説明

半導体装置

【課題】チャネル領域における高いキャリア移動度を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る半導体装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成され、内部におけるキャリアの移動度がSi結晶よりも大きい第1の結晶からなる半導体層と、前記半導体層上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、前記半導体層を挟んで形成され、前記半導体層に前記半導体層内のキャリアの移動度が上昇する方向に歪みを与える第2の結晶を含み、前記半導体層に接する深さの浅い領域であるソース・ドレインエクステンション領域を有するソース・ドレイン領域と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置として、n型トランジスタのチャネル領域を挟む位置に、Si結晶よりも格子定数の小さいSiC結晶をエピタキシャル成長させることにより、チャネル領域に引張応力を加えて歪みを生じさせた半導体装置がある(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の半導体装置によれば、チャネル領域を構成するSi結晶に引張歪みを生じさせることにより、チャネル領域中の電子の移動度を向上させ、n型トランジスタの動作速度を向上させることができる。
【0003】
また、従来の他の半導体装置として、内部の電子の移動度がSi結晶よりも大きいGe結晶をチャネル領域に使用する技術が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【特許文献1】米国特許第6621131号明細書
【非特許文献1】S. Takagi et al., SSDM, p. 1056-1057 (2006).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、チャネル領域における高いキャリア移動度を有する半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成され、内部におけるキャリアの移動度がSi結晶よりも大きい第1の結晶からなる半導体層と、前記半導体層上に形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、前記半導体層を挟んで形成され、前記半導体層に前記半導体層内のキャリアの移動度が上昇する方向に歪みを与える第2の結晶を含み、前記半導体層に接する深さの浅い領域であるソース・ドレインエクステンション領域を有するソース・ドレイン領域と、を有することを特徴とする半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、チャネル領域における高いキャリア移動度を有する半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
〔第1の実施の形態〕
(半導体装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の断面図である。半導体装置1は、半導体基板2と、半導体基板2上に形成された半導体層3と、半導体層3上に形成されたゲート絶縁膜4と、ゲート絶縁膜4上に形成されたゲート電極5と、ゲート電極5の側面に形成されたオフセットスペーサ6およびゲート側壁8と、半導体層3を挟んで形成されたエクステンション領域7eを含むエピタキシャル層7と、半導体基板2内に形成された素子分離領域10と、を有して概略構成される。
【0008】
半導体基板2は、例えば、Si基板が用いられる。
【0009】
半導体層3は、SiGe、Ge、GaAs、InP、InAs、InSb等の、内部におけるキャリアの移動度がSi結晶よりも大きい結晶からなる。なお、半導体層3がSiGe結晶からなる場合は、Ge濃度が10〜30原子%であることが好ましい。SiGe結晶のGe濃度が10原子%未満の場合は、キャリアの移動度が効果的に上昇せず、30原子%を超える場合は、隣接する結晶等に結晶欠陥を発生させ、リーク電流の原因となるおそれがある。
【0010】
また、半導体層3は、半導体装置1の動作時に発生する反転層の厚さ以下の厚さを有することが好ましい。半導体層3を反転層よりも厚くしても、キャリアは反転層よりも厚い領域は移動せず、半導体装置1の動作速度はほとんど変わらないためである。また、半導体層3が、半導体基板2から受ける応力により内部におけるキャリアの移動度が低下する方向に歪みが生じる結晶である場合は、半導体層3を厚くするほどこの歪みが大きくなってキャリアの移動度が低下するためである。なお、反転層の厚さは、例えば2〜3nmである。
