説明

視覚検査システム

【課題】ワークに対してカメラを任意の位置、姿勢に移動させながら視覚検査を行うことができるものであって、設備全体の小型化を図る。
【解決手段】支持台2上にYZロボット3を設け、その前方に回転テーブル4を設ける。YZロボット3は、Z軸移動機構5、Y軸移動機構6、前後(Y軸)方向に延びる光軸Oを有しワークWを撮影するカメラ7を備え、カメラ7を前後(Y軸)及び上下(Z軸)方向に自在に移動させる。回転テーブル4は、ワークWを載置し、垂直方向に延びる回転軸θ周りに自在に回転させる。カメラ7の先端に180度以上の画角を有する超広角レンズ10を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに対してカメラを複数の検査位置に相対的に移動させながら該ワークを撮影することに基づいて、該ワークの外観に現れる複数の着目点の視覚検査を行う視覚検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用部品などのワークにおいて、部品の組付けが正しく行われているかどうか等を検査するための検査装置として、ロボットに取付けられたカメラを用いて視覚検査を行うようにした外観検査装置が考えられている(例えば特許文献1参照)。この外観検査装置は、垂直多関節(6軸)型ロボットのアーム先端にカメラを取付け、検査設備の所定位置に停止されたワーク対し、ロボットアームによって前記カメラを複数の検査位置に順に移動させながらワークの撮影を行い、その撮影画像を画像処理することに基づいて、ワークの各部(検査すべき着目点)の外観検査を行うものである。
【0003】
このとき、6軸型(6自由度)のロボットを採用していることにより、カメラを、ワークに対して、左右(X軸)方向、前後(Y軸)方向、上下(Z軸)方向に移動させて、撮影位置や距離を任意に変更することができ、また、カメラの首振り(姿勢の変更)により、ワーク(検査すべき着目点)に対する撮影する向きを任意に変更しながら、撮影(視覚検査)を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−313225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の検査装置では、6軸型ロボットを採用しているため、高価な装置となると共に、ロボットアームの大きな動作空間が必要で設備が大型化してしまう問題があった。この場合、6軸よりも軸数の少ないロボットを採用すれば、その分安価になると考えられるが、単純に軸数を減らしたものでは、ワークに対するカメラの位置、姿勢の移動に関する自由度が確保できなくなる懸念がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ワークに対してカメラを任意の位置、姿勢に移動させながら視覚検査を行うことができるものであって、設備全体の小型化を図ることができる視覚検査システムを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の視覚検査システムは、カメラを該カメラの光軸の延びる前後方向であるY軸方向に自在に移動させるY軸移動機構、及び、このY軸移動機構を上下方向であるZ軸方向に自在に移動させるZ軸移動機構を備えるYZロボットと、前記YZロボットの前方に位置してZ軸に平行な回転軸を中心に回転可能に設けられ、ワークが固定的にセットされる回転テーブルと、前記YZロボットによるカメラのY軸方向及びZ軸方向の移動、並びに前記回転テーブルによるワークの回転を制御する動作制御手段とを備えると共に、前記カメラに設けられるレンズとして、180度以上の画角を有する超広角レンズが採用されているところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0008】
これによれば、YZロボットに設けられたカメラの前方に、回転テーブルにセットされたワークが配置され、カメラにより該ワークを撮影することができる。このとき、カメラは、YZロボットによって、前後方向であるY軸方向つまりワークに対し近付く、遠ざかる方向や、上下(垂直)方向であるZ軸方向に自在に移動させることができる。そして、回転テーブルによって垂直軸を中心にワークを回転させることにより、ワークに対してカメラを左右(X軸)方向に移動させることの代替とすることができる。このとき、ワークを回転させることによって、カメラの移動範囲を少なくしながら、ワークの周囲全体をカメラで撮影することが可能となる。
【0009】
さらに、カメラのレンズに、180度以上の画角を有する超広角レンズ(いわゆる魚眼レンズ)を用いたことにより、カメラをワークに対して姿勢を変える動作、つまり首振り(傾ける)動作の代替が可能となる。従って、2軸型のロボットであるYZロボットと、回転テーブルとを設けるだけという、軸数の極めて少ない構成であっても、ワークに対するカメラの位置、姿勢の移動に、6軸型ロボットを用いた場合と同様の動作を行なう事が可能となる。この結果、本発明によれば、6軸型ロボットに比べて動作空間も小さく済み、設備全体の小型化を図ることができる。
【0010】
ところで、本発明の視覚検査システムにおいては、動作制御手段に、ワークの着目点を撮影する検査位置の位置データ(カメラの位置、姿勢)を、予め教示(ティーチング)により記憶させておくことが行なわれる。この教示作業は、オペレータが、例えば、カメラの撮影画像を表示するモニタを見ながら、手動操作装置を操作し、カメラ(及びワーク)をマニュアル移動させ、ワークが適当な見え方になる位置を捜し、その位置を検査位置として記憶させることにより行われる。この場合、超広角レンズを通した撮影画像は、一般的なレンズよりも、広い範囲が撮影されていると共に、歪みも大きいものとなる。
【0011】
そのため、上記教示作業を行うにあたっては、オペレータは、モニタを見ながら、ワークの着目点を指定し、その着目点に対してカメラをどのように移動させるかの動作指示を行う。このとき、動作として、単純に、カメラをY軸方向に移動させる、Z軸方向に移動させる、ワークを回転させる以外にも、一つの着目点に対し、水平面内で、カメラの姿勢を変化することなく、該カメラの視点を接近、隔離方向に移動させる(ズームイン、ズームアウト)動作、及び、水平面内で、カメラの距離を変化させることなく、該カメラが撮影する向きを左右方向に変位(首振り)させる動作、といった動作制御を行なえることが望ましい。
