説明

監視装置

【構成】管理品無線通信タグ(200)および管理者無線通信タグ(300)に基づいて管理対象品(100)の監視を行う監視装置であって、管理品無線通信タグに基づいて管理対象品の存在を検出する第1検出手段(16、34)、管理者無線通信タグに基づいて前記管理者の存在を検出する第2検出手段(16,34)、管理品無線通信タグからの電波に基づいて管理対象品の位置の変化量に応じた値を特定する特定手段(34e)、変化量に応じて時間を計測する計時手段(27)、第1検出手段の検出結果、前記第2検出手段の検出結果、前記特定手段の特定結果、および前記計時手段の計時結果の少なくとも1つに応じて警報を出力する制御手段(16、36、28e)を備える。
【効果】状況に応じて的確な警報を出力することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、監視装置に関し、特にたとえば、管理対象品に添付した無線通信タグ(RFID)および管理者が携帯する無線通信タグに基づいて管理対象品の監視を行う、監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の監視装置の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1記載の物品管理システムでは、管理物品に添付された無線通信タグと管理対象者が携帯する無線通信タグとに基づいて、基準位置に配置された管理物品の監視を行っている。この管理物品システムでは、管理物品が基準位置から所定の範囲外に存在する場合において、管理対象者の無線通信タグが検出されない場合は管理対象者以外による管理物品の誤移動であると判断してブザーを鳴動させるが、管理対象者の無線通信タグが検出された場合は管理対象者による正常な管理物品の搬出であると判断してブザーの鳴動を行わない。
【特許文献1】特開2007−065950号公報[G08B 13/14,G06Q 50/00,G06Q 10/00,G06K 17/00,G01S 5/12]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、特許文献1に開示されている物品管理システムでは、管理物品が基準位置から離れている場合であっても、管理対象者が存在する場合には一律に問題がないとしている。
【0004】
そのため、管理物品が美術館の美術品などであって、所定の時間内に基準位置に戻さなければならない管理物品を管理対象者である美術館員が戻し忘れた場合などにその旨を検知して知らせることができないという問題がある。
【0005】
また、特許文献1に開示されている物品管理システムでは、管理物品が基準位置から所定の範囲外に位置する場合でも、管理物品の位置が変化していなければ一律に問題がないとしている。
【0006】
そのため、管理対象者がメンテナンスのために一旦移動させた後に戻した管理物品としての美術品の位置が基準位置からずれている場合や、美術品が何者かによって破損されて周辺に放置されて基準位置からずれている場合などにその旨を検知して知らせることができないという問題がある。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な監視装置を提供することである。
【0008】
また、この発明のその他の目的は、管理対商品の存在の有無、管理者の存在の有無、管理対象品の移動量、および管理対象品が移動している時間を考慮して、管理対象品を取り巻く状況に応じた的確な警報を出力することができる監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、定位置に配置されるべき管理対象品に添付される管理品無線通信タグおよび管理者に携帯される管理者無線通信タグに基づいて管理対象品の監視を行う監視装置であって、指向性を有するアンテナ、アンテナを介して管理品無線通信タグおよび管理者無線通信タグからの電波を受信する受信手段、受信手段が受信する管理品無線通信タグからの電波に基づいて管理対象品の存在を検出する第1検出手段、受信手段が受信する管理者無線通信タグからの電波に基づいて管理者の存在を検出する第2検出手段、受信手段が受信する管理品無線通信タグからの電波に基づいて管理対象品の定位置からの位置の変化量に応じた値を特定する特定手段、特定手段が特定した変化量に応じて時間を計測する計時手段、第1検出手段の検出結果、第2検出手段の検出結果、特定手段の特定結果、および計時手段の計時結果の少なくとも1つに基づいて警報を出力する制御手段を備える、監視装置である。
【0010】
第1の発明では、監視装置(10)は、定位置に配置されるべき管理対象品(100)に添付される管理品無線通信タグ(200)および管理者(S)に携帯される管理者無線通信タグ(300)に基づいて管理対象品の監視を行う。そして、アンテナ(34d)は指向性を有し、受信手段(34c)はアンテナを介して管理品無線通信タグおよび管理者無線通信タグからの電波を受信し、第1検出手段(16、34a)は受信手段が受信する管理品無線通信タグからの電波に基づいて管理対象品の存在を検出し、第2検出手段(16、34a)は受信手段が受信する管理者無線通信タグからの電波に基づいて管理者の存在を検出し、特定手段(16、34e)は受信手段が受信する管理品無線通信タグからの電波に基づいて管理対象品の定位置からの位置の変化量に応じた値を特定し、計時手段(27)は特定手段が特定した変化量に応じて時間を計測し、そして制御手段(16、36、28e)は第1検出手段の検出結果、第2検出手段の検出結果、特定手段の特定結果、および計時手段の計時結果の少なくとも1つに基づいて警報を出力する。
【0011】
第1の発明によれば、管理対商品の存在の有無、管理者の存在の有無、管理対象品の移動量、および管理対象品が移動している時間を考慮して、管理対象品を取り巻く状況に応じた的確な警報を出力することができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明に従属する発明であって、制御手段は、第1検出手段が管理対象品の存在を検出しない場合に、第1警報を出力する第1出力手段を含む。
【0013】
第2の発明では、制御手段は第1検出手段が管理対象品の存在を検出しない場合に、第1警報を出力する第1出力手段(16、36、28e)を含んでいる。
【0014】
第2の発明によれば、管理対象品の存在が検出されず、管理対象品が盗難された可能性がある場合に、その旨を告げる警報を出力することができる。
【0015】
第3の発明は、第1の発明または第2の発明に従属する発明であって、制御手段は、第1検出手段が管理対象品の存在を検出し、第2検出手段が管理者の存在を検出せず、さらに、特定手段が特定した変化量が第1閾値以上である場合に、第2警報を出力する第2出力手段を含む。
【0016】
第3の発明では、制御手段は、第1検出手段が管理対象品の存在を検出し、第2検出手段が管理者の存在を検出せず、さらに、特定手段が特定した変化量が第1閾値以上である場合に、第2警報を出力する第2出力手段(16、36、28e)を含んでいる。
【0017】
第3の発明によれば、管理対象品が存在するが管理者が存在せずに管理対象品の移動量が第1閾値を越えており、管理対象品が破損している可能性がある場合に、その旨を告げる警報を出力することができる。
【0018】
第4の発明は、第3の発明に従属する発明であって、制御手段は、第1検出手段が管理対象品の存在を検出し、第2検出手段が管理者の存在を検出し続ける間において、計時手段によって計時される特定手段が特定する変化量が第1閾値より値が大きい第2閾値以上であり続ける時間が所定の時間を経過した場合に、第3警報を出力する第3出力手段を含む。
【0019】
第4の発明では、制御手段は、第1検出手段が管理対象品の存在を検出し、第2検出手段が管理者の存在を検出し続ける間において、計時手段によって計時される特定手段が特定する変化量が第1閾値より値が大きい第2閾値以上であり続ける時間が所定の時間を経過した場合に、第3警報を出力する第3出力手段(16、28e)を含んでいる。
【0020】
第4の発明によれば、管理者による管理対象品の移動可能時間が超過している可能性がある場合に、その旨を告げる警報を出力することができる。
【0021】
第5の発明は、第4の発明に従属する発明であって、制御手段は、第1検出手段が管理対象品の存在を検出し、第2検出手段が管理者を検出し続ける間において、特定手段が特定する変化量が一旦第2閾値以上となった後、第2閾値より小さくなったが、第1閾値より大きい場合に、第4警報を出力する第4出力手段を含む。
【0022】
第5の発明では、制御手段は、第1検出手段が管理対象品の存在を検出し、第2検出手段が管理者を検出し続ける間において、特定手段が特定する変化量が一旦第2閾値以上となった後、第2閾値より小さくなったが、第1閾値より大きい場合に、第4警報を出力する第4出力手段(16、28e)を含んでいる。
【0023】
第5の発明によれば、管理対象品が存在し管理者が存在し続ける間に、管理対象品の移動量が一旦第2閾値以上となった後、第2閾値より小さくなったが、第1閾値より大きく、管理対象品が定位置からずれている可能性がある場合に、その旨を告げる警報を出力することができる。
【0024】
第6の発明は、第4の発明または第5の発明に従属する発明であって、制御手段は、第1検出手段が管理対象品の存在を検出し、第2検出手段が管理者の存在を検出したとき特定手段が特定する変化量が第2閾値以上であったが、その後第2検出手段が管理者の存在を検出しなくなったとき特定手段が特定する変化量が第1閾値以上である場合に、第5警報を出力する第5出力手段を含む。
【0025】
第6の発明では、制御手段は、第1検出手段が管理対象品の存在を検出し、第2検出手段が管理者の存在を検出したとき特定手段が特定する変化量が第2閾値以上であったが、その後第2検出手段が管理者の存在を検出しなくなったとき特定手段が特定する変化量が第1閾値以上である場合に、第5警報を出力する第5出力手段(16、28e)を含んでいる。
【0026】
第6の発明によれば、管理対象品が存在し、管理者が存在するときに管理対象品の移動量が第2閾値以上であったが、後に管理者が存在しなくなったときに管理対象品の移動量が第1閾値上であり、管理者が管理対象品を定位置に戻し忘れている可能性がある場合に、その旨を告げる警報を出力することができる。
【0027】
第7の発明は、定位置に配置されるべき管理対象品に添付される動作方式がアクティブ方式とパッシブ方式とで切り替え可能な管理品無線通信タグおよび管理者に携帯される管理者無線通信タグに基づいて管理対象品の監視を行う監視装置であって、被写界の光学像を撮像する撮像手段、指向性を有するアンテナ、アンテナを介して管理者無線通信タグおよび管理品無線通信タグからの電波を受信する受信手段、撮像手段およびアンテナを旋回させる旋回手段、受信手段が管理品無線通信タグから受信する電波に基づいて管理対象品の存在を検出する第1検出手段、受信手段が管理者無線通信タグから受信する電波に基づいて管理者の存在を検出する第2検出手段、受信手段が受信する管理品無線通信タグからの電波に基づいて管理対象品の定位置からの位置の変化量に応じた値を特定する特定手段、特定手段が特定した変化量に応じて時間を計測する計時手段、撮像手段によって撮像される画像、ならびに受信手段が受信する管理者無線通信タグからの電波および/または管理品無線通信タグからの電波に基づいて旋回手段を制御して撮像手段の被写界内の移動物を追尾する追尾手段、管理品無線通信タグの動作方式をアクティブ方式とパッシブ方式とで切り替える切替手段、第1検出手段の検出結果、第2検出手段の検出結果、特定手段の特定結果、および計時手段の計時結果の少なくとも1つに基づいて、警報を出力するとともに、追尾手段による追尾および切替手段による切り替えの少なくとも一方を実行させる制御手段を備える監視装置。
