説明

半導体基板、電子デバイス、半導体基板の製造方法及び電子デバイスの製造方法

【課題】半導体基板、電子デバイス、半導体基板の製造方法及び電子デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】シリコンに不純物原子が導入された不純物領域104を有するベース基板102と、不純物領域104に接して設けられている複数のシード体112と、複数のシード体112の各々に接して設けられ、複数のシード体112の各々とそれぞれ格子整合または擬格子整合する複数の化合物半導体114とを備える半導体基板100。当該半導体基板100は、ベース基板102上に設けられ、不純物領域104の少なくとも一部を露出する複数の開口が設けられた阻害体をさらに備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、電子デバイス、半導体基板の製造方法及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、窒化3−5化合物半導体材料を含む3個のLEDスタックが、シリコンに格子整合し、シリコン基板の上に形成された構成を開示する。
(特許文献1)特開平8−274376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
シリコン基板上に3−5族化合物半導体等の結晶薄膜を形成した半導体基板を用いることにより、LED(Light Emitting Diode)等の光素子あるいはHBT(Heterojunction Bipolar Transistor)等の高周波増幅素子を低コストで製造することができる。これらの素子の性能を向上させるには、化合物半導体の結晶性を向上させることが欠かせない。
【0004】
本発明者らは、シリコン基板上に形成する化合物半導体の面積を微小領域に限定すると、シリコン基板上に形成した化合物半導体等が優れた結晶性を有することを見出した。当該化合物半導体上にLEDあるいはHBT等の電子素子を形成することにより、優れた性能の電子素子を有する電子デバイスを形成することができる。
【0005】
しかしながら、化合物半導体が形成される面積が小さい場合には、LEDあるいはHBT等の電子素子の配線を引き出す領域を確保することが困難である。例えば、化合物半導体上に引き出し配線および電極等が設けられると、HBTのチャネル等に使用できる領域が小さくなる。従って、微小な化合物半導体の領域をできるだけ用いることなく、配線等を引き出すことが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、シリコンに不純物原子が導入された不純物領域を有するベース基板と、不純物領域に接して設けられている複数のシード体と、各々対応するシード体に接して設けられ、対応する前記シード体とそれぞれ格子整合または擬格子整合する複数の化合物半導体とを備える半導体基板を提供する。当該半導体基板は、ベース基板上に設けられ、不純物領域の少なくとも一部を露出する複数の開口が設けられた阻害体をさらに備えてもよい。複数のシード体の各々は、例えば複数の開口の各々の内部に設けられる。阻害体は、シード体と格子整合または擬格子整合する複数の化合物半導体の結晶成長を阻害する。
【0007】
上記のベース基板は、シリコン原子を主成分とするシリコン領域を有し、不純物領域が、例えばベース基板の内部においてシリコン領域に接触している。また、ベース基板は、第1伝導型の不純物原子を含む第1伝導型不純物領域を有し、不純物領域は、第1伝導型不純物領域における第1伝導型の不純物原子の濃度よりも高い濃度の、第1伝導型と反対の伝導型の第2伝導型の不純物原子を含む第2伝導型高濃度不純物領域を有してもよい。さらに、当該ベース基板は、第1伝導型不純物領域と第2伝導型高濃度不純物領域との間に、第2伝導型高濃度不純物領域より低い濃度の第2伝導型の不純物原子を含む第2伝導型低濃度不純物領域を備えてもよい。上記不純物領域が、ベース基板が複数のシード体に接する表面から表面と反対側の面まで形成されていてもよい。
【0008】
上記の複数のシード体の各々は、例えばCSiGeSn1−x−y−z(0≦x<1、0≦y≦1、0≦z≦1、かつ0<x+y+z≦1)を含む。また、ベース基板は、一例としてSi基板またはSOI基板である。また、上記の不純物領域における抵抗率は、一例として0.0001Ω・cm以上1Ω・cm以下である。上記の半導体基板は、複数の化合物半導体の少なくとも1つの化合物半導体を核として阻害体上にラテラル成長したラテラル成長化合物半導体をさらに備えてもよい。
【0009】
本発明の第2の態様においては、上記の半導体基板における複数の化合物半導体のうち、少なくとも1つの化合物半導体上に設けられた化合物半導体素子を備え、化合物半導体素子は複数の端子を有し、複数の端子のうち少なくとも1つの端子は、化合物半導体素子が設けられている化合物半導体に接する少なくとも1つの複数のシード体を介して、不純物領域に電気的に結合されている電子デバイスを提供する。
【0010】
上記の電子デバイスは、複数の化合物半導体のうちの第1化合物半導体に設けられた第1化合物半導体素子と、複数の化合物半導体のうちの第1化合物半導体と異なる第2化合物半導体に設けられた第2化合物半導体素子とを備え、第1化合物半導体素子の複数の端子のうち少なくとも1つの端子と、第2化合物半導体素子の複数の端子のうち少なくとも1つの端子とが、不純物領域を介して電気的に結合されていてもよい。複数の化合物半導体に設けられた化合物半導体素子の少なくとも一つは、ヘテロ接合バイポーラトランジスタであり、ヘテロ接合バイポーラトランジスタのコレクタが複数のシード体の少なくとも一つを介して不純物領域に電気的に結合されていてもよい。
【0011】
また、上記電子デバイスにおいて、複数の化合物半導体に設けられた化合物半導体素子の少なくとも一つは、ヘテロ接合バイポーラトランジスタであり、ヘテロ接合バイポーラトランジスタのエミッタが複数のシード体の少なくとも一つを介して不純物領域に電気的に結合されていてもよい。さらに、上記の第1化合物半導体素子または第2化合物半導体素子の少なくとも1つは、エミッタ、ベース、またはコレクタの何れか1つをコモン端子とする、ヘテロ接合バイポーラトランジスタであり、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ以外の第1化合物半導体素子または第2化合物半導体素子の少なくとも1つは、コモン端子および出力端子を有するセンサ素子であり、ヘテロ接合バイポーラトランジスタのコモン端子とセンサ素子のコモン端子とが、不純物領域を介して電気的に結合されていてもよい。当該ヘテロ接合バイポーラトランジスタは、例えばセンサ素子の出力端子からの信号を増幅する。
【0012】
電子デバイスは、ベース基板に設けられた第1伝導型の不純物原子を含む第1伝導型不純物領域に設けられ、複数の端子を有し、シリコン原子を主成分とする活性領域を有するシリコン素子をさらに備え、シリコン素子の複数の端子のうち少なくとも1つの端子と、複数の化合物半導体に設けられた化合物半導体素子の複数の端子のうち少なくとも1つの端子とが、不純物領域を介して電気的に結合されていてもよい。
【0013】
本発明の第3の態様においては、シリコンに不純物原子が導入された不純物領域を有するベース基板を準備する段階と、不純物領域に接して、複数のシード体を形成する段階と、複数のシード体を加熱する段階と、加熱された複数のシード体に、複数のシード体と格子整合または擬格子整合する化合物半導体を形成する段階とを備える半導体基板の製造方法を提供する。当該ベース基板を準備する段階においては、例えば、ベース基板の表面にマスクパターンを形成し、マスクパターンで画定された領域に不純物原子を高濃度にドープする。
【0014】
上記ベース基板を準備する段階においては、例えば、ベース基板の表面に、結晶の成長を阻害する阻害体を形成し、阻害体に、ベース基板の少なくとも一部を露出する開口を形成し、ベース基板における開口により露出された領域に不純物原子を高濃度にドープする。上記の製造方法は、化合物半導体を核として、阻害体上にラテラル成長化合物半導体をラテラル成長させる段階をさらに備えてもよい。
【0015】
本発明の第4の態様においては、上記半導体基板の製造方法を用いて半導体基板を製造する段階と、化合物半導体に、少なくとも1つの端子が複数のシード体の少なくとも一つを介して不純物領域に電気的に結合される化合物半導体素子を形成する段階と備える電子デバイスの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】半導体基板100の断面の一例を示す。
【図2】半導体基板200の断面の一例を示す。
【図3】半導体基板200の製造過程の断面例を示す。
【図4】半導体基板200の製造過程の断面例を示す。
【図5】半導体基板200の製造過程の断面例を示す。
【図6】電子デバイス600の断面の一例を示す。
【図7】電子デバイス700の断面の一例を示す。
【図8】電子デバイス800の断面の一例を示す。
【図9】電子デバイス900の断面の一例を示す。
【図10】電子デバイス1000の断面の一例を示す。
【図11】電子デバイス1100の断面の一例を示す。
【図12】電子デバイス1200の断面の一例を示す。
【図13】電子デバイス1300の断面の一例を示す。
【図14】電子デバイス800の製造過程の断面例を示す。
【図15】電子デバイス800の製造過程の断面例を示す。
【図16】電子デバイス800の製造過程の断面例を示す。
【図17】電子デバイス800の製造過程の断面例を示す。
【図18】電子デバイス800の製造過程の断面例を示す。
【図19】電子デバイス2000の断面の一例を示す。
【図20】半導体基板2100の断面の一例を示す。
【図21】半導体基板2200の断面の一例を示す。
【図22】半導体基板2300の断面の一例を示す。
【図23】電子デバイス2400の断面の一例を示す。
【図24】電子デバイス2500の断面の一例を示す。
【図25】電子デバイス2600の断面の一例を示す。
【図26】電子デバイス2600の製造過程の断面例を示す。
【図27】電子デバイス2600の製造過程の断面例を示す。
【図28】電子デバイス2600の製造過程の断面例を示す。
【図29】電子デバイス2600の製造過程の断面例を示す。
【図30】電子デバイス2600の製造過程の断面例を示す。
【図31】半導体基板3200の断面の一例を示す。
【図32】半導体基板3200の製造過程の断面例を示す。
【図33】半導体基板3200の製造過程の断面例を示す。
【図34】半導体基板2300を用いて形成したHBTのレーザ顕微鏡写真を示す。
【図35】複数の開口の各々にHBTを形成した場合のレーザ顕微鏡写真を示す。
【図36】結晶の断面におけるレーザ顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、一実施形態である半導体基板100の断面の一例を示す。半導体基板100は、ベース基板102、シード体112、および化合物半導体114を備える。
【0018】
ベース基板102は、シリコンに不純物原子が導入された不純物領域104を有する。不純物領域104は、不純物原子が導入されることによってキャリア(自由電子または自由正孔)が発生するので、不純物原子が導入されていないシリコンに比べて低い抵抗率を有する。例えば、不純物領域104の抵抗率は、0.0001Ω・cm以上1Ω・cm以下であり、好ましくは0.0001Ω・cm以上0.2Ω・cm以下である。ベース基板102は、不純物領域104よりも抵抗率が高いシリコン領域を含んでもよい。当該シリコン領域の抵抗率は、例えば100Ω・cm以上である。
【0019】
不純物領域104は、基板の内部に設けられる。例えば、不純物領域104は、上記シリコン領域の一部に、N型の不純物原子またはP型の不純物原子が高濃度にドープされることにより形成される、N型高濃度不純物領域またはP型高濃度不純物領域である。「高濃度」とは、不純物領域の抵抗率を0.0001Ω・cm以上1Ω・cm以下にすることができる不純物原子濃度をいう。不純物原子のドープ法として、熱拡散法、イオン注入法等を例示できる。
【0020】
