、ステップS709→ステップS710へと進む流れが繰り返され、第1クラッチCL1がスリップ締結される。回転同期時間Δtを経過すると、ステップS711へ進み、第1クラッチCL1を締結し、エンジン始動を完了する。
【0095】
このエンジン始動パターン3では、図13の矢印に示すエネルギーフローとなり、モータジェネレータMGからの出力が、第3クラッチCL3の締結により、固定ギヤ機構GTを介して駆動輪FL,FRに伝達される。そして、第2クラッチCL2と第4クラッチCL4を開放していることにより、モータ駆動系から、エンジンENGおよびベルト式無段変速機CVTが完全に切り離される。したがって、モータ駆動系から切り離され、十分に回転が上昇しているベルト式無段変速機CVTによるイナーシャトルクを利用し、第1クラッチCL1をスリップ締結することにより、エンジンENGが始動される。
【0096】
このとき、モータジェネレータMGからの駆動トルクで走行しているため、車両加速度は落ちない。また、エンジンENGを始動した後、ベルト式無段変速機CVTのプーリ比を固定ギヤ比に戻し、駆動軸の回転にあわせる。その後、第4クラッチCL4を締結し、第3クラッチCL3を開放する。この状態で、図14に示すエンジン走行モードになる。
【0097】
[エンジン出力走行制御作用]
エンジン始動が完了したとき、要求駆動トルクTd*が設定駆動トルクTdo未満であると、図7のフローチャートにおいて、ステップS801→ステップS802へと進み、エンジンENGを駆動源とし、ドライブラインにベルト式無段変速機CVTを有するエンジン走行モード(第2クラッチCL2:OFF、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)による走行とされる。そして、要求駆動トルクTd*が設定駆動トルクTdo未満で、かつ、発電要求がない限り、図7のフローチャートにおいて、ステップS801→ステップS802→ステップS803へ進む流れが繰り返され、エンジン走行モードが維持される。
【0098】
このエンジン走行モードの選択時には、図14の矢印に示すエネルギーフローとなり、第1クラッチCL1と第4クラッチCL4の締結により、エンジンENGからの出力が、ベルト式無段変速機CVTを経過して駆動輪FL,FRに伝達され、エンジン走行による加速性などが確保される。
【0099】
エンジン走行モードでの走行中に発電要求が出されると、ステップS803からステップS804→ステップS805へと進み、発電要求の継続時間、ステップS804→ステップS805へと進む流れが繰り返される。すなわち、ステップS804では、エンジンENGからの出力の一部を発電に用いるエンジン走行発電モード(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)による走行とされる。
し、ステップS805へ進む。
このエンジン走行モードの選択時には、図14の矢印に示すエネルギーフロー状態において、第2クラッチCL2を締結することにより、エンジンENGからの出力の一部を発電に用いることができる。
【0100】
エンジン走行モードでの走行中、ドライバーによる加速操作などにより、要求駆動トルクTd*が設定駆動トルクTdo以上になると、図7のフローチャートにおいて、ステップS801→ステップS806へと進む流れが繰り返される。そして、ステップS806では、エンジンENGとモータジェネレータMGを駆動源とし、ドライブラインにベルト式無段変速機CVTを有するハイブリッド走行モード(第2クラッチCL2:ON、第3クラッチCL3:OFF、第4クラッチCL4:ON)による走行とされる。
【0101】
このハイブリッド走行モードの選択時には、図15の矢印に示すエネルギーフローとなり、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2と第4クラッチCL4の締結により、エンジンENGとモータジェネレータMGからの出力が、ベルト式無段変速機CVTを経過して駆動輪FL,FRに伝達され、ハイブリッド走行による高い加速性が確保される。そして、このハイブリッド走行モードの選択時に発電要求があった場合は、クラッチ締結/開放の関係はそのままで発電要求に応えることができる。
【0102】
なお、ハイブリッド走行モードにおいて、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2と第3クラッチCL3の締結(第4クラッチCL4開放)により、エンジンENGとモータジェネレータMGからの出力が、固定ギヤ機構GTを経過して駆動輪FL,FRに伝達されるモードを追加しても良い。
【0103】
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0104】
(1) エンジンENGと、
モータジェネレータMGと、
