説明

半導体封止装置の製造方法および半導体封止装置

【課題】離型シートを利用して半導体装置を樹脂封止する際に、封止用樹脂成分による金型汚れを抑えることにより、生産性の向上を可能とする半導体封止装置の製造方法およびこれにより得られる外観が良好な半導体封止装置を提供することを目的とする。
【解決手段】成形用金型内の所定位置に配置された半導体装置の被封止面と前記被封止面と対向する前記成形用金型内面に配置された離型シートとの間に、エポキシ樹脂成形材料を注入封止する工程を少なくとも含む半導体封止装置の製造方法であって、前記エポキシ樹脂成形材料として、(A)ビフェニルエポキシ樹脂、(B)軟化点が70℃以上であるフェノールアラルキル樹脂、(C)硬化促進剤および(D)無機質充填剤を必須成分として含有するエポキシ樹脂成形材料を用いることを特徴とする半導体封止装置の製造方法およびこれにより得られる半導体封止装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止装置の製造方法およびこの製造方法により製造される半導体封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子部品のプリント配線板への高密度実装化に伴い、半導体装置は従来のピン挿入型のパッケージから、表面実装型のパッケージが主流になっている。表面実装型タイプのIC、LSI等は高実装密度化した薄型、小型のパッケージになっており、素子のパッケージに対する占有面積も大きくなり、パッケージの肉厚は非常に薄くなってきている。また、素子の多機能化、大容量化によって、チップ面積の増大、多ピン化が進み、さらにはパッド数の増大によって、パッドピッチの縮小化とパッド寸法の縮小化、いわゆる狭パッドピッチ化も進んでいる。この様な要求から、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)やBGA(Ball Grid Array)、WL−CSP(Wafer Level - Chip Size Package)などのパッケージが増加している。
【0003】
これらのパッケージの封止に用いられている樹脂組成物としては、ビフェニルエポキシ樹脂とフェノールアラルキル樹脂硬化剤の樹脂系が、パッケージの信頼性の点から多く用いられる様になった。しかしながら、この樹脂系は流動性に優れるもののバリの発生や金型との離型性が問題となっていた。
【0004】
QFNやメモリーカードでは端子部の封止樹脂のバリ止めのため、また、BGAやWL−CSPでは離型性の確保ならびにパッケージの外観向上のため、パッケージのモールド時に離型シートが用いられる。ところが、離型シートを金型に密着させて使用する際、流動性に優れた樹脂組成物では成形時に離型シートを透過した樹脂成分が金型に付着し、その樹脂成分が粘性を有しているため、金型への異物付着や、離型シートの金型への密着不良が起き、パッケージの外観不良の原因となることがあった。さらに、樹脂組成物が離型シートを透過し背面に達することで、離型シートにシワを発生させたり、半導体装置に樹脂バリを発生させたりするという問題もあった。
【0005】
この様な問題を解決するために、アクリル樹脂などからなる離型層と耐熱性を有する層の2層構造を有する離型シートが提案されているが(特許文献1参照)、用いる封止樹脂によっては離型性が十分ではなく、また離型シートがコストアップになってしまうという不具合があった。
【特許文献1】特開平2002−158242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、離型シートを利用して半導体装置を樹脂封止する際に、封止用樹脂成分による金型汚れを抑えることにより、金型のクリーニング頻度を低減させることができ、さらに、金型への異物の付着、離型シートのしわ発生や半導体装置における樹脂バリの発生を防止することができる等、その生産性の向上を可能とする半導体封止装置の製造方法およびこれにより得られる外観が良好な半導体封止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、離型シートを利用して半導体装置を樹脂封止する際に、ビフェニルエポキシ樹脂と軟化点に特徴のあるフェノールアラルキル樹脂、硬化促進剤、無機質充填剤を含むエポキシ樹脂成形材料を用いれば封止用樹脂成分による金型汚れを抑えられることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、成形用金型内の所定位置に配置された半導体装置の被封止面と前記被封止面と対向する前記成形用金型内面に配置された離型シートとの間に、エポキシ樹脂成形材料を注入封止する工程を少なくとも含む半導体封止装置の製造方法であって、前記エポキシ樹脂成形材料として、(A)ビフェニルエポキシ樹脂、(B)軟化点が70℃以上であるフェノールアラルキル樹脂、(C)硬化促進剤および(D)無機質充填剤を必須成分として含有するエポキシ樹脂成形材料を用いることを特徴とする半導体封止装置の製造方法である。
