説明

気相成長装置と半導体装置の製造方法

【課題】シランとアンモニアの混合ガスソークによる銅拡散防止絶縁膜形成前の銅配線表面処理を改善できる気相成長装置、および表面状態がよく、抵抗が低い銅配線を有する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】シランを供給できるガス供給系1aと反応室を接続する、2つ以上のバルブを含む連続バルブの1つをノーマリオープンとし、ガス供給系と排気系を接続する捨てガスライン3のノーマリクローズのバルブV14と連動させることにより、反応室内の残留ガスの影響を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置と半導体装置の製造方法に関し、特にガス供給系と反応室との間に連続バルブを備えた気相成長装置と半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路装置は、集積度の向上と共に半導体素子及び配線が微細化し、多層配線が採用される。微細化された配線の高速動作を保証しようとすると、配線の抵抗を低減することが望まれる.アルミニウムに代って、より抵抗の低い銅が配線材料として用いられている。銅配線を形成する場合、銅層を形成し、ホトリソグラフィを用いて微細にパターニングすることには限界がある。微細化された銅配線を形成するために、ダマシンプロセスが採用される。絶縁層に配線用溝及び/又はビア孔を形成し、溝及び/又はビア孔を銅配線層で埋め込み、絶縁層上の余分な銅配線層を化学機械研磨(CMP)等により除去する。ダマシンプロセスにはシングルダマシンプロセスとデュアルダマシンプロセスがある。
【0003】
シングルダマシンプロセスは、絶縁層を形成し、絶縁層に配線用リセスを開口し、銅配線層で埋め込み、CMPで不要部を除去して銅配線を形成する。ビア導電体を有する配線を形成する場合は、まず下層絶縁層にビア孔を開口し、ビア導電体を埋め込み、次に上層絶縁層を形成し、配線用溝(トレンチ)を開口し、銅配線層を埋め込む。デュアルダマシンプロセスは、絶縁層を形成し、配線用溝(トレンチ)とビア孔とを有する凹部を絶縁層に形成し、凹部を銅配線層で埋め込み、CMPで不要部を除去する。
【0004】
銅は、絶縁層中に拡散し、絶縁層の絶縁特性を劣化させる性質を有する。このため、ダマシンプロセスで銅配線を形成する場合、先ず銅の拡散を防止する機能を有するバリアメタル層を形成し、その上に銅層を形成する。バリアメタルとしては、窒化チタンTiN,窒化タンタルTaN等の窒化物やタンタルTa等が用いられる。バリアメタル層は銅配線から側方、下方への銅拡散を遮蔽する。銅配線から上方への銅拡散は銅配線層下地のバリアメタル層では防止できない。
【0005】
CMPを行なった銅配線において、表面に銅層が露出する。この銅層から上層の絶縁層へ銅が拡散することを防止するため、銅配線を形成した表面は、銅拡散防止絶縁膜で覆う。銅拡散防止絶縁膜は、上層の層間絶縁層をエッチングする時のエッチングストッパとしての機能も有する。銅拡散防止絶縁膜は、通常窒化シリコンSiNや炭化シリコンSiC等で形成される。銅配線と銅拡散防止絶縁膜は密着性が弱く、剥離などの問題を生じる可能性がある。
【0006】
銅拡散防止絶縁膜等の絶縁膜は化学気相堆積(CVD)で成膜することが多い。プラズマ促進化学気相堆積(PE−CVD)は、反応ガスをプラズマ化するCVDであり、プラズマによるエネルギを利用することにより、反応温度を低くすることができる。CVDないしPE−CVDにより成膜を行なう半導体製造装置は、成膜反応を行なう反応室と、反応室に原料ガスを供給するガス供給系と反応室内の残留ガスを排出する排気系を有する。供給するガス流量を制御するためにガス供給系にはマスフローコントローラ(MFC)が接続される。減圧下で成膜を行なう場合には排気系には真空排気ポンプが接続される。ガス同士の望ましくない反応を防止できるよう、複数のガス供給系が多く採用される。
【0007】
反応室を開けるときに外気がガス供給系内に侵入することを防止するため、反応室の上流側配管のガス供給系出力側にはバルブを配置する。複数のガスを供給できる構成の場合、反応室の上流側で複数の配管を合流する配管構成が多く用いられる。MFCに意図せぬガスが逆流しないように、各ガス供給配管のMFCの前後にバルブが設置された構成が採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−139041号公報
