説明

ウルツ鉱型結晶成長用基板およびその製造方法ならびに半導体装置

【課題】格子定数が広範囲にわたり可変であり、且つ結晶性に優れた基板およびその製造方法を提供する。また上記基板上に形成された半導体素子を提供する。
【解決手段】6回対称軸をを有する結晶からなる第1の層11と、該結晶上に形成される金属酸窒化物結晶からなる第2の層12を有し、第2の層12が、In、Ga、Si、Ge及びAlからなる群から選択される少なくとも1つの元素と、NとOとZnとを主要元素として含み、且つ第2の層12が面内配向性を有する積層構造体を備えたウルツ鉱型結晶成長用基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6回対称軸を有する結晶(代表的にはウルツ鉱型結晶)からなる第1の層と金属酸窒化物結晶からなる第2の層を有する積層構造体を備えることを特徴とするウルツ鉱型結晶成長用基板およびその製造方法ならびに半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、InGaN系半導体を用いた受発光素子が注目されている。InNの光学バンドギャップが0.7eV(赤外域)、GaNの光学バンドギャップが3.4eV(紫外域)であることから、InGaN窒化物半導体を受発光素子として利用した場合、紫外域から赤外域まで極めて広い帯域で受発光できると考えられるためである。またその小さい電子有効質量のため、電子デバイスへの適用を考えた場合にも高周波動作が期待できる。以上の背景から、InGaNに対する研究開発が近年盛んになっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2751963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ウルツ鉱型結晶であるInGaNと格子整合の取れる結晶基板が存在しないという問題がある。GaNと同様にサファイア(Al)を基板とし、その上に直接InGaNを成長する方法が用いられているが、得られる膜の結晶性は低い。そこで特許文献1では、サファイア上にまずGaN層を成長し、その後InGaNの成長を行うという方法が提案されている。上記手法ではGaN層を成長させてからInGaNを成長させるため、成長面内での回転ドメインの形成が抑えられ、高い結晶性が得られるという長所がある。
しかし、GaNとInNのa軸格子定数はそれぞれ0.3189nm、0.3548nmと大きく異なるため、これまで得られている高品質なInGaNはいずれもGa−rich組成のみであった。これには様々な要因が考えられるが、その1つとして、GaN上にInGaNを成長しようとすると、成長初期過程でのGa組成引き込み効果(GaN下地層との格子不整合を減少させるためIn原子が取り込まれにくくなる効果)により、下地層と大きく格子定数の異なる結晶を得ることが難しいことが挙げられる。
【0005】
そこでZnO基板上にInGaNを形成する試みがなされている。ZnOはGaNよりも格子定数が大きく、InGaNとの格子整合ミスマッチが小さいためである。しかしZnOと完全に格子整合するInの組成はIn/(In+Ga)=18原子%であり、依然、In−richの高品質InGaN膜の形成は困難なものとなっている。
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的は、所望の格子定数を有し、且つ結晶性に優れた積層構造体を備える基板およびその製造方法を提供することにある。また本発明の別の目的は上記基板を用いた半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明者らは金属酸窒化物結晶とウルツ鉱型結晶の積層構造に着目して鋭意検討した結果、本発明の完成に至ったものであり、その骨子とするところは、
6回対称軸を有する結晶からなる第1の層と該第1の層の上に形成される金属酸窒化物結晶からなる第2の層を有し、前記第2の層が、In、Ga、Si、Ge及びAlからなる群から選択される少なくとも1つの元素と、NとOとZnとを主要元素として含み、且つ前記第2の層が面内配向性を有する積層構造体を備えることを特徴とするウルツ鉱型結晶成長用基板である。
また本発明のウルツ鉱型結晶成長用基板は、前記第1の層がウルツ鉱型の原子配置を有する結晶またはAl結晶であることが好ましい。
また本発明のウルツ鉱型結晶成長用基板は、前記第2の層がウルツ鉱型構造の原子配置を有する結晶またはAl結晶でであることが好ましい。
また本発明のウルツ鉱型結晶成長用基板は、前記第2の層のa軸格子定数が0.320nmから0.358nmの範囲にあることが好ましい。
また本発明のウルツ鉱型結晶成長用基板は、前記第2の層の(002)面のX線ロッキングカーブの半値幅が1度以下であることが好ましい。
また本発明のウルツ鉱型結晶成長用基板は、前記第1の層がGaNまたはZnOから選ばれるウルツ鉱型結晶からなり、前記第2の層がZn(x)In(1-x)(y)(1-y)(但し0.1≦x≦0.9、0.1≦y≦0.9)からなることが好ましい。
また本発明のウルツ鉱型結晶成長用基板は、前記第1の層がGaNまたはZnOから選ばれるウルツ鉱型結晶からなり、前記第2の層がZn(x)Ga(1-x)(y)(1-y)(但し0.1≦x≦0.9、0.1≦y≦0.9)からなることが好ましい。
また本発明のウルツ鉱型結晶成長用基板は、前記第1の層がAlからなり、前記第2の層がZn(x)Ga(1-x)(y)(1-y)(但し0.1≦x≦0.9、0.1≦y≦0.9)からなることが好ましい。
また本発明のウルツ鉱型結晶成長用基板は、前記第1の層がAlからなり、前記第2の層がZn(x)In(1-x)(y)(1-y)(但し0.1≦x≦0.9、0.1≦y≦0.9)からなることが好ましい。
【0007】
また別の本発明は、6回対称軸(代表的にはウルツ鉱型の原子配置)を有する結晶からなる第1の層の上に、面内配向性を有する金属酸窒化物結晶からなる第2の層を、窒素を含む雰囲気中で形成する工程を有し、前記第2の層がIn、Ga、Si、Ge及びAlからなる群から選択される少なくとも1つの元素と、NとOとZnとを主要元素として含むことを特徴とする、積層構造体を備えたウルツ鉱型結晶成長用基板の製造方法である。
また本発明のウルツ鉱型結晶成長用基板の製造方法は、前記第2の層がスパッタリング法により形成されることが好ましい。
また本発明のウルツ鉱型結晶成長用基板の製造方法は、前記第2の層の製膜速度が10nm/min以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所望の格子定数を有し、且つ結晶性に優れたウルツ鉱型結晶成長用基板を低コストで提供することができる。
さらには当該基板を用いた高速のトランジスタやダイオード、また高効率の受光素子や発光素子といった半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ウルツ鉱型の原子配置を有する金属酸窒化結晶の典型的な二次元X線回折パターンを示したものである。
【図2】二次元X線回折パターン測定時の幾何学的配置を示した図である。
【図3】ウルツ鉱型構造ZnOの二次元X線回折パターンのシミュレーション結果を示したものである。
【図4】ウルツ鉱型構造GaNの二次元X線回折パターンのシミュレーション結果を示したものである。
【図5】ウルツ鉱型構造の原子配置を示す図である。
【図6】本発明に係る金属酸窒化物膜のX線回折における(002)面反射の典型的なロッキングカーブを示したものである。
【図7】本発明に係る金属酸窒化物膜の(101)面φスキャンの測定結果を示したものである。
【図8】本発明に係る積層構造体の模式図を示したものである。
【図9】本発明に係る積層構造体の模式図を示したものである。
【図10】異なるZn/In組成比におけるInZnON膜のa軸格子定数を示したグラフである。
【図11】本実施例2の金属酸窒化物膜X線回折における(002)面反射ロッキングカーブを示したものである。
