説明

発光装置の作製方法

【課題】基板に対する剥離・転写の工程を簡略化した方法を提供する。
【解決手段】基板上に金属膜を形成し、加熱処理を行うことで、金属膜上に形成された酸化金属膜と、半導体膜の結晶化を同時に行うことができ、工程が簡略化された剥離・転写の方法である。金属膜にはタングステン膜などを用い、均一な剥離・転写を行うことができる。半導体膜に電気的に接続される電極上に発光層を形成することで発光装置の作製方法を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性薄膜の剥離方法、特に様々な素子を有する膜や層の剥離方法に関する
。加えて本発明は、剥離した膜をフィルム基板に貼りつける転写方法、及び当該転写方法
を用いて形成された薄膜トランジスタ(以下、TFTという)を有する半導体装置および
その作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜(厚さ数〜数百nm程度)を用
いてTFTを構成する技術が注目されている。TFTはICや電気光学装置のような電子
デバイスに広く応用され、特に表示装置のスイッチング素子やドライバ回路として開発が
行われている。
【0003】
このような表示装置においてはガラス基板や石英基板が多く使用されているが、割れや
すく、重いという欠点がある。そのため大量生産を行う上で、ガラス基板や石英基板は大
型化が困難である。そこで、可撓性を有する基板、代表的にはフレキシブルなプラスチッ
クフィルムの上にTFT素子を形成することが試みられている。
【0004】
しかしながら、TFTの活性層に高性能の多結晶シリコン膜を使用する場合、作製工程
において数百℃の高温プロセスが必要となってしまい、プラスチックフィルム上に直接形
成することができない。
【0005】
そのため、基板上に分離層を介して存在する被剥離層を前記基板から剥離する方法が提
案されている。例えば、非晶質シリコン、半導体、窒化物セラミックス、又は有機高分子
からなる分離層を設け、基板を通過させてレーザー光を照射して、分離層に層内剥離等を
生じさせて、基板を分離させるというものである(特許文献1参照)。加えて、この技術
を用いて被剥離層(公報では被転写層と呼んでいる)をプラスチックフィルムに貼りつけ
て液晶表示装置を完成させるという記載もある(特許文献2参照)。またフレキシブルデ
ィスプレイに関する記事をみると、各社の技術が紹介されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−125929号公報
【特許文献2】特開平10−125930号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日経マイクロデバイス,日経BP社,2002年7月1日,2002年7月1日号, p.71−72
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記のような剥離工程は問題が多く、改良の余地があった。また特に、大型基
板に対して均一に行う点を考慮する必要があった。
【0009】
そこで、本発明は剥離工程を簡略化し、且つ簡便に行う方法を提供する。また本発明は
、上記方法で形成された発光装置、液晶表示装置、その他の表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を鑑み、本発明は剥離工程における第1の接着剤の剥離と、第2の接着剤の硬
化と、を同時に行って、作製工程を簡略化することを特徴とする。また本発明は、被剥離
層を所定の基板に転写するタイミングを工夫することにより作製工程を簡略化することを
特徴とする。
【0011】
また本発明は被剥離層の剥離を容易にするため、物理的損傷を与えたり、被剥離層の断
面を露出させると好ましい。
【0012】
また特に大型基板に複数の半導体素子を形成した状態で剥離を行う場合、剥離の精度や
正確さを高めるために、圧力差を利用して基板を吸着し、剥離を行うことを特徴とする。
【0013】
具体的には図1(A)に示すように、第1の基板100上に被剥離層101を形成する
。被剥離層は、最終的に半導体素子、電極、更には液晶層(液晶素子)や発光層(発光素
子)を含む表示機能や駆動回路等を有すればよく、剥離するタイミングと、被剥離層の作
製状態との関係は実施者が決定することができる。例えば図1(A)の被剥離層は、半導
体素子及び当該半導体素子に接続される電極を形成した状態であっても、更に液晶素子や
発光素子を形成した状態であってもよい。
【0014】
第1の基板は後の剥離工程に耐えうる剛性を有していればよく、例えばガラス基板、石
英基板、セラミック基板、シリコン基板、金属基板またはステンレス基板を用いることが
できる。
【0015】
なお被剥離層の半導体素子は、非晶質半導体膜を有するTFT、有機TFT、薄膜ダイ
オード、シリコンのPIN接合からなる光電変換素子、シリコン抵抗素子又はセンサ素子
(代表的にはポリシリコンを用いた感圧式指紋センサ)等であってもよい。さらにTFT
の場合、ボトムゲート型であっても、トップゲート型であってもよい。
【0016】
次に図1(B)に示すように、被剥離層上に応力緩和材103を形成する。応力緩和材
は剥離工程に必須ではないが、被剥離層を保護するために設けると好ましい。応力緩和材
は水溶性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、その他の樹脂を用いるとよい。すなわち、
被剥離層の保護を目的とするため柔軟性の高い有機樹脂がよく、更に最終的に除去するこ
とを考えると物理的に除去するものでもよいが、水洗、熱又は光により粘着性が低下する
材料がよい。
【0017】
次いで被剥離層の剥離を容易にするため、図1(C)に示すように、第1基板、半導体
素子及び応力緩和材を分断すると好ましい。分断手段は、レーザーやカッター等を用いれ
ばよい。
【0018】
分断工程は剥離工程に必須ではないが、剥離を容易に行うために分離する界面の断面を
露出すると好ましい。そして分離する界面の断面にカッター等の物理的手段により傷等を
つけてもよい。また、第1の基板まで分断せず、被剥離層や応力緩和材等に切り込みを入
れてもよい。
【0019】
その後図1(D)に示すように、被剥離層上に第2の基板105を張り付ける。このと
き、第1の接着剤106を用いて固定するが、基板自体に接着機能がある場合、接着剤は
必須ではない。第2の基板は、第1の基板よりも剛性の高い基板を用いることが好ましく
、比較的剛性の高い、石英基板を用いるとよい。第1の接着剤は、剥離可能な接着剤、例
えば紫外線により粘着性が低下したり、剥離する紫外線剥離型粘着剤、熱により粘着性が
低下したり、剥離する熱剥離型粘着剤、水洗等により粘着性が低下したり、剥離する水溶
性接着剤や両面テープ等を使用するとよい。
【0020】
また、剥離工程をより確実にするため、第1の基板下に補助基板108を設けてもよい
。このとき補助基板に接着性がない場合、接着剤107を用いて固定する。なお、第2の
基板と補助基板、及び第1の接着剤と補助基板を固定する接着剤は同一なものを使用すれ
ばよい。
【0021】
そして図1(E)に示すように、物理的手段を用いて剥離を行う。図1(E)のように
補助基板が設けられている場合は、第2の基板と補助基板とに逆方向に働く力を加えれば
よく、補助基板が設けられていない場合は、粘着性の高いシートを第1の基板下に固定し
て剥離してもよい。
【0022】
特に大型基板の場合、均一に剥離するために、圧力差を利用して基板を吸着し剥離して
もよい。すなわち例えば、剥離する基板を空孔が形成された基板上に設置し、ポンプ等に
より当該空孔が減圧又は真空状態とし、剥離する基板全体を圧力差により均一に固定した
状態で剥離を行ってもよい。
【0023】
次に図2(F)に示すように、被剥離層下に第3の基板110を固定する。第3の基板
自体に接着性がない場合、第2の接着剤111を介して接着する。第3の基板は、ポリカ
ーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン等のプラスチック基板、ポリテト
ラフルオロエチレン基板又はセラミック基板等の膜厚の薄い基板や可撓性のある(フレキ
シブルな)基板(以下、これらの基板をフィルム基板と表記する)を用いることができる
。第2の接着剤は、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等を用いればよい。但し、第1の接着剤
と第2の接着剤とは、紫外線や熱等により、相反する性質を有する必要がある。すなわち
、紫外線や熱により第1の基板は粘着性が低下、又は剥離し、第2の基板は硬化する必要
がある。図2(F)では、紫外線を照射することにより第1の接着剤の粘着性を低下させ
、第2の接着剤を硬化させている。なお、被剥離層の上下から紫外線を照射しても、一方