【0011】
ゲート絶縁膜4は、例えば、SiO、SiN、SiONや、高誘電材料(例えば、HfSiON、HfSiO、HfO等のHf系材料、ZrSiON、ZrSiO、ZrO等のZr系材料、Y等のY系材料)からなる。
【0012】
ゲート電極5は、例えば、導電型不純物を含む多結晶Siまたは多結晶SiGeからなる。ゲート電極5に含まれる導電型不純物には、p型トランジスタの場合はB、BF等のp型不純物イオン、n型トランジスタの場合はAs、P等のn型不純物イオンが用いられる。また、ゲート電極4は、W、Ta、Ti、Hf、Zr、Ru、Pt、Ir、Mo、Al等やこれらの化合物等からなるメタルゲート電極であってもよい。また、メタルゲート電極と多結晶Si系電極を積層した構造であってもよい。また、ゲート電極5の上面にシリサイド層が形成されてもよい。
【0013】
オフセットスペーサ6は、例えば、SiO、SiN等からなる。
【0014】
ゲート側壁8は、例えばSiNからなる単層構造や、SiN、SiO、TEOS(Tetraethoxysilane)等の複数種の絶縁材料からなる2層構造、更には3層以上の構造であってもよい。
【0015】
エピタキシャル層7およびそのエクステンション領域7eは、p型トランジスタの場合は、半導体基板2を構成する結晶よりも大きい格子定数を有する結晶をエピタキシャル成長させることにより形成する。例えば、半導体基板2がSi結晶からなる場合は、SiGe結晶等をエピタキシャル成長させる。一方、n型トランジスタの場合は、半導体基板2を構成する結晶よりも小さい格子定数を有する結晶をエピタキシャル成長させることにより形成する。例えば、半導体基板2がSi結晶からなる場合は、SiC結晶等をエピタキシャル成長させる。
【0016】
ここで、エピタキシャル層7およびエクステンション領域7eが半導体基板2を構成する結晶よりも大きい格子定数を有する結晶からなる場合は、エピタキシャル層7およびエクステンション領域7eがチャネル領域として働く半導体層3に圧縮歪みを与えて、半導体層3の内部の正孔の移動度を向上させることができる。一方、エピタキシャル層7およびエクステンション領域7eが半導体基板2を構成する結晶よりも小さい格子定数を有する結晶からなる場合は、エピタキシャル層7およびエクステンション領域7eがチャネル領域として働く半導体層3に引張歪みを与えて、半導体層3における電子の移動度を向上させることができる。
【0017】
なお、エピタキシャル層7およびエクステンション領域7eに用いられるSiGe結晶のGe濃度は10〜30原子%、SiC結晶のC濃度は1〜3原子%であることが好ましい。SiGe結晶のGe濃度が10原子%未満の場合は、半導体層3に与える歪みが不十分となり、30原子%を超える場合は、隣接する結晶等に結晶欠陥を発生させ、リーク電流の原因となるおそれがある。また、同様に、SiC結晶のC濃度が1原子%未満の場合は、半導体層3に与える歪みが不十分となり、3原子%を超える場合は、隣接する結晶等に結晶欠陥を発生させ、リーク電流の原因となるおそれがある。
【0018】
また、エピタキシャル層7およびエクステンション領域7eは、導電型不純物を含み、ソース・ドレイン領域およびソース・ドレインエクステンション領域として機能する。エピタキシャル層7およびエクステンション領域7eに含まれる導電型不純物には、p型トランジスタの場合はB、BF等のp型不純物イオン、n型トランジスタの場合はAs、P等のn型不純物イオンが用いられる。また、エピタキシャル層7の上面にシリサイド層が形成されてもよい。
【0019】
また、エピタキシャル層7から半導体層3へ効果的に応力が加わるようにするためには、エクステンション領域7eの下端が半導体層3の下端よりも深い位置にあることが好ましい。
【0020】
また、エピタキシャル層7をエクステンション領域7eとそれ以外の深い領域の二段構造とする、すなわちソース・ドレイン領域のエクステンション領域とそれ以外の深い領域(ディープ領域)の両方にエピタキシャル結晶を含めることにより、ソース・ドレイン領域のディープ領域のみをエピタキシャル結晶で形成する場合と比較して、半導体層3により効果的に応力を加えることができる。
【0021】
さらに、エピタキシャル層をエクステンション領域とそれ以外の深い領域の二段構造とする場合、一般的に、エクステンション領域の幅、深さ等を調節することにより、エピタキシャル層から半導体基板のゲート電極下の領域に加わる応力の大きさを変えることができる。
【0022】
図2(a)、(b)は、参考例としての、半導体層3を有さない半導体装置1と等しい半導体装置100における、エクステンション領域7eの幅、深さとエピタキシャル層7から半導体基板2のゲート電極5下の領域に加わる応力の大きさの関係を概略的に示す図およびグラフである。
