自動車のモータ制御装置
【課題】車両の動力源として搭載したモータのロック時トルク制限制御が何回も繰り返されることを防止して、車両の前進と後退が何回も繰り返されることを回避する。
【解決手段】モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときにアクセル開度Accがロック予測判定開度よりも小さいか否かによってモータがロックする可能性があるか否かを事前に予測し、モータがロックする可能性があると予測された場合には、モータ指令トルクTm を増加させる際に、ロック判定トルクTmlckとモータ指令トルクTm との偏差が小さくなるほどモータ指令トルクTm の演算周期当たり(単位時間当たり)の変化量ΔTm (上昇勾配)を小さくして、できるだけモータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に維持するように制御する。これにより、モータがロックしたと判定される頻度を少なくして、ロック時トルク制限制御が行われる頻度を少なくする。
【解決手段】モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときにアクセル開度Accがロック予測判定開度よりも小さいか否かによってモータがロックする可能性があるか否かを事前に予測し、モータがロックする可能性があると予測された場合には、モータ指令トルクTm を増加させる際に、ロック判定トルクTmlckとモータ指令トルクTm との偏差が小さくなるほどモータ指令トルクTm の演算周期当たり(単位時間当たり)の変化量ΔTm (上昇勾配)を小さくして、できるだけモータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に維持するように制御する。これにより、モータがロックしたと判定される頻度を少なくして、ロック時トルク制限制御が行われる頻度を少なくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の少なくとも1つの動力源としてモータを搭載した自動車のモータ制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
車両の動力源としてモータを搭載した電気自動車や、モータとエンジンを併用するハイブリッド車においては、直流電源から供給される直流電圧をインバータで三相の交流電圧に変換して交流モータを駆動するようにしているが、急な登坂路での発進時等に運転者のアクセル踏み込み量(アクセル開度)によってはモータのトルクが走行抵抗に対して不足して、車速がほとんど上昇せずにモータの回転速度がほぼ0となるロック状態になることがある。このようにモータの回転がロックすると、インバータに設けられた各アームのスイッチング素子のうちの特定のスイッチング素子に電流が連続して流れて、スイッチング素子が過熱状態になって焼損してしまう可能性がある。
【0003】
この対策として、特許文献1(特開平11−215687号公報)に記載されているように、モータの回転速度が所定値よりも低く且つモータのトルク指令値が所定値よりも大きいときに(つまりモータのトルク指令値がある程度大きいにも拘らずモータの回転速度がほぼ0のときに)、モータがロックしたと判断して、運転者が体感し得ない程度に車両を後退させるようにモータのトルク指令値を低下させることでモータのロックを解除するようにしたものがある。
【特許文献1】特開平11−215687号公報(第2頁、図2等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の技術では、モータの回転速度が所定値よりも低く且つモータのトルク指令値が所定値よりも大きいときに、モータがロックしたと判断して、車両を後退させるようにモータのトルク指令値を低下させるトルク制限制御を行ってモータのロックを解除するようにしているが、その後、モータのロック解除に伴ってトルク制限制御が停止されると、再び、車両を前進させるようにモータのトルク指令値が増加して、モータの回転速度が所定値よりも低く且つモータのトルク指令値が所定値よりも大きい状態になって、ロック時のトルク制限制御が繰り返されることになる。このようにして、ロック時のトルク制限制御が何回も繰り返されると、モータのトルクの増減が何回も繰り返されて、運転者の意に反して車両の僅かな前進と後退が何回も繰り返される可能性がある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、従って本発明の目的は、モータのロック時のトルク制限制御が何回も繰り返されることを防止して、車両の前進と後退が何回も繰り返されることを未然に回避することができる自動車のモータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、車両の少なくとも1つの動力源として搭載したモータの回転がロックして該モータのトルクが所定のロック判定トルクよりも大きくなったときにモータのトルクを制限する機能を備えた自動車のモータ制御装置において、モータの回転がロックする可能性があるか否かをロック予測手段により事前に予測し、モータの回転がロックする可能性があると予測されたときにロック予測時トルク抑制制御手段によりモータのトルクをロック判定トルク以下に維持するように制御する構成としたものである。
【0007】
この構成では、モータの回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測し、モータの回転がロックする可能性があると予測されたときに、モータのトルクをロック判定トルク以下に維持するように制御できるため、モータがロックし易い状況下でも、モータのトルクがロック判定トルクよりも大きくなることを抑制して、ロック時のトルク制限制御が行われる頻度を少なくすることができる。これにより、ロック時のトルク制限制御が何回も繰り返されることを未然に防止することができ、運転者の意に反して車両の前進と後退が何回も繰り返されることを未然に回避することができる。
【0008】
この場合、請求項2のように、運転者の走行意図を走行意図検出手段により検出し、その運転者の走行意図に基づいてモータの回転がロックする可能性があるか否かを予測するようにしても良い。運転者の走行意図(例えばアクセル開度等)に応じてモータの目標トルクが変化し、モータの目標トルクが走行抵抗に対して不足していると、モータがロックし易くなるため、運転者の走行意図を用いれば、モータがロックする可能性があるか否かを精度良く予測することができる。
【0009】
また、請求項3のように、路面勾配を路面勾配判定手段により検出又は推定し、その路面勾配に基づいてモータの回転がロックする可能性があるか否かを予測するようにしても良い。路面勾配(上り坂の傾斜角度)が大きいと、走行抵抗が大きくなってモータがロックし易くなるため、路面勾配を用いれば、モータがロックする可能性があるか否かを精度良く予測することができる。
【0010】
更に、請求項4のように、モータの回転速度をモータ回転速度判定手段により検出又は予測し、モータの回転速度も考慮してモータの回転がロックする可能性があるか否かを予測するようにしても良い。モータの回転速度が0付近の領域内のときに、モータがロックし易くなるため、運転者の走行意図や路面勾配に加えて、モータの回転速度も考慮することで、モータがロックする可能性があるか否かを更に精度良く予測することができる。
【0011】
また、請求項5のように、ロック判定トルクとモータのトルクとの偏差に応じてモータのトルクの変化量を設定することで、モータのトルクをロック判定トルク以下に維持するように制御しても良い。このようにすれば、モータのトルクを増加させる際に、ロック判定トルクとモータのトルクとの偏差が小さくなるほど(つまりモータのトルクがロック判定トルクに近付くほど)、モータのトルクの変化量(上昇勾配)を小さくして、できるだけモータのトルクをロック判定トルク以下に維持するように制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態をハイブリッド車に適用して具体化した幾つかの実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例1を図1乃至図5に基づいて説明する。
まず、図1に基づいてハイブリッド車全体のシステム構成を説明する。
本実施例1のハイブリッド車は、エンジン22と、エンジン22のクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分割機構30と、この動力分割機構30に連結された発電機兼用の第1モータMG1(交流モータ)と、動力分割機構30に連結されたリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に連結された発電機兼用の第2モータMG2(交流モータ)等からなるハイブリッド駆動システムが搭載され、このハイブリッド駆動システム全体をハイブリッドECU70で総合的に制御する構成となっている。ここで、「ECU」は、マイクロコンピュータを主体として構成された「電子制御ユニット」を意味する(以下、同様)。
【0014】
エンジン22は、ガソリン、軽油等を燃料とする内燃機関(又は燃料として、ガソリン、アルコール、及び、ガソリンにアルコールを混合した混合燃料のいずれも使用可能な内燃機関)であり、このエンジン22を制御するエンジンECU24は、エンジン22の運転状態を検出するクランク角センサ、水温センサ等の各種センサの出力信号を読み込んで、エンジン22の燃料噴射制御、点火制御、スロットル制御等を実行する。このエンジンECU24は、ハイブリッドECU70と通信ラインで接続され、ハイブリッドECU70からの制御信号を受信してエンジン22の運転を制御すると共に、必要に応じてエンジン22の運転状態に関する信号をハイブリッドECU70に送信する。
【0015】
動力分割機構30は、サンギヤ31と、このサンギヤ31と同心状に配置されたリングギヤ32と、このリングギヤ32とサンギヤ31の両方に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転・公転自在に支持するキャリア34とを備え、これらサンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素とする遊星歯車機構として構成されている。
【0016】
キャリア34には、エンジン22のクランクシャフト26が連結され、サンギヤ31には第1モータMG1が連結され、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35が連結されており、第1モータMG1が発電機として機能する場合は、キャリア34から入力されるエンジン22の動力がサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配され、第1モータMG1が電動機(車両の駆動源)として機能する場合は、キャリア34から入力されるエンジン22の動力とサンギヤ31から入力される第1モータMG1の動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60とデファレンシャルギヤ62を介して最終的に車両の駆動輪63a,63bに伝達される。
【0017】
一方、第1モータMG1と第2モータMG2は、いずれも発電機兼用の電動機である同期発電電動機により構成され、それぞれインバータ41,42を介してバッテリ50との間で電力を授受する。各インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線及び負極母線として構成されており、2つのモータMG1,MG2のいずれか一方で発電した電力を他方に供給できるようになっている。従って、バッテリ50は、2つのモータMG1,MG2のいずれかで発電した電力と消費電力との大小関係により充放電されることになる。
【0018】
2つのモータMG1,MG2を制御するモータECU40には、各モータMG1,MG2を制御するのに必要な信号、例えば各モータMG1,MG2のロータ回転位置を検出するエンコーダ等の回転位置検出センサ43,44の出力信号や電流センサ(図示せず)により検出される各モータMG1,MG2に印加される相電流等が入力され、モータECU40から各インバータ41,42にスイッチング制御信号が出力される。このモータECU40は、ハイブリッドECU70と通信ラインで接続され、ハイブリッドECU70から送信されてくる制御信号を受信して各モータMG1,MG2を制御すると共に、必要に応じて各モータMG1,MG2の運転状態に関する信号をハイブリッドECU70に送信する。
