説明

車載ハンズフリー装置および車両用ナビゲーション装置

【課題】車両が事故多発地点を通過中に電話機への着信があった場合でも、運転者が運転に集中できなくなる事態を防止できる車載ハンズフリー装置を提供する。
【解決手段】着信不可区間設定部18は、自車位置周辺の道路上、案内経路上または進行方向の道路上に存在する事故多発地点について着信不可区間を設定する。ハンズフリー制御部17は、車両が着信不可区間に位置する期間にあってはハンズフリー着信を保留する着信不可制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話機への着信を検出するとハンズフリー着信を実行してハンズフリー通話を可能とする車載ハンズフリー装置およびこの車載ハンズフリー装置を備えた車両用ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車室内にて携帯電話機と有線または無線で接続され、車室内に設けられたマイクおよびスピーカを利用してハンズフリー通話を可能とするハンズフリー装置が種々提案されている。このハンズフリー装置を使用すれば、運転者は、運転中に携帯電話機に着信があった場合でも、ハンズフリーで(携帯電話機に触れることなく)着信して通話をすることができる。
【0003】
しかし、運転者が運転中に上記ハンズフリー通話を行うことが問題となる場合も考えられる。例えば、カーブや合流地点などの交通事故が多発するような地点(事故多発地点)を通過する場合、運転者は通常よりも運転に集中する必要がある。このようなときに、ハンズフリー通話を行うと、その分だけ運転者は運転に集中できなくなってしまう。
【0004】
そこで、車両の各状態(車両の走行速度、ブレーキの状態、車両の旋回状態など)を入力し、これらに基づいて運転者にとって運転がどの程度負担になっているかを検出し、負担が大きい場合には呼出音を停止させるものが発明されている(例えば特許文献1参照)。このものによれば、運転者は、上記したような事故多発地点を通過する際、たとえ携帯電話機に着信があったとしても運転に集中することができる。
【特許文献1】特開平10−294965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したとおり、従来技術の構成は、運転に対する負担が大きいか否かを判断した後、呼出音の停止を行うものである。このため、車両が事故多発地点を通過中、上記判断がなされる前に着信があった場合、ハンズフリー着信を実行してしまうことが考えられる。この場合、運転者が運転に集中できない事態が想定される。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両が事故多発地点を通過中に電話機への着信があった場合でも、運転者が運転に集中できなくなる事態を防止できる車載ハンズフリー装置およびこの車載ハンズフリー装置を備えた車両用ナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の手段によれば、着信不可区間設定手段は、車両の現在位置を示す自車位置データ、道路地図データおよび事故多発地点データに基づいて、車両の進行方向の道路上に事故多発地点が存在すると判断した場合、少なくともその事故多発地点までの区間を着信不可区間として設定する。そして、ハンズフリー制御手段は、自車位置データに基づいて、車両が上記着信不可区間に位置している期間にあってはハンズフリー着信を不可とする着信不可制御を実行する。これにより、たとえこの期間に電話機に着信があった場合でも、運転者が運転に集中できなくなる事態を防止することができる。
【0008】
請求項2記載の手段によれば、着信不可区間設定手段は、車両の走行経路を案内するための経路データに基づいて車両の進行方向を判断する。これにより、車両が案内された経路どおりに走行している場合には、車両の進行する方向を正確に判断し、その進行方向の道路上の事故多発地点について着信不可区間を確実に設定できる。
【0009】
請求項3記載の手段によれば、着信不可区間設定手段は、自車位置データの変化と道路地図データとに基づいて車両の進行方向を判断する。これにより、経路案内されていない場合であっても、車両の進行する方向を判断し、その進行方向の道路上の事故多発地点について着信不可区間を確実に設定できる。
【0010】
請求項4記載の手段によれば、着信不可区間設定手段は、車両の進行方向に分岐点が存在する場合、この分岐点以降の複数の道路のうち、道路の格が最も上の道路を進行すると判断する。この道路の格は、道路の規模の大きさに応じて定めるものであり、例えば県道より国道のほうが高く設定される。つまり、このように進行方向を判断することで、分岐点があった場合でも、車両が進行する可能性が高い道路上の事故多発地点について着信不可区間を確実に設定できる。