【0012】
更には、ワークの一つの着目点に対し、垂直面内で、カメラの姿勢を変化することなく、該カメラの視点を接近、隔離方向に移動させる動作、及び、垂直面内で、カメラの距離を変化させることなく、該カメラが撮影する向きを上下方向に変位(首振り)させる動作、といった動作制御を行なえることが望ましい。これらによれば、オペレータの簡単な指示操作によって、バラエティに富んだ各種の動作が行なわれる。
【0013】
そこで、本発明においては、前記動作制御手段による動作制御として、前記ワークの一つの着目点に対し、水平面内で、前記カメラの姿勢を変化することなく、該カメラの視点を接近、隔離方向に移動させる第1の制御を行う場合には、前記水平面内で前記ワークの回転中心と前記ワークの着目点とを結ぶ線分と該水平面内で該着目点と前記カメラのレンズ中心とを結ぶ線分とのなす角度φが、移動前後で一定となるように、前記カメラをY軸方向に移動させながら前記回転テーブルを回転させるように構成することができ、前記ワークの一つの着目点に対し、水平面内で、前記カメラの距離を変化させることなく、該カメラが撮影する向きを左右方向に変位させる第2の制御を行う場合には、前記水平面内での、前記カメラのレンズ中心から前記ワークの着目点までの距離Lが、移動前後で一定となるように、前記回転テーブルを回転させながら前記カメラをY軸方向に移動させるように構成することができる(請求項2の発明)。
【0014】
また、本発明においては、前記動作制御手段による動作制御として、前記ワークの一つの着目点に対し、垂直面内で、前記カメラの姿勢を変化することなく、該カメラの視点を接近、隔離方向に移動させる第3の制御を行う場合には、前記垂直面内で、前記カメラのレンズ中心と前記着目点とを結ぶ線分のY軸方向に対してなすずれ角度λを、移動前後で維持するように、前記カメラのみをY軸方向及びZ軸方向に移動させるように構成することができ、前記ワークの一つの着目点に対し、垂直面内で、前記カメラの距離を変化させることなく、該カメラが撮影する向きを上下方向に変位させる第4の制御を行う場合には、前記垂直面内での、前記カメラのレンズ中心から前記ワークの着目点までの距離Lを、移動前後で維持するように、前記カメラをZ軸方向に移動させながらY軸方向に移動させるように構成することができる(請求項5の発明)。
【0015】
上記した各制御によれば、オペレータは、6軸ロボットにおけるカメラの移動指示操作と同様の感覚での移動指示の操作を行なうことができ、その指示操作に応じた、YZロボット及び回転テーブルのスムーズな動作制御が行なわれるようになる。尚、上記したカメラの複数の動作のうち、いくつかを組合せた動作を行なうことも可能であり、その場合には、上記した複数の動作制御が同時に実行されることになる。
【0016】
より具体的には、動作制御手段は、以下のような計算式に基づいて制御を行うことができる。
即ち、上記第1の制御を行う際には、移動前の、前記水平面内での、前記ワークの回転中心から前記着目点までの距離をR、該回転中心と該着目点とを結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をθ1、該回転中心から前記レンズ中心までの距離をL1、該レンズ中心と前記着目点を結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をA1とし、移動後の、前記水平面内での、前記回転中心と前記着目点とを結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をθ2、前記回転中心から前記レンズ中心までの距離をL2、該レンズ中心と着目点とを結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をA2とすると、前記着目点が移動前の前記カメラの撮影画像上で指定された場合に、前記角度A1を、
A1=(レンズの水平方向画角)*(指定された着目点の画面中心からの水平方向画素数)/(カメラの水平方向画素数)
の式で求め、前記水平面内で前記回転中心と前記着目点とを結ぶ線分と前記着目点と前記レンズ中心とを結ぶ線分とのなす角度φを、
sinφ=(L1*sinA1)/R
の式で求め、前記角度θ2を、
θ2=π−φ−A2
但し、sinA2=(R*sinφ)/L2
の式で求めることができる(請求項3の発明)。
【0017】
上記第2の制御を行う際には、移動前の、前記水平面内での、前記ワークの回転中心から前記着目点までの距離をR、該回転中心と該着目点とを結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をθ1、該回転中心から前記レンズ中心までの距離をL1、該レンズ中心と前記着目点を結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をA1とし、前記回転中心と前記着目点とを結ぶ線分と前記着目点と前記レンズ中心とを結ぶ線分とのなす角度をφ1とし、移動後の、前記水平面内での、前記回転中心と前記着目点とを結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をθ2、前記回転中心から前記レンズ中心までの距離をL2、該レンズ中心と該着目点と結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をA2、前記回転中心と前記着目点とを結ぶ線分と該着目点と前記レンズ中心とを結ぶ線分とのなす角度をφ2とすると、前記着目点が移動前の前記カメラの撮影画像上で指定された場合に、前記角度A1を、
A1=(レンズの水平方向画角)*(指定された着目点の画面中心からの水平方向画素数)/(カメラの水平方向画素数)
の式で求め、前記水平面内での前記レンズ中心から前記着目点までの距離Lを、
L=(R*sinθ1)/sinA1
但し、θ1=π−(φ1+A1)、sinφ1=L1*sinA1/R
の式で求め、前記角度θ2、及び、距離L2を、
θ2=(L*sinA2)/R
L2=(R*sinφ2)/sinA2
但し、φ2=π−(θ2+A2)
の式で求めることができる(請求項4の発明)。
【0018】
上記第3の制御を行う際には、前記着目点が移動前の前記カメラの撮影画像上で指定された場合に、前記垂直面内で、前記カメラのレンズ中心と前記着目点とを結ぶ線分のY軸方向に対してなすずれ角度λを、
