説明

バックグラインド−アンダーフィル一体型テープ、及び、半導体チップの実装方法

【課題】接続性及び接合後の信頼性に優れた電極接合を行うことのできるバックグラインド−アンダーフィル一体型テープを提供する。また、該バックグラインド−アンダーフィル一体型テープを用いた半導体チップの実装方法を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂層と、バンプ保護層と、基材層とをこの順で有し、封止しようとする半導体チップのバンプの平均高さをBh、前記熱硬化性樹脂層の厚みをUh、前記バンプ保護層の厚みをPhとしたとき、下記式(1)を満たすバックグラインド−アンダーフィル一体型テープ。
0.8×Bh≦Uh+Ph<1.5×Bh (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続性及び接合後の信頼性に優れた電極接合を行うことのできるバックグラインド−アンダーフィル一体型テープに関する。また、本発明は、該バックグラインド−アンダーフィル一体型テープを用いた半導体チップの実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の小型化、高集積化が進展し、表面に電極として複数の突起(バンプ)を有するフリップチップ、複数の薄研削した半導体チップを積層したスタックドチップ等が生産されるようになった。同時に半導体チップの実装方法も種々の方法が提案されているが、現在では、半導体チップの接着は接着剤を用いてなされることが多い(特許文献1、2等)。
【0003】
このような小型の半導体チップは、例えば、フリップチップ実装を用いた以下のような方法により製造される。
まず、表面に電極として複数のバンプを有するウエハのバンプを有する面に、バックグラインドテープと呼ばれる粘着シート又はテープを貼り合わせ、この状態でウエハを裏面から所定の厚さにまで研削する。研削終了後、バックグラインドテープを剥離する。次いで、ウエハをダイシングして個々の半導体チップとし、得られた半導体チップを、他の半導体チップ又は基板上にフリップチップ実装する。その後、アンダーフィル剤を充填して硬化する。しかしながら、このような工程は極めて煩雑であるという問題がある。
【0004】
そこで、より簡便な方法として、バックグラインドテープを剥離する代わりに、バックグラインドテープの接着剤層をウエハ上に残したまま基材だけを剥離し、得られた半導体チップを、接着剤層を介して他の半導体チップ又は基板上にフリップチップ実装する方法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献3には、突起電極付ウエハの裏面を研削する工程において、該ウエハの回路面に貼られる積層シートであって、熱硬化性樹脂層(A層)と、A層の上に直接積層された熱可塑性樹脂層(B層)と、最外層である25℃で非可塑性の熱可塑性樹脂層(C層)とを有する積層シートが開示されている。特許文献3には、通常、突起電極はA層を貫通してB層に至ることになる旨、突起電極の高さをh、A層の厚さをAt、B層の厚さをBtとしたときに、At<hであり、且つ(At+Bt)>hであることが好ましい旨が記載されている。また、特許文献3に記載の積層シートを用いて半導体装置を製造する場合、樹脂封止はA層により行われる旨が記載されている。しかしながら、特許文献3に記載の積層シートを用いた場合には、より簡便にフリップチップ実装を行うことはできるものの、充分に高い接合信頼性を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−126658号公報
【特許文献2】特開2003−231875号公報
【特許文献3】特許第4170839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、接続性及び接合後の信頼性に優れた電極接合を行うことのできるバックグラインド−アンダーフィル一体型テープを提供することを目的とする。また、本発明は、該バックグラインド−アンダーフィル一体型テープを用いた半導体チップの実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、熱硬化性樹脂層と、バンプ保護層と、基材層とをこの順で有し、封止しようとする半導体チップのバンプの平均高さをBh、前記熱硬化性樹脂層の厚みをUh、前記バンプ保護層の厚みをPhとしたとき、下記式(1)を満たすバックグラインド−アンダーフィル一体型テープである。
0.8×Bh≦Uh+Ph<1.5×Bh (1)
以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者は、熱硬化性樹脂層と、バンプ保護層と、基材層とをこの順で有するバックグラインド−アンダーフィル一体型テープにおいて、封止しようとする半導体チップのバンプの平均高さに対して熱硬化性樹脂層とバンプ保護層との厚みの合計を特定の範囲となるように設計することにより、電極の接続性及び接合後の信頼性を改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明のバックグラインド−アンダーフィル一体型テープは、熱硬化性樹脂層と、バンプ保護層と、基材層とをこの順で有する。
表面にバンプを有する半導体チップを、基板又は他の半導体チップにフリップチップ実装する際には、例えば、表面にバンプを有するウエハを裏面から所定の厚さにまで研削した後、ウエハをダイシングして半導体チップに個片化し、得られた半導体チップのバンプと対向電極とを接合するとともに、半導体チップの封止を行う。本明細書中、バックグラインド−アンダーフィル一体型テープとは、このような一連の工程において用いられるテープであって、ウエハを裏面から研削する際にはバックグラインドテープとして用いられ、その後、バンプ保護層及び基材層が剥離され、ウエハ上に残された熱硬化性樹脂層が半導体チップを封止するために用いられるテープを意味する。
なお、本発明のバックグラインド−アンダーフィル一体型テープは、ウエハに貼り合わされる際には熱硬化性樹脂層がウエハと接するようにして貼り合わされる。
【0011】
本発明のバックグラインド−アンダーフィル一体型テープは、封止しようとする半導体チップのバンプの平均高さをBh、上記熱硬化性樹脂層の厚みをUh、上記バンプ保護層の厚みをPhとしたとき、下記式(1)を満たす。
0.8×Bh≦Uh+Ph<1.5×Bh (1)