【0028】
第7の発明では、監視装置(10)は、定位置に配置されるべき管理対象品(100)に添付される動作方式がアクティブ方式とパッシブ方式とで切り替え可能な管理品無線通信タグ(200)および管理者(S)に携帯される管理者無線通信タグ(300)に基づいて前記管理対象品の監視を行う。そして、撮像手段(12、14)は被写界の光学像を撮像し、アンテナ(34d)は指向性を有し、受信手段(34c)はアンテナを介して管理者無線通信タグおよび管理品無線通信タグからの電波を受信し、旋回手段(30、32)は撮像手段およびアンテナを旋回させ、第1検出手段(16、34a)は受信手段が管理品無線通信タグから受信する電波に基づいて管理対象品の存在を検出し、第2検出手段(16、34a)は受信手段が管理者無線通信タグから受信する電波に基づいて管理者の存在を検出し、特定手段(16、34e)は受信手段が受信する管理品無線通信タグからの電波に基づいて管理対象品の定位置からの位置の変化量に応じた値を特定し、計時手段(27)は特定手段が特定した変化量に応じて時間を計測し、追尾手段(16)は撮像手段によって撮像される画像、ならびに受信手段が受信する管理者無線通信タグからの電波および/または管理品無線通信タグからの電波に基づいて旋回手段を制御して撮像手段の被写界内の移動物を追尾し、切替手段(16、28c)は管理品無線通信タグの動作方式をアクティブ方式とパッシブ方式とで切り替え、制御手段(16)は第1検出手段の検出結果、第2検出手段の検出結果、特定手段の特定結果、および計時手段の計時結果の少なくとも1つに基づいて、警報を出力するとともに、追尾手段による追尾および切替手段による切り替えの少なくとも一方を実行させる。
【0029】
第7の発明によれば、管理対象品の存在の有無、管理者の存在の有無、管理対象品の移動量、および管理対象品が移動している時間を考慮して、管理対象品を取り巻く状況に応じた的確な警報を出力するとともに、被写界内の移動物の追尾や管理品無線通信タグの動作方式のパッシブ方式とアクティブ方式との切り替えを行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、管理対象品の移動量、管理者の存在の有無、および管理対象品が移動している時間を考慮して、管理対象品を取り巻く状況に応じた的確な警報を出力することができる。
【0031】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、この実施の形態の監視装置10は、たとえば、美術館において、複数の美術品100がそれぞれ飾り台102の上の定位置に配置された鑑賞室の1部屋につき1台だけ配備される。無論、1つの鑑賞室につき複数台の監視装置10を配備してもかまわない。
【0033】
図2に示すように、監視対象である各美術品100には、鑑賞の邪魔とならない裏側などにRFタグ(RFID)200が添付されている。また、美術品100の管理を行う美術館員SはRFタグ300を携帯している。詳しくは後述するが、美術品100のRFタグ200は動作方式がパッシブ方式(受動方式)とアクティブ方式(能動方式)とで切り替えることが可能となっている。ここで、パッシブ方式とはRFタグリーダから出力される電波をエネルギー源として動作する方式であり、アクティブ方式とはRFタグに内蔵されている電池をエネルギー源として動作する方式である。アクティブ方式ではRFタグ自ら電波を発信するので、パッシブ方式に比べてより遠くまで電波を伝達することができる。美術品100のRFタグ200は、通信距離が短くてよい場合はパッシブ方式で動作されて電池の消耗が防止され、長い通信距離が必要な場合にアクティブ方式で動作される。なお、この実施の形態では、美術館員SのRFタグ300の動作方式はアクティブ方式とするが、パッシブ方式であってもかまわない。
【0034】
監視装置10は、このような美術品100のRFタグ200および美術館員SのRFタグ300に基づいて美術品100の監視を行う。より具体的には、美術品100のRFタグ200に基づいて特定した美術品100の定位置からの移動距離、美術館員SのRFタグ300に基づいて判断した美術館員Sの存在の有無などに基づいて、美術品100のRFタグ200の動作方式の切り替え、および状況に応じた警報の出力を行う。
【0035】
図3に示すように、監視装置10は、美術館内に張り巡らされた館内LAN400に接続されている。そして、館内LAN400には、美術館内の警備室に設置されたパーソナルコンピュータ402が接続されている。また、館内LAN400には、美術館員Sが携帯する携帯端末404および警備員Gが携帯する携帯端末406が無線通信によって接続可能となっている。さらに、館内LAN400は、ルータ408、およびインターネット410を介して、警察署に設置されたパーソナルコンピュータ412と接続されている。
【0036】
なお、美術館員Sは適宜に美術品100のメンテナンスを行う要員であり、警備員Gは美術館内で美術品100などの警備を行う要員である。美術館員Sはメンテナンスに伴い美術品100に触れ、美術品100の移動を行う権限を有している。
【0037】
監視装置10には美術館の館内に配置された複数のスピーカ414が接続されており、監視装置10はこれらのスピーカ414から警報を出力することができる。また、監視装置10は、警備室のパーソナルコンピュータ402、美術館員Sの携帯端末404、警備員Gの携帯端末406、および警察署のパーソナルコンピュータ412に対して電子メールを送信することによっても警報を発することができる。
【0038】
監視装置10は美術品100のRFタグ200および美術館員SのRFタグ300と通信を行うRFタグの読み取り機能の他に、撮像機能を備えている。このような監視装置10は、図4に示すように構成されており、ズームレンズ12およびイメージセンサ14を含んでいる。被写界の光学像は、ズームレンズ12を経てイメージセンサ14の撮像面に照射される。
【0039】
監視装置10の電源が投入されると、プロセッサ16は、露光動作および電荷の読み出し動作の繰り返しをドライバ18aに命令する。ドライバ18aは、所定の時間間隔で周期定期に発生するタイミング信号に応答して、撮像面の露光とこれによって生成された電荷の読み出しとを実行する。
【0040】
読み出された電荷に基づく生画像信号は、CDS/AGC/AD回路20で相関二重サンプリング自動ゲイン調整およびA/D変換の一連の処理を施される。CDS/AGC/AD回路20から出力されるディジタル信号の一部は、画像処理回路21を介してプロセッサ16に与えられる。画像処理回路21は、CDS/AGC/AD回路20から与えられたディジタル信号に基づいて画像データを生成してプロセッサ16に出力する。プロセッサ16は、画像処理回路21から出力された画像データに基づいて後述する自動追尾やモーションサーチを行う。この自動追尾では、画像データに基づいて、撮像した画像内における動く物体を検出し、後述のパン回転動作およびチルト回転動作によって動く物体を追尾して撮像する。また、モーションサーチでは、画像データに基づいて撮像した画像内における人物の動きを検出する。
【0041】
また、CDS/AGC/AD回路20から出力されるディジタル信号の一部は、第1信号処理回路22に与えられ、まず、RGB信号形式からY信号や色差信号に変換され、画像補正が行われた後に輝度、カラーに変調されて、さらに、同期信号が付加されてTV信号となる。そして、このTV信号はアナログ信号に変換されて、第1信号処理回路22からビデオ出力される。ビデオ出力されたTV信号は、警備室のモニタ(不図示)などに入力される。また、アナログ信号に変換されたTV信号は、第2信号処理回路24にも与えられ、ディジタル変換およびFild/Frame変換を経た後に、JPEGエンコードされ、さらにETHERNET(登録商標)信号に変換されて、通信I/F26から館内LAN400に出力される。そして、この館内LAN400に出力されたJPEGエンコードされた信号は、警備室のパーソナルコンピュータ402のハードディスクドライブ(不図示)に記録される。なお、計時回路27は時間を計時する。
【0042】
フラッシュメモリ28には、館内LAN400を介して、警備室のパーソナルコンピュータ402によって設定された巡回データ28aが記憶されている。この巡回データ28aは、ズーム倍率、パン回転指示、およびチルト回転指示などをパラメータとして有している。フラッシュメモリ28に記憶されているその他の情報は後に適宜に説明する。
【0043】
プロセッサ16はフラッシュメモリ28に記憶されている巡回データ28aが有するズーム倍率のパラメータに対応する命令をドライバ18bに設定する。ドライバ18bはズームレンズ12を光軸方向に移動させ、これによって撮像面に照射される光学像のズーム倍率を変更する。
【0044】
また、プロセッサ16は、巡回データ28aが有するパン回転指示に従ってパン回転機構30を駆動し、チルト回転指示に従ってチルト回転機構32を駆動する。
【0045】
このように、プロセッサ16が巡回データ28aに基づいて、ズーム動作、パン回転動作、およびチルト回転動作を制御してシーケンス動作することによって、鑑賞室の定位置に配置された各美術品100に順次に注目して監視する。なお、このパン回転動作およびチルト回転動作によっては、ズームレンズ12、イメージセンサ14などの撮像系だけでなく、後述するRFタグリーダ34が備える指向性を有するアンテナ34dも回転されてその指向方向が変化させられる。図2に示すように、RFタグリーダ34のアンテナ34dの指向方向Lは、監視装置10の撮像系の光軸に一致しているものとする。
【0046】
また、プロセッサ16は、後述するように、警報を発する必要が生じた場合には、アラーム出力回路36から音声信号を出力してスピーカ414から音声による警報を出力させる。さらに、警備室、美術館員S、警備員G、警察署に警報を発する必要が生じた場合は、プロセッサ16は、フラッシュメモリ28に格納された電子メール生成プログラム28dに基づいて警報を示す電子メールを生成し、パーソナルコンピュータ402、携帯端末404、携帯端末406、およびパーソナルコンピュータ412に送信する。
【0047】
RFタグリーダ34は、図5に示すように構成されている。図示するように、RFタグリーダ34は、マイコン34a、メモリ34b、送受信回路34c、アンテナ34d、およびRSSI(Receiver Signal Strength Indicator)検出回路34eからなっている。マイコン34aはRFタグリーダ34の動作をメモリ34bに記憶されているプログラムにしたがって制御する。
【0048】
送受信回路34cはアンテナ34dを介して美術品100のRFタグ200および美術館員SのRFタグ300に電波を送信するとともに、美術品100のRFタグ200および美術館員SのRFタグ300から電波を受信するものであり、その構成は周知のものである。アンテナ34dは指向性を有するアンテナであり、指向方向の一定角度範囲に電波を出力するとともに、指向方向の一定角度範囲からの電波を受信する。