【図12】本比較例1の金属酸窒化物膜X線回折における(002)面反射ロッキングカーブを示したものである。
【図13】本比較例1の金属酸窒化物膜の(101)面φスキャン測定結果を示したグラフである。
【図14】本実施例4の金属酸窒化物膜X線回折における(002)面反射ロッキングカーブを示したものである。
【図15】本実施例4の金属酸窒化物膜の(101)面φスキャン測定結果を示したグラフである。
【図16】本実施例6の金属酸窒化物膜の(101)面φスキャン測定結果を示したグラフである。
【図17】本実施例7の金属酸窒化物膜の(101)面φスキャン測定結果を示したグラフである。
【図18】本実施例8の金属酸窒化物膜の(101)面φスキャン測定結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本発明の実施形態を説明する前に、本発明の完成に至った経緯を説明する。
本発明者らは、ZnOがInN、GaN、AlN等の窒化物と同様にウルツ鉱型の結晶構造を有することに着目し、ZnOと上記窒化物の混晶である金属酸窒化物膜の作成を試みた。結果、前記金属酸窒化膜はいずれも(001)配向(c軸配向)したウルツ鉱型の原子配置を有する結晶構造を示すことが分かった。
図1に前記金属酸窒化膜の典型的な二次元X線回折パターンを示す。ここで、二次元X線回折パターンとは、試料を傾けながらq―2q測定(q:X線入射角)を繰り返し、その回折強度をつなぎ合わせたもので、配向膜の相同定が可能になる。図1中の横軸は2q、縦軸は基板傾斜角Chiを表している。図2にX線回折の幾何学的配置図を示す。
図1に示すように、金属酸窒化物の組成に依存して、
Chi(基板傾斜角)が0度近傍で、2q=30−35度付近に、
Chiが32度近傍で、2q=56−64度付近に(図示せず)、
Chiが43度近傍で、2q=43−48度付近に、
Chiが62度近傍で、2q=33−37度付近に、
Chiが約90度近傍で、2q=29−32度付近に、
Chiが約90度近傍で、2q=52−58度付近に(図示せず)、
回折ピークが観測される。
【0011】
観測された回折ピークは、(001)配向したウルツ鉱構造を有するZnOやGaNのシミュレーション結果(図3、図4)と同様のパターンを示している。
このことから、薄膜全体が図5に示すような、(001)配向したウルツ鉱型構造の原子配置を有する酸窒化物で形成されていることが分かる。なお、本発明において、ウルツ鉱型構造の原子配置を有する結晶構造とは、二次元X線回折において、上述のようなウルツ鉱型構造と同様なパターンが得られることに対応する。
【0012】
次に本発明者らはZnGeNおよびZnSiNの結晶構造に着目し、それらとZnOの混晶からなる金属酸窒化物膜の作製を試みた。ZnGeNやZnSiNの結晶構造は斜方晶系に分類されるものの、N原子が、それぞれ2個のGeと2個のZn、または2個のSiと2個のZnからなる4面体で囲まれた構造を有し、ウルツ鉱型構造と類似した構造を有しているためである。結果、二次元X線回折において、前記金属酸窒化物膜もウルツ鉱型構造と同様なパターンが得られ、いずれも(001)配向したウルツ鉱型の原子配置を有する結晶構造を有することが分かった。
【0013】
また本発明者らの検討によると、これら金属酸窒化膜をウルツ鉱型結晶の上に形成することによって、結晶性に優れ、且つ面内配向の揃った金属酸窒化膜を形成できることが分かっている。
図6に本発明における金属酸窒化物膜のX線回折(002)面反射の典型的なロッキングカーブを示す。ロッキングカーブとは、特定の結晶面がブラッグの回折条件を満たす角度の2倍の位置にディテクターを固定して、X線の入射角を変化させて得られる回折のことである。ロッキングカーブの半値幅により面方位の揺らぎの度合いを判断でき、半値幅の値が小さいほど、結晶品質が良好であると言える。本発明において、半値幅は組成および製膜条件に依存するが、いずれも1度以下と小さく、高品質な(001)配向金属酸窒化物膜が作製されていることが分かる。
【0014】
図7に本発明の金属酸窒化物膜の面内配向性をφスキャンにて測定した結果の典型例を示す。ここでφスキャンは、二次元X線回折測定から得られた(101)面の回折位置に検出機を固定し、試料を面内方向に回転させることにより行っている。図7より、60度おきに(101)面の回折ピークが観測され、本発明の金属窒化物膜が6回対称性を有していることが分かる。
なお、本発明において、面内配向性を有する結晶とは、(101)面φスキャンにおいて、上述のように、60度おきに回折ピークが観測されることに対応する。
また、前記金属窒化物膜の格子定数をX線回折および透過電子顕微鏡(TEM)観察より導出したところ、その組成に依存してa軸格子定数が0.320nmから0.358nmの範囲にあることが分かった。
本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るウルツ鉱型結晶成長用基板について説明する。
図8に本実施形態のウルツ鉱型結晶成長用基板の模式図を示す。支持基板10の上に6回対称軸を有する結晶からなる第1の層11を設け、第1の層11上に金属酸窒化物結晶からなる第2の層12を設けることにより形成される。
上記支持基板10としては、ウルツ鉱型結晶成長に一般的に用いられるAl(酸化アルミニウム)やGaN(窒化ガリウム)、ZnO(酸化亜鉛)、Si(ケイ素)、SiC(炭化ケイ素)、ScAlMgO(SCAM、スカンジウム・アルミニウム・マグネシウム・オキサイド)、Y添加安定化ZrO(YSZ)などを用いることが出来る。第1の層11としては、6回対称軸を有する結晶、例えば、Al(酸化アルミニウム)やGaN(窒化ガリウム)、ZnO(酸化亜鉛)、InN(窒化インジウム)、AlN(窒化アルミニウム)、Si(ケイ素)、SiC(炭化ケイ素)、ScAlMgO(SCAM、スカンジウム・アルミニウム・マグネシウム・オキサイド)、Y添加安定化ZrO(YSZ)、あるいはこれらを積層した膜などを用いることができる。なかでも、ウルツ鉱型の原子配置を有する結晶またはAl結晶を用いることが好ましい。本発明者らが検討したところ、ウルツ鉱型の原子配置を有する結晶またはAl結晶を第1の層11として用いると、それら第1の層11の上に形成される第2の層12の結晶性が高くなることが分かっている。ウルツ鉱型結晶としては、特にGaNやZnOを用いると、第2の層12の結晶性が高くなり、好ましい。
また本発明に適用できる積層構造体の構成は、上記構成に限らない。図9に示すように、例えばGaNやZnO、Al、AlN、SiC、SCAM等からなる第1の層11が基板10を兼ねるとしても良い。
【0016】
金属酸窒化物結晶からなる第2の層12としては、In、Ga、Si、Ge(ゲルマニウム)及びAlからなる群から選択される少なくとも1つの元素と、NとOとZnと、を含む金属酸窒化物を用いることが出来る。例えばInZnON、GaZnON、InGaZnON,InAlZnON、SiZnON、GeZnON、InGeZnON等の金属酸窒化物膜を用いることが出来る。ここで主要元素とは、金属酸窒化物内の既知の元素を示しており、試料への添加元素は含まれない。例えばInやNを微量添加したZnOなどは、本発明の金属酸窒化物には含まれない。これは、ZnOにInやNを微量添加しても、格子定数がZnOと殆ど変わらないためである。本発明者らの検討によると、格子定数を変化させるためには、前記元素が主要元素として含まれている必要があり、具体的には膜中の全原子数に対し、少なくとも5原子%程度含まれている必要があることが分かっている。逆に、前記主要元素さえ含んでいれば、前記酸窒化物には、結晶構造に実質的に影響を及ぼさない程度の不純物を含んでも良く、例えばBe(ベリリウム)やMgといった元素を含んでいても良い。
【0017】
格子定数制御の観点からは、Zn、In、O、Nを主要元素として含むことが好ましい。図10に異なるZn/(In+Zn)[原子%]におけるInZnON膜のa軸格子定数[nm]を示す。Zn/(In+Zn)[原子%]、つまり組成比を変えることで、a軸格子定数を約0.330から0.358の幅広い範囲で制御できることが分かる。
