説明

半導体装置の製造方法、基板処理方法および基板処理装置

【課題】 高温領域において、膜中の不純物濃度が極めて低く、膜厚均一性が良好な絶縁膜を形成する。
【解決手段】 基板を収容した処理容器内に原料ガスを供給し排気して所定元素含有層を形成する工程と、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して所定元素含有層を酸化層に変化させる工程とを、その間に処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して基板上に酸化膜を形成する工程を有し、所定元素含有層を形成する工程では、原料ガスを基板の側方に設けられたノズルを介して基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを基板に向けて供給することで、基板表面と平行方向に流れる原料ガスの流速を、処理容器内をパージする工程において基板表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板上に薄膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法及び基板処理方法、並びにその工程で好適に用いられる基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラッシュメモリは、絶縁膜で囲まれた電子蓄積領域(浮遊ゲート)を備え、薄いトンネル酸化膜を介した電子のやり取りによって、情報の書き込みを行うと同時に、この薄い酸化膜の絶縁性を利用し長時間にわたり電子を保持し記憶を保つのが動作原理である。フラッシュメモリに記憶された情報は、外部からの動作がなされなくても10年もの長時間保持する必要があり、浮遊ゲートと呼ばれる電荷蓄積領域を取り囲む絶縁膜に対する要求が厳しくなっている。メモリセル動作を制御するための制御ゲートとの間に設けられた層間絶縁膜には一般にONOと呼ばれる酸化膜(SiO)/窒化膜(Si)/酸化膜(SiO)の積層構造が用いられ、低リーク電流特性を持つことが期待されている。
【0003】
従来、ONO積層構造におけるSiO絶縁膜形成は、例えばSiHClガスとNOガスとを用いてCVD(Chemical Vapor Deposition)法により800℃付近の高温で行われてきたが(例えば特許文献1参照)、デバイスの更なる微細化、高集積化に伴い、ステップカバレッジ特性の悪化や膜厚のパターン粗密差依存性といった問題が顕在化しており、これらの改善が望まれている。
【0004】
また、フラッシュメモリに用いられる成膜方法は、その生産性も改善することが望まれており、SiHClガスとNOガスとを用いるCVD法による成膜法に変わる、生産性の高い手法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−85333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SiO絶縁膜を形成する場合、膜を形成する際に使用する原料中に含まれるシリコン(Si)及び酸素(O)以外の原子は、形成温度の低温化に伴い、膜中に不純物として残る傾向にある。そのため、有機原料ガスを用いて低温でSiO絶縁膜を形成した場合、有機原料ガス分子に含まれる炭素(C)、水素(H)、窒素(N)などがSiO絶縁膜中に不純物として残ってしまう問題があった。また、無機原料ガスを用いた場合においても、原料に含まれる水素(H)、塩素(Cl)などが不純物として膜中に残ってしまう問題があった。これらの不純物は、形成した絶縁膜の膜質を著しく劣化させるため、例えば絶縁膜の形成温度を高温化するなどして膜質を改善する必要があった。しかしながら、高温化に伴い、絶縁膜の膜厚均一性の悪化が顕著になり、生産に適用することが難しかった。
【0007】
従って本発明の目的は、上記課題を解決し、高温領域において、膜中の不純物濃度が極めて低く、膜厚均一性が良好な絶縁膜を形成することができる半導体装置の製造方法、基板処理方法および基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、
基板を収容した処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して、前記所定元素含有層を酸化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記基板上に所定膜厚の酸化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする半導体装置の製造方法が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、
基板を収容した処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して、前記所定元素含有層を酸化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記基板上に所定膜厚の酸化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする基板処理方法が提供される。
【0010】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内を加熱するヒータと、
前記処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理容器内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
前記処理容器内の圧力を調整する圧力調整部と、
基板を収容した前記処理容器内に前記原料ガスを供給し排気して、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して、前記所定元素含有層を酸化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記基板上に所定膜厚の酸化膜を形成する工程を行い、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくするように、
前記原料ガス供給系、前記酸素含有ガス供給系、前記水素含有ガス供給系、前記不活性ガス供給系、前記排気系、前記圧力調整部および前記ヒータを制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高温領域において、膜中の不純物濃度が極めて低く、膜厚均一性が良好な絶縁膜を形成することができる半導体装置の製造方法、基板処理方法および基板処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面で示す図である。
【図2】本実施形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を図1のA−A線断面図で示す図である。
【図3】本実施形態における成膜フローを示す図である。
【図4】本実施形態の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミングを示す図であり、堆積・吸着阻害ガスとして不活性ガスを用いる例を示している。
【図5】本実施形態の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミングを示す図であり、堆積・吸着阻害ガスとして水素含有ガスを用いる例を示している。
【図6】本実施形態の成膜シーケンスにおいて堆積・吸着阻害ガスを用いない場合のウエハ面内膜厚均一性とウエハ温度との関係を表す図である。
【図7】堆積・吸着阻害ガス(N)の流量の違いによるシリコン酸化膜の膜厚のウエハ中心からの距離への依存性を示す図である。
【図8】シリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性の堆積・吸着阻害ガス(N)の供給流量への依存性を示す図である。
【図9】酸化処理において用いるガスの違いによるシリコン酸化膜の膜厚とウエハ温度との関係を表す図である。
【図10】シリコンの堆積またはHCDガスの吸着の様子を模式的に示す図であり、(a)はHCDガスの流速が小さい場合、(b)はHCDガスの流速が大きい場合をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明者等は、高温領域における絶縁膜の形成方法について鋭意研究を行った。その結果、大気圧未満の圧力に設定されると共に加熱された状態の処理容器内に、基板を収容した状態で、所定元素を含む原料ガスを供給し排気することで基板上に所定元素含有層を形成する工程と、大気圧未満の圧力に設定されると共に加熱された状態の処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気することで所定元素含有層を酸化層に変化させる工程とを、その間に処理容器内に不活性ガスを供給し排気して処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返すことで、基板上に所定膜厚の酸化膜を形成する場合に、所定元素含有層を形成する工程において、原料ガスを基板の側方に設けられたノズルを介して基板に向けて供給し、その際、そのノズルと同じノズルを介して、原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを基板に向けて供給することで、基板の表面と平行方向に流れる原料ガスの流速を、パージの際に基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくすることで、高温領域において、膜中の不純物濃度が極めて低く、膜厚均一性が良好な絶縁膜を形成することが可能であるとの知見を得た。
【0014】
所定元素含有層を形成する工程は、CVD反応が生じる条件下で行う。このとき基板上に1原子層未満から数原子層程度の所定元素含有層としての所定元素層を形成する。所定元素含有層は所定元素を含む原料ガス(以下、単に原料ガスともいう)の吸着層であってもよい。ここで、所定元素層とは、所定元素により構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできる薄膜をも含む総称である。なお、所定元素により構成される連続的な層を薄膜という場合もある。また、原料ガスの吸着層とは原料ガスのガス分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。なお、1原子層未満の層とは
不連続に形成される原子層のことを意味している。原料ガスが自己分解する条件下では基板上に所定元素が堆積することで所定元素層が形成される。原料ガスが自己分解しない条件下では、基板上に原料ガスが吸着することで原料ガスの吸着層が形成される。なお、基板上に原料ガスの吸着層を形成するよりも、所定元素層を形成する方が、成膜レートを高くすることができ好ましい。
【0015】
また、所定元素含有層を酸化層に変化させる工程では、大気圧未満の圧力雰囲気下にある処理容器内で酸素含有ガスと水素含有ガスとを反応させて酸素を含む酸化種を生成し、この酸化種により所定元素含有層を酸化して酸化層に変化させる(改質する)。この酸化処理によれば、酸素含有ガスを単独で供給する場合に比べ、酸化力を大幅に向上させることができる。すなわち、減圧雰囲気下において酸素含有ガスに水素含有ガスを添加することで酸素含有ガス単独供給の場合に比べ大幅な酸化力向上効果が得られる。所定元素含有層を酸化層に変化させる工程はノンプラズマの減圧雰囲気下で行うことができる。なお、所定元素含有層を酸化層に変化させる工程では、酸素含有ガスと水素含有ガスとのうち少なくとも何れか一方または両方をプラズマで活性化させて用いることもできる。
【0016】
そして、所定元素含有層を形成する工程において、原料ガスを基板の側方に設けられたノズルを介して基板に向けて供給し、その際、そのノズルと同じノズルを介して、原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを基板に向けて供給することで、基板の表面と平行方向に流れる原料ガスの流速を、パージの際に基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする。このように、基板の表面と平行方向に流れる原料ガスの流速を高めることで、基板上への所定元素含有層の堆積または吸着を阻害(抑制)させつつ基板上に所定元素含有層を形成することができるようになり、所定元素含有層の堆積または吸着中心を基板のエッジ側からセンタよりに移動させることが可能となる。また、所定元素含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さくすることができる。その結果として、高温領域において、膜厚均一性が良好な絶縁膜を形成することが可能となることが判明した。
【0017】
