説明

III族窒化物半導体本体のインシチュドーパント注入及び成長

【課題】半導体材料の構造的及び化学量論的特性を保ったまま、窒化物本体を横方向及び縦方向で空間的に規定された選択ドーピングを達成しうるインシチュドーパント注入及び成長を提供する。
【解決手段】窒化物半導体本体の成長中にインシチュドーパント注入を可能にする方法は、ドーパント注入装置及び成長室を有する複合窒化物室中に、窒化物半導体本体に対する成長環境を確立するステップと、成長室内で窒化物半導体本体を成長させる成長ステップと、ドーパント注入装置を用いて成長室内で窒化物半導体本体にインシチュ状態でドーパント注入を行う注入ステップとを具える。この方法を用いて形成する半導体デバイスは、サポート基板上に形成した第1導電型の窒化物半導体本体と、窒化物半導体本体の成長中にこの窒化物半導体本体のインシチュドーパント注入により形成され、第2導電型を有する少なくとも1つのドープ領域とを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に半導体分野に関するものである。本発明は特に、化合物半導体の製造分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
III 族窒化物半導体デバイスの製造で遭遇する課題の1つは、その化学量論的な完全性を損なうことなしに、III 族窒化物半導体本体をドーピングすることに関するものである。特に、高温度、例えば約800℃よりも高い温度では、窒素がIII 族窒化物半導体本体から消失されることにより、このIII 族窒化物半導体本体が分解されるおそれがある。
[定義]
本明細書及び特許請求の範囲において、III 族窒化物とは、例えばGaN、AlGaN、InN、AlN、InAlGaN等(これらに限定されるものではない)のような、窒素及び少なくとも1種のIII 族元素を含む化合物半導体を意味するものである。
【0003】
しかしながら、半導体デバイスの製造処理における重要な工程では、高温度での処理を必要とする。例えば、イオン注入損傷を修復したり、ドーパントイオンを活性化したりするのに行うアニーリング工程がこのような高温度を必要とする。その結果、III 族窒化物半導体材料の比較的低い熱分解温度が、半導体本体にPN接合を形成するのに一般に用いられるドーパントの注入及びアニーリング処理を実行する上で技術的な障壁となる。
【0004】
III 族窒化物のドーピング問題を解決する又は少なくとも回避するための従来の1つの手段は、ドーパントの注入を実行するのではなく、III 族窒化物本体を形成する際にこのIII 族窒化物本体内にドーパントを成長させる技術を利用するものである。しかし、このような手段には、このようにして実行するドーピングによりIII 族窒化物本体の層を比較的均一にドーピングしてしまうという重大な欠点がある。従って、ディファレンシャルドーピングが縦(垂直)方向でのみ実行され、横(水平)方向の空間選択ドーピングが成長の間中、直接達成しえないようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、半導体材料の構造的及び化学量論的特性を保ったまま、III 族窒化物本体を横方向及び縦方向で空間的に規定された選択ドーピングを達成しうる解決策を提供することにより、当該技術分野の欠点及び欠陥を解消する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1つの図面に関しほぼ図示してある又は説明した或いは図示及び説明した、より完全には特許請求の範囲に記載した、III 族窒化物半導体本体のインシチュドーパント注入及び成長を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の一実施例による、III 族窒化物半導体本体の成長中にインシチュドーパント注入を行うための複合III 族窒化物室を示す断面のブロック線図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例による、III 族窒化物半導体本体の成長中にインシチュドーパント注入を行いうるようにする方法を表すフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の一実施例により、III 族窒化物半導体本体に形成したPN接合を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施例によるIII 族窒化物Pチャネル電界効果トランジスタ(PFET)を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施例による横方向拡散のIII 族窒化物半導体デバイスを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、III 族窒化物半導体本体のインシチュドーパント注入及び成長に関するものである。本発明を特定の実施例につき説明するが、特許請求の範囲で規定した本発明の原理は、ここで具体的に説明した本発明の実施例を越えて適用しうること明らかである。更に、本発明の説明では、本発明の概念を不明瞭としないようにするために、ある細部を省略した。省略したこれらの細部は、当業者の知識内のものである。