λ=(レンズの垂直方向画角)*(指定された着目点の画面中心からの垂直方向画素数)/(カメラの垂直方向画素数)
の式で求め、前記カメラのY軸方向移動量をΔY、Z軸方向移動量をΔZとすると、
tanλ=ΔZ/ΔY
の式を維持するΔZ/ΔYの比率で移動制御を行うことができる(請求項6の発明)。
【0019】
上記第4の制御を行う際には、移動前の、水平面内での前記ワークの回転中心から前記着目点までの距離をR、該水平面内での該回転中心から前記レンズ中心までの距離をL1、前記垂直面内での前記レンズ中心と前記着目点とを結ぶ線分のY軸方向に対してなすずれ角度をλとすると、前記着目点が移動前の前記カメラの撮影画像上で指定された場合に、前記角度λを、
λ=(レンズの垂直方向画角)*(指定された着目点の画面中心からの垂直方向画素数)/(カメラの垂直方向画素数)
の式で求め、前記レンズ中心から前記着目点までの距離Lを、
L=(L1−R)/cosλ
の式で求め、前記レンズ中心のY軸方向座標Y、及び、Z軸方向座標Zを、
(Y−R)2 +(Z−L*cosλ)2 =L2
の式を維持するように前記カメラのZ軸方向及びY軸方向の移動を制御することができる(請求項7の発明)。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、視覚検査システムの外観構成を概略的に示す図
【図2】視覚検査システムの電気的構成を、制御装置を中心として概略的に示すブロック図
【図3】第1の制御を行う場合の概略的平面図(a)及び画像の例を示す図(b)
【図4】制御回路が第1の制御を行う場合の処理手順を示すフローチャート
【図5】第2の制御を行う場合の概略的平面図(a)及び画像の例を示す図(b)並びに移動後の画像の例を示す図(c)
【図6】制御回路が第2の制御を行う場合の処理手順を示すフローチャート
【図7】第3の制御を行う場合の概略的側面図(a)及び画像の例を示す図(b)並びにレンズの垂直方向の画角を示す図(c)
【図8】制御回路が第3の制御を行う場合の処理手順を示すフローチャート
【図9】第4の制御を行う場合の概略的側面図(a)及び画像の例を示す図(b)並びにレンズの垂直方向の画角を示す図(c)
【図10】制御回路が第4の制御を行う場合の処理手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施例について、図面を参照しながら説明する。まず、図1及び図2を参照しながら、本実施例に係る視覚検査システム1の全体構成について述べる。図1は、視覚検査システム1の外観構成を概略的に示しており、この視覚検査システム1は、上面が水平面とされた支持台2上に、YZロボット3及び回転テーブル4を備えて構成されていると共に、それらYZロボット3及び回転テーブル4の動作等を制御するコントローラ12(図2参照)を備えている。
【0022】
尚、図1に示すように、この視覚検査システム1においては、X,Y,Z軸からなる三次元直交座標系が設定され、この場合、前記支持台2の上面の長手方向(図1では横方向)を前後方向即ちY軸方向とし、それに直交する左右方向をX軸としている。また、支持台2に垂直な上下方向をZ軸方向としている。また、本実施例では、検査対象となるワークWとして、自動車用部品であるフューエルポンプユニットを例としている。詳しい図示及び説明は省略するが、このワークWの外観は、ほぼ円筒状をなしている。
【0023】
前記YZロボット3は、Z軸移動機構5、Y軸移動機構6、ワークWを撮影するためのカメラ7を備えている。そのうち、Z軸移動機構5は、支持台2上を上方(Z軸方向)に長く延びる箱状(フレーム状)のベース5aを備え、このベース5aの一側面(図1で手前側を向く面)にZ軸方向に延びて直線レール5bが設けられ、その直線レール5bに沿ってZ軸移動体(図示せず)が移動自在に設けられている。さらに、図示はしないが、前記ベース5a内には、前記Z軸移動体をZ軸方向に自在に移動するための例えばボールねじ機構からなる直線移動機構が設けられ、該ベース5aの外面部にはその駆動源となるZ軸モータ8(図2にのみ図示)が設けられている。
【0024】
前記Y軸移動機構6は、図で前後方向(Y軸方向)に長く延びる箱状(フレーム状)のベース6aを備えており、そのベース6aの後端部の一側面が、前記Z軸移動体に連結されている。このベース6aの一側面(図1で手前側を向く面)には、Y軸方向に延びて設けられた直線レール6bが設けられ、この直線レール6bに沿ってY軸移動体(図示せず)が移動自在に設けられている。さらに、図示はしないが、前記ベース6a内には、前記Y軸移動体をY軸方向に自在に移動するための例えばボールねじ機構からなる直線移動機構が設けられ、該ベース6aの外面部にはその駆動源となるY軸モータ9(図2にのみ図示)が設けられている。
【0025】
前記カメラ7は、例えばCCD等のイメージセンサ、レンズを含む光学系、照明装置等を備えて構成されている。このカメラ7は、その光軸Oが前後方向(Y軸方向に平行)に延びて、前記Y軸移動体に取付けられ、前方(回転テーブル4上のワーク)を撮影可能とされている。このとき、カメラ7の先端には、180度以上の画角を有する超広角レンズ10が取付けられている。本実施例では、この超広角レンズ10として、横(水平)方向の画角及び縦(垂直)方向の画角ω(図7(c)、図9(c)参照)が、共に例えば185度のものが採用されている。
【0026】
前記回転テーブル4は、例えば円板状をなし、前記YZロボット3の前方に位置して、上下(垂直)方向(Z軸に平行)に延びる回転軸θを中心に回転可能に設けられていると共に、θ軸モータ11(図2にのみ図示)を駆動源とした回転駆動機構により自在に回転されるようになっている。詳しく図示はしないが、前記回転軸θは、Y軸と交差(直交)している。また、前記回転テーブル4上には、図示しない保持用治具などを介して前記ワークWが固定的に載置されるのであるが、このとき本実施例では、円筒状をなすワークWは、その中心軸線と前記回転軸θとが一致するようにセットされる。
【0027】
図2に示すように、視覚検査システム1には、上記したYZロボット3及び回転テーブル4を制御するコントローラ12が設けられている。このコントローラ12は、コンピュータ(CPU)を主体として構成され全体を制御する制御回路13を備えていると共に、この制御回路13に接続された記憶部14を備えている。また、制御回路13は、サーボ制御部15,16,17を夫々介して前記Z軸モータ8、Y軸モータ9、θ軸モータ11を駆動制御(フィードバック制御)するようになっている。従って、制御回路13が、動作制御手段として機能する。
