説明

薄膜トランジスタおよびその製造方法

【課題】オフ電流および漏れ電流が抑制された薄膜トランジスタ、および前記薄膜トランジスタを歩留り良く製造することのできる薄膜トランジスタの製造方法を提供する。
【解決手段】ゲート電極12上にゲート絶縁膜12を介して順次形成されるSi(i)膜13およびSi(n)膜14上に金属膜を形成し、フォトレジストパターン22をマスクとしてエッチングし、ソース電極15およびドレイン電極16を形成する。酸素を含むプラズマで処理して、フォトレジストパターン22の側面を後退させるとともに、ソース電極15およびドレイン電極16の側面および露出した上面にAl酸化皮膜17を形成する。残存するフォトレジストパターン22およびAl酸化皮膜17をマスクとして、チャネル部18のSi(n)膜14およびSi(i)膜13の表面の一部をエッチングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイなどに用いられる薄膜トランジスタおよびその製造方法に関し、より詳細には、ソース電極およびドレイン電極として、アルミニウム合金の単層膜を有するボトムゲート構造の薄膜トランジスタおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイに用いられる薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;略称:TFT)には、低コスト化が要求されており、そのために工程の簡略化が必要となっている。たとえば特許文献1には、エッチングを用いてバックチャネルを形成するボトムゲート構造の薄膜トランジスタを、5回の写真製版工程で製造する電気光学素子の製法が開示されている。「バックチャネル」とは、チャネル部におけるソース電極とドレイン電極とに挟まれた露出部をいう。
【0003】
特許文献1に開示されている電気光学素子の製法では、3回目の写真製版工程のフォトレジストパターンをマスクとして、ソース電極およびドレイン電極のウエットエッチングと、その下層のn型シリコン層をドライエッチングするバックチャネルエッチングとを連続して行ってチャネル部を形成する。しかし、ソース電極およびドレイン電極のウエットエッチングと、ドライエッチングによるバックチャネルエッチングとを連続して行うと、n型シリコン層が、ソース電極端およびドレイン電極端から、チャネル部におけるキャリアの移動方向であるチャネル方向に延在した形状になってしまう。換言すれば、n型シリコン層が、ソース電極端およびドレイン電極端よりもチャネル部の内側に突出した形状になってしまう。
【0004】
このようにn型シリコン層がソース電極端およびドレイン電極端よりもチャネル部の内側に突出した形状になると、電極端部に電界が集中し、高電圧領域のオフ電流が増大する。このようなTFTを液晶ディスプレイの画素のスイッチング素子として用いた場合には、電荷保持特性が低下し、表示品位上の重要な要素であるコントラストの低下およびクロストークが増大するという問題がある。
【0005】
薄膜トランジスタにおけるオフ電流を低減するための技術としては、たとえば特許文献2に、ソース電極およびドレイン電極のチャネル側のエッジ部を内側に延ばし、チャネル上に庇を形成することが開示されている。この庇を形成する方法として、特許文献2には、異方性エッチングによってソース電極およびドレイン電極を形成した後に、その上部に形成していたパターニングのためのフォトレジストを除去し、バックチャネルエッチング工程において、ソース電極およびドレイン電極のパターンを直接マスクとしてチャネル上部のn型シリコン層を等方性エッチングによって除去するTFTアレイ基板の製造方法が開示されている。
【0006】
またオフ電流に関して優れた特性および信頼性を有する薄膜トランジスタを得るための技術が、たとえば特許文献3に開示されている。特許文献3に開示されている薄膜トランジスタの製造方法では、エッチングによってソース電極およびドレイン電極を形成した後、n型シリコン層である不純物含有非晶質シリコン層をドライエッチングする前に、不純物含有非晶質シリコン層の表面を酸素含有プラズマに曝すことによって、薄膜トランジスタを作製する。
【0007】
また従来のボトムゲート構造の薄膜トランジスタでは、ソース電極およびドレイン電極に、アルミニウム(Al)などの低抵抗材料と、クロム(Cr)などの高融点材料とから成る多層構造の配線が用いられているが、低コスト化の要求から、ソース電極およびドレイン電極をAl合金材料の単層膜で形成する構造が採用されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−268353号公報
【特許文献2】特開平11−154752号公報
【特許文献3】特開2003−68755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ソース電極およびドレイン電極にAl合金材料を用いる場合、ソース電極およびドレイン電極のパターニングのためのフォトレジストを除去した後にバックチャネルエッチングを行うと、フォトレジスト除去工程およびその後の洗浄工程において、Al合金材料がチャネル部分に溶出し、エッチングの阻害層となってバックチャネルエッチング不良を引き起こし、歩留りを低下させるという問題がある。また、バックチャネルのドライエッチング後の残留ガス成分によって、Al合金表面に変質層が生成し、上部に形成される画素電極との間のコンタクト、および半透過電極となる部分の反射率が低下するなどの問題がある。
【0010】
またソース電極およびドレイン電極にAl合金材料を用いる場合に、バックチャネルエッチング後にフォトレジスト剥離と水洗とを行うと、バックチャネルエッチングされた表面にAlの電解質などが付着しやすいという問題がある。バックチャネル部に面したソース電極およびドレイン電極の側壁に電解質が付着すると、この電解質付着物を経由してバックチャネル表面を電流が流れ、トランジスタがオフのときの漏れ電流増大の原因となる。そして、コントラストの低下およびクロストークの増大などによってディスプレイの表示品質を低下させるなどの問題を招く。
【0011】
またソース電極およびドレイン電極にAl合金材料を用いる場合には、ヒロックと呼ばれる突起が発生しやすいが、これらの配線の上面部へのヒロック防止対策を施した合金組成にすると、配線側面にヒロックが発生しやすいという問題がある。バックチャネル部における配線側壁にヒロックが発生すると、ヒロックと、n型シリコン層の下層のi型シリコン層とが接触して、トランジスタの漏れ電流が大きくなるという問題が生じる。
【0012】
本発明の目的は、オフ電流および漏れ電流が抑制された薄膜トランジスタ、および前記薄膜トランジスタを歩留り良く製造することのできる薄膜トランジスタの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の薄膜トランジスタは、絶縁性基板上に設けられるゲート電極と、前記ゲート電極を覆って前記絶縁性基板上に設けられるゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に設けられ、チャネル部が形成される真性シリコン膜と、前記真性シリコン膜上に設けられ、前記チャネル部で分離される導電性シリコン膜と、前記導電性シリコン膜上に設けられ、前記チャネル部で分離されるソース電極およびドレイン電極とを備え、前記ソース電極および前記ドレイン電極の前記チャネル部側の端部は、酸化皮膜で覆われ、前記導電性シリコン膜の前記チャネル部側の端部は、前記ソース電極および前記ドレイン電極の前記チャネル部側の端部と略同一平面上に形成されることを特徴とする。
【0014】
本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、絶縁性基板上にゲート電極を形成する工程と、前記絶縁性基板の前記ゲート電極が形成された表面上に、ゲート絶縁膜、真性シリコン膜および導電性シリコン膜を順次形成する工程と、前記導電性シリコン膜上にフォトレジストパターンを形成し、形成したフォトレジストパターンをマスクとして、前記真性シリコン膜および前記導電性シリコン膜をエッチングして、島状にパターニングする工程と、島状にパターニングされた前記導電性シリコン膜上に金属膜を形成する工程と、前記金属膜上にフォトレジストパターンを形成し、形成したフォトレジストパターンをマスクとして前記金属膜をエッチングして、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、前記フォトレジストパターン、前記ソース電極および前記ドレイン電極を、酸素を含むプラズマで処理することによって、前記フォトレジストパターンの側面を後退させるとともに、前記ソース電極および前記ドレイン電極の側面および、前記フォトレジストパターンの後退によって露出した上面に酸化皮膜を形成する工程と、残存する前記フォトレジストパターンおよび前記酸化皮膜をマスクとして、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間のチャネル部となる部分の少なくとも前記導電性シリコン膜をエッチングする工程と、残存する前記フォトレジストパターンを除去する工程とを備えることを特徴とする。
【0015】
また本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、絶縁性基板上にゲート電極を形成する工程と、前記絶縁性基板の前記ゲート電極が形成された表面上に、ゲート絶縁膜、真性シリコン膜および導電性シリコン膜を順次形成する工程と、前記導電性シリコン膜上にフォトレジストパターンを形成し、形成したフォトレジストパターンをマスクとして、前記真性シリコン膜および前記導電性シリコン膜をエッチングして、島状にパターニングする工程と、島状にパターニングされた前記導電性シリコン膜上に金属膜を形成する工程と、前記金属膜上にフォトレジストパターンを形成し、形成したフォトレジストパターンをマスクとして前記金属膜をエッチングして、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、前記フォトレジストパターン、前記ソース電極および前記ドレイン電極を、酸素を含むプラズマで処理することによって、前記フォトレジストパターンを除去するとともに、前記ソース電極および前記ドレイン電極の表面全体にわたって酸化皮膜を形成する工程と、前記酸化皮膜をマスクとして、ソース電極とドレイン電極との間のチャネル部となる部分の少なくとも導電性シリコン膜をエッチングする工程と、前記酸化皮膜上に保護膜を形成する工程と、前記保護膜上に形成される上部電極とのコンタクト部となるコンタクトホールを、前記保護膜および前記酸化皮膜を貫通して、前記ソース電極および前記ドレイン電極の少なくとも一方に達するように形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0016】