前記モータジェネレータMGのみによるモータ走行モードにて前記モータジェネレータMGからのエネルギーを蓄積する慣性体(プーリ31,32)と、
前記慣性体(プーリ31,32)と前記エンジンENGを断接する第1クラッチCL1と、
前記慣性体(プーリ31,32)と前記モータジェネレータMGを断接する第2クラッチCL2と、
前記モータ走行モードからのエンジン始動時、前記第2クラッチCL2を開放して慣性体(プーリ31,32)を前記モータジェネレータMGから切り離した状態で、前記第1クラッチCL1を締結し、前記慣性体(プーリ31,32)に蓄積されたエネルギーを使って前記エンジンENGを始動するエンジン始動制御手段(図6)と、
を備える。
このため、走行中、モータ走行モードによる走行領域を拡大し、回生エネルギーの回収量向上と燃費の向上を図ることができる。
【0105】
(2) 変速機入力軸30に固定されたプライマリプーリ31と、変速機出力軸33に固定されたセカンダリプーリ32と、両プーリ31,32に掛け渡したベルト34と、を有するベルト式無段変速機CVTを有し、
前記慣性体は、前記プラマリプーリ31および前記セカンダリプーリ32である。
このため、(1)の効果に加え、慣性体として、別部品によるフライホイールを追加する必要が無く、コスト的にもスペース的にも有利としながら、エンジン始動に用いるイナーシャトルクを得ることができる。
【0106】
(3) 前記エンジン始動制御手段(図6)は、エンジン始動要求時、前記両プーリ31,32で発生可能なイナーシャ発生トルクTpが、前記エンジンENGを始動するのに必要なエンジン始動トルクTeよりも大きいか否かを判断し(ステップS704)、前記イナーシャ発生トルクTpが前記エンジン始動トルクTeよりも大きいと判断された場合、イナーシャ発生トルクTpのみにより前記エンジンENGを始動し(ステップS708)、前記イナーシャ発生トルクTpが前記エンジン始動トルクTe以下と判断された場合、前記両プーリ31,32がモータ走行モードのドライブラインと繋がっている状態で前記エンジンENGを始動する(ステップS705)。
このため、(1)または(2)の効果に加え、イナーシャ発生トルクTpとエンジン始動トルクTeの大きさ判断を行うことで、モータトルクを用いることなくエンジン始動を行う際、確実にエンジンENGを始動することができる。加えて、イナーシャ発生トルクTpがエンジン始動トルクTe以下であっても、イナーシャ発生トルクTpを用い、モータトルクを小さく抑えてエンジン始動を行うことで、モータ走行モードによる走行領域を拡大することができる。
【0107】
(4) 前記エンジン始動制御手段(図6)は、前記両プーリ31,32がモータ走行モードのドライブラインと繋がっている状態で前記エンジンENGを始動する際、前記ベルト式無段変速機CVTのプーリ比ipを高プーリ比側にシフトする変速を行う。
このため、(3)の効果に加え、駆動力(加速度)に影響を与えず、イナーシャ発生トルクTpがエンジン始動トルクTe以下のとき、確実にエンジンENGを始動することができる。
【0108】
(5) 前記エンジン始動制御手段(図6)は、エンジン始動パターンとして、
・前記モータジェネレータMGをエンジン始動モータとして前記エンジンENGを始動するパターン1(ステップS702)と、
・前記慣性体(プーリ31,32)による慣性トルクをモータトルクのアシストトルクとして前記エンジンENGを始動するパターン2(ステップS705)と、
・前記慣性体(プーリ31,32)による慣性トルクのみによって前記エンジンENGを始動するパターン3(ステップS708)と、
を有する。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、ドライバーの要求駆動力や現在の車速VSPやモータ回転などを考慮してエンジン始動パターンを選択するというように、高い選択自由度を持つことで、走行要求や車両状態に合わせてエンジンENGを始動することができる。
【0109】
(6) ハイブリッド駆動系に、エンジンENGと、モータジェネレータMGと、ベルト式無段変速機CVTと、固定ギヤ機構GTと、駆動輪FL,FRと、を有し、
前記固定ギヤ機構GTは、前記ベルト式無段変速機CVTと並列に設けられ、ギヤ入力軸35とギヤ出力軸36との間のギヤ比を固定ギヤ比とする機構であり、
駆動力を駆動輪FL,FRへ伝達するドライブラインとして、
(a) エンジンENG→ベルト式無段変速機CVT→駆動輪FL,FR
(b) エンジンENG+モータジェネレータMG→ベルト式無段変速機CVT→駆動輪FL,FR
(c) エンジンENG+モータジェネレータMG→固定ギヤ機構GT→駆動輪FL,FR
(d) モータジェネレータMG→ベルト式無段変速機CVT→駆動輪FL,FR
(e) モータジェネレータMG→固定ギヤ機構GT→駆動輪FL,FR
を有する。
このため、(2)〜(5)の効果に加え、高いドライブラインの選択自由度により、ドライバーの要求駆動力を満たしつつ、燃費向上に最適なドライブラインを選択することができる。
