説明

二流体ノズル、ならびにそれを用いた基板処理装置および基板処理方法

【課題】混合処理液による処理効率を向上させることができる二流体ノズル、ならびにそれを用いた基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】二流体ノズル3は、外筒23および内筒24を含む。内筒24の下端には、硫酸を吐出する半円状の第1処理液吐出口30と、過酸化水素水を吐出する半円状の第2処理液吐出口34とが形成されている。外筒23の下端と内筒24の下端との間は、第1および第2処理液吐出口30,34を取り囲み、窒素ガスを吐出する円環状の環状気体吐出口31となっている。第1および第2処理液吐出口30,34から吐出された硫酸および過酸化水素水は、環状気体吐出口31から吐出された窒素ガスと混合されて液滴状態となり、ウエハWの上空またはウエハWの表面上で混合されて、活性の高いSPMとしてウエハWの表面に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二流体ノズル、ならびにそれを用いた基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板の表面に形成されたレジスト膜を剥離するための処理(レジスト剥離処理)が行われる。
レジスト剥離処理の方式としては、複数枚の基板を一括して処理するバッチ式が従来の主流であったが、最近では、基板を1枚ずつ処理する枚葉式が注目されてきている。具体的には、枚葉式のレジスト剥離処理では、基板がその表面と直交する回転軸線まわりに一定の回転速度で回転されつつ、ノズルから基板の表面の中央部に、レジスト剥離液としてのSPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水)が供給される。
【0003】
ノズルに接続された配管の途中には、ミキシングバルブおよび攪拌フィン付流通管が介装されており、このミキシングバルブおよび攪拌フィン付流通管で硫酸および過酸化水素水が混合されて反応することにより、カロ酸(ペルオキソー酸)などの強酸化力を有する成分を含むSPMが生成される。
ミキシングバルブおよび攪拌フィン付流通管からノズルに供給されるSPMは、配管を流れる間に、硫酸と過酸化水素水との反応熱により昇温し、ウエハの表面には、その昇温したSPMが供給される(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−93926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レジスト剥離処理を効率的に行うには、たとえば、基板に供給されるSPMの温度を高温にして、SPMの活性を高めることが考えられる。ところが、前述の枚葉式のレジスト剥離処理では、基板に供給されるSPMの温度が常に一定ではなく、レジスト剥離処理の初期に供給されるSPMの温度が低いことが明らかになってきた。したがって、レジスト剥離処理の初期における処理効率が悪くなっており、レジスト剥離処理に要する時間が長くなってしまう。
【0005】
この原因としては、たとえば、レジスト剥離処理の初期においてノズルや配管の温度が低下しており、そのため、SPMの反応熱がノズルや配管に吸熱されることなどが考えられる。
同様の問題は、SPMによるレジスト剥離処理だけでなく、種類の異なる複数の処理液を混合して形成された混合処理液の反応熱を利用しつつ当該混合処理液による処理を基板に行う場合にも生じていた。
【0006】
さらに処理液混合時の反応熱を利用する場合以外にも、複数の処理液を混合して調製される混合処理液を用いた基板処理においても同様の問題がある。たとえば、配管内に残留した混合処理液の活性は時間経過とともに低下するので、処理の初期において所望の基板処理効率が得られない場合がある。
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、混合処理液による処理効率を向上させることができる二流体ノズル、ならびにそれを用いた基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、第1処理液、第2処理液および気体が導入されるケーシング(23)と、前記ケーシングに形成され、前記第1処理液を吐出するための第1液吐出口(30,30a,30c〜30f,38)と、前記ケーシングに形成され、前記第2処理液を吐出するための第2液吐出口(34,34a,34c〜34f)と、前記第1および第2液吐出口を取り囲む環状(好ましくは円環状)をなすように前記ケーシングに形成され、前記気体を吐出するための環状気体吐出口(31)とを含み、前記ケーシング外で前記第1および第2処理液ならびに前記気体を混合させて処理液の液滴を形成し、この処理液の液滴を処理対象に向けて吐出するようになっている、二流体ノズル(3)である。
【0008】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この発明によれば、互いに種類の異なる第1処理液および第2処理液は、それぞれ、第1液吐出口および第2液吐出口から吐出され、前記第1および第2液吐出口を取り囲む環状気体吐出口から気体が吐出される。これにより、第1および第2処理液をそれぞれケーシング外で気体と混合させて、第1処理液の液滴および第2処理液の液滴を同時に形成し、この第1および第2処理液の液滴を、処理対象の上空または処理対象上で混合させることができる。すなわち、吐出後に混合されて生成された第1および第2処理液の混合処理液を処理対象に供給することができる。
【0009】
第1および第2処理液は吐出後に混合されるので、前記混合処理液が二流体ノズルや配管内に残留することはない。したがって、二流体ノズルや配管内に残留して時間経過により活性が低下した混合処理液が処理対象に供給されることを防止することができる。
