説明

化学気相蒸着工程を利用した超格子半導体構造を製造する方法。

【課題】優れた界面特性と均一性が具現できる超格子半導体構造の製造方法を提供する。
【解決手段】この超格子半導体構造は、工程チャンバ170内のサセプター130上に基板101を搭載する段階S1と;上記工程チャンバ内の上記サセプター上に互いに異なる領域に第1ソースと第2ソースガスA、Bを同時に供給し、互いに分離された第1ソースガス領域134と第2ソースガス領域136を形成する段階S3と;上記サセプターの回転によって上記基板が公転する間に、上記基板が上記第1ソースガス領域と上記第2ソースガス領域を通過する段階を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学気相蒸着を利用した超格子半導体構造を製造する方法に関するもので、より詳しくは、超格子の界面特性を向上させることが可能であり、基板間の均一性及び基板内の均一性を確保することが可能である超格子半導体構造の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、AlGaInPなどの化合物半導体を利用した発光素子または光電素子が急激に発展することにより、超格子(super lattice)半導体構造に対する要求が増加している。例えば、III−V族半導体素子製造において、基板物質とIII−V族化合物半導体物質間の格子定数及び熱膨脹係数の差による問題を解決するために、基板と半導体層の間に超格子半導体構造のバッファー層を形成することが可能である。このような超格子構造は、電位等の影響を受けて生じる欠陷を抑制し、電気伝導性を改善する效果があると報告されている。また、発光素子の活性層を超格子の多重量子井戸構造で形成することにより、電子のオーバーフロー(over flow)を防止することが可能である。その他にも、フォトニックの分野において超格子半導体構造が広く利用されている。特許文献1(米国登録特許第6706585号公報)には化学気相蒸着工程を使用して積層超格子物質(layered superlattice materials)を製造する方法が開示されている。図1には、一般的な超格子構造を有する化合物半導体素子が概略的に示している。基板(11)上に互いに異なる組成のエピタキシャル層(13、14)が交互に繰り返して積層され、超格子構造を成している。例えば、サファイア基板(11)上にGaAs層(13)とAlAs層(14)を交互に繰り返して積層することにより、超格子半導体構造を製造することが可能である。
【0003】
しかし、超格子半導体構造を形成するためには超薄膜層を規則的に繰り返して成長させなければならないので、バッチ(batch;一括処理)式の大容量装備で超格子構造に対する均一性と再現性を得にくい。また、超格子構造の界面特性は超格子構造全体特性に影響を及ぼす重要要素であるが、製造工程または製造装備上の問題によって、超格子構造の界面特性が劣化されやすい。
【0004】
図2は従来の技術による超格子半導体構造の製造方法を説明するためのタイミングダイヤグラムであり、図3は図2の従来製造方法に使用される有機金属化学気相蒸着(MOCVD)装置(500)の概略的なフローダイヤグラムである。従来の方法によれば、例えば図1の超格子半導体構造を形成するために、MOCVD工程を利用して互いに異なるソースガスを交互に繰り返して工程チャンバに供給するようになる。
【0005】
図2のタイミングダイヤグラムを参照すれば、“オン”と表示された部分は該ソースガスが工程チャンバ(基板が安置されたチャンバ)に供給されていることを表し、“オフ”と表示された部分は該ソースガスが工程チャンバに供給されてない(供給が中断されている)ことを表す。第1ソースガスは例えば、GaAs層(13)を形成するためのソースガス(例;トリメチルカリウム(TMG))であり、第2ソースガスは例えば、AlAs層(14)を形成するためのソースガス(例;トリメチルアルミニウム(TMA))であり得る(上記各層構造は図1参照)。図2に示すように、先ず、第1ソースガス(TMG)を工程チャンバに供給してチャンバ内に安置された基板にGaAs層(13)を形成する。その後、第1ソースガスの供給を中断し、第2ソースガスを工程チャンバに供給して上記GaAs層(13)上にAlAs層(14)を形成させる。こうした1サイクル工程を多数回繰り返すことにより、図1に示すような超格子半導体構造を得ることができる。
【0006】