【0019】
バッテリ50の充放電は、バッテリECU52によって管理される。このバッテリECU52には、バッテリ50の充放電を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された電圧センサ55で検出したバッテリ50の端子間電圧(バッテリ電圧)Vb と、バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた電流センサ56で検出したバッテリ50の充放電電流Ib と、バッテリ50に取り付けられた温度センサ51で検出したバッテリ温度Tb 等が入力され、必要に応じてバッテリ50の状態に関する信号をハイブリッドECU70に送信する。更に、バッテリECU52は、バッテリ50の充放電を管理するために電流センサ56により検出された充放電電流Ib の積算値等に基づいてバッテリ50の充電状態(残容量SOC)を演算する機能を備えている。
【0020】
ハイブリッドECU70は、CPU72を主体とするマイクロコンピュータにより構成され、CPU72の他に、各種のプログラムやイニシャル値等のデータを記憶するROM74と、各種データを一時的に記憶するRAM76等により構成されている。このハイブリッドECUト70には、イグニッション(IG)スイッチ80からのイグニッション信号、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフト信号、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセル開度センサ84からのアクセル開度信号、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジション信号、車速センサ88からの車速信号等が入力される。ハイブリッドECU70は、前述したように、エンジンECU24とモータECU40とバッテリECU52に通信ラインで接続され、エンジンECU24とモータECU40とバッテリECU52との間で各種制御信号やデータ信号が送受信される。
【0021】
以上のように構成された本実施例1のハイブリッド車のハイブリッドECU70は、アクセル開度センサ84からのアクセル開度信号と車速センサ88からの車速信号等に基づいて、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22と2つのモータMG1,MG2の運転を制御する。
【0022】
エンジン22と各モータMG1,MG2の運転制御モードとしては、トルク変換運転モード、充放電運転モード、モータ運転モード等がある。
トルク変換運転モードでは、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22の運転を制御すると共に、エンジン22から出力される動力の全てが動力分割機構30と2つのモータMG1,MG2によってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるように2つのモータMG1,MG2を駆動制御する。
【0023】
充放電運転モードでは、要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22の運転を制御すると共に、バッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部又はその一部が動力分割機構30と2つのモータMG1,MG2によるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように2つのモータMG1,MG2を駆動制御する。
【0024】
モータ運転モードでは、エンジン22の運転を停止して第2モータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するように2つのモータMG1,MG2を駆動制御する。
【0025】
これらの運転モードに拘らず第2モータMG2で駆動力を発生させる場合、ハイブリッドECU70(又はモータECU40)は、第2モータMG2の回転速度Nm (以下「モータ回転速度Nm 」と表記する)が、所定のロック判定回転領域内で且つ第2モータMG2の指令トルクTm (以下「モータ指令トルクTm 」と表記する)が所定のロック判定トルクTmlckよりも大きいとき、つまりモータ指令トルクTm がある程度大きいにも拘らずモータ回転速度Nm がほぼ0のときに、第2モータMG2の回転がロックしたと判断して、車両を僅かに後退させるようにモータ指令トルクTm を所定の制限トルクTmesc以下に低下させるロック時トルク制限制御を行って第2モータMG2のロックを解除する。
【0026】
この際、図2に示す比較例のように、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内(0付近の領域内)で第2モータMG2の回転がロックし易い状況のときにアクセル開度Accに応じて増加する第2モータMG2の目標トルクTmtagに対応してモータ指令トルクTm を速やかに増加させると、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内で且つモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きい状態になるため、ロック時トルク制限制御を行って第2モータMG2のロックを解除する。その後、第2モータMG2のロック解除に伴ってロック時トルク制限制御が停止されると、再びモータ指令トルクTm が速やかに増加して、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内で且つモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きい状態になって、ロック時トルク制限制御を繰り返すことになる。このようにして、ロック時トルク制限制御が何回も繰り返されると、モータ指令トルクTm の増減が何回も繰り返されて、運転者の意に反して車両の僅かな前進と後退が何回も繰り返される可能性がある。
【0027】
この対策として、本実施例1では、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測し、その結果、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測されたときに、モータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に維持するように制御するロック予測時トルク抑制制御を実行する。
【0028】
具体的には、図3に示すように、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内(0付近の領域内)のときに、アクセル開度Acc(アクセル踏み込み量)が所定のロック予測判定開度よりも小さいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測する。
【0029】
モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内(0付近の領域内)のときに、第2モータMG2がロックし易くなる。また、運転者の走行意図であるアクセル開度Accに応じて第2モータMG2の目標トルクTmtagが変化し、該目標トルクTmtagが走行抵抗に対して不足していると、第2モータMG2がロックし易くなる。従って、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときに、アクセル開度Accがロック予測判定開度よりも小さいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを精度良く予測することができる。
【0030】
そして、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、ロック予測時トルク抑制制御を実行する。本実施例1のロック予測時トルク抑制制御は、アクセル開度Accに応じて増加する第2モータMG2の目標トルクTmtagに対応してモータ指令トルクTm を増加させる際に、ロック判定トルクTmlckとモータ指令トルクTm との偏差に応じてモータ指令トルクTm の単位時間当たりの変化量ΔTm (上昇勾配)を設定することで、ロック判定トルクTmlckとモータ指令トルクTm との偏差が小さくなるほど(つまりモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckに近付くほど)、モータ指令トルクTm の単位時間当たりの変化量ΔTm (上昇勾配)を小さくして、できるだけモータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に維持するように制御する。これにより、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内で且つモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きくなることを抑制して、ロック時トルク制限制御が行われる頻度を少なくする。
【0031】
その後、アクセル踏み込み量が大きくなってアクセル開度Accがロック予測判定開度以上になった時点t1 で、ロック予測時トルク抑制制御を停止して、アクセル開度Accに応じて増加する第2モータMG2の目標トルクTmtagに対応してモータ指令トルクTm を速やかに増加させて、モータ回転速度Nm を速やかに上昇させる。
【0032】
以上説明した本実施例1のモータトルク制御は、ハイブリッドECU70(又はモータECU40)によって図4のモータトルク制御ルーチンに従って実行される。以下、このルーチンの処理内容を説明する。
【0033】
図4に示すモータトルク制御ルーチは、所定周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、モータ指令トルクTm を目標トルクTmtagに設定した後、ステップ102に進み、モータ回転速度Nm の絶対値が所定のロック判定回転速度Nmlckよりも小さいか否かによって、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内(0付近の領域内)であるか否かを判定する。ここで、モータ回転速度Nm は、回転位置検出センサ44の出力信号に基づいて検出した現在のモータ回転速度Nm でも良いし、所定期間後のモータ回転速度Nm を予測しても良い。の機能が特許請求の範囲でいうモータ回転速度判定手段としての役割を果たす。
【0034】
このステップ102で、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内であると判定された場合には、ステップ103に進み、アクセル開度センサ84(走行意図検出手段)で検出したアクセル開度Accがロック予測判定開度よりも小さい(アクセル踏み込み量が所定値よりも小さい)か否かを判定する。
【0035】
上記ステップ102でモータ回転速度Nm がロック判定回転領域内であると判定され、且つ、上記ステップ103でアクセル開度Accがロック予測判定開度よりも小さいと判定された場合には、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測する。これらのステップ102、103の処理が特許請求の範囲でいうロック予測手段としての役割を果たす。
【0036】
第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、ロック予測時トルク抑制制御を次のようにして実行する。まず、ステップ104で、図5のモータ指令トルクの変化量ΔTm のマップを参照して、ロック判定トルクTmlckと前回のモータ指令トルクTm.old との偏差(Tmlck−Tm.old )に応じた変化量ΔTm を算出する。
【0037】
図5のマップは、ロック判定トルクTmlckと前回のモータ指令トルクTm.old との偏差(Tmlck−Tm.old )が0よりも大きい領域では、偏差(Tmlck−Tm.old )が小さくなるほど(つまりモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckに近付くほど)、モータ指令トルクTm の演算周期当たりの変化量ΔTm (上昇勾配)が小さくなるように設定されている。これに対し、ロック判定トルクTmlckと前回のモータ指令トルクTm.old との偏差(Tmlck−Tm.old )が0以下の領域では、モータ指令トルクTm の演算周期当たりの変化量ΔTm (上昇勾配)が一定値に設定されている。
