説明

自律移動装置

【課題】 特定の人のそばについて自律的に移動する自律移動装置において、その人の安全を確保することが可能な自律移動装置を提供する。
【解決手段】 自律移動装置1は、カメラ10および通信機12によって取得される情報から、主人およびその周囲環境を認識するとともに、認識された周囲環境に基づいて主人の危険度を判断する。そして、主人が危険であると判断された場合には、例えばスピーカ30から警告音を発したり、バックライト32を点灯させたり、または車輪36を駆動して自律移動装置1を移動させることによって主人の危険度を低減する。一方、主人の危険度が低いと判断された場合には、自律移動装置1は、主人に追従するように、または主人を誘導するように自律的に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、目印を装着した人を認識して追従する自律移動型ロボットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の自律移動型ロボットは、搭載されたカメラで人が装着している目印を撮影し、撮影された画像を画像処理することによってその人との距離や方向を演算する。そして、その演算結果に基づき、適正な間隔を保持しつつその人に追従して移動する。
【特許文献1】特開2004−174692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記自律移動型ロボットによれば、人に追従して移動し、重い荷物などを運ぶことができる。しかしながら、その人の安全を確保するということに関してはなんら考慮されていない。
【0004】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、特定の人のそばについて自律的に移動する自律移動装置において、その人の安全を確保することが可能な自律移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る自律移動装置は、特定の人のそばについて自律的に移動する自律移動装置において、特定の人およびその周囲の環境を認識する周囲環境認識手段と、周囲環境認識手段により認識された周囲環境に基づいて、特定の人の危険度を判断する危険度判断手段と、危険度判断手段により特定の人が危険であると判断された場合に、特定の人の危険度を低減させる危険回避手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る自律移動装置によれば、特定の人のそばについて自律的に移動しつつ、周囲環境認識手段が認識した周囲環境から特定の人の危険度を判断し、その人が危険であると判断した場合には、危険回避手段がその人の危険度を低減するので、特定の人のそばについて自律的に移動するとともに、その人の安全を確保することが可能となる。
【0007】
本発明に係る自律移動装置では、上記周囲環境認識手段が、周囲にある物体を認識し、上記危険度判断手段が、周囲環境認識手段により認識された物体と、特定の人との距離に基づいて危険度を判断することが好ましい。
【0008】
このようにすれば、特定の人と物体との接近度合いに応じて危険度を判断することができる。そのため、例えば、駐車車両などの物体に接触しそうな場合や歩道の車道側の端を歩いているときなどに危険であると判断することが可能となる。
【0009】
また、上記周囲環境認識手段が物体の属性を認識し、上記危険度判断手段が物体の属性をさらに考慮して危険度を判断するようにすれば、例えば、物体の種類、重量や材質などに関する属性をさらに考慮して危険度を判断することができるので、正確に危険度を判断することが可能となる。
【0010】
また、上記周囲環境認識手段が特定の人の速度および/または物体の速度を認識し、上記危険度判断手段が特定の人の速度および/または物体の速度をさらに考慮して危険度を判断するようにすれば、物体と接触または衝突したときの衝撃をさらに考慮して危険度を判断することができるので、より正確に危険度を判断することが可能となる。
【0011】
また、上記周囲環境認識手段が、周囲にある交通信号機の表示を認識し、上記危険度判断手段が、周囲環境認識手段により認識された交通信号機の表示に基づいて危険度を判断するようにすれば、例えば、その人が赤信号の横断歩道をわたろうとしたような場合などに危険であると判断することが可能となる。
【0012】
