説明

有機薄膜トランジスタ、有機薄膜トランジスタの製造方法、および電子機器

【課題】有機材料からなる下地の絶縁性層に対してダメージを与えることなく、かつ上部に設けられる有機半導体層に対して良好なオーミックコンタクトが得られるソース電極およびドレイン電極を低コストで得ることを可能にする。
【解決手段】有機絶縁層からなる基板11と、基板11上にめっき成膜された層からなるソース電極13sおよびドレイン電極13dの第1層13-1と、第1層13-1よりも有機半導体材料に対して低オーミック接合を形成する金属材料からなり第1層13-1を覆う状態でめっき成膜されたソース電極13sおよびドレイン電極13dの第2層13-2と、第1層13-1および第2層13-2で構成されたソース電極13sおよびドレイン電極13d間にわたって設けられた有機半導体層15とを備えた有機薄膜トランジスタ1aである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜トランジスタ、有機薄膜トランジスタの製造方法、および電子機器に関し、特にはソース電極とドレイン電極との上層に有機半導体層を設けてなるボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタとその製造方法、さらにはこの有機薄膜トランジスタを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、活性層として有機半導体層を用いた薄膜トランジスタ、いわゆる有機薄膜トランジスタが注目されている。有機薄膜トランジスタは、活性層となる有機半導層を塗布成膜によって低温で形成することが可能であるため、低コスト化に有利であると共に、プラスチック等の耐熱性のないフレキシブルな基板上への形成も可能である。また、活性層だけではなく、ゲート絶縁膜、ソース・ドレイン電極、さらにはゲート電極も、塗布系材料を用いることにより、印刷法によるパターン形成が可能となるため、さらなる低コスト化が図られると共に、基板の大面積化が可能になる。
【0003】
このような有機薄膜トランジスタにおいては、有機半導体層と良好なオーミックコンタクトを形成可能なソース・ドレイン電極を用いることが、トランジスタ特性の向上を図る上で重要である。このようなソース・ドレイン電極材料としては、例えば無機材料であれば、金(Au)、プラチナ(Pt)、さらにはパラジウム(Pd)が用いられている。これらの材料は、p型有機半導体と良好なオーミックコンタクトを有する材料として知られている。また有機材料であれば、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸の混合材料や、ドープされたポリアニリン、カーボンナノチューブ等を用いることが報告されている。
【0004】
また、デバイス寿命の長期化を目的としたソース・ドレイン電極の形成方法も提案されている。この場合、例えば窒化チタン(TiNx)や導電ペーストからなるベース層をパターン形成し、このパターンにニッケル(Ni)を無電界めっきで形成し、その後さらに置換めっきによってNiの表面をAuに置き換える。これにより、窒化チタン(TiNx)や導電ペーストからなるベース層が、Ni層を介してAu層で覆った構成のソース・ドレイン電極が形成される(例えば下記特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−203364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、以上のような各構成のソース・ドレイン電極を備えた有機薄膜トランジスタは、次のような課題があった。
【0007】
すなわち、p型有機半導体と良好なオーミックコンタクトを有する材料として知られているAu,Pt,Pdは高価である。このため、これらの材料を大量に用いることは、有機薄膜トランジスタの低コスト化に不向きである。またこれらの材料は、有機絶縁膜上に従来のスパッタリング法で形成しようとすると、プラズマ中に存在する高いエネルギーの分子や、高い温度や高い電界によって生じた高いエネルギーをもつ金属によって下地層にダメージが加わる。このため、例えば下地が有機半導体層であるトップコンタクト型の有機薄膜トランジスタの製造に不向きであるばかりで無く、下地が有機材材料からなるゲート絶縁膜や基板であるボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタの製造にも不向きである。
【0008】
またさらに、ドープされたポリアニリンやカーボンナノチューブ等の有機材料は、塗布プロセスで形成できると共に、p型の有機半導体とオーミックコンタクトを形成することが知られているが、導電性が十分ではない。このため、ソース・ドレイン電極と同一層に配線が設けられる電子機器においては、これらの配線を導電性が不十分なソース・ドレイン電極と同一構成にすることはできない。このことは、ソース・ドレイン電極の構成材料に有機材料を適用することの妨げになっている。
【0009】
そして上記特許文献1に開示されたソース・ドレイン電極の形成方法では、先ず、TiNxまたは導電性ペーストを用いたベース層が形成されることになる。このうちTiNxからなるベース層の形成ではスパッタ法での成膜が行われるが、スパッタ法による成膜では、金属原子が下地層に拡散する現象が生じる。また、導電性ペーストを用いたベース層の形成においても、導電性ペーストをパターン印刷した後に行われる焼成において、金属原子が下地層に拡散する現象が生じる。そしてこのような金属原子の下地層への拡散は、素子特性を劣化させる要因となる。
【0010】
そこで本発明は、有機材料からなる下地の絶縁性層に対してダメージを与えることなく、かつ上部に設けられる有機半導体層に対して良好なオーミックコンタクトが得られるソース電極およびドレイン電極を低コストで得ることを可能にする。そしてこれにより、低コストでありながらも特性の良好な有機薄膜トランジスタを提供すること、さらにはこの有機薄膜トランジスタの製造方法、およびこの有機薄膜トランジスタを有する電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するための本発明の有機薄膜トランジスタは、有機絶縁層と、この上部に設けたソース電極およびドレイン電極と、ソース電極およびドレイン電極間にわたって設けられた有機半導体層とを備えている。そして特に、ソース電極とドレイン電極とは、第1層と、第1層を覆う第2層とで構成されている。第1層は、有機絶縁層上にめっき成膜された層からなる。また第2層は、第1層よりも有機半導体材料に対して低オーミック接合を形成する金属材料からなり当該第1層を覆う状態でめっき成膜された層である。