【0049】
RSSI検出回路34eは、アンテナ34dを介して送受信回路34cが受信した美術品100のRFタグ200からの電波のRSSI(受信信号強度)値を検出するものである。マイコン34aは、美術品100のRFタグ200からの電波から検出したRFタグ200の識別情報およびRSSI値、並びに美術館員SのRFタグ300からの電波から検出したRFタグ300の識別情報をメモリ34bに格納し、プロセッサ16からの要求に応じてこれらの情報をプロセッサ16に転送する。なお、RFタグリーダ34が美術品100のRFタグ200および美術館員SのRFタグ300から受信するRFタグ200の識別情報またはRFタグ300の識別情報などを含むデータを「RFタグデータ」と呼ぶ。
【0050】
一般的に、RFタグには、RFタグリーダからRFタグに対して「質問の電波」を発信して問いかけることによりRFタグが返答して信号を送信する質問式と、RFタグが周期的に信号を送信し、これをRFタグリーダが検知する放送式とがある。この実施の形態に適用されるRFタグ200およびRFタグ300は質問式のRFタグであり、RFタグリーダ34も質問式のRFタグに対応したRFタグリーダである。
【0051】
RFタグリーダ34は、プロセッサ16からの指示に応じて、美術品100のRFタグ200および美術館員SのRFタグ300に対して、RFタグデータのRFタグリーダ34への送信を要求する質問の電波を発信する。
【0052】
また、RFタグリーダ34は、この質問の電波とは別に、美術品100のRFタグ200の動作方式をパッシブ方式とアクティブ方式とで切り替えるための電波(以下、「切り替えの電波」と呼ぶ。)を、プロセッサ16の指示に応じて、美術品100のRFタグ200に対して発信する。この切り替えの電波は、美術品100のRFタグ200のメモリ204(図6参照)に設けられているスイッチビット204a(図6参照)の内容を書き換えることによって、RFタグ200の動作方式を切り替える。
【0053】
美術品100に添付されるRFタグ200は、図6に示すように構成されている。図6に示すように、美術品100のRFタグ200は、マイコン202、メモリ204、コイルアンテナ206aを含む送受信回路206、パッシブ電源回路208、アクティブ電源回路210、および電池212を含んでいる。マイコン202は、メモリ204に記憶されているプログラムにしたがってRFタグ200の動作を制御する。送受信回路206は、コイルアンテナ206aを介してRFタグリーダ34との間で電波の送受信を行うものであり、その構成は周知のものである。
【0054】
パッシブ電源回路208は整流回路を含むものであり、送受信回路206がコイルアンテナ206aを介してRFタグリーダ34から受信した電波から電力を発生し、この電力をマイコン202、メモリ204、および送受信回路206に供給する。
【0055】
また、アクティブ電源回路210は、マイコン202からの指示に従って、電池212からの電力のマイコン202、メモリ204、および送受信回路206への供給と遮断とを行う。
【0056】
メモリ204には、上述したように、1ビットの記憶領域からなるスイッチビット204aが設けられており、マイコン202は、スイッチビット204aの内容が「0」である場合に、電池212の電力を遮断するようにアクティブ電源回路210を制御し、スイッチビット204aの内容が「1」である場合に、電池212の電力を供給するようにアクティブ電源回路210を制御する。したがって、美術品100のRFタグ200は、アクティブ電源回路210が電力を供給しないとき、パッシブ方式で動作し、電力を供給するときアクティブ方式で動作する。
【0057】
マイコン202は、送受信回路206がコイルアンテナ206aを介してRFタグリーダ34からの切り替えの電波を受信したとき、当該電波によって搬送される信号の内容に応じて、メモリ204のスイッチビット204aの内容を書き換える。たとえば、切り替えの電波によって搬送される信号の所定のビットの値が「0」であれば、スイッチビット204aの内容を「0」に書き換え、所定のビットの値が「1」であれば、スイッチビット204aの内容を「1」に書き換える。
【0058】
また、マイコン202は、送受信回路206がコイルアンテナ206aを介してRFタグリーダ34からの質問の電波を受信したときに、メモリ204に記録されている当該RFタグ200の識別情報を含むRFタグデータを、送受信回路206からコイルアンテナ206aを介してRFタグリーダ34に送信される電波に乗せて出力する。
【0059】
一般的に、RFタグの電磁波の伝達方式としては、電磁誘導方式と電波方式とがあるが、電磁誘導方式でのパッシブ方式では通信可能距離が最大でも1m程度であり、電波方式でのパッシブ方式では通信可能距離が5m程度であるので、美術品100のRFタグ200は、より通信可能距離が長い電波方式を採用する。また、美術館員SのRFタグ300も同様に電波方式で電波を伝達する。無論、RFタグリーダ34も電波方式に対応したものである。
【0060】
美術館員Sによって携帯されるRFタグ300は、図7に示すように構成されている。図7に示すように、美術館員SのRFタグ300は、マイコン302、メモリ304、コイルアンテナ306aを含む送受信回路306、アクティブ電源回路308、および電池310を含んでいる。
【0061】
マイコン302は、メモリ304に記憶されているプログラムにしたがってRFタグ300の動作を制御する。送受信回路306は、コイルアンテナ306aを介してRFタグリーダ34との間で電波の送受信を行うものであり、その構成は周知のものである。
【0062】
アクティブ電源回路308は、電池310からの電力を常にマイコン302、メモリ304、および送受信回路306へ供給する。したがって、美術館員SのRFタグ300は常にアクティブ方式で動作する。
【0063】
マイコン302は、送受信回路306がコイルアンテナ306aを介してRFタグリーダ34からの質問の電波を受信したときに、メモリ304に記録されている当該RFタグ300の識別情報を含むRFタグデータを、送受信回路306からコイルアンテナ306aを介してRFタグリーダ34に送信される電波に乗せて出力する。
【0064】
監視装置10は、RFタグリーダ34で美術館員SのRFタグ300から電波を受信することにより、美術館員Sの存在を検出する。また、監視装置10は、RFタグリーダ34で美術品100のRFタグ200から電波を受信することにより、美術品100の存在を検出するとともに、美術品100の定位置からの移動量を検出する。
【0065】
この美術品100の定位置からの移動量は、RFタグリーダ34が美術品100のRFタグ200から都度受信する電波のRSSI値(以下、「都度RSSI値」と呼ぶ。)と、監視装置10のフラッシュメモリ28に形成されたRSSI基準値DB28bに登録されたRSSI基準値との差(|都度RSSI値−RSSI基準値|)に基づいて検出される。このRSSI基準値とは、RFタグリーダ34のアンテナ34dの指向方向が飾り台102の上の定位置にある美術品100のRFタグ200を向いた状態で、当該RFタグ200からRFタグリーダ34の送受信回路34cがアンテナ34dを介して受信した電波のRSSI値である。RSSI基準値DB28bには、美術品100ごとに、RFタグ200がパッシブ方式で動作した場合のRSSI基準値とアクティブ方式で動作した場合のRSSI基準値とが記憶されている。
【0066】
この実施の形態の監視装置10は、このように検出した美術館員Sの存在の有無、美術品100の定位置からの移動量などに基づいて、美術品100の状態に応じた警報を発するとともに、美術品100のRFタグ200の動作方式についてパッシブ方式とアクティブ方式との切り替えを行う。
【0067】
以下に、図8ないし図10を用いて、監視装置10が、美術品100の状態に応じた警報を発し、また、RFタグ200の動作方式を切り替える場合に、プロセッサ16が実行する処理について説明する。プロセッサ16は、フラッシュメモリ28に記憶されているプログラムに基づいて以下に説明する処理を実行する。
【0068】
なお、監視装置10が監視の対象とする美術品100は鑑賞室内にm個(1≦n≦m)存在し、プロセッサ16は、以下に説明する処理を、1番目の美術品100から始まって、n番目の美術品100を経て、m番目の美術品100まで順次に行う。そして、m番目の美術品100を終えると再び1番目の美術品100に対して同様の処理を行う。また、監視装置10の撮像系は、図8ないし図10のステップS1ないしステップS89において常に被写界の撮像を行っているものとする。なお、図8ないし図10に示す処理の順序は一例を示したものであり、処理の順序などを変更しても本発明を実現できる場合には適宜に変更してもかまわない。また、美術品100のFRタグ200のメモリ204に設けられているスイッチビット204aの初期値は「0」であるとする。
【0069】
まず、プロセッサ16は、ステップS1で、フラッシュメモリ28に記憶されている先述の巡回データ28aに基づいて、パン回転動作、チルト回転動作、およびズーム倍率調整を行って、n番目の美術品100に向けてシーケンス動作する。このシーケンス動作によって、ズームレンズ12、イメージセンサ14などの撮像系は、飾り台102の上の定位置にある美術品100をその被写界に捉え、RFタグリーダ34のアンテナ34dの指向方向が飾り台102の上の定位置に存在すると想定される美術品100に添付されたRFタグ200に向けられる。
【0070】
なお、巡回データ28aは、監視装置10が監視対処とする美術品100のRFタグ200の識別情報ごとに作成されたレコードからなるデータ群であり、各レコードには、図11に示すように、当該RFタグ200(美術品100)の識別情報を記憶する項目、パン回転動作量(パン回転指示)を記憶する項目、チルト回転動作量(チルト回転指示)を記憶する項目、およびズーム倍率を記憶する項目が含まれている。
【0071】
パン回転動作量とは、たとえば、監視装置10の撮像系などが所定の基準点の方向から注目する美術品100の方向に向くために行うパン回転の動作量である。また、チルト回転動作量とは、たとえば、監視装置10の撮像系などが所定の基準点の方向から注目する美術品100の方向に向くために行うチルト回転の動作量である。なお、パン回転動作量は、次にシーケンス動作の目標となる美術品100がn番目の美術品100であるとすると、監視装置10の撮像系などが「n−1」番目の美術品100の方向からn番目の美術品100の方向に向くために行うパン回転の動作量であってもよい。チルト回転動作量についても同じである。
【0072】
なお、プロセッサ16は、巡回データ28aに含まれるレコードを順次に参照することによって監視対象の美術品100に対して順次にシーケンス動作を行うので、プロセッサ16は、参照しているレコードの項目に含まれるRFタグ200(美術品100)の識別情報に基づいて現在注目している美術品100を把握することができる。
【0073】