さらに、上記周囲環境認識手段が、特定の人の移動状態および周囲を移動している移動物体の移動状態を認識し、上記危険度判断手段が、周囲環境認識手段により認識された特定の人の移動状態および移動物体の移動状態に基づいて危険度を判断するようにすれば、例えば、特定の人と移動物体とが衝突する可能性を予測して危険度を判断することが可能となる。
【0013】
本発明に係る自律移動装置では、特定の人が危険であると判断された場合に、上記危険回避手段が、危険度が高いと判断された環境要素と特定の人との距離を拡げるように自律移動装置を移動させることが好ましい。
【0014】
この場合、例えば、危険度が高い環境要素と保護すべき人との間に自律移動装置を移動させ、危険度が高い環境要素と保護すべき人との間隔を拡げることにより危険を回避することが可能となる。
【0015】
また、特定の人が危険であると判断された場合に、上記危険回避手段が、危険度が高いと判断された環境要素の方向へ特定の人が移動することを妨げる位置に自律移動装置を移動させるようにすれば、保護すべき人が危険度の高い環境要素へ接近することが阻止され、危険を回避することが可能となる。
【0016】
さらに、特定の人が危険であると判断された場合に、上記危険回避手段が、警告音を発するか、または自律移動装置の色を変化させることにより、保護すべき人に対して注意を喚起することが可能となる。
【0017】
一方、特定の人が危険であると判断された場合に、上記危険回避手段が、自律移動装置の形態を変化させるようにすれば、保護すべき人に対して注意を喚起するとともに、その人を直接的に保護することが可能となる。
【0018】
また、特定の人が危険であると判断された場合に、危険を報知するための表示を行うことにより、保護すべき人に対して、注意を喚起したりすることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、認識された周囲環境から特定の人の危険度を判断し、その人が危険であると判断された場合に、その人の危険度を低減させる構成としたので、特定の人のそばについて自律的に移動するとともに、その人の安全を確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0021】
まず、図1を用いて、実施形態に係る自律移動装置1の構成について説明する。図1は、自律移動装置1の構成を示すブロック図である。自律移動装置1は、この自律移動装置1を使用する特定の人(以下「主人」という)のそばについて、主人に追従するように、または主人を誘導するように自律的に移動する。また、自律移動装置1は、カメラ10および通信機12などによって取得される情報から、主人およびその周囲環境を認識するとともに、認識された周囲環境に基づいて主人の危険度を判断する。そして、主人が危険であると判断された場合には、例えばスピーカ30から警告音を発したり、バックライト32を点灯させたり、または車輪36を駆動して自律移動装置1を移動させることにより主人の危険度を低減する。
【0022】
カメラ10は、主人やその周囲環境の画像を取得する一対のCCDカメラと、取得した画像を画像処理することによって主人およびその周囲の障害物や道路標識など(周囲環境)を認識する画像処理部とを有している。この画像処理部では、一対のCCDカメラで取得した画像からエッジ抽出やパターン認識処理などによって主人やその周囲の障害物や道路標識などを抽出して認識する。また、左右の取得画像中における主人などの対象物位置の違いを基にして三角測量方式により対象物との距離および横変位を求め、前フレームで求めた距離に対する変化量から相対速度を求める。カメラ10と後述する電子制御装置(以下「ECU」という)20とは通信回線で接続されており、カメラ10により取得された情報は、この通信回線を介してECU20に伝送される。
【0023】
通信機12は、送信機13および受信機14を含んで構成され、例えば、自律移動装置1の周囲にある他の自律移動装置、車両、および交差点に設置されている信号機や道路に設置されているカメラ、レーダなどのインフラストラクチャとの間で情報を送受信するものである。送信機13は、例えば、主人の位置・移動方向・移動速度などの情報を他の自律移動装置や周辺を走行する車両などに送信する。一方、受信機14は、例えば、他の自律移動装置から送信された他の歩行者の位置・移動方向・移動速度などの情報、周辺を走行する車両から送信された走行車両の位置・移動方向・移動速度・操作状態などの情報、周辺に停車されている車両から送信された停車車両の位置などの情報、および、上述したインフラストラクチャから送信された信号機の点灯状態や交通状態などの情報を受信する。なお、通信機12は、例えば半径約100mの範囲で情報の送受信を行うことが可能に設定されている。
