説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板にリンス液を供給する工程の終了後に、基板に薬液ミストが付着することを防止できる、基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】基板に対するレジスト剥離処理においては、処理室内において、基板にSPMが供給される。このとき、基板でのSPMの跳ね返りやSPM中の水分の蒸発などによるSPMのミストが生じ、SPMのミストが処理室内の空間に浮遊して拡散する。基板へのSPMの供給の終了後、基板にSPMを洗い流すための純水が供給される。この純水の供給と並行して、処理室内の空間に微細な水滴が噴射される。これにより、処理室内の空間に拡散したSPMのミストに微細な水滴がかかり、SPMのミストが微細な水滴に吸収され、SPMのミストが処理室内の雰囲気中から排除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対する薬液を用いた処理のための基板処理装置および基板処理方法に関する。基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示パネル用ガラス基板などの基板に対して、たとえば、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水)を用いて基板の表面からレジスト膜を剥離(除去)するためのレジスト剥離処理、フッ化水素酸を用いて基板から金属汚染物を除去するための洗浄処理など、各種の薬液を用いた処理が行われる。
【0003】
この薬液処理のために、基板に対して1枚ずつ処理を行う枚葉式の基板処理装置が用いられることがある。枚葉式の基板処理装置は、隔壁により区画された処理チャンバ内に、基板をほぼ水平に保持して回転させるスピンチャック、スピンチャックを収容する有底筒状のカップ、基板に薬液を供給するための薬液ノズルおよび基板にリンス液を供給するためのリンス液ノズルなどを備えている。
【0004】
薬液処理時には、スピンチャックにより基板が回転されつつ、薬液ノズルから基板の表面に薬液が供給される。基板の表面上の薬液は、基板の回転による遠心力を受けて、基板の表面の全域に広がる。薬液の供給停止後は、純水ノズルから基板の表面にリンス液が供給されて、基板に付着している薬液がリンス液で洗い流される。そして、純水の供給停止後、基板の高速回転により、基板に付着しているリンス液が振り切られて除去される。これにより、基板が乾燥し、一連の薬液処理が終了する。
【特許文献1】特開2005−93926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スピンチャックがカップに収容されているので、薬液供給時に基板から流下および飛散する薬液は、カップに受け止められ、カップ外に飛散することが防止される。しかし、薬液供給時にカップ内に生じる薬液ミストを含む雰囲気は、カップの上面の開口を通して、カップ外(処理チャンバ内)に流出する。そのため、基板を乾燥させる工程で、カップ外に拡散した薬液ミストが基板の表面に付着することにより、基板の表面の汚染を生じるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、基板にリンス液を供給する工程の終了後に、基板に薬液ミストが付着することを防止できる、基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、処理室(2)と、前記処理室内に設けられ、基板(W)を保持する基板保持手段(3)と、前記基板保持手段に保持された基板に薬液を供給する薬液供給手段(14,42)と、前記基板保持手段に保持された基板に薬液を洗い流すためのリンス液を供給するリンス液供給手段(21)と、前記リンス液供給手段によるリンス液の供給と並行して、前記処理室内の空間に向けて水滴を噴射する水滴噴射手段(30)とを含む、基板処理装置(1,41)である。
【0008】
この基板処理装置は、請求項2に記載のように、前記処理室内の雰囲気の湿度を低下させるための乾燥ガスを前記処理室内に供給する乾燥ガス供給手段(33)をさらに含んでいてもよい。この場合、前記乾燥ガス供給手段により、前記水滴噴射手段による水滴の噴射の終了後、前記処理室内に乾燥ガスが供給されることが好ましい。