図3のフローダイヤグラムを参照すれば、第1ソースガス供給装置(41)と第2ソースガス供給装置(42)から該ソースガスが供給されてそれぞれ流量制御機(43、44)を通過した後、スイッチングバルブ(49、46)に同時に続けて入り込む。それぞれのスイッチングバルブ(49、46)はオン/オフ動作を実行してオン動作の際には該ソースガスを工程チャンバ(70)に供給し、オフ動作の際には該ソースガスを排出口(vent)方へ排気させる。それぞれのスイッチングバルブ(49、46)がこうしたオン/オフ動作を交互に実行することにより、第1、2ソースガス中のいずれか一つのソースガスだけがノズル(20)を通してサセプター(30)上に搭載された基板(11)に供給される。多数の基板(20)が公転することができるように、サセプター(30)は処理工程中に続けて回転する。
【0007】
すなわち、図2及び図3に示すように、第1スイッチングバルブ(49)がオン状態の間には第2スイッチングバルブ(46)はオフ状態になり、第1ソースガス(例えば、TMG)のみがソースガス導入ライン(48)を通してチャンバ(70)に供給され、第2ソースガス(例えば、TMA)は排出口(46a)に排気される。一方、第1スイッチングバルブ(49)がオフ状態の間には第2スイッチングバルブ(46)はオン状態になり、第2ソースガスのみが工程チャンバ(70)に供給され、第1ソースが排出口(49a)に排気される。第1または第2ソースガスが供給される間には、続けて第3ソースガス(例えば、AsのソースガスであるAsH)がソースガス導入ライン(47)とノズル(20)を通してチャンバ(70)に供給され得る。チャンバ(70)で反応し、残りの残余ガスは排気ライン(61)を通して外部へ排出される。さらに、このような動作を繰り返して実行することにより、図1に示すような超格子半導体構造(13、14)が製造される。
【0008】
しかし、上記超格子半導体構造の製造方法によれば、スイッチングバルブが選択的にスイッチングすることにより、ソースガスの半分が排出口(49a、46a)に捨てられるようになりソースガス購入費用が必要以上に増加するようになる。また、スイッチングバルブと工程チャンバが相当な距離に離れているので、ソースガスの切り換え後、実際に所望の半導体層が成長するまで相当な時間がかかる。また、バッチ式のように複数の基板を配置し、これらの基板を一括蒸着処理する配置方式の工程チャンバにおいてソースガスがチャンバ内に均一に広がり均一な成長を得るには、相当な時間がかかる。こうした所要時間は超格子の界面特性を悪化させるだけでなく、基板間の均一性及び基板内の均一性を得るのに障害を起こし、再現性が低い。その他にも、上記所要時間とオン/オフ動作制御の難しさにより、処理工程時間が長く、工程が複雑である。
【特許文献1】米国登録特許第6706585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記した問題点を解決するためのものとして、その目的はソースガスの無駄をなくし、超格子の界面特性を向上させ、優れた再現性と均一性を確保することができるCVD工程を利用した超格子半導体構造の製造方法を提供することにある。
【0010】
さらに、本発明の他の目的は、工程をより単純化させることが可能であり、工程時間を短縮させ得るCVD工程を利用した超格子半導体構造の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した技術的課題を成し遂げるために、本発明による超格子半導体構造の製造方法は、工程チャンバ内のサセプター上に基板を搭載する段階と;上記工程チャンバ内の上記サセプター上の互いに異なる領域に第1ソースと第2ソースガスを同時に供給し、互いに分離された第1ソースガス領域と第2ソースガス領域を形成する段階と;上記サセプターの回転によって上記基板が公転する間に、上記基板が上記第1ソースガス領域と上記第2ソースガス領域を通過する段階を含む。上記サセプター上には多数の基板が搭載され得る。
【0012】
本発明によれば、上記第1ソースガス及び第2ソースガスは有機金属ソースガスであり得る。しかし、本発明が有機金属化学気相蒸着工程で限定されるわけではなく、超格子半導体構造を製造するためなら他の形態の化学気相蒸着工程にも適用できる。
【0013】
本発明によれば、上記第1ソースガス領域と第2ソースガス領域は互いに異なる半導体層を形成するためのソースガス領域である。このような互いに異なるソースガス領域を作るためには、上記第1ソースガス及び第2ソースガスは互いに分離されて上記工程チャンバ内に注入され、互いに分離されて上記工程チャンバ外部へ排気される。
【0014】