本発明は、発明者等が得たかかる知見に基づいてなされたものである。以下に、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面で示している。また、図2は本実施の形態で好適に用いられる縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を図1のA−A線断面図で示している。なお、本発明は、本実施形態にかかる基板処理装置に限らず、枚葉式、Hot Wall型、Cold Wall型の処理炉を有する基板処理装置にも好適に適用できる。
【0019】
図1に示されているように、処理炉202は加熱手段(加熱機構)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。なお、ヒータ207は、後述するようにガスを熱で活性化させる活性化機構としても機能する。
【0020】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成する反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の筒中空部には処理室201が形成されており、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容可能に構成されている。
【0021】
処理室201内における反応管203の下部には、第1ガス導入部としての第1ノズル
233aと、第2ガス導入部としての第2ノズル233bとが、反応管203の下部側壁を貫通するように設けられている。第1ノズル233a、第2ノズル233bには、第1ガス供給管232a、第2ガス供給管232bが、それぞれ接続されている。第2ガス供給管232bには第3ガス供給管232cが接続されている。このように、反応管203には2本のノズル233a、233bと、3本のガス供給管232a、232b、232cが設けられており、処理室201内へ複数種類、ここでは3種類のガスを供給することができるように構成されている。
【0022】
第1ガス供給管232aには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a、及び開閉弁であるバルブ243aが設けられている。また、第1ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、第1不活性ガス供給管232dが接続されている。この第1不活性ガス供給管232dには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241d、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。また、第1ガス供給管232aの先端部には、上述の第1ノズル233aが接続されている。第1ノズル233aは、反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第1ノズル233aは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方に設けられている。第1ノズル233aはL字型のロングノズルとして構成されている。第1ノズル233aの側面にはガスを供給するガス供給孔248aが設けられている。ガス供給孔248aは反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。このガス供給孔248aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0023】
主に、第1ガス供給管232a、マスフローコントローラ241a、バルブ243aにより第1ガス供給系が構成される。なお、第1ノズル233aを第1ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第1不活性ガス供給管232d、マスフローコントローラ241d、バルブ243dにより、第1不活性ガス供給系が構成される。第1不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
【0024】
第2ガス供給管232bには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241b、及び開閉弁であるバルブ243bが設けられている。また、第2ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、第2不活性ガス供給管232eが接続されている。この第2不活性ガス供給管232eには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241e、及び開閉弁であるバルブ243eが設けられている。また、第2ガス供給管232bの先端部には、上述の第2ノズル233bが接続されている。第2ノズル233bは、ガス分散空間であるバッファ室237内に設けられている。
【0025】
バッファ室237は反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間に、反応管203内壁の下部より上部にわたる部分に、ウエハ200の積載方向に沿って設けられている。すなわち、バッファ室237は、ウエハ配列領域の側方に設けられている。バッファ室237のウエハ200と隣接する壁の端部にはガスを供給するガス供給孔248cが設けられている。ガス供給孔248cは反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。このガス供給孔248cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0026】
第2ノズル233bは、バッファ室237のガス供給孔248cが設けられた端部と反
対側の端部に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるように設けられている。すなわち、第2ノズル233bは、ウエハ配列領域の側方に設けられている。第2ノズル233bはL字型のロングノズルとして構成されている。第2ノズル233bの側面にはガスを供給するガス供給孔248bが設けられている。ガス供給孔248bはバッファ室237の中心を向くように開口している。このガス供給孔248bは、バッファ室237のガス供給孔248cと同様に、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。この複数のガス供給孔248bのそれぞれの開口面積は、バッファ室237内と処理室201内の差圧が小さい場合には、上流側(下部)から下流側(上部)まで、それぞれ同一の開口面積で同一の開口ピッチとするとよいが、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かって、それぞれ開口面積を大きくするか、開口ピッチを小さくするとよい。
【0027】
本実施形態においては、第2ノズル233bのガス供給孔248bのそれぞれの開口面積や開口ピッチを、上流側から下流側にかけて上述のように調節することで、まず、ガス供給孔248bのそれぞれから、流速の差はあるものの、流量がほぼ同量であるガスを噴出させる。そしてこのガス供給孔248bのそれぞれから噴出するガスを、一旦、バッファ室237内に導入し、バッファ室237内においてガスの流速差の均一化を行うこととしている。すなわち、第2ノズル233bのガス供給孔248bのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスはバッファ室237内で各ガスの粒子速度が緩和された後、バッファ室237のガス供給孔248cより処理室201内に噴出する。これにより、第2ノズル233bのガス供給孔248bのそれぞれよりバッファ室237内に噴出したガスは、バッファ室237のガス供給孔248cのそれぞれより処理室201内に噴出する際には、均一な流量と流速とを有するガスとなる。
【0028】
主に、第2ガス供給管232b、マスフローコントローラ241b、バルブ243bにより第2ガス供給系が構成される。なお、第2ノズル233bおよびバッファ室237を第2ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第2不活性ガス供給管232e、マスフローコントローラ241e、バルブ243eにより第2不活性ガス供給系が構成される。第2不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
【0029】
第3ガス供給管232cには上流方向から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241c、及び開閉弁であるバルブ243cが設けられている。また、第3ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、第3不活性ガス供給管232fが接続されている。この第3不活性ガス供給管232fには、上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ241f、及び開閉弁であるバルブ243fが設けられている。また、第3ガス供給管232cの先端部は、第2ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側に接続されている。
【0030】
主に、第3ガス供給管232c、マスフローコントローラ241c、バルブ243cにより第3ガス供給系が構成される。なお、第2ガス供給管232bの第3ガス供給管232cとの接続部よりも下流側、第2ノズル233bおよびバッファ室237を第3ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、第3不活性ガス供給管232f、マスフローコントローラ241f、バルブ243fにより第3不活性ガス供給系が構成される。第3不活性ガス供給系はパージガス供給系としても機能する。
【0031】
第1ガス供給管232aからは、所定元素を含む原料ガス、すなわち、所定元素としてのシリコン(Si)を含む原料ガス(シリコン含有ガス)として、例えばヘキサクロロジシラン(SiCl、略称HCD)ガスが、マスフローコントローラ241a、バルブ243a、第1ノズル233aを介して処理室201内に供給される。すなわち、第1ガス供給系は原料ガス供給系(シリコン含有ガス供給系)として構成される。このとき同時
に、第1不活性ガス供給管232dから、堆積・吸着阻害ガスとしての不活性ガスが、マスフローコントローラ241d、バルブ243dを介して第1ガス供給管232a内に供給される。ここで、堆積・吸着阻害ガスとは、ウエハ200表面上へのシリコンの堆積またはHCDガスの吸着を阻害させるためのガスのことである。第1ガス供給管232a内に供給された堆積・吸着阻害ガスとしての不活性ガスは、第1ノズル233aを介してHCDガスと一緒に処理室201内に供給される。なおこのとき、堆積・吸着阻害ガスとして、不活性ガスの代わりに水素含有ガスを第1ガス供給管232a内に供給するようにしてもよい。この場合、第1不活性ガス供給系を水素含有ガス供給系に置き換えればよい。すなわちこの場合、水素含有ガス供給系は、水素含有ガス供給管232d、マスフローコントローラ241d、バルブ243dにより構成されることとなる。このように、第1不活性ガス供給系は堆積・吸着阻害ガス供給系としても構成され、水素含有ガス供給系に置き換えることも可能となっている。
【0032】
第2ガス供給管232bからは、酸素を含むガス(酸素含有ガス)として、例えば酸素(O)ガスが、マスフローコントローラ241b、バルブ243b、第2ノズル233b、バッファ室237を介して処理室201内に供給される。すなわち、第2ガス供給系は酸素含有ガス供給系として構成される。このとき同時に、第2不活性ガス供給管232eから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241e、バルブ243eを介して第2ガス供給管232b内に供給されるようにしてもよい。
【0033】
第3ガス供給管232cからは、水素を含むガス(水素含有ガス)として、例えば水素(H)ガスが、マスフローコントローラ241c、バルブ243c、第2ガス供給管232b、第2ノズル233b、バッファ室237を介して処理室201内に供給される。すなわち、第3ガス供給系は水素含有ガス供給系として構成される。このとき同時に、第3不活性ガス供給管232fから、不活性ガスが、マスフローコントローラ241f、バルブ243fを介して第3ガス供給管232c内に供給されるようにしてもよい。
【0034】