また、請求項3に記載の発明は、処理室(2)内において、基板(W)の主面に薬液を供給する薬液供給工程と、前記薬液供給工程後、前記処理室内において、基板の主面に薬液を洗い流すためのリンス液を供給するリンス液供給工程と、前記リンス液供給工程と並行して、前記処理室内の空間に向けて水滴を噴射する水滴噴射工程とを含む、基板処理方法である。
【0009】
この基板処理方法は、請求項4に記載のように、前記水滴噴射工程後、前記処理室内の雰囲気の湿度を低下させるための乾燥ガスを前記処理室内に供給する乾燥ガス供給工程をさらに含んでいてもよい。
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0010】
処理室内において、基板に薬液が供給される。このとき、基板での薬液の跳ね返りや薬液中の水分の蒸発などによる薬液ミストが生じ、薬液ミストが処理室内の空間に浮遊して拡散する。基板への薬液の供給の終了後、基板に薬液を洗い流すためのリンス液が供給される。このリンス液の供給と並行して、処理室内の空間に水滴が噴射される。これにより、処理室内の空間に拡散した薬液ミストに水滴がかかり、薬液ミストが水滴に吸収され、薬液ミストが処理室内の雰囲気中から排除される。そのため、基板にリンス液を供給する工程の終了後に、基板に薬液ミストが付着することを防止できる。その結果、薬液ミストによる汚染のない清浄な基板を得ることができる。
【0011】
また、処理室内の空間への水滴の噴射の終了後、処理室内に乾燥ガスが供給される場合には、処理室内の雰囲気の湿度を下げることができ、リンス液の供給の終了後の基板を速やかに乾燥させることができるとともに、噴射された水滴に起因する水蒸気が乾燥後の基板に付着することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の図解的な断面図である。
基板処理装置1は、基板の一例としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ]という。)Wの表面からレジスト膜を剥離するレジスト剥離処理に用いられる。基板処理装置1では、ウエハWに対して1枚ずつレジスト剥離処理が行われる。すなわち、基板処理装置1は、レジスト剥離処理のための枚葉式の装置である。
【0013】
基板処理装置1は、処理チャンバ2を備えている。処理チャンバ2の天井壁には、処理チャンバ2内に清浄空気(基板処理装置1が設置されるクリーンルーム内の空気を浄化して生成される空気)を送り込むためのファンフィルタユニット(図示せず)が設けられている。一方、処理チャンバ2の底面には、排気口(図示せず)が形成されている。ファンフィルタユニットからの清浄空気の供給および排気口からの排気により、基板処理装置1の稼働中は、常時、処理チャンバ2内に清浄空気のダウンフローが形成される。
【0014】
処理チャンバ2内には、ウエハWを保持して回転させるウエハ回転機構3が設けられている。ウエハ回転機構3としては、たとえば、挟持式のものが採用されている。具体的には、ウエハ回転機構3は、モータ4と、このモータ4の駆動軸と一体化されたスピン軸5と、スピン軸5の上端にほぼ水平に取り付けられた円板状のスピンベース6と、スピンベース6の周縁部の複数箇所にほぼ等角度間隔で設けられた複数個の挟持部材7とを備えている。そして、複数個の挟持部材7により、ウエハWをほぼ水平な姿勢で挟持することができる。この状態で、モータ4が駆動されると、その駆動力によってスピンベース6が鉛直軸線まわりに回転され、そのスピンベース6とともに、ウエハWがほぼ水平な姿勢を保った状態で鉛直軸線まわりに回転される。
【0015】
ウエハ回転機構3は、カップ8内に収容されている。カップ8は、カップ下部9と、カップ下部9の上方に昇降可能に設けられたカップ上部10とを備えている。
カップ下部9は、中心軸線がウエハWの回転軸線と一致する有底円筒状をなしている。カップ下部9の底面には、排気口(図示せず)が形成されており、基板処理装置1の稼働中は、常時、カップ8内の雰囲気が排気口から排気されている。
【0016】