【0028】
前記記憶部14には、視覚検査プログラムや教示プログラム等のプログラムが記憶されると共に、ワークWの形状や寸法等のデータ、複数の検査位置(カメラ7のY軸、Z軸方向の位置並びに回転テーブル4の回転位置)のデータ、検査に用いられる参照画像(各検査位置における正常品のワークWの画像)のデータ等の各種データが記憶されるようになっている。前記検査位置のデータは、後述するように、オペレータがYZロボット3及び回転テーブル4を実際に動かして検査位置を教示するティーチング作業によって教示され、記憶されるようになっている。
【0029】
また、前記制御回路13は、視覚機能(画像処理機能)を含んで構成され、前記カメラ7の撮影画像が取込まれると共に、モニタ18にその撮影画像を表示するようになっている。本実施例におけるカメラ7による撮影画像を、図3(b)、図5(b),(c)、図7(b)、図9(b)に例示している。この場合、超広角レンズ10を通した撮影画像は、一般的なレンズよりも広い範囲が撮影されていると共に、歪みも大きいものとなる。尚このとき、カメラ7の水平方向画素数及び垂直方向画素数は、共にSとされている。
【0030】
そして、制御回路13には、オペレータが手で持ってカメラ7の移動や回転テーブル4の回転を指示操作(マニュアル操作)するための手動操作装置19が接続されている。この手動操作装置19としては、一般にティーチングペンダントと称される装置や、6軸マウス(3Dマウス)、ゲーム機のコントローラ等を採用することができる。制御回路13(コントローラ12)は、ティーチング作業時において、オペレータによる手動操作装置19の操作(カメラ7の相対的移動支持操作)に基づいて、前記YZロボット3および回転テーブル4の動作を制御するようになっている。
【0031】
前記制御回路13は、そのソフトウエア構成(視覚検査プログラムの実行)により、ワークWの外観に現れる複数の着目点P(図3等参照)に関する視覚検査(部品の組付けが正しく行なわれているかどうか等)を行う。この視覚検査は、XYロボット3及び、検査すべきワークWがセットされた回転テーブル4を動作制御することにより、予め教示された検査位置にカメラ7を移動させ、カメラ7の所定の位置(及び着目点Pに対する姿勢)でワークWの画像を取込み、その画像と、予め記憶されている参照画像とを比較(パターンマッチング)することに基づいて行なわれる。また、その視覚検査は、1個のワークWに対し複数の検査位置について順次行われる。
【0032】
尚、上記視覚検査の画像の比較(パターンマッチング)については、カメラ7による撮影画面全体について行なっても良いし、撮影画面中の予め指定された着目領域P´(図3(b)等に示すような着目点Pを中心とした所定範囲の矩形領域)に関して行っても良く、またその際に、画像に歪みがある場合には、着目領域P´に対する歪みの補正を行うこともできる。
【0033】
さて、上記検査位置を教示するティーチング作業を行うにあたっては、オペレータは、カメラ7の現在の撮影画像を表示するモニタ18の画面を見ながら、手動操作装置19を操作して、画面上でワークWの着目点P(着目領域P´)を指定すると共に、カメラ7の移動(ワークWに対するX軸、Y軸、Z軸方向の相対的移動)の方向や移動量を指示する。すると、制御回路13(コントローラ12)は、オペレータによる指示操作に基づいて、Y軸モータ8、Z軸モータ9、θ軸モータ11を制御し、YZロボット3及び回転テーブル4を動作制御する。オペレータは、ワークW(着目点P)が適切な見え方になる位置を探して登録の操作を行うと、その位置が検査位置として記憶される。
【0034】
このとき、上記オペレータによる手動操作装置19の操作に基づいて、単純に、カメラ7を前後(Y軸)方向に所望量だけ移動させる、及び、カメラ7を上下(Z軸)方向に所望量だけ移動させる、並びに、ワークWを所望角度だけ回転させる(カメラ7を相対的にX軸方向に移動させることに対応する)ことができることは勿論である。そして、詳しくは次の作用説明で述べるが、本実施例では、そのような単純な動作に加えて、次の(1)〜(4)の4種類の動作制御を行うことが可能とされている。
【0035】
(1)ワークWの一つの着目点Pに対し、カメラ7の光軸Oを含む水平面内でカメラ7の姿勢を変化することなく、該カメラ7の視点を接近、隔離(ズームイン、ズームアウト)方向に移動させる第1の制御;この第1の制御を行う場合には、前記水平面内でワークWの回転中心θとワークWの着目点Pとを結ぶ線分と該水平面内で該着目点Pとカメラ7のレンズ中心Cとを結ぶ線分とのなす角度φが、移動前後で一定となるように、カメラ7をY軸方向に移動させながら回転テーブル4(ワークW)を回転させる。
【0036】
(2)ワークWの一つの着目点Pに対し、カメラ7の光軸Oを含む水平面内で、カメラ7の距離を変化させることなく、該カメラ7が撮影する向きを左右方向に変位(首振り)させる第2の制御;この第2の制御を行う場合には、前記水平面内での、カメラ7のレンズ中心CからワークWの着目点Pまでの距離Lが、移動前後で一定となるように、回転テーブル4を回転させながらカメラ7をY軸方向に移動させる。
【0037】
(3)ワークWの一つの着目点Pに対し、カメラ7の光軸Oを含む垂直面内で、カメラ7の姿勢を変化することなく、該カメラ7の視点を接近、隔離(ズームイン、ズームアウト)方向に移動させる第3の制御;この第3の制御を行う場合には、前記垂直面内で、カメラ7のレンズ中心Cと着目点Pとを結ぶ線分のY軸方向に対してなすずれ角度λを、移動前後で維持するように、カメラ7のみをY軸方向及びZ軸方向に移動させる。
【0038】
(4)ワークWの一つの着目点Pに対し、カメラ7の光軸Oを含む垂直面内で、カメラ7の距離を変化させることなく、該カメラ7が撮影する向きを上下方向に変位(首振り)させる第4の制御;この第4の制御を行う場合には、前記垂直面内での、カメラ7のレンズ中心CからワークWの着目点Pまでの距離Lを、移動前後で維持するように、カメラ7をZ軸方向に移動させながらY軸方向に移動させる。
【0039】
このような動作制御により、6軸型ロボットを用いた視覚検査システムと同様の制御(検査位置のティーチング作業)を行うことが可能とされるのである。尚、上記したカメラ7及び回転テーブル4の複数の動作のうち、いくつかを組合せた動作を行なうことも可能であり、その場合には、上記した移動制御が複数種類同時に実行されることになる。
