説明

被膜形成方法、絶縁膜を有する構造体及びその製造方法並びに電子部品

【課題】孔部の少なくとも内壁面に均一な被膜を形成する方法、この方法を利用した、絶縁膜を有する構造体及びその製造方法並びに電子部品を提供する。
【解決手段】本発明の被膜形成方法は、開口部の面積が25〜10,000μmであり且つ深さが10〜200μmである孔部を有する基板に、溶剤を塗布する溶剤塗布工程と、樹脂成分及び溶剤を含有し、剪断速度6rpmにおける粘度V(mPa・s)と、剪断速度60rpmにおける粘度V(mPa・s)との比(V/V)が、1.1以上の樹脂組成物を、該樹脂組成物が上記孔部内の上記溶剤と接触するように、上記基板に塗布する樹脂組成物塗布工程と、塗膜を乾燥する乾燥工程と、を備え、該孔部の内壁面及び底面のうちの少なくとも該内壁面に上記樹脂成分を含む被膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被膜形成方法、絶縁膜を有する構造体及びその製造方法並びに電子部品に関する。更に詳しくは、シリコン基板等に設けられた有底孔部の少なくとも内壁面に均一な被膜を形成する方法、この方法を利用した、絶縁膜を有する構造体及びその製造方法並びに電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スルーホール用の孔、ビアの内壁面及び基板両面に金属導体層が形成された絶縁基板を、粘度が20〜200mPa・s、表面張力が30mN/m以下、且つ、チキソトロピー性値が1.0〜3.0の感光性レジスト液中に浸漬し、引き上げることにより、少なくともスルーホールの内壁面に絶縁性被膜を形成する方法が開示されている(特許文献1参照)。このスルーホールに金属銅等を充填することにより、貫通電極を形成することが可能である。
また、非特許文献1には、上下に貫通したシリコンチップと、貫通孔に金属銅が充填された貫通電極が開示されている。その製造方法は、ドライエッチングによりシリコンウェハに深い孔を形成する工程、CVD法により孔の内壁にSiO膜を形成する工程、電解銅メッキにより孔内を金属銅で満たす工程、ウェハの裏側から研磨する工程等を備えている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−158907号公報
【非特許文献1】富坂学ら「デンソーテクニカルレビュー」 Vol.6 No.2(2001) p.78〜84
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている感光性レジスト液によると、スルーホール用の内壁面に、被膜を形成することは可能であるが、貫通孔ではなく、開口部の面積が小さい微細孔(以下、「孔部」という。)の内壁面に被膜を形成しようとすると、組成物の沈降が発生し、孔部が組成物により充填されてしまうといった問題があった。
本発明は、孔部の少なくとも内壁面に均一な被膜を形成する方法、この方法を利用した、絶縁膜を有する構造体及びその製造方法並びに電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記問題点を解決すべく鋭意研究した結果、優れた製膜性を有する組成物を用い、孔部の少なくとも内壁面に均一な被膜を形成する方法、この方法を利用した、絶縁膜を有する構造体及びその製造方法並びに電子部品を見出すに至った。
本発明は、以下に示される。
1.開口部の面積が25〜10,000μmであり且つ深さが10〜200μmである孔部を有する基板に、溶剤を塗布する溶剤塗布工程と、樹脂成分及び溶剤を含有し、剪断速度6rpmにおける粘度V(mPa・s)と、剪断速度60rpmにおける粘度V(mPa・s)との比(V/V)が、1.1以上の樹脂組成物を、該樹脂組成物が上記孔部内の上記溶剤と接触するように、上記基板に塗布する樹脂組成物塗布工程と、塗膜を乾燥する乾燥工程と、を備え、該孔部の内壁面及び底面のうちの少なくとも該内壁面に上記樹脂成分を含む被膜を形成することを特徴とする被膜形成方法。
【0006】
2.上記被膜が、上記孔部の内壁面及び底面の両方に形成される上記1に記載の被膜形成方法。
3.上記樹脂組成物の固形分濃度が、5〜80質量%の範囲にある上記1又は2に記載の被膜形成方法。
4.上記粘度Vが、10〜10,000mPa・sの範囲にある上記1乃至3のいずれかに記載の被膜形成方法。
5.上記樹脂組成物において、剪断速度1.5rpmにおける粘度V(mPa・s)と、剪断速度600rpmにおける粘度V(mPa・s)との比(V/V)が、2.0以上である上記1乃至4のいずれかに記載の被膜形成方法。
6.上記樹脂組成物が、更に、金属酸化物粒子を含有する上記1乃至5のいずれかに記載の被膜形成方法。
7.上記樹脂組成物が、更に、架橋重合体からなる粒子を含有する上記1乃至6のいずれかに記載の被膜形成方法。
【0007】
8.上記1乃至5のいずれかに記載の被膜形成方法に用いられる樹脂組成物であって、
アルカリ可溶性樹脂と、疎水化処理されており且つ平均粒子径が1〜100nmであるシリカと、溶剤と、架橋剤と、を含有することを特徴とする樹脂組成物。
9.更に、キノンジアジド基を有する化合物を含有しており、且つ、上記シリカの含有割合が、本組成物の固形分を100質量%とした場合に、20質量%を超えて、60質量%以下である上記8に記載の樹脂組成物。
【0008】
10.上記1乃至7のいずれかに記載の方法により得られた、上記基板の表面に形成されている被膜及び上記基板の上記孔部の底面に形成されている被膜を除去し、上記孔部の内壁面に形成されている被膜を残存させる表底面側被膜除去工程と、上記孔部の内壁面に残存している被膜を加熱する加熱硬化工程と、を備えることを特徴とする、絶縁膜を有する構造体の製造方法。
11.上記1乃至7のいずれかに記載の方法により得られた、上記孔部の内壁面及び底面を含む上記基板の全表面に形成されている被膜を加熱し、上記樹脂成分の硬化物を含む絶縁膜とする加熱硬化工程と、上記基板の表面に形成されている絶縁膜及び上記基板の上記孔部の底面に形成されている絶縁膜を除去し、上記孔部の内壁面に形成されている絶縁膜を残存させる表底面側絶縁膜除去工程と、を備えることを特徴とする、絶縁膜を有する構造体の製造方法。
12.更に、上記絶縁膜を有する構造体における上記孔部を有さない面から基板を研磨し、該孔部を貫通孔とする研磨工程を備える上記10又は11に記載の絶縁膜を有する構造体の製造方法。
13.上記10乃至12のいずれかに記載の方法により得られたことを特徴とする絶縁膜を有する構造体。
14.上記10乃至12のいずれかに記載の方法により得られた絶縁膜を有する構造体と、該構造体の少なくとも貫通孔内に導電材料が充填されてなる電極部とを含む部材を備えることを特徴とする電子部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の被膜形成方法によれば、特定のチキソトロピー性を有する樹脂組成物を使用することで、基板の孔部の内壁面に均一な被膜を形成することができる。また、孔部の底面にも均一な被膜を形成することができる。
本発明の絶縁膜を有する構造体の製造方法によれば、貫通孔の内壁に均一な絶縁膜を効率よく形成することができる。従って、得られた構造体は、絶縁膜を内壁とする貫通孔内に金属銅等を充填させることにより、貫通電極を容易に形成することができる。また、多孔質膜の改質等にも好適である。
本発明の電子部品によれば、CPU、メモリ、イメージセンサ等の半導体デバイスの実装に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
【0011】
1.被膜形成方法
本発明の被膜形成方法は、開口部の面積が25〜10,000μmであり且つ深さが10〜200μmである孔部を有する基板に、溶剤を塗布する溶剤塗布工程と、樹脂成分及び溶剤を含有し、剪断速度6rpmにおける粘度V(mPa・s)と、剪断速度60rpmにおける粘度V(mPa・s)との比(V/V)が、1.1以上の樹脂組成物を、該樹脂組成物が上記孔部内の上記溶剤と接触するように、上記基板に塗布する樹脂組成物塗布工程と、塗膜を乾燥する乾燥工程と、を備え、該孔部の内壁面及び底面のうちの少なくとも該内壁面に上記樹脂成分を含む被膜を形成することを特徴とする。
【0012】
本発明の被膜形成方法において用いられる基板の構成材料としては、シリコン、各種金属、各種金属スパッタ膜、アルミナ、ガラスエポキシ、紙フェノール、ガラス等が挙げられる。この基板の厚さは、通常、100〜1,000μmである。
上記基板11は、図1の断面図に示されるように、基板11の少なくとも一面側に、表面から内部に縦方向に形成された、開口部の面積が25〜10,000μm、好ましくは100〜10,000μm、より好ましくは250〜7,000μmであり且つ深さが10〜200μm、好ましくは30〜120μm、より好ましくは50〜100μmである孔部111を有する。
この孔部の形状及び数は、特に限定されない。また、上記孔部の形状は、柱状(図1(a)参照)、順テーパー状(図1(b)参照)、逆テーパー状(図1(c)参照)等とすることができ、その横断面形状も、円形、楕円形、多角形等とすることができる。尚、孔部が複数ある場合、各孔部の大きさ及び深さが異なってよいし、隣り合う孔部どうしの間隔(長さ)も特に限定されない。
【0013】
上記孔部形状として、好ましくは、横断面形状が四角形(正方形又は長方形)の柱状もしくは順テーパー状である。
上記孔部が、横断面形状が四角形の柱状である場合、縦断面の四角形におけるアスペクト比(孔部の深さと、孔部底面の1辺の長さとの比)は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜4である。
【0014】