ベース基板102は、表面にシリコン結晶を有する。ここで、「表面にシリコン結晶を有する」とは、少なくともベース基板102の表面にシリコン原子で構成される領域を有することを意味する。例えば、ベース基板102は、基板全体がシリコン原子で構成されるシリコンウェハである。ベース基板102は、SOI(silicon−on−insulator)ウェハのように絶縁層の上にシリコン層を有する構造を有していてもよい。
【0021】
なお、ベース基板102は、シリコンとは異なる組成を有するサファイア基板およびガラス基板等に結晶成長したシリコン層を有してもよい。さらに、ベース基板102は、基板表面のシリコン層に形成された、自然酸化層等の薄い酸化シリコン層あるいは窒化シリコン層を有してもよい。
【0022】
半導体基板100は、ベース基板102上に設けられた複数のシード体112を有する。複数のシード体112は、それぞれ不純物領域104に接して設けられている。化合物半導体114は、各々対応するシード体112に接して設けられ、対応するシード体112と格子整合または擬格子整合している。それぞれのシード体112に1つの化合物半導体114が設けられてもよく、それぞれのシード体112に複数の化合物半導体114が設けられてもよい。
【0023】
本明細書において、「擬格子整合」とは、完全な格子整合ではないが、互いに接する2つの半導体の格子定数の差が小さく、格子不整合による欠陥の発生が顕著でない範囲で、互いに接する2つの半導体を積層できる状態をいう。このとき、各半導体の結晶格子が、弾性変形できる範囲内で変形することで、上記格子定数の差が吸収される。例えば、GeとGaAsとの、またはGeとInGaPとの格子緩和限界厚さ内での積層状態を擬格子整合と称する。
【0024】
複数のシード体112のうちの少なくとも1つは、不純物領域104と電気的に結合される。例えば、シード体112と不純物領域104との間では、キャリアが移動することができる。シード体112および不純物領域104は、電磁誘導により電気的に結合されてもよい。シード体112は、例えばCSiGeSn1−x−y−z(0≦x<1、0≦y≦1、0≦z≦1、かつ0<x+y+z≦1)を含む。例えば、シード体112は、Ge結晶、SiGe結晶、またはGeSn結晶である。
【0025】
シード体112は、例えば、化合物半導体114に良好なシード面を提供する半導体である。シード体112は、ベース基板102の表面に存在する不純物が、化合物半導体114の結晶性に悪影響を及ぼすことを抑制する。シード体112は、複数の層を有してもよい。一例として、シード体112は、不純物領域104と同じ伝導型を示す不純物原子を含む。
【0026】
シード体112は、ベース基板102とシード体112との界面に接して、ベース基板102内に、組成がCx2Siy2Gez2Sn1−x2−y2−z2(0≦x2<1、0≦y2≦1、0≦z2≦1、かつ0<x2+y2+z2≦1)である界面領域を含んでよい。シード体112のシリコン組成yと、前記界面領域のシリコン組成y2とは、例えばy2>yの関係を満たす。
【0027】
シード体112は、例えば、エピタキシャル成長法により形成される。エピタキシャル成長法として、化学気相析出法(CVD法と称する)、有機金属気相成長法(MOCVD法と称する)、分子線エピタキシ法(MBE法と称する)、および原子層成長法(ALD法と称する)を例示できる。複数のシード体112は、例えば、ベース基板102の上にシード体112と同じ組成の膜を形成した後にエッチング等のフォトリソグラフィ法を用いることにより、互いに離れた位置に形成される。
【0028】
シード体112は、ベース基板102上に設けられた後に加熱されることが好ましい。シード体112の内部には、ベース基板102とシード体112との格子定数の違い等により、転位等の格子欠陥が発生する場合がある。上記欠陥は、例えば、シード体112を加熱してアニールすることにより、シード体112の内部を移動する。上記欠陥は、シード体112の内部を移動して、シード体112の界面またはシード体112の内部にあるゲッタリングシンク等に捕捉される。その結果、シード体112に加熱を施すことにより、シード体112の欠陥を低減して、シード体112の結晶性を向上させることができる。
【0029】
シード体112は、非晶質または多結晶のCSiGeSn1−x−y−z(0≦x<1、0≦y≦1、0≦z≦1、かつ0<x+y+z≦1)を加熱することにより形成してもよい。また、シード体112を加熱する工程が、不純物領域104を形成する目的の熱拡散工程、または注入不純物原子の活性化アニール工程を兼ねてもよい。
【0030】
シード体112の底面積は、例えば1mm以下である。シード体112の底面積は1600μm以下であってもよい。シード体112の底面積は900μm以下であってもよい。また、シード体112の底面の最大幅は、例えば80μm以下である。シード体112の底面の最大幅は40μm以下であってもよい。
【0031】
化合物半導体114は、例えば、4族化合物半導体、3−5族化合物半導体、または2−6族化合物半導体である。化合物半導体114が3−5族化合物半導体である場合には、化合物半導体114は、GaAs、GaN、およびInP等である。
【0032】
半導体基板100は、化合物半導体114とシード体112との間に、他の半導体層を有してもよい。例えば、半導体基板100は、化合物半導体114とシード体112との間に、バッファ層等を有する。化合物半導体114は、組成、ドーピング濃度、厚さの異なる複数の半導体層から構成される積層体であってもよい。例えば、化合物半導体114がP型半導体層およびN型半導体層を有する場合には、PN接合を有するダイオードを構成する。化合物半導体114は、例えば、エピタキシャル成長法により形成される。エピタキシャル成長法として、CVD法、MOCVD法、MBE法、およびALD法を例示できる。
【0033】
図2は、他の実施形態である半導体基板200の断面の一例を示す。半導体基板200は、ベース基板202、阻害体206、シード体212、および化合物半導体214を備える。ベース基板202は不純物領域204を有する。
【0034】
ベース基板202は、図1におけるベース基板102に対応する。不純物領域204は不純物領域104に対応する。シード体212はシード体112に対応する。化合物半導体214は化合物半導体114に対応する。従って、以下の説明において、半導体基板100と重複する内容については、省略する場合がある。
【0035】
阻害体206は、ベース基板202の上に形成される。阻害体206には、不純物領域204の少なくとも一部を露出する開口208が設けられる。開口208は、ベース基板202の表面まで達している。阻害体206には、複数の開口208が設けられてもよい。シード体212は、複数の開口208のうち少なくとも1つの開口の内部に形成される。
【0036】
阻害体206は、結晶成長を阻害する。例えば、エピタキシャル成長法により半導体の結晶が成長する場合において、阻害体206の表面では、半導体の結晶がエピタキシャル成長することが阻害される。その結果、半導体の結晶は、開口208において選択的にエピタキシャル成長する。
【0037】
阻害体206は、例えば、酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸窒化シリコン層またはこれらを積層した層である。阻害体206の厚みは、一例として0.001〜5μmである。阻害体206は、例えば、熱酸化法またはCVD法等により形成される。
【0038】
図3から図5は、半導体基板200の製造過程における断面例を示す。半導体基板200の製造方法は、シリコンに不純物原子が導入された不純物領域204を有するベース基板202を準備する段階、不純物領域204に接して、複数のシード体212を形成する段階、および複数のシード体212を加熱する段階、加熱された複数のシード体212に、複数のシード体212と格子整合または擬格子整合する化合物半導体を形成する段階を備える。
【0039】
ベース基板202を準備する段階において、少なくとも表面がシリコン結晶である基板の表面に、不純物領域を形成する目的のマスクパターンを形成する。マスクパターンとして、フォトレジストマスクパターン、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンまたはこれらの積層体から構成されるマスクパターンを例示できる。酸化シリコン、窒化シリコン等の形成方法として、熱酸化法、CVD法等を例示できる。マスクパターンは、フォトリソグラフィ法によって形成される。
【0040】
例えば、不純物原子が高濃度にドープされた不純物領域204をベース基板202に形成する場合に、ベース基板202の表面にフォトレジストを塗布して、フォトリソグラフィ法により不純物領域204を設ける予定部位に開口308を形成することで、図3に示すようなマスクパターン302を形成することができる。
【0041】
続いて、ベース基板202におけるマスクパターンで画定された領域に不純物原子を高濃度にドープすることにより、不純物領域204を形成する。例えば、図3に示すように、不純物原子イオンを注入することにより、開口308が設けられたベース基板202の対応部位に、図4に示すような不純物領域204を形成する。N型不純物原子として、P、As、Sb、S、Se、Te等を例示できる。P型不純物原子として、B、Al、Ga、In、Mg、Zn等を例示できる。
【0042】
ベース基板202を準備する段階において、基板の上に、結晶の成長を阻害する阻害体206を形成し、当該阻害体206に、不純物領域204の少なくとも一部の領域を露出する開口208を形成してもよい。例えば、熱酸化法によって、ベース基板202の全面に阻害体206となる酸化シリコン膜を形成する。図4に示すように、エッチング等のフォトリソグラフィ法により、当該酸化シリコン膜に、不純物領域204の少なくとも一部を露出する複数の開口208を形成してもよい。
【0043】
シード体212を形成する段階においては、上記開口の底部の不純物領域204に接して、開口の内部にシード体212を形成する。例えば、図5に示すように、開口208の内部に、不純物領域204に接して、選択エピタキシャル法によりシード体212を形成する。エピタキシャル成長法として、CVD法、MOCVD法、MBE法、およびALD法を例示できる。シード体212として、CVD法によりGe結晶、SiGe結晶、またはGeSn結晶をエピタキシャル成長させてよい。
【0044】
シード体212を形成する段階において、シード体212に不純物原子をドープしてもよい。例えばシード体212がSiGe結晶である場合、N型不純物原子として、P、As、およびSb等の5族原子を例示できる。P型不純物原子として、BおよびGa等の3族原子を例示できる。
【0045】
シード体212を加熱する段階において、シード体212を加熱してアニールする。加熱により、ベース基板202とシード体212との格子定数の違い等に起因してシード体212の内部に発生した転位等の格子欠陥が低減され、シード体212の結晶性を向上させることができる。シード体212を加熱する段階においては、複数回の加熱を繰り返してもよい。例えば、シード体212の融点に達しない温度での高温加熱を実施した後、高温加熱の温度より低い温度での低温加熱を実施する。このような2段階の加熱を複数回繰り返してもよい。
【0046】
高温加熱の温度および時間は、シード体212がSiGe1−x(0≦x<1)を有する場合には、例えば、800〜900℃で2〜10分間である。低温加熱の温度および時間は、例えば、650〜780℃で2〜10分間である。
【0047】
化合物半導体を形成する段階において、加熱されたシード体212に接して、シード体212と格子整合または擬格子整合する化合物半導体を形成する。例えば、図2に示すように、シード体212の上に化合物半導体214を選択エピタキシャル成長させる。複数のシード体212が形成された場合に、複数のシード体212のそれぞれに、化合物半導体214を形成してもよい。
【0048】