カップ上部10は、カップ下部9と中心軸線を共通とする円筒状の円筒部11と、この円筒部11の上端から円筒部11の中心軸線に近づくほど高くなるように傾斜する傾斜部12とを一体的に備えている。カップ上部10には、カップ上部10を昇降(上下動)させるためのカップ昇降機構13が結合されている。カップ昇降機構13により、カップ上部10は、円筒部11がスピンベース6の側方に配置される位置と、傾斜部12の上端がスピンベース6の下方に配置される位置とに移動される。
【0017】
また、処理チャンバ2内には、ウエハWの表面(上面)にSPMを供給するための移動ノズル14が設けられている。移動ノズル14は、カップ8の上方でほぼ水平に延びるアーム15の先端部に取り付けられている。アーム15には、アーム15を所定角度範囲内で揺動させるためのアーム揺動機構16が結合されている。アーム15の揺動により、移動ノズル14は、ウエハWの回転軸線上の位置(ウエハWの回転中心に対向する位置)と、カップ8の側方に設定された位置(ホームポジション)とに移動される。
【0018】
移動ノズル14には、薬液供給管17が接続されている。薬液供給管17には、薬液バルブ18が介装されている。薬液バルブ18が開かれると、薬液供給管17から移動ノズル14にSPMが供給される。そして、移動ノズル14に供給されるSPMは、移動ノズル14から下方に吐出される。
さらに、処理チャンバ2内には、ウエハWの表面付近の雰囲気をその周囲から遮断するための遮断板19が設けられている。遮断板19は、ウエハWとほぼ同じ径またはそれ以上の径を有する円板状をなしている。そして、遮断板19は、ウエハ回転機構3の上方に、ほぼ水平な姿勢で、その中心がウエハWの回転軸線上に位置するように配置されている。
【0019】
遮断板19の上面には、遮断板19の中心を通る鉛直軸線(ウエハWの回転軸線と一致する鉛直軸線)を中心軸線とする回転軸20が固定されている。回転軸20は、中空に形成されている。回転軸20の内部には、液供給管21が挿通されている。液供給管21の下端は、遮断板19の下面に達し、下方に開放されている。液供給管21には、リンス液供給管22が接続されている。リンス液供給管22には、リンス液バルブ23が介装されている。リンス液バルブ23が開かれると、リンス液供給管22から液供給管21にリンス液の一例としての純水が供給される。液供給管21に供給される純水は、液供給管21の下端から下方に吐出される。
【0020】
回転軸20の内壁面と液供給管21との間は、気体流通路24を形成している。気体流通路24の下端は、遮断板19の下面において、液供給管21の周囲で環状に開口している。気体流通路24には、窒素ガス供給管25が接続されている。窒素ガス供給管25には、窒素ガスバルブ26が介装されている。窒素ガスバルブ26が開かれると、窒素ガス供給管25から気体流通路24に窒素ガスが供給される。気体流通路24に供給される窒素ガスは、気体流通路24の下端の環状開口から下方に吐出される。
【0021】
回転軸20は、カップ8の上方でほぼ水平に延びるアーム27に取り付けられ、そのアーム27から垂下した状態に設けられている。アーム27には、アーム27を昇降させるためのアーム昇降機構28が結合されている。アーム27の昇降により、遮断板19は、ウエハ回転機構3の上方に大きく離間した位置と、ウエハ回転機構3に保持されたウエハWの表面に微小な間隔を隔てて近接する位置との間で昇降される。また、遮断板19には、アーム27を介して、遮断板19を回転させるための遮断板回転機構29が結合されている。
【0022】
そして、基板処理装置1では、処理チャンバ2の上部に、微細な水滴を噴射(噴霧)するための水滴噴射ノズル30が設けられている。水滴噴射ノズル30は、たとえば、処理チャンバ2の天面付近の四隅に合計4つ配置されている。水滴噴射ノズル30には、水供給管31が接続されている。水供給管31には、水バルブ32が介装されている。水バルブ32が開かれると、水供給管31から水滴噴射ノズル30に純水が供給される。水滴噴射ノズル30に供給される純水は、微細な水滴の状態(たとえば、霧状)で、水滴噴射ノズル30から処理チャンバ2内の空間に噴射される。
【0023】
