半導体装置の製造方法及び半導体装置
【目的】拡散層とゲート電極との少なくとも1つの上に耐熱性が向上したNiSi膜が形成された半導体装置を提供することを目的とする。
【構成】本発明の一態様の半導体装置は、Si基板200と、Si基板200内に形成された拡散層10と、Si基板200上にSiを用いて形成されたゲート電極20との少なくとも1つと、前記拡散層10と前記ゲート電極20との少なくとも1つ上に接触して形成されたP元素を含有したNiSi膜40,42と、を備えたことを特徴とする。
【構成】本発明の一態様の半導体装置は、Si基板200と、Si基板200内に形成された拡散層10と、Si基板200上にSiを用いて形成されたゲート電極20との少なくとも1つと、前記拡散層10と前記ゲート電極20との少なくとも1つ上に接触して形成されたP元素を含有したNiSi膜40,42と、を備えたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。例えば、拡散層或いはゲート電極上に金属シリサイド層を有するトランジスタを含む半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路(LSI)の高集積化、及び高性能化に伴って、半導体基板の拡散層やトランジスタのゲート電極の低抵抗化が求められている。かかる要求に対応するため、拡散層やゲート電極上に金属シリサイド膜を形成してサリサイド構造とすることで拡散層抵抗やゲート電極抵抗の低減が図られている。そして、金属シリサイド膜の1つとして、ニッケルシリサイド(NiSi)膜が挙げられる。例えば、Ptを含有させたNiSi膜を拡散層やゲート電極上に形成することで拡散層抵抗やゲート電極抵抗の低減が図られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来のNiSi膜は、NiSi膜形成工程後に行なわれる半導体装置を形成するためのその他の熱プロセスによって、NiSi膜の凝集、或いはシリコン(Si)層中でのニッケル(Ni)原子の移動が起こる。特に、450℃以上の熱プロセスにおいてかかる現象が顕著に起こる。かかる現象により、Si層中でNiSi2等のSiリッチ層が形成されてしまう。NiシリサイドにSiリッチ層が形成されてしまうと配線抵抗の増大や拡散層での接合リークを引き起こすといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−99947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様は、上述したような従来の問題点を克服し、拡散層とゲート電極との少なくとも1つの上に耐熱性が向上したNiSi膜が形成された半導体装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の半導体装置の製造方法は、シリコン(Si)を用いた拡散層とSiを用いたゲート電極との少なくとも1つが表面に露出した基板上に、リン(P)元素を含有したニッケル(Ni)膜を形成する工程と、前記P元素を含有したNi膜と前記拡散層とゲート電極との少なくとも1つのSiとから、前記基板上に、P元素を含有したニッケルシリサイド(NiSi)膜を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様の半導体装置は、シリコン(Si)基板と、前記Si基板内に形成された拡散層と、前記Si基板上にSiを用いて形成されたゲート電極との少なくとも1つと、前記拡散層と前記ゲート電極との少なくとも1つ上に接触して形成されたP元素を含有したニッケルシリサイド(NiSi)膜と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、拡散層やゲート電極上に耐熱性が向上したNiSi膜を形成できる。その結果、配線抵抗の増大や拡散層での接合リークを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。
【図2】図1のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
【図3】実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の一例を示す概念図である。
【図4】実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の他の一例を示す概念図である。
【図5】実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の他の一例を示す概念図である。
【図6】実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の他の一例を示す概念図である。
【図7】実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の他の一例を示す概念図である。
【図8】実施の形態1におけるNiSi膜のP濃度を示すグラフである。
【図9】比較対象となるPt含有NiSi膜の耐熱性を測定した結果を示すグラフである。
【図10】比較対象となるPt含有NiSi膜を拡散層上に形成した半導体装置を800℃に加熱した場合の断面および表面の写真を示す図である。
【図11】実施の形態1におけるP含有NiSi膜の耐熱性を測定した結果を示すグラフである。
【図12】実施の形態1におけるP含有NiSi膜を拡散層上に形成した半導体装置を400℃と800℃に加熱した場合のそれぞれの断面の写真を示す図である。
【図13】実施の形態1におけるP含有NiSi膜を800℃に加熱した場合のNiとSiの組成比を示すグラフである。
【図14】実施の形態1におけるP含有NiSi膜と比較対象となる従来のNiSi膜との配向性を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、実施の形態1について、図面を用いて説明する。
