説明

基板処理装置及びそのクリーニング方法並びにプログラムを記録した記録媒体

【課題】下部電極のセルフバイアス電圧を上げることなく,基板載置台の付着物の除去レートを上げる。
【解決手段】処理室102内を所定の処理条件に基づいてクリーニングする際に,Oガスと不活性ガスからなる処理ガスを下部電極111のセルフバイアス電圧に応じてその絶対値が小さいほど,Oガスの流量比が減少しArガスの流量比が増大するように設定した流量比で処理室内に供給し,下部電極111と上部電極120の電極間に高周波電力を印加してプラズマを発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,例えば半導体ウエハ,FPD基板などの基板を載置する基板載置台を備えた処理室内をクリーニングする基板処理装置,そのクリーニング方法,プログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスを製造する基板処理装置は,例えば半導体ウエハや液晶基板などの基板を載置する下部電極を備える載置台とこれに対向して配置した上部電極を備える処理室を設けて構成される。このような基板処理装置でエッチングや成膜などのプラズマ処理を行う場合には,載置台上の静電チャックなどに基板を載置して吸着保持させて,処理室内に所定の処理ガスを導入し,電極間にプラズマを発生させることで,基板に対するプラズマ処理を施すようになっている。
【0003】
このような基板処理装置では,処理室内で基板を処理する際に発生する反応生成物や処理室内に外部から混入する微粒子などのパーティクル(微細な粒子状の異物)を適切に除去することが重要となる。
【0004】
例えばパーティクルは基板の裏側まで侵入するため,その基板が載置された載置台にもパーティクルが付着する。特に載置台の周縁部にパーティクルが付着し易い。これをそのまま放置すれば,プラズマ処理が繰り返されるごとに,こうして付着した付着物(例えばCFポリマー)を放置しておくと,プラズマ処理を繰り返すごとに堆積していくので,載置台への基板の吸着保持力を低下させたり,搬送アームで基板を載置台に載置する際に基板の位置ずれが発生したりするという問題がある。
【0005】
また,載置台上に載置された基板の裏面にパーティクルが付着すれば,次工程において問題が拡大する虞がある。さらに,処理室内にパーティクルが残留していると,基板上に付着し,その基板の処理に影響を与える虞があり,基板上に最終的に製造される半導体デバイスの品質が確保できない等の不具合が発生してしまう。
【0006】
このような処理室内のパーティクルを効果的に除去する方法として,例えば特許文献1には,載置台から基板を取り除いた状態で処理室内にOガスを導入してプラズマを生成してラジカルを発生させ,このラジカルと載置台に堆積した付着物との間に化学反応を起こさせて,載置台から付着物を除去するクリーニング方法が記載されている。また,特許文献3〜4には,酸素などの酸化物を含む希ガスをプラズマ化してラジカルやイオンを発生させて処理室内のパーティクルを除去するクリーニング方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−19626号公報
【特許文献2】特開平8−97189号公報
【特許文献3】特開2005−142198号公報
【特許文献4】特開2009−65170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら,載置台(又は載置台を兼ねる下部電極)にパーティクルが付着して堆積した付着物は重合体(例えばCFポリマー)を形成するので,上述したようにOガスをプラズマ化してクリーニングを行ったとしても,付着物を除去するには時間がかかる。
【0009】
この点,付着物の除去レートを上げるためには,例えば処理室内圧力をできるだけ低くしたり,電極に印加する高周波電力を大きくしたりすることで,下部電極のセルフバイアス電圧を上げてラジカルやイオンのエネルギーを上昇させればよいと考えられる。
【0010】
しかしながら,載置台上に基板を載置しないで行うウエハレスクリーニングでは,載置台の表面がプラズマに露出するので,下部電極のセルフバイアス電圧を上げるほど,イオンなどの衝撃が大きくなるので載置台の表面がダメージを受け易くなるという問題がある。
【0011】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,セルフバイアス電圧を上げることなく,付着物の除去レートを高めることができるクリーニング方法等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一般に処理室内のクリーニングにおいてOガスと不活性ガスの混合ガスを用いる場合には,不活性ガスの流量比を増加するほど,Oガスの分圧が下がるので付着物の除去レートも低下するものと考えられていた。ところが,本発明者らは処理室内圧力や第1及び第2高周波電力が小さい領域(例えば下部電極のセルフバイアス電圧が50V以下ないしは160V以下の領域),すなわちイオンエネルギが小さい領域で実際に実験を試みたところ,予想に反してOガスの流量比が減少するように不活性ガスを増加させた方が付着物の除去レートが高くなる領域があることを発見した。以下の本発明は,このような見知から導き出されたものである。
【0013】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,減圧可能に構成された処理室内に上部電極と下部電極を対向して配置し,前記下部電極を設けた基板載置台を備えた処理室内をクリーニングする基板処理装置のクリーニング方法であって,前記処理室内を所定の処理条件に基づいてクリーニングする際に,Oガスと不活性ガスからなる処理ガスを前記下部電極のセルフバイアス電圧に応じてその絶対値が小さいほど,前記Oガスの流量比が減少しArガスの流量比が増大するように設定した流量比で前記処理室内に供給し,前記電極間に高周波電力を印加してプラズマを発生させることを特徴とする基板処理装置のクリーニング方法が提供される。
