説明

遅延期間再生支援

排気物を生成するエンジン(10)と、エンジンからの煤を捕捉するパティキュレートフィルタ(54)と、エンジンにかかる負荷の変化、およびエンジンにかかる負荷の変化後に経過するゼロ超の閾値時間に応答して、パワー系統を第1の動作モード(101)から第2の動作モード(102)へ切り替えて、パティキュレートフィルタを再生する制御装置(71)とを含むパワー系統(1)。制御装置は、エンジンにかかる負荷の変化後に排気背圧弁(44)の動作を遅延させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジン排気後処理系に関し、より詳細には、ディーゼルパティキュレートフィルタの再生に関する。
【背景技術】
【0002】
後処理系は、ディーゼルパティキュレートフィルタを含み、ディーゼルパティキュレートフィルタは、再生する必要があり、かつ硫黄によって失活され得る。(特許文献1)には、排気ガスの温度を限界温度超にもたらすエンジンの負荷および回転数を変更するエンジン制御システムが説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願第08160276.5号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、排気物を生成するエンジンと、エンジンからの煤を捕捉するパティキュレートフィルタと、エンジンにかかる負荷の変化、およびエンジンにかかる負荷の変化後に経過したゼロ超の閾値時間に応答して、パワー系統を第1の動作モードから第2の動作モードへ切り替えてパティキュレートフィルタを再生する制御装置とを含むパワー系統が説明されている。
【0005】
別の態様では、排気物を生成するエンジンと、排気物を送る排気管と、排気管に配置された背圧弁と、エンジン負荷の変化後に背圧弁の動作を遅延させる制御装置とを含むパワー系統が説明されている。
【0006】
さらに別の態様では、パワー系統を制御する方法であって、パワー系統を第1の動作モード下で動作させること、パワー系統にかかる負荷の変化を検出すること、パワー系統にかかる負荷の変化を検出した後、ゼロ超の閾値時間の間待機すること、および閾値時間の待機後に、パワー系統を第2の動作モード下で動作させて、パティキュレートフィルタの再生を支援することを含む方法が説明されている。
【0007】
本開示の他の特徴および態様は、以下の説明および添付の図面から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】パワー系統の線図である。
【図2】第1の動作モードおよび第2の動作モードの期間中のディーゼルパティキュレートフィルタにおける煤の負荷状況のグラフ表示である。
【図3】エンジン回転数−トルクマップ、および限界回転数−トルク曲線のグラフ表示であり、この限界回転数−トルク曲線を下回ると第2の動作モードが付勢される。
【図4】第2の動作モードで使用される戦略のブロック図である。
【図5】遅延期間および移行期間を示す、ディーゼルパティキュレートフィルタにおける煤の負荷状況のグラフ表示である。
【図6】遅延期間および移行期間を示す、ディーゼルパティキュレートフィルタにおける煤の負荷状況のグラフ表示である。
【図7】閾値を超えるディーゼルパティキュレートフィルタにおける煤の負荷状況およびエンジンの応答を示すグラフ表示である。
【図8】炭化水素除去校正モードの期間中のディーゼルパティキュレートフィルタにおける炭化水素レベルのグラフ表示である。
【図9】硫黄検出ルーチンの期間中の温度プロファイルおよび煤負荷プロファイルのグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から分かるように、パワー系統1は、エンジン10および複数の他のシステムを含む。これらのシステムは、燃料系20、吸気系30、排気系40、後処理系50、排気ガス再循環(EGR)装置60、および電気系統70を含む。パワー系統1は、図示しない他の機能、例えば冷却系、周辺部品、駆動伝達系部品などを含んでもよい。
【0010】
エンジン10は、パワー系統1のための動力を生み出す。エンジン10は、ブロック11、シリンダー12、およびピストン13を含む。ピストン13はシリンダー12内で往復運動して、クランクシャフトを駆動する。エンジン10は、任意のタイプのエンジンとし(内燃機関、ガス、ディーゼル、ガス燃料、天然ガス、プロパンなど)、任意の数および任意の形態(「V字」、直列、ラジアルなど)のシリンダーを備える任意のサイズとし得る。エンジン10を使用して、オンハイウェイ(on−highway)用のトラックまたは車両、オフハイウェイ用のトラックまたは機械、土工機械、発電機、航空宇宙応用、機関車応用、海洋応用、ポンプ、固定設備、または他のエンジンを動力源とする応用を含め、任意の機械または他の装置に動力を供給してもよい。
【0011】
燃料系20は、燃料21をエンジン10に送る。燃料系20は、燃料タンク22、送油経路23、燃料ポンプ24、燃料フィルタ25、燃料レール26、および燃料噴射装置27を含む。燃料タンク22は燃料21を含み、送油経路23が燃料タンク22から燃料レール26へ燃料21を送る。燃料ポンプ24は、燃料タンク22から燃料21を汲み上げて、燃料レール26へ燃料21を移す。一部の実施形態では、2つ以上の燃料ポンプ24を、下流燃料ポンプ24が上流燃料ポンプ24よりも高い圧力性能を有する状態で、使用してもよい。燃料21はまた、燃料21を清浄にする1つ以上燃料フィルタ25を通過してもよい。
【0012】
燃料21は、燃料レール26を経由して燃料噴射装置27まで移動し、燃料21は、対応する燃料噴射装置27を経由して各シリンダー12まで送られる。燃料噴射装置27は、噴射を送るためにソレノイドまたは圧電バルブを含んでもよい。燃料レール26は、燃料ポンプ24が動作することによって加圧される。燃料ポンプ24は、燃料ポンプ24の圧縮比を制御する斜板28を含み得る。斜板28の変更または燃料ポンプ24の動作の他の変更を使用して、燃料レール26における燃料21の圧力を変動させることができ、それゆえ、エンジンの燃料噴射圧力を変更できる。燃料系20は、上記では共通のレール式の燃料系として説明したが、他の実施形態は、他の燃料系、例えばユニット式の噴射装置などに適合されてもよい。
【0013】
吸気系30はエンジン10に新鮮な吸気31を送る。吸気系30は、送気管32、エアクリーナ33、コンプレッサ34、吸気冷却装置35、吸気バルブ36、吸気加熱装置37、および吸気マニホールド38を含む。新鮮な吸気31は送気管32から吸い込まれて、シリンダー12に入る。新鮮な空気31は、まず、エアクリーナ33を経て引き込まれ、コンプレッサ34によって圧縮され、次に、吸気冷却装置35によって冷却される。その後、新鮮な空気31は、吸気バルブ36および吸気加熱装置37を通過し得る。次いで、新鮮な空気31は、吸気マニホールド38を経由してエンジン10に送られる。各シリンダー12に関連したエンジンの吸気バルブを使用して、空気を、燃焼させるためにシリンダー12に送る。
【0014】
排気系40は、エンジン10からの生の排気物41を後処理系50へ送る。排気系40は、排気マニホールド42、ターボ過給機(turbo)43、および背圧弁44を含む。背圧弁44は、スマートエンジンブレーキ(smart engine brake)を含め、排気系に配置されたいずれかの制御可能な制限部を含んでもよい。
【0015】
ターボ過給機43は、コンプレッサ34、タービン45、ターボシャフト46、およびウェイストゲート47を含む。タービン45は、ターボシャフト46を介してコンプレッサ34に回転式に接続されている。ウェイストゲート47は、ウェイストゲート通路48およびウェイストゲートバルブ49を含む。ウェイストゲート通路48は、タービン45の上流から下流までをつなぎ、ウェイストゲートバルブ49はウェイストゲート通路48の内部に配置される。一部の実施形態では、ウェイストゲート47は、必須でなくても、含まれなくてもよい。一部の実施形態では、ターボ過給機43は、非対称的なタービン45と、EGRを駆動するために使用し得る別個の排気マニホールド42とを含み得る。他の実施形態では、ターボ過給機43は、可変形状タービン45と、EGRを駆動するために使用し得る別個の排気マニホールド42とを含み得る。一部の実施形態はまた、1つ以上の追加的なターボ過給機43を直列または並列で含み得る。
【0016】
背圧弁44は、タービン45の下流、かつ後処理系50の上流にある。他の実施形態では、背圧弁44を、後処理系50に、排気マニホールド42に、またはエンジン10の下流のどこかに配置してもよい。
【0017】
生の排気物41は、エンジンの排気弁を通ってエンジン10から排出され、かつ排気マニホールド42を通ってタービン45に送られる。熱い生の排気物41はタービン45を駆動し、タービン45はコンプレッサ34を駆動して新鮮な吸気31を圧縮する。ウェイストゲートバルブ49が開放しているときには、ウェイストゲート通路48によって生の排気物41はタービン45を迂回することができる。ウェイストゲート通路48を制御してターボ過給機43の給気圧を調整し、かつ、ウェイストゲートバルブ49は、閾値の給気圧に達したら開放するように構成し得る。
【0018】
後処理系50は生の排気物41を受け取って精製し、清浄な排気物51を生成し、それを大気に送る。後処理系50は、排気管52、ディーゼル用酸化触媒(DOC)53、およびディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)54(触媒DPF54とし得る)を含む。DOC53およびDPF54は、図示のような単一のキャニスタ55に収容しても、または個別のキャニスタに収容してもよい。後処理温度は、キャニスタ55の内部でのDOC53およびDPF54の温度を表す。後処理系50には消音器も含まれていてもよい。
【0019】
DOC53は、一酸化窒素(NO)を酸化させて二酸化窒素(NO2)にする。DOC53は、支持体上に触媒または貴金属コーティングを含む。支持体は、ハニカムまたは他の細長いチャネル構造または他の高表面積形態を有し得る。支持体は、コーディエライトまたは別の好適なセラミックまたは金属から作製し得る。貴金属コーティングは、主に白金で構成し得るが、他の触媒コーティングを使用してもよい。一実施形態では、DOC53の貴金属の負荷は、DOC1平方インチ当たり200〜600セルで、1立方フィート当たり10〜50グラムとし得る。パラジウムコーティングを使用してもよいが、これは必須ではない。なぜなら、これは通常、摂氏500度超の温度安定性のために使用されるためである。DOCはまた、ウォッシュコート(washcoat)コーティングを含んで、貴金属コーティングの保持を助け、かつ追加的な反応部位を提供してもよい。ウォッシュコートは、アルミナ(AL2O3)ベース、または別の好適な材料をベースとしたものとし得る。
【0020】
異なるタイプのDOCを、DPF54の異なる再生戦略による異なるタイプの後処理系のために構成する。これらの異なるDPF54再生戦略は、低温、ドーシング、および上流加熱を含み得る。現在の後処理系50のDOC53は、DPF54が比較的低温において受動的に再生されるため、低温後処理系DOC53を特徴とし得る。これらの低温DOCは、必要なNO2生成レベルを達成するために貴金属の高負荷を必要とするが、熱安定性のためにはパラジウムを必要としないことがある。
【0021】
ドーシングDOCは、必要な発熱反応量を生み出すために貴金属の高負荷を必要とする。これらのドーシングDOCはまた、それに伴い得る温度ゆえに、熱安定性のためにパラジウムを必要とし得る。これらのドーシングDOCの貴金属の総負荷は、上述の低温DOCの貴金属の負荷と同様とし得る。
【0022】