図1は、実施の形態1における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。図1において、実施の形態1の半導体装置の製造方法では、リン(P)含有ニッケル(Ni)膜形成工程(S102)と、P含有ニッケルシリサイド(NiSi)膜形成工程(S104)と、P含有Ni膜除去工程(S106)という一連の工程を実施する。
【0011】
図2は、図1のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。まず、基板200には、予め、以下のような半導体素子の一部分を形成しておく。例えばp型シリコン(Si)基板200内に例えばシャロートレンチアイソレーション(STI)技術により素子分離絶縁膜202を形成する。そして、基板200上にゲート絶縁膜22の材料となる例えば酸化シリコン(SiO2)膜を形成する。さらに、SiO2膜上にゲート電極20の材料となる例えばポリシリコン(Si)膜を形成する。或いは、ゲート電極20の材料としてアモルファスシリコンを用いても好適である。そして、リソグラフィ技術とエッチング技術を用いて、p型シリコン基板200内の素子分離絶縁膜202で囲まれた領域上の一部に選択的にゲート絶縁膜22とゲート電極20の材料を残して、その他の余分なゲート絶縁膜22とゲート電極20の材料をエッチングにより除去する。これにより、p型シリコン基板200内の素子分離絶縁膜202で囲まれた領域上の一部に選択的にゲート絶縁膜22が形成され、ゲート絶縁膜22上に選択的にゲート電極20が形成される。そして、かかるゲート絶縁膜22とゲート電極20をマスクとして、p型シリコン基板200内の素子分離絶縁膜202で囲まれた残りの領域にn型不純物を注入することで図示しないn型エクステンションを形成する。そして、また、ゲート絶縁膜22とゲート電極20が形成された基板200上にサイドウォール絶縁膜24の材料となる例えばSiO2膜を形成し、エッチバックすることでゲート電極20とゲート絶縁膜22の両側面にサイドウォール絶縁膜24が形成される。そして、サイドウォール絶縁膜24とゲート絶縁膜22とゲート電極20をマスクとして、n型エクステンションにさらにn型不純物をイオン注入することでn型の拡散層10が形成される。
【0012】
以上のようにして、n型のSiで形成される拡散層10と例えばポリシリコンを用いたゲート電極20が表面に露出した基板200が形成される。ここで、各層のp型とn型は逆であっても構わない。また、基板200として、例えば、直径300ミリのシリコンウェハを用いる。
【0013】
図2(a)において、P含有Ni膜形成工程(S102)として、Siの拡散層10とポリシリコンを用いたゲート電極20が表面に露出した基板200上に、P元素を含有したNi膜30を例えば10nmの膜厚で形成する。
【0014】
図3は、実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の一例を示す概念図である。P含有Ni膜30は、例えば、P元素を含んだNiターゲットを用いた物理気相成長(PVD)法によって形成されると好適である。チャンバ102内に配置されたステージ104上に上述したSiの拡散層10とポリシリコンを用いたゲート電極20が表面に露出した基板300が配置される。また、チャンバ102内でステージ104と対向する位置にはP元素を含んだNiターゲット106が配置される。かかる状態で、アルゴン(Ar)を供給しながらターゲット106と基板300に所定の電圧を印加することでターゲット106からP元素を含んだNiが基板300表面にスパッタされる。また、チャンバ102内は図示しない真空ポンプで真空引きされ所望の真空雰囲気に制御される。ここで、基板温度は例えば200℃以上の加熱条件とすることが望ましい。スパッタの際に、基板を冷却するのではなく加熱することで後述するニッケルシリサイド(NiSi)膜を(200)配向と(020)配向とを含まない結晶構造で形成することができる。図3の例では、例えばターゲット106に負の電圧を基板300に正の電圧を印加する。かかるスパッタ法の手法は、図3の例に限らずその他の技術を用いておこなっても構わないことは言うまでもない。これにより、P含有Ni膜30が基板300表面に形成される。或いは、P含有Ni膜30を以下の方法で形成してもよい。
【0015】
図4は、実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の他の一例を示す概念図である。図4において、P含有Ni膜30は、例えば、P元素を含まないNiターゲット108とP元素を含むガスとを用いたPVD法によって形成されても好適である。図3の例とは、P元素を含んだNiターゲット106の代わりにP元素を含まないNiターゲット108を用いた点と供給ガスにP元素を含むガスを追加した点が異なる。その他の構成は図3と同様である。これにより、P含有Ni膜30が基板300表面に形成される。或いは、P含有Ni膜30を以下の方法で形成してもよい。
【0016】
図5は、実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の他の一例を示す概念図である。図5において、P含有Ni膜30は、まず、PVD法でNi膜32を形成した後にかかるNi膜32にP元素を注入するイオンインプラーテンション法によって形成されても好適である。PVD法でNi膜32を形成する手法は、上述した図4の構成において供給ガスからP元素を除けばよい。或いは、上述した図3の構成においてターゲット106の代わりにターゲット108を用いればよい。さらに、PVD法にかえて後述する化学気相成長(CVD)法によってNi膜32を形成してもよい。そして、Ni膜32を形成した後に上方からP元素をイオン注入することで、P含有Ni膜30が基板300表面に形成される。そして、かかるスパッタの際に、基板温度は例えば200℃以上の加熱条件とすることが望ましい。基板を冷却するのではなく加熱することで後述するNiSi膜を(200)配向と(020)配向とを含まない結晶構造で形成することができる。以上のようにして、P含有Ni膜30が基板300表面に形成される。或いは、P含有Ni膜30を以下の方法で形成してもよい。