したがって、たとえば、第1および第2処理液の反応により生じる反応熱は、二流体ノズルや配管などに吸熱されずに、前記混合処理液の昇温に寄与する。これにより、処理の初期であっても、十分に昇温された前記混合処理液を処理対象に供給することができる。その結果、前記混合処理液による処理の初期における処理効率を向上させることができる。
【0010】
さらに、第1および第2処理液は液滴状態で十分に混ざり合うので、効率的に反応熱を発生させることができる。これにより、前記混合処理液の液温をより高温とし、前記混合処理液による処理効率を向上させることができる。
前記第1および第2液吐出口は、たとえば、円形、半円形、円弧、扇形、環状(円環状または多角環状)などの形状にされていてもよい。また、前記第1および第2液吐出口は、たとえば、前記環状気体吐出口の内縁に沿って配置されていてもよいし、前記環状気体吐出口に囲まれた領域内に分散配置されていてもよい。
【0011】
また、前記環状気体吐出口は、たとえば、円環状や多角環状(好ましくは円環状)であってもよい。
前記第1処理液としては、たとえば、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、オゾン水、水素水、炭酸水のうちの少なくとも1種以上を含む液を用いることができる。また、前記第2処理液としては、たとえば、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、オゾン水、水素水、炭酸水のうちの少なくとも1種以上を含む液を用いることができる。
【0012】
前記気体としては、たとえば、窒素ガス、空気、オゾンガス、水素ガス、炭酸ガスのうちの少なくとも1種以上を含む気体を用いることができる。また、これらの気体は加熱されていてもよい。加熱された気体を吐出させることにより、当該気体と混合される処理液の温度の低下を抑制したり、その温度を昇温させたりすることができる。
請求項2記載の発明は、前記第1および第2液吐出口を含む複数の液吐出口(30,30a,30c〜30f,34,34a,34c〜34f)が前記環状気体吐出口に取り囲まれた領域において前記ケーシングに形成されており、前記複数の液吐出口は、前記環状気体吐出口の中心(O)に関して対称な位置に配置された一対または複数対の液吐出口(30,30a,30c,30e,30f,34,34a,34c,34e,34f)を含む、請求項1記載の二流体ノズルである。
【0013】
この発明によれば、前記第1および第2液吐出口を含む複数の液吐出口を、前記環状気体吐出口に囲まれた領域において前記ケーシングに形成し、この複数の液吐出口から第1および第2処理液を吐出させることにより、前記第1および第2処理液と前記気体とを確実に混合させて、第1処理液の液滴および第2処理液の液滴を効率的に形成することができる。
【0014】
また、前記複数の液吐出口のうちの対をなす液吐出口を、前記環状気体吐出口の中心に関して対称な位置に配置することにより、当該対をなす液吐出口から吐出される処理液同士を均一に混合させることができる。
請求項3記載の発明は、前記第1および第2液吐出口を含む複数の液吐出口が前記環状気体吐出口に取り囲まれた領域において前記ケーシングに形成されており、前記複数の液吐出口は、前記環状気体吐出口と同心形状をなすように形成された一つまたは複数の液吐出口(30,30a,30c〜30f,34,34a,34c〜34f)を含む、請求項1または2記載の二流体ノズルである。
【0015】
この発明によれば、前記複数の液吐出口から第1および第2処理液を吐出させることにより、前記第1および第2処理液と前記気体とを確実に混合させて、第1および第2処理液の液滴を効率的に形成することができる。
さらに、前記環状気体吐出口と同心形状をなす液吐出口を設けることにより、当該同心形状をなす液吐出口から吐出された処理液と、前記環状気体吐出口から吐出された気体とをより確実に混合させて、処理液の液滴をより効率的に形成させることができる。
【0016】
前記複数の液吐出口は、たとえば、円形、半円形、円弧、扇形、環状(円環状または多角環状)などの形状にされていてもよい。また、前記複数の液吐出口は、たとえば、前記環状気体吐出口の内縁に沿って配置されていてもよいし、前記環状気体吐出口に囲まれた領域内に分散配置されていてもよい。
前記同心形状をなすように形成された液吐出口は、たとえば、環状気体吐出口と同心の円形または環状(円環状または多角環状)であってもよいし、環状気体吐出口と同心となるように複数の液吐出口が環状に配列されたものであってもよい。
【0017】
請求項4記載の発明は、前記環状気体吐出口の中心位置において前記ケーシングに形成された中心気体吐出口(40)をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の二流体ノズルである。
この発明によれば、前記環状気体吐出口からだけでなく、環状気体吐出口の中心位置に形成された中心気体吐出口からも気体を吐出させることにより、前記環状気体吐出口および中心気体吐出口間に形成された液吐出口から吐出される処理液と前記気体とを確実に混合させて、処理液の液滴を効率的に形成することができる。
【0018】
前記中心気体吐出口は、たとえば、前記環状気体吐出口と同心となる多角形や円形などの形状にされていてもよいが、円形であることが好ましい。
請求項5記載の発明は、処理対象の基板を保持して回転させるための基板回転手段(2)と、前記基板回転手段によって回転されている基板の主面に、処理液の液滴を供給するための請求項1〜4のいずれか一項に記載の二流体ノズルと、前記二流体ノズルのケーシングに前記第1処理液および第2処理液を供給するための処理液供給手段(11,12)と、前記二流体ノズルのケーシングに前記気体を供給するための気体供給手段(10)と、前記二流体ノズルを基板の主面に沿って移動させるためのノズル移動手段(16)とを含む、基板処理装置(1)である。
【0019】
