説明

成膜方法及び成膜装置

【課題】Mn含有膜やCuMn含有合金膜等を、CVD等の熱処理によって形成することにより、微細な凹部でも、高いステップカバレッジで埋め込むことができ、しかも、同一の処理装置で連続的な処理を行うようにして装置コストを大幅に低減化することができる成膜方法を提供する。
【解決手段】真空引き可能になされた処理容器14内で、遷移金属を含む遷移金属含有原料ガスと酸素含有ガスとにより被処理体Wの表面に、熱処理により薄膜を形成する。これにより、例えばMn含有膜やCuMn含有合金膜等を、CVD等の熱処理によって形成する際に、微細な凹部でも、高いステップカバレッジで埋め込むことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体の表面に、例えばシード膜としてマンガン(Mn)含有膜や銅マンガン(CuMn)含有合金膜を形成するための成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスを製造するには、半導体ウエハに成膜処理やパターンエッチング処理等の各種の処理を繰り返し行って所望のデバイスを製造するが、半導体デバイスの更なる高集積化及び高微細化の要請より、線幅やホール径が益々微細化されている。そして、配線材料や、トレンチ、ホールなどの凹部内への埋め込み材料としては、各種寸法の微細化により、より電気抵抗を小さくする必要から電気抵抗が非常に小さくて且つ安価である銅を用いる傾向にある(特許文献1)。そして、この配線材料や埋め込み材料として銅を用いる場合には、その下層への銅の拡散バリヤ性等を考慮して、一般的にはタンタル金属(Ta)やタンタル窒化膜(TaN)等がバリヤ層として用いられる。
【0003】
そして、上記凹部内を銅で埋め込むには、まずプラズマスパッタ装置内にて、この凹部内の壁面全体を含むウエハ表面全面に銅膜よりなる薄いシード膜を形成し、次にウエハ表面全体に銅メッキ処理を施すことにより、凹部内を完全に埋め込むようになっている。その後、ウエハ表面の余分な銅薄膜をCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理等により研磨処理して取り除くようになっている。
【0004】
この点については図12を参照して説明する。図12は半導体ウエハの凹部の従来の埋め込み工程を示す図である。この半導体ウエハWに形成された、例えば層間絶縁膜などの絶縁層1の表面には、ビアホールやスルーホールや溝(トレンチやDual Damascene構造)等に対応する凹部2が形成されており、この凹部2の底部には、例えば銅よりなる下層の配線層3が露出状態で形成されている。
【0005】
具体的には、この凹部2は、細長く形成された断面凹状の溝(トレンチ)2Aと、この溝2Aの底部の一部に形成されたホール2Bとよりなり、このホール2Bがコンタクトホールやスルーホールとなる。そして、このホール2Bの底部に上記配線層3が露出しており、下層の配線層やトランジスタ等の素子と電気的な接続を行うようになっている。なお、下層の配線層やトランジスタ等の素子については図示を省略している。
【0006】
上記絶縁層1は例えばSiO 膜により形成されている。上記凹部2は設計ルールの微細化に伴ってその幅、或いは内径は例えば120nm程度と非常に小さくなっており、アスペクト比は例えば2〜4程度になっている。なお、拡散防止膜およびエッチングストップ膜等については、図示を省略し形状を単純化して記載している。
【0007】
この半導体ウエハWの表面には上記凹部2内の内面も含めて略均一に例えばTaN膜及びTa膜の積層構造よりなるバリヤ層4がプラズマスパッタ装置にて予め形成されている(図12(A)参照)。そして、プラズマスパッタ装置にて上記凹部2内の表面を含むウエハ表面全体に亘って金属膜として薄い銅膜よりなるシード膜6を形成する(図12(B)参照)。このシード膜6をプラズマスパッタ装置内で形成する際、半導体ウエハ側に高周波のバイアス電力を印加して、銅の金属イオンの引き込みを効率良く行うようになっている。更に、上記ウエハ表面に銅メッキ処理を施すことにより上記凹部2内を例えば銅膜よりなる金属膜8で埋め込むようになっている(図12(C)参照)。その後は、上記ウエハ表面の余分な金属膜8、シード膜6及びバリヤ層4を上記したCMP処理等を用いて研磨処理して取り除くことになる。
【0008】
ところで、最近にあっては、上記バリヤ層の更なる信頼性の向上を目標として種々の開発がなされており、中でも上記Ta膜やTaN膜に代えてMn膜やCuMn合金膜を用いた自己形成バリヤ層が注目されている(特許文献2)。このMn膜やCuMn合金膜は、スパッタリングにより成膜されて、更にこのMn膜やCuMn合金膜自体がシード膜となるので、この上方にCuメッキ層を直接形成できメッキ後にアニールを施すことで自己整合的に下層の絶縁膜であるSiO 層と反応して、このSiO 層とMn膜やCuMn合金膜との境界部分にMnSixOy(x、y:任意の正数)膜、或いはマンガン酸化物MnOx(x:任意の正数)膜というバリヤ膜が形成されるため、製造工程数も削減できる、という利点を有する。なおマンガン酸化物は、Mnの価数によってMnO、Mn、Mn、MnO等の種類が存在するが、ここではこれらを総称してMnOxと記述する。
【0009】
【特許文献1】特開2004−107747号公報
【特許文献2】特開2005−277390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、現状の実用レベルでは上記Mn膜やCuMn合金膜はスパッタリング法でしか形成することができないが、将来的に予想される極微細パターン、例えば線幅や穴径が32nm以下のトレンチやホールに対しては、スパッタリング法では十分に対応することができず、ステップカバレッジ(段差被覆性)が劣る結果、凹部の埋め込みが不十分になる恐れが高い。
【0011】
また上述したように、シード膜6の形成工程、メッキ処理工程及びアニール工程では、それぞれ各工程に対応した異なる装置、例えばスパッタ装置、電解メッキ処理装置及びアニール装置を用いなければならず、装置コスト(設備コスト)の増大を余儀なくされる、という問題があった。
【0012】
また、スパッタによる成膜では、凹部の底部には、その側壁よりも厚くシード膜が形成されるので、アニール処理によって凹部の側壁に十分に薄いMnSixOy膜が生じても、底部の部分では銅に比べて抵抗値が高いMnやMnOxが大量に残存してしまい、この点よりもコンタクト抵抗が一層高くなってしまう、といった問題があった。
【0013】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、例えばMn含有膜やCuMn含有合金膜等を、CVD等の熱処理によって形成することにより、微細な凹部でも、高いステップカバレッジで埋め込むことができ、しかも、同一の処理装置で連続的な処理を行うようにして装置コストを大幅に低減化することができる成膜方法及び成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、Mn含有膜やCuMn含有合金膜の成膜に際して水蒸気(H O)を用いることによりインキュベーション時間を短縮しつつ成膜レートを極度に高め、非常に効率的に成膜を行うことができる、という知見を得ることにより、本発明に至ったものである。
【0015】
請求項1に係る発明は、真空引き可能になされた処理容器内で、遷移金属を含む遷移金属含有原料ガスと酸素含有ガスとにより被処理体の表面に、熱処理により薄膜を形成するようにしたことを特徴とする成膜方法である。
【0016】
このように、真空引き可能になされた処理容器内で、遷移金属を含む遷移金属含有原料ガスと酸素含有ガスとにより被処理体の表面に、熱処理により薄膜を形成するようにしたので、インキュベーション時間を短縮しつつ成膜レートを高く維持して、微細な凹部でも、高いステップカバレッジで埋め込むことができ、しかも、同一の処理装置で連続的な処理を行うようにして装置コストを大幅に低減化することができる。
【0017】
請求項2に係る発明は、真空引き可能になされた処理容器内で、遷移金属を含む遷移金属含有原料ガスと銅を含む銅含有原料ガスと酸素含有ガスとにより被処理体の表面に、熱処理により薄膜を形成するようにしたことを特徴とする成膜方法である。
【0018】
このように、真空引き可能になされた処理容器内で、遷移金属を含む遷移金属含有原料ガスと銅を含む銅含有原料ガスと酸素含有ガスとにより被処理体の表面に、熱処理により薄膜を形成するようにしたので、インキュベーション時間を短縮しつつ成膜レートを高く維持して、微細な凹部でも、高いステップカバレッジで埋め込むことができ、しかも、同一の処理装置で連続的な処理を行うようにして装置コストを大幅に低減化することができる。
【0019】