【0023】
図2(a)に示すように、エクステンション領域7eのチャネル方向の幅をX、エクステンション領域7eの半導体基板2とゲート絶縁膜4との界面からの深さをYとする。
【0024】
図2(b)のグラフは、横軸がY、縦軸がエピタキシャル層7から半導体基板2のゲート電極5下の領域に加わる応力の大きさである。この縦軸の応力の大きさは、n型トランジスタの場合は引張応力の大きさ、p型トランジスタの場合は、圧縮応力の大きさを表す。また、図中の2曲線は、それぞれXを異なる所定の値に固定してYを変化させたときの応力の大きさの変化を表している。
【0025】
図2(b)からわかるように、2曲線にはそれぞれ極大値があり、Xが大きくなるほど、極大値をとるYの値が大きくなる。すなわち、エクステンション領域7eの幅(X)が大きくなるほど、エピタキシャル層7から半導体基板2のゲート電極5下の領域に加わる応力の大きさが最も大きくなるエクステンション領域7eの深さ(Y)が大きくなる。
【0026】
ここで、本実施の形態のように半導体層3が形成された場合の、半導体層3の下端の、半導体層3とゲート絶縁膜4との界面からの深さをYとし、図2(b)中に示す。上述したように、エピタキシャル層7から半導体層3へ効果的に応力が加わるようにするためには、エクステンション領域7eの下端が半導体層3の下端よりも深い位置にあることが好ましいため、YがYよりも大きくなるような構成であることが好ましい。
【0027】
すなわち、エピタキシャル層7をエクステンション領域7eとそれ以外の深い領域の二段構造とし、エピタキシャル層7から半導体基板2のゲート電極5下の領域に加わる応力の大きさが最も大きくなるエクステンション領域7eの深さ(Y)が、半導体層3の下端の、半導体層3とゲート絶縁膜4との界面からの深さ(Y)よりも大きくなるような構造を形成することが好ましい。
【0028】
素子分離領域10は、例えば、SiO等の絶縁材料からなり、STI(Shallow Trench Isolation)構造を有する。
【0029】
なお、半導体層3と、エクステンション領域7eを含むエピタキシャル層7の好ましい組み合わせは、半導体層3がSiGe結晶等のSi結晶よりも格子定数が大きく、内部のキャリア移動度がSi結晶よりも大きい結晶、エピタキシャル層7がSiC結晶等のSi結晶よりも格子定数が小さい結晶である組み合わせである。
【0030】
以下に、特に好ましい例である、半導体層3がSiGe結晶、エピタキシャル層7がSiC結晶である場合の、n型トランジスタである半導体装置1についての詳細を以下に述べる。
【0031】
チャネル領域として働く半導体層3がSiGe結晶である場合、SiGe結晶はSi結晶よりも内部における電子の移動度が大きいため、トランジスタの駆動速度を向上させることができる。
【0032】
しかし、一方、SiGe結晶はSi結晶よりも格子定数が大きいため、Si結晶からなる半導体基板2から応力を受けて圧縮歪みが発生する。圧縮歪みが発生すると、内部の電子の移動度が下がるため、SiGe結晶が本来有していた内部の電子の移動度が大きいという性質が弱まる、または打ち消されるおそれがある。
【0033】
図3(a)は、半導体層3に発生する歪みの大きさと、半導体層3の内部の電子の移動度との関係を概略的に表した模式図である。エピタキシャル層7がSiC結晶である場合、SiC結晶はSiGe結晶よりも格子定数が小さいため、半導体層3に引張歪みを発生させる。半導体層3に発生する引張歪みが大きくなるに伴い、内部の電子の移動度が大きくなるが、移動度の上昇はあるところで飽和する。この電子の移動度が飽和するときの歪みの大きさをδmaxとする。
【0034】
図3(b)は、エピタキシャル層7に含まれるCの濃度と、半導体層3に発生する歪みの大きさとの関係を概略的に表した模式図である。図中の直線αが、半導体層3がSiGe結晶である場合の関係を表す。直線βは、半導体層3の代わりにSi結晶を用いた場合の関係を比較例として表したものである。なお、半導体基板2等に結晶欠陥を発生させずに済むエピタキシャル層7のC濃度の限界は、3原子%程度である。直線α、β上のδmaxとなる点のC濃度c、cは、半導体装置1の構成により変化するが、ゲート長が所定の長さよりも短くなる等の場合には、図3(b)に示すように、c、cは3原子%以下になる。また、図3(b)は模式図であり、α、βは直線でなくてもよい。
【0035】
