説明

電源システム

【課題】外部から燃料の供給および電力の供給を行う際の、ユーザの心理的不安の低減と利便性の向上とを図ることができる電源システムを提供する。
【解決手段】電源システムは、車両の推進力に使われる燃料を貯留する燃料タンク21と、車両を駆動するための電動機5と、電動機5に電力を供給する二次電池6と、燃料タンクへ外部から燃料を供給する燃料供給コネクタYが接続される燃料供給接続手段20と、二次電池6に外部電源から電力を供給する充電コネクタXが接続される外部電源接続手段10とを備え、外部電源接続手段10および燃料供給接続手段20が、それぞれ車両の同一側面で、車両のドアを挟んで区分される前方側および後方側に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のエネルギ源により車両を駆動する電源システムとしては、下記特許文献1に記載のシステムが知られている。かかる電源システムでは、エンジンと、エンジンに供給される燃料が収容されるフューエルタンクと、フューエルタンクに外部から燃料を供給するための燃料供給部とを備えると共に、回転電動機と、回転電動機に供給する電力を蓄積するバッテリと、バッテリを外部電源から充電するための充電・給電部とを備え、燃料供給部と充電・給電部とを、車両の同一側面で鉛直方向に配置している。
【特許文献1】特開2008−285113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の電源システムでは、燃料供給部と充電・給電部とを車両の同一側面で鉛直方向に配置しているために、燃料供給部と充電・給電部とを上下方向に配置した場合には、燃料充填の際のユーザの心理的不安が大きく、このような車両の利用を敬遠する可能性がある。
【0004】
特に、水素ガス、天然ガス(CNG)など、引火点の低い気体燃料では、ガソリンなどの液体燃料に比べてより心理的な不安が大きくなる。
【0005】
これに対して、燃料供給部と、充電・供給部とのいずれか一方を、車両のフロントマスクやリアバンパに離して配置することも考えられるが、フロントマスクやリアバンパでは、壁面や他の駐車車両との間隔が狭く、燃料の供給や充電ができなくなくなる虞がある。また、このような状態で燃料供給と充電作業とを同時に行う場合、燃料ホースや充電ケーブルが長くなって取り回しが悪くなるほか、燃料充填作業や充電作業のための移動が多くなるなど、不都合が多い。
【0006】
以上の事情に鑑みて、本発明は、外部から燃料の供給および電力の供給を行う際の、ユーザの心理的不安の低減と利便性の向上とを図ることができる電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1発明の電源システムは、車両に搭載される電源システムであって、
前記車両の推進力に使われる燃料を貯留する燃料タンクと、
前記車両を駆動するための電動機と、
前記電動機に電力を供給する蓄電手段と、
前記燃料タンクへ外部から前記燃料を供給する燃料供給コネクタが接続される燃料供給接続手段と、
前記蓄電手段に外部電源から電力を供給する充電コネクタが接続される外部電源接続手段と
を備え、
前記外部電源接続手段および前記燃料供給接続手段は、それぞれ前記車両の同一側面の前方側および後方側に配置されると共に、該外部電源接続手段は、該車両の前部座席の搭乗者が搭乗した状態で操作可能な位置で該車両前方のフェンダ部に設けられていることを特徴とする。
【0008】
第1発明の電源システムによれば、外部電源接続手段および燃料供給接続手段が、それぞれ車両の同一側面の前方側および後方側に配置されている。そのため、燃料供給接続手段および外部電源接続手段を離間して設けることで、万が一、外部電源接続手段においてスパークが生じたとしても、燃料に接触する可能性を著しく低減することができ、燃料充填の際のユーザの心理的不安を低減することができる。
【0009】
また、燃料供給接続手段および外部電源接続手段が、車両の同一側面に設けられていることで、ユーザは車両の片側から片側に移動することなく、一方側の側で燃料の供給と充電とを同時に行うことができる。特に、燃料の供給ステーションと充電ステーションとが一体化しているような複合ステーションの場合には、燃料の供給と充電との同一側面において効率的に行うことができる。
【0010】
加えて、燃料供給接続手段を車両の後方側に設けることで、車両後方に比較的大きな搭載スペースを確保して燃料タンクを配置することができる。一方、外部電源接続手段を車両の前方側に設けることで、車両前方に電動機や蓄電手段を配置することができる。そして、このように車両の前後のスペースに電動機や蓄電手段と燃料タンクとを分散配置することで、車両の搭載スペースの有効活用を図ることができる。