【0038】
この後、ステップ105に進み、目標トルクTmtagが前回のモータ指令トルクTm.old に変化量ΔTm を加算した値(Tm.old +ΔTm )よりも大きいか否かを判定し、目標トルクTmtagが前回のモータ指令トルクTm.old に変化量ΔTm を加算した値(Tm.old +ΔTm )よりも大きいと判定されれば、ステップ106に進み、今回のモータ指令トルクTm を前回の指令トルクTm.old に変化量ΔTm を加算した値(Tm.old +ΔTm )に置き換える。
Tm =Tm.old +ΔTm
【0039】
これらのステップ104〜106の処理により、アクセル開度に応じて増加する第2モータMG2の目標トルクTmtagに対応してモータ指令トルクTm を増加させる際に、ロック判定トルクTmlckと前回のモータ指令トルクTm.old との偏差(Tmlck−Tm.old )が小さくなるほど(つまりモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckに近付くほど)、モータ指令トルクTm の演算周期当たりの変化量ΔTm (上昇勾配)を小さくして、できるだけモータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に維持するように制御するロック予測時トルク抑制制御が実行され、特許請求の範囲でいうロック予測時トルク抑制制御手段としての役割が果たされる。
【0040】
一方、上記ステップ103で、アクセル開度Accがロック予測判定開度以上であると判定された場合には、ロック予測時トルク抑制制御(ステップ104〜106の処理)を実行しない。
【0041】
この後、ステップ107に進み、モータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きいか否かを判定し、モータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlck以下であると判定された場合には、ステップ108に進み、ロック時トルク制限フラグをOFF(オフ)にリセットする(又は維持する)。
【0042】
一方、上記ステップ107で、モータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きいと判定された場合には、ステップ109に進み、ロック時トルク制限フラグをON(オン)にセットする(又は維持する)。
【0043】
この後、ステップ110に進み、ロック時トルク制限フラグがONであるか否かを判定し、ロック時トルク制限フラグがONであると判定されれば、ステップ111に進み、ロック解除用の制限トルクTmescを算出する。このロック解除用の制限トルクTmescは、ロック判定トルクTmlckよりも小さく、車両が僅かに後退するトルクである。
【0044】
この後、ステップ112に進み、モータ指令トルクTm が制限トルクTmescよりも大きいか否かを判定し、モータ指令トルクTm が制限トルクTmescよりも大きいと判定されれば、ステップ113に進み、モータ指令トルクTm を制限トルクTmescでガード処理してTm =Tmescとする。
【0045】
これらのステップ111〜113の処理により、車両を僅かに後退させるようにモータ指令トルクTm を制限トルクTmesc以下に低下させるロック時トルク制限制御を行って第2モータMG2のロックを解除する。
【0046】
その後、上記ステップ102でモータ回転速度Nm がロック判定回転領域内ではないと判定された時点、又は、上記ステップ107でモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlck以下であると判定された時点で、ステップ108に進み、ロック時トルク制限フラグをOFF(オフ)にリセットして、ロック時トルク制限制御を停止する。
【0047】
以上説明した本実施例1では、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときにアクセル開度Accがロック予測判定開度よりも小さいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測し、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、モータ指令トルクTm を増加させる際に、ロック判定トルクTmlckとモータ指令トルクTm との偏差が小さくなるほど(つまりモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckに近付くほど)、モータ指令トルクTm の演算周期当たりの変化量ΔTm (上昇勾配)を小さくして、できるだけモータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に維持するように制御するロック予測時トルク抑制制御を実行するようにしたので、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内で且つモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きくなることを防止して、ロック時トルク制限制御が行われる頻度を少なくすることができる。これにより、ロック時トルク制限制御が何回も繰り返されることを未然に防止することができ、運転者の意に反して車両の前進と後退が何回も繰り返されることを未然に回避することができる。
【実施例2】
【0048】
次に、図6及び図7を用いて本発明の実施例2を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
【0049】
本実施例2では、ハイブリッドECU70(又はモータECU40)によって後述する図7のモータトルク制御ルーチンを実行することで、図6に示すように、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときに路面勾配(上り坂の傾斜角度)が所定のロック予測判定勾配よりも大きいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測する。
【0050】
モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときに、第2モータMG2がロックし易くなる。また、路面勾配(上り坂の傾斜角度)が大きいと、走行抵抗が大きくなって第2モータMG2がロックし易くなる。従って、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときに路面勾配がロック予測判定勾配よりも大きいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを精度良く予測することができる。
【0051】
そして、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、前記実施例1と同じように、モータ指令トルクTm を増加させる際に、ロック判定トルクTmlckとモータ指令トルクTm との偏差が小さくなるほど、モータ指令トルクTm の演算周期当たり(単位時間当たり)の変化量ΔTm を小さくして、できるだけモータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に維持するように制御するロック予測時トルク抑制制御を実行する。
【0052】
以下、図7のモータトルク制御ルーチンの処理内容を説明する。尚、図7のルーチンは、前記実施例1で説明した図4のルーチンのステップ103の処理をステップ103aの処理に変更したものであり、これ以外の各ステップの処理は図4と同じである。
【0053】
図7に示すモータトルク制御ルーチンでは、まず、モータ指令トルクTm を目標トルクTmtagに設定した後、モータ回転速度Nm の絶対値が所定のロック判定回転速度Nmlckよりも小さいか否かによって、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内(0付近の領域内)であるか否かを判定する(ステップ101、102)。
【0054】
モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内であると判定された場合には、ステップ103aに進み、路面勾配がロック予測判定勾配よりも大きいか否かを判定する。ここで、路面勾配の検出方法は、例えば、車両に搭載された傾斜角センサや加速度センサ等の路面勾配(車両の傾斜角)に応じて出力が変化するセンサの出力信号に基づいて路面勾配を検出しても良い。或は、車両の運転状態(例えば要求動力と車速との関係)に基づいて路面勾配を推定したり、カーナビゲーションシステムの道路情報から路面勾配を取得するようにしても良い。この機能が特許請求の範囲でいう路面勾配判定手段としての役割を果たす。
【0055】
上記ステップ102でモータ回転速度Nm がロック判定回転領域内であると判定され、且つ、上記ステップ103aで路面勾配がロック予測判定勾配よりも大きいと判定された場合には、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測する。これらのステップ102、103aの処理が特許請求の範囲でいうロック予測手段としての役割を果たす。
【0056】
第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、ロック判定トルクTmlckと前回のモータ指令トルクTm.old との偏差(Tmlck−Tm.old )に応じた変化量ΔTm を算出し、目標トルクTmtagが前回のモータ指令トルクTm.old に変化量ΔTm を加算した値(Tm.old +ΔTm )よりも大きければ、今回のモータ指令トルクTm を前回の指令トルクTm.old に変化量ΔTm を加算した値(Tm.old +ΔTm )に置き換える(ステップ104〜106)。
【0057】
これにより、モータ指令トルクTm を増加させる際に、ロック判定トルクTmlckと前回のモータ指令トルクTm.old との偏差(Tmlck−Tm.old )が小さくなるほど(つまりモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckに近付くほど)、モータ指令トルクTm の演算周期当たりの変化量ΔTm (上昇勾配)を小さくして、できるだけモータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に維持するように制御するロック予測時トルク抑制制御を実行する。
【0058】
この後、モータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きいと判定されたときに、ロック解除用の制限トルクTmescを算出し、モータ指令トルクTm がロック解除用の制限トルクTmescよりも大きければ、モータ指令トルクTm を制限トルクTmescでガード処理する(ステップ107〜113)。これにより、車両を僅かに後退させるようにモータ指令トルクTm を制限トルクTmesc以下に低下させるロック時トルク制限制御を行って第2モータMG2のロックを解除する。
【0059】
以上説明した本実施例2では、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときに路面勾配がロック予測判定勾配よりも大きいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測し、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、前記実施例1と同じように、モータ指令トルクTm を増加させる際に、ロック判定トルクTmlckとモータ指令トルクTm との偏差が小さくなるほどモータ指令トルクTm の演算周期当たり(単位時間当たり)の変化量ΔTm を小さくして、できるだけモータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に維持するように制御するロック予測時トルク抑制制御を実行するようにしたので、前記実施例1とほぼ同じ効果を得ることができる。
【実施例3】
【0060】
次に、図8及び図9を用いて本発明の実施例3を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
【0061】