【0011】
請求項5記載の手段によれば、着信不可区間設定手段は、車両の進行方向に分岐点が存在する場合、この分岐点以降の複数の道路のうち、道路の幅が最も広い道路を進行すると判断する。このように進行方向を判断することで、分岐点があった場合でも車両が進行する可能性が高い道路上の事故多発地点について着信不可区間を確実に設定できる。
【0012】
請求項6記載の手段によれば、ハンズフリー制御手段は、車両の走行速度が所定のしきい値速度を超える場合に着信不可制御を実行可能とする。車両が着信不可区間に位置している期間であっても、走行速度に応じて運転に集中すべき度合いが変化する。例えば、着信不可区間で停車している場合、つまり走行速度がゼロのときには、運転者は運転に集中する必要がないため(運転自体行わないため)、このような場合にハンズフリー着信を可能とすることで利便性が向上する。
【0013】
請求項7記載の手段によれば、着信不可区間設定手段は、車両の走行速度が速いほど、事故多発地点までの所定区間が長くなるように着信不可区間を設定する。現在位置から事故多発地点に到達するまでに要する時間は、車両の走行速度に応じて変化する。上記したように着信不可区間を設定すれば、車両の走行速度が速い場合、事故多発地点からより手前の地点からハンズフリー着信が不可となる。従って、走行速度の速さに関係なく、事故多発地点を通過する際にハンズフリー通話が行われてしまう事態を確実に防止できる。
【0014】
請求項8記載の手段によれば、着信不可区間設定手段は、事故多発地点がカーブ上に存在すると判断した場合、このカーブを含む範囲を着信不可区間として設定する。車両がカーブを走行する場合、運転者は少なくともその入口から出口までの区間において運転に特に集中する必要がある。上記したように着信不可区間を設定すれば、カーブ上にある事故多発地点を通過する際についても運転に集中できない事態を防止できる。
【0015】
請求項9記載の手段によれば、着信不可区間設定手段は、事故多発地点が合流地点である場合、この合流地点の前後区間を着信不可区間として設定する。車両が合流地点を走行する場合、運転者は、その前後区間において運転に特に集中する必要がある。上記したように着信不可区間を設定すれば、合流地点である事故多発地点を通過する際についても運転に集中できない事態を防止できる。
【0016】
請求項10記載の手段によれば、ハンズフリー制御手段は、着信不可制御を実行する際、電話機を介して着信の相手に対し、通話できない旨の通知を行う。このようにすれば、車両が着信不可区間に位置している期間に着信があった場合、その着信の相手が不快に感じてしまうことを防止できる。
【0017】
請求項11記載の手段によれば、ハンズフリー制御手段は、電話機への着信を保留状態にすることで着信不可制御を実行する。これにより、車両が着信不可区間に位置しているときに着信があった場合でも、保留状態のままで車両が着信不可区間を離脱すれば、その後、直ちにハンズフリー着信を実行してハンズフリー通話を可能とすることができる。
【0018】
請求項12記載の手段によれば、本発明を車両用ナビゲーション装置に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をハンズフリー機能を備えた車両用ナビゲーション装置に適用した場合の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、車両に搭載されるナビゲーション装置1(車載ハンズフリー装置および車両用ナビゲーション装置に相当)の構成を機能ブロック図として概略的に示している。ナビゲーション装置1は、この装置の動作全般を制御する制御部2に対して、位置検出部3、地図データ格納部4、スイッチ情報入力部5、表示部6、音声処理部7およびBluetooth通信部8が接続された構成を備えている。
【0020】
位置検出部3(位置データ取得手段に相当)は、GPS(Global Positioning System)センサ3a、ジャイロセンサ3b、車両の走行速度を検出する車速センサ3c(車速データ取得手段に相当)などから構成されている。位置検出部3は、上記各位置検出要素の検出信号を補間しながら高精度に車両の位置を検出するようになっている。なお、要求される検出精度によってはこれらの一部のみで構成してもよいし、さらに、車両の加速度を検出する加速度センサなどを加えてもよい。
【0021】
