説明

圧力調整装置、これを用いた処理システム及び圧力調整方法

【課題】2つの部屋を連通する際に一方の部屋の雰囲気を他方の部屋へ流入させることなく両部屋の差圧をゼロにすることが可能な圧力調整装置を提供する。
【解決手段】開閉可能になされた開閉ドアG1〜G8を介して連通された、圧力差が生ずることのある第1の部屋と第2の部屋の圧力調整装置において、第1の部屋と第2の部屋とを連通する連通路66と、連通路の途中に介設された第1及び第2の開閉弁68,70と、連通路の第1及び第2の開閉弁との間に接続されて、連通路に所定の圧力の清浄ガスを供給するガス供給通路72と、ガス供給通路の途中に介設されたガス開閉弁74と、開閉ドアを開く直前に、第1及び第2の開閉弁を閉じた状態で連通路内に清浄ガスを貯め込み、次に、貯め込んだ清浄ガスを第1及び第2の部屋へ供給するために第1及び第2の開閉弁を開くように制御する弁制御部76とを備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等を処理するために、例えばクラスタツール化されたマルチチャンバ型の処理システムにおける処理室(チャンバ)間の圧力を調整する圧力調整装置及びこれを用いた処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体集積回路を製造するためには、例えばシリコン基板よりなる半導体ウエハに対して成膜処理、酸化拡散処理、アニール処理、エッチング処理等の各種の処理が繰り返し施される。そして、上述した一連の処理を施す際、処理の効率化を図り、且つ半導体ウエハの大気搬送を避けるために、例えば上記した一連の処理を行なうための枚葉式の同種、或いは異種の処理室を複数個集合させて結合してクラスター化し、1つの処理が終了した半導体ウエハを大気中に晒すことなく次の異なる処理を行なう処理室へ搬送して次々と連続処理を行うようにした、いわゆるクラスター化されたマルチチャンバ型の処理システムが知られている(例えば特許文献1、2)。
【0003】
例えばこの種のマルチチャンバ型の処理システムは、常時真空状態に維持されている共通の搬送室に、成膜用の処理室やエッチング用の処理室が、それぞれゲートバルブを介して共通に接続され、この搬送室に対しては小容量で必要に応じて真空状態又は大気圧状態になされるロードロック室がゲートバルブを介して連結され、搬送室の真空状態を破ることなくロードロック室との間で半導体ウエハの搬入・搬出を行ない得るようになっている。
【0004】
また、このロードロック室には、半導体ウエハ表面の自然酸化を防止するために例えばNガス等の不活性ガス雰囲気になされており、このロードロック室に はゲートバルブを介して常時略大気圧状態になされた大気側の搬送室が連結されており、この装置へ取り込んだ半導体ウエハをロードロック室との間で搬入・搬出できるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−291384号公報
【特許文献2】特開平11−186355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、半導体ウエハの製造工程にあっては、非常に僅かなゴミ、すなわちパーティクルが存在していても、ミクロンオーダの線幅の加工を行なうことから容易に不良品となってしまい、このようなパーティクルをどのように排除するかが大きな課題となっている。
【0007】
このような状況下において、大きな問題となるのは、上記した各室間に亘って半導体ウエハを搬送する際に、各室間に生じている圧力差により2つの室を連通した時に圧力差に起因して気流が一方の室に流れ込み、このために、パーティクルが巻き上げられて半導体ウエハに付着してしまうという点や一方の室内のパーティクルや汚染物質が他方の室内に流れ込んで拡散させてしまうという点である。そのため、上記圧力差を解消するために、真空状態と大気圧状態に繰り返しなされるロードロック室と常時略大気圧状態に維持される大気側の搬送室とを連通させる際には、ロードロック室内にN ガスを供給してロードロック室内に設けた圧力計が略大気圧を検出したところで両室を区画するゲートバルブを開いて両室を連通させるようになっている。
【0008】
しかし、大気圧程度の圧力下においては僅かな圧力差でもって容易に気流が移動してしまうが、大気圧程度の圧力レンジをカバーする圧力計は、精度の高いものは非常に高価で、且つ圧力計で差圧ゼロを検知したとしても、この測定誤差による圧力差に起因して、両室間を連通する毎に気流が流れてパーティクルを巻き上げてしまうという恐れがあった。
【0009】
また、他の従来の連通方法としては、図10に示すような方法も知られている。すなわち、大気側の搬送室2とロードロック室4とを連通するように、途中に開閉弁6が介設された連通管8を設けておき、ロードロック室4の大気圧復帰時には、ロードロック室4内にN ガスを導入して行き、ここに設けた圧力計10が略大気圧を検出した時に、弁制御部12が上記開閉弁6を開状態とする。これにより連通管8を介して圧力が高い室から低い室へ僅かにガスが移動することで、両室2、4間の僅かな差圧を解消することができ、この後に両室2、4間を仕切っていたゲートバルブ14を開くようにする(例えば特許文献2)。
【0010】
しかしながら、この場合にも、上記圧力計10の誤差等に伴って、一方の室内の雰囲気が連通管8を介して他方の室内へ移動することを避けることは困難であり、特に、パーティクルがより発生し易い状況にある大気側の搬送室2内の雰囲気が、ロードロック室4内へ侵入してパーティクルの拡散を引き起こす恐れが存在する、といった問題がここでもあった。
【0011】
このような問題は、上記した大気側の搬送室2とロードロック室4との間のみならず、ロードロック室と真空状態の搬送室との間及び真空状態の搬送室と各処理室との間にも、程度の差はあるが存在していた。
【0012】
特に、半導体集積回路の更なる高密度、高微細化が進んできている今日において、僅かなパーティクルが存在しても歩留まり低下の原因となり、上記した問題点の早期の解決が望まれている。
【0013】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、2つの部屋を連通する際に、一方の部屋の雰囲気を他方の部屋へ流入させることなく両部屋の差圧をゼロにすることが可能な圧力調整装置、これを用いた処理システム及び圧力調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、開閉可能になされた開閉ドアを介して連通された、圧力差が生ずることのある第1の部屋と第2の部屋の圧力調整装置において、前記第1の部屋と前記第2の部屋とを連通する連通路と、前記連通路の途中に介設された第1及び第2の開閉弁と、前記連通路の前記第1及び前記第2の開閉弁との間に接続されて、前記連通路に所定の圧力の清浄ガスを供給するガス供給通路と、前記ガス供給通路の途中に介設されたガス開閉弁と、前記開閉ドアを開く直前に、前記第1及び第2の開閉弁を閉じた状態で前記連通路内に前記清浄ガスを貯め込み、次に、前記貯め込んだ前記清浄ガスを前記第1及び第2の部屋へ供給するために前記第1及び第2の開閉弁を開くように制御する弁制御部と、を備えるように構成したことを特徴とする圧力調整装置である。
【0015】
このように、第1の部屋と第2の部屋とを連通する連通路と、連通路の途中に介設された第1及び第2の開閉弁と、連通路の第1及び第2の開閉弁との間に接続されて、連通路に所定の圧力の清浄ガスを供給するガス供給通路と、ガス供給通路の途中に介設されたガス開閉弁と、開閉ドアを開く直前に、第1及び第2の開閉弁を閉じた状態で連通路内に清浄ガスを貯め込み、次に、貯め込んだ清浄ガスを第1及び第2の部屋へ供給するために第1及び第2の開閉弁を開くように制御する弁制御部とを設け、開閉ドア、例えばゲートバルブを開いて両部屋を連通する直前に、前記連通路内に貯め込んだ清浄ガスを両部屋へそれぞれ供給して圧力を平衡させるようにしたので、2つの部屋を連通する際に、一方の部屋の雰囲気を他方の部屋へ流入させることなく両部屋の差圧をゼロにすることができる。
【0016】