【0014】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,減圧可能に構成された処理室と,前記処理室内に対向配置された上部電極及び下部電極と,前記下部電極を設けた基板載置台と,前記電極間に所定の高周波電力を供給する電力供給装置と,前記処理室内にOガスと不活性ガスをクリーニング用の処理ガスとして供給するガス供給部と,前記処理室内を排気して所定の圧力に減圧する排気部と,前記処理室内を所定の処理条件でクリーニングする際の前記下部電極のセルフバイアス電圧に応じてその絶対値が小さいほど,前記Oガスの流量比が減少しArガスの流量比が増大するように設定された前記処理ガスの流量比を記憶する記憶部と,前記処理室内をクリーニングする際に,前記記憶部から前記セルフバイアス電圧に対応する前記流量比を読み出して,その流量比で前記Oガスと前記不活性ガスを前記ガス供給部から供給し,前記電力供給装置から前記電極間に所定の高周波電力を印加してプラズマを生成する制御部とを設けたことを特徴とする基板処理装置が提供される。
【0015】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,上記クリーニング方法を実行するプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0016】
また,上記クリーニング方法及び基板処理装置において,前記不活性ガスはArガスとし,前記セルフバイアス電圧の絶対値が50V以下となる処理条件を用いてクリーニングを行う場合には,前記Oガスの流量比が前記処理ガス全体の8%以上33%未満となるように前記各ガスの流量比を設定することが好ましい。
【0017】
この場合,さらに前記セルフバイアス電圧の絶対値が50Vより大きく160Vより小さくなる処理条件を用いてクリーニングを行う場合には,前記Oガスの流量比が前記処理ガス全体の33%以上100%未満となるように前記各ガスの流量比を設定することが好ましい。
【0018】
なお,本明細書中1mTorrは(10−3×101325/760)Pa,1sccmは(10−6/60)m/secとする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,下部電極のセルフバイアス電圧に応じて,Oガスの流量比が減少しArガスの流量比が増大するように設定することで,セルフバイアス電圧を上げることなく,付着物の除去レートを高めることができる。これにより,載置台の表面に与えるダメージを抑えつつ,付着物を除去する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態にかかるプラズマ処理装置を示す断面図である。
【図2】図1に示す載置台の拡大図である。
【図3A】処理室内圧力を100mTorrとしたときの処理ガスの流量比と除去レートとの関係をグラフで示す図である。
【図3B】処理室内圧力を200mTorrとしたときの処理ガスの流量比と除去レートとの関係をグラフで示す図である。
【図3C】処理室内圧力を400mTorrとしたときの処理ガスの流量比と除去レートとの関係をグラフで示す図である。
【図3D】処理室内圧力を750mTorrとしたときの処理ガスの流量比と除去レートとの関係をグラフで示す図である。
【図4A】図3A〜図3DのウエハWの周縁部の除去レートを縦軸にとって,処理ガスの流量比を横軸にとってまとめたグラフを示す図である。
【図4B】図4AにおいてArガスの流量比0(Oガス100%)の除去レートで各流量比の除去レートを基準化したグラフを示す図である。
【図5A】処理室内圧力が100mTorrの場合に第1高周波電力の大きさを変えたときの処理ガスの流量比と除去レートとの関係を示す図である。
【図5B】図5AにおいてArガスの流量比0(Oガス100%)の除去レートで各流量比の除去レートを基準化したグラフを示す図である。
【図6A】処理室内圧力が400mTorrの場合に第2高周波電力の大きさを変えたときの処理ガスの流量比と除去レートとの関係を示す図である。
【図6B】図5AにおいてArガスの流量比0(Oガス100%)の除去レートで各流量比の除去レートを基準化したグラフを示す図である。
【図7A】処理室内圧力が100mTorrの場合に第2高周波電力の大きさを変えたときの処理ガスの流量比と除去レートとの関係を示す図である。
【図7B】図5AにおいてArガスの流量比0(Oガス100%)の除去レートで各流量比の除去レートを基準化したグラフを示す図である。
【図8】セルフバイアス電圧の絶対値と除去レートとの関係をグラフに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
(基板処理装置の構成例)
先ず,本発明の実施形態にかかる基板処理装置の構成例について図面を参照しながら説明する。ここでは,基板処理装置として,1つの電極(下部電極)に例えば40MHzの比較的高い周波数を有する第1高周波電力(プラズマ生起用高周波電力)と,例えば13.56MHzの比較的低い周波数を有する第2高周波電力(バイアス電圧用高周波電力)を重畳して印加して,ウエハ上に形成された被エッチング膜のエッチングを行うプラズマ処理装置を例に挙げて説明する。図1は本実施形態にかかるプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。
【0023】
