説明

半導体素子の製造方法

【課題】 SOI基板上に、酸化シリコン膜を介して金属シリサイド膜を形成する際に、金属シリサイド膜中に残存する酸素を低減し、抵抗を低く抑える半導体素子の製造方法を提供する。
【解決手段】 SOI基板100上にCMOSトランジスタを形成した後、シリコン膜103上に0.5nm以上2nm以下の膜厚を有する酸化シリコン膜801を形成する工程と、チタン膜803を形成する工程と、酸素及び窒素の浸入を防ぐためのバリア膜としての窒化チタン膜901を形成する工程と、C49結晶相チタンシリサイド膜902を形成するための低温熱処理を行なう工程と、窒化チタン膜901と未反応のチタン膜と901のみを選択的に除去するエッチング工程を順に行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の製造方法に係り、特に金属シリサイド膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、特にCMOSトランジスタの導通時の電流値は、CMOSトランジスタのゲート長短縮により増加するため、CMOSトランジスタの導通状態での電気抵抗はゲート長短縮に伴い低下する。そのため、CMOSトランジスタに直列に入る寄生抵抗の影響は、ゲート長短縮に伴い大きくなる。
【0003】
この寄生抵抗を低下させることで、負荷容量の充放電に費やされる時定数が小さくなり、CMOSトランジスタのスイッチング速度を向上させることができる。そのためCMOSトランジスタでは、ソース・ドレインやポリシリコンからなるゲート電極上に、シリコン膜と比べ電気抵抗値が低い金属シリサイド膜を選択的に形成する方法が採用されてきている。
【0004】
この方法は、シリコン膜のCMOSトランジスタが形成された面側に金属膜を形成し、熱処理することでソース・ドレイン上やポリシリコンからなるゲート電極上にのみ金属シリサイド膜を形成した後、未反応の金属膜を選択的にエッチングすることでシリコン膜上にのみ金属シリサイド膜を形成するもので、サリサイド(Salicide:Self Align Silicide)法とも呼ばれている。
【0005】
また、SOI(Silicon On Insulator)基板上のシリコン膜に形成されたCMOSトランジスタでは、短チャネル効果を抑制し、CMOSトランジスタの微細化を進めるため、前記シリコン膜を薄膜化させてきている。前記シリコン膜の薄膜化に伴い、ソース・ドレインの断面積は低下し、寄生抵抗は増加するため、微細化に伴う寄生抵抗の増加は、通常のシリコン基板上に作られたCMOSトランジスタよりも顕著に現れる。
【0006】
従って、SOI基板上に形成されるCMOSトランジスタでは、サリサイド法を用いてソース・ドレインやポリシリコンからなるゲート電極上にチタンシリサイド膜を選択的に形成し、電気抵抗値を低減することが、通常のシリコン基板に形成されるCMOSトランジスタの場合以上に重要となる。
【0007】
CMOSトランジスタのソース・ドレイン領域やポリシリコンからなるゲート電極上に選択的に金属シリサイド膜を形成する手法は、例えば特許文献1に記述されている。次に、特許文献1の要旨について説明する。
【0008】
特許文献1では、シリコン基板上に、50Å(5nm)のSiO2膜を形成し、前記SiO2膜上に400Å(40nm)のチタン膜を形成した後、600℃でランプアニールを行ない、シリコンをSiO2膜を通して拡散させてチタン膜中に輸送し、高抵抗相のC49結晶相をとるTiSi2膜を形成している。なお、チタンシリサイド膜を形成する形成温度は600℃〜700℃の温度範囲であればよいと記載されている。
【0009】
そして、チタンシリサイド膜を形成した後、アンモニア過水等を用いて、未反応のチタン膜と、ランプアニール時に副次的に生成されたTiO2とを除去する。次に900℃の温度でランプアニールを行ない、残留酸素を放出させて、低抵抗相のC54結晶相をとるTiSi2膜を形成している。なお、このTiSi2膜のランプアニールは、800℃から1000℃の温度範囲であればよいが、TiSi2膜から残留酸素を放出させて、低抵抗相のC54結晶相をとるTiSi2膜を得るためには900℃の熱処理が必要であると記載されている。
【0010】
また、非特許文献1では、一旦形成したチタンシリサイド膜の結晶形を変える相転移のための熱処理条件と、チタンシリサイド膜の電気抵抗値との関係が記述されている。この文献では、多結晶シリコンとチタンとで形成されたチタンシリサイド膜については、800℃程度以上の温度で100μΩ・cm程度の高い電気抵抗を有するC49結晶相から15μΩ・cm程度の低い電気抵抗を有するC54結晶相に相転移が起きると記述されている。また、850℃以上ではチタンシリサイド膜が凝集して島状結晶に変化し、抵抗値が上がっていく現象が見られるため、低抵抗なチタンシリサイド膜が得られる相転移処理の温度範囲は、800℃以上850℃以下であると記述されている。
【0011】
ところで0.25μm以下の配線幅を有するCMOSトランジスタでは、チタン以外の金属を用いて金属シリサイドを形成する技術が提案されている。例えば、細線効果をチタンシリサイド膜に比べ抑制できる、コバルトシリサイド膜を用いる製造方法が提案されている。細線効果は、金属シリサイド膜が凝集し、島状結晶になるため発生するが、コバルトシリサイドは凝集し難い性質を持つため、細線効果を抑制することが可能となる。
【0012】
また、SOI基板上に形成されたCMOSトランジスタでは、ソース・ドレインの膜厚が薄くなるため、ソース・ドレインを形成しているシリコンを用いて形成される金属シリサイド膜の膜厚も薄くなり、電気抵抗値を下げることが難しくなってきている。そこで、ニッケルを用いて金属シリサイド膜を形成する製造方法が提案されている。
【0013】
ニッケルシリサイドは、チタンやコバルトが、TiSi2、CoSi2という組成で金属シリサイド膜を形成するのに対し、ニッケルはNiSiという組成で金属シリサイド膜を形成する。つまり、ニッケルを用いて金属シリサイドを形成する場合、チタンやコバルトを用いて金属シリサイドを形成する場合と比べ、同じシリコン膜厚であれば、約2倍の膜厚を持つ金属シリサイド膜が作れるため、電気抵抗値が低い金属シリサイド膜が得られる。
【0014】
ここで、例えば50nmのシリコン膜を有するSOI基板を用いて、固相成長により再結晶化をが行なえるよう、シリコン膜中にシリサイド化されない領域を残した上で、チタンやコバルトのシリサイド化を、金属膜の厚さを制御することで行なう場合、金属膜の厚さを25nm未満にする必要があり、またニッケルを用いた場合でも50nm未満にする必要がある。このように薄い金属膜を熱処理してシリサイド化すると、金属シリサイドを形成する際、金属膜にかかる応力などの影響により金属膜が島状に変形し、そのため金属シリサイド膜が島状に形成されて、電気抵抗が上昇してしまうおそれがある。
【0015】
そこで、特許文献1の請求項1にあるように、金属膜とシリコンとの間にシリコン化合物である酸化シリコン膜を形成して、酸化シリコン膜を通してシリサイド化を低速にして、反応時間で金属シリサイド膜の膜厚を制御する方法が有効となる。反応時間で制御する場合、シリサイド化工程に用いる金属膜の膜厚を厚くすることができるため、金属膜が凝集しにくくなり、電気抵抗の上昇を抑えることができる。なお、この酸化シリコン膜は、金属シリサイド形成中に徐々に破壊され、シリサイド化反応が終了した時点では消失しており、残留酸素として金属シリサイド膜中に存在している。
【0016】
【特許文献1】特開平−158091号公報(請求項1、8〜10頁、図1(A)〜(E))
【非特許文献1】半導体研究43巻 超LSI技術21デバイスプロセス その11(株)工業調査会 西沢純一編 238〜239頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら特許文献1では、50Åという厚い酸化シリコン膜を用いており、チタンシリサイド内部に残る酸化シリコン膜由来の酸素の量が多くなるため、チタンシリサイド膜の熱処理を高温で行ない、酸素の放出を促す必要がある。特許文献1には、低抵抗なTiSi2膜を得るには800℃では酸素の排出が不十分で、900℃で熱処理する必要があると記載されている。一方、非特許文献1にあるように、850℃以上の温度でTiSi2を熱処理した場合、TiSi2膜が島状に凝集し、微細パターンで抵抗値が異常に上昇する細線効果が発生すると記載されている。
【0018】
従って、900℃という熱処理温度ではチタンシリサイド膜に細線効果が発生するおそれがある。
【0019】
また、コバルトやニッケルを用いた場合でも、50Å程度の厚い酸化シリコン膜を介してシリコンや金属の拡散を制御し、金属シリサイド膜を形成する場合、金属シリサイド膜中に酸化シリコン膜由来の酸素が残留してしまい、電気抵抗値を上げてしまうという問題点を有している。
【0020】
特に、ニッケルシリサイド膜を形成する場合には、ニッケルシリサイド膜が熱的に不安定な膜であることから、酸素の放出を促す高温での熱処理が使えないため、ニッケルシリサイドの比抵抗が上昇し、厚膜化して抵抗を下げる効果が相殺されてしまうという問題点を有していた。
【0021】