【0011】
さらに、外部電源接続手段を、前部座席の搭乗者が搭乗した状態で操作可能な位置に設けることで、ユーザは車内に居ながら充電が可能となり、充電作業の利便性を向上させることができる。具体的に、ユーザは、車内から充電を開始することで、降車することなく充電作業を進めることができるだけでなく、必要最低限の電力量の充電を限られた充電待機時間の中で行いたい状況において、充電量を車内のメータ等で確認することができ、必要な充電が完了した後、直ぐに走行を開始することができる。
【0012】
なお、外部電源接続手段を車両前方のフェンダ部に設けることで、前ドア等の可動部分を回避することができると共に、外部電源接続手段に接続される昇圧手段等の制御装置をエンジンルーム内に隣接して配置することでき、電力効率の向上と、制御装置の保守や点検を容易化とを図ることができる。
【0013】
このように、第1発明の電源システムによれば、外部から燃料の供給および電力の供給を行う際の、ユーザの心理的不安の低減と利便性の向上とを図ることができる。
【0014】
第2発明の電源システムは、第1発明において、前記外部電源接続手段および前記燃料供給接続手段は、前記車両の運転席側の同一側面に配置されることを特徴とする。
【0015】
第2発明の電源システムによれば、外部電源接続手段および燃料供給接続手段を運転席側の同一側面に設けることで、搭乗者が運転者のみの場合にも、助手席側に移動することなく、運転席側で燃料の供給と充電とを同時に行うことができる。さらに、ユーザである運転者は車内に居ながら充電が可能となり、充電作業の利便性を向上させることができる。
【0016】
このように、第2発明の電源システムによれば、ユーザの心理的不安の低減を図りつつ、外部から燃料の供給および電力の供給を行う際の利便性を向上させることができる。
【0017】
第3発明の電源システムは、第1または第2発明において、
前記燃料から電力を発生させ、発生させた電力を前記電動機に供給する電力供給手段を備えることが好ましい。このように、電力供給手段により燃料から発生させた電力を用いて電動機を駆動させることで、車両の駆動系を統一することができ、かかる電源システムに対して、外部から燃料の供給および電力の供給を行う際の、ユーザの心理的不安の低減と利便性の向上とを図ることができる。
【0018】
第4発明の電源システムは、第3発明の電源システムにおいて、
一方が前記電力供給手段に接続されると共に、他方が電動機に接続され、該電力供給手段の出力電圧を昇圧して、該昇圧した電圧による電力を該電動機に供給する第1昇圧手段と、
一方が前記第1昇圧手段の他方に前記電動機と並列に接続されると共に、他方が前記蓄電手段に接続され、該第1昇圧手段の出力電圧を更に昇圧する第2昇圧手段と
を備えることを特徴とする。
【0019】
第4発明の電源システムによれば、第1および第2昇圧手段の昇圧比を制御することで蓄電手段の電圧に対応した高電圧で充電を実行することができ、外部電源から低電圧で供給した電力を高電圧に昇圧して蓄電手段に供給することができ、蓄電手段の電圧を高電圧化して、充電の際に蓄電手段に流れる電流を小さくすることができる。高電圧かつ小電流の充電を実現することで、特に、寒冷地などにおいて蓄電手段の内部抵抗が大きくなる場合や急速充電を行う場合にも、蓄電手段を短時間で効率よく充電することができる。
【0020】
このように、第4発明の電力システムによれば、上述のようにユーザの心理的不安の低減を図りながら、充電時の利便性を向上させることができる。
【0021】
第5発明の電源システムは、第3または第4発明において、
前記電力供給手段が燃料電池であることを特徴とする。
【0022】
第5発明の電源システムによれば、電力供給手段が燃料電池である場合に、水素等の燃料の燃料供給接続手段および外部電源接続手段が車両の同一側面に離間して設けられていることから、燃料が外部電源と接触することを防止することができ、外部から燃料の供給および電力の供給を行う際の、ユーザの心理的不安の低減を図ることができる。
【0023】
さらに、燃料供給接続手段および外部電源接続手段が、車両の同一側面に設けられていることで、ユーザは車両の片側から片側に移動することなく、一方側の側で燃料の供給と充電とを同時に行うことができ、利便性を向上させつつ、外部から燃料の供給および電力の供給を行うことができる。
【0024】
第6発明の電源システムは、第5発明において、前記燃料電池と並列に接続されたキャパシタをさらに備えることを特徴とする。
【0025】