エピタキシャル成長法として、CVD法、MOCVD法、MBE法、およびALD法を例示できる。例えば、化合物半導体214がGaAs、AlGaAs、およびInGaP等の3−5族化合物半導体である場合には、MOCVD法を用いて化合物半導体214をエピタキシャル成長させることができる。例えば、MOCVD炉内を高純度水素で十分置換した後、シード体212を有するベース基板202の加熱を開始する。結晶成長時の基板温度は、例えば450℃から800℃である。ベース基板202が適切な温度に安定したところで炉内に砒素原料または燐原料を導入し、続いてガリウム原料、アルミニウム原料またはインジウム原料を導入して、化合物半導体214をエピタキシャル成長させてよい。
【0049】
3族原子原料として、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、およびトリメチルインジウム(TMI)等を使用でき、5族原子原料ガスとして、アルシン(AsH)、ターシャリブチルアルシン((CHCAsH)、ホスフィン(PH)、およびターシャリブチルホスフィン((CHCPH)等を使用できる。エピタキシャル成長条件は、一例として、反応炉内圧力0.1atm、成長温度650℃、成長速度0.1〜3μm/hrである。反応炉内圧力0.1atm、成長温度550℃、成長速度0.1〜1μm/hrのエピタキシャル成長条件で、30nm程度GaAsを積層した後に一時的に成長を中断し、砒素原料雰囲気を維持しつつ650℃まで昇温した後に、再び反応炉内圧力0.1atm、成長温度650℃、成長速度0.1〜3μm/hrのエピタキシャル成長条件としてもよい。原料のキャリアガスは、例えば高純度水素である。
【0050】
不純物領域204、シード体212、および化合物半導体214の間で、各々を構成する原子を相互にドープさせてもよい。例えば、ベース基板202の上にシード体212としてGe結晶を成長させ、そのGe結晶の上に化合物半導体214を結晶成長させる場合、化合物半導体214の結晶成長過程において、成長途中の化合物半導体214にGe原子を拡散させることができる。
【0051】
また、シード体212を加熱する段階において、シード体212を構成するGe結晶からのGe原子の再蒸発が起こると、化合物半導体214の結晶成長過程において、残留したGe原子を成長途中の化合物半導体214の中に取り込ませることができる。化合物半導体214の中のGe原子はN型不純物として作用し、化合物半導体214の抵抗を下げる。従って、適切な条件を選択することによって、不純物領域204とシード体212、またはシード体212と化合物半導体214との間の界面抵抗等を調整でき、半導体基板200に形成するデバイスの設計値に応じた抵抗にすることができる。
【0052】
図6は、電子デバイス600の断面の一例を示す。電子デバイス600は、ベース基板602、開口608が設けられた阻害体606、シード体612、コレクタ用半導体632、ベース用半導体634、エミッタ用半導体636、ベース電極644、およびエミッタ電極646を備える。ベース基板602は不純物領域604を有する。
【0053】
電子デバイス600は、2つのシード体612を有する。2つのシード体612の上に形成されたコレクタ用半導体632、ベース用半導体634、およびエミッタ用半導体636等により、2つのHBT(ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)が形成される。当該HBTは、化合物半導体素子の一例である。2つのHBTのコレクタ用半導体632は、シード体612を介して、不純物領域604に電気的に結合される。
【0054】
電子デバイス600においては、シード体612および不純物領域604を介して、2つのHBTのコレクタ用半導体632を電気的に結合させ、2つのHBTが並列に接続されている。不純物領域604はコレクタ用電極またはコレクタ用電極の引き出し部として機能する。不純物領域604を介して2つのHBTを接続することにより、各々のHBTにコレクタメサ、コレクタ電極、および配線を形成する必要がなくなる。また、電子デバイス600の構造設計の自由度が向上する。さらに、電子デバイス600の製造プロセスを簡略化することもできる。
【0055】
ベース基板602は、図2におけるベース基板202に対応する。不純物領域604は不純物領域204に対応する。阻害体606は阻害体206に対応する。シード体612はシード体212に対応する。以下の説明において、半導体基板200と重複する内容については、省略する場合がある。
【0056】
コレクタ用半導体632は、例えば化合物半導体である。コレクタ用半導体632は、図2に示した化合物半導体214に対応する。コレクタ用半導体632は、例えばN型またはP型の化合物半導体である。コレクタ用半導体632は、HBTのコレクタに適する化合物半導体である。例えば、コレクタ用半導体632は、電子デバイス600における他の半導体よりも低い抵抗率を有する。
【0057】
ベース用半導体634は、例えば化合物半導体である。ベース用半導体634は、図2に示した化合物半導体214に対応する。ベース用半導体634は、コレクタ用半導体632と反対の伝導型を有する化合物半導体である。ベース用半導体634は、HBTのベースに適する化合物半導体である。
【0058】
エミッタ用半導体636は、例えば化合物半導体である。エミッタ用半導体636は、図2に示した化合物半導体214に対応する。エミッタ用半導体636は、コレクタ用半導体632と同じ伝導型を有する化合物半導体である。エミッタ用半導体636は、HBTのエミッタに適する化合物半導体である。
【0059】
コレクタ用半導体632、ベース用半導体634、およびエミッタ用半導体636は、例えば、シード体612の上に、この順に形成される。コレクタ用半導体632、ベース用半導体634、およびエミッタ用半導体636は、シード体612と格子整合または擬格子整合する。
【0060】
コレクタ用半導体632、ベース用半導体634、およびエミッタ用半導体636は、例えば4族化合物半導体、3−5族化合物半導体、または2−6族化合物半導体である。例えば3−5族化合物半導体として、GaP、GaAs、GaAsP、InGaAs、AlGaAs、InGaP、InGaAsP、AlInGaP、GaN、InGaN、およびInPを例示できる。コレクタ用半導体632、ベース用半導体634、およびエミッタ用半導体636がNPN型接合またはPNP型接合を構成することにより、電子デバイス600にはHBTが形成されている。
【0061】
コレクタ用半導体632、ベース用半導体634、およびエミッタ用半導体636は、例えば、それぞれ組成、ドーピング濃度、半導体層厚が異なる複数の半導体層から構成される積層体である。電子デバイス600は、コレクタ用半導体632とシード体612との間、コレクタ用半導体632とベース用半導体634との間、ベース用半導体634とエミッタ用半導体636との間、エミッタ用半導体636とエミッタ電極646との間、またはベース用半導体634とベース電極644との間に、有限の厚さを有し、組成、ドーピング濃度、膜厚の異なる複数の半導体層から構成する積層体を更に有してもよい。
【0062】
例えば、電子デバイス600は、コレクタ用半導体632とシード体612との間に、更にサブコレクタ用半導体を有する。電子デバイス600は、エミッタ用半導体636とエミッタ電極646との間に、更にサブエミッタ用半導体を有してもよい。
【0063】
ベース電極644はベース用半導体634に接して形成され、ベース用半導体634を外部回路に接続する。ベース電極644は、伝導性のある材料によって形成されている。ベース電極644の材料の材料は、例えば金属である。ベース電極644の材料として、AuZn、CrAu、Ti/Pt、Ti/Pt/Auを例示できる。ベース電極644の形成方法としては、スパッタ法、真空蒸着法等が挙げられる。
【0064】
エミッタ電極646は、エミッタ用半導体636に接して形成され、エミッタ用半導体636を外部回路に接続する。エミッタ電極646は、伝導性のある材料によって形成されている。エミッタ電極646の材料は、例えば金属である。エミッタ電極646の材料として、AuGe/Ni/Au、Ti/Pt、Ti/Pt/Auを例示できる。エミッタ電極646の形成方法としては、スパッタ法、真空蒸着法等が挙げられる。
【0065】
図7は、電子デバイス700の断面の一例を示す。電子デバイス700は、ベース基板702、阻害体706、シード体712、コレクタ用半導体732、ベース用半導体734、エミッタ用半導体736、コレクタ電極742、ベース電極744、エミッタ電極746、およびコレクタコンタクト用半導体752を備える。ベース基板702は不純物領域704を有する。
【0066】
電子デバイス700は、1つのHBTを有する。当該HBTは、化合物半導体素子の一例である。当該HBTのコレクタ用半導体732は、シード体712を介して不純物領域704に電気的に結合される。電子デバイス700においては、コレクタ電極742が、コレクタ用半導体732から分離したコレクタコンタクト用半導体752に設けられている。コレクタ電極742およびコレクタ用半導体732は、シード体712および不純物領域704を介して結合されている。
【0067】
ベース基板702は、図6におけるベース基板602に対応する。不純物領域704は不純物領域604に対応する。阻害体706は阻害体606に対応する。シード体712はシード体612に対応する。
【0068】
コレクタ用半導体732、ベース用半導体734、およびエミッタ用半導体736は、それぞれ図6におけるコレクタ用半導体632、ベース用半導体634、およびエミッタ用半導体636に対応する。ベース電極744およびエミッタ電極746は、それぞれベース電極644およびエミッタ電極646に対応する。以下の説明において、電子デバイス600と重複する内容については、説明を省略する場合がある。
【0069】
コレクタコンタクト用半導体752は、例えば化合物半導体である。コレクタコンタクト用半導体752は、例えば、コレクタコンタクト用半導体752に接して形成される金属電極との間にオーミック接合を形成する。コレクタコンタクト用半導体752は、例えばエピタキシャル成長法により、シード体712の上に形成される。コレクタコンタクト用半導体752は、シード体712および不純物領域704を介して、コレクタ用半導体732と電気的に結合されてもよい。
【0070】
コレクタコンタクト用半導体752は、例えば4族化合物半導体、3−5族化合物半導体、または2−6族化合物半導体である。コレクタコンタクト用半導体752の材料として、GaAs、InGaAs、AlGaAs、およびInGaPを例示できる。コレクタコンタクト用半導体752は、例えば、コレクタ用半導体732に含有されている不純物原子と同種の伝導型を示す不純物原子を含む。コレクタコンタクト用半導体752は、例えばコレクタ用半導体732より高濃度に不純物原子を含む。
【0071】
コレクタ電極742は、例えば、コレクタコンタクト用半導体752に接して形成される。コレクタ電極742は、例えば、コレクタコンタクト用半導体752、シード体712、および不純物領域704を介して、コレクタ用半導体732と電気的に結合される。コレクタ電極742は、コレクタ用半導体732を外部回路に接続する。コレクタ電極742は、伝導性のある材料によって形成される。コレクタ電極742の材料は、例えば金属である。コレクタ電極742の材料として、AuGe/Ni/Auを例示できる。コレクタ電極742の形成方法としては、スパッタ法、真空蒸着法等が挙げられる。
【0072】
電子デバイス700においては、コレクタ電極742が不純物領域704を介してコレクタ用半導体732と電気的に結合されるので、電子デバイス700はコレクタメサを有する必要がない。従って、エミッタメサの頂上の面積を、ベース基板702が不純物領域704を有しない場合と同等に確保しながら、阻害体706の開口708を小さくして、選択エピタキシャル領域を縮小することができる。選択エピタキシャル領域が縮小することにより、ベース基板702とシード体712との格子定数の違いによりシード体712の内部に生成する転位等の格子欠陥を低減し、シード体712の結晶質を高めることができる。
【0073】
なお、コレクタを阻害体706の開口708の内部に形成することにより、HBTと阻害体706またはベース基板702との間の段差を低減することができる。当該段差を低減することにより、後続のデバイスプロセスにおける平坦化が容易になる。従って、電子デバイス700の構造は、平坦化が必要とされるシリコンプロセス等の半導体デバイス製造プロセスにおける微細加工に適している。