なお、本実施形態では、OガスとHガスとを同じノズルから処理室201内(バッファ室237内)に供給するようにしているが、それぞれを別々のノズルから処理室201内に供給するようにしてもよい。ただし、複数種類のガスでノズルを共用とした方が、ノズルの本数を減らすことができ、装置コストを低減することができ、またメンテナンスも容易になる等のメリットがある。例えば、OガスとHガスとを別々のノズルから処理室201内に供給する場合に、HガスとHCDガスとを同じノズルから処理室201内に供給するようにしてもよい。なお、後述する成膜温度帯では、HCDガスとHガスとは反応しないが、HCDガスとOガスとは反応することが考えられるので、HCDガスとOガスとは別々のノズルから処理室201内に供給した方がよい。
【0035】
バッファ室237内には、図2に示すように、細長い構造を有する第1の電極である第1の棒状電極269及び第2の電極である第2の棒状電極270が、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積層方向に沿って配設されている。第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれは、第2ノズル233bと平行に設けられている。第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれは、上部より下部にわたって各電極を保護する保護管である電極保護管275により覆われることで保護されている。この第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270のいずれか一方は整合器272を介して高周波電源273に接続され、他方は基準電位であるアースに接続されている。この結果、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間のプラズマ生成領域224にプラズマが生成される。主に、第1の棒状電極269、第2の棒状電極270、電極保護管275、整合器272、高周波電源273によりプラズマ発生器(プラズマ発生部)としてのプラズマ源が構成される。なお、プラズマ源は、後述するようにガスをプラズマで活性化させる活性化機構として機能する。
【0036】
電極保護管275は、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270のそれぞれをバッファ室237の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237内に挿入できる構造となっている。ここで、電極保護管275の内部は外気(大気)と同一雰囲気であると、電極保護管275にそれぞれ挿入された第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270はヒータ207による熱で酸化されてしまう。そこで、電極保護管275の内部には窒素などの不活性ガスを充填あるいはパージし、酸素濃度を充分低く抑えて第1の棒状電極269又は第2の棒状電極270の酸化を防止するための不活性ガスパージ機構が設けられている。
【0037】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。なお、APCバルブ244は弁を開閉して処理室201内の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能なように構成されている開閉弁である。真空ポンプ246を作動させつつ、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいてAPCバルブ244の弁の開度を調節することにより、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、真空ポンプ246、圧力センサ245により排気系が構成される。
【0038】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は反応管203の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、後述する基板保持具としてのボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255はシールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内に対して搬入・搬出することが可能なように構成されている。
【0039】
基板支持具としてのボート217は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなり、複数枚のウエハ200を水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に支持するように構成されている。なお、ボート217の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる断熱部材218が設けられており、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなるように構成されている。なお、断熱部材218は、石英や炭化珪素等の耐熱性材料からなる複数枚の断熱板と、これら断熱板を水平姿勢で多段に支持する断熱板ホルダとにより構成してもよい。
【0040】
反応管203内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、第1ノズル233a及び第2ノズル233bと同様に、L字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0041】
制御部(制御手段)であるコントローラ121は、マスフローコントローラ241a、
241b、241c、241d、241e、241f、バルブ243a、243b、243c、243d、243e、243f、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、ボート回転機構267、ボートエレベータ115、高周波電源273、整合器272等に接続されている。コントローラ121により、マスフローコントローラ241a、241b、241c、241d、241e、241fによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a、243b、243c、243d、243e、243fの開閉動作、APCバルブ244の開閉及び圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動・停止、ボート回転機構267の回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等の制御や、高周波電源273の電力供給制御、整合器272によるインピーダンス制御が行われる。
【0042】
次に、上述の基板処理装置の処理炉を用いて、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に絶縁膜としての酸化膜を成膜する方法の例について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0043】
図3に、本実施形態における成膜フロー図を、図4、図5に本実施形態の成膜シーケンスにおけるガス供給のタイミング図を示す。本実施形態の成膜シーケンスでは、大気圧未満の圧力に設定されると共に加熱された状態の処理容器内に、基板を収容した状態で、所定元素としてのシリコンを含む原料ガスを供給し排気することで基板上に所定元素含有層すなわちシリコン含有層を形成する工程と、大気圧未満の圧力に設定されると共に加熱された状態の処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気することで基板上に形成されたシリコン含有層を酸化層すなわちシリコン酸化層に変化させる工程とを、その間に、処理容器内に不活性ガスを供給し排気して処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返すことで、基板上に所定膜厚の酸化膜すなわちシリコン酸化膜を形成する。そして所定元素含有層を形成する工程では、原料ガスを基板の側方に設けられたノズルを介して基板に向けて供給し、その際、そのノズルと同じノズルを介して、原料ガスと一緒に堆積・吸着阻害ガスとして不活性ガスまたは水素含有ガスを基板に向けて供給することで、基板の表面と平行方向に流れる原料ガスの流速を、パージの際に基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする。
【0044】
以下、これを具体的に説明する。なお、本実施形態では、原料ガスとしてHCDガスを、酸素含有ガスとしてOガスを、水素含有ガスとしてHガスを、堆積・吸着阻害ガスとしてNガスを、パージガスとしてNガスを用い、図3の成膜フロー、図4、図5の成膜シーケンスにより、基板上に絶縁膜としてシリコン酸化膜(SiO膜)を形成する例について説明する。
【0045】
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。
【0046】
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。続いて、回転機構
267によりボート217が回転されることでウエハ200が回転される。その後、後述する4つのステップを順次実行する。
【0047】
[ステップ1]
第1ガス供給管232aのバルブ243a、第1不活性ガス供給管232dのバルブ243dを開き、第1ガス供給管232aにHCDガス、第1不活性ガス供給管232dに堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスを流す。Nガスは、第1不活性ガス供給管232dから流れ、マスフローコントローラ241dにより流量調整される。HCDガスは、第1ガス供給管232aから流れ、マスフローコントローラ241aにより流量調整される。流量調整されたHCDガスは、流量調整されたNガスと第1ガス供給管232a内で混合されて、第1ノズル233aのガス供給孔248aから、加熱された減圧状態の処理室201内に供給され、排気管231から排気される(HCDガス+Nガス供給)。
【0048】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、大気圧未満、例えば10〜1000Paの範囲内の圧力に維持する。マスフローコントローラ241aで制御するHCDガスの供給流量は、例えば20〜1000sccm(0.02〜1slm)の範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241dで制御する堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスの供給流量は、HCDガスの供給流量よりも大流量とし、例えば1000〜20000sccm(1〜20slm)の範囲内の流量とする。HCDガスをウエハ200に晒す時間は、例えば1〜120秒間の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、上述の圧力帯において処理室201内でCVD反応が生じるような温度となるように設定する。すなわちウエハ200の温度が、例えば350〜950℃、好ましくは、700〜800℃の範囲内の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。なお、ウエハ200の温度が350℃未満となるとウエハ200上においてHCDが分解、吸着しにくくなる。また、ウエハ200の温度が950℃を超えるとCVD反応が強くなり過ぎ、堆積・吸着阻害ガスの作用が十分に働かず、膜厚均一性の悪化を改善するのが困難となる。一方、ウエハ200の温度が700℃未満の場合、膜厚均一性は比較的良好となり、700℃以上の高温領域において膜厚均一性の悪化が顕著となり、堆積・吸着阻害ガスを用いる本発明が特に有効となる。また、ウエハ200の温度が800℃を超えるとCVD反応が強くなり、膜厚均一性の悪化を改善するには堆積・吸着阻害ガスの流量を更に大流量とする必要が生じ、堆積・吸着阻害ガスの消費量が多くなりコストアップとなる。また、成膜速度が低下してしまうというデメリットもある。例えば、ウエハ200の温度を900℃としたときの成膜速度は、ウエハ200の温度を700〜800℃としたときの成膜速度のおよそ3分の1程度となる。以上のことから、ウエハ200の温度は350〜950℃とするのが好ましく、700〜800℃とするのがより好ましい。
【0049】