【0018】
また上記よりも小さい格子定数が必要な場合は、Ga、Zn、O、Nを主要元素として含むことが好ましい。このときa軸格子定数は0.320nmから0.332nmの範囲で制御することが可能である。またGe、Zn、O、N、或いは、Al、Zn、O、N、或いはSi、Zn、O、Nを主要元素として含んだ場合も、a軸格子定数は0.320nmから0.330nmの範囲で制御することが可能であり、好ましい形態である。
【0019】
このように本発明のウルツ鉱型結晶成長用基板における金属酸窒化膜の格子定数は広範囲に渡り可変であり、例えばInGaNやInN等の格子定数整合性基板として用いることが出来る。
上記ウルツ鉱型結晶成長用基板を用いる場合、金属酸窒化物膜の結晶性が高く、面内配向性を有していると、その上に形成される膜の結晶性も高くなり好ましい。本発明者らの検討によると、(001)配向した金属酸窒化物膜を形成した場合、(101)面φスキャンから得られるピークの半値幅が5度以下になると、本発明のウルツ鉱型結晶成長用基板の上に形成される結晶の面内配向性が高く、高品質な結晶成長が可能である。そのため本発明の金属酸窒化物膜は高い面内配向性を有していることが好ましい。
【0020】
また本発明の金属酸窒化物結晶では、面内配向性とc軸配向性に相関が見られ、例えば(001)配向した金属酸窒化物結晶では、(002)面のX線ロッキングカーブの半値幅が1度以下のとき、高い面内配向性((101)面φスキャンピークの半値幅が5度以下)が得られることが分かっている。すなわち、本発明のウルツ鉱型結晶成長用基板において、金属酸窒化物結晶からなる第2の層の(002)面のX線ロッキングカーブの半値幅が1度以下であることが好ましい。
【0021】
次に本発明のウルツ鉱型結晶成長用基板の作成方法について説明する。まず、AlやGaN、ZnO、Si、SiC、SCAM、YSZ等の基板10を用意する。
次いで、有機金属化学気相成長法(MOCVD)、分子線エピタキシー法(MBE)、ハイドライド気相エピタキシー法(HVPE)、スパッタ法、パルスレーザー蒸着法、及び電子ビーム蒸着法の気相法、もしくはそれらの組み合わせなどにより6回対称軸を有する結晶からなる第1の層11を形成する。
尚、GaNやZnO、Al、SiC、SCAM等、6回対称軸を有する第1の層11が基板10を兼ねても良い。
また第1の層11または第2の層12を形成する前に、使用する基板10や第1の層11の構成元素、製膜手法に応じて、大気アニールや真空アニール、水素アニール、窒素アニール、アンモニアアニール等の前処理を基板10に対して行う。特に基板10もしくは第1の層11がAlである場合、水素アニールまたはアンモニアアニールを行うことが好ましい。これによりAl上に形成される第1の層もしくは第2の層の高品質化が可能となる。ウルツ鉱型結晶の成長において、カチオン極性の方が、アニオン極性に比べ、結晶性が高いことが知られているが、前記アニール処理によりウルツ鉱型結晶の成長モードがカチオン極性になり易い。この原因は明らかではないが、前記アニール処理により、酸素が還元或いはエッチングされ、基板表面は化学量論比よりもAl−richになっていることが原因と考えられる。第1の層11を形成する時の基板10の温度も同様に、使用する基板10や第1の層11の構成元素、また製膜手法に応じて適宜設定する。
次いで、スパッタ法、パルスレーザー蒸着法、MOCVD法、MBE法、HVPE法、電子ビーム蒸着法の気相法、もしくはそれらの組み合わせなどにより金属酸窒化物結晶からなる第2の層12を形成する。基板10の温度は適宜設定できる。
【0022】
中でもスパッタ法を用いた場合、基板10に入射してくる粒子のエネルギーが高いため、基板10の表面でのマイグレーションが促進され、低温でも高品質な金属酸窒化物膜を形成することが可能である。
【0023】
特に製膜速度が小さい場合、上記効果は顕著となる。具体的には製膜速度を10nm/min以下にすることで基板10の温度が300℃以下でも、面内配向性を有した金属酸窒化物結晶を形成することができる。
【0024】
またスパッタ法は他の製膜手法に比べて装置およびランニングコストが安価であり、本発明のウルツ鉱型結晶成長用基板が低コストで提供できるというメリットもある。
【0025】
金属酸窒化物形成中に、所望の膜中窒素濃度に応じて、気相中にN原子を含む原料ガス(例えばN、NH、NOなど)を導入する。このときラジカル源等を用いてNラジカルを照射することも、膜中窒素濃度を大きくしたい場合に効果的である。
また上記工程後、作製された酸窒化物に対して熱処理を行うことも好ましい形態である。熱処理温度の上限は適宜設定できるが、金属酸窒化物膜の構成元素が分解温度よりも低いことが好ましい。例えば、金属酸窒化物膜がInおよびNを含む場合は550℃以下で熱処理することが好ましい。これにより、さらに結晶性に優れた金属酸窒化膜を形成することができる。効果的に熱処理を行うには、窒素、酸素、水蒸気、二酸化炭素のいずれかを含む雰囲気中で熱処理を行うのが良い。
以上により、本発明のウルツ鉱型結晶成長用基板を作成することができる。
【0026】
このように、本発明のウルツ鉱型結晶成長用基板を用いることで、所望の格子定数を有し、且つ結晶性に優れた基板を低コストで提供することができる。
特にこれまで、ZnOとInNの間の格子定数(0.3250nm−0.3548nm)を有するウルツ鉱型基板がないため、任意のIn組成を有するInGaNを形成することは困難であったが、本発明のウルツ鉱型結晶成長用基板は前記課題を解決するものである。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を用いて本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
(ZnInON/GaN/Al; Zn:In=37:20)本実施例では、c面サファイア基板上にMOCVD法によりGaNを形成し、その後、アルゴン窒素混合雰囲気中でのRF(高周波)スパッタリング成膜により、ZnInON膜を形成した。
まずサファイア基板上にMOCVD法によりGaNを形成した。なお本実施例では基板前処理として、水素雰囲気中、1150度でのアニールを行っている。これにより、基板上に形成されるGaNの高品質化が可能となる。GaN成長において、Ga極性の方がN極性にくらべ結晶性が高いことが知られているが、前記前処理により、GaNの成長モードがGa極性になるためである。この原因は明らかではないが、前記前処理により酸素が還元あるいはエッチングされ、基板表面は化学量論比よりもAl-richになっていることが要因と考えられる。
その後、基板温度を470度まで下げ、Ga原料としてトリメチルガリウム(TMG)を、N原料としてアンモニアを流し、GaN低温バッファー層を20nm形成した。
次いで、温度を1150℃に昇温し、原料としてTMG、アンモニアを流し、高温GaN層を5μm成長した。
このように低温バッファー層上に高温GaNを形成すると、バッファー層を核とし、高温GaN形成時にその核が横方向成長しながら合体し、最終的に平坦なGaNを得ることが出来る。また高温GaNが横方向成長することによって貫通転位が曲げられ、結果、転位密度を低く抑えることができる。
【0029】
上記により得られたGaNを、原子間力顕微鏡(AFM)観察したところ、平均二乗粗さ(Rrms)は0.258nmであった。
次にX線回折により結晶性を評価したところ、(002)面反射のロッキングカーブ半値幅は約、0.05度と小さく、高品質な(001)配向のGaNが形成されていることが分かった。
また(101)面の回折位置に検出機を固定し、面内配向性をφスキャンにて測定したところ、60度おきに(101)面の回折ピークが観測され、面内配向していることが分かった。この時(101)面φスキャンから得られた回折ピークの半値幅は0.15度であった。
【0030】
