説明

成膜装置および成膜方法

【課題】基板の周方向における温度分布を均一にすることのできる成膜装置および成膜方法を提供する。
【解決手段】成膜装置100は、反応ガス4が供給されて成膜処理が行われるチャンバ1と、チャンバ1に配置されて基板7が載置されるサセプタ8と、サセプタ8を下方から加熱するヒータ9とを有する。サセプタ8は、リング状の第1のサセプタ部8aと、第1のサセプタ部8aに接して設けられ、第1のサセプタ部8aの開口部分を遮蔽する第2のサセプタ部8bとを有し、第2のサセプタ部8bの加熱部に対向する面は水平面から傾斜している。また、第1のサセプタ部8aは、第2のサセプタ部8bの厚みに対応した周方向に異なる形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などのパワーデバイスのように、比較的膜厚の大きい結晶膜を必要とする半導体素子の製造には、エピタキシャル成長技術が利用されている。
【0003】
エピタキシャル成長技術に使用される気相成長方法では、反応室内に基板を載置した状態で反応室内の圧力を常圧または減圧にする。そして、基板を加熱しながら、反応室内に反応性のガスを供給する。すると、基板の表面でガスが熱分解反応または水素還元反応を起こして気相成長膜が形成される。反応によって生成したガスや、反応に使用されなかったガスは、反応室に設けられた排気口を通じて外部に排出される。基板上にエピタキシャル膜を形成した後は、反応室から基板を搬出する。次いで、新しい基板を反応室内に搬入し、同様にしてエピタキシャル膜の形成を行う。
【0004】
膜厚の大きいエピタキシャル膜を高い歩留まりで製造するには、均一に加熱されたウェハの表面に新たな反応ガスを次々に接触させて成膜速度を向上させる必要がある。そこで、従来の成膜装置においては、ウェハを高速で回転させながらエピタキシャル成長させることが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
図7は、従来の成膜装置の模式的な断面図であり、基板が搬出(または搬入)される様子を示している。
【0006】
図7に示すように、成膜装置200において、チャンバ201は、ベースプレート301の上にベルジャ302が配置された構造を有する。ベースプレート301の上には、ベースプレート301の全面を被覆する形状と大きさを備えたベースプレートカバー303が取り外し可能に設置されている。ベースプレートカバー303は、例えば、石英からなるものとすることができる。ベースプレート301とベルジャ302は、フランジ210によって連結されており、フランジ210はパッキン211でシールされている。気相成長反応の際には、チャンバ201内が極めて高い温度になる。そこで、チャンバ201の冷却を目的として、ベースプレート301とベルジャ302の内部には、冷却水の流路203が設けられている。
【0007】
ベルジャ302には、反応ガス204を導入する供給口205が設けられている。一方、ベースプレート301には排気口206が設けられており、排気口206を通じて反応後や未反応の反応ガス204がチャンバ201の外部へ排出される。
【0008】
排気口206は、フランジ213によって配管212と連結している。また、フランジ213は、パッキン214でシールされている。
【0009】
チャンバ201の内部には、ライナ202が配置されている。ライナ202の内側には、回転軸216と、回転軸216の上端に設けられた回転筒217とが配置されている。回転筒217の上には、リング状のサセプタ208が取り付けられており、回転軸216が回転すると、回転筒217を介してサセプタ208が回転するようになっている。
【0010】
サセプタ208は、その内周側に設けられた座ぐり内に基板207の外周部を受け入れる構造となっている。気相成長反応時においては、基板207をサセプタ208上に載置することにより、サセプタ208の回転とともに基板207が回転する。
【0011】
図8は、サセプタ208の上に基板207が載置された様子を示す断面図である。この図に示すように、サセプタ208は、基板207の外周部を支持する第1のサセプタ部208aと、第1のサセプタ部208aの開口部分に密嵌される第2のサセプタ部208bとからなる。基板207は、第1のサセプタ部208aの座ぐり208aに接触した状態でサセプタ208上に載置される。
【0012】
ライナ202の上部開口部には、整流板であるシャワープレート215が設けられている。シャワープレート215を通過した反応ガス204は基板207の方へ流下する。そして、基板207の表面で熱分解反応または水素還元反応を起こしてエピタキシャル膜を形成する。
【0013】
基板207の加熱は、回転筒217の内部に配置されたヒータ209によって行われる。ヒータ209は、アーム形状をした導電性のブースバー220によって支持されている。また、ブースバー220は、ヒータ209を支持する側とは反対の側で、ヒータベース221によって支持されている。そして、導電性の連結部222によって、ブースバー220と電極棒223が連結されることにより、電極棒223からヒータ209へ給電が行われる。尚、基板207の表面温度は、放射温度計224a、224bによって測定される。
【0014】
基板207の上にエピタキシャル膜を形成した後は、チャンバ201内のガスを水素ガスや不活性ガスなどで置換する。その後、基板207をチャンバ201の外へ搬出する。
【0015】