本実施例3では、ハイブリッドECU70(又はモータECU40)によって後述する図9のモータトルク制御ルーチンを実行することで、図8に示すように、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときにアクセル開度Accがロック予測判定開度よりも小さいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測し、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、モータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に制限するロック予測時トルク抑制制御を実行する。
【0062】
以下、図9のモータトルク制御ルーチンの処理内容を説明する。尚、図9のルーチンは、前記実施例1で説明した図4のルーチンのステップ104、105の処理をステップ104a、105aの処理に変更したものであり、これ以外の各ステップの処理は図4と同じである。
【0063】
図9に示すモータトルク制御ルーチンでは、まず、モータ指令トルクTm を目標トルクTmtagに設定した後、モータ回転速度Nm の絶対値が所定のロック判定回転速度Nmlckよりも小さいか否かによって、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内(0付近の領域内)であるか否かを判定する(ステップ101、102)。
【0064】
モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内であると判定された場合には、ステップ103に進み、アクセル開度Accがロック予測判定開度よりも小さい(アクセル踏み込み量が所定値よりも小さい)か否かを判定する。
【0065】
上記ステップ102でモータ回転速度Nm がロック判定回転領域内であると判定され、且つ、上記ステップ103でアクセル開度Accがロック予測判定開度よりも小さいと判定された場合には、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測する。
【0066】
第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、ステップ104aに進み、モータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きいか否かを判定し、モータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きいと判定されれば、ステップ105aに進み、モータ指令トルクTm を制限トルクロック判定トルクTmlckでガード処理してTm =Tmlckとする。
【0067】
これらのステップ104a、105aの処理により、モータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に制限するロック予測時トルク抑制制御が実行され、特許請求の範囲でいうロック予測時トルク抑制制御手段としての役割が果たされる。
【0068】
以上説明した本実施例3では、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときにアクセル開度Accがロック予測判定開度よりも小さいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測し、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合は、モータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に制限するロック予測時トルク抑制制御を実行するようにしたので、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内で且つモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きくなることを防止して、ロック時トルク制限制御が行われないようにすることができる。これにより、ロック時トルク制限制御が何回も繰り返されることを確実に防止することができ、運転者の意に反して車両の前進と後退が何回も繰り返されることを未然に回避することができる。
【実施例4】
【0069】
次に、図10及び図11を用いて本発明の実施例4を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
【0070】
本実施例4では、ハイブリッドECU70(又はモータECU40)によって後述する図11のモータトルク制御ルーチンを実行することで、図10に示すように、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときに路面勾配がロック予測判定勾配よりも大きいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測し、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、前記実施例3と同じように、モータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に制限するロック予測時トルク抑制制御を実行する。
【0071】
以下、図11のモータトルク制御ルーチンの処理内容を説明する。尚、図11のルーチンは、前記実施例1で説明した図4のルーチンのステップ103〜105の処理をステップ103a〜105aの処理に変更したものであり、これ以外の各ステップの処理は図4と同じである。
【0072】
図11に示すモータトルク制御ルーチンでは、まず、モータ指令トルクTm を目標トルクTmtagに設定した後、モータ回転速度Nm の絶対値が所定のロック判定回転速度Nmlckよりも小さいか否かによって、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内(0付近の領域内)であるか否かを判定する(ステップ101、102)。
【0073】
モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内であると判定された場合には、ステップ103aに進み、路面勾配(上り坂の傾斜角度)がロック予測判定勾配よりも大きいか否かを判定する。
【0074】
上記ステップ102でモータ回転速度Nm がロック判定回転領域内であると判定され、且つ、上記ステップ103aで路面勾配がロック予測判定勾配よりも大きいと判定された場合には、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測する。
【0075】
第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、ステップ104aに進み、モータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きいか否かを判定し、モータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きいと判定されれば、ステップ105aに進み、モータ指令トルクTm を制限トルクロック判定トルクTmlckでガード処理してTm =Tmlckとする。これにより、モータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に制限するロック予測時トルク抑制制御を実行する。
【0076】
以上説明した本実施例4では、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときに路面勾配がロック予測判定勾配よりも大きいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測し、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、前記実施例3と同じように、モータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に制限するロック予測時トルク抑制制御を実行するようにしたので、前記実施例3とほぼ同じ効果を得ることができる。
【0077】
尚、上記実施例1,3では、モータ回転速度とアクセル開度とに基づいて第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを予測し、上記実施例2,4では、モータ回転速度と路面勾配とに基づいて第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを予測するようにしたが、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを予測する方法は、これに限定されず、例えば、モータ回転速度とアクセル開度と路面勾配とに基づいて第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを予測するようにしても良い。
【0078】
また、上記実施例1,3では、運転者の走行意図として、アクセル開度を用いるようにしたが、これに限定されず、シフト位置やブレーキ踏み込み量、或は、アクセル開度とシフト位置とブレーキ踏み込み量のうちの2つ以上を用いるようにしても良い。
【0079】
その他、本発明は、車両の駆動源として内燃機関と交流モータを併用するハイブリッド車に限定されず、交流モータのみを駆動源とする電気自動車にも適用して実施できる等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施例1におけるハイブリッド車のシステム構成を概略的に示す図である。
【図2】比較例のモータトルク制御の実行例を説明するタイムチャートである。
【図3】実施例1のモータトルク制御の実行例を説明するタイムチャートである。
【図4】実施例1のモータトルク制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】トルク変化量ΔTm のマップの一例を概念的に示す図である。
【図6】実施例2のモータトルク制御の実行例を説明するタイムチャートである。
【図7】実施例2のモータトルク制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施例3のモータトルク制御の実行例を説明するタイムチャートである。
【図9】実施例3のモータトルク制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】実施例4のモータトルク制御の実行例を説明するタイムチャートである。
【図11】実施例4のモータトルク制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0081】
22…エンジン、24…エンジンECU、30…動力分割機構、40…モータECU、41,42…インバータ、43,44…回転位置検出センサ、50…バッテリ、52…バッテリECU、70…ハイブリッドECU(ロック予測手段,ロック予測時トルク抑制制御手段,モータ回転速度判定手段,路面勾配判定手段)、84…アクセル開度センサ(走行意図検出手段)、MG1…第1モータ(交流モータ)、MG2…第2モータ(交流モータ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の少なくとも1つの動力源としてモータを搭載した自動車のモータ制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
車両の動力源としてモータを搭載した電気自動車や、モータとエンジンを併用するハイブリッド車においては、直流電源から供給される直流電圧をインバータで三相の交流電圧に変換して交流モータを駆動するようにしているが、急な登坂路での発進時等に運転者のアクセル踏み込み量(アクセル開度)によってはモータのトルクが走行抵抗に対して不足して、車速がほとんど上昇せずにモータの回転速度がほぼ0となるロック状態になることがある。このようにモータの回転がロックすると、インバータに設けられた各アームのスイッチング素子のうちの特定のスイッチング素子に電流が連続して流れて、スイッチング素子が過熱状態になって焼損してしまう可能性がある。
【0003】
この対策として、特許文献1(特開平11−215687号公報)に記載されているように、モータの回転速度が所定値よりも低く且つモータのトルク指令値が所定値よりも大きいときに(つまりモータのトルク指令値がある程度大きいにも拘らずモータの回転速度がほぼ0のときに)、モータがロックしたと判断して、運転者が体感し得ない程度に車両を後退させるようにモータのトルク指令値を低下させることでモータのロックを解除するようにしたものがある。