この場合、例えば請求項3に規定するように、前記熱処理は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法である。
また例えば請求項4に規定するように、前記熱処理は、前記原料ガスと前記酸素含有ガスとを交互に繰り返し供給して成膜を行うALD(Atomic Layer Deposition)法である。
【0020】
また例えば請求項5に規定するように、前記熱処理は、前記2つの原料ガスを間欠期間を挟んで交互に繰り返し供給すると共に、前記間欠期間の時に前記酸素含有ガスを供給する。
また例えば請求項6に規定するように、前記被処理体は表面に凹部を有しており、前記熱処理により薄膜を形成した後に、前記凹部の底面に形成された薄膜を除去するためのパンチスルー処理を行うようにした。
【0021】
また例えば請求項7に規定するように、前記パンチスルー処理は、除去対象箇所以外の表面をレジストで覆った状態で行うエッチング処理である。
また例えば請求項8に規定するように、前記パンチスルー処理は、表面全面をエッチバックするエッチング処理である。
また例えば請求項9に規定するように、前記凹部は、断面凹状に形成された溝と、該溝の底部に形成されたホールよりなり、前記パンチスルー処理により除去される薄膜は、前記ホールの底面に形成された薄膜である。
【0022】
また例えば請求項10に規定するように、前記薄膜が形成された被処理体上に、CVD法により銅膜を堆積して前記被処理体の凹部の埋め込み処理を行うようにする。
また例えば請求項11に規定するように、前記埋め込み処理は、前記薄膜を形成した処理容器内で行う。
これによれば、同一の装置内で、すなわちin−situで連続処理を行うことができるので、装置コストを大幅に低減することができる。
【0023】
また例えば請求項12に規定するように、前記被処理体は、前記埋め込み処理の後の工程でアニール処理が施される。
【0024】
また例えば請求項13に規定するように、前記アニール処理は、前記薄膜を形成した処理容器内で行う。
【0025】
また例えば請求項14に規定するように、前記薄膜が形成された被処理体上に、メッキ法により銅膜を堆積して前記被処理体の凹部の埋め込み処理を行うようにする。
また例えば請求項15に規定するように、前記被処理体は、前記埋め込み処理の後の工程でアニール処理が施される。
【0026】
また例えば請求項16に規定するように、前記薄膜の下地膜は、SiO 膜とSiOF膜とSiC膜とSiN膜とSiOC膜とSiCOH膜とSiCN膜とポーラスシリカ膜とポーラスメチルシルセスキオキサン膜とポリアリレン膜とSiLK(登録商標)膜とフロロカーボン膜とよりなる群から選択される1つ以上の膜よりなる。
また例えば請求項17に規定するように、前記遷移金属含有原料は、有機金属材料、或いは金属錯体材料よりなる。
【0027】
また例えば請求項18に規定するように、前記遷移金属はマンガン(Mn)よりなり、該マンガンを含む有機金属材料は、Cp Mn[=Mn(C ]、(MeCp) Mn[=Mn(CH ]、(EtCp) Mn[=Mn(C ]、(i−PrCp) Mn[=Mn(C ]、MeCpMn(CO) [=(CH)Mn(CO) ]、(t−BuCp) Mn[=Mn(C ]、CH Mn(CO) 、Mn(DPM) [=Mn(C1119 ]、Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11 )]、Mn(acac) [=Mn(C ]、Mn(DPM)[=Mn(C1119]、Mn(acac)[=Mn(C]、Mn(hfac)[=Mn(CHF]、((CHCp)Mn[=Mn((CH]よりなる群から選択される1以上の材料である 。
【0028】
また例えば請求項19に規定するように、前記マンガンを含む遷移金属含有原料ガスの供給量M1と前記酸素含有ガスの供給量M2との比M1/M2は0.001〜50の範囲内である。
また例えば請求項20に規定するように、前記熱処理ではプラズマが併用される。
また請求項21に規定するように、前記原料ガスと前記酸素含有ガスとは、前記処理容器内で初めて混合される。
また請求項22に規定するように、前記酸素含有ガスは、H O(水蒸気)、N O、NO 、NO、O 、O 、H 、CO、CO 、アルコール類よりなる群より選択される1以上の材料よりなる。
【0029】
請求項23に係る発明は、被処理体の表面に、熱処理によって遷移金属を含む薄膜を形成する成膜装置において、真空引き可能になされた処理容器と、前記処理容器内に設けられて前記被処理体を載置するための載置台構造と、前記被処理体を加熱する加熱手段と、前記処理容器内へガスを導入するガス導入手段と、前記ガス導入手段へ原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、前記ガス導入手段へ酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段と、を備えたことを特徴とする成膜装置である。
【0030】
この場合、例えば請求項24に規定するように、前記原料ガスは、遷移金属を含む遷移金属含有原料ガスとを含む。
また例えば請求項25に規定するように、前記原料ガスは、遷移金属を含む遷移金属含有原料ガスと銅を含む銅含有原料ガスとを有する。
また例えば請求項26に規定するように、前記原料ガスと前記酸素含有ガスとは、前記処理容器内で初めて混合される。
また例えば請求項27に規定するように、前記酸素含有ガスは、H O(水蒸気)、N O、NO 、NO、O 、O 、H 、CO、CO 、アルコール類よりなる群より選択される1以上の材料よりなる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明に係る成膜方法及び成膜装置によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
真空引き可能になされた処理容器内で、遷移金属を含む遷移金属含有原料ガスと酸素含有ガスとにより被処理体の表面に、熱処理により薄膜を形成するようにしたので、インキュベーション時間を短縮しつつ成膜レートを高く維持して、微細な凹部でも、高いステップカバレッジで埋め込むことができ、しかも、同一の処理装置で連続的な処理を行うようにして装置コストを大幅に低減化することができる。
【0032】
また、真空引き可能になされた処理容器内で、遷移金属を含む遷移金属含有原料ガスと銅を含む銅含有原料ガスと酸素含有ガスとにより被処理体の表面に、熱処理により薄膜を形成するようにしたので、インキュベーション時間を短縮しつつ成膜レートを高く維持して、微細な凹部でも、高いステップカバレッジで埋め込むことができ、しかも、同一の処理装置で連続的な処理を行うようにして装置コストを大幅に低減化することができる。
【0033】
特に、請求項11に係る発明によれば、同一の装置内で、すなわちin−situで連続処理を行うことができるので、装置コストを大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に、本発明に係る成膜方法と成膜装置の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
<第1実施例>
図1は本発明に係る成膜装置の第1実施例の一例を示す構成図である。この第1実施例では遷移金属を含む膜としてMn含有膜を成膜するものである。尚、これより説明する各実施例において、酸素含有ガスとして水蒸気(H O)を用いた場合を例にとって説明する。図示するように本発明に係る成膜装置12は、例えば断面の内部が略円形状になされたアルミニウム製の処理容器14を有している。この処理容器14内の天井部には必要な処理ガス、例えば成膜ガス等を導入するためにガス導入手段であるシャワーヘッド部16が設けられており、この下面のガス噴射面18に設けた多数のガス噴射孔20A、20Bから処理空間Sに向けて処理ガスを噴射するようになっている。
【0035】
このシャワーヘッド部16内には、中空状の2つに区画されたガス拡散室22A、22Bが形成されており、ここに導入された処理ガスを平面方向へ拡散した後、各ガス拡散室22A、22Bにそれぞれ連通された各ガス噴射孔20A、20Bより吹き出すようになっている。すなわち、ガス噴射孔20A、20Bはマトリクス状に配置されており、各ガスの噴射孔20A、20Bより噴射された各ガスを処理空間Sで混合するようになっている。
【0036】
尚、このようなガス供給形態をポストミックスと称す。このシャワーヘッド部16の全体は、例えばニッケルやハステロイ(登録商標)等のニッケル合金、アルミニウム、或いはアルミニウム合金により形成されている。尚、後述するALD法で成膜を行う場合には、シャワーヘッド部16としてガス拡散室が1つの場合でもよい。そして、このシャワーヘッド部16と処理容器14の上端開口部との接合部には、例えばOリング等よりなるシール部材24が介在されており、処理容器14内の気密性を維持するようになっている。