また本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、絶縁性基板上にゲート電極を形成する工程と、前記絶縁性基板の前記ゲート電極が形成された表面上に、ゲート絶縁膜、真性シリコン膜、導電性シリコン膜および金属膜を順次形成する工程と、前記金属膜上に、膜厚の異なる部分を有するフォトレジストパターンを形成し、形成したフォトレジストパターンをマスクとして、前記真性シリコン膜、前記導電性シリコン膜および前記金属膜をエッチングして、島状にパターニングする工程と、前記フォトレジストパターンを、酸素を含むプラズマで処理することによって、前記フォトレジストパターンの側面を後退させる工程と、残存する前記フォトレジストパターンをマスクとして前記金属膜をエッチングして、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、残存する前記フォトレジストパターン、前記ソース電極および前記ドレイン電極を、酸素を含むプラズマで処理することによって、前記フォトレジストパターンの側面を後退させるとともに、前記ソース電極および前記ドレイン電極の側面および、前記フォトレジストパターンの後退によって露出した上面に酸化皮膜を形成する工程と、残存する前記フォトレジストパターンおよび前記酸化皮膜をマスクとして、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間のチャネル部となる部分の少なくとも導電性シリコン膜をエッチングする工程と、残存する前記フォトレジストパターンを除去する工程とを備えることを特徴とする。
【0017】
また本発明の薄膜トランジスタの製造方法は、絶縁性基板上にゲート電極を形成する工程と、前記絶縁性基板の前記ゲート電極が形成された表面上に、ゲート絶縁膜、真性シリコン膜、導電性シリコン膜および金属膜を順次形成する工程と、前記金属膜上に、膜厚の異なる部分を有するフォトレジストパターンを形成し、形成したフォトレジストパターンをマスクとして、前記真性シリコン膜、前記導電性シリコン膜および前記金属膜をエッチングして、島状にパターニングする工程と、前記フォトレジストパターンを、酸素を含むプラズマで処理することによって、前記フォトレジストパターンの側面を後退させる工程と、残存する前記フォトレジストパターンをマスクとして前記金属膜をエッチングして、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、残存する前記フォトレジストパターン、前記ソース電極および前記ドレイン電極を、酸素を含むプラズマで処理することによって、前記フォトレジストパターンを除去するとともに、前記ソース電極および前記ドレイン電極の表面全体にわたって酸化皮膜を形成する工程と、前記酸化皮膜をマスクとして、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間のチャネル部となる部分の少なくとも導電性シリコン膜をエッチングする工程と、前記酸化皮膜上に保護膜を形成する工程と、前記保護膜上に形成される上部電極とのコンタクト部となるコンタクトホールを、前記保護膜および前記酸化皮膜を貫通して、前記ソース電極および前記ドレイン電極の少なくとも一方に達するように形成する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の薄膜トランジスタによれば、ソース電極およびドレイン電極のチャネル部側の端部は酸化皮膜で覆われており、このソース電極およびドレイン電極のチャネル部側の端部と略同一平面上に、導電性シリコン膜のチャネル部側の端部が形成される。つまり、導電性シリコン膜のチャネル部側の端部は、ソース電極およびドレイン電極のチャネル部側の端部よりもチャネル部の内側には、ほぼ突出していない。これによって、ソース電極およびドレイン電極のチャネル部側の端部における電界の集中を緩和することができるので、薄膜トランジスタがオフのときのトンネル電流の発生を防ぐことができ、オフ電流を低減することができる。
【0019】
またソース電極およびドレイン電極のチャネル部側の端部は酸化皮膜で覆われているので、ソース電極およびドレイン電極のチャネル部側の端部側面におけるヒロックの発生を防止することができる。これによって、ヒロックと真性シリコン膜との接触を防止することができるので、漏れ電流を防止することができる。したがって、オフ電流および漏れ電流が抑制された薄膜トランジスタを実現することができる。
【0020】
本発明の薄膜トランジスタの製造方法によれば、導電性シリコン膜上の金属膜は、フォトレジストパターンをマスクとしてエッチングされ、ソース電極およびドレイン電極となる。このソース電極、ドレイン電極およびフォトレジストパターンが、酸素を含むプラズマで処理されて、フォトレジストパターンの側面が後退するとともに、ソース電極およびドレイン電極の側面および露出した上面に酸化皮膜が形成される。そして、残存するフォトレジストパターンおよび酸化皮膜をマスクとして、チャネル部となる部分の少なくとも導電性シリコン膜がエッチングされる。
【0021】
これによって、導電性シリコン膜のチャネル部側の端部を、ソース電極およびドレイン電極のチャネル部側の端部と略同一平面上に形成することができる。したがって、ソース電極およびドレイン電極のチャネル部側の端部における電界の集中を緩和することができるので、薄膜トランジスタがオフのときのトンネル電流の発生を防ぐことができ、オフ電流を低減することができる。
【0022】
またソース電極およびドレイン電極のチャネル部側の端部は酸化皮膜で覆われているので、その後の導電性シリコン膜をエッチングする工程、およびフォトレジストパターンを除去する工程などで発生する金属膜材料の溶出を防止することができる。これによって、溶出した金属溶液によって生じるチャネル部のバックチャネル表面の金属汚染と、それに起因するバックチャネル界面を流れるオフ電流とを低減することができるので、オフ電流を大幅に低減することができる。また前述のようにオフ電流および漏れ電流が抑制された薄膜トランジスタを歩留り良く製造することができる。
【0023】
また本発明の薄膜トランジスタの製造方法によれば、導電性シリコン膜上の金属膜は、フォトレジストパターンをマスクとしてエッチングされ、ソース電極およびドレイン電極となる。このソース電極、ドレイン電極およびフォトレジストパターンが、酸素を含むプラズマで処理されて、フォトレジストパターンが除去されるとともに、ソース電極およびドレイン電極の表面全体にわたって酸化皮膜が形成される。この酸化皮膜をマスクとして、チャネル部となる部分の少なくとも導電性シリコン膜がエッチングされる。
【0024】
これによって、導電性シリコン膜のチャネル部側の端部を、ソース電極およびドレイン電極のチャネル部側の端部と略同一平面上に形成することができる。したがって、ソース電極およびドレイン電極のチャネル部側の端部における電界の集中を緩和することができるので、薄膜トランジスタがオフのときのトンネル電流の発生を防ぐことができ、オフ電流を低減することができる。
【0025】
またソース電極およびドレイン電極の表面は酸化皮膜で覆われているので、その後の導電性シリコン膜をエッチングする工程、およびフォトレジストパターンを除去する工程などで発生する金属膜材料の溶出を防止することができる。これによって、溶出した金属溶液によって生じるチャネル部のバックチャネル表面の金属汚染と、それに起因するバックチャネル界面を流れるオフ電流とを低減することができるので、オフ電流を大幅に低減することができる。また前述のようにオフ電流および漏れ電流が抑制された薄膜トランジスタを歩留り良く製造することができる。
【0026】
また酸化皮膜上には保護膜が形成され、この保護膜および酸化皮膜を貫通して、ソース電極およびドレイン電極の少なくとも一方に達するコンタクトホールが形成されるので、コンタクトホールを介して接続される上部電極と、ソース電極およびドレイン電極の少なくとも一方との接続不良を防止することができる。
【0027】
また本発明の薄膜トランジスタの製造方法によれば、膜厚の異なる部分を有するフォトレジストパターンをマスクとして、真性シリコン膜、導電性シリコン膜および金属膜が島状にパターニングされた後、酸素を含むプラズマで処理されて側面が後退したフォトレジストパターンをマスクとして金属膜がエッチングされ、ソース電極およびドレイン電極となる。次いで酸素を含むプラズマで処理されて、フォトレジストパターンの側面が後退するとともに、ソース電極およびドレイン電極の側面および露出した上面に酸化皮膜が形成された後、残存するフォトレジストパターンおよび酸化皮膜をマスクとして、チャネル部となる部分の少なくとも導電性シリコン膜がエッチングされる。
【0028】
これによって、導電性シリコン膜のチャネル部側の端部を、ソース電極およびドレイン電極のチャネル部側の端部と略同一平面上に形成することができる。したがって、ソース電極およびドレイン電極のチャネル部側の端部における電界の集中を緩和することができるので、薄膜トランジスタがオフのときのトンネル電流の発生を防ぐことができ、オフ電流を低減することができる。
【0029】
またソース電極およびドレイン電極のチャネル部側の端部は酸化皮膜で覆われているので、その後の導電性シリコン膜をエッチングする工程、およびフォトレジストパターンを除去する工程などで発生する金属膜材料の溶出を防止することができる。これによって、溶出した金属溶液によって生じるチャネル部のバックチャネル表面の金属汚染と、それに起因するバックチャネル界面を流れるオフ電流とを低減することができるので、オフ電流を大幅に低減することができる。また前述のようにオフ電流および漏れ電流が抑制された薄膜トランジスタを歩留り良く製造することができる。
【0030】
また真性シリコン膜、導電性シリコン膜および金属膜の島状パターニングと、ソース電極およびドレイン電極を形成するための金属膜のエッチングとは、膜厚の異なる部分を有する1つのフォトレジストパターンを用いて行われるので、写真製版工程を1回分省略することができる。これによって、生産能力の向上とコストの低減とを実現することができる。
【0031】
また本発明の薄膜トランジスタの製造方法によれば、膜厚の異なる部分を有するフォトレジストパターンをマスクとして、真性シリコン膜、導電性シリコン膜および金属膜が島状にパターニングされた後、酸素を含むプラズマで処理されて側面が後退したフォトレジストパターンをマスクとして金属膜がエッチングされ、ソース電極およびドレイン電極となる。次いで酸素を含むプラズマで処理されて、フォトレジストパターンが除去されるとともに、ソース電極およびドレイン電極の表面全体にわたって酸化皮膜が形成される。この酸化皮膜をマスクとして、チャネル部となる部分の少なくとも導電性シリコン膜がエッチングされる。
【0032】
これによって、導電性シリコン膜のチャネル部側の端部を、ソース電極およびドレイン電極のチャネル部側の端部と略同一平面上に形成することができる。したがって、ソース電極およびドレイン電極のチャネル部側の端部における電界の集中を緩和することができるので、薄膜トランジスタがオフのときのトンネル電流の発生を防ぐことができ、オフ電流を低減することができる。
【0033】