また、処理チャンバ2の上部には、1つまたは複数の乾燥ガス供給部材33が設けられている。乾燥ガス供給部材33には、乾燥ガス供給管34が接続されている。乾燥ガス供給管34には、乾燥ガスバルブ35が介装されている。乾燥ガスバルブ35が開かれると、乾燥ガス供給管34から乾燥ガス供給部材33に乾燥ガスの一例としてのドライエア(湿度10%以下の乾燥した空気)が供給される。乾燥ガス供給部材33に供給されるドライエアは、乾燥ガス供給部材33から処理チャンバ2内に流出する。
【0024】
図2は、基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
基板処理装置1は、たとえば、マイクロコンピュータで構成される制御部36を備えている。
制御部36は、予め定められたプログラムに従って、モータ4、カップ昇降機構13、アーム揺動機構16、遮断板昇降機構28および遮断板回転機構29の駆動を制御し、薬液バルブ18、リンス液バルブ23、窒素ガスバルブ26、水バルブ32および乾燥ガスバルブ35の開閉を制御する。
【0025】
図3は、基板処理装置におけるレジスト剥離処理について説明するための図である。
処理対象のウエハWは、搬送ロボット(図示せず)によって、処理チャンバ2内に搬入され、その表面を上方に向けた状態でウエハ回転機構3に受け渡される。このとき、ウエハWの搬入の妨げにならないように、遮断板19は、ウエハ回転機構3の上方に大きく離間した位置に退避されている。また、移動ノズル14は、カップ8の側方のホームポジションに配置されている。さらに、カップ上部10は、最下方の位置まで下がり、傾斜部12の上端は、スピンベース6の下方に配置されている。
【0026】
ウエハWがウエハ回転機構3に保持されると、カップ上部10が上昇され、円筒部11がスピンベース6の側方に配置される。その一方で、ウエハ回転機構3によるウエハWの回転が開始され、ウエハWが所定の回転速度で回転される。また、アーム15が旋回されて、移動ノズル14がホームポジションからウエハWの回転軸線上に移動される。
移動ノズル14の移動が完了すると、移動ノズル14からSPMが吐出される。移動ノズル14から吐出されるSPMは、回転中のウエハWの表面の中央部に供給される(ステップS1:SPM供給)。ウエハWの表面に供給されたSPMは、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面上を周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面の全域にSPMが行き渡り、SPMに含まれるカロ酸(ペルオキソ一硫酸)の強酸化力によって、ウエハWの表面に形成されているレジストが剥離される。ウエハWの表面から剥離したレジストは、SPMにより押し流され、ウエハWの表面上から除去される。
【0027】
なお、SPMの供給中、アーム15が所定角度範囲内で揺動されて、移動ノズル14がウエハWの回転中心上と周縁部上との間で往復移動されてもよい。この場合、ウエハWの表面上におけるSPMの供給位置がウエハWの回転中心からウエハWの周縁部に至る範囲内を円弧状の軌跡を描きつつ往復移動(スキャン)し、ウエハWの表面の全域にSPMがむらなく速やかに供給される。
【0028】
なお、ウエハWの表面へのSPMの供給中は、ウエハWでのSPMの跳ね返りやSPM中の水分の蒸発などによるSPMのミストが生じ、SPMのミストが処理チャンバ2内の空間に浮遊して拡散する。
移動ノズル14からのSPMの吐出開始から所定時間が経過すると、そのSPMの吐出が停止される(ステップS2:SPM停止)。そして、アーム15の旋回により、移動ノズル14がウエハWの回転軸線上からホームポジションに戻される。
【0029】
次いで、水滴噴射ノズル30から微細な水滴が噴射される(ステップS3:水滴噴射開始)。これにより、処理チャンバ2内の空間に拡散したSPMのミストに水滴がかかり、SPMのミストが水滴に吸収され、SPMのミストが処理チャンバ2内の雰囲気中から排除される。
また、遮断板19が少し下降された後、水滴噴射ノズル30からの微細な水滴の噴射と並行して、遮断板19に設けられた液供給管21の下端から純水が吐出される。液供給管21から吐出される純水は、回転中のウエハWの表面の中央部に供給される(ステップS4:純水供給)。ウエハWの表面に供給された純水は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面上を周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に付着しているSPMが純水により洗い流される。
