説明

半導体装置及び半導体装置の製造方法

【課題】デュアルゲート電極構造のMOSトランジスタにおいて、閾値電圧シフト及びばらつきを抑えることができる半導体装置及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】半導体基板上にP型MOSトランジスタ及びN型MOSトランジスタを備える半導体装置において、P型MOSトランジスタ及びN型MOSトランジスタは、それぞれチャネル極性と同極のポリゲート電極を備えたデュアルゲート構造のMOSトランジスタであって、デュアルゲート型MOSトランジスタのポリゲート電極が、ゲルマニウムからなる第1のポリゲート電極層と、ゲルマニウムとシリコンとが混在した第2のポリゲート電極層と、シリコンからなる第3のポリゲート電極層と、を順次備えた積層構造を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルゲート型のMOSトランジスタを備える半導体装置に関する。特に、PMOSにおけるボロン突き抜けと、NMOSにおけるゲート空乏化と、をそれぞれ防止することによる、閾値電圧シフトの抑制および閾値電圧の面内均一性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体集積回路に用いられるMOS型トランジスタでは、P型チャネルを備えたP型MOSトランジスタ(PMOS)に対してP型ゲート電極が設けられ、一方、N型チャネルを備えたN型MOSトランジスタ(NMOS)に対してN型ゲート電極が設けられた、いわゆるデュアルゲート電極構造が多く採用されている。この構造の利点は、ゲート電極側のフェルミレベルと基板表面側のフェルミレベルの差異が大きくなるため、PN両トランジスタ共に表面チャネル型トランジスタとすることができることである。その結果、オフリーク電流が抑制されて、L長の縮小に寄与することができる。
【0003】
しかしながら、このデュアルゲート電極構造は、その形成工程において主として2つの問題点を含む。一つは、PMOSにおけるP型ゲート電極を形成する際のボロン突き抜けである。P型ゲート電極は、ポリシリコンを堆積させた後に、ボロンをイオン注入することによって形成される。この際、ポリシリコンの膜内に存在している粒界においてチャネリング効果が生じ、ボロンがゲート酸化膜まで到達することで、閾値電圧を大きくシフトさせる。また、注入後の活性化熱処理の際にも、その粒界により拡散が促進され、同様の不具合を生じさせる。
【0004】
これに対しては、フッ化ボロンを用いてイオン注入時の飛程距離を短くするという対策法がある。ただ、この方法では、高活性元素であるフッ素が、ポリシリコンの膜内のトラップサイトを優先的に終端させるという現象が生じる。その結果、実効的にボロンのトラップ確率が下がり、拡散速度が加速されて、同様に閾値電圧をシフトさせる場合がある。
【0005】
もう一つの問題点は、NMOSにおけるN型ゲート電極におけるゲート空乏化現象である。N型ゲート電極を形成する際には、ヒ素やリンをイオン注入又は熱拡散させる。しかしながら、一般的に、これらN型不純物はボロンに比べて拡散速度が遅い傾向にある。その結果、いくつかの熱処理工程を経た後であっても、ゲート酸化膜側まで十分に拡散されておらず、ゲート電極の酸化膜側で高抵抗領域が残存する。このようなゲート電極に対して電圧を印加した場合には、ゲート電極内でゲート酸化膜側から空乏化が始まる。このゲート空乏化現象は、実効的にゲート酸化膜を厚膜化させてしまうため、閾値電圧のシフトなどの弊害をもたらす。
【0006】
また、ポリシリコンゲート電極へのイオン注入は、ソース・ドレイン領域もしくは高抵抗領域であるオフセット領域への注入と同時に行われるのが一般的である。その結果、短チャンネル効果抑制のため浅い接合を作りたいような場合には、同時にポリシリコンゲートへの注入も浅くなってしまい、より一層ゲート空乏化が生じやすくなる。
【0007】
そこで、このような問題を解決する方法として、PMOSのボロン突き抜け対策として、P型ポリシリコンゲートを形成する際に、有機系塗布拡散を用い、その後、窒素雰囲気中で熱処理する方法が開示されている。(例えば、特許文献1参照)