第6発明の電源システムによれば、燃料電池に加えてキャパシタを並列に接続した場合にも、ユーザの心理的不安の低減と利便性の向上とを図りつつ、外部から燃料の供給および電力の供給を行うことができる。さらに、燃料電池と並列にキャパシタを接続することで、燃料電池からキャパシタを充電すること、および、外部電源から外部電源接続手段を介してキャパシタを充電することが可能となる。
【0026】
第7発明の電源システムは、第6発明において、
前記外部電源から前記燃料電池およびキャパシタへの電力の供給を阻止する阻止手段を備えることを特徴とする。
【0027】
第7発明の電源システムによれば、外部電源から供給された電力が電力供給手段である燃焼電池およびキャパシタへ供給されることを防止して、蓄電手段を効率よく充電することができ、上述のようにユーザの心理的不安の低減を図りながら、充電時の利便性を向上させることができる。
【0028】
第8発明の電源システムは、第3または第4発明のいずれかにおいて、
前記電力供給手段が、エンジンと該エンジンの出力軸に連結されて発電機として機能するジェネレータとから構成されることを特徴とする。
【0029】
第8発明の電源システムによれば、電力供給手段がエンジンとジェネレータである場合に、ガソリン等の燃料を供給するための燃料供給接続手段および外部電源接続手段が車両の同一側面に離間して設けられていることから、燃料が外部電源と接触することを防止することができ、外部から燃料の供給および電力の供給を行う際の、ユーザの心理的不安の低減を図ることができる。
【0030】
さらに、燃料供給接続手段および外部電源接続手段が、車両の同一側面に設けられていることで、ユーザは車両の片側から片側に移動することなく、一方側で燃料の供給と充電とを同時に行うことができ、利便性を向上させつつ、外部から燃料の供給および電力の供給を行うことができる。
【0031】
第9発明の電源システムは、第1〜第8発明のいずれかにおいて、
前記蓄電手段の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記温度検出手段により検出された前記蓄電手段の温度に応じて、外部電源から該蓄電手段へ供給する電力の充電電流が変更されることを特徴とする。
【0032】
第9発明の電源システムによれば、蓄電手段はその温度に応じて、充電時の最大電流が異なるところ、蓄電手段の温度に応じて、充電電流を変化させることで、蓄電手段を短時間で効率よく充電することができ、上述のようにユーザの心理的不安の低減を図りながら、充電時の利便性を向上させることができる。
【0033】
第10発明の電源システムは、第1〜第9発明のいずれかにおいて、
前記外部電源接続手段に接続される制御装置がエンジンルーム内に隣接して配置され、該エンジンルーム内の冷却手段により制御装置が冷却されることを特徴とする。
【0034】
第10発明の電源システムによれば、前記外部電源接続手段に接続される制御装置がエンジンルームに配置されることにより、高温となる冷却装置をエンジンルーム内にある空冷または水冷の冷却手段を用いて効率よく冷却しつつ、外部から燃料の供給および電力の供給を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態の電源システムが搭載された車両の全体構成図。
【図2】本実施形態の外部電源接続手段の詳細説明図。
【図3】本実施形態の冷却手段による冷却の例を示す説明図。
【図4】本実施の形態における電源システムの全体構成図。
【図5】二次電池の充電処理および燃料電池への燃料の供給処理を示すフローチャート。
【図6】本実施の形態における電源システムの変更例を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
〔第1実施形態〕
図1乃至図4に示すように、本発明の一実施形態としての電源システムは、燃料電池車両(本発明の車両に相当する)に搭載されるものであって、電力供給手段としての燃料電池1、キャパシタ2および蓄電手段としての二次電池6と、電動機5と、外部電源接続手段10と、燃料供給接続手段20と、燃料供給接続手段20から供給された燃料電池1の燃料(水素)を貯留する燃料タンク21とを備える。
【0037】
燃料電池1、キャパシタ2および二次電池6が車両の前方からセンタトンネルにかけて配置され、車両の後方に燃料タンク21が配置されている。また、外部電源接続手段10および燃料供給接続手段20が、車両の同一側面で、ドアを挟んで区分される前方側および後方側とのそれぞれに配置されている。
【0038】
より具体的には、燃料電池1と並列にキャパシタ2が接続され、燃料電池1及びキャパシタ2と電動機5との間に昇降圧手段3(Voltage Boost Unit、本発明の第1昇圧手段に相当する)が設けられ、昇降圧手段3は、PDU(Power Drive Unit)4を介して電動機5に接続されている。また、一方が昇降圧手段3に接続された電圧制御手段7(本発明の第2昇圧手段に相当する)を介して、二次電池6が電動機5に接続されている。