上記熱硬化性樹脂層と上記バンプ保護層との厚みの合計(Uh+Ph)がこのような範囲であることにより、バンプが上記基材層によって過度に潰されることがなく、上述のような一連の工程を良好に行うことができる。そのため、接続性及び接合後の信頼性に優れた電極接合を行うことができる。また、バンプ高さにばらつきがある場合には、上記熱硬化性樹脂層と上記バンプ保護層との厚みの合計(Uh+Ph)がこのような範囲であることにより、バンプが上記基材層によって適度に潰され、バンプ高さを均一化することもできる。
【0012】
上記熱硬化性樹脂層と上記バンプ保護層との厚みの合計(Uh+Ph)が、封止しようとする半導体チップのバンプの平均高さBhの0.8倍未満であると、バックグラインド−アンダーフィル一体型テープをウエハに貼り合わせたり、ウエハを裏面から研削したりする際に、バンプが上記基材層によって過度に潰され、変形してしまう。そのため、接続性及び接合後の信頼性に充分に優れた電極接合を行うことができない。上記熱硬化性樹脂層と上記バンプ保護層との厚みの合計(Uh+Ph)が、封止しようとする半導体チップのバンプの平均高さBhの1.5倍以上であると、上記バンプ保護層が厚くなり、ウエハを裏面から研削する際に、ウエハを支持する機能が低下する。
上記熱硬化性樹脂層と上記バンプ保護層との厚みの合計(Uh+Ph)は、封止しようとする半導体チップのバンプの平均高さBhの0.85倍以上であることが好ましく、0.9倍以上であることがより好ましく、また、バンプ高さを均一化する観点からは封止しようとする半導体チップのバンプの平均高さBhの1.0倍以下であることが好ましいが、バンプ高さにばらつきがほとんどない場合には、1.0倍を超えていてもよい。
【0013】
なお、封止しようとする半導体チップのバンプの平均高さBhは特に限定されないが、20〜100μm程度が一般的である。
上記バンプの材質は特に限定されないが、少なくとも先端部分がハンダからなることが特に好ましい。
【0014】
上記熱硬化性樹脂層の厚みUhは、上記式(1)を満たしていれば特に限定されないが、封止しようとする半導体チップのバンプの平均高さBhの40%以上、90%未満であることが好ましい。上記熱硬化性樹脂層の厚みUhがBhの40%未満であると、半導体チップを封止する際に、封止信頼性が低下したり、半導体チップの角部にまでフィレットを形成することが困難となったりすることがある。また、上記熱硬化性樹脂層の厚みUhがBhの40%未満であると、上記式(1)を満たすためには上記バンプ保護層を厚くする必要があり、これにより、ウエハを裏面から研削する際に、ウエハを支持する機能が低下することがある。上記熱硬化性樹脂層の厚みUhがBhの90%以上であると、半導体チップを封止する際に、上記熱硬化性樹脂層を構成する樹脂が半導体チップ上面に這い上がりやすくなったり、半導体チップのバンプと対向電極との間に樹脂を噛み込み、封止信頼性が低下したりすることがある。また、上記熱硬化性樹脂層の厚みUhがBhの90%以上であると、上記式(1)を満たすためには上記バンプ保護層を薄くする必要があり、これにより、バンプが上記基材層によって過度に潰され、変形してしまうことがある。
上記熱硬化性樹脂層の厚みUhは、封止しようとする半導体チップのバンプの平均高さBhの45%以上、85%以下であることがより好ましい。
【0015】
上記バンプ保護層の厚みPhは、上記式(1)を満たしていれば特に限定されないが、封止しようとする半導体チップのバンプの平均高さBhの10%を超えて、80%以下であることが好ましい。上記バンプ保護層の厚みPhがBhの10%以下であると、バックグラインド−アンダーフィル一体型テープをウエハに貼り合わせたり、ウエハを裏面から研削したりする際に、バンプが上記基材層によって過度に潰され、変形してしまうことがある。上記バンプ保護層の厚みPhがBhの80%を超えると、上記式(1)を満たすためには上記熱硬化性樹脂層を薄くする必要があり、半導体チップを封止する際に、半導体チップの角部にまでフィレットを形成することが困難となることがある。
【0016】
具体的には、例えば、封止しようとする半導体チップのバンプの平均高さBhが45μmである場合には、上記熱硬化性樹脂層の厚みUhは、好ましくは18〜40μm、より好ましくは20〜38μmである。また、例えば、上記熱硬化性樹脂層の厚みUhが30μmである場合、上記バンプ保護層の厚みPhは、好ましくは6〜36μmである。
【0017】
また、上記基材層の好ましい厚みは、好ましい下限が4μm、好ましい上限が200μmである。上記基材層の厚みが4μm未満であると、ウエハを裏面から研削する際に、ウエハを支持する機能が低下することがある。上記基材層の厚みが200μmを超えると、研削後のウエハから上記熱硬化性樹脂層を残したまま上記バンプ保護層及び上記基材層を剥離する際に、ウエハに過剰の応力を発生させることがある。
上記基材層の厚みのより好ましい下限は5μm、より好ましい上限は100μmである。
【0018】
上記熱硬化性樹脂層は特に限定されないが、熱硬化性化合物及び熱硬化剤を含有する熱硬化性樹脂層が好ましい。
上記熱硬化性化合物は特に限定されないが、エポキシ樹脂を含有することが好ましい。上記エポキシ樹脂は特に限定されないが、多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂であることが好ましい。上記熱硬化性化合物が上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂を含有することにより、得られる熱硬化性樹脂層の硬化物は、剛直で分子の運動が阻害されるため優れた機械的強度及び耐熱性を発現し、また、吸水性が低くなるため優れた耐湿性を発現することができる。
【0019】