地図データ格納部4(地図データ取得手段および地点データ取得手段に相当)は、道路地図データ、目印データ、マップマッチング用データ、目的地データ、事故多発地点データなどの各種データを記録したデータ記憶媒体からデータを読み出すためのドライブ装置により構成されている。このうち、道路地図データには、道路形状、道路幅、道路種別(一般道、県道、国道、高速道路等)なども含まれる。また、事故多発地点データは、例えば急カーブや合流地点など交通事故が起こり易い地点を示すデータである。データ記憶媒体としては、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク、メモリカードなどが用いられる。
【0022】
スイッチ情報入力部5は、表示部6の周辺に配設されたメカニカルスイッチ、表示部6の表示画面上に形成されたタッチパネル等からなり、各種データや設定事項などの操作に係るコマンド、文字情報、地図の指定信号等を制御部2に与えるために設けられている。なお、必要に応じてリモコンからの操作を受け付けるリモコン受光部を設けてもよい。
【0023】
表示部6は、地図や文字等を表示するためのカラー液晶ディスプレイ等から構成されており、車両の運転席近傍に設置されている。表示部6の表示画面には、位置検出部3により検出された車両の現在位置および進行方向を示すマーカ、地図データ格納部4より入力された道路地図データ、地図上に表示する誘導経路や設定地点の目印などの付加データ等が重畳して表示されるようになっている。また、表示部6の表示画面には、使用者による目的地等の検索および入力のための各種入力画面、各種のメッセージおよびインフォメーション等も表示されるようになっている。音声処理部7は、マイク9に入力された送話音声およびスピーカ10から出力される受話音声を音声処理する。
【0024】
Bluetooth通信部8は、Bluetooth(登録商標)通信規格に準拠した近距離無線通信機能を有しており、外部の同一規格に準拠した無線通信機能を備えた機器(例えば携帯電話機A)との間で無線通信接続可能としている。運転者の所有する携帯電話機A(電話機に相当)は、携帯電話網との間でセルラー無線通信を行うセルラー無線通信機能を有するとともにBluetooth通信を行うBluetooth通信機能を有している。携帯電話機Aは、車両内に持ち込まれBluetooth通信部8との通信可能範囲内に位置すると、Bluetooth通信リンクを確立し、ナビゲーション装置1との間でBluetooth通信を行うようになっている。
【0025】
制御部2は、CPU、ROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータを主体として構成されている。このうち、ROMにはナビゲーション機能およびハンズフリー機能のためのプログラム等が格納され、RAMにはプログラム実行時の処理データや地図データ格納部4から取得した道路地図データ等が一時的に格納されるようになっている。制御部2は、スイッチ情報入力部5に対する操作に応じて、現在位置から目的地までの最適な経路を自動的に選択して誘導経路を形成して表示する経路案内機能を実行したり、マップマッチング処理、案内音声の算出、地図の描画等を行うようになっている。このように自動的に最適な経路を設定する手法は、ダイクストラ法が知られている。
【0026】
制御部2は、マップマッチング部11、地図データ取得部12、経路計算部13、経路案内部14、描画部15、画面制御管理部16、ハンズフリー制御部17、着信不可区間設定部18としての機能を実現するように構成されている。マップマッチング部11は、位置検出部3で検出した車両の位置情報と地図データ格納部4に格納された道路地図データの道路形状データ等を使って、自車位置がどの道路上に存在するかを特定する。この際、地図データ取得部12が必要な道路地図データを地図データ格納部4より取得する。
【0027】
また、使用者がスイッチ情報入力部5を介して所望の地図を表示させる操作等を行い、目的地をセットすると、経路計算部13(経路データ取得手段に相当)は、マップマッチング部11で算出された現在位置または使用者が指定した出発地から、上記目的地までの最適な経路を計算する。経路案内部14は、上記経路計算の結果と道路地図データ(道路形状、交差点の位置情報、踏み切りの位置情報など)とから案内に必要なポイントを算出したり、どのような案内(右に曲がるのか左に曲がるのか等)が必要なのかを算出する。
【0028】