の面から紫外線を照射しても構わない。そして図2(G)に示すように、第2の基板を剥
離する。
【0024】
このように、紫外線を照射したり、熱を加えるといった同一の工程により、剥離と固定
を同時に行うことができるため、剥離工程を簡略化することができる。
【0025】
次いで図2(H)に示すように、紫外線照射を照射したり、加熱したり、水洗して応力
緩和材を除去する。更に、より正確に除去するためには、アルゴンガス及び酸素ガスを用
いたプラズマクリーニングやベルクリン洗浄を行うと好ましい。このとき、応力緩和材を
第1の接着剤と同一の工程で除去できる材料を使用するとよい。すなわち応力緩和材を紫
外線により除去できる材料とし、第1の接着剤の剥離と、第2の接着剤の硬化と、応力緩
和材の除去とを同時に行ってもよい。そして図2(I)に示すように、被剥離層の第3の
基板への転写が完了する。
【0026】
このような剥離方法を用いることより、転写のため接着剤の除去や硬化を繰り返す剥離
工程において、工程を簡略化することができる。そして本発明の剥離工程は、全面に剥離
でき、歩留まりよく形成することができる。全面に渡って剥離できることにより、複数の
半導体素子を1つの大型基板に形成し、半導体装置ごとに切断する多面取りを行うことが
でき、コストの低減を期待できる。また本発明では第1の基板等を再利用することができ
、更に安価なフィルム基板を使用するため表示装置の低コスト化を達成することができる

【0027】
その結果当該TFT等を有する発光装置、液晶表示装置その他の表示装置は、薄くなり
、落下しても割れにくく、軽量である。また曲面や異形形状での表示が可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、同一工程(紫外線の照射や加熱)により、接着剤の剥離(粘着性の低減
も含む)や硬化を行うことができ、剥離工程、強いては表示装置の製造工程を簡略化する
ことができる。更に大型基板から、複数の表示装置を生産する場合に、本発明の剥離工程
に加え、減圧装置等により剥離や転写の工程を正確、かつ簡便に行うことができる。この
ように、本発明の剥離工程により作製工程数が低減され、更に歩留まり良く表示装置を量
産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の剥離工程を説明する図である。
【図2】図2は、本発明の剥離工程を説明する図である。
【図3】図3は、本発明の剥離工程により発光装置を作製する図である。
【図4】図4は、本発明の剥離工程により発光装置を作製する図である。
【図5】図5は、本発明の剥離工程により液晶表示装置を作製する図である。
【図6】図6は、本発明の剥離工程により液晶表示装置を作製する図である。
【図7】図7は、本発明の剥離工程を用いた多面取りを説明する図である。
【図8】図8は、本発明の電子機器を説明する図である。
【図9】図9は、本発明の電子機器を説明する図である。
【図10】図10は、本発明により剥離した断面のTEM写真を示す図である。
【図11】図11は、本発明により剥離した断面のTEM写真を示す図である。
【図12】図12は、本発明の剥離工程により発光装置を作製する図である。
【図13】図13は、本発明の剥離工程により発光装置を作製する図である。
【図14】図14は、本発明の剥離工程により液晶表示装置を作製する図である。
【図15】図15は、本発明の剥離工程により液晶表示装置を作製する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、実施の形態を説明する
ための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その
繰り返しの説明は省略する。
【0031】
(実施の形態1)
本実施の形態は、発光素子及び液晶素子までが形成された状態を被剥離層とし、剥離及
び転写を行う場合の具体的な剥離工程及び、本発明の剥離工程により上面出射の発光装置
を形成する一例を説明する。
【0032】
図3(A)に示すように、第1の基板200上に金属膜201を形成する。本実施の形
態では第1の基板は、0.5〜1.0mm程度のガラス基板を用いる。金属膜としては、
W、Ti、Ta、Mo、Nd、Ni、Co、Zr、Zn、Ru、Rh、Pd、Os、Ir
から選ばれた元素または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料からなる単
層、或いはこれらの積層を用いることができる。金属膜の作製方法としてスパッタリング
法を用い、金属をターゲットして、第1の基板上に形成すればよい。なお金属膜の膜厚は
、10nm〜200nm、好ましくは50nm〜75nmとする。
【0033】
金属膜に上記金属の合金(例えば、WとMoとの合金:WMo1−X)を用いる場合
、成膜室内に第1の金属(W)及び第2の金属(Mo)といった複数のターゲット、又は
第1の金属(W)と第2の金属(Mo)との合金のターゲットを配置してスパッタリング
法により形成すればよい。このように、金属膜の形成を適宜設定することにより、剥離工
程を制御することができ、プロセスマージンが広がる。例えば、金属の合金を用いた場合
、合金の各金属の組成比を制御することにより、加熱処理の温度、更には加熱処理の要否
を制御することができうる。
【0034】
金属膜の代わりに、窒化された金属膜(窒化金属膜)を用いても構わない。更に、金属
膜に窒素や酸素を添加してもよい。例えば、金属膜に窒素や酸素をイオン注入したり、成
膜室を窒素や酸素雰囲気とし、スパッタリング法により金属膜を形成したり、更にターゲ
ットとして窒化金属を用いてもよい。
【0035】
その後、金属膜201上に積層した下地膜207を介して半導体膜を形成する。すなわ
ち、金属膜と半導体膜との間には下地膜を代表とする絶縁膜が何層設けてもよい。下地膜
は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜などの珪素を有する絶縁
膜の単層、又は積層膜を用いればよい。本実施の形態では、金属膜上にスパッタリング法
により形成される150nm〜200nmのSiOと、SiO上にCVD法により形
成される80〜100nmのSiONとを設ける。下地膜により、基板や金属膜から半導
体膜への不純物拡散を防止することができる。
【0036】
なお上述の工程を経ると、金属膜表面には当該金属を有する酸化膜(酸化金属膜)20
2が形成される。酸化金属膜の膜厚は、0.1nm〜1μm、好ましくは0.1nm〜1
00nm、更に好ましくは0.1nm〜5nmとなるようにすればよい。また金属膜上に
直接酸化膜を作製してもよい。
【0037】
その後必要に応じて、加熱処理を行う。この加熱処理により、酸化金属膜が結晶化し、
結晶歪みや格子欠陥(点欠陥、線欠陥、面欠陥(例えば、酸素空孔が集まってできる結晶
学的せん断面による面欠陥)、拡張欠陥)が生じ、剥離しやすい状態とすることができる

【0038】
更に加熱処理により、半導体膜が有する水素が拡散することによる酸化還元反応により
、結晶状態の異なる酸化金属が形成され、より剥離しやすい状態とすることも考えられる

【0039】
なお、上記加熱処理は半導体膜の結晶化の加熱処理と兼ねることができる。すなわち、
金属膜上に形成された半導体膜を加熱しすることにより、結晶性半導体膜を形成し、且つ
酸化金属膜の結晶化を行うことが可能である。
【0040】
半導体膜の結晶性を向上させるために、結晶化を助長させる金属元素(代表的にはNi
元素)を塗布後加熱処理したり、加熱処理後にレーザーを照射してもよい。なお、結晶化
を助長される金属元素を使用した場合、当該金属元素はデバイスにとっては不要なもので
あるため、ゲッタリング工程やエッチング工程により除去することが望まれる。
【0041】
その後、結晶性半導体膜を所望の形状にパターニングし、珪素を有する酸化膜、又は珪
素を有する窒化膜を用いてゲート絶縁膜を形成する。ゲート絶縁膜を介して結晶性半導体
膜上にゲート電極を形成し、当該ゲート電極をマスクとして不純物領域を形成する。ゲー
ト電極にはWとTaNの積層構造を用い、不純物領域にはソース及びドレイン領域と、低
濃度不純物領域(LDD領域)と、ゲート電極と重なる低濃度不純物領域(GOLD領域
)とを設けてもよい。そしてTFT203が形成される。
【0042】
次いでソース配線又はドレイン配線と接続される電極204を形成する。そして電極2
04の端を覆う、すなわち隣り合う電極の両端を覆うように有機材料や無機材料を有する
絶縁膜205を形成する。そして、水分や酸素の侵入を防ぐために、絶縁膜上に保護膜2
06を形成する。
【0043】
以上のように、半導体素子としてTFTを形成する。各画素にTFTを形成するアクテ
ィブマトリクス型表示装置を説明しているが、パッシブ型表示装置でもよいことは言うま
でもない。またトップゲート型のTFTでも、ボトムゲート型のTFTでも構わない。