従って、開閉ドアを開いて両部屋を連通した際に、パーティクルの巻き上げを阻止することができるのみならず、一方の部屋に存在するパーティクルや汚染物質が他の部屋に拡散することを防止することができる。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記弁制御部は、前記第1及び第2の開閉弁を開いた後、所定の時間経過した時に前記開閉ドアを開くように制御することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記弁制御部は、前記第1及び第2の開閉弁を開いた後は、前記開閉ドアを開くまでは前記第1及び第2の開閉弁の開状態を維持するように制御することを特徴とする。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、前記弁制御部は、前記第1の開閉弁と前記第2の開閉弁とを同時に開くように制御することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発明において、前記第1の部屋と前記第2の部屋の内、少なくともいずれか一方の部屋に圧力計が設けられており、前記弁制御部は前気圧力計の検出値に基づいて開弁の制御を行うことを特徴とする。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発明において、前記清浄ガスの所定の圧力は、前記第1及び第2の開閉弁を開く前の前記第1及び第2の部屋の各圧力よりも高く設定されていることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発明において、前記連通路には、前記第1の開閉弁と前記第2の開閉弁との間において容積増加タンクが接続されていることを特徴とする。
【0020】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の発明において、前記ガス供給通路の前記ガス開閉弁よりも下流側には、容積増加タンクが接続されていることを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発明において、前記第1の部屋と前記第2の部屋は、被処理体に対して減圧雰囲気で処理を行うための処理システムにおける大気側搬送室と、該大気側搬送室に連設されて大気圧雰囲気と減圧雰囲気とを繰り返すロードロック室であることを特徴とする。
【0021】
請求項10の発明は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発明において、前記第1の部屋と前記第2の部屋は、被処理体に対して減圧雰囲気で処理を行うための処理システムにおける減圧側搬送室と、該減圧側搬送室に連設されて大気圧雰囲気と減圧雰囲気とを繰り返すロードロック室であることを特徴とする。
請求項11の発明は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発明において、前記第1の部屋と前記第2の部屋は、被処理体に対して減圧雰囲気で処理を行うための処理システムにおける減圧側搬送室と、該減圧側搬送室に連設されて減圧雰囲気下で前記被処理体に対して実際に処理を施す処理室であることを特徴とする。
【0022】
請求項12の発明は、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の発明において、前記開閉ドアは、ゲートバルブであることを特徴とする。
請求項13の発明は、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の発明において、前記清浄ガスは、清浄空気、N ガス及び希ガスの内の1以上ガスであることを特徴とする。
【0023】
請求項14の発明は、被処理体に処理を施すための処理システムにおいて、前記被処理体に処理を実際に施す1又は複数の処理室と、前記処理室に、開閉可能になされた開閉ドアを設けた開口を介して共通に連結される減圧側搬送室と、前記減圧側搬送室に、開閉可能になされた開閉ドアを設けた開口を介して連結されて大気圧雰囲気と減圧雰囲気とが繰り返されるロードロック室と、前記ロードロック室に、開閉可能になされた開閉ドアを設けた開口を介して連結される大気側搬送室と、前記減圧側搬送室に設けられて前記被処理体を搬送する第1の搬送機構と、前記大気側搬送室に設けられて前記被処理体を搬送する第2の搬送機構と、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の圧力調整装置と、システム全体の動作を制御するシステム制御部と、を備えたことを特徴とする処理システムである。
【0024】
請求項15の発明は、開閉可能になされた開閉ドアを介して連通された、圧力差が生ずることのある第1の部屋と第2の部屋の圧力調整装置であって、前記第1の部屋と前記第2の部屋とを連通する連通路と、前記連通路の途中に介設された第1及び第2の開閉弁と、前記連通路の前記第1及び前記第2の開閉弁との間に接続されて、前記連通路に所定の圧力の清浄ガスを供給するガス供給通路と、前記ガス供給通路の途中に介設されたガス開閉弁と、を有する圧力調整装置を用いて行われる圧力調整方法において、前記第1及び第2の開閉弁を閉じた状態で前記連通路内に前記清浄ガスを貯め込む工程と、前記第1及び第2の開閉弁を開いて前記貯め込んだ前記清浄ガスを前記第1及び第2の部屋へ供給する工程と、を備えるようにしたことを特徴とする圧力調整方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る圧力調整装置、これを用いた処理システム及び圧力調整方法によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
開閉可能になされた開閉ドアを介して連通された、圧力差が生ずることのある第1の部屋と第2の部屋の圧力調整装置において、第1の部屋と第2の部屋とを連通する連通路と、連通路の途中に介設された第1及び第2の開閉弁と、連通路の第1及び第2の開閉弁との間に接続されて、連通路に所定の圧力の清浄ガスを供給するガス供給通路と、ガス供給通路の途中に介設されたガス開閉弁と、開閉ドアを開く直前に、第1及び第2の開閉弁を閉じた状態で連通路内に清浄ガスを貯め込み、次に、貯め込んだ清浄ガスを第1及び第2の部屋へ供給するために第1及び第2の開閉弁を開くように制御する弁制御部とを設け、開閉ドア、例えばゲートバルブを開いて両部屋を連通する直前に、前記連通路内に貯め込んだ清浄ガスを両部屋へそれぞれ供給して圧力を平衡させるようにしたので、2つの部屋を連通する際に、一方の部屋の雰囲気を他方の部屋へ流入させることなく両部屋の差圧をゼロにすることができる。
【0026】
従って、開閉ドアを開いて両部屋を連通した際に、パーティクルの巻き上げを阻止することができるのみならず、一方の部屋に存在するパーティクルや汚染物質が他の部屋に拡散することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明に係る圧力調整装置、これを用いた処理システム及び圧力調整方法の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る処理システムの一例を示す概略構成図、図2は大気側搬送室とロードロック室との間に設けた圧力調整装置で示す図、図3は減圧側搬送室とロードロック室との間に設けた圧力調整装置を示す図、図4は減圧側搬送室と処理室の間に設けた圧力調整装置を示す図である。
【0028】
<処理システムの説明>
まず、上記処理システムについて説明する。
図1に示すように、この処理システム22は、複数、例えば第1〜第4の4つの処理室24a、24b、24c、24dと、略六角形状の減圧側搬送室26と、ロードロック機能を有する第1及び第2のロードロック室28a、28bと、細長い大気側搬送室30とを主に有している。
【0029】
具体的には、略六角形状の上記減圧側搬送室26の4辺に上記各処理室24a〜24dが接合され、残りの2つの辺に、上記第1及び第2のロードロック室28a、28bがそれぞれ接合される。そして、この第1及び第2のロードロック室28a、28bに、上記大気側搬送室30が共通に接続される。ここでは上記第1の処理室24a、第2の処理室24b、第3の処理室24c、第4の処理室24dでは例えば成膜処理、エッチング処理、酸化拡散処理等の減圧雰囲気下で行われる同種、或いは異種の処理が半導体ウエハである被処理体に対して行われる。
【0030】