本発明によれば、上記基板が上記第1及び第2ソースガス領域を通過する段階において、上記基板が上記サセプター上で公転しながら上記第1ソースガス領域を通過する際、上記基板上には第1半導体層が形成され、上記基板が上記サセプター上で公転しながら上記第2ソースガス領域を通過する際、上記基板上には第2半導体層が形成される。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、上記第1半導体層は第1組成を有するAlGaIn(1−a−b)P層(0≦a≦1、0≦b≦1、0≦a+b≦1)であり、上記第2半導体層は第1組成と異なる第2組成を有するAlGaIn(1−c−d)P層(0≦c≦1、0≦d≦1、0≦c+d≦1)である。
【0016】
他の実施形態によれば、上記第1半導体層は第1組成を有するAlGa(1−x)As層(0≦x≦1)であり、上記第2半導体層は第1組成と異なる第2組成を有するAlGa(1−y)As層(0≦y≦1)である。さらに、他の実施形態によれば、上記第1半導体層は第1組成を有するAlGa(1−m)N層(0≦m≦1)であり、上記第2半導体層は第1組成と異なる第2組成を有するAlGa(1−n)N層(0≦n≦1)である。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、上記基板が上記サセプター上において公転し始めた後、上記第1ソースガスと第2ソースガスが上記工程チャンバに供給される。他の実施形態によれば、上記基板が上記サセプター上において公転する前に、上記第1ソースガスと第2ソースガスが上記工程チャンバに供給される。
【0018】
本発明の好ましき実施形態によれば、上記基板が上記サセプター上において1回公転する際、上記基板上には超格子半導体構造の1周期にあたる半導体層が形成される。さらに、好ましき実施形態によれば、上記工程チャンバは水平型工程チャンバであり、上記第1ソースガス及び第2ソースガスは上記工程チャンバに水平方向に注入される。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、上記第1ソースガス及び第2ソースガスを同時に供給する段階において、第3ソースガスを上記工程チャンバ内の上記サセプター上の全体領域に供給することが可能である。この場合、上記第1及び第2ソースガスは上記工程チャンバに水平方向に注入される一方、上記第2ソースガスは上記工程チャンバに垂直方向に注入され得る。上記第3ソースガスはAsH、PH、またはNHガスを含むことができる。なお、上記第3ソースガスはH、N又はこれらの混合物をさらに含むことができる。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、上記基板の公転速度は一定である。好ましくは、上記公転速度は1から10rpmである。また、上記基板の公転速度を調節することにより、上記超格子半導体構造の1周期の厚さを制御することができる。
【0021】
本発明は、既存のスイッチングバルブを交互にスイッチングして超格子構造を得る方法と違い、基板を工程チャンバ内で公転させながら、工程チャンバ内の空間に互いに分離された2種類のソースガス領域を形成する。それによって、基板が1回公転する度に上記2種類のソースガス領域を通るようになることにより、互いに異なる半導体層が交互に周期的に形成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、公転する基板が互いに異なるソースガス領域を通過することによって、優れた界面特性と均一性を有する超格子半導体構造を製造することが可能となる。とりわけ、安定的なラミナフローを経て半導体層が形成されることにより、基板内及び基板間の均一性が著しく向上される。また、ソースガスの無駄をなくし、超格子製造費用を節減することが可能となる。その他にも、長期間繰り返されるバルブのオン/オフ動作が不要なためバルブの寿命を増加させることが可能である。さらに、基板の公転速度の調節により超格子1周期の厚さを正確で容易に制御することができ、1nm以下の超格子1周期の厚さを有する超格子構造も製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付の図を参照に本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形可能で、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるわけではない。本発明の実施形態は当業界において平均的な知識を有する者に対し本発明をより完全に説明するため提供するものである。従って、図面における要素の形状及び寸法などはより明確な説明のために誇張されることもあり、図面上の同一符合で表示される要素は同一要素である。
【0024】