プロセッサ16は、ステップS3で、RFタグリーダ34のマイコン34aに指示を送って、監視対象の区域に存在する美術品100のRFタグ200および美術館員SのRFタグ300からのRFタグデータの読み取りを試行する。ここで、監視対象の区域とは、RFタグリーダ34のアンテナ34dが電波を送信し、また、受信できる範囲(区域)である。また、RFタグデータとは、上述したように、美術品100のRFタグ200のメモリ204または美術館員SのRFタグ300のメモリ304から読み出され、電波に乗せて出力されるRFタグ200の識別情報またはRFタグ300の識別情報を含む情報のことである。
【0074】
RFタグリーダ34のマイコン34aは、プロセッサ16からの指示にしたがって、質問の電波を、アンテナ34dを介して発信し、当該質問の電波に応答して美術品100のRFタグ200および美術館員SのRFタグ300から返信される電波(RFタグデータ)を、アンテナ34dを介して受信する。
【0075】
美術品100のRFタグ200のスイッチビット204aの初期値は「0」であるので、RFタグリーダ34から質問の電波を受信した美術品100のRFタグ200はパッシブ方式で動作してRFタグ200の識別情報を含む情報(RFタグデータ)を乗せた電波を返信する。
【0076】
RFタグリーダ34のマイコン34aは、美術品100のRFタグ200から返信の電波を受信した場合には、当該電波によって搬送された信号(RFタグデータ)から当該RFタグ200(美術品100)の識別情報を取り出してメモリ34bに記憶する。マイコン34aは、また、美術品100のRFタグ200から返信された電波に基づいてRSSI検出回路が検出したRSSI値をメモリ34bに記憶する。なお、このとき、RFタグ200の識別情報とRSSI値を紐付けして記憶し、RSSI値がどのRFタグ200からの電波に関するものであるかを参照することが可能にされる。マイコン34aは、さらに、美術館員SのRFタグ300から返信の電波を受信した場合には、当該電波によって搬送された信号(RFタグデータ)から当該RFタグ300(美術館員S)の識別情報を取り出してメモリ34bに記憶する。
【0077】
プロセッサ16は、ステップS5で、現在注目している美術品100のRFタグ200のRFタグデータがステップS3における試行の結果として読み取れたか否かを判断する。つまり、プロセッサ16は、RFタグリーダ34のマイコン34aに指示を送って、メモリ34bに記憶されている美術品100のRFタグ200の識別情報および美術館員SのRFタグ300の識別情報を転送させ、これらの識別情報の中に、現在注目している美術品100のRFタグ200の識別情報と一致する識別情報が存在するか否かを判断する。なお、現在注目している美術品100のRFタグ200の識別情報は、ステップS1において美術品100にシーケンス動作する際に参照した巡回データ28aのレコードの項目に含まれるRFタグ200の識別情報である。
【0078】
ステップS5において、注目している美術品100のRFタグ200のRFタグデータが読み取れなかったと判断すると(ステップS5:NO)、ステップS7で、盗難の可能性を前提として第1警報を出力する。第1警報の出力は、館内のすべてのスピーカ414から警報音を鳴動させるとともに、警備室のパーソナルコンピュータ402、すべての美術館員Sの携帯端末404、すべての警備員Gの携帯端末406、および警察署のコンピュータ412に対して、盗難が発生した旨とともに、盗難が発生した鑑賞室の場所および盗難された美術品100の名称を告げる電子メールを送信する。
【0079】
また、美術館内の他の監視装置10には、盗難が発生した旨を示す信号とともに、盗難された可能性のある美術品100のRFタグ200の識別情報を館内LAN400を介して送信する。盗難が発生した旨を示す信号を受信した監視装置10は、パン回転動作を行って、盗難された可能性のある美術品100のRFタグ200のRFタグデータの受信を試みる。そして、RFタグデータが受信できた場合には、撮像した画像内で検出される動き方向と美術品100のRFタグ200から受信する電波のRSSI値に基づいて盗難の犯人と思しき人物の自動追尾を行う。なお、自動追尾については後述する。
【0080】
次に、プロセッサ16は、図9のステップS31で、美術品100のRFタグ200の動作方式のアクティブ化を行う。具体的には、RFタグリーダ34から切り替えの電波を送信し、美術品100のRFタグ200のメモリ204に設けられているスイッチビット204aの内容を「0」から「1」に書き換える。この書き換えによって、美術品100のRFタグ200の動作方式がパッシブ方式からアクティブ方式に切り替えられる。
【0081】
そして、ステップS33では、プロセッサ16は、監視装置10の撮像系とRFタグリーダ34のアンテナ34dを所定の角度だけパン回転動作させ、その後、ステップ35で、RFタグリーダ34から質問の電波を送信し、監視対象の区域の美術品100のRFタグ200(および美術館員SのRFタグ300)のRFタグデータの読み取りを試行する。このとき、美術品100のRFタグ200のメモリ204に設けられたスイッチビット204aの内容は「1」であるので、ステップS35のRFタグデータの読み取りの試行に応答する美術品100のRFタグ200は、アクティブ方式で動作して電波(RFタグデータ)を返信する。
【0082】
プロセッサ16は、ステップS37で、注目している美術品100、つまり、盗難された可能性のある美術品100のRFタグ200のRFタグデータが読み取れたか否かを判断する。ステップS33におけるパン回転動作とステップS35におけるRFタグデータの読み取りの試行は、ステップS37で盗難された可能性のある美術品100のRFタグ200のRFタグデータが読み取れたと判断される(ステップS37:YES)まで繰り返される。
【0083】
盗難された可能性のある美術品100のRFタグ200のRFタグデータが読み取れたと判断されると(ステップS37:YES)、次に、ステップS39では、ステップS35におけるRFタグデータの読み取りの試行の結果、美術館員SのRFタグ300のRFタグデータが読み取れたか否かを判断する。美術館員SのRFタグ300のRFタグデータが読み取れたか否かは、美術品100のRFタグ200および美術館員SのRFタグ300からの電波に乗せられてRFタグリーダ34に受信され、メモリ34bに記憶されているRFタグ200の識別情報およびRFタグ300の識別情報の中に、フラッシュメモリ28上に形成された美術館員DB28cに美術館員Sの識別情報として登録されている識別情報が存在するか否かによって判断する。ここで、美術館員Sとは、特定の美術館員を示すのではなく、任意の美術館員を意味している。なお、美術館員DB28cには、美術館員Sの(RFタグ300の)識別情報と当該美術館員Sが携帯する携帯端末404に割り当てられたメールアドレスとが対応つけて記憶されている。
【0084】
美術館員SのRFタグ300のRFタグデータが読み取れたと判断した場合(ステップS39:YES)、プロセッサ16は、ステップS41で、盗難の犯人の可能性のある人物の自動追尾を行う。このステップS41における自動追尾では、画像処理回路21によって生成された画像データに基づいて自動追尾を行う。この自動追尾では、画像データに基づく画像における物体(人物)の移動方向を検出し、検出した移動方向に撮像系およびRFタグリーダ34のアンテナ34dをパン回転運動およびチルト回転運動によって移動させ、移動する物体(人物)を追尾する。
【0085】
なお、この自動追尾では、撮像系などの移動方向の決定の条件に、画像に基づいて検出した物体(人物)の移動方向の他に、美術品100のRFタグ200および美術館員SのRFタグ300から受信される電波のRSSI値を加えるようにしてもよい。つまり、画像内で物体(人物)の動きが検出されない場合などに、RFタグリーダ34のアンテナ34dの指向方向を変化させつつ美術品100のRFタグ200と美術館員SのRFタグ300とのRFタグデータの読み取りの試行を繰り返し行い、美術品100のRFタグ200からの電波のRSSI値が大きくなり、かつ、美術館員SのRFタグ300からの電波のRSSI値が小さくなる方向に撮像系およびアンテナ34dを向ける。
【0086】
なお、ステップS41における自動追尾を行っている間は、撮像系によって撮影された後、館内LAN400を介して警備室に転送され、パーソナルコンピュータ402のハードディスクドライブに記録される画像の画像サイズ、画質、および転送レートを向上させる。
【0087】
このステップS41における自動追尾は、警備室のパーソナルコンピュータ402から館内LAN400を介して自動追尾を終了する旨の指示が行われるまで実行される。
【0088】
プロセッサ16がステップS43において、自動追尾を終了する指示が行われたと判断すると(ステップS43:YES)、プロセッサ16は、ステップS45において、RFタグリーダ34から切り替えの電波を発信して美術品100のRFタグ200のスイッチビット204aの内容を「1」から「0」に書き換え、美術品100のRFタグ200をパッシブ化してステップS1に戻る。ステップS1では、次の(n+1番目の)美術品100に対してシーケンス動作を行う。
【0089】
一方、ステップS39で、美術館員SのRFタグ300のRFタグデータが読み取れなかったと判断すると(ステップS39:NO)、プロセッサ16は、ステップ47で、画像処理回路21によって生成された画像データに基づいてモーションサーチを行う。このモーションサーチでは、画像データに基づく画像を、たとえば、4800個程度の小さな区画に分割し、それぞれの区画における画像の動きの向き、大きさ、および頻度をリアルタイムで解析する。この解析によって、画像内における人の存在を検出する。
【0090】
ステップS49では、ステップS47におけるモーションサーチによって人が検出されたか否かを判断する。人が検出されたと判断すると(ステップS49:YES)、この場合は美術品100の側に盗難の犯人と思しき人物が存在しているということであり、美術品100が犯人によって移動される可能性があるので、ステップS51で、ステップS47におけるモーションサーチによって検出された人物の自動追尾を行う。
【0091】
このステップS51における自動追尾では、画像処理回路21によって生成された画像データに基づいて自動追尾を行う。この自動追尾では、画像データに基づく画像における物体(人物)の移動方向を検出し、検出した移動方向に撮像系およびRFタグリーダ34のアンテナ34dをパン回転運動およびチルト回転運動によって移動させ、移動する物体(人物)を自動追尾する。
【0092】
なお、この自動追尾では、撮像系などの移動方向の決定の条件に、画像に基づいて検出した人物の移動方向の他に、美術品100のRFタグ200から受信される電波のRSSI値を加えるようにしてもよい。つまり、画像内で人物の動きが検出されない場合などに、RFタグリーダ34のアンテナ34dの指向方向を変化させつつ美術品100のRFタグ200(と美術館員SのRFタグ300と)のRFタグデータの読み取りの試行を繰り返し行い、美術品100のRFタグ200からの電波のRSSI値が大きくなる方向に撮像系およびアンテナ34dを向ける。
【0093】
なお、ステップS51における自動追尾を行っている間は、撮像系によって撮影された後、館内LAN400を介して警備室に転送され、パーソナルコンピュータ402のハードディスクドライブに記録される画像の画像サイズ、画質、および転送レートを向上させる。
【0094】
このステップS51における自動追尾は、警備室のパーソナルコンピュータ402から館内LAN400を介して自動追尾を終了する旨の指示が行われるまで実行される。