描画部15は、画面制御管理部16の指示に従い、現在位置の地図や高速道路の略図や交差点付近では交差点付近の拡大図等を図示しない描画メモリに描画し、表示部6に表示させる。地図データ取得部12は、上記各処理で必要となる道路地図データを地図データ格納部4より取得し、各処理部に提供する。また、上記した各処理は、マイクロコンピュータのROMやRAMを使って実行される。
【0029】
ハンズフリー制御部17(ハンズフリー制御手段に相当)は、Bluetooth通信部8と運転者の所有する携帯電話機Aとの間でBluetooth通信リンクが確立されている状態でハンズフリー機能を有効化するようになっている。ハンズフリー制御部17は、ハンズフリー機能が有効化された状態では、携帯電話機Aが着信中であることを表す着信音、携帯電話機Aが発信中であることを表す発信音、携帯電話機Aが呼出中であることを表す呼出音および通話相手からの受話音声をスピーカ10から出力させる。ハンズフリー制御部17は、ハンズフリー機能が有効化された状態において、携帯電話機Aに着信があると自動的にまたはスイッチ情報入力部5の所定操作によりハンズフリー着信を実行する。
【0030】
着信不可区間設定部18(着信不可区間設定手段に相当)は、地図データ格納部4に格納された事故多発地点データをマイクロコンピュータのRAMに読み出すようになっている。着信不可区間設定部18は、詳細は後述するが、位置検出部3により検出される車両の現在位置(自車位置データ)と、地図データ格納部4から読み出された道路地図データおよび事故多発地点データに基づいて着信不可区間を設定する。この着信不可区間の設定は、ナビゲーション装置1の起動時、経路案内開始時または車両が所定距離を走行する毎に実行される。なお、着信不可区間設定部18が、Bluetooth通信部8および携帯電話機Aを介して図示しないセンターから定期的に事故多発地点データをダウンロードする構成としてもよい。このようにすれば、常に最新の事故多発地点の情報を得ることができる。
【0031】
ハンズフリー制御部17は、車両が着信不可区間に位置していると判断すると、自身を着信保留状態に設定する。ハンズフリー制御部17は、この着信保留状態に設定されている期間に、携帯電話機Aに着信があるとその着信を自動的に保留する(保留状態)。これにより、車両が着信不可区間に位置している期間におけるハンズフリー着信を不可としている(着信不可制御)。ただし、ハンズフリー制御部17は、車両の走行速度が所定のしきい値速度(例えばゼロ)を超える場合にのみ上記着信不可制御を実行可能としている。つまり、ハンズフリー制御部17は、停車中の場合には着信保留状態に設定しない。
【0032】
なお、上記着信不可制御は、車両が着信不可区間に位置している期間にハンズフリー着信を実行しない制御であればよく、例えば自動的に着信を拒否するような制御や、Bluetooth通信部8を介して携帯電話機Aの電源を遮断する制御でもよい。また、スイッチ情報入力部5を介して所定の操作が行われることにより、上記着信不可制御の実行を禁止するように構成してもよい。また、上記しきい値速度はゼロに限らず、例えば数km/h程度としてもよい。つまり、停車中だけでなく、車両が徐行状態である場合にも着信保留状態に設定しないように構成してもよい。
【0033】
次に、上記構成の作用について図2〜図5も参照して説明する。
図2は、制御部2による着信不可区間設定処理の全体の流れを示すフローチャートである。制御部2は、ナビゲーション装置1の起動時、経路案内開始時または車両が所定距離を走行する毎に着信不可区間の設定処理を行う。以下では、図2のフローチャートに基づいて着信不可区間設定処理の流れについて説明する。
【0034】
(1)ナビゲーション装置1の起動時
ナビゲーション装置1が起動されると(ステップS1:YES)、着信不可区間設定部18は、自車位置周辺の事故多発地点データをRAMに読み出す(ステップS2)。本実施形態では、自車位置の周辺として、例えば自車位置を中心とした半径数kmの円の内側の範囲としている。なお、この自車位置周辺の範囲をスイッチ情報入力部5の操作により変更可能としてもよい。着信不可区間設定部18は、読み出した事故多発地点データに基づいて、事故多発地点のうち、自車位置に近いものから順に着信不可区間を設定し(ステップS3)、全ての事故多発地点に対して着信不可区間の設定が完了すると処理を終了する。なお、ステップS3の「着信不可区間設定」については後述する。
【0035】
(2)経路案内開始時
使用者がスイッチ情報入力部5を操作して目的地を設定すると、経路計算部13は、現在の自車位置(または設定された出発地)から目的地までの最適な経路を算出する。その後、経路案内部14が案内に必要な情報を算出する際(ステップS1:NO、ステップS5:YES)、着信不可区間設定部18は、算出された経路上に存在する事故多発地点データをRAMに読み出す(ステップS6)。着信不可区間設定部18は、前述した起動時と同様にして着信不可区間を設定し(ステップS3)、処理を終了する。