【0009】
また、本発明の半導体封止装置は、前記本発明の製造方法によって、製造された半導体封止装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体封止装置の製造方法によれば、離型シートを利用して半導体装置を樹脂封止する際に、封止用樹脂成分による金型汚れを抑えることにより、金型のクリーニング頻度を低減させることができ、さらに、金型への異物の付着、離型シートのしわ発生や半導体装置における樹脂バリの発生を防止することができる等、半導体封止装置の生産性の向上を可能とする。また、この様な本発明の製造方法により得られる半導体封止装置においては、外観の向上が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
まず、本発明の半導体封止装置の製造方法に用いる(A)ビフェニルエポキシ樹脂、(B)軟化点が70℃以上であるフェノールアラルキル樹脂、(C)硬化促進剤および(D)無機質充填剤を必須成分として含有するエポキシ樹脂成形材料について説明する。
【0012】
本発明に係るエポキシ樹脂成形材料が含有する(A)ビフェニルエポキシ樹脂としては、1分子当たり2個以上のエポキシ基を有するビフェニルエポキシ樹脂であり、半導体封止用成形材料に一般に用いられるものであれば、特に制限なく用いることが可能であるが、本発明においては、下記一般式(I)で示されるビフェニルエポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0013】
【化1】

(但し、式中、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す)
【0014】
このような一般式(I)で示されるビフェニルエポキシ樹脂は、一般的な方法で作製することも可能であるが、本発明においては市販品を用いることも可能である。なお、上記一般式(I)で示されるビフェニルエポキシ樹脂の市販の製品として具体的には、ジャパンエポキシレジン社製の商品名、YX−4000HK(上記一般式(I)において、RがCHであるビフェニルエポキシ樹脂)、YL−6121H(上記一般式(I)において、Rが水素原子であるビフェニルエポキシ樹脂とRがCHであるビフェニルエポキシ樹脂の約1:1の混合物)等が挙げられる。
【0015】
本発明に係るエポキシ樹脂成形材料における、(A)ビフェニルエポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂成形材料全量に対して、3〜10質量%であることが好ましく、4〜7質量%であることがより好ましい。この含有量が3質量%未満では、十分な成形性が得られず成形不良を発生する場合があり、10質量%を超えると成形不良に加えて金型汚れも発生しやすい傾向となる。
【0016】
ここで、本発明に係るエポキシ樹脂成形材料には、前記(A)ビフェニルエポキシ樹脂とともに、これ以外のエポキシ樹脂を本発明の効果を損なわない範囲で併せて含有させることも可能である。この様な(A)ビフェニルエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂の含有量として、(A)ビフェニルエポキシ樹脂の含有量に対して、好ましくは5質量%以下の含有量が挙げられ、より好ましくは3質量%以下の含有量が挙げられる。
【0017】
また、(A)ビフェニルエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有する多官能のエポキシ樹脂、トリまたはテトラ(ヒドロキシフェニル)アルカンのエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種または2種以上の混合物として本発明に係るエポキシ樹脂成形材料に配合することが可能である。
【0018】
本発明に係るエポキシ樹脂成形材料が含有する(B)軟化点が70℃以上であるフェノールアラルキル樹脂としては、下記一般式(II)のような1分子当り2個以上のフェノール性水酸基を有し、軟化点が70℃以上であり、(A)成分のビフェニルエポキシ樹脂を硬化せしめるものであって、半導体封止用樹脂成形材料に一般に用いられるものであれば、特に制限されないが、本発明においては、下記一般式(III)のような構造のフェノールアラルキル樹脂が好ましく用いられる。
【0019】
【化2】