図1に示すようにプラズマ処理装置100は例えば表面が陽極酸化処理(アルマイト処理)されたアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属から成る円筒形状に成形された処理容器を有する処理室(チャンバ)102を備える。処理室102は接地されている。処理室102内には,基板例えば半導体ウエハ(以下,単に「ウエハ」とも称する。)Wを載置する基板載置台(以下,単に「載置台」と称する)110が設けられている。載置台110は,円板状の下部電極(サセプタ)111を備えており,この下部電極111の上方には,処理ガスやパージガスなどを導入するシャワーヘッドを兼ねた上部電極120が対向して配設されている。
【0024】
下部電極111は例えばアルミニウムからなる。下部電極111は処理室102の底部から垂直上方に延びる筒状部104に絶縁性の筒状保持部106を介して保持されている。下部電極111の上面には,ウエハWを静電吸着力で保持するための静電チャック112が設けられている。静電チャック112は例えば導電膜からなる静電チャック電極114を絶縁膜内に挟み込んで構成される。静電チャック電極114には直流電源115が電気的に接続されている。この静電チャック112によれば,直流電源115からの直流電圧により,クーロン力でウエハWを静電チャック112上に吸着保持することができる。
【0025】
下部電極111の内部には冷却機構が設けられている。この冷却機構は,例えば下部電極111内の円周方向に延在する冷媒室116に,図示しないチラーユニットからの所定温度の冷媒(例えば冷却水)を配管を介して循環供給するように構成される。冷媒の温度によって静電チャック112上のウエハWの処理温度を制御できる。
【0026】
下部電極111と静電チャック112には伝熱ガス供給ライン118がウエハWの裏面に向けて配設されている。伝熱ガス供給ライン118には例えばHeガスなどの伝熱ガス(バックガス)が導入され,静電チャック112の上面とウエハWの裏面との間に供給される。これにより,下部電極111とウエハWとの間の熱伝達が促進される。静電チャック112上に載置されたウエハWの周囲を囲むようにフォーカスリング119配置されている。フォーカスリング119は,例えば石英やシリコンからなり,筒状保持部106の上面に設けられている。
【0027】
上部電極120は処理室102の天井部に設けられている。上部電極120は接地されている。上部電極120には処理室102内での処理に必要なガスを供給する処理ガス供給部122が配管123を介して接続されている。処理ガス供給部122は,例えば処理室102内でのウエハのプロセス処理や処理室102内のクリーニング処理などに必要な処理ガスやパージガスなどを供給するガス供給源,ガス供給源からのガスの導入を制御するバルブ及びマスフローコントローラにより構成される。
【0028】
上部電極120には多数のガス通気孔125を有する下面の電極板124と,この電極板124を着脱可能に支持する電極支持体126とを有する。電極支持体126の内部にバッファ室127が設けられている。このバッファ室127のガス導入口128には上記処理ガス供給部122の配管123が接続されている。
【0029】
図1では説明を簡単にするため,処理ガス供給部122を一系統のガスラインで表現しているが,処理ガス供給部122は単一のガス種の処理ガスを供給する場合に限られるものではなく,複数のガス種を処理ガスとして供給するものであってもよい。この場合には,複数のガス供給源を設けて複数系統のガスラインで構成し,各ガスラインにマスフローコントローラを設けてもよい。
【0030】
このような処理ガス供給部122により処理室102内に供給する処理ガスとしては,例えば酸化膜のエッチングでは,Clなどを含むハロゲン系ガスが用いられる。具体的にはSiO膜などのシリコン酸化膜をエッチングする場合には,CHFガスなどが処理ガスとして用いられる。HfO,HfSiO,ZrO,ZrSiOなどの高誘電体薄膜をエッチングする場合には,BClガスを処理ガスとしたり,BClガスとOガスとの混合ガスを処理ガスとして用いられる。ポリシリコン膜をエッチングする場合には,HBrガスとOガスの混合ガスなどが処理ガスとして用いられる。
【0031】
また,処理室102内のクリーニングでは,例えばOガスの単ガス,Oガスと不活性ガス(Arガス,Heガスなど)の混合ガスが用いられる。本実施形態にかかるクリーニング処理ではその処理ガスとしてOガスとArガスとの混合ガスを用いる場合を例に挙げる。
【0032】
処理室102の側壁と筒状部104との間には排気路130が形成され,この排気路130の入口または途中に環状のバッフル板132が取り付けられるとともに,排気路130の底部に排気口134が設けられている。この排気口134には排気管を介して排気部136が接続されている。排気部136は,例えば真空ポンプを備え,処理室102内を所定の真空度まで減圧することができるようになっている。また,処理室102の側壁には,ウエハWの搬入出口を開閉するゲートバルブ108が取り付けられている。
【0033】
下部電極111には,2周波重畳電力を供給する電力供給装置140が接続されている。電力供給装置140は,第1周波数の第1高周波電力(プラズマ生起用高周波電力)を供給する第1高周波電力供給機構142と,第1周波数よりも低い第2周波数の第2高周波電力(バイアス電圧発生用高周波電力)を供給する第2高周波電力供給機構152から構成されている。
【0034】
第1高周波電力供給機構142は,下部電極111側から順次接続される第1フィルタ144,第1整合器146,第1電源148を有している。第1フィルタ144は,第2周波数の電力成分が第1整合器146側に侵入することを防止する。第1整合器146は,第1高周波電力成分をマッチングさせる。