ライナ202とベルジャ302には、それぞれ基板搬出入口246と基板搬出入口247が設けられている。また、チャンバ201には、基板搬出入口247を介して搬送室(図示せず)が隣接しており、この搬送室には搬送ロボットが配置されている。基板207を搬出する際には、回転筒217の内部に配置された基板支持部(図示せず)によって基板207が上方に突き上げられる。また、搬送ロボットのロボットハンド248が基板搬出入口246、247を介してチャンバ201の内部に挿入される。そして、基板支持部からロボットハンド248へ基板207が受け渡された後、基板搬出入口246、247を通じて基板207が搬出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2008−108983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記の通り、サセプタ208は、ヒータ209によって図7の下方から加熱され、基板207は、サセプタ208を介して加熱される。すると、基板207は熱変形を起こし、基板207とサセプタ208とは、微視的に見て均一な面接触をすることが難しくなる。すなわち、基板207とサセプタ208とは、ある部分で接触する一方、他の部分では接触しないといったことが起こる。
【0018】
図7に示すように、サセプタ208は、基板207よりもヒータ209に近い位置にあるので、サセプタ208の方が基板207より温度が高い。このため、サセプタ208に接触している部分の基板207の温度は、サセプタ208に接触していない部分の温度より高くなり、基板207に周方向の温度分布が生じる結果となる。
【0019】
基板207の温度分布が不均一になると、基板207上に形成されるエピタキシャル膜の膜厚も不均一になる。また、基板207とサセプタ208の接触部分に熱応力が集中して、スリップと称される結晶欠陥が発生する原因ともなる。スリップは、基板207に反りを生じさせたり、ICデバイスにリークを起こしたりして、ICデバイスの歩留まりを著しく減少させる。
【0020】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、基板の周方向における温度分布を均一にすることのできる成膜装置および成膜方法を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の態様は、反応ガスが供給されて成膜処理が行われる反応室と、
反応室に配置されて基板が載置されるサセプタと、
サセプタを下方から加熱する加熱部とを有する成膜装置であって、
サセプタは周方向に厚みの異なる形状であることを特徴とするものである。
【0023】
本発明の第1の態様において、サセプタは、リング状の第1のサセプタ部と、
第1のサセプタ部に接して設けられ、第1のサセプタ部の開口部分を遮蔽する第2のサセプタ部とを有し、
第2のサセプタ部の加熱部に対向する面が水平面から傾斜していることが好ましい。
【0024】
上記場合において、第1のサセプタ部は、第2のサセプタ部の厚みに対応した周方向に異なる形状を有することが好ましい。
【0025】
本発明の第2の態様は、搬送部により反応室に基板を搬送してサセプタ上にこの基板を載置する工程と、
サセプタの下方から加熱部で基板を加熱しつつ、反応室に設けられた回転部を介してサセプタを回転させながら基板の温度測定を行うとともに、基板の回転方向と回転角度を検出して基板の温度分布データを作成する工程と、
周方向に厚みの異なる形状を有するサセプタを用い、温度分布データを基に、基板の温度が低くなる箇所にこのサセプタの厚みが大きくなる部分が位置し、基板の温度が高くなる箇所にこのサセプタの厚みが小さくなる部分が位置するように、搬送部または回転部の位置を調整する工程と、
上記基板と同一の基板または同じ種類の異なる基板を反応室に搬送し、周方向に厚みの異なる形状を有するサセプタの上にこの基板を載置した後、反応室に反応ガスを供給し、この基板を加熱しながら、この基板の上に所定の膜を形成する工程とを有する成膜方法に関する。
この場合、温度分布データを作成する際に使用するサセプタは、周方向の厚みが均一であるサセプタであってもよく、上記の周方向に厚みの異なる形状を有するサセプタであってもよい。
【0026】
本発明の第2の態様において、周方向に厚みの異なる形状を有するサセプタは、リング状の第1のサセプタ部と、
第1のサセプタ部に接して設けられ、第1のサセプタ部の開口部分を遮蔽する第2のサセプタ部とを有し、
第2のサセプタ部の加熱部に対向する面が水平面から傾斜していることが好ましい。
【0027】
上記場合において、第1のサセプタ部は、第2のサセプタ部の厚みに対応した周方向に異なる形状を有することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施の形態の成膜装置の断面図であり、基板がロボットハンドで保持された状態を示す図である。
【図2】本実施の形態のサセプタの上に基板が載置された様子を示す断面図である。
【図3】図1で、基板が基板支持部に支持された状態の断面図である。
【図4】図1で、基板がサセプタ上に載置された状態の断面図である。
【図5】本実施の形態の別のサセプタの上に基板が載置された様子を示す断面図である。
【図6】本実施の形態の成膜方法のフローチャートである。
【図7】従来の成膜装置の模式的な断面図である。
【図8】従来のサセプタの上に基板が載置された様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本実施の形態の成膜装置の模式的な部分断面図である。尚、この図では、説明のために必要な構成以外を省略している。また、縮尺についても、各構成部を明確に視認できるよう原寸大のものとは変えている。