また、別の方法として、ゲート電極として、シリコンゲルマニウムの多結晶合金膜を用い、かつ、Si/Geの混合比を厚さ方向に変化させる方法が開示されている。この方法は、多結晶合金膜が歪みや点欠陥を多く含む一方で、これらによってグレイン成長が遮断され、グレイン長が短くなるという特性を生かして、ボロン拡散を抑える。また、シリコンゲルマニウム膜はシリコン単膜に比べてN型不純物の拡散速度が速いため、NMOS領域におけるゲート空乏化現象も同時に抑制される。更には、ゲート電極上部がシリコン単体で形成されていることから、シリコンゲルマニウム電極をポリサイド化した場合に生じるゲート寄生抵抗の増大も防止することができる。(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−110004号公報
【特許文献2】特開2000−150669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、チャネリング効果による拡散の加速は防げるものの、有機系塗布膜に含まれる水素やアルカリ系金属が、フラットバンド電圧をシフトさせたり、スロートラップ現象を生じさせたりして、長期信頼性を低下させる可能性がある。また、塗布拡散は、イオン注入や熱拡散に比べて、抵抗値の狙い精度が低いため、所望のデバイス特性が十分発揮されないといった不具合が生ずることが考えられる。
【0010】
また、特許文献2に開示された方法では、確かにSiGe膜の特性を生かして、デュアルゲート電極構造の問題点を解消している。しかしながら、SiGe膜内のSi/Ge比を連続的もしくは段階的に変化させる手法は極めて煩雑であり、ガス流量比、分圧比、炉内温度分布、排気圧、といった様々な成膜パラメータをごく狭い範囲内で制御しなければならない。そのため、混合比にばらつきが生じやすく、所望の特性が得られない場合が考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明においては、ゲート電極構造として、Ge層とSi層の積層構造を採用し、かつこれら2層の相互拡散によって形成されるSiGe層を設けることにより、SiGeの混合比を容易かつ正確に制御することの可能な三層から成るポリゲート電極とする。その結果、PMOSではSiGe層によってチャネリング効果が抑制され、NMOSではSiGe層によってN型不純物拡散が助長され、ゲート空乏化現象が抑制される。このため、MOSトランジスタの閾値電圧はシフトしたりばらついたりすることなく、均一性に優れた半導体装置とすることができる。
【0012】
すなわち本発明の目的は、Si及びGeを含むポリゲート電極を、所定の積層構造とすることで、容易かつ正確にデュアルゲート電極構造MOSの閾値電圧シフトとばらつきを抑えることができる半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明は、半導体基板上にP型MOSトランジスタ及びN型MOSトランジスタを備える半導体装置において、P型MOSトランジスタ及びN型MOSトランジスタは、それぞれチャネル極性と同極のポリゲート電極を備えたデュアルゲート電極構造のMOSトランジスタであって、MOSトランジスタのポリゲート電極が、ゲルマニウムからなる第1のポリゲート電極層と、ゲルマニウム及びシリコンからなる第2のポリゲート電極層と、シリコンからなる第3のポリゲート電極層と、を順次備えた積層構造を有している半導体装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
【0014】
すなわち、ゲート電極を、Ge/SiGe/Siの3層構造とすることより、PMOSにおけるボロン突き抜けと、NMOSにおけるゲート空乏化を改善し、閾値電圧の均一性に優れた半導体装置を提供することができる。
【0015】
また、上述した中間層としてのSiGe層は、Ge層とSi層とが相互拡散して形成されることから、その後の熱履歴だけでSiGe混合比を容易に制御できるようになり、SiGe混合層を形成する際の煩雑さを回避して、所望の混合比を有するSiGe層を精度良く形成することができる。
【0016】
ここで、PMOSにおいて、SiGe膜がボロン突き抜けを防ぐメカニズムは、上述したとおり、ポリSiGe膜がポリシリコン膜に比べてグレイン長が短いため、ボロンのチャネリング効果が抑えられるためである。また、NMOSにおいて、SiGe膜がゲート空乏化を防止するメカニズムは、ポリSiGe膜の方が、ポリシリコン膜に比べてN型不純物の拡散速度が速いためである。
【0017】