【0035】
第2高周波電力供給機構152は,下部電極111側から順次接続される第2フィルタ154,第2整合器156,第2電源158を有している。第2フィルタ154は,第1周波数の電力成分が第2整合器156側に侵入することを防止する。第2整合器156は,第2高周波電力成分をマッチングさせる。
【0036】
処理室102にはその周囲を囲むように磁場形成部170が配設されている。磁場形成部170は,処理室102の周囲に沿って上下に離間して配置された上部マグネットリング172と下部マグネットリング174を備え,処理室102内にプラズマ処理空間を囲むカスプ磁場を発生させる。
【0037】
プラズマ処理装置100には,制御部(全体制御装置)160が接続されており,この制御部160によってプラズマ処理装置100の各部が制御されるようになっている。また,制御部160には,オペレータがプラズマ処理装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや,プラズマ処理装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなる操作部162が接続されている。
【0038】
さらに,制御部160には,プラズマ処理装置100で実行される各種処理(ウエハWに対するプラズマ処理など)を制御部160の制御にて実現するためのプログラムやプログラムを実行するために必要な処理条件(レシピ)などが記憶された記憶部164が接続されている。
【0039】
記憶部164には,例えば複数の処理条件(レシピ)が記憶されている。各処理条件は,プラズマ処理装置100の各部を制御する制御パラメータ,設定パラメータなどの複数のパラメータ値をまとめたものである。各処理条件は例えば処理ガスの流量比,処理室内圧力,高周波電力などのパラメータ値を有する。
【0040】
なお,これらのプログラムや処理条件はハードディスクや半導体メモリに記憶されていてもよく,またCD−ROM,DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で記憶部164の所定位置にセットするようになっていてもよい。
【0041】
制御部160は,操作部162からの指示等に基づいて所望のプログラム,処理条件を記憶部164から読み出して各部を制御することで,プラズマ処理装置100での所望の処理を実行する。また,操作部162からの操作により処理条件を編集できるようになっている。
【0042】
(プラズマ処理装置の動作)
次に,上述したような構成のプラズマ処理装置100の動作について説明する。例えばウエハWにプラズマエッチング処理を行う場合には,図示しない搬送アームによって未処理ウエハWを処理室102にゲートバルブ108から搬入する。ウエハWが載置台110上,すなわち静電チャック112上に載置されると,直流電源115をオンしてウエハWを静電チャック112に吸着保持し,プラズマエッチング処理を開始する。
【0043】
プラズマエッチング処理は,予め設定されたプロセスレシピに基づいて実行される。具体的には処理室102内が所定の圧力に減圧され,上部電極120から所定の処理ガス(例えばCガス,Oガス,およびArガスを含む混合ガス)を所定の流量および流量比で処理室102内に導入される。
【0044】
この状態で,下部電極111に,第1電源148から第1高周波として10MHz以上,例えば100MHzを供給し,第2電源158から第2高周波として2MHz以上10MHz未満,例えば3MHzの第2の高周波電力を供給する。これにより,第1高周波の働きで下部電極111と上部電極120との間に処理ガスのプラズマが発生するとともに,第2高周波の働きで下部電極111にセルフバイアス電圧(−Vdc)が発生し,ウエハWに対してプラズマエッチング処理を実行することができる。このように,下部電極111に第1高周波および第2高周波を供給してこれらを重畳させることにより,プラズマを適切に制御して良好なプラズマエッチング処理を行うことができる。
【0045】
エッチング処理が終了すると,直流電源115をオフして静電チャック112の吸着保持力を除去し,図示しない搬送アームによってウエハWをゲートバルブ108から搬出する。
【0046】
このようなウエハWのプラズマエッチング処理が実行されると,処理室102内にプラズマ処理による反応生成物などのパーティクルが発生する。このパーティクルは処理室102内の側壁のみならず,処理室102内に配置される載置台110などにも付着する。例えば図2に示すようにパーティクルはウエハWとフォーカスリング119の間にも入り込んで静電チャック112の周縁部の上側にも付着する。
【0047】
こうして付着した付着物(例えばCFポリマー)を放置しておくと,プラズマエッチング処理を繰り返すごとに堆積していくので,ウエハWの吸着保持力を低下させたり,搬送アームでウエハWを静電チャック112上に載置する際にウエハWの位置ずれが発生したりという問題がある。また,付着物の一部が削れて浮遊すると,ウエハW上にも付着する虞がある。ウエハWに付着するとそこから製造される半導体デバイスの配線ショート等の原因となり,ひいては歩留り低下の要因となる。
【0048】
このため,プラズマ処理装置100では,一定のタイミングで処理室102内のクリーニング処理を行うようになっている。例えば1枚のウエハWのプラズマエッチング処理が終了するごとにクリーニング処理を行ってもよく,また1ロット(例えば25枚)分のウエハWのプラズマエッチング処理が終了するごとにクリーニング処理を行うようにしてもよい。
【0049】