(但し、式中、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を、nは0または1以上の整数を表す)
【0020】
【化3】

(但し、式中、nは0または1以上の整数を表す)
【0021】
このような(B)軟化点が70℃以上であるフェノールアラルキル樹脂は、一般的な方法で作製することも可能であるが、市販品を用いることも可能である。なお、(B)軟化点が70℃以上であるフェノールアラルキル樹脂の市販の製品として具体的には、いずれも上記一般式(III)においてnが0〜10のフェノールアラルキル樹脂である、三井化学社製の商品名、XL−225L(軟化点:86℃)、XLC−LL(軟化点:79℃)、XLC−3L(軟化点:70℃)、明和化成社製の商品名、MEH-7800M(軟化点:83℃)、MEH-7800S(軟化点:77℃)などが挙げられる。
【0022】
本発明に係るエポキシ樹脂成形材料における、(A)ビフェニルエポキシ樹脂と(B)軟化点が70℃以上であるフェノールアラルキル樹脂の配合割合は、前記(A)ビフェニルエポキシ樹脂のエポキシ基(a1)と(B)軟化点が70℃以上であるフェノールアラルキル樹脂のフェノール性水酸基(b1)との当量比(a1)/(b1)の値が0.3〜3.0の範囲内である配合割合が好ましい。より好ましい(a1)/(b1)の範囲は、0.5〜2.0である。前記当量比(a1)/(b1)が0.3未満では、十分な成形性が得られず成形不良を発生する場合があり、3.0を超えると成形不良に加えて金型汚れも発生しやすい傾向となる。
【0023】
ここで、本発明に係るエポキシ樹脂成形材料には、前記(B)軟化点が70℃以上であるフェノールアラルキル樹脂とともに、これ以外のフェノール樹脂を本発明の効果を損なわない範囲で併せて含有させることも可能である。この様な(B)軟化点が70℃以上であるフェノールアラルキル樹脂以外のフェノール樹脂の含有量として、(B)軟化点が70℃以上であるフェノールアラルキル樹脂の含有量に対して、好ましくは10質量%以下の含有量が挙げられ、より好ましくは7質量%以下の含有量が挙げられる。
【0024】
また、(B)軟化点が70℃以上であるフェノールアラルキル樹脂以外のフェノール樹脂としては、軟化点が70℃未満のフェノールアラルキル樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、シクロペンタジエン型フェノール樹脂やトリフェノールアルカン型のフェノール樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。
【0025】
なお、本発明に係るエポキシ樹脂成形材料が(A)ビフェニルエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を含有する場合、および/または、(B)軟化点が70℃以上であるフェノールアラルキル樹脂以外のフェノール樹脂を含有する場合においては、上記(a1)/(b1)の値が上記条件を満たした上でさらに、(A)ビフェニルエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂全量と(B)軟化点が70℃以上であるフェノールアラルキル樹脂を含むフェノール樹脂の配合割合は、前記エポキシ樹脂全量のエポキシ基(a2)とフェノール樹脂全量のフェノール性水酸基(b2)との当量比(a2)/(b2)の値が0.3〜3.0の範囲内である配合割合が好ましい。より好ましい(a2)/(b2)の範囲は、0.5〜2.0である。前記当量比(a2)/(b2)が0.3未満では、十分な成形性が得られず成形不良を発生する場合があり、3.0を超えると成形不良に加えて金型汚れも発生しやすい傾向となる。
【0026】
本発明に係るエポキシ樹脂成形材料が含有する(C)硬化促進剤としては、半導体装置封止用のエポキシ樹脂組成物に一般に使用されるものを特に制限なく挙げることができる。
【0027】
このような(C)硬化促進剤として、具体的には、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール類、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(以下、「DBU」ということもある。)、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン等のジアザビシクロ化合物およびこれらの塩、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0028】