またソース電極およびドレイン電極の表面は酸化皮膜で覆われているので、その後の導電性シリコン膜をエッチングする工程、およびフォトレジストパターンを除去する工程などで発生する金属膜材料の溶出を防止することができる。これによって、溶出した金属溶液によって生じるチャネル部のバックチャネル表面の金属汚染と、それに起因するバックチャネル界面を流れるオフ電流とを低減することができるので、オフ電流を大幅に低減することができる。また前述のようにオフ電流および漏れ電流が抑制された薄膜トランジスタを歩留り良く製造することができる。
【0034】
また真性シリコン膜、導電性シリコン膜および金属膜の島状パターニングと、ソース電極およびドレイン電極を形成するための金属膜のエッチングとは、膜厚の異なる部分を有する1つのフォトレジストパターンを用いて行われるので、写真製版工程を1回分省略することができる。これによって、生産能力の向上とコストの低減とを実現することができる。
【0035】
また酸化皮膜上には保護膜が形成され、この保護膜および酸化皮膜を貫通して、ソース電極およびドレイン電極の少なくとも一方に達するコンタクトホールが形成されるので、コンタクトホールを介して接続される上部電極と、ソース電極およびドレイン電極の少なくとも一方との接続不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施の形態であるTFT1を備える液晶表示装置用のTFT基板100の画素主要部を示す断面図である。
【図2】ゲート電極11の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図3】ゲート絶縁膜19、Si(i)膜13およびSi(n)膜14の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図4】ソース電極15およびドレイン電極16の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図5】Al酸化皮膜17の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図6】チャネル部18の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図7】フォトレジストパターン22の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図8】画素ドレインコンタクトホール20の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図9】画素電極21の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図10】第2の金属膜23の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図11】フォトレジストパターン24の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図12】第2の金属膜23の表面が露出した段階の状態を示す断面図である。
【図13】ソース電極15およびドレイン電極16のパターンの形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図14】Al酸化皮膜17の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図15】チャネル部18の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図16】フォトレジストパターン24の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図17】TFT基板100Aの製造が終了した段階の状態を示す断面図である。
【図18】本発明の薄膜トランジスタにおけるホール電流密度の分布を示す図である。
【図19】従来技術の薄膜トランジスタにおけるホール電流密度の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態であるTFT1を備える液晶表示装置用のTFT基板100の画素主要部を示す断面図である。TFT基板100は、透明絶縁性基板10、ゲート電極11、ゲート絶縁膜12、i型シリコン(Si(i))膜13、n型シリコン(Si(n))膜14、ソース電極15、ドレイン電極16、プラズマ酸化皮膜17、保護絶縁膜19および画素電極21を備えて構成される。ゲート電極11、ゲート絶縁膜12、Si(i)薄膜13、Si(n)薄膜14、ソース電極15、ドレイン電極16、プラズマ酸化皮膜17および保護絶縁膜19は、逆スタガ型TFTであるTFT1を構成する。TFT1および画素電極21は、透明絶縁性基板10の厚み方向一方側に設けられる。
【0038】
透明絶縁性基板10は、たとえばガラス基板によって実現される。Si(i)膜13およびSi(n)膜14は、たとえば、アモルファスシリコンもしくは微結晶シリコンの単層膜、またはアモルファスシリコンと微結晶シリコンとの多層膜によって実現される。本実施の形態では、Si(i)膜13は、i型アモルファスシリコン薄膜、具体的には、i型のアモルファスシリコンの単層膜によって実現される。またSi(n)膜14は、n型アモルファスシリコン薄膜、具体的には、n型のアモルファスシリコンの単層膜によって実現される。本実施の形態では、Si(i)膜13をi型アモルファスシリコン薄膜といい、Si(n)膜14をn型アモルファスシリコン薄膜という場合がある。Si(i)膜13は、真性シリコン膜に相当し、Si(n)膜14は、導電性シリコン膜に相当する。
【0039】
ソース電極15およびドレイン電極16は、本実施の形態では、アルミニウム(Al)系金属膜、具体的にはAl合金の単層膜によって構成される。プラズマ酸化皮膜17は、本実施の形態ではアルミニウム酸化皮膜17であり、ソース電極15およびドレイン電極16となるAl系金属膜を酸化することによって形成される。本実施の形態では、プラズマ酸化皮膜17をアルミニウム酸化皮膜17という場合がある。TFT1のチャネル部18は、ソース電極15とドレイン電極16とに挟まれており、Si(n)膜14とSi(i)膜13の表面の一部とが掘り込まれて、凹所として形成される。Si(i)膜13は、堀り込まれなくてもよい。
【0040】
Si(n)膜14およびSi(i)膜13のチャネル部18側の端部は、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部と略同一平面上に形成されている。より詳細には、チャネル部18を挟んで互いに対向するソース電極15およびドレイン電極16の側面は、その下層のSi(n)膜14およびSi(i)膜13の掘り込まれた側面と略同一平面上に形成されている。図1では、Si(n)膜14およびSi(i)膜13のチャネル部18側の端部は、ソース電極15およびドレイン電極16の側面に形成されたアルミニウム酸化皮膜17の膜厚の分だけ、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部よりもチャネル部18の内側に突出しているように見える。実際には、アルミニウム酸化皮膜17の膜厚は0.1μm以下と小さいので、Si(n)膜14およびSi(i)膜13のチャネル部18側の端部と、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部とは、略同一平面上に位置することになる。
【0041】
換言すれば、Si(n)膜14およびSi(i)膜13のチャネル部18側の端部は、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部よりもチャネル部18の内側には、ほぼ突出していない。具体的には、少なくともSi(n)膜14のチャネル部18側の端部は、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部からのチャネル部18の内側への突出量が、0.1μm以下となっている。本実施の形態では、Si(i)膜13もSi(n)膜14と同様に堀り込まれてチャネル部18が形成されているので、Si(i)膜13のチャネル部18側の端部も、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部からのチャネル部18の内側への突出量が、0.1μm以下となっている。
【0042】
保護絶縁膜19は、チャネル部18を保護して、TFT基板100の全体に形成される。保護絶縁膜19には、画素ドレインコンタクトホール20が形成される。画素ドレインコンタクトホール20は、保護絶縁膜19を貫通して、保護絶縁膜19の下層に形成されたドレイン電極16の表面まで形成される。画素電極21は、画素ドレインコンタクトホール20を介して、保護絶縁膜19の下層に形成されたドレイン電極16に電気的に接続される。画素電極21は、透明導電性膜によって構成される。
【0043】
次に本実施の形態におけるTFT基板100の製造方法について説明する。本実施の形態におけるTFT基板100の製造方法では、本発明のTFTの製造方法を用いてTFT基板100を製造する。図2〜図9では、図1と同様に、TFT基板100の画素主要部に相当する部分を示す。図2〜図9は、本発明の第1の実施の形態におけるTFT基板100の製造方法の各工程を説明するための図である。
【0044】
図2は、ゲート電極11の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。まず、ガラス基板などの透明絶縁性基板10を、洗浄液または純水を用いて洗浄した後、透明絶縁性基板10の厚み方向一方側の表面に、ゲート電極11となる第1の金属膜を成膜する。第1の金属膜の材料としては、たとえばクロム(Cr)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)またはこれらの金属に他の物質を微量に添加した合金を用いる。このうち、AlおよびAl合金などのAl系金属を用いることが好ましい。Al系金属は、Cr、Mo、Tiといった他の金属に比べて比抵抗値が低いので、Al系金属を用いることによって、配線抵抗を低くすることができる。したがってAl系金属は、液晶表示装置用のTFT基板100の用途として好ましい。
【0045】
第1の金属膜の材料としてAl系金属を用いる場合には、パターン不良および歩留りの低下の原因となるヒロックと呼ばれる突起が配線上面、すなわち第1の金属膜の厚み方向一方側の表面に発生することを防止するために、Alに他の物質を添加したAl合金を用いることが好ましい。Alに添加される他の物質(以下「添加元素」という場合がある)としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)およびニッケル(Ni)などの第8族遷移元素、ならびにランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)およびガドリニウム(Gd)などの希土類元素が挙げられる。これらの添加元素の組成範囲は、原子百分率(at%)で、Al合金全体の0.2at%以上6at%以下であることが好ましい。添加元素の組成範囲が0.2at%未満では、配線上面におけるヒロックの発生を防止する効果が不充分となり、また添加元素の組成範囲が6at%を超えると、比抵抗値が増大して、Cr、Mo、Tiに対する低抵抗の優位性が低くなるからである。