上記減圧側搬送室26と上記4つの各処理室24a〜24dとの間は、それぞれ気密に開閉可能になされた開閉ドアであるゲートバルブG1、G2、G3、G4を介在して接合されて、クラスタツール化されており、必要に応じて減圧側搬送室26内と連通可能になされている。また、上記減圧側搬送室26と上記第1及び第2の各ロードロック室28a、28bとの間も、それぞれ気密に開閉可能になされた開閉ドアであるゲートバルブG5、G6を介在して接合されて、必要に応じて減圧側搬送室26内と連通可能になされている。
【0031】
ここで、この減圧側搬送室26内は常時真空引きされて、不活性ガス、例えばN ガスの所定の減圧雰囲気に維持されている。また、上記第1及び第2の各ロードロック室28a、28bと上記大気側搬送室30との間も、それぞれ気密に開閉可能になされた開閉ドアであるゲートバルブG7、G8が介在されている。この第1及び第2のロードロック室28a、28bは真空引きによる減圧雰囲気、及び大気圧雰囲気が半導体ウエハの搬出入に伴って繰り返される。そして、半導体ウエハWは各ゲートバルブG1〜G8を開いた状態で搬出入させることなる。
【0032】
また、上記第1〜第4の各処理室24a〜24d内には、半導体ウエハWを載置するための載置台34a、34b、34c、34dがそれぞれ設けられ、上記第1及び第2のロードロック室28a、28b内には、半導体ウエハWを一時的に載置するための載置テーブル36a、36bがそれぞれ設けられている。
【0033】
また上記第1〜第4の各処理室24a〜24dには、処理に必要なガスを供給する、例えばシャワーヘッド等のガス導入部(図示せず)や室内を真空引きする真空排気系(図示せず)や半導体ウエハを加熱する加熱手段(図示せず)等が必要に応じてそれぞれ設けられている。
【0034】
更には、上記第1〜第4の各処理室24a〜24dには、この室内の圧力を検出する圧力計38a、38b、38c、38dがそれぞれ設けられ、第1及び第2の各ロードロック室28a、28bにもこの室内の圧力を検出する圧力計40a、40dがそれぞれ設けられている。また、上記減圧側搬送室26にもこの室内の圧力を検出する圧力計42が設けられている。
【0035】
また、第1及び第2のロードロック室28a、28bには、大気圧復帰時の不活性ガスとして例えばN ガスを導入するために開閉弁が介設されたガス導入系44a、44bと、必要時に各室内の雰囲気を真空引きするために開閉弁が介設された排気系46a、46bとがそれぞれ接続されている。
【0036】
そして、この減圧側搬送室26内においては、上記2つの各ロードロック室28a、28b及び4つの各処理室24a〜24dにアクセスできる位置に、屈伸及び旋回可能になされた多関節アームよりなる第1の搬送機構50が設けられており、これは、互いに反対方向へ独立して屈伸できる2つのピック50a、50bを有しており、一度に2枚の半導体ウエハを取り扱うことができるようになっている。尚、上記第1の搬送機構50として1つのみのピックを有しているものも用いることができる。
【0037】
上記大気側搬送室30は、横長の箱体により形成されており、この横長の一側には、被処理体である半導体ウエハを導入するための1つ乃至複数の、図示例では3つの搬入口が設けられ、各搬入口には、開閉可能になされた開閉蓋52が設けられる。そして、この各搬入口に対応させて、導入ポート54がそれぞれ設けられ、ここにそれぞれ1つずつカセット容器56を載置できるようになっている。各カセット容器56には、複数枚、例えば25枚の半導体ウエハWを等ピッチで多段に載置して収容できるようになっている。この大気側搬送室30内は、この処理システムが設置されているクリーンルーム内の清浄空気を取り込んでダウンフローが形成されており、略大気圧状態が維持されている。
【0038】
この大気側搬送室30内には、半導体ウエハWをその長手方向に沿って搬送するための大気側搬送機構である第2の搬送機構58が設けられる。この第2の搬送機構58は、屈伸及び旋回可能になされた2つのピック58a、58bを有しており、一度に2枚の半導体ウエハWを取り扱い得るようになっている。この第2の搬送機構58は、大気側搬送室30内の導入ポート側に長さ方向に沿って延びるように設けた案内レール60上にスライド移動可能に支持されている。
【0039】
また、大気側搬送室30の一方の端部には、半導体ウエハの位置合わせを行なうオリエンタ62が設けられる。上記オリエンタ62は、駆動モータによって回転される回転台62aを有しており、この上に半導体ウエハWを載置した状態で回転するようになっている。この回転台62aの外周には、半導体ウエハWの周縁部を検出するための光学センサ62bが設けられ、これにより半導体ウエハWの位置決め切り欠き、例えばノッチやオリエンテーションフラットの位置方向や半導体ウエハWの中心の位置ずれ量を検出できるようになっている。
【0040】
そして、上述のように形成した処理システムの各ゲートバルブの部分に、これを跨ぐようにして本発明に係る圧力調整装置が設けられる。具体的には、上記減圧側搬送室26と第1から第4の各処理室24a〜24dとの間に介在されるゲートバルブG1〜G4の部分に対応させて圧力調整装置A1、A2、A3、A4がそれぞれ設けられており、減圧側搬送室26と第1〜第2の各ロードロック室28a、28bとの間に介在されるゲートバルブG5、G6の部分に対応させて圧力調整装置A5、A6がそれぞれ設けられており、更に大気側搬送室30と第1〜第2の各ロードロック室28a、28bとの間に介在されるゲートバルブG7、G8に対応させて圧力調整装置A7、A8がそれぞれ設けられる。
【0041】
ここで上記圧力調整装置A1〜A8は、基本的には略同じ構成になされている。特に、上記ゲートバルブG1〜G4に対応して設けた圧力調整装置A1〜A4同士は全く同じ構成になされており、また、ゲートバルブG5、G6に対応して設けた圧力調整装置A5、A6同士は全く同じ構成になされており、更に、上記ゲートバルブG7、G8に対応して設けた圧力調整装置A7、A8同士は全く同じ構成になされている。
【0042】
従って、ここでは4つの圧力調整装置A1〜A4については、その内の1つの圧力調整装置A1を例にとって説明し、2つの圧力調整装置A5、A6については一方の圧力調整装置A5を例にとって説明し、残りの2つの圧力調整装置A7、A8については一方の圧力調整装置A7を例にとって説明する。これらの圧力調整装置A1〜A4同士、A5とA6同士、A7とA8同士は、それぞれ全く同じような作用(動作)をする。
【0043】
まず、図2は大気側搬送室30と第1のロードロック室28aとの間に介在されるゲートバルブG7に対応させて設けた圧力調整装置A7を模式的に示しており、図3は減圧側搬送室26と第1のロードロック室28aとの間に介在されるゲートバルブG5に対応させて設けた圧力調整装置A5を模式的に示しており、図4は減圧側搬送室26と第1の処理室24aとの間に介在されるゲートバルブG1に対応させて設けた圧力調整装置A1を模式的に示す。図2乃至図4の各図では、同一構成部分については同一参照符号を付してその説明を省略する。
【0044】
<圧力調整装置A7の構成>
まず、図2に示すように、この圧力調整装置A7は、第1の部屋である大気側搬送室30と第2の部屋である第1のロードロック室28aとを跨ぐようにして設けられている。すなわち、この圧力調整装置A7は、第1の部屋である大気側搬送室30と第2の部屋である第1のロードロック室28aとを連通する連通路66と、この連通路66の途中に介設された第1及び第2の開閉弁68、70と、上記連通路66の上記第1の開閉弁68と第2の開閉弁70との間に接続されて、所定の圧力の清浄ガスを供給するためのガス供給通路72と、このガス供給通路72の途中に介設されたガス開閉弁74と、上記各開閉弁68、70、74等を制御する例えばコンピュータ等よりなる弁制御部76とにより主に構成されている。
【0045】
ここで、上記第1の部屋や第2の部屋の名称は、ロードロック室や搬送室等の各室を単に抽象的に表すための標記であり、この点は他の圧力調整装置においても同様である。具体的には、上記連通路66は、所定の内径になされた配管等よりなり、その両端のガス出口は、上記大気側搬送室30内及び第1のロードロック室28a内にそれぞれ臨んでおり、ガスを放出できるようになっている。上記第1の開閉弁68は、大気側搬送室30側に接近させて設けており、第2の開閉弁70は第1のロードロック室28a側に接近させて設けている。
【0046】