本発明に係るエポキシ樹脂成形材料における(C)硬化促進剤の配合割合は、エポキシ樹脂成形材料全量に対して0.01〜1.5質量%であることが好ましく、0.05〜1.0質量%であることがより好ましい。(C)硬化促進剤の配合割合が0.01質量%未満では、成形不良および金型汚れが発生しやすい傾向となり、また、1.5質量%を超えると、得られる半導体封止装置におけるワイヤー流れ、未充填等の不良が発生しやすい傾向となる。
【0029】
本発明に係るエポキシ樹脂成形材料が含有する(D)無機質充填剤としては、ボールミルなどで粉砕した溶融シリカや火炎溶融することで得られる球状シリカ、ゾルゲル法などで製造される球状シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ボロンナイトライド、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、マグネシア、マグネシウムシリケートなどが挙げられる。これらは単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0030】
なお、本発明の製造方法が適用される半導体封止装置において、該装置が有する半導体素子が発熱の大きい素子の場合、熱伝導率ができるだけ大きくかつ膨脹係数の小さな無機質充填剤、例えば、アルミナ、ボロンナイトライド、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などを無機質充填剤として使用することが好ましい。また、この場合、これら無機質充填剤に溶融シリカなどを混合して使用してもよい。
【0031】
前記(D)無機質充填剤の形状については特に限定はなく、フレーク状、樹枝状、球状等の形状の無機質充填剤を用いることが可能である。なかでも、球状のものが低粘度化、高充填化には最も好ましい。本発明に係るエポキシ樹脂成形材料における(D)無機質充填剤の配合割合は、樹脂組成物全体に対して50〜95質量%の範囲が好ましい。(D)無機質充填剤の配合割合が50質量%未満では、金型汚れが発生することや得られる半導体封止装置に樹脂バリが発生することがあり、また、95質量%を超えるとかさばりが大きくなり、成形性が十分でない場合がある。
【0032】
また、本発明に係るエポキシ樹脂成形材料は、上記(A)ビフェニルエポキシ樹脂、(B)軟化点が70℃以上であるフェノールアラルキル樹脂、(C)硬化促進剤および(D)無機質充填剤の必須成分の他に、一般的に半導体封止用エポキシ樹脂成形材料が含有する成分を本発明の効果を損なわない範囲で任意成分として含有してもよい。
【0033】
この様な任意成分としては、例えば、従来から公知のシリコーンゴムやシリコーンゲルなどの粉末、シリコーン変性エポキシ樹脂やシリコーン変性フェノール樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレンよりなる熱可塑性樹脂などの低応力化剤が挙げられる。また、難燃化のために用いる、臭素化エポキシ樹脂や酸化アンチモンなどを任意成分として挙げることができる。さらに、粘度を下げる目的のために使用する、従来より公知のn−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジエポキシド、フェノール、クレゾール、t−ブチルフェノールのような希釈剤や、離型性を向上させるために用いる、カルナバワックス等の天然ワックス類、合成ワックス類等を前記任意成分として挙げることも可能である。
【0034】
また、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート等のチタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などのカップリング剤やカーボングラックなどの着色剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーンオイルなどの濡れ向上剤や消泡剤なども必要に応じて任意成分として本発明に係るエポキシ樹脂成形材料に添加することができる。
【0035】
本発明の半導体封止装置の製造方法に用いるエポキシ樹脂成形材料の製造方法としては、一般的な半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の製造方法をとることが可能である。具体的には、前述した(A)ビフェニルエポキシ樹脂、(B)軟化点が70℃以上であるフェノールアラルキル樹脂、(C)硬化促進剤、(D)無機質充填剤の必須成分および適宜選択されるその他の任意成分の各配合量を秤量、配合し、これら成分を高速混合機等によって十分均一に混合した後、さらに二本ロールや連続混錬装置等による加熱混錬処理を行う。ここで、加熱混錬処理の温度は50〜110℃とすることが好ましい。次いで、加熱混錬処理後のエポキシ樹脂組成物を薄いシート状等にして冷却固化させ、適当な大きさに粉砕することで本発明の製造方法に用いるエポキシ樹脂成形材料とすることができる。