上流加熱DOCは、DPF54の上流にヒータまたはバーナなどの熱源があり、DPF54の再生のために熱をもたらす後処理システムに使用される。これらの上流加熱DOCは、熱が別の源から来るため、貴金属の高負荷を必要としない。しかしながら、これらの上流加熱DOCは、高い温度が伴い得るゆえに、熱安定性のためにパラジウムを必要とし得る。摂氏500度を上回る後処理温度がこれらのシステムに必要とされることが多い。これらの上流加熱DOCの貴金属の負荷は、DOC1平方インチ当たり200〜400セルで、1立方フィート当たり5〜25グラムとし得る。貴金属の負荷が低いために、上流加熱DOCは、低温またはドーシングDOCよりも安価となり得る。
【0023】
DPF54は、粒子状物質(PM)または煤を捕集する。DPF54はまた、触媒または貴金属およびウォッシュコートを含んで、DOC53がNOを二酸化窒素(NO2)に酸化させるのを助けてもよい。DPF54の触媒は、ハニカムまたは他の細長いチャネルまたは薄壁構造の支持体に被覆される。DPF54の支持体は、DOC53の支持体よりも多孔性であり、および他のすべてのチャネルは、チャネルの半分が入口端部で遮断されかつ半分が出口端部で遮断された状態で、遮断され得る。この多孔性の増大および遮断されたチャネルにより、排気物の壁流が促される。壁流によって、DPF54において煤がフィルタリングおよび捕集されるようにする。
【0024】
DOCのように、異なるタイプのDPFは、DPF54の異なる再生戦略による異なるタイプの後処理系のために構成される。例えば、上流加熱後処理システムは、あまり受動的でない再生を必要としているため、全く触媒のないまたは触媒が比較的少量であるDPFを必要としないようにしてもよい。
【0025】
後処理系50のバリエーションも可能である。例えば、DOC53を拡大して、DPF54上の任意の触媒の必要性を減少または不要にしてもよい。DPF54を同様に拡大して、被覆される触媒量を増やし、DOC53の必要性を不要にしてもよい。また、触媒のタイプを変更してもよい。触媒はまた、燃料供給装置に加えてもよい。
【0026】
後処理系50はまた、選択触媒還元(SCR)システムを含んで、NOおよびNO2をN2に還元し得る。SCRシステムは、SCR触媒と、SCR触媒において還元剤の供給を加える還元剤系とを含み得る。
【0027】
EGRシステム60は生の排気物41を吸気系30に送り、そこで、生の排気物41は新鮮な空気31と混合され、混合空気61が生成される。次いで、混合空気61はエンジン10に送られる。生の排気物41はエンジン10によって既に燃焼されているため、酸素含有量が少なく、新鮮な空気31よりも不活性である。それゆえ、エンジン10による混合空気61の燃焼は、あまり熱を発生させず、NOxの生成を抑制する。
【0028】
EGRシステム60は、EGR出発点62、EGR管路63、EGR冷却装置64、EGR弁65、リード弁66、EGR投入口67、および1つ以上のEGR混合器68を含む。EGR出発点62は、排気マニホールド42とEGR管路63とに流体連通している。他の実施形態では、EGR出発点62は、単一のまたは単一セットのシリンダーによって隔離され得る。さらに他の実施形態では、EGR出発点62は、さらに下流に、おそらく後処理系50の後にまたはその中にあってもよい。EGRシステム60はまた、シリンダー内に適合され得る。EGR冷却装置64は、EGR出発点62の下流のEGR管路63に配置される。一部の実施形態では、EGR冷却装置64および吸気冷却装置35を組み合わせてもよい。一部の実施形態はまた、リード弁66を含まなくてもよい。
【0029】
EGR弁65は、EGR管路63においてEGR冷却装置64の下流に配置される。リード弁66は、EGR管路63においてEGR弁65の下流に配置される。他の実施形態では、EGR弁65および/またはリード弁66は、EGR冷却装置64の上流に配置してもよい。EGR投入口67は、リード弁66の下流でEGR管路63に流体接続される。EGR混合器68は吸気管路32まで延在し、生の排気物41を新鮮な空気31に投入して混合し、混合空気61を生成する。一部の実施形態では、リード弁66およびEGR混合器68は、必須でなくても、または含まれていなくてもよい。
【0030】
電気系統70は、パワー系統1のセンサーからデータを受信し、そのデータを処理し、およびパワー系統1の複数の構成要素の動作を制御する。電気系統70は、制御装置71、ワイヤリングハーネス72、および複数のセンサーを含む。制御装置71は、電子制御モジュール(ECM)、または必要なデータを受信、処理、および通信できる別のプロセッサを供し得る。制御装置71はまた、共に働く複数のユニットを供し得る。制御装置71は、現在の実施形態に示すものよりも多くのまたはそれよりも少ない構成要素と通信し得るおよび/またはそれらを制御し得る。制御装置71は、本明細書で説明するように、データを受信しかつパワー系統1の構成要素を制御するように構成またはプログラムされている。
【0031】
センサーは全て、ワイヤリングハーネス72を介して制御装置71に接続されている。他の実施形態では、ワイヤリングハーネス72の代わりに無線通信が使用され得る。センサーは、煤負荷センサー73、後処理入口温度センサー74、空気取り入れ口温度センサー75、気圧センサー76、レール燃料温度センサー77、レール燃料圧力センサー78、EGRガス温度センサー79、EGR弁入口圧力センサー80、EGR弁出口圧力センサー81、吸気マニホールド温度センサー82、吸気マニホールド圧力センサー83、およびエンジン回転数センサー84を含み得る。EGR弁位置センサーも含んでもよいし、またはEGR弁の位置は、公知の指令信号に基づいて判断してもよい。
【0032】
煤負荷センサー73は、DPF54に負荷をかけている煤の量を表示する。煤負荷センサー73は、DPF54の体積当たりの煤の質量または量に対応する読み取り値を提供する。煤の負荷量は、DPF54に対する煤の最大許容負荷量の何%に当たるかで表し得る。DPF54に対する煤の最大許容負荷は、DPF54における熱事象の可能性が任意の制限値または閾値の量よりも高くなる負荷であると、判断され得る。それゆえ、煤負荷%が100%を上回ることが可能であるが、これは望ましくない。
【0033】
煤負荷値は、気圧センサー76によって決定され得る異なる高度または気圧に対して、補正する必要があり得る。煤負荷値はまた、時間の経過につれたDPF54への灰の蓄積も補正する必要があり得る。この補正は、灰の量を推定するモデルまたはセンサーを使用してなされてもよい。煤負荷センサー73がより正確かつより応答性が良ければ、より正確に100%の煤負荷値にすることができる。
【0034】
一実施形態では、煤負荷センサー73は、無線周波数(RF)センサーを供し得る。そのようなRFセンサーは、DPF54に無線周波数を通過させ、およびDPF54における粒子の負荷を表示するものとして減衰周波数を測定する。煤負荷センサー73はまた、DPF54の内部またはそれ全体にわたる他の状況を、煤負荷を表示するものとして測定し得る。例えば、煤負荷センサー73は、DPF54全体にわたる圧力差または温度差を測定し得る。煤負荷センサー73はまた、時間が経つにつれた粒子負荷を予測するコンピュータマップ、モデル、またはアルゴリズムを供し得る。
【0035】
後処理入口温度センサー74は、後処理系50に入る生の排気物41の温度を測定する。後処理温度は、後処理入口温度センサー74を介して測定され得る。後処理温度はまた、他の方法でも決定され得る。例えば、後処理温度は、エンジンマップ、赤外線温度センサー、上流または下流に配置された温度センサー、または圧力センサーから決定または推定され得る。
【0036】
空気取り入れ口温度センサー75は、吸気系30に入る新鮮な空気31の周囲温度を測定する。気圧センサー76は、パワー系統1の環境の気圧を高度の表示として測定する。レール燃料温度センサー77およびレール燃料圧力センサー78は、エンジン燃料噴射圧力である燃料レール26内部の温度および圧力を測定する。EGRガス温度センサー79は、新鮮な空気31と混合さ得る生の排気物41の温度を測定する。EGR弁入口圧力センサー80およびEGR弁出口圧力センサー81は、EGR弁65のいずれかの側の圧力を測定する。吸気マニホールド温度センサー82および吸気マニホールド圧力センサー83は、吸気マニホールド38内部の温度および圧力を測定する。エンジン回転数センサー84は、カムシャフト、クランクシャフト、または他のエンジン10の構成部品の回転数を測定することによって、エンジン10の回転数を測定し得る。
【0037】
ワイヤリングハーネス72はまた、背圧弁44、ウェイストゲートバルブ49、燃料ポンプ24、エンジン10、燃料噴射装置27、EGR弁65、吸気バルブ36、および吸気加熱装置37に接続される。制御装置71は、背圧弁44、ウェイストゲートバルブ49、燃料ポンプ24、エンジン10、燃料噴射装置27、EGR弁65、吸気バルブ36、および吸気加熱装置37を制御する。
【0038】
エンジン10は煤を発生させ、その煤はDPF54によって捕集される。煤の主成分は炭素(C)である。生の排気物41に含有されるNOは、DOCを通過するとNO2に変換される。次いで、NO2を、DPF54に捕捉された炭素と接触させる。その後、DOC53からのNO2と、DPF54に捕捉された炭素とが反応して、CO2およびNOを生成し、煤を燃焼する。DPFが触媒作用を受ける場合、NOは再びNO2に変換されて、さらに煤の酸化を可能にする。
【0039】
後処理のライトオフ(light−off)温度超では、上述の反応は、少なくとも捕捉されている煤を可能な限り燃焼させる、またはDPF54を連続的に再生するのに十分な割合で発生し得る。後処理のライトオフ温度は摂氏約230度とし得る。他の実施形態では、後処理のライトオフ温度は摂氏約200度〜260度とし得る。後処理温度がライトオフ温度超まで上昇すると、上述の反応率が増加し、DPF54はより速く再生する。これらの条件下での再生を低温再生と称する。
【0040】
図2、図3、および図5〜図8は、パワー系統の動作状態を示すグラフである。提示された値は本開示の態様を示すことを意味し、必ずしも予想されたすなわち経験によるデータセットを表しているわけではないことを理解されたい。
【0041】
図2から分かるように、いくつかのエンジン10の運転またはデューティサイクルまたは環境下では、後処理温度は、十分な時間、十分に高くなり、DPF54を連続的に再生する。しかしながら、図2はまた、いくつかのデューティサイクルまたは環境では、後処理温度が不十分であり、DPFにおける煤負荷が、再生活性化煤閾値103に達し得ることを示す。
【0042】
再生活性化煤閾値103に達した状況の理由を説明する。エンジン10は、第1の動作モード101または第2の動作モード102のいずれかで動作する制御システム100を含む。第2の動作モード102は再生支援校正モードとも呼ばれ、DPF54の再生をもたらすパワー系統1の条件を生み出す。ほとんどのエンジン10の運転またはデューティサイクルまたは環境下では、およびDPF54が再生活性化煤閾値103を下回る場合には、制御システム100はエンジン10を、標準校正モードとも呼ばれ得る第1の動作モード101で動作させる。第2の動作モード102は、低温後処理系で用いられると説明するが、再生を支援するためにドーシングまたは上流加熱後処理系と併せて使用されてもよい。
【0043】
図3は、エンジン回転数対エンジントルクのグラフを示す。グラフは、最高定格回転数−トルク曲線104、および閾値または限界回転数−トルク曲線105を含む。限界回転数−トルク曲線105は、通常の動作条件下でDOCのライトオフ温度を上回る後処理温度をもたらしてDPF54の連続的な再生を可能にする、エンジン10の条件に関連し得る。一実施形態では、ライトオフ温度は摂氏約230度とし得る。他の実施形態では、回転数−トルク曲線105は、他の後処理温度閾値に関連し得る。
【0044】