以上の問題点に鑑みて、本発明は、金属シリサイド膜を形成する際、金属膜の凝集による電気抵抗値の増加を抑え、また電気抵抗の低い金属シリサイドに転換する際に生じる細線効果による電気抵抗の増加を抑え、さらに金属シリサイド膜中に残存する酸素を低減することで金属シリサイド膜の抵抗値を低く抑える半導体素子の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するために、本発明の半導体素子の製造方法は、絶縁体上に単結晶のシリコン膜を有するSOI(Silicon On Insulator)基板上に、CMOSトランジスタを形成した後、前記CMOSトランジスタに電極となる金属シリサイド膜を形成する半導体素子の製造方法であって、前記シリコン膜上に0.5nm以上2nm以下の膜厚を有する酸化シリコン膜を形成する工程と、前記シリコン膜と反応し金属シリサイドを形成する金属膜を、前記酸化シリコン膜上に形成する工程と、前記金属膜上に、酸素及び窒素の浸入を防ぐためのバリア膜を形成する工程と、前記金属シリサイド膜を形成するための低温熱処理を行なう工程と、前記金属シリサイド膜を残して、前記バリア膜とシリサイド化していない未反応の前記金属膜とを選択的に除去するエッチング工程を有することを特徴とする。
【0023】
この製造方法によれば、0.5nm以上2nm以下という薄い酸化シリコン膜を用いているため、金属膜とシリコン膜とを低温熱処理してシリサイド化した後に、金属シリサイド中に残留する酸素の量が少なくなるため、後工程で酸素を追い出すための900℃程度の熱処理を行なうことなく低抵抗の金属シリサイドが得られる。
【0024】
なお、0.5nm未満の酸化シリコン膜厚を用いると、金属シリサイド形成のための拡散制御が十分に行なえず、金属膜とシリコン膜とが直に接触しているものとほぼ同じ状態となり、反応速度を制御することが困難となるため、好ましくない。また、2nmより厚い酸化シリコン膜を用いると、金属シリサイド中に酸素が多量に残留することとなり、後工程で酸素を追い出すための、900℃程度の熱処理を行なうことが必要となり、細線効果等が発生するおそれがあり、好ましくない。
【0025】
また、上記した本発明の半導体素子の製造方法は、前記金属膜は、厚さが5nm以上20nm以下であることを特徴とする。
【0026】
この製造方法によれば、薄い金属膜を低温熱処理して金属シリサイドを形成する際、金属膜にかかる応力などの影響により金属膜が島状に凝集し、そのため金属シリサイド膜が島状に形成されて、電気抵抗が上昇してしまう現象を回避することができる。
【0027】
なお、5nm未満の膜厚の金属膜を用いると、金属膜にかかる応力などの影響により金属膜が島状に分離し、電気抵抗値を大きくしてしまう問題が生じるため、好ましくない。また、20nmを超える膜厚の金属膜を用いると、金属膜の成膜時間や、選択エッチング時間がかかり過ぎるため、好ましくない。
【0028】
また、上記した本発明の半導体素子の製造方法は、前記酸化シリコン膜を形成する工程の前、又は後に、CMOSトランジスタの形成面側からイオン注入し、前記シリコン膜を、前記シリコン膜の膜厚の10%以上、90%以下の深さまでアモルファス化する工程を行なうことを特徴とする。
【0029】
この製造方法によれば、CMOSトランジスタを形成するシリコン膜の膜厚の10%以上90%以下の深さまでアモルファス化するため、シリサイド化が起こりにくいN型シリコン膜上でも、P型シリコン膜上でのシリサイド化速度と同程度の速度で金属膜はシリサイド化される。そのため、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタから成るCMOSトランジスタの寄生抵抗をバランスよく下げることができる。また、シリコン膜の基板側には前記シリコン膜の膜厚の10%以上の膜厚を有する単結晶シリコン膜がアモルファス化されず残留しているため、シリサイド化を行なうための熱処理を行なう際、アモルファス状態のシリコン膜に近接して残留している単結晶シリコン膜を種として固相成長し、アモルファス状態のシリコン膜を速やかに単結晶状態に戻すことができる。
【0030】
なお、シリコン膜の膜厚の10%以下の深さまでにのみアモルファス化を行なうと、特にNMOSトランジスタのシリサイド化反応が起き難くなるため、好ましくない。また、シリコン膜の膜厚の90%を超えてアモルファス化を行なうと、種結晶となる単結晶シリコン膜にもアモルファス化する工程に起因するダメージが残るため、良好な単結晶膜が得られない場合があり、好ましくない。
【0031】
また、上記した本発明の半導体素子の製造方法は、前記イオン注入に用いられるイオン種は、アルゴン、ゲルマニウム又はシリコンであることを特徴とする。
【0032】
この製造方法によれば、電気的にP型にもN型にもならないイオン種を用いることでアモルファス化を行なうことが可能となるので、N型の不純物となる砒素を用いてアモルファス化する場合と比べ、特にP型シリコン領域の電気抵抗値を上昇させることなく、シリコン膜をアモルファス化することができる。
【0033】
また、上記した本発明の半導体素子の製造方法は、前記バリア膜は、窒化チタン膜、又は窒化酸化チタン膜であることを特徴とする。
【0034】
この製造方法によれば、窒化チタン膜、又は窒化酸化チタン膜は緻密な膜を形成するため、窒素、酸素、あるいは大気など金属膜と反応するガスから金属膜を保護することができる。
【0035】
また、上記した本発明の半導体素子の製造方法は、前記金属膜の材質はチタンであり、前記低温熱処理を行なう工程は前記低温熱処理を560℃以上590℃以下の温度で、30秒以上180秒以下の時間で行ない、前記エッチング工程は、アンモニア水と過酸化水素水の混合液を用いて行ない、前記金属シリサイド膜の結晶構造を相転移させ比抵抗を下げるため、前記 エッチング工程終了後に750℃以上850℃以下の温度で、10秒以上120秒以下の時間で高温熱処理する工程を更に有することを特徴とする。
【0036】
この製造方法によれば、560℃以上590℃以下の低温熱処理でチタン膜とシリコン膜とを反応させてチタンシリサイド膜を形成することができる。また、シリコン膜をアモルファス化する工程と合わせて用いることで、特にチタンシリサイド化しにくいN型シリコン膜上でもP型シリコン膜でのシリサイド化速度と同程度の速度でチタン膜のシリサイド化反応を行なわせることができる。
【0037】
なお、低温熱処理を560℃未満の温度で行なうと、特にNMOSトランジスタのチタンシリサイド化反応が起き難くなるため、好ましくない。また、低温熱処理を590℃を超える温度で行なうと、チタンシリサイド化反応速度が大きくなりすぎ、反応時間でチタンシリサイド化反応を制御することが困難となるため、好ましくない。
【0038】
また、低温熱処理時間を30秒以上180秒以下とすることで、電気的な絶縁物である酸化シリコン膜が弱くなり、チタンシリサイド膜とシリコン膜との導通がとれる。また、酸化シリコン膜由来のバリアにより反応速度が制御されている状態で、チタンシリサイド膜の成膜が行なえる。
【0039】
なお、低温熱処理を30秒未満の時間で行なうと、電気的な絶縁体である酸化シリコン膜が残存することで、チタンシリサイド膜と、トランジスタのソース・ドレイン部分とが電気的に絶縁されてしまうおそれがあり、好ましくない。また、低温熱処理を180秒を超える時間で行なうと、酸化シリコン膜由来のバリアが完全に破壊されてしまい、反応速度が制御できなくなるため、好ましくない。
【0040】
また、相転移のための高温熱処理を750℃以上850℃以下の温度で行なうため、チタンシリサイド膜の結晶構造を、100μΩ・cm程度の高い電気抵抗を有するC49結晶相から15μΩ・cm程度の低い電気抵抗を有するC54結晶相に相転移させることができる。また、チタンシリサイド膜の凝集により島状結晶に変化し、抵抗値が上がっていく現象を回避することができる。
【0041】
なお、高温熱処理を750℃未満の温度で行なうと、高抵抗のC49結晶相から低抵抗のC54結晶相への相転移が行なわれなくなるため、電気抵抗が高くなってしまい好ましくない。また、高温熱処理を850℃を超える温度で行なうと、チタンシリサイド膜の凝集により島状結晶に変化し、抵抗値が上がっていく現象が発生するおそれがあり、好ましくない。
【0042】
また、高温熱処理の時間を10秒以上120秒以下とすることで、チタンシリサイド膜の相転移をほぼ完全に行なうことができる。またチタンシリサイド膜の凝集により島状結晶に変化し、抵抗値が上がっていく現象を回避することができる。
【0043】
なお、高温熱処理の時間を10秒未満の時間で行なうと、高抵抗のC49結晶相から低抵抗のC54結晶相への相転移を完了させることができないため、電気抵抗が高くなってしまい好ましくない。また、高温熱処理の時間を120秒を超える時間で行なうと、チタンシリサイド膜の凝集により島状結晶に変化し、抵抗値が上がっていく現象が発生するおそれがあり、好ましくない。
【0044】
また、上記した本発明の半導体素子の製造方法は、前記金属膜の材質はコバルトであり、前記低温熱処理を行なう工程は前記低温熱処理を400℃以上600℃以下の温度で、30秒以上150秒以下の時間で行ない、前記エッチング工程は、硫酸と過酸化水素水の混合液、または塩酸と過酸化水素水の混合液を用いて行ない、前記金属シリサイド膜の組成をCo2SiからCoSi2に組成変化させて比抵抗を下げるために、前記エッチング工程終了後に700℃以上890℃以下の温度で、10秒以上120秒以下の時間で高温熱処理する工程を更に有することを特徴とする。