【0012】
また本発明の有機薄膜トランジスタの製造方法は、次の工程を順次行なう。先ず第1工程では、有機絶縁層上に、金属材料膜を無電解めっきによって成膜する。第2工程では、金属材料膜をパターニングすることによりソース電極およびドレイン電極の第1層を形成する。第3工程では、第1層の露出表面に、当該第1層よりも有機半導体材料に対して低オーミック接合を形成する金属材料からなるソース電極およびドレイン電極の第2層を無電解めっきによって形成する。これにより、第1層と第2層とからなるソース電極およびドレイン電極を形成する。その後第4工程では、ソース電極およびドレイン電極間にわたって有機半導体層を形成する。
【0013】
また本発明の電子機器は、以上のような構成の有機薄膜トランジスタを有する電子機器である。
【0014】
以上の構成では、第1層の表面を第2層が覆っているため、この第2層に対して有機半導体層が接合された状態となる。そして、有機半導体材料に対して低オーミック接合を形成する金属材料からなる第2層で第1層を覆った構成であるため、第1層に対してはオーミック特性が要求されることはなく、低コスト材料での構成が可能である。また第1層は金属材料からなるため、導電性が良好である。またさらに、ソース電極およびドレイン電極を構成する第1層とこの表面を覆う第2層との両方ともが、めっき成膜された層からなる。このためソース電極およびドレイン電極は、スパッタや焼成などの処理によって下地に対してダメージを加えること無く形成されたものとなる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、有機材料からなる下地の絶縁性層に対してダメージを与えることなく、かつ上部に設けられる有機半導体層に対して良好なオーミックコンタクトが得られるソース電極およびドレイン電極を低コストで得ることが可能である。またこれにより、低コストでありながらも特性の良好な有機薄膜トランジスタおよびこの有機薄膜トランジスタを有することによって特性の良好な電子機器を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を適用した各実施の形態を、図面に基づいて説明する。尚、第1実施形態から第3実施形態においては、有機薄膜トランジスタの構成、有機薄膜トランジスタの製造方法の順に説明し、その後、電子機器としての表示装置の実施形態を説明する。
【0017】
≪第1実施形態の有機薄膜トランジスタの構成≫
図1(a)は第1実施形態の有機薄膜トランジスタの断面図であり、図1(b)は第1実施形態の有機薄膜トランジスタの平面図である。尚、図1(a)は、図1(b)のA−A’断面に相等する。
【0018】
これらの図に示す有機薄膜トランジスタ1aは、トップゲート・ボトムコンタクト型の薄膜トランジスタとして構成されており、基板11側から順に、ソース電極13sおよびレイン電極13d、有機半導体層15、ゲート絶縁膜17、およびゲート電極19を備えている。このうち特にソース電極13sおよびドレイン電極13dが、第1層13-1と第2層13-2との積層構造であるところが特徴的である。以下、基板11側から順に詳細な構成を説明する。
【0019】
基板11は、例えばプラスチックのような有機絶縁層で一体形成されたもの、またはガラス基板や石英基板などからなる支持基板の表面側を、有機絶縁層で覆った構成となっている。支持基板の表面側を覆う有機絶縁層としては、例えばポリビニルフェノール(polyvinylphenol:PVP)、ポリメチルメタクリレート(Polymethylmethacrylate:PMMA)、さらにはPVPとオクタデシルトリクウロロシラン(octadeciltriclorosilane:OTS)との混合物のような塗布系の有機材料が好適に用いられる。ここでは一例として、フレキシブルな屈曲性を有するプラスチックからなる基板11を用いることとする。
【0020】
この基板11上に設けられるソース電極13sおよびドレイン電極13dを構成する層のうち、第1層13-1は、有機材料からなる絶縁層である基板11上にめっき成膜された層からなるものである。このような第1層13-1は、導電性の良好な金属材料を用いて構成され、例えばタングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等の金属材料膜が用いられる。このうち特に、NiおよびCuの少なくとも1つを単体でまたは合金として用いることにより、高い導電性が維持された層であることが好ましい。このような第1層13-1は、ソース電極13sおよびドレイン電極13dの形状にパターニングされている。
【0021】
また第2層13-2は、第1層13-1よりも、有機半導体材料からなる有機半導体層15に対して低オーミック接合を形成する金属材料からなることとする。このような第2層13-2を構成する金属材料は、例えば有機半導体層15がp型半導体であれば、金(Au)、プラチナ(Pt)、およびパラジウム(Pd)の少なくとも1つを単体でまたは合金として用いることが好ましい。またこのような第2層13-2は、第1層13-1の表面を覆う状態でめっき成膜された層からなり、基板11上に設けられた第1層13-1の露出表面の全面を覆って設けられている。
【0022】
また有機半導体層15は、ソース電極13sおよびドレイン電極13d間にわたって設けられる。この有機半導体層15は、対向配置されたソース電極13sおよびドレイン電極13dにおける第2層13-2に接する状態で基板11上に設けられていることが重要である。またこの有機半導体層15は、ここでの図示を省略した隣接する有機薄膜トランジスタ1aとの素子分離のため、基板11上において島状にパターニングされていることとする。このような有機半導体層15は、ここでは例えばペンタセン、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ルブレン等のp型半導体からなることとする。
【0023】