また、本発明を構成するにあたり、第1のポリゲート電極層と、第2のポリゲート電極層と、の合計厚さを、第1及び第2のポリゲート電極層がシリコンであるときの最大空乏層幅よりも厚くしてあることが好ましい。
【0018】
このように構成することにより、特にNMOSにおいてN型不純物注入が浅くなった場合でも、ゲート空乏化現象の発生を抑えて、閾値電圧シフトやバラつきの増大を抑制することができる。
また、本発明の別の態様は、半導体基板上に、P型MOSトランジスタ及びN型トランジスタを備える半導体装置の製造方法において、P型MOSトランジスタ及びN型MOSトランジスタは、それぞれチャネル極性と同極性のポリゲート電極を備えたデュアルゲート電極構造のMOSトランジスタであって、MOSトランジスタ形成領域にあるゲート酸化膜上に、ゲルマニウム多結晶膜を堆積させる工程と、ゲルマニウム多結晶膜上に、シリコン多結晶膜を堆積させる工程と、半導体基板を熱処理することにより、ゲルマニウム多結晶膜とシリコン多結晶膜とを相互拡散させて、多結晶合金膜を形成する工程と、を含む半導体装置の製造方法である。
【0019】
また、本発明を実施するにあたり、ゲルマニウム多結晶膜を堆積させる工程の後に、当該ゲルマニウム多結晶膜に対して、N型不純物ドーピングを実施する工程を含むことが好ましい。このように実施することにより、ポリゲート電極内での不純物濃度プロファイルを比較的均一にすることができ、特にNMOSにおけるゲート空乏化を効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、容易かつ正確にデュアルゲート電極構造MOSの閾値電圧シフトとばらつきを抑えることができる半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明におけるMOSトランジスタの概略断面図である。
【図2】本発明におけるMOSトランジスタのゲート電極構造の詳細断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明におけるMOSトランジスタの製造フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
【実施例1】
【0023】
以下、本発明の半導体装置に関する第1の実施形態を、NMOS及びPMOSからなるデュアルゲート構造のCMOSトランジスタで構成されるインバータ回路を例にとって説明する。
1.基本構造
図1は、本発明の半導体装置に用いられるCMOSトランジスタ1の断面構造である。
【0024】
このCMOSトランジスタ1は、N型ポリゲート電極4を備えたN型MOSトランジスタ2と、P型ポリゲート電極5を備えたP型MOSトランジスタ3と、からなるデュアルゲート電極構造を有している。
【0025】
また、NMOSトランジスタ2は、N型ポリゲート電極4の他に、P型ウェル領域12と、N+ソース領域6と、N+ドレイン領域8と、チャネル領域10と、ゲート酸化膜14と、を備えており、基本的なMOS構造を構成している。また同様に、PMOSトランジスタ3は、P型ポリゲート電極5の他に、N型ウェル領域13と、P+ソース領域7と、P+ドレイン領域9と、チャネル領域11と、ゲート酸化膜15と、を備えている。また、NMOSトランジスタ2とPMOSトランジスタ3とは、互いに分離領域16によって電気的に分離されている。
2.N型ゲート電極構造
次いで図2は、NMOSトランジスタ2におけるN型ゲート電極4の詳細断面図である。N型ゲート電極4は、ゲート酸化膜14側から順に、ゲルマニウムからなる第1のポリゲート電極層17と、ゲルマニウム及びシリコンからなる第2のポリゲート電極層18とシリコンからなる第3のポリゲート電極層19と、を順次備えた積層構造を有している。
【0026】
このとき、第2のポリゲート電極層18は、第1のポリゲート電極層17のゲルマニウムと第3のポリゲート電極層19のシリコンとが、相互拡散して得られた混合多結晶層、すなわちシリコンゲルマニウム合金層を構成している。
【0027】
ここで、第2のポリゲート電極層18の厚さは、500〜2000Åの範囲内の値とすることが好ましい。この厚さが500Å以下となってしまった場合には、SiGe層が薄くなりすぎて、ボロンのゲート酸化膜方向への拡散を防止することが不可能となる。また逆に、2000Å以上になった場合には、相互拡散領域を広げるための熱処理条件が過度に高温かつ長時間になりすぎて、生産性を低下させてしまう。
【0028】