【0030】
図1に示すように、成膜装置100は、反応室としてのチャンバ1を有する。チャンバ1は、ベースプレート101の上にベルジャ102が配置された構造を有する。ベースプレート101の上には、ベースプレート101の全面を被覆する形状と大きさを備えたベースプレートカバー103が取り外し可能に設置されている。ベースプレートカバー103は、例えば、石英からなるものとすることができる。ベースプレート101とベルジャ102は、フランジ10によって連結されており、フランジ10はパッキン11でシールされている。ベースプレート101は、例えば、SUS(Steel Use Stainless;ステンレス鋼)からなるものとすることができる。
【0031】
気相成長反応の際には、チャンバ1内が極めて高い温度になる。そこで、チャンバ1の冷却を目的として、ベースプレート101とベルジャ102の内部には、冷却水の流路3が設けられている。
【0032】
ベルジャ102には、反応ガス4を導入する供給口5が設けられている。一方、ベースプレート101には排気口6が設けられており、排気口6を通じて反応後や未反応の反応ガス4がチャンバ1の外部へ排出される。
【0033】
排気口6は、フランジ13によって配管12と連結している。また、フランジ13は、パッキン14でシールされている。尚、パッキン11およびパッキン14には、300℃程度の耐熱温度を有するフッ素ゴムなどが用いられる。
【0034】
チャンバ1の内部には、中空筒状のライナ2が配置されている。ライナ2は、チャンバ1の内壁1aと、基板7上への気相成長反応が行われる空間Aとを仕切る目的で設けられる。これにより、チャンバ1の内壁1aが反応ガス4で腐食されるのを防ぐことができる。気相成長反応は高温下で行われるので、ライナ2は、高い耐熱性を備える材料によって構成される。例えば、SiC部材またはカーボンにSiCをコートして構成された部材の使用が可能である。
【0035】
本実施の形態では、便宜上、ライナ2を胴部2aと頭部2bの2つの部分に分けて称する。胴部2aは、内部にサセプタ8が配置される部分であり、頭部2bは、胴部2aより内径の小さい部分である。胴部2aと頭部2bは、一体となってライナ2を構成しており、頭部2bは胴部2aの上方に位置する。
【0036】
頭部2bの上部開口部には、整流板であるシャワープレート15が設けられている。シャワープレート15は、基板7の表面に反応ガス4を均一に供給する機能を有する。このため、シャワープレート15には、複数個の貫通孔15aが設けられており、供給口5からチャンバ1に導入された反応ガス4は、貫通孔15aを通って基板7の方へ流下する。ここで、反応ガス4は、無駄に拡散することなく、効率よく基板7の表面に到達することが好ましい。それ故、頭部2bの内径は胴部2aより小さく設計されている。具体的には、頭部2bの内径は、貫通孔15aの位置と基板7の大きさを考慮して決められる。
【0037】
基板7の加熱は、回転筒17の内部に配置されたヒータ9によって行われる。ヒータ9は、本発明における加熱部である。ヒータ9は、抵抗加熱型のヒータとすることができ、円盤状のインヒータ9aと、環状のアウトヒータ9bとを有する。インヒータ9aは、基板7に対応する位置に配置される。アウトヒータ9bは、インヒータ9aの上方であって、基板7の外周部に対応する位置に配置される。基板7の外周部は中央部に比べて温度が低下しやすいため、アウトヒータ9bを設けることで外周部の温度低下を防ぐことができる。
【0038】
インヒータ9aとアウトヒータ9bは、アーム形状をした導電性のブースバー20によって支持されている。ブースバー20は、例えば、カーボンをSiCで被覆してなる部材によって構成される。また、ブースバー20は、インヒータ9aとアウトヒータ9bを支持する側とは反対の側で、石英製のヒータベース21によって支持されている。そして、モリブデンなどの金属からなる導電性の連結部22によって、ブースバー20と電極棒23が連結されることにより、電極棒23からインヒータ9aとアウトヒータ9bへ給電が行われる。具体的には、電極棒23からこれらのヒータ(9a、9b)の発熱体に通電されて発熱体が昇温する。
【0039】
チャンバ1の内部、具体的には、ライナ2の胴部2aには、基板7を支持するサセプタ8が配置されている。サセプタ8は、高耐熱性の材料で構成される。例えば、基板7の上にSiCをエピタキシャル成長させる場合、基板7は1500℃以上の高温にする必要がある。このため、サセプタ8には、例えば、等方性黒鉛の表面にCVD(Chemical Vapor Deposition)法によってSiCを被覆したものなどが用いられる。
【0040】
図2は、サセプタ8の上に基板7が載置された様子を示す断面図である。この図に示すように、サセプタ8は、基板7の外周部を支持する第1のサセプタ部8aと、第1のサセプタ部8aの開口部分に密嵌される第2のサセプタ部8bとからなる。基板7は、第1のサセプタ部8aの座ぐり8aに接触した状態でサセプタ8上に載置される。このとき、基板7と第2のサセプタ部8bとの間には隙間が形成される。
【0041】
本実施の形態において、サセプタ8は、周方向に厚みの異なる形状となっていることを特徴とする。
【0042】
図2の例では、サセプタ8の上面、すなわち、基板7と対向する面は水平面であるが、サセプタ8の下面は、水平面から傾いた形状となっている。
【0043】