【特許文献2】特開平8−274029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、残留ガスの影響を抑制できる気相成長装置を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、銅拡散防止絶縁膜形成前の銅配線表面処理を改善できる気相成長装置を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、残留ガスの影響を抑制できる半導体装置の製造方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、表面状態がよく、抵抗が低い銅配線を有する半導体装置を製造できる半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の1観点によれば、
成膜を行なう反応室と、
前記反応室にガスを供給する第1のガス供給系配管であって、マスフローコントローラとその前後のバルブを備える複数の配管を含む第1のガス供給系配管と、
前記第1のガス供給系配管と前記反応室を接続する、2つ以上のバルブを含む連続バルブを有する第1の接続配管と、
前記反応室に接続された排気系配管と、
前記第1のガス供給系配管の下流と前記排気系配管を選択的に接続する第1の捨てガスバルブを含む捨てガス配管と、
を有し、前記第1の接続配管の連続バルブの内の1つのバルブと前記第1の捨てガスバルブとの一方がノーマリオープン、他方がノーマリクローズの異なるタイプであり、共通の駆動ガスによって連動する気相成長装置
が提供される。
【0014】
本発明の他の観点によれば、
ダマシン配線を形成した半導体基板を準備する工程と、
反応室と、第1のガス供給系配管と、前記第1のガス供給系配管と前記反応室を接続する2つ以上の連続バルブを含む第1の接続配管と、前記反応室に接続された排気系配管と、前記第1のガス供給系配管の下流と前記排気系配管を選択的に接続する第1の捨てガスバルブを含む捨てガス配管とを有する気相成長装置の前記反応室内に前記半導体基板を搬入し、前記第1のガス供給系配管から第1のガスを供給して第1の表面処理を行なう工程と、
前記第1のガス供給系配管を閉じ、前記第1の接続配管の2つ以上の連続バルブの内1つのバルブのみを閉じ、前記第1の捨てガスバルブを開いて残留ガスを排気する工程と、
前記第1のガス供給系配管から第2のガスを供給して第2の表面処理を行なう工程と、
を含む半導体装置の製造方法
が提供される。
【発明の効果】
【0015】
連続バルブが同時に閉とならず、1つのバルブのみが閉となることにより、ガスの閉じ込めが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1−1】図1A,1Bは、対象とする半導体装置の構成例、および作製したサンプルの構成を示す断面図である。
【図1−2】と、
【図1−3】と、
【図1−4】図1C〜1Hは、比較例による、気相成長装置を用いたサンプル作製工程を示すダイアグラムである。
【図1−5】図1I,1Jは、作成したサンプルの表面状態を示す顕微鏡写真、および測定した抵抗を示すグラフである。
【図2−1】と、
【図2−2】図2A,2B、2Cは、変更を行なった実施例による気相成長装置の構成を概略的に示すダイアグラムである。
【図3】図3A,3Bは、実施例による気相成長装置を用いて作製した、サンプルの表面状態を示す顕微鏡写真、および測定した抵抗を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1Aは、検討対象とした半導体装置の構成例を概略的に示す。シリコン基板11の表面には、素子分離用溝が形成され、酸化膜が埋め込まれてシャロートレンチアイソレーション12が形成される。シャロートレンチアイソレーション12で画定された活性領域内に、窒素を含む酸化膜で形成されたゲート絶縁膜13、シリコン層を含むゲート電極14により絶縁ゲート電極が形成される。ゲート絶縁膜を積層構造としてもよい。積層構造を採用する場合、例えば第1ゲート絶縁膜を酸化シリコン膜で形成し、第2ゲート絶縁膜を誘電率の高い窒化シリコン膜、酸化ハフニウム(HfO2)膜等で形成してもよい。ゲート電極の側壁は、酸化シリコン膜などの絶縁膜で形成されたサイドウオールスペーサ17により覆われる。ゲート電極の両側にはエクステンション領域を備えたソース/ドレイン領域18が形成される。