次に、GaN上にZnInON膜を形成した。ZnInON膜の製膜は2元スパッタ装置を用いて行った。
ターゲット(材料源)としては、ZnO組成を有する2インチ焼結体およびIn組成を有する2インチ焼結体(それぞれ純度99.9%)を用いた。投入RFパワーはそれぞれZnOが90W、Inが12Wである。なお、ターゲットと基板との距離は約12cm、成膜時の基板温度は300℃とした。ZnInON膜は、1×10−1Paのアルゴン窒素混合ガス雰囲気中で成膜され、導入窒素分圧は8×10−2Paとした。得られたZnInON膜について段差計で測定を行ったところ、膜厚は300nmであった。ラザフォード後方散乱(RBS)分析により測定されたZnInON膜の組成比はZn:In:O:N=37:20:29:14(単位:原子%)である。なおRBSの測定精度は±5%である。また上記ZnInONの抵抗率を4探針測定により評価したところ、8mΩcmの値を示している。
【0031】
(比較例1)
(ZnInON/Si(100)、基板前処理有り)
本比較例では、Si(100)基板上にZnInON膜を形成した。なお本比較例では基板前処理として、フッ酸での自然酸化膜の除去を行っている。ZnInONの成膜条件は、上記実施例1と同様とした。
得られたZnInON膜について段差計で測定を行ったところ、膜厚は300nmであった。RBS分析により測定されたZnInON膜の組成比はZn:In:O:N=37:20:29:14(単位:原子%)、であった。
【0032】
(比較例2)
(ZnInON/Si(100)、基板前処理無し)
本比較例では、Si(100)基板上にZnInON膜を形成した。なお本比較例では基板前処理は行っていない。ZnInONの成膜条件は、上記実施例1と同様とした。
得られたZnInON膜について段差計で測定を行ったところ、膜厚は300nmであった。RBS分析により測定されたZnInON膜の組成比はZn:In:O:N=37:20:29:14(単位:原子%)、であった。
【0033】
(結晶性評価)
本実施例1および比較例1、2で得られたZnInON膜の二次元X線回折パターンを測定したところ、いずれも(001)配向したウルツ鉱型構造と同様のパターンが得られ、ウルツ鉱型の原子配置を有する結晶であることが分かった。またq―2q測定(q:X線入射角)により、a軸格子定数は約0.331nmであることが分かった。
次に、本実施例1で得られたZnInONについて、(002)面反射のロッキングカーブを測定した。結果、その半値幅は約0.1度であった。
図6に、本実施例1で得られた(002)面反射のロッキングカーブを示す。
一方、比較例1、2で得られたZnInONについてロッキングカーブを測定したところ、(002)面反射の半値幅は約4.5度であった。
図12は比較例1で得られたZnInON膜の(002)面反射のロッキングカーブを示す。
また本実施例のZnInON膜に対し、(101)面の回折位置に検出機を固定し、面内配向性をφスキャンにて測定したところ、60度おきに(101)面の回折ピークが観測され、面内配向していることが分かっている。この時(101)面φスキャンから得られた回折ピークの半値幅は約0.8度であった。
図7に、本実施例1で得られた(101)面φスキャンの測定結果を示す。このとき半値幅は0.8度であった。
一方、比較例1および2のZnInON膜の(101)面φスキャン測定を行ったところ、φに依存せずどの角度からも回折が観測され、面内配向していないことが分かる。
図13に、比較例1で得られたZnInON膜における(101)面φスキャン測定結果を示す。
【0034】
次に本実施例1で得られたZnInON膜を、原子間力顕微鏡(AFM)観察したところ、Rrmsは組成に依存して0.470nmであった。
一方、比較例1および2のRrmsは約0.9nmであり、本実施例1のZnInON膜は平坦な膜が形成されていることが分かる。
このようにZnInON膜をGaN結晶層上に積層することで、結晶性および平坦性に優れた基板を提供することができる。また本実施例1のZnInON膜のa軸格子定数はZnOの格子定数より大きく、例えばInGaNやInN等の格子定数整合性基板として用いることが出来る。また本実施例1のZnInON膜は抵抗率が小さいため、電極機能も兼ねそろえた基板を提供できるという効果がある。さらに、上記ZnInONはスパッタリングにより形成可能であることから、基板を低コストで提供できるといった効果も期待できる。
【0035】
(実施例2)
(ZnInON/GaN/Al2O3; Zn:In=31:18)
本実施例では、c面サファイア基板上にMOCVD法によりGaNを形成し、その後、アルゴン窒素混合雰囲気中でのRFスパッタリング成膜により、ZnInON膜を形成した。
まずサファイア基板上にMOCVD法によりGaNを形成した。なお本実施例では基板前処理として、水素雰囲気中、1150度でのアニールを行っている。これにより、基板上に形成されるGaNの高品質化が可能となる。GaN成長において、Ga極性の方がN極性にくらべ結晶性が高いことが知られているが、前記前処理により、GaNの成長モードがGa極性になるためである。この原因は明らかではないが、前記前処理により酸素が還元あるいはエッチングされ、基板表面は化学量論比よりもAl-richになっていることが要因と考えられる。その後、基板温度を470度まで下げ、Ga原料としてトリメチルガリウム(TMG)を、N原料としてアンモニアを流し、GaN低温バッファー層を20nm形成した。
次いで、温度を1150℃に昇温し、原料としてTMG、アンモニアを流し、高温GaN層を5μm成長した。
このように低温バッファー層上に高温GaNを形成すると、バッファー層を核とし、高温GaN形成時にその核が横方向成長しながら合体し、最終的に平坦なGaNを得ることが出来る。また高温GaNが横方向成長することによって貫通転位が曲げられ、結果、転位密度を低く抑えることができる。
【0036】
上記により得られたGaNを、原子間力顕微鏡(AFM)観察したところ、平均二乗粗さ(Rrms)は0.258nmであった。
次にX線回折により結晶性を評価したところ、(002)面反射のロッキングカーブ半値幅は約、0.05度と小さく、高品質な(001)配向のGaNが形成されていることが分かった。
また(101)面の回折位置に検出機を固定し、面内配向性をφスキャンにて測定したところ、60度おきに(101)面の回折ピークが観測され、面内配向していることが分かった。この時(101)面φスキャンから得られた回折ピークの半値幅は0.15度であった。
【0037】
次に、GaN上にZnInON膜を形成した。ZnInON膜の製膜は2元スパッタ装置を用いて行った。
ターゲット(材料源)としては、ZnO組成を有する2インチ焼結体およびIn組成を有する2インチ焼結体(それぞれ純度99.9%)を用いた。投入RFパワーはそれぞれZnOが65W、Inが26Wである。なお、ターゲットと基板との距離は約12cm、成膜時の基板温度は300℃とした。ZnInON膜は、1×10−1Paのアルゴン窒素混合ガス雰囲気中で成膜され、導入窒素分圧は8×10−2Paとした。
【0038】
得られたZnInON膜について段差計で測定を行ったところ、膜厚は300nmであった。ラザフォード後方散乱(RBS)分析により測定されたZnInON膜の組成比はZn:In:O:N=31:18:31:20(単位:原子%)、であった。なおRBSの測定精度は±5%である。また上記ZnInONの抵抗率を4探針測定により評価したところ、2mΩcmの値を示した。
【0039】
(比較例3)
(ZnInON/Si(100)、基板前処理有り)
本比較例では、Si(100)基板上にZnInON膜を形成した。なお本比較例では基板前処理として、フッ酸での自然酸化膜の除去を行っている。ZnInONの成膜条件は、上記実施例2と同様とした。
得られたZnInON膜について段差計で測定を行ったところ、膜厚は300nmであった。RBS分析により測定されたZnInON膜の組成比はZn:In:O:N=31:18:31:20(単位:原子%)、であった。