【0009】
図面及びこれらに関連する詳細な説明は、本発明の例示的な実施例に関するものにすぎないものである。本明細書の簡潔さを保つために、本発明の原理を用いた本発明の他の実施例は本明細書に具体的に説明しておらずしかも具体的に図示していない。更に、他の説明を行わない限り、図面間での同様な又は対応する素子を同じ又は対応する符号で表すことができることを銘記すべきである。
【0010】
本発明者は、ドーパント注入をIII 族窒化物半導体本体の成長環境に対しインシチュ状態で実行した場合に、ドーパントの注入によりIII 族窒化物半導体材料の構造又は化学量論を損なうことなしに、III 族窒化物半導体本体内に空間的に規定した領域を選択的にドーピングすることができることを実現した。その結果、本明細書には、III 族窒化物半導体本体における接合技術を実行しうるようにする手法を開示するものである。更に、本発明の概念はN型又はP型の何れのドーパント注入をも容易にするのに適用しうる為、従来の技術にとって特に問題となっているPチャネルデバイスの製造を著しく簡単にするとともにより一層経済的に達成しうるようになる。
【0011】
図1は、本発明の一実施例による、III 族窒化物半導体本体の成長中にインシチュドーパント注入を行うための複合III 族窒化物室100を示す断面のブロック線図である。この図1に示すように、複合III 族窒化物室100は、成長室110と、ドーパント注入装置130と、差圧セル122a、122b及び122cを有する遷移室120とを具えている。図1には、例えば、GaN本体のようなIII 族窒化物半導体本体140の成長をサポートするサポート基板112も示してある。このサポート基板112は、III 族窒化物半導体の成長に適した如何なる基板材料からも選択することができ、これには、例えば、シリコン、炭化シリコン、サファイアを、更には入手可能であれば天然のIII 族窒化物半導体基板をも含めることができる。
【0012】
この実施例によれば、成長室110には回転式のプラットホームとしうるプラットホームが入れられており、このプラットホーム上には例えば、III 族窒化物半導体本体140の成長及びドーパント注入に際してサポート基板112を配置しうる。図1に示すように、成長室110には、反応ガスを流入させる流入ポート102と、反応ガスを流出させる流出ポート104とが設けられている。更に図1に示すように、ある実施例では、複合III 族窒化物室100の成長室110にファラデーカップ114を入れることもできる。ファラデーカップ114が存在する場合には、このファラデーカップ114をワイヤ108a及び108bを介して電圧電流計(図1に図示せず)に接続して、ドーパント注入装置130から供給されるドーパントイオンのドーズ量を測定するようにしうる。
【0013】
ドーパント注入装置130は、注入用のドーパントイオンをイオン経路132に沿ってIII 族窒化物半導体本体140内に導入させるものであり、例えば、直接書込式のイオンビーム処理を用いてIII 族窒化物半導体本体140の一部の選択注入を実行しうる。この実施例では、ドーパント注入装置130は高真空環境を必要とする場合がある。このような環境は、遷移室120により複合III 族窒化物室100に与えられる。遷移室120は、ドーパント注入装置130を動作させるのに適した環境を与えることに加え、ドーパント注入装置130を、高真空状態で動作させることのできない成長室110と結合させる作用もする。
【0014】
ドーパント注入装置130を成長室110と連通させている間にこのような高真空状態を得るために、差動排気手段を用いて遷移室120を排気することができる。図1に示すように、一実施例では、遷移室120が幾つかの差圧セル122a、122b及び122cを有するようにしうる。差圧セル122a、122b及び122cの各々は開口126ab及び126bcをそれぞれ経て隣接の差圧セルと連通させる。イオン経路132は、遷移室120を通って進むためにこれらの開口126ab及び126bcを通過し、この遷移室120は、イオン経路132も通過する連結孔128を介してドーパント注入装置130と成長室110とを連結させていることに注意すべきである。高真空状態を生ぜしめるために、差圧セル122a、122b及び122cの各々を、ポンプ124a、124b及び124cをそれぞれ用いて排気させることができる。ポンプ124a、124b及び124cの各々は、図1に線図的に示すように、差圧セル122a、122b及び122cの各々により囲まれた空所と直接連通させることができる。
【0015】