上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂は特に限定されず、例えば、ジシクロペンタジエンジオキシド、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシ樹脂等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂(以下、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂ともいう)、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリジジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等のナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂(以下、ナフタレン型エポキシ樹脂ともいう)、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボネート等が挙げられる。なかでも、ジシクロペンタジエンジオキシドが好ましい。これらの多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限は500、好ましい上限は2000である。上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂の重量平均分子量が500未満であると、得られる熱硬化性樹脂層の硬化物の機械的強度、耐熱性、耐湿性等が充分に向上しないことがある。上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂の重量平均分子量が2000を超えると、得られる熱硬化性樹脂層の硬化物が剛直になりすぎて、脆くなることがある。
【0021】
また、上記エポキシ樹脂として、エポキシ基を有するアクリル樹脂も挙げられる。
上記エポキシ基を有するアクリル樹脂は特に限定されず、例えば、グリシジルアクリレートとアルキルアクリレートとからなる共重合体等が挙げられる。なかでも、グリシジルアクリレートとアルキルアクリレートとからなり、エポキシ当量が約300g/eqである共重合体が好ましい。
【0022】
上記エポキシ基を有するアクリル樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限は1万、好ましい上限は100万である。上記エポキシ基を有するアクリル樹脂の重量平均分子量が1万未満であると、熱硬化性樹脂層を形成することが困難となったり、硬化物の接着力が不足したりすることがある。上記エポキシ基を有するアクリル樹脂の重量平均分子量が100万を超えると、一定の厚みを有する熱硬化性樹脂層を形成することが困難となることがある。
【0023】
上記熱硬化剤は特に限定されず、例えば、上記熱硬化性化合物がエポキシ樹脂を含有する場合には、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の加熱硬化型酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤、カチオン系触媒型硬化剤等が挙げられる。これらの熱硬化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、加熱硬化型酸無水物系硬化剤が好ましい。上記熱硬化剤として加熱硬化型酸無水物系硬化剤を用いると、熱硬化速度が速いため、硬化物におけるボイドの発生を効果的に低減することができる。従って、得られるバックグラインド−アンダーフィル一体型テープを用いて、より信頼性に優れた半導体チップ実装体を製造することができる。
【0024】
上記熱硬化剤の配合量は特に限定されないが、上記熱硬化性化合物の官能基と等量反応する熱硬化剤を用いる場合には、上記熱硬化性化合物の官能基量に対する好ましい下限が80当量、好ましい上限が120当量である。上記熱硬化剤の配合量が80当量未満であると、得られる熱硬化性樹脂層を加熱しても、充分に硬化させることができないことがある。上記熱硬化剤の配合量が120当量を超えても特に熱硬化性樹脂層の熱硬化性に寄与しない。
【0025】
上記熱硬化性樹脂層は、更に、上記エポキシ樹脂と反応する官能基を有する固形ポリマーを含有してもよい。
上記エポキシ基と反応する官能基を有する固形ポリマーは特に限定されず、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等を有する樹脂が挙げられる。なかでも、エポキシ基を有する高分子ポリマーが好ましい。
【0026】
上記エポキシ基を有する高分子ポリマーを含有することにより、得られる熱硬化性樹脂層の硬化物は、優れた可撓性を発現することができる。従って、例えば、上記熱硬化性樹脂層が、上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂と上記エポキシ基を有する高分子ポリマーとを含有する場合、得られる熱硬化性樹脂層の硬化物は、上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂に由来する優れた機械的強度、優れた耐熱性及び優れた耐湿性と、上記エポキシ基を有する高分子ポリマーに由来する優れた可撓性とを有し、得られるバックグラインド−アンダーフィル一体型テープを用いて、優れた耐冷熱サイクル性、耐ハンダリフロー性、寸法安定性及び接着信頼性等を実現することができる。
【0027】
上記エポキシ基を有する高分子ポリマーは、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有する高分子ポリマーであれば特に限定されないが、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ基を有する高分子ポリマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、エポキシ基を多く含み、得られる熱硬化性樹脂層の硬化物の機械的強度及び耐熱性をより高めることができることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。
【0028】
上記エポキシ樹脂と反応する官能基を有する固形ポリマーの配合量は特に限定されないが、上記熱硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限が200重量部、好ましい上限が400重量部である。
【0029】
上記熱硬化性樹脂層は、硬化速度又は硬化物の物性等を調整する目的で、更に、熱硬化促進剤を含有してもよい。
上記熱硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。これらの熱硬化促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、硬化速度又は硬化物の物性等の調整をするための反応系の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。
【0030】