【0018】
ゲート電極、サイドウォールスペーサを覆って、SiN膜で形成されたエッチストッパ膜20が形成される。エッチストッパ膜20を覆うように、ホスホシリケートガラスで形成された下層層間絶縁膜21が作成される。下層層間絶縁膜21の表面からトランジスタに達するコンタクト孔を形成し、Ti層、TiN層,W層を積層し,不要部をCMPで除去することによりタングステンプラグ22が形成される。
【0019】
下層層間絶縁膜21の上に、第1層間絶縁膜IL1が形成される。第1層間絶縁膜は、例えば低誘電率絶縁膜24、酸化シリコン膜25の積層で形成される。第1層間絶縁膜IL1を貫通するように配線用のトレンチが形成され、バリアメタル層26、銅配線層27が埋め込まれる。例えば、Ta,TiN,TaN等のバリアメタル層26、その上に銅シード層をスパッタリングで形成し、その上に、電解メッキで銅層をメッキして形成し、第1層間絶縁膜IL1上の不要部を化学機械研磨(CMP)して除去する。
【0020】
この銅配線層27を覆うように、SiCで形成された銅拡散防止絶縁膜29が形成され、その上に第2層間絶縁膜IL2が形成される。SiC膜は、テトラメチルシランSi(CHと2酸化炭素COをソースガスとしたプラズマ促進化学気相堆積(PE−CVD)で成膜する。第2層間絶縁膜IL2は、例えば酸化シリコン膜40、低誘電率絶縁膜41、酸化シリコン膜42の積層で形成される。第2層間絶縁膜IL2に、デュアルダマシン構造の配線用のトレンチ及びビア孔が形成され、バリアメタル層44、銅配線層45が埋め込まれる。不要金属層をCMPで除去した後、SICで銅拡散防止絶縁膜47を形成する。更に層間絶縁膜を形成し、銅配線を埋め込む。必要な層数の配線を同様な工程で形成する。
【0021】
SiC膜は、銅層に対する密着性が弱く、剥離などを生じる可能性がある。SiC膜の密着性を改善するため銅配線層形成後、表面処理を行なうことが検討されている。
【0022】
図1Bは、本発明者が予備実験で作製した銅配線構造の概略断面図である。下層配線に対する第1銅拡散防止絶縁膜CDB1と第1層間絶縁膜IL1の積層にトレンチとビア孔を形成し、バリアメタル層BM、銅層CWを形成し、CMPを行なって、デュアルダマシン配線DDWを形成する。実験したサンプルにおいては、第1銅拡散防止絶縁膜は厚さ50nmのSiC膜で形成し、層間絶縁膜は厚さ500nmのSiOC膜で形成した。トレンチは深さ300nm、幅0.2μmであり、ビアは深さ250nm、幅0.15μmである。バリアメタル層は厚さ20nmのTaN層で形成した。デュアルダマシンの銅配線DDWを形成した状態でウエハをPE−CVD装置の反応室に搬入し、表面処理SPを行った後、厚さ50nmのSiC層からなる第2銅拡散防止絶縁膜CDB2を成長する。表面処理はPE−CVD装置の反応室内で、その場処理(in-situ)で行なう。続いて、第2銅拡散防止絶縁膜CDB2上に第2層間絶縁膜IL2をPE−CVDで成膜する。
【0023】
図1C〜1Fは、PE−CVD装置内で行なう表面処理を説明する為の概略的ダイアグラムである。上側にPE−CVD装置のガス配管の状態を示し、選択的に下側に銅配線の状態を概略的に示す。
【0024】
図1Cに示すように、PE−CVD装置は、高周波電源PSを備えた反応室RCと、原料ガス等を供給するガス供給系1a、1b、1c(まとめて1と呼ぶことがある)と、ガス供給系1a、1b、1cと反応室RCを接続する配管と、反応室RCから不要ガスを排気する真空排気系VPと、ガス供給系1a、1bの出力(下流)側を真空排気系VPに接続する捨てガスライン3を含む。ガス供給系1a、1bと反応室RCの間には3連バルブ2a、2bが接続されている。3連バルブ2a、2bは、下流側で合流している。ガス供給系1cは、合流後の配管に接続されている。
【0025】