【0036】
上記説明したエポキシ樹脂成形材料を、離型シートを使用した半導体装置の樹脂封止における封止用樹脂成形材料として用いれば、製造過程で発生する該樹脂成形材料に起因する金型汚れを抑えることができ、これにより離型シート使用の半導体封止装置製造における歩留まりの向上、また生産性の向上が可能となる。
【0037】
次に、上述のエポキシ樹脂成形材料を用いた、本発明の半導体封止装置の製造方法について説明する。
本発明の半導体封止装置の製造方法は、成形用金型内の所定位置に配置された半導体装置の被封止面と前記被封止面と対向する前記成形用金型内面に配置された離型シートとの間に、エポキシ樹脂成形材料を注入封止する工程を少なくとも含む半導体封止装置の製造方法であって、前記エポキシ樹脂成形材料として上記説明したエポキシ樹脂成形材料を用いることを特徴とする。
【0038】
本発明の半導体封止装置の製造方法は、半導体封止用のエポキシ樹脂成形材料として上記説明したエポキシ樹脂成形材料を用いる以外は、離型シートを用いて半導体装置を樹脂封止する半導体封止装置の一般的な製造方法と同様の方法とすることが可能である。
本発明の半導体封止装置の製造方法は、成形用金型を用いた半導体装置の樹脂封止の際に離型シートを用いる製造方法に適用されるものであり、前記樹脂封止の方法としては、例えば、最も一般的な方法である低圧トランスファー成形法の他に、射出成形、圧縮成形および注型などによる樹脂封止の方法をとることが可能である。
【0039】
本発明の半導体封止装置の製造方法においては、まず、半導体装置の樹脂封止成形用金型を準備し、樹脂封止される半導体装置を前記成形用金型の所定位置に配置するとともに、離型シートを前記成形用金型の、少なくとも半導体装置の被封止面に対向する内面に配置する。ここで、離型シートはさらに必要に応じて、半導体装置の被封止面とならない面に対向する成形用金型内面にも配置されてもよい。成形用金型内面への離型シートの設置方法については、特に制限されないが、必要に応じて、バキューム等により金型内面に予め密着させる等の方法をとることも可能である。
【0040】
本発明の半導体封止装置の製造方法においては、次いで、前記成形用金型内に配置された半導体装置の被封止面と前記被封止面と対向する前記成形用金型内面に配置された離型シートとの間に、上述のエポキシ樹脂成形材料を一般的な方法で注入し、これを加熱処理して前記エポキシ樹脂成形材料を硬化、成形させる。その後、必要に応じて、前記成形用金型を開き半導体封止装置の成形品を取り出した後に、さらに硬化を完了させるための熱処理を施し、最終的に前記エポキシ樹脂成形材料の硬化物によって封止された半導体封止装置を得る。なお、使用する離型シートはロール状としておき、1回の金型成形が終了した段階で離型シートを成形用金型分の大きさだけ巻取り、次の成形に際して成形用金型内に新しい離型シートが供給されるよう設定することが好ましい。
【0041】
本発明の製造方法において、前記エポキシ樹脂成形材料の硬化の際の加熱温度および時間は、成形用金型内で実施される加熱処理の温度、時間条件として、用いるエポキシ樹脂成形材料の組成にもよるが、150〜200℃、20〜200秒間を好ましい条件として挙げることができる。また、成形用金型から半導体封止装置成形品を取り出した後に行われる、硬化を完了させるための加熱の温度、時間条件として、これも用いるエポキシ樹脂成形材料の組成にもよるが、190〜250℃、0〜12時間を好ましい条件として挙げることができる。
【0042】
本発明の半導体封止装置の製造方法においては、離型シートとして、一般的に半導体封止装置製造に用いられる離型シートを特に制限なく用いることが可能である。このような離型シートとして、具体的には、フッ素樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド、ポリエステル樹脂等の材料からなる離型シートが挙げられる。
【0043】
また、前記フッ素樹脂として具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等が挙げられる。
【0044】
前記アクリル樹脂として具体的には、アクリル酸およびそのエステル、メタクリル酸およびそのエステル、アクリロニトリル等から選ばれる1種の重合体またはこれら2種以上の共重合体等が挙げられる。シリコーン樹脂としては、付加タイプ、縮合タイプのいずれも使用することができ、具体的には、例えば、ジメチルポリシロキサンとメチルハイドジェンポリシロキサンを有機錫等の触媒を用いて硬化させるシリコーン樹脂等が挙げられる。ポリエステル樹脂として具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。