限界回転数−トルク曲線105の形状は、パワー系統1およびその設置箇所に依って変化し得る。エンジン10の回転数は、エンジン回転数センサー84によって判断される。エンジン10のトルクは、エンジン10の回転数および燃料21の噴射量に応じて計算される。限界回転数−トルク曲線105の下側の領域は、エンジン回転数およびトルクの値を用いて作成されたマップによって決定し得る。
【0045】
エンジン10の回転数−トルクが限界回転数−トルク曲線105を上回る場合、第2の動作モード102は無効になり、第1の動作モード101のみが用いられる。DPF54が再生活性化煤閾値103に達し、かつエンジン10の回転数およびトルクが限界回転数−トルク曲線105を下回る場合、制御システム100はエンジン10を第2の動作モード102で動作させる。
【0046】
再生失活煤閾値106に達すると、制御システム100は再び第1の動作モード101を起動させる。この再生失活煤閾値106よりも低くなる降下の後、再生活性化煤閾値103に再び達するまでは第2の動作モード102は再起動されない。
【0047】
再生活性化煤閾値103および再生失活煤閾値106の規定は、第2の動作モード102を、可能な限り使用回避するように決定される。一部の実施形態では、再生活性化煤閾値103は約90%とし得る。他の実施形態では、再生活性化煤閾値103は70%〜100%、85%〜95%、80%超、または90%超とし得る。一部の実施形態では、再生失活煤閾値106は約80%とし、他の実施形態では、再生失活煤閾値106は65%〜85%、70%超、または80%超とし得る。
【0048】
エンジン10が第2の動作モード102にある間にエンジン10の回転数およびトルクが限界回転数−トルク曲線105より上に上昇する場合、第2の動作モード102は中断され、第1の動作モード101が起動され得る。この中断に続いて、エンジン10の回転数およびトルクが再び限界回転数−トルク曲線105を下回り、かつ煤負荷が再生失活煤閾値106を上回る場合、第2の動作モード102が再起動される。エンジン10が遮断されると、第2の動作モード102がアクティブであったかどうかまたは中断が発生したかどうかのいずれの履歴も失われ得るか、または、中断が発生しなかったかのように、第2の動作モード102の動作を継続するために、保持され得る。履歴はまた、エンジン10の遮断後の予め定められた量または閾値の量の後で失われるように構成し得る。
【0049】
第2の動作モード102を図4に示す。第2の動作モード102は一連の再生戦略200を用いて、エンジン出力205を生み出す。エンジン出力205は排気温度が高く、およびNOx/煤比が高い。このように、制御システム100は目標のNOx/煤比107および目標再生温度108を達成して、図2から分かるようにDPF54を再生させる。目標のNOx/煤比107は加速低温連続再生をもたらし、それにより第2の動作モード102を必要とする時間を短縮させ得る。
【0050】
第1の動作モード101の期間中、エンジン10によって生じたNOx/煤比は、1グラムの煤当たり20グラム超のNOxとし得る。第2の動作モード102の期間中、エンジン10によって生じた目標のNOx/煤比107は、1グラムの煤当たり35グラム超のNOxに上昇し得る。他の実施形態では、第2の動作モード102の期間中、目標のNOx/煤比107は、1グラムの煤当たり45グラム超のNOxとし得る。さらに他の実施形態では、第2の動作モード102の期間中、目標のNOx/煤比107は、1グラムの煤当たり50グラム超のNOxとし得る。目標のNOx/煤比107はまた、第2の動作モード102の期間中、1グラムの煤当たり45〜55グラムのNOxとし得る。一部の実施形態では、エンジン10によって生じる目標のNOx/煤比107は、1グラムの煤当たり約50グラムのNOxとし得る。
【0051】
第2の動作モード102の期間中、目標再生温度108はライトオフ温度を上回り、摂氏200〜400度の範囲とし得る。他の実施形態では、第2の動作モード102の期間中、目標再生温度108は摂氏230度を上回る。
【0052】
上述の通り、DOCはNOをNO2に変換し、NO2は、DPF54中の炭素と反応してCO2とNOとを生成する。第2の動作モード102は、生の排気物41中のNOx/煤比を高めるため、より多くのNO2が煤との反応に利用可能となり、より速い速度でCO2およびNOを生成する。上述の通り、第2の動作モード102はまた、生の排気物41の温度を上昇させ、後処理温度をライトオフ温度超に上昇させて、これら反応を可能にする必要がある。第2の動作モード102はまた、生の排気物41中の煤量を低下させ、捕捉される炭素を少なくし、DPF中の全煤負荷を迅速に低下させる。
【0053】
出力205を達成するために、第2の動作モード102は、エンジンの運転パラメーターを変更させる複数の再生戦略200を用いる。これらの再生戦略200は、背圧弁戦略210、EGR弁戦略220、燃料噴射タイミング戦略230、燃料ショットモード戦略240、燃料圧力戦略250、および吸気加熱装置戦略260を含み得る。それぞれ個々の戦略は、NOx、温度、および煤に異なる方法で影響を及ぼし得るが、それら戦略は全て一体となって働いて、後処理温度および生の排気物41のNOx/煤比を上昇させる。
【0054】
本明細書で説明する再生戦略のタイプは、燃料効率の低下、エンジン10の騒音増加、過渡応答の低下、および追加コストおよび複雑さのいくつかに関連付けられる。しかしながら、本開示のパワー系統1および制御システム100はこれらの懸念を最小限に留める。
【0055】
第2の動作モード102は、ほとんどの動作条件下で、必要とされたりまたは使用されたりすることがまれである。また、第2の動作モード102と、再生戦略200の使用とにより、他のDPF再生システムで必要とされる追加的なハードウェア(ヒータ、バーナ、線量計(doser)など)を実際に減少させる。また、複数の再生戦略200を一緒に使用することにより、NOx/煤比および温度を最大にしてDPF54の再生を支援するかまたは加速再生を達成し、かつ第2の動作モード102が利用されるまたは必要とされる時間の長さを短縮してもよい。第2の動作モード102は、煤の量を増加させ得るが、NOxの量も増加させ、その結果NOx/煤比を高くする。あるいは、第2の動作モード102はNOxを減らし、かつ煤をさらに減らし、その結果、ここでもNOx/煤比を高くする。
【0056】
高いNOx/煤比はまた、温度を低下させ、かつDPF54の再生に必要な温度の時間を短縮し、それにより、DPF54にかかる熱応力を低下させ、およびDPF54のいずれのエージングまたは失活も低減させる。DPF54のエージングは触媒の焼結を生じ、これは、チャネルを詰まらせて、時間および温度に応じて性能を低下させ得る。
【0057】
DPF54の煤負荷を再生失活煤閾値106未満に低下させるために第2の動作モード102に必要な時間は、約20分〜60分の範囲とし得る。必要な時間は、同様に後処理温度に影響を与える種々の条件に依存して大きく変動し、上述の時間よりも長くまたは短くなり得る。第2の動作モード102がDPF54の煤負荷を再生失活煤閾値106未満に低下させるのに必要な時間に影響を及ぼす条件は、周囲空気温度、寄生負荷レベル、エンジンの低アイドル回転数、排気管52の長さ、吸気系30の設計およびサイズ、ターボ過給機43の構成、絶縁状態、エンジンルームのサイズ、および他の多くの要因を含み得る。
【0058】
背圧弁戦略210は、背圧弁44の閉成を含む。背圧弁44を閉成することによって、排気系40の圧力が高まり、ガバナが、エンジン10への燃料21の噴射量を増加させるようにして、エンジン10の回転数を維持する。噴射される燃料21が増加すると、燃料効率が低下するが、生の排気物41の温度および後処理温度を上昇させもする。
【0059】
背圧弁44が閉成される量は、エンジン10の回転数に依存する。背圧弁44は、エンジン10の失速を回避しつつも、必要な後処理温度を達成するのに必要な量だけ閉成される。低速では、背圧弁は最大でも98%閉成され得るが、高速では、背圧弁44は最大でも60%しか閉成されない。背圧弁44が閉成される割合は、背圧弁44が完全に開放しているときと比較した、排気管の断面積が閉成される割合である。背圧弁が閉成されている割合は、使用される特定の弁設計に基づいて変動し得る。
【0060】
低速では、背圧弁44の閉成によって吸気マニホールド38と排気マニホールド42との間に、閉成されていないときは3〜7kPaの圧力差であるのに対して、150〜300kPaの圧力差を発生させ得る。高速では、背圧弁44の閉成によって吸気マニホールド38と排気マニホールド42との間に、閉成されていないときは40〜50kPaの圧力差であるのに対して、50〜100kPaの圧力差を発生させ得る。上に挙げた圧力差の範囲は、ターボ過給機43のサイズおよび整合性、および他のパワー系統1の変更に基づいて変動し得る。
【0061】
背圧弁44の閉成は、排気マニホールド42内の圧力をゆっくりとした制御された速度で高めるために、ゆっくりとした速度で行われ得る。背圧弁44が閉成される量および上述のそれに対応した圧力差は、ターボ過給機43のタイプ/サイズ/整合性、吸気マニホールド38のサイズ、排気マニホールド42のサイズ、EGR管路63のサイズ、後処理系50からの背圧を含む複数の要因、および他の多くの要因に大きく依存し得る。
【0062】
背圧弁44の動作は、吸気マニホールド38と排気マニホールド42との間で測定または決定された圧力差によって制御される。吸気マニホールド38の圧力は、吸気マニホールド圧力センサー83によって決定される。排気マニホールド42の圧力は、EGR弁入口圧力センサー80によって決定される。下記で説明するように、EGR弁65は、第2の動作モード102の期間中、閉成されるので、EGR弁入口圧力センサー80の圧力は排気マニホールド42の圧力と同じとなる。別の実施形態では、排気マニホールド42の圧力は、排気マニホールド42に追加された圧力センサーによって決定され得る。排気マニホールド42に圧力センサーを追加することは、別の実施形態においてEGR弁が完全に閉成されないまたはEGRシステム60が含まれないもしくは変更されない場合に、必要である。
【0063】
背圧弁44の動作はまた、後処理温度によって制御され得る。しかしながら、吸気マニホールド38と排気マニホールド42との間の圧力差は、より応答性を高くし得る。背圧弁44の動作を制御するために後処理温度を使用することは、圧力差の結果として温度が上昇するのを待機することを必要とし得る。
【0064】
後処理温度に基づいた制御は、吸気マニホールド38と排気マニホールド42との間の圧力差に基づいた制御がDOC53のライトオフ温度超の後処理温度を生じない場合に、使用され得る。吸気マニホールド38と排気マニホールド42との間の目標圧力差を達成したにもかかわらず、所望の後処理温度に到達しないということは、低温の周囲条件、または後処理系50の設置箇所がかなり下流であることの結果とし得る。これらの状況では、背圧弁44は、後処理温度に基づいて制御されて、吸気マニホールド38と排気マニホールド42との間の圧力差によって決定されるものよりも大きな割合で閉成され得る。しかしながら、一実施形態では、吸気マニホールド38と排気マニホールド42との間の圧力差は、最大値(例えば300kPa)を超えることは禁止される。
【0065】
また、吸気マニホールド38と排気マニホールド42との間の圧力差に基づいた制御が、予め決められた値または閾値の後処理最高温度(例えば摂氏400度)を超える後処理温度を生じる場合に、後処理温度に基づいた制御が使用され得る。後処理最高温度を超えることは、上述の通り、DOC53および/またはDPF54に損傷をもたらし得る。これらの状況では、背圧弁44は、後処理温度に基づいて制御され、かつ吸気マニホールド38と排気マニホールド42との間の圧力差によって決定されるものよりも大きな割合で、開放され得る。後処理最高温度を超えることはまた、操作者への警告を生じ得る。