【0045】
この製造方法によれば、400℃以上600℃以下の低温熱処理でコバルト膜とシリコン膜とを反応させてコバルトシリサイド膜を形成することができる。また、特にコバルトシリサイド化しにくいN型シリコン膜上でもP型シリコン膜でのシリサイド化速度と同程度の速度でコバルト膜のシリサイド化反応を行なわせることができる。
【0046】
なお、低温熱処理を400℃未満の温度で行なうと、特にNMOSトランジスタのソース・ドレイン領域でのコバルトシリサイド化反応が起き難くなるため、好ましくない。また、低温熱処理を600℃を超える温度で行なうと、コバルトシリサイド化反応速度が大きくなりすぎ、反応時間でコバルトシリサイド化反応を制御することが困難となるため、好ましくない。
【0047】
また、低温熱処理の時間を30秒以上150秒以下とすることで、電気的な絶縁物である酸化シリコン膜が弱くなり、コバルトシリサイド膜とシリコン膜との導通がとれる。また、酸化シリコン膜由来のバリアにより反応速度が制御されている状態で、コバルトシリサイド膜の成膜が行なえる。
【0048】
なお、低温熱処理を30秒未満の時間で行なうと、酸化シリコン膜が残存しているため、コバルトシリサイド膜と、トランジスタのソース・ドレイン部分とが電気的に絶縁されてしまうおそれがあり、好ましくない。また、低温熱処理を150秒を超える時間で行なうと、酸化シリコン膜由来のバリアが完全に破壊されてしまい、反応速度が制御できなくなるため、好ましくない。
【0049】
また、高温熱処理を700℃以上890℃以下の温度で行なうため、コバルトシリサイド膜の組成を、電気抵抗の高いCo2Siから、電気抵抗の低いCoSi2に組成変化させることができる。
【0050】
なお、高温熱処理を700℃未満の温度で行なうと、電気抵抗の高いCo2Siから、電気抵抗の低いCoSi2への組成変化が行なわれず、電気抵抗が下がらないため好ましくない。また、高温熱処理を890℃を超える温度で行なうと、コバルトシリサイド膜の凝集により島状結晶に変化し、電気抵抗値が上がっていく細線効果という現象が発生するおそれがあり、好ましくない。
【0051】
また、高温熱処理を10秒以上120秒以下とすることで、コバルトシリサイド膜の相転移をほぼ完全に行なうことができる。またコバルトシリサイド膜の凝集により島状結晶に変化し、抵抗値が上がっていく現象を回避することができる。
【0052】
なお、高温熱処理を10秒未満の時間で行なうと、高抵抗のCo2Siから低抵抗のCoSi2への組成変化を完了させることができないため、電気抵抗が高くなってしまい好ましくない。また、高温熱処理を120秒を超える時間で行なうと、コバルトシリサイド膜の凝集により島状結晶に変化し、抵抗値が上がっていく現象が発生するおそれがあり、好ましくない。
【0053】
また、上記した本発明の半導体素子の製造方法は、前記金属膜の材質はニッケルであり、前記低温熱処理を行なう工程は前記低温熱処理を400℃以上600℃以下の温度で、30秒以上150秒以下の時間で行ない、前記エッチング工程では、硫酸と過酸化水素水の混合液、または塩酸と過酸化水素水の混合液を用いて行なうことを特徴とする。
【0054】
この製造方法によれば、400℃以上600℃以下の低温熱処理でニッケル膜とシリコン膜とを反応させてニッケルシリサイド膜を形成することができる。また、特にニッケルシリサイド化しにくいN型シリコン膜上でもP型シリコン膜でのシリサイド化速度と同程度の速度でニッケル膜のシリサイド化反応を行なわせることができる。
【0055】
なお、低温熱処理を400℃未満の温度で行なうと、特にNMOSトランジスタのソース・ドレイン領域でのニッケルシリサイド化反応が起き難くなるため、好ましくない。また、低温熱処理を600℃を超える温度で行なうと、ニッケルシリサイド化反応速度が大きくなりすぎ、反応時間でニッケルシリサイド化反応を制御することが困難となるため、好ましくない。
【0056】
また、低温熱処理の時間を30秒以上150秒以下とすることで、電気的な絶縁物である酸化シリコン膜が弱くなり、ニッケルシリサイド膜とシリコン膜との導通がとれる。また、酸化シリコン膜由来のバリアにより反応速度が制御されている状態で、ニッケルシリサイド膜の成膜が行なえる。
【0057】
なお、低温熱処理を30秒未満の時間で行なうと、酸化シリコン膜が残存しているため、ニッケルシリサイド膜と、トランジスタのソース・ドレイン部分とが電気的に絶縁されてしまうおそれがあり、好ましくない。また、低温熱処理を150秒を超える時間で行なうと、酸化シリコン膜由来のバリアが完全に破壊されてしまい、反応速度が制御できなくなるため、好ましくない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
本発明に係る実施形態の半導体素子の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態の説明に用いた各図では、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0059】
実施形態−1<シリサイド化するための金属としてチタンを用いた場合の製造方法>
【0060】
(CMOSトランジスタ、素子分離領域の形成)
図1及び図2は、半導体素子としてCMOSトランジスタ上に金属シリサイド膜を製造するための製造工程中、素子分離領域を形成する工程を説明するための工程断面図である。
【0061】
図1(A)に示すように、シリコン基体101上に、BOX(Buried OXide)膜102、シリコン膜103を備えたSOI(Silicon On Insulator)基板100を用いる。本実施形態では、シリコン膜103の膜厚が50nmのSOI基板100を用いている。
【0062】
このSOI基板100に、素子分離領域202を形成する。素子分離領域202はSTI(Shallow Trench Isolation)技術を用いて形成する。次にSTI技術を用いて素子分離領域202を形成する工程について説明する。
【0063】
まず、図1(B)に示すように、窒化シリコン膜105からの応力を緩和するための窒化酸化シリコン膜104を膜厚10nmで形成する。次に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)工程でのエッチングストップ膜となる窒化シリコン膜105を膜厚150nmで形成する。
【0064】
次に、図1(C)に示すようにフォトレジスト106を塗布し、フォトリソグラフ工程を行なうことで素子分離領域202(図2(C)参照)部分にのみ溝部107形成するために開口して、窒化シリコン膜105、窒化酸化シリコン膜104、シリコン膜103をエッチングする。
【0065】
次に、図2(A)に示すようにフォトレジスト106を除去し、1100℃、酸化雰囲気で熱処理し、エッチング時に発生したシリコン膜103の損傷を回復させた後、素子分離領域202を埋めるための酸化シリコン膜201を膜厚700nmで形成する。
【0066】
次に、図2(B)に示すようにCMP工程を行ない、不要な領域に形成された酸化シリコン膜201を研磨・エッチングする。CMP工程は、エッチングストップ膜となる窒化シリコン膜105が露出するまで行なう。なお、酸化シリコン膜201は窒化シリコン膜105に比べ研磨されやすいため、研磨終了後、酸化シリコン膜201は過剰にえぐれた形状となる。
【0067】
次に、図2(C)に示すように熱燐酸を用いて、窒化シリコン膜105を除去することで素子分離領域202が形成される。
【0068】
(CMOSトランジスタ、チャネル部分の形成)
図1及び図2で説明した、素子分離領域202を形成したSOI基板100を用いて、CMOSトランジスタのチャネル部分を形成する工程について、工程断面図である図3及び図4を用いて説明する。
【0069】
まず、STI技術を用いて素子分離領域202を形成した時に残っていた窒化酸化シリコン膜104を図3(A)に示すように緩衝弗酸を用いたエッチング液を用いて取り除く。
【0070】
次に、図3(B)に示すようにシリコン膜103にチャネルドープを行なうための保護膜として、犠牲酸化シリコン膜301を5nm程度熱酸化法を用いて形成する。
【0071】
次に、チャネルドープを行なう。図3(C)に示すように、フォトレジスト302を塗布した後、露光・現像処理を行ない、PMOSを形成する領域のみを開口して燐を加速エネルギー25KeV、ドーズ量2×1012cm-2でイオン注入する。なお、チャネルドープ条件は、ドーズ量を1.5×1012cm-2から4×1012cm-2の範囲で変えてもよい。
【0072】
次に、フォトレジスト302を硫酸を主としたエッチング液を用いて剥離する工程を行なうことで取り除き、その取り除いた表面にフォトレジスト401を塗布した後、露光・現像処理を行ない、図4(A)に示すようにNMOSを形成する領域のみを開口して弗化硼素を加速エネルギー30KeV、ドーズ量2×1012cm-2でイオン注入する。なお、チャネルドープ条件は、ドーズ量を1.5×1012cm-2から4×1012cm-2の範囲で変えてもよい。
【0073】
次に、図4(B)に示すように、フォトレジスト401を剥離工程を行なうことで取り除き、さらに犠牲酸化シリコン膜301を緩衝弗酸を用いて取り除く。