【0044】
なお被剥離層の半導体素子は、非晶質半導体膜を有するTFT、有機TFT、薄膜ダイ
オード、シリコンのPIN接合からなる光電変換素子、シリコン抵抗素子又はセンサ素子
(代表的にはポリシリコンを用いた感圧式指紋センサ)等であってもよい。
【0045】
その後図3(B)に示すように、発光層210及び陰極211を形成する。発光層は各
RGB発光層を形成しても、白色発光層を形成し、カラーフィルター等の色変換層により
多色表示を行ってもよい。陰極は上面出射の場合は透光性を有する材料、例えばITOで
、下面出射の場合はMgAg等の金属膜で形成すればよい。なお、大気に曝さずに発光層
、陰極等までを連続して形成すると好ましい。
【0046】
有機化合物を含む発光層の形成前又は形成後には、真空加熱を行って脱気を行うことが
好ましい。また有機化合物を含む発光層210は、極めて薄いため、第1の電極の表面は
平坦であることが好ましく、化学的及び機械的に研磨する処理(代表的にはCMP技術等
)により平坦化を行うとよい。
【0047】
電極204の表面における清浄度を向上させるため、異物(ゴミなど)をクリーニング
するための洗浄(ブラシ洗浄やベルクリン洗浄)やプラズマクリーニングを発光層形成前
に行ってもよい。このとき、転写に使用した接着剤の付着もきれいに除去することができ
る。
【0048】
そして、以下に示すように剥離が行われる。なお、本実施の形態では発光素子(発光層
及び陰極や陽極)を形成した後に剥離する場合を説明するが、電極204が形成された後
に剥離してもよい。すなわち剥離するタイミングは実施者が適宜決定することができる。
【0049】
図3(C)に示すように、陰極上に保護膜215を形成する。保護膜はDLC、CN、
SiN等の炭素や窒素を有する膜を形成すればよい。
保護膜上には紫外線(UV)防止膜216を形成し、紫外線の照射から発光層を保護する
。特に、上面出射の発光装置では、必然的に発光層に紫外線が照射されてしまうため、紫
外線防止膜(UV防止膜)を設け、発光層の劣化を防止する。すなわちUV防止膜は、U
V領域の波長を透過せず(少なくとも90%以上透過しない)、発光層からの光、つまり
可視光程度の領域(400nm〜1μm、好ましくは450nm〜800nm)の波長を
透過する性質を有するフィルム(シート)を用いればよい。例えば、紫外線吸収剤を配合
させた有機樹脂フィルム、具体的にはポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2、
6−ナフタレンジカルボキシレート等のポリエステルのフィルムを用いればよい。ポリエ
ステルのフィルムは公知の押し出し法等により形成すればよい。また紫外線を吸収する層
と、その他層を積層した構造の有機樹脂フィルムを用いても構わない。
【0050】
そして図3(D)に示すように、スピンコーティング法により、応力緩和材として水溶
性樹脂217を形成する。応力緩和材は、熱を加えたり、紫外線を照射して硬化させれば
よい。また紫外線を照射して硬化する材料を使用する場合、応力緩和材の上方から紫外線
を照射するとき、UV防止膜により発光層を保護することができる。
【0051】
その後、剥離を容易に行うため、分断したり、剥離界面に傷を付けたりするとよい。図
示しないが、本実施の形態ではカッターの一種であるスクライブトリガーにより第1の基
板、被剥離層及び水溶性樹脂を分断し、剥離界面の断面を露出させる。
【0052】
そして図3(E)に示すように、第2の基板220を水溶性樹脂上に設ける。本実施の
形態では、第2の基板に接着性を有しない石英基板(厚さ1.0〜1.5mm)を使用し
、両面テープ221を用いて固定する。剥離工程で使用される両面テープは、紫外線を照
射したり、加熱したり、水等の液体に浸漬することにより、粘着性が低下したり、自己剥
離する性質を有する。本実施の形態では、紫外線を照射すると粘着性を低下する両面テー
プを用いる。
【0053】
両面テープの代わりに紫外線硬化樹脂、具体的にはエポキシ樹脂系接着剤、熱硬化樹脂
や樹脂添加剤等の接着剤を用いてもよい。また補助基板として、第1の基板下に両面テー
プや接着剤等を用いて石英基板を固定してもよい。
【0054】
その後図3(F)に示すように、第1の基板と半導体素子を有する被剥離層とを物理的
手段により分離する。酸化金属膜と金属膜との界面で剥離するよう図示しているが、この
とき結晶化された酸化金属膜の膜内、又は酸化金属膜の両面の界面、すなわち酸化金属膜
と金属膜との界面或いは酸化金属膜と被剥離層との界面等から分離している。酸化金属膜
の内部で分離する場合、被剥離層の下面には酸化金属が点在して付着していることがある
。また酸化金属膜と金属膜との界面或いは酸化金属膜と被剥離層との界面で分離する場合
、酸化金属膜は被剥離層の下面のみに存在したり、金属膜上面のみに存在するときがある
。酸化金属物が被剥離層の下面に点在したり、付着しする場合、酸化金属物はエッチング
又は化学的若しくは物理的研磨により除去してもよいし、付着させたままでもよい。
【0055】
次に図3(G)に示すように、被剥離層を第3の基板であるフィルム基板230に固定
する。フィルム基板が粘着性を有していない場合、第2の接着剤231を介して固定する
。第2の接着剤には、紫外線硬化樹脂、具体的にはエポキシ樹脂系接着剤、熱硬化樹脂や
樹脂添加剤等の接着剤または両面テープを用いることができる。本実施の形態では第2の
接着剤として、紫外線照射により硬化する非水溶性接着剤を用いる。すなわち第2の接着
剤は、応力緩和材を除去する場合のことを考えて、応力緩和材の性質を考慮し、剥離しな
い材料を用いる必要がある。もちろん応力緩和材は必ずしも除去しなくてよい。
【0056】
すなわち本実施の形態は、第1の接着剤の粘着性が低下したり、剥離する要因と、第2
の接着剤が硬化する要因とが同一な接着剤を用いる。例えば、紫外線照射により粘着性が
低下する接着剤と、硬化する接着剤とを用いると、一度の紫外線照射により、第2の基板
の剥離と、第3の基板への固定とを行うことができ、工程を簡略化することができる。
【0057】
そして図3(H)に示すように、第2の基板を分離する。このとき第1の接着剤の粘着
性は低下しているため、容易、かつ正確に剥離を行うことができる。
【0058】
次いで図3(I)に示すように、水溶性樹脂を除去する。本実施の形態では水溶性樹脂
を除去するため、第3の基板に固定された被剥離層を純水へ浸漬させる。すると、水溶性
樹脂のみ除去される。その後UV保護膜上に封止膜232を形成し、第3の基板に被剥離
層が転写され、上面出射の発光装置が完成する。
【0059】
また第1及び第2の接着剤、応力緩和材をより精度よく除去するためには、アルゴンガ
ス及び酸素ガスを用いたプラズマクリーニングやベルクリン洗浄を行うとよい。
【0060】
以上のように、簡略化された剥離工程により、フィルム基板上に形成されたTFT等を
有する発光装置を形成することができる。その結果、薄型で軽量、落としても破壊しにく
く、そしてフレキシブルな発光装置を提供することができる。
【0061】
またフィルム基板へ、発光装置の各用途に応じたTFT等が設けられた複数の被剥離層
を、転写してもよい。例えば、画素部用のTFTと、駆動回路用のTFTとの被剥離層を
形成し、フィルム基板の所定領域へ転写してもよい。
【0062】
また本実施の形態では、上面出射の発光装置の場合を説明したが、下面出射の発光装置
であっても本発明を適応できることは言うまでもない。
【0063】
(実施の形態2)
本実施の形態では、発光素子及び液晶素子まで形成された状態を被剥離層とし、剥離及
び転写を行う場合であって、紫外線と熱を加えて接着剤の粘着性を制御する場合の剥離工
程を用い下面出射の発光装置を形成する一例を説明する。また実施の形態1と同様の工程
や材料の説明を省略する。
【0064】
まず実施の形態1と同様に保護膜215まで形成する(図4(A))。但し下面出射の
発光装置であるため、電極204には透光性を有する材料を使用する必要がある。また応
力緩和材を設けてもよいが、本実施の形態では特に設けない。
【0065】
次いで図4(B)に示すように、保護膜215上に接着剤として両面テープ221を用
いて第2の基板220を固定し、その後第1の基板200を剥離する。
【0066】
そして図4(C)に示すように、第3の基板であるフィルム基板230を接着剤231
により被剥離層下に張り付ける。本実施の形態では、加熱により粘着性が低下又は剥離す
る両面テープを用い、紫外線により硬化する接着剤を用いるため、紫外線をフィルム基板
の下面から照射しながら、加熱する。もちろん紫外線は基板の両面から照射してもよい。
更には、電極が紫外線を透過する場合、第2の基板の上方から照射しても構わない。もち
ろん、紫外線により粘着性が低下又は剥離する両面テープを用い、加熱による硬化する接
着剤を使用してもよく、紫外線を第2の基板の上方から照射するのが適すであろう。