本例による複合III 族窒化物室には更に、成長室110の内部で連結孔128の両側に配置された偏向板116のような複数の偏向板を設けることができる。これらの偏向板116は、例えば、成長室110に入るドーパントイオンの進行方向を変えるのに用いることができる。偏向板116は、III 族窒化物半導体本体140に向けられるイオンドーズ量を測定し、次にこのIII 族窒化物半導体本体に注入されるドーパントの濃度を評価するために、ドーパントイオンをファラデーカップ114に周期的に、例えば、1%の時間の間指向させるのに用いることができることに注意すべきである。
【0016】
複合III 族窒化物室100の動作を更に、図2のフローチャート200を参照して説明する。このフローチャート200には、III 族窒化物半導体本体の成長中にインシチュドーパント注入を可能にする方法の本発明の一実施例によるステップが説明されている。しかし、当業者にとって明らかな、ある細部及び特徴は、フローチャート200から省略されていることに注意すべきである。例えば、当業者にとって既知であるように、あるステップが1つ以上のサブステップを有するか、或いは特殊な装置又は材料を有するようにしうる。フローチャート200に示すステップ210〜250は本発明の1つの実施例を説明するのに充分であるが、本発明の他の実施例には、フローチャート200に示すステップとは異なるステップを用いることができる。
【0017】
フローチャート200のステップ210から開始して且つ図1を参照して説明するに、フローチャート200のステップ210は、ドーパント注入装置130を有する複合III 族窒化物室100内でGaN本体、例えば、III 族窒化物半導体本体140を成長させるための成長環境を確立するステップを有する。特定の例を提供する目的で、本発明の方法では、以後“III 族窒化物半導体本体140”の代わりに、“GaN本体140”を参照する。しかし、重要なことは、GaN本体140は、前述した定義で説明したような適切なIII 族窒化物半導体材料の如何なる組み合わせからも形成した本体に相当するようにしうることである。代表的に、GaN本体140の組成に課せられている唯一の制約は、この組成がIII 族窒化物半導体材料の少なくとも1つの層を有するということである。ある実施例では、GaN本体140が第1のIII 族窒化物半導体材料の層と、例えば、この第1のIII 族窒化物半導体材料の層上に形成した第2のIII 族窒化物半導体材料の層とを有し、この第2のIII 族窒化物半導体材料の層が、第1のIII 族窒化物半導体材料の層を形成するIII 族窒化物半導体よりも広いバンドギャップを有するIII 族窒化物半導体を具えるようにしうる。
【0018】
ステップ210は、成長室110内でGaN本体を成長させるのに適した温度及び気圧を確立することにより、ドーパント注入装置130を有する複合III 族窒化物室100内で実行することができる。例えば、反応ガスを、流入ポート102を介して供給することができ、熱平衡を800℃よりも高い温度に確立することができる。更に、ポンプ124a、124b及び124cによりポンピングを実行することにより、適切な高真空状態が遷移室120の環境内に得られるまで差圧セル122a、122b及び122cをそれぞれ排気させることができる。成長室110内の圧力状態及び遷移室120の構造は、実行する成長の種類に依存させることができる。
【0019】
例えば、有機金属化学気相成長(MOCVD)を用いて、GaN本体140を成長させる場合には、成長室110内の圧力を数百ミリトル(1トル=133.3224Pa)の範囲とすることができる。或いはまた、GaN本体140を成長させるのに分子線エピタキシ(MBE)法を用いる場合には、成長室110内の圧力を、ドーパント注入装置130が必要とする高真空に匹敵しうる約10-7〜10-11 トルとすることができる。従って、図1に示す実施例は、ドーパント注入装置130及び成長室110に対しそれぞれ必要とする差圧環境を結合させるのに、3つの差圧セル122a、122b及び122cを有する遷移室120を具えているが、異なる圧力差に対応する他の実施例は、より多い又はより少ない差圧セルを有するようにしうる。更に、成長環境とドーパント注入装置130が必要とする環境とが、例えば、成長をMBEにより行う際に互いに匹敵する場合には、遷移室120を完全に省略し、ドーパント注入装置130を成長室110と直接結合させるか又は成長室110内に入れるようにすることもできる。
【0020】