【0045】
なお、本発明の製造方法に用いられる離型シートの材料としては、これらのうちでも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂が好ましく用いられる。
【0046】
また、上記例示した材料を用いてシート状に成形された市販品が多く流通しており、これら市販品のシートをそのまま本発明の製造方法の離型シートとして用いることが可能である。これら市販品として具体的には、ユニチカ社製のポリエチレンテレフタレート(PET)シート、商品名:エンブレットS−50や旭硝子社製チレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)シート、商品名:アフレックス50等が挙げられる。
【0047】
ここで、本発明の製造方法に用いる離型シートは、上記材料の1種からなる単層シートであってもよく、上記材料の1種からなる層が2つ以上積層された多層シートであってもよい。また、上記材料からなる離型性を有する層と他の性質を有する材料からなる層が積層された多層構造の離型シートであってもよい。
【0048】
本発明の製造方法に用いる離型シートの厚さについては、金型への貼りつき性の観点から、10〜200μm程度であることが好ましく、さらに好ましくは20〜100μm程度である。
【0049】
本発明の半導体封止装置の製造方法によれば、上記に説明したエポキシ樹脂成形材料を封止用樹脂成形材料として用いることにより、製造過程で発生する該樹脂成形材料に起因する金型汚れを抑えることができ、金型のクリーニング頻度を低減させることができる。さらに、金型への異物の付着、離型シートのしわ発生や半導体装置における樹脂バリの発生を防止することができる等、半導体封止装置の歩留まりの向上および生産性の向上が可能となる。
この様な本発明の製造方法が適用される半導体封止装置としては、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0051】
[実施例1]
(A)ビフェニルエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:YX−4000HK、エポキシ当量:190、融点:105℃)4.7質量%(得られるエポキシ樹脂成形材料全量に対する質量%。以下、各成分の配合量はすべて「得られるエポキシ樹脂成形材料全量に対する質量%」で示す。)に、(B)軟化点が70℃以上のフェノールアラルキル樹脂(三井化学社製、商品名:XL−225L、フェノール当量:180、軟化点:86℃)4.3質量%、(C)硬化促進剤:1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)0.4質量%、(D)無機質充填剤:溶融球状シリカ(電気化学工業社製、商品名:FB−60)90.0質量%、および、カルナバワックス(東洋ペトロライト社製、商品名:カルナバワックス1号)0.2質量%、着色剤:カーボンブラック(三菱化学社製、商品名:MA−600)0.2質量%、シランカップリング剤:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、商品名:KBM−403)0.2質量%を配合し、ヘンシェルミキサーにより常温で混合し、さらに二軸押出混錬機を用いて、100℃で混錬した。得られた混錬物をシート状にして冷却固化させた後、粉砕してエポキシ樹脂成形材料を調製した。
【0052】
トランスファー成形金型の下型に試験用のTAB基板を配置し、トランスファー成形金型の上型にETFE製の離型シート(旭硝子社製、商品名:アフレックス50、厚さ:50μm)を装着して、真空で固定した後、型締めし、上記で得られたエポキシ樹脂成形材料をトランスファーモールドした。パッケージは10mmの半導体チップが9個配置され、チップ裏面がベアとなるものとした。成形時の金型温度は180℃、成形圧力12MPa、成形時間120秒とした。成形終了後、トランスファー成形金型、離型シートから樹脂封止されたパッケージを取り外した。
【0053】
上記トランスファー成形を500ショット繰り返し実施した後、上記トランスファー成形金型の金型汚れを観察した。また、500ショットで得られたパッケージの半導体チップについて、離型シートにしわが発生したことによるパッケージ外観不良(離型シートのしわが転写されることによる外観不良)の有無およびパッケージの半導体チップ裏面への樹脂バリ発生の有無を観察した。なお、それぞれの評価項目において評価は以下の基準で行った。
【0054】
<金型汚れ評価基準>
○ :目視で確認できる汚れがない。
○△:目視で確認できる汚れがありその面積が金型の表面積全体の20%未満である。