上記イミダゾール系硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、イソシアヌル酸で塩基性を保護したイミダゾール系硬化促進剤(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)、液状イミダゾール(商品名「FUJICURE7000(フジキュア7000)」、T&K TOKA社製)等が挙げられる。これらのイミダゾール系硬化促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記熱硬化促進剤の配合量は特に限定されないが、上記熱硬化剤100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が50重量部である。上記熱硬化促進剤の配合量が5重量部未満であると、得られる熱硬化性樹脂層を加熱しても、充分に硬化させることができないことがあり、特にバックグラインド−アンダーフィル一体型テープの保管中に上記熱硬化促進剤がバンプ保護層へ移行した場合には深刻な硬化不足となることがある。上記熱硬化促進剤の配合量が50重量部を超えても特に熱硬化性樹脂層の熱硬化性に寄与しない。
【0032】
上記熱硬化性樹脂層は、更に、光硬化性化合物及び光重合開始剤を含有してもよい。
上記光硬化性化合物及び上記光重合開始剤を含有することにより、得られる熱硬化性樹脂層は、エネルギー線の照射によって半硬化し、このような半硬化した熱硬化性樹脂層は、なお充分な接着力を有する。従って、例えば、本発明のバックグラインド−アンダーフィル一体型テープを、ウエハと貼り合わせてウエハを裏面から研削した後、上記熱硬化性樹脂層を半硬化させ、その後、上記バンプ保護層及び上記基材層を剥離することにより、半硬化した熱硬化性樹脂層が付着したウエハを製造することができる。更に、このような半硬化した熱硬化性樹脂層が付着したウエハをダイシングして半導体チップに個片化し、得られた半硬化した熱硬化性樹脂層が付着した半導体チップを、基板又は他の半導体チップ上にフリップチップ実装することにより、半導体チップ実装体を簡便に製造することができる。
【0033】
上記光硬化性化合物は特に限定されず、例えば、ラジカルにより架橋可能な二重結合を有するアクリル樹脂等が挙げられる。
上記アクリル樹脂は特に限定されず、例えば、イソボロニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、ハイドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等からなる分子量5万〜60万程度の重合体又は共重合体に、二重結合で反応するようにメタクリレート基をウレタン結合で結合させた樹脂等が挙げられる。なかでも、二重結合の量が約1meq/gであるアクリレート、メタクリレートの重合体又は共重合体が好ましい。これらのアクリル樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記光硬化性化合物の配合量は特に限定されないが、上記熱硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限が10重量部、好ましい上限が40重量部である。上記光硬化性化合物の配合量が10重量部未満であると、得られる熱硬化性樹脂層にエネルギー線を照射しても、充分な形状保持効果が得られないことがある。上記光硬化性化合物の配合量が40重量部を超えると、得られる熱硬化性樹脂層の硬化物の耐熱性が不足することがある。
【0035】
上記光重合開始剤は特に限定されず、例えば、250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化される光重合開始剤が挙げられる。
上記250〜800nmの波長の光を照射することにより活性化される光重合開始剤として、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物や、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物や、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物や、フォスフィンオキシド誘導体化合物や、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、トデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等の光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記光重合開始剤の配合量は特に限定されないが、上記光硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が5重量部である。上記光重合開始剤の配合量が0.05重量部未満であると、得られる熱硬化性樹脂層にエネルギー線を照射しても、半硬化させることができないことがある。上記光重合開始剤の配合量が5重量部を超えても特に熱硬化性樹脂層の光硬化性に寄与しない。
【0037】
上記バンプ保護層が存在し、かつ、上記熱硬化性樹脂層と上記バンプ保護層との厚みの合計(Uh+Ph)が上述のような範囲であることにより、バンプが上記基材層によって過度に潰されることがなく、一連の工程を良好に行うことができる。そのため、接続性及び接合後の信頼性に優れた電極接合を行うことができる。
上記バンプ保護層は、40〜80℃での引張り弾性率の好ましい下限が10kPa、好ましい上限が9MPaである。引張り弾性率が10kPa未満であると、ウエハを裏面から研削する際に、ウエハを支持する機能が低下することがある。引張り弾性率が9MPaを超えると、バンプが上記基材層によって過度に潰され、変形してしまうことがある。
上記バンプ保護層の40〜80℃での引張り弾性率のより好ましい下限は15kPa、更に好ましい下限は20kPaであり、より好ましい上限は5MPa、更に好ましい上限は1MPaである。
【0038】
なお、本明細書中、40〜80℃での引張り弾性率とは、例えば、DVA−200(アイティー計測制御社製)等の動的粘弾性測定装置により、10Hzの周波数で測定した40〜80℃での引張り弾性率を意味する。40〜80℃との温度範囲は、例えば、ウエハを裏面から研削する工程等の温度範囲を考慮して設定されている。また、本明細書中、バンプ保護層の引張り弾性率とは、必ずしも、本発明のバックグランイド−アンダーフィル一体型テープにおけるバンプ保護層について測定した値を意味しない。即ち、引張り弾性率は材料に固有の値であるため、例えば、バンプ保護層が非常に軟らかい材料からなる場合には、引張り弾性率を充分に測定することのできる程度の厚みを有するバンプ保護層を別途作製し、得られたバンプ保護層について引張り弾性率を測定してもよい。