先ず、図4、図5a及び図12を参照して、本発明の一実施形態による超格子半導体構造の製造方法を説明する。
【0025】
図4は、図2に対比されるものとして、本発明の一実施形態による超格子半導体構造の製造方法を説明するためのタイミングダイヤグラムである。図5aは、図3に対比されるものとして本発明の一実施形態によって超格子半導体構造を製造するための有機金属化学気相蒸着装置の概略的なフローダイヤグラムである。また、図12は、本発明の一実施形態による超格子半導体構造の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0026】
超格子半導体構造を形成するために、先ず、水平型工程チャンバ(170)内のサセプター(130)上に基板(101)を搭載する(図12のS1段階)。この際、上記サセプター(130)は回転することができるように構成されており、多数の基板(101)が搭載されることができるように十分な大きさの搭載面積を有する。この際、基板(101)はサセプター(130)の中心から外れた位置に搭載され、サセプター(130)が回転する時基板(101)が公転するようにする。
【0027】
その後、基板(101)が搭載されたサセプター(130)を回転させることにより、基板(101)が公転できるようにする(図12のS2段階)。この際、公転する基板(101)がサセプター(130)の外に離脱されないよう適切なチャック(chuck)を使用することができる。上記基板(101)の公転速度は蒸着工程が実行される間一定に維持されることができる。しかし、他の方案として、上記公転速度(即ち、サセプターの回転速度)を工程の間変化させることも可能である。
【0028】
次に、図5aに示すように、基板(101)が公転する間、第1ソースガス(例えば、TMGガス)及び第2ソースガス(例えば、TMAガス)をそれぞれ第1及び第2ソースガス供給装置(141、142)から流量制御機(143、144)、バルブ(145、146)及びソースガス導入ライン(149、148)を通して工程チャンバ(170)中に同時に供給する(図12のS3段階)。この際、第1ソースガス及び第2ソースガスはノズル(120)を通してチャンバ(170)内に注入される。第1ソースガス及び第2ソースガスは同時に工程チャンバ(170)内に供給されるので、バルブ(145、146)は別途の排出口を要しない。従って、従来と違って、使用しないソースガスの無駄が生じなくなる。第1及び第2ソースガスがチャンバ(170)に供給される際、第3ソースガスも他の導入ライン(147)を通してチャンバ(170)に供給することができる。
【0029】
他の方法として、基板(101)が公転する前に第1ソースガスと第2ソースガスを工程チャンバ(170)内に供給することもできる。
【0030】
図4に示すように、第1ソースガス及び第2ソースガスは同時にチャンバ(170)内に供給され、ガス供給の間には別途のオン/オフ動作が実行されない。その代りに、基板(101)上に互いに異なる半導体層を交互に積層させるため、前述したように基板(101)を工程チャンバ(170)内で公転させながら、分離された互いに異なるソースガス領域、すなわち、第1領域(134)と第2領域(136)を形成する。第1領域は第1ソースガス領域に該当し、第2領域(136)は第2ソースガス領域に該当する。
【0031】
このように、分離された互いに異なるソースガス領域(134、130)を形成するためには、第1ソースガスと第2ソースガスが分離され工程チャンバ(170)の互いに異なる領域に注入されなければならず、注入されたそれぞれのソースガスはできれば互いに混じらないようにすべきである。
【0032】
第1及び第2ソースガスを互いに異なる領域に分離して注入するために、第1ソースガスと第2ソースガスを注入する上記ノズル(120)は互いに分離された第1ソースガス通路と第2ソースガス通路を具備し、各ソースガスの噴射口も分離されていなければならない。米国特許第6786973号は互いに異なるガスを相互分離してチャンバ内に注入することが可能であるノズルを開示している。
【0033】
さらに、互いに異なる領域に分離され注入された互いに異なるソースガスが互いに混じらないようにするためには、各ソースガスの反応後、残余ガスが互いに分離され排気されなければならない。そのために、第1領域に隣接して第1ソースガス用排気ラインを設置し、第2領域に隣接して第2ソースガス用排気ラインを設置する。
【0034】