【0067】
本実施の形態のように、紫外線の照射と加熱を行うことにより、両面テープ221の粘
着性の低下や剥離の要因と、接着剤の硬化の要因とが、異なっていても、同一工程で剥離
と硬化を行うことができ、剥離工程を簡略化することができる。
【0068】
その後図4(D)に示すように、第2の基板を剥離する。そして図4(E)に示すよう
に、封止膜232を形成し、下面出射の発光装置が完成する。
【0069】
以上のように、簡略化された剥離工程により、フィルム基板上に形成されたTFT等を
有する発光装置として使用することができる。その結果、薄型で軽量、落としても破壊し
にくく、かつフレキシブルな発光装置を提供することができる。
【0070】
また本実施の形態では、下面出射の発光装置の場合を説明したが、上面出射の発光装置
であっても本発明を適応できることは言うまでもない。また上面出射の場合、発光層の劣
化を防ぐためにUV防止膜を設けるとよい。
【0071】
(実施の形態3)
本実施の形態では、半導体素子、電極、及び絶縁膜等までが形成された状態を被剥離層
とし、剥離及び転写を行う場合の発光装置の作製方法について説明する。
【0072】
図12(A)に示すように、第1の基板200上に金属膜201を形成する。本実施の
形態では第1の基板は、0.5〜1.0mm程度のガラス基板を用いる。金属膜としては
、W、Ti、Ta、Mo、Nd、Ni、Co、Zr、Zn、Ru、Rh、Pd、Os、I
rから選ばれた元素または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料からなる
単層、或いはこれらの積層を用いることができる。金属膜の作製方法としてスパッタリン
グ法を用い、金属をターゲットして、第1の基板上に形成すればよい。なお金属膜の膜厚
は、10nm〜200nm、好ましくは50nm〜75nmとする。
【0073】
金属膜に上記金属の合金(例えば、WとMoとの合金:WMo1−X)を用いる場合
、成膜室内に第1の金属(W)及び第2の金属(Mo)といった複数のターゲット、又は
第1の金属(W)と第2の金属(Mo)との合金のターゲットを配置してスパッタリング
法により形成すればよい。このように、金属膜の形成を適宜設定することにより、剥離工
程を制御することができ、プロセスマージンが広がる。例えば、金属の合金を用いた場合
、合金の各金属の組成比を制御することにより、加熱処理の温度、更には加熱処理の要否
を制御することができうる。
【0074】
金属膜の代わりに、窒化された金属膜(窒化金属膜)を用いても構わない。更に、金属
膜に窒素や酸素を添加してもよい。例えば、金属膜に窒素や酸素をイオン注入したり、成
膜室を窒素や酸素雰囲気とし、スパッタリング法により金属膜を形成したり、更にターゲ
ットとして窒化金属を用いてもよい。
【0075】
その後、金属膜201上に積層した下地膜207を介して半導体膜を形成する。すなわ
ち、金属膜と半導体膜との間には下地膜を代表とする絶縁膜が何層設けてもよい。下地膜
は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜などの珪素を有する絶縁
膜の単層、又は積層膜を用いればよい。本実施の形態では、金属膜上にスパッタリング法
により形成される150nm〜200nmのSiOと、SiO上にCVD法により形
成される80〜100nmのSiONとを設ける。下地膜により、基板や金属膜から半導
体膜への不純物拡散を防止することができる。
【0076】
なお上述の工程を経ると、金属膜表面には当該金属を有する酸化膜(酸化金属膜)20
2が形成される。酸化金属膜の膜厚は、0.1nm〜1μm、好ましくは0.1nm〜1
00nm、更に好ましくは0.1nm〜5nmとなるようにすればよい。また金属膜上に
直接酸化膜を作製してもよい。
【0077】
その後必要に応じて、加熱処理を行う。この加熱処理により、酸化金属膜が結晶化し、
結晶歪みや格子欠陥(点欠陥、線欠陥、面欠陥(例えば、酸素空孔が集まってできる結晶
学的せん断面による面欠陥)、拡張欠陥)が生じ、剥離しやすい状態とすることができる

【0078】
更に加熱処理により、半導体膜が有する水素が拡散することによる酸化還元反応により
、結晶状態の異なる酸化金属が形成され、より剥離しやすい状態とすることも考えられる

【0079】
なお、上記加熱処理は半導体膜の結晶化の加熱処理と兼ねることができる。すなわち、
金属膜上に形成された半導体膜を加熱しすることにより、結晶性半導体膜を形成し、且つ
酸化金属膜の結晶化を行うことが可能である。
【0080】
半導体膜の結晶性を向上させるために、結晶化を助長させる金属元素(代表的にはNi
元素)を塗布後加熱処理したり、加熱処理後にレーザーを照射してもよい。なお、結晶化
を助長される金属元素を使用した場合、当該金属元素はデバイスにとっては不要なもので
あるため、ゲッタリング工程やエッチング工程により除去することが望まれる。
【0081】
その後、結晶性半導体膜を所望の形状にパターニングし、珪素を有する酸化膜、又は珪
素を有する窒化膜を用いてゲート絶縁膜を形成する。ゲート絶縁膜を介して結晶性半導体
膜上にゲート電極を形成し、当該ゲート電極をマスクとして不純物領域を形成する。ゲー
ト電極にはWとTaNの積層構造を用い、不純物領域にはソース及びドレイン領域と、低
濃度不純物領域(LDD領域)と、ゲート電極と重なる低濃度不純物領域(GOLD領域
)とを設けてもよい。そしてTFT203が形成される。
【0082】
次いでソース配線又はドレイン配線と接続される電極204を形成する。そして電極2
04の端を覆う、すなわち隣り合う電極の両端を覆うように有機材料や無機材料を有する
絶縁膜205を形成する。絶縁膜としては、アクリル膜(感光性アクリルを含む)の他に
ポリイミド、ポリアミド、BCB(ベンゾシクロブテン)といった有機材料、又は酸化シ
リコン膜の他に、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜および塗布シリコン酸化膜(SO
G:Spin On Glass)等のシリコンを含む無機材料を用いることができる。
本実施の形態では感光性アクリルを用いる。絶縁膜形成後、エッチングにより開口部を形
成し電極204を露出させる。そして、絶縁膜、特に有機材料を有する絶縁膜は発光素子
の劣化要因となる水分や酸素等が侵入しやすいため、絶縁膜上に保護膜206を形成する
。保護膜はDLC、CN、SiN等の炭素や窒素を有する膜を形成すればよい。
【0083】
以上のように、半導体素子としてTFTを形成する。各画素にTFTを形成するアクテ
ィブマトリクス型表示装置を説明しているが、パッシブ型表示装置でもよいことは言うま
でもない。
なお被剥離層の半導体素子は、有機TFT、薄膜ダイオード、シリコンのPIN接合から
なる光電変換素子、シリコン抵抗素子又はセンサ素子(代表的にはポリシリコンを用いた
感圧式指紋センサ)等であってもよい。
【0084】
そして、以下に示すように剥離が行われる。なお、本実施の形態では電極及び絶縁膜等
を形成した後に剥離する場合を説明するが、絶縁膜形成後、発光層を形成した後剥離して
もよい。すなわち剥離するタイミングは実施者が適宜決定することができる。
そして図12(B)に示すように、電極、絶縁膜及び保護膜を覆ってスピンコーティング
法により、応力緩和材として水溶性樹脂210を形成する。応力緩和材は、熱を加えたり
、紫外線を照射して硬化させればよい。また紫外線を照射して硬化する材料を使用する場
合であって、半導体素子の劣化が懸念されるときは、紫外線防止膜(UV防止膜)により
保護することができる。
【0085】
UV防止膜は、紫外線領域(UV領域)の波長を透過せず(少なくとも90%以上透過
しない)、発光層からの光、つまり可視光程度の領域(400nm〜1μm、好ましくは
450nm〜800nm)の波長を透過する性質を有するフィルム(シート)を用いれば
よい。例えば、紫外線吸収剤を配合させた有機樹脂フィルム、具体的にはポリエチレンテ
レフタレートやポリエチレン−2、6−ナフタレンジカルボキシレート等のポリエステル
のフィルムを用いればよい。ポリエステルのフィルムは公知の押し出し法等により形成す
ればよい。また紫外線を吸収する層と、その他層を積層した構造の有機樹脂フィルムを用
いても構わない。
【0086】
その後、剥離を容易に行うため、分断したり、剥離界面に傷を付けたりするとよい。図
示しないが、本実施の形態ではカッターの一種であるスクライブトリガーにより第1の基
板、被剥離層及び水溶性樹脂を分断し、剥離界面の断面を露出させる。
【0087】
そして図12(C)に示すように、第2の基板211を水溶性樹脂上に設ける。本実施
の形態では、第2の基板に接着性を有しない石英基板(厚さ1.0〜1.5mm)を使用
し、両面テープ212を用いて固定する。剥離工程で使用される両面テープは、紫外線を