図2において、サセプタ8は、第1のサセプタ部8aと第2のサセプタ部8bとによって構成され、第1のサセプタ部8aはリング状であり、第2のサセプタ部8bは円板状である。第2のサセプタ部8bの厚みは周方向に異なっており、第1のサセプタ部8aの厚みも第2のサセプタ部8bの厚みに対応して周方向に異なっている。具体的には、第2のサセプタ部8bの上面、すなわち、基板7と対向する面は、水平面となっているが、第2のサセプタ部8bの下面は、図2に示すように、断面で見て水平面から傾斜した形状となっている。また、第1のサセプタ部8aも、その上面や座ぐり部8a、第2のサセプタ部8bの支持面8aは水平面となっているが、第1のサセプタ部8aの下面は、第2のサセプタ部8bと同様に、水平面から傾斜した形状となっている。
【0044】
サセプタ8を上記構造とすることで、サセプタ8は、周方向に温度分布を持つようになる。つまり、サセプタ8の下面は、ヒータ9と対向しており、この面が水平面から傾きを有するということは、サセプタ8からヒータ9までの距離が異なるということである。したがって、ヒータ9から近いサセプタ部分は、ヒータ9から遠いサセプタ部分に比較して高温になる。基板7は、サセプタ8を介して加熱されるので、サセプタ8の温度分布は基板7の温度分布に反映される。それ故、基板7がサセプタ8から浮いていることによって、基板7の温度が低下している部分に、サセプタ8の高温部分が対向するように、基板7とサセプタ8の位置関係を決めれば、基板7の周方向における温度分布を解消することが可能である。
【0045】
本実施の形態においては、サセプタ8の上面、すなわち、基板7と対向する面を水平面から傾かせ、ヒータ9と対向する面を水平面とすることも可能である。この場合、サセプタ8からヒータ9までの距離は同じであるが、サセプタ8から基板7までの距離が異なる。上記の通り、基板7よりサセプタ8の方が高温であるので、サセプタ8に近い部分で基板7は高温になる。したがって、この場合にも、基板7の温度が低下している部分に、サセプタ8の高温部分が対向するように、基板7とサセプタ8の位置関係を決めれば、基板7の周方向における温度分布を解消することができる。
【0046】
尚、サセプタ8の構成部材(例えば、SiC)に比較して雰囲気ガスの熱伝導率は小さいので、サセプタ8の温度分布を基板7に効率的に反映させる点からは、サセプタ8の下面を水平面から傾かせて、サセプタ8に温度分布を持たせる方が好ましい。また、後述するように、基板7をチャンバ1から搬出入する際には、第2のサセプタ部8bを上方へ突き上げることによって、第2のサセプタ部8bとともに基板7を上方へ移動させるので、基板7と接触する第2のサセプタ部8bの上面は水平であることが好ましい。
【0047】
基板7の表面温度は、温度測定部としての放射温度計24a、24bによって測定することができる。図1において、放射温度計24aは、基板7の中央部付近の温度を測定するのに用いられる。一方、放射温度計24bは、基板7の外周部の温度を測定するのに用いられる。これらの放射温度計(24a、24b)は、図1に示すように、チャンバ1の上部に設けることができる。この場合、ベルジャ102の上部とシャワープレート15を透明石英製とすることにより、放射温度計24a、24bによる温度測定がこれらによって妨げられないようにすることができる。
【0048】
測定した温度データは、図示しない制御機構に送られ、インヒータ9aとアウトヒータ9bの各出力制御にフィードバックすることができる。一例として、SiCエピタキシャル成長を行う場合、各ヒータの設定温度は次のようにすることができる。これにより、基板7を1650℃程度に加熱することが可能である。
インヒータ9aの温度:1680℃
アウトヒータ9bの温度:1750℃
【0049】
ライナ2の胴部2aには、回転軸16と、回転軸16の上端に設けられた回転筒17とが配置されている。回転軸16と回転筒17は、本発明の回転部を構成する。サセプタ8は、回転筒17に取り付けられており、回転軸16が回転すると、回転筒17を介してサセプタ8が回転するようになっている。気相成長反応時においては、基板7をサセプタ8上に載置することにより、サセプタ8の回転とともに基板7が回転する。
【0050】
回転軸16と回転筒17は、ベースプレート101の下に配置された回転機構310まで伸びている。回転機構310の内部には、回転軸16と回転筒17の回転数をモニタするエンコーダ300が備えられている。エンコーダ300で回転数をモニタすることで、回転軸16と回転筒17が所定の回転数を保つように制御される。エンコーダ300は、回転軸16に取り付けられた回転板305の回転を検知するエンコーダヘッド304と、検知された信号を処理する回路基板を備えたエンコーダピックアップ306とを有する。
【0051】
シャワープレート15を通過した反応ガス4は、頭部2bを通って基板7の方へ流下する。基板7が回転していることにより、反応ガス4は基板7に引きつけられ、シャワープレート15から基板7に至る領域で縦フローになる。基板7に到達した反応ガス4は、基板7の表面で乱流を形成することなく、水平方向に略層流となって流れる。このようにして、基板7の表面には、新たな反応ガス4が次々と接触する。そして、基板7の表面で熱分解反応または水素還元反応を起こしてエピタキシャル膜を形成する。尚、成膜装置100では、基板7の外周部からライナ2までの距離を狭くして、基板7の表面における反応ガス4の流れがより均一になるようにしている。
【0052】
以上の構成とすることで、加熱による基板7の周方向の温度分布を低減できる。これにより、基板7を均一な温度分布にして、基板7上に均一な膜厚のエピタキシャル膜を形成することが可能である。また、基板7とサセプタ8の接触部分に熱応力が集中するのを防いで、スリップの発生や基板7の反りを抑制し、ICデバイスの歩留まりを向上させることもできる。