また、上記ガス供給通路72も、所定の内径になされた配管等よりなり、ここでは清浄ガスとして所定の圧力になされたN ガスを供給できるようになっている。このN ガスの圧力は、上記大気側搬送室30内及び第1のロードロック室28a内の圧力よりも高い圧力に設定されている。例えば第1のロードロック室28a内は、半導体ウエハWの搬出入に伴って減圧雰囲気と大気圧雰囲気とを交互に繰り返されるのに対して、大気側搬送室30内はクリーンルームの清浄空気を取り込んでダウンフローが形成されて略大気圧になっているので、上記N ガスの圧力は大気圧よりも大きい、例えば0.2MPa程度に設定されている。
【0047】
また、上記弁制御部76は、上記第1のロードロック室28a内に設けた圧力計40aの検出値を入力しており、そして、開閉ドアであるゲートバルブG7を開く直前に、上記第1及び第2の開閉弁68、70を閉じた状態で上記連通路66内にN ガスを貯め込み、大気側搬送室30内と第1のロードロック室28a内の圧力差が圧力計40aの検出値に基づいてゼロ、又は微小になった時に、ガス開閉弁74を閉じた状態で第1及び第2の開閉弁68、70を同時に開いて上記貯め込んだN ガスを大気側搬送室30内と第1のロードロック室28a内へ共に放出するようになっている。
【0048】
この結果、いずれか一方の室内から他方の室内へ雰囲気ガスが流れることを防止し得るようになっている。この場合、ガス供給通路72にあっては、これに介設したガス開閉弁74よりも下流側の通路部分でも上記N ガスが貯め込まれた状態となっている。従って、上記連通路66内の容積(第1と第2の開閉弁68、70間)やガス供給通路72内の容積(ガス開閉弁74よりも下流側)やN ガスの圧力は、上記第1及び第2の開閉弁68、70を共に開いて連通状態にした時に大気側搬送室30から第1のロードロック室28a側へ、或いはその逆方向へ雰囲気が流出しないような大きさにそれぞれ設定されている。
【0049】
<圧力調整装置A5の構成>
次に、圧力調整装置A5は、図3に示すように、第1の部屋である減圧側搬送室26と第2の部屋である第1のロードロック室28aとの間に設けた開閉ドアであるゲートバルブG5を跨ぐようにして設けられている。この圧力調整装置A5の基本的構造は、先に図2を参照して説明した圧力調整装置A7と同じである。そして、ここでは減圧側搬送室26内と第1のロードロック室28a内に、共に圧力計42、40aを設けていることから、両圧力計42、40aの検出値は共に弁制御部76へ入力されている。
【0050】
そして、上記両圧力計42、40aの検出値が同一又は微小な差になったことを確認してから、減圧側搬送室26内と第1のロードロック室28a内とを連通するために前述したような第1及び第2の開閉弁68、70等の弁操作が行われることになる。
【0051】
<圧力調整装置A1の構成>
次に、圧力調整装置A1は、図4に示すように、第1の部屋である減圧側搬送室26と第2の部屋である第1の処理室24aとの間に設けた開閉ドアであるゲートバルブG1を跨ぐようにして設けられている。この圧力調整装置A1の基本的構造は、先に図2を参照して説明した圧力調整装置A7と同じである。そして、ここでは減圧側搬送室26内と第1の処理室24a内に、共に圧力計42、38aを設けていることから、両圧力計42、38aの検出値は共に弁制御部76へ入力されている。
【0052】
そして、上記両圧力計42、38aの検出値が同一又は微小な差になったことを確認してから、減圧側搬送室26内と第1の処理室24a内とを連通するために前述したような第1及び第2の開閉弁68、70等の弁操作が行われることになる。
【0053】
図1に戻って、このように構成された処理システム22の全体の動作、例えば第1〜第4の各処理室24a〜24dにおける半導体ウエハに対する各種の処理、半導体ウエハWの搬入・搬出操作等は、例えばコンピュータ等よりなるシステム制御部80により制御されることになり、また、各圧力調整装置A1〜A8の各弁制御部76は、上記システム制御部80の支配下で動作する。この場合、上記各ゲートバルブG1〜G8は、上記弁制御部76が開閉動作を行うようにしてもよいし、或いは弁制御部76が、弁操作完了信号を上記システム制御部80に通知した時に、システム制御部80が行うようにしてもよい。
【0054】
また、上記処理システム22の制御に必要なコンピュータに読み取り可能なプログラムは、記憶媒体82に記憶されている。この記憶媒体82は、例えばフレキシブルディスク、CD(Compact Disc)、CD−ROM、ハードディスク、フラッシュメモリ或いはDVD等よりなる。
【0055】
次に、以上のように構成された処理システム22における概略的な動作及び本発明の圧力調整装置の動作について説明する。まず、導入ポート54に設置されたカセット容器56からは、未処理の半導体ウエハWが第2の搬送機構58により大気圧状態になっている大気側搬送室30内に取り込まれ、この取り込まれた半導体ウエハWは大気側搬送室30の一端に設けたオリエンタ62へ搬送されて、ここで位置決めがなされる。
【0056】
位置決めがなされた半導体ウエハWは、上記第2の搬送機構58により再度搬送され、ゲートバルブG7又はゲートバルブG8を用いて第1及び第2のロードロック室28a、28bの内のいずれか一方のロードロック室内へ搬入される。このロードロック室内が真空引きされた後に、そのロードロック室のゲートバルブG5又はゲートバルブG6を開き、予め真空引きされた減圧側搬送室26内の第1の搬送機構50を用いて、上記ロードロック室内の半導体ウエハWが減圧側搬送室26内に取り込まれる。
【0057】
そして、この減圧側搬送室26内へ取り込まれた未処理の半導体ウエハは、第1の処理室24a〜第4の処理室24dまで搬入・搬出を繰り返しながら搬送され、その都度、各処理室内で必要とされる所定の処理が施される。そして、減圧側搬送室26と第1から第4の各処理室24a〜24d間で半導体ウエハWの搬入・搬出が行われる時には、その都度、各ゲートバルブG1〜G4が開閉動作されることになる。
【0058】
このように、上記第1〜第4の処理室24a〜24d内にて、半導体ウエハWに対してそれぞれ所定の処理を施したならば、この処理済みの半導体ウエハWは、いずれか一方のロードロック室28a又は28b、大気側搬送室30を経由して導入ポート54の処理済み半導体ウエハ用のカセット容器56内へ収容されることになる。また、上述のように処理済みの半導体ウエハWを搬出する時にも、搬出経路途中の各ゲートバルブは開閉されることになる。
【0059】
さて、上述のようにして、未処理の半導体ウエハWが処理システム22の内部に取り込まれて搬入され、そして、処理済みの半導体ウエハWが搬出される際、この半導体ウエハWの経路途中に存在するゲートバルブは、半導体ウエハWが通過する際にその都度開閉されるが、その時、本発明の圧力調整装置を用いてこのゲートバルブの両側に位置する部屋(室)間の圧力調整を行って、パーティクルの巻き上げや汚染の拡散を防止するようになっている。
【0060】
この本発明の圧力調整装置を用いて行われる圧力調整方法について、図5乃至図8を参照して以下に説明する。図5は大気側搬送室とロードロック室との間のゲートバルブを開くときの圧力調整方法の一例を示すフローチャート、図6は減圧側搬送室とロードロック室との間のゲートバルブを開くときの圧力調整方法の一例を示すフローチャート、図7は減圧側搬送室と処理室との間のゲートバルブを開くときの圧力調整方法の一例を示すフローチャート、図8は圧力調整装置の第1及び第2の開閉弁を開いた時の第1及び第2の各部屋の圧力変化の一例を模式的に示すグラフである。
【0061】
<大気側搬送室とロードロック室との間の圧力調整>
まず、図2及び図5を参照して、減圧雰囲気下の第1のロードロック室28aと大気圧状態になっている大気側搬送室30との間のゲートバルブG7を開く際の圧力調整方法について説明する。尚、各弁の弁操作は前述したように弁制御部76からの指令によって行われる。
【0062】
まず、通常の待機時には、圧力調整装置A7の連通路66の途中に介設されている第1及び第2の開閉弁68、70は共に閉状態になされており、また、ガス供給通路72の途中に介設されているガス開閉弁74は開状態になされている。従って、高い圧力に設定されている清浄ガスであるN ガスは上記ガス供給通路72内に充填されているのみならず、上記連通路66内においても第1及び第2の開閉弁68、70まではN ガスが充填された状態となっている。
【0063】
さて、このような状態で、ゲートバルブG7を開く場合には、その前に、まず、ステップS1にて、上記第1及び第2の開閉弁68、70の閉状態を確認すると共に、ガス供給通路72のガス開閉弁74の開状態を確認し、上述したように連通路66まで清浄ガスであるN ガスが到達してこの連通路66内に充填されていることを確認する。