【0040】
次に、上記構成の作用について、図3ないし図10も参照して述べる。上記構成の視覚検査システム1においては、YZロボット3により、カメラ7を、ワークWに対して、前後(Y軸)方向つまりワークWに対し近付く、遠ざかる方向や、上下(Z軸)方向に移動させることができ、さらに、回転テーブル4によってワークWを回転させることにより、ワークWに対してカメラを左右(X軸)方向に移動させることの代替とすることができる。これにより、カメラ7のワークWに対する撮影位置や距離を任意に変更しながら視覚検査を行うことができる。
【0041】
そして、カメラ7のレンズとして超広角レンズ10を採用したことにより、カメラ7をワークW(検査すべき着目点P(着目領域P´))に対して姿勢を変える動作、つまり首振り(傾ける)動作の代替が可能となる。これにて、6軸型のロボットを用いたシステムと同様の検査を行うことが可能となる。ここで、複数の検査位置を教示するティーチング作業時において、上記した第1の制御〜第4の制御を具体的にどのように行うかを、以下順に説明する。
【0042】
(1)第1の制御
図3及び図4を参照して、第1の制御を行う場合について述べる。図3(a)は、視覚検査システム1を上方から見た様子を概略的に示しており、ここで、現在(移動前)の時点では、カメラ7が実線で示す位置にあり、そのときの撮影画像は、図3(b)に示す通りとなる。このとき、カメラ7の上下方向位置は着目点Pの高さと一致している。この位置から、ワークWの着目点Pに対し、カメラ7の光軸Oを含む水平面内でカメラ7の姿勢を変化することなく(角度φを一定にして)、二点鎖線で示す位置まで該カメラ7の視点を遠ざける(ズームアウトする)場合を例として説明する。
【0043】
今、図3(a)に示すように、移動前の、カメラ7の光軸Oを含む水平面内での、ワークWの回転中心θから着目点Pまでの距離をR、該回転中心θと該着目点Pとを結ぶ線分のY軸方向(カメラ7の光軸O)に対してなす角度をθ1、該回転中心θからレンズ10の中心Cまでの距離をL1、該レンズ中心Cと着目点Pを結ぶ線分のY軸方向(カメラ7の光軸O)に対してなす角度をA1とする。そして、移動後の該水平面内での、回転中心θと着目点Pとを結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をθ2、回転中心θからレンズ中心Cまでの距離をL2、該レンズ中心Cと着目点Pとを結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をA2とする。
【0044】
図4のフローチャートは、制御回路13が第1の制御を実行する場合の処理手順を示している。即ち、まずステップS1では、ワークWの半径R(回転中心θから着目点Pまでの距離Rに相当する)の設定がなされる。ステップS2では、カメラ7のY軸上の現在位置が取得され、ワークWの中心θからカメラ7(レンズ10の中心C)までの距離L1が求められる。ステップS3では、オペレータが、モニタ18の画面に表示されたカメラ7の撮影画像上で、着目点Pを指定する処理が行なわれる。
【0045】
次のステップS4では、レンズ中心Cと着目点Pを結ぶ線分のY軸方向(カメラ7の光軸O)に対してなす角度をA1が次の式で求められる。
A1=(レンズ10の水平方向画角ω)*(着目点Pの画面中心からの水平方向画素数p)/(カメラ7の水平方向画素数S)
ステップS5で、オペレータによるカメラ7の移動位置L2(移動量(L2−L1))の指示操作が行われると、ステップS6では、移動後の、該水平面内でのワークW(回転テーブル4)の回転中心θと着目点Pとを結ぶ線分のY軸方向(光軸O)に対してなす角度θ2が求められる。この角度θ2は、
θ2=π−φ−A2
の式で求めることができる。但し、角度φ及び角度A2は、
sinφ=(L1*sinA1)/R
sinA2=(R*sinφ)/L2
の式で求められる。
【0046】
ステップS7では、YZロボット3により、カメラ7をY軸方向にL2の位置まで(移動量(L2−L1))だけ後方に移動させると共に、回転テーブル4により、ワークWを角度θ2の位置まで(角度(θ2−θ1)だけ矢印B方向に)回転させる動作制御が行なわれ、処理が終了する。このような第1の制御によって、カメラ7による着目点Pに対する見る角度(姿勢)が変化しない状態で、カメラ7の視点を接近、隔離(ズームイン、ズームアウト)方向に自在に移動させることができるのである。
【0047】
(2)第2の制御
図5及び図6を参照して、第2の制御を行う場合について述べる。図5(a)は、視覚検査システム1を上方から見た様子を概略的に示しており、ここで、やはり、現在(移動前)の時点では、カメラ7が実線で示す位置にあり、そのときの撮影画像は、図5(b)に示す通りとなる。このとき、カメラ7の上下方向位置は着目点Pの高さと一致している。この位置から、ワークWの着目点Pに対し、カメラ7の光軸Oを含む水平面内で、カメラ7の距離(レンズ中心Oから着目点Pまでの距離L)を変化させることなく、カメラ7が撮影する向きを左右方向に変位(例えばワークWに正対した向きで視点を相対的に左方向に傾ける)する場合を例として説明する。
【0048】
この場合、図5(a)に示すように、上記第1の制御で説明したと同様に、移動前の、カメラ7の光軸Oを含む水平面内での、ワークWの回転中心θから着目点Pまでの距離をR、該回転中心θと該着目点Pとを結ぶ線分のY軸方向(光軸O)に対してなす角度をθ1、該回転中心θからレンズ10の中心Cまでの距離をL1、該レンズ中心Cと着目点Pを結ぶ線分のY軸方向(光軸O)に対してなす角度をA1とする。また、移動後の該水平面内での、回転中心θと着目点Pとを結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をθ2、回転中心θからレンズ中心Cまでの距離をL2、該レンズ中心Cと着目点Pとを結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をA2とする。
【0049】
そして、ここでは、移動前の、水平面内でのワークWの回転中心θと着目点Pとを結ぶ線分と着目点Pとレンズ中心Oとを結ぶ線分とのなす角度をφ1とし、移動後の回転中心θと着目点Pとを結ぶ線分と該着目点Pとレンズ中心Oとを結ぶ線分とのなす角度をφ2とする。
【0050】