【0039】
燃料電池1は、例えば燃料電池スタックを250個直列に接続して構成され、出力電圧が約225V(出力電流0A)〜180V(出力電流230A)の範囲で変動するものである。また、キャパシタ2は電気二重層キャパシタであり、出力電圧が200Vを中心とした範囲(約下限150V〜上限250Vの範囲)で変動するものである。また、二次電池6の出力電圧は約300V〜500Vの範囲で変動する。
【0040】
昇降圧手段3は、例えば、定格70kwで昇圧比1.2〜3.0のDC/DCコンバータであって、少なくとも昇圧機能を有し、降圧機能は必要に応じて付加される。また、電圧制御手段7は、例えば、定格30kwで昇圧比1.2〜3.0のDC/DCコンバータである。また、昇降圧手段3および電圧制御手段7は少なくとも一方が、電流フィードバック制御を行い昇圧後の電流値を設定した電流値以下に制限する。
【0041】
また、電源システムは、キャパシタ2と昇降圧手段3との間で、燃料電池1とキャパシタ2とに並列に接続された外部電源接続手段10を備える。外部電源接続手段10は、インバータ回路からなるAC/DC変換器10aを介して、燃料電池1及びキャパシタ2に直結する第1電力供給ラインL1と接続されており、AC/DC変換器10aは、外部電源接続手段10に接続された外部電源の商用交流電圧を直流電圧に変換して第1電力供給ラインL1に供給する。
【0042】
さらに、電源システムは、二次電池6と電圧制御手段7との間で、二次電池6と電圧制御手段7とに並列に接続された補機8とを備える。補機8は、水素ガス等の反応ガスを燃料タンク21から燃料電池1に供給するためのポンプ等であって、補機8は、PDU9(Power Drive Unit)9を介して、二次電池6及び電圧制御手段7に直結する第2電力供給ラインL2に接続されている。
【0043】
第1電力供給ラインL1には、燃料電池1およびキャパシタ2と第1電力供給ラインL1との接続をON/OFFする第1コンタクタ11A,11B(本発明の阻止手段に相当する)が設けられ、第2電力供給ラインL2には、昇降圧手段3と電圧制御手段7との間に第3電力供給ラインL3から第2電力供給ラインL2への電力の供給をON/OFFする第2コンタクタ12A,12Bが設けられている。第1および第2コンタクタ11,12は、後述する電子制御ユニット30(本発明の制御装置に相当する)によりON/OFFの切り替えが制御される。
【0044】
次に、外部電源接続手段10および燃料供給接続手段20の構成について説明する。
【0045】
外部電源接続手段10および燃料供給接続手段20は、図1に示すように、車両1の同一側面にドア部分を中間領域として前方側に外部電源接続手段10が配置され、後方側に燃料供給接続手段20が配置されている。
【0046】
外部電源接続手段10は、車両1の前部座席の搭乗者が搭乗した状態で操作可能な位置で、車両1の前方のフェンダ部に設けられている。外部電源接続手段10は、例えば、前サイドガラスの前方下端から50cm〜100cmであることが望ましく、この範囲であれば、前ドア等の可動部分を回避することができると共に、外部電源接続手段10に接続される電子制御ユニット30をエンジンルーム内に隣接して配置することでき、電子制御ユニット30の保守や点検を容易に行うことが可能となる。
【0047】
なお、本実施形態において、図2(a)および(b)に示すように、後述する電子制御ユニット30には、昇降圧手段3、AC/DC変換器10aのほか、必要に応じて電圧制御手段7が一体として構成されている。具体的には、下段側に、昇降圧手段3、AC/DC変換器10aのほか、必要に応じて電圧制御手段7が配置され、上段側に制御回路基板からなる電子制御ユニット30が配置されている。そして、これらを一体とした制御装置としての電子制御ユニット30が、エンジンルームのダンパハウジングXの前方でフロントダンパエクステンションY内に、外部電源接続手段10と直接接続される位置に設けられている。
【0048】
これにより、制御装置としての電子制御ユニット30をエンジンルーム内に外部電源接続手段10と隣接して配置することでき、電力効率の向上と、電子制御ユニット30の保守や点検等のメンテナンスを容易化を図ることができる。
【0049】
さらに、エンジンルーム内に以上のように配置された、制御装置としての電子制御ユニット30は、エンジンルーム内の冷却手段により冷却することができる。
【0050】