そしてゲート絶縁膜17は、有機半導体層15と共に、ソース電極13sおよびドレイン電極13dが形成された基板11上を覆う状態で設けられている。このゲート絶縁膜17は、例えばポリビニルフェノール、PMMA、ポリイミド、フッ素樹脂等の塗布や印刷によって成膜可能な有機高分子材料が好適に用いられる。またゲート絶縁膜17は、CVD法やスパッタ法によって成膜される酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機材料と有機高分子材料の多層膜であっても良い。
【0024】
またこのゲート絶縁膜17上に設けられたゲート電極19は、対向配置されたソース電極13s−ドレイン電極13d間にわたって有機半導体層15上に配置されることが重要である。このようなゲート電極19は、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等のスパッタリング法、蒸着法、あるいはめっき法によって成膜された金属材料膜をパターニングしてなるもであって良い。またゲート電極17は、金(Au)微粒子や銀(Ag)微粒子等を含有するインクペーストを用いたインクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等の印刷技術によってパターン形成されたものであっても良い。
【0025】
≪第1実施形態の有機薄膜トランジスタの製造方法≫
図2は、以上のような構成の有機薄膜トランジスタの製造手順の一例を示す断面工程図である。次にこれらの断面工程図に基づいて第1実施形態の有機薄膜トランジスタ1aの製造方法を説明する。
【0026】
先ず、図2(1)に示すように、少なくとも表面が有機材料からなる絶縁層で構成された基板11(ここでは例えばプラスチック基板)を用意する。そしてその表面を、パラジウム塩や銀塩を含む溶液に曝して触媒処理を行い、次の無電解めっきが効果的に行なわれるようにする。またこのような触媒処理を効果的に行うために、触媒処理に先立って予め基板11の表面にアミノシランカップリング処理を行うか、またはアミノシランカップリング剤を含んだ樹脂を基板11表面に塗布する。
【0027】
次に、基板11の表面全体に対して無電解めっき法によってNiおよびCuの少なくとも一方を用いた金属材料膜21を成膜する。
【0028】
例えば、Niからなる金属材料膜21を成膜するのであれば、無電界Niめっき液として、硫酸ニッケル25g/L、次亜リン酸ナトリウム20g/L、酢酸ナトリウム10g/L、クエン酸ナトリウム10g/Lからなる水溶液を用いた無電界Niめっきを行なう。また、Cuからなる金属材料膜21を成膜するのであれば、無電解Cuめっき液として、硫酸銅10g/L、ホルマリン20ml/L、水酸化ナトリウム10g/L、EDTA4Na25g/Lからなる水溶液を用いた無電界Cuめっきを行う。
【0029】
尚、金属材料膜21は、めっき法を適用して基板11上に成膜される導電性の良好な膜であれば、NiやCuを用いた合金であっても良く、さらにはW、Ta、Mo、Al、Cr、Ti等の金属材料膜を用いても良い。
【0030】
その後、図2(2)に示すように、フォトリソグラフィーにより金属材料膜21上にレジストパターン(図示省略)を形成し、これをマスクにして金属材料膜21をエッチングする。これにより、基板11上に、ソース電極(13s)およびドレイン電極(13d)の第1層13-1をパターン形成する。この際、例えばNiからなる金属材料膜21のエッチングには、硝酸と硫酸と燐酸との混酸水溶液をエッチャントとして用いたウェットエッチングを行う。またエッチング終了後には、レジストパターンを剥離する。
【0031】
次に、図2(3)に示すように、第1層13-1の露出面を金シアン化カリウムとアンモニアとの水溶液に浸すことにより、NiやCuを用いた第1層13-1の露出表面をAuで置換めっきしてなる第2層13-2を成膜する。尚、この第2層は、Auめっき層以外にも、Ptめっき層、またはPdめっき層、さらにはこれらの金属の合金のめっき層であっても良い。また、この第2層13-2の形成は、第1層13-1の表面層に対する置換めっき法に限定されず、無電解めっき法によって第1層13-1の露出表面のみに金属材料を析出させても良い。
【0032】
以上により、基板11上にパターン形成された第1層13-1の露出表面を第2層13-2で覆ったソース電極13sおよびドレイン電極13dが形成される。
【0033】
次いで図2(4)に示すように、ソース電極13sおよびドレイン電極13d間にわたる基板11上に、有機半導体層15をパターン形成する。ここでは必要に応じて、有機半導体層15の形成部を囲む形状のバンク(土手:図示を省略)をパターン形成しておく。その後、蒸着法、塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷、さらにはグラビア印刷等の印刷技術により、ソース電極13sおよびドレイン電極13d間にわたる所定位置に有機半導体層15を形成する。
【0034】
以上の後には、図2(5)に示すように、有機半導体層15と共に、ソース電極13sおよびドレイン電極13dを覆う状態で、ゲート絶縁膜17を成膜する。このゲート絶縁膜17は、例えばポリビニルフェノール、PMMA、ポリイミド、フッ素樹脂等の塗布や印刷によって成膜可能な有機高分子材料が好適に用いられる。またゲート絶縁膜17は、CVD法やスパッタ法によって成膜される酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機材料と有機高分子材料の多層膜であっても良い。
【0035】
以上の後には、図2(5)に示すように、有機半導体層15と共に、ソース電極13sおよびドレイン電極13dを覆う状態で、ゲート絶縁膜17を成膜する。この際、酸化シリコンや窒化シリコン等の無機材料からなるゲート絶縁膜17であれば、CVD法やスパッタリング法による成膜を行う。一方、ポリビニルフェノール、PMMA、ポリイミド、フッ素樹脂等の有機高分子材料からなるゲート絶縁膜17であれば、塗布法や印刷法による成膜を行なう。
【0036】
次に、図2(6)に示すように、ゲート絶縁膜17を介して有機半導体層15上にゲート電極19を形成する。この場合、例えば先ず、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等の金属材料膜を、スパッタリング法、蒸着法、あるいはめっき法によって成膜する。その後、フォトリソグラフィーにより金属材料膜上にレジストパターン(図示省略)を形成し、これをマスクにして金属材料膜をエッチングする。これにより、ゲート絶縁膜17上にゲート電極19をパターン形成する。また別の方法としては、金(Au)微粒子や銀(Ag)微粒子等を含有するインクペーストを用いたインクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等の印刷技術によってゲート電極19をパターン形成しても良い。