照射したり、加熱したり、水等の液体に浸漬することにより、粘着性が低下したり、自己
剥離する性質を有する。本実施の形態では、紫外線を照射すると粘着性を低下する両面テ
ープを用いる。
【0088】
両面テープの代わりに紫外線硬化樹脂、具体的にはエポキシ樹脂系接着剤、熱硬化樹脂
や樹脂添加剤等の接着剤を用いてもよい。また補助基板として、第1の基板下に両面テー
プや接着剤等を用いて石英基板を固定してもよい。
【0089】
その後図12(D)に示すように、第1の基板と半導体素子を有する被剥離層とを物理
的手段により分離する。酸化金属膜と金属膜との界面で剥離するよう図示しているが、こ
のとき結晶化された酸化金属膜の膜内、又は酸化金属膜の両面の界面、すなわち酸化金属
膜と金属膜との界面或いは酸化金属膜と被剥離層との界面等から分離している。酸化金属
膜の内部で分離する場合、被剥離層の下面には酸化金属が点在して付着していることがあ
る。また酸化金属膜と金属膜との界面或いは酸化金属膜と被剥離層との界面で分離する場
合、酸化金属膜は被剥離層の下面のみに存在したり、金属膜上面のみに存在するときがあ
る。酸化金属物が被剥離層の下面に点在したり、付着しする場合、酸化金属物はエッチン
グ又は化学的若しくは物理的研磨により除去してもよいし、付着させたままでもよい。
【0090】
次に図12(E)に示すように、被剥離層を第3の基板であるフィルム基板214に固
定する。フィルム基板が粘着性を有していない場合、第2の接着剤215を介して固定す
る。第2の接着剤には、紫外線硬化樹脂、具体的にはエポキシ樹脂系接着剤、熱硬化樹脂
や樹脂添加剤等の接着剤または両面テープを用いることができる。
【0091】
本実施の形態では第2の接着剤として、紫外線照射により硬化する非水溶性接着剤を用
いる。すなわち第2の接着剤は、応力緩和材を除去する場合のことを考えて、応力緩和材
の性質を考慮し、剥離しない材料を用いる必要がある。もちろん応力緩和材は必ずしも除
去しなくてよい。
【0092】
すなわち本実施の形態は、第1の接着剤の粘着性が低下したり、剥離する要因と、第2
の接着剤が硬化する要因とが同一な接着剤を用いる。例えば、紫外線照射により粘着性が
低下する接着剤と、硬化する接着剤とを用いると、一度の紫外線照射により、第2の基板
の剥離と、第3の基板への固定とを行うことができ、工程を簡略化することができる。
【0093】
そして図12(F)に示すように、第2の基板を剥離する。このとき第1の接着剤の粘
着性は低下しているため、容易、かつ正確に剥離を行うことができる。
【0094】
次いで図12(H)に示すように、水溶性樹脂を除去する。本実施の形態では水溶性樹
脂を除去するため、第3の基板に固定された被剥離層を純水へ浸漬させる。すると、水溶
性樹脂のみ除去される。
【0095】
また第1及び第2の接着剤、応力緩和材をより精度よく除去するためには、アルゴンガ
ス及び酸素ガスを用いたプラズマクリーニングやベルクリン洗浄を行うとよい。
【0096】
その後図12(I)に示すように、保護膜上に発光層220及び陰極221を形成する
。このときフィルム基板の不安定さを低減するため、別途支持基板を用意し、支持基板に
固定した状態で発光層や陰極の蒸着を行うとよい。本実施の形態では真空蒸着により発光
層を形成する。
【0097】
発光層は各RGB発光層を形成しても、白色発光層を形成し、カラーフィルター等の色
変換層により多色表示を行ってもよい。陰極は上面出射の場合は透光性を有する材料、例
えばITOで、下面出射の場合はMgAg等の金属膜で形成すればよい。
【0098】
有機化合物を含む発光層の形成前又は形成後には、真空加熱を行って脱気を行うことが
好ましい。また有機化合物を含む発光層210は、極めて薄いため、第1の電極の表面は
平坦であることが好ましく、化学的及び機械的に研磨する処理(代表的にはCMP技術等
)により平坦化を行うとよい。
【0099】
電極204の表面における清浄度を向上させるため、異物(ゴミなど)をクリーニング
するための洗浄(ブラシ洗浄やベルクリン洗浄)やプラズマクリーニングを発光層形成前
に行ってもよい。このとき、転写に使用した接着剤の付着もきれいに除去することができ
る。
【0100】
そして図12(J)に示すように、陰極上に保護膜222を形成し、封止膜223を形
成する。また封止膜と陰極とに空間が形成される場合、発光層等の劣化を防止するため、
窒素置換し乾燥剤等を封入するとよい。なお、大気に曝さずに発光層、陰極及び保護膜ま
でを連続して形成すると好ましい。
【0101】
このように、フィルム基板に被剥離層が転写され、上面出射の発光装置が完成する。そ
の結果、薄型で軽量、落としても破壊しにくく、そしてフレキシブルな発光装置を提供す
ることができる。
【0102】
またフィルム基板へ、発光装置の各用途に応じたTFT等が設けられた複数の被剥離層
を、転写してもよい。例えば、画素部用のTFTと、駆動回路用のTFTとの被剥離層を
形成し、フィルム基板の所定領域へ転写してもよい。
【0103】
また本実施の形態では、上面出射の発光装置の場合を説明したが、下面出射の発光装置
であっても本発明を適応できることは言うまでもない。
【0104】
(実施の形態4)
本実施の形態では、半導体素子、電極、及び絶縁膜等までが形成された状態を被剥離層
とし、剥離及び転写を行う場合であって、紫外線と熱を加えて接着剤の粘着性を制御する
剥離工程を用い、下面出射の発光装置を形成する一例を説明する。また実施の形態3と同
様の工程や材料の説明を省略する。
【0105】
まず実施の形態1と同様に保護膜206まで形成する(図13(A))。但し下面出射
の発光装置であるため、電極204には透光性を有する材料を使用する必要がある。また
応力緩和材を設けてもよいが、本実施の形態では特に設けない。
【0106】
次いで図13(B)に示すように、保護膜206上に接着剤として両面テープ212を
用いて第2の基板211を固定し、第1の基板200を剥離する。
【0107】
そして図13(C)に示すように、第3の基板であるフィルム基板214を接着剤21
5により被剥離層下に張り付ける。本実施の形態では、加熱により粘着性が低下又は剥離
する両面テープを用い、紫外線により硬化する接着剤を用いるため、紫外線をフィルム基
板の下面から照射しながら、加熱する。もちろん紫外線は基板の両面から照射してもよい
。更には、電極が紫外線を透過する場合、第2の基板の上方から照射しても構わない。も
ちろん、紫外線により粘着性が低下又は剥離する両面テープを用い、加熱による硬化する
接着剤を使用してもよく、紫外線を第2の基板の上方から照射するのが適すであろう。
【0108】
本実施の形態のように、紫外線の照射と加熱を行うことにより、両面テープ221の粘
着性の低下や剥離の要因と、接着剤の硬化の要因とが、異なっていても、同一工程で剥離
と硬化を行うことができ、剥離工程を簡略化することができる。
【0109】
その後図13(D)に示すように、第2の基板を剥離する。そして図13(E)に示す
ように、発光層220、陰極211を形成する。そして、陰極上に保護膜222を形成し
封止膜223を設け、下面出射の発光装置が完成する。
【0110】
以上のように、簡略化された剥離工程により、フィルム基板上に形成されたTFT等を
有する発光装置として使用することができる。その結果、薄型で軽量、落としても破壊し
にくく、かつフレキシブルな発光装置を提供することができる。
【0111】
また本実施の形態では、下面出射の発光装置の場合を説明したが、上面出射の発光装置
であっても本発明を適応できることは言うまでもない。また紫外線照射により半導体素子
への劣化が懸念される場合、UV防止膜を設けるとよい。
【0112】
(実施の形態5)
本実施の形態では、発光素子及び液晶素子までが形成された状態を被剥離層とし、剥離
及び転写を行う場合であって、加熱して接着剤の粘着性を制御する剥離工程を用いて液晶
表示装置を形成する場合を説明する。
【0113】
図5(A)に示すように、第1の基板300上に金属膜301を形成する。第1の基板
や金属膜は実施の形態1で述べたものを用いればよい。本実施の形態では、ガラス基板上
にMoとWとの合金膜を形成する。このとき、成膜室内に第1の金属(W)及び第2の金
属(Mo)といった複数のターゲット、又は第1の金属(W)と第2の金属(Mo)との
合金のターゲットを配置してスパッタリング法により形成すればよい。このように、金属
膜の組成を適宜設定することにより、剥離工程を制御することができ、プロセスマージン
が広がる。
【0114】
その後実施の形態1と同様に下地膜307を介してTFT303を形成し、TFTの一
方の配線と接続される電極304を形成する。
【0115】
また、半導体膜や下地膜の形成を経過した段階で、金属膜上に当該金属を有する酸化物
である酸化金属膜302が形成されている。そしてカラーフィルター等が設けられた対向
基板305を設け、第1の基板と対向基板との間に液晶306を形成する。対向基板には