【0095】
プロセッサ16がステップS53において、自動追尾を終了する指示が行われたと判断すると(ステップS53:YES)、プロセッサ16は、ステップS55において、RFタグリーダ34から切り替えの電波を発信して、美術品100のRFタグ200のスイッチビット204aの内容を「1」から「0」に書き換えてRFタグ200をパッシブ化してステップS1に戻る。
【0096】
一方、ステップS49で、ステップS47におけるモーションサーチの結果、人物が検出されなかったと判断すると(ステップS49:NO)、この場合は盗難された可能性のある美術品100の側に盗難の犯人と思しき人物が存在せず、美術品100が放置された状態であるので、ステップS51における自動追尾を行わず、ステップS55で、美術品100のRFタグ200のパッシブ化を行ってステップS1に戻る。
【0097】
ただし、ステップS47におけるモーションサーチの結果、人物が検出されなかったと判断した場合、警備室のパーソナルコンピュータ402から指示があるまで、放置された美術品100を撮影し続けるようにしてもよい。
【0098】
なお、ステップS47におけるモーションサーチによる人物の検出は、画像データに基づいた人物の顔検出や人感センサーに基づいた人物の検出であってもよい。
【0099】
図8のステップS5に戻って、ステップS1で監視対象の美術品100の定位置に対してシーケンス動作を行った後のステップS3における監視対象の区域のRFタグデータの読み取りの試行の結果、監視対象の美術品100のRFタグ200のRFタグデータが読み取れたと判断した場合(ステップS5:YES)、プロセッサ16は、ステップS9で、監視対象として現在注目している美術品100のRFタグ200からの電波についてRSSI値の基準値からの変化量を特定する。RSSI値の変化量の特定は、美術品100の飾り台102の上の定位置からの移動量を特定するに等しい。
【0100】
RSSI値の変化量の特定は、フラッシュメモリ28に形成されたRSSI基準値DB28bに登録されている当該美術品100のRFタグ200のパッシブ方式におけるRSSI基準値と、ステップS3のRFタグデータの読み取りの試行の結果、RFタグリーダ34のメモリ34bに記憶された当該美術品100のRFタグ200についてのRSSI値(都度RSSI値)との差を求めることによって行われる。
【0101】
ここで、パッシブ方式におけるRSSI基準値を用いるのは、ステップS3のRFタグデータの読み取り試行の結果、RFタグリーダ34のメモリ34bに記憶された都度RSSI値は、パッシブ方式で動作したRFタグ200から送信された電波について検出されたものであるからである。つまり、同じ位置にあるRFタグ200から送信される電波であっても、パッシブ方式で送信された電波とアクティブ方式で送信された電波とではRSSI値が異なるのである。
【0102】
そして、次に、プロセッサ16は、ステップS11で、ステップS3におけるRFタグデータの読み取りの試行の結果、美術館員SのRFタグ300のRFタグデータを読み取ることができたか否かを判断する。つまり、ステップS11では、注目している美術品100の近傍(指向方向が定位置に存在する想定した美術品100のRFタグ200を向いたRFタグリーダ34のアンテナ34dが電波を受信できる範囲内)に美術館員Sが存在するか否かを判断する。
【0103】
美術館員SのRFタグ300のRFタグデータを読み取ることができなかったと判断すると(ステップS11:NO)、次に、プロセッサ16は、ステップS13で、ステップS9において特定したRSSI値の変化量が第1閾値以上であるか否かを判断する。
【0104】
たとえば、第1閾値は、「|−10dBm|」である。RSSI値が「±10dB」の範囲で変化した場合、RFタグ200は、たとえば、RFタグリーダ34のアンテナ34dの指向方向L(図2参照)に対して直交する図面水平方向において、左右10cmの範囲で移動したことになる。なお、図2をはじめこの実施の形態では、美術品100のRFタグ200がアンテナ34dの指向方向Lに対して直行する図面水平方向に移動することを前提としているが、たとえば、美術品100のRFタグ200がアンテナ34dの指向方向の奥に移動した場合は都度RSSI値はRSSI基準値よりも小さくなり、手前に移動した場合は都度RSSI値はRSSI基準値よりも大きくなる。当該美術品100のRFタグ200のパッシブ方式におけるRSSI基準値を「−70dBm」であるとすると、第1閾値を超えない範囲は、「−80dBm<都度RSSI値<−60dBm」である。
【0105】
RSSI値の変化量が第1閾値以上でないと判断すると(ステップS13:NO)、美術品100の定位置からの10cm未満の移動は許容範囲内であるという前提の下、警報の出力などの処理を行わず、ステップS1に戻る。
【0106】
一方、RSSI値の変化量が第1閾値以上であると判断すると(ステップS13:YES)、プロセッサ16は、ステップS15で、RFタグリーダ34に切り替えの電波を発信させて、美術品100のRFタグ200のメモリ204上に設けられたスイッチビット204aの内容を「0」から「1」に書き換えて、美術品100のRFタグ200をアクティブ化する。
【0107】
さらに、プロセッサ16は、ステップS17で、美術品100の破損の可能性を前提として第2警報を出力する。つまり、この第2警報は、何者かによって美術品100のRFタグ200が10cm以上移動し破損される可能性があるということを前提としている。第2警報の出力は、館内のスピーカ414から警報音を鳴動させるとともに、警備室のパーソナルコンピュータ402、すべての美術館員Sの携帯端末404、およびすべての警備員Gの携帯端末406に対して、美術品100が破損される可能性がある旨とともに、破損される可能性がある美術品100が存在する鑑賞室の場所および破損される可能性がある美術品100の名称を告げる電子メールを送信する。
【0108】
第2警報を出力した後は、図9のステップS47において、先述のとおり、モーションサーチを行い、美術品100を移動させた人物の検出を行う。そして、人物が検出された場合は、美術品100が持ち去られる可能性もあるので、ステップS51で、美術品100を破損した可能性のある人物の自動追尾を行う。一方、モーションサーチの結果、人物が検出されなかった場合は、ステップS51における自動追尾を行わず、ステップS55で、RFタグリーダ34から切り替えの電波を発信して美術品100のRFタグ200のスイッチビット204aの内容を「1」から「0」に書き換えて、美術品100のRFタグ200のパッシブ化を行ってステップS1に戻る。
【0109】
図8のステップS11に戻って、ステップS3におけるRFタグデータの読み取りの試行の結果、美術館員SのRFタグ300からRFタグデータが読み取れたと判断した場合(ステップS11:YES)、つまり、美術品100の近傍に美術館員Sが存在すると判断した場合、ステップS9で特定したRSSI値の変化量が第2閾値以上であるか否かを判断する。
【0110】
たとえば、第2閾値は、「|−20dBm|」である。RSSI値が「±20dB」の範囲で変化した場合、RFタグ200は、RFタグリーダ34のアンテナ34dの指向方向L(図2参照)に対して直交する図面水平方向において、左右50cmの範囲で移動したことになる。当該美術品100のRFタグ200のパッシブ方式におけるRSSI基準値を「−70dBm」であるとすると、第2閾値を超えない範囲は、「−90dBm<都度RSSI値<−50dBm」である。
【0111】
美術品100の近傍における美術館員Sの存在が検出された場合(ステップS11:YES)、美術品100の点検作業などにより、美術品100を大きく移動させる可能性があるので、第2閾値は第1閾値よりも大きく設定される。
【0112】
RSSI値の変化量が第2閾値以上でないと判断すると(ステップS19:NO)、異常がないという前提の下、警報の出力などの処理を行わず、ステップS1に戻る。
【0113】
一方、RSSI値の変化量が第2閾値以上であると判断すると(ステップS19:YES)、図10のステップS61で、RFタグリーダ34から切り替えの電波を送信して美術品100のRFタグ200のスイッチビット204aの内容を「0」から「1」に書き換えて、美術品100のRFタグ200をアクティブ化する。
【0114】
そして、プロセッサ16は、ステップS63で、RFタグリーダ34に質問の電波を出力させて、監視対象の区域の美術品100のRFタグ200および美術館員SのRFタグ300のRFタグデータの読み取りを試行する。なお、このとき、美術品100のRFタグ200のスイッチビット204aの内容は「1」であるので、美術品100のRFタグ200は、アクティブ方式で動作して電波(RFタグデータ)を返信する。
【0115】
次に、ステップS65で、プロセッサ16は、ステップS63におけるRFタグデータの読み取りの試行の結果、美術品100のRFタグ200から受信した電波のRSSI値(都度RSSI値)に基づいてRSSI値の変化量を特定する。このRSSI値の変化量は、当該都度RSSI値と、フラッシュメモリ28上に形成されたRSSI基準値DB28bに登録された、当該美術品100のRFタグ200のアクティブ方式におけるRSSI基準値との差によって特定される。
【0116】
さらに、プロセッサ16は、ステップS67で、ステップS63におけるRFタグデータの読み取りの試行の結果、美術館員SのRFタグ300のRFタグデータを読み取ったか否か、つまり、美術品100の近傍に美術館員Sが存在するか否かを判断する。
【0117】
美術館員SのRFタグ300のRFタグデータを読み取ったと判断すると(ステップS67:YES)、次に、プロセッサ16は、ステップS69で、ステップS65において特定したRSSI値の変化量が第3閾値以上であるか否かを判断する。
【0118】
たとえば、第3閾値は、「|−20dBm|」である。RSSI値が「±20dB」の範囲で変化した場合、RFタグ200は、RFタグリーダ34のアンテナ34dの指向方向L(図2参照)に対して直交する図面水平方向において、左右50cmの範囲で移動したことになる。当該美術品100のRFタグ200のアクティブ方式におけるRSSI基準値を「−40dBm」であるとすると、第3閾値を超えない範囲は、「−60dBm<都度RSSI値<−20dBm」である。
【0119】
RSSI値の変化量が第3閾値以上であると判断した場合(ステップS71:YES)、さらに、プロセッサ16は、ステップS71でタイムアウトしたか否かを判断する。ここで、タイムアウトしたか否かの判断は、たとえば、図8のステップS19においてRSSI値の変化量が第2閾値以上であると判断した時点から所定の時間が経過したか否かを判断することによって行う。この所定の時間が経過したか否かの判断は計時回路27による計時に基づいて行う。美術館員Sが、美術品100をRSSI値の変化量が第3閾値(第2閾値)を超えた状態で移動させてよい時間、つまり、美術品100を定位置から50cmを超えて移動させてよい時間が定められており、この定められた時間を経過すると、ステップS71でタイムアウトであると判断する。
【0120】