【0030】
液供給管21からの純水の吐出が所定時間にわたって続けられると、その純水の吐出が停止されるとともに(ステップS5:純水停止)、水滴噴射ノズル30からの水滴の噴射が停止される(ステップS6:水滴噴射停止)。
その後、乾燥ガス供給部材33から処理チャンバ2内にドライエアが供給される(ステップS7:ドライエア供給)。このドライエアの供給により、処理チャンバ2内の雰囲気の湿度が、たとえば30%以下、好ましくは20%以下になるまで下げられる。
【0031】
ドライエアの供給の開始とともに、あるいはドライエアの供給の開始から所定時間が経過すると、遮断板19がウエハWの表面に微小な間隔を空けて対向する位置まで下降される。そして、ウエハWの回転速度が所定の高回転速度に上げられる。一方、遮断板19がウエハWと同じ方向にほぼ同じ速度で高速回転される。また、遮断板19に形成された気体流通路24の下端から窒素ガスが吐出される。その結果、ウエハWと遮断板19との間の空間に窒素ガスの安定した気流が生じ、ウエハWの表面付近の雰囲気がその周囲から遮断される。これにより、ウエハWの表面に乾燥跡を生じることなく、ウエハWに付着している純水が振り切られて除去される(ステップS8:スピンドライ)。
【0032】
そして、ウエハWの高速回転が所定時間にわたって続けられ、ウエハWが乾燥すると、気体流通路24からの窒素ガスの吐出が停止され、遮断板19がウエハ回転機構3の上方に大きく離間した位置まで上昇される。そして、ウエハWの回転が停止される。これにより、1枚のウエハWに対するレジスト剥離処理が終了となり、搬送ロボットによって、処理済みのウエハWが処理チャンバ2から搬出される。
【0033】
以上のように、ウエハWに対するレジスト剥離処理においては、処理チャンバ2内において、ウエハWにSPMが供給される。このとき、ウエハWでのSPMの跳ね返りやSPM中の水分の蒸発などによるSPMのミストが生じ、SPMのミストが処理チャンバ2内の空間に浮遊して拡散する。ウエハWへのSPMの供給の終了後、ウエハWにSPMを洗い流すための純水が供給される。この純水の供給と並行して、処理チャンバ2内の空間に微細な水滴が噴射される。これにより、処理チャンバ2内の空間に拡散したSPMのミストに微細な水滴がかかり、SPMのミストが微細な水滴に吸収され、SPMのミストが処理チャンバ2内の雰囲気中から排除される。そのため、ウエハWに純水を供給する工程の終了後に、ウエハWにSPMミストが付着することを防止できる。その結果、SPMのミストによる汚染のない清浄なウエハWを得ることができる。
【0034】
また、処理チャンバ2内の空間への水滴の噴射の終了後、処理チャンバ2内にドライエアが供給されることにより、処理チャンバ2内の雰囲気の湿度が、たとえば、30%以下、好ましくは20%以下になるまで下げられる。よって、純水の供給の終了後のウエハWを速やかに乾燥させることができるとともに、噴射された水滴に起因する水蒸気が乾燥後のウエハWに付着することがない。
【0035】
図4は、本発明の他の実施形態に係る基板処理装置の図解的な断面図である。図4において、図1に示す各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号を付している。また、以下では、図4に示す構造に関して、図1に示す構造との相違点を中心に説明し、図1に示す各部に相当する部分についての説明を省略する。
図4に示す基板処理装置41では、カップ8内に、ウエハWの表面(上面)にSPMを供給するための固定ノズル42が設けられている。固定ノズル42は、たとえば、カップ上部10の傾斜部12の内面に、その先端をウエハ回転機構3のスピンベース6に向けた状態で取り付けられている。固定ノズル42には、薬液供給管17が接続されている。薬液供給管17には、薬液バルブ18が介装されている。薬液バルブ18が開かれると、薬液供給管17から固定ノズル42にSPMが供給され、固定ノズル42からSPMが吐出される。