【0074】
次に、図4(C)に示すように、酸化シリコン膜402を熱酸化法を用いて5nm形成する。このようにチャネルドープを行なった後に酸化シリコン膜402を形成することで、PMOS領域403、NMOS領域404が形成される。
【0075】
(CMOSトランジスタ、LDDの形成)
図3及び図4で説明した、チャネル部分を形成したSOI基板100を用いて、CMOSトランジスタのLDD(Lightly Doped Drain)を形成する工程について、工程断面図である図5及び図6を用いて説明する。
【0076】
まず、図5(A)に示すように酸化シリコン膜402を形成したSOI基板100上に、ポリシリコン膜501をCVD(Chemical Vapor Deposition)法により200nmの膜厚で形成した後、フォトレジスト502を塗布する。
【0077】
次に、図5(B)に示すように、フォトレジスト502について露光・現像処理を行ない所望の領域のみを残したフォトレジスト502をマスクとして、PMOSゲート電極503、NMOSゲート電極504となる部分を残してポリシリコン膜501をエッチングして取り去る。
【0078】
次に、図5(C)に示すように、フォトレジスト502を剥離工程を行なうことで取り除いた後、フォトレジスト505をマスクとしてPMOS領域403の部分を開口して、硼素を加速エネルギー2KeV、ドーズ量として1×1014cm-2でイオン注入し、PMOSLDD506を形成する。なお、PMOSLDD506の形成条件は、ドーズ量を1×1013cm-2から1×1015cm-2の範囲で変えてもよい。
【0079】
次に、図6(A)に示すように、フォトレジスト505を剥離工程を行なうことで取り除いた後、フォトレジスト601をマスクとして、NMOS領域404の部分を開口して、燐を加速エネルギー6KeV、ドーズ量として1×1014cm-2でイオン注入し、NMOSLDD602を形成する。なお、NMOSLDD602の形成条件では、ドーズ量を1×1013cm-2から1×1015cm-2の範囲で変えてもよい。
【0080】
次に、図6(B)に示すように、フォトレジスト601を剥離工程を行なうことで取り除いた後、サイドウォール604、サイドウォール605(図6(C)参照)を作るための酸化シリコン膜603をCVD法により150nmの膜厚で形成する。
【0081】
次に、図6(C)に示すように、酸化シリコン膜603をドライエッチングし、サイドウォール604、サイドウォール605を形成する。
【0082】
(CMOSトランジスタ、ソース・ドレイン形成)
図5及び図6で説明した、サイドウォール604、サイドウォール605を形成したSOI基板100を用いて、CMOSトランジスタにソース・ドレインを形成する工程について、工程断面図である図7を用いて説明する。
【0083】
まず、図7(A)に示すように、フォトレジスト701をマスクとして、PMOS領域403に硼素のイオン注入を行ない、PMOSソース・ドレイン702を形成する。この工程では、硼素のイオン注入条件は、加速エネルギー4KeV、ドーズ量として2×1015cm-2を用いる。また、PMOSソース・ドレイン702の不純物注入と同時にPMOSゲート電極503にも不純物として硼素が導入される。なお、PMOSソース・ドレイン702の形成条件では、ドーズ量を1×1015cm-2から3×1015cm-2の範囲で変えてもよい。
【0084】
次に、図7(B)に示すように、フォトレジスト701を剥離工程を行なうことで取り除いた後、フォトレジスト703をマスクとして、NMOS領域404に燐のイオン注入を行ない、NMOSソース・ドレイン704を形成する。この工程では、燐のイオン注入条件は、加速エネルギー10KeV、ドーズ量として2×1015cm-2を用いる。また、NMOSソース・ドレイン704の不純物注入と同時にNMOSゲート電極504にも不純物として硼素が導入される。なお、NMOSソース・ドレイン704の形成条件では、ドーズ量を1×1015cm-2から3×1015cm-2の範囲で変えてもよい。
【0085】
次に、図7(C)に示すように、フォトレジスト703を、剥離工程を行なうことで取り除き、その後イオン注入した不純物の活性化のための熱処理を行なう。熱処理は例えば1000℃、10秒程度で行なう。
【0086】
(CMOSトランジスタ、チタンシリサイドの形成)
図7で説明した、PMOSソース・ドレイン702、NMOSソース・ドレイン704を形成したSOI基板100を用いて、CMOSトランジスタ上にチタンシリサイド膜を形成する工程について、工程断面図である図8、図9及び図10を用いて説明する。
【0087】
まず、図8(A)に示すように、熱酸化法により酸化シリコン膜801を形成する工程を行なう。酸化シリコン膜801の膜厚範囲は0.5nm以上2nm以下に設定される。酸化シリコン膜801の膜厚が0.5nm未満の場合、シリコンやチタンの拡散の制御が困難となり、シリサイド化反応の速度が過剰に速くなる。そのため拡散時間の制御でシリサイド化反応量を制御することが困難となるため好ましくない。
【0088】
また、酸化シリコン膜801の膜厚が2nmを超える場合、チタンシリサイドを形成するための温度を590℃よりも高い温度にしなければシリサイド化の反応が起きない。高い温度でシリサイド化を行なうと、アレニウス則に従い拡散係数は、わずかな温度差でも変動が大きくなり、同一の条件設定をして熱処理を行なっても、C49結晶相チタンシリサイド膜902(図9(B)参照)の膜厚が不安定になり、寄生抵抗のばらつきが発生するため好ましくない。さらに、酸化シリコン膜801の膜厚が2nmを超える膜厚とした場合、シリサイド化を行なった後、酸化シリコン膜801に起因する酸素がC49チタンシリサイド膜内部に多量に残るため、チタンシリサイド膜を形成した後、例えば900℃程度の高温熱処理を行ない、酸素の放出を促すことが必要となるが、高温での熱処理は、不純物の再拡散を起こすため、精密に不純物分布を制御する必要がある微細化したCMOSトランジスタの製造工程として好ましくない。本実施形態では、酸化シリコン膜801の膜厚を1.5nmにしている。
【0089】
次に、図8(B)に示すように、アルゴンのイオン注入を行ない、PMOSソース・ドレイン702、NMOSソース・ドレイン704、PMOSゲート電極503、及びNMOSゲート電極504の露出面側をアモルファス化し、アモルファス領域802を形成する工程を行なう。
【0090】
この際、アモルファス化する深さを、シリコン膜103の膜厚の10%から90%の範囲に入るようイオン注入を行なう。シリコン膜103の膜厚の10%未満をアモルファス化した場合、チタンシリサイドの形成が、特にチタンシリサイド化しにくいNMOSソース・ドレイン704及びNMOSゲート電極504で阻害されてしまうため、好ましくない。また、90%を超える深さまでアモルファス化させた場合、固相成長により単結晶に回復するための種結晶となる単結晶層が極めて薄くなってしまうため、アモルファス化した領域を熱処理により単結晶に戻すことが困難となり、好ましくない。
【0091】
本実施形態では、アモルファス化のためのアルゴンのイオン注入条件を加速エネルギー10KeV、ドーズ量3×1014cm-2で行なっている。このイオン注入条件を用いることで、50nmの膜厚を持つシリコン膜103の露出面側から深さ25nmのところまでアモルファス化することができる。
【0092】
なお、アモルファス化工程は、酸化シリコン膜801を形成する前に行なっても良い。この場合には、熱酸化法を用いて酸化シリコン膜801を形成するとアモルファス化した領域が再結晶化してしまうため、CVD法等を用いて、380℃以下の温度で酸化シリコン膜801を形成することが必要となる。
【0093】
次に、図8(C)に示すように、スパッタ法を用いてチタン膜803を形成する工程を行なう。チタン膜803の膜厚は、5nm〜20nmの範囲で成膜される。チタン膜803とシリコン膜103との間に酸化シリコン膜801を介して拡散させるため、C49結晶相チタンシリサイド膜902(図9(B)参照)形成のために厚いチタン膜803を使うことができる。そのため、薄いチタン膜803を用いた場合に発生する、チタン膜803内部の応力により、チタン膜803が島状に分離することで、チタン膜803が島状にシリサイド化する現象を防止することができる。本実施形態では、15nmの膜厚を有するチタン膜を形成している。
【0094】
次に、図9(A)に示すように、チタン膜803上に、酸素及び窒素の浸入を防ぐためのバリア膜として、窒化チタン膜901をスパッタ法により形成する工程を行なう。窒化チタン膜901の膜厚は、大気中の酸素及び窒素を遮断し、チタン膜803が大気から遮断される程度に設定する。なお、バリア膜の材質は窒化チタンに限定されることはなく、例えば窒化酸化チタン等を用いても良く、その他酸素及び窒素の浸入を防ぐ機能を有する膜を用いることができる。本実施形態では、バリア膜の材質として窒化チタンを用い、膜厚15nmで形成している。
【0095】
次に、図9(B)に示すように、560℃以上590℃以下の温度で、30秒以上180秒以下の時間低温熱処理し、C49結晶相チタンシリサイド膜902を形成する。560℃未満の温度では、PMOSソース・ドレイン702及びPMOSゲート電極503のチタンシリサイド化反応は進むが、NMOSソース・ドレイン704及びNMOSゲート電極504でのチタンシリサイド化反応は進まないためPMOS領域403、NMOS領域404でのチタンシリサイド化反応の速度が異なってしまい、CMOSトランジスタ形成用のプロセスとして好ましくない。