【0039】
上記バンプ保護層は、粘着性であってもよく、非粘着性であってもよい。上記バンプ保護層として、例えば、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリウレタン(PU)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びこれらの共重合体等を含有する透明な層、網目状構造を有する層、孔が開けられた層等が挙げられる。なかでも、上記バンプ保護層は、ポリエチレン(PE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)又はポリアルキル(メタ)アクリレートを含有する層であることが好ましい。
なお、本明細書中、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートとアクリレートとの両方を意味し、(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸とアクリル酸との両方を意味する。
【0040】
上記ポリアルキル(メタ)アクリレートは特に限定されず、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを重合又は共重合してなる一般的な(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとこれと共重合することのできる他のビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとこれと共重合することのできる他のビニルモノマーとの共重合体が好ましい。
【0041】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは特に限定されないが、アルキル基の炭素数が1〜12の1級又は2級のアルキルアルコールと、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーが好ましく、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
上記ポリアルキル(メタ)アクリレートを製造する方法は特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを、必要に応じて上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと共重合することのできる他のビニルモノマーと共に、重合開始剤の存在下にてラジカル重合させる方法等が挙げられる。
上記ラジカル重合させる方法は特に限定されず、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の従来公知の方法が挙げられる。
【0043】
また、上記ポリアルキル(メタ)アクリレートとして、官能基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂を用いることも好ましい。
上記官能基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂は、一般的な(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂の場合と同様に、アルキル基の炭素数が通常2〜18の範囲にある(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを主モノマーとし、このような主モノマーと、官能基含有モノマーと、必要に応じてこれらと共重合することのできる他の改質用モノマーとを常法により共重合させることにより得られる、常温で粘着性を有するポリマーであることが好ましい。このような官能基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、通常、20万〜200万程度である。
【0044】
上記官能基含有モノマーは特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー、(メタ)アクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
上記他の改質用モノマーは特に限定されず、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の一般的な(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂に用いられる各種モノマーが挙げられる。
【0045】
更に、上記ポリアルキル(メタ)アクリレートとして、ラジカル重合性不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合性ポリマーも用いることができる。
上記ラジカル重合性不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合性ポリマーは、分子内に官能基を有する上記官能基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂を予め合成し、分子内に上記の官能基と反応する官能基とラジカル重合性不飽和結合とを有する化合物を反応させることにより得られることが好ましい。
なお、上記バンプ保護層が上記ラジカル重合性不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合性ポリマーを含有する場合、上記バンプ保護層は、光重合開始剤又は熱重合開始剤を含有することが好ましい。
【0046】
上記バンプ保護層が上記ポリアルキル(メタ)アクリレートを含有する場合、上記バンプ保護層は、架橋剤を含有することが好ましい。
上記バンプ保護層が上記架橋剤を含有することで、上記ポリアルキル(メタ)アクリレートの主鎖間に架橋構造を形成することができ、このような架橋構造の度合いを調整することにより、上記バンプ保護層の40〜80℃での引張り弾性率を調整することができる。
【0047】