【0024】
通信機12とECU20とは、通信回線で接続されることにより、相互に情報の交換が可能となるように構成されている。ECU20で生成された送信情報はこの通信回線を介してECU20から送信機13に伝送される。一方、受信機14によって受信された各種の周囲環境情報は、この通信回線を介してECU20に伝送される。
【0025】
このように、本実施形態では、カメラ10および通信機12によって主人およびその周囲の環境が認識される。より詳細には、例えば、主人の位置・移動方向・移動速度、他の歩行者、自転車や自動車などの位置・形状・移動方向・移動速度・操作状態、停車車両、電柱や落下物などの障害物の位置・形状、および、信号機の点灯状態や道路標識などの交通状態などの周囲環境が認識される。また、例えば、物体の種類、重量や材質などに関する属性も認識される。ここで、物体の種類に関する属性としては、例えば、大型車、小型車、二輪車、自転車などの分類が挙げられる。重量に関する属性としては、重いか軽いか、また、材質に関する属性としては、表面が軟らかいか硬いかなどが挙げられる。すなわち、カメラ10および通信機12は特許請求の範囲に記載の周囲環境認識手段として機能する。
【0026】
ここで、主人であるか否かの認識は、例えば、主人−自律移動装置1間通信の通信情報に主人であることを示すID情報を乗せることにより、または、撮像された人物が着ている衣服の形状や模様が予め学習させておいた主人のものと一致するか否かを判断することにより行うことができる。さらに、指紋や虹彩による認証技術などを組み合わせて用いてもよい。
【0027】
ECU20は、演算を行うマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM及び12Vバッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM等により構成されている。
【0028】
そして、上記構成によって、ECU20の内部には、カメラ10および通信機12により認識された周囲環境に基づいて主人の危険度を判断する危険度判断部22、危険度判断部22により主人が危険であると判断されたときに最適な危険回避動作を決定する危険回避部24、および危険回避部24により決定された危険回避動作に基づいてスピーカ30、バックライト32、電動モータ34、プロジェクタ42やディスプレイ44などを駆動するアクチュエータ制御部26が構築されている。すなわち、ECU20を構成する危険度判断部22は特許請求の範囲に記載の危険度判断手段として機能する。また、危険回避部24、アクチュエータ制御部26、およびスピーカ30、バックライト32、電動モータ34、プロジェクタ42やディスプレイ44などの各アクチュエータは、特許請求の範囲に記載の危険回避手段として機能する。なお、危険回避動作の詳細については後述する。
【0029】
スピーカ30はECU20に接続されており、アクチュエータ制御部26から出力される制御信号に応じて、警告音や音声情報などを発することによって主人に注意を促す。バックライト32もECU20に接続されており、アクチュエータ制御部26により駆動され、例えば危険度に応じた色の光を発することによって主人に注意を促す。また、電動モータ34もECU20に接続されており、アクチュエータ制御部26により駆動され、電動モータ34に取り付けられている車輪36を回転させることによって自律移動装置1を移動させる。さらに、ECU20には、プロジェクタ42やディスプレイ44が接続されており、危険情報や危険回避情報などの各種情報を投影したり表示したりすることにより、主人に注意を促す。
【0030】
次に、図2〜図4を併せて参照して自律移動装置1の動作について説明する。図2は危険回避処理の処理手順を示すフローチャートである。図3は危険度の判断方法を説明するための図であり、図4は危険回避動作の例を示す図である。図2のフローチャートに示される危険回避処理は、主としてECU20によって行われるものであり、自律移動装置1の電源がオンされてからオフされるまでの間、所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0031】
ステップS100では、カメラ10および通信機12により取得された主人およびその周囲環境の情報が読み込まれ、続くステップS102において、読み込まれた周囲環境情報に基づいて、主人やその周囲環境が認識される。より詳細には、例えば、主人の位置・移動方向・移動速度、他の歩行者、自転車や自動車などの位置・形状・移動方向・移動速度・操作状態、停車車両、電柱や落下物などの障害物の位置・形状、および、信号機の点灯状態や道路標識などの交通状態などの周囲環境が認識される。また、例えば、物体の種類、重量や材質などに関する属性も認識される。