【0064】
次に、連通路66までN ガスが充填されていることを確認したならば、上記ガス開閉弁74を閉じる(S2)。これにより、第1及び第2の開閉弁68、70及びガス開閉弁74間に上記高い圧力のN ガスが貯め込まれることになる。具体的には、このN ガスは第1及び第2の開閉弁68、70よりも上流側部分の連通路66内及びガス開閉弁74よりも下流側部分のガス供給通路72内に孤立化されて貯め込まれることになる。
【0065】
次に、低圧側の部屋、すなわちここでは第1のロードロック室28a内に、ガス導入系44aの開閉弁44a’を開いてN ガスを徐々に導入して内部圧力を昇圧して行く(S3)。尚、上記ガス導入系44aのN ガス源と上記ガス供給通路72のN ガス源とは同じガス源を用いてもよい。
【0066】
上記した内部圧力の上昇は、第1のロードロック室28a内に設けた圧力計40aによりリアルタイムで検出されており、この検出値はシステム制御部80(図1参照)に入力される一方、弁制御部76にも入力されており、圧力計40aの検出値が略大気圧に到達したか否かがチェックされている(S4)。従って、検出値が略大気圧に到達するまでは、低圧側の部屋である第1のロードロック室28a内の昇圧が継続して行われる(S4のNO)。
【0067】
そして、上記圧力計40aの検出値が略大気圧に到達したならば(S4のYES)、次に、ガス導入系44aの開閉弁44a’を閉じて昇圧を停止する(S5)。この場合、検出値が大気圧よりも僅かに低い圧力となった時に、昇圧を停止するのが好ましい。この開閉弁の操作は、弁制御部76の指令で行ってもよいが、実際には例えばシステム制御部80の指令で行う。
【0068】
これにより、大気側搬送室30内と第1のロードロック室28a内の圧力は略同圧、すなわち略大気圧程度になっており、両室間の差圧は略ゼロに近いはずであるが、実際には、圧力計40aの誤差等により、ある程度の差圧が発生している場合が多く、この状態でゲートバルブG7を開くと、その差圧に起因するガスの移動でパーティクルを巻き上げる恐れや汚染の拡散を生ずる恐れ等が存在する。
【0069】
そこで、本発明では、上述のように昇圧を停止したならば、次に、上記第1及び第2の開閉弁68、70を同時に開き(S6)、これにより、上記連通路66やガス開閉弁74よりも下流側部分のガス供給通路72に貯め込んでいた清浄ガスである高い圧力のN ガスを開放して大気側搬送室30内と第1のロードロック室28a内とに同時に供給する。両室30、28a内の圧力が同じになって平衡状態となり、ガスの流れが安定化するまで第1及び第2の開閉弁68、70を開いた状態で所定の時間経過させる(S7のNO)。
【0070】
この際、上記貯め込まれていたN ガスの圧力は、第1及び第2の開閉弁68、70を開く直前の大気側搬送室30内の圧力や第1のロードロック室28a内の圧力よりも十分に高く、且つ連通路66内の体積やガス開閉弁74よりも下流側部分のガス供給通路72の体積も十分に大きく設定されているので、いずれか一方の室内の雰囲気ガスが連通路66を通って他方の室内へ流入することはない。特に、ロードロック室に対してパーティクルが発生し易い大気側搬送室30内の雰囲気が連通路66を通って第1のロードロック室28a側へ流れることを、確実に防止することができる。
【0071】
ここで上記各室等の容積と圧力関係について説明する。図2中において、圧力調整前、すなわち第1及び第2の開閉弁68、70を開く直前の大気側搬送室30内の圧力及び体積をそれぞれP1、V1とし、第1のロードロック室28a内の圧力及び体積をP2、V2とし、清浄ガスであるN ガスの圧力をP3とし、第1及び第2の開閉弁68、70間の連通路66の体積とガス開閉弁74よりも下流側部分のガス供給通路72の体積との総和をV3とする。
【0072】
そして、第1及び第2の開閉弁68、70を同時に開いて調圧して平衡状態になった時の圧力をPとすると、以下の式が成立する。尚、厳密には、V1には第1の開閉弁68よりも下流側部分の連通路66の体積が含まれ、V2には第2の開閉弁70よりも下流側部分の連通路66の体積が含まれる。
【0073】
P1・V1+P2・V2+P3・V3=P(V1+V2+V3)
(但し、P>P1,P>P2、好ましくはP1>P2)
P=(P1・V1+P2・V2+P3・V3)/(V1+V2+V3)
従って、システムの設計段階で、上記V1、V2は定まっているので、この圧力調整装置の設計時に上記圧力Pや体積V3を、上記関係式を満たすように決定することになる。
【0074】
また、上記した第1及び第2の開閉弁68、70を開状態にした時以降の圧力変化の一例は図8に示されており、この図8に示すように大気側搬送室30内と第1のロードロック室28a内の圧力は弁の開動作と同時に平衡状態の圧力Pに向かって上昇して行くことになる。ただし、大気側搬送室30内は前述したようにクリーンルーム内の清浄空気を取り込んでダウンフローを形成しているので、大気側搬送室30内の圧力はある程度の時間をかけて最終的には大気圧に戻ることになる。この場合、第1のロードロック室28a内の雰囲気が連通路66を介して大気側搬送室30内へ流れ込むことを防止するために、圧力Pと圧力P1、P2との差は必要以上に大きく設定しないようにする。
【0075】
また、この場合、好ましくは上述したようにP1>P2となるように設定して、第1のロードロック室28a内の圧力を大気側搬送室30内よりも僅かだけ低く設定しておけば、第1のロードロック室28a内に僅かなN ガスが供給されるだけで、ここの圧力は略大気圧になるので、第1のロードロック室28a内の雰囲気が連通路66を介して大気側搬送室30内へ逆流することを確実に防止することができる。また、第1及び第2の開閉弁68、70を開状態にしてから上記圧力Pに平衡状態になるまでの時間T1は連通路66の内径にもよるが、例えば数秒程度であり、ステップS7ではこの時間T1だけ経過するのを待つことになる。
【0076】
また、ステップS6では、第1及び第2の開閉弁68、70を同時に開くように設定したが、この”同時”とは時間的に厳密な意味で同時性を要求するものではなく、両開閉弁68、70の開動作に僅かな時間差があってもその同時性は確保されているものであり、例えば両開閉弁68、70の開動作に上記平衡までの時間T1の1/2程度の時間差内であれば同時性が確保されている。
【0077】
以上のように、大気側搬送室30内と第1のロードロック室28a内の圧力とが平衡状態になったならば、開閉ドアであるゲートバルブG7を開き、両室内を連通することになる(S8)。これ以降は、大気側搬送室30側から第1のロードロック室28a内に向けて、或いはその逆方向に向けて半導体ウエハWを搬送することになる。また、この時に、第1及び第2の開閉弁68、70も閉状態にする。以上のようにして、一連の圧力調整方法が完了することになる。
【0078】
このように、第1の部屋、例えば大気側搬送室30と第2の部屋、例えば第1のロードロック室28aとを連通する連通路66と、連通路66の途中に介設された第1及び第2の開閉弁68、70と、連通路66の第1及び第2の開閉弁68、70との間に接続されて、連通路66に所定の圧力の清浄ガスを供給するガス供給通路72と、ガス供給通路72の途中に介設されたガス開閉弁74と、開閉ドア、例えばゲートバルブG7を開く直前に、第1及び第2の開閉弁68、70を閉じた状態で連通路66内に清浄ガスを貯め込み、次に、貯め込んだ清浄ガスを第1及び第2の部屋30、28aへ供給するために第1及び第2の開閉弁68、70を開くように制御する弁制御部76とを設け、開閉ドア、例えばゲートバルブG7を開いて両部屋を連通する直前に、連通路内に貯め込んだ清浄ガスを両部屋へそれぞれ供給して圧力を平衡させるようにしたので、2つの部屋を連通する際に、一方の部屋の雰囲気を他方の部屋へ流入させることなく両部屋の差圧をゼロにすることができる。
【0079】
従って、開閉ドア、例えばゲートバルブG7を開いて両部屋を連通した際に、パーティクルの巻き上げを阻止することができるのみならず、一方の部屋に存在するパーティクルや汚染物質が他の部屋に拡散することを防止することができる。
【0080】
<ロードロック室と減圧側搬送室との間の圧力調整>