上述の条件、すなわちCVD反応が生じる条件下でHCDガスを処理室201内に供給することで、ウエハ200(表面の下地膜)上に1原子層未満から数原子層程度のシリコン含有層としてのシリコン層が形成される。シリコン含有層はHCDガスの吸着層であってもよい。ここでシリコン層とは、シリコンにより構成される連続的な層の他、不連続な層や、これらが重なってできるシリコン薄膜をも含む総称である。なお、シリコンにより構成される連続的な層をシリコン薄膜という場合もある。また、HCDガスの吸着層とは、HCDガスのガス分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。なお、1原子層未満の層とは不連続に形成される原子層のことを意味している。HCDガスが自己分解する条件下では、基板上にシリコンが堆積することでシリコン層が形成される。HCDガスが自己分解しない条件下では、基板上にHCDガスが吸着することでHCDガスの吸着層が形成される。ウエハ200上に形成されるシリコン含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するステップ3での酸化の作用がシリコン含有層の全体に届かなくなる。また、ウエハ200上に形成可能なシリコン含有層の最小値は1原子層未満である。よって、シリコン含有層の厚さは1原子層未満から数原子層程度とするのが好ましい。なお
、基板上にHCDガスの吸着層を形成するよりも、基板上にシリコン層を形成する方が、成膜レートを高くすることができ好ましい。
【0050】
このとき、上述のように、HCDガスを供給する第1ノズル233aと同じノズルからHCDガスと一緒に堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスを大流量でウエハ200に向けて供給することで、HCDガスの流速、特にウエハ200表面と平行方向に流れる(ウエハ200表面を横切る)HCDガスの流速を速くする。すなわち、HCDガスのウエハ200表面と平行方向への吹き付けを強くする。これにより、ウエハ200上へのシリコンの堆積効率またはHCDガスの吸着効率を下げ、堆積または吸着を抑制させつつウエハ200上にシリコン含有層を形成することができるようになる。この堆積・吸着阻害ガスの作用により、図10に示すようにシリコン含有層の堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりに移動させることが可能となり、また、シリコン含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さくすることができ、例えば700℃以上の高温領域において吸着反応が崩れる領域、すなわちシリコン含有層の堆積または吸着が過剰となる領域においても、均一にシリコン含有層を形成することが可能となる。
【0051】
なお、図10(a)はウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速が小さい場合におけるシリコンの堆積またはHCDガスの吸着の様子を模式的に示す図である。また、図10(b)はウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速が大きい場合におけるシリコンの堆積またはHCDガスの吸着の様子を模式的に示す図である。なお、図10における白抜き矢印は、HCDガスとNガスとの流れる方向を示しており、ウエハ200上の白丸(○)は、ウエハ200上に堆積したSi原子またはウエハ200上に吸着したHCDガス分子を示している。また、図10では、便宜上、ウエハ200の左半分のみを示している。
【0052】
図10に示すように、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を大きくすることにより、シリコン含有層の厚さを全体的に薄くしつつ、シリコン含有層の堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりに移動させることが可能となる。また、シリコン含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さくすることができ、ウエハ200面内にわたり均一にシリコン含有層を形成することが可能となる。
【0053】
なお、堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスの供給流量は、上述のように1〜20slmの範囲内の流量とするのが好ましく、HCDガスの供給流量よりも大流量とするのが好ましい。このようにNガスの供給流量を設定し、Nガスの体積流量を、HCDガスの体積流量よりも大流量とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を、HCDガスを単独で流す場合よりも速くする。すなわち、HCDガスを単独で流す場合よりも強くHCDガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付ける。また、堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスの供給流量は、後述するステップ3において処理室201内に供給するOガスやHガスの供給流量よりも大流量とするのが好ましい。このようにNガスの供給流量を設定し、Nガスの体積流量を、OガスやHガスの体積流量よりも大流量とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を、ウエハ200表面と平行方向に流れるOガスやHガスの流速よりも速くする。すなわち、OガスやHガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付けるよりも強く、HCDガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付ける。さらには、堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスの供給流量は、後述するステップ2、4において処理室201内に供給するパージガスとしてのNガスの供給流量よりも大流量とするのが好ましい。このように堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスの供給流量を設定し、堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスの体積流量を、パージガスとしてのNガスの体積流量よりも大流量とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を、ウエハ200表面と平行方向に流れるパージガスとしてのNガスの流速よりも速くする。すなわち、パージガスとし
てのNガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付けるよりも強く、HCDガスをウエハ200表面と平行方向に吹き付ける。
【0054】
具体的には、堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスの体積流量は、HCDガスの体積流量の10〜30倍程度であって、パージガスとしてのNガスの体積流量の5〜30倍程度とするのが好ましい。堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスの体積流量をHCDガスの体積流量の10〜30倍程度とすることで、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速をより十分に高めることが可能となり、シリコン含有層の堆積または吸着をより十分に抑制でき、堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりにすることが容易となる。また、シリコン含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さくすることも容易となる。結果、膜厚均一性をより十分に改善できることとなる。また、HCDガスの流速が速くなり過ぎ、シリコン含有層の堆積または吸着を抑制し過ぎて、実用的な成膜速度が得られなくなることを防止することができる。
【0055】
Siを含む原料としては、HCDの他、TCS(テトラクロロシラン、SiCl)、DCS(ジクロロシラン、SiHCl)、SiH(モノシラン)等の無機原料だけでなく、アミノシラン系の4DMAS(テトラキスジメチルアミノシラン、Si[N(CH)、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン、Si[N(CHH)、2DEAS(ビスジエチルアミノシラン、Si[N(C)、BTBAS(ビスターシャリーブチルアミノシラン、SiH[NH(C)])などの有機原料を用いてもよい。
【0056】
堆積・吸着阻害ガスとしての不活性ガスとしては、Nガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。また、堆積・吸着阻害ガスとしては、水素含有ガスを用いてもよい。水素含有ガスとしては、例えば水素(H)ガスや重水素(D)ガス等を用いることができる。図5に、堆積・吸着阻害ガスとして水素含有ガスであるHガスを用いた成膜シーケンス例を示す。堆積・吸着阻害ガスとしてのHガスの供給流量は、堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスの供給流量と同様、1000〜20000sccm(1〜20slm)の範囲内の流量とする。なお、堆積・吸着阻害ガスとしては、窒素(N)を含まないガスであるArやHe等の希ガスやHガスやDガス等の水素含有ガスを使用することで、形成されるシリコン酸化膜の膜中N不純物濃度を低減できる効果もある。
【0057】
[ステップ2]
ウエハ200上にシリコン含有層が形成された後、第1ガス供給管232aのバルブ243aを閉じ、HCDガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、残留したHCDガスを処理室201内から排除する。このとき、バルブ243dは開いたままとして、不活性ガスとしてのNガスの処理室201内への供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン含有層形成に寄与した後のHCDガスを処理室201内から排除する効果を更に高めることができる(残留ガス除去)。
【0058】
このときのヒータ207の温度は、ウエハ200の温度がHCDガスの供給時と同じく350〜950℃、好ましくは700〜800℃の範囲内の温度となるように設定する。パージガスとしてのNガスの供給流量は、200〜1000sccm(0.2〜1slm)の範囲内の流量とする。なお、パージガスとしてのNガスの体積流量は、堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスの体積流量ほど大きくする必要はなく、それより小流量で十分なパージ効果が得られる。逆にいうと、堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスの体積流量は、パージガスとしてのNガスの体積流量よりも大きくする必要がある。すなわちシ
リコン含有層の堆積・吸着抑制効果を得るには、堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスの体積流量を、パージ効果が十分に得られるだけのNガスの体積流量よりも大流量とする必要がある。よって、パージにより処理室201内の残留ガスを除去する際は、マスフローコントローラ241dを制御して、第1不活性ガス供給管232dから供給するNガスの供給流量を1〜20slmから0.2〜1slmへと変更し、Nガスの体積流量を減少させることとなる。なお、パージガスとしては、Nガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0059】
[ステップ3]
処理室201内の残留ガスを除去した後、第2ガス供給管232bのバルブ243bを開き、第2ガス供給管232bにOガスを流す。Oガスは第2ガス供給管232bから流れ、マスフローコントローラ241bにより流量調整される。流量調整されたOガスは第2ノズル233bのガス供給孔248bから加熱された減圧状態のバッファ室237内に供給される。このとき同時に、第3ガス供給管232cのバルブ243cを開き、第3ガス供給管232cにHガスを流す。Hガスは第3ガス供給管232cから流れ、マスフローコントローラ241cにより流量調整される。流量調整されたHガスは第2ガス供給管232bを経由して第2ノズル233bのガス供給孔248bから加熱された減圧状態のバッファ室237内に供給される。なお、Hガスは第2ガス供給管232bを経由する際に第2ガス供給管232b内でOガスと混合される。すなわち、第2ノズル233bからは、OガスとHガスの混合ガスが供給されることとなる。バッファ室237内に供給されたOガスとHガスの混合ガスは、バッファ室237のガス供給孔248cから、加熱された減圧状態の処理室201内に供給され、排気管231から排気される(Oガス及びHガス供給)。
【0060】