【0096】
また、590℃を超える温度では、シリコン膜103中にクラックが発生する場合があり、好ましくない。クラック発生の機構はまだ明確にされていないが、高温でチタンシリサイド膜を形成すると体積変化が急激に起こり、そのためシリコン膜中にクラックが入るものと推察している。
【0097】
また、30秒未満の熱処理では、特にシリサイド化が遅いNMOSソース・ドレイン704及びNMOSゲート電極504上でのシリサイド化が十分行なわれない可能性があり、好ましくない。また、180秒を超える時間の熱処理では、酸化シリコン膜801が完全に破壊され、シリサイド化の反応速度が急増し、チタンシリサイド化の反応が制御できなくなるため好ましくない。
【0098】
本実施形態では、570℃、120秒でC49結晶相チタンシリサイド膜902を形成している。また、この熱処理によりアモルファス領域802は速やかに再結晶化し、消失する。
【0099】
次に、図9(C)に示すように、アンモニア水と過酸化水素水の混合液を用いて窒化チタン膜901と未反応のチタン膜803を選択的に取り除くエッチング工程を行なう。素子分離領域202上、サイドウォール604上、サイドウォール605上ではC49結晶相チタンシリサイド膜902は形成されず、チタン膜803のみが残るが、チタン膜803はエッチング工程で全て取り除かれるため、自己整合的にC49結晶相チタンシリサイド膜902が形成される。
【0100】
次に、図10に示すように、相転移のための高温熱処理する工程を行なう。高温熱処理は750℃以上、850℃以下の温度で、10秒以上、120秒以下の時間で行なう。
相転移のための高温熱処理を750℃未満で行なうと、相転移が不十分にしか行なわれないため、電気抵抗値が十分に下がらず、好ましくない。また、850℃を超える温度では、C54結晶相チタンシリサイド膜1001が凝集により島状結晶に変化し、電気抵抗値が上がってしまい、好ましくない。また、10秒未満の高温熱処理では、相転移が不十分にしか行なわれないため、電気抵抗値が十分に下がらず、好ましくない。また、120秒を超える高温熱処理では、C54結晶相チタンシリサイド膜1001が凝集により島状結晶に変化し、電気抵抗値が上がってしまい、好ましくない。
【0101】
なお、750℃という低温で相転移を起こせるのは、酸化膜を通して、拡散律速でC49結晶相チタンシリサイド膜902を形成しているため、均質性の高いC49結晶相チタンシリサイド膜902が得られていることに起因していると推察している。
【0102】
本実施形態では、810℃、30秒で高温熱処理する工程を用いている。ここで、810℃の熱処理は、PMOSソース・ドレイン702、NMOSソース・ドレイン704等の不純物の再分布が無視できない温度での熱処理であることから、SOI基板100の温度を高速で昇降温させることが可能なランプアニール装置を用いて熱処理している。
【0103】
なお、この工程の後、SOI基板100上に層間絶縁膜や金属配線層を形成していくが、これは既知の製造工程を用いて行なわれるものであるため、説明は省略する。
【0104】
実施形態−2<シリサイド化するための金属としてコバルトを用いた場合の製造方法>
【0105】
次に、シリサイド化するための金属としてコバルトを用いた場合の製造方法について説明する。ただし、前述した(CMOSトランジスタ、ソース・ドレイン形成)工程までは、前述した実施形態−1と同一の工程であり、説明の重複を避けるため省略し、図1〜図7まで用いて説明した製造工程に続けて、コバルトを用いた場合の製造方法について説明する。
【0106】
(CMOSトランジスタ、コバルトシリサイドの形成)
図7までで説明した、PMOSソース・ドレイン702、NMOSソース・ドレイン704を形成したSOI基板100を用いて、CMOSトランジスタ上にコバルトシリサイド膜を形成する工程について、工程断面図である図11、図12及び図13を用いて説明する。
【0107】
まず、図11(A)に示すように、熱酸化法により酸化シリコン膜1101を形成する工程を行なう。酸化シリコン膜1101の膜厚範囲は0.5nm以上2nm以下に設定される。酸化シリコン膜1101の膜厚が0.5nm未満の場合、シリコン原子やコバルト原子の拡散の制御が困難となり、シリサイド化反応の速度が高くなる。そのため拡散時間の制御でシリサイド化反応量を制御することが困難となるため好ましくない。
【0108】
また、酸化シリコン膜1101の膜厚が2nmを超える場合、コバルトシリサイドを形成するための温度を600℃よりも高い温度にしなければシリサイド化の反応が起きない。高い温度でシリサイド化を行なうと、アレニウス則に従い拡散係数は、わずかな温度差でも変動が大きくなり、同一の条件設定をして熱処理を行なっても、コバルトシリサイドの膜厚が不安定になり、寄生抵抗のばらつきが発生するため好ましくない。さらに、シリサイド化を行なった後、酸化シリコン膜1101に起因する酸素がCo2Si膜1202(図12(B)参照)内部に多量に残るため、Co2Si膜1202を形成した後、例えば900℃程度の高温熱処理を行ない、酸素の放出を促すことが必要となるが、高温での熱処理は、不純物の再拡散を起こすため、精密に不純物分布を制御する必要がある微細化したCMOSトランジスタの製造工程として好ましくない。本実施形態では、酸化シリコン膜1101の膜厚を1.5nmにしている。
【0109】
次に、図11(B)に示すように、アルゴンのイオン注入を行ない、PMOSソース・ドレイン702、NMOSソース・ドレイン704、PMOSゲート電極503、及びNMOSゲート電極504に用いられているシリコンをアモルファス化し、アモルファス領域1102を形成する工程を行なう。
【0110】
この際、アモルファス化する深さが、シリコン膜103の膜厚の10%から90%の範囲に入るようイオン注入を行なう。シリコン膜103の膜厚の10%未満をアモルファス化した場合、シリコン膜103が結晶構造を持っているため、ほぼ全てのシリコン原子が束縛された状態となり、コバルトのシリサイド化反応が抑制されてしまうため、好ましくない。さらに、NMOSソース・ドレイン704及びNMOSゲート電極504のコバルトシリサイド化が阻害されてしまうため、好ましくない。また、90%を超える深さまでアモルファス化させた場合、固相成長により単結晶に回復するための種結晶となる単結晶層が極めて薄くなってしまうため、アモルファス化した領域を熱処理により単結晶に戻すことが困難となり、好ましくない。
【0111】
本実施形態では、アモルファス化のためのアルゴンのイオン注入条件を加速エネルギー10KeV、ドーズ量3×1014cm-2で行なっている。このイオン注入条件を用いることで、50nmの膜厚を持つシリコン膜103の露出面側から深さ25nmのところまでアモルファス化することができる。
【0112】
なお、アモルファス化工程は、酸化シリコン膜1101を形成する前に行なっても良い。この場合には、熱酸化法を用いて酸化シリコン膜1101を形成するとアモルファス化した領域が再結晶化してしまうため、CVD法等を用いて、380℃以下の温度で酸化シリコン膜1101を形成することが必要となる。また、このようにアモルファス化を行なうことで、より均質なCo2Si膜1202が得られるが、工程を簡略化したい場合、このアモルファス化は必須ではない。
【0113】
次に、図11(C)に示すように、スパッタ法を用いてコバルト膜1103を形成する工程を行なう。コバルト膜1103の膜厚は、5nm〜20nmの範囲で成膜される。酸化シリコン膜1101を介して拡散させるため、厚いコバルト膜1103を使うことができる。そのため、酸化シリコン膜1101上での濡れ性が悪いコバルト膜1103が島状にシリサイド化する現象を防止することができる。本実施形態では、15nmの膜厚を有するコバルト膜を形成している。
【0114】
次に、図12(A)に示すように、コバルト膜1103上に、酸素及び窒素の浸入を防ぐためのバリア膜として、スパッタ法を用いて窒化チタン膜1201を形成する工程を行なう。窒化チタン膜1201の膜厚は、大気中の酸素及び窒素を遮断し、コバルト膜1103が大気から遮断される程度に設定する。なお、バリア膜の材質は窒化チタンに限定されることはなく、例えば窒化酸化チタン等を用いても良く、その他酸素及び窒素の浸入を防ぐ機能を有する膜を用いることができる。本実施形態では、バリア膜の材質として窒化チタンを用い、膜厚15nmで形成している。
【0115】
次に、図12(B)に示すように、400℃以上600℃以下の温度で、30秒以上150秒以下の時間低温熱処理し、Co2Si膜1202を形成する。Co2Si膜1202形成に際して、400℃未満の温度では、酸化シリコン膜1101を介してコバルト原子やシリコン原子が拡散されないため、コバルトシリサイドが形成されないため好ましくない。また、600℃を超える温度では、シリコン膜103中にクラックが発生する場合があり、好ましくない。クラック発生の機構はまだ明確にされていないが、高温でCo2Si膜1202を形成すると、反応が速く進みすぎるため、体積変化が急激に起こり、そのためシリコン膜中にクラックが入るものと推測している。