また、第1のポリゲート電極層17の厚さと、第3のポリゲート電極層19の厚さは、適宜決めることができるが、それぞれ100〜1000Åの範囲内の値とすることが好ましい。この厚さが100Å以下の場合には、ゲート電極全体が薄膜化しすぎて抵抗成分が無視できなくなる。また逆に、1000Å以上に厚膜化し過ぎると成膜時間が掛かりすぎて生産性を低下させる。
【0029】
なお、上述した内容はNMOSに形成されたN型ゲート電極層を例にしているが、PMOSに形成されたP型ゲート電極層も、不純物元素の種類を除いて、同一構造を採る。
3.シリコンゲルマニウム多結晶合金層
次いで、本発明におけるシリコンゲルマニウム多結晶合金層である第2のポリゲート電極について説明する。このシリコンゲルマニウム多結晶合金層は、第1のポリゲート電極を構成するゲルマニウム層と、第3のポリゲート電極を構成するシリコン層と、の境界面において相互拡散により形成されるSiGe合金層である。
【0030】
したがって、このSiGe合金層の厚さは、第3のポリゲート電極19を形成した後の、相互拡散のための熱処理条件に支配される。
【0031】
なお、相互拡散のための熱処理は、第3のポリゲート電極19の成膜処理に含めることもできる。この場合には、この合金層の厚さは、第3のポリゲート電極層を形成する熱処理条件のみによって決定される。
【0032】
なお、シリコン基板中のゲルマニウムの拡散速度Dは、1000℃で約1×10-13(cm2/sec)程度である。ことから、例えば熱処理条件を1000℃×10分とすれば、拡散長Lは約800Åとなる。極めてモデル的な考察として、単純に相互拡散で2倍と考え、かつ単結晶膜中とポリ膜中の拡散速度をほぼ同等とみなせば、上記熱処理条件であれば第2のポリゲート電極層18の厚さは1600Å程度と推定される。
【0033】
また、第1のポリゲート電極層と、第2のポリゲート電極層と、の厚さの合計を、第1及び第2のポリゲート電極層がシリコンであるときの最大空乏層幅よりも大きくしてあることが好ましい。
【0034】
この理由は、ゲート空乏化の生じうる可能性のある領域を、全てゲルマニウムもしくはシリコンゲルマニウムで構成することにより、特に、NMOSにおいて生じやすいゲート空乏化を未然に防ぐことができるためである。また、ゲート空乏化は拡散速度の遅いヒ素やリンを含むN型ゲート電極に生じやすい傾向にあることから、当該条件は特にNMOS側で採用することが効果的である。
【実施例2】
【0035】
次いで、本発明における別の態様として、半導体基板上に、P型MOSトランジスタ及びN型トランジスタを備える半導体装置の製造方法において、P型MOSトランジスタ及びN型MOSトランジスタは、それぞれチャネル極性と同極性のポリゲート電極を備えたデュアルゲート電極構造のMOSトランジスタであって、デュアルゲート型MOSトランジスタ形成領域にあるゲート酸化膜上に、ゲルマニウム多結晶膜を堆積させる工程と、ゲルマニウム多結晶膜上に、シリコン多結晶膜を堆積させる工程と、半導体基板を熱処理することにより、ゲルマニウム多結晶膜とシリコン多結晶膜とを相互拡散させて、混合多結晶膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法について、半導体基板上にデュアルゲート電極構造のNMOS及びPMOSを形成する場合を例に採って説明する。
1.ウェル及びLOCOS形成工程
まず、図3(a)に示すように、半導体基板上のトランジスタ形成領域にウェル領域を形成する。このウェル領域はN型ドーパントを注入して形成されるNウェル領域13、P型ドーパントを注入して形成されるPウェル領域12の少なくとも一方から構成される。なお、このウェルとウェルの間に、LOCOS16を形成することで、隣接素子間の絶縁性を高めることができる。さらに、通常は、LOCOS16の下となるNウェル領域13の表面の領域にはその不純物濃度がNウェル領域13と後で形成されるソースおよびドレイン領域の中間であるN±で表されるチャネルカット領域を設け、同様にPウェル領域12の表面には不純物濃度がP±で表されるチャネルカット領域を設ける。
2.チャネルドープ工程及びゲート酸化膜生成工程
次いで、図3(a)に示すように、閾値電圧調整のためのチャネルドープを行う。例えば、エンハンスメント型MOSを構成するのであれば、NMOSチャネルドープ領域10に対してボロンを、PMOSチャネルドープ領域11に対してはヒ素を注入することができる。なお、この工程は、ゲート酸化膜14、15を生成した後に、ゲート酸化膜14、15越しに実施することもできる。