複数のガス供給源が、それぞれマスフローコントローラ(MFC)とその前後のシャットオフバルブを備えた複数のガス配管に接続されている。バルブはノーマリクローズ(×印で示す)であり、駆動ガスを供給してオープン状態にする。駆動ガスの流路を破線で示す。白抜きのバルブは駆動ガスを供給された開状態、塗りつぶしのバルブはノーマリクローズの閉状態を示す。図には、ガス供給系1aとして3連バルブ2aに接続されたシランSiH配管、窒素N配管、ガス供給系1bとして3連バルブ2bに接続されたアンモニアNH配管、2酸化炭素CO配管、ガス供給系1cとして3連バルブ2bの下流側に接続されたテトラメチルシランSi(CH配管、を例示する。なお、図1C〜1Fの工程においては、ガス供給系1cのマスフローコントローラ前後のバルブは常に閉じているので、説明を省略する。捨てガスライン3と3連バルブ2aの上流側の接続をオン/オフするバルブV14、捨てガスライン3と3連バルブ2bの上流側の接続をオン/オフするバルブV24は、ノーマリクローズであり、駆動ガスを供給してオープンにすると、ガス供給系配管1a、1bの下流側と真空排気系VPの間を選択的に接続する。
【0026】
3連バルブ2a(2b)は連動する第1、第2、第3の3つのノーマリクローズのバルブV11,V12,V13(V21,V22,V23)を含む。すなわち、図示されたバルブは全てノーマリクローズである。3連バルブ2a(2b)の第2、第3のバルブV12,V13(V22,V23)間にフィルタF1(F2)が接続され、第1、第2のバルブV11,V12(V21,V22)間はメインテナンス作業などの際切り離し可能なように、例えば160cm程度と長く設定されている。第2、第3バルブV12,V13(V22,V23)間は、相対的に短く、例えば20cm程度である。
【0027】
高周波電源PSは、反応室内でPE−CVDを行なう場合のプラズマ電源であり、例えば13.56MHzの高周波電力を反応室RC内の対向電極PPに供給する。対向電極PPの下側電極は、基板SUBのサセプタを兼用する。
【0028】
図1Cに示すように、捨てガスライン3入口のバルブV14、V24は閉じた状態で、ガス供給系1aのシランSiHラインとガス供給系1bのアンモニアNHラインに駆動ガスを供給し、3連バルブ2a、2bにも駆動ガスを供給して、バルブを開け、シランSiHをアンモニアNHで希釈して、基板SUB上に所定微小流量を流す。基板の温度は、400℃程度である。反応室RC内は、真空排気系VPで排気されており、260Pa程度の減圧雰囲気である。基板表面上でシランが分解し、原子層単位のSi層が形成されると考えられる。
【0029】
図1Dに示すように、ガス供給系1a、1b、3連バルブ2a、2bの駆動ガスを止めてガス供給系配管1の全バルブ、および3連バルブ2a、2bを閉とし、捨てガスライン3入口のバルブV14、V24に駆動ガスを供給して開とする。反応室RC内の残留ガスが排気されるとともに、ガス供給系配管1a、1b下流側の残留ガスも排気される。
【0030】
図1Eに示すように、捨てガスライン3入口のバルブV14、V24の駆動ガスを止めてバルブV14、V24を閉じ、ガス供給系1bのアンモニアNHラインとガス供給系1aの窒素Nライン、および3連バルブ2a、2bに駆動ガスを供給してバルブを開け、窒素で希釈したアンモニアを反応室RC内に所定流量流し、260Pa程度の減圧雰囲気を形成する。基板SUBの温度は、400℃程度とする。高周波電源PSをオンにしてプラズマを立てる。アンモニアを含むプラズマにより、基板表面上の原子層単位のSi層が窒化される(SiN的組成になる)と考えられる。但し、形成される層は極めて薄く、断面SEMなどで検出することはできなかった。
【0031】
図1Fに示すように、高周波電源PSをオフとし、ガス供給系1a,1b、3連バルブ2a、2bの駆動ガスを止めて、ガス供給系1の全バルブ、および3連バルブ2a、2bを閉とし、捨てガスライン3入口のバルブV14,V24に駆動ガスを供給してバルブV14、V24を開とする。反応室RC内の残留ガスが排気されるとともに、ガス供給系配管1a、1b下流側の残留ガスも排気される。基板の表面処理は終了する。
【0032】