次に、図1を参照して図2のステップ220につき説明するに、フローチャート200のこのステップ220は、複合III 族窒化物室100内に配置されたサポート基板112上に、シリコン窒化物とアルミニウム窒化物(AlN)との双方又は何れか一方を有する核生成膜(図1に図示せず)を形成するステップを有する。このステップ220は代表的に、GaN本体140を成長させるためのサポート基板112を準備する予備のステップである。このステップ220に続いて、AlNを有する遷移層(図1に図示せず)を核生成膜上に形成するステップ230を行う。このステップ230で形成する遷移層自体は、サポート基板112からGaN本体140への格子の遷移を仲介する複数の区別可能な層に相当しうる。この遷移層は、例えば、GaN本体140への適切な遷移が達成されるまで、アルミニウムを徐々に少なくするとともにガリウムを徐々に多くした一連のアルミニウムガリウム窒化物(AlGaN)層を有するようにしうる。
【0021】
次に、フローチャート200のステップ240につき説明するに、このステップ240は、ステップ230で形成される遷移層上にGaN本体140を成長させるステップを有する。前述したように、このステップ240は複合III 族窒化物室100の成長室110内で実行することができる。GaN本体140の成長は、例えば、MOCVD又はMBEにより実行することができ、且つGaNを成長させるのに適した雰囲気及び熱環境内で、例えば、アンモニアのような窒素前駆体ガスや、トリメチルガリウム(TMG)及びトリメチルアルミニウム(TMA)のような追加の反応ガスの存在中で、例えば、約800℃よりも高い温度で実行しうる。GaN本体140は、例えば、N型又はP型のGaN本体のようなドーピングされたGaN本体として成長させることができる。或いはまた、GaN本体140は、ドーピングせずに成長させることができ、この場合、GaN本体140は、当業者にとって既知であるように、成長処理中に形成された格子欠陥の存在により公称上N型の導電型を有するようになる。
【0022】
次に、ステップ250につき説明するに、フローチャート200のこのステップ250は、複合III 族窒化物室100内の成長環境を約800℃よりも高い温度に保ってドーパントイオンをGaN本体140内に注入するステップを有する。このステップ250は、ドーパント注入装置130と成長室110との組み合わせにより実行することができ、これにより所望の如何なるイオン種をもGaN本体140内に注入しうるようになる。従って、例えば、シリコン(Si)のようなN型ドーパントと、マグネシウム(Mg)のようなP型ドーパントとを注入しうる。GaN本体140を非ドープ状態で成長した場合、例えば、N型ドーピングとP型ドーピングとの双方を実行して、このGaN本体140の横方向に隣接する領域が互いに反対の導電型を有するようにしうる。
【0023】
本発明のある実施例では、約100keVよりも低い、例えば、10〜100keVの注入エネルギーを用いてGaN本体140の比較的低いエネルギー表面注入を行うのが好ましい。しかし、他の実施例では、GaN本体140へのより深い注入が望まれる場合があり、従って、1MeVよりも大きい注入エネルギーを用いることができる。従って、約10keVから1000keVよりも大きい値までの広い範囲の注入エネルギーを用いて注入を実行することができる。
【0024】
一実施例では、ドーパント注入に対して用いるイオンビームは例えば、1/10ミクロンの幅とすることができる。更に、ある実施例では、成長処理に際しての表面付近でのドーパントの注入をGaN本体140で約50〜約200オングストローム(50〜200Å)の深さまで行うために、比較的低い注入エネルギーを用いる。或いはまた、ある実施例では、比較的高い注入エネルギーを用いて、深い位置で空間的に規定されドーピングされた島をGaN本体140中に形成することができる。GaN本体140は如何なる濃度にもドーピングすることができ、例えば、約1012/cm2 〜1016/cm2 の範囲のイオンドーズ量でGaN本体140にドーピングを行うことができる。ある実施例では、GaN本体140のドーパント注入及び成長をほぼ同時に行ないうるようにすることが考えられる。しかし、他の実施例では、これらの注入及び成長の2つの処理を循環的に交互に行い、GaN本体140の成長及びドーパント注入が、インシチュ状態で実行される成長ステップ及びドーパント注入ステップの反復組を通じて進行されるようにしうる。
【0025】
上述した本発明の概念から得られる利点の幾つかは、図3、4及び5を参照することにより明らかとなりうる。図3、4及び5は、ここで説明した原理に応じて形成したIII 族窒化物半導体構造をそれぞれ示す。これらの構造の各々は、III 族窒化物本体に空間的に規定された選択ドーピングを行うようにする可能性と、本発明の手法により容易にする接合技術の種類とに関連する利点を表している。
【0026】