【0040】
(比較例4)
(ZnInON/Si(100)、基板前処理無し)
本比較例では、Si(100)基板上にZnInON膜を形成した。なお本比較例では基板前処理は行っていない。ZnInONの成膜条件は、上記実施例2と同様とした。
得られたZnInON膜について段差計で測定を行ったところ、膜厚は300nmであった。RBS分析により測定されたZnInON膜の組成比はZn:In:O:N=31:18:31:20(単位:原子%)、であった。
【0041】
(結晶性評価)
本実施例2および比較例3、4で得られたZnInON膜の二次元X線回折パターンを測定したところ、いずれも(001)配向したウルツ鉱型構造と同様のパターンが得られ、ウルツ鉱型の原子配置を有する結晶であることが分かった。またq―2q測定(q:X線入射角)により、a軸格子定数は約0.346nmであることが分かった。
次に、本実施例2で得られたZnInONについて、(002)面反射のロッキングカーブを測定した。結果、その半値幅は約0.3度であった。
図11に、本実施例2で得られた(002)面反射のロッキングカーブを示す。一方、比較例3、4で得られたZnInONについてロッキングカーブを測定したところ、(002)面反射の半値幅は約5.5度であった。
【0042】
また本実施例のZnInON膜に対し、(101)面の回折位置に検出機を固定し、面内配向性をφスキャンにて測定したところ、60度おきに(101)面の回折ピークが観測され、面内配向していることが分かった。この時(101)面φスキャンから得られた回折ピークの半値幅は約1.2度であった。一方、比較例3および4のZnInON膜の(101)面φスキャン測定を行ったところ、φに依存せずどの角度からも回折が観測され、面内配向していないことが分かった。
次に本実施例2で得られたZnInON膜を、原子間力顕微鏡(AFM)観察したところ、Rrmsは組成に依存して0.590nmであった。一方比較例3および4のRrmsは約1.2nmであり、本実施例2のZnInON膜は平坦な膜が形成されていることが分かった。
【0043】
このようにZnInON膜をGaN結晶層上に積層することで、結晶性および平坦性に優れた基板を提供することができる。また本実施例2のZnInON膜のa軸格子定数はZnOの格子定数より大きく、例えばInGaNやInN等の格子定数整合性基板として用いることが出来る。また本実施例2のZnInON膜は抵抗率が小さいため、電極機能も兼ねそろえた基板を提供できるという効果がある。さらに、上記ZnInONはスパッタリングにより形成可能であることから、基板を低コストで提供できるといった効果も期待できる。
【0044】
(実施例3)
(ZnInON/GaN/Al2O3 ;Zn/In組成依存性)
本実施例では、c面サファイア基板上にMOCVD法によりGaNを形成し、その後、アルゴン窒素混合雰囲気中でのRFスパッタリング成膜により、ZnInON膜を形成した。
まずサファイア基板上にMOCVD法によりGaNを形成した。なお本実施例では基板前処理として、水素雰囲気中、1150度でのアニールを行っている。これにより、基板上に形成されるGaNの高品質化が可能となる。GaN成長において、Ga極性の方がN極性にくらべ結晶性が高いことが知られているが、前記前処理により、GaNの成長モードがGa極性になるためである。この原因は明らかではないが、前記前処理により酸素が還元あるいはエッチングされ、基板表面は化学量論比よりもAl-richになっていることが要因と考えられる。
その後、基板温度を470度まで下げ、Ga原料としてトリメチルガリウム(TMG)を、N原料としてアンモニアを流し、GaN低温バッファー層を20nm形成した。
次いで、温度を1150℃に昇温し、原料としてTMG、アンモニアを流し、高温GaN層を5μm成長した。
このように低温バッファー層上に高温GaNを形成すると、バッファー層を核とし、高温GaN形成時にその核が横方向成長しながら合体し、最終的に平坦なGaNを得ることが出来る。また高温GaNが横方向成長することによって貫通転位が曲げられ、結果、転位密度を低く抑えることができる。
【0045】
上記により得られたGaNを、原子間力顕微鏡(AFM)観察したところ、平均二乗粗さ(Rrms)は0.258nmであった。
次にX線回折により結晶性を評価したところ、(002)面反射のロッキングカーブ半値幅は約0.05度と小さく、高品質な(001)配向のGaNが形成されていることが分かった。
また(101)面の回折位置に検出機を固定し、面内配向性をφスキャンにて測定したところ、60度おきに(101)面の回折ピークが観測され、面内配向していることが分かった。この時(101)面φスキャンから得られた回折ピークの半値幅は0.15度であった。
【0046】
次に、GaN上にZnInON膜を形成した。ZnInON膜の製膜は2元斜入射スパッタ装置を用いて行った。ターゲットは基板に対し斜め方向に配置されており、基板面上の膜の組成がターゲットからの距離の差により変化するため、基板位置を変えることで、様々な組成を有する薄膜を得ることができる。
ターゲット(材料源)としては、ZnO組成を有する2インチ焼結体およびIn組成を有する2インチ焼結体(それぞれ純度99.9%)を用いた。投入RFパワーはそれぞれZnOが74W、Inが18Wである。なお、ターゲットと基板との距離は約10−15cm、成膜時の基板温度は300℃とした。ZnInON膜は、1×10−1Paのアルゴン窒素混合ガス雰囲気中で成膜され、導入窒素分圧は8×10−2Paとした。
【0047】
得られたZnInON膜について段差計で測定を行ったところ、膜厚は300nmであった。蛍光X線分析により測定されたZn/(Zn+In)で表されるZnの原子組成比率は10−90原子%であった。またX線光電子分光(XPS)分析により、N/(N+O)で表されるNの原子組成比率は8原子%以上であることが確認されている。また上記ZnInONの抵抗率を4探針測定により評価したところ、組成に依存して1−10mΩcmの値を示した。
【0048】
(比較例5)
(ZnInON/Si(100)、基板前処理有り)
本比較例では、Si(100)基板上にZnInON膜を形成した。なお本比較例では基板前処理として、フッ酸での自然酸化膜の除去を行っている。ZnInONの成膜条件は、上記実施例3と同様とした。
得られたZnInON膜について段差計で測定を行ったところ、膜厚は300nmであった。
蛍光X線分析により測定されたZn/(Zn+In)で表されるZnの原子組成比率が10−90原子%であった。
またX線光電子分光(XPS)分析により、N/(N+O)で表されるNの原子組成比率は8原子%以上であることが確認された。
【0049】
(比較例6)
(ZnInON/Si(100)、基板前処理無し)
本比較例では、Si(100)基板上にZnInON膜を形成した。なお本比較例では基板前処理は行っていない。ZnInONの成膜条件は、上記実施例3と同様とした。
得られたZnInON膜について段差計で測定を行ったところ、膜厚は300nmであった。
また蛍光X線分析によりZn/(Zn+In)で表されるZnの原子組成比率が10−90原子%であることが分かっている。
またX線光電子分光(XPS)分析により、N/(N+O)で表されるNの原子組成比率は8原子%以上であることが確認された。
【0050】
(結晶性評価)
本実施例3および比較例5、6で得られたZnInON膜の二次元X線回折パターンを測定したところ、いずれも(001)配向したウルツ鉱型構造と同様のパターンが得られ、ウルツ鉱型の原子配置を有する結晶であることが分かっている。
また、構成元素の組成比による格子定数の変化が観測され、a軸格子定数は約0.330nmから0.358nmまで変化することが分かった。
図10に異なるZn/(In+Zn)組成比(原子%)におけるZnInON膜のa軸格子定数を示す。なお図10は本実施例3のZnInON膜の結果であるが、比較例1、2ともに同様の結果が得られている。
【0051】