【0017】
図6は、実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の他の一例を示す概念図である。図6において、P含有Ni膜30は、Ni元素とP元素を含んだ材料を用いたCVD法によって形成されても好適である。チャンバ112内に配置されたステージ114上に上述したSiの拡散層10とポリシリコンを用いたゲート電極20が表面に露出した基板300が配置される。また、チャンバ112内でステージ114と対向する位置にはプロセスガスを供給する供給口となるシャワーヘッド116が配置される。また、チャンバ112内は図示しない真空ポンプで真空引きされ所望の真空雰囲気に制御される。Ni元素とP元素を含んだ液体或いは固体の原料120が納められた容器122は、気化器124に接続され、原料120が気化されてシャワーヘッド116からチャンバ112内に供給される。原料120として、例えば、常温で液体であるNi(PF3)4を用いることができる。プロセス温度は、150℃以上が望ましく、特に160〜240℃がより好適である。原料120はNi元素とP元素を含んだ材料であれば、液体或いは固体に限らず気体であっても構わない。また、プラズマを用いたPECVD法を用いても好適である。以上のようにして、P含有Ni膜30が基板300表面に形成される。或いは、P含有Ni膜30を以下の方法で形成してもよい。
【0018】
図7は、実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の他の一例を示す概念図である。図7において、P含有Ni膜30は、P元素を含んだ液体を用いたNiめっき法によって形成されても好適である。P元素とNi元素を含んだめっき液134が入っためっき槽132に上述したSiの拡散層10とポリシリコンを用いたゲート電極20が表面に露出した基板300の表面が下向き(液面側)になるように浸漬させる。P元素は例えば添加剤としてめっき液134に混合させておけばよい。そして、電解めっき法を用いる場合には、めっき槽132内で、カソードとなる基板300表面に対向する位置にアノード電極136を配置する。そして、基板300表面が負極、アノード電極136が正極(陽極)となるように電圧を印加し、電流を流すことで、P含有Ni膜30が基板300表面に形成される。或いは、電解めっき法ではなく無電解めっき法を用いてもよい。かかる場合にはアノード電極136は不要である。
【0019】
図2(b)において、P含有NiSi膜形成工程(S104)として、P元素を含有したNi膜30が形成された基板200をアニール処理することで、P含有Ni膜30が接触しているゲート電極20のポリシリコンとの接触界面に選択的にP元素を含有したNiSi膜40を形成する。そして、同様に、P含有Ni膜30が接触している拡散層10のSiとの接触界面に選択的にP元素を含有したNiSi膜42を形成する。以上のようにして、P元素含有Ni膜30と拡散層10のSi及びゲート電極20のSiとから、基板200上に、選択的にP元素含有NiSi膜40,42が形成される。
【0020】
図2(c)において、P含有Ni膜除去工程(S106)として、基板200表面に形成されたP元素を含有したNi膜30を例えばウェットエッチング法で除去する。エッチング液として、例えば、硫酸過水を用いると好適である。これにより、P元素含有NiSi膜40,42の形成に使用されなかったP含有Ni膜30が除去され、ゲート電極20上に選択的に形成されたP元素含有NiSi膜40が、そして、拡散層10上に選択的に形成されたP元素含有NiSi膜42が露出する。
【0021】
以上のように、上述した各工程が実施されることでトランジスタ素子を形成することができる。P元素含有NiSi膜40,42を形成することで、拡散層10の抵抗およびゲート電極20(或いはゲート配線)の配線抵抗を低減することができる。また、配線状に形成されたゲート電極20をメモリ素子のワード線として使用すれば、ワード線の配線抵抗を低減することができる。さらに、多層配線を形成する場合には、かかる基板上に層間絶縁膜およびコンタクト等を形成し、さらに上層に配線層を形成すればよい。
【0022】
図8は、実施の形態1におけるNiSi膜のP濃度を示すグラフである。上述した各工程が実施された基板の元素濃度を測定したところ、図8に示すように、P含有Ni膜30から形成されたNiSi膜40,42中にもPが含有されていることがわかる。ここで、NiSi膜のP濃度は、0.5wt%以上が望ましい。
【0023】
図9は、比較対象となるPt含有NiSi膜の耐熱性を測定した結果を示すグラフである。従来のPt含有NiSi膜を拡散層上に形成した半導体装置を加熱した場合に配線抵抗を測定した。その結果、耐熱性を向上させるためにPtを添加した場合でも500℃を超えると、図9に示すように、配線抵抗が上昇してしまうことがわかる。
【0024】
図10は、比較対象となるPt含有NiSi膜を拡散層上に形成した半導体装置を800℃に加熱した場合の断面および表面の写真を示す図である。図10(a)には、断面が示されている。図10(b)には表面が示されている。Pt含有NiSi膜は、800℃に加熱されると凝集し、図10(a)に示すようにSi上に膜厚が局所的に厚くなる箇所とほとんど膜厚が無くなる箇所とが確認された。また、表面でもかかる凝集によりPt含有NiSi膜が無くなりSi膜が露出した箇所が確認された。Pt含有NiSi膜が無くなる(膜切れを起こす)と配線抵抗が上昇することに繋がる。また、一部に凝集して膜厚が厚くなると、拡散層ではPt含有NiSi膜が拡散層を突き抜けp型Si領域にまで達することで接合リークが生じる。また、突き破らないまでも拡散層のSi領域の厚さが薄くなることで接合リークが生じ得る。よって、比較対象となるPt含有NiSi膜では十分な耐熱性が得られないことがわかる。
【0025】