【0037】
また、処理容器14の側壁には、この処理容器14内に対して被処理体としての半導体ウエハWを搬入搬出するための搬出入口26が設けられると共に、この搬出入口26には気密に開閉可能になされたゲートバルブ28が設けられている。
【0038】
そして、この処理容器14の底部30に排気空間32が形成されている。具体的には、この容器底部30の中央部には大きな開口34が形成されており、この開口34に、その下方へ延びる有底円筒体状の円筒区画壁36を連結してその内部に上記排気空間32を形成している。そして、この排気空間32を区画する円筒区画壁36の底部38には、これより起立させて載置台構造40が設けられている。この載置台構造40は、上記底部38から起立された円筒体状の支柱42と、この支柱42の上端部に固定されて上面に被処理体である半導体ウエハWを載置する載置台44とにより主に構成されている。
【0039】
また、上記載置台44は、例えばセラミック材や石英ガラスよりなり、この載置台44内には、加熱手段として通電により熱を発生する例えばカーボンワイヤヒータ等よりなる抵抗加熱ヒータ46が収容されて、この載置台44の上面に載置された半導体ウエハWを加熱し得るようになっている。
【0040】
上記載置台44には、この上下方向に貫通して複数、例えば3本のピン挿通孔48が形成されており(図1においては2つのみ示す)、上記各ピン挿通孔48に上下移動可能に遊嵌状態で挿通させた押し上げピン50を配置している。この押し上げピン50の下端には、円形リング形状に形成された例えばアルミナのようなセラミックス製の押し上げリング52が配置されており、この押し上げリング52に、上記各押し上げピン50の下端を固定されない状態にて支持させている。この押し上げリング52から延びるアーム部54は、容器底部30を貫通して設けられる出没ロッド56に連結されており、この出没ロッド56はアクチュエータ58により昇降可能になされている。
【0041】
これにより、上記各押し上げピン50をウエハWの受け渡し時に各ピン挿通孔48の上端から上方へ出没させるようになっている。また、アクチュエータ58の出没ロッド56の容器底部の貫通部には、伸縮可能なベローズ60が介設されており、上記出没ロッド56が処理容器14内の気密性を維持しつつ昇降できるようになっている。
【0042】
そして、上記排気空間32の入口側の開口34は、載置台44の直径よりも小さく設定されており、上記載置台44の周縁部の外側を流下する処理ガスが載置台44の下方に回り込んで開口34へ流入するようになっている。そして、上記円筒区画壁36の下部側壁には、この排気空間32に臨ませて排気口62が形成されており、この排気口62には、真空排気系64が接続される。この真空排気系64は、上記排気口62に接続された排気通路66を有し、この排気通路66には、圧力調整弁68や真空ポンプ70や除害装置(図示せず)等が順次介設され、上記処理容器14内及び排気空間32の雰囲気を圧力制御しつつ真空引きして排気できるようになっている。
【0043】
そして、上記シャワーヘッド部16には、これに所定のガスを供給するために、原料ガスを供給する原料ガス供給手段72と酸素含有ガスとして例えば水蒸気(H O)を供給するための酸素含有ガス供給手段74とが接続されている。具体的には、上記原料ガス供給手段72は、上記2つのガス拡散室の内の一方のガス拡散室22Aのガス入口76に接続された原料ガス流路78を有している。この原料ガス流路78は、途中に開閉弁82及びマスフローコントローラのような流量制御器84を順次介設して第1の原料を収容する第1の原料源86に接続されている。
【0044】
この第1の原料としては、遷移金属を含む遷移金属含有原料が用いられ、例えば流量制御されたArガス等の不活性ガスでバブリングすることにより、上記原料をガス化して遷移金属含有原料ガスを不活性ガスに随伴させて供給できるようになっている。ここで、上記原料の蒸気圧が低い場合には、原料の蒸気圧を上げるために上記第1の原料源86は図示しないヒータ等で加熱される。上記遷移金属含有原料としては、例えばマンガンを含む(MeCp) Mn(プリカーサ)を用いることができる。
【0045】
尚、上記バブリング用の上記不活性ガスとしてArガスに代えて、He、Ne等の希ガスやNも用いることができる。
そして、上記原料ガス流路78、これに介設される開閉弁82、流量制御器84には、原料ガスが再液化することを防止するためにテープヒータ96が巻回され、これらを加熱するようになっている。尚、使用する原料に応じて原料ガス供給手段を複数設置してもよいのは勿論である。
【0046】
また上記酸素含有ガス供給手段74は、他方のガス拡散室22Bのガス入口98に接続されたガス流路100を有している。このガス流路100は、途中に開閉弁102及びマスフローコントローラのような流量制御器104を順次介設して水蒸気を発生する水蒸気源106に接続されている。この水蒸気源106は、例えば貯水タンクよりなり、この貯水タンクを例えば温調器103により、例えば40℃程度に維持し、蒸発により水蒸気を発生させるようになっている。そして、上記ガス流路100、これに介設される開閉弁102、流量制御器104には、水蒸気が再液化することを防止するためのテープヒータ105が巻回され、これらを加熱するようになっている。
【0047】
ここで原料ガスはシャワーヘッド部16の上方に位置するガス拡散室22Aに導入され、酸素含有ガス(水蒸気)は下方に位置するガス拡散室22Bに導入されている。これはシャワーヘッド部16は載置台44と対向し近接していることから、ガス噴射面18の温度が上昇する傾向にあり、このため原料ガスを下方のガス拡散室22Bに導入すると、ガスが分解する恐れがあるためである。
【0048】
また図示されないが、パージ用の不活性ガス供給手段が上記シャワーヘッド部16に接続されており、必要に応じてパージガスを供給するようになっている。このパージ用ガスとしては、N ガス、Arガス、Heガス、Neガス等の不活性ガスを用いることができる。また水蒸気を流す上記ガス流路100には、還元ガスを流すガス流路120が接続されており、このガス流路120に介設した開閉弁122により必要に応じて流量制御された還元ガス、例えばH ガスを流すようになっている。
【0049】
そして、このような装置全体の動作を制御するために、例えばコンピュータ等よりなる制御手段108を有しており、上記各ガスの供給の開始と停止の制御、供給量の制御、処理容器14内の圧力制御、ウエハWの温度制御等を行うようになっている。そして、上記制御手段108は、上記した制御を行うためのコンピュータプログラムを記憶するための記憶媒体110を有している。上記記憶媒体110としては、例えばフレキシブルディスク、フラッシュメモリ、ハードディスク、CD(Compact Disc)等を用いることができる。
【0050】
<第2実施例>
次に本発明装置の第2実施例について説明する。図2は本発明に係る成膜装置の第2実施例の一例を示す構成図である。この第2実施例では遷移金属を含む膜としてCuMn含有合金膜を成膜するものであるが、ここで用いるCu含有原料ガスを用いなければMn含有膜も形成することができる。尚、図1に示す構成部品と同一構成部品については同一参照符号を付して、その説明を省略する。
【0051】
ここでは遷移金属含有原料ガスを流す原料ガス流路78を途中で2つに分岐させて分岐路88を形成している。上記分岐路88は、途中に開閉弁90及びマスフローコントローラのような流量制御器92を順次介設して第2の原料を収容する第2の原料源94に接続されている。この第2の原料としては銅を含む銅含有原料が用いられ、例えば流量制御されたArガス等の不活性ガスでバブリングすることにより、上記原料をガス化して銅含有原料ガスを不活性ガスに随伴させて供給できるようになっている。ここで、上記原料の蒸気圧が低い場合には、原料の蒸気圧を上げるために上記第2の原料源94は図示しないヒータ等で加熱される。上記銅含有原料としては、例えばCuを含むCu(hfac)TMVS、Cu(hfac)、Cu(dibm)等(プリカーサ)を用いることができる 。また原料ガスの供給は、バブリング方式のみならず、液体原料気化方式や溶液原料気化方式を用いてもよい。ここで液体原料気化方式とは、室温で液体である原料を気化器で気化させる方式を指し、溶液原料気化方式とは、室温で固体または液体である原料を溶媒に溶かして液体とし、その溶液を気化器で気化させる方式を指す。このような方式は、Cu原料ガスの供給だけでなく、Mn原料ガスの供給にも適用することができる。
【0052】
そして、上記分岐路88、これに介設される開閉弁90、流量制御器92には、原料ガスが再液化することを防止するためのテープヒータ111が巻回されており、これらを加熱するようになっている。従って、この第2実施例の場合には、Mn含有原料ガスとCu含有原料ガスとが途中で混合されて供給されることになる。尚、Cu含有原料ガスとMn含有原料ガスは途中で合流させずに、それぞれ単独のガス流路によりシャワーヘッド部16に供給してもよい。