【0066】
背圧弁44の動作はまた、排気マニホールド42の絶対圧力によって制御され得る。しかしながら、吸気マニホールド38と排気マニホールド42との間の圧力差を使用することによって、高度が絶対圧力に与える影響を考慮する必要性を低下させ得る。
【0067】
背圧弁44が閉成しないまたはコマンドに応答しない場合、第2の動作モード102は、多かれ少なかれ他の再生戦略200を使用するおよび/またはエンジン10を性能低下させる(de−rated)ように修正され得る。
【0068】
背圧弁44が適切に機能するように保つために、および過酷な環境におけるその動作を試験するために、背圧弁44を動かし得る。これらの動きは周期的に(例えば30分ごとに)行われ得る。動きの程度は排気質量流量に依存し、大きな動きは排気質量流量が低いときに行われ、小さな動きは排気質量流量が高いときに行われ得る。排気質量流量は、エンジン10の回転数、センサー、出力、または別のパワー系統1の条件に応じて決定され得る。大きな動きは、背圧弁44の動作および試験により利益をもたらす一方、小さな動きは、高速で必要とされ、試験中のエンジン10のパフォーマンスへのインパクトを低下させ得る。背圧弁44の動きはまた、パフォーマンスインパクトが懸念しているものよりも小さい低いエンジン10の回転数でのみ発生するように制限され得る。
【0069】
追加的な戦略、または背圧弁戦略210に代わるものは、吸気バルブ戦略とし得る。吸気バルブ36または背圧弁44のいずれかまたは双方を再生バルブ(regeneration valve)と称し、これらは、DPF54の再生の支援に使用され得る。一実施形態では、吸気バルブ36の閉成によって、エンジン10への新鮮な吸気31の供給量を低下させ、ポンプ損失を増加させ、それにより温度を上昇させる。背圧弁戦略210は、吸気バルブ戦略よりも効果的とし得る。なぜなら、背圧弁戦略210はマニホールド圧力を低下させず、それゆえ、不点火(misfire)の影響をより受けにくくなるためである。一部の実施形態では、吸気バルブ36は、パワー系統1に必要とされなくても、または含まれなくてもよい。
【0070】
EGR弁戦略220は、第2の動作モード102の期間中にまたは背圧弁44が少なくとも部分的に閉成されている間に、EGR弁65を閉成することを含む。しかしながら、EGR弁65は、背圧弁44が少なくとも部分的に閉成されている間、特に背圧弁44が、他の後処理装置、例えばSCRシステムまたはDOC53の温度管理に使用されている場合、常に閉成されている必要があるわけではない。EGRシステム60の閉成は、NOxの生成量を増加させる。EGRシステム60の閉成はまた、背圧弁44が少なくとも部分的に閉成されている間に、高レベルの流れがEGRシステム60を流れることを防止する。この流れは、混合空気61における生の排気物41対新鮮な空気31の不均衡の原因となり、背圧弁戦略210の有効性を低下させ得る。
【0071】
一部の実施形態では、背圧弁44は、完全に開放した状態に保たれるか、またはEGR弁65の閉成の失敗が発生した場合よりも大きく開放される。EGR弁戦略220は、EGRシステムのないパワー系統において除外され得るか、またはシリンダー内EGRシステムを有するパワー系統において修正され得る。
【0072】
燃料噴射タイミング戦略230は、主噴射のタイミングを前倒しさせるまたは遅延させることを含む。燃料噴射のタイミングを前倒しするかまたは遅延させるかどうかは、一部には、第1の動作モード101において、第2の動作モード102の起動前に、現在のエンジン10の回転数およびトルクに関して現在の燃料噴射のどういうタイミングにあるかに依存する。燃料噴射のタイミングの変更の影響は燃焼力学への依存度が極めて高く、燃焼力学は、ピストンおよびヘッドの幾何学的形状、燃焼噴霧パターン、空気/燃料比、または他の要因の影響を受け得る。これらの不確実性にもかかわらず、燃料噴射のタイミングの前倒しは、煤の低減およびNOxの増加に関連付けられ、燃料噴射のタイミングの遅延は、温度の上昇、煤の増加、およびNOxの低下に関連付けられ得る。
【0073】
これらの競合する利益のために、燃料噴射のタイミングを前倒しさせるかまたは遅延させるかは、第2の動作モード102における他の再生戦略200が所与のエンジン10の回転数およびトルクで温度、NOx、および煤に与え得る影響に依存する。例えば、限界回転数−トルク曲線105下でエンジン10の高い回転数およびトルクでは、ライトオフ温度超の後処理温度は、他の戦略によって容易に得ることができるので、燃料噴射のタイミングを前倒しして煤を低減させ得る。反対に、限界回転数−トルク曲線105を下回る、エンジン10の低い回転数およびトルクでは、ライトオフ温度超の後処理温度は、他の戦略によって得ることが困難であるため、燃料噴射のタイミングを遅延させて、後処理温度の上昇を支援し得る。
【0074】
燃料ショットモード戦略240は、燃料噴射装置27による燃料噴射ショットを追加することを含む。一実施形態では、燃料ショットモード戦略240は、早期のパイロットショット(上死点のピストン13の位置の10〜40度前)、密結合のパイロットショット(上死点のピストン13の位置の5〜20度前)、密接なポスト(上死点のピストン13の位置の5〜30度後)、または後期のポスト(上死点のピストン13の位置の10〜40度後)を追加し得る。他の実施形態は、多種多様な別の燃料噴射ショットパターンを含み得る。
【0075】
これらのショットの各々は、特に他の再生戦略200と組み合わせられるときに、DPF54の再生を達成するのに有益とし得る、異なる影響を有する。燃料噴射タイミング戦略230のように、早期のパイロットもしくは後期のポストまたはそれら双方が使用されるかどうかは、エンジン10の回転数およびトルクや、他の再生戦略200がDPF54の再生に必要とされる温度、NOx、および煤のレベルに達成するの能力に依存する。後期のポストショットの追加は、煤の低減および温度の上昇に関連付けられ、それゆえ燃料ショットモード戦略240の一部とし得ることが多い。
【0076】
燃料圧力戦略250は、エンジンの燃料噴射圧力を高めるために燃料レール26の燃料圧力を高めることを含む。燃料噴射圧力の増大は、騒音レベルを増加させるだけでなく、NOxを増加させ、かつ煤を低減させる。燃料噴射圧力が高いと、燃焼室において燃料21の蒸発を促し、これにより、NOxが増加され得る。燃料圧力の増加はまた、温度を低下させるが、他の再生戦略200を使用して、この影響を補償しかつ温度を上昇させることができる。
【0077】
第2の動作モード102の期間中の燃料噴射圧力は、第1の動作モード101の期間中の燃料噴射圧力の1.5倍超、2倍超、または2.5倍超とし得る。加えて、燃料噴射圧力は、第2の動作モード102の期間中に、傾斜に沿って徐々に上昇され得る。一実施形態では、第2の動作モード102の期間中の燃料噴射圧力は、第1の動作モード101の期間中は30〜40MPaであるのに対して、60〜70MPaとし得る。
【0078】
吸気加熱装置戦略260は、吸気加熱装置37の起動を含む。吸気加熱装置37を起動することによって、エンジン10に寄生負荷を加え、燃焼シリンダー12に送られる吸気を加熱する。両効果とも排気温度を高くし、再生を支援する。一部の実施形態では、吸気加熱装置37は必須でなくても、または含まれなくてもよい。
【0079】
しかしながら、エンジン10の低アイドル回転数では、吸気加熱装置37およびエンジン10または機械の他の電機部品に電力をもたらすオルタネータは、十分な動力をもたらすことができない可能性がある。それゆえ、ある程度まで、かつ必要なときに、吸気加熱装置37のみを起動する戦略が必要とされる。従って、吸気加熱装置37は、吸気温度および燃料消費量に基づく閉ループ制御システムによって起動され得る。吸気温度および燃料消費量を使用して、吸気加熱装置37の所与の使用において得られる生の排気物41の温度を予測する。次いで、吸気加熱装置37は、所望の生の排気物41の温度を達成するのに必要な程度までのみ、起動される。吸気温度は、吸気マニホールド温度センサー82によって決定され得る。燃料消費値は、多量の空気流および燃焼熱が変化して生の排気物41の温度に対して影響を与えるときに、エンジン10の負荷または回転数−トルクに基づいて補正され得る。
【0080】
別の実施形態では、吸気加熱装置戦略260および吸気加熱装置37は必須でなくてもよい。吸気加熱装置戦略260および吸気加熱装置37は、周囲温度が非常に低いときにのみ(例えば摂氏マイナス25度未満)、または、エンジン10の低いアイドリングまたは負荷が低い状態で動作することが多いアプリケーションにのみ、必要とされ得る。
【0081】
他の別の実施形態では、エンジン10のアイドル回転数も、第2の動作モード102の期間中に増加する。エンジン10のアイドル回転数はまた、予め決められた値または閾値の周囲温度を下回る環境(例えば、摂氏0度未満)において増加し得る。環境の周囲温度は、新鮮な空気取り入れ口温度センサー75によって決定され得る。他の実施形態では、新鮮な空気取り入れ口温度センサー75は含まれなくてもよく、環境の温度は、エンジン10の始動時、エンジン10が温まる前に、他の温度センサーによって決定され得る。
【0082】
他の別の実施形態はまた、第2の動作モード102の一部として、エンジン10への1つ以上の寄生負荷の使用を含んでもよい。エンジン10への負荷は、ウォータポンプ、空調装置、液圧ポンプ、発電機、ファン、暖房装置、コンプレッサ、ライト、またはエンジン10からエネルギーを引き出す任意の他のシステムを起動させることによって、増加し得る。SCRシステムが用いられる場合、第2の動作モード102が生じる高レベルのNOxを考慮して、還元剤の供給量を、第2の動作モード102を起動させるまでおよび/または第2の動作モード102の起動中に増加する。
【0083】
制御システム100の態様をさらに説明するために、図5、図6、および図7は、図3からの限界回転数−トルク曲線105の、時間に応じた表示を含む。簡単にするために、図5、図6、および図7は、限界回転数−トルク曲線105を平らな線として示し、かつ限界回転数−トルク曲線105と比較したエンジン10の回転数およびトルクを表す線も含む。このように、図5、図6、および図7は、エンジン10の回転数およびトルクが限界回転数−トルク曲線105を上回るおよび下回る時間を示す。
【0084】
図5は、制御システム100が遅延期間109も含むことを示す。遅延期間109は、煤負荷が再生活性化煤閾値103を上回りかつエンジン10の回転数およびトルクが限界回転数−トルク曲線105を下回っているにもかかわらず、第2の動作モード102が起動されていない状態での遅延である。従って、第1の動作モード101は、遅延期間109の期間中、アクティブである。
【0085】
第2の動作モード102の起動は、応答性および性能に悪影響を及ぼすことがある。それゆえ、第2の動作モード102の起動は、エンジン10の回転数およびトルクの増加が起こりうるときには、回避する必要があり得る。エンジン10の回転数およびトルクの増加は、エンジン10の回転数およびトルクの低下の直後に続くことが多い。例えば、操作者および機械は、仕事を完了した後、別のアクションの開始またはギヤの切り替え前に、休止することが多い。
【0086】
図5に示すように、遅延期間109を使用して、この休止期間中にエンジンを第1の動作モード101に保つことによって、エンジン10による過渡応答を改善してもよい。このように、遅延期間109は、これらの休止が第2の動作モード102の起動直後であるために、エンジン10の回転数およびトルクが限界回転数−トルク曲線105超に戻る見込みを減らすのに役立つ。遅延期間109は、エンジン10の回転数およびトルクが限界回転数−トルク曲線105超に戻ると、終了する。