タイムアウトしたと判断すると(ステップS71:YES)、プロセッサ16は、ステップS73で、美術館員Sによる美術品100の移動可能時間が超過したことを前提とする第3警報を出力する。第3警報の出力は、ステップS67においてRFタグデータが読み取れたと判断されたRFタグ300を携帯している美術館員Sの携帯端末404に対して、美術品100の移動可能時間が超過した旨とともに、移動された美術品100の名称を告げる電子メールを送信する。
【0121】
美術館員Sへの電子メールの送信にあたっては、ステップS67において読み取られたと判断されたRFタグデータに含まれる美術館員SのRFタグ300の識別情報を元に、フラッシュメモリ28に形成された美術館員DB28cを参照して取得された、当該美術館員Sの携帯端末404のメールアドレスが利用される。
【0122】
第3警報の出力の後は、図9のステップS41に進み、先述したように、美術館員Sの自動追尾を行う。その後、警備室のパーソナルコンピュータ402から自動追尾を終了する旨の指示があれば(ステップS43:YES)、美術品100のRFタグ200をパッシブ化して(ステップS45)ステップS1に戻る。
【0123】
一方、ステップS69に戻って、RSSI値の変化量が第3閾値以上でないと判断した場合(ステップS69:NO)、プロセッサ16は、ステップS75で、RFタグリーダ34から切り替えの電波を発信させ、美術品100のRFタグ200のスイッチビット204aの内容を「1」から「0」に書き換えて、美術品100のRFタグ200をパッシブ化する。
【0124】
そして、プロセッサ16は、ステップS77で、監視対象の区域の美術品100のRFタグ200(および美術館員SのRFタグ300)のRFタグデータの読み取りを試行する。このとき、美術品100のRFタグ200のスイッチビット204aの内容は「0」であるので、美術品100のRFタグ200は、パッシブ方式で動作して電波を返信する。
【0125】
次に、ステップS79で、プロセッサ16は、ステップS77におけるRFタグデータの読み取りの試行の結果、美術品100のRFタグ200から受信した電波のRSSI値(都度RSSI値)に基づいてRSSI値の変化量を特定する。このRSSI値の変化量は、当該都度RSSI値と、フラッシュメモリ28上に形成されたRSSI基準値DB28bに登録された、当該美術品100のRFタグ200のパッシブ方式におけるRSSI基準値との差によって特定される。
【0126】
そして、プロセッサ16は、ステップS81で、RSSI値の変化量が第4閾値以上であるか否かを判断する。たとえば、第4閾値は、「|−10dBm|」である。RSSI値が「±10dB」の範囲で変化した場合、RFタグ200は、RFタグリーダ34のアンテナ34dの指向方向L(図2参照)に対して直交する図面水平方向において、左右10cmの範囲で移動したことになる。当該美術品100のRFタグ200のパッシブ方式におけるRSSI基準値を「−70dBm」であるとすると、第4閾値を超えない範囲は、「−80dBm<都度RSSI値<−60dBm」である。
【0127】
RSSI値の変化量が第4閾値以上でないと判断すると(ステップS85:NO)、異常がないという前提の下、警報の出力などの処理を行わず、ステップS1に戻る。
【0128】
一方、RSSI値の変化量が第4閾値以上であると判断すると(ステップS81:YES)、ステップS83で、プロセッサ16は、第4警報の出力を行う。RSSI値の変化量が第4閾値以上であると判断された場合、図8のステップS19において美術品100の移動量が50cm以上である(RSSI値の変化量が第2閾値以上である)と判断された後、図10のステップS69において美術品100の移動量が50cm以上でない(RSSI値の変化量が第3閾値以上でない)と判断されているので、美術品100が美術館員Sによって飾り台102に戻されたと推察できるが、ステップS81においていまだ美術品100が定位置より10cm以上移動している(RSSI値の変化量が第4閾値以上である)ということである。そのため、ステップS83では、美術館員Sによる美術品100の設置位置がずれているということを前提として第4警報の出力を行う。
【0129】
第4警報の出力は、ステップS67においてRFタグデータが読み取れたと判断されたRFタグ300を携帯している美術館員Sの携帯端末404に対して、美術品100の位置がずれている旨とともに、位置がずれている美術品100の名称を告げる電子メールを送信する。
【0130】
第4警報を出力した後は、図9のステップS41に進み、先述したように美術館員Sの自動追尾を行う。その後、警備室のパーソナルコンピュータ402から自動追尾を終了する旨の指示があれば(ステップS43:YES)、美術品100のRFタグ200をパッシブ化して(ステップS45)ステップS1に戻る。なお、図10のステップS75において美術品100のRFタグ200のパッシブ化を行っているので、ステップS83ルートでステップS41に進んだ場合は、ステップS45におけるパッシブ化の処理をスキップしてもよい。
【0131】
ステップS67に戻って、ステップS63におけるRFタグデータの読み取りの試行の結果、美術館員SのRFタグ300のRFタグデータが読み取れなかったと判断すると(ステップS67:NO)、プロセッサ16は、さらに、ステップS85で、ステップS65において特定したRSSI値の変化量が第5閾値以上であるか否かを判断する。
【0132】
たとえば、第5閾値は、「|−10dBm|」である。RSSI値が「±10dB」の範囲で変化した場合、RFタグ200は、RFタグリーダ34のアンテナ34dの指向方向L(図2参照)に対して直交する図面水平方向において、左右10cmの範囲で移動したことになる。当該美術品100のRFタグ200のアクティブ方式におけるRSSI基準値を「−40dBm」であるとすると、第5閾値を超えない範囲は、「−50dBm<都度RSSI値<−30dBm」である。
【0133】
RSSI値の変化量が第5閾値以上でないと判断すると(ステップS85:NO)、この場合は美術館員Sが美術品100を飾り台102上の定位置に設置して立ち去ったと推察できるので、プロセッサ16は、ステップS87で、RFタグリーダ34から切り替えの電波を発信し、美術品100のRFタグ200のスイッチビット204aの内容を「1」から「0」に書き換えて美術品100のRFタグ200をパッシブ化してステップS1に戻る。
【0134】
一方、RSSI値の変化量が第5閾値以上であると判断すると(ステップS85:YES)、プロセッサ16は、ステップS89で、第5警報を出力する。ステップS85においてRSSI値の変化量が第5閾値以上であると判断された場合、美術品100を50cm以上移動させて点検作業などをしていた美術館員Sが点検作業などを終えて立ち去ったが、依然として、美術品100の位置が定位置から10cm以上ずれていると推察される。そのため、ステップS89では、美術館員Sが美術品100を定位置に戻し忘れたということを前提として第5警報の出力を行う。
【0135】
第5警報の出力は、図8のステップS11においてRFタグデータが読み取れたと判断されたRFタグ300を携帯している美術館員Sの携帯端末404に対して、美術品100を定位置に戻し忘れている旨とともに、戻し忘れた美術品100の名称を告げる電子メールを送信する。
【0136】
第5の警報を出力した後は、図9のステップS47に進み、先述したように、モーションサーチをおこない、モーションサーチの結果、人物が検出された場合は当該人物の自動追尾を行ってから(ステップS51)、美術品100のRFタグ200のパッシブ化を行い(ステップS55)、その後ステップS1に戻る。
【0137】
一方、モーションサーチの結果、人物が検出されなかった場合は、自動追尾を行わず、美術品100のRFタグ200のパッシブ化を行って(ステップS55)ステップS1に戻る。
【0138】
上述の実施の形態では、警報を出力した後に、モーションサーチによる人物の検出や人物の自動追尾を行ったが、これらを行うことなく警報の出力によって処理を終了してステップS1に戻ってもよい。
<第2の実施の形態>
この実施の形態の監視装置10は、美術館員Sの存在の有無、美術品100の定位置からの移動量などに基づいて、美術品100の状態に応じた警報を発するとともに、画像に基づく人物の自動追尾の実行と停止の切り替えを行う。なお、自動追尾の実行にあわせて美術品100のRFタグ200をアクティブ化し、自動追尾の停止にあわせてRFタグ200のパッシブ化を行ってもよいが、この実施の形態では、美術品100のRFタグ200は、常にアクティブ方式で動作するものとする。
【0139】
この実施の形態の監視装置10、美術品100のRFタグ200、および美術館員SのRFタグ300の構成は、プロセッサ16によって実行される処理を除いて、第1の実施の形態のそれらと同じである。したがって、重複する部分の説明を省略し、第1の実施の形態と同じ参照番号を用いて以下の説明を行う。
【0140】
以下に、図12および図13を用いて、この実施の形態の監視装置10のプロセッサ16が実行する処理について説明する。なお、図12および図13に示す処理の順序は一例を示したものであり、処理の順序などを変更しても本発明を実現できる場合には適宜に変更してもかまわない。
【0141】
まず、プロセッサ16は、ステップS101で、フラッシュメモリ28に記憶されている巡回データ28aに基づいて、パン回転動作、チルト回転動作、およびズーム倍率調整を行って、注目するn番目の美術品100に向けてシーケンス動作を行う。
【0142】
次に、プロセッサ16は、ステップS103で、監視対象の区域に存在する美術品100のRFタグ200および美術館員SのRFタグ300からのRFタグデータの読み取りを試行する。なお、美術品100のRFタグ200のスイッチビット204aの内容は常に「1」であるのでRFタグ200は常にアクティブ方式でRFタグデータを発信する。
【0143】
プロセッサ16は、ステップS105で、現在注目している美術品100のRFタグ200のRFタグデータがステップS103における試行の結果として読み取れたか否かを判断する。
【0144】
美術品100のRFタグ200のRFタグデータが読み取れなかったと判断すると(ステップS105:NO)、ステップS107で、盗難の可能性を前提として第6警報を出力する。第6警報の出力は、館内のすべてのスピーカ414から警報音を鳴動させるとともに、警備室のパーソナルコンピュータ402、すべての美術館員Sの携帯端末404、すべての警備員Gの携帯端末406、および警察署のコンピュータ412に対して、盗難が発生した旨とともに、盗難が発生した鑑賞室の場所および盗難された美術品100の名称を告げる電子メールを送信する。第6警報の出力後は、ステップS101に戻る。
【0145】
また、美術館内の他の監視装置10には、盗難が発生した旨を示す信号とともに、盗難された可能性のある美術品100のRFタグ200の識別情報を館内LAN400を介して送信する。盗難が発生した旨を示す信号を受信した監視装置10は、パン回転動作を行って、盗難された可能性のある美術品100のRFタグ200のRFタグデータの受信を試みる。そして、RFタグデータが受信できた場合には、画像内で検出される動き方向と美術品100のRFタグ200から受信する電波のRSSI値に基づいて盗難の犯人と思しき人物の自動追尾を行う。
【0146】
一方、ステップS105で、ステップS103におけるRFタグデータの読み取りの試行の結果、美術品100のRFタグ200のRFタグデータが読み取れたと判断すると(ステップS105:YES)、プロセッサ16は、ステップS109で、監視対象として現在注目している美術品100のRFタグ200からの電波についてのRSSI値がRSSI基準値からどれだけ変化しているかを示す変化量を特定する。