【0110】
(7) ハイブリッド駆動系に、第1クラッチCL1と、第2クラッチCL2と、第3クラッチCL3と、第4クラッチCL4と、を有し、
前記第1クラッチCL1は、前記エンジンENGのエンジン出力軸44と前記ベルト式無段変速機CVTの変速機入力軸30を断接し、
前記第2クラッチCL2は、前記モータジェネレータMGのモータ軸45と前記ベルト式無段変速機CVTの変速機入力軸30を断接し、
前記第3クラッチCL3は、前記モータジェネレータMGのモータ軸45と前記固定ギヤ機構GTのギヤ入力軸35を断接し、
前記第4クラッチCL4は、前記ベルト式無段変速機CVTの変速機出力軸33と、前記固定ギヤ機構GTのギヤ出力軸36を断接する。
このため、(6)の効果に加え、エンジン始動パターンの変更や走行モードの変更や回生モードの際、適切なエネルギーフローとすることで、高いエネルギー効率によるエンジン始動やモード設定を行うことができる。例えば、エンジン始動パターン3では、第2クラッチCL2と第4クラッチCL4を開放することで、エンジンENGとベルト式無段変速機CVTをモータジェネレータMGのドライブラインから切り離すことができる(図13)。また、モータ回生モードでは、ベルト式無段変速機CVTを回生ラインに含まずに、回生エネルギーを効率良く回収することができる。
【0111】
(8) 前記固定ギヤ機構GTは、固定ギヤ比を固定減速ギヤ比とする機構とし、
前記エンジン始動制御手段(図6)は、前記パターン2を選択してエンジン始動する際、前記第3クラッチCL3と前記第4クラッチCL4とを締結し、前記モータジェネレータMGからのモータトルクを、前記固定ギヤ機構GTの固定減速ギヤ比と前記ベルト式無段変速機CVTの減速プーリ比により2段階にて増幅する。
このため、(7)の効果に加え、パターン2を選択してのエンジン始動時、エンジン始動のために使われるモータジェネレータMGからのトルクを小さく抑えることができ、この結果、モータ走行モードによる走行領域を拡大することができる。
【0112】
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0113】
実施例1では、固定ギヤ機構として、固定減速ギヤ比を有する固定ギヤ機構GTの例を示した。しかし、固定ギヤ機構としては、図16に示すように、固定増速ギヤ比を有する固定ギヤ機構GT'としても良い。さらに、固定ギヤ機構として、ギヤ比が1の固定等速ギヤ比を有する固定ギヤ機構としても良い。
【0114】
実施例1では、第3クラッチCL3と第4クラッチCL4として、油圧力や電磁力により締結/開放する摩擦クラッチを用いる例を示した。しかし、第3クラッチと第4クラッチとして、図17に示すように、ワンウェイクラッチによる第3ワンウェイクラッチOWC3と第4ワンウェイクラッチOWC4を用いるような例としても良い。さらに、図17に示すように、モータジェネレータMGを変速機出力軸側に設け、固定ギヤ機構GT"以外に、変速機入力軸と変速機出力軸の間を噛み合いギヤにより連結するような構造としても良い。
実施例1では、慣性体として、ベルト式無段変速機CVTのプライマリプーリ31およびセカンダリプーリ32を用いる例を示した。しかし、ベルト式無段変速機のプーリを用いるのみでなく、慣性体として、単にフライホイールを用いて、エンジン始動時、フライホイールをモータ走行モードのドライブラインから切り離す構成としても良い。この場合、例えば、モータジェネレータと駆動輪との間に段階的な複数の変速段を有する自動変速機(AT)を配置し、エンジンとモータジェネレータとの間にフライホイールを配置する構成としても良い。さらに、ベルト式無段変速機CVTや自動変速機ATの無い駆動系を持つハイブリッド車両にも適用することができる。要するに、エンジン、モータジェネレータ、慣性体、第1クラッチ、第2クラッチ、駆動輪を駆動系に有するハイブリッド車両であれば、実施例1以外の型式を持つハイブリッド車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0115】
ENG エンジン
MG モータジェネレータ
CVT ベルト式無段変速機
GT 固定ギヤ機構
FD ファイナルデファレンシャル
FL 左前輪(駆動輪)
FR 右前輪(駆動輪)
CL1 第1クラッチ
CL2 第2クラッチ
CL3 第3クラッチ
CL4 第4クラッチ
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 インバータ
4 バッテリ
5 第1クラッチコントローラ
6 第1クラッチ油圧ユニット
7 CVTコントローラ
8 第2〜4クラッチ油圧ユニット
9 ブレーキコントローラ
10 統合コントローラ
31 プラマリプーリ(慣性体)
32 セカンダリプーリ(慣性体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