この発明によれば、処理液供給手段からケーシングに第1および第2処理液を供給し、気体供給手段からケーシングに気体を供給して、第1処理液、第2処理液および気体を二流体ノズルから吐出させ、この吐出された第1および第2処理液と、気体とをケーシング外で混合させて、第1処理液の液滴および第2処理液の液滴を形成させる。
そして、この第1および第2処理液の液滴を、二流体ノズルから基板回転手段によって回転されている基板の主面に供給しつつ、ノズル移動手段によって当該二流体ノズルを基板の主面に沿って移動させる。これにより、前記第1および第2処理液の液滴が基板の上空また基板の主面上で混合されて、第1および第2処理液の混合処理液が生成され、この混合処理液が基板の主面全域に供給される。その結果、前記混合処理液による処理が基板の主面全域に施される。
【0020】
第1および第2処理液は吐出後に混合されるので、前記混合処理液が二流体ノズルや配管内に残留することはない。したがって、二流体ノズルや配管内に残留して時間経過により活性が低下した混合処理液が基板の主面に供給されることを防止することができる。
たとえば、第1および第2処理液は、吐出後に混合されているので、第1および第2処理液の反応により生じる反応熱は、二流体ノズルや配管などに吸熱されることなく、前記混合処理液の昇温に寄与する。これにより、前記混合処理液による処理の初期であっても、十分に昇温された前記混合処理液を処理対象に供給し、前記混合処理液による処理効率を向上させることができる。
【0021】
請求項6記載の発明は、処理対象の基板を保持して回転させる基板回転工程と、請求項1〜4のいずれか一項に記載の二流体ノズルのケーシングに前記第1処理液および第2処理液を供給する処理液供給工程と、前記二流体ノズルのケーシングに前記気体を供給する気体供給工程と、前記基板回転工程で回転されている基板の主面に、前記二流体ノズルから生成される処理液の液滴を供給する液滴供給工程と、前記液滴供給工程と並行して、前記二流体ノズルを基板の主面に沿って移動させるノズル移動工程とを含む、基板処理方法である。
【0022】
この発明によれば、請求項5に関連して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の構成を説明するための図解図である。この基板処理装置1は、処理対象の基板としての半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)に処理液(薬液または純水その他のリンス液)による処理を施すための枚葉式の処理装置であり、ウエハWを水平に保持して回転させるスピンチャック2と、スピンチャック2に保持されたウエハWの表面(上面)に処理液の液滴を供給する二流体ノズル3と、スピンチャック2に保持されたウエハWの表面に処理液を供給する処理液ノズル4とを備えている。
【0024】
スピンチャック2は、鉛直な方向に延びる回転軸5と、回転軸5の上端に水平に取り付けられた円板状のスピンベース6とを有している。スピンチャック2は、スピンベース6の上面周縁部に立設された複数本のチャックピン7によって、ウエハWをほぼ水平に保持することができるようになっている。
すなわち、複数本のチャックピン7は、スピンベース6の上面周縁部において、ウエハWの外周形状に対応する円周上で適当な間隔をあけて配置されており、ウエハWの裏面(下面)周縁部を支持しつつ、ウエハWの周面の異なる位置に当接することにより、互いに協働してウエハWを挟持し、このウエハWをほぼ水平に保持することができるようになっている。
【0025】
また、回転軸5には、モータなどの駆動源を含むチャック回転駆動機構8が結合されている。複数本のチャックピン7でウエハWを保持しつつ、チャック回転駆動機構8から回転軸5に駆動力を入力することにより、ウエハWの表面の中心を通る鉛直な軸線まわりにウエハWを回転させることができる。
なお、スピンチャック2としては、このような構成のものに限らず、たとえば、ウエハWの裏面を真空吸着することによりウエハWをほぼ水平な姿勢で保持し、さらにその状態でほぼ鉛直な軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
【0026】
二流体ノズル3は、処理液と気体とを二流体ノズル3のケーシング外で混合させて処理液の液滴を形成する外部混合型の二流体ノズル3であり、その吐出口をウエハW側(下方)に向けた状態で、ほぼ水平に延びるアーム9の先端に取り付けられている。二流体ノズル3には、窒素ガス供給管10、硫酸供給管11および過酸化水素水供給管12が接続されており、窒素ガス供給管10から窒素ガスが、硫酸供給管11から第1処理液としての硫酸が、過酸化水素水供給管12から第2処理液としての過酸化水素水が二流体ノズル3に供給されるようになっている。
【0027】
窒素ガス供給管10、硫酸供給管11および過酸化水素水供給管12には、それぞれ、窒素ガスバルブ13、硫酸バルブ14および過酸化水素水バルブ15が介装されており、各バルブ13〜15を開閉することにより、二流体ノズル3への窒素ガス、硫酸および過酸化水素水の供給を制御することができる。
また、二流体ノズル3には、アーム9を介して二流体ノズル移動機構16が結合されている。この二流体ノズル移動機構16によって、スピンチャック2の外方に設けられた鉛直な揺動軸まわりにアーム9を水平揺動させることができるようになっている。これにより、アーム9の先端に取り付けられた二流体ノズル3を、スピンチャック2に保持されたウエハWの上方に配置したり、スピンチャック2の上方から退避させたりすることができる。
【0028】
また、アーム9を所定の角度範囲内で往復揺動させることにより、スピンチャック2に保持されたウエハWの上方で二流体ノズル3を移動させて、二流体ノズル3からの処理液の供給位置をスキャン(移動)させることができる。具体的には、二流体ノズル3からの処理液の供給位置を、スピンチャック2に保持されたウエハWの中心部から周縁部に至る範囲でスキャンさせることができる。
【0029】