【0053】
次に、以上のように構成された成膜装置の動作について説明する。
ここでは図1に示す第1実施例の成膜装置12と、図2に示す第2実施例の成膜装置150を共通に説明する。まず、未処理の半導体ウエハWは、図示しない搬送アームに保持されて開状態となったゲートバルブ28、搬出入口26を介して処理容器14内へ搬入され、このウエハWは、上昇された押し上げピン50に受け渡された後に、この押し上げピン50を降下させることにより、ウエハWを載置台44の上面に載置してこれを支持する。
【0054】
次に、原料ガス供給手段72や酸素含有ガス供給手段74を動作させて、シャワーヘッド部16へ処理ガスとして成膜ガス等の所定の各ガスをそれぞれ流量制御しつつ供給して、このガスをガス噴射孔20A、20Bより噴射し、処理空間Sへ導入する。この各ガスの供給態様については後述するように種々存在する。ここで図1に示す第1実施例の場合には、Mn含有原料ガスと水蒸気とが供給され、図2に示す第2実施例の場合には、Mn含有原料ガスとCu含有原料ガスと水蒸気とが供給される。
【0055】
そして真空排気系64に設けた真空ポンプ70の駆動を継続することにより、処理容器14内や排気空間32内の雰囲気を真空引きし、そして、圧力調整弁68の弁開度を調整して処理空間Sの雰囲気を所定のプロセス圧力に維持する。この時、ウエハWの温度は、載置台44内に設けた抵抗加熱ヒータ46により加熱されて所定のプロセス温度に維持されている。これにより、半導体ウエハWの表面に所望の薄膜が形成されることになる。この場合、図1に示す第1実施例の場合にはMn含有膜が形成され、図2に示す第2実施例の場合にはCuMn含有膜、或いはMn含有膜が形成されることになる。尚、ここで成膜されるCuMn含有合金膜は、CuMn、(Cu+MnO)、CuMnxOyのいずれか、或いはこれらの混合物であると考えられる。
【0056】
<方法発明の第1及び第2実施例>
次に、図3乃至図6も参照して本発明方法による成膜方法を具体的に説明する。
図3は半導体ウエハの凹部を中心とした各工程における薄膜の堆積状況を示す図、図4は本発明の成膜方法の第1及び第2実施例の一部の各工程を示すフローチャートであり、図4(A)はMn含有膜を形成する方法発明の第1実施例の場合を示し、図4(B)はCuMn含有合金膜を形成する方法発明の第2実施例の場合を示す。図5はMn含有膜よりなるシード膜を形成する時のCVD法とALD法による各ガスの供給状態を説明するタイミングチャート、図6はCuMn含有合金膜よりなるシード膜を形成する時のCVD法とALD法による各ガスの供給状態を説明するタイミングチャートである。
【0057】
本発明方法の目的の1つは、各成膜処理及びアニール処理を1つの成膜装置内(in−situ)で連続的に行うことである。例えば上記成膜装置12内へウエハWが搬入される時には、図3(A)に示すように、ウエハWに形成された、例えば層間絶縁膜などの絶縁層1の表面には、トレンチやホールのような凹部2が形成されており、この凹部2の底部に銅等よりなる下層の配線層3が露出している。
【0058】
具体的には、この凹部2は、細長く形成された断面凹状の溝(トレンチ)2Aと、この溝2Aの底部の一部に形成されたホール2Bとよりなり、このホール2Bがコンタクトホールやスルーホールとなる。そして、このホール2Bの底部に上記配線層3が露出しており、下層の配線層やトランジスタ等の素子と電気的な接続を行うようになっている。なお下層の配線層やトランジスタ等の素子については図示を省略している。
下地膜となる上記絶縁層1は、シリコンを含む酸化物、窒化物などからなり、例えばSiO よりなる。
【0059】
さて、本発明方法では、このような状態の半導体ウエハWの表面に、まず図3(B)に示すようにシード膜形成工程でシード膜6を形成する。この場合、上記シード膜6は、Mn含有膜(図4(A)のS1)であってもよいし、CuMn含有合金膜(図4(B)のS1−1)であってもよい。また、このシード膜6の形成は、CVD法でもよいし、ALD法でもよい。ここで、ALD法とは、異なる成膜用ガスを交互に供給して原子レベル、或いは分子レベルの薄膜を1層ずつ繰り返し形成する成膜方法をいう。
【0060】
次に、図3(C)に示すように、埋め込み工程で金属膜としてCu膜8を形成して上記凹部2内を埋め込む(図4(A)のS2及び図4(B)のS2)。この埋め込み工程はCVD法でもよいし、ALD法でもよいし、更には従来方法と同様にPVD法(スパッタや蒸着)やメッキ法を用いてもよい。更に、必要な場合には、バリヤ膜の形成を確実にするために、所定の濃度に調整された酸素(O)含有ガスの雰囲気中でウエハWを高温に晒してアニール処理を行って、図3(D)に示すようにシード膜6と、この下地層であるSiO 膜よりなる絶縁層1との境界部分で自己整合的に反応させてMnSixOy(x、y:任意の正数)膜或いはMnOx(xは任意の正数)膜よりなるバリヤ層112を確実に形成する(図4(A)のS3及び図4(B)のS3)。尚、このアニール処理は、高温処理を伴う前工程ですでにバリヤ層112が形成されている場合には行わなくてもよいが、バリヤ層112を十分に形成するためには、上記したように所定の濃度に調整された酸素含有ガス雰囲気中でこのアニール処理を行うのが好ましい。
【0061】
ここで各工程について詳しく説明する。
まず、シード膜6としてMn含有膜(図4(A)のS1)を形成する場合(図1に示す成膜装置を使用)には、2種類の成膜方法がある。その1つ目の成膜方法は、図5(A)に示すようにMn含有原料ガスと水蒸気とを同時に流し、CVD法によりMn含有膜を形成する方法である。このCVD法の場合、必要に応じて水蒸気の供給のタイミングと供給停止のタイミングを、上記Mn含有原料ガスの対応するタイミングに対してそれぞれ前後に相対的に移動させるようにしてもよい。
【0062】
この時のプロセス条件は、プロセス温度(ウエハ温度「以下同じ」)が70〜450℃、プロセス圧力が1Pa〜13kPa程度である。またMn含有原料ガスの流量は特に制限はないが、成膜速度等を考慮すると0.1〜10sccm程度、水蒸気の流量は特に制限はないが成膜速度等を考慮すると0.05〜20sccm程度である。
【0063】
ここでCVD法による場合には、Mn含有原料ガスの供給量をM1sccmとし、水蒸気の供給量をM2sccmとした場合、成膜速度や原料ガスの効率的使用を考慮すると、両者の供給量の比(M1/M2)は、0.001≦M1/M2≦50の範囲となるように設定し、好ましくは0.01≦M1/M2≦5、より好ましくは0.5≦M1/M2≦2の範囲となるように設定するのがよい。
【0064】
2つ目の成膜方法は、図5(B)に示すようにALD法を採用し、Mn含有原料ガスと水蒸気とを交互に間欠的に繰り返し流す。上記Mn含有原料ガスと水蒸気との間の間欠期間T1はパージ期間であり、処理容器14内の残留ガスを真空引きだけで排除するようにしてもよいし、N ガス等の不活性ガスを導入しつつ真空引きして排除するようにしてもよい。このパージの方法は、以下に説明する方法でも同様に適用される。
【0065】
このALD法では、例えばあるMn含有原料ガスの供給から次のMn含有原料ガスの供給までの間が1サイクルとなり、これで一層の非常に薄い、例えば0.2〜0.3nm程度のMn含有膜が形成される。ここで必要なシード膜6の厚さは例えば2nm程度であり、上記成膜処理を、例えば10サイクル程度行うことになる。すなわち、ALD法による成膜を行えば、膜厚の制御性を高くすることができCVD法に比べてより薄い膜を制御性よく成膜することが可能である。
【0066】
この時のプロセス条件は、上記CVD処理の場合と同じであり、プロセス温度が70〜450℃程度、プロセス圧力が1Pa〜13kPa程度である。また、Mn含有原料ガスの流量は0.1〜10sccm程度であり、水蒸気の流量は0.05〜20sccm程度である。
【0067】
更に、Mn含有原料ガスの供給期間t1は10〜15sec程度、水蒸気の供給期間t2は10sec程度、間欠期間T1は20〜120sec程度である。このようなALD法による成膜は、CVD法による成膜よりも、微細な凹部の内壁にも十分に膜が付着することになるので、ステップカバレッジを更に向上させることができ、特に、凹部の寸法がより微細になる程、このALD法は有効である。
【0068】
次にシード膜としてCuMn含有合金膜(図4(B)のS1−1)を形成する場合(図2に示す成膜装置を使用)について説明する。この場合には、3種類の成膜方法があり、その1つ目の成膜方法は、図6(A)に示すように、Cu含有原料ガスとMn含有原料ガスと水蒸気とを全て同時に流し、CVD法によりCuMn含有合金膜を形成する方法である。
【0069】