本発明の被膜形成方法を、図2を用いて説明すると、まず、溶剤塗布工程により、溶剤を基板11に塗布する。このとき、溶剤113は、通常、図2(b)のように、基板11に設けられている孔部111内に充填されており、また、基板11の表面を一様に濡らしていてもよい。その後、樹脂組成物塗布工程により、樹脂組成物を基板11に塗布して塗膜115を形成する(図2(c))。このとき、孔部111内では、上記溶剤塗布工程による溶剤と、樹脂組成物塗布工程による樹脂組成物とが混合される。次いで、乾燥工程により、孔部111内に含まれる、上記溶剤塗布工程による溶剤及び上記樹脂組成物中の溶剤を除去し、孔部111の内表面を含む基板11の全表面に形成された被膜119を有する、被膜付き基板1が得られる。
【0015】
以下、各工程について説明する。
上記溶剤塗布工程は、上記基板に溶剤を塗布する工程である。使用する溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ブチルカルビトール等のカルビトール類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸イソプロピル等の乳酸エステル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ−ブチロラクン等のラクトン類が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
上記溶剤塗布工程において、上記溶剤を基板に塗布する方法としては、特に限定されないが、スプレー法、スピンコート法等の塗布法、浸漬法等が挙げられる。
尚、溶剤を塗布することにより、上記孔部内に溶剤が充填された場合の溶剤の充填率は、特に限定されない。
【0017】
上記樹脂組成物塗布工程は、樹脂成分及び溶剤を含有し、特定のチキソトロピー性を有する樹脂組成物を、該樹脂組成物が上記孔部内の上記溶剤と接触するように、上記基板に塗布する工程である。
上記樹脂組成物は、剪断速度6rpmにおける粘度V(mPa・s)と、剪断速度60rpmにおける粘度V(mPa・s)との比(V/V)が、1.1以上であり、好ましくは1.1〜10.0、より好ましくは1.2〜8.0、更に好ましくは1.3〜5.0の範囲にある。上記比(V/V)が、上記範囲にあると、孔部の内壁面及び底面の少なくとも内壁面に対する製膜性に優れ、均一な被膜を得ることができる。
上記樹脂組成物の固形分濃度は、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは20〜60質量%である。
【0018】
尚、上記樹脂組成物の固形分濃度が5〜80質量%の範囲にあるときの粘度Vは、好ましくは10〜10,000mPa・s、より好ましくは20〜7,000mPa・s、更に好ましくは50〜5,000mPa・sである。上記範囲にあると、孔部の内壁面及び底面の少なくとも内壁面に対する製膜性に優れ、より均一な被膜を得ることができる。
【0019】
上記樹脂組成物は、上記のように、剪断速度6rpmにおける粘度V(mPa・s)と、剪断速度60rpmにおける粘度V(mPa・s)との比(V/V)は、1.1以上である。尚、より均一な被膜を得るためには、上記樹脂組成物は、剪断速度1.5rpmにおける粘度V(mPa・s)と、剪断速度600rpmにおける粘度V(mPa・s)との比(V/V)が、2.0以上であることが好ましい。より好ましい比(V/V)は、2.0〜80、更に好ましくは2.0〜50、特に好ましくは3.0〜50の範囲である。
上記粘度は、温度25℃で、剪断速度を、例えば、1rpmから1,000rpmまで上げながら測定された値である。
【0020】
上記樹脂組成物を構成する溶剤としては、特に限定されず、上記溶剤塗布工程において使用される溶剤として例示したものを用いることができる。上記樹脂組成物に含有される溶剤は、上記溶剤塗布工程において用いた溶剤と同じであってよいし、異なってもよい。
また、上記樹脂組成物を構成する樹脂成分としては、特に限定されず、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及びこれら以外の樹脂のいずれでもよいが、熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。
【0021】
上記樹脂組成物を構成する樹脂成分が熱硬化性樹脂を含む場合、この樹脂組成物は、感光性及び非感光性のいずれでもよい。
上記樹脂組成物が、感光性樹脂組成物である場合、ポジ型感光性樹脂組成物及びネガ型感光性樹脂組成物のいずれでもよいが、ポジ型感光性樹脂組成物であることが好ましい。
【0022】
上記ポジ型感光性樹脂組成物としては、例えば、フェノール性水酸基を有する樹脂(以下、「樹脂(A1)」ともいう。);フェノール性水酸基を有する単量体と(メタ)アクリル酸エステルとを含む単量体を用いて得られた共重合体(以下、「樹脂(A2)」ともいう。);カルボキシル基を有する樹脂(以下、「樹脂(A3)」ともいう。)等から選ばれたアルカリ可溶性樹脂[A]と、キノンジアジド基を有する化合物[B]と、を含有する組成物等が挙げられる。
【0023】
上記樹脂(A1)としては、例えば、フェノール類とアルデヒド類とを触媒の存在下で、縮合させることにより得られたノボラック樹脂を用いることができる。
フェノール類としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、α−ナフトール、β−ナフトール等が挙げられる。
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
上記ノボラック樹脂としては、フェノール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、フェノール−ナフトール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
上記ノボラック樹脂以外の樹脂(A1)としては、ポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシスチレンと他の単量体((メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルを除く)との共重合体、ポリイソプロペニルフェノール、イソプロペニルフェノールと他の単量体((メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルを除く)との共重合体、フェノール/キシリレングリコール縮合樹脂、クレゾール/キシリレングリコール縮合樹脂、フェノール/ジシクロペンタジエン縮合樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
上記樹脂(A2)は、フェノール性水酸基を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステルとを含み、且つ、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する化合物を含まない単量体を用いて得られた共重合体である。
フェノール性水酸基を有する単量体としては、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、m−イソプロペニルフェノール、o−イソプロペニルフェノール等が挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。尚、これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステル中のアルキル基の水素原子は、ヒドロキシル基で置換されていてもよい。
【0026】
上記樹脂(A2)の形成に際し、フェノール性水酸基を有する単量体及び(メタ)アクリル酸エステル以外に、重合性不飽和結合を有する化合物を他の単量体として用いてもよい。
他の単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、ビニルキシレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン等の芳香族ビニル化合物;無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の不飽和酸無水物;前記不飽和カルボン酸のエステル;(メタ)アクリロニトリル、マレインニトリル、フマロニトリル、メサコンニトリル、シトラコンニトリル、イタコンニトリル等の不飽和ニトリル;(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、マレインアミド、フマルアミド、メサコンアミド、シトラコンアミド、イタコンアミド等の不飽和アミド;マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等の不飽和イミド;(メタ)アリルアルコール等の不飽和アルコール;N−ビニルアニリン、ビニルピリジン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
上記樹脂(A3)は、単独重合体でも、共重合体でもよく、通常、カルボキシル基を有する化合物(以下、「単量体(m)」という。)を含む単量体を用いて得られた重合体である。
上記単量体(m)としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、4−ビニル安息香酸等の不飽和カルボン酸又は不飽和ジカルボン酸;不飽和ジカルボン酸のモノエステル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
上記樹脂(A3)としては、以下に例示される。
[1]単量体(m)と、フェノール性水酸基を有する単量体とを用いて得られた共重合体
[2]単量体(m)と、フェノール性水酸基を有する単量体と、(メタ)アクリル酸エステルとを用いて得られた共重合体
[3]単量体(m)と、フェノール性水酸基を有する単量体と、芳香族ビニル化合物と、(メタ)アクリル酸エステルとを用いて得られた共重合体
[4]単量体(m)と、芳香族ビニル化合物と、(メタ)アクリル酸エステルとを用いて得られた共重合体
[5]単量体(m)と、芳香族ビニル化合物と、共役ジオレフィンとを用いて得られた共重合体