【0046】
具体的には、第1の金属膜としては、たとえば3at%のNiを添加したAl−3at%Ni合金膜を、公知のアルゴン(Ar)ガスを用いたスパッタリング法によって、厚みが200nmになるように成膜する。
【0047】
このようにして第1の金属膜を成膜した後、第1回目の写真製版工程で第1の金属膜上にフォトレジストパターンを形成する。このフォトレジストパターンをマスクとして、公知のエッチング液、たとえばリン酸、硝酸および酢酸を含む溶液で第1の金属膜をウエットエッチングした後に、フォトレジストパターンを除去して、ゲート電極11を形成する。
【0048】
図3は、ゲート絶縁膜19、Si(i)膜13およびSi(n)膜14の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のようにしてゲート電極11を形成した後、ゲート電極11および透明絶縁性基板10の厚み方向一方側の表面に、ゲート絶縁膜12、Si(i)膜13およびSi(n)膜14を順次成膜する。Si(i)膜13は、不純物を添加していないi型シリコンSi(i)から成る真性半導体膜であり、チャネルとなる半導体能動膜として機能する。Si(n)膜14は、不純物を添加したn型シリコンSi(n)から成るn型半導体膜であり、Si(i)膜13と、ソース電極15およびドレイン電極16とをオーミック接触させるオーミック低抵抗膜(以下「オーミックコンタクト膜」という場合がある)として機能する。
【0049】
具体的には、たとえば、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition;略称:CVD)法を用いて、約300℃の基板加熱条件下で、ゲート絶縁膜12として、窒化シリコン(SiN)膜、Si(i)膜13として、微結晶のSi(i)膜、Si(n)膜14として、リン(P)を不純物として添加した微結晶のSi(n)膜を、順次成膜する。膜厚としては、たとえば、ゲート絶縁膜12の膜厚を400nmとし、Si(i)膜13の膜厚を150nmとし、Si(n)膜14の膜厚を50nmとする。
【0050】
このようにしてゲート絶縁膜12、Si(i)膜13およびSi(n)膜14を形成した後、第2回目の写真製版工程でSi(n)膜14の表面にフォトレジストパターンを形成する。このフォトレジストパターンをマスクとして、たとえば、公知のエッチングガス、たとえばフッ素系ガスを用いたドライエッチングによって、Si(i)膜13およびSi(n)膜14をエッチングして、島状にパターニングする。その後に、フォトレジストパターンを除去して、TFT1の半導体パターン、すなわちTFT1の半導体膜であるSi(i)膜13およびSi(n)膜14の島状パターンを形成する。
【0051】
図4は、ソース電極15およびドレイン電極16の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のようにしてSi(i)膜13およびSi(n)膜14をエッチングした後、ゲート絶縁膜12、Si(i)膜13およびSi(n)膜14の表面に第2の金属膜を成膜する。次いで、第3回目の写真製版工程で第2の金属膜の表面にフォトレジストパターン22を形成する。このフォトレジストパターン22をマスクとして、図1に示すTFT1のチャネル部8となる部分の第2の金属膜をエッチングして、ソース電極15のパターンとドレイン電極16のパターンとに分離する。このとき、TFT1の周辺部の第2の金属膜もエッチングされて除去される。
【0052】
第2の金属膜の材料としては、たとえばCr、Mo、Ti、Alまたはこれらの金属に他の物質を微量に添加した合金を用いることができる。このうち、AlおよびAl合金などのAl系金属は、Cr、Mo、Tiといった他の金属に比べて比抵抗値が低いので、Al系金属を用いることによって、配線抵抗を低くすることができる。したがってAl系金属は、液晶表示装置用のTFT基板100の用途として好ましい。
【0053】
第2の金属膜の材料としてAl系金属を用いる場合、Al単体では、下層で接触するSi(n)膜14との界面で、アルミニウム(Al)とシリコン(Si)との共晶反応が発生して、コンタクト特性が不良になるおそれがある。また、上層で接触する画素電極21を構成する透明導電性画素電極膜として、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide;略称:ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide;略称:IZO)などの酸化物導電膜を用いた場合、画素電極21との界面でAlの酸化反応が発生して、コンタクト特性が不良になるおそれがある。このようにコンタクト特性が不良になることを防ぐために、第2の金属膜の材料としては、Al合金を用いることが好ましく、具体的には、少なくともFe、Co、Niなどの第8族遷移元素を添加したAl合金を用いることが好ましい。これら第8族遷移元素の組成範囲は、Al合金全体の0.2at%以上6at%以下であることが好ましい。
【0054】
具体的には、第2の金属膜としては、たとえば、3at%のNiを添加したAl−3at%Ni合金膜を、公知のアルゴン(Ar)ガスを用いたスパッタリング法によって、厚みが200nmになるように成膜する。その後、前述のように第3回目の写真製版工程で第2の金属膜の表面にフォトレジストパターン22を形成し、このフォトレジストパターン22をマスクとして、たとえば、公知のエッチング液、たとえばリン酸、硝酸および酢酸を含む溶液で第2の金属膜をウエットエッチングして、ソース電極15およびドレイン電極16のパターンを形成する。
【0055】
エッチングプロセスでは、エッチングで完全に被エッチング膜が除去される、いわゆるジャストエッチング後も、基板に残る微小なエッチング残りを完全に除去するために、しばらくエッチングを延長するオーバーエッチングを行う。オーバーエッチングの時間は、ジャストエッチングに要した時間であるジャストエッチング時間の0.5倍から2倍ほどに設定する。たとえば、第2の金属膜がジャストエッチングされた後、ジャストエッチング時間の1倍、すなわちジャストエッチング時間と等しい時間が経過するまで、オーバーエッチングを行う。
【0056】
溶液を用いたウエットエッチングの場合は、エッチング反応が等方的に進行するので、ソース電極15およびドレイン電極16を構成する第2の金属膜は、オーバーエッチングによって、図4に示すように、フォトレジストパターン22よりも端部が後退した形状にパターニングされる。用いる金属種および溶液種によっても異なるが、このソース電極15およびドレイン電極16を構成する第2の金属膜の端部の後退量(以下、「サイドエッチング量」という場合がある)sdは、たとえば0.2μm以上2μm以下となる。前述の公知のリン酸、硝酸および酢酸を含む溶液を用いたウエットエッチングの場合、サイドエッチング量sdは、たとえば約1μmとなる。
【0057】
図5は、Al酸化皮膜17の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のようにしてソース電極15およびドレイン電極16を形成した後、基板表面、すなわち透明絶縁性基板10の厚み方向一方側で露出する各膜の表面に、透明絶縁性基板10の厚み方向一方側から酸素(O2)を含むプラズマ(以下「酸素プラズマ」という場合がある)を照射して処理する。このように酸素プラズマで処理することによって、フォトレジストパターン22をアッシングして膜厚を減じるとともに、フォトレジストパターン22の端部、少なくとも側面を後退させる。また、フォトレジストパターン22の端部の後退とともに表面が露出したソース電極15およびドレイン電極16の上面および側面部に、酸素プラズマを照射して処理する。これによって、ソース電極15およびドレイン電極16を構成する第2の金属膜を酸化し、ソース電極15およびドレイン電極16のフォトレジストパターン22で覆われていない部分に、プラズマ酸化皮膜17を形成する。本実施の形態では、第2の金属膜であるAl系金属膜が酸化されて、プラズマ酸化皮膜17として、Al酸化皮膜が形成される。
【0058】
本工程におけるフォトレジストパターン22の後退量rd1は、ソース電極15およびドレイン電極16の表面が、フォトレジストパターン22とAl酸化皮膜17とで完全に覆われている状態となる値であればよく、任意でよい。ただし、ドレイン電極16が上層の画素電極21と接触する画素ドレインコンタクトホール20が形成される部分にAl酸化皮膜17があると、コンタクト抵抗を増大させることになる。したがってフォトレジストパターン22の後退量rd1は、Al酸化皮膜17が、画素ドレインコンタクトホール20の形成される部分のドレイン電極16の表面に形成されない範囲にすることが好ましい。具体的には、酸素プラズマの照射は、フォトレジストパターン22の後退量rd1が、たとえば約2μmになる程度まで行われる。
【0059】
図6は、チャネル部18の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。図7は、フォトレジストパターン22の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のようにしてAl酸化皮膜17を形成した後、残存するフォトレジストパターン22、ならびにソース電極15およびドレイン電極18の端部のAl酸化皮膜17をマスクとして、チャネル部18が形成される部分のSi(n)膜14をエッチングによって除去する、いわゆるバックチャネルエッチングを行う。このとき、本実施の形態では、Si(i)膜13の表面の一部もエッチングによって除去する。その後、フォトレジストパターン22を完全に除去して、図7に示すように、TFT1のチャネル部18を形成する。
【0060】
具体的には、公知のエッチングガス、たとえば塩素を含むガスを用いたドライエッチングによって、チャネル部18が形成される部分のSi(n)膜14をエッチングして除去する。さらに、チャネル部18が形成される部分のSi(i)膜13の表面の一部を掘り込んだ後に、フォトレジストパターン22を除去して、TFT1のチャネル部18を形成する。
【0061】
以上のように本実施の形態では、チャネル部18は、ソース電極15およびドレイン電極16のパターンを直接マスクとして、Si(n)膜14およびSi(i)膜13の一部の表面をドライエッチングによって除去することによって形成される。したがって、Si(n)膜14およびSi(i)膜13のチャネル部18側の端部は、図6に示すように、上層のマスクとなるソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部と略同一平面上に形成される。より詳細には、チャネル部18のSi(n)膜14およびSi(i)膜13の側面は、ソース電極15およびドレイン電極16の側面と略同一平面上に形成される。