2つ目の成膜方法は、図6(B)に示すようにALD法を採用し、Cu含有原料ガスとMn含有原料ガスとを同期させて供給し、且つこれらの両ガスと水蒸気とを交互に間欠的に繰り返し流す。上記両ガスと水蒸気との間の間欠期間T5はパージ期間であり、処理容器14内の残留ガスを真空引きだけで排除するようにしてもよいし、N ガス等の不活性ガスを導入しつつ真空引きして排除するようにしてもよい。このパージの方法は、以下に説明する方法でも同様に適用される。
【0070】
このALD法では、例えばあるMn含有原料ガスの供給から次のMn含有原料ガスの供給までの間が1サイクルとなり、これで一層の非常に薄い、例えば0.4〜0.6nm程度のCuMn含有合金膜が形成される。ここで必要なシード膜6の厚さはCuMn含有合金膜中のMn純金属の膜厚に換算して例えば0.5〜2nm程度であり、上記成膜処理を、例えば10〜100サイクル程度行うことになる。すなわち、ALD法による成膜を行えば、膜厚の制御性を高くすることができCVD法に比べてより薄い膜を制御性よく成膜することが可能である。
【0071】
この時のプロセス条件は(上記CVD処理の場合も含む)、プロセス温度が70〜450℃程度、プロセス圧力が1Pa〜13kPa程度である。また、Mn含有原料ガスの流量は0.1〜10sccm程度、Cu含有原料ガスの流量は1〜100sccm程度であり、いずれにしても、Mnに対してCuが10倍程度多くなるようにして、CuMn含有合金膜の成分がCuリッチの状態とする。また水蒸気の流量は0.05〜20sccm程度である。ただし、CuはSiO 等の絶縁膜に対する密着性が弱いため、成膜の初期においてはCu含有原料ガスに対するMn含有原料ガスの流量比率を高め、得られる合金膜の成分がMnリッチになるようにしてもよい。
【0072】
更に、Mn含有原料ガスの供給期間t5は10〜15sec程度、Cu含有原料ガスの供給期間t6は10〜50sec程度、水蒸気の供給期間t7は10sec程度、間欠期間T5は20〜120sec程度である。ここで上述のように、CuはSiO 等の絶縁膜に対して密着性が弱いため、成膜の初期においてはCu含有原料ガスの供給期間t6に対するMn含有原料ガスの供給期間t5を長め、例えば15sec(図6(B)中で点線121で示す)にしておいてもよい。すなわちMn含有原料ガスとCu含有原料ガスの供給比率を、成膜時間の推移にともない、あるいは堆積膜厚に応じて順次変更するようにプロセスレシピを組むことができる。これによりCuMn含有合金膜中の成分をMnリッチな状態からCuリッチな状態に次第に変化させることも可能である。これにより絶縁層1とシード膜6、Cu膜8とシード膜6の間の密着性を高くすることができ、成膜中の膜剥がれ等を防止することができる。
【0073】
図6(B)に示す場合には、Mn含有原料ガスとCu含有原料ガスとを同期させて同時に給排するようにしたが、3つ目の成膜方法は、図6(C)に示すようなALD法であり、上記両ガスを互いに間欠期間を挟んで交互に繰り返し供給すると共に、上記間欠期間の時に、水蒸気を供給する。この場合には、1サイクルの期間が上記図6(B)に示す場合よりも2倍に長くなる。そして、膜厚が0.2〜0.3nm程度の非常に薄いMn含有膜と膜厚が0.2〜0.3nm程度の非常に薄いCu含有膜とが交互に積層されたシード膜6となる。このとき図6(C)に示すように、最初のステップではシード膜6と絶縁層1との間の密着性及びバリヤ性(Cuの絶縁層1への拡散)を考慮して、Cu含有原料ガスの供給に先立って、Mn含有原料ガスが供給されるようにステップを組むことが望ましい。尚、両膜は共に非常に薄いのでMnとCuが互いに拡散して合金状態となる。
【0074】
このようなALD法による成膜は、CVD法による成膜よりも、微細な凹部の内壁にも十分に膜が付着することになるので、ステップカバレッジを更に向上させることができ、特に、凹部の寸法がより微細になる程、このALD法は有効である。以上のようにして、図4(A)に示すシード膜形成工程S1、或いは図4(B)に示すシード膜形成工程S1−1が完了することになる。
【0075】
次に、図4(A)及び図4(B)のS2に示す金属膜8(図3(C)参照)としてCu膜を形成する場合には、図1に示す成膜装置を用いて成膜処理した時はCu含有原料ガスの供給系を有していないので、ウエハを図2に示す成膜装置へ移載し、図2に示す成膜装置を用いて成膜処理した時はウエハを移載しないで同じ成膜装置を用いる。そして、Cu含有原料ガスと還元ガスとしてのH ガスとを同時に流し、CVD法によりCu膜よりなる金属膜8を形成するようにしてもよいし、Cu含有原料ガスとH ガスとを、図6(B)及び図6(C)に示したと同様に交互に繰り返し流すようにしてもよい。あるいはHガスは流さずに、 単なる熱分解反応によりCu膜よりなる金属膜8を形成してもよい。
【0076】
この時のプロセス条件は(CVD処理の場合も含む)、プロセス温度が70〜450℃程度、プロセス圧力が1Pa〜13kPa程度である。またCu含有原料ガスの流量は1〜100sccm程度、H ガスの流量は5〜500sccm程度である。
また、上記CVD法やALD法に代えて、従来方法であるPVD法(スパッタや蒸着)やメッキ法を用いて、上記Cu膜よりなる金属膜8を形成して埋め込みを行うようにしてもよい。
【0077】
特に、CVD法やALD法の場合には、メッキ法よりも微細な凹部の内壁に薄膜が堆積し易くなるので、凹部が更に微細化しても、内部にボイド等を生ぜしめることなく凹部の埋め込みを行うことができる。
次に、図4(A)及び図4(B)のS3に示すアニール処理(図3(D)参照)を行う場合には、上記埋め込み処理が完了したウエハWを、前述したように所定の濃度の酸素含有ガスの雰囲気中で所定のプロセス温度、例えば100〜450℃程度に加熱し、これにより、シード膜6と下地膜となるSiO 膜よりなる絶縁層1との境界部分に、自己整合的にMnSixOy膜よりなるバリヤ層112を確実に形成する。なおアニール処理時には、上述したように処理容器内に酸素等(酸素供給手段は図示せず)を供給する際に、酸素分圧を例えば10ppb程度にコントロール可能な構成としてもよい。
【0078】
このアニール処理は、上記バリヤ層112を確実に形成することを目的としており、従って、前工程であるシード膜形成工程やCu膜形成工程が、酸素(O)を含む雰囲気中で、かつバリヤ層の自己形成にとって十分に高い温度、例えば100〜150℃以上の高温のプロセス温度で行われていれば、上記バリヤ層112はすでに十分な厚さで形成された状態となっているので、上記アニール処理を不要とすることができる。尚、図4(A)或いは図4(B)のS2でメッキ処理を行った場合には、上記アニール処理を行うのは勿論である。ここで図2に示す成膜装置150を用いた場合には、上記シード膜形成工程、CVD法やALD法によるCu膜形成工程及びアニール処理は全て同一の処理装置150内で連続的に行うことができる。
【0079】
このように、真空引き可能になされた図2に示す成膜装置内で、遷移金属であるマンガンを含むMn含有原料ガスと酸素含有ガス(水蒸気)とによりウエハWの表面に、熱処理により薄膜を形成するようにしたので、インキュベーション時間を短縮しつつ高い成膜レートを維持して、微細な凹部2でも、高いステップカバレッジで埋め込むことができ、しかも、同一の処理装置12で連続的な処理を行うようにして装置コストを大幅に低減化することができる。
【0080】
また従来必要とされたTa膜やTaN膜等よりなるバリヤ層を形成する工程が不要となり、その分、スループットを向上させることができる。
【0081】
また、シード膜6としてCuMn含有合金膜を用いた場合(図4(B)の場合)には、埋め込み材料であるCuが一部に含まれるので、この上層の金属膜8との密着性を特に高めることができる。
【0082】
<Mn含有膜に対する評価>
次に図1に示す成膜装置を用いて図4(A)のステップS1で説明したような成膜方法でMn含有膜を形成する実験を行ったので、そのMn含有膜の評価について図7及び図8を参照して説明する。ここでは図5(A)で示したCVD法によりMn含有膜を成膜した。図7はH O流量のMn含有膜の成膜速度に対する依存性を示すグラフであり、成膜速度を測定するための膜厚測定にはXRF(蛍光X線分析)を用いた。図8はMn含有膜の成膜に対するH Oの影響を調べるためのX線回折グラフである。
【0083】
図7においては、横軸にH O流量をとり、縦軸に成膜速度をとっており、ここではH O流量を0〜20sccmの範囲で変化させている。尚、図7(B)は図7(A)中の点線で示すA部の拡大図である。
【0084】
Mn含有膜成膜時のプロセス条件は以下の通りである。
Mn含有原料((EtCp) Mn):2.2sccm
バブリングAr:25sccm
ウエハ温度:100℃
プロセス圧力:133Pa
O:0〜20sccm
成膜時間:30min
【0085】