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、イソシアネート系架橋剤のイソシアネート基と、上記ポリアルキル(メタ)アクリレートにおけるアルコール性水酸基とが反応して部分的な3次元構造を形成することにより、上記バンプ保護層の40〜80℃での引張り弾性率を容易に調整できることから、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0048】
上記バンプ保護層が上記ポリアルキル(メタ)アクリレートと上記架橋剤とを含有する場合、上記架橋剤の配合量は特に限定されないが、上記バンプ保護層の引張り弾性率を上記範囲に調整する観点から、上記ポリアルキル(メタ)アクリレート100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が8重量部であり、より好ましい下限が2重量部、より好ましい上限が7重量部である。
【0049】
上記基材層が存在することにより、ウエハを裏面から研削する際にウエハを充分に支持し、ウエハの研削を良好に行うことができる。
上記基材層は、40〜80℃での引張り弾性率の好ましい下限が0.5GPa、好ましい上限が50GPaである。引張り弾性率が0.5GPa未満であると、ウエハを裏面から研削する際に、ウエハを支持する機能が低下することがある。引張り弾性率が50GPaを超えると、得られるバックグラインド−アンダーフィル一体型テープは、製造時の加工性に劣ることがある。
上記基材層の40〜80℃での引張り弾性率のより好ましい下限は1GPa、更に好ましい下限は3GPa、より好ましい上限は10GPaである。
【0050】
上記基材層として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン等を含有する透明な層、網目状構造を有する層、孔が開けられた層等が挙げられる。なかでも、上記熱硬化性樹脂層と上記バンプ保護層との厚みの合計(Uh+Ph)が、封止しようとする半導体チップのバンプの平均高さBhの1.0倍以下であっても、バンプを過度に潰すことなくバンプ高さを均一化することができることから、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)が更に好ましい。
【0051】
本発明のバックグラインド−アンダーフィル一体型テープを用いた半導体チップの実装方法であって、本発明のバックグラインド−アンダーフィル一体型テープの熱硬化性樹脂層と、表面にバンプを有するウエハのバンプを有する面とを貼り合わせる工程1と、上記ウエハを、本発明のバックグラインド−アンダーフィル一体型テープに固定した状態で裏面から研削する工程2と、上記研削後のウエハに貼り合わせられた本発明のバックグラインド−アンダーフィル一体型テープから、バンプ保護層及び基材層を剥離して、熱硬化性樹脂層が付着したウエハを得る工程3と、上記熱硬化性樹脂層が付着したウエハをダイシングして、熱硬化性樹脂層が付着した半導体チップに個片化する工程4と、上記熱硬化性樹脂層が付着した半導体チップを、熱硬化性樹脂層を介して基板又は他の半導体チップに接着して半導体チップを実装する工程5とを有する半導体チップの実装方法もまた、本発明の1つである。
【0052】
本発明の半導体チップの実装方法においては、まず、本発明のバックグラインド−アンダーフィル一体型テープの熱硬化性樹脂層と、表面にバンプを有するウエハのバンプを有する面とを貼り合わせる工程1を行う。
上記表面にバンプを有するウエハは特に限定されず、例えば、シリコン、ガリウム砒素等の半導体からなり、金、銅、銀−錫ハンダ、アルミニウム、ニッケル等からなるバンプを表面に有するウエハが挙げられる。
【0053】
上記工程1は常圧下で行ってもよいが、より密着性を向上するためには、1torr程度の真空下で行うことが好ましい。また、貼り合わせの際、必要に応じて60〜100℃程度に加熱してもよい。上記貼り合わせる方法は特に限定されないが、真空ラミネーターを用いる方法が好ましい。
【0054】
本発明の半導体チップの実装方法においては、次いで、上記ウエハを、本発明のバックグラインド−アンダーフィル一体型テープに固定した状態で裏面から研削する工程2を行う。これにより、上記ウエハを所望の厚みに研削する。
上記研削する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、市販の研削装置(例えば、Disco社製の「DFG8540」等)を用いて、2400rpmの回転で10〜0.1μm/sの研削量の条件にて研削を行い、最終的にはCMPで仕上げる方法等が挙げられる。
【0055】
本発明の半導体チップの実装方法においては、上記工程2の後、上記研削後のウエハに貼り合わせられた本発明のバックグラインド−アンダーフィル一体型テープにエネルギー線を照射して、上記熱硬化性樹脂層を半硬化させる工程を行ってもよい。
これにより、上記熱硬化性樹脂層の接着力が低下し、後の工程における上記バンプ保護層及び上記基材層の剥離が容易になる。また、このとき、上記熱硬化性樹脂層は完全な硬化ではなく「半硬化」することから、後の工程における基板又は他の半導体チップとの接着時には、なお充分な接着力を発揮することができる。
【0056】
本明細書中、半硬化とは、ゲル分率が10〜60重量%であることを意味する。ゲル分率が10重量%未満である熱硬化性樹脂層は、流動性が高くなり、形状保持力が不足したり、ダイシング時に綺麗に切断することが困難となったりすることがある。ゲル分率が60重量%を超える熱硬化性樹脂層は、接着力が不充分となり、このような熱硬化性樹脂層が付着した半導体チップは、基板又は他の半導体チップに接着することが困難となることがある。
なお、本明細書中、ゲル分率は、例えば、酢酸メチル又はメチルエチルケトン等の、熱硬化性樹脂層を構成する樹脂を充分に溶解できる溶解度を有する溶剤に半硬化した熱硬化性樹脂層を浸透させ、充分な時間撹拌し、メッシュを用いてろ過した後、乾燥して得られる未溶解物の量から下記式(2)により算出することができる。
ゲル分率(重量%)=100×(W−W)/(W−W) (2)
式(2)中、Wはバンプ保護層及び基材層の重量を表し、Wは溶剤に浸漬する前のバックグラインド−アンダーフィル一体型テープの重量を表し、Wは溶剤に浸漬し乾燥した後のバックグラインド−アンダーフィル一体型テープの重量を表す。
【0057】
上記半硬化した状態は、上記光硬化性化合物の種類又は配合を上述のように選択したり、例えば、上記熱硬化性樹脂層が光硬化性化合物として上記ラジカルにより架橋可能な二重結合を有するアクリル樹脂を含有する場合には、エネルギー線の照射量を調整したりすることによって、容易に達成することができる。