図1Gに示すように、捨てガスライン3入口のバルブV14,V24の駆動ガスを止めてバルブV14、V24を閉じ、ガス供給系1cのテトラメチルシランSi(CHラインとガス供給系1bの2酸化炭素COライン、および3連バルブ2bに駆動ガスを供給してバルブを開け、混合ガスを反応室RC内に流し、280Pa程度の減圧雰囲気を形成する。基板SUBの温度は、400℃程度とし、高周波電源PSをオンにしてプラズマを立てる。SiC層が堆積する。なお、SiC層は、Si−C結合を含む材料の層であり、原料ガスに由来する他の成分(HやO等)を含んでもよい。
【0033】
図1Hに示すように、高周波電源PSをオフとし、ガス供給系配管1a、1b、1cの全バルブ、および3連バルブ2a、2bを閉とし、捨てガスライン3入口のガス供給系1b側バルブV24に駆動ガスを供給してバルブV24を開とする。反応室RC内の残留ガスが排気されるとともに、ガス供給系配管1b下流側の残留ガスも排気される。SiC層堆積は終了する。その後、層間絶縁膜を形成する。
【0034】
図1Iは、SiC層表面を光学顕微鏡で撮影した表面状態を示す写真である。多数の突起が観察され、Siが異常成長したヒロックを示すと考えられる。表面処理を行なわない時には観察されないので、SiH/NH混合ガスによるソーク、NH/N混合ガスのプラズマ処理によりヒロックが発生したと考えられる。
【0035】
図1Jは、銅配線の抵抗を測定した結果を示すグラフである。四角が抵抗の分布を示し、その中に引いた横線が平均値を示す。上下の縦線はバラツキの幅を示す。一応目的とした抵抗値Rtを下回るサンプルもあるが、上回るサンプルが多く、満足できる結果ではない。
【0036】
本発明者は、これらの満足できない実験結果の原因を検討した。可能性の1つとして連動3連バルブ2aがある。図1Cに示すSiH/NH混合ガスによるソークの後、図1Dに示すように3連バルブ2aは閉じる。3連バルブ2a内にSiHガスが閉じ込められる。3連バルブV11,V12,V13間の配管は1.8m程度と長いので、無視できない体積がある。NHガスで希釈する前のSiHガスであるので濃度も高い。
【0037】
図1Eの工程で3連バルブ2a、2bが開き、3連バルブ2aにはNガスが流れ、3連バルブ2bにはNHガスが流れる。3連バルブ2bにNHガスが閉じこめられていても、同じNHガスが流れるので問題は生じないであろう。3連バルブ2aには、Nガスが流れるが、先に閉じ込められたSiHガスが速やかに消滅する保証はない。特に表面などに吸着したSiHガスは、時間をかけてリリースされる可能性もある。プラズマによる熱で銅配線中の銅がマイグレーションすると、窒化したSi層に覆われていないフレッシュな銅表面が生じる可能性がある。この銅表面にSiHが接触し、反応するとSiが成長する可能性があり、ヒロックを生じる可能性がある。プラズマ処理、SiC層成長等の工程で、基板は加熱され、銅配線に付着したSiがあると、銅配線内にSiが拡散する可能性がある。銅配線中へのSiの拡散は、銅配線の抵抗値を増大させるであろう。
【0038】
そこで、本発明者は3連バルブ2aにガスが閉じ込められないように、PE−CVD装置を改良することを考えた。捨てガスライン3入口のバルブV14、V24をオープンにしてガス供給系1a、1b下流側の残留ガスを捨てる際、3連バルブ2aでは、3つのバルブV11,V12,V13の内1つのみを閉とできれば、反応室内の残留ガス、ガス供給系の下流側の残留ガスを排気できると共に、3連バルブ2a内にガスが閉じ込められることも回避できる。
【0039】
図2Aは、試作したPE−CVD装置の構成を概略的に示すダイアグラムである。バルブの駆動ガスは全てオフとした状態を示す。3連バルブ2aの内の1つ、試作した装置においては第2バルブV12、をノーマリオープン(○で表記した)のバルブに置換し、捨てガスライン3のガス供給系1a側のノーマリクローズのバルブV14と連動させる(駆動ガスを共通にする)。3連バルブ2aの第1、第3バルブV11,V13は、図1Cで説明した時と変わらず、ノーマリクローズバルブで連動する。バルブV11とV13は駆動ガスDG1で駆動される連動バルブであり、バルブV12とV14は駆動ガスDG2で駆動される連動バルブである。但し駆動ガスDG2を供給すると、バルブV14は開となり、バルブV12は閉となる。駆動ガスDG1,DG2を供給すると、3連バルブ2aはV12のみ閉となり、V11とV13は開となる。捨てガスラインのバルブV14は開となる。駆動ガスDG1のみを供給すると、3連バルブ2aは全て開となり、ガス供給系1aと反応室RCの間が接続される。捨てガスラインのバルブV14は閉である。3連バルブ2bは、変更せず、駆動ガス供給によりバルブV21,V22,V23がすべて開となるノーマリクローズバルブである。図1C,1Eに示す、ガス供給系1a、1bから反応室RCにガスを供給する工程においては、3連バルブ2bに駆動ガスを供給して開とすると共に、及び連動バルブV11,V13に駆動ガスDG1を供給することにより同一の状態が実現される。