処理液ノズル4は、たとえば、連続流の状態で処理液を吐出するストレートノズルであり、その吐出口をウエハW側(下方)に向けた状態で、ほぼ水平に延びるアーム17の先端に取り付けられている。処理液ノズル4には、DIW供給管19が接続されており、DIW供給管19からリンス液としてのDIW(脱イオン化された純水)が処理液ノズル4に供給されるようになっている。
【0030】
DIW供給管19には、DIWバルブ21が介装されており、このDIWバルブ21を開閉することにより、処理液ノズル4へのDIWの供給を制御することができる。
また、処理液ノズル4には、アーム17を介して処理液ノズル移動機構22が結合されている。この処理液ノズル移動機構22によって、スピンチャック2の外方に設けられた鉛直な揺動軸まわりにアーム17を水平揺動させることができるようになっている。これにより、アーム17の先端に取り付けられた処理液ノズル4を、スピンチャック2に保持されたウエハWの上方に配置したり、スピンチャック2の上方から退避させたりすることができる。
【0031】
図2は、二流体ノズル3の構造を図解的に示す図である。図2(a)は、二流体ノズル3の縦断面を示し、図2(b)は、スピンチャック2側から見た二流体ノズル3の底面を示している。また、図2(b)において、ハッチングが施された範囲は、後述の第1処理液吐出口30、環状気体吐出口31および第2処理液吐出口34を示している。
二流体ノズル3は、ほぼ円柱状の外形を有しており、ケーシングを構成する外筒23と、外筒23の内部に嵌め込まれた内筒24とを含む。内筒24および外筒23は、共通の中心軸線L1上に同軸配置されており、互いに連結されている。また、内筒24の内部には、鉛直な方向に延びる板状の仕切り壁37が配置されており、この仕切り壁37によって、円柱状をなす内筒24の内部空間がほぼ二等分となるように縦に仕切られている。
【0032】
仕切り壁37で仕切られた内筒24の内部空間の一方は、硫酸供給管11からの硫酸が流通する断面半円状の第1処理液流路26となっており、他方は、過酸化水素水供給管12からの過酸化水素水が流通する断面半円状の第2処理液流路28となっている。また、内筒24と外筒23との間には、窒素ガス供給管10からの窒素ガスが流通する円筒状の気体流路27が形成されている。
【0033】
第1処理液流路26は、内筒24の上端で、第1処理液導入口29として開口しており、この第1処理液導入口29を介して、硫酸供給管11からの硫酸が第1処理液流路26に導入されるようになっている。また、第1処理液流路26は、内筒24の下端で、半円状の第1処理液吐出口30(第1液吐出口)として開口している。第1処理液流路26に導入された硫酸は、この第1処理液吐出口30から吐出されるようになっている。
【0034】
第2処理液流路28は、内筒24の上端で、第2処理液導入口35として開口しており、この第2処理液導入口35を介して、過酸化水素水供給管12からの過酸化水素水が第2処理液流路28に導入されるようになっている。また、第2処理液流路28は、内筒24の下端で、半円状の第2処理液吐出口34(第2液吐出口)として開口している。第2処理液流路28に導入された過酸化水素水は、この第2処理液吐出口34から吐出されるようになっている。
【0035】
気体流路27は、中心軸線L1と共通の中心軸線を有する円筒状の間隙であり、内筒24および外筒23の上端部で閉塞され、内筒24および外筒23の下端で、中心軸線L1上に中心Oを有し、第1および第2処理液吐出口30,34を取り囲む円環状の環状気体吐出口31として開口している。また、気体流路27の下端部は、気体流路27の長さ方向における中間部よりも流路面積が小さくされており、下方に向かって小径にされている。
【0036】
具体的には、内筒24の上端部の外壁面と、外筒23の上端部の内壁面とはほぼ同じ形状にされており、互いに密接されている。また、内筒24および外筒23の長さ方向における中間部間には、一定の間隔が設けられている。また、内筒24の下端部には、その中間部よりも外方に張り出したフランジ部32が設けられており、外筒23の下端部の内壁面は、前記一定の間隔よりも小さい間隔を隔ててフランジ部32に沿うような形状になっている。内筒24および外筒23の下端部の先端部には、それぞれ、下方に向かって小径となるテーパ状の外壁面および内壁面が設けられており、これにより、気体流路27が下方に向かって小径にされている。
【0037】
また、外筒23の中間部には、気体流路27に連通する気体導入口33が形成されている。気体導入口33には、窒素ガス供給管10が外筒23を貫通した状態で接続されており、窒素ガス供給管10の内部空間と気体流路27とは連通されている。窒素ガス供給管10からの窒素ガスは、この気体導入口33を介して、気体流路27に導入され、環状気体吐出口31から吐出されるようになっている。
【0038】
第1および第2処理液吐出口30,34は、環状気体吐出口31の中心Oに関して対称な位置に配置されており、対をなす液吐出口となっている。また、それぞれ半円形の第1および第2処理液吐出口30,34は、環状気体吐出口31と同心形状となっており、これら第1および第2処理液吐出口30,34の円弧部分は、環状気体吐出口31の円周状内周円縁に対向配置されている。
【0039】
第1処理液吐出口30、第2処理液吐出口34および環状気体吐出口31から硫酸、過酸化水素水および窒素ガスを吐出させると、吐出された硫酸および過酸化水素水と、窒素ガスとが、各吐出口30,31,34の近傍で衝突(混合)して、硫酸の液滴および過酸化水素水の液滴が形成される。
このとき、第1および第2処理液吐出口30,34が環状気体吐出口31の内周縁に対向して、すなわち隣接して配置されているので、硫酸および過酸化水素水は、窒素ガスと確実に混ざり合い、硫酸の液滴および過酸化水素水の液滴となる。また、硫酸および過酸化水素水は窒素ガスに引き寄せられて確実に窒素ガスと混ざり合う。
【0040】