例えば、図3に示すように、エンジンルーム内に配設された水冷式の冷却機構により、ラジエタRにより冷却された冷却媒体がポンプPを介して、電子制御ユニット30およびモータ5などを順番に冷却する。なお、キャパシタ2や二次電池6をエンジンルームに配置した場合には、これらを冷却媒体により併せて冷却するようにしてもよい。また、必要に応じて、冷却経路には冷却媒体を加熱するヒータH等が設けられてもよい。
【0051】
このように、外部電源接続手段10に接続される制御装置としての電子制御ユニット30がエンジンルームに配置されることにより、高温となる制御装置をエンジンルーム内にある水冷等の冷却手段を用いて効率よく冷却することができる。
【0052】
より具体的には、本実施形態の電源システムのように、車両前方のフェンダ部に外部電源接続手段10を設置し、これに隣接するように制御装置としての電子制御ユニット30をエンジンルーム内に設置した場合には、前輪駆動(FF)車両用のモータ5(ハイブリッド、EVのいずれでもよい)と、車両に設置されたラジエタRとの冷却配管を電子制御ユニット30にも適用してエンジンルーム内で完結可能となり、結果的に冷却システム全体をコンパクト化することができる。
【0053】
また、外部電源接続手段10は、図1に示すように、蓋部10a内に、外部電源の商用交流電圧から電力を供給する充電コネクタXが接続されるプラグ10bが設けられている。プラグ10bには、充電コネクタXの形状に対応した、複数の電力10c,10cと、アース接点10dとを有し、プラグ10bは、電力ケーブル10eを介して、AC/DC変換器10aに接続されている。
【0054】
一方、燃料供給接続手段20は、リアフェンダに配置され、蓋部20a内に、燃料タンク21へ外部から燃料(水素)を供給する燃料供給コネクタYが接続される接続部20bが設けられている。接続部20bは、コネクタYが嵌合する受け部20cを有し、受け部20cは内部配管20dを介して、コネクタYから供給された燃料が燃料タンク21に供給されるようになっている。
【0055】
次に、電子制御ユニット30について説明する。電子制御ユニット30は、燃料電池1、キャパシタ2及び二次電池6の各々に設けられた図示しない電圧センサ及び電流センサの検出信号を取得し、燃料電池1、キャパシタ2及び二次電池6から出力される電圧、電流及び電力を検知する。
【0056】
また、電子制御ユニット30は、キャパシタ2の出力電圧と出力電流とから該キャパシタ2の開路電圧を推定し、推定したキャパシタ2の開路電圧と残容量(以下、SOCという)との関係を規定したマップやデータテーブル(以下、マップ等という)を参照して、キャパシタ2のSOCを推定する。同様に、電子制御ユニット30は、二次電池6の出力電圧と出力電流とから該二次電池6の開路電圧を推定し、推定した二次電池6の開路電圧とSOCとの関係を規定したマップ等から二次電池6のSOCを推定する。
【0057】
さらに、電子制御ユニット30は、燃料電池1の出力、キャパシタ2及び二次電池6の各SOCに基づいて、燃料電池1の作動制御と、昇降圧手段3または電圧制御手段7の作動制御とを実行し、燃料電池1、キャパシタ2及び二次電池6から電動機5への電力供給と、燃料電池1からキャパシタ2及び二次電池6への充電とを行う。
【0058】
電子制御ユニット30は、電動機5は車両が減速する際には発電機として機能するため、車両の減速時に電動機5で生じる回生電力を回収して、該回生電力によりキャパシタ2及び二次電池6の充電を実行する。尚、このとき、電子制御ユニット30は、PDU4に備えられた電圧センサ及び電流センサ(図示しない)により、電動機5の回生電力を検知して昇降圧手段3または電圧制御手段7の作動制御を実行し、電動機5からキャパシタ2及び二次電池6への充電とを行う。
【0059】
さらに、電子制御ユニット30は、AC/DC変換器10aと接続されて、AC/DC変換器10aに備えられた電流センサおよび電圧センサ(図示しない)の検出値から、外部電源接続手段10に外部電源の充電コネクタXが接続されたことを検出すると共に、接続された外部電源の出力電圧を取得する。また、電子制御ユニット30は、二次電池6に取り付けられてこの温度を検出する温度センサ31(本発明の温度検出手段に相当する)に接続されて、二次電池6の温度を取得する。
【0060】
そして、電子制御ユニット30は、これら取得した情報に基づいて、第1コンタクタ11A,11BをOFFすると共に第2コンタクタ12A,12BをONし、昇降圧手段3及び電圧制御手段7の作動を制御し、外部電源から二次電池6への充電を行う。
【0061】
また、電子制御ユニット30は、燃料供給接続手段20に設けられた図示しない接続検出手段により、燃料供給接続手段20に燃料供給コネクタYが接続されたことを検出する。そして、電子制御ユニット30は、かかる検出結果に基づいて、燃料供給接続手段20を介する燃料供給コネクタYから燃料タンク21への燃料の供給に必要な処理を実行する。