【特許文献1】特開平11−215687号公報(第2頁、図2等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の技術では、モータの回転速度が所定値よりも低く且つモータのトルク指令値が所定値よりも大きいときに、モータがロックしたと判断して、車両を後退させるようにモータのトルク指令値を低下させるトルク制限制御を行ってモータのロックを解除するようにしているが、その後、モータのロック解除に伴ってトルク制限制御が停止されると、再び、車両を前進させるようにモータのトルク指令値が増加して、モータの回転速度が所定値よりも低く且つモータのトルク指令値が所定値よりも大きい状態になって、ロック時のトルク制限制御が繰り返されることになる。このようにして、ロック時のトルク制限制御が何回も繰り返されると、モータのトルクの増減が何回も繰り返されて、運転者の意に反して車両の僅かな前進と後退が何回も繰り返される可能性がある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、従って本発明の目的は、モータのロック時のトルク制限制御が何回も繰り返されることを防止して、車両の前進と後退が何回も繰り返されることを未然に回避することができる自動車のモータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、車両の少なくとも1つの動力源として搭載したモータの回転がロックして該モータのトルクが所定のロック判定トルクよりも大きくなったときにモータのトルクを制限する機能を備えた自動車のモータ制御装置において、モータの回転がロックする可能性があるか否かをロック予測手段により事前に予測し、モータの回転がロックする可能性があると予測されたときにロック予測時トルク抑制制御手段によりモータのトルクをロック判定トルク以下に維持するように制御する構成としたものである。
【0007】
この構成では、モータの回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測し、モータの回転がロックする可能性があると予測されたときに、モータのトルクをロック判定トルク以下に維持するように制御できるため、モータがロックし易い状況下でも、モータのトルクがロック判定トルクよりも大きくなることを抑制して、ロック時のトルク制限制御が行われる頻度を少なくすることができる。これにより、ロック時のトルク制限制御が何回も繰り返されることを未然に防止することができ、運転者の意に反して車両の前進と後退が何回も繰り返されることを未然に回避することができる。
【0008】
この場合、請求項2のように、運転者の走行意図を走行意図検出手段により検出し、その運転者の走行意図に基づいてモータの回転がロックする可能性があるか否かを予測するようにしても良い。運転者の走行意図(例えばアクセル開度等)に応じてモータの目標トルクが変化し、モータの目標トルクが走行抵抗に対して不足していると、モータがロックし易くなるため、運転者の走行意図を用いれば、モータがロックする可能性があるか否かを精度良く予測することができる。
【0009】
また、請求項3のように、路面勾配を路面勾配判定手段により検出又は推定し、その路面勾配に基づいてモータの回転がロックする可能性があるか否かを予測するようにしても良い。路面勾配(上り坂の傾斜角度)が大きいと、走行抵抗が大きくなってモータがロックし易くなるため、路面勾配を用いれば、モータがロックする可能性があるか否かを精度良く予測することができる。
【0010】
更に、請求項4のように、モータの回転速度をモータ回転速度判定手段により検出又は予測し、モータの回転速度も考慮してモータの回転がロックする可能性があるか否かを予測するようにしても良い。モータの回転速度が0付近の領域内のときに、モータがロックし易くなるため、運転者の走行意図や路面勾配に加えて、モータの回転速度も考慮することで、モータがロックする可能性があるか否かを更に精度良く予測することができる。
【0011】
また、請求項5のように、ロック判定トルクとモータのトルクとの偏差に応じてモータのトルクの変化量を設定することで、モータのトルクをロック判定トルク以下に維持するように制御しても良い。このようにすれば、モータのトルクを増加させる際に、ロック判定トルクとモータのトルクとの偏差が小さくなるほど(つまりモータのトルクがロック判定トルクに近付くほど)、モータのトルクの変化量(上昇勾配)を小さくして、できるだけモータのトルクをロック判定トルク以下に維持するように制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態をハイブリッド車に適用して具体化した幾つかの実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例1を図1乃至図5に基づいて説明する。
まず、図1に基づいてハイブリッド車全体のシステム構成を説明する。
本実施例1のハイブリッド車は、エンジン22と、エンジン22のクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分割機構30と、この動力分割機構30に連結された発電機兼用の第1モータMG1(交流モータ)と、動力分割機構30に連結されたリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に連結された発電機兼用の第2モータMG2(交流モータ)等からなるハイブリッド駆動システムが搭載され、このハイブリッド駆動システム全体をハイブリッドECU70で総合的に制御する構成となっている。ここで、「ECU」は、マイクロコンピュータを主体として構成された「電子制御ユニット」を意味する(以下、同様)。
【0014】
エンジン22は、ガソリン、軽油等を燃料とする内燃機関(又は燃料として、ガソリン、アルコール、及び、ガソリンにアルコールを混合した混合燃料のいずれも使用可能な内燃機関)であり、このエンジン22を制御するエンジンECU24は、エンジン22の運転状態を検出するクランク角センサ、水温センサ等の各種センサの出力信号を読み込んで、エンジン22の燃料噴射制御、点火制御、スロットル制御等を実行する。このエンジンECU24は、ハイブリッドECU70と通信ラインで接続され、ハイブリッドECU70からの制御信号を受信してエンジン22の運転を制御すると共に、必要に応じてエンジン22の運転状態に関する信号をハイブリッドECU70に送信する。
【0015】
動力分割機構30は、サンギヤ31と、このサンギヤ31と同心状に配置されたリングギヤ32と、このリングギヤ32とサンギヤ31の両方に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転・公転自在に支持するキャリア34とを備え、これらサンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素とする遊星歯車機構として構成されている。
【0016】
キャリア34には、エンジン22のクランクシャフト26が連結され、サンギヤ31には第1モータMG1が連結され、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35が連結されており、第1モータMG1が発電機として機能する場合は、キャリア34から入力されるエンジン22の動力がサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配され、第1モータMG1が電動機(車両の駆動源)として機能する場合は、キャリア34から入力されるエンジン22の動力とサンギヤ31から入力される第1モータMG1の動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60とデファレンシャルギヤ62を介して最終的に車両の駆動輪63a,63bに伝達される。
【0017】
一方、第1モータMG1と第2モータMG2は、いずれも発電機兼用の電動機である同期発電電動機により構成され、それぞれインバータ41,42を介してバッテリ50との間で電力を授受する。各インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線及び負極母線として構成されており、2つのモータMG1,MG2のいずれか一方で発電した電力を他方に供給できるようになっている。従って、バッテリ50は、2つのモータMG1,MG2のいずれかで発電した電力と消費電力との大小関係により充放電されることになる。
【0018】
2つのモータMG1,MG2を制御するモータECU40には、各モータMG1,MG2を制御するのに必要な信号、例えば各モータMG1,MG2のロータ回転位置を検出するエンコーダ等の回転位置検出センサ43,44の出力信号や電流センサ(図示せず)により検出される各モータMG1,MG2に印加される相電流等が入力され、モータECU40から各インバータ41,42にスイッチング制御信号が出力される。このモータECU40は、ハイブリッドECU70と通信ラインで接続され、ハイブリッドECU70から送信されてくる制御信号を受信して各モータMG1,MG2を制御すると共に、必要に応じて各モータMG1,MG2の運転状態に関する信号をハイブリッドECU70に送信する。
【0019】
バッテリ50の充放電は、バッテリECU52によって管理される。このバッテリECU52には、バッテリ50の充放電を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された電圧センサ55で検出したバッテリ50の端子間電圧(バッテリ電圧)Vb と、バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた電流センサ56で検出したバッテリ50の充放電電流Ib と、バッテリ50に取り付けられた温度センサ51で検出したバッテリ温度Tb 等が入力され、必要に応じてバッテリ50の状態に関する信号をハイブリッドECU70に送信する。更に、バッテリECU52は、バッテリ50の充放電を管理するために電流センサ56により検出された充放電電流Ib の積算値等に基づいてバッテリ50の充電状態(残容量SOC)を演算する機能を備えている。
【0020】
ハイブリッドECU70は、CPU72を主体とするマイクロコンピュータにより構成され、CPU72の他に、各種のプログラムやイニシャル値等のデータを記憶するROM74と、各種データを一時的に記憶するRAM76等により構成されている。このハイブリッドECUト70には、イグニッション(IG)スイッチ80からのイグニッション信号、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフト信号、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセル開度センサ84からのアクセル開度信号、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジション信号、車速センサ88からの車速信号等が入力される。ハイブリッドECU70は、前述したように、エンジンECU24とモータECU40とバッテリECU52に通信ラインで接続され、エンジンECU24とモータECU40とバッテリECU52との間で各種制御信号やデータ信号が送受信される。
【0021】
以上のように構成された本実施例1のハイブリッド車のハイブリッドECU70は、アクセル開度センサ84からのアクセル開度信号と車速センサ88からの車速信号等に基づいて、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22と2つのモータMG1,MG2の運転を制御する。
【0022】
エンジン22と各モータMG1,MG2の運転制御モードとしては、トルク変換運転モード、充放電運転モード、モータ運転モード等がある。
トルク変換運転モードでは、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22の運転を制御すると共に、エンジン22から出力される動力の全てが動力分割機構30と2つのモータMG1,MG2によってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるように2つのモータMG1,MG2を駆動制御する。
【0023】