図6のフローチャートは、制御回路13が第2の制御を実行する場合の処理手順を示している。このとき、ステップS11〜ステップS14では、上記第1の制御で述べたように、図4のフローチャートのステップS1〜ステップS4と同様の処理が行なわれる。つまり、ワークWの半径Rの設定、距離L1の算出、オペレータによる着目点Pの指定、角度A1の算出(A1=ω*p/S)の処理が行なわれる。
【0051】
ステップS15では、水平面内でのレンズ中心Cから着目点Pまでの距離Lが、
L=(R*sinθ1)/sinA1
但し、θ1=π−(φ1+A1)、sinφ1=L1*sinA1/R
の式で求められる。
【0052】
ステップS16では、オペレータにより、移動後の、水平面内でのレンズ中心Cと着目点Pとを結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度A2の指示操作が行なわれる。すると、ステップS17では、角度A2に応じた、移動後の、該平面内での、ワークW(回転テーブル4)の回転中心θと着目点Pとを結ぶ線分のY軸方向(光軸O)に対してなす角度θ2、及び、回転中心θからレンズ中心Cまでの距離L2が求められる。これら角度θ2、及び、距離L2は、
θ2=(L*sinA2)/R
L2=(R*sinφ2)/sinA2
但し、φ2=π−(θ2+A2)
の式で求めることができる。
【0053】
ステップS18では、回転テーブル4により、ワークWを角度θ2の位置まで(角度(θ2−θ1)だけ矢印B方向に)回転させると共に、YZロボット3により、カメラ7をY軸方向にL2の位置まで(移動量(L2−L1))だけ前方に移動させる動作制御が行なわれ、処理が終了する。このような第2の制御によって、カメラ7から着目点Pまでの距離Lを変化させることなく(一定に保った状態で)、着目点Pに対してカメラ7の見る角度を左右方向に自在に変位させることができる。この場合の移動後のカメラ7による撮影画像は、例えば図5(c)に示すようになる。
【0054】
(3)第3の制御
図7及び図8を参照して、第3の制御を行う場合について述べる。図7(a)はワークW及びカメラ7の位置関係を側方から見た様子を概略的に示しており、ここで、現在(移動前)の時点では、カメラ7が実線で示す位置にあり、そのときの撮影画像を図7(b)に示す。このとき、カメラ7の光軸Oの左右方向位置と着目点Pの左右方向位置とが一致している。この位置から、ワークWの着目点Pに対しカメラ7の光軸Oを含む垂直面内でカメラ7の姿勢を変化することなく(角度λを一定にして)、二点鎖線で示す位置まで該カメラ7の視点を遠ざける(ズームアウトする)場合を例として説明する。
【0055】
この場合、図7(c)にも示すように、移動前及び移動後における、カメラ7の光軸Oを含む垂直面内で、カメラ7のレンズ中心Cと着目点Pとを結ぶ線分のY軸方向(光軸O)に対してなすずれ角度λとする。レンズ10の垂直方向画角はωである。また、図7(b)に示すように、指定された着目点Pの画面中心からの垂直方向画素数をqとする。そして、移動前後における、カメラ7(レンズ中心C)の前後(Y軸)方向移動量をΔY、上下(Z軸)方向移動量をΔZとする。
【0056】
図8のフローチャートは、制御回路13が第3の制御を実行する場合の処理手順を示している。即ち、ステップS21では、カメラ7のY軸上及びZ軸上の現在位置が取得される。ステップS22では、オペレータが、モニタ18の画面に表示されたカメラ7の撮影画像上で、着目点Pを指定する処理が行なわれる。ステップS23では、カメラ7の光軸Oを含む垂直面内で、前記カメラ7のレンズ中心Cと着目点Pとを結ぶ線分のY軸方向(光軸O)に対してなすずれ角度λが、次の式で求められる。
λ=(レンズ10の垂直方向画角ω)*(指定された着目点Pの画面中心からの垂直方向画素数q)/(カメラ7の垂直方向画素数S)
【0057】
ステップS24では、オペレータによるカメラ7の移動(前進又は後退)の指示操作が行われる。図7(a)の例では後退が指示される。すると、次のステップS25では、カメラ7のY軸方向移動量ΔY及びZ軸方向移動量ΔZの比率(ΔZ/ΔY)が、
tanλ=ΔZ/ΔY
の関係式を維持するようにカメラ7が直線移動され、この移動制御が終了する。
【0058】
このような第3の制御によって、カメラ7による着目点Pに対する上下方向に関する見る角度(姿勢)が変化しない状態で、カメラ7の視点を接近、隔離(ズームイン、ズームアウト)方向に自在に移動させることができる。このとき、画面中の着目点Pの位置が固定された状態で、画像がズームイン、ズームアウトされる。
【0059】
(4)第4の制御
図9及び図10を参照して、第4の制御を行う場合について述べる。図9(a)は、ワークW及びカメラ7の位置関係を側方から見た様子を概略的に示しており、ここで、現在(移動前)の時点では、カメラ7が実線で示す位置にあり、そのときの撮影画像を図9(b)に示す。このとき、カメラ7の光軸Oの左右方向位置と着目点Pの左右方向位置とが一致している。この位置から、ワークWの着目点Pに対し、カメラ7の光軸Oを含む垂直面内で、カメラ7の距離(レンズ中心Oから着目点Pまでの距離L)を変化させることなく、カメラ7が撮影する向きを上下方向に変位(例えばワークWに正対した向きで視点を相対的に上方に傾ける)する場合を例として説明する。
【0060】
この場合、図9(a)に示すように、移動前における、光軸Oを含む水平面内でのワークWの回転中心θから着目点Pまでの距離をR、該水平面内での該回転中心θからレンズ中心Cまでの距離をL1、図9(c)にも示すように、カメラ7の光軸Oを含む垂直面内で、カメラ7のレンズ中心Cと着目点Pとを結ぶ線分のY軸方向(光軸O)に対してなすずれ角度をλとする。レンズ10の垂直方向画角はωである。そして、移動後は、移動前の位置から回転角νだけ上方にカメラ7の視点を変化させるものとする。尚、図9(b)に示すように、指定された着目点Pの画面中心からの垂直方向画素数をqとする。
【0061】
図10のフローチャートは、制御回路13が第4の制御を実行する場合の処理手順を示している。即ち、ステップS31では、カメラ7のY軸上及びZ軸上の現在位置が取得される。ステップS32では、オペレータが、モニタ18の画面に表示されたカメラ7の撮影画像上で、着目点Pを指定する処理が行なわれる。
【0062】
ステップS33では、カメラ7の光軸Oを含む垂直面内で、前記カメラ7のレンズ中心Cと着目点Pとを結ぶ線分のY軸方向(光軸O)に対してなすずれ角度λ、及び、レンズ中心Oから着目点Pまでの距離Lが、次の式で求められる。