【0032】
次にステップS104では、認識された主人の状態および周囲環境が総合的に判断され、現在の主人の危険度が判断されるとともに、将来的な主人の危険度が予測される。ここで、図3に示された状況を例にして、危険度の判断方法および予測方法について説明する。
【0033】
図3では、主人100が図面上の上側に向かって歩道を歩いている状況が示されている。主人100の後方では自律移動装置1が主人100に追従して移動している。主人100の左前方では図面上の下側に向かって歩行者102が歩いている。また、主人100の右前方では図面上の下側に向かって自転車104が走っている。主人100の右前方、かつ自転車104の進行方向左側には障害物106がある。さらに、主人100の右後方では車両108が図面上の上側に向かって車道を走行している。
【0034】
上述したような状況において、主人100の位置情報と、歩行者102、自転車104、障害物106または車両108の位置情報とから双方の間の距離が求められ、例えば、接触や衝突のおそれがある程度に双方が接近しているか否かを基準として現在の主人100の危険度が求められる。なお、その際に、接近している物体の種類、重量や材質などに関する属性や物体の速度をさらに考慮して危険度を予測することが好ましい。
【0035】
また、主人100、歩行者102、自転車104および車両108それぞれの移動情報すなわち移動方向や移動速度などを考慮し、所定時間後(例えば5〜10秒後)の主人100、歩行者102や自転車104などの位置が予測され、その予測位置に基づき、所定時間後に接触や衝突のおそれがある程度に双方が接近するか否かを基準として主人100の危険度が予測される。なお、その際に、衝突する可能性がある物体の推定質量、速度や大きさなどをさらに考慮して危険度を予測してもよい。
【0036】
また、危険度を予測する際には、歩行者102、自転車104、障害物106および車両108それぞれについて、所定時間後の予測位置に応じて設定される領域と、主人100の所定時間後の予測位置に応じて設定される領域とが重なる領域が危険領域として認識される。なお、危険領域を設定する際に、物体の種類、重量や材質などに関する属性から接触したときの衝撃が大きいと予測される場合には危険領域を広く設定することができる。また、接近している速度から主人が危険回避動作を取りやすいか否かを判断し、危険回避動作を取りやすいと判断される場合には、危険領域を狭くすることができる。図3の例では、自転車104、障害物106および車両108との関係において領域DZ1が危険領域と認識され、歩行者102との関係において領域DZ2が危険領域と認識される。
【0037】
図2に戻って説明を続けると、ステップS106では、ステップS104で求められた危険度に基づいて、危険回避動作を実行する必要があるか否かについての判断が行われる。ここで、主人の危険度が所定値よりも低く、危険回避動作を実行する必要がないと判断された場合には、ステップS108に処理が移行する。一方、主人の危険度が上記所定値よりも高く、危険回避動作を実行する必要があると判断されたときには、ステップS110に処理が移行する。
【0038】
ステップS108では、主人の危険度が低く、危険回避動作を行う必要がないため、主人に追従して移動するように電動モータ34が駆動される。ただし、目的地が予め設定されているような場合には、目的地まで主人を誘導して移動するように電動モータ34が駆動される。その後、一旦本処理から抜ける。
【0039】
危険回避動作を実行する必要があると判断された場合には、ステップS110において、認識された主人や周囲環境の状態、および予測された主人や周囲環境の状態が総合的に判断され、事故などを防止し主人を守るための最適な危険回避動作が決定される。
【0040】
ここで、危険回避動作としては、例えば、スピーカ30を駆動して警告音や音声情報などを発することにより主人に注意を促す動作や、バックライト32を点灯または点滅させ、危険度に応じた色(例えば、黄色や赤色など)の光を発することにより主人に注意を促す動作が挙げられる。また、電動モータ34を駆動し、主人と危険度が高い物体(例えば、自転車、走行車両、障害物などの環境要素)との間に自律移動装置1を移動させ、主人と危険度が高い物体との間隔を拡げることにより危険を回避する動作や、危険度が高い物体の方へ主人が移動することを妨げる位置に自律移動装置1を移動させることにより危険を回避する動作が挙げられる。