図11は、実施の形態1におけるP含有NiSi膜の耐熱性を測定した結果を示すグラフである。実施の形態1におけるP含有NiSi膜42を拡散層上に形成した半導体装置を加熱した場合に配線抵抗を測定した。その結果、800℃でも、図11に示すように、配線抵抗がほとんど上昇していないことがわかる。
【0026】
図12は、実施の形態1におけるP含有NiSi膜を拡散層上に形成した半導体装置を400℃と800℃に加熱した場合のそれぞれの断面の写真を示す図である。図12(a)には、400℃に加熱した場合の断面が示されている。図12(b)には800℃に加熱した場合の断面が示されている。いずれの場合でも所定の膜厚のP含有NiSi膜42を確認でき、特に、凝集をおこした様子は確認されなかった。以上のように、NiSi膜にPを含有させることで耐熱性を従来に比べて格段に向上させることができる。
【0027】
図13は、実施の形態1におけるP含有NiSi膜を800℃に加熱した場合のNiとSiの組成比を示すグラフである。800℃に加熱した場合でも、図13に示すEDX分析の結果より、NiとSiの組成比が約1:1であることがわかる。よって、P含有NiSi膜は、NiSi2等のSiリッチにはなっておらず、モノシリサイドのまま維持されていることがわかる。
【0028】
さらに、発明者らはP含有NiSi膜の結晶構造の配向性を制御することで耐熱性の向上を図ることができるという知見を得た。
【0029】
図14は、実施の形態1におけるP含有NiSi膜と比較対象となる従来のNiSi膜との配向性を比較したグラフである。実施の形態1におけるP含有NiSi膜と比較対象となる従来の耐熱性が不十分のNiSi膜との配向性をX線回折により比較した結果、種々ある配向のうち、図14に示すように従来のNiSi膜の結晶は、特に、(200)配向と(020)配向とを有していた。これに対して、耐熱性が向上された実施の形態1におけるP含有NiSi膜では、(200)配向と(020)配向とが存在しておらず、さらに鋭意検討を重ねた結果、(200)配向と(020)配向とを有さない結晶構造に制御することで、NiSi膜の耐熱性が向上することを発明者らは見出した。
【0030】
そこで、実施の形態1では、P含有NiSi膜を形成する際に、(200)配向と(020)配向とのうち少なくとも1つを有さない結晶構造に形成するように制御している。(200)配向と(020)配向とを有さない結晶構造に制御するには、例えば、上述したようにシリサイド化する前のP含有Ni膜30を形成する際の温度を調整すればよい。すなわち、スパッタ法では、例えば200℃以上に基板を加熱しながらP含有Ni膜30或いはNi膜32を形成することで制御できる。また、CVD法では160〜240℃のプロセス温度でP含有Ni膜30或いはNi膜32を形成することで制御できる。
【0031】
ここで、上述した例では、Si基板内に形成された拡散層10と、Si基板上にSiを用いて形成されたゲート電極20との両方を形成した場合について説明したが、配線抵抗の低減の観点からはどちらか一方だけをとっても効果があることは言うまでもない。よって、実施の形態1における半導体装置は、Si基板と、Si基板内に形成された拡散層10と、Si基板上にSiを用いて形成されたゲート電極20との少なくとも1つと、拡散層10とゲート電極20との少なくとも1つ上に接触して形成されたP元素を含有したNiSi膜40,42と、を備えていればよい。
【0032】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0033】
さらに、各層や膜の膜厚や、サイズ、形状、数などについても、半導体集積回路や各種の半導体素子において必要とされるものを適宜選択して用いることができる。
【0034】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての半導体装置及び半導体装置の製造方法は、本発明の範囲に包含される。
【0035】
また、説明の簡便化のために、半導体産業で通常用いられる手法、例えば、フォトリソグラフィプロセス、処理前後のクリーニング等は省略しているが、それらの手法が含まれ得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
10 拡散層、20 ゲート電極、30,32 Ni膜、40,42 NiSi膜、200,300 基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。例えば、拡散層或いはゲート電極上に金属シリサイド層を有するトランジスタを含む半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路(LSI)の高集積化、及び高性能化に伴って、半導体基板の拡散層やトランジスタのゲート電極の低抵抗化が求められている。かかる要求に対応するため、拡散層やゲート電極上に金属シリサイド膜を形成してサリサイド構造とすることで拡散層抵抗やゲート電極抵抗の低減が図られている。そして、金属シリサイド膜の1つとして、ニッケルシリサイド(NiSi)膜が挙げられる。例えば、Ptを含有させたNiSi膜を拡散層やゲート電極上に形成することで拡散層抵抗やゲート電極抵抗の低減が図られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来のNiSi膜は、NiSi膜形成工程後に行なわれる半導体装置を形成するためのその他の熱プロセスによって、NiSi膜の凝集、或いはシリコン(Si)層中でのニッケル(Ni)原子の移動が起こる。特に、450℃以上の熱プロセスにおいてかかる現象が顕著に起こる。かかる現象により、Si層中でNiSi2等のSiリッチ層が形成されてしまう。