【0037】
以上により、図1を用いて説明した構成の有機薄膜トランジスタ1aが得られる。尚、トランジスタの信頼性,耐環境性を向上させるために、ポリビニルアルコール、ペリレン、窒化シリコン、または酸化シリコン等からなる保護膜によって薄膜トランジスタ1aをうことが好ましい。
【0038】
以上の第1実施形態によれば、ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタ1aにおいて、ソース電極13sおよびドレイン電極13dの構成を、有機半導体材料に対して低オーミック接合を形成する金属材料からなる第2層13-2で第1層13-1を覆った構成とした。このため、第1層13-1に対してはオーミック特性が要求されることはなく、低コスト材料での構成が可能である。また第1層13-1は金属材料からなるため、導電性が良好である。またさらに、ソース電極13sおよびドレイン電極13dを構成する第1層13-1とこの表面を覆う第2層13-2との両方ともが、めっき成膜された層からなる。このためソース電極13sおよびドレイン電極13dは、スパッタや焼成などの処理によって下地の有機絶縁層からなる基板11に対してダメージを加えること無く形成されたものとなる。
【0039】
以上の結果、有機材料からなる基板11の表面に対してダメージを与えることなく、かつ上部に設けられる有機半導体層15に対して良好なオーミックコンタクトが得られるソース電極13sおよびドレイン電極13dを低コストで得ることが可能である。またこれにより、特性の良好な有機薄膜トランジスタ1aを低コストで得ることが可能になる。
【0040】
≪第2実施形態の有機薄膜トランジスタの構成≫
図3(a)は第2実施形態の有機薄膜トランジスタの断面図であり、図3(b)は第2実施形態の有機薄膜トランジスタの平面図である。図3(a)は、図3(b)のA−A’断面に相等する。以下、図1を用いて説明した第1実施形態の有機薄膜トランジスタと同一の構成要素には同一の符号を付して、第2実施形態の有機薄膜トランジスタ1bの構成を説明する。
【0041】
これらの図に示す有機薄膜トランジスタ1bは、ボトムゲート・ボトムコンタクト型の薄膜トランジスタとして構成されており、基板11’側から順に、ゲート電極19、ゲート絶縁膜17’、ソース電極13sおよびレイン電極13d、および有機半導体層15を備えている。そして第1実施形態で説明したと同様に、このうち特にソース電極13sおよびドレイン電極13dが、第1層13-1と第2層13-2との積層構造であるところが特徴的である。以下、基板11’側から順に詳細な構成を説明する。
【0042】
基板11’は、少なくとも表面側が絶縁性材料で構成されていれば良く、例えばプラスチック基板、ガラス基板、石英基板、さらには支持基板の表面側が有機または無機の絶縁層で覆われた基板を用いることができる。ここでは一例として、フレキシブルな屈曲性を有するプラスチックからなる基板11’を用いることとする。
【0043】
この基板11’上に設けられたゲート電極19は、第1実施形態と同様であって良く、この上部に互いに対向配置されているソース電極13s−ドレイン電極13d間にわたって配置されることが重要である。このようなゲート電極19は、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等のスパッタリング法、蒸着法、あるいはめっき法によって成膜された金属材料膜をパターニングしてなるもであって良い。またゲート電極17は、金(Au)微粒子や銀(Ag)微粒子等を含有するインクペーストを用いたインクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等の印刷技術によってパターン形成されたものであっても良い。
【0044】
ゲート絶縁膜17’は有機材絶縁層として構成されており、ゲート電極19が形成された基板11’上を覆う状態で設けられている。このゲート絶縁膜17’は、例えばポリビニルフェノール、PMMA、ポリイミド、フッ素樹脂等の塗布や印刷によって成膜可能な有機高分子材料が好適に用いられる。またゲート絶縁膜17は、CVD法やスパッタ法によって成膜される酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機材料や,有機高分子材料と無機材料の多層膜あっても良い。
【0045】
そしてゲート絶縁膜17’上に設けられるソース電極13sおよびドレイン電極13dを構成する第1層13-1と第2層13-2とは、第1実施形態と同様である。すなわち第1層13-1は、有機材料からなる絶縁層であるゲート絶縁膜17’上にめっき成膜された層からなるものである。このような第1層13-1は、導電性の良好な金属材料を用いて構成され、例えばタングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等の金属材料膜が用いられる。このうち特に、NiおよびCuの少なくとも1つを単体でまたは合金として用いることにより、高い導電性が維持された層であることが好ましい。このような第1層13-1は、ソース電極13sおよびドレイン電極13dの形状にパターニングされている。
【0046】
また第2層13-2は、第1層13-1よりも、有機半導体材料からなる有機半導体層15に対して低オーミック接合を形成する金属材料からなることとする。このような第2層13-2を構成する金属材料は、例えば有機半導体層15がp型半導体であれば、金(Au)、プラチナ(Pt)、およびパラジウム(Pd)の少なくとも1つを単体でまたは合金として用いることが好ましい。またこのような第2層13-2は、第1層13-1の表面を覆う状態でめっき成膜された層からなり、基板11’上に設けられた第1層13-1の露出表面の全面を覆って設けられている。
【0047】