尚、Mn含有原料ガスの流量2.2sccmは、原料ボトルの内部温度(76.0℃)と原料ボトルの内部圧力(4.5torr)とMn含有原料ガスの分圧(0.37Torr)とバブリングArガス流量とから、気体の状態方程式を用いて求めた。
図7に示すように成膜速度はH O流量の増加に伴って最初のうちは比例して増加するが、H O流量が4.5sccm程度に達すると成膜速度は90nm/min程度になって飽和し、その後はこの値が維持されている。
【0086】
以上の結果から、飽和点より右側の領域(H O流量が4.5sccm以上の領域)ではMn含有原料ガスの供給量が不足状態であるため、Mn含有原料ガスの供給量を増加すれば成膜速度が上昇する。
【0087】
これに対して、上記飽和点より左側の領域では、H Oの供給量が不足状態であるため、H Oの供給量を増加すれば成膜速度が上昇する。従って、成膜速度を制御するためにはH Oの供給量またはMn含有原料ガスの供給量を制御すればよいことが判る。
【0088】
そして、上記飽和点におけるMn含有原料ガスの供給量は2.2sccm程度、H Oの供給量は4.5sccm程度なので、両者の反応比率は1:2であることが推測される。従って、この反応比率を中心にして考えると、Mn含有原料ガスの供給量をM1とし、H Oの供給量をM2とすると、両者の比M1/M2は以下の範囲内になるのが望ましい。
0.001≦M1/M2≦50
【0089】
また望ましいのは0.01≦M1/M2≦5であり、特に望ましいのは0.5≦M1/M2≦2である。
上記のように”M1/M2”が0.5〜2の範囲内であれば、Mn含有原料ガスは常に過剰気味に供給されることになるので、供給量の精度の高い制御が難しいMn含有原料ガスの供給量が不安定になっても、供給量の精度の高い制御が簡単なH Oの供給量の安定的な制御を行えば、成膜速度を安定してコントロールすることができる。
【0090】
また、この領域ではH Oの供給量を制御することで、成膜速度の増減も精度良くコントロールすることができる。尚、上記比”M1/M2”が2を超えて大きくなるほど、反応に関与しないで廃棄されるMn含有原料ガスが多くなって、コスト高となる傾向がある。
【0091】
また図7で説明したプロセス条件でMn含有膜を30分間成膜した時、HO 供給量を0sccmに設定し単に熱分解反応により成膜されたMn膜の厚みは0.3nmであったものが、HO供給量を10sccmに設定し成膜されたMn含有膜の厚みは2800nmであり、実にその成膜レートは9300倍にも達した。図8は図7で説明したプロセス条件でMn含有膜を成膜した時のMn含有膜をX線回折測定した時のグラフであり、横軸はX線回折角度を示し、縦軸はX線回折強度を示している。図8(A)はH Oの供給量を0sccmに設定した時を示し、図8(B)はH Oの供給量を10sccmに設定した時を示す。図中、ピークP1、P2は基板(ウエハW)のSi単結晶を示し、ピークP3はMnO(200)の結晶を示す。ここではMn含有膜の成膜直後に(図4(A)のS1完了後)、上記X線強度を測定している。
【0092】
図8(A)に示すようにH Oの供給量がゼロの場合には、シリコンのピークP1しか表れず、MnO結晶がほとんど形成されていない(0.3nm)のに対し、H Oを供給した場合には図8(B)に示すようにシリコンのピークP2の他に強度の大きなピークP3が表われて非常に多くのMnO結晶が形成されているのが判る。さらにインキュベーション時間(原料を流し始めてから、実際に膜が堆積し始めるまでの時間)も、HOの供給量を0sccmに設定した場合に比べ、10分から1分以下へと大幅に短縮される。これにより、Mn含有膜の成膜のためにH Oが非常に大きく寄与していることを理解することができる。このようにして得られたMnO膜は、Cu膜よりも抵抗値が大きなシード膜6として下層のCu配線層3に接続されることになる。しかしこのシード膜は従来のスパッタリングによるバリヤ膜に比べて非常に薄いので、この部分のコンタクト抵抗の上昇は僅かであり、Cuのバリヤ膜としての機能は十分に持っている。またこのシード膜6のホール2Bの底部は、後述するようにパンチスルー処理において除去することも可能である。
【0093】
尚、上記方法発明の第1及び第2実施例では、図4(A)及び図4(B)に示す各フローチャートにおいて、各ステップS3のアニール処理は、バリヤ層112の形成を十分ならしめるためにできるだけ行った方がよい、としたが、その後の詳細な実験の結果、図4(A)及び図4(B)に示す各ステップS3のアニール処理を酸素雰囲気中で行わなくても、十分にバリヤ機能を発揮するバリヤ層112を形成できることが判った。
【0094】
すなわち、図4(A)及び図4(B)に示すステップS1(Mn含有原料ガスと水蒸気による成膜処理)或いはステップS1−1(Mn含有原料ガスとCu含有原料ガスと水蒸気による成膜処理)を行い加熱するだけで、酸素雰囲気中でのアニール処理を施さなくともバリヤ層であるMnOx(x:任意の正数)やMnSixOy(x、y:任意の正数)が十分に形成されているものと思われる。
【0095】
ここで酸素雰囲気中でのアニール処理をしなくとも上記MnOxやMnSixOyが形成されたと思われる実験結果を例にとって説明する。図9は実験に用いたシリコン基板上の積層構造を示す断面図、図10は実験で形成した積層構造の深さ方向の元素プロファイルを示すグラフである。
【0096】
図9に示すように、この実験では、シリコン基板W上にTEOS(テトラエチルオルソシリケート)を用いて絶縁膜としてSiO 膜130を形成し、更に、この上に図4(A)のステップS1(Mn含有原料ガスと水蒸気による成膜)の方法を用いてCVDによりシード膜となるMn含有膜132を形成し、この上にCu膜134をスパッタリングにより形成した。
【0097】
Mn含有膜を形成する時のプロセス条件は以下の通りである。
Mn含有原料 :(EtCp) Mn
バブリングガス:Ar 25sccm
基板温度 :100℃
プロセス圧力 :133Pa
O :0.2sccm
原料ボトル温度:70℃
成膜時間 :15min
【0098】
上述のように形成したMn含有膜132上にCu膜134をスパッタリングで形成し、そして、上記Mn含有膜132がバリヤ機能を発揮するか否かを検査するために加熱加速度試験を行い、その後各元素のプロファイルをSIMS(2次イオン質量分析法)を用いて測定した。また測定に際しては、表面側(図9におけるCu膜側)から削るとMn含有膜の成分分析中に上層のCu原子が混入することから、シリコン基板の裏面側から削り取って測定している。この加熱加速度試験の条件は以下の通りであり、酸素を除いたAr雰囲気中で行っている。
【0099】
供給ガス:Ar 50sccm
基板温度:400℃
圧力 :665Pa
加熱時間:40min
【0100】
上記測定結果を示す図10において、横軸に深さ(厚さ)をとっており、左側縦軸にMn濃度、右側縦軸にO、Si、Cuの各2次イオン強度をそれぞれとっている。ここで0〜50nm程度の深さの領域はCu領域を示し、50〜125nm程度の深さの領域はMnOx領域を示し、125nm程度以上の領域はSiO 領域を示している。
【0101】
この図10に示すグラフから明らかなように、Cu原子に着目すると、Cu原子はMn含有膜の途中までは拡散してCu原子が僅かに存在しているが、SiO 領域へはCu原子が拡散しておらず、SiO 領域でのCu原子は略ゼロである。
【0102】
このように、Cu原子拡散の加熱加速度実験を400℃で行ったにもかかわらず、バリヤ層も兼ねるMn含有膜は、酸素雰囲気中でのアニール処理を行わなくてもバリヤ機能を十分に発揮できることを確認することができた。
【0103】
<パンチスルー処理>
ところで、上記方法発明の各実施例において、Mnを含有するシード膜6を形成した場合、ウエハWの上面側(絶縁層1の上面:図3参照)のみならず、凹部2の内面全体にもシード膜6が形成されるが、このシード膜6は電気的には絶縁性を有することから下層の配線層3と接続されるホール2Bの底面に堆積したシード膜6を除去して下層の配線層3とのコンタクト抵抗を低減させるのが望ましい。
【0104】
そこで、Cu膜の埋め込みを行うCu膜形成(図4の各ステップS2)を行う前に、上記ホール2Bの底面上に堆積したシード膜6(薄膜)を除去するパンチスルー処理を行うのがよい。図11は上述したようなパンチスルー処理を行う時の態様を示す断面図である。図11(A)はパンチスルー処理の第1実施例を示す断面図、図11(B)はパンチスルー処理の第2実施例を示す断面図である。
【0105】