【0074】
図8は、電子デバイス800の断面の一例を示す。電子デバイス800は、ベース基板802、阻害体806、シード体812、コレクタ用半導体832、ベース用半導体834、エミッタ用半導体836、ベースメサ838、コレクタ電極842、ベース電極844、エミッタ電極846、およびコレクタコンタクト用半導体852を備える。ベース基板802は不純物領域804を有する。電子デバイス800は、1つのHBTから構成される。当該HBTは、化合物半導体素子の一例である。電子デバイス800は、阻害体806の上に、ベース用半導体834の側面に接してラテラル成長したベースメサ838が形成されている点で電子デバイス700と異なる。
【0075】
ベース基板802は、図7におけるベース基板702に対応する。不純物領域804は、不純物領域704に対応する。阻害体806は、阻害体706に対応する。シード体812は、シード体712に対応する。コレクタコンタクト用半導体852は、コレクタコンタクト用半導体752に対応する。
【0076】
コレクタ用半導体832、ベース用半導体834、およびエミッタ用半導体836は、それぞれ図7におけるコレクタ用半導体732、ベース用半導体734、およびエミッタ用半導体736に対応する。コレクタ電極842およびエミッタ電極846は、それぞれコレクタ電極742およびエミッタ電極746に対応する。従って、以下の説明において、電子デバイス700と重複する内容については、説明を省略する場合がある。
【0077】
ベースメサ838は、ベース用半導体834と同じ組成を有する化合物半導体である。ベースメサ838は、例えば、ベース用半導体834に含有されている不純物原子と同種の伝導型を示す不純物原子を含む。ベースメサ838は、ベース用半導体834より高濃度に当該不純物原子を含んでもよい。ベースメサ838は、単結晶であってもよく、多結晶であってもよい。ベースメサ838は、一例として、阻害体806の上に、ベース用半導体834の側面に接して形成される。ベースメサ838の形成方法として、CVD法およびMOCVD法等を例示できる。
【0078】
ベース電極844は、ベースメサ838に接して形成される。ベース電極844は、ベースメサ838を介して、ベース用半導体834を外部回路に接続する。ベース電極844は、伝導性のある材料によって形成される。ベース電極844の材料は、例えば金属である。ベース電極844の材料として、AuZn、CrAu、Ti/Pt、Ti/Pt/Auを例示できる。ベース電極844の形成方法としては、スパッタ法および真空蒸着法等が挙げられる。
【0079】
電子デバイス800は、阻害体806の上に、ベース用半導体834の側面に接して形成されたベースメサ838を有するので、電子デバイス700に形成されていたエミッタメサが不要になる。その結果、電子デバイス800は、エミッタ電極に用いる領域として、電子デバイス700よりも大きな面積を確保することができる。図8に示すように、大きい面積のエミッタ用半導体836を確保することにより、より均一なHBT内部電界分布を実現できるので、HBTの耐圧性を高めることができる。
【0080】
また、電子デバイス800においては、電子デバイス700と同じ大きさのエミッタ用半導体836を有しながらも、阻害体806の開口808を小さくして、選択エピタキシャル領域を縮小することができる。選択エピタキシャル領域を縮小することにより、ベース基板802とシード体812との格子定数の違いによりシード体812の内部に生成する転位等の格子欠陥を低減し、シード体812の結晶質を高めることができる。
【0081】
また、電子デバイス800において、コレクタを阻害体806の開口808の内部に形成することにより、HBTと阻害体806またはベース基板802との間の段差を低減することができるので、後続のデバイスプロセスにおける平坦化が容易になる。その結果、電子デバイス800は、微細加工が必要なシリコンプロセス等の半導体デバイス製造プロセスに適合する。
【0082】
図9は、電子デバイス900の断面の一例を示す。電子デバイス900は、不純物領域804を有するベース基板802、阻害体806、シード体812、コレクタ用半導体832、ベース用半導体834、エミッタ用半導体836、ベースメサ838、コレクタ電極842、ベース電極844、およびエミッタ電極846を備える。電子デバイス900は、1つのHBTから構成される。当該HBTは、化合物半導体素子の一例である。電子デバイス900は、コレクタコンタクト用半導体852を有しない点を除き、その構成は電子デバイス800と同じである。従って、以下の説明において、電子デバイス800と重複する内容については、説明を省略する。
【0083】
図10は、電子デバイス1000の断面の一例を示す。電子デバイス1000は、ベース基板802、不純物領域804、阻害体806、シード体812、コレクタ用半導体832、ベース用半導体834、エミッタ用半導体836、ベースメサ838、コレクタ電極842、ベース電極844、およびエミッタ電極846を備える。電子デバイス1000は、1つのHBTから構成される。当該HBTは、化合物半導体素子の一例である。電子デバイス1000は、コレクタコンタクト用半導体852を有しない点、およびコレクタ電極842がシード体812を介さないで、直接に不純物領域804に接して形成されている点を除き、電子デバイス800と同じ構成を有する。従って、以下の説明において、電子デバイス800と重複する内容については、説明を省略する。
【0084】
電子デバイス900および電子デバイス1000は、電子デバイス800との構造上の差異により、電子デバイス800に比べてコレクタ電極842の接触抵抗を低減することができる。電子デバイス900および電子デバイス1000は、図7に示した電子デバイス700のように、エミッタメサ上にエミッタ電極およびベース電極を形成する構造を有してもよい。
【0085】
図11は、電子デバイス1100の断面の一例を示す。電子デバイス1100は、不純物領域1104を有するベース基板1102、阻害体1106、シード体1112、コレクタ用半導体1132、ベース用半導体1134、エミッタ用半導体1136、ベースメサ1138、コレクタ電極1142、ベース電極1144、エミッタ電極1146、およびエミッタコンタクト用半導体1156を備える。
【0086】
電子デバイス1100は、1つのHBTから構成される。当該HBTは、化合物半導体素子の一例である。当該HBTのエミッタ用半導体1136は、例えば、シード体1112を介して、不純物領域1104に電気的に結合される。電子デバイス1100は、エミッタ用半導体1136から分離したエミッタコンタクト用半導体1156に設けられたエミッタ電極1146を有する。エミッタ電極1146およびエミッタ用半導体1136は、シード体1112および不純物領域1104を介して、電気的に結合される。
【0087】
ベース基板1102は、図8におけるベース基板802に対応する。不純物領域1104は不純物領域804に対応する。阻害体1106は阻害体806に対応する。シード体1112はシード体812に対応する。ベースメサ1138はベースメサ838に対応する。ベース電極844はベース電極844に対応する。従って、以下の説明において、電子デバイス800と重複する内容については、説明を省略する場合がある。
【0088】
エミッタ用半導体1136、ベース用半導体1134、およびコレクタ用半導体1132は、それぞれ図8におけるエミッタ用半導体836、ベース用半導体834、およびコレクタ用半導体832に対応する。但し、エミッタ用半導体1136、ベース用半導体1134、およびコレクタ用半導体1132は、シード体1112の上に、この順に形成されてよい。
【0089】
コレクタ電極1142は、一例として、コレクタ用半導体1132に接して形成される。コレクタ電極1142は、コレクタ用半導体1132を外部回路に接続する。コレクタ電極1142は、例えば伝導性のある材料によって形成される。コレクタ電極1142の材料は、例えば金属である。コレクタ電極1142の材料として、AuGe/Ni/Auを例示できる。コレクタ電極1142の形成方法としては、スパッタ法および真空蒸着法等が挙げられる。
【0090】
エミッタコンタクト用半導体1156は、化合物半導体の一例である。エミッタコンタクト用半導体1156は、例えば、それに接して形成される金属電極との間にオーミック接合を形成する。エミッタコンタクト用半導体1156は、例えばエピタキシャル成長法により、シード体1112の上に形成される。エミッタコンタクト用半導体1156は、シード体1112および不純物領域1104を介して、エミッタ用半導体1136と電気的に結合されてもよい。
【0091】
エミッタコンタクト用半導体1156は、例えば4族化合物半導体、3−5族化合物半導体、または2−6族化合物半導体である。エミッタコンタクト用半導体1156の材料として、GaAsおよびInGaAsを例示できる。エミッタコンタクト用半導体1156は、例えば、エミッタ用半導体1136に含有されている不純物原子と同種の伝導型を示す不純物原子を含む。エミッタコンタクト用半導体1156は、エミッタ用半導体1136より高濃度に当該不純物原子を含んでもよい。
【0092】
エミッタ電極1146は、エミッタコンタクト用半導体1156に接して形成される。エミッタ電極1146は、エミッタコンタクト用半導体1156、シード体1112、および不純物領域1104を介して、エミッタ用半導体1136と電気的に結合されてもよい。エミッタ電極1146は、エミッタ用半導体1136を外部回路に接続する。エミッタ電極1146は、伝導性のある材料によって形成される。エミッタ電極1146の材料は、例えば金属である。エミッタ電極1146の材料として、AuGe/Ni/Auを例示できる。エミッタ電極1146の形成方法としては、スパッタ法、真空蒸着法等が挙げられる。
【0093】
電子デバイス1100が図11に示す構造を有することによって、コレクタメサおよびエミッタメサを形成する必要性がなくなり、電子デバイス800に比べて大きいエミッタ電極の面積を確保することができる。大きいエミッタ電極の面積を確保することにより、より均一なHBT内部電界分布を実現でき、HBTの耐圧性を高めることができる。
【0094】
また、電子デバイス1100は、電子デバイス800と同じ大きさのエミッタ用半導体1136を有しながらも、電子デバイス800における開口808よりも小さな面積の開口1108を有する。従って、電子デバイス1100は、電子デバイス800よりも小さな選択エピタキシャル領域を有する。電子デバイス1100における選択エピタキシャル領域が小さいので、ベース基板1102とシード体1112との格子定数の違いによりシード体1112の内部に生成する転位等の格子欠陥が低減され、シード体1112の結晶質を高めることができる。
【0095】
図11のような構造においては、阻害体1106の開口1108の内部にエミッタを形成することができる。その結果、HBTと阻害体1106またはベース基板1102との間の段差を低減することができるので、後続のデバイスプロセスにおける平坦化が容易になる。その結果、電子デバイス1100は、微細加工が必要なシリコンプロセス等の半導体デバイス製造プロセスに適合する。
【0096】
図11のような構造においては、シード体1112および不純物領域1104は、エミッタバラストとして機能する。具体的には、図7から図10に示した電子デバイスの構造よりも放熱の効果が大きいので、熱暴走を抑制することができる。また、エミッタ接地の場合に、出力信号となるコレクタ信号を基板から分離することができるので、コレクタ信号に起因するノイズを低減することができる。
【0097】
図12は、電子デバイス1200の断面の一例を示す。電子デバイス1200は、不純物領域1104を有するベース基板1102、阻害体1106、シード体1112、コレクタ用半導体1132、ベース用半導体1134、エミッタ用半導体1136、ベースメサ1138、コレクタ電極1142、ベース電極1144、およびエミッタ電極1146を備える。電子デバイス1200は、1つのHBTから構成される。当該HBTは、化合物半導体素子の一例である。電子デバイス1200は、エミッタコンタクト用半導体1156を有しない点を除き、その構成は電子デバイス1100と同じである。従って、以下の説明において、電子デバイス1100と重複する内容については、説明を省略する。