モータジェネレータと、
前記モータジェネレータのみによるモータ走行モードにて前記モータジェネレータからのエネルギーを蓄積する慣性体と、
前記慣性体と前記エンジンを断接する第1クラッチと、
前記慣性体と前記モータジェネレータを断接する第2クラッチと、
前記モータ走行モードからのエンジン始動時、前記第2クラッチを開放して慣性体を前記モータジェネレータから切り離した状態で、前記第1クラッチを締結し、前記慣性体に蓄積されたエネルギーを使って前記エンジンを始動するエンジン始動制御手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
変速機入力軸に固定されたプライマリプーリと、変速機出力軸に固定されたセカンダリプーリと、両プーリに掛け渡したベルトと、を有するベルト式無段変速機を有し、
前記慣性体は、前記プラマリプーリおよび前記セカンダリプーリであることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記エンジン始動制御手段は、エンジン始動要求時、前記両プーリで発生可能なイナーシャ発生トルクが、前記エンジンを始動するのに必要なエンジン始動トルクよりも大きいか否かを判断し、前記イナーシャ発生トルクが前記エンジン始動トルクよりも大きいと判断された場合、イナーシャ発生トルクのみにより前記エンジンを始動し、前記イナーシャ発生トルクが前記エンジン始動トルク以下と判断された場合、前記両プーリがモータ走行モードのドライブラインと繋がっている状態で前記エンジンを始動することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記エンジン始動制御手段は、前記両プーリがモータ走行モードのドライブラインと繋がっている状態で前記エンジンを始動する際、前記ベルト式無段変速機のプーリ比を高プーリ比側にシフトする変速を行うことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記エンジン始動制御手段は、エンジン始動パターンとして、
・前記モータジェネレータをエンジン始動モータとして前記エンジンを始動するパターン1と、
・前記慣性体による慣性トルクをモータトルクのアシストトルクとして前記エンジンを始動するパターン2と、
・前記慣性体による慣性トルクのみによって前記エンジンを始動するパターン3と、
を有することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5までの何れか1項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
ハイブリッド駆動系に、エンジンと、モータジェネレータと、ベルト式無段変速機と、固定ギヤ機構と、駆動輪と、を有し、
前記固定ギヤ機構は、前記ベルト式無段変速機と並列に設けられ、ギヤ入力軸とギヤ出力軸との間のギヤ比を固定ギヤ比とする機構であり、
駆動力を駆動輪へ伝達するドライブラインとして、
(a) エンジン→ベルト式無段変速機→駆動輪
(b) エンジン+モータジェネレータ→ベルト式無段変速機→駆動輪
(c) エンジン+モータジェネレータ→固定ギヤ機構→駆動輪
(d) モータジェネレータ→ベルト式無段変速機→駆動輪
(e) モータジェネレータ→固定ギヤ機構→駆動輪
を有することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
ハイブリッド駆動系に、第1クラッチと、第2クラッチと、第3クラッチと、第4クラッチと、を有し、
前記第1クラッチは、前記エンジンのエンジン出力軸と前記ベルト式無段変速機の変速機入力軸を断接し、
前記第2クラッチは、前記モータジェネレータのモータ軸と前記ベルト式無段変速機の変速機入力軸を断接し、
前記第3クラッチは、前記モータジェネレータのモータ軸と前記固定ギヤ機構のギヤ入力軸を断接し、
前記第4クラッチは、前記ベルト式無段変速機の変速機出力軸と、前記固定ギヤ機構のギヤ出力軸を断接することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記固定ギヤ機構は、固定ギヤ比を固定減速ギヤ比とする機構とし、
前記エンジン始動制御手段は、前記パターン2を選択してエンジン始動する際、前記第3クラッチと前記第4クラッチとを締結し、前記モータジェネレータからのモータトルクを、前記固定ギヤ機構の固定減速ギヤ比と前記ベルト式無段変速機の減速プーリ比により2段階にて増幅することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項1】
エンジンと、
モータジェネレータと、
前記モータジェネレータのみによるモータ走行モードにて前記モータジェネレータからのエネルギーを蓄積する慣性体と、
前記慣性体と前記エンジンを断接する第1クラッチと、
前記慣性体と前記モータジェネレータを断接する第2クラッチと、