【0053】
また、基板7を回転させながら気相成長反応を行うことにより、基板7の表面全体に効率よく反応ガス4を供給して、膜厚均一性の高いエピタキシャル膜を形成することもできる。さらに、新たな反応ガス4が次々と供給されるので、成膜速度の向上も図れる。
【0054】
図1で、反応ガス4の内で気相成長反応に使用されなかったガスや、気相成長反応により生成したガスは、ベースプレート101に設けられた排気口6から排出される。
【0055】
図1、図3および図4は、成膜装置100において、チャンバ1内に基板7が搬入されてサセプタ8の上に載置される様子を示している。
【0056】
ライナ2とベルジャ102には、それぞれ基板搬出入口46と基板搬出入口47が設けられている。また、チャンバ1には、基板搬出入口47を介して搬送室(図示せず)が隣接しており、この搬送室には、搬送部を構成する搬送ロボットが配置されている。搬送ロボットは、ロボットハンド48を有している。そして、基板7の中心とサセプタ8の中心とが一致した状態で、基板7がサセプタ8の上に載置されるよう、ロボットハンド48の位置が調整される。
【0057】
基板7は、ロボットハンド48により、搬送室から基板搬出入口46、47を介してチャンバ1の内部に搬入された後、図3に示すように、ロボットハンド48から基板支持部50へ受け渡される。このとき、搬送室で調整された位置関係、すなわち、基板7の中心とサセプタ8の中心とが一致した状態で、基板7がサセプタ8の上に載置されるように調整された、基板7、サセプタ8およびロボットハンド48の位置関係が、基板7、サセプタ8および基板支持部50の間にも受け継がれるよう、ロボットハンド48と基板支持部50の位置関係が調整されている。基板支持部50へ基板7が受け渡された後は、基板支持部50が降下して、図4に示すように、基板7はサセプタ8の上に載置される。
【0058】
上記の通り、本実施の形態のサセプタ8は、周方向の厚みに分布を持つ。これにより、周方向の温度分布がサセプタ8に生じるようにしているが、この温度分布は、基板7の温度分布に対応させる必要がある。すなわち、基板7の温度が低いところに、サセプタ8の温度が高いところ、つまり、サセプタ8の厚みが大きいところが対応して配置されるようにする必要がある。
【0059】
そこで、本実施の形態では、サセプタ8の温度分布を考慮して、サセプタ8上に基板7を載置する。具体的には、まず、エピタキシャル成長反応を行う前に基板7の温度分布を測定しておく。一方、サセプタ8の温度分布は、サセプタ8の厚みの分布から分かる。大きさ、厚みおよび材質などが同一であれば、基板7はどれも同様の温度分布を示すと考えられるので、基板7の温度分布に合わせてサセプタ8の位置を調整する。
【0060】
サセプタ8は、図2および図5のいずれの形状であってもよい。図2の構造であれば、第2のサセプタ部8bの厚みは周方向に異なっており、第1のサセプタ部8aの厚みも第2のサセプタ部8bの厚みに対応して周方向に異なっている。一方、図5の構造であれば、第1のサセプタ部8a’は均一な厚みを有し、第2のサセプタ部8bのみ周方向の厚みに分布を有する。図5の構造の場合、第2のサセプタ部8bの径をできるだけ基板7の径に近いものとし、厚みの分布によって温度変化が生じる範囲が大きくなるようにすることが好ましい。
【0061】
そして、基板7がサセプタ8上に載置されていない状態で、図3に示すように、第2のサセプタ部8bを上方へ突き上げる。次いで、回転筒17を回転させて、その位置を調整する。つまり、第2のサセプタ部8bが第1のサセプタ部8a’に勘合しヒータ9で加熱されたときに、第2のサセプタ部8bの高温部が基板7の低温部に対応するよう、回転筒17の位置を調整する。その後、第2のサセプタ部8bを降下させて、第1のサセプタ部8a’に勘合する。以上の操作により、基板7の温度分布に合わせてサセプタ8の位置を調整することができる。この調整は、作業者が手動で行うことができる。また、図示しない制御部にサセプタ8の温度分布と基板7の温度分布を入力し、制御部から回転機構310へ信号を送って、回転筒17の位置調整を自動で行うようにすることもできる。
【0062】
次に、図1〜図6を参照しながら、本実施の形態における成膜方法の一例を述べる。尚、図6は、本実施の形態の成膜方法を示すフローチャートである。
【0063】
本実施の形態の成膜装置100は、例えば、SiCエピタキシャル膜の形成に好適である。そこで、以下では、SiCエピタキシャル膜の形成を例にとる。
【0064】
基板7としては、例えば、SiCウェハを用いることができる。但し、これに限られるものではなく、場合に応じて、他の材料からなるウェハなどを用いてもよい。例えば、Siウェハ、SiO(石英)などの他の絶縁性基板、高抵抗のGaAsなどの半絶縁性基板などを用いることもできる。
【0065】
本実施の形態においては、SiCエピタキシャル膜の成膜を行う前に、基板7の温度分布を測定しておく。この測定は、下記に述べるように、本実施の形態のサセプタ8上に載置した状態で行うことができるが、図8に示す、周方向の厚みが均一である従来のサセプタ208上に載置して行うこともできる。
【0066】
まず、図1に示すように、ロボットハンド48で基板7をチャンバ1の内部へ搬送する(図6のS101)。次いで、図3に示すように、ロボットハンド48から基板支持部50へ基板7を受け渡す(図6のS102)。このとき、基板支持部50は、図2の第2のサセプタ部8bを突き上げた状態で上昇しているため、基板7は、第2のサセプタ8bの上に載置される。
【0067】