次に、本実施例3で得られたZnInONについて、(002)面反射のロッキングカーブを測定した。結果、その半値幅は組成に依存して約0.09−0.5度であった。一方、比較例5、6で得られたZnInONについてロッキングカーブを測定したところ、(002)面反射の半値幅は3−6度であった。
また本実施例のZnInON膜に対し、(101)面の回折位置に検出機を固定し、面内配向性をφスキャンにて測定したところ、どの組成においても60度おきに(101)面の回折ピークが観測され、面内配向していることが分かっている。この時(101)面φスキャンから得られた回折ピークの半値幅は組成に依存して約0.5−1.5度であった。一方、比較例5および6のZnInON膜の(101)面φスキャン測定を行ったところ、φに依存せずどの角度からも回折が観測され、面内配向していないことが分かる。
【0052】
次に本実施例3で得られたZnInON膜を、原子間力顕微鏡(AFM)観察したところ、Rrmsは組成に依存して0.440nm−0.650nmであった。一方比較例5および6のRrmsは0.8−1.5nmであり、本実施例1のZnInON膜は平坦な膜が形成されていることが分かる。
このようにZnInON膜をGaN結晶層上に積層することで、結晶性および平坦性に優れた基板を提供することができる。特に本実施例3のZnInON膜の格子定数は広範囲に渡り可変であり、例えばInGaNやInN等の格子定数整合性基板として用いることが出来る。また本実施例3のZnInON膜は抵抗率が小さいため、電極機能も兼ねそろえた基板を提供できるという効果がある。さらに、上記ZnInONはスパッタリングにより形成可能であることから、基板を低コストで提供できるといった効果も期待できる。
【0053】
(実施例4)
(ZnGaON/GaN/Al2O3; Zn:Ga=24:24)
本実施例では、c面サファイア基板上にMOCVD法によりGaNを形成し、その後、アルゴン窒素混合雰囲気中でのRFスパッタリング成膜により、ZnGaON膜を形成した。
まずサファイア基板上にMOCVD法によりGaNを形成した。なお本実施例では基板前処理として、水素雰囲気中、1150度でのアニールを行っている。これにより、基板上に形成されるGaNの高品質化が可能となる。GaN成長において、Ga極性の方がN極性にくらべ結晶性が高いことが知られているが、前記前処理により、GaNの成長モードがGa極性になるためと考えられる。またこれは、前記前処理により酸素が還元あるいはエッチングされ、基板表面は化学量論比よりもAl-richになっていることに起因する。
その後、基板温度を470度まで下げ、Ga原料としてトリメチルガリウム(TMG)を、N原料としてアンモニアを流し、GaN低温バッファー層を20nm形成した。
次いで、温度を1150℃に昇温し、原料としてTMG・アンモニアを流し、高温GaN層を5μm成長した。
このように低温バッファー層上に高温GaNを形成すると、バッファー層を核とし、高温GaN形成時にその核が横方向成長しながら合体し、最終的に平坦なGaNを得ることが出来る。また高温GaNが横方向成長することによって貫通転位が曲げられ、結果、転位密度を低く抑えることができる。
【0054】
上記により得られたGaNを、原子間力顕微鏡(AFM)観察したところ、平均二乗粗さ(Rrms)は0.258nmであった。
次にX線回折により結晶性を評価したところ、(002)面反射のロッキングカーブ半値幅は約、0.05度と小さく、高品質な(001)配向のGaNが形成されていることが分かった。
また(101)面の回折位置に検出機を固定し、面内配向性をφスキャンにて測定したところ、60度おきに(101)面の回折ピークが観測され、面内配向していることが分かった。この時(101)面φスキャンから得られた回折ピークの半値幅は0.15度であった。
【0055】
次に、GaN上にZnGaON膜を形成した。ZnGaON膜の成膜は2元スパッタ装置を用いて行った。
ターゲット(材料源)としては、ZnO組成を有する2インチ焼結体およびGaN組成を有する2インチ焼結体(それぞれ純度99.9%)を用いた。投入RFパワーはそれぞれZnOが69W、GaNが23Wである。なお、ターゲットと基板との距離は約12cm、成膜時の基板温度は300℃とした。ZnGaON膜は、1×10−1Paのアルゴン窒素混合ガス雰囲気中で成膜され、導入窒素分圧は8×10−2Paとした。得られたZnGaON膜について段差計で測定を行ったところ、膜厚は300nmである。RBS分析により測定されたZnGaON膜の組成比はZn:Ga:O:N=24:23:28:25(単位:原子%)である。なおRBSの測定精度は±5%である。
【0056】
(比較例7)
(ZnGaON/Si(100))
本比較例では、Si(100)基板上にZnGaON膜を形成した。ZnGaONの成膜条件は、上記実施例4と同様とした。
得られたZnGaON膜について段差計で測定を行ったところ、膜厚は300nmであった。RBS分析により測定されたZnGaON膜の組成比はZn:Ga:O:N=24:23:28:25(単位:原子%)であった。
【0057】
(結晶性評価)
本実施例4および比較例7で得られたZnGaON膜の二次元X線回折パターンを測定したところ、いずれも(001)配向したウルツ鉱型構造と同様のパターンが得られ、ウルツ鉱型の原子配置を有する結晶であることが分かった。また、構成元素の組成比による格子定数の変化が観測され、a軸格子定数は約0.328nmであった。
【0058】
次に、本実施例4で得られたZnGaONについて、(002)面反射のロッキングカーブを測定した。結果、その半値幅は約0.2度であることが分かった。
図14に、(002)面反射のロッキングカーブを示す。一方、比較例7で得られたZnGaONについてロッキングカーブを測定したところ、(002)面反射の半値幅は5度であった。
また本実施例のZnGaON膜に対し、(101)面の回折位置に検出機を固定し、面内配向性をφスキャンにて測定したところ、60度おきに(101)面の回折ピークが観測され、面内配向していることが分かった。この時(101)面φスキャンから得られた回折ピークの半値幅は約0.53度であった。
図15に、(101)面φスキャンの測定結果を示す。一方、比較例7のZnGaON膜の(101)面φスキャン測定を行ったところ、φに依存せずどの角度からも回折が観測され、面内配向していないことが分かった。
【0059】
このようにZnGaON膜をGaN結晶層上に積層することで、結晶性に優れた基板を提供することができる。また本実施例4のZnGaON膜のa軸格子定数はZnOの格子定数より大きく、例えばInGaN等の格子定数整合性基板として用いることが出来る。また、上記ZnGaONはスパッタリングにより形成可能であることから、基板を低コストで提供できるという効果がある。
【0060】
(実施例5)
(ZnGaON/GaN/Al2O3; Zn/Ga 組成依存)
本実施例では、c面サファイア基板上にMOCVD法によりGaNを形成し、その後、アルゴン窒素混合雰囲気中でのRFスパッタリング成膜により、ZnGaON膜を形成した。
【0061】
まずサファイア基板上にMOCVD法によりGaNを形成した。なお本実施例では基板前処理として、水素雰囲気中、1150度でのアニールを行っている。これにより、基板上に形成されるGaNの高品質化が可能となる。GaN成長において、Ga極性の方がN極性にくらべ結晶性が高いことが知られているが、前記前処理により、GaNの成長モードがGa極性になるためと考えられる。またこれは、前記前処理により酸素が還元あるいはエッチングされ、基板表面は化学量論比よりもAl-richになっていることに起因する。
その後、基板温度を470度まで下げ、Ga原料としてトリメチルガリウム(TMG)を、N原料としてアンモニアを流し、GaN低温バッファー層を20nm形成した。
次いで、温度を1150℃に昇温し、原料としてTMG・アンモニアを流し、高温GaN層を5μm成長した。