同図の直線βからわかるように、半導体層3の代わりにSi結晶を用いた場合は、エピタキシャル層7のC濃度が3原子%に達する前に、Si結晶内の電子の移動度の上昇が飽和する大きさの歪みδmaxが発生する。一方、上述したように、半導体層3がSiGe結晶である場合は、エピタキシャル層7から応力を受けていない状態において、電子の移動度が低下する圧縮歪みが内部に発生している。しかし、同図の直線αからわかるように、エピタキシャル層7のC濃度を増加させ、エピタキシャル層7から半導体層3に引張応力を加えることにより、半導体層3内の電子の移動度の上昇が飽和する大きさの歪みδmaxを発生させることができる。
【0036】
つまり、半導体層3がSiGe結晶である場合も、半導体層3の代わりにSi結晶を用いた場合も、内部の電子の移動度の上昇が飽和する歪みの大きさδmaxはほぼ等しいため、当初SiGe結晶からなる半導体層3に圧縮応力が発生していたとしても、結局、歪みによる電子の移動度の上昇の効果を同程度に得ることができる。
【0037】
また、上述したように、元来(歪みが発生していない状態において)SiGe結晶はSi結晶よりも内部の電子の移動度が大きい。このため、歪みによる電子の移動度の上昇の効果と併せれば、半導体層3がSiGe結晶である場合は、半導体層3の代わりにSi結晶を用いた場合と比べて、電子の移動度をより大きくすることができる。
【0038】
以下に、本実施の形態に係る半導体装置1の製造方法の一例を示す。
【0039】
(半導体装置の製造)
図4A(a)〜(c)、図4B(d)〜(f)、図4C(g)〜(h)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0040】
まず、図4A(a)に示すように、半導体基板2内に素子分離領域10を形成し、半導体基板2上に半導体膜11、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5およびキャップ膜12を形成する。
【0041】
ここで、半導体膜11は、エピタキシャル成長法等により形成される。また、半導体膜11には導電型不純物が注入されるが、エピタキシャル成長時にインサイチュで注入されてもよいし、エピタキシャル成長後にイオン注入法等により注入されてもよい。ここで、半導体膜11に注入される導電型不純物は、p型トランジスタを形成する場合は、B、BF等のp型不純物イオンを用い、n型トランジスタを形成する場合は、As、P等のn型不純物イオンを用いる。その後、RTA(Rapid Thermal Annealing)等の熱処理を行い、注入した導電型不純物を活性化させる。
【0042】
また、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5およびキャップ膜12は、それぞれの材料膜をCVD法等により半導体膜11上に積層した後、これらの材料膜を、例えば、フォトリソグラフィー法とRIE(Reactive Ion Etching)法によりパターニングすることにより形成される。
【0043】
なお、半導体膜11、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5およびキャップ膜12を形成する前に、半導体膜11に注入する導電型不純物と異なる導電型の不純物をイオン注入法により半導体基板2に注入し、ウェル(図示しない)を形成してもよい。その後、RTA等の熱処理を行い、注入した導電型不純物を活性化させる。
【0044】
次に、図4A(b)に示すように、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5およびキャップ膜12の側面にオフセットスペーサ6を形成する。
【0045】
ここで、オフセットスペーサ6は、オフセットスペーサ6の材料膜をCVD法等により半導体基板2、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5およびキャップ膜12の表面を覆うように形成した後、これをRIE法等によりエッチング加工することにより形成する。
【0046】
次に、図4A(c)に示すように、オフセットスペーサ6およびキャップ膜12をマスクとして用いて、RIE法等により半導体膜11をエッチングし、半導体層3に加工する。
【0047】
次に、図4B(d)に示すように、オフセットスペーサ6およびキャップ膜12をマスクとして用いて、RIE法等により半導体基板2上面をエッチングし、溝13を形成する。なお、図4A(c)に示した半導体層3の加工と、図4B(d)に示した溝13の形成は、RIE法等により連続的に行うことができる。
【0048】
次に、図4B(e)に示すように、オフセットスペーサ6および半導体層3の側面、および半導体基板2の溝13の内側面に相当する部分上にダミー側壁14を形成する。
【0049】
ここで、ダミー側壁14は、ダミー側壁14の材料膜をCVD法等により半導体基板2、オフセットスペーサ6、およびキャップ膜12の表面を覆うように形成した後、これをRIE法等によりエッチング加工することにより形成する。