クリーニング処理では,クリーニング用の処理ガスを処理室102内に導入し,所定の圧力を保持する。この状態で,下部電極111に,第1電源148から第1高周波として10MHz以上,例えば100MHzを供給し,第2電源158から第2高周波として2MHz以上10MHz未満,例えば3MHzの第2の高周波電力を供給する。これにより,第1高周波の働きで下部電極111と上部電極120との間に処理ガスのプラズマが発生するとともに,第2高周波の働きで下部電極111にセルフバイアス電位が発生し,処理室102内のクリーニング処理を実行することができる。
【0050】
(クリーニング処理で用いる処理ガス)
このようなクリーニング処理では,Oガスを処理ガスとして用いてOプラズマで付着物を除去するのが一般的である。ところが,Oプラズマでは除去レートが遅く時間がかかるという問題がある。特に図2に示すような静電チャック112の周縁部の上側に付着する付着物は重合体(例えばCFポリマー)を形成するので除去するのに時間がかかる。
【0051】
この点,付着物の除去レートを上げるためには,例えば処理室102内圧力をできるだけ低くしたり,各電極に印加する高周波電力を大きくしたりすることで,下部電極111のセルフバイアス電圧を上げるのが最も容易である。しかしながら,静電チャック112上にウエハWを載置しないで行うウエハレスクリーニングでは,静電チャック112の表面はプラズマに露出する。このため,下部電極111のセルフバイアス電圧を上げるほどイオン衝撃が大きくなるので静電チャック112の表面がダメージを受け易くなる。
【0052】
そこで,本発明者らは様々な実験を行ったところ,クリーニング処理の処理ガスとしてOガスと不活性ガス(例えばArガス)の混合ガスを用い,その流量比を変えるだけで,セルフバイアス電圧を上げることなく,除去レートを高めることができることを見出した。これによれば,静電チャック112の表面に与えるダメージを抑えつつ,付着物の除去レートを高めることができる。
【0053】
より具体的に説明すると,発明者らは,Oガスと不活性ガスの流量比に対する,処理室102内の圧力,第1高周波電力(プラズマ生起用高周波電力),第2高周波電力(バイアス電圧発生用高周波電力)との関係を実験で確認したところ,予期せぬ結果が得られた。
【0054】
一般にはOガスと不活性ガスの混合ガスを用いる場合,不活性ガスの流量比を増加するほど,Oガスの分圧が下がるので付着物の除去レートも低下するものと考えられていた。ところが,実際の実験では処理室内圧力や第1及び第2高周波電力の大きさによっては,Oガスの流量比が減少するようにArガスを増加させた方が付着物の除去レートが高くなる領域があることが実験結果から判明した。
【0055】
以下,これらの実験結果について図面を参照しながら説明する。先ず,クリーニング処理における処理室内圧力を変えたときの処理ガスの流量比と付着物の除去レートの関係についての実験結果について説明する。この実験では,下部電極に付着する成分と同様のCFポリマーを形成した直径300mmのウエハWに対して,処理ガスとしてOガスとArガスの混合ガスを用いてクリーニングの処理条件と同様の条件でエッチングを行って,そのエッチングレートを付着物の除去レートとして測定した。
【0056】
図3A〜図3Dはそれぞれ,処理室内圧力を100mTorr,200mTorr,400mTorr,750mTorrとしたときの処理ガスの流量比を変えて測定した除去レートをプロットしたものである。処理ガスの流量比は,処理ガスの全体の流量を1000sccmとしてOガスとArガスの流量比を変えてエッチング(クリーニング)を行った。
【0057】
具体的には,図3A〜図3Dにも凡例のようにOガスの流量比/Arガスの流量比で示すと,1000sccm/0sccm(Oガス100%),750sccm/250sccm(Oガス75%),500sccm/500sccm(Oガス50%),150sccm/850sccm(Oガス15%),50sccm/950sccm(Oガス5%),10sccm/990sccm(Oガス1%)についてそれぞれエッチングを行って除去レートを測定した。なお,その他の処理条件は以下の通りである。
【0058】
[処理条件]
第1高周波電力:500W
第2高周波電力:0W
上部電極温度:60deg
側壁温度:60deg
下部電極温度:40deg
処理時間:30sec
【0059】
図3A〜図3Dによれば,ウエハWの面内位置を全体的に見れば,図3A,図3Bに示す100mTorr,200mTorrの場合には,Oガスの流量比が減少するようにArガスを増加させるほど,除去レートも低下している。これに対して,図3C,図3Dに示す400mTorr,750mTorrの場合には,Oガスの流量比が減少するようにArガスを増加させた方が除去レートが高くなっている。しかも,Oガスの流量比を減少させると,ウエハWの中央部よりも周縁部の方がより除去レートが高くなっていることがわかる。このため,特に静電チャック112の中央部にダメージを与えずに,周縁部の付着物の除去効率を高めることができる点で効果が大きい。
【0060】
そこで,図3A〜図3DのウエハWの周縁部の除去レートを縦軸にとって,処理ガスの流量比を横軸にとってまとめると,図4A,図4Bに示すようになる。図4A,図4Bの横軸は,処理ガスの流量比をArガス/(Arガス+Oガス)の百分率で示しているので,流量比0%はO100%であり,流量比100%はOガス0%である。
【0061】
図4Aは,ウエハWの外縁から中心部に向けて1mmの位置(図3A〜図3Dでは−149mmの位置)の除去レートを各圧力ごとにグラフにしたものである。図4Bは,図4AのArガスの流量比0(Oガス100%)の除去レートを基準(1)として各流量比の除去レートを基準化したものである。すなわち,各流量比の除去レートをArガスの流量比0(Oガス100%)の除去レートで割り算した値をプロットしてグラフにしたものである。なお,図4A,図4Bでは,Oガスの流量比/Arガスの流量比が250sccm/750sccm(Oガス25%),30sccm/970sccm(Oガス3%)の場合の実験データも加えている。