【0062】
Si(n)膜14およびSi(i)膜13のチャネル部18側の端部は、Si(n)膜14およびSi(i)膜13のオーバーエッチング時間によっては、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部よりもチャネル部18から離隔する方向に後退して、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部が形成される平面上から若干ずれる場合がある。この場合でも、そのずれ量は小さく、Si(n)膜14およびSi(i)膜13のチャネル部18側の端部を含む仮想一平面と、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部を含む仮想一平面とは、略同一の平面上に配置される。
【0063】
図8は、画素ドレインコンタクトホール20の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のようにしてチャネル部18を形成した後、透明絶縁性基板10の厚み方向一方側で露出する各膜の表面に保護絶縁膜19を成膜する。保護絶縁膜19としては、たとえば、CVD法を用いて約300℃の基板加熱条件下で、窒化シリコン(SiN)膜を厚みが300nmになるように成膜する。
【0064】
その後、第4回目の写真製版工程で、保護絶縁膜19の表面にフォトレジストパターンを形成して、公知のエッチングガス、たとえばフッ素系ガスを用いたドライエッチング法を用いて、保護絶縁膜19をエッチングした後に、フォトレジストパターンを除去して、画素ドレインコンタクトホール20を形成する。画素ドレインコンタクトホール20は、少なくともドレイン電極16の表面まで貫通するように形成される。本実施の形態では、画素ドレインコンタクトホール20は、保護絶縁膜19を貫通して、ドレイン電極16の表面に達するように形成される。画素ドレインコンタクトホール20は、これに限定されず、たとえばドレイン電極16の内部まで貫通するように形成されてもよい。
【0065】
図9は、画素電極21の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のようにして画素ドレインコンタクトホール20を形成した後、透明絶縁性基板10の厚み方向一方側で露出する各膜の表面に、画素電極21となる透明導電性膜を成膜する。透明導電性膜としては、たとえば、酸化インジウム(In23)と酸化亜鉛ZnOとから成るIZOを、公知のArガスを用いたスパッタリング法によって、厚みが100nmになるように成膜する。
【0066】
次いで、第5回目の写真製版工程で透明導電性膜の表面にフォトレジストパターンを形成し、このフォトレジストパターンをマスクとして、公知のエッチング液、たとえばシュウ酸系溶液で透明導電性膜をウエットエッチングした後に、フォトレジストパターンを除去することによって、液晶表示の画素電極パターンとして、透明導電性膜から成る画素電極21を形成する。これによって、図1に示す本発明の第1の実施の形態に係る液晶表示装置用のTFT基板100が得られる。
【0067】
以上のように本実施の形態によれば、図5に示すように、ソース電極15およびドレイン電極16のパターンの形成後には、基板に酸素プラズマを照射してフォトレジストパターン22を後退させるとともに、ソース電極15およびドレイン電極16の端部にAl酸化皮膜17を形成する。そして、フォトレジストパターン22およびAl酸化皮膜17をマスクとして、Si(n)膜14およびSi(i)膜13をエッチングする。これによって、図6に示すように、Si(n)膜14およびSi(i)膜13のチャネル部18側の端部を、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部と略同一平面上に形成することができる。
【0068】
前述の図4に示すように、第3回目の写真製版工程でソース電極15、ドレイン電極16およびチャネル部18を形成する場合、ソース電極15およびドレイン電極16を構成するAl合金膜のウエットエッチング後には、オーバーエッチングによって、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18が形成される側の端部は、フォトレジストパターン22の端部よりも、チャネル部18の形成される部分から離隔する方向に後退している。したがって、フォトレジストパターン22をこのままマスクにして、TFTの半導体膜であるSi(n)膜14をドライエッチングしてチャネル部18を形成する従来のプロセスの場合には、Si(n)膜14のチャネル部18側の端部が、ソース電極15およびドレイン電極16の端部よりもチャネル方向に延在して、チャネル部18の内側に突出した形状になってしまう。
【0069】
このようにSi(n)膜14のチャネル部18側の端部が、ソース電極15およびドレイン電極16の端部よりもチャネル部18の内側に突出している、すなわちTFTの半導体膜が電極の外側にせり出している場合には、電極の端部に電界が集中し、n型シリコンとi型シリコンとの界面において、トンネリング電流(以下「トンネル電流」という場合がある)が発生し、オフ電流が上昇してしまう。特にTFTの半導体膜がアモルファスシリコンで形成される場合、アモルファスシリコンは、n型であっても導電率が結晶シリコンよりも2桁以上小さいので、n型アモルファスシリコンとi型アモルファスシリコンとの界面において、トンネル電流が発生しやすく、オフ電流の上昇を招きやすい。
【0070】
これに対して、本実施の形態では、前述のように図5に示す工程において、基板に酸素プラズマを照射することによって、ソース電極15およびドレイン電極16上のフォトレジストパターン22を後退させるとともに、ソース電極15およびドレイン電極16上に、プラズマ酸化皮膜17、具体的にはアルミニウム酸化皮膜17を形成する。つまり、ソース電極15およびドレイン電極16を形成した後のフォトレジストパターン22の端部の張出しは、酸素プラズマを照射することによって除去される。
【0071】
そして、後退させたフォトレジストパターン22およびアルミニウム酸化皮膜17を直接マスクとして、図6に示すように、たとえば塩素系ガスを用いたドライエッチングによって、チャネル部18のSi(n)膜14およびSi(i)膜13の表面の一部をエッチングして掘り込んで、チャネル部18を形成する。このとき、フォトレジストパターン22が後退して表面が露出したソース電極15およびドレイン電極16の部分は、プラズマ酸化皮膜であるアルミニウム酸化皮膜17で覆われているので、塩素系ガスによる腐食を受けることがない。
【0072】
したがって、Si(n)膜14およびSi(i)膜13のチャネル部18側の端部は、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部と略同一平面上に形成されることになる。これによって、ソース電極15およびドレイン電極16の端部における電界の集中を緩和することができるので、TFT1がオフのときのトンネル電流の発生を防ぐことができ、オフ電流を低減することができる。
【0073】
この効果は、Si(i)膜13として、微結晶シリコンの単層膜、またはアモルファスシリコンと微結晶シリコンとの多層膜が用いられる場合に顕著である。微結晶シリコンは、バンドギャップが1.4eV程度であり、アモルファスシリコンのバンドギャップである1.7eVに比べて小さいので、トンネル電流が発生しやすい。本実施の形態では、前述のようにSi(n)膜14およびSi(i)膜13のチャネル部18側の端部を、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部と略同一平面上に形成することができるので、Si(i)膜13として、微結晶シリコンの単層膜、またはアモルファスシリコンと微結晶シリコンとの多層膜を用いた場合でも、ソース電極15およびドレイン電極16の端部における電界の集中を緩和することができる。このように本実施の形態によれば、Si(i)膜13として、微結晶シリコンの単層膜、またはアモルファスシリコンと微結晶シリコンとの多層膜を用いた場合に、オフ電流の抑制に大きな効果を得ることができる。
【0074】
また本実施の形態では、Si(n)膜14のチャネル部18側の端部は、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部からのチャネル部18の内側への突出量が、0.1μm以下となっている。これによって、TFT1がオフのときのトンネル電流の発生をより確実に防ぐことができ、オフ電流をより確実に低減することができる。
【0075】
また本実施の形態におけるTFT基板100では、ソース電極15およびドレイン電極16を構成する第2の金属膜として、Alに少なくともFe、Co、Niなどの第8族遷移元素を添加した合金膜、具体的にはAlに少なくともNiを添加したAlNi合金膜を用いている。これによって、下層のSi(n)膜14との共晶反応を防止することができるとともに、上層の酸化物透明導電性膜から成る画素電極21との良好なコンタクト特性を得ることができる。したがって、従来では不可能であった低抵抗Al系合金を単層膜で液晶表示装置用のTFT1のソース電極15およびドレイン電極16に適用することが可能となる。
【0076】
また、AlNi合金などのAl合金は低抵抗であり、上面へのヒロック防止性に優れているが、結晶方位の配向が原因で、配線側面部へのヒロックが発生しやすいという欠点がある。本実施の形態のTFT1の製造方法では、配線側面、すなわちソース電極15およびドレイン電極16の側面を含むチャネル部18側の端部に酸化アルミニウム皮膜17を形成するので、側面部へのヒロックの発生を防止することができる。これによって、ソース電極15およびドレイン電極16と、その下層のSi(i)膜14との接触に起因する漏れ電流の発生を防止することができる。
【0077】
またアルミニウム酸化皮膜17は、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部、少なくとも側面に形成されているので、バックチャネルエッチング工程およびフォトレジストパターン22を除去する工程などで、ソース電極15およびドレイン電極16を構成するAl系金属膜が溶出することを防ぐことができる。これによって、溶出した金属の溶液が、チャネル部18の半導体膜13,14の表面に付着することを防ぐことができるので、バックチャネルエッチング後に、チャネル部18の半導体膜13,14の表面に付着した電解質などに起因して生じる漏れ電流を低減することができる。つまり、溶出した金属溶液によって生じるチャネル部のバックチャネル表面の金属汚染と、それに起因するバックチャネル界面を流れるオフ電流とを低減することができる。したがって、オフ電流を大幅に低減することができる。また前述のようにオフ電流および漏れ電流が抑制された薄膜トランジスタを歩留り良く製造することができる。
【0078】