【0036】
(3)所定距離走行時
ナビゲーション装置1が起動された後(ステップS1:NO)、経路案内機能が使用されていない場合(ステップS5:NO)において、車両が走行すると、起動時に読み出した事故多発地点以外の事故多発地点を通過する可能性がある。その際には、着信不可区間が設定されていないため、ハンズフリー着信を保留する着信不可制御が実行されない。このことから、着信不可区間設定部18は、車両が所定距離を走行する毎、例えば車両が数百m走行する毎に以下のように着信不可区間の設定を実行するようになっている。
【0037】
すなわち、車両が数百m走行すると(ステップS7:YES)、着信不可区間設定部18は、その間における自車位置データの変化と道路地図データとに基づいて車両の進行方向を判断する(ステップS8)。このとき、判断された車両の進行方向中に分岐点が存在する場合、着信不可区間設定部18は、その分岐点より先の道路の種別を道路地図データに基づいて確認し、それら道路のうち、道路の格が最も上の道路を進行すると判断する。ここで言う道路の格は、例えば、一般道より県道のほうが高く、県道よりも国道のほうが高く設定されるものであり、本実施形態では予め道路地図データ内に格納されているものとする。なお、この分岐点先の進行方向の判断は、これに限らず、例えば道路の幅を道路地図データに基づいて確認し、その幅が最も広い道路を進行する、というように判断してもよい。
【0038】
着信不可区間設定部18は、ステップS8で判断した進行方向の道路上に存在する事故多発地点データをRAMに読み出す(ステップS9)。そして、着信不可区間設定部18は、前述した起動時および経路案内開始時と同様にして着信不可区間を設定し(ステップS3)、処理を終了する。
【0039】
続いて、ステップS3における「着信不可区間設定」について図3および図4も参照して説明する。図3は、着信不可区間を設定する際における制御部2の制御内容を示すフローチャートである。また、図4は、事故多発地点付近の道路を概略的に示す図であり、(a)はカーブ周辺の道路、(b)は合流地点周辺の道路を示している。なお、図4中の矢印は車両の進行方向を表している。この着信不可区間の設定は、設定対象である事故多発地点がどのような道路に存在しているのかにより、その手法が以下のように異なる。
【0040】
(1)事故多発地点がカーブ上にある場合
図4(a)に示すように事故多発地点21がカーブの途中にある場合(ステップT1:YES)、運転者は、少なくともそのカーブの入口22から出口23までの間は、特に運転に注意する必要がある。従って、着信不可区間設定部18は、カーブの入口22から出口23までの区間を着信不可区間として設定する(ステップT2)。ここで、着信不可区間設定部18は、道路地図データに基づいて、例えば道路の屈曲が開始する点を入口22とし、屈曲が終了する点を出口23として判断するようになっている。
【0041】
なお、これら入口22および出口23の判断方法としてはこれに限らず、例えば予め道路地図データ中にカーブの入口22および出口23を示す識別子を登録しておいてもよい。また、カーブの入口22より手前の道路およびカーブの出口23より先の道路を含む区間を着信不可区間として設定してもよい。また、予め道路地図データ内に着信不可区間の位置を示すデータが格納されていてもよい。
【0042】
(2)事故多発地点が合流地点である場合
図4(b)に示すように事故多発地点が合流地点24である場合(ステップT1:NO、ステップT3:YES)、運転者は、少なくともその合流地点の前後の区間は、特に運転に注意する必要がある。従って、着信不可区間設定部18は、車両の進行方向に基づいて合流地点24より所定距離(例えば500m)手前の地点25から所定距離(例えば100m)先の地点26までの区間を着信不可区間として設定する(ステップT4)。ここで、着信不可区間設定部18は、道路地図データに基づいて、例えば道路同士の交差状態から合流地点を判断するようになっている。
【0043】
なお、この合流地点の判断方法としてはこれに限らず、例えば予め道路地図データ中に合流地点を示す識別子を登録しておいてもよい。また、着信不可区間設定部18は、ナビゲーション装置1の起動時における設定処理の場合など、車両の進行方向が判断できない場合、合流地点24に接続される全ての道路を対象とし、各道路について合流地点24から所定距離(例えば500m)だけ離れた地点までの区間を着信不可区間として設定する。