図3は、本発明の一実施例によりIII 族窒化物半導体本体内に形成したPN接合を示す断面図である。この図3に示す構造体300は、III 族窒化物半導体本体340内に形成したP型ドープ領域342及びN型ドープ領域344を有する。このIII 族窒化物半導体本体340は、図1に示すIII 族窒化物半導体本体140に相当し、例えば、GaN本体とすることができる。図3に示すように、P型ドープ領域342及びN型ドープ領域344の双方は、III 族窒化物半導体本体340内に空間的に規定されており、互いに横方向で隣接するように選択的に形成されている。従って、P型ドープ領域342及びN型ドープ領域344は、PN接合346がこれらの界面に生じるようにIII 族窒化物半導体本体340内に注入するのが有利である。構造体300は、例えばダイオードを実現するのに用いるか、又はIII 族窒化物半導体本体340内に形成するバイポーラ接合トランジスタに対するベースとして用いることができる。
【0027】
次に図4につき説明するに、この図4は、本発明の一実施例によるIII 族窒化物Pチャネル電界効果トランジスタ(PFET)を示す断面図である。この図4の構造体400は、ゲート構造体449と、N型のIII 族窒化物半導体本体440内に形成されたP型ドープソース領域447及びP型ドープドレイン領域448とを有する。III 族窒化物半導体本体440は、図1に示すIII 族窒化物半導体本体140に対応しており、例えば、GaN本体とすることができる。図4に示すように、P型ドープソース領域447及びP型ドープドレイン領域448の双方は、深く注入した部分と、それよりも浅い延長領域とを有しており、本発明の概念を用いて達成しうる空間的選択性の程度のある目安を与えている。更に、構造体400は、III 族窒化物半導体本体440の空間的に規定された選択注入によりP型ドープ領域を形成することを示しており、この状態は、当業者にとって周知のように従来の手法を用いることによっては全く達成不可能である。
【0028】
次に図5を参照するに、この図5は、本発明の一実施例による横方向拡散のIII 族窒化物半導体デバイスを示す断面図である。この図5の構造体500は、ゲート構造体549と、P型ドープ領域542と、III 族窒化物半導体本体540内に形成したN型ドープ領域547及び548とを有している。III 族窒化物半導体本体540は、図1に示すIII 族窒化物半導体本体140に対応しており、例えば、GaN本体とすることができる。図5に示すように、ソース領域として作用しうるN型ドープ領域547は、III 族窒化物半導体本体540内に形成されたP型ドープ領域542内に形成されている。図5には明瞭に図示していないが、ゲート構造体549は、例えば、シリコン窒化物層のようなゲート誘電体層を有するようにしうる。従って、構造体500は、従来ではシリコン中に形成される横方向拡散金属酸化物半導体(LDMOS)トランジスタに類似するように、横方向拡散MISFETをIII 族窒化物内に形成したものに相当しうる。
【0029】
従って、本明細書に開示した新規な概念によれば、半導体材料の構造上の及び化学量論的な特性を同時に維持しつつ、III 族窒化物半導体本体の、横方向に選択しうるドーピングを可能としうる。従って、本明細書には、III 族窒化物半導体本体で接合技術を有利に実行しうる手法が開示されているものである。更に、本発明の概念はN型及びP型の何れのドーパント注入にも適用しうる為、Pチャネルデバイスの製造を著しく容易に達成しうる。
【0030】
本発明の上述した説明から明らかなように、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の概念を実行するのに種々の技術を用いうるものである。更に、本発明をある実施例につき説明したが、当業者にとって明らかなように、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、本発明の形態及び細部を変更させることができるものである。従って、上述した実施例は、あらゆる点において例示的なものであり、限定的なものではない。又、本発明は上述した特定な実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、多くの再配列、変形及び置換を達成しうるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III 族窒化物半導体本体の成長中にインシチュドーパント注入を可能にする方法を用いて形成した半導体デバイスであって、この半導体デバイスが、
サポート基板上に形成した第1導電型の前記III 族窒化物半導体本体と、
前記III 族窒化物半導体本体の成長中に、このIII 族窒化物半導体本体のインシチュドーパント注入により形成され、第2導電型を有する少なくとも1つのドープ領域と