【0062】
また、電子制御ユニット30は、当該電源システムの状態が表示される液晶表示手段からなる表示部32を備える。例えば、表示部32には、燃料電池の出力状態、電子制御ユニット30により算出されたキャパシタ2や二次電池6のSOC、外部電源による二次電池6の充電状態およびその充電完了時間等が表示される。
【0063】
なお、本実施形態の電源システムにおいて、燃料電池1と昇降圧手段3及びキャパシタ2との間には、ダイオードDが設けられており、ダイオードDにより燃料電池1への電流の流入が禁止されている。また、ダイオードDに替えてトランジスタ等の他の整流素子を用いることにより、または、キャパシタ2を降圧手段(ダウンコンバータ)を介して燃料電池1に接続することにより、燃料電池1への電流の流入を禁止してもよい。
【0064】
以上が、本実施の形態における電源システムの全体構成である。
【0065】
次に、図5に示すフローチャートを参照して、本実施形態の電源システムにおける充電および燃料の供給について説明する。
【0066】
まず、電子制御ユニット30は、当該車両が停止しているか否かを判定し(図5/STEP10)、車両が停止している場合には(図5/STEP10でYES)、充電コネクタXが所定時間の間に外部電源接続手段10に接続されたか否かを判定する(図5/STEP11)。なお、電子制御ユニット30は、図示しないタイマをカウントアップすることにより所定時間を計測し、その間に充電コネクタXが接続されたか否かを判定する。
【0067】
次いで、充電コネクタXが外部電源接続手段10に接続されると(図5/STEP11でYES)、これと併せて、充電コネクタXのアースアース接点10dが接続されてアース接地がなされているか判定する(図5/STEP12)。
【0068】
そして、アース接地がなされている場合には、(図5/STEP12でYES)、充電開始処理を実行する(STEP13)、一方、アース接地がなされていない場合は(図5/STEP12でNO)、STEP11へリターンして充電コネクタXの接続を再度判定する。
【0069】
次いで、STEP13の充電開始処理で、電子制御ユニット30は、例えば、燃料電池1の作動停止を確認した上で、外部電源接続手段10に接続された外部電源の出力電圧を取得して、取得した外部電源の出力電圧と二次電池6の出力電圧とから、昇降圧手段3および電圧制御手段7のそれぞれの昇圧比を導出する。そして、導出した昇圧比となるように昇降圧手段3および電圧制御手段7を制御して、第1コンタクタ11A,11BをOFFに維持したままで、第2コンタクタ12A,12BをONすることにより、二次電池6の充電を開始する。
【0070】
なお、このときに、電子制御ユニット30は、温度センサ31の検出温度を参照して、該温度によって規定される二次電池6の充電電流の最大値を導出する。そして、この最大電流で充電を実行すると共に、この最大電流で二次電池6を充電した場合の充電完了時間を算出して、表示部32に表示する。
【0071】
充電完了時間は、二次電池6のSOCと、二次電池6の充電電流および充電電圧(昇圧後の電圧)から求められる充電電力とから、二次電池6の種類に応じた充電特性を考慮して算出される。
【0072】
次いで、電子制御ユニット30は、STEP13により充電開始処理が実行されると、または、STEP11で充電コネクタXが所定時間の間に外部電源接続手段10に接続されない場合には(図5/STEP11でNO)、燃料供給コネクタYが燃料供給接続手段20に接続されているかを判定する(図5/STEP14)。
【0073】
そして、電子制御ユニット30は、燃料供給コネクタYが所定時間の間に燃料供給接続手段20に接続された場合には(図5/STEP14でYES)、燃料供給処理を実行する(図5/STEP15)。なお、電子制御ユニット30は、図示しないタイマをカウントアップすることにより所定時間を計測し、その間に燃料供給コネクタYが接続されたか否かを判定する。
【0074】
ここで、外部電源接続手段10および燃料供給接続手段20が、車両の同一側面に設けられていることで、ユーザは車両の片側から片側に移動することなく、一方側で充電を開始し、続いて燃料の供給を行うことができる。特に、燃料の供給ステーションと充電ステーションとが一体化しているような複合ステーションの場合には、燃料の供給と充電との同一側面において効率的に行うことができる。
【0075】