【0041】
さらに、危険回避動作としては、図8,9に示されるように、プロジェクタ42を駆動して路面上に危険情報や危険回避情報などの各種情報を投影することにより、主人の注意を喚起する動作が挙げられる。また、図10,11に示されるように、上記各種情報をディスプレイ44に表示することにより、主人の注意を喚起する動作が挙げられる。なお、危険度のレベルに応じて危険回避動作がより効果を発揮できるように、上述した危険回避動作は単独で、または組み合わされて適用される。
【0042】
ステップS112では、ステップS110で決定された危険回避動作が実行される。すなわち、スピーカ30を駆動して警告音や音声情報などを発することにより主人に注意を促したり、バックライト32を危険度に応じた色に点灯または点滅させることにより主人に注意を促す。また、電動モータ34を駆動して自律移動装置1を主人と危険度が高い物体との間や主人の前に移動させることにより、主人の安全を確保する。さらに、プロジェクタ42やディスプレイ44を駆動して、危険情報や危険回避情報などの各種情報を投影したり表示したりすることにより主人の注意を喚起する。その後、一旦本処理から抜ける。
【0043】
ここで、図3に示される例では、自律移動装置1が一点鎖線で示されるように危険度が高い領域ZD1に移動することにより、すなわち、衝突する可能性が高い自転車104などから主人100を離すように移動することにより、主人100の安全を確保する。
【0044】
また、図4を参照して危険回避動作の他の例を説明する。例えば、図4に示されるように、主人110が赤信号を無視して横断歩道を渡ろうとしているときに、右側方から車両112が走ってきたような場合には、自律移動装置1が主人110の前に移動して主人110を止めることにより、主人110の安全を確保する。さらに、子供114が歩道の端を歩いているときに、後方から車両116が走ってきたような場合には、自律移動装置1が車道と子供114との間に移動して車道との距離を拡げることにより、子供114の安全を確保する。なお、上述したように、自律移動装置1を移動させるとともに、警告音を発したり、発光したり、危険情報を投影したりしてもよい。その場合、主人のみでなく、車両の運転手に対しても注意を促がすことができる。
【0045】
本実施形態によれば、カメラ10および通信機12により認識された主人の状態および周囲環境が総合的に判断され、現在の主人の危険度が判断されるとともに、将来的な主人の危険度が予測される。より詳細には、接触や衝突のおそれがある程度に接近しているか否かを基準として現在の主人の危険度が求められる。また、所定時間後の主人や移動物体の予測位置に基づき、所定時間後に接触や衝突のおそれがある程度に接近するか否かを基準として主人の危険度が予測される。そのため、主人の現在の危険度および将来の危険度を適切に判断することが可能となる。なお、その際に、物体の種類、重量や材質などに関する属性などがさらに考慮されて危険度が判断されるため、より正確に危険度を判断することが可能である。
【0046】
また、本実施形態によれば、危険回避動作を実行する必要があると判断された場合に、認識された主人や周囲環境の状態、および予測された主人や周囲環境の状態が総合的に判断され、事故などを防止し主人を守るための最適な危険回避動作が決定され実行される。より詳細には、スピーカ30を駆動して警告音や音声情報などを発することにより主人に注意を促す動作や、バックライト32を点灯または点滅させることにより主人に注意を促す動作が実行される。また、プロジェクタ42やディスプレイ44を駆動して、危険情報や危険回避情報などの各種情報を投影したり表示したりすることにより主人の注意を喚起する動作が実行される。さらに、電動モータ34を駆動し、主人と危険度が高い物体との間に自律移動装置1を移動させて、主人と危険度が高い物体との間隔を拡げたり、危険度が高い物体の方へ主人が移動することを妨げる位置に自律移動装置1を移動させる。その結果、主人の安全を確保することが可能となる。
【0047】
次に、図5を用いて、第2実施形態に係る自律移動装置2の構成について説明する。図5は、自律移動装置2の構成を示すブロック図である。なお、図5において第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
【0048】