充放電運転モードでは、要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22の運転を制御すると共に、バッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部又はその一部が動力分割機構30と2つのモータMG1,MG2によるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように2つのモータMG1,MG2を駆動制御する。
【0024】
モータ運転モードでは、エンジン22の運転を停止して第2モータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するように2つのモータMG1,MG2を駆動制御する。
【0025】
これらの運転モードに拘らず第2モータMG2で駆動力を発生させる場合、ハイブリッドECU70(又はモータECU40)は、第2モータMG2の回転速度Nm (以下「モータ回転速度Nm 」と表記する)が、所定のロック判定回転領域内で且つ第2モータMG2の指令トルクTm (以下「モータ指令トルクTm 」と表記する)が所定のロック判定トルクTmlckよりも大きいとき、つまりモータ指令トルクTm がある程度大きいにも拘らずモータ回転速度Nm がほぼ0のときに、第2モータMG2の回転がロックしたと判断して、車両を僅かに後退させるようにモータ指令トルクTm を所定の制限トルクTmesc以下に低下させるロック時トルク制限制御を行って第2モータMG2のロックを解除する。
【0026】
この際、図2に示す比較例のように、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内(0付近の領域内)で第2モータMG2の回転がロックし易い状況のときにアクセル開度Accに応じて増加する第2モータMG2の目標トルクTmtagに対応してモータ指令トルクTm を速やかに増加させると、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内で且つモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きい状態になるため、ロック時トルク制限制御を行って第2モータMG2のロックを解除する。その後、第2モータMG2のロック解除に伴ってロック時トルク制限制御が停止されると、再びモータ指令トルクTm が速やかに増加して、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内で且つモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きい状態になって、ロック時トルク制限制御を繰り返すことになる。このようにして、ロック時トルク制限制御が何回も繰り返されると、モータ指令トルクTm の増減が何回も繰り返されて、運転者の意に反して車両の僅かな前進と後退が何回も繰り返される可能性がある。
【0027】
この対策として、本実施例1では、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測し、その結果、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測されたときに、モータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に維持するように制御するロック予測時トルク抑制制御を実行する。
【0028】
具体的には、図3に示すように、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内(0付近の領域内)のときに、アクセル開度Acc(アクセル踏み込み量)が所定のロック予測判定開度よりも小さいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測する。
【0029】
モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内(0付近の領域内)のときに、第2モータMG2がロックし易くなる。また、運転者の走行意図であるアクセル開度Accに応じて第2モータMG2の目標トルクTmtagが変化し、該目標トルクTmtagが走行抵抗に対して不足していると、第2モータMG2がロックし易くなる。従って、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときに、アクセル開度Accがロック予測判定開度よりも小さいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを精度良く予測することができる。
【0030】
そして、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、ロック予測時トルク抑制制御を実行する。本実施例1のロック予測時トルク抑制制御は、アクセル開度Accに応じて増加する第2モータMG2の目標トルクTmtagに対応してモータ指令トルクTm を増加させる際に、ロック判定トルクTmlckとモータ指令トルクTm との偏差に応じてモータ指令トルクTm の単位時間当たりの変化量ΔTm (上昇勾配)を設定することで、ロック判定トルクTmlckとモータ指令トルクTm との偏差が小さくなるほど(つまりモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckに近付くほど)、モータ指令トルクTm の単位時間当たりの変化量ΔTm (上昇勾配)を小さくして、できるだけモータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に維持するように制御する。これにより、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内で且つモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きくなることを抑制して、ロック時トルク制限制御が行われる頻度を少なくする。
【0031】
その後、アクセル踏み込み量が大きくなってアクセル開度Accがロック予測判定開度以上になった時点t1 で、ロック予測時トルク抑制制御を停止して、アクセル開度Accに応じて増加する第2モータMG2の目標トルクTmtagに対応してモータ指令トルクTm を速やかに増加させて、モータ回転速度Nm を速やかに上昇させる。
【0032】
以上説明した本実施例1のモータトルク制御は、ハイブリッドECU70(又はモータECU40)によって図4のモータトルク制御ルーチンに従って実行される。以下、このルーチンの処理内容を説明する。
【0033】
図4に示すモータトルク制御ルーチは、所定周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、モータ指令トルクTm を目標トルクTmtagに設定した後、ステップ102に進み、モータ回転速度Nm の絶対値が所定のロック判定回転速度Nmlckよりも小さいか否かによって、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内(0付近の領域内)であるか否かを判定する。ここで、モータ回転速度Nm は、回転位置検出センサ44の出力信号に基づいて検出した現在のモータ回転速度Nm でも良いし、所定期間後のモータ回転速度Nm を予測しても良い。の機能が特許請求の範囲でいうモータ回転速度判定手段としての役割を果たす。
【0034】
このステップ102で、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内であると判定された場合には、ステップ103に進み、アクセル開度センサ84(走行意図検出手段)で検出したアクセル開度Accがロック予測判定開度よりも小さい(アクセル踏み込み量が所定値よりも小さい)か否かを判定する。
【0035】
上記ステップ102でモータ回転速度Nm がロック判定回転領域内であると判定され、且つ、上記ステップ103でアクセル開度Accがロック予測判定開度よりも小さいと判定された場合には、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測する。これらのステップ102、103の処理が特許請求の範囲でいうロック予測手段としての役割を果たす。
【0036】
第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、ロック予測時トルク抑制制御を次のようにして実行する。まず、ステップ104で、図5のモータ指令トルクの変化量ΔTm のマップを参照して、ロック判定トルクTmlckと前回のモータ指令トルクTm.old との偏差(Tmlck−Tm.old )に応じた変化量ΔTm を算出する。
【0037】
図5のマップは、ロック判定トルクTmlckと前回のモータ指令トルクTm.old との偏差(Tmlck−Tm.old )が0よりも大きい領域では、偏差(Tmlck−Tm.old )が小さくなるほど(つまりモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckに近付くほど)、モータ指令トルクTm の演算周期当たりの変化量ΔTm (上昇勾配)が小さくなるように設定されている。これに対し、ロック判定トルクTmlckと前回のモータ指令トルクTm.old との偏差(Tmlck−Tm.old )が0以下の領域では、モータ指令トルクTm の演算周期当たりの変化量ΔTm (上昇勾配)が一定値に設定されている。
【0038】
この後、ステップ105に進み、目標トルクTmtagが前回のモータ指令トルクTm.old に変化量ΔTm を加算した値(Tm.old +ΔTm )よりも大きいか否かを判定し、目標トルクTmtagが前回のモータ指令トルクTm.old に変化量ΔTm を加算した値(Tm.old +ΔTm )よりも大きいと判定されれば、ステップ106に進み、今回のモータ指令トルクTm を前回の指令トルクTm.old に変化量ΔTm を加算した値(Tm.old +ΔTm )に置き換える。
Tm =Tm.old +ΔTm
【0039】
これらのステップ104〜106の処理により、アクセル開度に応じて増加する第2モータMG2の目標トルクTmtagに対応してモータ指令トルクTm を増加させる際に、ロック判定トルクTmlckと前回のモータ指令トルクTm.old との偏差(Tmlck−Tm.old )が小さくなるほど(つまりモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckに近付くほど)、モータ指令トルクTm の演算周期当たりの変化量ΔTm (上昇勾配)を小さくして、できるだけモータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に維持するように制御するロック予測時トルク抑制制御が実行され、特許請求の範囲でいうロック予測時トルク抑制制御手段としての役割が果たされる。
【0040】
一方、上記ステップ103で、アクセル開度Accがロック予測判定開度以上であると判定された場合には、ロック予測時トルク抑制制御(ステップ104〜106の処理)を実行しない。
【0041】
この後、ステップ107に進み、モータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きいか否かを判定し、モータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlck以下であると判定された場合には、ステップ108に進み、ロック時トルク制限フラグをOFF(オフ)にリセットする(又は維持する)。
【0042】
一方、上記ステップ107で、モータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きいと判定された場合には、ステップ109に進み、ロック時トルク制限フラグをON(オン)にセットする(又は維持する)。
【0043】
この後、ステップ110に進み、ロック時トルク制限フラグがONであるか否かを判定し、ロック時トルク制限フラグがONであると判定されれば、ステップ111に進み、ロック解除用の制限トルクTmescを算出する。このロック解除用の制限トルクTmescは、ロック判定トルクTmlckよりも小さく、車両が僅かに後退するトルクである。
【0044】
この後、ステップ112に進み、モータ指令トルクTm が制限トルクTmescよりも大きいか否かを判定し、モータ指令トルクTm が制限トルクTmescよりも大きいと判定されれば、ステップ113に進み、モータ指令トルクTm を制限トルクTmescでガード処理してTm =Tmescとする。