【0098】
図13は、電子デバイス1300の断面の一例を示す。電子デバイス1300は、不純物領域1104を有するベース基板1102、阻害体1106、シード体1112、コレクタ用半導体1132、ベース用半導体1134、エミッタ用半導体1136、ベースメサ1138、コレクタ電極1142、ベース電極1144、およびエミッタ電極1146を備える。電子デバイス1300は、1つのHBTから構成される。当該HBTは、化合物半導体素子の一例である。電子デバイス1300は、エミッタコンタクト用半導体1156を有しない点、およびエミッタ電極1146がシード体1112を介することなく、直接に不純物領域1104に接して形成された点を除き、その構成は電子デバイス1100と同じである。従って、以下の説明において、電子デバイス1100と重複する内容については、説明を省略する。
【0099】
電子デバイス1200および電子デバイス1300は、エミッタ電極1146がシード体1112を介することなく不純物領域1104に接しているので、電子デバイス1100に比べて、エミッタ電極1146の接触抵抗が小さい。
【0100】
図14から図18は、以上説明した電子デバイスのうち、典型的な電子デバイス800の製造過程を示す。以下、図面を用いて電子デバイス800の製造方法を説明する。電子デバイス800の製造方法は、図3から図5を用いて説明した半導体基板を製造する段階と、コレクタがシード体812を介して不純物領域804に電気的に結合されるHBTを形成する段階とを含む。
【0101】
図14は、ベース基板802にイオン注入により不純物領域804を形成し、ベース基板802の上に開口808が設けられた阻害体806を形成し、開口808の内部に不純物領域804に接してシード体812を形成して得られた半導体基板を示す。例えば、ベース基板802にPイオンを注入して、N型伝導型を有する不純物領域804を形成する。ベース基板802の上に、熱酸化法により酸化シリコンの阻害体806を形成してもよい。CVD法により、不純物領域804に接して、開口808の内部に順次GeSi結晶層およびGe結晶層を選択エピタキシャル成長させることで、2層構造のシード体812を形成してもよい。シード体812を加熱してもよい。各プロセスの内容については、図3から図5において説明したので、省略する。
【0102】
次に、図15に示すように、シード体812に接して、コレクタ用半導体832、ベース用半導体834、およびエミッタ用半導体836を選択エピタキシャル成長させる。コレクタ用半導体832、ベース用半導体834、およびエミッタ用半導体836は、シード体812と格子整合または擬格子整合する。コレクタ用半導体832、ベース用半導体834およびエミッタ用半導体836は、例えば4族化合物半導体、3−5族化合物半導体、または2−6族化合物半導体である。例えば、MOCVD法により、N型GaAsのコレクタ用半導体832、P型GaAsのベース用半導体およびN型InGaPのエミッタ用半導体836を順次シード体812の上に形成してよい。
【0103】
エピタキシャル成長方法の一例として、MOCVD炉内を高純度水素で十分置換した後、シード体812が設けられたベース基板802の加熱を開始する。結晶成長時の基板温度は、450℃から800℃である。ベース基板802が適切な温度に安定したところで炉内に砒素原料または燐原料を導入し、続いてガリウム原料またはインジウム原料を導入して、エピタキシャル成長させる。
【0104】
3族原子原料として、トリメチルガリウム(TMG)およびトリメチルインジウム(TMI)等が使用でき、5族原子原料ガスとして、アルシン(AsH)、ターシャリブチルアルシン((CHCAsH)、ホスフィン(PH)、およびターシャリブチルホスフィン((CHCPH)等を使用できる。ドナー不純物原子として、Si、S,Se、またはTeを添加してもよい。アクセプタ不純物原子として、C、Mg、またはZnを添加してもよい。
【0105】
エピタキシャル成長条件は、例えば、反応炉内圧力0.1atm、成長温度650℃、成長速度1〜3μm/hrである。反応炉内圧力0.1atm、成長温度550℃、成長速度0.1〜1μm/hrのエピタキシャル成長条件下で30nm程度GaAsを積層した後にいったん成長を中断し、砒素原料雰囲気を維持しつつ650℃まで昇温し、再び反応炉内圧力0.1atm、成長温度650℃、成長速度0.1〜3μm/hrでエピタキシャル成長させてもよい。原料のキャリアガスとして、高純度水素を用いることができる。
【0106】
コレクタ用半導体832、ベース用半導体834、およびエミッタ用半導体836は、それぞれ組成、ドーピング濃度、半導体層厚の異なる複数の半導体層から構成される積層体である。電子デバイス800は、コレクタ用半導体832とシード体812との間、コレクタ用半導体832とベース用半導体834との間、ベース用半導体834とエミッタ用半導体836との間、エミッタ用半導体836とエミッタ電極846との間、またはベース用半導体834とベース電極844との間に、有限の厚さを有し、組成、ドーピング濃度、膜厚の異なる複数の半導体層から構成する積層体を更に有してもよい。電子デバイス800は、例えば、コレクタ用半導体832とシード体812との間に、更にサブコレクタ用半導体を有する。電子デバイス800は、エミッタ用半導体836とエミッタ電極846との間に、更にサブエミッタ用半導体を有してもよい。
【0107】
電子デバイス800を製造する場合には、図16に示すように、コレクタコンタクト用半導体852を形成する部位にあるコレクタ用半導体832、ベース用半導体834、およびエミッタ用半導体836をエッチングにより除去して、シード体812を露出する。例えば、当該部位に開口が設けられたレジストマスクを形成してから、エッチングによりコレクタ用半導体832、ベース用半導体834およびエミッタ用半導体836を除去できる。
【0108】
次に、図17に示すように、エッチングにより露出したシード体812に接して、コレクタコンタクト用半導体852を形成する。例えば、コレクタ用半導体832、ベース用半導体834、およびエミッタ用半導体836を覆い、コレクタコンタクト用半導体852を形成する部位に開口が設けられた酸化シリコン膜を形成してから、MOCVD法により、シード体812に接して、不純物原子が高濃度にドープされたN型GaAsのコレクタコンタクト用半導体852をエピタキシャル成長させる。また、GaAsのコレクタコンタクト用半導体852を成長させてから、不純物原子イオンを注入することによって不純物原子をドーピングしてもよい。
【0109】
続いて、図18に示すように、ベースメサ838を形成する。例えば、ベースメサ838を形成する部位に開口が設けられた酸化シリコンのマスクを形成して、MOCVD法により、P型GaAsのベースメサ838を形成する。ベースメサ838は、ベース用半導体834より高濃度にP型不純物原子を含む。ベースメサ838は、CVD法、MOCVD法、MBE法またはALD法により、多結晶を堆積(非エピタキシャル成長)させてよい。
【0110】
ベースメサ838は、一例として、次の方法によって形成される。例えば、ベース用半導体834をコレクタ用半導体832の上に形成する段階において、成長条件を制御することにより、ベース用半導体834を形成すると同時に、阻害体806の上に多結晶(ベースメサ838となる部分を含む。)を堆積(非エピタキシャル成長)させる。その後、エッチング等のフォトリソグラフィ法により、ベースメサ838を形成してもよい。
【0111】
また、ベースメサ838は、次の方法によって形成されてもよい。例えば、ベース用半導体834を形成する段階において成長条件を制御することにより、ベース用半導体834を阻害体806の上に沿って、横方向にラテラル成長させる。その後、エッチング等のフォトリソグラフィ法により、ベースメサ838を形成してもよい。
【0112】
さらに、図8に示したように、エミッタ電極846、ベース電極844、およびコレクタ電極842を形成することにより、電子デバイス800を形成することができる。例えば、エミッタ電極846は、フォトリソグラフィ法により、エミッタ用半導体836の表面に、エミッタ電極846を形成する部位に開口が設けられたレジストマスクを形成して、電極用金属を蒸着してから、レジストをリフトオフすることによって形成することができる。コレクタ電極842およびベース電極844についても、同様な方法によって形成される。また、同じ材料により構成される電極は、同時に形成してもよい。
【0113】
図19は、電子デバイス2000の断面の一例を示す。電子デバイス2000は、不純物領域2004を有するベース基板2002、開口2008が設けられた阻害体2006、シード体2012、コレクタ用半導体2032、ベース用半導体2034、エミッタ用半導体2036、ベースメサ2038、コレクタ電極2042、ベース電極2044、センサ用半導体2014、および電極2018を備える。電子デバイス2000は、コレクタ用半導体2032、ベース用半導体2034、およびエミッタ用半導体2036を有するHBTと、センサ用半導体2014を有するセンサ素子を含む。
【0114】
ベース基板2002は、図11に示したベース基板1102に対応する。不純物領域2004は、不純物領域1104に対応する。阻害体2006は、阻害体1106に対応する。シード体2012は、シード体1112に対応する。コレクタ用半導体2032、ベース用半導体2034およびエミッタ用半導体2036は、それぞれコレクタ用半導体1132、ベース用半導体1134およびエミッタ用半導体1136に対応する。ベースメサ2038は、ベースメサ1138に対応する。コレクタ電極2042およびベース電極2044は、それぞれコレクタ電極1142およびベース電極1144に対応する。従って、以下の説明において、電子デバイス1100と重複する内容については、説明を省略する場合がある。
【0115】
センサ用半導体2014は、化合物半導体の一例である。センサ用半導体2014は、シード体2012に接して設けられる。センサ用半導体2014は、シード体2012と格子整合または擬格子整合している。センサ用半導体2014は、4族半導体、4族化合物半導体、3−5族化合物半導体、または2−6族化合物半導体である。例えば3−5族化合物半導体として、GaAs、GaN、InP、およびInGaAs等、4族半導体として、Ge等を例示できる。
【0116】
センサ用半導体2014は、他の半導体層を介してシード体2012の上に形成されてもよい。センサ用半導体2014は、例えば、組成、ドーピング濃度、厚さの異なる複数の半導体層から構成する積層体である。センサ用半導体2014は、P型半導体層とN型半導体層とを含み、PN接合を有するダイオードを構成してもよい。センサ用半導体2014は、例えば、エピタキシャル成長法により形成される。エピタキシャル成長法として、CVD法、MOCVD法、MBE法、およびALD法を例示できる。
【0117】
電極2018は、センサ用半導体2014から生成する信号を出力する出力端子である。電極2018は、センサ用半導体2014を外部回路に接続する。電極2018は、例えば、センサ用半導体2014に接して形成される。電極2018は、伝導性のある材料によって形成される。電極2018の材料は、例えば金属である。電極2018の材料として、AuGe/Ni/Au、Ti/Pt/Au、およびITO等を例示できる。電極2018の形成方法としては、スパッタ法および真空蒸着法等が挙げられる。
【0118】
センサ用半導体2014および電極2018は、センサ素子を構成する。ここで、センサ素子とは、光、電磁波、および磁気等の何れかを検出できる素子をいう。例えば、当該センサ素子は、センサ用半導体2014に受光部を含むフォトダイオードである。電極2018は、当該センサ素子の出力端子であってよく、センサ用半導体2014の下部は、当該センサ素子のコモン端子である。当該センサ素子のコモン端子は、例えばシード体2012を介して不純物領域2004に電気的に結合する。
【0119】