[6]単量体(m)と、(メタ)アクリル酸エステル、共役ジオレフィンとを用いて得られた共重合体
[7]単量体(m)と、(メタ)アクリル酸エステル、脂肪酸ビニル化合物とを用いて得られた共重合体
【0029】
尚、上記態様において、フェノール性水酸基を有する単量体、(メタ)アクリル酸エステル及び芳香族ビニル化合物は、上記例示したものを用いることができる。
また、共役ジオレフィンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,4−ジメチルブタジエン等が挙げられる。
脂肪酸ビニル化合物としては、酢酸ビニル、クロトン酸ビニル等が挙げられる。
【0030】
上記アルカリ可溶性樹脂[A]は、重合体を1種単独で含まれるものであってよいし、2種以上の組合せで含まれるものであってもよい。本発明においては、フェノール性水酸基を有する樹脂を含むことが好ましく、特に、ノボラック樹脂、及び、ヒドロキシスチレンを用いて得られた共重合体が好ましい。
【0031】
上記アルカリ可溶性樹脂[A]の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定することができ、好ましくは2000以上、より好ましくは2000〜50000程度である。この範囲にあると、得られる硬化膜の機械的物性、耐熱性及び電気絶縁性に優れる。
【0032】
上記ポジ型感光性樹脂組成物を構成する上記アルカリ可溶性樹脂[A]の含有割合は、前記ポジ型感光性樹脂組成物に含まれる固形分を100質量%とした場合、好ましくは20〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%である。この範囲にあると、アルカリ溶解性に優れるとともに、得られる硬化膜の機械的物性、耐熱性及び電気絶縁性に優れる。
【0033】
次に、上記キノンジアジド化合物[B]は、フェノール化合物の、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸エステル又は1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸エステルである。
【0034】
上記フェノール化合物は、フェノール性水酸基を少なくとも1つ有する化合物であれば、特に限定されないが、下記一般式(1)〜(5)で表される化合物が好ましい。
【化1】

〔式中、X〜X10は、それぞれ相互に同一又は異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はヒドロキシル基である。尚、X〜Xのうちの少なくとも1つはヒドロキシル基である。また、Aは単結合、O、S、CH、C(CH、C(CF、C=O、又はSOである。〕
【0035】
【化2】

〔式中、X11〜X24は、それぞれ相互に同一又は異なってもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はヒドロキシル基である。尚、X11〜X15のうちの少なくとも1つはヒドロキシル基である。また、R〜Rは、それぞれ相互に同一又は異なってもよく、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。〕
【0036】
【化3】

〔式中、X25〜X39は、それぞれ相互に同一又は異なってもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はヒドロキシル基である。尚、X25〜X29のうちの少なくとも1つ及びX30〜X34のうちの少なくとも1つはヒドロキシル基である。また、Rは、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。〕
【0037】
【化4】

〔式中、X40〜X58は、それぞれ相互に同一又は異なってもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はヒドロキシル基である。尚、X40〜X44のうちの少なくとも1つ、X45〜X49のうちの少なくとも1つ及びX50〜X54のうちの少なくとも1つはヒドロキシル基である。また、R〜Rは、それぞれ相互に同一又は異なってもよく、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。〕
【0038】
【化5】

〔式中、X59〜X72は、それぞれ相互に同一又は異なってもよく、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又はヒドロキシル基である。尚、X59〜X62のうちの少なくとも1つ及びX63〜X67のうちの少なくとも1つはヒドロキシル基である。〕
【0039】
上記フェノール化合物としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,4’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,4−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、4,6−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕フェニル]エタン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
従って、上記キノンジアジド化合物[B]としては、これらのフェノール化合物から選ばれた少なくとも1種と、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とを反応させて得られたエステル化物等を、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
上記ポジ型感光性樹脂組成物を構成する上記キノンジアジド化合物[B]の含有割合は、上記アルカリ可溶性樹脂[A]を100質量部としたときに、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは10〜50質量部、更に好ましくは15〜50質量部である。この範囲にあると、露光部・未露光部の溶解度の差が大きく、アルカリ溶解性に優れる。
【0041】
上記ポジ型感光性樹脂組成物は、更に、架橋剤;金属酸化物粒子;架橋重合体からなる粒子(以下、「架橋重合体粒子」という。);低分子フェノール性化合物等を含有したものとすることができる。
【0042】
上記架橋剤としては、分子中に少なくとも2つ以上のアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物;エポキシ基含有化合物;アルデヒド基を有するフェノール化合物;メチロール基を有するフェノール化合物;チイラン環含有化合物;オキセタニル基含有化合物;イソシアネート基含有化合物(ブロック化されたものを含む)等が挙げられる。
【0043】
上記分子中に少なくとも2つ以上のアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物としては、(ポリ)メチロールメラミン、(ポリ)メチロールグリコールウリル、(ポリ)メチロールベンゾグアナミン、(ポリ)メチロールウレア等の窒素化合物中の活性メチロール基(CHOH基)の全部又は一部(少なくとも2つ)がアルキルエーテル化された化合物を用いることができる。ここで、アルキルエーテルを構成するアルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基等が挙げられ、複数のアルキル基は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、アルキルエーテル化されていないメチロール基は、一分子内で自己縮合していてもよく、二分子間で縮合して、その結果、オリゴマー成分が形成されていてもよい。具体例としては、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラブトキシメチルグリコールウリル等が挙げられる。尚、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
上記エポキシ基含有化合物としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、テトラフェノール型エポキシ樹脂、フェノール−キシリレン型エポキシ樹脂、ナフトール−キシリレン型エポキシ樹脂、フェノール−ナフトール型エポキシ樹脂、フェノール−ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、エポキシシクロヘキセン樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
上記のエポキシ基含有化合物のうち、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレン/ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレン/ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等が好ましい。
【0046】
上記アルデヒド基を有するフェノール化合物としては、o−ヒドロキシベンズアルデヒド等が挙げられる。
また、メチロール基を有するフェノール化合物としては、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール等が挙げられる。
【0047】
上記ポジ型感光性樹脂組成物が、上記架橋剤を含有する場合、その含有割合は、上記アルカリ可溶性樹脂[A]を100質量部としたときに、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは10〜75質量部、更に好ましくは10〜50質量部である。この範囲にあると、アルカリ溶解性に優れるとともに、得られる硬化膜の機械的物性、耐熱性及び電気絶縁性に優れる。