【0045】
これらのステップ111〜113の処理により、車両を僅かに後退させるようにモータ指令トルクTm を制限トルクTmesc以下に低下させるロック時トルク制限制御を行って第2モータMG2のロックを解除する。
【0046】
その後、上記ステップ102でモータ回転速度Nm がロック判定回転領域内ではないと判定された時点、又は、上記ステップ107でモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlck以下であると判定された時点で、ステップ108に進み、ロック時トルク制限フラグをOFF(オフ)にリセットして、ロック時トルク制限制御を停止する。
【0047】
以上説明した本実施例1では、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときにアクセル開度Accがロック予測判定開度よりも小さいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測し、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、モータ指令トルクTm を増加させる際に、ロック判定トルクTmlckとモータ指令トルクTm との偏差が小さくなるほど(つまりモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckに近付くほど)、モータ指令トルクTm の演算周期当たりの変化量ΔTm (上昇勾配)を小さくして、できるだけモータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に維持するように制御するロック予測時トルク抑制制御を実行するようにしたので、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内で且つモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きくなることを防止して、ロック時トルク制限制御が行われる頻度を少なくすることができる。これにより、ロック時トルク制限制御が何回も繰り返されることを未然に防止することができ、運転者の意に反して車両の前進と後退が何回も繰り返されることを未然に回避することができる。
【実施例2】
【0048】
次に、図6及び図7を用いて本発明の実施例2を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
【0049】
本実施例2では、ハイブリッドECU70(又はモータECU40)によって後述する図7のモータトルク制御ルーチンを実行することで、図6に示すように、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときに路面勾配(上り坂の傾斜角度)が所定のロック予測判定勾配よりも大きいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測する。
【0050】
モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときに、第2モータMG2がロックし易くなる。また、路面勾配(上り坂の傾斜角度)が大きいと、走行抵抗が大きくなって第2モータMG2がロックし易くなる。従って、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときに路面勾配がロック予測判定勾配よりも大きいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを精度良く予測することができる。
【0051】
そして、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、前記実施例1と同じように、モータ指令トルクTm を増加させる際に、ロック判定トルクTmlckとモータ指令トルクTm との偏差が小さくなるほど、モータ指令トルクTm の演算周期当たり(単位時間当たり)の変化量ΔTm を小さくして、できるだけモータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に維持するように制御するロック予測時トルク抑制制御を実行する。
【0052】
以下、図7のモータトルク制御ルーチンの処理内容を説明する。尚、図7のルーチンは、前記実施例1で説明した図4のルーチンのステップ103の処理をステップ103aの処理に変更したものであり、これ以外の各ステップの処理は図4と同じである。
【0053】
図7に示すモータトルク制御ルーチンでは、まず、モータ指令トルクTm を目標トルクTmtagに設定した後、モータ回転速度Nm の絶対値が所定のロック判定回転速度Nmlckよりも小さいか否かによって、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内(0付近の領域内)であるか否かを判定する(ステップ101、102)。
【0054】
モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内であると判定された場合には、ステップ103aに進み、路面勾配がロック予測判定勾配よりも大きいか否かを判定する。ここで、路面勾配の検出方法は、例えば、車両に搭載された傾斜角センサや加速度センサ等の路面勾配(車両の傾斜角)に応じて出力が変化するセンサの出力信号に基づいて路面勾配を検出しても良い。或は、車両の運転状態(例えば要求動力と車速との関係)に基づいて路面勾配を推定したり、カーナビゲーションシステムの道路情報から路面勾配を取得するようにしても良い。この機能が特許請求の範囲でいう路面勾配判定手段としての役割を果たす。
【0055】
上記ステップ102でモータ回転速度Nm がロック判定回転領域内であると判定され、且つ、上記ステップ103aで路面勾配がロック予測判定勾配よりも大きいと判定された場合には、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測する。これらのステップ102、103aの処理が特許請求の範囲でいうロック予測手段としての役割を果たす。
【0056】
第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、ロック判定トルクTmlckと前回のモータ指令トルクTm.old との偏差(Tmlck−Tm.old )に応じた変化量ΔTm を算出し、目標トルクTmtagが前回のモータ指令トルクTm.old に変化量ΔTm を加算した値(Tm.old +ΔTm )よりも大きければ、今回のモータ指令トルクTm を前回の指令トルクTm.old に変化量ΔTm を加算した値(Tm.old +ΔTm )に置き換える(ステップ104〜106)。
【0057】
これにより、モータ指令トルクTm を増加させる際に、ロック判定トルクTmlckと前回のモータ指令トルクTm.old との偏差(Tmlck−Tm.old )が小さくなるほど(つまりモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckに近付くほど)、モータ指令トルクTm の演算周期当たりの変化量ΔTm (上昇勾配)を小さくして、できるだけモータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に維持するように制御するロック予測時トルク抑制制御を実行する。
【0058】
この後、モータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きいと判定されたときに、ロック解除用の制限トルクTmescを算出し、モータ指令トルクTm がロック解除用の制限トルクTmescよりも大きければ、モータ指令トルクTm を制限トルクTmescでガード処理する(ステップ107〜113)。これにより、車両を僅かに後退させるようにモータ指令トルクTm を制限トルクTmesc以下に低下させるロック時トルク制限制御を行って第2モータMG2のロックを解除する。
【0059】
以上説明した本実施例2では、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときに路面勾配がロック予測判定勾配よりも大きいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測し、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、前記実施例1と同じように、モータ指令トルクTm を増加させる際に、ロック判定トルクTmlckとモータ指令トルクTm との偏差が小さくなるほどモータ指令トルクTm の演算周期当たり(単位時間当たり)の変化量ΔTm を小さくして、できるだけモータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に維持するように制御するロック予測時トルク抑制制御を実行するようにしたので、前記実施例1とほぼ同じ効果を得ることができる。
【実施例3】
【0060】
次に、図8及び図9を用いて本発明の実施例3を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
【0061】
本実施例3では、ハイブリッドECU70(又はモータECU40)によって後述する図9のモータトルク制御ルーチンを実行することで、図8に示すように、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときにアクセル開度Accがロック予測判定開度よりも小さいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測し、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、モータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に制限するロック予測時トルク抑制制御を実行する。
【0062】
以下、図9のモータトルク制御ルーチンの処理内容を説明する。尚、図9のルーチンは、前記実施例1で説明した図4のルーチンのステップ104、105の処理をステップ104a、105aの処理に変更したものであり、これ以外の各ステップの処理は図4と同じである。
【0063】
図9に示すモータトルク制御ルーチンでは、まず、モータ指令トルクTm を目標トルクTmtagに設定した後、モータ回転速度Nm の絶対値が所定のロック判定回転速度Nmlckよりも小さいか否かによって、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内(0付近の領域内)であるか否かを判定する(ステップ101、102)。
【0064】
モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内であると判定された場合には、ステップ103に進み、アクセル開度Accがロック予測判定開度よりも小さい(アクセル踏み込み量が所定値よりも小さい)か否かを判定する。
【0065】
上記ステップ102でモータ回転速度Nm がロック判定回転領域内であると判定され、且つ、上記ステップ103でアクセル開度Accがロック予測判定開度よりも小さいと判定された場合には、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測する。
【0066】
第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、ステップ104aに進み、モータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きいか否かを判定し、モータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きいと判定されれば、ステップ105aに進み、モータ指令トルクTm を制限トルクロック判定トルクTmlckでガード処理してTm =Tmlckとする。
【0067】
これらのステップ104a、105aの処理により、モータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に制限するロック予測時トルク抑制制御が実行され、特許請求の範囲でいうロック予測時トルク抑制制御手段としての役割が果たされる。
【0068】