また有機半導体層15は、ソース電極13sおよびドレイン電極13d間にわたって設けられる。この有機半導体層15は、対向配置されたソース電極13sおよびドレイン電極13dにおける第2層13-2に接する状態でゲート絶縁膜17’上に設けられていることが重要である。またこの有機半導体層15は、ここでの図示を省略した隣接する有機薄膜トランジスタ1bとの素子分離のため、ゲート絶縁膜17’上において島状にパターニングされていることとする。このような有機半導体層15は、ここでは例えばペンタセン、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ルブレン等のp型半導体からなることとする。
【0048】
≪第2実施形態の有機薄膜トランジスタの製造方法≫
図4は、以上のような構成の有機薄膜トランジスタの製造手順の一例を示す断面工程図である。次にこれらの断面工程図に基づいて第2実施形態の有機薄膜トランジスタ1bの製造方法を説明する。
【0049】
先ず、図4(1)に示す様に、少なくとも表面が絶縁材料で構成された基板11’を用意する。そしてこの上部に、ゲート電極19を形成する。この場合、例えば先ず、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)等の金属材料膜を、スパッタリング法、蒸着法、あるいはめっき法によって成膜する。その後、フォトリソグラフィーにより金属材料膜上にレジストパターン(図示省略)を形成し、これをマスクにして金属材料膜をエッチングする。これにより、ゲート絶縁膜17’上にゲート電極19をパターン形成する。また別の方法としては、金(Au)微粒子や銀(Ag)微粒子等を含有するインクペーストを用いたインクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等の印刷技術によってゲート電極19をパターン形成しても良い。
【0050】
以上の後には、図4(2)に示すように、ゲート電極19を覆う状態で基板11’上に有機絶縁層としてのゲート絶縁膜17’を成膜する。この際例えば、ポリビニルフェノール、PMMA、ポリイミド、フッ素樹脂等の有機高分子材料を塗布法や印刷法によって成膜する。ゲート絶縁膜17は、酸化シリコンや窒化シリコンなどの無機材料をCVD法やスパッタ法によって成膜したり、上記の方法を組み合わせて有機高分子材料と無機材料の多層膜を形成してもよい。
【0051】
次に、ゲート絶縁膜17’の表面をパラジウム塩や銀塩を含む溶液に曝して触媒処理を行うことにより、次の無電解めっきが効果的に行なわれるようにする。また、このような触媒処理を効果的に行うためには、触媒処理の前に、ゲート絶縁膜表面にアミノシランカップリング処理を行うか、またはアミノシランカップリング剤を含んだ樹脂をゲート絶縁膜17’の表面に塗布する。尚、ゲート絶縁膜17’が高分子有機材料からなる場合は、アミノシランカップリング剤をゲート絶縁膜17’に予め混合しておいても良い。
【0052】
以上の後、図4(3)に示すように、ゲート絶縁膜17’の表面全体に対して無電解めっき法によってNiおよびCuの少なくとも一方を用いた金属材料膜21を成膜する。
【0053】
例えば、Niからなる金属材料膜21を成膜するのであれば、無電界Niめっき液として、硫酸ニッケル25g/L、次亜リン酸ナトリウム20g/L、酢酸ナトリウム10g/L、クエン酸ナトリウム10g/Lからなる水溶液を用いた無電界Niめっきを行なう。また、Cuからなる金属材料膜21を成膜するのであれば、無電解Cuめっき液として、硫酸銅10g/L、ホルマリン20ml/L、水酸化ナトリウム10g/L、EDTA4Na25g/Lからなる水溶液を用いた無電界Cuめっきを行う。
【0054】
尚、金属材料膜21は、めっき法を適用してゲート絶縁膜17’上に成膜される導電性の良好な膜であれば、NiやCuを用いた合金であっても良く、さらにはW、Ta、Mo、Al、Cr、Ti等の金属材料膜を用いても良い。
【0055】
その後、図4(4)に示すように、フォトリソグラフィーにより金属材料膜21上にレジストパターン(図示省略)を形成し、これをマスクにして金属材料膜21をエッチングする。これにより、ゲート絶縁膜17’上に、ソース電極(13s)およびドレイン電極(13d)の第1層13-1をパターン形成する。この際、例えばNiからなる金属材料膜21のエッチングには、硝酸と硫酸と燐酸との混酸水溶液をエッチャントとして用いたウェットエッチングを行う。またエッチング終了後には、レジストパターンを剥離する。
【0056】
次に、図4(5)に示すように、第1層13-1の露出面を金シアン化カリウムとアンモニアとの水溶液に浸すことにより、NiやCuを用いた第1層13-1の露出表面をAuで置換めっきしてなる第2層13-2を成膜する。尚、この第2層は、Auめっき層以外にも、Ptめっき層、またはPdめっき層、さらにはこれらの金属の合金のめっき層であっても良い。また、この第2層13-2の形成は、第1層13-1の表面層に対する置換めっき法に限定されず、無電解めっき法によって第1層13-1の露出表面のみに金属材料を析出させても良い。
【0057】
以上により、有機絶縁層としてのゲート絶縁膜17’上にパターン形成された第1層13-1の露出表面を第2層13-2で覆ったソース電極13sおよびドレイン電極13dが形成される。
【0058】
次いで図4(6)に示すように、ソース電極13sおよびドレイン電極13d間にわたるゲート絶縁膜17’上に、有機半導体層15をパターン形成する。ここでは必要に応じて、有機半導体層15の形成部を囲む形状のバンク(土手:図示を省略)をパターン形成しておく。その後、蒸着法、塗布法、インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷、さらにはグラビア印刷等の印刷技術により、ソース電極13sおよびドレイン電極13d間にわたる所定位置に有機半導体層15を形成する。バンクを形成した場合には、有機半導体層15を形成した後にバンクを除去することにより、バンクで囲まれた形状に形状精度良好に整形された有機半導体層15が得られる。
【0059】
以上により、図3を用いて説明した構成の有機薄膜トランジスタ1bが得られる。尚、トランジスタの信頼性,耐環境性を向上させるために、ポリビニルアルコール、ペリレン、窒化シリコン、または酸化シリコン等からなる保護膜によって薄膜トランジスタ1bをうことが好ましい。
【0060】