また、外部電源接続手段10および燃料供給接続手段20が車両の同一側面の前方側および後方側に離間して配置されているため、万が一、外部電源接続手段10においてスパークが生じたとしても、燃料に接触する可能性を著しく低減することができ、ユーザの心理的不安の低減の観点から好ましい。特に、本実施形態では、燃料の供給を開始する前に、充電を開始しているため(図5/STEP13)、外部電源接続手段10においてスパークが生じても、燃料に接触する可能性を更に低減することができる。
【0076】
次いで、STEP15の燃料供給処理で、電子制御ユニット30は、例えば、燃料電池1の作動停止を確認した上で、燃料タンク21の燃料の残量や内圧などを図示しない計測手段を介して取得し、これらの計測値が所定の値であることを条件に、燃料供給開始の許可出力を行う。燃料供給開始の許可出力は、表示部32にその旨の表示が行われるようにしてもよく、これを認識したユーザが手動で燃料供給を開始するようにしてもよい。また、燃料供給開始の許可出力が、図示しない通信手段を介してかかる許可出力を燃料供給コネクタY側のスタンドに出力されてもよく、これにより、自動的に燃料供給を開始するようにしてもよい。
【0077】
次いで、電子制御ユニット30は、STEP15により燃料供給処理の実行後に、燃料供給が終了したか否かを判定する(図5/STEP16)。そして、燃料供給が終了するまで、この判定を繰り返し、燃料供給が終了すると(図5/STEP16でYES)、燃料供給コネクタYが燃料供給接続手段20から取り外されたか否かを判定する(図5/STEP17)。
【0078】
そして、燃料供給コネクタYが取り外されていない場合には、(図5/STEP17でNO)、STEP16へリターンして燃料の供給が終了したか否かを再度判定する。
【0079】
次いで、電子制御ユニット30は、充電が終了したか否かを判定する(図5/STEP18)。ここで、充電の終了は、実際に充電が行われて二次電池6が満充電に近い状態となって終了する場合のほか、はじめから充電が実行されなかった場合も、充電の終了とみなされる。
【0080】
そして、充電が終了するまで、この判定を繰り返し、充電が終了すると(図5/STEP18でYES)、充電コネクタXが取り外されたか否かを判定し(図5/STEP19)、充電コネクタが取り外されている場合には(図5/STEP19でYES)、以上の一連の処理を終了する。ここで、本実施形態では、充電を終了する時点では、燃料の供給が終了して燃料供給コネクタYが取り外されているため(図5/STEP17)、外部電源接続手段10においてスパークが生じても、燃料に接触する可能性を著しく低減することができる。
【0081】
一方、充電コネクタXが取り外されていない場合には、(図5/STEP19でNO)、STEP18へリターンして充電が終了したか否かを再度判定する。
【0082】
以上が、本実施形態の電源システムにおける充電および燃料の供給の詳細である。かかる電源システムによれば、外部から燃料の供給および電力の供給を行う際の、ユーザの心理的不安の低減と利便性の向上とを図ることができる。
【0083】
〔第2実施形態〕
次に、図6を参照して、本実施形態の電源システムの変更例について説明する。尚、本実施形態は、電力供給手段に関する構成のみが前記実施形態と相違するものであるので、前記実施形態と同一の構成要素については前記実施形態と同一の参照符号を用いて説明を省略する。
【0084】
本実施形態の電源システムでは、電力供給手段として、第1実施形態の燃料電池1に代えて、エンジン1aと、エンジン1aの出力軸に連結されて発電機として機能するモータ1bとを備える。モータ1bには、PDU1cが設けられており、PDU1cを介して、モータ1bからの出力電力が直流電力に変換される。
【0085】
本実施形態の電源システムによれば、電子制御ユニット30により、エンジン1aに供給する燃料の量等が制御され、これによりモータ1bの発電量が制御される。
【0086】
本実施形態の電源システムの場合にも、前記第1実施形態の電源システムと同様、当該電源システムの構成に鑑みて簡易かつ適切な方法で二次電池6を外部から充電することができる。
【0087】
尚、本実施形態は、エンジン1aを発電にのみ使用するシリーズ型ハイブリッド車両について説明したが、これに限らず、電動機5とモータ1bのいずれか一方にエンジンを設けてエンジンより発電を行う共に、エンジンの駆動力をトランスミッションを介して車輪に伝達するパラレル型ハイブリッド車両にしてもよい。
【0088】
尚、本実施形態の電源システムでは、キャパシタ2を備える構成について説明したが、これに限らず、電源システムとしてキャパシタ2を備えない構成に適用してもよい。
【0089】