【0087】
遅延期間109はまた、ゼロ超の、予め決められた時間または閾値時間後に終了する。一実施形態では、遅延期間109は約30秒とし得る。他の実施形態では、遅延期間109は0〜50秒、10秒超、または50秒未満とし得る。遅延期間の長さは、経験した作業条件に基づいて規定されるので、著しく変動し得る。
【0088】
図6はまた、遅延期間109の長さが、同様に煤負荷のレベルに基づいて変化し得ることを示す。図6の煤負荷は、エンジン10が限界回転数−トルク曲線105未満に落ち込んでいるとき、図5よりも高い。煤負荷が高いために、発生し得るエンジン10の回転数およびトルクの増加に応答性をもたらすよりも、DPF54の再生が重視される。それゆえ、遅延期間109の長さは短縮される。遅延期間109の長さは、煤負荷に応じてスライド式に短縮され得る。
【0089】
一実施形態では、遅延期間109は、煤負荷が再生活性化煤閾値103を10%超だけ上回って増加した後、約3秒まで短縮され得る。他の実施形態では、遅延期間109は、煤負荷が再生活性化煤閾値103を10%超だけ上回って増加した後、1〜30秒、1〜7秒、3秒超、3秒未満、またはゼロ秒まで短縮され得る。遅延期間109の長さはまた、機械の実装ステータス、機械の歯車、エンジン10のアイドリング、または操作者の存在に基づいて、変化し得る。
【0090】
遅延期間109は、全ての再生戦略200に適用してもよいし、または用いる再生戦略200の一部分にのみ適用してもよい。一実施形態では、遅延期間109は、背圧弁戦略210にのみ適用される。制御システム100の一部の実施形態はまた、遅延期間109または変化する遅延期間109を含まなくてもよい。
【0091】
図5はまた、制御システム100が移行期間110を含み得ることを示す。移行期間110は、第1の動作モード101に滑らかに移行して戻るために、第2の動作モード102の最後に追加してもよい。移行期間110はまた、他のエンジン10の校正または動作モードの変更間に追加されてもよい。
【0092】
移行期間110の期間中、再生戦略200は、第2の動作モード102から第1の動作モード101に戻るようにゆっくりと変化する。このゆっくりとした変化は、変化中に操作者が気づく騒音、振動、および/または性能における変化を小さくし得る。
【0093】
一実施形態では、移行期間110は背圧弁戦略210に適用してもよい。第2の動作モード102の期間中、背圧弁44は少なくとも部分的に閉成されている。背圧弁44を直ぐに開放すると、圧力がすぐに解放されるため、負荷騒音および発生し得る振動の原因となり得る。それゆえ、移行期間110の期間中、背圧弁44はゆっくりと開放されて、圧力をゆっくりと解放し得る。この圧力のゆっくりとした解放は、エンジン10が第1の動作モード101に戻るときに経験されるものよりも騒音および振動を低減させる。
【0094】
背圧弁44の動きの速度はかなり変動するが、一例では、背圧弁44は、移行期間110の期間中、4〜5秒の時間で十分な動きを達成するような速度で動いてもよい。他の実施形態では、背圧弁44は、1〜10秒、3〜6秒、5秒超、2秒超、または1秒超で十分な動きを達成するような速度で動いてもよい。背圧弁44が動く速度は、伴う背圧、質量空気流、および許容可能な圧力解放速度に依存して変動し得る。
【0095】
図6から分かるように、この移行期間110、および背圧弁44のゆっくりとした動きは、移行期間110がエンジン10の過渡応答を低下させるため、常に可能なわけではない。エンジン10に負荷がかけられ、エンジン10の回転数およびトルクが限界回転数−トルク曲線105を超えて第2の動作モード102を終了させる場合、第1の動作モード101に戻る前に移行期間110が含まれることはないか、または含まれる移行期間110は限られ得る。この状況では、背圧弁44は、可能な限り迅速に開放されるか、または移行期間110の期間中よりも迅速に開放される。
【0096】
移行期間110がないと、背圧弁44は、1秒未満の時間で十分な動きを達成し得る。一実施形態では、移行期間110が含まれないとき、背圧弁44は、150ミリ秒でその十分な動きの90%を達成し得る。この迅速な開放によって、排気系40における迅速な圧力の減圧または圧力の解放が起こり得る。この迅速な圧力の減圧は、ある程度の騒音および発生し得る振動の原因となり得るが、エンジン10の回転数およびトルクを増加させることによって、ほとんどをマスキングすることができる。他の実施形態では、移行期間110の使用は、エンジン10の回転数およびトルクの変化の速度が速い間は禁止され得る。
【0097】
図7から分かるように、DPF54の煤負荷が再生活性化煤閾値103超に上昇する場合には、追加的な補正措置が取られてもよい。これは、超低温の周囲温度、高い高度、DOC53またはDPF54の硫黄失活(下記で説明する)、エンジン10の不具合、または意図されたものでないアプリケーションのインストール構成を含め、種々の理由により発生し得る。
【0098】
煤負荷が、再生活性化煤閾値103を上回る、軽い性能低下(mild de−rate)煤閾値111に達する場合、操作者は警告される可能性が有り、エンジン10は煤低減校正モード112に入る。煤低減校正モード112の使用は、エンジン10が限界回転数−トルク曲線105を上回るかまたは下回るかを問わないとし得る。一部の実施形態では、軽い性能低下煤閾値111を約100%とし得る。他の実施形態では、軽い性能低下煤閾値111を80%〜110%、95%〜105%、90%超、または100%超とし得る。
【0099】
煤低減校正モード112は、DPF54における煤負荷を低減させるために、エンジン10によって生成される煤の量を低減させる。煤低減校正モード112は、第2の動作モード102において使用される全ての再生戦略200を使用しなくてもよい。一実施形態では、煤低減校正モード112は、EGRの流れを低下させるために第1の動作モード101によって必要とされているよりも多く、EGR弁65を閉成する。EGRの流れの減少は燃焼効率を高め、煤を低減させ得る。しかしながら、第1の動作モード101の他の態様は、煤低減校正モード112によって変更されなくてもよい。
【0100】
煤低減校正モード112はまた、エンジン10の軽い性能低下モード113を含んでもよい。軽い性能低下モード113の期間中にエンジンにもたらされる燃料の量は、特定のエンジン(10)および特定の設置またはアプリケーションに依存して変動し得る。エンジン10の軽い性能低下モード113は、エンジン10にもたらされている通常の燃料量の約85%を伴い得る。他の実施形態では、エンジン10の軽い性能低下モード113は、エンジン10にもたらされている通常の燃料量の約50%〜95%、70%〜90%、または95%未満を伴い得る。使用される軽い性能低下モード113の程度はまた、煤負荷が増加すると、スライド式に増加し得る。
【0101】
軽い性能低下モード113の期間中のこの燃料量の減少はまた、エンジン10の回転数を低下させ、かつ、エンジン10の回転数およびトルクを限界回転数−トルク曲線105の下で動かすのを助ける(負荷に依存する)。エンジン10の回転数−トルクが限界回転数−トルク曲線105を下回る場合、第2の動作モード102を使用してもよい。
【0102】
煤負荷が、軽い性能低下煤閾値111を超える完全な性能低下(full de−rate)煤閾値114に達する場合、操作者は再び警告される可能性が有り、エンジン10は完全な性能低下モード115に入る。上述の煤低減校正モード112は、使用してもまたは使用しなくてもよい。完全な性能低下モード115の使用は、エンジン10が限界回転数−トルク曲線105を上回るかまたは下回るかを問わないとし得る。一部の実施形態では、完全な性能低下煤閾値114を約120%とし得る。他の実施形態では、完全な性能低下煤閾値114を90%〜140%、115%〜125%、100%超、または120%超とし得る。
【0103】
完全な性能低下モード115は、エンジン10にもたらされている通常の燃料量の約50%を伴い得る。他の実施形態では、エンジン10の完全な性能低下モード115は、エンジン10にもたらされている通常の燃料量の約20%〜80%、40%〜60%、または70%未満を伴い得る。
【0104】
軽い性能低下モード113のように、完全な性能低下モード115は、エンジン10の回転数を低下させ、かつエンジン10の回転数およびトルクを限界回転数−トルク曲線105の下で動かすのを助け得る(負荷に依存する)。エンジン10の回転数およびトルクが限界回転数−トルク曲線105を下回る場合、第2の動作モード102を使用してもよい。
【0105】
煤負荷が、完全な性能低下煤閾値114を上回る停止煤閾値116に達する場合、エンジン停止事象117が発生し得る。一部の実施形態では、停止煤閾値116を約140%とし得る。他の実施形態では、停止煤閾値116を110%〜160%、125%〜155%、110%超、または140%超とし得る。
【0106】
第2の動作モード102が、予め決められた値または閾値よりも、または予想よりも頻繁に使用されている場合には、操作者が同様に警告を受け取ってもよいしおよび/またはエンジン10の性能低下とし得る。
【0107】
煤負荷センサー73は、所定の後処理温度未満には校正されない。エンジン10が長期間、この後処理温度未満で動作している場合、制御システム100は一時的に第1の動作モード101を修正して後処理温度を上昇させ、煤負荷センサー73から読み取り値を得てもよい。煤負荷センサー73が故障している場合、DPF54の煤負荷は、常に再生活性化煤閾値103を上回りかつ軽い性能低下煤閾値111を下回っていると仮定されてもよい。
【0108】
所定の実施形態では、第2の動作モード102は、エンジン10の始動後のエンジン10の暖機中に無効にされてもよい。第2の動作モード102は、始動後の、または始動後に予め決められたまたは閾値の冷却剤またはオイルの温度に達するまで、予め決められた時間または閾値時間、無効にされてもよい。燃焼性は、エンジン10の始動後かつエンジン10の暖機前は劣っていることが多い。第2の動作モード102の起動は、燃焼性をさらに低下させ得る。
【0109】
図8は、制御システム100が炭化水素除去校正モード118を同様に含んでもよいことを示す。エンジン10の排気物はまた、炭化水素(HC)を含有していることが知られており、その炭化水素は、触媒のライトオフ温度未満の温度で後処理系50において捕集され得る。ほとんどの炭化水素はDOC53およびDPF54を通過するが、一部は触媒に捕集または蓄積され得る。炭化水素は、蓄積可能な場合、エンジン10の回転数およびトルクが増加しかつ高い排気流が発生するときに、白煙を生成する。
【0110】
炭化水素除去温度119超では、炭化水素を後処理系50から除去できる。この炭化水素除去温度119超では、炭化水素は、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)とを生成するように反応する。炭化水素除去温度119は摂氏約180度とし得る。
【0111】
第2の動作モード102が起動されると、炭化水素除去温度119よりもはるかに高い温度に達するため、第2の動作モード102が起動されると炭化水素は除去される。炭化水素はまた、エンジン10の回転数およびトルクによって後処理温度が炭化水素除去温度119を超えることになるときはいつでも、除去される。
【0112】
しかしながら、後処理温度が長い間炭化水素除去温度119を超えず、かつ第2の動作モード102をトリガするのに十分な煤負荷をDPF54に発生させるために、エンジン10によって十分な煤が生成されないときがある。これは、エンジン10が長い間低いアイドルでまたは低負荷下で運転している場合に発生し得る。これらの時間の期間中、炭化水素除去校正モード118を使用してもよい。
【0113】