以上の第2実施形態によれば、ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタ1bにおいて、ソース電極13sおよびドレイン電極13dの構成を、有機半導体材料に対して低オーミック接合を形成する金属材料からなる第2層13-2で第1層13-1を覆った構成とした。このため、第1実施形態と同様に、第1層13-1に対してはオーミック特性が要求されることはなく、低コスト材料での構成が可能である。また第1層13-1は金属材料からなるため、導電性が良好である。またさらに、ソース電極13sおよびドレイン電極13dを構成する第1層13-1とこの表面を覆う第2層13-2との両方ともが、めっき成膜された層からなる。このためソース電極13sおよびドレイン電極13dは、スパッタや焼成などの処理によって下地の有機絶縁層としてのゲート絶縁膜17’に対してダメージを加えること無く形成されたものとなる。
【0061】
以上の結果、有機材料からなるゲート絶縁膜17’の表面に対してダメージを与えることなく、かつ上部に設けられる有機半導体層15に対して良好なオーミックコンタクトが得られるソース電極13sおよびドレイン電極13dを低コストで得ることが可能である。またこれにより、特性の良好な有機薄膜トランジスタ1aを低コストで得ることが可能になる。
【0062】
≪第3実施形態の有機薄膜トランジスタの構成≫
図5は第3実施形態の有機薄膜トランジスタの断面図である。尚、本第3実施形態の有機薄膜トランジスタの平面図は第2実施形態で示した図3(b)と同様であり、図5は図3(b)のA−A’断面に相等する。以下、図3を用いて説明した第2実施形態の有機薄膜トランジスタと同一の構成要素には同一の符号を付して、第3実施形態の有機薄膜トランジスタ1cの構成を説明する。
【0063】
この図に示す第3実施形態の有機薄膜トランジスタ1cと、図3を用いて説明した第2実施形態の有機薄膜トランジスタ(1b)とが異なるところは、ソース電極13s’およびドレイン電極13d’の構成にある。また、その他の構成は、第2実施形態の有機薄膜トランジスタ(1b)と同様であって良く、ここでの説明は省略する。
【0064】
すなわち、ソース電極13s’およびドレイン電極13d’は、第1層13-1上に第2層13-2が積層形成された形状であり、第2層13-2の周縁が第1層13-1から庇状に張り出した状態で形成されているところが特徴的である。第1層13-1および第2層13-2の材質は第1実施形態および第2実施形態と同様である。すなわち、第1層13-1は、NiやCuを用いることで導電性が維持された層であり、第2層13-2は、Au、Pt、Pdなどを用いることで有機半導体層15に対して低オーミック接合を形成する層である。
【0065】
≪第3実施形態の有機薄膜トランジスタの製造方法≫
このような形状の有機薄膜トランジスタ1cの製造方法は、第2実施形態で説明した製造手順において、ソース電極13s’およびドレイン電極13d’の形成手順のみを変更すれば良い。
【0066】
すなわち、第2実施形態において図4(1)〜図4(3)を用いて説明した手順で、基板11’上にゲート電極19およびゲート絶縁膜17’を形成し、無電解めっき法によってNiおよびCuなどの導電性野良好な金属材料膜21を成膜する。
【0067】
その後、金属材料膜21を下層の金属材料膜としてこの全面に、置換めっき法によってAu、Pt、またはPdめっき層からなる上層の金属材料膜を積層成膜する。ここではさらに無電解めっきによって上層の金属材料層の膜厚を増厚しても良い。次に、リソグラフィー法によって金属材料膜の積層膜上にレジストパターンを形成し、これをマスクに用いたエッチングのよって積層された金属材料膜をパターニングして第2層13-1および第1層13-1を形成する。その後、下層の金属材料膜21からなる第1層13-1のみを選択的に等方性エッチングする。この際、例えば第1層13-1がNiで構成されたものであれば、硝酸と硫酸と燐酸の混酸水溶液でNiからなる第1層13-1の選択的エッチングを行う。これにより、第2層13-2の庇構造を形成する。
【0068】
以上の後は、第2実施形態において図4(6)を用いて説明したと同様に、有機半導体層15をパターン形成し、有機薄膜トランジスタ1cを得る。尚、トランジスタの信頼性,耐環境性を向上させるために、ポリビニルアルコール、ペリレン、窒化シリコン、または酸化シリコン等からなる保護膜によって薄膜トランジスタ1cをうことが好ましい。
【0069】
以上の第3実施形態によれば、ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタ1cにおいて、ソース電極13s’およびドレイン電極13d’の構成を、第1層13-1上に庇を張り出した状態で第2層13-2を積層させた構成とした。そして第2層13-2は、有機半導体材料に対して低オーミック接合を形成する金属材料からなるものとした。これにより、第2層13-2の庇部分とゲート電極19との間に生じる電界により、庇部分と有機半導体層15の良好なオーミックコンタクトが形成される。
【0070】
またさらに、上述した第1実施形態および第2実施形態と同様に、ソース電極13sおよびドレイン電極13dを構成する第1層13-1と第2層13-2との両方ともが、めっき成膜された層からなる。このためソース電極13sおよびドレイン電極13dは、スパッタや焼成などの処理によって下地の有機絶縁層としてのゲート絶縁膜17’に対してダメージを加えること無く形成されたものとなる。
【0071】
以上の結果、有機材料からなるゲート絶縁膜17’の表面に対してダメージを与えることなく、かつ上部に設けられる有機半導体層15に対して良好なオーミックコンタクトが得られるソース電極13sおよびドレイン電極13dを低コストで得ることが可能である。またこれにより、特性の良好な有機薄膜トランジスタ1cを低コストで得ることが可能になる。
【0072】
≪電子機器≫
次に、上述の実施形態で説明した本発明の有機薄膜トランジスタを備えた電子機器の構成を説明する。ここでは電子機器の一例として、有機電界発光素子ELを用いたアクティブマトリックス型の表示装置を説明する。
【0073】
図6には、表示装置5の回路構成図を示す。
【0074】
この図に示すように、表示装置5の基板11上には、表示領域11aとその周辺領域11bとが設定されている。表示領域11aには、複数の走査線61と複数の信号線63とが縦横に配線されており、それぞれの交差部に対応して1つの画素aが設けられた画素アレイ部として構成されている。また周辺領域11bには、走査線61を走査駆動する走査線駆動回路65と、輝度情報に応じた映像信号(すなわち入力信号)を信号線63に供給する信号線駆動回路67とが配置されている。
【0075】