尚、本実施形態では、図面上(図1参照)、助手席側に外部電力供給手段10と燃料供給接続手段20とが設けられているが、これに代えて、運転席側に外部電力供給手段10と燃料供給接続手段20とが設けられてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…燃料電池(電力供給手段)、1a…エンジン(電力供給手段)、1b…モータ(電力供給手段)、1c…PDU、2…キャパシタ(電力供給手段)、3…昇降圧手段(第1昇圧手段)、4…PDU、5…電動機、6…二次電池(蓄電手段)、7…電圧制御手段(第2昇圧手段)、8…補機、9…PDU、10…外部電源接続手段、10a…AC/DC変換器、11A,11B…第1コンタクタ(阻止手段)、12A,12B…第2コンタクタ、20…燃料供給接続手段、30…電子制御ユニット(制御装置)、31…温度センサ(温度検出手段)、32…表示部、D…ダイオード、L1…第1電力供給ライン、L2…第2電力供給ライン、L3…第3電力供給ライン、X…充電コネクタ、Y…燃料供給コネクタ。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電源システムであって、
前記車両の推進力に使われる燃料を貯留する燃料タンクと、
前記車両を駆動するための電動機と、
前記電動機に電力を供給する蓄電手段と、
前記燃料タンクへ外部から前記燃料を供給する燃料供給コネクタが接続される燃料供給接続手段と、
前記蓄電手段に外部電源から電力を供給する充電コネクタが接続される外部電源接続手段と
を備え、
前記外部電源接続手段および前記燃料供給接続手段は、それぞれ前記車両の同一側面の前方側および後方側に配置されると共に、該外部電源接続手段は、該車両の前部座席の搭乗者が搭乗した状態で操作可能な位置で該車両前方のフェンダ部に設けられていることを特徴とする電源システム。
【請求項2】
請求項1記載の電源システムにおいて、
前記外部電源接続手段および前記燃料供給接続手段は、前記車両の運転席側の同一側面に配置されることを特徴とする電源システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の電源システムにおいて、
前記燃料から電力を発生させ、発生させた電力を前記電動機に供給する電力供給手段を備えることを特徴とする電源システム。
【請求項4】
請求項3記載の電源システムにおいて、
一方が前記電力供給手段に接続されると共に、他方が電動機に接続され、該電力供給手段の出力電圧を昇圧して、該昇圧した電圧による電力を該電動機に供給する第1昇圧手段と、
一方が前記第1昇圧手段の他方に前記電動機と並列に接続されると共に、他方が前記蓄電手段に接続され、該第1昇圧手段の出力電圧を更に昇圧する第2昇圧手段と
を備えることを特徴とする電源システム。
【請求項5】
請求項3または4記載の電源システムにおいて、
前記電力供給手段が燃料電池であることを特徴とする電源システム。
【請求項6】
請求項5記載の電源システムにおいて、
前記燃料電池と並列に接続されたキャパシタをさらに備えることを特徴とする電源システム。
【請求項7】
請求項6記載の電源システムにおいて、
前記外部電源から前記燃料電池およびキャパシタへの電力の供給を阻止する阻止手段を備えることを特徴とする電源システム。
【請求項8】
請求項3または4記載の電源システムにおいて、
前記電力供給手段が、エンジンと、該エンジンの出力軸に連結されて発電機として機能するジェネレータとから構成されることを特徴とする電源システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちいずれか1項記載の電源システムにおいて、
前記蓄電手段の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記温度検出手段により検出された前記蓄電手段の温度に応じて、外部電源から該蓄電手段へ供給する電力の充電電流が変更されることを特徴とする電源システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちいずれか1項記載の電源システムにおいて、
前記外部電源接続手段に接続される制御装置がエンジンルーム内に隣接して配置され、該エンジンルーム内の冷却手段により制御装置が冷却されることを特徴とする電源システム。


【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−148484(P2011−148484A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286741(P2010−286741)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】