λ=(レンズ10の垂直方向画角ω)*(指定された着目点Pの画面中心からの垂直方向画素数q)/(カメラ7の垂直方向画素数S)
L=(L1−R)/cosλ
【0063】
ステップS34では、オペレータによるカメラ7の回転角νの指示操作が行われる。すると、次のステップS35では、指定された回転角ニューに応じて、カメラ7(レンズ中心C)のY軸方向座標Y、及び、Z軸方向座標Zを、
(Y−R)2 +(Z−L*cosλ)2 =L2
の式を維持するように前記カメラ7がZ軸方向及びY軸方向に移動され、この移動制御が終了する。このような第4の制御によって、カメラ7から着目点Pまでの距離Lを変化させることなく(一定に保った状態で)、着目点Pに対してカメラ7の見る角度を上下方向に自在に変位させることができる。
【0064】
このように本実施例の視覚検査システム1によれば、2軸型のロボットであるYZロボット3と、回転テーブル4とを設けるだけという、軸数の極めて少ない構成であっても、ワークWに対するカメラ7の位置、姿勢の移動に、6軸型ロボットを用いた場合と同様の動作を行なう事が可能となる。しかも、カメラ7の移動範囲(移動空間)を少なくしながら、ワークWの周囲全体をカメラ7で撮影することが可能となる。この結果、6軸型ロボットに比べて動作空間も小さく済み、設備全体の小型化を図ることができる。
【0065】
特に本実施例では、検査位置の位置データ(カメラ7の位置、姿勢)を教示するティーチング作業において、単純に、カメラ7をY軸方向に移動させる、Z軸方向に移動させる、ワークWを回転させる以外に、ワークWの一つの着目点Pに対し、水平面内で、カメラ7の姿勢を変化することなく、該カメラ7の視点を接近、隔離方向に移動(ズームイン、ズームアウト)させる第1の制御、水平面内で、カメラ7の距離を変化させることなく、該カメラ7が撮影する向きを左右方向に変位(首振り)させる第2の制御、垂直面内で、カメラ7の姿勢を変化することなく、該カメラ7の視点を接近、隔離方向に移動(ズームイン、ズームアウト)させる第3の制御、垂直面内で、カメラ7の距離を変化させることなく、該カメラ7が撮影する向きを上下方向に変位(首振り)させる第4の制御の実行を可能に構成した。
【0066】
これにより、オペレータによる手動操作装置19の簡単な指示操作によって、YZロボット3及び回転テーブル4のスムーズな動作制御が行われ、6軸ロボットを用いた場合と遜色のないバラエティに富んだ各種の動作(ワークWに対するカメラ7の視点位置や姿勢の変更)を行うことができる。従って、オペレータは、6軸ロボットにおけるカメラの移動指示操作と同様の感覚で、移動指示の操作を行なうことができるようになる。
【0067】
尚、上記実施例では、第1の制御〜第4の制御の全てを行うことができる構成としたが、それらのうち一部のみを行うことができる構成としても良い。例えば、第1の制御及び第2の制御のみを行うことができる構成とすることもできる。この場合、第3の制御及び第4の制御に関しては、ワークW(回転テーブル4)の回転を伴わないYZロボット3のみの比較的単純な動作制御で済むため、特に個別の制御項目として設けずに、オペレータのマニュアル操作によって、カメラ7をY軸方向及びZ軸方向に夫々移動させることにより実現することができる。
【0068】
また、上記実施例では、ワークWとして、自動車用部品であるフューエルポンプユニットを例としてあげたが、自動車用部品或いはフューエルポンプユニットに限定されるものではなく、カメラ7によって視覚検査を行うことが可能な物品全般に適用することができる。このとき、ワークWの形状が円筒状でない場合でも、半径Rを設定することに代えて、水平面内における回転中心θから着目点Pまでの距離を着目点ごとに設定するように構成すれば、上記実施例と同様に実施することができる。
【0069】
さらには、上記第1の制御〜第4の制御を行う際の計算式としても、様々な変更が可能である。一例をあげると、第1の制御を行うにあたり、水平面上における、着目点PとY軸(カメラ7の光軸O)との間の距離X1(図3(a)参照)の数値を用い、sinθ1=X1/Rの式により角度θ1を求めることができる。その他、超広角レンズ10の画角についても、180度以上であれば様々なものを採用することができる等、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【符号の説明】
【0070】
図面中、1は視覚検査システム、2は支持台、3はYZロボット、4は回転テーブル、5はZ軸移動機構、6はY軸移動機構、7はカメラ、10は超広角レンズ、13は制御回路(動作制御手段)、18はモニタ、19は手動操作装置、Wはワーク、Pは着目点、Oは光軸、θは回転軸を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対してカメラを複数の検査位置に相対的に移動させながら該ワークを撮影することに基づいて、該ワークの外観に現れる複数の着目点の視覚検査を行う視覚検査システムであって、
前記カメラを該カメラの光軸の延びる前後方向であるY軸方向に自在に移動させるY軸移動機構、及び、このY軸移動機構を上下方向であるZ軸方向に自在に移動させるZ軸移動機構を備えるYZロボットと、
前記YZロボットの前方に位置して前記Z軸に平行な回転軸を中心に回転可能に設けられ、前記ワークが固定的にセットされる回転テーブルと、
前記YZロボットによる前記カメラのY軸方向及びZ軸方向の移動、並びに前記回転テーブルによる前記ワークの回転を制御する動作制御手段とを備えると共に、
前記カメラに設けられるレンズとして、180度以上の画角を有する超広角レンズが採用されていることを特徴とする視覚検査システム。
【請求項2】
前記動作制御手段は、
前記ワークの一つの着目点に対し、水平面内で、前記カメラの姿勢を変化することなく、該カメラの視点を接近、隔離方向に移動させる第1の制御を行う場合には、
前記水平面内で前記ワークの回転中心と前記ワークの着目点とを結ぶ線分と該水平面内で該着目点と前記カメラのレンズ中心とを結ぶ線分とのなす角度φが、移動前後で一定となるように、前記カメラをY軸方向に移動させながら前記回転テーブルを回転させ、
前記ワークの一つの着目点に対し、水平面内で、前記カメラの距離を変化させることなく、該カメラが撮影する向きを左右方向に変位させる第2の制御を行う場合には、