走査線61と信号線63との各交差部に設けられる画素回路は、例えばスイッチング用の薄膜トランジスタTr1、駆動用の薄膜トランジスタTr2、保持容量Cs、および有機電界発光素子ELで構成されている。
【0076】
そして、走査線駆動回路65による駆動により、スイッチング用の薄膜トランジスタTr1を介して信号線63から書き込まれた映像信号が保持容量Csに保持され、保持された信号量に応じた電流が駆動用の薄膜トランジスタTr2から有機電界発光素子ELに供給され、この電流値に応じた輝度で有機電界発光素子ELが発光する。尚、駆動用の薄膜トランジスタTr2は、共通の電源供給線(Vcc)69に接続されている。
【0077】
尚、以上のような画素回路の構成は、あくまでも一例であり、必要に応じて画素回路内に容量素子を設けたり、さらに複数のトランジスタを設けて画素回路を構成しても良い。また、周辺領域11bには、画素回路の変更に応じて必要な駆動回路が追加される。
【0078】
図6には、以上のような回路構成の表示装置5における1画素分の断面図として、薄膜トランジスタTr2,Tr1および容量素子Csと、有機電界発光素子ELとが積層された部分の断面図を示す。
【0079】
この図に示すように、各画素には薄膜トランジスタTr2,Tr1として、例えば図1で示した第1実施形態のトップゲート・ボトムコンタクト構造の有機薄膜トランジスタ(1a)が設けられている。
【0080】
有機薄膜トランジスタTr1のソース電極13sと、有機薄膜トランジスタTr2のゲート電極19bとは、ゲート絶縁膜17に設けられた接続孔17aを介して接続されている。また、有機薄膜トランジスタTr2のゲート電極19bを延設した部分と、ソース電極13sを延設した部分との間にゲート絶縁膜17を挟持させて容量素子Csが構成されている。また、図6の回路図にも示したように、有機薄膜トランジスタTr1のゲート電極19aは走査線(61)に、有機薄膜トランジスタTr1のドレイン電極13dは信号線(63)に、有機薄膜トランジスタTr2のソース電極13sは電源供給線(69)にそれぞれ延設される。
【0081】
尚、画素回路に示した信号線63および電源供給線69は、断面図のソース電極13sおよびドレイン電極13dと同一層を用いて同一の層構造で構成されていて良い。
【0082】
以上の薄膜トランジスタTr1,Tr2および容量素子Csは、例えば保護膜を介して層間絶縁膜51で覆われている。この層間絶縁膜51は、平坦化膜として構成されることが好ましい。この層間絶縁膜51とゲート絶縁膜17には、有機薄膜トランジスタTr2のドレイン電極13dに達する接続孔51aが設けられている。
【0083】
そして、層間絶縁膜51上の各画素に、接続孔51aを介して有機薄膜トランジスタTr2に接続された有機電界発光素子ELが設けられている。この有機電界発光素子ELは、層間絶縁膜51上に設けられた絶縁性パターン53で素子分離されている。
【0084】
この有機電界発光素子ELは、層間絶縁膜51上に設けられた画素電極55を備えている。この画素電極55は、各画素毎に導電性パターンとして形成され、層間絶縁膜51に設けられた接続孔51aを介して有機薄膜トランジスタTr2のドレイン電極13dに接続されている。このような画素電極55は、例えば陽極として用いられるものであり、光反射性を有して構成されていることとする。
【0085】
そして、この画素電極55の周縁が、有機電界発光素子ELを素子分離するための絶縁性パターン53で覆われている。この絶縁性パターン53は、画素電極55を広く露出させる開口窓53aを備えており、この開口窓53aが有機電界発光素子ELの画素開口となる。このような絶縁性パターン53は、例えば感光性樹脂を用いて構成され、リソグラフィー法を適用してパターニングされたものであることとする。
【0086】
そして、このような絶縁性パターン53から露出する画素電極55上を覆う状態で、有機層57が設けられている。この有機層57は、少なくとも有機発光層を備えた積層構造からなり、必要に応じて陽極(ここでは画素電極55)側から順に、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層、さらには他の層を積層してなる。また有機層57は、例えば各有機電界発光素子ELで発生させる発光光の波長毎に、少なくとも有機発光層を含む層が画素毎に異なる構成でパターン形成されていることとする。また、各波長の画素で共通の層を有していても良い。さらに、この有機電界発光素子ELが、微小共振器構造として構成されている場合、各有機電界発光素子ELから取り出す波長に合わせて有機層57の膜厚が調整されていることとする。
【0087】
以上のような有機層57を覆い、画素電極55との間に有機層57を狭持する状態で、共通電極59が設けられている。この共通電極59は、有機電界発光素子ELの有機発光層で発生させた光を取り出す側の電極であり、光透過性を有する材料で構成されていることとする。またここでは、画素電極55が陽極として機能するものであるため、この共通電極59は、少なくとも有機層57に接する側が陰極として機能する材料を用いて構成されていることとする。さらに、この有機電界発光素子ELが、微小共振器構造として構成されている場合、この共通電極59は、半透過半反射性を有する構成であることとする。尚、図6の回路図にも示したように、この共通電極59はGNDに設置されている。
【0088】
そして、以上のような画素電極55と共通電極59との間に有機層57が挟持された各画素部分が、有機電界発光素子ELとして機能する部分となる。
【0089】
またここでの図示は省略したが、各有機電界発光素子ELの形成面側は、光透過性材料からなる封止樹脂で覆われ、さらにこの封止樹脂を介して光透過性材料からなる対向基板が張り合わされた状態で表示装置5が構成されている。
【0090】
以上のような構成の表示装置5によれば、第1実施形態で説明したようにトランジスタ特性の良好な有機薄膜トランジスタ(1a)を用いて画素回路を構成しているため、表示特性の向上を図ることが可能になる。
【0091】