【0044】
また、着信不可区間設定部18は、所定距離走行時に着信不可区間の設定を行う場合など、車両の走行中に着信不可区間の設定を行う場合、車両の走行速度(車速データ)に基づいて着信不可区間の範囲を変更するようにしてもよい。例えば、車速が30km/hのときには、合流地点24より300m手前の地点から60m先の地点までの区間を着信不可区間として設定し、車速が60km/hのときには、合流地点より600m手前の地点から120m先の地点までの区間を着信不可区間として設定してもよい。このようにすれば、車両の走行速度に応じた適切な長さの着信不可区間を設定できる。また、予め道路地図データ内に着信不可区間についてのデータが格納されている場合、格納されたデータの想定する走行速度と実際の走行速度との差に応じて着信不可区間の距離を変更するようにしてもよい。
【0045】
(3)事故多発地点がカーブおよび合流地点以外に存在する場合
図示しないが、事故多発地点がカーブおよび合流地点以外に存在する場合(ステップT1、T3:NO)、運転者は、少なくとも事故多発地点までの所定区間は、特に運転に注意する必要がある。従って、着信不可区間設定部18は、車両の進行方向に基づいて事故多発地点より所定距離(例えば500m)手前の地点から事故多発地点までの区間(所定区間)を着信不可区間として設定する(ステップT5)。また、着信不可区間設定部18は、車両の進行方向が判断できない場合、事故多発地点を中心とした例えば半径500mの円の内側に存在する全ての道路を含む区間を着信不可区間として設定する。
【0046】
なお、この場合についても、前述した合流地点のときと同様に、車速に応じて着信不可区間の範囲を変更するようにしてもよい。例えば、車速が速いほど、着信不可区間が長くなるように変更してもよい。すなわち、車速が速いほど、事故多発地点までの上記所定区間が長くなるように着信不可区間を設定してもよい。また、車速が速いほど、事故多発地点を中心とした円の半径を大きくして着信不可区間を設定してもよい。このようにすれば、車両の走行速度に応じた適切な長さの着信不可区間を設定できる。
【0047】
続いて、制御部2による着信不可制御について図5も参照して説明する。図5は、着信不可制御を行う際における制御部2の制御内容を示すフローチャートである。車両が事故多発地点を通過する際には、運転者は特に運転に集中する必要がある。従って、このとき、運転者がハンズフリー通話を行うことは好ましくない。そこで、本実施形態のナビゲーション装置1は、上記したように事故多発地点に対して着信不可区間を設定し、車両がその着信不可区間に位置している期間にはハンズフリー着信を以下のとおり実行しないことで運転者が運転に集中できなくなる事態を防止している。
【0048】
すなわち、ハンズフリー制御部17は、自車位置データに基づいて車両が着信不可区間に位置しているか否かを監視する(ステップU1)。車両が着信不可区間に位置していない期間(ステップU1:NO)においては、ハンズフリー制御部17は、携帯電話機Aに着信があった場合、ハンズフリー着信を実行してハンズフリー通話を可能な状態とする。これにより、運転者はハンズフリーで通話を行うことができる。これに対し、車両が着信不可区間に位置していると判断すると(ステップU1:YES)、ハンズフリー制御部17は、車両の走行速度を確認する(ステップU2)。そして、車両が走行中である(車速がゼロを超えている)と判断すると(ステップU2:YES)、自身を着信保留状態に設定する(ステップU3)。
【0049】
このように設定した後、ハンズフリー制御部17は、車両が着信不可区間に位置している期間において、携帯電話機Aに対して着信があると、自動的にその着信を保留する。また、このとき、ハンズフリー制御部17が携帯電話機Aを介してその着信の相手に対し、通話できない旨のメッセージを送信するようにしてもよい。このようにすれば、その着信の相手が不快に感じてしまうことを防止できる。
【0050】
なお、車両が停車中であると判断された場合(ステップU2:NO)には、ハンズフリー制御部17は、車両が走行を開始するまで(車速がゼロを超えるまで)着信保留状態に設定しない。ハンズフリー制御部17は、自身を着信保留状態に設定した後、車両が着信不可区間から離脱したか否かを監視する(ステップU4)。そして、車両が着信不可区間から離脱したと判断すると(NO)、保留設定状態を解除し(ステップU5)、ステップU1に戻る。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のナビゲーション装置1は、事故多発地点について着信不可区間を設定する不可区間設定部18と、車両が上記着信不可区間に位置する期間において着信不可制御を実行するハンズフリー制御部17とを備えている。このような構成によれば、車両が事故多発地点を通過する際、または事故多発地点より手前の地点において、運転者の携帯電話機Aに着信があったとしても、ハンズフリー制御部17が着信を保留するので、事故多発地点の通過時におけるハンズフリー通話の実行を防止できる。従って、車両が事故多発地点を通過する際において、運転者が運転に集中できなくなる事態を防止することができる。