【0048】
上記金属酸化物粒子としては、シリカ(コロイダルシリカ,アエロジル,ガラス等)、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、酸化亜鉛、酸化銅、酸化鉛、酸化イットリウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0049】
上記金属酸化物粒子の表面は、上記アルカリ可溶性樹脂[A]との親和性や相溶性を高める等のために、官能基等により修飾されていてもよい。
また、上記金属酸化物粒子の形状は、特に限定されず、球状、楕円形状、偏平状、ロッド状、繊維状等とすることができる。
【0050】
上記金属酸化物粒子の平均粒径は、1〜500nmであり、好ましくは5〜200nm、より好ましくは10〜100nmである。上記金属酸化物粒子の平均粒径が上記範囲にあると、放射線に対する透明性、アルカリ溶解性等に優れる。
上記金属酸化物粒子は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記金属酸化物粒子としては、チキソトロピー性の制御のしやすさから、シリカが好ましい。特に、一部が疎水化処理されたシリカ(以下、「疎水化シリカ」ともいう。)が好ましい。
【0051】
上記疎水化シリカの疎水化率は、20〜80%であることが好ましく、より好ましくは30〜70%、更に好ましくは40〜70%である。この疎水化率が20〜80%である場合には、疎水化シリカの溶剤への分散性及び上記樹脂との相溶性が良好となり、更には上記樹脂組成物のチキソトロピー性を発現させることができるため好ましい。
尚、上記樹脂組成物におけるシリカの疎水化率は、疎水化前及び疎水化後のシリカ表面のシラノール基数を0.1N水酸化ナトリウム水溶液による中和滴定法により測定し、下式により求められた値である。
疎水化率(%)=(疎水化後のシラノール基数/疎水化前のシラノール基数)×100
【0052】
また、上記シリカが疎水化シリカである場合の平均粒子径は1〜100nmであることが好ましく、より好ましくは5〜80nm、更に好ましくは10〜50nmである。この平均粒子径が、1〜100nmである場合には、露光光に対する十分な透明性、及び十分なアルカリ溶解性等を得ることができる。
尚、この平均粒子径は、光散乱流動分布測定装置(大塚電子社製、型番「LPA−3000」)を用いて、シリカ粒子の分散液を常法に従って希釈して測定した値である。また、この平均粒子径は、シリカ粒子の分散条件により制御することができる。
【0053】
また、上記疎水化シリカにおけるナトリウム含有量は、1ppm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5ppm以下、更に好ましくは0.1ppm以下である。このナトリウム含有量が1ppm以下である場合には、得られる樹脂組成物におけるナトリウム含有量を1ppm以下とすることができる。
尚、疎水化シリカにおけるナトリウム含有量は、原子吸光計(パーキネルマー製、型番「Z5100」)等により測定することができる。
【0054】
上記ポジ型感光性樹脂組成物が、上記金属酸化物粒子を含有する場合、その含有割合は、上記アルカリ可溶性樹脂[A]を100質量部としたときに、好ましくは10〜200質量部、より好ましくは50〜200質量部、更に好ましくは70〜150質量部である。上記金属酸化物粒子の含有割合が上記範囲にあると、好適なチキソトロピー性を有し、有底孔部の内壁面に均一な被膜を形成することができる。
また、上記金属酸化物粒子として、上記疎水化シリカを含有する場合、疎水化シリカの含有割合は、樹脂組成物における固形分全体を100質量%とした場合に、20質量%を超えて、60質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以上、60質量%以下、更に好ましくは30質量%以上、50質量%以下である。この含有割合が20質量%を超えて、60質量%以下である場合には、十分なチキソトロピー性を得ることができ、有底孔部の内壁面に均一な被膜を形成することができる。
【0055】
尚、上記ポジ型感光性樹脂組成物は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩;リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等のリン酸塩;炭化物;窒化物等からなる他の無機粒子を含有してもよい。
【0056】
上記架橋重合体粒子としては、重合性不飽和結合を2個以上有する架橋性化合物(以下、「架橋性単量体」という。)を含む単量体の単独重合体又は共重合体を用いることができる。
上記架橋性単量体としては、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記のうち、ジビニルベンゼンが好ましい。
【0057】
上記架橋重合体粒子が共重合体である場合、上記架橋性単量体と重合させる他の単量体としては、特に限定されないが、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトリル基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等の1種以上の官能基を有する不飽和化合物;ウレタン(メタ)アクリレート;芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリル酸エステル;ジエン化合物等を用いることができる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
上記架橋重合体粒子としては、上記架橋性単量体と、ヒドロキシル基を有する不飽和化合物及び/又はカルボキシル基を有する不飽和化合物とからなる共重合体(d1)、並びに、上記架橋性単量体と、ヒドロキシル基を有する不飽和化合物及び/又はカルボキシル基を有する不飽和化合物と、他の単量体からなる共重合体(d2)が好ましく、特に、共重合体(d2)が好ましい。
【0059】
ヒドロキシル基を有する不飽和化合物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
カルボキシル基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、コハク酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、マレイン酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、フタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸−β−(メタ)アクリロキシエチル等が挙げられる。
【0060】
上記共重合体(d2)の形成に用いられる他の単量体のうち、ニトリル基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−クロロメチルアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、クロトン酸ニトリル、ケイ皮酸ニトリル、イタコン酸ジニトリル、マレイン酸ジニトリル、フマル酸ジニトリル等が挙げられる。
アミド基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、クロトン酸アミド、ケイ皮酸アミド等が挙げられる。
アミノ基を有する不飽和化合物としては、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ基を有する不飽和化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、グリコールのジグリシジルエーテル等と(メタ)アクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等との反応によって得られるエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0061】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとポリイソシアナートとの反応によって得られる化合物等が挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メトキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン、クロロプレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。
【0062】
上記架橋重合体粒子が、共重合体(d2)からなる場合、架橋性単量体からなる単位量(d21)、ヒドロキシル基を有する不飽和化合物からなる単位及び/又はカルボキシル基を有する不飽和化合物からなる単位の合計量(d22)、並びに、他の単量体からなる単位量(d23)は、共重合体(d2)を構成する単位量の合計、即ち、(d21)、(d22)及び(d23)の和を100mol%とした場合に、それぞれ、好ましくは0.1〜10mol%、5〜50mol%及び40〜94.9mol%、より好ましくは0.5〜7mol%、6〜45mol%及び48〜93.5mol%、更に好ましくは1〜5mol%、7〜40mol%及び55〜92mol%である。各単位量の割合が上記範囲にある場合、形状安定性、及び、アルカリ可溶性樹脂との相溶性に優れた架橋重合体粒子とすることができる。
【0063】
また、上記架橋重合体粒子は、ゴムでも樹脂でもよく、そのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されない。好ましいTgは20℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは0℃以下である。尚、下限は、通常、−70℃以上である。
【0064】