そして、この硫酸および過酸化水素水の液滴は、噴流となって、二流体ノズル3の下方に配置されたウエハWの表面に衝突するとともに、ウエハWの上空またはウエハWの表面上で混ざり合ってSPMとなる。すなわち、ウエハWの表面には、二流体ノズル3から吐出された後に硫酸および過酸化水素水が混合されて生成されたレジスト剥離液としてのSPMが供給される。
【0041】
したがって、ウエハWの表面には、生成されてから殆ど時間が経っていない活性の高い状態のSPMが供給される。また、硫酸および過酸化水素水は液滴状態で十分に混ざり合うので、効率的に反応熱が生成され、この反応熱は、二流体ノズルなどの部材に吸熱されることなく、SPMの昇温に寄与する。さらに、硫酸および過酸化水素水の液滴は、第1および第2処理液吐出口30,34が環状気体吐出口31の中心Oに関して対称な位置に配置されているので、均一に混ざり合う。
【0042】
図3は、前記基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。この基板処理装置1は、制御装置36を備えている。この制御装置36は、チャック回転駆動機構8、二流体ノズル移動機構16および処理液ノズル移動機構22の動作を制御する。また、制御装置36は、窒素ガスバルブ13、硫酸バルブ14、過酸化水素水バルブ15およびDIWバルブ21の開閉を制御する。
【0043】
図4は、前記基板処理装置1によるウエハWの処理の一例について説明するための図である。以下では、図1〜図4を参照しつつ、表面にレジスト膜が形成されたウエハWにSPMを供給して、レジスト剥離処理を施す場合について説明する。
処理対象のウエハWは、図示しない搬送ロボットによって搬送されてきて、搬送ロボットからスピンチャック2へと受け渡される(ステップS1)。
【0044】
ウエハWがスピンチャック2に受け渡されると、制御装置36は、チャック回転駆動機構8を制御して、スピンチャック2に保持されたウエハWを所定の回転速度で回転させる。また、制御装置36は、二流体ノズル移動機構16を制御して、二流体ノズル3を、スピンチャック2に保持されたウエハWの上方に配置させる。
その後、制御装置36は、窒素ガスバルブ13、硫酸バルブ14および過酸化水素水バルブ15を開くとともに、DIWバルブ21を閉じて、二流体ノズル3からウエハWの表面に向けて窒素ガス、硫酸および過酸化水素水を吐出させる。
【0045】
吐出された硫酸および過酸化水素水は、吐出された窒素ガスと各吐出口30,31,34の近傍で衝突して、硫酸の液滴および過酸化水素水の液滴となる。そして、この硫酸および過酸化水素水の混合液滴は、噴流となって、ウエハWの表面に衝突する(ステップS2)。
また、ウエハWへの硫酸および過酸化水素水の液滴の供給とともに、制御装置36は、二流体ノズル移動機構16を制御して、ウエハWの上方で二流体ノズル3を移動(スキャン)させる。具体的には、ウエハWの表面の回転中心に対向する位置と、ウエハWの表面の周縁部に対向する位置との間で二流体ノズル3をスキャンさせる。これにより、ウエハWへの硫酸および過酸化水素水の液滴の供給位置が移動され、ウエハWの表面全域に硫酸および過酸化水素水の液滴が供給される。
【0046】
このとき、硫酸および過酸化水素水の液滴は、ウエハWの上空またはウエハWの表面上で混合されてSPMとなり、殆ど劣化がなく活性の高いSPMとしてウエハWの表面に供給される。また、硫酸および過酸化水素水の反応により生じる反応熱は、二流体ノズル3などの部材に吸熱されることなくSPMの昇温に寄与する。したがって、ウエハWの表面には、殆ど劣化がなく、かつ、高温となった非常に活性の高いSPMが供給される。すなわち、レジスト剥離処理の初期から終期に亘って、非常に活性の高いSPMをウエハWに供給して、効率的なレジスト剥離処理をウエハWの表面に施すことができる。これにより、ウエハWの表面からレジスト膜を良好に剥離して除去することができる。
【0047】
SPMの供給が所定のレジスト剥離処理時間に亘って行われると、制御装置36は、窒素ガスバルブ13、硫酸バルブ14および過酸化水素水バルブ15を閉じさせる。その後、制御装置36は、二流体ノズル移動機構16を制御して、二流体ノズル3をウエハWの上方から退避させるとともに、処理液ノズル移動機構22を制御して、処理液ノズル4をウエハWの上方に配置させる。そして、制御装置36は、DIWバルブ21を開いて、回転されているウエハWの表面の回転中心付近に処理液ノズル4からDIWを供給させる(ステップS3)。
【0048】
ウエハWの表面に供給されたDIWは、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの表面全域に行き渡る。これにより、ウエハWの表面に付着しているSPMがDIWによって洗い流され、ウエハWの表面にリンス処理が施される。
DIWの供給が所定のリンス処理時間に亘って行われると、制御装置36は、DIWバルブ21を閉じて、処理液ノズル4からのDIWの吐出を停止させるとともに、処理液ノズル移動機構22を制御して、処理液ノズル4をウエハWの上方から退避させる。そして、制御装置36は、チャック回転駆動機構8を制御して、スピンチャック2に保持されたウエハWを所定の高回転速度で回転させる(ステップS4)。これにより、ウエハWの表面に付着しているDIWが、ウエハWの回転による遠心力を受けてウエハWの周囲に振り切られ、ウエハWの表面が乾燥する(スピンドライ処理)。
【0049】
スピンドライ処理後は、ウエハWの回転速度が減速されてウエハWの回転が停止し、図示しない搬送ロボットによって、スピンチャック2から処理後のウエハWが搬送されていく(ステップS5)。
図5は、本発明の他の実施形態に係る二流体ノズル3の底面の一部を示す図である。この図5において、ハッチングが施された範囲は、前述の環状気体吐出口31ならびに後述の第1処理液吐出口30a、第2処理液吐出口34aおよび中心処理液吐出口38を示している。
【0050】
また、この図5において、図2に示す各部に相当する部分には、それら各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号を付した各部についての詳細な説明を省略する。