【0062】
図4A,図4Bによれば,ウエハWの周縁部の除去レートは,100mTorrの場合には,Oガスの流量比が減少するようにArガスを増加させるほど,除去レートも低下している。これに対して,200mTorr,400mTorr,750mTorrと圧力が高くなるほど,Oガスの流量比が減少するようにArガスを増加させた方が除去レートが増大する。特に400mTorr以上では除去レートがOガス100%の場合に比して略1.75倍と大幅に増大する流量比がある。但し,いずれの圧力の場合もOガスが少なすぎると,除去レートも低下するので,除去レートが最大付近の流量比を用いることが好ましい。
【0063】
ところで,処理室102内の圧力を200mTorr,400mTorr,750mTorrと高くすると,イオンエネルギが減少する。そうとすると,上記実験結果からイオンエネルギが低い領域ほどOガスの流量比が減少するようにArガスを増大させた方が除去レートが増大するものと考えられるので,それを検証する実験を行った。
【0064】
ここでは先ず,Arガスを増大させてもそれほど除去レートが上がらなかった条件,すなわち処理室内圧力が100mTorr,200mTorrのときに,下部電極111に印加する第1高周波電力の大きさを変えて行った実験結果を説明する。具体的には,第2高周波電力を0Wに固定して第1高周波電力の大きさを変えて図3A(100mTorr),図3B(200mTorr)の場合と同様の実験を行った。図5A,図5Bは,100mTorrの場合について図4A,図4Bと同様にウエハWの周縁部(−149mmの位置)の除去レートを横軸にとり,処理ガスの流量比を縦軸にとってまとめたものである。図6A,図6Bは,400mTorrの場合について図4A,図4Bと同様にウエハWの周縁部(−149mmの位置)の除去レートを横軸にとり,処理ガスの流量比を縦軸にとってまとめたものである。
【0065】
図5A,図5B,図6A,図6Bによれば,処理室内圧力が100mTorrの場合と200mTorrの場合ともに,第1高周波電力を500Wから200Wに小さくした方が,Oガスの流量比が減少するようにArガスを増加させていったときの除去レートの上昇率が大きくなることがわかる。図6A,図6Bによれば,400mTorrの場合ではさらに顕著に除去レートの上昇率が大きくなっている。これにより,処理室内圧力が100mTorrの場合と200mTorrの場合でも,第1高周波電力を小さくしてイオンエネルギを減少させると,図3C(400mTorr)や図3D(750mTorr)の場合と同様にArガス増大の効果が現れる傾向があることがわかった。
【0066】
続いて,Arガスを増大させると除去レートが上がった条件,すなわち処理室内圧力が400mTorrの場合に,下部電極111に印加する第2高周波電力を大きくしてイオンエネルギを増大させた場合の実験結果を説明する。具体的には,第1高周波電力を500Wに固定して第2高周波電力の大きさを変えて図3C(400mTorr)の場合と同様の実験を行った。図7A,図7Bは,400mTorrの場合について図4A,図4Bと同様にウエハWの周縁部(−149mmの位置)の除去レートを横軸にとり,処理ガスの流量比を縦軸にとってまとめたものである。
【0067】
図7A,図7Bによれば,第2高周波電力を150W,300Wと大きくしてイオンエネルギを増大すると,0Wの場合に比してOガスの流量比が減少するようにArガスを増加させていっても除去レートは大きくならない。これにより,処理室内圧力が400mTorrの場合でも,第2高周波電力を大きくしてイオンエネルギを増大させると,図3A(100mTorr)や図3B(200mTorr)の場合と同様にArガス増大の効果が薄れる傾向があることがわかった。
【0068】
以上の実験結果によれば,付着物の除去レートを高められるArガスとOガスの流量比は,イオンエネルギと密接な関係があることがわかった。イオンエネルギは,下部電極のセルフバイアス電圧(−Vdc)の大きさに対応するため,ここでは上述した各実験結果からセルフバイアス電圧(−Vdc)と付着物の除去レートとの関係をまとめてみた。これをグラフで表したのが図8である。
【0069】
図8は,上記各実験結果において除去レートを高めるのに適した処理ガスの流量比を選択して,そのときのセルフバイアス電圧(−Vdc)を求めてその絶対値を横軸にとり,付着物の除去レートを縦軸にとってこれらの関係をグラフにしたものである。具体的には図4A,図4B等の実験結果に基づいて除去レートが最も大きくなる範囲で処理ガス流量比を選択した。ここでは,OガスとArガスからなる処理ガス全体に対するOガスの流量の割合が8%,33%,100%で除去レートを求める実験を行った場合のデータを用いている。
【0070】
図8によれば,Oガス8%,33%,100%のプロットデータをそれぞれ直線近似すると,各直線y8,y33,y100のようになる。すなわち,これらの直線y8,y33,y100は傾きが異なる。これらの直線y8,y33,y100のうち上側にくるものほど除去レートを高めることができるのであるから,セルフバイアス電圧の領域によって上側にくる直線も変わることになる。これにより,セルフバイアス電圧の領域によって,除去レートを高めるのに適した処理ガスの流量比が変わることがわかった。
【0071】