次に、図3及び図6を参照して大気圧下の第1のロードロック室28aと低圧雰囲気下の減圧側搬送室26との間のゲートバルブG5を開く際の圧力調整方法について説明する。尚、各弁の弁操作は、前述したように弁制御部76からの指令によって行われる。また、ここでの基本的な動作は、図5において説明した方法と同じである。また、ここでは圧力調整装置A5が用いられることになる。そして、図3中において、減圧側搬送室26には、内部雰囲気を排気する排気系88と内部に不活性ガス、例えばN ガスを供給するガス供給系90が設けられている。
【0081】
まず、通常の待機時には、圧力調整装置A5の連通路66の途中に介設されている第1及び第2の開閉弁68、70は共に閉状態になされており、また、ガス供給通路72の途中に介設されているガス開閉弁74は開状態になされている。従って、高い圧力に設定されている清浄ガスであるN ガスは上記ガス供給通路72内に充填されているのみならず、上記連通路66内においても第1及び第2の開閉弁68、70まではN ガスが充填された状態となっている。
【0082】
さて、このような状態で、ゲートバルブG5を開く場合には、その前に、まず、ステップS11にて、上記第1及び第2の開閉弁68、70の閉状態を確認すると共に、ガス供給通路72のガス開閉弁74の開状態を確認し、上述したように連通路66まで清浄ガスであるN ガスが到達してこの連通路66内に充填されていることを確認する。
【0083】
次に、連通路66までN ガスが充填されていることを確認したならば、上記ガス開閉弁74を閉じる(S12)。これにより、第1及び第2の開閉弁68、70及びガス開閉弁74間に上記高い圧力のN ガスが貯め込まれることになる。具体的には、このN ガスは第1及び第2の開閉弁68、70よりも上流側部分の連通路66内及びガス開閉弁74よりも下流側部分のガス供給通路72内に孤立化されて貯め込まれることになる。
【0084】
次に、高圧側の部屋、すなわちここでは第1のロードロック室28a内の雰囲気を、排気系46aの開閉弁46a’を開いて徐々に真空排気して内部圧力を降圧して行く(S13)。尚、上記ガス供給系90のN ガス源と上記ガス供給通路72のN ガス源とは同じガス源を用いてもよい。
【0085】
上記した内部圧力の降下は、第1のロードロック室28a内に設けた圧力計40aによりリアルタイムで検出されており、これと同時に、減圧側搬送室26内に設けた圧力計42によりこの内部の圧力もリアルタイムで検出されている。これらの検出値はシステム制御部80(図1参照)に入力される一方、弁制御部76にも入力されており、両圧力計40a、42の検出値が略同じになったか否かがチェックされている(S14)。従って、両検出値が略同じになるまでは、低圧側の部屋である第1のロードロック室28a内の降圧が継続して行われる(S14のNO)。尚、周知のように、減圧側搬送室26内は、他の室と比較して容量が大きいので圧力の昇降に時間を要すことになり、そのため、一連の処理中ではこの減圧側搬送室26内は一定の圧力の減圧雰囲気下に維持されている。
【0086】
そして、上記両圧力計40a、42の検出値が略同じになったならば(S14のYES)、次に、排気系46aの開閉弁46a’を閉じて降圧を停止する(S15)。この開閉弁の操作は、弁制御部76の指令で行ってもよいが、実際には例えばシステム制御部80の指令で行う。
【0087】
これにより、減圧側搬送室26内と第1のロードロック室28a内の圧力は略同圧の減圧雰囲気になっており、両室間の差圧は略ゼロに近いはずであるが、実際には、圧力計40a、42の誤差等により、ある程度の差圧が発生している場合が多く、この状態でゲートバルブG5を開くと、その差圧に起因するガスの移動でパーティクルを巻き上げる恐れや汚染の拡散を生ずる恐れ等が存在する。
【0088】
そこで、本発明では、上述のように降圧を停止したならば、次に、上記第1及び第2の開閉弁68、70を同時に開き(S16)、これにより、上記連通路66やガス開閉弁74よりも下流側部分のガス供給通路72に貯め込んでいた清浄ガスである高い圧力のN ガスを開放して減圧側搬送室26内と第1のロードロック室28a内とに同時に供給する。両室26、28a内の圧力が同じになって平衡状態となり、ガスの流れが安定化するまで第1及び第2の開閉弁68、70を開いた状態で所定の時間経過させる(S17のNO)。
【0089】
この際、上記貯め込まれていたN ガスの圧力は、第1及び第2の開閉弁68、70を開く直前の減圧側搬送室26内の圧力や第1のロードロック室28a内の圧力よりも十分に高く、且つ連通路66内の体積やガス開閉弁74よりも下流側部分のガス供給通路72の体積も十分に大きく設定されているので、いずれか一方の室内の雰囲気ガスが連通路66を通って他方の室内へ流入することはない。この点は、図2を参照して説明した場合と略同じである。
【0090】
ここで上記各室等の容積と圧力関係について説明する。この点は、図2を参照して説明した場合と略同じである。すなわち、図3中において、圧力調整前、すなわち第1及び第2の開閉弁68、70を開く直前の減圧側搬送室26内の圧力及び体積をそれぞれP1、V1とし、第1のロードロック室28a内の圧力及び体積をP2、V2とし、清浄ガスであるN ガスの圧力をP3とし、第1及び第2の開閉弁68、70間の連通路66の体積とガス開閉弁74よりも下流側部分のガス供給通路72の体積との総和をV3とする。
【0091】
そして、第1及び第2の開閉弁68、70を同時に開いて調圧して平衡状態になった時の圧力をPとすると、以下の式が成立する。尚、厳密には、V1には第1の開閉弁68よりも下流側部分の連通路66の体積が含まれ、V2には第2の開閉弁70よりも下流側部分の連通路66の体積が含まれる。
【0092】
P1・V1+P2・V2+P3・V3=P(V1+V2+V3)
(但し、P>P1,P>P2、好ましくはP1>P2)
P=(P1・V1+P2・V2+P3・V3)/(V1+V2+V3)
従って、システムの設計段階で、上記V1、V2は定まっているので、この圧力調整装置の設計時に上記圧力Pや体積V3を、上記関係式を満たすように決定することになる。
【0093】
また、上記した第1及び第2の開閉弁68、70を開状態にした時以降の圧力変化の一例は図8に示されており、この図8に示すように減圧側搬送室26内と第1のロードロック室28a内の圧力は弁の開動作と同時に平衡状態の圧力Pに向かって上昇して行くことになる。この場合、連通路66の体積にもよるが、上昇する圧力は非常に僅かである。この場合、第1のロードロック室28a内の雰囲気が連通路66を介して減圧側搬送室26内へ流れ込むことを防止するために、圧力Pと圧力P1、P2との差は必要以上に大きく設定しないようにする。
【0094】
また、第1及び第2の開閉弁68、70を開状態にしてから上記圧力Pに平衡状態になるまでの時間T1は連通路66の内径にもよるが、例えば数秒程度であり、ステップS17ではこの時間T1だけ経過するのを待つことになる。
【0095】
また、ステップS16では、第1及び第2の開閉弁68、70を同時に開くように設定したが、先に説明したと同様に、この”同時”とは時間的に厳密な意味で同時性を要求するものではなく、両開閉弁68、70の開動作に僅かな時間差があってもその同時性は確保されているものであり、例えば両開閉弁68、70の開動作に上記平衡までの時間T1の1/2程度の時間差内であれば同時性が確保されている。
【0096】
以上のように、減圧側搬送室26内と第1のロードロック室28a内の圧力とが平衡状態になったならば、開閉ドアであるゲートバルブG5を開き、両室内を連通することになる(S18)。これ以降は、減圧側搬送室26側から第1のロードロック室28a内に向けて、或いはその逆方向に向けて半導体ウエハWを搬送することになる。また、この時に、第1及び第2の開閉弁68、70も閉状態にする。以上のようにして、一連の圧力調整方法が完了することになる。この場合にも、先に図2及び図5を参照して説明した場合と同様な作用効果を発揮することができる。
【0097】
<処理室と減圧側搬送室との間の圧力調整>
次に、図4及び図7を参照して低圧雰囲気下の第1の処理室24aと低圧雰囲気下の減圧側搬送室26との間のゲートバルブG1を開く際の圧力調整方法について説明する。尚、各弁の弁操作は、前述したように弁制御部76からの指令によって行われる。また、ここでの基本的な動作は、図6において説明した方法と同じである。また、ここでは圧力調整装置A1が用いられることになる。
【0098】