このように低温バッファー層上に高温GaNを形成すると、バッファー層を核とし、高温GaN形成時にその核が横方向成長しながら合体し、最終的に平坦なGaNを得ることが出来る。また高温GaNが横方向成長することによって貫通転位が曲げられ、結果、転位密度を低く抑えることができる。
【0062】
上記により得られたGaNを、原子間力顕微鏡(AFM)観察したところ、平均二乗粗さ(Rrms)は0.258nmであった。
次にX線回折により結晶性を評価したところ、(002)面反射のロッキングカーブ半値幅は約、0.05度と小さく、高品質な(001)配向のGaNが形成されていることが分かった。
また(101)面の回折位置に検出機を固定し、面内配向性をφスキャンにて測定したところ、60度おきに(101)面の回折ピークが観測され、面内配向していることが分かった。この時(101)面φスキャンから得られた回折ピークの半値幅は0.15度であった。
【0063】
次に、GaN上にZnGaON膜を形成した。ZnGaON膜の製膜は2元斜入射スパッタ装置を用いて行った。ターゲットは基板に対し斜め方向に配置されており、基板面上の膜の組成がターゲットからの距離の差により変化するため、基板位置を変えることで、様々な組成を有する薄膜を得ることができる。
ターゲット(材料源)としては、ZnO組成を有する2インチ焼結体およびGaN組成を有する2インチ焼結体(それぞれ純度99.9%)を用いた。投入RFパワーはそれぞれZnOが69W、GaNが23Wである。なお、ターゲットと基板との距離は約10−15cm、成膜時の基板温度は300℃とした。ZnGaON膜は、1×10−1Paのアルゴン窒素混合ガス雰囲気中で成膜され、導入窒素分圧は8×10−2Paとした。
【0064】
得られたZnGaON膜について段差計で測定を行ったところ、膜厚は300nmであった。
蛍光X線分析により測定されたZn/(Zn+Ga)で表されるZnの原子組成比率は10−90原子%であった。またX線光電子分光(XPS)分析により、N/(N+O)で表されるNの原子組成比率は10原子%以上であることが確認されている。
【0065】
(比較例8)
(ZnGaON/Si(100))
本比較例では、Si(100)基板上にZnGaON膜を形成した。ZnGaONの成膜条件は、上記実施例5と同様とした。
得られたZnGaON膜について段差計で測定を行ったところ、膜厚は300nmであった。
蛍光X線分析により測定されたZn/(Zn+Ga)で表されるZnの原子組成比率は10−90原子%であった。またXPS分析により、N/(N+O)で表されるNの原子組成比率は10原子%以上であることが確認されている。
【0066】
(結晶性評価)
本実施例5および比較例8で得られたZnGaON膜の二次元X線回折パターンを測定したところ、いずれも(001)配向したウルツ鉱型構造と同様のパターンが得られ、ウルツ鉱型の原子配置を有する結晶であることが分かった。また、構成元素の組成比による格子定数の変化が観測され、a軸格子定数は約0.320nmから0.332nmまで変化することが分かった。
【0067】
次に、本実施例5で得られたZnGaONについて、(002)面反射のロッキングカーブを測定した。結果、その半値幅は組成に依存して約0.15−0.62度であることが分かった。一方、比較例8で得られたZnGaONについてロッキングカーブを測定したところ、(002)面反射の半値幅は4−6度であった。
【0068】
また本実施例のZnGaON膜に対し、(101)面の回折位置に検出機を固定し、面内配向性をφスキャンにて測定したところ、どの組成においても60度おきに(101)面の回折ピークが観測され、面内配向していることが分かった。この時(101)面φスキャンから得られた回折ピークの半値幅は組成に依存して約0.35−1.4度であった。一方、比較例8のZnInON膜の(101)面φスキャン測定を行ったところ、φに依存せずどの角度からも回折が観測され、面内配向していないことが分かった。
【0069】
このようにZnGaON膜をGaN結晶層上に積層することで、結晶性および格子定数制御性に優れた基板を提供することができる。また、上記ZnGaONはスパッタリングにより形成可能であることから、基板を低コストで提供できるという効果がある。
【0070】
(実施例6)
(ZnInON/Al; Zn:In=15:85)
本実施例では、アルゴン窒素混合雰囲気中でのRFスパッタリング成膜により、c面Al結晶基板上に、ZnInON膜を形成した。
まずAl結晶基板に前処理として、水素雰囲気中、1150度でのアニールを10分間行った。
次に、Al結晶上にZnInON膜を形成した。ZnInON膜の製膜は2元スパッタ装置を用いて行った。
ターゲット(材料源)としては、ZnO組成を有する2インチ焼結体およびIn組成を有する2インチ焼結体(それぞれ純度99.9%)を用いた。投入RFパワーはそれぞれZnOが70W、Inが18Wである。なお、ターゲットと基板との距離は約12cm、成膜時の基板温度は300℃とした。ZnInON膜は、1×10−1Paのアルゴン窒素混合ガス雰囲気中で成膜され、導入窒素分圧は8×10−2Paとした。得られたZnInON膜について段差計で測定を行ったところ、膜厚は30nmであった。蛍光X線分析により測定されたZn/(Zn+In)で表されるZnの原子組成比率は85原子%であった。またXPS分析により、N/(N+O)で表されるNの原子組成比率は約14原子%であることが確認されている。また上記ZnInONの抵抗率を4探針測定により評価したところ、300Ωcmの値を示していた。
【0071】
(結晶性評価)
本実施例6で得られたZnInON膜の二次元X線回折パターンを測定したところ、いずれも(001)配向したウルツ鉱型構造と同様のパターンが得られ、ウルツ鉱型の原子配置を有する結晶であることが分かった。またq―2q測定(q:X線入射角)により、a軸格子定数は約0.334nmであることが分かった。
次に、本実施例6で得られたZnInONについて、(002)面反射のロッキングカーブを測定した。結果、その半値幅は約1度であった。
また本実施例のZnInON膜に対し、(101)面の回折位置に検出機を固定し、面内配向性をφスキャンにて測定したところ、60度おきに(101)面の回折ピークが観測され、面内配向していることが分かった。図16に、本実施例6で得られた(101)面φスキャンの測定結果を示す。
このようにZnInON膜をAl結晶上に積層することで、面内配向性を有し、結晶性に優れた基板を提供することができる。また本実施例6のZnInON膜のa軸格子定数はZnOの格子定数より大きく、例えばInGaNやInN等の格子定数整合性基板として用いることが出来る。また、上記ZnInONはスパッタリングにより形成可能であることから、基板を低コストで提供できるといった効果も期待できる。
【0072】
(実施例7)
(ZnInON/Al; Zn:In=64:36)
本実施例では、アルゴン窒素混合雰囲気中でのRFスパッタリング成膜により、c面Al結晶基板上に、ZnInON膜を形成した。
まずAl結晶基板に前処理として、水素雰囲気中、1150度でのアニールを10分間行った。
次に、Al上にZnInON膜を形成した。ZnInON膜の製膜は2元スパッタ装置を用いて行った。
ターゲット(材料源)としては、ZnO組成を有する2インチ焼結体およびIn組成を有する2インチ焼結体(それぞれ純度99.9%)を用いた。投入RFパワーはそれぞれZnOが80W、Inが18Wである。なお、ターゲットと基板との距離は約12cm、成膜時の基板温度は400℃とした。ZnInON膜は、1×10−1Paのアルゴン窒素混合ガス雰囲気中で成膜され、導入窒素分圧は8×10−2Paとした。得られたZnInON膜について段差計で測定を行ったところ、膜厚は40nmであった。蛍光X線分析により測定されたZn/(Zn+In)で表されるZnの原子組成比率は64原子%であった。またXPS分析により、N/(N+O)で表されるNの原子組成比率は約35原子%であることが確認されている。また上記ZnInONの抵抗率を4探針測定により評価したところ、1mΩcmの値を示していた。