エミッタ用半導体2036は、シード体2012および不純物領域2004を介して、上記センサ素子のコモン端子と電気的に結合されてもよい。コレクタ用半導体2032、ベース用半導体2034およびエミッタ用半導体2036から構成するHBTは、例えば上記センサ素子の出力端子である電極2018からの出力信号を増幅する。
【0120】
図20は、半導体基板2100の断面の一例を示す。半導体基板2100は、ベース基板2102、阻害体2106、シード体2112、および化合物半導体2114を備える。
【0121】
ベース基板2102は、不純物領域2104、および、第1伝導型の不純物原子を含む第1伝導型不純物領域を有する。例えば、第1伝導型不純物領域は、P型またはN型の不純物原子がドープされた中抵抗または低抵抗のシリコンを含む領域である。ここで、「中抵抗」とは、1Ω・cm以上100Ω・cm未満の抵抗範囲であり、好ましくは1Ω・cm以上60Ω・cm以下の抵抗範囲である。
【0122】
不純物領域2104は、第1伝導型不純物領域における第1伝導型の不純物原子の濃度よりも高い濃度の、第1伝導型と反対の伝導型の第2不純物原子を含む第2伝導型高濃度不純物領域である。例えば、シリコン領域にP型の不純物原子がドープされている場合には、不純物領域2104にはN型の不純物原子がシリコン領域よりも高い濃度でドープされている。シリコン領域にN型の不純物原子がドープされている場合には、不純物領域2104にはP型の不純物原子がシリコン領域よりも高い濃度でドープされている。
【0123】
不純物領域2104とベース基板2102との界面においては、PN接合が形成されてもよい。当該界面にPN接合が形成されていることにより、不純物領域2104がベース基板2102から電気的に分離される。
【0124】
阻害体2106は、図2に示した阻害体206に対応する。シード体2112はシード体212に対応する。化合物半導体2114は化合物半導体214に対応する。従って、その説明を省略する。
【0125】
図21は、半導体基板2200の断面の一例を示す。半導体基板2200は、ベース基板2102、阻害体2106、シード体2112、および化合物半導体2114を備える。ベース基板2102は、不純物領域2104および第2伝導型低濃度不純物領域2205を有する。
【0126】
半導体基板2200は、図20に示した半導体基板2100に比べて、不純物領域2104とベース基板2102内のシリコン領域との間に、不純物領域2104よりも低い濃度であり、かつ不純物領域2104の伝導型と同じ伝導型の不純物原子を含む第2伝導型低濃度不純物領域2205を有する点において相違する。第2伝導型低濃度不純物領域2205に、不純物領域2104と同じ伝導型の不純物原子が、不純物領域2104より少ない濃度でドープされていることにより、不純物領域2104とベース基板2102との間にトンネル効果が発生することを防ぐことができる。
【0127】
図22は、半導体基板2300の断面の一例を示す。半導体基板2300は、ベース基板2302、阻害体2306、シード体2312、および化合物半導体2314を備える。ベース基板2302においては、不純物領域が、複数のシード体2312に接するベース基板2302の表面から当該表面と反対側の面まで形成されている。例えば、ベース基板2302は、ベース基板2302の全体に不純物原子が高濃度にドープされたシリコン基板である。阻害体2306は、図2に示した阻害体206に対応する。シード体2312はシード体212に対応する。化合物半導体2314は化合物半導体214に対応する。従って、その説明を省略する。
【0128】
図23は、電子デバイス2400の断面の一例を示す。電子デバイス2400は、ベース基板2402、開口2408が設けられた阻害体2406、シード体2412、コレクタ用半導体2432、ベース用半導体2434、エミッタ用半導体2436、コレクタ電極2442、ベース電極2444、およびエミッタ電極2446を備える。電子デバイス2400は、1つのHBTから構成される。当該HBTは、化合物半導体素子の一例である。
【0129】
電子デバイス2400は、図7に示した電子デバイス700に比べて、ベース基板2402の構成が異なる。ベース基板2402においては、不純物領域が、複数のシード体2312に接するベース基板2402の表面から当該表面と反対側の面まで形成されている。コレクタ電極2442は、ベース基板2402の裏面に設けられている。このような構造を有することによって、電子デバイス2400の製造工程において、電子デバイス700の製造工程において必要であった不純物領域704を形成する工程が不要になる。
【0130】
更に電子デバイス2400は、電子デバイス700においてはコレクタ電極742を設けるために設けられていたシード体712およびコレクタコンタクト用半導体752を有しない。電子デバイス2400においては、不純物領域が、複数のシード体2312に接するベース基板2402の表面から当該表面と反対側の面まで形成されている。その結果、電子デバイス2400の設計においては、電極配置の自由度が向上する。
【0131】
阻害体2406は、図7における阻害体706に対応する。シード体2412はシード体712に対応する。コレクタ用半導体2432、ベース用半導体2434、およびエミッタ用半導体2436は、それぞれコレクタ用半導体732、ベース用半導体734、およびエミッタ用半導体736に対応する。ベース電極2444およびエミッタ電極2446は、それぞれベース電極744およびエミッタ電極746に対応する。従って、電子デバイス700と重複する内容については、説明を省略する。
【0132】
図24は、電子デバイス2500の断面の一例を示す。電子デバイス2500は、ベース基板2502、開口2508が設けられた阻害体2506、シード体2512、コレクタ用半導体2532、ベース用半導体2534、エミッタ用半導体2536、ベースメサ2538、コレクタ電極2542、ベース電極2544、およびエミッタ電極2546を備える。電子デバイス2500は、1つのHBTから構成される。当該HBTは、化合物半導体素子の一例である。
【0133】
電子デバイス2500は、図11に示した電子デバイス1100に比べて、異なる構造のベース基板2502を備える。ベース基板2502においては、不純物領域が、複数のシード体2512に接するベース基板2502の表面から当該表面と反対側の面まで形成されている。つまり、ベース基板2502は、全体に不純物がドープされている。従って、ベース基板2502の抵抗率が十分に小さいので、エミッタ電極2546をベース基板2502の裏面に配置することができる。
【0134】
このような構造を有する場合には、図11に示したベース基板1102と異なり、ベース基板2502には不純物領域1104を設ける必要がない。更にエミッタ電極1146を設けるべく、別途シード体1112およびエミッタコンタクト用半導体1156を設ける必要もない。このような構造を有することによって、電子デバイス1100において生じる効果に加えて、電子デバイス設計における電極配置の選択肢を増やすことができるという効果が生じる。
【0135】
阻害体2506は、図11における阻害体1106に対応する。シード体2512は、シード体1112に対応する。コレクタ用半導体2532、ベース用半導体2534およびエミッタ用半導体2536は、それぞれコレクタ用半導体1132、ベース用半導体1134およびエミッタ用半導体1136に対応する。ベース電極2544およびコレクタ電極2542は、それぞれベース電極1144およびコレクタ電極1142に対応する。ベースメサ2538は、ベースメサ1138に対応する。従って、電子デバイス1100と重複する内容については、説明を省略する。
【0136】
図25は、電子デバイス2600の断面の一例を示す。電子デバイス2600は、ベース基板2602、ウェル2603、不純物領域2604、阻害体2606、シード体2612、化合物半導体2614、電極2618、ソース2622、ゲート絶縁層2624、ゲート電極2626、およびドレイン2628を備える。電子デバイス2600は、1つのシリコン素子および1つの化合物半導体素子から構成される。当該シリコン素子は、シリコン原子を主成分とする活性領域を有する。「シリコン原子を主成分とする」とは、主成分がシリコン原子であって、不純物原子を含んでよいことを意味する。不純物原子には意図的に導入された不純物原子および意図しない不純物原子の両方を含む。
【0137】
ソース2622、ドレイン2628、ゲート絶縁層2624、ゲート電極2626、およびウェル2603によって、シリコン素子であるFET(電界効果トランジスタ)が構成される。化合物半導体2614および電極2618によって、化合物半導体素子が構成される。当該化合物半導体素子は、前述のHBTであってよく、FET、HEMT、ダイオード、サイリスタ、発光素子、または受光素子等である。例えば、当該化合物半導体素子は発光ダイオードであって、シリコン素子であるFETは当該発光ダイオードを駆動するトランジスタである。
【0138】
ベース基板2602は、図2におけるベース基板202に対応する。ベース基板2602は、シリコン原子を主成分とする活性領域を有するシリコン素子を形成することができるシリコン素子形成可能領域を有する。当該シリコン素子形成可能領域に、例えば、ウェル2603、ソース2622、ゲート絶縁層2624、ゲート電極2626、およびドレイン2628を形成することができる。
【0139】
不純物領域2604は、不純物領域204に対応する。不純物領域2604は、ベース基板2602の内部においてシリコン素子形成可能領域に接触する。不純物領域2604は、シリコン素子であるFETのソース2622に延伸して、接触してもよい。
【0140】
阻害体2606は阻害体206に対応する。シード体2612はシード体212に対応する。化合物半導体2614は化合物半導体214に対応する。従って、以下の説明において、半導体基板200と重複する内容については、省略する場合がある。
【0141】
電極2618は、化合物半導体2614から生成する信号を出力する出力端子である。電極2618は、化合物半導体2614を外部回路に接続する。電極2618は、化合物半導体2614に接して形成される。電極2618は、伝導性のある材料によって形成される。電極2618は、例えば金属によって形成される。電極2618の材料として、AuGe/Ni/Au、Ti/Pt/Au、ITO等を例示できる。電極2618の形成方法としては、スパッタ法、真空蒸着法等が挙げられる。
【0142】
化合物半導体2614の下端は、化合物半導体素子のもう1つの端子を構成してもよい。化合物半導体2614の下端は、シード体2612を介して、不純物領域2604に電気的に結合してもよい。シリコン素子であるFETのソース2622と、化合物半導体2614の下端とは、シード体2612および不純物領域2604を介して、電気的に結合してよい。
【0143】
図26から図30は、電子デバイス2600の製造過程の断面例を示す。以下、図面を用いて電子デバイス2600の製造方法を説明する。電子デバイス2600の製造方法は、シリコン素子を形成する段階、不純物領域を形成する段階、阻害体を形成する段階、シード体を形成する段階、化合物半導体を形成する段階、および化合物半導体素子を形成する段階を備える。
【0144】
シリコン素子を形成する段階において、図26に示すように、ベース基板2602の上にマスクパターン2706を形成して、イオン注入によりウェル2603を形成する。マスクパターン2706は、フォトレジストマスクである。マスクパターン2706は、酸化シリコン、窒化シリコン、またはこれらの積層体からなるマスクである。例えば、CVDによって、ベース基板2602の表面に酸化シリコン膜を形成した後、エッチング等のフォトリソグラフィ法により、ウェル2603を形成する予定部位に、酸化シリコン膜の開口2708を形成することでマスクパターン2706を完成できる。N型ウェルを形成する場合には、P等の5族原子イオンを注入してよく、P型ウェルを形成する場合には、B等の3族原子イオンを注入してよい。イオン注入後、拡散アニールを施してもよい。
【0145】