また、図4中においては、第1の処理室(他の処理室も同じ)24aには、内部雰囲気を排気する排気系94と、内部に処理に必要なガスを供給するガス供給系96(一般的にはシャワーヘッドが用いられる)が設けられており、ここより不活性ガス、例えばN ガスを供給できるようになっている。
【0099】
まず、通常の待機時には、圧力調整装置A1の連通路66の途中に介設されている第1及び第2の開閉弁68、70は共に閉状態になされており、また、ガス供給通路72の途中に介設されているガス開閉弁74は開状態になされている。従って、高い圧力に設定されている清浄ガスであるN ガスは上記ガス供給通路72内に充填されているのみならず、上記連通路66内においても第1及び第2の開閉弁68、70まではN ガスが充填された状態となっている。
【0100】
さて、このような状態で、ゲートバルブG1を開く場合には、その前に、まず、ステップS21にて、上記第1及び第2の開閉弁68、70の閉状態を確認すると共に、ガス供給通路72のガス開閉弁74の開状態を確認し、上述したように連通路66まで清浄ガスであるN ガスが到達してこの連通路66内に充填されていることを確認する。
【0101】
次に、連通路66までN ガスが充填されていることを確認したならば、上記ガス開閉弁74を閉じる(S22)。これにより、第1及び第2の開閉弁68、70及びガス開閉弁74間に上記高い圧力のN ガスが貯め込まれることになる。具体的には、このN ガスは第1及び第2の開閉弁68、70よりも上流側部分の連通路66内及びガス開閉弁74よりも下流側部分のガス供給通路72内に孤立化されて貯め込まれることになる。
【0102】
次に、処理室側、すなわちここでは第1の処理室24a内の雰囲気を、排気系94の開閉弁94aを開いて徐々に真空排気して内部圧力を降圧するか、或いはガス供給系96を用いてN ガスを徐々に供給して昇圧するかして、減圧側搬送室26内の圧力に近付ける(S23)。尚、上記ガス供給系96のN ガス源と上記ガス供給通路72のN ガス源とは同じガス源を用いてもよい。
【0103】
上記した内部圧力の降下又は上昇は、第1の処理室24a内に設けた圧力計38aによりリアルタイムで検出されており、これと同時に、減圧側搬送室26内に設けた圧力計42によりこの内部の圧力もリアルタイムで検出されている。これらの検出値はシステム制御部80(図1参照)に入力される一方、弁制御部76にも入力されており、両圧力計38a、42の検出値が略同じになったか否かがチェックされている(S24)。従って、両検出値が略同じになるまでは、第1の処理室24a内の降圧又は昇圧が継続して行われる(S24のNO)。尚、前述したように、減圧側搬送室26内は、他の室と比較して容量が大きいので圧力の昇降に時間を要すことになり、そのため、一連の処理中ではこの減圧側搬送室26内は一定の圧力の減圧雰囲気下に維持されている。
【0104】
そして、上記両圧力計38a、42の検出値が略同じになったならば(S24のYES)、次に、降圧又は昇圧を停止する(S25)。この開閉弁の操作は、弁制御部76の指令で行ってもよいが、実際には例えばシステム制御部80の指令で行う。
【0105】
これにより、減圧側搬送室26内と第1の処理室24a内の圧力は略同圧の減圧雰囲気になっており、両室間の差圧は略ゼロに近いはずであるが、実際には、圧力計38a、42の誤差等により、ある程度の差圧が発生している場合が多く、この状態でゲートバルブG1を開くと、その差圧に起因するガスの移動でパーティクルを巻き上げる恐れや汚染の拡散を生ずる恐れ等が存在する。
【0106】
そこで、本発明では、上述のように昇圧を停止したならば、次に、上記第1及び第2の開閉弁68、70を同時に開き(S26)、これにより、上記連通路66やガス開閉弁74よりも下流側部分のガス供給通路72に貯め込んでいた清浄ガスである高い圧力のN ガスを開放して減圧側搬送室26内と第1の処理室24a内とに同時に供給する。両室26、24a内の圧力が同じになって平衡状態となり、ガスの流れが安定化するまで第1及び第2の開閉弁68、70を開いた状態で所定の時間経過させる(S27のNO)。
【0107】
この際、上記貯め込まれていたN ガスの圧力は、第1及び第2の開閉弁68、70を開く直前の減圧側搬送室26内の圧力や第1の処理室24a内の圧力よりも十分に高く、且つ連通路66内の体積やガス開閉弁74よりも下流側部分のガス供給通路72の体積も十分に大きく設定されているので、いずれか一方の室内の雰囲気ガスが連通路66を通って他方の室内へ流入することはない。この点は、図2及び図3を参照して説明した場合と略同じである。
【0108】
ここで上記各室等の容積と圧力関係について説明する。この点は、図2及び図3を参照して説明した場合と略同じである。すなわち、図4中において、圧力調整前、すなわち第1及び第2の開閉弁68、70を開く直前の減圧側搬送室26内の圧力及び体積をそれぞれP1、V1とし、第1の処理室24a内の圧力及び体積をP2、V2とし、清浄ガスであるN ガスの圧力をP3とし、第1及び第2の開閉弁68、70間の連通路66の体積とガス開閉弁74よりも下流側部分のガス供給通路72の体積との総和をV3とする。
【0109】
そして、第1及び第2の開閉弁68、70を同時に開いて調圧して平衡状態になった時の圧力をPとすると、以下の式が成立する。尚、厳密には、V1には第1の開閉弁68よりも下流側部分の連通路66の体積が含まれ、V2には第2の開閉弁70よりも下流側部分の連通路66の体積が含まれる。
【0110】
P1・V1+P2・V2+P3・V3=P(V1+V2+V3)
(但し、P>P1,P>P2、好ましくはP1>P2)
P=(P1・V1+P2・V2+P3・V3)/(V1+V2+V3)
従って、システムの設計段階で、上記V1、V2は定まっているので、この圧力調整装置の設計時に上記圧力Pや体積V3を、上記関係式を満たすように決定することになる。
【0111】
また、上記した第1及び第2の開閉弁68、70を開状態にした時以降の圧力変化の一例は図8に示されており、この図8に示すように減圧側搬送室26内と第1の処理室24a内の圧力は弁の開動作と同時に平衡状態の圧力Pに向かって上昇して行くことになる。この場合、連通路66の体積にもよるが、上昇する圧力は非常に僅かである。この場合、第1の処理室24a内の雰囲気が連通路66を介して減圧側搬送室26内へ流れ込むことを防止するために、圧力Pと圧力P1、P2との差は必要以上に大きく設定しないようにする。
【0112】
また、第1及び第2の開閉弁68、70を開状態にしてから上記圧力Pに平衡状態になるまでの時間T1は連通路66の内径にもよるが、例えば数秒程度であり、ステップS27ではこの時間T1だけ経過するのを待つことになる。
【0113】
また、ステップS26では、第1及び第2の開閉弁68、70を同時に開くように設定したが、先に説明したと同様に、この”同時”とは時間的に厳密な意味で同時性を要求するものではなく、両開閉弁68、70の開動作に僅かな時間差があってもその同時性は確保されているものであり、例えば両開閉弁68、70の開動作に上記平衡までの時間T1の1/2程度の時間差内であれば同時性が確保されている。
【0114】
以上のように、減圧側搬送室26内と第1の処理室24a内の圧力とが平衡状態になったならば、開閉ドアであるゲートバルブG1を開き、両室内を連通することになる(S28)。これ以降は、減圧側搬送室26側から第1の処理室24a内に向けて、或いはその逆方向に向けて半導体ウエハWを搬送することになる。また、この時に、第1及び第2の開閉弁68、70も閉状態にする。以上のようにして、一連の圧力調整方法が完了することになる。この場合にも、先に図2、図3、図5及び図6を参照して説明した場合と同様な作用効果を発揮することができる。
【0115】
尚、以上の各実施形態において、連通路66やガス供給通路72に貯め込むN ガスの容積が少ない場合には、図9に示すように、上記第1の開閉弁68と第2の開閉弁70との間において容積増加タンク100を設けるようにしてもよい。また、この容積増加タンク100を、ガス開閉弁74よりも下流側のガス供給通路72に設けるようにしてもよい。これによれば、前記式中の体積”V3”が増加した分だけ、N ガスの供給圧力”P”を低くすることができる。
【0116】
また、上記実施形態では、清浄ガスとしてN ガスを用いたが、これに限定されず、上記清浄ガスは、清浄空気、N ガス及び希ガスの内の1以上ガスを用いることができる。更に、上記した処理システムの構造は、単に一例を示したに過ぎず、ゲートバルブ等を用いた全ての処理システム、或いは処理装置に本発明を適用することができる。