尚、上述した実施形態においては、図1を用いて説明した第1実施形態のトップゲート・ボトムコンタクト構造の有機薄膜トランジスタ1aを用いた表示装置を説明した。しかしながら、上述した表示装置には、図3を用いて説明した第2実施形態のボトムゲート・ボトムコンタクト構造の有機薄膜トランジスタ1bや、図5を用いて説明した第3実施形態のボトムゲート・ボトムコンタクト構造の有機薄膜トランジスタ1cを適用しても良く、同様の効果を得ることができる。さらに上述した実施形態においては、有機薄膜トランジスタを備えた電子機器の一例として、有機電界発光素子ELを用いたアクティブマトリックス型の表示装置を例示した。しかしながら本発明の電子機器は、有機薄膜トランジスタを搭載した電子機器に広く適用可能である。例えば、表示装置であれば、液晶表示装置や電気泳動型ディスプレイに適用できる。また表示装置以外にも、IDタグ、センサー等の電子機器への適用が可能であり、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】第1実施形態の有機薄膜トランジスタの断面図および平面図である。
【図2】第1実施形態の有機薄膜トランジスタの製造方法を示す断面工程図である。
【図3】第2実施形態の有機薄膜トランジスタの断面図および平面図である。
【図4】第2実施形態の有機薄膜トランジスタの製造方法を示す断面工程図である。
【図5】第3実施形態の有機薄膜トランジスタの断面図である。
【図6】実施形態の電子機器として表示装置の一例を示す断面図である。
【図7】図6の表示装置の回路構成図である。
【符号の説明】
【0093】
1a,1b,1c,Tr1,Tr2…有機薄膜トランジスタ、5…表示装置(電子機器)、11…基板(有機絶縁層)、13-1…第1層、13-2…第2層、13s,13s’…ソース電極、13d,13d’…ドレイン電極、15…有機半導体層、17…ゲート絶縁膜、17’…ゲート絶縁膜(有機絶縁層)、17a…接続孔,19,19a,19b…ゲート電極、21…金属材料膜、51…層間絶縁膜、51a…接続孔、55…画素電極(導電性パターン)、63…信号線(配線)、69…電源共通線(配線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機絶縁層と、
ソース電極およびドレイン電極を構成するもので前記有機絶縁層上にめっき成膜された層からなる第1層と、
ソース電極およびドレイン電極を構成するもので前記第1層よりも有機半導体材料に対して低オーミック接合を形成する金属材料からなり当該第1層を覆う状態でめっき成膜された第2層と、
前記第1層および第2層で構成された前記ソース電極およびドレイン電極間にわたって設けられた有機半導体層と、
を備えた有機薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記第1層を構成する金属材料は、ニッケル(Ni)および銅(Cu)の少なくとも1つであり、
前記第2層を構成する金属材料は、金(Au)、プラチナ(Pt)、およびパラジウム(Pd)の少なくとも1つである
請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記第2層は前記有機絶縁層上に設けられた前記第1層の露出表面の全面を覆っている
請求項1または2に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記有機半導体層上にゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられている
請求項1〜3のうちの1項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記有機絶縁層はゲート絶縁膜であり、
前記ゲート絶縁膜下にゲート電極が配置されている
請求項1〜3のうちの1項に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項6】
有機絶縁層上に、金属材料膜を無電解めっき法によって成膜する第1工程と、
前記金属材料膜をパターニングすることによりソース電極およびドレイン電極の第1層を形成する第2工程と、
前記第1層よりも有機半導体材料に対して低オーミック接合を形成する金属材料からなるソース電極およびドレイン電極の第2層を、めっき法によって当該第1層の露出表面に形成し、当該第1層と第2層とからなるソース電極およびドレイン電極を形成する第3工程と、
前記ソース電極およびドレイン電極間にわたって有機半導体層を形成する第4工程とを行う
有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項7】
前記第1層は、ニッケル(Ni)および銅(Cu)の少なくとも1つを用いた層であり、
前記第2層を構成する金属材料は、金(Au)、プラチナ(Pt)、およびパラジウム(Pd)の少なくとも1つである
請求項6記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項8】
前記第3工程では、前記第1層の表面層を置換する置換めっき法、または無電解めっき法によって前記第2層を形成する
請求項6または7に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項9】
有機絶縁層と、
ソース電極およびドレイン電極を構成するもので前記有機絶縁層上にめっき成膜された層からなる第1層と、
ソース電極およびドレイン電極を構成するもので前記第1層よりも有機半導体材料に対して低オーミック接合を形成する金属材料からなり当該第1層を覆う状態でめっき成膜された第2層と、
前記第1層および第2層で構成された前記ソース電極およびドレイン電極間にわたって設けられた有機半導体層とを備えた有機薄膜トランジスタを有する
電子機器。
【請求項10】
前記ソース電極およびドレイン電極と同一層に、当該ソース電極およびドレイン電極と同一の層構成の配線が設けられた
請求項9記載の電子機器。
【請求項11】
前記薄膜トランジスタを覆う層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜に設けられた接続孔を介して前記ソース電極またはドレイン電極に接続された導電性パターンとを備えた
請求項9または10に記載の電子機器。
【請求項12】
前記導電性パターンが画素電極として設けられている
請求項11記載の電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−40897(P2010−40897A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203881(P2008−203881)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】