例えばセルフバイアス電圧(−Vdc)の絶対値が非常に大きい160V以上の場合は,直線100が最も上側にあるのでOガス100%の場合が最も除去レートを高めることができる。これに対して,セルフバイアス電圧の絶対値がそれよりも低い50V以上160以下の場合は,直線y33が最も上側にあるので,Oガス33%の場合が最も除去レートを高めることができる。さらに,セルフバイアス電圧の絶対値が低い50V以下の場合は,直線y8が最も上側にあるので,Oガス8%の場合が最も除去レートを高めることができる。
【0072】
このように,セルフバイアス電圧が小さい領域でも,Oガスの流量比が減少するようにArガスを増加する方が付着物の除去レートを高めることができる理由としては例えばプラズマ密度の観点から以下のことが考えられる。Arガスは電離にエネルギーを費やすことができるのでArイオンになり易いのに対して,Oガスは酸素ラジカルに解離するのにも多くのエネルギーを要するので,Oガスだけではプラズマ密度が上がらなくなってしまう。このため,Arガスを増やすほど,セルフバイアス電圧が下がってくるので除去レートをとり難くなってくるものの,その分Arイオンの数が増大してイオン密度や電子密度も増大するので,Oガスの解離を促進する。従って,セルフバイアス電圧が小さい領域では,Arガスを増大した方が,Oガスも電離し易くなり,付着物の除去効率を大幅に高めることができると推察される。
【0073】
そこで,本実施形態のクリーニング処理では,処理室102内を所定の処理条件に基づいてクリーニングする際に,OガスとArガスからなる処理ガスを下部電極111のセルフバイアス電圧に応じてその絶対値が小さいほど,Oガスの流量比が減少しArガスの流量比が増大するように設定した流量比で処理室102内に供給し,電極間に高周波電力を印加してプラズマを発生させる。
【0074】
より具体的には,セルフバイアス電圧(−Vdc)の絶対値が50V以下となる処理条件を用いる場合には,Oガス8%以上33%未満となるようにOガスとArガスの流量比を設定する。また,セルフバイアス電圧の絶対値が50Vより大きく160Vより小さくなる処理条件を用いる場合には,Oガス33%以上100%未満となるようにOガスとArガスの流量比を設定する。これらの処理ガスの流量比は,予め他の処理条件とともに記憶部164に記憶しておき,クリーニングを実行する際に読み出して用いるようにしてもよい。
【0075】
このように,本発明者らはセルフバイアス電圧(−Vdc)と,処理ガスの流量比との間に一定の関連性があることを発見し,クリーニングに用いる処理ガスの流量比をセルフバイアス電圧(−Vdc)に応じて変えるだけで,効果的に除去レートを高めることができることを見出した。
【0076】
これにより,セルフバイアス電圧(−Vdc)を高めることなく,付着物の除去レートを高めることができるので,静電チャック112の表面に与えるダメージを抑えつつ,静電チャック112の周縁部に付着する付着物を除去するのに要する時間を短縮できる。
【0077】
なお,セルフバイアス電圧の絶対値が160V以上となる処理条件を用いる場合には,Oガス100%以上となるようにOガスとArガスの流量比を設定するようにしてもよい。但し,載置台110の表面(静電チャック112の表面)へのダメージも抑えつつ,Arガスの増大によって付着物の除去レートを高めるには,セルフバイアス電圧の絶対値が160Vより小さい領域や50Vより小さい領域となる処理条件でクリーニングを行うことが好ましい。
【0078】
また,上記実施形態においてクリーニング用の処理ガスとしては,Oガスに加える不活性ガスとしてArガスを例に挙げて説明したが,これに限定されるものではない。このような不活性ガスとしてはArガスの他に,例えばHeガス,Neガス,Krガスなどを用いることもできる。
【0079】
また,上述した実施形態の機能を実現するソフトウエアのプログラムを記憶した記憶媒体等の媒体をシステムあるいは装置に供給し,そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体等の媒体に記憶されたプログラムを読み出して実行することによっても,本発明が達成され得る。
【0080】
この場合,記憶媒体等の媒体から読み出されたプログラム自体が上述した実施形態の機能を実現することになり,そのプログラムを記憶した記憶媒体等の媒体は本発明を構成することになる。プログラムを供給するための記憶媒体等の媒体としては,例えば,フロッピー(登録商標)ディスク,ハードディスク,光ディスク,光磁気ディスク,CD−ROM,CD−R,CD−RW,DVD−ROM,DVD−RAM,DVD−RW,DVD+RW,磁気テープ,不揮発性のメモリカード,ROMなどが挙げられる。また,媒体に対してプログラムを,ネットワークを介してダウンロードして提供することも可能である。
【0081】
なお,コンピュータが読み出したプログラムを実行することにより,上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく,そのプログラムの指示に基づき,コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部又は全部を行い,その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合も,本発明に含まれる。
【0082】
さらに,記憶媒体等の媒体から読み出されたプログラムが,コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後,そのプログラムの指示に基づき,その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い,その処理によって上述した実施形態の機能が実現される場合も,本発明に含まれる。
【0083】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0084】