【0052】
着信不可区間設定部18は、経路案内開始時、その案内経路上に存在する事故多発地点について着信不可区間を設定する。これにより、車両が案内された経路どおりに走行している場合、上記着信不可制御を実行できる。また、着信不可区間設定部18は、ナビゲーション装置1の起動時に自車位置周辺の事故多発地点について着信不可区間を設定するとともに、車両が所定距離走行する毎に進行方向の道路上に存在する事故多発地点について着信不可区間を設定する。これにより、経路案内されていない場合または車両が案内された経路どおりに走行していない場合であっても上記着信不可制御を実行できる。
【0053】
着信不可区間設定部18は、車両の進行方向に分岐点が存在する場合、この分岐点以降の複数の道路のうち、道路の格が最も上の道路(または道路の幅が最も広い道路)を進行すると判断するので、車両が進行する可能性が高い道路上の事故多発地点について着信不可区間を確実に設定できる。
【0054】
着信不可区間設定部18は、事故多発地点がカーブ上に存在すると判断した場合、このカーブの入口22から出口33までの区間を着信不可区間として設定する。これにより、車両がカーブ上にある事故多発地点を通過する際においても、運転者が運転に集中できなくなる事態を防止できる。また、着信不可区間設定部18は、事故多発地点が合流地点であると判断した場合、この合流地点の前後区間を着信不可区間として設定する。これにより、車両が合流地点である事故多発地点を通過する際においても、運転者が運転に集中できなくなる事態を防止できる。
【0055】
ハンズフリー制御部17は、車両の走行速度がゼロを超える場合に着信不可制御を実行可能とする。これにより、車両が着信不可区間で停車している場合など、運転者が運転に集中する必要がない場合にハンズフリー着信を可能にでき、利便性が向上する。また、ハンズフリー制御部17は、携帯電話機Aへの着信を保留状態にすることで着信不可制御を実行する。これにより、車両が着信不可区間に位置しているときに着信があった場合でも、保留状態のままで車両が着信不可区間を離脱すれば、その後、直ちにハンズフリー着信を実行してハンズフリー通話を可能とすることができる。
【0056】
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した実施形態に限定されるものではなく、次のような変形または拡張が可能である。
ハンズフリー制御部17は、車両が着信不可区間に位置していると判断すると、車両の走行速度にかかわらず自身を着信保留状態に設定するようにしてもよい。つまり、図5のステップU2は必要に応じて設ければよい。
ナビゲーション装置1および携帯電話機Aは、Bluetooth通信規格以外の他の無線通信規格に準拠した無線通信機能を備えた構成でもよい。また、ナビゲーション装置1と携帯電話機Aとの間の通信を有線により行う構成や、ナビゲーション装置1が電話機としての機能を有する構成であってもよい。
上記実施形態においては、本発明をハンズフリー装置としての機能を備えた車両用ナビゲーション装置に適用した例を示したが、これに限らず、本発明は、独立した車載ハンズフリー装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態を示す車両用ナビゲーション装置の機能ブロック図
【図2】着信不可区間設定処理の全体の流れを示すフローチャート
【図3】着信不可区間設定を実行する際の制御内容を示すフローチャート
【図4】事故多発地点付近の道路を概略的に示す図
【図5】着信不可制御を実行する際の制御内容を示すフローチャート
【符号の説明】
【0058】
図面中、1はナビゲーション装置(車載ハンズフリー装置、車両用ナビゲーション装置)、3は位置検出部(位置データ取得手段)、3cは車速センサ(車速データ取得手段)、4は地図データ格納部(地図データ取得手段、地点データ取得手段)、13は経路計算部(経路データ取得手段)、17はハンズフリー制御部(ハンズフリー制御手段)、18は着信不可区間設定部(着信不可区間設定手段)、Aは携帯電話機(電話機)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電話機への着信を検出するとハンズフリー着信を実行してハンズフリー通話を可能とするハンズフリー制御手段を備えた車載ハンズフリー装置であって、