△ :目視で確認できる汚れがありその面積が金型の表面積全体の20%以上40%未満である。
△×:目視で確認できる汚れがありその面積が金型の表面積全体の40%以上60%未満である。
× :目視で確認できる汚れがありその面積が金型の表面積全体の60%以上である。
【0055】
<離型シートしわ発生によるパッケージ外観不良発生の評価基準>
なし:パッケージ外観不良の発生なし(0/500)
少々:パッケージ外観不良がわずかに発生(1〜5/500)
あり:パッケージ外観不良が多数発生(6以上/500)
ただし、括弧内の数字は、「パッケージ外観不良が発生したショット数/試料ショット数(500ショット)」を表す。
【0056】
<半導体チップ裏面の樹脂バリ発生の評価基準>
なし:樹脂バリの発生なし(0/500)
少々:樹脂バリがわずかに発生(1〜5/500)
あり:樹脂バリが多数発生(6以上/500)
ただし、括弧内の数字は、「樹脂バリが発生したショット数/試料ショット数(500ショット)」を表す。
得られた評価結果を表1の最下欄に示す。
【0057】
[実施例2〜7]
表1に示す(A)〜(D)成分およびその他成分を表1に示す量用いた以外は、実施例1と同様にして、エポキシ樹脂成形材料を調製した。
実施例2〜6については、実施例1と同様にしてトランスファー成形により、上記で得られたエポキシ樹脂成形材料を用いて樹脂封止されたパッケージを作製し評価を実施した。実施例7については、実施例1で用いたETFE製の離型シートの代わりにPET製の離型シート(ユニチカ社製、商品名:エンブレットS−50、厚さ:50μm)を装着した以外は実施例1と同様にして上記で得られたエポキシ樹脂成形材料により樹脂封止されたパッケージを作製し評価を実施した。得られた評価結果を表1の最下欄に示す。
【0058】
[比較例1]
表1に示す各種成分を表1に示す量用いた以外は実施例1と同様にして、実施例1の組成において(B)成分の代わりに、軟化点が70℃に達していないフェノールアラルキル樹脂(三井化学社製、商品名:XLC−4L、フェノール当量:169、軟化点:62℃)を含有するエポキシ樹脂成形材料を調製し、さらに、これを用いて実施例1と同様にしてトランスファー成形により樹脂封止されたパッケージを作製し評価を実施した。得られた評価結果を表1の最下欄に示す。
【0059】
[比較例2]
表1に示す各種成分を表1に示す量用いた以外は実施例1と同様にして、実施例1の組成において(B)成分の代わりに、軟化点が70℃に達していないフェノールアラルキル樹脂(明和化成社製、商品名:MEH−7800SS、フェノール当量:175、軟化点:65℃)を含有するエポキシ樹脂成形材料を調製し、さらに、これを用いて実施例1と同様にしてトランスファー成形により樹脂封止されたパッケージを作製し評価を実施した。得られた評価結果を表1の最下欄に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1から明らかなように、本発明の製造方法によれば、製造過程で発生する封止用樹脂成形材料に起因する金型汚れを抑えることができる。また、離型シートにしわが発生したことによるパッケージ外観不良や半導体装置における樹脂バリの発生を防止することができることがわかる。また、得られる半導体封止装置は樹脂バリ等のない外観が良好な半導体封止装置である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形用金型内の所定位置に配置された半導体装置の被封止面と前記被封止面と対向する前記成形用金型内面に配置された離型シートとの間に、エポキシ樹脂成形材料を注入封止する工程を少なくとも含む半導体封止装置の製造方法であって、前記エポキシ樹脂成形材料として、(A)ビフェニルエポキシ樹脂、(B)軟化点が70℃以上であるフェノールアラルキル樹脂、(C)硬化促進剤および(D)無機質充填剤を必須成分として含有するエポキシ樹脂成形材料を用いることを特徴とする半導体封止装置の製造方法。
【請求項2】
前記離型シートが、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体およびポリフッ化ビニリデンから選ばれる材料からなることを特徴とする請求項1記載の半導体封止装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法により製造された半導体封止装置。

【公開番号】特開2010−129897(P2010−129897A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305136(P2008−305136)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】