【0050】
次に、図4B(f)に示すように、ダミー側壁14およびキャップ膜12をマスクとして用いて、RIE法等により半導体基板2上面をエッチングし、溝13の一部をより深くする。
【0051】
次に、図4C(g)に示すように、ダミー側壁14を除去した後、半導体基板2の溝13により露出した表面を下地として導電型不純物を含んだ結晶であるエピタキシャル層7をエピタキシャル成長させる。ここで、エピタキシャル層7は、半導体層3の側面に接する高さまで成長させる。
【0052】
ここで、p型トランジスタを形成する場合、例えば、Siの原料としてモノシラン(SiH)またはジクロロシラン(SiHCl)、Geの原料として水素化ゲルマニウム(GeH)、Bの原料としてジボラン(B)を用いて、水素ガス等の雰囲気中で700〜850℃の温度条件下でBを含んだSiGe結晶を気相エピタキシャル成長させ、p型のエピタキシャル層7を形成する。
【0053】
一方、n型トランジスタを形成する場合、例えば、Siの原料としてモノシラン(SiH)またはジクロロシラン(SiHCl)、Cの原料としてアセチレン(C)、Asの原料としてアルシン(AsH)を用いて、水素ガス等の雰囲気中で700〜850℃の温度条件下でAsを含んだSiC結晶を気相エピタキシャル成長させ、n型のエピタキシャル層7を形成する。
【0054】
なお、導電型不純物を含まないエピタキシャル層7をエピタキシャル成長させた後、イオン注入法等により導電型不純物を注入してもよい。
【0055】
次に、図4C(h)に示すように、キャップ層12を除去し、オフセットスペーサ6の側面にゲート側壁8を形成する。
【0056】
ここで、キャップ層12は、リン酸を用いたウェットエッチング等により除去される。なお、このときに、オフセットスペーサ6が同時に除去されてもよい。この場合、ゲート側壁8はゲート電極5の側面に形成される。
【0057】
また、ゲート側壁8は、ゲート側壁8の材料膜をエピタキシャル層7、オフセットスペーサ6およびキャップ層12の表面を覆うように堆積させた後、これをRIE法等によりエッチング加工することにより形成する。
【0058】
(第1の実施の形態の効果)
本発明の第1の実施の形態によれば、Si結晶よりも内部におけるキャリア移動度が大きい半導体層3と、半導体層3に内部のキャリア移動度が上昇する方向の歪みを与えるエピタキシャル層7を組み合わせて用いることにより、半導体層3が半導体基板2から受ける歪みによる内部のキャリア移動度が低下する効果を打ち消し、大きなキャリア移動度を得ることができる。これにより、半導体装置1の駆動速度を向上させることができる。
【0059】
〔第2の実施の形態〕
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態における半導体層3に対応する第1の半導体層15とゲート絶縁膜4の間に第2の半導体層が形成される点において第1の実施の形態と異なる。なお、他の部材の構成や製造工程等、第1の実施の形態と同様の点については、簡単のために説明を省略する。
【0060】
(半導体装置の構成)
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の断面図である。
【0061】
第1の半導体層15は、第1の実施の形態における半導体層3と同様の材料からなり、半導体層3と同様にチャネル領域として働く。
【0062】
第2の半導体層16は、Si結晶等の半導体層3よりも内部のキャリア移動度が小さい材料からなる。また、第2の半導体層16は、第1の半導体層15とゲート絶縁膜4の間に形成される。
【0063】
なお、第2の半導体層16の厚さは2nm以下であることが好ましい。第2の半導体層16の厚さが2nmを超えると、チャネル領域の第2の半導体層16内に形成される割合が大きくなりすぎるためである。
【0064】
また、第1の半導体層15の厚さと第2の半導体層16の厚さの合計は、半導体装置1の動作時に発生する反転層の厚さ以下であることが好ましい。第1の半導体層15の厚さと第2の半導体層16の厚さの合計が反転層の厚さよりも厚い場合、第1の半導体層15の反転層よりも下方にある領域をキャリアは移動しないため、半導体装置1の動作速度はほとんど変わらないためである。また、第1の半導体層15が、半導体基板2から受ける応力により内部におけるキャリアの移動度が低下する方向に歪みが生じる結晶である場合は、第1の半導体層15を厚くするほどこの歪みが大きくなってキャリアの移動度が低下する。なお、反転層の厚さは、例えば2〜3nmである。
【0065】
以下に、本実施の形態に係る半導体装置1の製造方法の一例を示す。
【0066】
(半導体装置の製造)