次に、図27に示すように、マスクパターン2706を除去して、ゲート絶縁層を形成する酸化シリコン膜2806を成膜して、ゲート電極を形成するポリシリコン膜2826を成膜する。酸化シリコン膜2806およびポリシリコン膜2826は、CVD法により成膜できる。エッチング等のフォトリソグラフィ法により、酸化シリコン膜2806およびポリシリコン膜2826におけるソース2622およびドレイン2628を形成する部位に開口を形成して、イオン注入してもよい。ソース2622およびドレイン2628は、例えば、ウェル2603と反対の電気伝導型を有する。イオン注入後に、拡散アニールを施してもよい。
【0146】
不純物領域2604を形成する段階において、図28に示すように、エッチング等のフォトリソグラフィ法により、ゲート絶縁層およびゲート電極を形成する部位以外の酸化シリコン膜2806およびポリシリコン膜2826を除去して、ゲート絶縁層2624およびゲート電極2626を形成する。マスクパターン2906を形成して、イオン注入により、不純物領域2604を形成する。マスクパターン2906は、フォトレジストマスクである。マスクパターン2906は、酸化シリコン、窒化シリコン、またはこれらの積層体からなるマスクである。マスクパターン2906は、マスクパターン2706と同様の方法によって形成されてよい。不純物領域2604は、ソース2622およびドレイン2628と同じ電気伝導型を有してよい。
【0147】
阻害体2606を形成する工程において、図29に示すように、シリコン素子であるFETを覆う阻害体2606を形成して、阻害体2606に、不純物領域2604の少なくとも一部の領域を露出する開口2608を形成する。例えば、熱酸化法によって、ベース基板2602の全面に、阻害体2606となる酸化シリコン膜を形成して、エッチング等フォトリソグラフィ法により、シード体2612を形成する予定の部位に、不純物領域2604に達する開口2608を形成してよい。
【0148】
シード体を形成する段階において、図30に示すように、開口2608の内部に、選択エピタキシャル成長法により、組成がCSiGeSn1−x−y−z(0≦x<1、0≦y≦1、0≦z≦1、かつ0<x+y+z≦1)であるシード体2612を形成する。エピタキシャル成長法として、CVD法、MOCVD法、MBE法、およびALD法等を例示できる。例えば、シード体2612として、CVD法によりSiGe結晶を形成する。阻害体2606の表面では、シード体2612のエピタキシャル成長が阻害されるので、シード体2612が開口2608の内部において選択的にエピタキシャル成長する。その後に、シード体2612を加熱してもよい。
【0149】
化合物半導体を形成する段階において、図25に示したように、シード体2612の上に、化合物半導体2614を選択エピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長法として、CVD法、MOCVD法、MBE法、およびALD法等を例示できる。化合物半導体2614は、シード体2612に格子整合または擬格子整合してよい。化合物半導体2614は、例えば4族化合物半導体、3−5族化合物半導体、または2−6族化合物半導体である。化合物半導体2614は、例えば、組成、ドーピング濃度、厚さの異なる複数の半導体層から構成する積層体である。例えば、化合物半導体2614は、P型半導体層とN型半導体層とを含み、PN接合を有する発光ダイオードである。
【0150】
化合物半導体素子を形成する段階において、図25に示したように、電極2618を形成して、電子デバイス2600を形成することができる。
【0151】
図31は、半導体基板3200の断面の一例を示す。半導体基板3200は、ベース基板3202、不純物領域3204、開口3208が設けられた阻害体3206、シード体3212、および化合物半導体3214を備える。
【0152】
ベース基板3202は、図2におけるベース基板202に対応する。不純物領域3204は不純物領域204に対応する。阻害体3206は阻害体206に対応する。シード体3212はシード体212に対応する。化合物半導体3214は化合物半導体214に対応する。従って、以下の説明において、半導体基板200と重複する内容については、省略する場合がある。
【0153】
図32および図33は、半導体基板3200の製造過程の断面例を示す。半導体基板3200の製造過程は、図2に示した半導体基板200の製造過程とは、不純物領域の形成方法が相違する。半導体基板200の製造工程においては、図3に示したように、不純物領域204の形成に用いるマスクパターン302を設けた後に、イオン注入をすることによって不純物領域204を形成する。これに対して半導体基板3200の製造工程においては、図32に示すように、阻害体3206を形成し、阻害体3206をマスクパターンとしてイオン注入して不純物領域3204を形成する。上記の工程で半導体基板3200を製造することにより、マスクパターンを形成する工程を省略できる。
【0154】
以上の実施態様において、シリコン基板に不純物領域を形成して、電子デバイスを結合する配線の役割を持たせることにより、化合物半導体の選択エピタキシャル領域を最大限有効に活用できる。具体的には、化合物半導体の素子形成面の表面における配線を従来よりも少なくすることができるので選択エピタキシャル領域に余裕が生じる。その結果、素子表面における配線設計が容易になるとともに、電極の配置の自由度が向上する。
【0155】
さらに、化合物半導体の選択エピタキシャル領域を縮小できるので、ベース基板と格子整合または擬格子整合をしやすくなる。その結果、シリコン基板に形成される化合物半導体結晶性を高めることができる。化合物半導体の結晶性が高まると、当該化合物半導体に形成されるHBTが均一な内部電界分布を有するので、HBTの耐圧を高めることができる。また、化合物半導体素子の段差を低減することができるので、平坦化が容易になる。その結果、以上の実施態様は、微細加工が必要なシリコンプロセス等の半導体デバイス製造プロセスに適合する。
【実施例】
【0156】
(実施例1)
半導体基板2300を作成し、当該半導体基板2300を用いた電子デバイスを作製した。半導体基板2300は、ベース基板2302、阻害体2306、シード体2312、および化合物半導体2314を備える。ベース基板2302として、Si基板の全体に不純物としてアンチモン(Sb)をドープしたn型の低抵抗Si基板を用いた。低抵抗Si基板の抵抗率は0.01Ω・cmであった。
【0157】
阻害体2306として、熱酸化法により酸化シリコン層を形成した。酸化シリコン層の厚さの平均値は、0.1μmであった。フォトリソグラフィ法により、酸化シリコン層の一部に複数の開口を形成した。開口の大きさは、20μm×20μmとした。
【0158】
酸化シリコン層に開口を形成した後、ベース基板2302を反応容器の内部に配置し、シード体2312として、CVD法によりGe結晶層を形成した。Ge結晶層は、酸化シリコン層の開口の内部に選択的に形成した。Ge結晶層の成長条件として、反応容器内の圧力を2.6kPa、温度を600℃とした。厚さが1μmになるようGe結晶層を成長させた。さらに反応容器中で、Ge結晶層をアニールした。アニールとして、温度を850℃、時間を10分間とした第1のアニールを実行した後、温度を780℃、時間を10分間とした第2のアニールを実行した。アニールは、Ge結晶層を形成した後、ベース基板2302を反応容器から取り出すことなく実施した。
【0159】
Ge結晶層をアニールした後、化合物半導体2314としてGaAs層をMOCVD法により形成した。GaAs層は、トリメチルガリウムおよびアルシンを原料ガスに用いて、成長温度が650℃、反応容器内の圧力が8.0kPaの条件で成膜した。GaAs層は、開口の内部で、Ge結晶層の開口から露出する面をシード面として成長した。以上の手順により、半導体基板2300を作製できた。
【0160】
作製した半導体基板2300の上に、GaAs、InGaP、InGaAsからなるヘテロバイポーラトランジスタ(HBT)構造を、MOCVD法により形成した。引き続き、フォトリソグラフィによる加工を行い、HBTデバイス構造を作製した。その後、配線を形成して、電子デバイスを作製した。
【0161】
図34は、作製した電子デバイスの半導体基板表面側からのレーザ顕微鏡写真を示す。同図において左側から順に、コレクタ端子C1、エミッタ端子E、およびベース端子Bを配置している。さらに半導体基板の裏面にコレクタ端子C2を形成した。なお、コレクタ端子C2は、基板裏面に形成したので同図には表れていない。
【0162】
エミッタ端子E、ベース端子B、およびコレクタ端子C1を観測端子とするHBT動作試験と、エミッタ端子E、ベース端子B、およびコレクタ端子C2を観測端子とするHBT動作試験を行った。その結果、何れのHBTにおいても正常な動作を確認した。
【0163】
図35は、複数の開口の各々にHBTを形成した場合のレーザ顕微鏡写真を示す。図34の場合と同様に、各HBTにコレクタ端子C1、エミッタ端子E、およびベース端子Bを形成しているが、各HBTのコレクタ端子C1、エミッタ端子E、およびベース端子Bのそれぞれは並列に接続している。また、半導体基板の裏面にコレクタ端子C2を形成した。図34の場合と同様に、エミッタ端子E、ベース端子Bおよびコレクタ端子C1を観測端子とするHBT動作試験と、エミッタ端子E、ベース端子B、およびコレクタ端子C2を観測端子とするHBT動作試験を行ったところ、何れのHBTにおいても正常な動作を確認した。
【0164】
以上の結果から、半導体基板の裏面にあるコレクタ端子C2が正常に機能することが確認できた。よってコレクタ端子C1を設ける必要が無く、コレクタ端子C1に占有されたスペースを、例えば配線の取り出し領域等に有効活用することができる。
【0165】
エッチピット法により化合物半導体2314であるGaAs層の表面を検査したところ、GaAs層の表面に欠陥は発見されなかった。透過型電子顕微鏡により断面観察をしたところ、シード体2312であるGe結晶層から化合物半導体2314であるGaAs層に貫通する転位は発見されなかった。
【0166】
(実施例2)
実施例1と同様にして、Si基板上に、阻害体2306として酸化シリコン層を形成し、阻害体2306の一部にベース基板2302を露出する複数の開口を形成した。このベース基板2302を反応容器の内部に配置し、シード体2312として、CVD法によりGe結晶層を形成した。Ge結晶層は、酸化シリコン層の開口の内部に選択的に形成した。Ge結晶層の成長条件は、実施例1と同様にした。さらに反応容器中で、Ge結晶層をアニールした。アニール条件は、実施例1と同様にした。
【0167】
Ge結晶層をアニールした後、化合物半導体2314としてGaAs層をMOCVD法により形成した。GaAs層は、トリメチルガリウムおよびアルシンを原料ガスに用いた。GaAs結晶の成長は、はじめに550℃で低温での成長を行い、引き続き640℃の温度で成膜した。640℃の温度での成長時におけるアルシン分圧は、0.05kPaにした。引き続き、さらにこのGaAs層を核として、図8に示したベースメサ838、図11に示したベースメサ1138、図19に示したベースメサ2038、および図24に示したベースメサ2538に対応するラテラル成長化合物半導体層であるGaAs層を成膜した。ラテラル成長時の成長温度は640℃であり、アルシン分圧は0.43kPaにした。
【0168】
図36は、得られた結晶の断面における走査型電子顕微鏡写真を示す。Ge結晶の上にGaAs結晶が成長していることが確認できると共に、GaAs結晶が、阻害体2306に対応する酸化シリコン層の上にもラテラル成長していることが確認できる。このラテラル成長化合物半導体層を用いて、エッチング等のフォトリソグラフィ法により、ベース等のメサを形成できる。
【0169】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることができる。たとえば、上記した実施態様において、化合物半導体素子として、HBTを多く例示したが、化合物半導体素子は、FET、HEMT、ダイオード、サイリスタ、発光素子、または受光素子等であってよい。
【0170】
また、上記した実施の形態では、不純物領域104、不純物領域204、不純物領域604、不純物領域704、不純物領域804、不純物領域1104、不純物領域2004、不純物領域2604、不純物領域3204(「不純物領域104等」という)が、シリコンを有するベース基板2302に不純物領域として形成されている場合を説明した。しかし不純物領域104等はシリコンアイランドとして、たとえばガラス、サファイア等の絶縁基板、あるいは酸化シリコン、窒化シリコン等の絶縁層の上に形成されていてもよい。