このとき、第2不活性ガス供給管232eのバルブ243eを開き、第2不活性ガス供給管232eから不活性ガスとしてNガスを供給するようにしてもよい。Nガスはマスフローコントローラ241eにより流量調整されて、第2ガス供給管232b内に供給される。また、第3不活性ガス供給管232fのバルブ243fを開き、第3不活性ガス供給管232fから不活性ガスとしてNガスを供給するようにしてもよい。Nガスはマスフローコントローラ241fにより流量調整されて、第3ガス供給管232c内に供給される。この場合、第2ノズル233bからは、OガスとHガスとNガスの混合ガスが供給されることとなる。なお、不活性ガスとしては、Nガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0061】
このとき、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を、大気圧未満、例えば1〜1000Paの範囲内の圧力に維持する。マスフローコントローラ241bで制御するOガスの供給流量は、例えば1000〜10000sccm(1〜10slm)の範囲内の流量とする。マスフローコントローラ241cで制御するHガスの供給流量は、例えば1000〜10000sccm(1〜10slm)の範囲内の流量とする。なお、Oガス及びHガスをウエハ200に晒す時間は、例えば1〜120秒間の範囲内の時間とする。ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば350〜1000℃の範囲内の温度となるように設定する。なお、この範囲内の温度であれば減圧雰囲気下でのOガスへのHガス添加による酸化力向上の効果が得られることを確認した。また、ウエハ200の温度が低すぎると酸化力向上の効果が得られないことも確認した。ただしスループットを考慮すると、ウエハ200の温度が、酸化力向上の効果が得られる温度であってステップ1のHCDガスの供給時と同様な温度帯となるように、すなわちステップ1とステップ3とで処理室201内の温度を同様な温度帯に保持するようにヒータ207の温度を設定するのが好ましい。この場合、ステップ1とステップ3とでウエハ200の温度、すなわち処理室201内の温度が350〜950℃、好ましくは700〜800℃の範囲内の一定の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。さらには、
ステップ1〜ステップ4(後述)にかけて処理室201内の温度を同様な温度帯に保持するようにヒータ207の温度を設定するのがより好ましい。この場合、ステップ1〜ステップ4(後述)にかけて処理室201内の温度が350〜950℃、好ましくは700〜800℃の範囲内の一定の温度となるようにヒータ207の温度を設定する。なお、減圧雰囲気下でのOガスへのHガス添加による酸化力向上の効果を得るには、処理室201内の温度を350℃以上とする必要があるが、処理室201内の温度は400℃以上とするのが好ましく、さらには450℃以上とするのが好ましい。処理室201内の温度を400℃以上とすれば、400℃以上の温度で行うO酸化処理による酸化力を超える酸化力を得ることができ、処理室201内の温度を450℃以上とすれば、450℃以上の温度で行うOプラズマ酸化処理による酸化力を超える酸化力を得ることができる。
【0062】
上述の条件にてOガス及びHガスを処理室201内に供給することで、Oガス及びHガスは加熱された減圧雰囲気下においてノンプラズマで熱的に活性化されて反応し、それにより原子状酸素等の酸素を含む酸化種が生成される。そして、主にこの酸化種により、ステップ1でウエハ200上に形成されたシリコン含有層に対して酸化処理が行われる。そして、この酸化処理により、シリコン含有層はシリコン酸化層(SiO層、以下、単にSiO層ともいう。)へと変化させられる(改質される)。この酸化処理によれば上述のように、Oガスを単独で供給する場合に比べ、酸化力を大幅に向上させることができる。すなわち、減圧雰囲気下においてOガスにHガスを添加することで、Oガス単独供給の場合に比べ大幅な酸化力向上効果が得られる。
【0063】
なお、このとき、OガスとHガスのうち少なくとも何れか一方または両方をプラズマで活性化させて流すこともできる。Oガスおよび/またはHガスをプラズマで活性化させて流すことで、よりエネルギーの高い酸化種を生成することができ、この酸化種により酸化処理を行うことで、デバイス特性が向上する等の効果も考えられる。例えば、OガスとHガスの両方をプラズマで活性化させる場合、第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加することで、バッファ室237内に供給されたOガスとHガスの混合ガスはプラズマ励起され、活性種としてガス供給孔248cから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、高周波電源273から第1の棒状電極269及び第2の棒状電極270間に印加する高周波電力は、例えば50〜1000Wの範囲内の電力となるように設定する。その他の処理条件は、上述の処理条件と同様とする。なお、上述の温度帯では、OガスとHガスとは熱で活性化されて十分に反応し、十分な量の酸化種が生成される。よって、OガスとHガスとをノンプラズマで熱的に活性化させても十分な酸化力が得られる。なお、OガスとHガスは熱で活性化させて供給した方が、ソフトな反応を生じさせることができ、上述の酸化処理をソフトに行うことができる。
【0064】
酸素含有ガス、すなわち酸化性ガスとしては、酸素(O)ガスの他、オゾン(O)ガス等を用いてもよい。なお、上述の温度帯において、一酸化窒素(NO)ガスや亜酸化窒素(NO)ガスへの水素含有ガス添加効果を試してみたところ、NOガス単独供給やNOガス単独供給に比べて酸化力向上の効果が得られないことを確認した。すなわち、酸素含有ガスとしては窒素非含有の酸素含有ガス(窒素を含まず酸素を含むガス)を用いるのが好ましい。水素含有ガス、すなわち還元性ガスとしては、水素(H)ガスの他、重水素(D)ガス等を用いてもよい。なお、アンモニア(NH)ガスやメタン(CH)ガス等を用いると、窒素(N)不純物や炭素(C)不純物の膜中への混入が考えられる。すなわち、水素含有ガスとしては、他元素非含有の水素含有ガス(他元素を含まず水素または重水素を含むガス)を用いるのが好ましい。すなわち、酸素含有ガスとしては、OガスおよびOガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いることができ、水素含有ガスとしては、HガスおよびDガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いることができる。
【0065】
[ステップ4]
シリコン含有層をシリコン酸化層へと変化させた後、第2ガス供給管232bのバルブ243bを閉じ、Oガスの供給を停止する。また、第3ガス供給管232cのバルブ243cを閉じ、Hガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとし、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、残留したOガスやHガスを処理室201内から排除する。このとき、バルブ243e,243fを開き、不活性ガスとしてのNガスを処理室201内へ供給する。Nガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはシリコン酸化層形成に寄与した後のOガスやHガスを処理室201内から排除する効果を更に高めることができる(残留ガス除去)。
【0066】
このときのヒータ207の温度は、ウエハ200の温度がOガス及びHガスの供給時と同じく350〜950℃、好ましくは700〜800℃の範囲内の温度となるように設定する。パージガスとしてのNガスの供給流量は、200〜1000sccm(0.2〜1slm)の範囲内の流量とする。なお、上述のようにパージガスとしてのNガスの体積流量は、堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスの体積流量ほど大きくする必要はなく、それより小流量で十分なパージ効果が得られる。パージガスとしては、Nガスの他、Ar、He、Ne、Xe等の希ガスを用いてもよい。
【0067】
上述したステップ1〜4を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン酸化膜を成膜することが出来る。
【0068】
所定膜厚のシリコン酸化膜が成膜されると、バルブ243d、243e、243fを開き、第1不活性ガス供給管232d、第2不活性ガス供給管232e、第3不活性ガス供給管232fのそれぞれから不活性ガスとしてのNガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。Nガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスが処理室201内から除去される(パージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0069】
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200がボート217に保持された状態でマニホールド209の下端からプロセスチューブ203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済みのウエハ200はボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0070】
本実施形態のステップ1では、第1ノズル233aからHCDガスと一緒に堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスを上述のような大流量で処理室201内に供給することより、HCDガスの流速、特に第1ノズル233aのガス供給孔248aからウエハ200に向けて噴出されウエハ200表面と平行方向に流れる(ウエハ200表面を横切る)HCDガスの流速を速くする。これにより、ウエハ200上へのシリコンの堆積効率またはHCDガスの吸着効率を下げることができ、シリコンの堆積またはHCDガスの吸着を抑制させつつウエハ200上にシリコン含有層を形成することができるようになる。この堆積・吸着阻害ガスの作用により、シリコン含有層の堆積または吸着中心をウエハ200のエッジ側からセンタよりに移動させることが可能となり、また、シリコン含有層の最も厚い部分と最も薄い部分との差を小さくすることができ、例えば700℃以上の高温領域において吸着反応が崩れる領域、すなわちシリコン含有層の堆積または吸着が過剰となる領域においても、均一にシリコン含有層を形成することが可能となる。
【0071】
また、本実施形態のステップ3では、加熱された減圧雰囲気下においてOガスとHガスとを反応させて原子状酸素等の酸素を含む酸化種を生成し、この酸化種を用いて、シリコン含有層をシリコン酸化層へと変化させる工程を行うことにより、酸化種の持つエネルギーがシリコン含有層中に含まれるSi−N、Si−Cl、Si−H、Si−C結合を切り離す。Si−O結合を形成するためのエネルギーは、Si−N、Si−Cl、Si−H、Si−Cの結合エネルギーよりも高いため、Si−O結合形成に必要なエネルギーを酸化処理対象のシリコン含有層に与えることで、シリコン含有層中のSi−N、Si−Cl、Si−H、Si−C結合は切り離される。Siとの結合を切り離されたN、H、Cl、Cは膜中から除去され、N、H、Cl、HCl、CO等として排出される。また、N、H、Cl、Cとの結合が切られることで余ったSiの結合手は、酸化種に含まれるOと結びつく。このようにしてシリコン含有層はSiO層へと変化させられる。本実施形態の成膜シーケンスにより形成したSiO膜の膜中窒素、水素、塩素、炭素濃度は極めて低く、Si/O比率は化学量論組成である0.5に極めて近い、良質な膜となることを確認した。
【0072】
また、本実施形態では、OガスとHガスとを同じノズル233bからバッファ室237を介して処理室201内に供給しており、ノズル233b内およびバッファ室237内は処理室201内と同様な温度に加熱されている。そのため、OガスとHガスとは、加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にあるノズル233b内およびバッファ室237内で反応し、このノズル233b内およびバッファ室237内で酸素を含む酸化種が生成されることとなる。また、ノズル233b内およびバッファ室237内は、処理室201内よりも圧力が高くなっている。そのため、ノズル233b内およびバッファ室237内でのOガスとHガスとの反応は促進され、OガスとHガスとの反応により生じる酸化種をより多く生成することが可能となり、酸化力をより向上させることができることとなる。また、OガスとHガスとを処理室201内に供給する前にノズル233b内およびバッファ室237内で均等に混合させることができることから、OガスとHガスとをノズル233b内で均等に反応させることができ、酸化種の濃度を均一化でき、ウエハ200間における酸化力の均一化を図ることも可能となる。このように、OガスとHガスとを同じノズルから処理室201内に供給することにより、より高い酸化力向上効果および酸化力均一化効果が得られることとなる。なお、プラズマを用いない場合は、バッファ室237を省略することもできるが、この場合においても上述と同様な作用効果が得られる。