NiシリサイドにSiリッチ層が形成されてしまうと配線抵抗の増大や拡散層での接合リークを引き起こすといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−99947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様は、上述したような従来の問題点を克服し、拡散層とゲート電極との少なくとも1つの上に耐熱性が向上したNiSi膜が形成された半導体装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の半導体装置の製造方法は、シリコン(Si)を用いた拡散層とSiを用いたゲート電極との少なくとも1つが表面に露出した基板上に、リン(P)元素を含有したニッケル(Ni)膜を形成する工程と、前記P元素を含有したNi膜と前記拡散層とゲート電極との少なくとも1つのSiとから、前記基板上に、P元素を含有したニッケルシリサイド(NiSi)膜を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様の半導体装置は、シリコン(Si)基板と、前記Si基板内に形成された拡散層と、前記Si基板上にSiを用いて形成されたゲート電極との少なくとも1つと、前記拡散層と前記ゲート電極との少なくとも1つ上に接触して形成されたP元素を含有したニッケルシリサイド(NiSi)膜と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、拡散層やゲート電極上に耐熱性が向上したNiSi膜を形成できる。その結果、配線抵抗の増大や拡散層での接合リークを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。
【図2】図1のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。
【図3】実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の一例を示す概念図である。
【図4】実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の他の一例を示す概念図である。
【図5】実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の他の一例を示す概念図である。
【図6】実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の他の一例を示す概念図である。
【図7】実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の他の一例を示す概念図である。
【図8】実施の形態1におけるNiSi膜のP濃度を示すグラフである。
【図9】比較対象となるPt含有NiSi膜の耐熱性を測定した結果を示すグラフである。
【図10】比較対象となるPt含有NiSi膜を拡散層上に形成した半導体装置を800℃に加熱した場合の断面および表面の写真を示す図である。
【図11】実施の形態1におけるP含有NiSi膜の耐熱性を測定した結果を示すグラフである。
【図12】実施の形態1におけるP含有NiSi膜を拡散層上に形成した半導体装置を400℃と800℃に加熱した場合のそれぞれの断面の写真を示す図である。
【図13】実施の形態1におけるP含有NiSi膜を800℃に加熱した場合のNiとSiの組成比を示すグラフである。
【図14】実施の形態1におけるP含有NiSi膜と比較対象となる従来のNiSi膜との配向性を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、実施の形態1について、図面を用いて説明する。
図1は、実施の形態1における半導体装置の製造方法の要部を表すフローチャートである。図1において、実施の形態1の半導体装置の製造方法では、リン(P)含有ニッケル(Ni)膜形成工程(S102)と、P含有ニッケルシリサイド(NiSi)膜形成工程(S104)と、P含有Ni膜除去工程(S106)という一連の工程を実施する。
【0011】
図2は、図1のフローチャートに対応して実施される工程を表す工程断面図である。まず、基板200には、予め、以下のような半導体素子の一部分を形成しておく。例えばp型シリコン(Si)基板200内に例えばシャロートレンチアイソレーション(STI)技術により素子分離絶縁膜202を形成する。そして、基板200上にゲート絶縁膜22の材料となる例えば酸化シリコン(SiO2)膜を形成する。さらに、SiO2膜上にゲート電極20の材料となる例えばポリシリコン(Si)膜を形成する。或いは、ゲート電極20の材料としてアモルファスシリコンを用いても好適である。そして、リソグラフィ技術とエッチング技術を用いて、p型シリコン基板200内の素子分離絶縁膜202で囲まれた領域上の一部に選択的にゲート絶縁膜22とゲート電極20の材料を残して、その他の余分なゲート絶縁膜22とゲート電極20の材料をエッチングにより除去する。これにより、p型シリコン基板200内の素子分離絶縁膜202で囲まれた領域上の一部に選択的にゲート絶縁膜22が形成され、ゲート絶縁膜22上に選択的にゲート電極20が形成される。そして、かかるゲート絶縁膜22とゲート電極20をマスクとして、p型シリコン基板200内の素子分離絶縁膜202で囲まれた残りの領域にn型不純物を注入することで図示しないn型エクステンションを形成する。そして、また、ゲート絶縁膜22とゲート電極20が形成された基板200上にサイドウォール絶縁膜24の材料となる例えばSiO2膜を形成し、エッチバックすることでゲート電極20とゲート絶縁膜22の両側面にサイドウォール絶縁膜24が形成される。そして、サイドウォール絶縁膜24とゲート絶縁膜22とゲート電極20をマスクとして、n型エクステンションにさらにn型不純物をイオン注入することでn型の拡散層10が形成される。
【0012】
以上のようにして、n型のSiで形成される拡散層10と例えばポリシリコンを用いたゲート電極20が表面に露出した基板200が形成される。ここで、各層のp型とn型は逆であっても構わない。また、基板200として、例えば、直径300ミリのシリコンウェハを用いる。
【0013】
図2(a)において、P含有Ni膜形成工程(S102)として、Siの拡散層10とポリシリコンを用いたゲート電極20が表面に露出した基板200上に、P元素を含有したNi膜30を例えば10nmの膜厚で形成する。