図5bを参照すれば、第1ソースガス(A)と第2ソースガス(B)はノズル(120)によって互いに分離されて互いに異なる噴射口(149a、148a)を通して互いに異なる領域に水平方向に噴射される。なお、第3ソースガス(C)は垂直方向に全体領域にかけて噴射される。第3ソースがス(C)は、例えば、GaAs/AlAs超格子形成のために使用されるAsHのように第1領域(134)と第2領域(136)両者共に必要なガスである。従って、上記したように、第3ソースガスは第1及び第2領域(134、136)全体にわたって供給される。第3ソースガスの圧力を調節するために、第3ソースガスはH、N又はこれらの混合物をさらに含むことができる。
【0035】
また、第1ソースガス用排気ライン(161)と第2ソースガス用排気ライン(162)を分離して設置されているが(図5a参照)、第1ソースガス用排気ライン(161)は第1領域(134)に隣接して設置され、第2ソースガス用排気ライン(162)は第2領域(136)に隣接して設置されている。従って、本実施形態で用いられる有機金属化学気相蒸着装置は互いに分離されたソースガス領域(134、136)を形成するのに適合するよう構成されている。
【0036】
このように基板(101)が公転する状態で上記工程チャンバ(170)内のサセプター(130)上に互いに分離されたソースガス領域を形成することにより、基板が1回公転する度に上記2種類のソースガス領域(134、136)を通るようになる。それによって、基板(101)上には互いに異なる半導体層が交互に周期的に形成される(図12のS4段階)。具体的に説明すれば、基板(101)がサセプター(130)上で公転しながら上記第1領域(134)を通過する際、上記基板(101)上には第1半導体層(図7の図面符号103参照)が形成され、上記基板(101)がサセプター(130)上で公転しながら上記第2領域(136)を通過する際、上記基板(101)上には第2半導体層(図7の図面符号105参照)が形成される。継続して基板(101)が公転することで、基板(101)上には交互に積層された第1及び第2半導体層の超格子構造を得るようになる(図7参照)。
【0037】
図6のグラフは、基板(101)が公転しながら供給されるガスの種類を図式で表示している。図6において斜線を引いた部分は、基板(101)が該ソースガスの供給を受けていることを意味する。公転する基板(101)はaからb時間の間に第1ソースガス領域(134)を通りながら、第1ソースガスの供給を受けるようになる。この際、基板(101)上には第1半導体が形成される。また、bからp時間の間に第2ソースガス領域(136)を通りながら、第2ソースガスの供給を受けるようになり第2半導体層が形成される。基板(101)は全体工程時間の間第3ソースガスの供給を受ける。このような工程を繰り返すにより、基板(101)上には超格子構造が形成される。ここで、aからpまでの時間は基板(101)の公転周期に該当する。
【0038】
上記実施形態によれば、基板(101)の公転によって基板(101)は互いに異なるソースガスを交互に供給を受けるので、従来と違って、ソースガスの切り換えに時間がかからない。また、各ソースガス領域(134、136)は予め均一性が確保されているので、従来と違って均一な成長を得るのに必要な時間が所要されない。従って、本実施形態によって製造された超格子半導体構造は優れた界面特性を表し、基板内及び基板の均一性が改善される。とりわけ、水平型の工程チャンバ(170)内において安定的なラミナフロー(一定の平行層流)を確保するのが容易であるため、基板内または基板間均一性をより向上させることが可能となる。
【0039】
好ましくは、基板(101)がサセプター(170)上で1回公転する際、上記基板(101)上には超格子半導体構造の1周期に該当する半導体層(図7で、厚さtに相当する半導体層)が形成される。この場合、基板(101)の公転回収を調節することにより、超格子半導体構造の層数を正確に制御することが可能となる。さらに、本発明によれば、ソースガスの供給流量など他の条件が一定である時、基板(101)の公転速度を調節することにより、超格子半導体構造の1周期厚さ(t)を正確に制御することが可能である。公転速度を適切に調節すれば、1nm以下の超格子1周期厚さまでも具現できるようになる。
【0040】
本発明の超格子製造方法は、様々な化合物半導体の超格子構造を製造するのに適用されることができる。例えば、互いに異なる組成のAlGaInP層が交互に積層されて形成された超格子構造を形成するために本発明の製造方法を容易に利用することができる(第3ソースガスとしてPHを使用)。その他にも、GaAs/AlAsの超格子構造を形成したり(第3ソースガスとしてAsHを使用)、GaN/AlGaN系の超格子構造を形成するのに(第3ソースガスとしてNHを使用)に本発明が適用されることもできる。