例えば、上記熱硬化性樹脂層が光硬化性化合物として上記ラジカルにより架橋可能な二重結合を有するアクリル樹脂を含有する場合、エネルギー線の照射により発生したラジカルが、アクリレート基の二重結合と反応する官能基と連鎖反応し、三次元ネットワーク構造を形成して、上記半硬化した状態を形成する。
【0058】
上記エネルギー線を照射する方法は特に限定されないが、例えば、上記基材層側から、超高圧水銀灯を用いて、365nm付近の紫外線を上記ウエハ面への照度が60mW/cmとなるよう照度を調節して20秒間照射する(積算光量1200mJ/cm)方法等が挙げられる。
【0059】
本発明の半導体チップの実装方法においては、次いで、上記研削後のウエハに貼り合わせられた本発明のバックグラインド−アンダーフィル一体型テープから、上記バンプ層及び上記基材層を剥離して、熱硬化性樹脂層が付着したウエハを得る工程3を行う。
上記工程3においては、エネルギー線の照射により上記熱硬化性樹脂層が半硬化している場合には特に、上記バンプ保護層及び上記基材層を極めて容易に剥離することができる。
【0060】
本発明の半導体チップの実装方法においては、次いで、上記熱硬化性樹脂層が付着したウエハをダイシングして、熱硬化性樹脂層が付着した半導体チップに個片化する工程4を行う。
上記工程4においては、エネルギー線の照射により上記熱硬化性樹脂層が半硬化している場合には特に、上記熱硬化性樹脂層に起因するヒゲが発生することなく、上記熱硬化性樹脂層ごと綺麗に、容易に切断することができる。また、上記熱硬化性樹脂層が半硬化している場合には特に、切削くずが上記熱硬化性樹脂層に付着することを抑制することができ、ダイシング時に使用する水による上記熱硬化性樹脂層の劣化も抑制することができる。上記ダイシングする方法は特に限定されず、例えば、従来公知の砥石等を用いて切断分離する方法等が挙げられる。
【0061】
本発明の半導体チップの実装方法においては、次いで、上記熱硬化性樹脂層が付着した半導体チップを、熱硬化性樹脂層を介して基板又は他の半導体チップに接着して半導体チップを実装する工程5を行う。
なお、上記熱硬化性樹脂層半硬化している場合であっても、上記熱硬化性樹脂層はなお充分な接着力を有しており、上記熱硬化性樹脂層が付着した半導体チップを、熱硬化性樹脂層を介して基板又は他の半導体チップに接着することができる。
また、本明細書において半導体チップの実装とは、基板上に半導体チップを実装する場合と、基板上に実装されている1以上の半導体チップ上に、更に半導体チップを実装する場合との両方を含む。
【0062】
上記工程5により半導体チップを実装した後、更に、加熱することによって上記熱硬化性樹脂層を完全に硬化させる工程6を行うことにより、より安定した接着を実現することができる。
【0063】
上記の説明においては、熱硬化性樹脂層が付着したウエハを得る工程3を行った後、該熱硬化性樹脂層が付着したウエハをダイシングして、熱硬化性樹脂層が付着した半導体チップに個片化する工程4を行った。
この他の態様として、工程3で得られた熱硬化性樹脂層が付着したウエハ上に、熱硬化性樹脂層を介して他のウエハを積層してウエハ積層体を製造し、得られたウエハ積層体を一括的にダイシングして、熱硬化性樹脂層が付着した半導体チップの積層体を得てもよい。
【0064】
本発明の半導体チップの実装方法においては、上記熱硬化性樹脂層と上記バンプ保護層との厚みの合計(Uh+Ph)が上述のような範囲であることにより、バンプが上記基材層によって過度に潰されることがなく、一連の工程を良好に行うことができる。そのため、接続性及び接合後の信頼性に優れた電極接合を行うことができる。また、バンプ高さにばらつきがある場合には、上記熱硬化性樹脂層と上記バンプ保護層との厚みの合計(Uh+Ph)が上述のような範囲であることにより、バンプが上記基材層によって適度に潰され、バンプ高さを均一化することもできる。
【発明の効果】
【0065】
本発明によれば、接続性及び接合後の信頼性に優れた電極接合を行うことのできるバックグラインド−アンダーフィル一体型テープを提供することができる。また、本発明によれば、該バックグラインド−アンダーフィル一体型テープを用いた半導体チップの実装方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0067】
(実施例1)
(1)バックグランイド−アンダーフィル一体型テープの製造
基材層としての厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルム(商品名「テトロン」、帝人デュポン社製)の片側に、アクリル樹脂(モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートを含むポリアルキルアクリレート)と、このアクリル樹脂100重量部に対して1.5重量部のコロネートL−45(日本ポリウレタン工業社製)とを酢酸エチルで希釈した塗液を、コンマコーターを用いて塗布し、80℃で10分間乾燥した後、40℃で3日間養生し、厚さ17μmのバンプ保護層を形成した。また、表1の組成に従って、下記に示す各材料を、ホモディスパーを用いて攪拌混合して熱硬化性樹脂組成物を調製した。離型PETフィルム上に、コンマコート法により、得られた熱硬化性樹脂組成物を乾燥後の熱硬化性樹脂層の厚みが27μmとなるように塗工し、100℃で5分間乾燥させて熱硬化性樹脂層を形成した。次いで、得られたバンプ保護層と熱硬化性樹脂層とをラミネーターによって貼り合わせることにより、バックグランイド−アンダーフィル一体型テープを得た。
【0068】
(エポキシ化合物)
・HP−7200L(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、DIC社製)
・EXA−4710(ナフタレン型エポキシ樹脂、DIC社製)
(エポキシ基含有アクリル樹脂)
・G−2050−M(グリシジル基含有アクリル樹脂、重量平均分子量20万、日油社製)
・G−017581(グリシジル基含有アクリル樹脂、重量平均分子量1万、日油社製)
(熱硬化剤)
・YH−309(酸無水物系硬化剤、JER社製)
(熱硬化促進剤)
・フジキュア7000(常温で液状のイミダゾール化合物、T&K TOKA社製)
(無機フィラー)
・SX009−MJF(フェニルトリメトキシシラン表面処理球状シリカ、平均粒子径0.05μm、アドマテックス社製)