図11において、半導体ウエハW側の構造は、図3を参照して説明した場合と同様に構成されており、絶縁層1上にホール2Bと溝2Aとよりなる凹部2が形成されており、ホール2Bの底部に配線層3が露出している。図11(A)に示す場合には、図4中のステップS1、或いはS1−1によりMn含有膜やCuMn含有膜のシード膜6を形成した後に、除去対象箇所以外の表面をレジスト140で覆う。この処理は、レジスト140をウエハ表面の全面に渡って塗布した後に露光及び現像を行うことによりなされ、その結果が図11(A)の右側に示されている。このようにホール2Bを除いた全表面にレジスト140が残され、上記レジスト140をマスクとしてエッチング処理を行って、ホール2Bの底面に堆積していた薄膜であるシード膜6のみを選択的に除去する。このエッチング処理としては、ArスパッタリングによるエッチングやRIE(反応性イオンエッチング)等を用いることができる。
【0106】
この後は、レジスト140を除去した後に、清浄化処理を行う、そして、Cuによる埋め込みであるCu膜形成(図4中のS2)を行う。尚、このCu膜形成処理を行う前に、シード膜形成処理を行って第2のCuシード膜を形成するようにしてもよい。また、図11(B)に示す場合には、図4中のステップS1、或いはS1−1によりMn含有膜やCuMn含有膜のシード膜を形成する際に、後工程のエッチング処理時に削り取られる厚さに見合った厚さだけ更に厚くシード膜6を形成しておく。
【0107】
この場合、微細な直径のホール2B内へは成膜用ガスが入り難いので絶縁層1の上面の膜厚t1及び溝2Aの底面の膜厚t2と比較して、ホール2Bの底面の膜厚t3は非常に薄くなる傾向になって、下記のような関係となる。
t3<t2≦t1
【0108】
また、上記のようにホール2Bの底面の膜厚が、絶縁層1の上面の膜厚に比して非常に薄くなる傾向は、成膜用のガス、ここでは例えばMn含有原料ガスと水蒸気とを多量に流して成膜速度を高めることによってさらに促進させることができる。そして、上述のようにシード膜を形成したならば、ホール2Bの底面を含む表面全面をエッチバックするエッチング処理を行う。この全面エッチバックにより最初にt3=0となり、ホール2Bの底面に堆積していた薄膜であるシード膜6のみを選択的に除去する。このエッチング処理としては、ArスパッタリングによるエッチングやRIE(反応性イオンエッチング)等を用いることができる。
【0109】
この後は、Cuによる埋め込みであるCu膜形成(図4中のS2)を行う。尚、このCu膜形成処理を行う前に、シード膜形成処理を行って第2のCuシード膜を形成するようにしてもよい。
【0110】
尚、上記実施例では、熱CVD及び熱ALDによる成膜方法を例にとって説明したが、これに限定されず、プラズマCVD、プラズマALD、紫外線やレーザ光を用いた光CVD、光ALD等による成膜方法を用いてもよい。
また、上記各実施例ではMn含有膜の成膜のために水蒸気を用いたが、これに加えてH ガスを還元ガスまたはキャリアガスとして用いてもよい。
【0111】
更には、上記各実施例では金属含有膜の成膜ために酸素含有ガスとして水蒸気を用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、上記酸素含有ガスは、H O(水蒸気)、N O、NO 、NO、O 、O 、H 、CO、CO 、アルコール類よりなる群より選択される1以上の材料を用いることができ、上記アルコール類には、メチルアルコールやエチルアルコール等が含まれる。
【0112】
また、上記Mn含有原料を用いた有機金属材料としては、Cp Mn[=Mn(C ]、(MeCp) Mn[=Mn(CH ]、(EtCp) Mn[=Mn(C ]、(i−PrCp) Mn[=Mn(C ]、MeCpMn(CO) [=(CH)Mn(CO) ]、(t−BuCp) Mn[=Mn(C ]、CH Mn(CO) 、Mn(DPM) [=Mn(C1119 ]、Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11 )]、Mn(acac) [=Mn(C ]、Mn(DPM)[=Mn( C1119]、Mn(acac)[=Mn(C]、Mn(hfac)[=Mn(CHF]、((CHCp)Mn[=Mn((CH]よりなる群から選択される1以上の材料を用いることができる。また有機金属材料の他にも、金属錯体材料を用いることができる。
【0113】
また、ここでは下地膜である絶縁層1としてSiO を用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、層間絶縁層として用いられるLow−k(低比誘電率)材料であるSiOC膜、SiCOH膜等を用いるようにしてもよく、具体的には、上記下地膜は、SiO 膜(熱酸化膜とプラズマTEOS膜を含む)とSiOF膜とSiC膜とSiN膜とSiOC膜とSiCOH膜とSiCN膜とポーラスシリカ膜とポーラスメチルシルセスキオキサン膜とポリアリレン膜とSiLK(登録商標)膜とフロロカーボン膜とよりなる群から選択される1つの或いはこれらの積層膜を用いることができる。
更には、ここでは遷移金属としてMnを用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、他の遷移金属、例えばNb、Zr、Cr、V、Y、Pd、Ni、Pt、Rh、Tc、Al、Mg、Sn、Ge、Ti、Reよりなる群から選択される1以上の金属を用いることができる。
【0114】
また、ここで説明した成膜装置は単に一例を示したに過ぎず、例えば加熱手段として抵抗加熱ヒータに代えてハロゲンランプ等の加熱ランプを用いるようにしてもよいし、熱処理装置は枚葉式のみならずバッチ式のものであってもよい。
更には、熱処理による成膜に限定されず、例えばシャワーヘッド部16を上部電極とし、載置台44を下部電極として両電極間に高周波電力を必要に応じて印加してプラズマを立てるようにし、成膜時にプラズマによるアシストを加えるようにしてもよい。
更に、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、これに限定されず、ガラス基板、LCD基板、セラミック基板等にも本発明を適用することができる。
【0115】
本願発明のCVD法、ALD法による金属含有膜によれば、半導体ウエハ上に大小さまざまのトレンチ、ホールが混在していても、全ての凹部に対して十分に薄くて均一な自己整合バリア膜が形成できる。このためCu多層配線において、下層のローカル配線から上層のグローバル配線に亘り本発明の技術を適用することができ、Cu多層配線の微細化が可能となる。これにより得られる効果として、半導体装置(デバイス)の高速化、微細化などにより、小型でありながら高速で信頼性のある電子機器を作ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明に係る成膜装置の第1実施例の一例を示す構成図である。
【図2】本発明に係る成膜装置の第2実施例の一例を示す構成図である。
【図3】半導体ウエハの凹部を中心とした各工程における薄膜の堆積状況を示す図である。
【図4】本発明の成膜方法の第1及び第2実施例の一部の各工程を示すフローチャートである。
【図5】Mn含有膜よりなるシード膜を形成する時のCVD法とALD法による各ガスの供給状態を説明するタイミングチャートである。
【図6】CuMn含有合金膜よりなるシード膜を形成する時のCVD法とALD法による各ガスの供給状態を説明するタイミングチャートである。
【図7】H O流量のMn含有膜の成膜速度に対する依存性を示すグラフである。
【図8】Mn含有膜の成膜に対するH Oの影響を調べるためのX線回折グラフである。
【図9】実験に用いたシリコン基板上の積層構造を示す断面図である。
【図10】実験で形成した積層構造の深さ方向の元素プロファイルを示すグラフである。
【図11】パンチスルー処理を行う時の態様を示す断面図である。
【図12】半導体ウエハの凹部の従来の埋め込み工程を示す図である。
【符号の説明】
【0117】
1 絶縁層
2 凹部
3 配線層
6 シード膜
8 金属膜
12 成膜装置
14 処理容器
16 シャワーヘッド部(ガス導入手段)
40 載置台構造
44 載置台
46 抵抗加熱ヒータ(加熱手段)
64 真空排気系
70 真空ポンプ
72 原料ガス供給手段
74 酸素含有ガス供給手段
78 原料ガス流路
86 第1の原料源
94 第2の原料源
100 ガス流路
108 制御手段
110 記憶媒体
112 バリヤ層
W 半導体ウエハ(被処理体)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空引き可能になされた処理容器内で、遷移金属を含む遷移金属含有原料ガスと酸素含有ガスとにより被処理体の表面に、熱処理により薄膜を形成するようにしたことを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
真空引き可能になされた処理容器内で、遷移金属を含む遷移金属含有原料ガスと銅を含む銅含有原料ガスと酸素含有ガスとにより被処理体の表面に、熱処理により薄膜を形成するようにしたことを特徴とする成膜方法。
【請求項3】