基板7が基板支持部50へ受け渡された後は、基板支持部50を下降させる。すると、基板7は、第1のサセプタ部8aの座ぐり部8a(図2)に付き当たり、第1のサセプタ部8aに支持された状態で停止する。一方、第2のサセプタ部8bは、基板7から離れて基板支持部50とともに下降を続けた後、第1のサセプタ部8bの座ぐり部8a(図2)に付き当たり、第1のサセプタ部8aの開口部分を密嵌して停止する。これにより、基板7と第2のサセプタ部8bとの間に隙間が設けられた状態で、基板7はサセプタ8の上に載置される(図6のS103)。尚、基板支持部50は、さらに下降を続けた後に定位置で停止する。
【0068】
次に、基板7を回転させながら温度測定を行う(図6のS104)。具体的には、回転軸16を回転させることにより、回転筒17を介してサセプタ8を低速で回転させる。回転数は、例えば、50rpmとすることができる。そして、基板7を回転させた状態で、放射温度計24bにより基板7の外周部の温度測定を行う。例えば、外周部一周について温度測定を終えたら、基板7の中心からの距離を変えて同様に測定する。これを複数回繰り返す。また、このとき、回転軸16と回転筒17の回転方向と回転角度を、エンコーダ300によって検出する。尚、S104を終えた後は、基板7の回転を停止し、基板7をチャンバ1の外部へ搬出する。
【0069】
次に、放射温度計24bによる測定結果と、エンコーダ300による検出結果とを用いて、温度データと位置データを作成する(図6のS105)。具体的には、放射温度計24bでの測定値から基板7毎の温度データを作成する。また、エンコーダ300で検出されたデータから、温度測定を行った座標の位置データを作成する。
【0070】
次に、温度データと位置データから基板7の温度分布を作成する(図6のS106)。次いで、基板7の温度分布とサセプタ8の温度分布が対応した状態で基板7がサセプタ8上に載置されるよう、サセプタ8の位置調整を行う(図6のS107)。具体的には、図2に示すように、サセプタ8上に基板7が載置されたときに、サセプタ8の厚みの大きい部分、すなわち、サセプタ8の高温部が基板7の低温部と対向し、サセプタ8の厚みが小さい部分、すなわち、サセプタ8の低温部が基板7の高温部と対向するように、サセプタ8の位置を調整する。
【0071】
例えば、基板7がサセプタ8上に載置されていない状態で、図3に示すように、第2のサセプタ部8bを上方へ突き上げる。次いで、回転筒17を回転させて、基板7の温度分布に対応するように第1のサセプタ部8aの位置を調整する。すなわち、第2のサセプタ部8bが第1のサセプタ部8aに勘合しヒータ9で加熱されたときに、第2のサセプタ部8bの高温部が基板7の低温部に対応するようにする。この調整は、作業者が手動で行うことができるが、図示しない制御部にサセプタ8の温度分布と基板7の温度分布を入力し、制御部から回転機構310へ信号を送って、回転筒17の位置調整を自動で行うようにしてもよい。
【0072】
また、基板7の中心とサセプタ8の中心とが一致するように、ロボットハンド48の位置調整も行う。ロボットハンド48の位置調整は、作業者が手動で行うことができる。あるいは、図示しない制御部から搬送ロボットへ信号を送って、ロボットハンド48の位置調整を自動で行うようにすることもできる。
【0073】
以上の工程を終えた後は、SiCエピタキシャル膜の成膜を行う。
【0074】
まず、温度分布の測定に用いた基板7に代えて、新たな基板7をチャンバ1の内部へ搬送し、基板支持部50を介してサセプタ8の上に載置する(図6のS108)。温度分布の測定に用いた基板7については、エピタキシャル膜を成膜することなく搬出する。
【0075】
尚、本実施の形態においては、温度分布の測定に使用した基板7の上にエピタキシャル膜を形成してもよい。例えば、温度分布の測定に使用した基板7を一旦チャンバ1から搬出し、S107でサセプタ8の位置調整をした後、上記の基板7を再度チャンバ1の内部へ搬送する。そして、基板支持部50を介してサセプタ8の上に載置することもできる。
【0076】
サセプタ8の上に基板7を載置した後は、エピタキシャル成長反応を行い、基板7の上にエピタキシャル膜を形成する(図6のS109)。
【0077】
エピタキシャル反応に使用する反応ガス4としては、例えば、プロパン(C)、シラン(SiH)およびキャリアガスとしての水素ガスを用いることができる。この場合、シランに代えて用いることができるものとして、ジシラン(SiH)、モノクロロシラン(SiHCl)、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiHCl)、テトラクロロシラン(SiCl)などが挙げられる。
【0078】
次に、チャンバ1の内部を常圧または適当な減圧にした状態で、基板7を回転させる。基板7が載置されたサセプタ8は、回転筒17の上端に配置されている。したがって、回転軸16を通じて回転筒17を回転させると、サセプタ8が回転し、同時に基板7も回転する。回転数は、例えば50rpm程度とすることができる。
【0079】
次に、ヒータ9によって基板7を加熱する。SiCエピタキシャル成長では、基板7は、例えば、1500℃〜1700℃までの間の所定の温度に加熱される。また、基板7の加熱によってチャンバ1内は高温になるので、ベースプレート101とベルジャ102の内部に設けた流路3に冷却水を流す。これにより、チャンバ1が過度に昇温するのを防止できる。
【0080】
放射温度計24a、24bにより、基板7の温度が例えば1650℃に達したことを確認した後は、基板7の回転数を徐々に上げていく。例えば、900rpm程度の回転数まで上げることができる。また、供給口5より反応ガス4を導入する。