この図5に示す二流体ノズル3では、内筒24の下端に、それぞれほぼ同一形状の円形をなす、複数の第1処理液吐出口30aと、複数の第2処理液吐出口34aと、中心処理液吐出口38とが形成されており、これら第1処理液吐出口30a、第2処理液吐出口34aおよび中心処理液吐出口38は、環状気体吐出口31に囲まれた領域において互いに等間隔を隔てて分散配置されている。
【0051】
具体的には、環状気体吐出口31の中心位置に、環状気体吐出口31と同心である中心処理液吐出口38が形成されており、中心処理液吐出口38と環状気体吐出口31との間に、複数の第1および第2処理液吐出口30a,34aが環状気体吐出口31と同心形状となるように互い違いとなって環状に配列されている。
本実施形態では、中心処理液吐出口38から硫酸が吐出されるようになっている。また、中心処理液吐出口38を挟んで対向する第1および第2処理液吐出口30a,34aは、環状気体吐出口31の中心Oに関して対称な位置に配置されており、対をなす液吐出口となっている。
【0052】
この実施形態では、環状気体吐出口31に囲まれた領域に、複数の第1処理液吐出口30a、複数の第2処理液吐出口34aおよび中心処理液吐出口38を分散配置することにより、第1および第2処理液吐出口30a,34aならびに中心処理液吐出口38から吐出された硫酸および過酸化水素水を窒素ガスと確実に混合させて、硫酸および過酸化水素水の液滴を効率的に形成することができる。これにより、活性の高いSPMをウエハWの表面に供給して、レジスト剥離処理をウエハWの表面に効率的に施すことができる。
【0053】
図6は、本発明のさらに他の実施形態に係る二流体ノズル3の底面の一部を示す図である。この図6において、ハッチングが施された範囲は、前述の環状気体吐出口31、第1処理液吐出口30aおよび第2処理液吐出口34aならびに後述の第1処理液吐出口30bおよび第2処理液吐出口34bを示している。
また、この図6において、図2および図5に示す各部に相当する部分には、それら各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号を付した各部についての詳細な説明を省略する。
【0054】
この図6における二流体ノズル3の構成と、図5における二流体ノズル3の構成との主要な相違点は、環状気体吐出口31の外縁に沿って、複数の第1処理液吐出口30bおよび複数の第2処理液吐出口34bが設けられていることにある。
複数の第1および第2処理液吐出口30b,34bは、それぞれほぼ同一形状の円形をなし、環状気体吐出口31と同心形状となるように互い違いとなって環状に配列されている。また、環状気体吐出口31を挟んで対向する第1および第2処理液吐出口30b,34bは、環状気体吐出口31の中心Oに関して対称な位置に配置されている。さらに、複数の第1および第2処理液吐出口30b,34bは、環状気体吐出口31の内側に形成された複数の第1および第2処理液吐出口30a,34aと環状気体吐出口31を挟んで対向するように配置されている。
【0055】
この実施形態では、環状気体吐出口31の外側に複数の第1および第2処理液吐出口30b,34bを設けることにより、硫酸および過酸化水素水の液滴がウエハWの表面に供給される範囲を拡大させることができる。したがって、レジスト剥離処理に要する時間を短縮することができる。
図7は、本発明のさらに他の実施形態に係る二流体ノズル3の底面の一部を示す図である。この図7において、ハッチングが施された範囲は、前述の環状気体吐出口31ならびに後述の第1処理液吐出口30cおよび第2処理液吐出口34cを示している。
【0056】
また、この図7において、図2に示す各部に相当する部分には、それら各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号を付した各部についての詳細な説明を省略する。
この図7に示す二流体ノズル3では、内筒24の下端に、それぞれほぼ同一形状の扇形をなす、複数(たとえば2つ)の第1処理液吐出口30cと、複数(たとえば2つ)の第2処理液吐出口34cとが形成されており、合計4つの第1および第2処理液吐出口30c,34cが環状気体吐出口31と同心形状となるように互い違いとなって環状に配列されている。また、環状気体吐出口31の中心Oを挟んで対向する処理液吐出口(第1処理液吐出口30c同士と第2処理液吐出口34c同士)は、中心Oに関して対称な位置に配置されており、対をなす液吐出口となっている。
【0057】
この実施形態では、ほぼ同一形状の扇形をなす複数の第1および第2処理液吐出口30c,34cから吐出された硫酸および過酸化水素水を窒素ガスと確実に混合させて、硫酸および過酸化水素水の液滴を効率的に形成することができる。
図8は、本発明のさらに他の実施形態に係る二流体ノズル3の底面の一部を示す図である。この図8において、ハッチングが施された範囲は、前述の環状気体吐出口31ならびに後述の第1処理液吐出口30dおよび第2処理液吐出口34dを示している。
【0058】
また、この図8において、図2に示す各部に相当する部分には、それら各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号を付した各部についての詳細な説明を省略する。
この図8に示す二流体ノズル3では、内筒24の内部に、内筒24と同軸である中心筒39が配置され、円柱状をなす中心筒39の内部空間が、硫酸が流通する第1処理液流路26aとなっており、内筒24と中心筒39との間に、過酸化水素水が流通する円筒状の第2処理液流路28aが形成されている。
【0059】
第1処理液流路26aは、中心筒39の下端で、環状気体吐出口31と同心となる円状の第1処理液吐出口30dとして開口しており、第2処理液流路28aは、内筒24および中心筒39の下端で、環状気体吐出口31と同心であり、第1処理液吐出口30dを取り囲む円環状の第2処理液吐出口34dとして開口している。