【0036】
そして、図1に示す基板処理装置1では、移動ノズル14が備えられているのに対し、図4に示す基板処理装置41では、それが不要であるため、移動ノズル14およびこれに関連する構成が省略されている。
基板処理装置41におけるレジスト剥離処理について説明する。
処理対象のウエハWは、搬送ロボット(図示せず)によって、処理チャンバ2内に搬入され、その表面を上方に向けた状態でウエハ回転機構3に受け渡される。このとき、ウエハWの搬入の妨げにならないように、遮断板19は、ウエハ回転機構3の上方に大きく離間した位置に退避されている。また、カップ上部10は、最下方の位置まで下がり、傾斜部12の上端は、スピンベース6の下方に配置されている。
【0037】
ウエハWがウエハ回転機構3に保持されると、カップ上部10が上昇され、円筒部11がスピンベース6の側方に配置される。また、遮断板19が下降され、遮断板19がカップ8の開口(傾斜部12の上端縁に囲まれる円形状の開口)を塞ぐように配置される。その一方で、ウエハ回転機構3によるウエハWの回転が開始され、ウエハWが所定の回転速度で回転される。
【0038】
その後、固定ノズル42からSPMが吐出される。固定ノズル42から吐出されるSPMは、回転中のウエハWの表面の中央部に供給される。ウエハWの表面に供給されたSPMは、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面上を周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面の全域にSPMが行き渡り、SPMに含まれるカロ酸(ペルオキソ一硫酸)の強酸化力によって、ウエハWの表面に形成されているレジストが剥離される。ウエハWの表面から剥離したレジストは、SPMにより押し流され、ウエハWの表面上から除去される。
【0039】
ウエハWの表面へのSPMの供給中は、カップ8内において、ウエハWでのSPMの跳ね返りやSPM中の水分の蒸発などによるSPMのミストが生じる。この基板処理装置41では、遮断板19がカップ8の開口を塞ぐように配置されているので、SPMのミストがカップ8の外側の空間に流出することが抑制される。
固定ノズル42からのSPMの吐出開始から所定時間が経過すると、そのSPMの吐出が停止される。
【0040】
次いで、水滴噴射ノズル30から微細な水滴が噴射される。これにより、処理チャンバ2内の空間に拡散したSPMのミストに水滴がかかり、SPMのミストが水滴に吸収され、SPMのミストが処理チャンバ2内の雰囲気中から排除される。
次いで、遮断板19に設けられた液供給管21の下端から純水が吐出される。液供給管21から吐出される純水は、回転中のウエハWの表面の中央部に供給される。ウエハWの表面に供給された純水は、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの表面上を周縁に向けて流れる。これにより、ウエハWの表面に付着しているSPMが純水により洗い流される。
【0041】
液供給管21からの純水の吐出が所定時間にわたって続けられると、その純水の吐出が停止されるとともに、水滴噴射ノズル30からの水滴の噴射が停止される。
その後は、図1に示す基板処理装置1におけるレジスト剥離処理と同じ工程(図3に示すステップS7およびS8)が行われ、1枚のウエハWに対するレジスト剥離処理が終了する。
【0042】
図4に示す基板処理装置41においても、図1に示す基板処理装置1と同様な効果を奏することができる。
さらに、ウエハWへのSPMの供給中、遮断板19がカップ8の開口を塞ぐように配置され、SPMのミストがカップ8の外側の空間に流出することが抑制されるので、SPMの供給終了後、処理チャンバ2内の空間に微細な液滴が供給されることにより、処理チャンバ2内の雰囲気中のSPMのミストを速やかに排除することができる。その結果、ウエハWに純水を供給する工程の終了後に、ウエハWにSPMミストが付着することを一層良好に防止できる。
【0043】
以上、本発明の2つの実施形態を説明したが、本発明は、さらに他の形態で実施することも可能である。