前記水平面内での、前記カメラのレンズ中心から前記ワークの着目点までの距離Lが、移動前後で一定となるように、前記回転テーブルを回転させながら前記カメラをY軸方向に移動させることを特徴とする請求項1記載の視覚検査システム。
【請求項3】
前記動作制御手段により前記第1の制御が行われる際には、
移動前の、前記水平面内での、前記ワークの回転中心から前記着目点までの距離をR、該回転中心と該着目点とを結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をθ1、該回転中心から前記レンズ中心までの距離をL1、該レンズ中心と前記着目点を結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をA1とし、
移動後の、前記水平面内での、前記回転中心と前記着目点とを結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をθ2、前記回転中心から前記レンズ中心までの距離をL2、該レンズ中心と着目点とを結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をA2とすると、
前記着目点が移動前の前記カメラの撮影画像上で指定された場合に、前記角度A1は、
A1=(レンズの水平方向画角)*(指定された着目点の画面中心からの水平方向画素数)/(カメラの水平方向画素数)
の式で求められ、
前記水平面内で前記回転中心と前記着目点とを結ぶ線分と前記着目点と前記レンズ中心とを結ぶ線分とのなす角度φは、
sinφ=(L1*sinA1)/R
の式で求められ、
前記角度θ2は、
θ2=π−φ−A2
但し、sinA2=(R*sinφ)/L2
の式で求められることを特徴とする請求項2記載の視覚検査システム。
【請求項4】
前記動作制御手段により前記第2の制御が行われる際には、
移動前の、前記水平面内での、前記ワークの回転中心から前記着目点までの距離をR、該回転中心と該着目点とを結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をθ1、該回転中心から前記レンズ中心までの距離をL1、該レンズ中心と前記着目点を結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をA1とし、前記回転中心と前記着目点とを結ぶ線分と前記着目点と前記レンズ中心とを結ぶ線分とのなす角度をφ1とし、
移動後の、前記水平面内での、前記回転中心と前記着目点とを結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をθ2、前記回転中心から前記レンズ中心までの距離をL2、該レンズ中心と該着目点と結ぶ線分のY軸方向に対してなす角度をA2、前記回転中心と前記着目点とを結ぶ線分と該着目点と前記レンズ中心とを結ぶ線分とのなす角度をφ2とすると、
前記着目点が移動前の前記カメラの撮影画像上で指定された場合に、前記角度A1は、
A1=(レンズの水平方向画角)*(指定された着目点の画面中心からの水平方向画素数)/(カメラの水平方向画素数)
の式で求められ、
前記水平面内での前記レンズ中心から前記着目点までの距離Lは、
L=(R*sinθ1)/sinA1
但し、θ1=π−(φ1+A1)、sinφ1=L1*sinA1/R
の式で求められ、
前記角度θ2、及び、距離L2は、
θ2=(L*sinA2)/R
L2=(R*sinφ2)/sinA2
但し、φ2=π−(θ2+A2)
の式で求められることを特徴とする請求項2又は3記載の視覚検査システム。
【請求項5】
前記動作制御手段は、
前記ワークの一つの着目点に対し、垂直面内で、前記カメラの姿勢を変化することなく、該カメラの視点を接近、隔離方向に移動させる第3の制御を行う場合には、
前記垂直面内で、前記カメラのレンズ中心と前記着目点とを結ぶ線分のY軸方向に対してなすずれ角度λを、移動前後で維持するように、前記カメラのみをY軸方向及びZ軸方向に移動させ、
前記ワークの一つの着目点に対し、垂直面内で、前記カメラの距離を変化させることなく、該カメラが撮影する向きを上下方向に変位させる第4の制御を行う場合には、
前記垂直面内での、前記カメラのレンズ中心から前記ワークの着目点までの距離Lを、移動前後で維持するように、前記カメラをZ軸方向に移動させながらY軸方向に移動させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の視覚検査システム。
【請求項6】
前記動作制御手段により前記第3の制御が行われる際には、
前記着目点が移動前の前記カメラの撮影画像上で指定された場合に、
前記垂直面内で、前記カメラのレンズ中心と前記着目点とを結ぶ線分のY軸方向に対してなすずれ角度λは、
λ=(レンズの垂直方向画角)*(指定された着目点の画面中心からの垂直方向画素数)/(カメラの垂直方向画素数)
の式で求められ、
前記カメラのY軸方向移動量をΔY、Z軸方向移動量をΔZとすると、
tanλ=ΔZ/ΔY
の式を維持するΔZ/ΔYの比率で移動制御が行われることを特徴とする請求項5記載の視覚検査システム。
【請求項7】
前記動作制御手段により前記第4の制御が行われる際には、
移動前の、水平面内での前記ワークの回転中心から前記着目点までの距離をR、該水平面内での該回転中心から前記レンズ中心までの距離をL1、前記垂直面内での前記レンズ中心と前記着目点とを結ぶ線分のY軸方向に対してなすずれ角度をλとすると、
前記着目点が移動前の前記カメラの撮影画像上で指定された場合に、前記角度λは、
λ=(レンズの垂直方向画角)*(指定された着目点の画面中心からの垂直方向画素数)/(カメラの垂直方向画素数)
の式で求められ、
前記レンズ中心から前記着目点までの距離Lは、
L=(L1−R)/cosλ
の式で求められ、
前記レンズ中心のY軸方向座標Y、及び、Z軸方向座標Zが、
(Y−R)2 +(Z−L*cosλ)2 =L2
の式を維持するように前記カメラのZ軸方向及びY軸方向の移動が制御されることを特徴とする請求項5又は6記載の視覚検査システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−194498(P2011−194498A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62478(P2010−62478)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】