【0014】
図3は、実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の一例を示す概念図である。P含有Ni膜30は、例えば、P元素を含んだNiターゲットを用いた物理気相成長(PVD)法によって形成されると好適である。チャンバ102内に配置されたステージ104上に上述したSiの拡散層10とポリシリコンを用いたゲート電極20が表面に露出した基板300が配置される。また、チャンバ102内でステージ104と対向する位置にはP元素を含んだNiターゲット106が配置される。かかる状態で、アルゴン(Ar)を供給しながらターゲット106と基板300に所定の電圧を印加することでターゲット106からP元素を含んだNiが基板300表面にスパッタされる。また、チャンバ102内は図示しない真空ポンプで真空引きされ所望の真空雰囲気に制御される。ここで、基板温度は例えば200℃以上の加熱条件とすることが望ましい。スパッタの際に、基板を冷却するのではなく加熱することで後述するニッケルシリサイド(NiSi)膜を(200)配向と(020)配向とを含まない結晶構造で形成することができる。図3の例では、例えばターゲット106に負の電圧を基板300に正の電圧を印加する。かかるスパッタ法の手法は、図3の例に限らずその他の技術を用いておこなっても構わないことは言うまでもない。これにより、P含有Ni膜30が基板300表面に形成される。或いは、P含有Ni膜30を以下の方法で形成してもよい。
【0015】
図4は、実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の他の一例を示す概念図である。図4において、P含有Ni膜30は、例えば、P元素を含まないNiターゲット108とP元素を含むガスとを用いたPVD法によって形成されても好適である。図3の例とは、P元素を含んだNiターゲット106の代わりにP元素を含まないNiターゲット108を用いた点と供給ガスにP元素を含むガスを追加した点が異なる。その他の構成は図3と同様である。これにより、P含有Ni膜30が基板300表面に形成される。或いは、P含有Ni膜30を以下の方法で形成してもよい。
【0016】
図5は、実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の他の一例を示す概念図である。図5において、P含有Ni膜30は、まず、PVD法でNi膜32を形成した後にかかるNi膜32にP元素を注入するイオンインプラーテンション法によって形成されても好適である。PVD法でNi膜32を形成する手法は、上述した図4の構成において供給ガスからP元素を除けばよい。或いは、上述した図3の構成においてターゲット106の代わりにターゲット108を用いればよい。さらに、PVD法にかえて後述する化学気相成長(CVD)法によってNi膜32を形成してもよい。そして、Ni膜32を形成した後に上方からP元素をイオン注入することで、P含有Ni膜30が基板300表面に形成される。そして、かかるスパッタの際に、基板温度は例えば200℃以上の加熱条件とすることが望ましい。基板を冷却するのではなく加熱することで後述するNiSi膜を(200)配向と(020)配向とを含まない結晶構造で形成することができる。以上のようにして、P含有Ni膜30が基板300表面に形成される。或いは、P含有Ni膜30を以下の方法で形成してもよい。
【0017】
図6は、実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の他の一例を示す概念図である。図6において、P含有Ni膜30は、Ni元素とP元素を含んだ材料を用いたCVD法によって形成されても好適である。チャンバ112内に配置されたステージ114上に上述したSiの拡散層10とポリシリコンを用いたゲート電極20が表面に露出した基板300が配置される。また、チャンバ112内でステージ114と対向する位置にはプロセスガスを供給する供給口となるシャワーヘッド116が配置される。また、チャンバ112内は図示しない真空ポンプで真空引きされ所望の真空雰囲気に制御される。Ni元素とP元素を含んだ液体或いは固体の原料120が納められた容器122は、気化器124に接続され、原料120が気化されてシャワーヘッド116からチャンバ112内に供給される。原料120として、例えば、常温で液体であるNi(PF3)4を用いることができる。プロセス温度は、150℃以上が望ましく、特に160〜240℃がより好適である。原料120はNi元素とP元素を含んだ材料であれば、液体或いは固体に限らず気体であっても構わない。また、プラズマを用いたPECVD法を用いても好適である。以上のようにして、P含有Ni膜30が基板300表面に形成される。或いは、P含有Ni膜30を以下の方法で形成してもよい。
【0018】
図7は、実施の形態1におけるP含有Ni膜を形成する方法の他の一例を示す概念図である。図7において、P含有Ni膜30は、P元素を含んだ液体を用いたNiめっき法によって形成されても好適である。P元素とNi元素を含んだめっき液134が入っためっき槽132に上述したSiの拡散層10とポリシリコンを用いたゲート電極20が表面に露出した基板300の表面が下向き(液面側)になるように浸漬させる。P元素は例えば添加剤としてめっき液134に混合させておけばよい。そして、電解めっき法を用いる場合には、めっき槽132内で、カソードとなる基板300表面に対向する位置にアノード電極136を配置する。そして、基板300表面が負極、アノード電極136が正極(陽極)となるように電圧を印加し、電流を流すことで、P含有Ni膜30が基板300表面に形成される。或いは、電解めっき法ではなく無電解めっき法を用いてもよい。かかる場合にはアノード電極136は不要である。
【0019】