【0041】
本発明者は、サセプター回転速度(基板公転速度)を異にしながら、互いに異なる組成を有する第1AlGaInP層と第2AlInP層が交互に成長された複数層の超格子構造を製造した。その製造された複数のAlGaInPサンプルを実験分析して図8乃至図9のグラフと図10のTEM写真を得た。図8は互いに異なる成長速度で成長されたAlInP超格子構造サンプルに対するロッキングカーブを表す。最も高いピーク(0th order peak)と二番目に高いピーク(矢印)の間のシータ間隔が小さいほど超格子1周期の厚さが大きい。従って、図8に示すように、成長速度(G/R)が増加するほど超格子1周期の厚さが増加するということが明らかに判る。
【0042】
図9は、成長速度と超格子1周期厚さとの関係を表す。図9に示すように、超格子1周期厚さは成長速度によって線形的に変わることが判る。図10は、公転速度の逆数と超格子1周期厚さとの関係を表す。図10を参照すれば、超格子1周期厚さは公転速度の逆数値によって線形的に変わる。従って、異なる工程条件(流量、温度、圧力など)をそのまま維持した状態で、基板の公転速度だけで超格子の成長速度と超格子1周期厚さを精密に調節することが可能となる。また、図11のTEM写真より判るように、良好な界面を有する均一な厚さの高品質超格子構造を得ることができる。
【0043】
本発明は上述した実施形態及び添付の図面によって限定されず、添付された請求範囲によって限定しようとする。なお、本発明は請求範囲に記載された本発明の技術的思想を外れない範囲内において様々な形態の置換、変形及び変更が可能であるということは当技術分野の通常の知識を有する者に自明である。なお、前記の工程チャンバは、処理チャンバ或いは単にチャンバと称してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】一般的な超格子構造を有する化合物半導体素子の断面図である。
【図2】従来技術による超格子半導体構造の製造方法を説明するためのタイミングダイヤグラムである。
【図3】従来技術によって超格子半導体構造を製造するための有機金属化学気相蒸着(MOCVD)装置の概略的なフローダイヤグラムである。
【図4】本発明の一実施形態による超格子半導体構造の製造方法を説明するためのタイミングダイヤグラムである。
【図5a】本発明の一実施形態によって超格子半導体構造を製造するための有機金属化学気相蒸着装置の概略的なフローダイヤグラムである。
【図5b】図5aの有機金属化学気相蒸着装置の工程チャンバの断面構造を示す概路図である。
【図6】本発明の一実施形態による超格子半導体構造の製造方法を説明するためのグラフである。
【図7】本発明の一実施形態によって製造された超格子半導体構造の断面図である。
【図8】本発明によって製造されたAlGaInP超格子半導体構造内に含まれたAlGaInP単一層のX−線回折(XRD)実験結果を示す図面として、互いに異なる成長速度で形成されたAlGaInP単一層のXRDロッキングカーブを示す図面である。
【図9】AlGaInP層の成長速度によるAlGaInP超格子1周期の厚さ変化を示すグラフである。
【図10】基板の公転速度の逆数によるAlGaInP超格子1周期の厚さ変化を示すグラフである。
【図11】本発明によって製造されたAlGaInP超格子半導体構造の断面を示すTEM写真である。
【図12】本発明の一実施形態による超格子半導体構造の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
101 基板 120 ノズル
130 サセプター 134 第1領域
136 第2領域 141 第1ソースガス供給装置
142 第2ソースガス供給装置 143、144 流量制御機
145、146 バルブ
147、148、149 ソースガス導入ライン
161、162 排気ライン 170 工程チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程チャンバ内のサセプター上に基板を搭載する段階;
上記工程チャンバ内の上記サセプター上の互いに異なる領域に第1ソースと第2ソースガスを同時に供給し、互いに分離された第1ソースガス領域と第2ソースガス領域を形成する段階;
上記サセプターの回転によって上記基板が公転する間に、上記基板が上記第1ソースガス領域と上記第2ソースガス領域を通過する段階を含むことを特徴とする超格子半導体構造の製造方法。
【請求項2】
上記第1ソースガス及び第2ソースガスは有機金属ソースガスであることを特徴とする請求項1に記載の超格子半導体構造の製造方法。
【請求項3】