前記モータ走行モードからのエンジン始動時、前記第2クラッチを開放して慣性体を前記モータジェネレータから切り離した状態で、前記第1クラッチを締結し、前記慣性体に蓄積されたエネルギーを使って前記エンジンを始動するエンジン始動制御手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
変速機入力軸に固定されたプライマリプーリと、変速機出力軸に固定されたセカンダリプーリと、両プーリに掛け渡したベルトと、を有するベルト式無段変速機を有し、
前記慣性体は、前記プラマリプーリおよび前記セカンダリプーリであることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記エンジン始動制御手段は、エンジン始動要求時、前記両プーリで発生可能なイナーシャ発生トルクが、前記エンジンを始動するのに必要なエンジン始動トルクよりも大きいか否かを判断し、前記イナーシャ発生トルクが前記エンジン始動トルクよりも大きいと判断された場合、イナーシャ発生トルクのみにより前記エンジンを始動し、前記イナーシャ発生トルクが前記エンジン始動トルク以下と判断された場合、前記両プーリがモータ走行モードのドライブラインと繋がっている状態で前記エンジンを始動することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記エンジン始動制御手段は、前記両プーリがモータ走行モードのドライブラインと繋がっている状態で前記エンジンを始動する際、前記ベルト式無段変速機のプーリ比を高プーリ比側にシフトする変速を行うことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか1項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記エンジン始動制御手段は、エンジン始動パターンとして、
・前記モータジェネレータをエンジン始動モータとして前記エンジンを始動するパターン1と、
・前記慣性体による慣性トルクをモータトルクのアシストトルクとして前記エンジンを始動するパターン2と、
・前記慣性体による慣性トルクのみによって前記エンジンを始動するパターン3と、
を有することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5までの何れか1項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
ハイブリッド駆動系に、エンジンと、モータジェネレータと、ベルト式無段変速機と、固定ギヤ機構と、駆動輪と、を有し、
前記固定ギヤ機構は、前記ベルト式無段変速機と並列に設けられ、ギヤ入力軸とギヤ出力軸との間のギヤ比を固定ギヤ比とする機構であり、
駆動力を駆動輪へ伝達するドライブラインとして、
(a) エンジン→ベルト式無段変速機→駆動輪
(b) エンジン+モータジェネレータ→ベルト式無段変速機→駆動輪
(c) エンジン+モータジェネレータ→固定ギヤ機構→駆動輪
(d) モータジェネレータ→ベルト式無段変速機→駆動輪
(e) モータジェネレータ→固定ギヤ機構→駆動輪
を有することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
ハイブリッド駆動系に、第1クラッチと、第2クラッチと、第3クラッチと、第4クラッチと、を有し、
前記第1クラッチは、前記エンジンのエンジン出力軸と前記ベルト式無段変速機の変速機入力軸を断接し、
前記第2クラッチは、前記モータジェネレータのモータ軸と前記ベルト式無段変速機の変速機入力軸を断接し、
前記第3クラッチは、前記モータジェネレータのモータ軸と前記固定ギヤ機構のギヤ入力軸を断接し、
前記第4クラッチは、前記ベルト式無段変速機の変速機出力軸と、前記固定ギヤ機構のギヤ出力軸を断接することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記固定ギヤ機構は、固定ギヤ比を固定減速ギヤ比とする機構とし、
前記エンジン始動制御手段は、前記パターン2を選択してエンジン始動する際、前記第3クラッチと前記第4クラッチとを締結し、前記モータジェネレータからのモータトルクを、前記固定ギヤ機構の固定減速ギヤ比と前記ベルト式無段変速機の減速プーリ比により2段階にて増幅することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−56366(P2012−56366A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199293(P2010−199293)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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