炭化水素除去校正モード118は第2の動作モード102と同様とし得る。しかしながら、炭化水素除去校正モード118は、第2の動作モード102と同じ高さの温度に到達する、またはDPF54の再生に必要なNOx/煤レベルを得る必要はない。それゆえ、炭化水素除去校正モード118が用いる戦略は少なくなり、および/または炭化水素除去校正モード118が戦略を用いる程度は第2の動作モード102よりも小さくなり得る。例えば、炭化水素除去校正モード118は、吸気マニホールド38と排気マニホールド42との間の圧力差を、第2の動作モード102が必要とするよりも0%〜70%少なくしか含まなくてもよい。
【0114】
制御システム100はまた、硫黄失活を検出するために硫黄検出ルーチン300を含んでもよい。硫黄失活は、低または超低硫黄燃料21を使用することによって回避または低減し得る。硫黄検出ルーチン300は、硫黄失活が発生した時点を検出するので、低硫黄燃料が使用されなかったことを表示し得る。
【0115】
図9から分かるように、硫黄検出ルーチン300は、再生前校正モード301で、続いて硫黄除去校正モード302で、その後再生後校正モード303で動作するエンジン10を含む。再生前校正モード301、および再生後校正モード303は、第2の動作モード102と同じ再生戦略200を実質的に供し得る。一実施形態では、再生前校正モード301および/または再生後校正モード303は、第2の動作モード102と同一である。硫黄除去校正モード302、または硫黄除去校正モード302の変形例はまた、硫黄を除去するために、硫黄検出ルーチン300とは無関係に単独で使用してもよい。再生戦略200以外の戦略も硫黄検出ルーチン300によって使用され得る。例えば、硫黄検出ルーチン300の所望の後処理温度は、他のエンジン10の運転パラメーター、燃料バーナ、電気ヒータ、炭化水素ドーシング、および他の技術に影響を与えることによって、達成し得る。
【0116】
煤負荷センサー73は、この硫黄検出ルーチン300の期間中に煤を測定し、および制御装置71は、DOC53およびDPF54が硫黄によって失活されたかどうかを決定する。硫黄失活はDOC53およびDPF54の性能に影響を与える。燃料21の硫黄は、燃焼中にSO2を生成する。DOC53およびDPF54上の触媒は、SO2を酸化させてSO3を生成し、それが、貴金属触媒に蓄積される。硫黄はまた、ウォッシュコートにも蓄積される。
【0117】
DOC53およびDPF54に蓄積された硫黄は、反応部位をマスキングし、触媒反応の効率を低下させ、それによりNO2の生成を減らす。NO2の生成が減ることによって、煤が燃える割合も減る。このように煤の燃える割合が減るために、DPF54は、限界回転数−トルク曲線105を上回って再生できなくなり得る。それゆえ、第2の動作モード102がより頻繁に必要となり得る。硫黄失活はまた、第2の動作モード102が無効となる原因となり得る。摂氏300度超の後処理温度を使用して、反応部位を回復させ、DOC53およびDPF54から硫黄を追い出してもよい。
【0118】
第2の動作モード102が頻繁に使用されるかまたはDPF54が再生できない場合、硫黄検出ルーチン300を使用して、原因が、パワー系統1における別の故障ではなく燃料中の硫黄であるかを決定してもよい。そのような故障は、失活したDOC53またはDPF54、または第2の動作モード102を無効にする別のパワー系統1の構成部品の故障を含み得る。
【0119】
図9は、硫黄検出ルーチン300の期間中の温度プロファイルを示す。硫黄検出ルーチンを開始するために、DPF54は、ある程度の煤負荷を必要とする。その煤負荷の程度は、80%超とする。他の実施形態では、90%超の煤負荷を必要とし得る。操作者または保守技術員が硫黄検出ルーチン300を開始して、保守ルーチンの一部として行ってもよい。他の実施形態では、硫黄検出ルーチン300を自動で行ってもよい。
【0120】
硫黄検出ルーチン300は再生前校正モード301から始まる。再生前校正モード301の期間中、目標再生温度108および再生NOx/煤比107は、DPF54を再生するための第2の動作モード102に関して上述の通り達成される。
【0121】
硫黄除去校正モード302の期間中、後処理温度は、脱硫酸温度305まで上昇する。脱硫酸温度305は、目標再生温度108よりも高く、摂氏300〜500度とし得る。一実施形態では、脱硫酸温度305は摂氏400〜450度とし得る。
【0122】
硫黄除去校正モード302は、DOC53およびDPF54の硫黄の全てまたは一部を除去する時間、実行され得る。温度は、吸気マニホールド圧力と排気マニホールド圧力との間の差および/または後処理入口温度センサー74によって制御し得る。摂氏500度超の後処理温度に達する場合、DOC53は、上述の通り、パラジウムまたは別の高温安定剤が添加されない限り、損傷を受け得る。硫黄検出ルーチン300がほとんど使用されず、比較的短時間で脱硫酸温度305に達するため、脱硫酸温度305は上述の最高後処理温度を上回る。
【0123】
一部の実施形態では、戦略を使用して、硫黄除去校正モード302の期間中にNOx/煤比307の低下を達成するために、NOx/煤比ではなく排気温度を最大にしてもよい。このNOx/煤比307の低下は、再生の速度をゆっくりにし、全ての煤が硫黄除去校正モード302の期間中に除去されないようにし得る。一実施形態では、低下したNOx/煤比307は35/1未満である。
【0124】
次に、DPF54を再生するために、上述の通り再生後校正モード303の期間中に後処理温度は目標再生温度108まで低下し、かつ再生NOx/煤比107が達成され、摂氏200〜400度の目標再生温度108が達成される。
【0125】
再生後校正モード303は、予め決められた時間または閾値時間実行されてもよいし、または再生失活煤閾値106を達成した後にのみ終了してもよい。一実施形態では、再生前校正モード301および再生後校正モード303はそれぞれ約30分実行されてもよい。硫黄除去校正モード302は、相当量の硫黄を除去するのに十分な予め決められた時間または閾値時間実行されてもよい。一実施形態では、硫黄除去校正モード302は、30〜60分実行されてもよい。他の実施形態では、硫黄除去校正モード302は、30分未満実行されてもよい。
【0126】
図9はまた、硫黄検出ルーチン300の期間中の、硫黄失活のない煤負荷プロファイル、および硫黄失活のある煤負荷プロファイルを示す。硫黄検出ルーチン300は、再生前校正モード301中のプレ煤除去速度309と、再生後校正モード303中のポスト煤除去速度311とを比較する。ポスト煤除去速度311がプレ煤除去速度309よりも著しく早いまたは大きい場合、硫黄失活が発生したと判断される。
【0127】
他の実施形態では、硫黄除去校正モード302の期間中の煤除去の速度の変化を使用して、硫黄失活を検出する。硫黄失活が発生した場合、煤除去の速度は、時間が経つにつれて、硫黄が除去されるにつれて、速くなる。他の実施形態はまた、第2の動作モード102の期間中の速度を、予想速度と比較するが、これらの比較は、他の制御されていない変化のゆえに正確ではない可能性がある。
【0128】
煤負荷センサー73は、第2の動作モード102の使用をDPF54の再生の実用的な方法にするために、高レベルの解像度、応答性、および/または正確さを必要とし得る。煤負荷センサー73は、煤負荷の広範な動作範囲にわたって動作する能力を必要とし得る。例えば、圧力差煤負荷センサーは、高い負荷でのみ動作するので、90%の再生活性化煤閾値103では第2の動作モード102をトリガするのに、または80%の再生失活煤閾値106では第2の動作モード102を終了させるのに十分ではないとし得る。圧力差煤負荷センサーはまた、高いエンジン10の回転数およびトルクまたは排気質量空気流でのみ動作するので、エンジン10の回転数およびトルクが限界回転数−トルク曲線105未満のときに第2の動作モード102をトリガするのに十分ではないとし得る。酸化モデルは、再生間の間隔が長くなる可能性があるときに必要とされる正確さのレベルを提供しない可能性がある。応答性および正確な煤負荷センサー73はまた、再生の速度を決定および比較するために硫黄検出ルーチン300によって必要とされる。
【0129】
RFセンサーが、煤負荷センサー73によって必要とされる解像度、応答性、および正確さのレベルを提供し得る。しかしながら、本開示は、圧力差煤負荷センサーおよび酸化モデルを含め、多種多様な煤負荷センサー73を用いられ得ることを考慮する。
【産業上の利用可能性】
【0130】
上述の説明では、複数の異なるアイテムを説明している。排気物を生成するエンジンと、エンジンに燃料を噴射する燃料系と、排気物を処理する後処理系と、制御装置とを含むパワー系統が説明されている。後処理系は、エンジンからのNOをNO2に変換する酸化触媒と、エンジンからの煤を捕捉するパティキュレートフィルタと、パティキュレートフィルタ中の煤の量を表示するセンサーとを含む。制御装置は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を上回ると、燃料系によるエンジンの燃料噴射圧力を高める。制御装置は、追加的なパワー系統運転パラメーターを変更して排気物の温度を上昇させ、摂氏200度超の後処理温度を達成する。パワー系統はまた、エンジンからの排気物を後処理系に送る排気系と、排気系に配置された背圧弁とを含んでいて、背圧弁は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を上回ると少なくとも部分的に閉成するようにしてもよい。パワー系統はまた、エンジンからの排気物をエンジンの吸気部に戻すように再循環させる排気ガス再循環装置と、排気ガス再循環装置に配置された排気ガス再循環バルブとを含んでいて、排気ガス再循環バルブは、背圧弁が少なくとも部分的に閉成したときに、部分的に閉成するようにしてもよい。燃料系は主燃料ショットを噴射してもよく、制御装置は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を上回ると、主燃料ショットのタイミングを変更してもよい。燃料系はまた主燃料ショットを噴射してもよく、制御装置は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を上回ると、主燃料ショットの前後に追加的な燃料ショットを追加してもよい。制御装置は、エンジン回転数およびトルクが閾値の回転数およびトルク曲線を下回ると、エンジンの燃料噴射圧力または燃料レール圧力を高めてもよい。
【0131】
排気物を生成するエンジンと、排気物を処理する後処理系と、制御装置とを含むパワー系統も説明されている。後処理系は、エンジンからのNOをNO2に変換する酸化触媒と、エンジンからの煤を捕捉するパティキュレートフィルタと、パティキュレートフィルタ中の煤の量を表示するセンサーとを含む。制御装置は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を上回ると、パワー系統の運転パラメーターを変更して、排気物中のNOx/煤比を35/1超に上昇させる。制御装置はまた、パワー系統の運転パラメーターを変更して排気物の温度を上昇させ、摂氏200度超の後処理温度を達成する。制御装置はまた、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を上回ると、エンジンの燃料噴射圧力を高める。パワー系統はまた、エンジンからの排気物を後処理系に送る排気系と、排気系に配置された背圧弁とを含んでもよく、制御装置は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を上回ると、背圧弁を少なくとも部分的に閉成する。パワー系統はまた、エンジンからの排気物をエンジンの吸気部に戻すように再循環させる排気ガス再循環装置と、排気ガス再循環装置に配置された排気ガス再循環バルブとを含んでもよく、制御装置は、背圧弁が少なくとも部分的に閉成すると、排気ガス再循環バルブを閉成する。燃料系は主燃料ショットを噴射してもよく、制御装置は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を上回ると、主燃料ショットのタイミングを変更してもよい。燃料系は主燃料ショットを噴射してもよく、制御装置は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を上回ると、主燃料ショットの前後に追加的な燃料ショットを追加してもよい。制御装置は、エンジン回転数およびトルクが閾値の回転数およびトルク曲線を下回ると、エンジンの運転パラメーターを変更してもよい。