例えば上記実施形態では基板処理装置として,下部電極のみに2種類の高周波電力を重畳して印加してプラズマを生起させるタイプのプラズマ処理装置を例に挙げて説明したが,これに限定されるものではなく,別のタイプ例えば下部電極のみに1種類の高周波電力を印加するタイプや2種類の高周波電力を上部電極と下部電極にそれぞれ印加するタイプのプラズマ処理装置に適用してもよい。さらに,本発明を適用可能な基板処理装置としては,プラズマ処理装置に限定されることはなく,成膜処理を行う熱処理装置に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は,例えば半導体ウエハ,FPD基板などの基板を載置する基板載置台を備えた処理室内をクリーニングする基板処理装置,そのクリーニング方法,プログラムを記録した記録媒体に適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
100 プラズマ処理装置
102 処理室
104 筒状部
106 筒状保持部
108 ゲートバルブ
110 載置台
111 下部電極
112 静電チャック
114 静電チャック電極
115 直流電源
116 冷媒室
118 伝熱ガス供給ライン
119 フォーカスリング
120 上部電極
122 処理ガス供給部
123 配管
124 電極板
125 ガス通気孔
126 電極支持体
127 バッファ室
128 ガス導入口
130 排気路
132 バッフル板
134 排気口
136 排気部
140 電力供給装置
142 第1高周波電力供給機構
144 第1フィルタ
146 第1整合器
148 第1電源
152 第2高周波電力供給機構
154 第2フィルタ
156 第2整合器
158 第2電源
160 制御部
162 操作部
164 記憶部
170 磁場形成部
172 上部マグネットリング
174 下部マグネットリング
W ウエハ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧可能に構成された処理室内に上部電極と下部電極を対向して配置し,前記下部電極を設けた基板載置台を備えた処理室内をクリーニングする基板処理装置のクリーニング方法であって,
前記処理室内を所定の処理条件に基づいてクリーニングする際に,Oガスと不活性ガスからなる処理ガスを前記下部電極のセルフバイアス電圧に応じてその絶対値が小さいほど,前記Oガスの流量比が減少しArガスの流量比が増大するように設定した流量比で前記処理室内に供給し,前記電極間に高周波電力を印加してプラズマを発生させることを特徴とする基板処理装置のクリーニング方法。
【請求項2】
前記不活性ガスはArガスとし,
前記セルフバイアス電圧の絶対値が50V以下となる処理条件を用いてクリーニングを行う場合には,前記Oガスの流量比が前記処理ガス全体の8%以上33%未満となるように前記各ガスの流量比を設定することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置のクリーニング方法。
【請求項3】
前記セルフバイアス電圧の絶対値が50Vより大きく160Vより小さくなる処理条件を用いてクリーニングを行う場合には,前記Oガスの流量比が前記処理ガス全体の33%以上100%未満となるように前記各ガスの流量比を設定することを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置のクリーニング方法。
【請求項4】
減圧可能に構成された処理室と,
前記処理室内に対向配置された上部電極及び下部電極と,
前記下部電極を設けた基板載置台と,
前記電極間に所定の高周波電力を供給する電力供給装置と,
前記処理室内にOガスと不活性ガスをクリーニング用の処理ガスとして供給するガス供給部と,
前記処理室内を排気して所定の圧力に減圧する排気部と,
前記処理室内を所定の処理条件でクリーニングする際の前記下部電極のセルフバイアス電圧に応じてその絶対値が小さいほど,前記Oガスの流量比が減少しArガスの流量比が増大するように設定された前記処理ガスの流量比を記憶する記憶部と,
前記処理室内をクリーニングする際に,前記記憶部から前記セルフバイアス電圧に対応する前記流量比を読み出して,その流量比で前記Oガスと前記不活性ガスを前記ガス供給部から供給し,前記電力供給装置から前記電極間に所定の高周波電力を印加してプラズマを生成する制御部と,
を設けたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
前記不活性ガスはArガスとし,
前記セルフバイアス電圧の絶対値が50V以下となる処理条件を用いてクリーニングを行う場合には,前記Oガスの流量比が前記処理ガス全体の8%以上33%未満となる前記各ガスの流量比を前記記憶部に記憶することを特徴とする請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記セルフバイアス電圧の絶対値が50Vより大きく160Vより小さくなる処理条件を用いてクリーニングを行う場合には,前記Oガスの流量比が前記処理ガス全体の33%以上100%未満となる前記各ガスの流量比を前記記憶部に記憶することを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載のクリーニング方法を実行するプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−108884(P2011−108884A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263069(P2009−263069)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】