・SE−1050−SPT(フェニルトリメトキシシラン表面処理球状シリカ、平均粒子径0.3μm、アドマテックス社製)
(その他)
・AC−4030(応力緩和剤、ガンツ化成社製)
【0069】
(2)半導体チップ実装体の製造
直径20cm、厚み725μmであり、表面に平均高さ35μm、幅35μm角の正方形の銅ポストの上に平均高さ20μmのハンダをつけたバンプ(バンプの平均高さ55μm)が50μmピッチでペリフェラル状に多数形成されている、1チップの大きさが7.6mm角のウエハ(シリコンウエハ)を用意した。
ウエハのバンプを有する面に、上記で得られたバックグラインド−アンダーフィル一体型テープを、真空ラミネーター(ATM−812M、タカトリ社製)を用いて、真空下(1Torr)、70℃で貼り合わせた。次いで、得られた積層体を研削装置に取りつけ、ウエハの厚さが約100μmになるまで裏面から研削した。このとき、研削の摩擦熱によりウエハの温度が上昇しないように、ウエハに水を散布しながら作業を行った。研削後は、研磨装置を用いて、CMP(Chemical Mechanical Polishing)プロセスによりアルカリのシリカ分散水溶液による研磨を行うことにより、鏡面化加工を行った。
次いで、ウエハの裏面にダイシングリングの付いたダイシングテープを貼り合わせた後、バックグラインド−アンダーフィル一体型テープから、バンプ保護層及び基材層を剥離した。その後、ダイシングストリートに従って熱硬化性樹脂層ごとウエハをダイシングカットした。得られた熱硬化性樹脂層が付着した半導体チップをピックアップして、フリップチップボンダー(FC3000、東レエンジニアリング社製)を用いて半導体チップに対応する15mm角の樹脂基板に接合し、半導体チップ実装体を得た。接合条件は、150℃40N1秒、280℃40N3秒であった。
【0070】
(実施例2〜5)
バンプ保護層及び熱硬化性樹脂層の厚みを表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、バックグランイド−アンダーフィル一体型テープ、及び、半導体チップ実装体を得た。
【0071】
(実施例6〜10)
バンプの平均高さが45μmであるウエハを用い、かつ、バンプ保護層及び熱硬化性樹脂層の厚みを表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、バックグランイド−アンダーフィル一体型テープ、及び、半導体チップ実装体を得た。
【0072】
(比較例1〜3)
バンプ保護層及び熱硬化性樹脂層の厚みを表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、バックグランイド−アンダーフィル一体型テープ、及び、半導体チップ実装体を得た。
【0073】
(比較例4及び5)
バンプの平均高さが45μmであるウエハを用い、かつ、バンプ保護層及び熱硬化性樹脂層の厚みを表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、バックグランイド−アンダーフィル一体型テープ、及び、半導体チップ実装体を得た。
【0074】
<評価>
実施例及び比較例で得られた半導体チップ実装体等について下記の評価を行った。結果を表2に示した。
【0075】
(1)バックグランイド−アンダーフィル一体型テープ貼り合わせ後のバンプ観察
バックグランイド−アンダーフィル一体型テープ貼り合わせ後のバンプ形状の断面を、光学顕微鏡を用いて観察した。以下の基準で評価した。
○:バンプ高さが均一となり、かつ、バンプが潰れすぎることがなかった。
×:バンプの先端が潰れ、変形してしまった。
なお、貼り合わせ前後でバンプ形状に変化がなかった場合は、「変化なし」とした。
【0076】
(2)バックグラインド性
バックグラインド前後のウエハの状態を、光学顕微鏡を用いて観察し、以下の基準で評価を行った。
○:バックグラインドにより、ウエハに損傷が全く見られなかった。
×:バックグラインドにより、ウエハに損傷が見られた。
【0077】
(3)温度サイクル試験
得られた半導体チップ実装体を、JEDEC レベル3のプリコンディションにて吸湿させ、その後、温度サイクル試験機に投入した。温度サイクルの条件は、−55℃から125℃、1000サイクルであった。抵抗値変化を測定して10%以内であった実装体を良品とし、10サンプルのうちの良品数を評価した。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、接続性及び接合後の信頼性に優れた電極接合を行うことのできるバックグラインド−アンダーフィル一体型テープを提供することができる。また、本発明によれば、該バックグラインド−アンダーフィル一体型テープを用いた半導体チップの実装方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂層と、バンプ保護層と、基材層とをこの順で有し、
封止しようとする半導体チップのバンプの平均高さをBh、前記熱硬化性樹脂層の厚みをUh、前記バンプ保護層の厚みをPhとしたとき、下記式(1)を満たす
ことを特徴とするバックグラインド−アンダーフィル一体型テープ。
0.8×Bh≦Uh+Ph<1.5×Bh (1)
【請求項2】
請求項1記載のバックグラインド−アンダーフィル一体型テープを用いた半導体チップの実装方法であって、
前記バックグラインド−アンダーフィル一体型テープの熱硬化性樹脂層と、表面にバンプを有するウエハのバンプを有する面とを貼り合わせる工程1と、
前記ウエハを、前記バックグラインド−アンダーフィル一体型テープに固定した状態で裏面から研削する工程2と、
前記研削後のウエハに貼り合わせられた前記バックグラインド−アンダーフィル一体型テープから、バンプ保護層及び基材層を剥離して、熱硬化性樹脂層が付着したウエハを得る工程3と、
前記熱硬化性樹脂層が付着したウエハをダイシングして、熱硬化性樹脂層が付着した半導体チップに個片化する工程4と、
前記熱硬化性樹脂層が付着した半導体チップを、熱硬化性樹脂層を介して基板又は他の半導体チップに接着して半導体チップを実装する工程5とを有する
ことを特徴とする半導体チップの実装方法。

【公開番号】特開2012−244115(P2012−244115A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115995(P2011−115995)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】