【0147】
RSSI値の変化量の特定は、フラッシュメモリ28に形成されたRSSI基準値DB28bに登録されている当該美術品100のRFタグ200のアクティブ方式におけるRSSI基準値と、ステップS103のRFタグデータの読み取りの試行の結果、RFタグリーダ34のメモリ34bに記憶された当該美術品100のRFタグ200についてのRSSI値(都度RSSI値)との差を求めることによって行う。
【0148】
そして、次に、プロセッサ16は、ステップS111で、ステップS103におけるRFタグデータの読み取りの試行の結果、美術館員SのRFタグ300のRFタグデータを読み取ることができたか否かを判断する。つまり、注目している美術品100の近傍に美術館員Sが存在するか否かを判断する。
【0149】
美術館員SのRFタグ300のRFタグデータを読み取ることができなかったと判断すると(ステップS111:NO)、次に、プロセッサ16は、ステップS113で、ステップS9において特定したRSSI値の変化量が第6閾値以上であるか否かを判断する。
【0150】
たとえば、第6閾値は、「|−10dBm|」である。RSSI値が「±10dB」の範囲で変化した場合、RFタグ200は、RFタグリーダ34のアンテナ34dの指向方向L(図2参照)に対して直交する図面水平方向において、左右10cmの範囲で移動したことになる。当該美術品100のRFタグ200のアクティブ方式におけるRSSI基準値を「−40dBm」であるとすると、第6閾値を超えない範囲は、「−50dBm<都度RSSI値<−30dBm」である。
【0151】
RSSI値の変化量が第6閾値以上でないと判断すると(ステップS113:NO)、美術品100の定位置からの10cm未満の移動は許容範囲内であるという前提の下、警報の出力などの処理を行わず、ステップS101に戻る。
【0152】
一方、RSSI値の変化量が第6閾値以上であると判断すると(ステップS113:YES)、プロセッサ16は、ステップS115で自動追尾を開始する。ステップS115において開始する自動追尾では、画像処理回路21によって生成された画像データに基づいて自動追尾を行う。この自動追尾では、画像データに基づく画像における物体(人物)の移動方向を検出し、検出した移動方向に撮像系およびRFタグリーダ34のアンテナ34dをパン回転運動およびチルト回転運動によって移動させ、移動する物体(人物)を自動追尾する。
【0153】
なお、この自動追尾では、撮像系などの移動方向の決定の条件に、画像に基づいて検出した物体(人物)の移動方向の他に、美術品100のRFタグ200から受信される電波のRSSI値を加えるようにしてもよい。つまり、画像内で人物の動きが検出されない場合などに、RFタグリーダ34のアンテナ34dの指向方向を変化させつつ美術品100のRFタグ200(と美術館員SのRFタグ300と)のRFタグデータの読み取りの試行を繰り返し行い、美術品100のRFタグ200からの電波のRSSI値が大きくなる方向に撮像系およびアンテナ34dを旋回させる。
【0154】
なお、ステップS115における自動追尾を行っている間は、撮像系によって撮影された後、館内LAN400を介して警備室に転送され、パーソナルコンピュータ402のハードディスクドライブに記録される画像の画像サイズ、画質、および転送レートを向上させる。
【0155】
次に、プロセッサ16は、ステップS117で、美術品100の破損の可能性を前提として第7警報を出力する。つまり、この第7警報は、何者かによって美術品100のRFタグ200が10cm以上移動し破損される可能性があるということを前提としている。第7警報の出力は、館内のすべてのスピーカ414から警報音を鳴動させるとともに、警備室のパーソナルコンピュータ402、すべての美術館員Sの携帯端末404、およびすべての警備員Gの携帯端末406に対して、美術品100が破損される可能性がある旨とともに、破損される可能性がある美術品100が存在する鑑賞室の場所および破損された美術品100の名称を告げる電子メールを送信する。
【0156】
第7警報の出力後、警備室のパーソナルコンピュータ402から自動追尾の終了の指示が送られると、プロセッサ16は、ステップS119においてその旨を判断し、ステップS121で、自動追尾を終了する。そして、ステップS101に戻る。
【0157】
ステップS111に戻って、ステップS103におけるRFタグデータの読み取りの試行の結果、美術館員SのRFタグデータが読み取れたと判断した場合(ステップS111:YES)、つまり、美術品100の近傍に美術館員Sが存在すると判断した場合、プロセッサ16は、ステップS109で特定したRSSI値の変化量が第7閾値以上であるか否かを判断する。
【0158】
たとえば、第7閾値は、「|−20dBm|」である。RSSI値が「±20dB」の範囲で変化した場合、RFタグ200は、RFタグリーダ34のアンテナ34dの指向方向L(図2参照)に対して直交する図面水平方向において、左右50cmの範囲で移動したことになる。当該美術品100のRFタグ200のアクティブ方式におけるRSSI基準値を「−40dBm」であるとすると、第7閾値を超えない範囲は、「−60dBm<都度RSSI値<−20dBm」である。
【0159】
美術品100の近傍における美術館員Sの存在が検出された場合(ステップS111:YES)、美術品100の点検作業などにより、美術品100を大きく移動させる可能性があるので、第7閾値は第6閾値よりも大きく設定される。
【0160】
RSSI値の変化量が第7閾値以上でないと判断すると(ステップS123:NO)、異常がないという前提の下、警報の出力などの処理を行わず、ステップS101に戻る。
【0161】
一方、RSSI値の変化量が第7閾値以上であると判断すると(ステップS123:YES)、図13のステップS131で、自動追尾を開始する。ステップS131で開始する自動追尾では、画像処理回路21によって生成された画像データに基づいて自動追尾を行う。この自動追尾では、画像データに基づく画像における物体(人物)の移動方向を検出し、検出した移動方向に撮像系およびRFタグリーダ34のアンテナ34dをパン回転運動およびチルト回転運動によって移動させ、移動する物体(人物)を自動追尾する。この場合、自動追尾で追尾される人物は、図12のステップS111でRFタグデータが読み取られた美術館員Sであると考えられる。
【0162】
なお、この自動追尾では、撮像系などの移動方向の決定の条件に、画像に基づいて検出した人物の移動方向の他に、美術品100のRFタグ200から受信される電波のRSSI値を加えるようにしてもよい。つまり、画像内で人物の動きが検出されない場合などに、RFタグリーダ34のアンテナ34dの指向方向を変化させつつ美術品100のRFタグ200(と美術館員SのRFタグ300と)のRFタグデータの読み取りの試行を繰り返し行い、美術品100のRFタグ200からの電波のRSSI値が大きくなる方向に撮像系およびアンテナ34dを向ける。
【0163】
ステップS131で開始された自動追尾は、ステップS133以降の処理と同時に平行して実行される。
【0164】
自動追尾を開始すると、プロセッサ16は、ステップS133で、RFタグリーダ34に質問の電波を出力させて、監視対象の区域の美術品100のRFタグ200および美術館員SのRFタグ300のRFタグデータの読み取りを試行する。
【0165】
次に、ステップS135で、プロセッサ16は、ステップS133におけるRFタグデータの読み取りの試行の結果、美術品100のRFタグ200から受信した電波のRSSI値(都度RSSI値)に基づいてRSSI値の変化量を特定する。
【0166】
さらに、プロセッサ16は、ステップS137で、ステップS133におけるRFタグデータの読み取りの試行の結果、美術館員SのRFタグ300のRFタグデータを読み取ったか否か、つまり、美術品100の近傍に美術館員Sが存在するか否かを判断する。
【0167】
美術館員SのRFタグ300のRFタグデータを読み取ったと判断すると(ステップS137:YES)、次に、プロセッサ16は、ステップS139で、ステップS135において特定したRSSI値の変化量が第8閾値以上であるか否かを判断する。
【0168】
たとえば、第8閾値は、「|−20dBm|」である。RSSI値が「±20dB」の範囲で変化した場合、RFタグ200は、RFタグリーダ34のアンテナ34dの指向方向L(図2参照)に対して直交する図面水平方向において、左右50cmの範囲で移動したことになる。当該美術品100のRFタグ200のアクティブ方式におけるRSSI基準値を「−40dBm」であるとすると、第8閾値を超えない範囲は、「−60dBm<都度RSSI値<−20dBm」である。
【0169】
RSSI値の変化量が第8閾値以上であると判断した場合(ステップS139:YES)、さらに、プロセッサ16は、ステップS141でタイムアウトしたか否かを判断する。ここで、タイムアウトしたか否かの判断は、たとえば、図12のステップS123においてRSSI値の変化量が第7閾値以上であると判断した時点から所定の時間が経過したか否かを判断することによって行う。この所定の時間が経過したか否かの判断は計時回路27による計時に基づいて行う。美術館員Sが美術品100を、RSSI値の変化量が第8閾値(第7閾値)を超えた状態で移動させてよい時間、つまり、美術品100を定位置から50cmを超えて移動させてよい時間が定められており、この定められた時間を経過すると、ステップS141でタイムアウトであると判断する。
【0170】
タイムアウトしたと判断すると(ステップS141:YES)、プロセッサ16は、ステップS143で、美術館員Sによる美術品100の移動可能時間が超過したことを前提とする第8警報を出力する。第8警報の出力は、ステップS137においてRFタグデータが読み取れたと判断されたRFタグ300を携帯している美術館員Sの携帯端末404に対して、美術品100の移動可能時間が超過した旨とともに、移動された美術品100の名称を告げる電子メールを送信する。
【0171】
第8警報の出力後、警備室のパーソナルコンピュータ402から自動追尾の終了の指示が送られると、プロセッサ16は、ステップS145でその旨を判断し、ステップS147で、自動追尾を終了する。そして、ステップS101に戻る。
【0172】
一方、ステップS139に戻って、RSSI値の変化量が第8閾値以上でないと判断した場合(ステップS139:NO)、美術館員Sによる通常の点検作業における美術品100の正常な移動範囲内であるという前提の下、プロセッサ16は、ステップS151で自動追尾を終了して、ステップS101に戻る。
【0173】
ステップS137に戻って、ステップS133におけるRFタグデータの読み取りの試行の結果、美術館員SのRFタグ300のRFタグデータが読み取れなかったと判断すると(ステップS137:NO)、プロセッサ16は、さらに、ステップS149で、ステップS135において特定したRSSI値の変化量が第9閾値以上であるか否かを判断する。
【0174】