【0073】
ただし、OガスとHガスとを同じノズル233bからバッファ室237を介して処理室201内に供給する場合、ノズル233b内およびバッファ室237内で酸化種をより多く生成することが可能となるものの、生成された酸化種がノズル233b内やバッファ室237内を通過する際に失活することも考えられ、ウエハ200に到達する量が減少してしまうこともある。これに対して、OガスとHガスとを別々のノズルから処理室201内に供給するようにすれば、OガスとHガスとは処理室201内で初めて混合されるので、酸化種は処理室201内で生成されることとなり、酸化種のノズル233b内やバッファ室237内での失活を防止することが可能となる。
【0074】
また、本実施形態の成膜シーケンスによりシリコン酸化膜を形成すれば、ウエハ面内における膜厚均一性は、一般的なCVD法によりシリコン酸化膜を形成する場合よりも良好なものとなることを確認した。なお、一般的なCVD法とは、無機原料であるDCSとNOとを同時に供給してCVD法によりシリコン酸化膜(HTO(High Temperature Oxide)膜)を形成する方法のことを指している。また、本実施形態の成膜シーケンスにより形成したシリコン酸化膜の膜中の窒素、塩素等の不純物の濃度は、一般的なCVD法により形成したシリコン酸化膜よりも極めて低くなることを確認した
。また、本実施形態の成膜シーケンスにより形成したシリコン酸化膜の膜中の不純物濃度は、有機系シリコン原料を用いてCVD法により形成したシリコン酸化膜よりも極めて低くなることを確認した。また、本実施形態の成膜シーケンスによれば、有機系シリコン原料を用いた場合であっても、ウエハ面内における膜厚均一性、膜中の不純物濃度が良好なものとなることを確認した。
【0075】
上述の実施形態では、水素含有ガスとしてのHガスは、図4に示すように間欠的に、すなわち、ステップ3においてのみ供給する例について説明したが、連続的に、すなわち、ステップ1〜4を繰り返す間中、常に供給し続けるようにしてもよい。また、Hガスを間欠的に供給する場合でも、図5に示すように、ステップ1および3においてのみ供給するようにしてもよいし、ステップ1〜3にかけて供給するようにしてもよい。また、ステップ2〜3にかけて供給するようにしてもよいし、ステップ3〜4にかけて供給するようにしてもよい。なお、図5においてステップ1で供給するHガスは、堆積・吸着阻害ガスとして供給するHガスを示している。
【0076】
ステップ1において、すなわちHCDガス供給時にHガスを供給することで、シリコンの堆積やHCDガスの吸着を抑制させる以外にHCDガス中のClを引き抜くことが考えられ、成膜レートの向上、膜中Cl不純物の低減効果が考えられる。また、ステップ2において、すなわちHCDガスの供給を停止した後にOガスよりも先行してHガスの供給を開始することで、膜厚均一性制御に有効となることが考えられる。また、ステップ2において、すなわちOガスよりも先行してHガスの供給を開始することで、例えば金属とシリコンが露出した部分に対しては、金属を酸化させることなく金属およびシリコン上に一様に酸化膜を形成できるようになることが考えられる。また、ステップ4において、すなわちOガスの供給を停止した後、HCDガスの供給を開始する前に、Hガスを供給することで、ステップ3で形成されたSiO層の表面を水素終端させて改質させ、次のステップ1において供給するHCDガスがSiO層の表面に吸着しやすくなるようにできることが考えられる。
【0077】
また上述の実施形態では、堆積・吸着阻害ガスの作用により、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を上げることでウエハ200上へのシリコンの堆積またはHCDガスの吸着を抑制し、膜厚均一性を向上させる例について説明したが、HCDガスの流速を上げる方法はこれに限らない。
【0078】
例えば、反応管203内部の流動抵抗をウエハ200間の流動抵抗と同程度とすることにより、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を高めることができる。例えば、反応管203上部や下部の空間を、ダミーウエハや断熱板などで充填することにより、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を高め、ウエハ200上へのシリコンの堆積またはHCDガスの吸着を抑制し、膜厚均一性を向上させることができる。
【0079】
また例えば、HCDガスを供給するノズル233aとウエハ200との間のコンダクタンスを、ウエハ200間のコンダクタンスと同程度とすることにより、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を高めることができる。例えば、ノズル233aの径を大きくしたり、また、反応管203の径を小さくすることにより、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を高め、ウエハ200上へのシリコンの堆積またはHCDガスの吸着を抑制し、膜厚均一性を向上させることができる。
【0080】
また例えば、HCDガスの供給と排気を繰り返すことにより、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を高めることができる。例えば、反応管203内のウエハ配列領域とノズル233a内(バッファ室237内)との圧力差を大きくすることにより
、ウエハ200表面と平行方向に流れるHCDガスの流速を高め、ウエハ200上へのシリコンの堆積またはHCDガスの吸着を抑制し、膜厚均一性を向上させることができる。
【0081】
また上述の実施形態では、ステップ1、ステップ2、ステップ3、ステップ4をこの順に行い、これを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン酸化膜を成膜する例について説明したが、ステップ1とステップ3とを入れ替えてもよい。すなわち、ステップ3、ステップ2、ステップ1、ステップ4をこの順に行い、これを1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより、ウエハ200上に所定膜厚のシリコン酸化膜を成膜することもできる。
【0082】
また、上述の実施形態では、基板上に酸化膜として半導体元素であるシリコン(Si)を含むシリコン酸化膜(SiO膜)を形成する例について説明したが、本発明は基板上に酸化膜としてジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)等の金属元素を含む金属酸化膜を形成する場合にも適用することができる。この場合、原料ガスおよび堆積・吸着阻害ガス供給による基板上への金属元素含有層の形成(ステップ1)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ2)と、酸素含有ガスおよび水素含有ガス供給による金属元素含有層の金属酸化層への変換(ステップ3)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ4)と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより、基板上に所定膜厚の金属酸化膜を形成する。
【0083】
例えば、基板上にジルコニウム(Zr)を含む金属酸化膜としてジルコニウム酸化膜(ZrO膜)を形成する場合、原料ガスおよび堆積・吸着阻害ガス供給による基板上へのジルコニウム含有層の形成(ステップ1)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ2)と、酸素含有ガスおよび水素含有ガス供給によるジルコニウム含有層のジルコニウム酸化層への変換(ステップ3)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ4)と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより基板上に所定膜厚のジルコニウム酸化膜を形成する。原料ガスとしては、例えばTEMAZ(Tetrakis(ethylmethylamino)zirconium:Zr[N(C)(CH)])ガスを用いることができる。酸素含有ガス、水素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様、Oガス、Hガスをそれぞれ用いることができる。この場合、上述の実施形態における基板処理装置の第1ガス供給系(原料ガス供給系)をジルコニウム含有ガス供給系として構成する。また処理条件は、例えば上述の実施形態に記載の処理条件範囲内の条件とする。
【0084】
また例えば、基板上にハフニウム(Hf)を含む金属酸化膜としてハフニウム酸化膜(HfO膜)を形成する場合、原料ガスおよび堆積・吸着阻害ガス供給による基板上へのハフニウム含有層の形成(ステップ1)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ2)と、酸素含有ガスおよび水素含有ガス供給によるハフニウム含有層のハフニウム酸化層への変換(ステップ3)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ4)と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより基板上に所定膜厚のハフニウム酸化膜を形成する。原料ガスとしては、例えばTEMAH(Tetrakis(ethylmethylamino)hafnium:Hf[N(C)(CH)])ガスやTDMAH(Tetrakis(dimethylamino)hafnium:Hf[N(CH)ガスを用いることができる。酸素含有ガス、水素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様、Oガス、Hガスをそれぞれ用いることができる。この場合、上述の実施形態における基板処理装置の第1ガス供給系(原料ガス供給系)をハフニウム含有ガス供給系として構成する。また処理条件は、例えば上述の実施形態に記載の処理条件範囲内の条件とする。
【0085】
また例えば、基板上にチタン(Ti)を含む金属酸化膜としてチタン酸化膜(TiO膜)を形成する場合、原料ガスおよび堆積・吸着阻害ガス供給による基板上へのチタン含有層の形成(ステップ1)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ2)と、酸素含有ガスおよび水素含有ガス供給によるチタン含有層のチタン酸化層への変換(ステップ3)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ4)と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより基板上に所定膜厚のチタン酸化膜を形成する。原料ガスとしては、例えばTiCl(四塩化チタン)ガスやTDMAT(Tetrakis(dimethylamino)titanium:Ti[N(CH)ガスを用いることができる。酸素含有ガス、水素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様、Oガス、Hガスをそれぞれ用いることができる。この場合、上述の実施形態における基板処理装置の第1ガス供給系(原料ガス供給系)をチタン含有ガス供給系として構成する。また処理条件は、例えば上述の実施形態に記載の処理条件範囲内の条件とする。
【0086】
また例えば、基板上にアルミニウム(Al)を含む金属酸化膜としてアルミニウム酸化膜(Al膜)を形成する場合、原料ガスおよび堆積・吸着阻害ガス供給による基板上へのアルミニウム含有層の形成(ステップ1)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ2)と、酸素含有ガスおよび水素含有ガス供給によるアルミニウム含有層のアルミニウム酸化層への変換(ステップ3)と、パージによる残留ガスの除去(ステップ4)と、を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回、好ましくは複数回実施することにより基板上に所定膜厚のアルミニウム酸化膜を形成する。原料ガスとしては、例えばTMA(Trimethyl−aluminium:Al(CH)ガスを用いることができる。酸素含有ガス、水素含有ガスとしては、上述の実施形態と同様、Oガス、Hガスをそれぞれ用いることができる。この場合、上述の実施形態における基板処理装置の第1ガス供給系(原料ガス供給系)をアルミニウム含有ガス供給系として構成する。また処理条件は、例えば上述の実施形態に記載の処理条件範囲内の条件とする。