【0132】
エンジン、燃料系、後処理系、および制御装置を含むパワー系統も説明されている。後処理系は、エンジンからのNOをNO2に変換するように構成された酸化触媒と、エンジンからの煤を捕捉するように構成されたパティキュレートフィルタと、パティキュレートフィルタ中の煤の量を表示するように構成されたセンサーとを含む。制御装置は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を上回ると、エンジンの燃料噴射圧力を高めるように構成されている。さらに、制御装置は、追加的なパワー系統の運転パラメーターを変更して、摂氏200度超の後処理温度を達成するように構成されてもよい。パワー系統はまた、エンジンからの排気物を後処理系に送るように構成された排気系と、排気系に配置された背圧弁とを含んでもよい。背圧弁は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を上回ると、少なくとも部分的に閉成するように構成されてもよい。パワー系統はまた、エンジンからの排気物をエンジンの吸気部に戻すように再循環させるように構成された排気ガス再循環装置と、排気ガス再循環装置に配置された排気ガス再循環バルブとを含んでもよい。排気ガス再循環バルブは、背圧弁が少なくとも部分的に閉成すると、閉成するように構成されてもよい。燃料系は、主燃料ショットを噴射するように構成されてもよく、および制御装置は、主燃料ショットのタイミングを変更し、かつパティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を上回ると、主燃料ショットの前後に追加的な燃料ショットを追加するように構成されてもよい。制御装置はまた、エンジン回転数およびトルクが閾値の回転数およびトルク曲線を下回ると、エンジンの燃料噴射圧力を高めるように構成されていてもよい。
【0133】
エンジンによって生成される排気物中のNOx/煤比を、少なくともある程度エンジンの燃料噴射圧力を高めることによって、35/1超に一時的に上昇させる方法も説明されている。この方法はまた:排気管に配置された背圧弁を閉成すること、エンジンからの排気物をエンジンの吸気部に戻すように再循環させる排気ガス再循環装置に配置された排気ガス再循環バルブを閉成すること、エンジン中のピストンの位置に対して適切に、主燃料噴射をエンジンに噴射する燃料噴射のタイミングを変更すること、および主噴射の前後いずれかに、主噴射よりも少ない燃料ショットを噴射することの1つ以上を含んでもよい。排気物中のNOx/煤比はまた、エンジン回転数およびトルクが閾値の回転数およびトルク曲線を下回りかつ排気物を受けるパティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を上回ると、上昇し得る。排気物の温度は、排気物中のNOx/煤比が上昇すると、摂氏200度超の後処理温度を達成するように、上昇し得る。NOx/煤比はまた、50/1超に上昇する。
【0134】
排気物を生成するエンジンと、排気物を処理し、かつエンジンからの煤を捕捉するパティキュレートフィルタを含む後処理系と、硫黄検出ルーチンを実行するように構成された制御装置であって、硫黄検出ルーチンは、再生前校正モードを実行して、後処理系の温度を摂氏200〜400度にし、かつ再生前校正モードに続いて硫黄除去校正モードを実行して、後処理系の温度を摂氏300〜500度にする、制御装置とを含むパワー系統も説明されている。後処理系は、フィルタの上流に、エンジンからのNOをNO2に変換する酸化触媒を含む。硫黄検出ルーチンは、硫黄除去校正モードに続いて再生後校正モードを実行して、後処理系の温度を摂氏200〜400度にするようにしてもよい。パワー系統はまた、パティキュレートフィルタ中の煤の量を表示するセンサーを含んでもよい。センサーからの読み取り値を使用して、酸化触媒およびパティキュレートフィルタの少なくとも一方が硫黄によって失活したことを示してもよい。再生前校正モードおよび再生後校正モードは、排気物中のNOx/煤比を35/1超にし得る。再生前校正モード、硫黄除去校正モード、および再生後校正モードは、以下の戦略:エンジンの燃料噴射圧力を高めること、排気管に配置された背圧弁を部分的に閉成すること、エンジンからの排気物をエンジンの吸気部に戻すように再循環させる排気ガス再循環装置に配置された排気ガス再循環バルブを閉成すること、エンジン中のピストンの位置に対して適切に、主燃料噴射がエンジンに噴射される燃料噴射のタイミングを変更すること;および主噴射の前後のいずれかに、主噴射よりも少ない燃料ショットを噴射することの少なくとも1つを含んでもよい。再生前校正モードの期間中の煤除去の速度を、再生後校正モードの期間中の煤除去の速度と比較して、酸化触媒およびパティキュレートフィルタの少なくとも一方が硫黄によって失活されたことを示してもよい。再生前校正モードは、硫黄除去校正モードの直前に実施してもよく、再生後校正モードは、硫黄除去校正モードの直後に実施してもよい。再生前校正モード、硫黄除去校正モード、および再生後校正モードは、予め決められた時間実施されてもよい。硫黄検出ルーチンは、操作者によってトリガされ得る。硫黄検出ルーチンは、パティキュレートフィルタ中の煤の量が、硫黄検出ルーチンの期間中に全ての煤が除去されないようにするのに十分なとき、動作可能にされてもよい。
【0135】
排気物を生成するエンジンと、エンジンに燃料を噴射する燃料系と、排気物を処理し、かつエンジンからの煤を捕捉するパティキュレートフィルタを含む後処理系と、硫黄検出ルーチンを実行するように構成された制御装置とを含むパワー系統も説明されている。制御装置は、硫黄除去校正モードを実行して、後処理系の温度を摂氏300〜500度にし、硫黄除去校正モードに続いて再生後校正モードを実行して、後処理系の温度を摂氏200〜400度にする。後処理系はまた、フィルタの上流に、エンジンからのNOをNO2に変換する酸化触媒と、パティキュレートフィルタ中の煤の量を表示するセンサーとを含んでもよい。センサーからの読み取り値を使用して、酸化触媒およびフィルタの少なくとも一方が硫黄によって失活したことを示してもよい。
【0136】
エンジンからの排気物を処理する後処理系中の硫黄を検出する方法も説明されている。この方法は、硫黄除去後のパティキュレートフィルタの再生速度を、硫黄除去前のパティキュレートフィルタの再生速度と比較することを含む。この方法は、排気物の温度を上昇させることによって硫黄を除去して、後処理系の温度を摂氏300〜500度にすることを含んでもよい。パティキュレートフィルタの再生は、排気物中のNOx/煤比を35/1超に上昇させること、および排気物の温度を上昇させて後処理系の温度を摂氏200〜400度にすることを含んでもよい。パティキュレートフィルタの再生はまた、以下の戦略:エンジンの燃料噴射圧力を高めること;排気管に配置された背圧弁を部分的に閉成すること;エンジンからの排気物をエンジンの吸気部に戻すように再循環させる排気ガス再循環装置に配置された排気ガス再循環バルブを閉成すること;エンジン中のピストンの位置に対して適切に、主燃料噴射がエンジンへ噴射される燃料噴射のタイミングを変更すること;および主噴射の前後のいずれかに、主噴射よりも少ない燃料ショットを噴射することの少なくとも1つを含んでもよい。この方法は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が、硫黄の除去中に全ての煤を除去しないようにするのに十分であるとき、動作可能にされてもよい。
【0137】
排気物を生成するエンジンと、エンジンからの煤を捕捉するパティキュレートフィルタと、パワー系統を第1の動作モードから第2の動作モードへ切り替えて、パティキュレートフィルタを再生する制御装置とを含むパワー系統であって、第1の動作モードと第2の動作モードとの間の移行が、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値に対して変化するときに、エンジンにかかる負荷が変化するときよりもゆっくりとした速度で発生する、パワー系統についても説明されている。第2の動作モードは、再生バルブを起動させることを含んでもよく、再生バルブは、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値に対して変化するときに、エンジンにかかる負荷が増大するときよりもゆっくりとした速度で起動させてもよい。第2の動作モードから第1の動作モードへ戻る移行は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値未満に落ち込むときに、エンジンにかかる負荷が増大するときよりもゆっくりとした速度で発生し得る。第2の動作モードは再生バルブを閉成することを含んでもよく、再生バルブは、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値未満に落ち込むときに、エンジンにかかる負荷が増大するときよりもゆっくりとした速度で開放し得る。再生バルブは、排気物を送る排気管に配置された背圧弁とし得る。背圧弁は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値未満に落ち込むときに、1秒超開放してもよく、背圧弁は、エンジンにかかる負荷が増大するときに、1秒未満開放してもよい。背圧弁は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値未満に落ち込むときに、2秒超開放してもよく、背圧弁は、エンジンにかかる負荷が増大するときに、1秒未満開放してもよい。
【0138】
排気物を生成するエンジンと、排気物を送る排気管と、排気管に配置された背圧弁と、背圧弁を第1の条件下で第1の速度で起動しかつ背圧弁を第2の条件下で第1の速度よりも速い第2の速度で起動する制御装置とを含むパワー系統についても説明されている。背圧弁は、背圧弁がもはや必要とされなくなった後に第1の速度で起動し、かつ背圧弁がエンジンに要求されるパワーを抑制するときに第2の速度で起動し得る。パワー系統はまた、排気物中の煤を捕捉するパティキュレートフィルタを含み、背圧弁は、パティキュレートフィルタを再生するために使用される。背圧弁は、パティキュレートフィルタの再生をもはや必要となくなったら、もはや必要でないとし得る。背圧弁は、パティキュレートフィルタを再生するために閉成し、かつ第1または第2の速度のいずれかで開放し得る。背圧弁は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値未満に落ち込むときに、第1の速度で開放してもよく、および背圧弁は、エンジンにかかる負荷が増大するときに、第2の速度で開放してもよい。第1の速度は背圧弁を1秒超起動してもよく、第2の速度は背圧弁を1秒未満起動してもよい。
【0139】