【0081】
反応ガス4は、シャワープレート15の貫通孔15aを通り、基板7への気相成長反応が行われる空間Aへ流入する。シャワープレート15を通過することで、反応ガス4は整流され、下方で回転する基板7へ向かって略鉛直に流下して、いわゆる縦フローを形成する。
【0082】
基板7の表面に到達した反応ガス4は、この表面で熱分解反応または水素還元反応を起こしてSiCエピタキシャル膜を形成する。気相成長反応に使用されなかった余剰の反応ガス4や、気相成長反応により生成したガスは、チャンバ1の下方に設けられた排気口6を通じて外部に排気される。
【0083】
基板7の上に、所定の膜厚のSiC膜を形成した後は、反応ガス4の供給を終了する。続いて、ヒータ9による加熱を停止し、基板7が所定の温度まで下がるのを待つ。また、チャンバ1内のガスを水素ガスや不活性ガスなどで置換する。尚、基板7が所定の温度以下となるまで、供給口5からキャリアガスの供給を続けてもよい。
【0084】
放射温度計24a、24bにより、基板7が所定の温度まで冷却されたことを確認した後は、チャンバ1の外部に基板7を搬出する。
【0085】
具体的には、基板支持部50を上方に移動させて、第2のサセプタ部8bを基板7に接触させた後、さらにそのまま移動させて、図3に示すように、第2のサセプタ部8bとともに基板7を上方に突き上げる。このとき、第2のサセプタ部8bの下面は水平面から傾いた状態にあるので、基板7が水平面を保ったまま移動するように、基板支持部50において第2のサセプタ部8bを支持する部分の寸法を調整しておく。次いで、基板支持部50からロボットハンド48へ基板7を受け渡し、ロボットハンド48で基板7を保持して、基板搬出入口47からチャンバ1の外部へ基板7を搬出する。
【0086】
続いて成膜処理を行う際には、新たな基板7をチャンバ1の内部へ搬入する。前述のように、大きさ、厚みおよび材質などが同一であれば同一の基板でなくても温度分布は同様であるので、サセプタ8の位置調整を改めて行わずに搬入することが可能である。
【0087】
上記は、図2のサセプタを用いる例であるが、図5のサセプタを用いる場合には、次のようにして成膜処理を行うことができる。
【0088】
まず、上記と同様にして基板7の温度分布を測定しておく。
【0089】
次に、基板7がサセプタ8上に載置されていない状態で、図3に示すように、第2のサセプタ部8bを上方へ突き上げる。次いで、回転筒17を回転させて、基板7の温度分布に対応するように第1のサセプタ部8a’の位置を調整する。すなわち、第2のサセプタ部8bが第1のサセプタ部8a’に勘合しヒータ9で加熱されたときに、第2のサセプタ部8bの高温部が基板7の低温部に対応するようにする。この調整は、作業者が手動で行うことができるが、図示しない制御部にサセプタ8の温度分布と基板7の温度分布を入力し、制御部から回転機構310へ信号を送って、回転筒17の位置調整を自動で行うようにしてもよい。
【0090】
次に、図1に示すように、ロボットハンド48で基板7をチャンバ1の内部へ搬送する(図6のS108)。尚、ロボットハンド48は、基板7の中心とサセプタ8の中心とが一致するように位置調整されているとする。
【0091】
次いで、図3に示すように、ロボットハンド48から基板支持部50へ基板7を受け渡す。このとき、基板支持部50は、第2のサセプタ部8bを突き上げた状態で上昇しているため、基板7は、第2のサセプタ8bの上に載置される。
【0092】
基板7が基板支持部50へ受け渡された後は、基板支持部50を下降させる。すると、基板7は、第1のサセプタ部8a’の座ぐり部8a’(図5)に付き当たり、第1のサセプタ部8a’に支持された状態で停止する。一方、第2のサセプタ部8bは、基板7から離れて基板支持部50とともに下降を続けた後、第1のサセプタ部8bの座ぐり部8a’(図5)に付き当たり、第1のサセプタ部8a’の開口部分を密嵌して停止する。これにより、基板7と第2のサセプタ部8bとの間に隙間が設けられた状態で、基板7はサセプタ8の上に載置される。尚、基板支持部50は、さらに下降を続けた後に定位置で停止する。
【0093】
以上の操作によれば、基板7の温度分布とサセプタ8の温度分布が対応した状態で基板7がサセプタ8上に載置される。すなわち、図5に示すように、サセプタ8上に基板7が載置されたときに、サセプタ8の厚みの大きい部分、すなわち、サセプタ8の高温部が基板7の低温部と対向し、サセプタ8の厚みが小さい部分、すなわち、サセプタ8の低温部が基板7の高温部と対向するように、サセプタ8上に基板7が載置される。
【0094】
基板7をサセプタ8の上に載置した後は、上記と同様にしてSiCエピタキシャル膜の成膜を行う。尚、温度分布の測定に用いた基板7については、エピタキシャル膜を成膜することなく搬出してもよく、また、一旦チャンバ1から搬出し、回転筒17で第1のサセプタ部8aの位置調整を行った後に、再度チャンバ1の内部へ搬送してエピタキシャル膜の成膜処理に使用することもできる。
【0095】
本実施の形態の成膜方法によれば、周方向に厚みの異なる形状のサセプタ8を用いるので、サセプタ8に温度分布を生じさせて、基板7の温度分布を解消することができる。つまり、基板7がサセプタ8に接触していないことによって、基板7の温度が低くなる箇所については、サセプタ8の厚みが大きく高温となる部分が位置するようにする。これにより、基板7の温度が高くなるようにすることができる。一方、基板7の温度が高くなる箇所については、サセプタ8の厚みが小さく低温となる部分が位置するようにする。このようにすることで、基板7の温度を均一にすることができるので、基板7上に、均一な膜厚のエピタキシャル膜を形成することが可能となる。また、基板7の特定個所に熱応力が集中してスリップが生じるのを防ぐこともできので、ICデバイスの歩留まりを向上させることが可能となる。