またソース電極15およびドレイン電極16の少なくとも側面にアルミニウム酸化皮膜17を形成することによって、バックチャネルエッチングのときの塩素系ガスによるAl合金表面へのダメージを防止することができるので、抵抗の増大、断線、および反射率の低下を抑制することができる。これによって、たとえばドレイン電極16を、光を反射して画像を表示する反射画素電極に適用することも可能である。
【0079】
またソース電極15およびドレイン電極16のうち、チャネル部18を形成するためのエッチングのときにフォトレジストパターン22に覆われていた部分には、プラズマ酸化皮膜であるアルミニウム酸化皮膜17が存在していないので、コンタクトホール20を介して、上部に存在する画素電極21などとの電気的導通を容易に確保することができる。
【0080】
また本実施の形態では、ソース電極15とゲート絶縁膜12との間には、ソース電極15の全面にわたって、Si(i)膜13およびSi(n)膜14が介在している。これによって、ソース電極15の寄生容量を低減することができるので、液晶ディスプレイなどに用いた場合には、発生する表示不良を低減することができる。またプラズマ酸化皮膜であるAl酸化皮膜17は、ソース電極15およびドレイン電極16の端部のみに形成されているので、配線抵抗の増大、および上部電極である画素電極21とのコンタクト抵抗の増大を防止することができる。
【0081】
以上のように本実施の形態によれば、ソース電極15およびドレイン電極16にAl合金膜を用いても、オフ電流および漏れ電流を抑制することができるので、ソース電極15およびドレイン電極16に低抵抗のAl合金膜を用いることができる。また本実施の形態によれば、このようなオフ電流および漏れ電流が抑制されたTFT1を歩留り良く製造することができる。したがって、ソース電極15およびドレイン電極16に低抵抗のAl合金膜を用いて、液晶ディスプレイ用のTFT1を低コストで、かつ高歩留りで製造することが可能である。
【0082】
<第1の実施の形態の変形例>
前述の本発明の第1の実施の形態では、図5に示す工程で、基板に酸素プラズマを照射することによって、フォトレジストパターン22の膜厚を減じて、端部をチャネル部18の形成される部分から離隔する方向に後退させるようにしたが、フォトレジストパターン22を完全に除去するようにしてもよい。この場合、ソース電極15およびドレイン電極16は、表面全体がAl酸化皮膜17で覆われることになる。この表面全体がAl酸化皮膜17で覆われたソース電極15およびドレイン電極16のパターンを直接マスクとして、Si(n)膜14およびSi(i)膜13をドライエッチングすることになるが、Si(n)膜14およびSi(i)膜13のチャネル部18側の端部が、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部と略同一平面上に形成されるという特徴は、第1の実施の形態と同じである。
【0083】
ただし、本変形例では、上層の画素電極21と接触するコンタクトホール20が形成される部分のドレイン電極16の表面にもAl酸化皮膜17が形成されるので、画素電極21と接触する部分のドレイン電極16の表面に形成されたAl酸化皮膜17は除去することが好ましい。
【0084】
本変形例によれば、第2の金属膜は、画素電極21と接続されるコンタクト部分を除く残余の部分が、全体にわたってAl酸化皮膜17で保護されることになる。これによって、ソース電極15およびドレイン電極16の上面方向へのヒロックの発生を防止し、ヒロックの発生による配線切断を防ぐことができる。またソース電極15およびドレイン電極16の側面方向へのヒロックの発生を防止することができるので、側面方向に発生したヒロックとSi(i)膜13との接触に起因する漏れ電流を防止することができる。またSi(n)膜14をエッチングする工程以降のソース電極15およびドレイン電極16へのプロセスダメージおよび腐食などを大幅に抑制することができる。
【0085】
<第2の実施の形態>
図10〜図17は、本発明の第2の実施の形態における液晶表示装置用のTFT基板100Aの製造方法の各工程を説明するための図である。図10〜図17では、図2〜図9と同様に、TFT基板100Aの画素主要部に相当する部分を示す。本実施の形態におけるTFT基板100Aの製造方法では、本発明のTFTの製造方法を用いてTFT基板100Aを製造する。本実施の形態におけるTFT基板100Aの製造方法は、前述の第1の実施の形態におけるTFT基板100の製造方法と類似しているので、異なる点について説明し、第1の実施の形態と共通する部分は説明を省略する。本実施の形態は、第1の実施の形態における第2回目および第3回目の写真製版工程を合わせて1回の写真製版工程にすることによって、全体で計4回の写真製版工程でTFT基板100Aを製造する点が第1の実施の形態と異なる。
【0086】
図10は、第2の金属膜23の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。まず、第1の実施の形態と同様にして、ガラス基板などの透明絶縁性基板10の厚み方向一方側の表面に、ゲート電極11を形成した後に、ゲート絶縁膜12、Si(i)膜13、Si(n)膜14および第2の金属膜23を順次成膜する。ゲート電極11は、たとえばAl−3at%Ni合金膜から成る。ゲート絶縁膜12は、たとえばSiNで形成される。第2の金属膜23は、たとえばAl−3at%Niで形成される。
【0087】
図11は、フォトレジストパターン24の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のようにしてゲート電極11、ゲート絶縁膜12、Si(i)膜13、Si(n)膜14および第2の金属膜23を形成した後、第2回目の写真製版工程にて、第2の金属膜23の表面にフォトレジストパターン24を形成する。フォトレジストパターン24は、TFT1のチャネル部18に相当する部分の膜厚が他の部分の膜厚よりも薄くなるように形成する。この膜厚の異なる部分を有するフォトレジストパターン24をマスクとして、第2の金属膜23、Si(n)膜14およびSi(i)膜13を順次エッチングする。
【0088】
フォトレジストパターン24は、たとえば以下のようにして形成される。まず、フォトレジストとして、たとえばノボラック系のポジ型感光性有機樹脂膜を、公知のスピン塗布法を用いて、たとえば約1.6μmの膜厚になるように形成する。その後に、写真製版露光機によって、第1のフォトマスクを用いて第1の露光を行う。第1の露光は、フォトレジストの感光剤が完全に感光する露光量で行う。次に、第2のフォトマスクを用いて、TFT1のチャネル部18に相当する部分に対して、第1の露光における露光量の30〜60%程度の強さで露光を行う。その後、現像液を用いてフォトレジストを現像することによって、TFT1のチャネル部18に相当する部分の膜厚が、他の部分の膜厚よりも小さいフォトレジストパターン24を形成する。フォトレジストパターン24は、チャネル部18に相当する部分の膜厚が、たとえば約0.8μmとなるように形成される。
【0089】
このフォトレジストパターン24をマスクとして用いたエッチングは、たとえば以下のようにして実施される。フォトレジストパターン24をマスクとして、公知のエッチング液を用いて、第2の金属膜24をウエットエッチングする。第2の金属膜23がAl−3at%Niから成る場合、エッチング液としては、たとえば、リン酸、硝酸および酢酸を含む溶液が用いられる。さらに続けて、公知のエッチングガス、たとえばフッ素系ガスを用いたドライエッチング法によって、Si(n)膜14およびSi(i)膜13を順次エッチングして島状にパターニングする。
【0090】
図12は、第2の金属膜23の表面が露出した段階の状態を示す断面図である。前述のようにしてエッチングを実施した後、基板表面に酸素プラズマを照射することによって、フォトレジストパターン24をアッシングして膜厚を減じるとともに、TFT1のチャネル部18に相当する部分の膜厚の薄いフォトレジストを除去して、下層の第2の金属膜23の表面を露出させる。
【0091】
図13は、ソース電極15およびドレイン電極16のパターンの形成が終了した段階の状態を示す断面図である。前述の図12に示すアッシング後に残存するフォトレジストパターン24をマスクとして、TFT1のチャネル部18となる部分の第2の金属膜23をエッチングして、ソース電極15のパターンとドレイン電極16のパターンとに分離する。
【0092】
具体的には、公知のエッチング液を用いて、第2の金属膜23をウエットエッチングして、ソース電極15およびドレイン電極16のパターンを形成する。このとき、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18が形成される側の端部は、オーバーエッチングによるサイドエッチングによって、フォトレジストパターン24の端部よりも、チャネル部18の形成される部分から離隔する方向に後退する。たとえば第2の金属膜23がAl−3at%Niから成る場合、エッチング液としては、リン酸、硝酸および酢酸を含むリン酸−硝酸−酢酸系溶液が用いられ、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18が形成される側の端部は、フォトレジストパターン24の端部よりも、チャネル部18の形成される部分から離隔する方向に約1μm後退する。
【0093】
図14は、Al酸化皮膜17の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のようにして第2の金属膜23をエッチングした後、基板表面に酸素プラズマを照射して処理することによって、フォトレジストパターン24を再度アッシングして膜厚を減じるとともに、フォトレジストパターン24の端部をソース電極15およびドレイン電極16の端部よりも、チャネル部18の形成される部分から離隔する方向に後退させる。また、フォトレジストパターン24の端部の後退とともに表面が露出したソース電極15およびドレイン電極16の表面および側面に酸素プラズマを照射して処理することによって、Al酸化皮膜17を形成する。
【0094】
このときのフォトレジストパターン24の後退量rd2は、ソース電極15およびドレイン電極16の表面が、フォトレジストパターン24とAl酸化皮膜17とで完全に覆われている状態となる値であればよく、任意でよい。ただし、ドレイン電極16が上層の画素電極21と接触する画素ドレインコンタクトホール20が形成される部分にAl酸化皮膜17があると、コンタクト抵抗を増大させることになる。したがってフォトレジストパターン24の後退量rd2は、Al酸化皮膜17が、画素ドレインコンタクトホール20の形成される部分のドレイン電極16の表面に形成されない範囲にすることが好ましい。酸素プラズマの照射は、たとえば、フォトレジストパターン24の後退量rd2が約2μmになる程度まで行われる。
【0095】