上記第1ソースガス領域及び第2ソースガス領域を形成する段階において、
上記第1ソースガス及び第2ソースガスは互いに分離され上記工程チャンバ内に注入され、互いに分離されて上記工程チャンバの外部に排気されることを特徴とする請求項1に記載の超格子半導体構造の製造方法。
【請求項4】
上記基板が上記第1及び第2ソースガス領域を通過する段階において、
上記基板が上記サセプター上で公転しながら上記第1ソースガス領域を通過する際、上記基板上には第1半導体層が形成され、
上記基板が上記サセプター上で公転しながら上記第2ソースガス領域を通過する際、上記基板上には第2半導体層が形成されることを特徴とする請求項1に記載の超格子半導体構造の製造方法。
【請求項5】
上記第1半導体層は第1組成を有するAlGaIn(1−a−b)P層(0≦a≦1、0≦b≦1、0≦a+b≦1)であり、上記第2半導体層は第1組成と異なる第2組成を有するAlGaIn(1−c−d)P層(0≦c≦1、0≦d≦1、0≦c+d≦1)であることを特徴とする請求項4に記載の超格子半導体構造の製造方法。
【請求項6】
上記第1半導体層は第1組成を有するAlGa(1−x)As層(0≦x≦1)であり、上記第2半導体層は第1組成と異なる第2組成を有するAlGa(1−y)As層(0≦y≦1)であることを特徴とする請求項4に記載の超格子半導体構造の製造方法。
【請求項7】
上記第1半導体層は第1組成を有するAlGa(1−m)N層(0≦m≦1)であり、上記第2半導体層は第1組成と異なる第2組成を有するAlGa(1−n)N層(0≦n≦1)であることを特徴とする請求項4に記載の超格子半導体構造の製造方法。
【請求項8】
上記基板が上記サセプター上で公転し始めた後、上記第1ソースガスと第2ソースガスが上記工程チャンバに供給されることを特徴とする請求項1に記載の超格子半導体構造の製造方法。
【請求項9】
上記基板が上記サセプター上で公転する前に、上記第1ソースガスと第2ソースガスが上記工程チャンバに供給されることを特徴とする請求項1に記載の超格子半導体構造の製造方法。
【請求項10】
上記基板が上記サセプター上で1回公転する時、上記基板上には超格子半導体構造の1周期に当たる半導体層が形成されることを特徴とする請求項1に記載の超格子半導体構造の製造方法。
【請求項11】
上記工程チャンバは水平型工程チャンバであり、上記第1ソースガス及び第2ソースガスは上記工程チャンバに水平方向に注入されることを特徴とする請求項1に記載の超格子半導体構造の製造方法。
【請求項12】
上記第1ソースガス及び第2ソースガスを同時に上記工程チャンバに供給する間に、第3ソースガスを上記工程チャンバ内の上記サセプター上の全体領域に供給することを特徴とする請求項1に記載の超格子半導体構造の製造方法。
【請求項13】
上記第1及び第2ソースガスは上記工程チャンバに水平方向に注入される一方、上記第3ソースガスは上記工程チャンバに垂直方向に注入されることを特徴とする請求項12に記載の超格子半導体構造の製造方法。
【請求項14】
上記第3ソースガスはAsH、PH、及びNHガスのいずれか一つを含むことを特徴とする請求項12に記載の超格子半導体構造の製造方法。
【請求項15】
上記第3ソースガスはN、H及びこれらの混合物のいずれか一つをさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の超格子半導体構造の製造方法。
【請求項16】
上記基板が上記第1ソースガス領域と上記第2ソースガス領域を通過する段階において、
上記基板の公転速度は一定であることを特徴とする請求項1に記載の超格子半導体構造の製造方法。
【請求項17】
上記基板の公転速度は1から10rpmであることを特徴とする請求項1に記載の超格子半導体構造の製造方法。
【請求項18】
上記基板の公転速度を調節することにより、上記超格子半導体構造の1周期の厚さを制御することを特徴とする請求項1に記載の超格子半導体構造の製造方法。
【請求項19】
上記サセプターには多数の基板が同時に搭載されることを特徴とする請求項1に記載の超格子半導体構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図8】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−245546(P2006−245546A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11587(P2006−11587)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】