【0087】
このように、本実施形態の成膜シーケンスは、高誘電率絶縁膜(High−k絶縁膜)等のメタル酸化物を形成する工程にも適用できる。すなわち、本実施形態の成膜シーケンスは、所定元素が半導体元素である場合だけでなく金属元素である場合にも適用できる。ただし、ステップ3でノンプラズマによる酸化処理を行うには、すなわち、加熱された減圧雰囲気下において酸素含有ガスと水素含有ガスとを反応させて原子状酸素等の酸素を含む酸化種を生成し、この酸化種を用いて、酸化処理を行うには、少なくとも処理室内の温度(ウエハ温度)を350℃以上の温度とする必要がある。350℃未満の温度では、十分な酸化処理を行うことができなくなる。このように、本発明を金属酸化膜の形成に適用した場合においても、本発明をシリコン酸化膜の形成に適用した場合と同様な効果が得られることを確認した。
【実施例】
【0088】
(第1実施例)
次に第1実施例について説明する。
堆積・吸着阻害ガスを使用した場合の本実施形態の成膜シーケンス、堆積・吸着阻害ガスを使用しない場合の本実施形態の成膜シーケンスおよび一般的なCVD法によりウエハ上にシリコン酸化膜をそれぞれ形成し、それぞれのシリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性(WIW Unif)を測定した。なお、一般的なCVD法とは、DCSとNOとを同時に供給してCVD法によりシリコン酸化膜(HTO膜)を形成する方法であり、成膜温度は800℃とした。また、本実施形態の成膜シーケンスにおける成膜温度は450〜800℃の間で変化させた。それ以外の成膜条件(各ステップでの処理条件)は、上述の実施形態に記載の条件範囲内の条件とした。
【0089】
その結果を図6に示す。図6は、ウエハ面内膜厚均一性と成膜温度(ウエハ温度)との関係を表す図である。図6の横軸は成膜温度(℃)を示しており、縦軸はウエハ面内膜厚均一性(任意単位)を示している。図6の黒丸(●)は、堆積・吸着阻害ガスを使用しない場合の本実施形態の成膜シーケンスにより成膜したシリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性を表している。また、白丸(〇)は、一般的なCVD法により成膜したシリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性を表している。また、白四角(□)は、堆積・吸着阻害ガスを使用した場合の本実施形態の成膜シーケンスにより成膜したシリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性を表している。なお、ウエハ面内膜厚均一性は、ウエハ面内における膜厚分布のばらつきの度合を示しており、その値が小さいほどウエハ面内における膜厚均一性が良好なことを示している。
【0090】
図6より、堆積・吸着阻害ガスを使用しない場合の本実施形態の成膜シーケンスにより形成されたシリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性は、成膜温度が700℃を超えると、一般的なCVD法により形成されたシリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性よりも悪化し、700℃以下であれば、一般的なCVD法により形成されたシリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性よりも良好となることが分かる。すなわち、本実施形態の成膜シーケンスにより、堆積・吸着阻害ガスを使用しないでシリコン酸化膜を形成すると、特に700℃以上の高温領域においてウエハ面内膜厚均一性の悪化が顕著となることが分かる。これに対して、堆積・吸着阻害ガスを使用した場合の本実施形態の成膜シーケンスにより形成されたシリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性は、成膜温度が700℃を超えても、例えば700℃〜800℃の高温領域においても、一般的なCVD法により形成されたシリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性よりも良好となることが分かる。すなわち、本実施形態の成膜シーケンスにより、堆積・吸着阻害ガスを使用してシリコン酸化膜を形成すると、700℃以上の高温領域においてもウエハ面内膜厚均一性を大幅に改善することが可能となることが分かる。
【0091】
(第2実施例)
次に第2実施例について説明する。
本実施形態の成膜シーケンスによりウエハ上にシリコン酸化膜を形成し、膜厚(Thickness)およびウエハ面内膜厚均一性(WIW Unif)を測定した。成膜温度(ウエハ温度)は、上述の第1実施例において膜厚均一性の悪化が顕著となることが判明した700〜800℃とした。HCDガスの供給流量は、0.1〜0.5slmの範囲内のある値に固定し、堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスの供給流量は2〜6slmの間で3通りに変化させた。3通りのNガスの供給流量は、最小流量値を基準、すなわち1として比率で表すと、(A)1、(B)1.6、(C)2.0となり、以下、それぞれを流量条件(A)、流量条件(B)、流量条件(C)と称することとする。なお、HCDガスの供給流量に対する堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスの供給流量の比(N/HCD流量比)は、10〜30の間で変化させ、パージガスとしてのNガスの供給流量に対する堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスの供給流量の比(N(パージガス)/N(堆積・吸着阻害ガス)流量比)は5〜30の間で変化させることとなった。それ以外の成膜条件(各ステップでの処理条件)は、上述の実施形態に記載の処理条件範囲内の条件とした。なお、ウエハとしてはΦ300mmのシリコンウエハを用いた。その結果を図7、図8に示す。
【0092】
図7は、堆積・吸着阻害ガス(N)の流量の違いによるシリコン酸化膜の膜厚のウエハ中心からの距離への依存性を示す図である。図7の横軸はウエハ面内におけるウエハ中心からの距離(mm)、すなわちウエハ中心からウエハエッジ方向(半径方向)に向かう位置を示している。横軸の0mmがウエハ中心位置を示しており、150mmがウエハエッジ位置を示している。図7の縦軸はシリコン酸化膜の膜厚を示している。なお、膜厚は
、ウエハ中心における膜厚値を基準、すなわち1とした比率で示している。図7の白丸(○)、黒丸(●)、黒三角(▲)は、それぞれ堆積・吸着阻害ガス(N)の流量を、流量条件(A)、流量条件(B)、流量条件(C)とした場合の膜厚を示している。
【0093】
図7より、堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスの供給流量が大きくなるほど、ウエハ外周における膜厚が減少し、ウエハ中心方向に膜厚の厚い部分が移動することが分かる。また、シリコン酸化膜の最も厚い部分と最も薄い部分との膜厚差を小さくすることができることが分かる。すなわち、Nガスの供給流量を大流量にするほど、シリコンの堆積中心またはHCDガスの吸着中心をウエハのエッジ側からセンタよりに移動させることができ、均一にシリコン含有層を形成することが可能となり、その結果、均一にシリコン酸化膜を形成できるようになることが分かる。
【0094】
図8は、シリコン酸化膜のウエハ面内膜厚均一性の堆積・吸着阻害ガス(N)の供給流量への依存性を示す図である。図8の横軸は堆積・吸着阻害ガス(N)の供給流量を示している。なお、Nガスの供給流量は、上述のように3通りの供給流量のうち最小流量値を基準、すなわち1とした比率で示している。図8の縦軸はウエハ面内膜厚均一性(任意単位)を示している。なお、ウエハ面内膜厚均一性は、堆積・吸着阻害ガス(N)の供給流量を流量条件(A)としたときのウエハ面内膜厚均一性を基準、すなわち1とした比率で示している。図8の黒丸(●)は、左から順に、それぞれ堆積・吸着阻害ガス(N)の供給流量を流量条件(A)、流量条件(B)、流量条件(C)としたときのウエハ面内膜厚均一性を示している。なお、ウエハ面内膜厚均一性は、ウエハ面内における膜厚分布のばらつきの度合を示しており、その値が小さいほどウエハ面内における膜厚均一性が良好なことを示している。
【0095】
図8より、堆積・吸着阻害ガスとしてのNガスの供給流量が大きくなるほど、ウエハ面内膜厚均一性が向上することが分かる。なお、堆積・吸着阻害ガス(N)の供給流量が、流量条件(A)、流量条件(B)、流量条件(C)のいずれの場合においても、ウエハ面内膜厚均一性は1.9%程度以下となり、上述の第1実施例において膜厚均一性の悪化が顕著となることが判明した700〜800℃の高温領域においても、ウエハ面内膜厚均一性が極めて良好なシリコン酸化膜を形成できることが判明した。
【0096】
(第3実施例)
次に第3実施例について説明する。
本実施形態の成膜シーケンスにおけるステップ3のノンプラズマによる酸化処理(以下、O+H添加酸化処理)と、プラズマを用いた酸化処理(以下、O+H添加プラズマ酸化処理)と、Oプラズマ酸化処理と、O酸化処理と、O酸化処理との酸化力を比較した。なお、O+H添加プラズマ酸化処理とは、OにHを添加したもの(OとHとの混合ガス)をプラズマで活性化して酸化処理するケースを指す。酸化力は、シリコンに対する酸化量、すなわち、シリコンに対する酸化処理により形成されるシリコン酸化膜の膜厚で判定した。酸化処理温度(ウエハ温度)は30〜600℃の間で変化させた。それ以外の酸化処理条件は、上述の実施形態に記載のステップ3の酸化処理条件範囲内の条件とした。
【0097】
その結果を図9に示す。図9は、シリコン酸化膜の膜厚と成膜温度(ウエハ温度)との関係を表す図である。図9の横軸は成膜温度(℃)を示しており、縦軸はシリコン酸化膜の膜厚(Å)を示している。図9の黒丸(●)は、O+H添加酸化処理による酸化量を示しており、黒三角(▲)は、O+H添加プラズマ酸化処理による酸化量を示している。また、黒菱形(◆)、黒四角(■)、白丸(〇)は、それぞれOプラズマ酸化処理、O酸化処理、O酸化処理による酸化量を示している。
【0098】
図9より、300℃以下の温度では、O+H添加酸化処理による酸化量は、Oプラズマ酸化処理やO酸化処理による酸化量よりも小さく、O単独で行うO酸化処理による酸化量と同等であることが分かる。しかしながら、300℃を超える温度、特に350℃以上の温度では、O+H添加酸化処理による酸化量は、O単独で行うO酸化処理による酸化量を上回る。また、400℃以上の温度では、O+H添加酸化処理による酸化量は、O酸化処理による酸化量を上回る。さらに、450℃以上の温度では、O+H添加酸化処理による酸化量は、O酸化処理による酸化量およびOプラズマ酸化処理による酸化量を上回ることが分かる。
【0099】
これらのことから、本実施形態の成膜シーケンスにおける成膜温度(ウエハ温度)は、O+H添加酸化処理における酸化力の観点からいうと、300℃以上、特に350℃以上が好ましく、さらなる酸化力向上のためには400℃以上、さらには450℃以上がより好ましい。なお、O+H添加酸化処理によれば、450℃以上であれば、O酸化処理による酸化力およびOプラズマ酸化処理による酸化力を上回る酸化力を得ることができる。また、この酸化処理によれば、650℃、700℃、800℃、950℃においても、O酸化処理による酸化力およびOプラズマ酸化処理による酸化力を上回る酸化力を得ることができることを確認した。
【0100】
300℃を超える温度では、OとHとが反応することによって形成される水分(HO)や、その時に生成される高エネルギーを有する酸素、およびシリコン酸化膜中において拡散速度の速い水素イオン(H)のシリコン酸化膜中における拡散による酸素イオン(O2−)の拡散促進により、強い酸化力を有するものと考えられる。なお、酸素分子(O−O)の結合エネルギーや水素分子(H−H)の結合エネルギーよりも、水(H−O−H)の結合エネルギーの方が大きい。このことは、酸素原子同士が結合して酸素分子となった状態よりも、酸素原子と水素原子とが結合して水となった状態の方が安定状態にあるといえる。また、炉内圧力特性によれば、OとHとが反応して水が生じていることは明白である。これらのことから、OへのHの添加により酸化力が向上するものと考えられる。
【0101】
なお、300℃以上の温度では、O+H添加プラズマ酸化処理による酸化量は、O+H添加酸化処理による酸化量、O酸化処理による酸化量、およびOプラズマ酸化処理による酸化量を上回り、これらの中で最も大きい。よって、本実施形態の成膜シーケンスにおけるステップ3の酸化処理は、プラズマを用いて行う場合でも有効と言える。また、650℃、700℃、800℃、950℃においても、O+H添加プラズマ酸化処理による酸化力は、O+H添加酸化処理による酸化力、O酸化処理による酸化力、およびOプラズマ酸化処理による酸化力を上回ることを確認した。なお、OにHを添加したものをプラズマで活性化して酸化処理する場合だけでなく、OプラズマにHを添加して酸化処理するようにしてもよく、OにHプラズマを添加して酸化処理するようにしてもよい。すなわち、OおよびHのうち、何れかまたは両方をプラズマで活性化して酸化処理するようにしてもよい。これらの場合でも、O+H添加プラズマ酸化処理と同様な効果が得られる。