【0040】
図2Bは、残留ガスを捨てる状態を示す。ガス供給系1の駆動ガスは止めて、全バルブを閉とし、3連バルブ2bへの駆動ガス供給も停止して3連バルブV21,V22,V23を閉にする。3連バルブ2aには駆動ガスDG1,DG2を供給する。駆動ガスDG1はバルブV11,V13を開とする。駆動ガスDG2は、バルブV14を開とし、バルブV12を閉とする。閉じたバルブV12より上のガス供給系1a側配管中の残留ガスはバルブV14を介して捨てガスライン3から排気され、バルブV12より下の配管中、反応室RC中の残留ガスは反応室から排気される。図1C〜1Hに示した工程において、図1D,1Fに示した残留ガス排気工程が、図2Bに示したものに置換される。3連バルブ2aでのガス閉じ込めが抑制され、閉じ込められたガスによる悪影響が抑制されることが期待される。
【0041】
図2Cは、図1Hに示す捨てガスライン3入口のガス供給系1b側バルブV24を開き、3連バルブ2bを閉じて、排気する状態を示す。バルブV12はノーマリオープンの状態である。
【0042】
図1C〜1Hの工程を終え、反応室RCを開ける時は、駆動ガスを全てオフとし、図2Aの状態とすればよい。バルブV12が開となるが、両側のバルブV1,V3が閉なので、問題は生じない。なお、3連バルブV11,V12,V13を全て閉とするには、駆動ガスDG2を供給すればよい。
【0043】
試作したPE−CVD装置を用い、図1C−1Hに示す工程を、図1D,1Fは図2Bに置換し、図1Hは図2Cに置換して銅のデュアルダマシン配線に表面処理を行ない、SiC層を成長した。
【0044】
図3AはSiC層表面の光学顕微鏡写真、図3Bは配線抵抗の測定結果を示すグラフである。ヒロック的な表面の凹凸は観察されなかった。配線抵抗は、バラツキ上は目的とした配線抵抗Rtを上回るものもあるが、配線抵抗の主分布は目的とした抵抗値を下回った。バラツキの幅も狭くなった。本発明者の解釈が正しかったか否かは別として、結果として銅配線の性能は向上し、半導体装置の性質も向上した。ガスの閉じ込めを抑制できたためと考えられる。
【0045】
以上、予備実験、実施例に沿って本発明を説明したが、これらは何ら制限的なものではない。例えば、3連バルブ2bも3連バルブ2a同様の構成としてもよい。ガス供給系の数は任意に増減できる。銅配線は純銅の場合のみでなく、銅合金で形成する場合を含む。バリアメタルはTaNに限らない。Ta,TiN等を用いてもよい。層間絶縁膜の材料も酸化シリコンやSiOCに限らない。ポラスシリカ、SiLK等の塗布型低誘電率絶縁膜等を用いてもよい。銅拡散防止絶縁膜もSiC膜に限らない。SiN膜等を用いてもよい。
【0046】
ガス供給系と反応室とを2連バルブで接続してもよい。フィルタがない構成等に有効であろう。また、複数のフィルタを含む4連以上のバルブを用いてもよい。2つ以上の連続バルブを含む配管を用い、不要ガスを捨てる時、連続バルブを同時に閉とすれば、ガスの閉じ込めが生じる。連続バルブの1つのみを閉とするようにすれば、ガスの閉じ込めを抑制することができる。PE−CVD装置に代え、高周波電源、対向電極のないCVD装置としても同様の効果が期待できる。
【0047】
その他、種々の変更、置換、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。以下、本発明の特徴を付記する。
【0048】
[付記1] (1)
成膜を行なう反応室と、
前記反応室にガスを供給する第1のガス供給系配管であって、マスフローコントローラとその前後のバルブを備える複数の配管を含む第1のガス供給系配管と、
前記第1のガス供給系配管と前記反応室を接続する、2つ以上のバルブを含む連続バルブを有する第1の接続配管と、
前記反応室に接続された排気系配管と、