【0117】
また、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、この半導体ウエハにはシリコン基板やGaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体基板も含まれ、更にはこれらの基板に限定されず、液晶表示装置に用いるガラス基板やセラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明に係る処理システムの一例を示す概略構成図である。
【図2】大気側搬送室とロードロック室との間に設けた圧力調整装置で示す図である。
【図3】減圧側搬送室とロードロック室との間に設けた圧力調整装置を示す図である。
【図4】減圧側搬送室と処理室の間に設けた圧力調整装置を示す図である。
【図5】大気側搬送室とロードロック室との間のゲートバルブを開くときの圧力調整方法の一例を示すフローチャートである。
【図6】減圧側搬送室とロードロック室との間のゲートバルブを開くときの圧力調整方法の一例を示すフローチャートである。
【図7】減圧側搬送室と処理室との間のゲートバルブを開くときの圧力調整方法の一例を示すフローチャートである。
【図8】圧力調整装置の第1及び第2の開閉弁を開いた時の第1及び第2の各部屋の圧力変化の一例を模式的に示すグラフである。
【図9】容積増加タンクを設けるようにした圧力調整装置の変形実施形態を示す図である。
【図10】従来の圧力調整装置の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0119】
22 処理システム
24a〜24d 処理室
26a,26b ロードロック室
30 大気側搬送室
50 第1の搬送機構
58 第2の搬送機構
66 連通路
68 第1の開閉弁
70 第2の開閉弁
72 ガス供給通路
74 ガス開閉弁
76 弁制御部
80 システム制御部
82 記憶媒体
100 容積増加タンク
A1〜A8 圧力調整装置
G1〜G8 ゲートバルブ(開閉ドア)
W 半導体ウエハ(被処理体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能になされた開閉ドアを介して連通された、圧力差が生ずることのある第1の部屋と第2の部屋の圧力調整装置において、
前記第1の部屋と前記第2の部屋とを連通する連通路と、
前記連通路の途中に介設された第1及び第2の開閉弁と、
前記連通路の前記第1及び前記第2の開閉弁との間に接続されて、前記連通路に所定の圧力の清浄ガスを供給するガス供給通路と、
前記ガス供給通路の途中に介設されたガス開閉弁と、
前記開閉ドアを開く直前に、前記第1及び第2の開閉弁を閉じた状態で前記連通路内に前記清浄ガスを貯め込み、次に、前記貯め込んだ前記清浄ガスを前記第1及び第2の部屋へ供給するために前記第1及び第2の開閉弁を開くように制御する弁制御部と、
を備えるように構成したことを特徴とする圧力調整装置。
【請求項2】
前記弁制御部は、前記第1及び第2の開閉弁を開いた後、所定の時間経過した時に前記開閉ドアを開くように制御することを特徴とする請求項1記載の圧力調整装置。
【請求項3】
前記弁制御部は、前記第1及び第2の開閉弁を開いた後は、前記開閉ドアを開くまでは前記第1及び第2の開閉弁の開状態を維持するように制御することを特徴とする請求項1又は2記載の圧力調整装置。
【請求項4】
前記弁制御部は、前記第1の開閉弁と前記第2の開閉弁とを同時に開くように制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の圧力調整装置。
【請求項5】
前記第1の部屋と前記第2の部屋の内、少なくともいずれか一方の部屋に圧力計が設けられており、前記弁制御部は前気圧力計の検出値に基づいて開弁の制御を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の圧力調整装置。
【請求項6】
前記清浄ガスの所定の圧力は、前記第1及び第2の開閉弁を開く前の前記第1及び第2の部屋の各圧力よりも高く設定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の圧力調整装置。
【請求項7】
前記連通路には、前記第1の開閉弁と前記第2の開閉弁との間において容積増加タンクが接続されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の圧力調整装置。
【請求項8】
前記ガス供給通路の前記ガス開閉弁よりも下流側には、容積増加タンクが接続されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の圧力調整装置。
【請求項9】
前記第1の部屋と前記第2の部屋は、被処理体に対して減圧雰囲気で処理を行うための処理システムにおける大気側搬送室と、該大気側搬送室に連設されて大気圧雰囲気と減圧雰囲気とを繰り返すロードロック室であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の圧力調整装置。
【請求項10】
前記第1の部屋と前記第2の部屋は、被処理体に対して減圧雰囲気で処理を行うための処理システムにおける減圧側搬送室と、該減圧側搬送室に連設されて大気圧雰囲気と減圧雰囲気とを繰り返すロードロック室であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の圧力調整装置。
【請求項11】
前記第1の部屋と前記第2の部屋は、被処理体に対して減圧雰囲気で処理を行うための処理システムにおける減圧側搬送室と、該減圧側搬送室に連設されて減圧雰囲気下で前記被処理体に対して実際に処理を施す処理室であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の圧力調整装置。
【請求項12】
前記開閉ドアは、ゲートバルブであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の圧力調整装置。
【請求項13】
前記清浄ガスは、清浄空気、N ガス及び希ガスの内の1以上ガスであることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の圧力調整装置。
【請求項14】
被処理体に処理を施すための処理システムにおいて、
前記被処理体に処理を実際に施す1又は複数の処理室と、
前記処理室に、開閉可能になされた開閉ドアを設けた開口を介して共通に連結される減圧側搬送室と、
前記減圧側搬送室に、開閉可能になされた開閉ドアを設けた開口を介して連結されて大気圧雰囲気と減圧雰囲気とが繰り返されるロードロック室と、
前記ロードロック室に、開閉可能になされた開閉ドアを設けた開口を介して連結される大気側搬送室と、
前記減圧側搬送室に設けられて前記被処理体を搬送する第1の搬送機構と、
前記大気側搬送室に設けられて前記被処理体を搬送する第2の搬送機構と、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の圧力調整装置と、
システム全体の動作を制御するシステム制御部と、
を備えたことを特徴とする処理システム。
【請求項15】
開閉可能になされた開閉ドアを介して連通された、圧力差が生ずることのある第1の部屋と第2の部屋の圧力調整装置であって、
前記第1の部屋と前記第2の部屋とを連通する連通路と、
前記連通路の途中に介設された第1及び第2の開閉弁と、
前記連通路の前記第1及び前記第2の開閉弁との間に接続されて、前記連通路に所定の圧力の清浄ガスを供給するガス供給通路と、
前記ガス供給通路の途中に介設されたガス開閉弁と、
を有する圧力調整装置を用いて行われる圧力調整方法において、
前記第1及び第2の開閉弁を閉じた状態で前記連通路内に前記清浄ガスを貯め込む工程と、
前記第1及び第2の開閉弁を開いて前記貯め込んだ前記清浄ガスを前記第1及び第2の部屋へ供給する工程と、
を備えるようにしたことを特徴とする圧力調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−40623(P2010−40623A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199326(P2008−199326)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】