【0102】
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0103】
本発明の一態様によれば、
基板を収容した処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して、前記所定元素含有層を酸化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工
程を挟んで交互に繰り返して、前記基板上に所定膜厚の酸化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする半導体装置の製造方法が提供される。
【0104】
好ましくは、前記所定元素含有層を形成する工程では、前記ノズルを介して前記原料ガスと一緒に供給する不活性ガスまたは水素含有ガスの流量を、前記処理容器内をパージする工程において前記ノズルを介して供給する不活性ガスの流量よりも大きくする。
【0105】
また好ましくは、前記所定元素含有層を形成する工程では、前記ノズルを介して前記原料ガスと一緒に供給する不活性ガスまたは水素含有ガスの流量を、前記原料ガスの流量よりも大きくする。
【0106】
また好ましくは、前記所定元素含有層を形成する工程では、前記ノズルを介して前記原料ガスと一緒に供給する不活性ガスまたは水素含有ガスの流量を、前記原料ガスの流量の10〜30倍とする。
【0107】
また好ましくは、前記流量が体積流量である。
【0108】
また好ましくは、前記所定元素含有層を形成する工程では、前記ノズルを介して前記原料ガスと一緒に供給する不活性ガスまたは水素含有ガスの作用により、前記所定元素含有層の堆積または吸着を阻害させつつ前記所定元素含有層を形成する。
【0109】
また好ましくは、前記酸化膜を形成する工程では、前記基板の温度を350℃以上950℃以下とする。
【0110】
また好ましくは、前記酸化膜を形成する工程では、前記基板の温度を700℃以上950℃以下とする。
【0111】
また好ましくは、前記酸化膜を形成する工程では、前記基板の温度を700℃以上800℃以下とする。
【0112】
本発明の他の態様によれば、
基板を収容した処理容器内にシリコンを含む原料ガスを供給し排気して、前記基板上にシリコン含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して、前記シリコン含有層をシリコン酸化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記基板上に所定膜厚のシリコン酸化膜を形成する工程を有し、
前記シリコン含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする半導体装置の製造方法が提供される。
【0113】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を収容した処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して、前記所定元素含有層を酸化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記基板上に所定膜厚の酸化膜を形成する工程を有し、 前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記処理容器内をパージする工程において不活性ガスを前記基板の表面と平行方向に吹き付けるよりも強く、前記原料ガスを前記基板の表面と平行方向に吹き付ける半導体装置の製造方法が提供される。
【0114】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を収容した処理容器内にシリコンを含む原料ガスを供給し排気して、前記基板上にシリコン含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して、前記シリコン含有層をシリコン酸化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記基板上に所定膜厚のシリコン酸化膜を形成する工程を有し、
前記シリコン含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記処理容器内をパージする工程において不活性ガスを前記基板の表面と平行方向に吹き付けるよりも強く、前記原料ガスを前記基板の表面と平行方向に吹き付ける半導体装置の製造方法が提供される。
【0115】
本発明の他の態様によれば、
基板を収容した処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して、前記所定元素含有層を酸化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記基板上に所定膜厚の酸化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくする基板処理方法が提供される。
【0116】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を収容した処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して、前記所定元素含有層を酸化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記基板上に所定膜厚の酸化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記処理容器内をパージする工程において不活性ガスを前記基板の表面と平行方向に吹き付けるよりも強く、前記原料ガスを前記基板の表面と平行方向に吹き付ける基板処理方法が提供される。
【0117】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内を加熱するヒータと、
前記処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理容器内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
前記処理容器内の圧力を調整する圧力調整部と、
基板を収容した前記処理容器内に前記原料ガスを供給し排気して、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して、前記所定元素含有層を酸化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記基板上に所定膜厚の酸化膜を形成する工程を行い、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくするように、
前記原料ガス供給系、前記酸素含有ガス供給系、前記水素含有ガス供給系、前記不活性ガス供給系、前記排気系、前記圧力調整部および前記ヒータを制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0118】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内を加熱するヒータと、
前記処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理容器内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
前記処理容器内の圧力を調整する圧力調整部と、
基板を収容した前記処理容器内に前記原料ガスを供給し排気して、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して、前記所定元素含有層を酸化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記基板上に所定膜厚の酸化膜を形成する工程を行い、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記処理容器内をパージする工程において不活性ガスを前記基板の表面と平行方向に吹き付けるよりも強く、前記原料ガスを前記基板の表面と平行方向に吹き付けるように、
前記原料ガス供給系、前記酸素含有ガス供給系、前記水素含有ガス供給系、前記不活性ガス供給系、前記排気系、前記圧力調整部および前記ヒータを制御する制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0119】
121 コントローラ
200 ウエハ
201 処理室
202 処理炉
203 反応管
207 ヒータ
231 排気管
232a 第1ガス供給管
232b 第2ガス供給管
232c 第3ガス供給管
232d 第1不活性ガス供給管
232e 第2不活性ガス供給管
232f 第3不活性ガス供給管
241a マスフローコントローラ
241b マスフローコントローラ
241c マスフローコントローラ
241d マスフローコントローラ
241e マスフローコントローラ
241f マスフローコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容した処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して、前記所定元素含有層を酸化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記基板上に所定膜厚の酸化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
基板を収容した処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給し排気して、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して、前記所定元素含有層を酸化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記基板上に所定膜厚の酸化膜を形成する工程を有し、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくすることを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内を加熱するヒータと、
前記処理容器内に所定元素を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理容器内に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に水素含有ガスを供給する水素含有ガス供給系と、
前記処理容器内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給系と、
前記処理容器内を排気する排気系と、
前記処理容器内の圧力を調整する圧力調整部と、
基板を収容した前記処理容器内に前記原料ガスを供給し排気して、前記基板上に所定元素含有層を形成する工程と、
加熱された大気圧未満の圧力雰囲気下にある前記処理容器内に酸素含有ガスと水素含有ガスとを供給し排気して、前記所定元素含有層を酸化層に変化させる工程とを、
その間に前記処理容器内に不活性ガスを供給し排気して前記処理容器内をパージする工程を挟んで交互に繰り返して、前記基板上に所定膜厚の酸化膜を形成する工程を行い、
前記所定元素含有層を形成する工程では、前記原料ガスを前記基板の側方に設けられたノズルを介して前記基板に向けて供給し、その際、そのノズルを介して前記原料ガスと一緒に不活性ガスまたは水素含有ガスを前記基板に向けて供給することで、前記基板の表面と平行方向に流れる前記原料ガスの流速を、前記処理容器内をパージする工程において前記基板の表面と平行方向に流れる不活性ガスの流速よりも大きくするように、
前記原料ガス供給系、前記酸素含有ガス供給系、前記水素含有ガス供給系、前記不活性ガス供給系、前記排気系、前記圧力調整部および前記ヒータを制御する制御部と、
を有することを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−129879(P2011−129879A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223492(P2010−223492)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】