3.第1のポリゲート電極形成工程
次いで、図3(b)に示すように、第1のポリゲート電極を形成するためのゲルマニウムCVD成膜を行う。
【0036】
このときの成膜条件としては、例えば、ソースガスをGeH4、基板温度800〜1000℃、10〜700Torrとすることができる。
【0037】
また、第1のポリゲート電極形成としてのゲルマニウム多結晶膜を堆積させる工程の後に、ゲルマニウム多結晶膜に対して、N型不純物ドーピングを実施する工程を実施することができる。すなわち、第1のポリゲート電極形成後、第3のポリゲート電極形成前に、N型不純物をドーピングして、ゲート電極のN型化を行う。これにより、特に拡散速度の遅いヒ素等のN型不純物濃度を、ゲート酸化膜側でも十分高めることができ、デュアルゲート構造のNMOSにおいて生じるゲート空乏化現象を効果的に抑制することができる。
4.第3のポリゲート電極形成工程
次いで、図3(c)に示すように、第3のポリゲート電極を形成する。ここで、第3のポリゲート電極形成には大きく2つの方法がある。ひとつはLP−CVD法であり、比較的低温環境で成膜ができる方法である。もう一方はエピタキシャル成長法であり、比較的高温環境での成膜となる。いずれの方法であっても、下地のゲルマニウム層が非結晶であることから、成膜される第3のポリゲート電極層は多結晶膜となる。
【0038】
第2のポリゲート電極の厚さとしての、相互拡散幅を比較的薄くしたい場合には、第3のポリゲート電極形成条件としてLP−CVD法を採用することができる。このときの条件としては、例えば、ソースガスとしてSiH4、成膜厚さ100〜1000Å、10〜700Torrの減圧環境下で実施することができる。
【0039】
また、第2のポリゲート電極の厚さを比較的厚くしたい場合には、第3のポリゲート電極形成条件としてエピタキシャル成長法を採用することが出来る。このときの条件としては、例えば、温度1000〜1200℃、ソースガスとしてSicl4、SiHcl3、SiH2cl2、水素雰囲気、成長時間10秒〜5分で、約1500Å〜10000Å程度の厚さにすることができる。なお、このエピタキシャル成長法であっても、下地のゲルマニウム層は非結晶であるため、この第3のポリゲート電極は結晶化することなく多結晶のまま成長する。
5.第2のポリゲート電極形成工程
次いで、図3(d)に示すように、第2のポリゲート電極を形成する。ここで、第2のポリゲート電極の形成方法としては2つの方法がある。まず一つは、上述した第3のポリゲート電極形成と同時に、不可避的に形成される相互拡散層を第2のポリゲート電極として用いる場合である。つまり、第3のポリゲート電極と、第2のポリゲート電極とは、実質的に同時形成されることになる。
【0040】
また、もう一つの方法としては、第3のポリゲート電極形成とは別に、新たに拡散のための熱処理を施す方法である。この方法であれば、第2のポリゲート電極の厚さを制御するためだけの熱処理が独立して存在するため、比較的容易に所望の厚さに制御することが出来る。具体的には、例えば処理温度600〜1000℃、常圧、窒素雰囲気で処理することができる。
【0041】
なお、この第3のポリゲート電極形成後、タングステン等の高融点金属をスパッタリングにより堆積させることで、ゲート電極が低抵抗化できる。このとき、シリコン多結晶膜に対してタングステン合金を形成するよりも、シリコンゲルマニウム多結晶膜に対してタングステン合金を形成する方が、ゲート電極抵抗は高くなる傾向にある。したがって、ゲート電極際表面はSiGeではなく、Siになるように相互拡散を制御する必要がある。
6.ソース・ドレイン形成工程
次いで、ポリゲート電極をパターニングした後に、ソース・ドレイン領域を形成する。
【0042】
このとき、ソース・ドレイン領域は、ポリゲート電極に対して自己整合的に形成することができる。すなわち、ソース・ドレインへのイオン注入の際にポリゲート電極領域をマスキングすることなく注入する。これにより、マスクアライメント精度ずれをなくすとともに、工程削減による効率化が図ることができる。ただし、この方法を採用したときの問題点として、イオン注入条件の選択がある。ゲート空乏化を防止するためには、できるだけポリゲート電極内に深く不純物を注入することが好ましい。その一方で、ソース・ドレイン領域においては、短チャンネル効果抑制のために、できるだけ浅い接合を作ることが好ましい。この両者はトレードオフの関係にあるが、本発明においては、第1のポリゲート電極形成後にN型不純物ドーピングを行うことができるため、ゲート空乏化については比較的問題にならない。したがって、主に、ソース・ドレインの浅接合化を狙った低エネルギーの注入条件を採用することができる。