図15は、チャネル部18の形成が終了した段階の状態を示す断面図である。図16は、フォトレジストパターン24の除去が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のようにしてAl酸化皮膜17を形成した後、残存するフォトレジストパターン24と、ソース電極15およびドレイン電極16の端部のAl酸化皮膜17とをマスクとして、チャネル部18が形成される部分のSi(n)膜14をエッチングによって除去する、いわゆるバックチャネルエッチングを行う。このとき、本実施の形態においても、Si(i)膜13の表面の一部もエッチングによって除去する。その後、フォトレジストパターン24を完全に除去して、図16に示すように、TFT1のチャネル部18を形成する。
【0096】
バックチャネルエッチングは、たとえば以下のようにして実施される。まず、公知のエッチングガス、たとえば塩素を含むガスを用いたドライエッチングによって、チャネル部18が形成される部分のSi(n)膜14をエッチングして除去する。さらに、チャネル部18が形成される部分のSi(i)膜13の表面の一部を掘り込む。その後、フォトレジストパターン24を除去して、TFT1のチャネル部18を形成する。
【0097】
このバックチャネルエッチングにおいて、チャネル部18は、ソース電極15およびドレイン電極16のパターンを直接マスクとして、Si(n)膜14およびSi(i)膜13の一部の表面をドライエッチングによって除去することによって形成されることになる。したがって、Si(n)膜14およびSi(i)膜13のチャネル部18側の端部は、上層のマスクとなるソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部と略同一平面上に形成されることになる。
【0098】
図17は、TFT基板100Aの製造が終了した段階の状態を示す断面図である。前述のようにしてチャネル部18を形成した後は、前述の第1の実施の形態における図7〜図9に示す製造工程と同様の工程を経て、保護絶縁膜19、画素ドレインコンタクトホール20および画素電極21を形成することによって、本発明の第2の実施の形態に係る液晶表示装置用のTFT基板100Aを得る。本実施の形態では、画素ドレインコンタクトホール20が形成される部分のドレイン電極16の下層まで、Si(i)膜13およびSi(n)膜14が形成されているので、画素電極21は、Si(i)膜13、Si(n)膜14およびドレイン電極16に積層されて形成されることになる。
【0099】
このようにして得られた本発明の第2の実施の形態に係る液晶表示装置用のTFT基板100Aは、前述の第1の実施の形態のTFT基板100と同様の効果を得ることが可能である。
【0100】
さらに本実施の形態によれば、前述の第1の実施の形態に比べて、写真製版工程が1回少なく、4回の写真製版工程で液晶表示装置用のTFT基板100Aを製造することができる。したがって、第1の実施の形態に比べて、さらに生産能力の向上とコストの低減とを実現することができる。
【0101】
本実施の形態においても、前述の第1の実施の形態の変形例と同様に、図14に示す工程で、フォトレジストパターン24の膜厚を減じて端部を後退させることに代えて、フォトレジストパターン24を完全に除去するようにしてもよい。この場合、表面全体がAl酸化皮膜17で覆われたソース電極15およびドレイン電極16のパターンを直接マスクとして、Si(n)膜14およびSi(i)膜13をドライエッチングすることになるが、Si(n)膜14およびSi(i)膜13のチャネル部18側の端部が、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部と略同一平面上に形成されるという特徴は、第2の実施の形態と同じである。
【0102】
この場合、前述の第1の実施の形態の変形例と同様に、画素電極21と接触するコンタクトホール20が形成される部分のドレイン電極16の表面にもAl酸化皮膜17が形成されるので、画素電極21と接触する部分のドレイン電極16の表面に形成されたAl酸化皮膜17は除去することが好ましい。
【0103】
第2の実施の形態において、前述の第1の実施の形態の変形例と同様にした場合も、第2の金属膜は、画素電極21と接続されるコンタクト部分を除く残余の部分が、全体にわたってAl酸化皮膜17で保護されることになる。これによって、ソース電極15およびドレイン電極16の上面方向へのヒロックの発生を防止し、ヒロックの発生による配線切断を防ぐことができる。またソース電極15およびドレイン電極16の側面方向へのヒロックの発生を防止することができるので、側面方向に発生したヒロックとSi(i)膜13との接触に起因する漏れ電流を防止することができる。またSi(n)膜14をエッチングする工程以降のソース電極15およびドレイン電極16へのプロセスダメージおよび腐食などを大幅に抑制することができる。
【0104】
以上に述べた第1および第2の実施の形態では、TFTの半導体膜として、アモルファスのSi膜であるSi(i)膜13およびSi(n)膜14を適用した場合を例示したが、これに限らず、多結晶または微結晶のSi膜を適用した場合でも、同様の効果を得ることができる。さらに、TFTの半導体膜として、有機半導体膜または酸化物半導体膜を用いる場合でも、ソース電極15およびドレイン電極16とのオーミックコンタクト膜を含み、このオーミックコンタクト膜のバックチャネルエッチングを含む工程で形成されるTFT構造であれば、同様の効果を得ることが可能である。
【0105】
また以上に述べた第1および第2の実施の形態では、本発明のTFTの製造方法を液晶表示装置用のTFT基板100,100Aの製造に適用する場合を例示したが、液晶表示装置に限らず、エレクトロルミネッセンス(Electro-Luminescence;略称:EL)素子を用いた自発光型表示装置のTFT基板、および同じ構造のTFTを備えたその他の半導体装置にも適用することが可能である。
【0106】
図18は、本発明の薄膜トランジスタにおけるホール電流密度の分布を示す図である。図19は、従来技術の薄膜トランジスタにおけるホール電流密度の分布を示す図である。図18および図19には、ゲート電圧が−15Vであり、ドレイン電圧が10Vである場合の薄膜トランジスタ(TFT)におけるオフ電流の原因となるホール電流を計算した結果の分布図を示している。図18は、前述の第1の実施の形態の逆スタガ型TFT1に関する分布図を示している。また図19は、従来技術のTFTとして、Si層であるSi(n)膜およびSi(i)膜のチャネル部側の一方の端部が、ドレイン電極のチャネル部側の端部よりもチャネル方向に延在して、チャネル部の内側に突出した形状の逆スタガ型TFTに関する分布図を示している。図18および図19に示す2つの図では、いずれもSi層内部のホール電流のみを示しており、ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極およびゲート絶縁膜などのSi層以外の膜におけるホール電流は示していない。図18および図19において、濃度の濃い部分ほど、ホール電流密度が大きいことを示している。
【0107】
図18に示す分布図を呈する第1の実施の形態のTFT1において、ゲート電極11は、第1の金属膜としてAl−3at%Ni合金膜を、Arガスを用いたスパッタリングによって厚みが200nmになるように成膜した後、リン酸、硝酸および酢酸を含む溶液でウエットエッチングすることによって形成した。ゲート絶縁膜12としては窒化シリコン(SiN)膜を、Si(i)膜13としては微結晶のSi(i)膜を、Si(n)膜14としてはリン(P)を不純物として添加した微結晶のSi(n)膜を、CVD法を用いて約300℃の基板加熱条件下で順次成膜した。ゲート絶縁膜12の膜厚は400nmとし、Si(i)膜13の膜厚は150nmとし、Si(n)膜14の膜厚は50nmとした。Si(i)膜13およびSi(n)膜14のエッチングは、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによって行った。
【0108】
ソース電極15およびドレイン電極16は、第2の金属膜としてAl−3at%Ni合金膜を、Arガスを用いたスパッタリングによって厚みが200nmになるように成膜した後、リン酸、硝酸および酢酸を含む溶液でウエットエッチングして、パターンを形成した。ウエットエッチングでは、ジャストエッチング時間と等しい時間が経過するまで、オーバーエッチングを行った。このときの第2の金属膜のサイドエッチング量sdは、約1μmであった。ソース電極15およびドレイン電極16の形成後のO2プラズマの照射は、フォトレジストパターン22の後退量rd1が約2μmになる程度まで行った。チャネル部18を形成するときのSi(n)膜14およびSi(i)膜13のエッチングは、塩素を含むガスを用いたドライエッチングによって行った。
【0109】
保護絶縁膜19としては、CVD法を用いて約300℃の基板加熱条件下で、窒化シリコン(SiN)膜を厚みが300nmになるように成膜した。画素ドレインコンタクトホール20を形成するときの保護絶縁膜19のエッチングには、フッ素系ガスを用いたドライエッチング法を用いた。画素電極21となる透明導電性膜としては、IZOを、Arガスを用いたスパッタリング法によって厚みが100nmになるように成膜した。透明導電性膜のエッチングは、シュウ酸系溶液を用いたウエットエッチングによって行った。図19に示す分布図を呈する従来技術のTFTにおける各膜は、Si(n)膜およびSi(i)膜のチャネル部側の一方の端部が、ドレイン電極のチャネル部側の端部よりもチャネル部の内側に突出していること以外は、第1の実施の形態のTFT1における各膜と同様の形状を呈する。
【0110】
図18および図19に示す分布図において、凹んでいる部分は、チャネル部に相当する。図19に示す従来技術の分布図においては、オフ電流の原因となるホール電流が、紙面に向かって右側のドレイン電極端のシリコンの延在部分に集中し、この部分からのホール電流が支配的であることがわかる。
【0111】
この原因は、以下のように考えられる。逆スタガ型TFTでは、n型シリコンとi型シリコンとの界面におけるリンなどの不純物のプロファイルが急峻であるので、ドレイン電極16側、特にドレイン電極16の端部であるドレイン電極端で、電界の集中が発生する。たとえば、TFTに用いられるn型アモルファスシリコンの導電率は、1.0S/m程度と小さいので、ドレイン電極端で発生した電界の集中を十分に緩和することができず、n型シリコンとi型シリコンとの界面の電界が増大する。このドレイン電極端での電界の集中によって、価電子帯と伝導帯との間でトンネル電流が発生し、これがホール電流となる。したがって、従来技術のTFTでは、図19に示すように、ドレイン電極端のシリコン延在部分からのホール電流が支配的となる。
【0112】
他方、図18に示す第1の実施の形態のTFT1に関する分布図においては、紙面に向かって右側のドレイン電極端の近傍を除いて、ホール電流の集中が発生しておらず、ホール電流が低減していることがわかる。
【0113】
本実施の形態では、前述のようにSi層であるSi(n)膜14およびSi(i)膜13のチャネル部18側の端部を、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部と略同一平面上に形成して、ソース電極15およびドレイン電極16の端部からチャネル部18の内側へのSi層の延在部分を無くすことができる。これによって、電界の集中が、ドレイン電極16の端部から外側の保護絶縁膜19の部分に移動するので、n型シリコンとi型シリコンとの界面の電界が低減され、ホール電流となるトンネル電流の発生が抑制される。したがって、図18に示すように、ホール電流の集中が緩和され、ホール電流が低減される。