図6A(a)〜(c)、図6B(d)〜(f)、図6C(g)〜(h)は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【0067】
まず、図6A(a)に示すように、半導体基板2内に素子分離領域10を形成し、半導体基板2上に第1の半導体膜17、第2の半導体膜18、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5およびキャップ膜12を形成する。
【0068】
ここで、第1の半導体膜17および第2の半導体膜18は、エピタキシャル成長法等により形成される。また、第1の半導体膜17および第2の半導体膜18には導電型不純物が注入されるが、エピタキシャル成長時にインサイチュで注入されてもよいし、エピタキシャル成長後にイオン注入法等により注入されてもよい。ここで、第1の半導体膜17および第2の半導体膜18に注入される導電型不純物は、p型トランジスタを形成する場合は、B、BF等のp型不純物イオンを用い、n型トランジスタを形成する場合は、As、P等のn型不純物イオンを用いる。その後、RTA等の熱処理を行い、注入した導電型不純物を活性化させる。
【0069】
また、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5およびキャップ膜12は、それぞれの材料膜をCVD法等により半導体膜11上に積層した後、これらの材料膜を、例えば、フォトリソグラフィー法とRIE法によりパターニングすることにより形成される。
【0070】
なお、第1の半導体膜17、第2の半導体膜18、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5およびキャップ膜12を形成する前に、半導体膜11に注入する導電型不純物と異なる導電型の不純物をイオン注入法により半導体基板2に注入し、ウェル(図示しない)を形成してもよい。その後、RTA等の熱処理を行い、注入した導電型不純物を活性化させる。
【0071】
次に、図6A(b)に示すように、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5およびキャップ膜12の側面にオフセットスペーサ6を形成する。
【0072】
ここで、オフセットスペーサ6は、オフセットスペーサ6の材料膜をCVD法等により半導体基板2、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5およびキャップ膜12の表面を覆うように形成した後、これをRIE法等によりエッチング加工することにより形成する。
【0073】
次に、図6A(c)に示すように、オフセットスペーサ6およびキャップ膜12をマスクとして用いて、RIE法等により第1の半導体膜17および第2の半導体膜18をエッチングし、第1の半導体層15および第2の半導体層16にそれぞれ加工する。
【0074】
次に、図6B(d)に示すように、オフセットスペーサ6およびキャップ膜12をマスクとして用いて、RIE法等により半導体基板2上面をエッチングし、溝13を形成する。なお、図6A(c)に示した第1の半導体層15および第2の半導体層16の加工と、図6B(d)に示した溝13の形成は、RIE法等により連続的に行うことができる。
【0075】
次に、図6B(e)に示すように、オフセットスペーサ6、第1の半導体層15および第2の半導体層16の側面、および半導体基板2の溝13の内側面に相当する部分上にダミー側壁14を形成する。
【0076】
ここで、ダミー側壁14は、ダミー側壁14の材料膜をCVD法等により半導体基板2、第1の半導体層15、第2の半導体層16、オフセットスペーサ6およびキャップ膜12の表面を覆うように形成した後、これをRIE法等によりエッチング加工することにより形成する。
【0077】
次に、図6B(f)に示すように、ダミー側壁14およびキャップ膜12をマスクとして用いて、RIE法等により半導体基板2上面をエッチングし、溝13の一部をより深くする。
【0078】
次に、図6C(g)に示すように、ダミー側壁14を除去した後、半導体基板2の溝13により露出した表面を下地として導電型不純物を含んだ結晶であるエピタキシャル層7をエピタキシャル成長させる。ここで、エピタキシャル層7は、第1の半導体層15および第2の半導体層16の側面に接する高さまで成長させる。
【0079】
次に、図6C(h)に示すように、キャップ層12を除去し、オフセットスペーサ6の側面にゲート側壁8を形成する。
【0080】
ここで、キャップ層12は、リン酸を用いたウェットエッチング等により除去される。なお、このときに、オフセットスペーサ6が同時に除去されてもよい。この場合、ゲート側壁8はゲート電極5の側面に形成される。
【0081】