【0171】
このようなシリコンアイランドは、例えばSOI基板のSOI層をエッチングしてSOI基板の酸化シリコン層上に形成することができる。ナノインプリント技術を用いて、シリコンアイランドを絶縁基板あるいは絶縁層の上に転写形成してもよい。シリコンアイランドにシリコン素子を形成する場合、例えば図25におけるウェル2603をシリコンアイランドとして形成できる。例えば酸化シリコンの上にシリコンアイランドを形成する場合、酸化シリコンを阻害体として機能させることができるので、シリコンアイランド上にシード体および化合物半導体を選択成長させることが可能になる。
【符号の説明】
【0172】
100 半導体基板、102 ベース基板、104 不純物領域、112 シード体、114 化合物半導体、200 半導体基板、202 ベース基板、204 不純物領域、206 阻害体、208 開口、212 シード体、214 化合物半導体、302 マスクパターン、308 開口、600 電子デバイス、602 ベース基板、604 不純物領域、606 阻害体、608 開口、612 シード体、632 コレクタ用半導体、634 ベース用半導体、636 エミッタ用半導体、644 ベース電極、646 エミッタ電極、700 電子デバイス、702 ベース基板、704 不純物領域、706 阻害体、708 開口、712 シード体、732 コレクタ用半導体、734 ベース用半導体、736 エミッタ用半導体、742 コレクタ電極、744 ベース電極、746 エミッタ電極、752 コレクタコンタクト用半導体、800 電子デバイス、802 ベース基板、804 不純物領域、806 阻害体、808 開口、812 シード体、832 コレクタ用半導体、834 ベース用半導体、836 エミッタ用半導体、838 ベースメサ、842 コレクタ電極、844 ベース電極、846 エミッタ電極、852 コレクタコンタクト用半導体、900 電子デバイス
【0173】
1000 電子デバイス、1100 電子デバイス、1102 ベース基板、1104 不純物領域、1106 阻害体、1108 開口、1112 シード体、1132 コレクタ用半導体、1134 ベース用半導体、1136 エミッタ用半導体、1138 ベースメサ、1142 コレクタ電極、1144 ベース電極、1146 エミッタ電極、1156 エミッタコンタクト用半導体、1200 電子デバイス、1300 電子デバイス、2000 電子デバイス、2002 ベース基板、2004 不純物領域、2006 阻害体、2008 開口、2012 シード体、2014 センサ用半導体、2018 電極、2032 コレクタ用半導体、2034 ベース用半導体、2036 エミッタ用半導体、2038 ベースメサ、2042 コレクタ電極、2044 ベース電極、2100 半導体基板、2102 ベース基板、2104 不純物領域、2106 阻害体、2112 シード体、2114 化合物半導体、2200 半導体基板、2205 第2伝導型低濃度不純物領域、2300 半導体基板、2302 ベース基板、2306 阻害体、2312 シード体、2314 化合物半導体、2400 電子デバイス、2402 ベース基板、2406 阻害体、2408 開口、2412 シード体、2432 コレクタ用半導体、2434 ベース用半導体、2436 エミッタ用半導体、2442 コレクタ電極、2444 ベース電極、2446 エミッタ電極、2500 電子デバイス、2502 ベース基板、2506 阻害体、2508 開口、2512 シード体、2532 コレクタ用半導体、2534 ベース用半導体、2536 エミッタ用半導体、2538 ベースメサ、2542 コレクタ電極、2544 ベース電極、2546 エミッタ電極、2600 電子デバイス、2602 ベース基板、2603 ウェル、2604 不純物領域、2606 阻害体、2608 開口、2612 シード体、2614 化合物半導体、2618 電極、2622 ソース、2624 ゲート絶縁層、2626 ゲート電極、2628 ドレイン、2706 マスクパターン、2708 開口、2806 酸化シリコン膜、2826 ポリシリコン膜、2906 マスクパターン、3200 半導体基板、3202 ベース基板、3204 不純物領域、3206 阻害体、3208 開口、3212 シード体、3214 化合物半導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンに不純物原子が導入された不純物領域を有するベース基板と、
前記不純物領域に接して設けられている複数のシード体と、
各々対応するシード体に接して設けられ、対応する前記シード体とそれぞれ格子整合または擬格子整合する複数の化合物半導体と
を備える半導体基板。
【請求項2】
前記ベース基板上に設けられ、前記不純物領域の少なくとも一部を露出する複数の開口が設けられた阻害体をさらに備え、
前記複数のシード体の各々は、前記複数の開口の各々の内部に設けられ、
前記阻害体は、前記複数の化合物半導体の結晶成長を阻害する請求項1に記載の半導体基板。
【請求項3】
前記複数の化合物半導体の少なくとも1つの化合物半導体を核として前記阻害体上にラテラル成長したラテラル成長化合物半導体をさらに備える請求項2に記載の半導体基板。
【請求項4】
前記ベース基板は、シリコン原子を主成分とするシリコン領域を有し、
前記不純物領域が、前記ベース基板の内部において前記シリコン領域に接触している請求項1から請求項3の何れか一項に記載の半導体基板。
【請求項5】
前記ベース基板は、第1伝導型の不純物原子を含む第1伝導型不純物領域を有し、
前記不純物領域は、前記第1伝導型不純物領域における前記第1伝導型の不純物原子の濃度よりも高い濃度の、前記第1伝導型と反対の伝導型の第2伝導型の不純物原子を含む第2伝導型高濃度不純物領域を有する請求項1から請求項4の何れか一項に記載の半導体基板。
【請求項6】
前記第1伝導型不純物領域と前記第2伝導型高濃度不純物領域との間に、前記第2伝導型高濃度不純物領域より低い濃度の前記第2伝導型の不純物原子を含む第2伝導型低濃度不純物領域をさらに備える請求項5に記載の半導体基板。
【請求項7】
前記不純物領域が、前記ベース基板が前記複数のシード体に接する表面から前記表面と反対側の面まで形成されている請求項1から請求項6の何れか一項に記載の半導体基板。
【請求項8】
前記複数のシード体の各々が、CSiGeSn1−x−y−z(0≦x<1、0≦y≦1、0≦z≦1、かつ0<x+y+z≦1)を含む請求項1から請求項7の何れか一項に記載の半導体基板。
【請求項9】
前記ベース基板がSi基板またはSOI基板である請求項1から請求項8の何れか一項に記載の半導体基板。
【請求項10】
前記不純物領域における抵抗率が0.0001Ω・cm以上1Ω・cm以下である請求項1から請求項9の何れか一項に記載の半導体基板。
【請求項11】
請求項1から請求項10の何れか一項に記載の半導体基板における前記複数の化合物半導体のうち、少なくとも1つの化合物半導体上に設けられた化合物半導体素子を備え、
前記化合物半導体素子は複数の端子を有し、
前記複数の端子のうち少なくとも1つの端子は、前記化合物半導体素子が設けられている前記化合物半導体に接する少なくとも1つの前記複数のシード体を介して、前記不純物領域に電気的に結合されている電子デバイス。
【請求項12】
前記複数の化合物半導体のうちの第1化合物半導体に設けられた第1化合物半導体素子と、
前記複数の化合物半導体のうちの前記第1化合物半導体と異なる第2化合物半導体に設けられた第2化合物半導体素子と
を備え、
前記第1化合物半導体素子の前記複数の端子のうち少なくとも1つの端子と、前記第2化合物半導体素子の前記複数の端子のうち少なくとも1つの端子とが、前記不純物領域を介して電気的に結合されている請求項11に記載の電子デバイス。
【請求項13】
前記複数の化合物半導体に設けられた前記化合物半導体素子の少なくとも一つは、ヘテロ接合バイポーラトランジスタであり、
前記ヘテロ接合バイポーラトランジスタのコレクタが前記複数のシード体の少なくとも一つを介して前記不純物領域に電気的に結合されている請求項11または請求項12に記載の電子デバイス。
【請求項14】
前記複数の化合物半導体に設けられた前記化合物半導体素子の少なくとも一つは、ヘテロ接合バイポーラトランジスタであり、
前記ヘテロ接合バイポーラトランジスタのエミッタが前記複数のシード体の少なくとも一つを介して前記不純物領域に電気的に結合されている請求項11または請求項12に記載の電子デバイス。
【請求項15】
前記第1化合物半導体素子または前記第2化合物半導体素子の少なくとも1つは、エミッタ、ベース、またはコレクタの何れか1つをコモン端子とする、ヘテロ接合バイポーラトランジスタであり、
前記ヘテロ接合バイポーラトランジスタ以外の前記第1化合物半導体素子または前記第2化合物半導体素子の少なくとも1つは、コモン端子および出力端子を有するセンサ素子であり、
前記ヘテロ接合バイポーラトランジスタの前記コモン端子と前記センサ素子の前記コモン端子とが、前記不純物領域を介して電気的に結合されている請求項12に記載の電子デバイス。
【請求項16】
前記ヘテロ接合バイポーラトランジスタは、前記センサ素子の前記出力端子からの信号を増幅する請求項15に記載の電子デバイス。
【請求項17】
前記ベース基板に設けられた第1伝導型の不純物原子を含む第1伝導型不純物領域に設けられ、複数の端子を有し、シリコン原子を主成分とする活性領域を有するシリコン素子をさらに備え、
前記シリコン素子の前記複数の端子のうち少なくとも1つの端子と、前記複数の化合物半導体に設けられた前記化合物半導体素子の前記複数の端子のうち少なくとも1つの端子とが、前記不純物領域を介して電気的に結合されている請求項11から請求項16の何れか一項に記載の電子デバイス。
【請求項18】
シリコンに不純物原子が導入された不純物領域を有するベース基板を準備する段階と、
前記不純物領域に接して、複数のシード体を形成する段階と、
前記複数のシード体を加熱する段階と、
加熱された前記複数のシード体に、前記複数のシード体と格子整合または擬格子整合する化合物半導体を形成する段階と
を備える半導体基板の製造方法。
【請求項19】
前記ベース基板を準備する段階において、前記ベース基板の表面にマスクパターンを形成し、前記マスクパターンで画定された領域に前記不純物原子を高濃度にドープする請求項18に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項20】
前記ベース基板を準備する段階において、前記ベース基板の表面に、結晶の成長を阻害する阻害体を形成し、前記阻害体に、前記ベース基板の少なくとも一部を露出する開口を形成し、前記ベース基板における前記開口により露出された領域に前記不純物原子を高濃度にドープする請求項18または請求項19に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項21】
前記化合物半導体を核として、前記阻害体上にラテラル成長化合物半導体をラテラル成長させる段階をさらに備える請求項20に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項22】
請求項18から請求項21の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法を用いて前記半導体基板を製造する段階と、
前記化合物半導体に、少なくとも1つの端子が前記複数のシード体の少なくとも一つを介して前記不純物領域に電気的に結合される化合物半導体素子を形成する段階と
備える電子デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2011−9718(P2011−9718A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116778(P2010−116778)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】