この実施形態では、円状の第1処理液吐出口30dおよび円環状の第2処理液吐出口34dを、環状気体吐出口31と同心となるように環状気体吐出口31の内側に配置することにより、第1および第2処理液吐出口30d,34dから吐出された硫酸および過酸化水素水を窒素ガスと均一に混合させて硫酸および過酸化水素水の液滴を形成することができ、さらに、この硫酸および過酸化水素水の液滴を均一に混合させることができる。これにより、均一に混合されたSPMをウエハWの表面に供給させて、レジスト剥離処理をウエハWの表面に均一に施すことができる。
【0060】
図9は、本発明のさらに他の実施形態に係る二流体ノズル3の底面の一部を示す図である。この図9において、ハッチングが施された範囲は、前述の環状気体吐出口31ならびに後述の第1処理液吐出口30e、第2処理液吐出口34eおよび中心気体吐出口40を示している。
また、この図9において、図2に示す各部に相当する部分には、それら各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号を付した各部についての詳細な説明を省略する。
【0061】
この図9に示す二流体ノズル3では、環状気体吐出口31の中心位置に、環状気体吐出口31と同心である円形の中心気体吐出口40が形成されており、環状気体吐出口31と中心気体吐出口40との間に、ほぼ同一形状の半円弧状をなす第1処理液吐出口30eおよび第2処理液吐出口34eが形成されている。第1および第2処理液吐出口30e,34eは、環状気体吐出口31と同心形状となるように中心気体吐出口40を挟んで対向配置されている。また、第1および第2処理液吐出口30e,34eは、環状気体吐出口31の中心Oに関して対称な位置に配置されており、対をなす液吐出口となっている。
【0062】
この実施形態では、半円弧状の第1および第2処理液吐出口30e,34eを設けることにより、第1および第2処理液吐出口30e,34eから吐出された硫酸および過酸化水素水を窒素ガスと確実に混合させて、硫酸および過酸化水素水の液滴を効率的に形成することができる。
また、環状気体吐出口31の中心位置に中心気体吐出口40を設けることにより、環状気体吐出口31および中心気体吐出口40の間に形成された第1および第2処理液吐出口30e,34eから吐出された硫酸および過酸化水素水と、環状気体吐出口31および中心気体吐出口40から吐出された窒素ガスとをより確実に混合させて、硫酸および過酸化水素水の液滴をより効率的に形成することができる。
【0063】
図10は、本発明のさらに他の実施形態に係る二流体ノズル3の底面の一部を示す図である。この図10において、ハッチングが施された範囲は、前述の環状気体吐出口31および中心気体吐出口40ならびに後述の第1処理液吐出口30fおよび第2処理液吐出口34fを示している。
また、この図10において、図2および図9に示す各部に相当する部分には、それら各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号を付した各部についての詳細な説明を省略する。
【0064】
この図10に示す二流体ノズル3では、内筒24の下端に、それぞれほぼ同一形状の円弧状をなす、複数(たとえば2つ)の第1処理液吐出口30fと、複数(たとえば2つ)の第2処理液吐出口34fとが形成されており、合計4つの第1および第2処理液吐出口30f,34fが、環状気体吐出口31と同心形状となるように互い違いとなって環状に配列されている。また、環状気体吐出口31の中心Oを挟んで対向する処理液吐出口(第1処理液吐出口30f同士と第2処理液吐出口34f同士)は、中心Oに関して対称な位置に配置されており、対をなす液吐出口となっている。
【0065】
この実施形態では、ほぼ同一形状の円弧状をなす複数の第1および第2処理液吐出口30f,34fから吐出された硫酸および過酸化水素水と、環状気体吐出口31および中心気体吐出口気体39から吐出された窒素ガスとを確実に混合させて、硫酸および過酸化水素水の液滴を効率的に形成することができる。
この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、前述の実施形態では、第1処理液として硫酸が用いられ、第2処理液として過酸化水素水が用いられている例について説明したが、硫酸以外の処理液を第1処理液として用いてもよいし、過酸化水素水以外の処理液を第2処理液として用いてもよい。
【0066】
たとえば、第1処理液として、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、オゾン水、水素水、炭酸水のうちの少なくとも1種以上を含む液を用いてもよいし、第2処理液として、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、オゾン水、水素水、炭酸水のうちの少なくとも1種以上を含む液を用いてもよい。なお、これらの処理液は、あらかじめ室温以上、たとえば30〜100℃程度に加熱しておいてから用いてもよい。
【0067】
また、前述の実施形態では、気体として窒素ガスを例示したが、窒素ガスに限らず、窒素ガス、空気、オゾンガス、水素ガス、炭酸ガスのうちの少なくとも1種以上を含む気体を用いてもよい。
また、前記気体は、加熱されていてもよい。加熱された気体を吐出させることにより、当該気体と混合される処理液の温度の低下を抑制したり、その温度を昇温させたりすることができる。これにより、混合処理液(SPM)の活性をさらに高めて、混合処理液による処理効率をさらに向上させることができる。
【0068】
また、前述の実施形態では、環状気体吐出口31が円環状にされている場合について説明したが、環状気体吐出口31は、多角環状などのその他の環状にされていてもよい。
また、図9および図10を参照して説明した実施形態では、環状気体吐出口31の中心位置に中心気体吐出口40が設けられている例について説明したが、中心気体吐出口40が設けられていない構成としてもよい。