【0073】
(結晶性評価)
本実施例7で得られたZnInON膜の二次元X線回折パターンを測定したところ、いずれも(001)配向したウルツ鉱型構造と同様のパターンが得られ、ウルツ鉱型の原子配置を有する結晶であることが分かった。またq―2q測定(q:X線入射角)により、a軸格子定数は約0.341nmであることが分かった。
次に、本実施例7で得られたZnInONについて、(002)面反射のロッキングカーブを測定した。結果、その半値幅は約1度であった。
また本実施例のZnInON膜に対し、(101)面の回折位置に検出機を固定し、面内配向性をφスキャンにて測定したところ、60度おきに(101)面の回折ピークが観測され、面内配向していることが分かった。図17に、本実施例7で得られた(101)面φスキャンの測定結果を示す。
このようにZnInON膜をAl結晶上に積層することで、面内配向性を有し、結晶性に優れた基板を提供することができる。また本実施例7のZnInON膜のa軸格子定数はZnOの格子定数より大きく、例えばInGaNやInN等の格子定数整合性基板として用いることが出来る。また本実施例7のZnInON膜は抵抗率が小さいため、電極機能も兼ねそろえた基板を提供できるという効果がある。さらに、上記ZnInONはスパッタリングにより形成可能であることから、基板を低コストで提供できるといった効果も期待できる。
【0074】
(実施例8)
(ZnInON/Al; Zn:In=50:50)
本実施例では、アルゴン窒素混合雰囲気中でのRFスパッタリング成膜により、c面Al結晶基板上に、ZnInON膜を形成した。
まずAl結晶基板に前処理として、水素雰囲気中、1150度でのアニールを10分間行い、その後、アンモニア雰囲気中、1150度でのアニールを行った。
次に、Al上にZnInON膜を形成した。ZnInON膜の製膜は2元スパッタ装置を用いて行った。
ターゲット(材料源)としては、ZnO組成を有する2インチ焼結体およびIn組成を有する2インチ焼結体(それぞれ純度99.9%)を用いた。投入RFパワーはそれぞれZnOが60W、Inが18Wである。なお、ターゲットと基板との距離は約12cm、成膜時の基板温度は300℃とした。ZnInON膜は、1×10−1Paのアルゴン窒素混合ガス雰囲気中で成膜され、導入窒素分圧は8×10−2Paとした。得られたZnInON膜について段差計で測定を行ったところ、膜厚は30nmであった。蛍光X線分析により測定されたZn/(Zn+In)で表されるZnの原子組成比率は50原子%であった。また上記ZnInONの抵抗率を4探針測定により評価したところ、1mΩcmの値を示していた。
【0075】
(結晶性評価)
本実施例8で得られたZnInON膜の二次元X線回折パターンを測定したところ、いずれも(001)配向したウルツ鉱型構造と同様のパターンが得られ、ウルツ鉱型の原子配置を有する結晶であることが分かった。またq―2q測定(q:X線入射角)により、a軸格子定数は約0.350nmであることが分かった。
次に、本実施例8で得られたZnInONについて、(002)面反射のロッキングカーブを測定した。結果、その半値幅は約1度であった。
また本実施例のZnInON膜に対し、(101)面の回折位置に検出機を固定し、面内配向性をφスキャンにて測定したところ、60度おきに(101)面の回折ピークが観測され、面内配向していることが分かった。図18に、本実施例8で得られた(101)面φスキャンの測定結果を示す。
このようにZnInON膜をAl結晶上に積層することで、面内配向性を有し、結晶性に優れた基板を提供することができる。また本実施例8のZnInON膜のa軸格子定数はZnOの格子定数より大きく、例えばInGaNやInN等の格子定数整合性基板として用いることが出来る。また、本実施例8のZnInON膜は抵抗率が小さいため、電極機能も兼ねそろえた基板を提供できるという効果がある。さらに、上記ZnInONはスパッタリングにより形成可能であることから、基板を低コストで提供できるといった効果も期待できる。
【符号の説明】
【0076】
10 基板
11 ウルツ鉱型の原子配置を有する結晶(第1の層)
12 金属窒化物結晶(第2の層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
6回対称軸を有する結晶からなる第1の層と該第1の層の上に形成される金属酸窒化物結晶からなる第2の層を有し、
前記第2の層が、In、Ga、Si、Ge及びAlからなる群から選択される少なくとも1つの元素と、NとOとZnとを主要元素として含み、且つ前記第2の層が面内配向性を有する積層構造体を備えることを特徴とするウルツ鉱型結晶成長用基板。
【請求項2】
前記第1の層がウルツ鉱型の原子配置を有する結晶またはAl結晶であることを特徴とする、請求項1に記載のウルツ鉱型結晶成長用基板。
【請求項3】
前記第2の層がウルツ鉱型の原子配置を有する結晶であることを特徴とする、請求項1または2に記載のウルツ鉱型結晶成長用基板。
【請求項4】
前記第2の層のa軸格子定数が0.320nmから0.358nmの範囲にあることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のウルツ鉱型結晶成長用基板。
【請求項5】
前記第2の層の(002)面のX線ロッキングカーブの半値幅が1度以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のウルツ鉱型結晶成長用基板。
【請求項6】
前記第1の層がGaNまたはZnOから選ばれるウルツ鉱型結晶からなり、前記第2の層がZn(x)In(1-x)(y)(1-y)(但し0.1≦x≦0.9、0.1≦y≦0.9)からなることを特徴とする請求項1に記載のウルツ鉱型結晶成長用基板。
【請求項7】
前記第1の層がGaNまたはZnOから選ばれるウルツ鉱型結晶からなり、前記第2の層がZn(x)Ga(1-x)(y)(1-y)(但し0.1≦x≦0.9、0.1≦y≦0.9)からなることを特徴とする請求項1に記載のウルツ鉱型結晶成長用基板。
【請求項8】
前記第1の層がAlからなり、前記第2の層がZn(x)In(1-x)(y)(1-y)(但し0.1≦x≦0.9、0.1≦y≦0.9)からなることを特徴とする請求項1に記載のウルツ鉱型結晶成長用基板。
【請求項9】
前記第1の層がAlからなり、前記第2の層がZn(x)Ga(1-x)(y)(1-y)(但し0.1≦x≦0.9、0.1≦y≦0.9)からなることを特徴とする請求項1に記載のウルツ鉱型結晶成長用基板。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のウルツ鉱型結晶成長用基板を用いることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
6回対称軸を有する結晶からなる第1の層の上に、面内配向性を有する金属酸窒化物結晶からなる第2の層を、窒素を含む雰囲気中で形成する工程を有し、
前記第2の層がIn、Ga、Si、Ge及びAlからなる群から選択される少なくとも1つの元素と、NとOとZnとを主要元素として含むことを特徴とする、積層構造体を備えたウルツ鉱型結晶成長用基板の製造方法。
【請求項12】
前記第2の層がスパッタリング法により形成されることを特徴とする、請求項11に記載のウルツ鉱型結晶成長用基板の製造方法。
【請求項13】
前記第2の層の製膜速度が10nm/min以下であることを特徴とする、請求項11または12に記載のウルツ鉱型結晶成長用基板の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−114423(P2010−114423A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213725(P2009−213725)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】