を具える半導体デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体デバイスにおいて、前記少なくとも1つのドープ領域の一部分が、前記第1導電型を有する前記III 族窒化物半導体本体の少なくとも1つの領域に横方向で隣接して位置している半導体デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体デバイスにおいて、前記III 族窒化物半導体本体の前記インシチュドーパント注入は、約800℃よりも高い温度で実行されている半導体デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体デバイスにおいて、前記第1導電型がN型であり、前記第2導電型がP型である半導体デバイス。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体デバイスにおいて、前記半導体デバイスがPN接合を有している半導体デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体デバイスにおいて、前記半導体デバイスがPチャネル電界効果トランジスタ(PFET)を有している半導体デバイス。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体デバイスにおいて、前記III 族窒化物半導体本体がガリウム窒化物(GaN)を有している半導体デバイス。
【請求項8】
III 族窒化物半導体本体の成長中にインシチュドーパント注入を可能にする方法であって、この方法が、
ドーパント注入装置及び成長室を有する複合III 族窒化物室中に、前記III 族窒化物半導体本体に対する成長環境を確立するステップと、
前記成長室内で前記III 族窒化物半導体本体を成長させる成長ステップと、
前記ドーパント注入装置を用いて前記成長室内で前記III 族窒化物半導体本体にインシチュ状態でドーパント注入を行う注入ステップと
を具える方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記成長環境を、前記注入ステップ中に前記成長室内に維持させるようにする方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法において、前記注入ステップを、約800℃よりも高い温度で実行する方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法において、前記注入ステップを、P型ドーパントを用いて実行する方法。
【請求項12】
請求項8に記載の方法において、前記前記III 族窒化物半導体本体を成長させる前記ステップを、有機金属化学気相成長(MOCVD)処理を用いて実行する方法。
【請求項13】
請求項8に記載の方法において、前記前記III 族窒化物半導体本体を成長させる前記ステップを、分子線エピタキシ(MBE)処理を用いて実行する方法。
【請求項14】
請求項8に記載の方法において、前記III 族窒化物半導体本体がガリウム窒化物(GaN)を有するようにする方法。
【請求項15】
請求項8に記載の方法において、前記成長ステップ及び前記注入ステップをほぼ同時に実行する方法。
【請求項16】
III 族窒化物半導体本体の成長中にインシチュドーパント注入を行うための複合III 族窒化物室であって、この複合III 族窒化物室が、
前記III 族窒化物半導体本体を成長させるための成長室と、
この成長室と結合されたドーパント注入装置と
を具えており、この複合III 族窒化物室は、前記III 族窒化物半導体本体のドーパント注入が前記ドーパント注入装置により前記成長室においてインシチュ状態で実行されるように構成されている複合III 族窒化物室。
【請求項17】
請求項16に記載の複合III 族窒化物室において、この複合III 族窒化物室は、前記III 族窒化物半導体本体に対する成長環境が、前記インシチュドーパント注入中前記成長室内に維持されるように構成されている複合III 族窒化物室。
【請求項18】
請求項16に記載の複合III 族窒化物室において、この複合III 族窒化物室は、前記III 族窒化物半導体本体の前記インシチュドーパント注入を約800℃よりも高い温度で実行するように構成されている複合III 族窒化物室。
【請求項19】
請求項16に記載の複合III 族窒化物室において、前記成長室は、有機金属化学気相成長(MOCVD)処理と分子線エピタキシ(MBE)処理との一方により、前記III 族窒化物半導体本体を成長させるように構成されている複合III 族窒化物室。
【請求項20】
請求項16に記載の複合III 族窒化物室において、この複合III 族窒化物室は更に、前記ドーパント注入装置と前記成長室とを結合させるように構成された遷移室を具え、この遷移室は少なくとも1つの差圧セルを有している複合III 族窒化物室。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−192993(P2011−192993A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−50366(P2011−50366)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(597161115)インターナショナル レクティフィアー コーポレイション (71)
【Fターム(参考)】