フィルム基板を用いることができる。液晶は真空注入法や、真空中で滴下して形成すれば
よい。また、液晶材料は公知のもの、例えば分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶
等を用いればよい。そして分散型液晶のように粘性がある程度高い液晶には滴下する方法
が適すであろう。
【0116】
また液晶表示装置を作製するとき、基板間隔を保持するためにスペーサを形成したり、
散布したりしているが、フレキシブルな基板の間隔を保持するため、通常より3倍程度多
くスペーサを形成又は散布するとよい。またスペーサは、通常のガラス基板に使用する場
合より柔らかく作製するとよい。また更にフィルム基板は可撓性を有しているため、スペ
ーサが移動しないよう固定する必要がある。
【0117】
更に対向基板や第3の基板として使用するフィルム基板には、水分や不純物を透過する
場合、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体等の有機材料或いはポ
リシラザン、酸化アルミニウム、酸化珪素、窒化珪素等の無機材料、又はそれらの積層で
なるバリア膜で覆うとよい。
【0118】
その後図5(B)に示すように、スピンコーティング法により応力緩和材として水溶性
樹脂310を形成する。
【0119】
次に図5(C)に示すように、水溶性樹脂上に第2の基板311を両面テープ312に
より固定する。その後、第1の基板をテープ等の物理的手段により分離する。このとき、
結晶化された酸化金属膜の膜内、又は酸化金属膜の両面の界面、すなわち酸化金属膜と金
属膜との界面或いは酸化金属膜と被剥離層との界面から分離している。酸化金属膜の内部
で分離する場合、被剥離層の下面には酸化金属物が点在して付着していることがある。こ
のような場合、酸化金属物はエッチングや研磨により除去してもよいし、付着させたまま
でもよい。
【0120】
そして図5(D)に示すように、第3の基板に相当するフィルム基板315を張り付け
る。本実施の形態では加熱により硬化する接着剤316を用い、フィルム基板を固定する
。このとき両面テープ312は、加熱により粘着性を低め、又は自己剥離する性質のもの
を使用し、本工程により接着剤の硬化と両面テープの剥離を同時に行うことができる。そ
の結果、製造工程を簡略化することができる。
【0121】
上記工程は、紫外線の照射によっても行うことができる。その場合、紫外線の照射によ
り剥離する両面テープと、紫外線の照射により硬化する接着剤を用いればよい。
【0122】
その後図5(E)に示すように、第2の基板を剥離する。両面テープの粘着性が低下し
ているため、容易、且つ均一に剥離することができる。
【0123】
そして図5(F)に示すように、純水に浸漬させて水溶性樹脂を除去する。その後偏光
板等を適宜設け、フィルム基板上に形成されたTFTを有する液晶表示装置が完成する。
【0124】
以上のように、簡略化された製造工程により、フィルム基板上に形成されたTFT等を
有する液晶表示装置を形成することができる。その結果、薄型で軽量、落としても破壊し
にくく、そしてフレキシブルな液晶表示装置を提供することができる。
【0125】
(実施の形態6)
本実施の形態では、発光素子及び液晶素子までが形成された状態を被剥離層とし、剥離
及び転写を行う場合であって、加熱に加え、紫外線を照射して粘着性を制御する剥離工程
を用いて、液晶表示装置を形成する場合を説明する。また実施の形態5と同様の工程や材
料の説明を省略する。
【0126】
まず実施の形態3と同様に、第1の基板300上に金属膜301及び酸化金属膜302
、下地膜307、TFT303、電極304を形成し、対向基板305と液晶306を形
成する(図6(A))。
【0127】
そして図6(B)に示すように、対向基板上に第2の基板311を両面テープ312に
より貼り合わせる。その後、第1の基板を物理的手段により剥離する。また応力緩和材を
設けてもよいが、本実施の形態では特に設けない。
【0128】
次に図6(C)に示すように、第3の基板としてフィルム基板315を接着剤316に
より貼り付ける。本実施の形態では、基板全体を加熱しながら、両面から紫外線を照射し
、接着剤を硬化する。同時に、両面テープ312は加熱又は紫外線照射により粘着性が低
下、又は自己剥離している。すなわち、本工程により、第2の基板を固定する両面テープ
は剥離し、フィルム基板を固定する接着剤は硬化することを特徴とする。更に加熱と紫外
線を照射する工程とを同時に行うため、両面テープは加熱により剥離する性質でも、紫外
線照射により剥離する性質でもよく、作製マージンを広げることができる。
【0129】
その後図6(D)に示すように、第2の基板を剥離し、液晶表示装置が完成する。
【0130】
以上のように、簡略化された製造工程により、フィルム基板上に形成されたTFT等を
有する液晶表示装置を形成することができる。その結果、薄型で軽量、落としても破壊し
にくく、そしてフレキシブルな液晶表示装置を提供することができる。
【0131】
(実施の形態7)
本実施の形態では、発光素子及び液晶素子までが形成された状態を被剥離層とし、剥離
及び転写を行う場合であって、加熱して接着剤の粘着性を制御する剥離工程を用いて液晶
表示装置を形成する場合を説明する。
【0132】
図14(A)に示すように、第1の基板300上に金属膜301を形成する。第1の基
板や金属膜は実施の形態1で述べたものを用いればよい。本実施の形態では、ガラス基板
上にMoとWとの合金膜を形成する。このとき、成膜室内に第1の金属(W)及び第2の
金属(Mo)といった複数のターゲット、又は第1の金属(W)と第2の金属(Mo)と
の合金のターゲットを配置してスパッタリング法により形成すればよい。このように、金
属膜の組成を適宜設定することにより、剥離工程を制御することができ、プロセスマージ
ンが広がる。
【0133】
その後実施の形態1と同様にTFT303を形成し、TFTの一方の配線と接続される
電極304を形成する。
【0134】
また、半導体膜や下地膜307の形成を経過した段階で、金属膜上に当該金属の酸化物
である酸化金属膜302が形成されている。
【0135】
その後図14(B)に示すように、スピンコーティング法により応力緩和材として水溶
性樹脂310を形成する。
【0136】
次に図14(C)に示すように、水溶性樹脂上に第2の基板311を接着剤として両面
テープ312により固定する。その後、第1の基板を物理的手段により分離する。このと
き、結晶化された酸化金属膜の膜内、又は酸化金属膜の両面の界面、すなわち酸化金属膜
と金属膜との界面或いは酸化金属膜と被剥離層との界面から分離している。酸化金属膜の
内部で分離する場合、被剥離層の下面には酸化金属物が点在して付着していることがある
。このような場合、酸化金属物はエッチングや研磨により除去してもよいし、付着させた
ままでもよい。
【0137】
そして図14(D)に示すように、第3の基板に相当するフィルム基板315を張り付
ける。本実施の形態では加熱により硬化する接着剤316を用い、フィルム基板を固定す
る。このとき両面テープ312は、加熱により粘着性を低め、又は自己剥離する性質のも
のを使用し、本工程により接着剤の硬化と両面テープの剥離を同時に行うことができる。
その結果、製造工程を簡略化することができる。
【0138】
上記工程は、紫外線の照射によっても行うことができる。その場合、紫外線の照射によ
り剥離する両面テープと、紫外線の照射により硬化する接着剤を用いればよい。
【0139】
その後図14(E)に示すように、第2の基板を剥離する。両面テープの粘着性が低下
しているため、容易、且つ均一に剥離することができる。そして図14(F)に示すよう
に、純水に浸漬させて水溶性樹脂を除去する。
【0140】
そして図14(G)に示すように、カラーフィルター等が設けられた対向基板305を
設け、第1の基板と対向基板との間に液晶306を形成する。また図示しないが、偏光板
を適宜設ける。対向基板にはフィルム基板を用いることができる。液晶は真空注入法や、
真空中で滴下して形成すればよい。また、液晶材料は公知のもの、例えば分散型液晶、強
誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いればよい。そして分散型液晶のように粘性がある程
度高い液晶には滴下する方法が適すであろう。
【0141】
また液晶表示装置を作製するとき、基板間隔を保持するためにスペーサを形成したり、
散布したりしているが、フレキシブルな基板の間隔を保持するため、通常より3倍程度多
くスペーサを形成又は散布するとよい。またスペーサは、通常のガラス基板に使用する場
合より柔らかく作製するとよい。また更にフィルム基板は可撓性を有しているため、スペ
ーサが移動しないよう固定する必要がある。
【0142】