車両の現在位置を示す自車位置データを取得する位置データ取得手段と、
道路地図データを取得する地図データ取得手段と、
事故多発地点データを取得する地点データ取得手段と、
前記自車位置データ、前記道路地図データおよび前記事故多発地点データに基づいて、前記車両の進行方向の道路上に前記事故多発地点が存在すると判断した場合、少なくとも当該事故多発地点までの所定区間を着信不可区間として設定する着信不可区間設定手段とを備え、
前記ハンズフリー制御手段は、前記自車位置データに基づいて、前記車両が前記着信不可区間に位置している期間にあっては前記ハンズフリー着信を不可とする着信不可制御を実行することを特徴とする車載ハンズフリー装置。
【請求項2】
車両の走行経路を案内するための経路データを取得する経路データ取得手段を備え、
前記着信不可区間設定手段は、前記経路データに基づいて車両の進行方向を判断することを特徴とする請求項1記載の車載ハンズフリー装置。
【請求項3】
前記着信不可区間設定手段は、前記自車位置データの変化と前記道路地図データとに基づいて車両の進行方向を判断することを特徴とする請求項1記載の車載ハンズフリー装置。
【請求項4】
前記着信不可区間設定手段は、前記車両の進行方向に分岐点が存在する場合、この分岐点以降の複数の道路のうち、道路の格が最も上の道路を進行すると判断することを特徴とする請求項3記載の車載ハンズフリー装置。
【請求項5】
前記着信不可区間設定手段は、前記車両の進行方向に分岐点が存在する場合、この分岐点以降の複数の道路のうち、道路の幅が最も広い道路を進行すると判断することを特徴とする請求項3記載の車載ハンズフリー装置。
【請求項6】
車両の走行速度を示す車速データを取得する車速データ取得手段を備え、
前記ハンズフリー制御手段は、前記車速データに基づいて、前記車両の走行速度が所定のしきい値速度を超える場合に前記着信不可制御を実行可能とすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の車載ハンズフリー装置。
【請求項7】
車両の走行速度を示す車速データを取得する車速データ取得手段を備え、
前記着信不可区間設定手段は、前記車速データに基づいて、前記車両の走行速度が速いほど前記所定区間が長くなるように前記着信不可区間を設定することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の車載ハンズフリー装置。
【請求項8】
前記着信不可区間設定手段は、前記事故多発地点がカーブ上に存在すると判断した場合、このカーブを含む範囲を前記着信不可区間として設定することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の車載ハンズフリー装置。
【請求項9】
前記着信不可区間設定手段は、前記事故多発地点が合流地点であると判断した場合、この合流地点の前後区間を前記着信不可区間として設定することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の車載ハンズフリー装置。
【請求項10】
前記ハンズフリー制御手段は、前記着信不可制御を実行する際、前記電話機を介して前記着信の相手に対し、通話できない旨の通知を行うことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の車載ハンズフリー装置。
【請求項11】
前記ハンズフリー制御手段は、前記電話機への着信を保留状態にすることで前記着信不可制御を実行することを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の車載ハンズフリー装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の車載ハンズフリー装置を備えたことを特徴とする車両用ナビゲーション装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−253807(P2009−253807A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101375(P2008−101375)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】