7.配線形成工程
MOSトランジスタの基本構造を構成した後には、メタル配線形成に関連した領域を形成する。まず、TEOS等の有機系酸化膜を堆積させ、平坦化のためにBPSG膜等の流動性の高い有機絶縁膜を堆積させる。その後、焼き締めのための熱処理を実施することで、絶縁膜表面が平坦化される。
【0043】
次いで、このTEOS/BPSG絶縁膜に対してパターニングによりコンタクトホールを開口する。このコンタクトホールに対して、Al−Si系金属合金を堆積させることで、メタル配線が形成される。このとき、ソース・ドレイン領域上に直接Al−Si系金属を堆積させると、メタル材料に含まれるSiがエピタキシャル成長してスパイキング現象が生じる場合がある。その場合には、Ti系金属をバリア層として介在させることで防止できる。
【0044】
最後に、この電極材料をパターニングして回路形成した後、チッ化膜、ポリイミド等のパッシベーション膜を堆積しパッド領域を開口する。その後、ダイシング、パッケージングすることでMOSトランジスタを含む半導体装置とすることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 半導体装置
2 NMOS
3 PMOS
4 N型ポリゲート電極
5 P型ポリゲート電極
6 NMOSソース領域
7 PMOSソース領域
8 NMOSドレイン領域
9 PMOSドレイン領域
10 NMOSチャネル領域
11 PMOSチャネル領域
12 Pwell
13 Nwell
14 NMOSゲート酸化膜
15 PMOSゲート酸化膜
16 LOCOS
17 第1のポリゲート電極
18 第2のポリゲート電極
19 第3のポリゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にP型MOSトランジスタ及びN型MOSトランジスタを備え、前記P型MOSトランジスタ及びN型MOSトランジスタは、それぞれチャネル極性と同じ導電型のポリゲート電極を備えたデュアルゲート電極構造の半導体装置において、
前記ポリゲート電極が、ゲルマニウムからなる第1のポリゲート電極層と、ゲルマニウム及びシリコンからなる第2のポリゲート電極層と、シリコンからなる第3のポリゲート電極層と、を順次備えた積層構造を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1のポリゲート電極層と前記第2のポリゲート電極層との厚さの合計を、前記第1及び第2のポリゲート電極層がシリコンであるときの最大空乏層幅よりも大きくしてあることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体基板上にP型MOSトランジスタ及びN型MOSトランジスタを備え、前記P型MOSトランジスタ及びN型MOSトランジスタは、それぞれチャネル極性と同じ導電型のポリゲート電極を備えたデュアルゲート電極構造の半導体装置の製造方法において、
前記P型およびN型MOSトランジスタの形成領域にあるゲート酸化膜上に、ゲルマニウム多結晶膜を堆積させる工程と、
前記ゲルマニウム多結晶膜上に、シリコン多結晶膜を堆積させる工程と、
前記半導体基板を熱処理することにより、前記ゲルマニウム多結晶膜と前記シリコン多結晶膜とを相互拡散させて、シリコン及びゲルマニウムからなる多結晶合金膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ゲルマニウム多結晶膜を堆積させる工程の後に、当該ゲルマニウム多結晶膜に対して、N型不純物ドーピングを実施する工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−177433(P2010−177433A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18246(P2009−18246)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】