自律移動装置2は、アーム38並びにこのアーム38を駆動するアクチュエータ39、およびエアバッグ40をさらに備えている点で上述した第1実施形態と異なる。その他の構成については、第1実施形態と同一または同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0049】
アクチュエータ39は、ECU20と接続されている。そして、例えば、主人が危険度が高いと判断された物体(例えば、自転車、走行車両、障害物など)の方向へ移動しようとしている場合に、ECU20からの制御信号に基づいてアーム38を駆動し、危険度が高い物体の方へ主人が移動することを妨げる。
【0050】
エアバッグ40は、ECU20に接続されており、主人が、例えば自転車や走行車両などと衝突した場合、またはこれらとの衝突が避けられない場合に、ECU20からの駆動信号によって展開し、衝突時の衝撃を緩和するものである。すなわち、アーム38並びにこのアーム38を駆動するアクチュエータ39、およびエアバッグ40も特許請求の範囲に記載の危険回避手段として機能する。
【0051】
次に、自律移動装置2の動作について説明する。自律移動装置2における危険回避処理は次の点で上述した第1実施形態の処理と異なる。すなわち、第1実施形態では上述したステップS110,S112において、スピーカ30からの音による警告、バックライト32の点灯・点滅、プロジェクタ42やディスプレイ44による各種情報の投影や表示、および/または電動モータ34による移動が行われる。
【0052】
一方、自律移動装置2によれば、これらの危険回避動作に加え、さらに自律移動装置2の形態を変化させることによる危険回避動作が行われる。すなわち図6に示されるように、アクチュエータ39を制御してアーム38を駆動することにより危険度が高い物体の方へ主人が移動することを妨げたり、また、図7に示されるように、エアバッグ40を展開して衝突時の衝撃を緩和するなどの危険回避動作が行われる。なお、危険度のレベルに応じ、上述した危険回避動作は単独で、または組み合わされて実行される。その他の処理ステップについては、上述した第1実施形態による処理と同一または同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0053】
本実施形態によれば、主人が危険度が高いと判断された物体の方向へ移動しようとしている場合に、アクチュエータ39を制御してアーム38を駆動し、危険度が高い物体の方へ主人が移動することを妨げることにより、主人の安全を確保することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態によれば、主人が、例えば自転車や走行車両などと衝突した場合、またはこれらとの衝突が避けられない場合に、エアバッグ40を展開することにより、衝突時の衝撃を緩和することが可能となる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、主人やその周囲環境を認識する手段として、上述したカメラ10や通信機12に加え、レーザレーダやミリ波レーダなどのセンサ類を用いてもよい。
【0056】
上記実施形態では、自律移動装置1,2の移動手段およびその駆動力源として車輪36と電動モータ34を用いたが、移動手段およびその駆動力源は、車輪36や電動モータ34に限られることなく、例えばキャタピラや小型のエンジンなどを用いることもできる。また、主人の危険度の求め方も、上記実施形態には限られない。
【0057】
また、バックライト32の数や配置を変えることにより、自律移動装置1,2を全体的に光らせたり、または部分的に光らせたりしてもよい。さらに、主人の危険度に応じてバックライト32の色や点滅パターンを変化させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1実施形態に係る自律移動装置の構成を示すブロック図である。
【図2】危険回避処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】危険度の判断方法を説明するための図である。
【図4】危険回避動作の例を示す図である。
【図5】第2実施形態に係る自律移動装置の構成を示すブロック図である。
【図6】第2実施形態に係る自律移動装置の形態変化の例を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る自律移動装置の形態変化の他の例を示す図である。
【図8】プロジェクタを用いた危険回避動作の一例を示す図である。
【図9】プロジェクタを用いた危険回避動作の他の例を示す図である。
【図10】ディスプレイ表示を用いた危険回避動作の一例を示す図である。