【0069】
一方、図2および図5〜図8を参照して説明した実施形態において、環状気体吐出口31の中心位置に対応する内筒24の下端に、中心気体吐出口40を形成してもよい。
また、前述の実施形態では、ほぼ水平に保持され回転されているウエハWの表面に処理液を供給して当該ウエハWを処理するものを取り上げたが、回転していない状態(非回転状態)のウエハWの表面に処理液を供給してウエハWを処理するものであってもよい。なお、前記非回転状態のウエハWとは、回転も移動もしていない状態(静止状態)のウエハWであってもよいし、回転せずに所定の方向に移動している状態(移動状態)のウエハWであってもよい。
【0070】
また、前述の実施形態では、処理対象の基板として半導体ウエハWを取り上げたが、半導体ウエハWに限らず、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などの他の種類の基板が処理対象とされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解図である。
【図2】二流体ノズルの構造を図解的に示す図である。
【図3】前記基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図4】前記基板処理装置によるウエハの処理の一例について説明するための図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る二流体ノズルの底面の一部を示す図である。
【図6】本発明のさらに他の実施形態に係る二流体ノズルの底面の一部を示す図である。
【図7】本発明のさらに他の実施形態に係る二流体ノズルの底面の一部を示す図である。
【図8】本発明のさらに他の実施形態に係る二流体ノズルの底面の一部を示す図である。
【図9】本発明のさらに他の実施形態に係る二流体ノズルの底面の一部を示す図である。
【図10】本発明のさらに他の実施形態に係る二流体ノズルの底面の一部を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 基板処理装置
2 スピンチャック(基板回転手段)
3 二流体ノズル
10 窒素ガス供給管(気体供給手段)
11 硫酸供給管(処理液供給手段)
12 過酸化水素水供給管(処理液供給手段)
16 二流体ノズル移動機構(ノズル移動手段)
23 外筒(ケーシング)
30,30a,30c〜30f 第1処理液吐出口(第1液吐出口、複数の液吐出口)
31 環状気体吐出口
34,34a,34c〜34f 第2処理液吐出口(第2液吐出口、複数の液吐出口)
38 中心処理液吐出口(第1液吐出口)
40 中心気体吐出口
O 中心(環状気体吐出口の中心)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1処理液、第2処理液および気体が導入されるケーシングと、
前記ケーシングに形成され、前記第1処理液を吐出するための第1液吐出口と、
前記ケーシングに形成され、前記第2処理液を吐出するための第2液吐出口と、
前記第1および第2液吐出口を取り囲む環状をなすように前記ケーシングに形成され、前記気体を吐出するための環状気体吐出口とを含み、
前記ケーシング外で前記第1および第2処理液ならびに前記気体を混合させて処理液の液滴を形成し、この処理液の液滴を処理対象に向けて吐出するようになっている、二流体ノズル。
【請求項2】
前記第1および第2液吐出口を含む複数の液吐出口が前記環状気体吐出口に取り囲まれた領域において前記ケーシングに形成されており、前記複数の液吐出口は、前記環状気体吐出口の中心に関して対称な位置に配置された一対または複数対の液吐出口を含む、請求項1記載の二流体ノズル。
【請求項3】
前記第1および第2液吐出口を含む複数の液吐出口が前記環状気体吐出口に取り囲まれた領域において前記ケーシングに形成されており、前記複数の液吐出口は、前記環状気体吐出口と同心形状をなすように形成された一つまたは複数の液吐出口を含む、請求項1または2記載の二流体ノズル。
【請求項4】
前記環状気体吐出口の中心位置において前記ケーシングに形成された中心気体吐出口をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の二流体ノズル。
【請求項5】
処理対象の基板を保持して回転させるための基板回転手段と、
前記基板回転手段によって回転されている基板の主面に、処理液の液滴を供給するための請求項1〜4のいずれか一項に記載の二流体ノズルと、
前記二流体ノズルのケーシングに前記第1処理液および第2処理液を供給するための処理液供給手段と、
前記二流体ノズルのケーシングに前記気体を供給するための気体供給手段と、
前記二流体ノズルを基板の主面に沿って移動させるためのノズル移動手段とを含む、基板処理装置。
【請求項6】
処理対象の基板を保持して回転させる基板回転工程と、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の二流体ノズルのケーシングに前記第1処理液および第2処理液を供給する処理液供給工程と、
前記二流体ノズルのケーシングに前記気体を供給する気体供給工程と、
前記基板回転工程で回転されている基板の主面に、前記二流体ノズルから生成される処理液の液滴を供給する液滴供給工程と、
前記液滴供給工程と並行して、前記二流体ノズルを基板の主面に沿って移動させるノズル移動工程とを含む、基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−114183(P2008−114183A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301753(P2006−301753)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】