図2(b)において、P含有NiSi膜形成工程(S104)として、P元素を含有したNi膜30が形成された基板200をアニール処理することで、P含有Ni膜30が接触しているゲート電極20のポリシリコンとの接触界面に選択的にP元素を含有したNiSi膜40を形成する。そして、同様に、P含有Ni膜30が接触している拡散層10のSiとの接触界面に選択的にP元素を含有したNiSi膜42を形成する。以上のようにして、P元素含有Ni膜30と拡散層10のSi及びゲート電極20のSiとから、基板200上に、選択的にP元素含有NiSi膜40,42が形成される。
【0020】
図2(c)において、P含有Ni膜除去工程(S106)として、基板200表面に形成されたP元素を含有したNi膜30を例えばウェットエッチング法で除去する。エッチング液として、例えば、硫酸過水を用いると好適である。これにより、P元素含有NiSi膜40,42の形成に使用されなかったP含有Ni膜30が除去され、ゲート電極20上に選択的に形成されたP元素含有NiSi膜40が、そして、拡散層10上に選択的に形成されたP元素含有NiSi膜42が露出する。
【0021】
以上のように、上述した各工程が実施されることでトランジスタ素子を形成することができる。P元素含有NiSi膜40,42を形成することで、拡散層10の抵抗およびゲート電極20(或いはゲート配線)の配線抵抗を低減することができる。また、配線状に形成されたゲート電極20をメモリ素子のワード線として使用すれば、ワード線の配線抵抗を低減することができる。さらに、多層配線を形成する場合には、かかる基板上に層間絶縁膜およびコンタクト等を形成し、さらに上層に配線層を形成すればよい。
【0022】
図8は、実施の形態1におけるNiSi膜のP濃度を示すグラフである。上述した各工程が実施された基板の元素濃度を測定したところ、図8に示すように、P含有Ni膜30から形成されたNiSi膜40,42中にもPが含有されていることがわかる。ここで、NiSi膜のP濃度は、0.5wt%以上が望ましい。
【0023】
図9は、比較対象となるPt含有NiSi膜の耐熱性を測定した結果を示すグラフである。従来のPt含有NiSi膜を拡散層上に形成した半導体装置を加熱した場合に配線抵抗を測定した。その結果、耐熱性を向上させるためにPtを添加した場合でも500℃を超えると、図9に示すように、配線抵抗が上昇してしまうことがわかる。
【0024】
図10は、比較対象となるPt含有NiSi膜を拡散層上に形成した半導体装置を800℃に加熱した場合の断面および表面の写真を示す図である。図10(a)には、断面が示されている。図10(b)には表面が示されている。Pt含有NiSi膜は、800℃に加熱されると凝集し、図10(a)に示すようにSi上に膜厚が局所的に厚くなる箇所とほとんど膜厚が無くなる箇所とが確認された。また、表面でもかかる凝集によりPt含有NiSi膜が無くなりSi膜が露出した箇所が確認された。Pt含有NiSi膜が無くなる(膜切れを起こす)と配線抵抗が上昇することに繋がる。また、一部に凝集して膜厚が厚くなると、拡散層ではPt含有NiSi膜が拡散層を突き抜けp型Si領域にまで達することで接合リークが生じる。また、突き破らないまでも拡散層のSi領域の厚さが薄くなることで接合リークが生じ得る。よって、比較対象となるPt含有NiSi膜では十分な耐熱性が得られないことがわかる。
【0025】
図11は、実施の形態1におけるP含有NiSi膜の耐熱性を測定した結果を示すグラフである。実施の形態1におけるP含有NiSi膜42を拡散層上に形成した半導体装置を加熱した場合に配線抵抗を測定した。その結果、800℃でも、図11に示すように、配線抵抗がほとんど上昇していないことがわかる。
【0026】
図12は、実施の形態1におけるP含有NiSi膜を拡散層上に形成した半導体装置を400℃と800℃に加熱した場合のそれぞれの断面の写真を示す図である。図12(a)には、400℃に加熱した場合の断面が示されている。図12(b)には800℃に加熱した場合の断面が示されている。いずれの場合でも所定の膜厚のP含有NiSi膜42を確認でき、特に、凝集をおこした様子は確認されなかった。以上のように、NiSi膜にPを含有させることで耐熱性を従来に比べて格段に向上させることができる。
【0027】
図13は、実施の形態1におけるP含有NiSi膜を800℃に加熱した場合のNiとSiの組成比を示すグラフである。800℃に加熱した場合でも、図13に示すEDX分析の結果より、NiとSiの組成比が約1:1であることがわかる。よって、P含有NiSi膜は、NiSi2等のSiリッチにはなっておらず、モノシリサイドのまま維持されていることがわかる。
【0028】
さらに、発明者らはP含有NiSi膜の結晶構造の配向性を制御することで耐熱性の向上を図ることができるという知見を得た。
【0029】
図14は、実施の形態1におけるP含有NiSi膜と比較対象となる従来のNiSi膜との配向性を比較したグラフである。実施の形態1におけるP含有NiSi膜と比較対象となる従来の耐熱性が不十分のNiSi膜との配向性をX線回折により比較した結果、種々ある配向のうち、図14に示すように従来のNiSi膜の結晶は、特に、(200)配向と(020)配向とを有していた。これに対して、耐熱性が向上された実施の形態1におけるP含有NiSi膜では、(200)配向と(020)配向とが存在しておらず、さらに鋭意検討を重ねた結果、(200)配向と(020)配向とを有さない結晶構造に制御することで、NiSi膜の耐熱性が向上することを発明者らは見出した。
【0030】
そこで、実施の形態1では、P含有NiSi膜を形成する際に、(200)配向と(020)配向とのうち少なくとも1つを有さない結晶構造に形成するように制御している。(200)配向と(020)配向とを有さない結晶構造に制御するには、例えば、上述したようにシリサイド化する前のP含有Ni膜30を形成する際の温度を調整すればよい。すなわち、スパッタ法では、例えば200℃以上に基板を加熱しながらP含有Ni膜30或いはNi膜32を形成することで制御できる。また、CVD法では160〜240℃のプロセス温度でP含有Ni膜30或いはNi膜32を形成することで制御できる。
【0031】