【図11】ディスプレイ表示を用いた危険回避動作の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1,2…自律移動装置、10…カメラ、12…通信機、20…ECU、22…危険度判断部、24…危険回避部、24…アクチュエータ制御部、30…スピーカ、32…バックライト、34…電動モータ、36…車輪、38…アーム、39…アクチュエータ、40…エアバッグ、42…プロジェクタ、44…ディスプレイ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の人のそばについて自律的に移動する自律移動装置において、
前記特定の人、およびその周囲の環境を認識する周囲環境認識手段と、
前記周囲環境認識手段により認識された周囲環境に基づいて、前記特定の人の危険度を判断する危険度判断手段と、
前記危険度判断手段により前記特定の人が危険であると判断された場合に、前記特定の人の危険度を低減させる危険回避手段と、を備えることを特徴とする自律移動装置。
【請求項2】
前記周囲環境認識手段は、周囲にある物体を認識し、
前記危険度判断手段は、前記周囲環境認識手段により認識された物体と、前記特定の人との距離に基づいて危険度を判断することを特徴とする請求項1に記載の自律移動装置。
【請求項3】
前記周囲環境認識手段は、前記物体の属性を認識し、
前記危険度判断手段は、前記物体の属性をさらに考慮して危険度を判断することを特徴とする請求項2に記載の自律移動装置。
【請求項4】
前記周囲環境認識手段は、前記特定の人の速度および/または前記物体の速度を認識し、
前記危険度判断手段は、前記特定の人の速度および/または前記物体の速度をさらに考慮して危険度を判断することを特徴とする請求項2または3に記載の自律移動装置。
【請求項5】
前記周囲環境認識手段は、周囲にある交通信号機の表示を認識し、
前記危険度判断手段は、前記周囲環境認識手段により認識された交通信号機の表示に基づいて危険度を判断することを特徴とする請求項1に記載の自律移動装置。
【請求項6】
前記周囲環境認識手段は、前記特定の人の移動状態、および周囲を移動している移動物体の移動状態を認識し、
前記危険度判断手段は、前記周囲環境認識手段により認識された前記特定の人の移動状態および前記移動物体の移動状態に基づいて危険度を判断することを特徴とする請求項1に記載の自律移動装置。
【請求項7】
前記危険回避手段は、前記特定の人が危険であると判断された場合に、危険度が高いと判断された環境要素と前記特定の人との距離を拡げるように前記自律移動装置を移動させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の自律移動装置。
【請求項8】
前記危険回避手段は、前記特定の人が危険であると判断された場合に、危険度が高いと判断された環境要素の方向へ前記特定の人が移動することを妨げる位置に前記自律移動装置を移動させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の自律移動装置。
【請求項9】
前記危険回避手段は、前記特定の人が危険であると判断された場合に、警告音を発することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の自律移動装置。
【請求項10】
前記危険回避手段は、前記特定の人が危険であると判断された場合に、前記自律移動装置の色を変化させることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の自律移動装置。
【請求項11】
前記危険回避手段は、前記特定の人が危険であると判断された場合に、前記自律移動装置の形態を変化させることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の自律移動装置。
【請求項12】
前記危険回避手段は、前記特定の人が危険であると判断された場合に、危険を報知するための表示を行うことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の自律移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−102488(P2007−102488A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291520(P2005−291520)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】