パワー系統を制御する方法であって、パワー系統を第1の動作モードで動作させること、パワー系統を第2の動作モードで動作させて、パティキュレートフィルタの再生を支援すること、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値未満に落ち込むのに応答して、パワー系統を、第1の期間にわたって第2の動作モードから第1の動作モードへ移行させること、およびパワー系統にかかる負荷が閾値の量を超えて増大するのに応答して、パワー系統を、第1の期間よりも短い第2の期間にわたって第2の動作モードから第1の動作モードへ移行させることを含む方法についても説明されている。第2の動作モードは再生バルブを起動することを含んでもよく、および再生バルブは、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値未満に落ち込むのに応答して、1秒超の期間にわたって起動してもよく、およびパワー系統にかかる負荷が閾値の量よりも増大するのに応答して、1秒未満の期間にわたって再生バルブを起動する。第2の動作モードは再生バルブを閉成することを含んでもよく、および再生バルブは、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値未満に落ち込むのに応答して、1秒超の期間にわたって開放してもよく、およびパワー系統にかかる負荷が閾値の量よりも増大するのに応答して、1秒未満の期間にわたって開放してもよい。再生バルブは、排気管に配置された背圧弁とし得る。背圧弁は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値未満に落ち込むのに応答して、1秒超の期間にわたって開放してもよく、およびパワー系統にかかる負荷が閾値の量よりも増大するのに応答して、1秒未満の期間にわたって開放してもよい。パワー系統は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を超えた後およびパワー系統にかかる負荷が現在のエンジン回転数に対する閾値の量よりも少ない量であるとき、第2の動作モード下で動作し得る。
【0140】
排気物を生成するエンジンと、エンジンからの煤を捕捉するパティキュレートフィルタと、エンジンにかかる負荷の変化、およびエンジンにかかる負荷の変化後経過した、ゼロ超の閾値時間に応答して、パワー系統を第1の動作モードから第2の動作モードへ切り替えてパティキュレートフィルタを再生する制御装置とを含むパワー系統についても説明されている。制御装置は、エンジンにかかる負荷が現在のエンジン回転数に対する閾値よりも低い値に低下すると、パワー系統を第1の動作モードから第2の動作モードへ切り替えてもよい。制御装置はまた、エンジンにかかる負荷が現在のエンジン回転数に対する閾値よりも低い値に低下しかつパティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値超であると、パワー系統を第1の動作モードから第2の動作モードへ切り替えてもよい。第2の動作モードはまた、再生バルブを閉成することを含んでもよい。再生バルブは、排気物を送る排気管に配置された背圧弁とし得る。第2の動作モードは:エンジンの排気管に配置された背圧弁を閉成すること;エンジンの燃料噴射圧力を高めること;エンジンからの排気物をエンジンの吸気部に戻すように再循環させる排気ガス再循環装置に配置された排気ガス再循環バルブを閉成すること;エンジン中のピストンの位置に対して適切に、主燃料噴射がエンジンに噴射される燃料噴射のタイミングを変更すること;および主噴射の前後のいずれかに、主噴射よりも少ない燃料ショットを噴射することの1つ以上を含んでもよい。閾値時間は10秒を超えてもよい。閾値時間はまた、パティキュレートフィルタ中の煤の量が上昇すると、短くなってもよい。閾値時間は10秒を超えてもよく、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を10%超上回る場合には、10秒未満まで短くなってもよい。
【0141】
排気物を生成するエンジンと、排気物を送る排気管と、排気管に配置された背圧弁と、エンジン負荷の変化後に背圧弁の動作を遅延させる制御装置とを含むパワー系統についても説明されている。背圧弁の動作は、10秒超の期間遅延されてもよい。制御装置は背圧弁を動作させて、排気管に配置されたパティキュレートフィルタを再生してもよい。制御装置はまた、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を超えた後に、背圧弁を動作させてもよい。背圧弁の動作は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を超えて上昇すると短くなる期間、遅延してもよい。背圧弁の動作はまた、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値の5%以内である場合、10秒超の期間、およびパティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を10%超上回る場合、10秒未満の期間、遅延してもよい。
【0142】
エンジンと、排気管と、排気管に配置された背圧弁と、制御装置とを含むパワー系統も説明されている。制御装置は、エンジン負荷の変化後に、背圧弁の動作を遅延させるように構成されている。制御装置は、10秒超の期間、背圧弁の動作を遅延させるようにさらに構成されてもよい。制御装置はまた、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を超えた後、背圧弁を動作させて、排気管に配置されたパティキュレートフィルタを再生させるように構成されてもよい。制御装置は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を超えて上昇するにつれ短くなる期間、背圧弁の動作を遅延させるようにさらに構成されてもよい。制御装置はまた、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値の5%以内の場合には、10秒超の期間、およびパティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を10%超上回る場合、10秒未満の期間、背圧弁の動作を遅延させるように構成されてもよい。
【0143】
パワー系統を制御する方法であって、第1の動作モード下でパワー系統を動作させること、パワー系統にかかる負荷の変化を検出すること、パワー系統にかかる負荷の変化を検出後、ゼロ超の閾値時間の間待機することと、および閾値時間の待機後に、第2の動作モード下でパワー系統を動作させて、パティキュレートフィルタの再生を支援することを含む方法も説明されている。この方法はまた、パティキュレートフィルタ中の煤の量を検出すること、および閾値時間の待機後、および煤の量が閾値超であることを検出後に、第2の動作モード下でパワー系統を動作させることを含んでもよい。閾値時間は、パティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値の5%以内である場合、10秒超としてもよく、およびパティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値を10%超上回る場合には、10秒未満まで短くなってもよい。パワー系統にかかる負荷の変化は、現在のエンジン回転数に対する閾値の量を下回る負荷の減少とし得る。第2の動作モードは、排気管に配置された背圧弁を閉成することを含んでもよい。
【0144】
本明細書で説明した本開示の実施形態は、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく組み込まれ得るが、当業者には、種々の修正および変形をなすことができることが明白である。当業者には、本明細書を考慮しかつ本開示を実施することから他の実施形態が明白である。本明細書および例は、例示としてのみ考慮され、真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの等価物に示されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(10);
排気管(52);
排気管(52)に配置された背圧弁(44);および
エンジン(10)の負荷の変化後、背圧弁(44)の動作を遅延させるように構成された制御装置(71)
を含むパワー系統(1)。
【請求項2】
制御装置が、10秒超の期間、背圧弁(44)の動作を遅延させるようにさらに構成されている、請求項1に記載のパワー系統(1)。
【請求項3】
制御装置が、パティキュレートフィルタ(54)中の煤の量が閾値(103)を超えた後、背圧弁(44)を動作させて、排気管(52)に配置されたパティキュレートフィルタ(54)を再生するようにさらに構成されている、請求項1または2に記載のパワー系統(1)。
【請求項4】
制御装置が、パティキュレートフィルタ(54)中の煤の量が閾値(103)を超えて上昇するにつれ短くなる期間、背圧弁(44)の動作を遅延させるようにさらに構成されている、請求項3に記載のパワー系統(1)。
【請求項5】
制御装置が、パティキュレートフィルタ(54)中の煤の量が閾値(103)の5%以内の場合には、10秒超の期間、およびパティキュレートフィルタ中の煤の量が閾値(103)を10%超上回る場合には、10秒未満の期間、背圧弁(44)の動作を遅延させるようにさらに構成されている、請求項4に記載のパワー系統(1)。
【請求項6】
パワー系統(1)を制御する方法であって、
パワー系統(1)を第1の動作モード(101)下で動作させること;
パワー系統(1)にかかる負荷の変化を検出すること;
パワー系統(1)にかかる負荷の変化の検出後、ゼロ超の閾値時間の間待機すること;および
閾値時間の待機後に、パワー系統(1)を第2の動作モード(102)下で動作させて、パティキュレートフィルタ(54)の再生を支援すること
を含む方法。
【請求項7】
パティキュレートフィルタ(54)中の煤の量を検出すること;および
閾値時間の待機後、および閾値(103)超の煤の量を検出後、パワー系統(1)を第2の動作モード(102)下で動作させること
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
閾値時間が、パティキュレートフィルタ(54)中の煤の量が閾値(103)の5%以内の場合、10秒超であり、パティキュレートフィルタ(54)中の煤の量が閾値(103)を10%超上回る場合、10秒未満まで短くなる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
パワー系統(1)にかかる負荷の変化が、現在のエンジン回転数に対する閾値の量(105)未満への負荷の減少である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第2の動作モード(102)が、排気管(52)に配置された背圧弁(44)を閉成することを含む、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−515200(P2013−515200A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545426(P2012−545426)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002208
【国際公開番号】WO2011/077072
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(501169419)パーキンズ エンジンズ カンパニー リミテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】Perkins Engines Company Limited
【住所又は居所原語表記】Peterborough PE1 5NA United Kingdom
【Fターム(参考)】