ここで、上述した例では、Si基板内に形成された拡散層10と、Si基板上にSiを用いて形成されたゲート電極20との両方を形成した場合について説明したが、配線抵抗の低減の観点からはどちらか一方だけをとっても効果があることは言うまでもない。よって、実施の形態1における半導体装置は、Si基板と、Si基板内に形成された拡散層10と、Si基板上にSiを用いて形成されたゲート電極20との少なくとも1つと、拡散層10とゲート電極20との少なくとも1つ上に接触して形成されたP元素を含有したNiSi膜40,42と、を備えていればよい。
【0032】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0033】
さらに、各層や膜の膜厚や、サイズ、形状、数などについても、半導体集積回路や各種の半導体素子において必要とされるものを適宜選択して用いることができる。
【0034】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての半導体装置及び半導体装置の製造方法は、本発明の範囲に包含される。
【0035】
また、説明の簡便化のために、半導体産業で通常用いられる手法、例えば、フォトリソグラフィプロセス、処理前後のクリーニング等は省略しているが、それらの手法が含まれ得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
10 拡散層、20 ゲート電極、30,32 Ni膜、40,42 NiSi膜、200,300 基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン(Si)を用いた拡散層とSiを用いたゲート電極との少なくとも1つが表面に露出した基板上に、リン(P)元素を含有したニッケル(Ni)膜を形成する工程と、
前記P元素を含有したNi膜と前記拡散層とゲート電極との少なくとも1つのSiとから、前記基板上に、P元素を含有したニッケルシリサイド(NiSi)膜を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記P元素を含有したNi膜は、P元素を含んだNiターゲットを用いた物理気相成長(PVD)法と、P元素を含まないNiターゲットとP元素を含むガスとを用いたPVD法と、Ni膜を形成した後に前記Ni膜にP元素を注入するイオンインプラーテンション法と、Ni元素とP元素を含んだ材料を用いた化学気相成長(CVD)法と、P元素を含んだ液体を用いたNiめっき法とのうちの1つを用いて形成されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記P元素を含有したNiSi膜は、(200)配向と(020)配向とのうち少なくとも1つを有さない結晶構造で形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
シリコン(Si)基板と、
前記Si基板内に形成された拡散層と、前記Si基板上にSiを用いて形成されたゲート電極との少なくとも1つと、
前記拡散層と前記ゲート電極との少なくとも1つ上に接触して形成されたP元素を含有したニッケルシリサイド(NiSi)膜と、
を備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
前記P元素を含有したNiSi膜は、(200)配向と(020)配向とのうち少なくとも1つを有さない結晶構造で形成されたことを特徴とする請求項4記載の半導体装置。
【請求項1】
シリコン(Si)を用いた拡散層とSiを用いたゲート電極との少なくとも1つが表面に露出した基板上に、リン(P)元素を含有したニッケル(Ni)膜を形成する工程と、
前記P元素を含有したNi膜と前記拡散層とゲート電極との少なくとも1つのSiとから、前記基板上に、P元素を含有したニッケルシリサイド(NiSi)膜を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記P元素を含有したNi膜は、P元素を含んだNiターゲットを用いた物理気相成長(PVD)法と、P元素を含まないNiターゲットとP元素を含むガスとを用いたPVD法と、Ni膜を形成した後に前記Ni膜にP元素を注入するイオンインプラーテンション法と、Ni元素とP元素を含んだ材料を用いた化学気相成長(CVD)法と、P元素を含んだ液体を用いたNiめっき法とのうちの1つを用いて形成されることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記P元素を含有したNiSi膜は、(200)配向と(020)配向とのうち少なくとも1つを有さない結晶構造で形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
シリコン(Si)基板と、
前記Si基板内に形成された拡散層と、前記Si基板上にSiを用いて形成されたゲート電極との少なくとも1つと、
前記拡散層と前記ゲート電極との少なくとも1つ上に接触して形成されたP元素を含有したニッケルシリサイド(NiSi)膜と、
を備えたことを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
前記P元素を含有したNiSi膜は、(200)配向と(020)配向とのうち少なくとも1つを有さない結晶構造で形成されたことを特徴とする請求項4記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図13】
【図14】
【図10】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図13】
【図14】
【図10】
【図12】
【公開番号】特開2011−40513(P2011−40513A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185449(P2009−185449)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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