また、ゲート側壁8は、ゲート側壁8の材料膜をエピタキシャル層7、オフセットスペーサ6およびキャップ層12の表面を覆うように堆積させた後、これをRIE法等によりエッチング加工することにより形成する。
【0082】
(第2の実施の形態の効果)
本発明の第2の実施の形態によれば、第1の半導体層15とゲート絶縁膜4との間に、第1の半導体層15よりも内部のキャリア移動度が小さい第2の半導体層16を形成することにより、ゲート絶縁膜4と接触しない第2の半導体層16がチャネル領域として働く。このため、チャネル領域とゲート絶縁膜4との界面における表面ラフネスに起因するチャネル領域内のキャリアの散乱を抑え、移動度の低下を抑えることができる。
【0083】
〔他の実施の形態〕
本発明は、上記各実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
【0084】
また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記各実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の断面図である。
【図2】(a)、(b)は、参考例としての、エクステンション領域の幅、深さとエピタキシャル層から半導体基板のゲート電極下の領域に加わる応力の大きさの関係を概略的に示す図およびグラフである。
【図3】(a)は、半導体層に発生する歪みの大きさと、半導体層の内部の電子の移動度との関係を概略的に表した模式図であり、(b)は、エピタキシャル層に含まれるCの濃度と、半導体層に発生する歪みの大きさとの関係を概略的に表した模式図である。
【図4A】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図4B】(d)〜(f)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図4C】(g)、(h)は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の断面図である。
【図6A】(a)〜(c)は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図6B】(d)〜(f)は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図6C】(g)、(h)は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体装置の製造工程を示す断面図。
【符号の説明】
【0086】
1 半導体装置
2 半導体基板
3 半導体層
4 ゲート絶縁膜
5 ゲート電極
7 エピタキシャル層
15 第1の半導体層
16 第2の半導体層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成され、内部におけるキャリアの移動度がSi結晶よりも大きい第1の結晶からなる半導体層と、
前記半導体層上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
前記半導体層を挟んで形成され、前記半導体層に前記半導体層内のキャリアの移動度が上昇する方向に歪みを与える第2の結晶を含み、前記半導体層に接する深さの浅い領域であるソース・ドレインエクステンション領域を有するソース・ドレイン領域と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1の結晶は、Si結晶上に形成した場合に、内部におけるキャリアの移動度が低下する方向に歪みが生じる結晶であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の結晶はSiGe結晶であり、前記第2の結晶はSiC結晶であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ソース・ドレインエクステンション領域の下端は、前記半導体層の下端よりも深い位置にあることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体層と前記ゲート絶縁膜の間に、内部におけるキャリアの移動度が前記第1の結晶よりも小さい結晶からなる他の半導体層が形成されたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公開番号】特開2009−105163(P2009−105163A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274302(P2007−274302)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】