前記第1のガス供給系配管の下流と前記排気系配管を選択的に接続する第1の捨てガスバルブを含む捨てガス配管と、
を有し、前記第1の接続配管の連続バルブの内の1つのバルブと前記第1の捨てガスバルブとの一方がノーマリオープン、他方がノーマリクローズの異なるタイプであり、共通の駆動ガスによって連動する気相成長装置。
【0049】
[付記2] (2)
前記第1の接続配管の連続バルブの前記1つのバルブ以外のバルブが2つ以上の場合、同タイプで、共通の駆動ガスによって連動する付記1記載の気相成長装置。
【0050】
[付記3] (3)
前記反応室にガスを供給する第2のガス供給系配管であって、マスフローコントローラとその前後のバルブを備える複数の配管を含む第2のガス供給系配管と、
前記第2のガス供給系配管と前記反応室を接続する2つ以上のバルブを含む連続バルブを有する第2の接続配管と、
をさらに有し、前記捨てガス配管が前記第2のガス供給系配管の下流と前記排気系配管を選択的に接続する第2の捨てガスバルブを含む、付記1または2記載の気相成長装置。
【0051】
[付記4]
前記第2の接続配管の2つ以上のバルブは共通の駆動ガスによって連動する同一タイプのバルブである、付記3記載の気相成長装置。
【0052】
[付記5]
前記第1、第2のガス供給系配管のマスフローコントローラの前後のバルブ、前記第1の接続配管の連続バルブの前記1つのバルブ以外のバルブ、前記第2の接続配管の連続バルブ、前記捨てガス配管の前記第1、第2の捨てガスバルブがノーマリクローズタイプであり、前記第1の接続配管の連続バルブの前記1つのバルブがノーマリオープンタイプである付記3または4記載の気相成長装置。
【0053】
[付記6]
前記第1、第2の接続配管の連続バルブが第1、第2、第3の3連バルブであり、第2、第3のバルブ間にフィルタを含み、第1、第2バルブ間が第2、第3のバルブ間より長い付記3〜5のいずれか1項記載の気相成長装置。
【0054】
[付記7]
前記反応室内にプラズマを発生させる高周波電源をさらに有する付記1〜6のいずれか1項記載の気相成長装置。
【0055】
[付記8] (4)
ダマシン配線を形成した半導体基板を準備する工程と、
反応室と、第1のガス供給系配管と、前記第1のガス供給系配管と前記反応室を接続する2つ以上の連続バルブを含む第1の接続配管と、前記反応室に接続された排気系配管と、前記第1のガス供給系配管の下流と前記排気系配管を選択的に接続する第1の捨てガスバルブを含む捨てガス配管とを有する気相成長装置の前記反応室内に前記半導体基板を搬入し、前記第1のガス供給系配管から第1のガスを供給して第1の表面処理を行なう工程と、
前記第1のガス供給系配管を閉じ、前記第1の接続配管の2つ以上の連続バルブの内1つのバルブのみを閉じ、前記第1の捨てガスバルブを開いて残留ガスを排気する工程と、
前記第1のガス供給系配管から第2のガスを供給して第2の表面処理を行なう工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【0056】
[付記9] (5)
前記気相成長装置が、第2のガス供給系配管と、前記第2のガス供給系配管と前記反応室を接続する2つ以上の連続バルブを含む第2の接続配管とをさらに有し、前記捨てガス配管が前記第2のガス供給系配管の下流と前記排気系配管を選択的に接続する第2の捨てガスバルブを含み、前記第1の表面処理と前記第2の表面処理が、前記第1のガス供給系配管と前記第2のガス供給系配管からガスを供給して行う付記8記載の半導体装置の製造方法。
【0057】
[付記10]
前記第1の表面処理が前記第1のガス供給系配管からSiHガスを供給し、前記第2のガス供給系配管から希釈ガスを供給して行い、前記第2の表面処理が前記第1のガス供給系配管から希釈ガスを供給し、前記第2のガス供給系配管からNHを供給して、プラズマ中で行なう付記9記載の半導体装置の製造方法。
【0058】
[付記11]
前記ダマシン配線が銅配線であり、
前記第2の表面処理の後、さらに銅拡散防止絶縁膜を気相成長する工程をさらに含む、
付記8〜10のいずれか1項記載の半導体装置の製造方法。
【0059】
[付記12]
前記銅拡散防止絶縁膜を気相成長する工程が、SiC膜をプラズマ促進化学気相成長で成膜する付記11記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0060】