たとえば、図1に示す基板処理装置1および図4に示す基板処理装置41において、遮断板19に設けられた液供給管21に、リンス液供給管22に加えて、SPMを供給するための薬液供給管が接続されて、液供給管21の下端からウエハWの表面にSPMが供給されてもよい。この場合、基板処理装置1において、移動ノズル14およびこれに関連する構成が省略される。また、基板処理装置41において、固定ノズル42およびこれに関連する構成が省略される。
【0044】
また、図1に示す基板処理装置1および図4に示す基板処理装置41において、スピン軸5を中空軸とし、スピン軸5の中空部分に液供給管を挿通し、この液供給管の上端からウエハ回転機構3に保持されるウエハWの下面にSPMおよび純水が供給されるようにしてもよい。この場合、基板処理装置1において、移動ノズル14およびこれに関連する構成が省略される。また、基板処理装置41において、固定ノズル42およびこれに関連する構成が省略される。そして、ウエハWは、その表面を下方に向けたフェースダウン状態でウエハ回転機構3に保持される。
【0045】
また、水滴噴射ノズル30から噴射される水滴は、必ずしも純水の水滴でなくてもよく、たとえば、純水よりも純度の低い水による水滴であってもよい。
さらには、レジスト剥離処理のための装置を取り上げたが、本発明は、薬液を用いた処理を行う装置に広く適用することができる。たとえば、薬液としてフッ化水素酸を用いて基板から金属汚染物を除去するための洗浄処理などを行う装置に本発明を適用することが可能である。
【0046】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置の図解的な断面図である。
【図2】図2は、図1に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、図1に示す基板処理装置におけるレジスト剥離処理について説明するための図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施形態に係る基板処理装置の図解的な断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 基板処理装置
2 処理チャンバ(処理室)
3 ウエハ回転機構(基板保持手段)
14 移動ノズル(薬液供給手段)
21 液供給管(リンス液供給手段)
30 水滴噴射ノズル(水滴噴射手段)
33 乾燥ガス供給部材(乾燥ガス供給手段)
41 基板処理装置
42 固定ノズル(薬液供給手段)
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室と、
前記処理室内に設けられ、基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板に薬液を供給する薬液供給手段と、
前記基板保持手段に保持された基板に薬液を洗い流すためのリンス液を供給するリンス液供給手段と、
前記リンス液供給手段によるリンス液の供給と並行して、前記処理室内の空間に向けて水滴を噴射する水滴噴射手段とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記処理室内の雰囲気の湿度を低下させるための乾燥ガスを前記処理室内に供給する乾燥ガス供給手段をさらに含む、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
処理室内において、基板に薬液を供給する薬液供給工程と、
前記薬液供給工程後、前記処理室内において、基板に薬液を洗い流すためのリンス液を供給するリンス液供給工程と、
前記リンス液供給工程と並行して、前記処理室内の空間に向けて水滴を噴射する水滴噴射工程とを含む、基板処理方法。
【請求項4】
前記水滴噴射工程後、前記処理室内の雰囲気の湿度を低下させるための乾燥ガスを前記処理室内に供給する乾燥ガス供給工程をさらに含む、請求項3に記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−267145(P2009−267145A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115825(P2008−115825)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】