たとえば、第9閾値は、「|−10dBm|」である。RSSI値が「±10dB」の範囲で変化した場合、RFタグ200は、RFタグリーダ34のアンテナ34dの指向方向L(図2参照)に対して直交する図面水平方向において、左右10cmの範囲で移動したことになる。当該美術品100のRFタグ200のアクティブ方式におけるRSSI基準値を「−40dBm」であるとすると、第9閾値を超えない範囲は、「−50dBm<都度RSSI値<−30dBm」である。
【0175】
RSSI値の変化量が第9閾値以上でないと判断すると(ステップS149:NO)、この場合は美術館員Sが美術品100を飾り台102上の定位置に設置して立ち去ったと推察できるので、プロセッサ16は、ステップS151で自動追尾を終了し、ステップS101に戻る。
【0176】
一方、RSSI値の変化量が第9閾値以上であると判断すると(ステップS149:YES)、プロセッサ16は、ステップS153で、第9警報を出力する。ステップS149においてRSSI値の変化量が第9閾値以上であると判断された場合、美術品100を50cm以上移動させて点検作業などをしていた美術館員Sが点検作業などを終えて立ち去ったが、依然として、美術品100の位置が定位置から10cm以上ずれていると推察される。そのため、ステップS153では、美術館員Sが美術品100を定位置に戻し忘れたということを前提として第9警報の出力を行う。
【0177】
第9警報の出力は、図12のステップS111においてRFタグデータが読み取れたと判断されたRFタグ300を携帯している美術館員Sの携帯端末404に対して、美術品100を定位置に戻し忘れている旨とともに、戻し忘れた美術品100の名称を告げる電子メールを送信する。
【0178】
第9警報の出力後、警備室のパーソナルコンピュータ402から自動追尾の終了の指示が送られると、プロセッサ16は、ステップS155でその旨を判断してステップS157で自動追尾を終了し、ステップS101に戻る。
【0179】
なお、第1の実施の形態および第2の実施の形態は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明の技術的思想の範囲内で、種々に変更してもよい。たとえば、プロセッサ16は、監視装置10のために設計された専用のASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよい。また、プロセッサ16の他にサブプロセッサを設け、上述したプロセッサ16の処理の一部をこのサブプロセッサが担うようにしてもよい。
【0180】
また、第1の実施の形態および第2の実施の形態では、美術品100のRFタグ200から出力される電波のRSSI値にもとづいて美術品100(RFタグ200)の位置の移動量を特定したが、美術品100(RFタグ200)の移動量を特定する方法は、RSSI値の変化量を用いる方法に限らず他の方法によってもよい。
【0181】
たとえば、美術品100のRFタグ200から出力される電波で搬送される信号のビットレート値の変化量、RFタグリーダ34から質問の電波を出力してから美術品100のRFタグ200から返信される電波がRFタグリーダ34で受信されるまでの時間の変化量、美術品100のRFタグ200から出力される電波のEVM(Error Vector Magnitude)の変化量、および美術品100のRFタグ200から出力される電波で搬送される信号のRFAGCの変化量を用いる方法であってもよい。
【0182】
さらに、第1の実施の形態および第2の実施の形態では、美術品100の近傍に美術館員Sが存在するか否かを判断する際に、監視対象の区域にある美術品100のRFタグ200および美術館員SのRFタグ300からRFタグデータを読み取り、読み取ったRFタグデータに含まれる識別情報を、フラッシュメモリ28に形成された美術館員DB28cに登録されている美術館員Sの識別情報と照合することによって判断していたが、RFタグデータに含まれる美術館員Sの識別情報の中に、美術館員Sの識別情報であることを示す特定のビットを設け、たとえば、当該ビットが存在することや、当該ビットが特定の値であることによって、読み取られたRFタグデータに含まれる識別情報が美術館員Sの識別情報であると特定し、美術品100の近傍に美術館員Sが存在すると判断するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】この発明の第1の実施の形態における監視装置の利用形態の例を示す図解図である。
【図2】この発明の第1の実施の形態における美術品に添付されたRFタグおよび美術館員が携帯するRFタグを示す図解図である。
【図3】この発明の第1の実施の形態における監視装置が配置されるネットワークの構成の一例を示す図解図である。
【図4】この発明の第1の実施の形態における監視装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図5】この発明の第1の実施の形態におけるRFタグリーダの構成の一例を示す図解図である。
【図6】この発明の第1の実施の形態における美術品に添付されるRFタグの構成の一例を示すブロック図である。
【図7】この発明の第1の実施の形態における美術館員に携帯されるRFタグの構成の一例を示すブロック図である。
【図8】この発明の第1の実施の形態における監視装置のプロセッサが実行する処理の一例を示すフロー図である。
【図9】図8のフロー図に続くフロー図である。
【図10】図8のフロー図に続くフロー図である。
【図11】この発明の第1の実施の形態における巡回データのレコード構成の一例を示す図解図である。
【図12】この発明の第2の実施の形態における監視装置のプロセッサが実行する処理の一例を示すフロー図である。
【図13】図12のフロー図に続くフロー図である。
【符号の説明】
【0184】
10 …監視装置
14 …イメージセンサ
16 …プロセッサ
28d …電子メール生成プログラム
30 …パン回転機構
32 …チルト回転機構
34 …RFタグリーダ
34d …アンテナ
36 …アラーム出力回路
100 …美術品
200 …RFタグ
300 …RFタグ
402 …パーソナルコンピュータ
404 …携帯端末
406 …携帯端末
412 …パーソナルコンピュータ
G …警備員
S …美術館員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定位置に配置されるべき管理対象品に添付される管理品無線通信タグおよび管理者に携帯される管理者無線通信タグに基づいて前記管理対象品の監視を行う監視装置であって、
指向性を有するアンテナ、
前記アンテナを介して前記管理品無線通信タグおよび前記管理者無線通信タグからの電波を受信する受信手段、
前記受信手段が受信する前記管理品無線通信タグからの電波に基づいて前記管理対象品の存在を検出する第1検出手段、
前記受信手段が受信する前記管理者無線通信タグからの電波に基づいて前記管理者の存在を検出する第2検出手段、
前記受信手段が受信する前記管理品無線通信タグからの電波に基づいて前記管理対象品の前記定位置からの位置の変化量に応じた値を特定する特定手段、
前記特定手段が特定した前記変化量に応じて時間を計測する計時手段、
前記第1検出手段の検出結果、前記第2検出手段の検出結果、前記特定手段の特定結果、および前記計時手段の計時結果の少なくとも1つに基づいて警報を出力する制御手段を備える、監視装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記第1検出手段が前記管理対象品の存在を検出しない場合に、第1警報を出力する第1出力手段を含む、請求項1記載の監視装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記第1検出手段が前記管理対象品の存在を検出し、前記第2検出手段が前記管理者の存在を検出せず、さらに、前記特定手段が特定した前記変化量が第1閾値以上である場合に、第2警報を出力する第2出力手段を含む、請求項1または2記載の監視装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記第1検出手段が前記管理対象品の存在を検出し、前記第2検出手段が前記管理者の存在を検出し続ける間において、前記計時手段によって計時される前記特定手段が特定する前記変化量が前記第1閾値より値が大きい第2閾値以上であり続ける時間が所定の時間を経過した場合に、第3警報を出力する第3出力手段を含む、請求項3記載の監視装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記第1検出手段が前記管理対象品の存在を検出し、前記第2検出手段が前記管理者を検出し続ける間において、前記特定手段が特定する前記変化量が一旦前記第2閾値以上となった後、前記第2閾値より小さくなったが、前記第1閾値より大きい場合に、第4警報を出力する第4出力手段を含む、請求項4記載の監視装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記第1検出手段が前記管理対象品の存在を検出し、前記第2検出手段が前記管理者の存在を検出したとき前記特定手段が特定する前記変化量が前記第2閾値以上であったが、その後前記第2検出手段が前記管理者の存在を検出しなくなったとき前記特定手段が特定する前記変化量が前記第1閾値以上である場合に、第5警報を出力する第5出力手段を含む、請求項4または5のいずれかに記載の監視装置。
【請求項7】
定位置に配置されるべき管理対象品に添付される動作方式がアクティブ方式とパッシブ方式とで切り替え可能な管理品無線通信タグおよび管理者に携帯される管理者無線通信タグに基づいて前記管理対象品の監視を行う監視装置であって、
被写界の光学像を撮像する撮像手段、
指向性を有するアンテナ、
前記アンテナを介して前記管理者無線通信タグおよび前記管理品無線通信タグからの電波を受信する受信手段、
前記撮像手段および前記アンテナを旋回させる旋回手段、
前記受信手段が前記管理品無線通信タグから受信する電波に基づいて前記管理対象品の存在を検出する第1検出手段、
前記受信手段が前記管理者無線通信タグから受信する電波に基づいて前記管理者の存在を検出する第2検出手段、
前記受信手段が受信する前記管理品無線通信タグからの電波に基づいて前記管理対象品の前記定位置からの位置の変化量に応じた値を特定する特定手段、
前記特定手段が特定した前記変化量に応じて時間を計測する計時手段、
前記撮像手段によって撮像される画像、ならびに前記受信手段が受信する前記管理者無線通信タグからの電波および/または前記管理品無線通信タグからの電波に基づいて前記旋回手段を制御して前記撮像手段の被写界内の移動物を追尾する追尾手段、
前記管理品無線通信タグの動作方式をアクティブ方式とパッシブ方式とで切り替える切替手段、
前記第1検出手段の検出結果、前記第2検出手段の検出結果、前記特定手段の特定結果、および前記計時手段の計時結果の少なくとも1つに基づいて、警報を出力するとともに、前記追尾手段による追尾および前記切替手段による切り替えの少なくとも一方を実行させる制御手段を備える、監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−288061(P2009−288061A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140788(P2008−140788)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】