【0116】
また、30秒未満の熱処理では、酸化シリコン膜1101を介してのコバルトシリサイド化が十分行なわれない場合があり、好ましくない。また、150秒を超える時間の熱処理では、酸化シリコン膜1101が完全に破壊され、コバルトシリサイド化の反応速度が急増し、コバルトシリサイド化の反応が制御できなくなるため好ましくない。
【0117】
本実施形態では、550℃、80秒でCo2Si膜1202を形成している。また、この熱処理によりアモルファス領域1102は速やかに再結晶化し、消失する。
【0118】
次に、図12(C)に示すように、硫酸と過酸化水素水の混合液、または塩酸と過酸化水素水の混合液を用いて窒化チタン膜1201と未反応のコバルト膜1103を選択的に取り除くエッチング工程を行なう。素子分離領域202、サイドウォール604、サイドウォール605上ではCo2Si膜1202は形成されず、コバルト膜1103のみが残るが、コバルト膜1103はエッチング工程で全て取り除かれるため、自己整合的にCo2Si膜1202が形成される。
【0119】
次に、図13に示すように、Co2Si膜1202をCoSi2膜1301に相転移させるための高温熱処理する工程を行なう。相転移のための高温熱処理を700℃未満で行なうと、相転移が不十分にしか行なわれないため、電気抵抗値が十分に下がらず、好ましくない。また、890℃を超える温度では、CoSi2膜1301が凝集により島状結晶に変化し、電気抵抗値が上がってしまい、好ましくない。また、10秒未満の高温熱処理では、相転移が不十分にしか行なわれないため、電気抵抗値が十分に下がらず、好ましくない。また、60秒を超える高温熱処理では、CoSi2膜1301が凝集により島状結晶に変化し、電気抵抗値が上がってしまい、好ましくない。
【0120】
本実施形態では、810℃、30秒で高温熱処理する工程を用いている。810℃の熱処理は、PMOSソース・ドレイン702、NMOSソース・ドレイン704等の不純物の再分布が無視できない温度での熱処理であるため、SOI基板100の温度を高速で昇降温させることが可能なランプアニール装置を用いて熱処理している。
【0121】
なお、この工程の後、SOI基板100上に層間絶縁膜や金属配線層が形成していくが、これは既知の製造工程を用いて行なわれるものであるため、ここでも説明は省略する。
【0122】
実施形態−3<シリサイド化するための金属としてニッケルを用いた場合の製造方法>
【0123】
次に、シリサイド化するための金属としてニッケルを用いた場合の製造方法について説明する。ただし、(CMOSトランジスタ、ソース・ドレイン形成)工程までは、前述した実施形態−1と同一の工程であり、説明の重複を避けるため省略し、図1〜図7までに説明した製造工程に続けてを用いた場合の製造方法について説明する。
【0124】
(CMOSトランジスタ、ニッケルシリサイドの形成)
図7までで説明した、PMOSソース・ドレイン702、NMOSソース・ドレイン704を形成したSOI基板100を用いて、CMOSトランジスタ上にコバルトシリサイド膜を形成する工程について、工程断面図である図14及び図15を用いて説明する。
【0125】
まず、図14(A)に示すように、熱酸化法により酸化シリコン膜1401を形成する工程を行なう。酸化シリコン膜1401の膜厚範囲は0.5nm以上2nm以下に設定される。酸化シリコン膜1401の膜厚が0.5nm未満の場合、シリコン原子やニッケル原子の拡散の制御が困難となり、シリサイド化反応の速度が高くなる。そのため拡散時間の制御でシリサイド化反応量を制御することが困難となるため好ましくない。
【0126】
また、酸化シリコン膜1401の膜厚が2nmを超える場合、コバルトシリサイドを形成するための温度を600℃よりも高い温度にしなければシリサイド化の反応が起きない。高い温度でシリサイド化を行なうと、アレニウス則に従い拡散係数は、わずかな温度差でも変動が大きくなり、同一の条件設定をして熱処理を行なっても、ニッケルシリサイド膜1502の膜厚が不安定になり、寄生抵抗のばらつきが発生するため好ましくない。さらに、シリサイド化を行なった後、酸化シリコン膜1401に起因する酸素がニッケルシリサイド膜1502(図15(B)参照)内部に多量に残るため、ニッケルシリサイド膜1502を形成した後、例えば900℃程度の高温熱処理を行ない、酸素の放出を促すことが必要となるが、高温での熱処理は、不純物の再拡散を起こすため、精密に不純物分布を制御する必要がある微細化したCMOSトランジスタの製造工程として好ましくない。ニッケルシリサイド膜1502は、熱処理に対して不安定であり、ニッケルシリサイド膜1502を形成した後の高温での熱処理は好ましくない。
【0127】
本実施形態では、酸化シリコン膜1401の膜厚を1.5nmにしている。このように酸化シリコン膜1401の膜厚を薄くすることでニッケルシリサイド膜1502中に残存する酸素は減少し、実用上障害のない程度の酸素残存量となる。
【0128】
次に、図14(B)に示すように、アルゴンのイオン注入を行ない、PMOSソース・ドレイン702、NMOSソース・ドレイン704、PMOSゲート電極503、及びNMOSゲート電極504の露出面側をアモルファス化し、アモルファス領域1402を形成する工程を行なう。
【0129】
この際、アモルファス化する深さを、シリコン膜103の膜厚の10%から90%の範囲に入るようイオン注入を行なう。シリコン膜103の膜厚の10%未満をアモルファス化した場合、シリコン膜103が結晶構造を持っているため、ほぼ全てのシリコン原子が束縛された状態となり、ニッケルのシリサイド化反応が抑制されてしまうため、好ましくない。また、90%を超える深さまでアモルファス化させた場合、固相成長により単結晶に回復するための種結晶となる単結晶層が極めて薄くなってしまうため、アモルファス化した領域を熱処理により単結晶に戻すことが困難となり、好ましくない。
【0130】
本実施形態では、アモルファス化のためのアルゴンのイオン注入条件を加速エネルギー10KeV、ドーズ量3×1014cm-2で行なっている。このイオン注入条件を用いることで、50nmの膜厚を持つシリコン膜103の露出面側から深さ25nmのところまでアモルファス化することができる。
【0131】
なお、アモルファス化工程は、酸化シリコン膜1401を形成する前に行なっても良い。この場合には、熱酸化法を用いて酸化シリコン膜1401を形成するとアモルファス化した領域が再結晶してしまうため、CVD法等を用いて、380℃以下の温度で酸化シリコン膜1101を形成することが必要となる。また、このようにアモルファス化を行なうことで、より均質なニッケルシリサイド膜1502が得られるが、工程を簡略化したい場合、このアモルファス化は必須ではない。
【0132】
次に、図14(C)に示すように、スパッタ法を用いてニッケル膜1403を形成する工程を行なう。ニッケル膜1403の膜厚は、5nm〜20nmの範囲で成膜される。酸化シリコン膜1401を介して拡散させるため、厚いニッケル膜1403を使うことができる。そのため、酸化シリコン膜1401上での濡れ性が悪いニッケル膜1403が島状にシリサイド化する現象を防止することができる。本実施形態では、15nmの膜厚を有するニッケル膜を形成している。
【0133】
次に、図15(A)に示すように、ニッケル膜1403上に、酸素及び窒素の浸入を防ぐためのバリア膜として、窒化チタン膜1501をスパッタ法により形成する工程を行なう。窒化チタン膜1501の膜厚は、大気中の酸素及び窒素を遮断し、ニッケル膜1403が大気から遮断される程度に設定する。なお、バリア膜の材質は窒化チタンに限定されることはなく、例えば窒化酸化チタン等を用いても良く、その他酸素及び窒素の浸入を防ぐ機能を有する膜を用いることができる。本実施形態では、バリア膜の材質として窒化チタンを用い、膜厚15nmで形成している。
【0134】
次に、図15(B)に示すように、400℃以上600℃以下の温度で、30秒以上150秒以下の時間で熱処理し、ニッケルシリサイド膜1502を形成する。400℃未満の温度では、酸化シリコン膜1401を介してニッケル原子やシリコン原子が拡散されないため、ニッケルシリサイド膜1502が形成されないため好ましくない。また、600℃を超える温度では、シリコン膜103中にクラックが発生する場合があり、好ましくない。クラック発生の機構はまだ明確にされていないが、高温でニッケルシリサイド膜1502を形成すると、反応が速く進みすぎるため、体積変化が急激に起こり、そのためシリコン膜中にクラックが入るものと推測している。
【0135】
また、30秒未満の熱処理では、ニッケルシリサイド化が十分行なわれない可能性があり、好ましくない。また、150秒を超える時間の熱処理では、酸化シリコン膜1101が完全に破壊され、ニッケルシリサイド化の反応速度が急増し、ニッケルシリサイド化の反応が制御できなくなるため好ましくない。
【0136】
本実施形態では、550℃、80秒でニッケルシリサイド膜1502を形成している。また、この熱処理によりアモルファス領域1402は速やかに再結晶化し、消失する。
【0137】