以上説明した本実施例3では、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときにアクセル開度Accがロック予測判定開度よりも小さいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測し、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合は、モータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に制限するロック予測時トルク抑制制御を実行するようにしたので、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内で且つモータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きくなることを防止して、ロック時トルク制限制御が行われないようにすることができる。これにより、ロック時トルク制限制御が何回も繰り返されることを確実に防止することができ、運転者の意に反して車両の前進と後退が何回も繰り返されることを未然に回避することができる。
【実施例4】
【0069】
次に、図10及び図11を用いて本発明の実施例4を説明する。但し、前記実施例1と実質的に同一部分については説明を省略又は簡略化し、主として前記実施例1と異なる部分について説明する。
【0070】
本実施例4では、ハイブリッドECU70(又はモータECU40)によって後述する図11のモータトルク制御ルーチンを実行することで、図10に示すように、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときに路面勾配がロック予測判定勾配よりも大きいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測し、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、前記実施例3と同じように、モータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に制限するロック予測時トルク抑制制御を実行する。
【0071】
以下、図11のモータトルク制御ルーチンの処理内容を説明する。尚、図11のルーチンは、前記実施例1で説明した図4のルーチンのステップ103〜105の処理をステップ103a〜105aの処理に変更したものであり、これ以外の各ステップの処理は図4と同じである。
【0072】
図11に示すモータトルク制御ルーチンでは、まず、モータ指令トルクTm を目標トルクTmtagに設定した後、モータ回転速度Nm の絶対値が所定のロック判定回転速度Nmlckよりも小さいか否かによって、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内(0付近の領域内)であるか否かを判定する(ステップ101、102)。
【0073】
モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内であると判定された場合には、ステップ103aに進み、路面勾配(上り坂の傾斜角度)がロック予測判定勾配よりも大きいか否かを判定する。
【0074】
上記ステップ102でモータ回転速度Nm がロック判定回転領域内であると判定され、且つ、上記ステップ103aで路面勾配がロック予測判定勾配よりも大きいと判定された場合には、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測する。
【0075】
第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、ステップ104aに進み、モータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きいか否かを判定し、モータ指令トルクTm がロック判定トルクTmlckよりも大きいと判定されれば、ステップ105aに進み、モータ指令トルクTm を制限トルクロック判定トルクTmlckでガード処理してTm =Tmlckとする。これにより、モータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に制限するロック予測時トルク抑制制御を実行する。
【0076】
以上説明した本実施例4では、モータ回転速度Nm がロック判定回転領域内のときに路面勾配がロック予測判定勾配よりも大きいか否かによって、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測し、第2モータMG2の回転がロックする可能性があると予測された場合には、前記実施例3と同じように、モータ指令トルクTm をロック判定トルクTmlck以下に制限するロック予測時トルク抑制制御を実行するようにしたので、前記実施例3とほぼ同じ効果を得ることができる。
【0077】
尚、上記実施例1,3では、モータ回転速度とアクセル開度とに基づいて第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを予測し、上記実施例2,4では、モータ回転速度と路面勾配とに基づいて第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを予測するようにしたが、第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを予測する方法は、これに限定されず、例えば、モータ回転速度とアクセル開度と路面勾配とに基づいて第2モータMG2の回転がロックする可能性があるか否かを予測するようにしても良い。
【0078】
また、上記実施例1,3では、運転者の走行意図として、アクセル開度を用いるようにしたが、これに限定されず、シフト位置やブレーキ踏み込み量、或は、アクセル開度とシフト位置とブレーキ踏み込み量のうちの2つ以上を用いるようにしても良い。
【0079】
その他、本発明は、車両の駆動源として内燃機関と交流モータを併用するハイブリッド車に限定されず、交流モータのみを駆動源とする電気自動車にも適用して実施できる等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施例1におけるハイブリッド車のシステム構成を概略的に示す図である。
【図2】比較例のモータトルク制御の実行例を説明するタイムチャートである。
【図3】実施例1のモータトルク制御の実行例を説明するタイムチャートである。
【図4】実施例1のモータトルク制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】トルク変化量ΔTm のマップの一例を概念的に示す図である。
【図6】実施例2のモータトルク制御の実行例を説明するタイムチャートである。
【図7】実施例2のモータトルク制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施例3のモータトルク制御の実行例を説明するタイムチャートである。
【図9】実施例3のモータトルク制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】実施例4のモータトルク制御の実行例を説明するタイムチャートである。
【図11】実施例4のモータトルク制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0081】
22…エンジン、24…エンジンECU、30…動力分割機構、40…モータECU、41,42…インバータ、43,44…回転位置検出センサ、50…バッテリ、52…バッテリECU、70…ハイブリッドECU(ロック予測手段,ロック予測時トルク抑制制御手段,モータ回転速度判定手段,路面勾配判定手段)、84…アクセル開度センサ(走行意図検出手段)、MG1…第1モータ(交流モータ)、MG2…第2モータ(交流モータ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の少なくとも1つの動力源として搭載したモータの回転がロックして該モータのトルクが所定のロック判定トルクよりも大きくなったときに前記モータのトルクを制限する機能を備えた自動車のモータ制御装置において、
前記モータの回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測するロック予測手段と、
前記ロック予測手段により前記モータの回転がロックする可能性があると予測されたときに前記モータのトルクを前記ロック判定トルク以下に維持するように制御するロック予測時トルク抑制制御手段と
を備えていることを特徴とする自動車のモータ制御装置。
【請求項2】
運転者の走行意図を検出する走行意図検出手段を備え、
前記ロック予測手段は、前記走行意図検出手段で検出した運転者の走行意図に基づいて前記モータの回転がロックする可能性があるか否かを予測することを特徴とする請求項1に記載の自動車のモータ制御装置。
【請求項3】
路面勾配を検出又は推定する路面勾配判定手段を備え、
前記ロック予測手段は、前記路面勾配判定手段で検出又は推定した路面勾配に基づいて前記モータの回転がロックする可能性があるか否かを予測することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車のモータ制御装置。
【請求項4】
前記モータの回転速度を検出又は予測するモータ回転速度判定手段を備え、
前記ロック予測手段は、前記モータ回転速度判定手段で検出又は予測したモータの回転速度も考慮して前記モータの回転がロックする可能性があるか否かを予測することを特徴とする請求項2又は3に記載の自動車のモータ制御装置。
【請求項5】
前記ロック予測時トルク抑制制御手段は、前記ロック判定トルクと前記モータのトルクとの偏差に応じて前記モータのトルクの変化量を設定することで、前記モータのトルクを前記ロック判定トルク以下に維持するように制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の自動車のモータ制御装置。
【請求項1】
車両の少なくとも1つの動力源として搭載したモータの回転がロックして該モータのトルクが所定のロック判定トルクよりも大きくなったときに前記モータのトルクを制限する機能を備えた自動車のモータ制御装置において、
前記モータの回転がロックする可能性があるか否かを事前に予測するロック予測手段と、
前記ロック予測手段により前記モータの回転がロックする可能性があると予測されたときに前記モータのトルクを前記ロック判定トルク以下に維持するように制御するロック予測時トルク抑制制御手段と
を備えていることを特徴とする自動車のモータ制御装置。
【請求項2】
運転者の走行意図を検出する走行意図検出手段を備え、
前記ロック予測手段は、前記走行意図検出手段で検出した運転者の走行意図に基づいて前記モータの回転がロックする可能性があるか否かを予測することを特徴とする請求項1に記載の自動車のモータ制御装置。
【請求項3】
路面勾配を検出又は推定する路面勾配判定手段を備え、
前記ロック予測手段は、前記路面勾配判定手段で検出又は推定した路面勾配に基づいて前記モータの回転がロックする可能性があるか否かを予測することを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車のモータ制御装置。
【請求項4】
前記モータの回転速度を検出又は予測するモータ回転速度判定手段を備え、
前記ロック予測手段は、前記モータ回転速度判定手段で検出又は予測したモータの回転速度も考慮して前記モータの回転がロックする可能性があるか否かを予測することを特徴とする請求項2又は3に記載の自動車のモータ制御装置。
【請求項5】
前記ロック予測時トルク抑制制御手段は、前記ロック判定トルクと前記モータのトルクとの偏差に応じて前記モータのトルクの変化量を設定することで、前記モータのトルクを前記ロック判定トルク以下に維持するように制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の自動車のモータ制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−28968(P2010−28968A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186564(P2008−186564)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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