上記架橋重合体粒子は、粒子状であり、その平均粒径は、好ましくは30〜100nm、より好ましくは40〜90nm、更に好ましくは50〜80nmである。上記架橋重合体粒子の平均粒径が上記範囲にあると、アルカリ可溶性樹脂との相溶性、アルカリ溶解性等に優れる。尚、上記平均粒径とは、光散乱流動分布測定装置「LPA−3000」(大塚電子社製)を用い、架橋重合体粒子の分散液を常法に従って希釈して測定した値である。
【0065】
上記ポジ型感光性樹脂組成物が、上記架橋重合体粒子を含有する場合、その含有割合は、上記アルカリ可溶性樹脂[A]を100質量部としたときに、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは5〜80質量部、更に好ましくは5〜50質量部である。上記架橋重合体粒子の含有割合が上記範囲にあると、得られる硬化膜の耐熱衝撃性等に優れる。
【0066】
また、上記低分子フェノール性化合物としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,3−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、1,4−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]ベンゼン、4,6−ビス[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]−1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕フェニル]エタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
上記ポジ型感光性樹脂組成物が、上記低分子フェノール性化合物を含有する場合、その含有割合は、上記アルカリ可溶性樹脂[A]を100質量部としたときに、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜15質量部、更に好ましくは3〜10質量部である。上記低分子フェノール性化合物の含有割合が上記範囲にあると、得られる硬化物の耐熱性を損なうことなく、アルカリ性を向上させることができる。
【0068】
上記樹脂組成物塗布工程に用いる樹脂組成物が、上記ポジ型感光性樹脂組成物である場合、その固形分濃度は、好ましくは、5〜80質量%、より好ましくは10〜60質量%、更に好ましくは25〜60質量%である。
【0069】
上記樹脂組成物が、非感光性樹脂組成物である場合、アルカリ可溶性樹脂及び架橋剤を含有する硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
上記アルカリ可溶性樹脂としては、フェノール性水酸基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、フェノール性水酸基及びアルコール性水酸基を有する樹脂、並びに、カルボキシル基及びアルコール性水酸基を有する樹脂を用いることが好ましい。これらは、単独で用いてよいし、組み合わせて用いてもよい。尚、上記ポジ型感光性樹脂組成物の構成成分として例示した樹脂をそのまま用いることもできる。
【0070】
また、上記架橋剤としては、分子中に少なくとも2つ以上のアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物、並びに、エポキシ基含有化合物を用いることが好ましい。これらは、単独で用いてよいし、組み合わせて用いてもよい。尚、上記ポジ型感光性樹脂組成物の構成成分として例示した架橋剤をそのまま用いることもできる。
上記架橋剤として、分子中に少なくとも2つ以上のアルキルエーテル化されたアミノ基を有する化合物を用いる場合、非感光性樹脂組成物中の含有割合は、上記アルカリ可溶性樹脂を100質量部としたときに、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは5〜50質量部である。上記化合物の含有割合が上記範囲にあると、得られる硬化膜の機械的物性、耐熱性及び電気絶縁性に優れる。
また、上記架橋剤として、エポキシ基含有化合物を用いる場合、非感光性樹脂組成物中の含有割合は、上記アルカリ可溶性樹脂を100質量部としたときに、好ましくは1〜70質量部、より好ましくは3〜30質量部である。上記エポキシ基含有化合物の含有割合が上記範囲にあると、得られる硬化膜の機械的物性、耐熱性及び電気絶縁性に優れる。
【0071】
上記非感光性樹脂組成物は、更に、金属酸化物粒子、架橋重合体粒子、低分子フェノール性化合物等を含有したものとすることができ、これらは、上記ポジ型感光性樹脂組成物の構成成分として例示したものをそのまま用いることができる。
【0072】
また、本発明の被膜形成方法に用いられる樹脂組成物は、上記アルカリ可溶性樹脂と、疎水化処理されており且つ平均粒子径が1〜100nmである上記シリカと、上記溶剤と、上記架橋剤と、を含有するものとすることができる。更には、上記キノンジアジド基を有する化合物を含有するものとすることができる。
【0073】
上記樹脂組成物塗布工程に用いる樹脂組成物が、上記非感光性樹脂組成物である場合、その固形分濃度は、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは10〜60質量%である。
【0074】
上記樹脂組成物塗布工程において、特定の物性を有する樹脂組成物を、上記基板に塗布する方法は、該樹脂組成物が上記孔部内の溶剤と接触するように塗工される方法であれば、特に限定されず、スピンコート法、スプレー法、バーコート法等が挙げられる。これらのうち、スピンコート法が好ましい。
尚、上記樹脂組成物塗布工程においては、樹脂組成物の固形分濃度、粘度等が考慮されて、後に進められる乾燥工程により、上記基板の表面に形成される被膜の厚さが0.1〜10μmの範囲に入るように、塗膜を形成することが好ましい。
【0075】
上記樹脂組成物塗布工程において、樹脂組成物が塗布されると、基板11の表面には、均一な塗膜115が形成され、孔部内においては、上記溶剤塗布工程において充填された溶剤と、樹脂組成物とからなる混合物116が収容されることとなる(図2(c)参照)。
【0076】
次に、上記乾燥工程は、上記樹脂組成物塗布工程により形成された塗膜を乾燥する工程、即ち、塗膜に含まれる溶剤のみを除去する工程である。
乾燥温度は、上記溶剤塗布工程において充填された溶剤の沸点、又は、上記溶剤塗布工程において充填された溶剤と、樹脂組成物とからなる混合物116に含まれる混合溶剤の沸点を考慮して選択される。
また、乾燥条件は、特に限定されないが、一定温度で行ってよいし、昇温又は降温しながら行ってよいし、これらを組み合わせてもよい。また、圧力についても、大気圧下で行ってよいし、真空下で行ってもよい。更に、雰囲気ガス等も特に限定されない。
【0077】
上記乾燥工程によれば、溶剤が除去されて、少なくとも孔部の内壁面を含む基板表面には、樹脂組成物の固形分からなる均一な被膜が形成される(図2(d)参照)。図2(d)に示される被膜付き基板1は、孔部を有する基板11と、孔部以外の基板11の全表面に形成されている被膜119と、孔部の内壁面に形成されている被膜117と、孔部の底面に形成されている被膜118とを備える。これらの被膜は、通常、連続相を形成しているが、被膜117及び118のみが連続相を形成する場合がある。また、各被膜の厚さについて、被膜119の厚さと、孔部の内壁面の被膜117の厚さと、孔部の底面の被膜118の厚さは、通常、異なるが、樹脂組成物の種類、固形分濃度、粘度等によっては、孔部の内壁面の被膜117の厚さ、及び、孔部の底面の被膜118の厚さが、同一又はほぼ同一となることがある。
【0078】
2.絶縁膜を有する構造体及びその製造方法
本発明の絶縁膜を有する構造体の製造方法(以下、「構造体の製造方法(I)」という。)は、図2(d)及び図3(a)に示される、上記本発明の被膜形成方法により得られた被膜付き基板1を用い、上記基板11の表面に形成されている被膜119及び上記基板11の上記孔部の底面に形成されている被膜118を除去し、上記孔部の内壁面に形成されている被膜117を残存させる表底面側被膜除去工程と、上記孔部の内壁面に残存している被膜117を加熱する加熱硬化工程と、を備えることを特徴とする。
【0079】
本発明の構造体の製造方法(I)においては、上記被膜117〜119が、ポジ型感光性樹脂組成物からなることが好ましく、この場合について、図3を用いて説明する。
上記表底面側被膜除去工程は、上記基板の表面に形成されている被膜119及び上記基板の上記孔部の底面に形成されている被膜118を除去し、上記孔部の内壁面に形成されている被膜117を残存させる工程である。
【0080】
まず、図3(a)に示される被膜付き基板1に対して、上方から、紫外線、可視光線、遠紫外線、X線、電子線等を照射し、上記基板11の表面に形成されている被膜119及び上記基板11の孔部の底面に形成されている被膜118を露光する。このとき、上記孔部の内壁面に形成されている被膜117には露光しないようにする。
露光量は、使用する光源、被膜の厚さ等によって、適宜、選択されるが、例えば、厚さが5〜50μm程度の被膜に対して、高圧水銀灯から紫外線を照射する場合、好ましい露光量は、1,000〜20,000J/m程度である。
図3(b)に示される被膜露光部128及び129は、アルカリ可溶性となるので、アルカリ性溶液を用いて処理することにより、上記孔部の内壁面に形成されている被膜117を残存させることができる。
上記アルカリ性溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の水溶液、又は、この水溶液に、メタノール、エタノール等の水溶性の有機溶剤、界面活性剤等が適量添加された溶液等を用いることができる。
アルカリ性溶液で処理した後、水洗及び乾燥することにより、孔部の内壁面のみに被膜117を有する基板を得ることができる(図3(c)参照)。
【0081】