次に、図12(C)に示すように、硫酸と過酸化水素水の混合液、または塩酸と過酸化水素水の混合液を用いて窒化チタン膜1201と未反応のニッケル膜1403を選択的に取り除くエッチング工程を行なう。素子分離領域202、サイドウォール604、サイドウォール605上ではニッケルシリサイド膜1502は形成されず、ニッケル膜1403のみが残るが、ニッケル膜1403はエッチング工程で全て取り除かれるため、自己整合的にニッケルシリサイド膜1502が形成される。
【0138】
なお、ニッケルシリサイド膜1502は、C49結晶相チタンシリサイド膜902やCo2Si膜1202と異なり、ニッケルシリサイド化した時点で十分低い電気抵抗値を持っていることと、高温熱処理に対して耐性を持っていないため、相転移のための熱処理は行なわない。
【0139】
なお、この工程の後、SOI基板100上に層間絶縁膜や金属配線層が形成していくが、これは既知の製造工程を用いて行なわれるものであるため、ここでも説明は省略する。
【0140】
次に、本実施形態の効果について記述する。
【0141】
(1)金属膜として、チタン膜803、コバルト膜1103、またはニッケル膜1403を用い、金属膜とシリコン膜103との間に0.5nm以上2nm以下という薄い酸化シリコン膜を用いているため、金属膜とシリコン膜とを低温熱処理して金属シリサイド化した後に、金属シリサイド中に残留する酸素の量が少なくなる。そのため、後工程で酸素を追い出すための、例えば900℃という高温での熱処理を行なうことなく、低抵抗の電極となる金属シリサイドが得られる。
【0142】
また、酸素を追い出すための高温熱処理が不要となるため、急峻な不純物分布を持つ、微細化された半導体素子の不純物分布に影響を与えることがない。
【0143】
また、金属膜とシリコン膜103との間にある0.5nm以上2nm以下という薄い酸化シリコン膜を、金属やシリコンの拡散速度を制御する膜として介在させることで、シリサイド化反応の速度を、酸化シリコン膜中の金属やシリコンの拡散速度で律速させることができる。また、酸化シリコン膜の膜厚が薄いことから、例えば570℃程度の低温でシリサイド化反応を起こすことができる。そのため、アレニウス則より、拡散速度の温度依存性が小さい状態でシリサイド化反応を進められるため、シリサイド化反応速度の揺らぎが小さい条件でシリサイド化反応を行なわせることができる。
【0144】
(2)金属膜として、チタン膜803、コバルト膜1103、またはニッケル膜1403を用い、金属膜の厚さを5nm〜20nmとしたことで、金属シリサイドを形成する際、金属膜にかかる応力により金属膜が島状に分離し、そのため金属シリサイド膜が島状に形成されて、電気抵抗が上昇してしまう現象を回避することができる。
【0145】
(3)PMOSソース・ドレイン702、NMOSソース・ドレイン704、PMOSゲート電極503、及びNMOSゲート電極504をCMOS形成面側からアモルファス化するためにアルゴンをイオン注入している。気体であるアルゴンは熱処理と同時に速やかにSOI基板100上から飛散する。そのため、SOI基板100上のシリコン膜103をアモルファス化する以外の影響を回避でき、シリコン膜103を汚染することなくアモルファス化が行なえる。
【0146】
(4)金属膜として、チタン膜803を用い、バリア膜として、窒化チタン膜を用いる場合、大気中の酸素や、窒素による金属膜の酸化、及び窒化は抑制される。さらに、C49結晶相チタンシリサイド膜902を残し、未反応のチタン膜803を除去するためのアンモニア水と過酸化水素水の混合液に窒化チタン膜は可溶性を持っているため、ウェットエッチングにより未反応のチタン膜803と共に窒化チタン膜は除去されるため、特別な工程を加えることなく、選択的にC49結晶相チタンシリサイド膜902を形成することができる。
【0147】
また、金属膜としてコバルト膜1103、またはニッケル膜1403を用い、バリア膜として、窒化チタン膜を用いる場合、大気中の酸素や、窒素による金属膜の酸化、及び窒化は抑制される。金属シリサイドを残し、未反応の金属膜を除去するための硫酸と過酸化水素水の混合液、または塩酸と過酸化水素水の混合液に窒化チタン膜は可溶性を持っているため、ウェットエッチングにより未反応の金属膜と共に窒化チタン膜は除去されるため、特別な工程を加えることなく、選択的に金属シリサイド膜を形成することができる。
【0148】
(5)金属膜としてチタン膜803を用いた場合、560℃以上590℃以下の低温熱処理でチタン膜803とシリコン膜103とを反応させてC49結晶相チタンシリサイド膜902を形成することができる。560℃以上の温度で低温熱処理を行なうことで、特にチタンシリサイド化しにくいNMOSソース・ドレイン704でもPMOSソース・ドレイン702でのシリサイド化速度と同程度の速度でチタン膜803のシリサイド化反応を行なわせることができる。
【0149】
また、590℃以下の温度で低温熱処理を行なうことで、シリコン膜103にクラックが入る現象を回避することができる。クラックが入る原因については明確な理由付けはなされていないが、600℃以上の温度でシリサイドを形成する場合に不規則に発生しており、シリサイド化に伴う体積変化に起因して発生しているものと推察している。
【0150】
また、低温熱処理時間を30秒以上180秒以下とすることで、電気的な絶縁物である酸化シリコン膜801が弱くなり、C49結晶相チタンシリサイド膜902とシリコン膜103との導通がとれる。また、酸化シリコン膜801由来のバリアにより反応速度が制御されている状態で、C49結晶相チタンシリサイド膜902の形成が行なえる。
【0151】
また、C49結晶相チタンシリサイド膜902に対して相転移のための高温熱処理を750℃以上850℃以下の温度、10秒以上120秒以下の時間で行なうため、チタンシリサイド膜の結晶構造を、100μΩ・cm程度の高い電気抵抗を有するC49結晶相から15μΩ・cm程度の低い電気抵抗を有するC54結晶相チタンシリサイド膜1001に相転移させることができる。また、C54結晶相チタンシリサイド膜1001の凝集により島状結晶に変化し、抵抗値が上がっていく現象を回避することができる。
【0152】
(6)金属膜としてチタン膜803を用いた場合、560℃以上590℃以下の温度で、30秒以上180秒以下の時間低温熱処理を行なうことでチタン膜803とシリコン膜103とを反応させてC49結晶相チタンシリサイド膜902を形成することができる。
【0153】
560℃以上の温度で低温熱処理を行なうことで、特にチタンシリサイド化しにくいNMOSソース・ドレイン704でもPMOSソース・ドレイン702でのシリサイド化速度と同程度の速度でチタン膜803のシリサイド化反応を行なわせることができる。また金属膜にかかる応力により金属膜が島状に分離してしまう現象を回避できる。さらに、590℃以下の温度で低温熱処理によるシリサイド化反応を行なうことで、シリコン膜103にクラックが入る現象を回避することができる。クラックが入る原因については明確な理由付けはなされていないが、600℃以上の温度でシリサイドを形成する場合に不規則に発生しており、シリサイド化に伴う体積変化に起因して発生しているものと推察している。
【0154】
また、低温熱処理時間を30秒以上とすることで、電気的な絶縁物である酸化シリコン膜801が弱くなり、C49結晶相チタンシリサイド膜902とシリコン膜103との導通がとれる。また、低温熱処理時間を180秒以下とすることで酸化シリコン膜801由来のバリアにより反応速度が制御されている状態で、C49結晶相チタンシリサイド膜902の形成が行なえる。
【0155】
また、C49結晶相チタンシリサイド膜902に対して相転移のための高温熱処理を750℃以上850℃以下の温度、10秒以上120秒以下の時間で行なうため、チタンシリサイド膜の結晶構造を、100μΩ・cm程度の高い電気抵抗を有するC49結晶相から15μΩ・cm程度の低い電気抵抗を有するC54結晶相チタンシリサイド膜1001に相転移させることができる。また、C54結晶相チタンシリサイド膜1001の凝集により島状結晶に変化し、抵抗値が上がっていく現象を回避することができる。
【0156】
(7)金属膜としてコバルト膜1103を用いた場合、低温熱処理を400℃以上600℃以下の温度で、30秒以上150秒以下の時間で行ない、反応させてCo2Si膜1202を形成することができる。400℃以上の温度で低温熱処理を行なうことで、特にコバルトシリサイド化しにくいNMOSソース・ドレイン704でもPMOSソース・ドレイン702でのシリサイド化速度と同程度の速度でコバルト膜1103のシリサイド化反応を行なわせることができる。
【0157】
また、600℃以下の温度で低温熱処理を行なうことで、シリコン膜103にクラックが入る現象を回避することができる。クラックが入る原因については明確な理由付けはなされていないが、600℃を超える温度でコバルトシリサイドを形成する場合に不規則に発生しており、コバルトシリサイド化に伴う体積変化に起因して発生しているものと推察している。
【0158】
また、低温熱処理時間を30秒以上180秒以下とすることで、電気的な絶縁物である酸化シリコン膜1101が弱くなり、Co2Si膜1202とシリコン膜103との導通がとれる。また、酸化シリコン膜1101由来のバリアにより反応速度が制御されている状態で、Co2Si膜1202の形成が行なえる。
【0159】
また、Co2Si膜1202に対して組成変化のための高温熱処理を700℃以上850℃以下の温度、10秒以上120秒以下の時間で行なうため、Co2Si膜1202をCoSi2膜1301に組成変換し、低抵抗化することができる。