【0114】
以上のように本実施の形態によれば、Si(n)膜14およびSi(i)膜13のチャネル部18側の端部を、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部と略同一平面上に形成することができるので、薄膜トランジスタの高電界領域におけるオフ電流の低減が可能となる。特に液晶ディスプレイを駆動する薄膜トランジスタは、その駆動方式から、ソース電極とドレイン電極とに交互に高電圧が印加されるので、ソース接地およびドレイン接地のいずれの場合においても、低いオフ電流が要求される。したがって、本実施の形態のように、ソース電極15およびドレイン電極16のいずれの側においても、Si(n)膜14およびSi(i)膜13のチャネル部18側の端部が、ソース電極15およびドレイン電極16のチャネル部18側の端部よりもチャネル部18の内側に突出しない構造が必要である。
【符号の説明】
【0115】
1 薄膜トランジスタ(TFT)、10 透明絶縁性基板、11 ゲート電極、12 ゲート絶縁膜、13 i型アモルファスシリコン薄膜、14 n型アモルファスシリコン薄膜、15 ソース電極、16 ドレイン電極、17 アルミニウム酸化皮膜、18 チャネル部、19 保護絶縁膜、20 画素ドレインコンタクトホール、21 画素電極、22,24 フォトレジストパターン、23 第2の金属膜、100,100A 薄膜トランジスタ(TFT)基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基板上に設けられるゲート電極と、
前記ゲート電極を覆って前記絶縁性基板上に設けられるゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に設けられ、チャネル部が形成される真性シリコン膜と、
前記真性シリコン膜上に設けられ、前記チャネル部で分離される導電性シリコン膜と、
前記導電性シリコン膜上に設けられ、前記チャネル部で分離されるソース電極およびドレイン電極とを備え、
前記ソース電極および前記ドレイン電極の前記チャネル部側の端部は、酸化皮膜で覆われ、
前記導電性シリコン膜の前記チャネル部側の端部は、前記ソース電極および前記ドレイン電極の前記チャネル部側の端部と略同一平面上に形成されることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記ソース電極および前記ドレイン電極の上面のうち、前記ソース電極および前記ドレイン電極上に設けられる上部電極と接する部分を除く残余の部分は、全体にわたって酸化皮膜で覆われることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記ソース電極と前記ゲート絶縁膜との間には、前記ソース電極の全面にわたって、前記真性シリコン膜および前記導電性シリコン膜が介在することを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
真性シリコン膜は、微結晶シリコンの単層膜、またはアモルファスシリコンと微結晶シリコンとの多層膜から成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記導電性シリコン膜の前記チャネル部側の端部は、前記ソース電極および前記ドレイン電極の前記チャネル部側の端部からの前記チャネル部の内側への突出量が、0.1μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
絶縁性基板上にゲート電極を形成する工程と、
前記絶縁性基板の前記ゲート電極が形成された表面上に、ゲート絶縁膜、真性シリコン膜および導電性シリコン膜を順次形成する工程と、
前記導電性シリコン膜上にフォトレジストパターンを形成し、形成したフォトレジストパターンをマスクとして、前記真性シリコン膜および前記導電性シリコン膜をエッチングして、島状にパターニングする工程と、
島状にパターニングされた前記導電性シリコン膜上に金属膜を形成する工程と、
前記金属膜上にフォトレジストパターンを形成し、形成したフォトレジストパターンをマスクとして前記金属膜をエッチングして、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、
前記フォトレジストパターン、前記ソース電極および前記ドレイン電極を、酸素を含むプラズマで処理することによって、前記フォトレジストパターンの側面を後退させるとともに、前記ソース電極および前記ドレイン電極の側面および、前記フォトレジストパターンの後退によって露出した上面に酸化皮膜を形成する工程と、
残存する前記フォトレジストパターンおよび前記酸化皮膜をマスクとして、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間のチャネル部となる部分の少なくとも前記導電性シリコン膜をエッチングする工程と、
残存する前記フォトレジストパターンを除去する工程とを備えることを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項7】
絶縁性基板上にゲート電極を形成する工程と、
前記絶縁性基板の前記ゲート電極が形成された表面上に、ゲート絶縁膜、真性シリコン膜および導電性シリコン膜を順次形成する工程と、
前記導電性シリコン膜上にフォトレジストパターンを形成し、形成したフォトレジストパターンをマスクとして、前記真性シリコン膜および前記導電性シリコン膜をエッチングして、島状にパターニングする工程と、
島状にパターニングされた前記導電性シリコン膜上に金属膜を形成する工程と、
前記金属膜上にフォトレジストパターンを形成し、形成したフォトレジストパターンをマスクとして前記金属膜をエッチングして、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、
前記フォトレジストパターン、前記ソース電極および前記ドレイン電極を、酸素を含むプラズマで処理することによって、前記フォトレジストパターンを除去するとともに、前記ソース電極および前記ドレイン電極の表面全体にわたって酸化皮膜を形成する工程と、
前記酸化皮膜をマスクとして、ソース電極とドレイン電極との間のチャネル部となる部分の少なくとも導電性シリコン膜をエッチングする工程と、
前記酸化皮膜上に保護膜を形成する工程と、
前記保護膜上に形成される上部電極とのコンタクト部となるコンタクトホールを、前記保護膜および前記酸化皮膜を貫通して、前記ソース電極および前記ドレイン電極の少なくとも一方に達するように形成する工程とを備えることを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項8】
絶縁性基板上にゲート電極を形成する工程と、
前記絶縁性基板の前記ゲート電極が形成された表面上に、ゲート絶縁膜、真性シリコン膜、導電性シリコン膜および金属膜を順次形成する工程と、
前記金属膜上に、膜厚の異なる部分を有するフォトレジストパターンを形成し、形成したフォトレジストパターンをマスクとして、前記真性シリコン膜、前記導電性シリコン膜および前記金属膜をエッチングして、島状にパターニングする工程と、
前記フォトレジストパターンを、酸素を含むプラズマで処理することによって、前記フォトレジストパターンの側面を後退させる工程と、
残存する前記フォトレジストパターンをマスクとして前記金属膜をエッチングして、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、
残存する前記フォトレジストパターン、前記ソース電極および前記ドレイン電極を、酸素を含むプラズマで処理することによって、前記フォトレジストパターンの側面を後退させるとともに、前記ソース電極および前記ドレイン電極の側面および、前記フォトレジストパターンの後退によって露出した上面に酸化皮膜を形成する工程と、
残存する前記フォトレジストパターンおよび前記酸化皮膜をマスクとして、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間のチャネル部となる部分の少なくとも導電性シリコン膜をエッチングする工程と、
残存する前記フォトレジストパターンを除去する工程とを備えることを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項9】
絶縁性基板上にゲート電極を形成する工程と、
前記絶縁性基板の前記ゲート電極が形成された表面上に、ゲート絶縁膜、真性シリコン膜、導電性シリコン膜および金属膜を順次形成する工程と、
前記金属膜上に、膜厚の異なる部分を有するフォトレジストパターンを形成し、形成したフォトレジストパターンをマスクとして、前記真性シリコン膜、前記導電性シリコン膜および前記金属膜をエッチングして、島状にパターニングする工程と、
前記フォトレジストパターンを、酸素を含むプラズマで処理することによって、前記フォトレジストパターンの側面を後退させる工程と、
残存する前記フォトレジストパターンをマスクとして前記金属膜をエッチングして、ソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、
残存する前記フォトレジストパターン、前記ソース電極および前記ドレイン電極を、酸素を含むプラズマで処理することによって、前記フォトレジストパターンを除去するとともに、前記ソース電極および前記ドレイン電極の表面全体にわたって酸化皮膜を形成する工程と、
前記酸化皮膜をマスクとして、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間のチャネル部となる部分の少なくとも導電性シリコン膜をエッチングする工程と、
前記酸化皮膜上に保護膜を形成する工程と、
前記保護膜上に形成される上部電極とのコンタクト部となるコンタクトホールを、前記保護膜および前記酸化皮膜を貫通して、前記ソース電極および前記ドレイン電極の少なくとも一方に達するように形成する工程とを備えることを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項10】
真性シリコン膜は、微結晶シリコンの単層膜、またはアモルファスシリコンと微結晶シリコンとの多層膜によって形成されることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1つに記載の薄膜トランジスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−82380(P2011−82380A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234117(P2009−234117)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】