更に対向基板や第3の基板として使用するフィルム基板には、水分や不純物を透過する
場合、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体等の有機材料或いはポ
リシラザン、酸化アルミニウム、酸化珪素、窒化珪素等の無機材料、又はそれらの積層で
なるバリア膜で覆うとよい。
【0143】
以上のように、簡略化された製造工程により、フィルム基板上に形成されたTFT等を
有する液晶表示装置を形成することができる。その結果、薄型で軽量、落としても破壊し
にくく、そしてフレキシブルな液晶表示装置を提供することができる。
【0144】
(実施の形態8)
本実施の形態では、発光素子及び液晶素子までが形成された状態を被剥離層とし、加熱
に加え、紫外線を照射して粘着性を制御する剥離工程を用いて、液晶表示装置を形成する
場合を説明する。また実施の形態7と同様の工程や材料の説明を省略する。
【0145】
まず実施の形態3と同様に、第1の基板300上に金属膜301及び酸化金属膜302
、下地膜307、TFT303、電極304を形成する(図15(A))。
そして図15(B)に示すように、電極上に第2の基板311を接着剤として両面テープ
312により貼り合わせる。その後、第1の基板を物理的手段により剥離する。また応力
緩和材を設けてもよいが、本実施の形態では特に設けない。
【0146】
次に図15(C)に示すように、第3の基板としてフィルム基板315を接着剤316
により貼り付ける。本実施の形態では、基板全体を加熱しながら、両面から紫外線を照射
し、接着剤を硬化する。同時に、両面テープ312は加熱又は紫外線照射により粘着性が
低下、又は自己剥離している。
【0147】
すなわち、本工程により、第2の基板を固定する両面テープは剥離し、フィルム基板を
固定する接着剤は硬化することを特徴とする。更に加熱と紫外線を照射する工程とを同時
に行うため、両面テープは加熱により剥離する性質でも、紫外線照射により剥離する性質
でもよく、作製マージンを広げることができる。
【0148】
その後図15(D)に示すように、物理的手段により第2の基板を剥離する。そして、
図15(E)に示すように、カラーフィルター等が設けられた対向基板320を形成し、
液晶321を形成する。
【0149】
以上のように、簡略化された製造工程により、フィルム基板上に形成されたTFT等を
有する液晶表示装置を形成することができる。その結果、薄型で軽量、落としても破壊し
にくく、そしてフレキシブルな液晶表示装置を提供することができる。
【0150】
(実施の形態9)
本実施の形態では、大型基板(例えば600×720mm基板)から複数の半導体素子
を有する表示装置を形成する多面取りの方法について説明する。図7(A)は、第1の基
板500上に下地膜等の絶縁膜510を介して複数の表示装置又は半導体素子群501が
形成された状態を示す。
【0151】
表示装置は、発光装置、液晶表示装置その他の表示装置であり、さらに本発明の剥離工
程により形成された半導体素子を有する電子機器であっても構わない。
【0152】
半導体素子群とは、表示部、駆動回路部等を構成し、本発明の剥離工程により形成され
ている。
【0153】
第1の基板を大型とし、複数の表示装置又は半導体素子群を製造することで量産性が向
上するが、第1の基板や第2の基板の剥離を均一に行うことが難しくなる恐れがあるため
、図7(B)に示すような減圧機能を有する装置(減圧装置)を用いるとよい。
【0154】
図7(B)は、a−a’における断面図を示し、第2の基板を剥離する工程を示す。す
なわち第1の基板500上に金属膜502、酸化金属膜503を介して形成された表示装
置又は半導体素子群501と、表示装置又は半導体素子群上に第2の基板505とを設け
る。好ましくは、表示装置又は半導体素子群を覆うように応力緩和材504を設けるとよ
い。そして第1の基板に、ポンプ507と接続されている空孔506を有する減圧装置5
08を固定する。第1の基板と減圧装置との間には、補助基板等が配置されていてもよい
。さらに第2の基板側にも減圧装置を配置し、固定すると好ましい。すると、空孔内が減
圧又は真空状態となり、第1の基板や第2の基板を一定の吸引力で吸着することができ、
第1の基板の剥離を均一に行うことができる。なお、剥離面の断面を露出させ、断面にカ
ッター等で損傷を与えておくとよい。
【0155】
その後、第3の基板へ転写を行うが、第2の基板を吸着した状態で行ってもよい。その
場合、第3の基板を減圧装置に固定しておき、吸着された第2の基板を転写し、紫外線の
照射や加熱を行って接着剤の剥離や硬化を行う。このとき、減圧装置は紫外線を透過する
材料で形成するとよい。第3の基板に相当するフィルム基板は、フレキシブルなため、平
坦に固定することが難しい場合もあるが、減圧装置等により均一に固定することにより、
転写や剥離、強いては表示装置の製造を正確、かつ簡便に行うことができる。
【0156】
本実施の形態は、実施の形態1乃至4のいずれとも組み合わせて行うことができる。
【0157】
(実施の形態10)
本発明は様々な電子機器の表示部に適用することができる。電子機器としては、携帯情
報端末(携帯電話機、モバイルコンピュータ、シートコンピュータ、ウェアラブルコンピ
ュータ、携帯型ゲーム機又は電子書籍等)、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型
ディスプレイ、表示ディスプレイ、ナビゲーションシステム等が挙げられる。これら電子
機器の具体例を図8に示す。
【0158】
図8(A)はモバイルコンピュータであり、本体4101、スタイラス4102、表示
部4103、操作ボタン4104、外部インターフェイス4105等を含む。本発明の表
示装置は表示部4103に用いる。本発明により、軽量、薄型、落としても破壊しにくい
モバイルコンピュータを提供することができる。さらに本発明の表示装置はフレキシブル
性に富むため、表示部が曲面を有してもよい。
【0159】
図8(B)は電子ブックリーダーであり、表示部4201等を含む。本発明の表示装置
は表示部4202に用いる。本発明により、軽量、薄型、落としても破壊しにくい電子ブ
ックリーダーを提供することができる。さらに本発明の表示装置はフレキシブル性に富む
ため、見開き型の電子ブックや、巻き取り型の電子ブック等の表示部として使用できる。
【0160】
図8(C)はICカードであり、本体4301、表示部4302、集積回路部4303
等を含む。本発明の表示装置は表示部4302に用いる。本発明により、非常に薄いIC
カードに表示部を設けることが可能となる。また集積回路部の半導体素子も本発明の剥離
方法を用いて作製してもよい。
【0161】
図8(D)はシート型の携帯電話であり、本体4401、表示部4403、音声入力部
4404、音声出力部4405、スイッチ4406、外部接続ポート4407等を含む。
外部接続ポート4407を介して、別途用意したイヤホン4408を接続することができ
る。表示部4403には、センサを備えたタッチパネル式の、本発明により形成される表
示装置が用いられており、表示部4403に表示されたタッチパネル式操作キー4409
に触れることで、一連の操作を行うことができる。また本体4401内に設けられた各種
信号処理回路として、本発明により形成する薄膜回路を用いることができる。本発明によ
り、軽量、薄型、落としても破壊しにくい携帯電話機を提供することができる。
【0162】
図8(E)はロボットであり、腕部4501、胴部4502、頭部4503及び表示部
4504等を含む。本発明の表示装置は表示部4504に用いる。図8(F)は表示部4
601が設けられた広告塔4602である。本発明の表示装置は表示部4601に用いる
。更に本発明の表示装置は自動車の窓等に固定してもよい。このように本発明の表示装置
はフレキシブルな性質を有するため、円形状の基体に固定して利用できる効果を奏する。
【0163】
以上のように、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に用いること
が可能である。特に、薄型や軽量が実現する本発明は、図8(A)〜(F)の電子機器に
大変有効である。
【0164】
(実施の形態11)
本実施の形態では、同一の絶縁表面上に画素部と該画素部を制御する駆動回路、記憶回
路、及び制御装置と演算装置を有するCPUを搭載したパネルについて説明する。すなわ
ち本発明の剥離工程は、表示部以外の駆動回路や論理回路等を形成することも可能である

【0165】
図9はパネルの外観を示し、該パネルは、基板3009上に複数の画素がマトリクス状
に配置された画素部3000を有する。画素部3000の周辺には、画素部3000を制
御する走査線駆動回路3001、信号線駆動回路3002を有する。画素部3000では
、駆動回路から供給される信号に従って画像を表示する。
【0166】
対向基板は、画素部3000及び駆動回路3001、3002上のみに設けてもよいし