【0160】
(8)金属膜としてニッケル膜1403を用いた場合、低温熱処理を400℃以上600℃以下の温度で、30秒以上150秒以下の時間で行ない、反応させてニッケルシリサイド膜1502を形成することができる。400℃以上の温度で低温熱処理を行なうことで、特にコバルトシリサイド化しにくいNMOSソース・ドレイン704でもPMOSソース・ドレイン702でのシリサイド化速度と同程度の速度でニッケル膜1403のシリサイド化反応を行なわせることができる。
【0161】
また、600℃以下の温度で低温熱処理を行なうことで、シリコン膜103にクラックが入る現象を回避することができる。クラックが入る原因については明確な理由付けはなされていないが、610℃以上の温度でニッケルシリサイドを形成する場合にクラックは不規則に発生しており、ニッケルシリサイド化に伴う体積変化に起因して発生しているものと推察している。
【0162】
また、低温熱処理時間を30秒以上180秒以下とすることで、電気的な絶縁物である酸化シリコン膜1401が弱くなり、ニッケルシリサイド膜1502とシリコン膜103との導通がとれる。また、酸化シリコン膜1401由来のバリアにより反応速度が制御されている状態で、ニッケルシリサイド膜1502の形成が行なえる。
【0163】
(変形例1)本実施形態では素子分離にSTI技術を用いた例について説明したが、これは他の素子分離法、例えばLOCOS(LOCal Oxodation of Silicon)技術などを用いても良い。
【0164】
(変形例2)本実施形態では、チタン膜803を形成する前の、シリコン膜103及びPMOSゲート電極503、NMOSゲート電極504領域のアモルファス化にアルゴンを用いたが、これはアルゴンに限定されることはなく、ゲルマニウムやシリコンを用いても良い。また、工程を簡略化する場合には、このアモルファス化を省略しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】素子分離領域を形成する工程を説明するための工程断面図。
【図2】素子分離領域を形成する工程を説明するための工程断面図。
【図3】CMOSトランジスタのチャネル部分を形成する工程を説明するための工程断面図。
【図4】CMOSトランジスタのチャネル部分を形成する工程を説明するための工程断面図。
【図5】CMOSトランジスタのLDDを形成する工程を説明するための工程断面図。
【図6】CMOSトランジスタのLDDを形成する工程を説明するための工程断面図。
【図7】CMOSトランジスタのソース・ドレインを形成する工程を説明するための工程断面図。
【図8】CMOSトランジスタ上にチタンシリサイド膜を形成する工程を説明するための工程断面図。
【図9】CMOSトランジスタ上にチタンシリサイド膜を形成する工程を説明するための工程断面図。
【図10】CMOSトランジスタ上にチタンシリサイド膜を形成する工程を説明するための工程断面図。
【図11】CMOSトランジスタ上にコバルトシリサイド膜を形成する工程を説明するための工程断面図。
【図12】CMOSトランジスタ上にコバルトシリサイド膜を形成する工程を説明するための工程断面図。
【図13】CMOSトランジスタ上にコバルトシリサイド膜を形成する工程を説明するための工程断面図。
【図14】CMOSトランジスタ上にニッケルシリサイド膜を形成する工程を説明するための工程断面図。
【図15】CMOSトランジスタ上にニッケルシリサイド膜を形成する工程を説明するための工程断面図。
【符号の説明】
【0166】
100…SOI基板、101…シリコン基体、102…絶縁体としてのBOX膜、103…シリコン膜、104…窒化酸化シリコン膜、105…窒化シリコン膜、106…フォトレジスト、107…酸化シリコン膜、108…溝部、201…酸化シリコン膜、202…素子分離領域、301…犠牲酸化シリコン膜、302…フォトレジスト、401…フォトレジスト、402…酸化シリコン膜、403…CMOSトランジスタを構成するPMOS領域、404…CMOSトランジスタを構成するNMOS領域、501…ポリシリコン膜、502…フォトレジスト、503…PMOSゲート電極、504…NMOSゲート電極、505…フォトレジスト、506…PMOSLDD、601…フォトレジスト、602…NMOSLDD、603…酸化シリコン膜、604…サイドウォール、605…サイドウォール、701…フォトレジスト、702…PMOSソース・ドレイン、703…フォトレジスト、704…NMOSソース・ドレイン、801…酸化シリコン膜、802…アモルファス領域、803…金属膜としてのチタン膜、901…バリア膜としての窒化チタン膜、902…C49結晶相チタンシリサイド膜、1001…電極としてのC54結晶相チタンシリサイド膜、1101…酸化シリコン膜、1102…アモルファス領域、1103…金属膜としてのコバルト膜、1201…バリア膜としての窒化チタン膜、1202…Co2Si膜、1301…電極としてのCoSi2膜、1401…酸化シリコン膜、1402…アモルファス領域、1403…金属膜としてのニッケル膜、1501…バリア膜としての窒化チタン膜、1502…電極としてのニッケルシリサイド膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体上に単結晶のシリコン膜を有するSOI(Silicon On Insulator)基板上に、CMOSトランジスタを形成した後、前記CMOSトランジスタに電極となる金属シリサイド膜を形成する半導体素子の製造方法であって、
前記シリコン膜上に0.5nm以上2nm以下の膜厚を有する酸化シリコン膜を形成する工程と、
前記シリコン膜と反応し前記金属シリサイドを形成する金属膜を、前記酸化シリコン膜上に形成する工程と、
前記金属膜上に、酸素及び窒素の浸入を防ぐためのバリア膜を形成する工程と、
前記金属シリサイド膜を形成するための低温熱処理を行なう工程と、
前記金属シリサイド膜を残して、前記バリア膜とシリサイド化していない未反応の前記金属膜とを選択的に除去するエッチング工程を有することを特徴とする半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記金属膜は、厚さが5nm以上20nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項3】
前記酸化シリコン膜を形成する工程の前、又は後に、前記CMOSトランジスタの形成面側からイオン注入し、前記シリコン膜を、前記シリコン膜の膜厚の10%以上、90%以下の深さまでアモルファス化する工程を行なうことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項4】
前記イオン注入に用いられるイオン種は、アルゴン、ゲルマニウム又はシリコンであることを特徴とする請求項3に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記バリア膜は、窒化チタン膜、又は窒化酸化チタン膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記金属膜の材質はチタンであり、前記低温熱処理を行なう工程は前記低温熱処理を560℃以上590℃以下の温度で、30秒以上180秒以下の時間で行ない、前記エッチング工程は、アンモニア水と過酸化水素水の混合液を用いて行ない、前記金属シリサイド膜の結晶構造を相転移させ比抵抗を下げるため、前記エッチング工程終了後に750℃以上850℃以下の温度で、10秒以上120秒以下の時間で高温熱処理する工程を更に有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項7】
前記金属膜の材質はコバルトであり、前記低温熱処理を行なう工程は前記低温熱処理を400℃以上600℃以下の温度で、30秒以上150秒以下の時間で行ない、前記エッチング工程は、硫酸と過酸化水素水の混合液、または塩酸と過酸化水素の混合液を用いて行ない、前記金属シリサイド膜の組成をCo2SiからCoSi2に組成変化させて比抵抗を下げるために、前記エッチング工程終了後に700℃以上890℃以下の温度で、10秒以上120秒以下の時間で高温熱処理する工程を更に有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項8】
前記金属膜の材質はニッケルであり、前記低温熱処理を行なう工程は前記低温熱処理を400℃以上600℃以下の温度で、30秒以上150秒以下の時間で行ない、前記エッチング工程では、硫酸と過酸化水素水の混合液、または塩酸と過酸化水素の混合液を用いて行なうことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体素子の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2006−147828(P2006−147828A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335591(P2004−335591)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】