加熱硬化工程は、上記孔部の内壁面に残存している被膜117を加熱する工程であり、この工程により、被膜117を硬化膜217として、絶縁膜を有する構造体2を得ることができる(図3(d)参照)。
加熱方法は、特に限定されないが、通常、100〜250℃の範囲の温度で、30分〜10時間程度とすることが好ましい。一定条件で加熱してよいし、多段階で加熱してもよい。加熱装置としては、オーブン、赤外線炉等を用いることができる。
図3(d)に示される絶縁膜を有する構造体2は、孔部を有する基板11と、この基板の孔部の内壁面に形成された硬化膜217とを備える。
【0082】
尚、本発明の構造体の製造方法(I)においては、上記加熱硬化工程の後、上記基板11における孔部を有さない面から研磨し、孔部を貫通孔22とする研磨工程を更に備えることができる(図3(e)参照)。
研磨方法は、特に限定されないが、化学機械研磨法等を適用することができる。
図3(e)に示される絶縁膜を有する構造体2’は、貫通孔22を有する基板11と、この貫通孔22の内壁面に形成された硬化膜217とを備える。
【0083】
他の本発明の絶縁膜を有する構造体の製造方法(以下、「構造体の製造方法(II)」という。)は、図2(d)及び図4(a)に示される、上記本発明の被膜形成方法により得られた被膜付き基板1を用い、上記孔部の内壁面及び底面を含む上記基板の全表面に形成されている被膜117、118及び119を加熱し、上記樹脂成分の硬化物を含む絶縁膜とする加熱硬化工程と、上記基板の表面に形成されている絶縁膜及び上記基板の上記孔部の底面に形成されている絶縁膜を除去し、上記孔部の内壁面に形成されている絶縁膜を残存させる表底面側絶縁膜除去工程と、を備えることを特徴とする。
【0084】
本発明の構造体の製造方法(II)においては、上記被膜が、非感光性樹脂組成物からなることが好ましく、この場合について、図4を用いて説明する。
上記加熱硬化工程は、上記孔部の内壁面及び底面を含む上記基板の全表面に形成されている被膜117、118及び119を加熱し、上記樹脂成分の硬化物を含む絶縁膜とする工程である(図4(b)参照)。
加熱方法は、特に限定されないが、本発明の構造体の製造方法(I)における加熱硬化工程と同様とすることができる。
上記加熱硬化工程により、図4(b)に示される構造体が得られ、この構造体は、孔部を有する基板11と、上記基板の表面に形成されている絶縁膜219と、上記孔部の内壁面に形成されている絶縁膜217と、上記孔部の底面に形成されている絶縁膜218とを備える。
【0085】
次に、上記表底面側絶縁膜除去工程は、上記基板の表面に形成されている絶縁膜219及び上記基板の上記孔部の底面に形成されている絶縁膜218を除去し、上記孔部の内壁面に形成されている絶縁膜217を残存させる工程である。
上記絶縁膜218及び219を選択的に除去する方法としては、異方性エッチング(ドライエッチング)等が挙げられる。
上記表底面側絶縁膜除去工程により、図4(c)に示される絶縁膜を有する構造体2が得られ、この構造体2は、孔部を有する基板11と、この基板の孔部の内壁面に形成された硬化膜217とを備える。
【0086】
尚、本発明の構造体の製造方法(II)においても、上記表底面側絶縁膜除去工程の後、上記本発明の構造体の製造方法(I)と同様に、上記基板11における孔部を有さない面から研磨し、孔部を貫通孔22とする研磨工程を更に備えることができる(図4(d)参照)。
図4(d)に示される絶縁膜を有する構造体2’は、貫通孔22を有する基板11と、この貫通孔22の内壁面に形成された硬化膜217とを備える。
【0087】
3.電子部品
本発明の電子部品は、上記本発明の構造体の製造方法により得られた、絶縁膜を有する構造体(内壁に絶縁膜が形成された貫通孔を有する構造体)と、この構造体の少なくとも貫通孔内に導電材料が充填されてなる電極部(導電材料充填部)とを含む部材を備えることを特徴とする。
本発明の電子部品としては、例えば、図3(e)及び図4(d)に示される構造体2’と、この構造体2’の少なくとも貫通孔内の電極部(導電材料充填部)311とを含む部材3(図5(g)参照)を備えるものとすることができる。
【0088】
上記部材3について説明する。
上記部材3を構成する上記電極部311の形成材料(導電材料)としては、銅、銀、タングステン、タンタル、チタン、ルテニウム、金、スズ、アルミニウム、及び、これらを含む合金から選ばれたもの等が用いられる。
上記電極部311は、図5(g)のように、その表面部が、基板11の平滑表面より突き出した凸状であってよいし、基板11と面一となっていてもよい。また、上記電極部311の表面は、平滑面であってよいし、粗面であってもよい。
【0089】
図5(g)に示される部材3の製造方法の一例を、図5を用いて説明する。
まず、図3(d)及び図4(c)に示される絶縁膜を有する構造体2を準備する(図5(a)参照)。この構造体2の孔部を有する側の表面に対して、Cuスパッタ等を行い、孔部の内表面を含む全ての構造体2表面に、厚さ10〜200nmの銅膜(シード層)23a及び23bを形成する(図5(b)参照)。その後、孔部の内表面以外の銅膜23a表面に、印刷等により、絶縁性レジスト被膜24を形成する(図5(c)参照)。次いで、硫酸銅水溶液等を用いて孔内へのCuの充填メッキを行う(図5(d)参照)。その後、所定の剥離液等を用いて、絶縁性レジスト被膜24を剥離する(図5(e)参照)。次いで、希硫酸、希塩酸等を用いたエッチングにより、基板11の表面に形成されている銅膜23aを除去する(図5(f)参照)。そして、基板11の裏面から、孔部に充填された金属銅が露出するまで研磨し、図5(g)に示される、金属銅充填部311からなる貫通電極を備える部材3を得る。
【0090】
上記貫通電極を備える部材は、図6に示される部材3’とすることもできる。この部材3’は、表裏に貫通し、且つ、内壁面に絶縁膜217が形成されてなる貫通孔に、導電材料が充填された導電材料充填部311を有する基板11と、この導電材料充填部311の下側露出面(図面の下方側露出面)を少なくとも被覆する電極パッド313とを備える。
図6の部材3’は、図5(g)に示される部材3の導電材料充填部311の下方側露出面(図5(g)の下側)に、電極パッドを形成する電極パッド形成工程を備える方法により製造することができる。この電極パッド形成工程の具体的な方法としては、メッキ、導電ペーストの塗布等が挙げられる。他の製造方法については、後述する。
【0091】
また、図7に示される部材3"は、図5(g)に示される部材3、又は、図6に示される部材3’を用いてなる例である。
この部材3"は、金属銅充填部(貫通電極)311a及び311bの下側露出面(図面の下方側露出面)に、それぞれ、電極パッド313a及び313bを配設した上側部材31、並びに、金属銅充填部(貫通電極)321a及び321bの下側露出面(図面の下方側露出面)に、それぞれ、電極パッド323a及び323bを配設した下側部材32を用いて、上側部材31の電極パッド313aの表面と、下側部材32の金属銅充填部(貫通電極)321aの表面とを接合し、且つ、上側部材31の電極パッド313bの表面と、下側部材32の金属銅充填部(貫通電極)321bの表面とを接合してなる複合部材である。上側部材31及び下側部材32の界面には絶縁層34が配されている(図7参照)。電極パッド313a及び金属銅充填部(貫通電極)321a等の接合方法は、特に限定されないが、例えば、熱圧着(熱を加えながら圧を加える)等の方法が挙げられる。
【0092】
本発明の電子部品は、図5(g)に示される部材3、図6に示される部材3’、図7に示される部材3"等が配設されたものとすることができる。例えば、図8の電子部品4は、図7に示される部材3"の電極パッド323a及び323bと、インターポーザー41とが、このインターポーザー41の表面に配設された2つのバンプ42を介して導通接続されてなり、更に、インターポーザー41の下方側に他部材等と導通接続するためのバンプ43が配設されてなるものである。
【0093】
本発明の電子部品は、上記部材3、3’及び3"等を含む複合体であり、例えば、他の基板、層間絶縁膜、他の電極等他の部材を備える複合体(回路基板、半導体デバイス、センサ等)とすることができる。
【0094】
尚、図6に示される部材3’は、予め、導電材層313が形成されており、孔部の底面が導電材層313である複合基板を用いて、図3(a)〜(c)の工程、又は、図4(a)〜(c)の工程により得られる部材2’(図3(d)又は図4(d))の貫通孔の開口部下側(図3(e)の下側又は図4(d)の下側)に導電材層313を有する孔部に、図5(b)〜(f)の工程により導電材料を充填する工程を備える方法により製造することができる。
更に、図9(a)に示される凹部を有する積層基板6を用い、本発明の被膜形成方法、及び、絶縁膜を有する構造体の製造方法を適用して製造することもできる。
図9(a)に示される積層基板6は、シリコン、各種金属、各種金属スパッタ膜、アルミナ、ガラスエポキシ、紙フェノール、ガラス等からなり、一面から他面に、柱状(図1(a)参照)、順テーパー状(図1(b)参照)、逆テーパー状(図1(c)参照)等の貫通孔を有する基板61と、上記貫通孔を塞ぐように基板61の一面側に配設された導電材層63とを備える。この積層基板6は、導電材層63により、貫通孔の一方が塞がれて、凹部を有している。尚、この積層基板6は、貫通孔を有さない平板状基板と、導電材層とからなる積層体の、該平板状基板の表面から、導電材層を貫通させないように切削加工して得られたものとすることもできる。
従って、上記基板61の厚さが、好ましくは10〜200μm、より好ましくは30〜120μm、更に好ましくは50〜100μmであり、凹部の開口部の面積、横断面形状等を、上記本発明の被膜形成方法における説明と同様とし、上記本発明の被膜形成方法、及び、絶縁膜を有する構造体の製造方法を適用することにより、図9(e)に示される部材3’、即ち、図6に示される部材3’を製造することができる。
【0095】