、全面に設けてもよい。但し、発熱する恐れがあるCPU3008には、放熱板が接する
ように配置することが好ましい。
【0167】
また前記パネルは、駆動回路3001、3002を制御するVRAM3003(vid
eo random access memory、画面表示専用メモリー)、VRAM
3003の周辺には、VRAM3003を制御するデコーダ3004、3005を有する
。またRAM3006、RAM3006の周辺には、RAM3006を制御するデコーダ
3007、さらにCPU3008を有する。
【0168】
基板3009上の回路を構成する全ての素子は、非晶質半導体に比べて電界効果移動度
が高く、オン電流が大きい多結晶半導体(ポリシリコン)により形成されており、それ故
に同一の絶縁表面上における複数の回路の一体形成を実現している。また、画素部300
1及び駆動回路3001、3002、並びに他の回路はまず支持基板上に作製後、本発明
の剥離方法により剥離して貼り合わせることで、可撓性基板3009上における一体形成
を実現している。なお画素部に配置された複数の画素の構成は限定されないが、複数の画
素の各々にSRAMを配置することで、VRAM3003及びRAM3006の配置を省
略してもよい。
【実施例1】
【0169】
本実施例では、剥離後の基板側と、半導体膜側における酸化物層をTEMにより観察し
た結果を示す。
【0170】
ガラス基板上に、スパッタリング法でW膜を50nm、スパッタリング法で酸化珪素膜
を200nm、下地膜としてプラズマCVD法で酸化窒化珪素膜を100nm、半導体膜
としてプラズマCVD法で非晶質珪素膜を50nmと、順次積層形成した。その後500
度1時間と550度4時間の熱処理を行い、ポリテトラフルオロエチレンテープなどの物
理的手段により剥離した。このときの基板側のW膜と酸化物層のTEM写真が図10、半
導体膜側の酸化物層と酸化珪素膜のTEM写真が図11である。
【0171】
図10では、金属膜に接して酸化金属膜が不均一に残存している。同様に、図11でも
、酸化珪素膜に接して酸化金属膜が不均一に残存している。両TEM写真から、剥離は酸
化金属膜の層内及び両界面で行われたことが実証され、また酸化金属膜は金属膜及び酸化
珪素膜に密着して不均一に残存することがわかる。
次に、剥離後の基板側、及び剥離後の半導体膜側の剥離面をXPSにより測定した。その
結果得られたスペクトルを波形分離し、そこから得られた検出元素と定量結果は以下の通
りである。
【0172】
剥離後の半導体膜側では、W1(タングステンW)とW2(酸化タングステンWO
Xはほぼ2)は0%、W3(酸化タングステンWO、2<X<3)は16%、W4(酸
化タングステンWO等)は84%であるのに対し、基板側では、W1は44%、W2は
5%、W3は10%、W4は42%である。
【0173】
従って、剥離が酸化金属膜と金属膜との界面或いは酸化金属膜と酸化珪素膜との界面、
又は酸化金属膜の膜内で行われた際、W1及びW2は全て基板側に残存し、W4は2/3
が半導体膜側に残存し、1/3が基板側に残存したことが分かる。すなわち酸化金属膜の
膜内、特にW2と、W3又はW4との境界から剥離されやすいと考えられる。
【0174】
また本実験では半導体膜側にW2がなく、基板側にW2が付着していたが、逆に半導体
膜側にW2が付着し、基板側にW2はない場合も考えられうる。
【0175】
すなわち、本発明を用いて表示装置等を作製した場合であって、半導体膜側に酸化金属
膜が多少付着した状態で、フィルム基板に転写するとき、フィルム基板と、半導体膜下に
設けられる単層又は積層した下地膜との間には、酸化金属膜が点在していることが考えら
れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板上に金属膜を形成し、
前記金属膜上に下地膜を形成し、その際前記金属膜上に酸化金属膜が形成され、
前記下地膜上に半導体膜を形成し、
前記酸化金属膜、及び前記半導体膜を結晶化するために加熱処理を行い、
前記結晶化された半導体膜にソース領域及びドレイン領域を形成し、
前記ソース領域又は前記ドレイン領域に電気的に接続される電極を形成し、
前記電極の端部を覆う絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜上に第2の基板を固定し、
前記第1の基板を剥離し、
前記半導体膜の下方に第3の基板を固定し、
前記第2の基板を剥離し、
前記電極上に発光層を形成し、
前記発光層上に発光素子の電極を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項2】
第1の基板上に金属膜を形成し、
前記金属膜上に下地膜を形成すると同時に、前記金属膜上に酸化金属膜が形成され、
前記下地膜上に水素を含む半導体膜を形成し、
前記酸化金属膜、及び前記半導体膜を結晶化するために加熱処理を行い、その際前記半導体膜の水素が拡散され、
前記結晶化された半導体膜にソース領域及びドレイン領域を形成し、
前記ソース領域又は前記ドレイン領域に電気的に接続される電極を形成し、
前記電極の端部を覆う絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜上に第2の基板を固定し、
前記第1の基板を剥離し、
前記半導体膜の下方に第3の基板を固定し、
前記第2の基板を剥離し、
前記電極上に発光層を形成し、
前記発光層上に発光素子の電極を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項3】
第1の基板上に金属膜を形成し、
前記金属膜上に下地膜を形成すると同時に、前記金属膜上に酸化金属膜が形成され、
前記下地膜上に半導体膜を形成し、
前記酸化金属膜、及び前記半導体膜を結晶化するために加熱処理を行い、
前記結晶化された半導体膜にソース領域及びドレイン領域を形成し、
前記ソース領域又は前記ドレイン領域に電気的に接続される電極を形成し、
前記電極の端部を覆う絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜上に第2の基板を固定し、
前記酸化金属膜と前記金属膜との界面、前記酸化金属膜の膜内、又は前記酸化金属膜の両面の界面で分離が生じたことによって、前記第1の基板を剥離し、
前記半導体膜の下方に第3の基板を固定し、
前記第2の基板を剥離し、
前記電極上に発光層を形成し、
前記発光層上に発光素子の電極を形成することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一において、
前記電極の端部を覆う絶縁膜上に水溶性樹脂又は熱硬化性樹脂を形成した後に前記第2の基板を固定することを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一において、
前記第3の基板は、プラスチック基板、又は可撓性のある基板であることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一において、
前記金属膜は、タングステン膜であることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一において、
前記酸化金属膜は酸化タングステンであることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記第1の基板を剥離した際、前記半導体膜側の酸化金属膜はWOがWOより多いことを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一において、
前記第1の基板を剥離する前に前記第1の基板、前記金属膜、前記半導体膜、及び前記第2の基板を分断し、剥離面の断面を露出させることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一において、
前記発光層の上方から発光する上面出射であることを特徴とする発光装置の作製方法。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一において、
前記発光層の下方から発光する下面出射であることを特徴とする発光装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−266873(P2010−266873A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135852(P2010−135852)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【分割の表示】特願2004−566294(P2004−566294)の分割
【原出願日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】