前記熱処理は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法であることを特徴とする請求項1又は2記載の成膜方法。
【請求項4】
前記熱処理は、前記原料ガスと前記酸素含有ガスとを交互に繰り返し供給して成膜を行うALD(Atomic Layer Deposition)法であることを特徴とする請求項1又は2記載の成膜方法。
【請求項5】
前記熱処理は、前記2つの原料ガスを間欠期間を挟んで交互に繰り返し供給すると共に、前記間欠期間の時に前記酸素含有ガスを供給するようにしたことを特徴とする請求項2記載の成膜方法。
【請求項6】
前記被処理体は表面に凹部を有しており、前記熱処理により薄膜を形成した後に、前記凹部の底面に形成された薄膜を除去するためのパンチスルー処理を行うようにしたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項7】
前記パンチスルー処理は、除去対象箇所以外の表面をレジストで覆った状態で行うエッチング処理であることを特徴とする請求項6記載の成膜方法。
【請求項8】
前記パンチスルー処理は、表面全面をエッチバックするエッチング処理であることを特徴とする請求項6記載の成膜方法。
【請求項9】
前記凹部は、断面凹状に形成された溝と、該溝の底部に形成されたホールよりなり、前記パンチスルー処理により除去される薄膜は、前記ホールの底面に形成された薄膜であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記薄膜が形成された被処理体上に、CVD法により銅膜を堆積して前記被処理体の凹部の埋め込み処理を行うようにしたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項11】
前記埋め込み処理は、前記薄膜を形成した処理容器内で行うことを特徴とする請求項10記載の成膜方法。
【請求項12】
前記被処理体は、前記埋め込み処理の後の工程でアニール処理が施されることを特徴とする請求項10又は11に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記アニール処理は、前記埋め込み処理をした処理容器内で行うことを特徴とする請求項12記載の成膜方法。
【請求項14】
前記薄膜が形成された被処理体上に、メッキ法により銅膜を堆積して前記被処理体の凹部の埋め込み処理を行うようにしたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項15】
前記被処理体は、前記埋め込み処理の後の工程でアニール処理が施されることを特徴とする請求項14記載の成膜方法。
【請求項16】
前記薄膜の下地膜は、SiO 膜とSiOF膜とSiC膜とSiN膜とSiOC膜とSiCOH膜とSiCN膜とポーラスシリカ膜とポーラスメチルシルセスキオキサン膜とポリアリレン膜とSiLK(登録商標)膜とフロロカーボン膜とよりなる群から選択される1つ以上の膜よりなることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項17】
前記遷移金属含有原料は、有機金属材料、或いは金属錯体材料よりなることを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項18】
前記遷移金属はマンガン(Mn)よりなり、該マンガンを含む有機金属材料は、Cp Mn[=Mn(C ]、(MeCp) Mn[=Mn(CH ]、(EtCp) Mn[=Mn(C ]、(i−PrCp) Mn[=Mn(C ]、MeCpMn(CO) [=(CH)Mn(CO) ]、(t−BuCp) Mn[=Mn(C ]、CH Mn(CO) 、Mn(DPM) [=Mn(C1119 ]、Mn(DMPD)(EtCp)[=Mn(C11 )]、Mn(acac) [=Mn(C ]、Mn(DPM)[=Mn(C1119]、Mn(acac)[=Mn(C]、Mn(hfac)[=Mn(CHF]、((CHCp)Mn[=Mn((CH]よりなる群から選択される1以上の材料であることを特徴とする請求項17記載の成膜方法。
【請求項19】
前記マンガンを含む遷移金属含有原料ガスの供給量M1と前記酸素含有ガスの供給量M2との比M1/M2は0.001〜50の範囲内であることを特徴とする請求項18記載の成膜方法。
【請求項20】
前記熱処理ではプラズマが併用されることを特徴とする請求項1乃至19のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項21】
前記原料ガスと前記酸素含有ガスとは、前記処理容器内で初めて混合されることを特徴とする請求項1乃至20のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項22】
前記酸素含有ガスは、H O(水蒸気)、N O、NO 、NO、O 、O 、H 、CO、CO 、アルコール類よりなる群より選択される1以上の材料よりなることを特徴とする請求項1乃至21のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項23】
被処理体の表面に、熱処理によって遷移金属を含む薄膜を形成する成膜装置において、
真空引き可能になされた処理容器と、
前記処理容器内に設けられて前記被処理体を載置するための載置台構造と、
前記被処理体を加熱する加熱手段と、
前記処理容器内へガスを導入するガス導入手段と、
前記ガス導入手段へ原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
前記ガス導入手段へ酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段と、
を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項24】
前記原料ガスは、遷移金属を含む遷移金属含有原料ガスであることを特徴とする請求項23記載の成膜装置。
【請求項25】
前記原料ガスは、遷移金属を含む遷移金属含有原料ガスと銅を含む銅含有原料ガスとを有することを特徴とする請求項24記載の成膜装置。
【請求項26】
前記原料ガスと前記酸素含有ガスとは、前記処理容器内で初めて混合されることを特徴とする請求項23乃至25のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項27】
前記酸素含有ガスは、H O(水蒸気)、N O、NO 、NO、O 、O 、H 、CO、CO 、アルコール類よりなる群より選択される1以上の材料よりなることを特徴とする請求項23乃至26のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項28】
成膜装置に用いられ、コンピュータ上で動作するコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項1乃至22のいずれか1つに記載の成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【請求項29】
真空引き可能になされた処理容器と、
前記処理容器内に設けられて被処理体を載置するための載置台構造と、
前記被処理体を加熱する加熱手段と、
前記処理容器内へガスを導入するガス導入手段と、
前記ガス導入手段へ原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
前記ガス導入手段へ酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス供給手段と、
装置全体を制御する制御手段とを有する成膜装置を用いて前記被処理体の表面に熱処理によって遷移金属を含む薄膜を形成するに際して、
請求項1乃至22のいずれかに記載の成膜方法を実施するように前記成膜装置の動作を制御するコンピュータ読み取り可能なプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体。
【請求項30】
請求項1乃至22のいずれかに記載の成膜方法によって形成された膜構造を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項31】
請求項1乃至22のいずれかに記載の成膜方法によって形成された膜構造を有する半導体装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−16782(P2009−16782A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324098(P2007−324098)
【出願日】平成19年12月15日(2007.12.15)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】