図9(e)に示される部材3’の製造方法を簡単に説明する。まず、積層基板6を構成する基板61の表面に、溶剤を塗布し(溶剤塗布工程)、その後、上記のように特定のチキソトロピー性を有する樹脂組成物を塗布する(樹脂組成物塗布工程)ことにより、塗膜を形成する。次いで、基板61の表面における樹脂組成物からなる塗膜、及び、凹部内の混合物を乾燥して、溶剤を除去し、基板61の表面、凹部の内壁面、及び、導電材層63の凹部側表面に、被膜(それぞれ、621,622及び623)を形成し、被膜付き基板7を得る(図9(b)参照)。
その後、樹脂組成物の種類に応じ、上記本発明の絶縁膜を有する構造体の製造方法を適用して、凹部の内壁面に絶縁膜625を有する積層構造体8を得る(図9(c)参照)。
【0096】
次いで、凹部を貫通させないように、導電材層63の一部をエッチング等により除去して電極パッド635を形成し(図9(d)参照)、凹部に、銅、銀、タングステン、タンタル、チタン、ルテニウム、金、スズ、アルミニウム、及び、これらを含む合金から選ばれた導電材料を充填することにより、図9(e)に示される、表裏に貫通し、且つ、内壁面に絶縁膜625が形成されてなる貫通孔に、導電材料が充填された導電材料充填部66を有する基板61と、この導電材料充填部66の下方側露出面(図9(e)の下側)を少なくとも被覆する電極パッド635とを備える部材3’を得ることができる。
従って、図9(a)に示される積層基板6を用いて得られた部材3’を用いて本発明の電子部品を構成させることもできる。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0098】
[1]実施例1
(1)樹脂組成物の調製及び粘度測定
フェノール樹脂(商品名「スミライトレジンS−2」、住友ベークライト社製)100質量部、メラミン架橋剤(商品名「サイメル300」、三井サイテック社製)30質量部、及び、平均粒径10〜20nmのシリカ粒子(商品名「MEK−ST」、新中村化学社製、ナトリウム含有量:800ppm)100質量部を、固形分濃度が47質量%となるように、乳酸エチル及びメチルエチルケトンの混合溶媒(混合比60/40)中で分散させ、樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物について、レオメーター(型名「AR2000」、ティ・エイ・インスツルメント社製)を用い、温度25℃で、剪断速度を1rpmから1,000rpmまで上げていき、1.5、5、6、50、60及び600rpmにおける粘度を測定し、剪断速度6rpmにおける粘度V(=900mPa・s)と、剪断速度60rpmにおける粘度V(mPa・s)との比(V/V)、剪断速度1.5rpmにおける粘度V(mPa・s)と、剪断速度600rpmにおける粘度V(mPa・s)との比(V/V)、並びに、剪断速度5rpmにおける粘度V(mPa・s)と、剪断速度50rpmにおける粘度V(mPa・s)との比(V/V)を算出した(表1参照)。
【0099】
(2)被膜形成
表面に、開口部形状が正方形(80μm×80μm)、深さが100μm、及び、底面形状が正方形(60μm×60μm)である順テーパー状の孔部を有する、直径150mm及び厚さ500μmのシリコン基板(図10参照)上に、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルアセテートをスピンコート(1,000rpm、3秒間)し、孔部にこの溶剤を充填した(図1(b)参照)。
その後、上記で得られた樹脂組成物を、2段階スピンコート(1段階目;300rpm、10秒間、2段階目;600rpm、20秒間)し、孔部内の溶剤表面を含むシリコン基板の表面に塗膜を形成した。
次に、塗膜付きシリコン基板を、温度110℃のホットプレート上に3分間静置し、溶剤を揮発させて、シリコン基板の表面並びに孔部の内壁面及び底面に被膜を形成させ、被膜付きシリコン基板を得た(図2(d)参照)。図11に、電子顕微鏡による断面写真を示した。被膜の厚さを測定したところ、内壁面では9.0μm、底面では5.8μmであった(表1参照)。この孔部内表面における被膜形成性を目視観察したところ、均一であった。
【0100】
[2]比較例1
シリカ粒子の配合量を0質量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物(固形分濃度47質量%)を調製し、粘度を測定した(V=760mPa・s)。その後、被膜を形成させた(図12参照)。図12から、樹脂組成物の固形物が孔部を満たしていることが分かる(表1参照)。
【0101】
【表1】

【0102】
[3]実施例2〜10及び比較例2〜6
(1)樹脂組成物の調製(実施例2)
表2に示すとおり、(A)アルカリ可溶性樹脂(A−1)100質量部、(B)キノンジアジド化合物(B−1)25質量部、(C)シリカ(C−1)100質量部、(E)密着助剤(E−1)2.5質量部、(F)界面活性剤(F−1)0.1質量部、(G)架橋剤(G−1)20質量部と(G−2)10質量部、及び(H)架橋重合体(H−1)10質量部を、固形分濃度が47質量%となるように、(D)溶剤(D−1)300質量部に溶解することにより樹脂組成物を調製した。
【0103】
(2)樹脂組成物の調製(実施例3〜10及び比較例2〜6)
実施例2と同様にして、表2及び表3に示すとおり、(A)アルカリ可溶性樹脂、(a)低分子フェノール性化合物、(B)キノンジアジド化合物、(C)シリカ、(E)密着助剤、(F)界面活性剤、(G)架橋剤、及び(H)架橋重合体を、固形分濃度が47質量%となるように、(D)溶剤に溶解することにより各樹脂組成物を調製した。
【0104】
【表2】

【0105】
【表3】

【0106】
尚、表2及び表3に記載の組成は、以下のとおりである。
<(A)アルカリ可溶性樹脂>
A−1:m−クレゾール/p−クレゾール=60/40(モル比)からなるクレゾールノボラック樹脂、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)=6500
A−2:ポリヒドロキシスチレン(丸善石油化学製、商品名「マルカリンカー S−2P」)、Mw=5000
<(a)低分子フェノール性化合物>
a−1:1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}フェニル]エタン
<(B)キノンジアジド化合物>
B−1:1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}フェニル]エタンと、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸との2.0モル縮合物
【0107】
<(C)シリカ>
C−1:商品名「クォートロンPL−2L」(扶桑化学工業製、疎水化処理物(疎水化率:50%)、平均粒子径:20nm、ナトリウム含有量:0.02ppm)
C−2:商品名「PMA−ST」(日産化学工業製、疎水化処理物(疎水化率:60%)、平均粒子径:20nm、ナトリウム含有量:600ppm)
C−3:商品名「クォートロンPL−30」(扶桑化学工業製、疎水化処理物(疎水化率:40%)、平均粒子径:300nm、ナトリウム含有量:0.02ppm)
<(D)溶剤>
D−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<(E)密着助剤>
E−1:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー製、商品名「A−187」)
【0108】
<(F)界面活性剤(レベリング剤)>
F−1:商品名「FTX-218」(ネオス製)
<(G)架橋剤>
G−1:ヘキサメトキシメチルメラミン(商品名;サイメル300、三井サイテック社製)
G−2:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(商品名;EP−152、ジャパンエポキシレジン社製)
<(H)架橋重合体からなる粒子>
H−1:ブタジエン/ヒドロキシブチルメタクリレート/メタクリル酸/ジビニルベンゼン=60/32/6/2(質量%)(平均粒子径:70nm)
【0109】
尚、上記(C)シリカにおける各疎水化率は、下記のようにして測定した値である。
<疎水化率>
まず、シリカの10%水分散液150mLに塩化ナトリウム30gを溶解させ、pH4になるように1N塩酸で調整した。次いで、0.1N水酸化ナトリウム水溶液をpH9になるまで滴下した。そして、シリカ表面のシラノール基数を下式により求めた。
A=(a×0.1×N)/(W×S)
[但し、Aはシラノール基数(個/nm)、aは0.1N水酸化ナトリウム水溶液の滴下量(L)、Nはアボガドロ数(個/mol)、Wはシリカ重量(g)、SはシリカのBET面積(nm/g)である。
このようにして、疎水化前及び疎水化後のシリカのシラノール基数をそれぞれ求め、下式によりシリカの疎水化率を計算した。
疎水化率(%)=(疎水化後のシラノール基数/疎水化前のシラノール基数)×100
【0110】
[4]樹脂組成物の評価
上記実施例2〜10及び比較例2〜6の各樹脂組成物を、下記の方法に従って評価した。その結果を表4に示す。
(1)被膜形成性
表面に、開口部形状が正方形(80μm×80μm)、深さが100μm、及び、底面形状が正方形(60μm×60μm)である順テーパー状の孔部〔図1(b)参照〕を有する、直径150mm及び厚さ500μmの段差Si基板上に、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルアセテートをスピンコート(1000rpm、3秒間)し、孔部にこの溶剤を充填した〔図2(b)参照〕。その後、感光性樹脂組成物をスピンコート(1段階目;300rpm、10秒間、2段階目;600rpm、20秒間)し、孔部内の溶剤表面を含む段差Si基板の表面に塗膜を形成した。次いで、塗膜付きSi基板を、温度110℃のホットプレート上に5分間静置し、溶剤を揮発させて、Si基板の表面並びに孔部の内壁面及び底面に被膜を形成させ、被膜付きSi基板を得た〔図2(d)参照〕。
そして、電子顕微鏡により孔部の断面形状を観察し、以下の基準で被膜形成性を評価した。