CDB1 第1銅拡散防止絶縁膜、
IL1 第1層間絶縁膜、
BM バリアメタル層、
CW 銅層、
DDW デュアルダマシン配線、
SP 表面処理、
CDB2 第2銅拡散防止絶縁膜、
IL2 第2層間絶縁膜、
V バルブ、
MFC マスフローコントローラ、
RC 反応室、
VP 真空排気系、
PS 高周波電源、
DG 駆動ガス、
1 ガス供給系、
2 3連バルブ、
3 捨てガスライン、
11 シリコン基板、
12 シャロートレンチアイソレーション、
13 ゲート絶縁膜、
14 ゲート電極、
17 サイドウォールスペーサ、
18 ソース/ドレイン領域、
20 エッチストッパ膜、
21 下層層間絶縁膜、
22 タングステンプラグ、
29,47 銅拡散防止絶縁膜、
44 バリアメタル層、
45 銅配線層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜を行なう反応室と、
前記反応室にガスを供給する第1のガス供給系配管であって、マスフローコントローラとその前後のバルブを備える複数の配管を含む第1のガス供給系配管と、
前記第1のガス供給系配管と前記反応室を接続する、2つ以上のバルブを含む連続バルブを有する第1の接続配管と、
前記反応室に接続された排気系配管と、
前記第1のガス供給系配管の下流と前記排気系配管を選択的に接続する第1の捨てガスバルブを含む捨てガス配管と、
を有し、前記第1の接続配管の連続バルブの内の1つのバルブと前記第1の捨てガスバルブとの一方がノーマリオープン、他方がノーマリクローズの異なるタイプであり、共通の駆動ガスによって連動する気相成長装置。
【請求項2】
前記第1の接続配管の連続バルブの前記1つのバルブ以外のバルブが2つ以上の場合、同タイプで、共通の駆動ガスによって連動する請求項1記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記反応室にガスを供給する第2のガス供給系配管であって、マスフローコントローラとその前後のバルブを備える複数の配管を含む第2のガス供給系配管と、
前記第2のガス供給系配管と前記反応室を接続する2つ以上のバルブを含む連続バルブを有する第2の接続配管と、
をさらに有し、前記捨てガス配管が前記第2のガス供給系配管の下流と前記排気系配管を選択的に接続する第2の捨てガスバルブを含む、請求項1または2記載の気相成長装置。
【請求項4】
ダマシン配線を形成した半導体基板を準備する工程と、
反応室と、第1のガス供給系配管と、前記第1のガス供給系配管と前記反応室を接続する2つ以上の連続バルブを含む第1の接続配管と、前記反応室に接続された排気系配管と、前記第1のガス供給系配管の下流と前記排気系配管を選択的に接続する第1の捨てガスバルブを含む捨てガス配管とを有する気相成長装置の前記反応室内に前記半導体基板を搬入し、前記第1のガス供給系配管から第1のガスを供給して第1の表面処理を行なう工程と、
前記第1のガス供給系配管を閉じ、前記第1の接続配管の2つ以上の連続バルブの内1つのバルブのみを閉じ、前記第1の捨てガスバルブを開いて残留ガスを排気する工程と、
前記第1のガス供給系配管から第2のガスを供給して第2の表面処理を行なう工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記気相成長装置が、第2のガス供給系配管と、前記第2のガス供給系配管と前記反応室を接続する2つ以上の連続バルブを含む第2の接続配管とをさらに有し、前記捨てガス配管が前記第2のガス供給系配管の下流と前記排気系配管を選択的に接続する第2の捨てガスバルブを含み、前記第1の表面処理と前記第2の表面処理が、前記第1のガス供給系配管と前記第2のガス供給系配管からガスを供給して行う請求項4記載の半導体装置の製造方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−258051(P2010−258051A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103523(P2009−103523)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】