【0096】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上述の実施の形態では、基板を回転させながら基板上に膜を形成する例について述べたが、本発明では、基板を回転させない状態で膜を形成してもよい。
【0097】
また、上記実施の形態では、成膜装置の一例としてエピタキシャル成長装置を挙げ、SiC結晶膜の形成について説明したが、これに限られるものではない。反応室内に反応ガスを供給し、反応室内に載置される基板を加熱して基板の表面に膜を形成するものであれば、他の成膜装置であってもよく、また、他のエピタキシャル膜の形成に用いることもできる。
【0098】
さらに、装置の構成や制御の手法など、本発明に直接必要としない部分などについては記載を省略したが、実施に必要とされる装置の構成や、制御の手法などを適宜選択して用いることができる。
【0099】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更し得る全ての成膜装置および各部材の形状は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0100】
1、201 チャンバ
1a 内壁
2、202 ライナ
2a 胴部
2b 頭部
3、203 流路
4、204 反応ガス
5、205 供給口
6、206 排気口
7、207 基板
8、208 サセプタ
8a、8a’、208a 第1のサセプタ部
8a、8a、8a’、8a’、208a 座ぐり部
8b、208b 第2のサセプタ部
9、209 ヒータ
9a インヒータ
9b アウトヒータ
10、13、210、213 フランジ
11、14、211、214 パッキン
12、212 配管
15、215 シャワープレート
15a 貫通孔
16、216 回転軸
17、217 回転筒
20、220 ブースバー
21、221 ヒータベース
22、222 連結部
23、223 電極棒
24a、24b、224a、224b 放射温度計
46、47、246、247 基板搬出入口
48、248 ロボットハンド
50 基板支持部
100、200 成膜装置
101、301 ベースプレート
102、302 ベルジャ
103、303 ベースプレートカバー
300 エンコーダ
304 エンコーダヘッド
305 回転板
306 エンコーダピックアップ
310 回転機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスが供給されて成膜処理が行われる反応室と、
前記反応室に配置されて基板が載置されるサセプタと、
前記サセプタを下方から加熱する加熱部とを有する成膜装置であって、
前記サセプタは周方向に厚みの異なる形状であることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記サセプタは、リング状の第1のサセプタ部と、
前記第1のサセプタ部に接して設けられ、前記第1のサセプタ部の開口部分を遮蔽する第2のサセプタ部とを有し、
前記第2のサセプタ部の前記加熱部に対向する面が水平面から傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記第1のサセプタ部は、前記第2のサセプタ部の厚みに対応した周方向に異なる形状を有することを特徴とする請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
搬送部により反応室に基板を搬送してサセプタ上に該基板を載置する工程と、
前記サセプタの下方から加熱部で前記基板を加熱しつつ、前記反応室に設けられた回転部を介して前記サセプタを回転させながら前記基板の温度測定を行うとともに、前記基板の回転方向と回転角度を検出して前記基板の温度分布データを作成する工程と、
周方向に厚みの異なる形状を有するサセプタを用い、前記温度分布データを基に、前記基板の温度が低くなる箇所に該サセプタの厚みが大きくなる部分が位置し、前記基板の温度が高くなる箇所に該サセプタの厚みが小さくなる部分が位置するように、前記搬送部または前記回転部の位置を調整する工程と、
前記基板と同一の基板または同じ種類の異なる基板を前記反応室に搬送し、前記周方向に厚みの異なる形状を有するサセプタの上に該基板を載置した後、前記反応室に反応ガスを供給し、該基板を加熱しながら、該基板の上に所定の膜を形成する工程とを有し、
前記温度分布データを作成する際に使用するサセプタは、周方向の厚みが均一であるサセプタまたは前記周方向に厚みの異なる形状を有するサセプタであることを特徴とする成膜方法。
【請求項5】
前記周方向に厚みの異なる形状を有するサセプタは、リング状の第1のサセプタ部と、
前記第1のサセプタ部に接して設けられ、前記第1のサセプタ部の開口部分を遮蔽する第2のサセプタ部とを有し、
前記第2のサセプタ部の前記加熱部に対向する面が水平面から傾斜していることを特徴とする請求項4に記載の成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−98340(P2013−98340A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239707(P2011−239707)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】