○;被膜により表面開口部の肩が完全に被覆されており、孔部における内壁面及び底面の被膜の膜厚が略一定となっている場合(図13参照)
△;被膜により表面開口部の肩が完全に被覆されているが、孔部における内壁面及び底面における膜厚が略一定になっていない場合(図14参照)
×;被膜により表面開口部の肩が完全に被覆されていない場合、又は孔部を完全に埋めつくしている場合(図15参照)
尚、参考までに、図16に実施例3で得られた被膜付きシリコン基板の電子顕微鏡による断面写真を示した。また、図17に比較例3で得られた被膜付きシリコン基板の電子顕微鏡による断面写真を示した。
【0111】
(2)樹脂組成物の物性(粘度測定)
各樹脂組成物について、レオメーター(型名「AR2000」、ティ・エイ・インスツルメント社製)を用い、温度25℃で、剪断速度を1rpmから1,000rpmまで上げていき、1.5、5、6、50、60及び600rpmにおける粘度を測定し、剪断速度6rpmにおける粘度Vと、剪断速度60rpmにおける粘度V(mPa・s)との比(V/V)、剪断速度1.5rpmにおける粘度V(mPa・s)と、剪断速度600rpmにおける粘度V(mPa・s)との比(V/V)、並びに、剪断速度5rpmにおける粘度V(mPa・s)と、剪断速度50rpmにおける粘度V(mPa・s)との比(V/V)を算出した。
また、各樹脂組成物における粘度V(mPa・s)の値を表4に併記した。
【0112】
(3)ナトリウム含有量
樹脂組成物をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにより希釈し、原子吸光計(パーキンエルマー製、型番「Z5100」)を用いてナトリウム含有量を測定した。
【0113】
(4)解像性
6インチのシリコンウェハに樹脂組成物をスピンコートし、ホットプレートを用いて110℃で5分間加熱し、10μm厚の均一な樹脂塗膜を作製した。その後、アライナー(Suss Microtec社製、型番「MA−150」)を用い、パターンマスクを介して高圧水銀灯からの紫外線を波長350nmにおける露光量が6000J/mとなるように露光した。次いで、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液を用いて、23℃で3分間、浸漬現像した。そして、得られたパターンの最小寸法を解像度とした。
【0114】
(5)電気絶縁性(体積抵抗率)
樹脂組成物をスピンコータ(型番「1H−360S」、MIKASA社製)によりSUS基板に塗布した。その後、ホットプレートを用いて110℃で3分間加熱し、膜厚10μmの均一な薄膜を形成した。次いで、対流式オーブンを用いて170℃で2時間加熱し、テストピース(絶縁層)を得た。この得られたテストピースをプレッシャークッカー試験装置(タバイエスペック社製)を用いて、温度;121℃、湿度;100%、圧力:2.1気圧の条件下で168時間処理した。処理前後の層間の体積抵抗率(Ω・cm)を測定し、電気絶縁性の指標とした。
【0115】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】基板に設けられている孔部を示す概略断面図である。
【図2】本発明の被膜形成方法を説明する概略断面図である。
【図3】本発明の絶縁膜を有する構造体の製造方法の一例を説明する概略断面図である。
【図4】本発明の絶縁膜を有する構造体の製造方法の他の例を説明する概略断面図である。
【図5】本発明の電子部品の構成要素(部材3)の製造方法を説明する概略断面図である。
【図6】本発明の電子部品を構成する部材3’を説明する概略断面図である。
【図7】本発明の電子部品の構成要素(部材3")を説明する概略断面図である。
【図8】本発明の電子部品の例を説明する概略断面図である。
【図9】図6の部材3’の他の製造方法を説明する概略断面図である。
【図10】実施例において用いた、被膜形成前のシリコン基板の孔部破断面を示す斜視画像である。
【図11】実施例1で得られた被膜付きシリコン基板の孔部破断面を示す斜視画像である。
【図12】比較例1で得られた被膜付きシリコン基板の孔部破断面を示す斜視画像である。
【図13】被膜が形成された孔部断面を示す画像である。
【図14】被膜が形成された孔部断面を示す画像である。
【図15】被膜が形成された孔部断面を示す画像である。
【図16】実施例3で得られた被膜付きシリコン基板の孔部破断面を示す斜視画像である。
【図17】比較例3で得られた被膜付きシリコン基板の孔部破断面を示す斜視画像である。
【符号の説明】
【0117】
1;被膜付き基板
11;基板
111;孔部
113;溶剤
115;塗膜
116;樹脂組成物及び溶剤の混合物
117;孔部内壁面の被膜
118;孔部底面の被膜
119;基板表面の被膜
128;孔部底面の被膜露光部
129;基板表面の被膜露光部
2及び2’;絶縁膜を有する構造体
217;孔部内壁面の絶縁膜(硬化膜)
218;孔部底面の絶縁膜(硬化膜)
219;基板表面の絶縁膜(硬化膜)
22;貫通孔
23a及び23b;銅膜(シード層)
24;絶縁性レジスト被膜
26;金属銅充填部
3,3’及び3";部材
31;上側部材
311;電極部(導電材料充填部)
311a及び311b;貫通電極(導電材料充填部)
313,313a及び313b;電極パッド
32;下側部材
321a及び321b;貫通電極(導電材料充填部)
323a及び323b;電極パッド
34;絶縁層
4;電子部品
41;インターポーザー
42;バンプ
43;バンプ
6;積層基板
61;基板
621,622及び623;被膜
625;絶縁膜
63;導電材層
635;電極パッド
66;導電材料充填部
7;被膜付き基板
8;積層構造体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部の面積が25〜10,000μmであり且つ深さが10〜200μmである孔部を有する基板に、溶剤を塗布する溶剤塗布工程と、樹脂成分及び溶剤を含有し、剪断速度6rpmにおける粘度V(mPa・s)と、剪断速度60rpmにおける粘度V(mPa・s)との比(V/V)が、1.1以上の樹脂組成物を、該樹脂組成物が上記孔部内の上記溶剤と接触するように、上記基板に塗布する樹脂組成物塗布工程と、塗膜を乾燥する乾燥工程と、を備え、該孔部の内壁面及び底面のうちの少なくとも該内壁面に上記樹脂成分を含む被膜を形成することを特徴とする被膜形成方法。
【請求項2】
上記被膜が、上記孔部の内壁面及び底面の両方に形成される請求項1に記載の被膜形成方法。
【請求項3】
上記樹脂組成物の固形分濃度が、5〜80質量%の範囲にある請求項1又は2に記載の被膜形成方法。
【請求項4】
上記粘度Vが、10〜10,000mPa・sの範囲にある請求項1乃至3のいずれかに記載の被膜形成方法。
【請求項5】
上記樹脂組成物において、剪断速度1.5rpmにおける粘度V(mPa・s)と、剪断速度600rpmにおける粘度V(mPa・s)との比(V/V)が、2.0以上である請求項1乃至4のいずれかに記載の被膜形成方法。
【請求項6】
上記樹脂組成物が、更に、金属酸化物粒子を含有する請求項1乃至5のいずれかに記載の被膜形成方法。
【請求項7】
上記樹脂組成物が、更に、架橋重合体からなる粒子を含有する請求項1乃至6のいずれかに記載の被膜形成方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかに記載の被膜形成方法に用いられる樹脂組成物であって、
アルカリ可溶性樹脂と、疎水化処理されており且つ平均粒子径が1〜100nmであるシリカと、溶剤と、架橋剤と、を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項9】
更に、キノンジアジド基を有する化合物を含有しており、且つ、上記シリカの含有割合が、本組成物の固形分を100質量%とした場合に、20質量%を超えて、60質量%以下である請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれかに記載の方法により得られた、上記基板の表面に形成されている被膜及び上記基板の上記孔部の底面に形成されている被膜を除去し、上記孔部の内壁面に形成されている被膜を残存させる表底面側被膜除去工程と、上記孔部の内壁面に残存している被膜を加熱する加熱硬化工程と、を備えることを特徴とする、絶縁膜を有する構造体の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至7のいずれかに記載の方法により得られた、上記孔部の内壁面及び底面を含む上記基板の全表面に形成されている被膜を加熱し、上記樹脂成分の硬化物を含む絶縁膜とする加熱硬化工程と、上記基板の表面に形成されている絶縁膜及び上記基板の上記孔部の底面に形成されている絶縁膜を除去し、上記孔部の内壁面に形成されている絶縁膜を残存させる表底面側絶縁膜除去工程と、を備えることを特徴とする、絶縁膜を有する構造体の製造方法。
【請求項12】
更に、上記絶縁膜を有する構造体における上記孔部を有さない面から基板を研磨し、該孔部を貫通孔とする研磨工程を備える請求項10又は11に記載の絶縁膜を有する構造体の製造方法。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれかに記載の方法により得られたことを特徴とする絶縁膜を有する構造体。
【請求項14】
請求項10乃至12のいずれかに記載の方法により得られた絶縁膜を有する構造体と、該構造体の少なくとも貫通孔内に導電材料が充填されてなる電極部とを含む部材を備えることを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−277771(P2008−277771A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68487(P2008−68487)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】