説明

シクロアルキルピラニル基を含むATP結合カセットトランスポーターのモジュレータ

本発明は、ABCトランスポーターの活性のモジュレータとして有用な式(I)(ここで、R、n、B、R、R、R、AおよびZは、一般的に記載され、以下のクラスおよびサブクラスに入る)の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。また、本発明は、モジュレータとして、およびABCトランスポータータンパク質関連する疾患および疾患状態の処置に有用な、式(I)に関連する薬学的に受容可能な組成物、方法およびキットを提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、嚢胞性線維性膜貫通モジュレータ(「CFTR」)、その組成物、およびそれを使用する方法を始めとする、ATP結合カセット(「ABC」)トランスポーターのモジュレータまたはそのフラグメントに関する。また、本発明は、そのようなモジュレータを使用するABCトランスポーター仲介性疾患に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ABCトランスポーターは、運搬および多種多様の薬剤、潜在的毒剤および生体外物質に対する細胞の保護において中心的な役割を担う、膜トランスポータータンパク質のグループである。ABCトランスポーターは、その特定の活性のために、細胞のアデノシン三リン酸(ATP)を結びつけ、使用する相同膜タンパク質である。これらのトランスポーターの中には、化学治療剤に対し癌細胞を規定する、多剤耐性タンパク質(たとえば、MDR1−P糖タンパク質、または多剤耐性タンパク質、MRP1)として発見されたものもある。今日まで、48個のヒトABCトランスポーターが同定されてきており、これらは、その配列の同一性と機能に基づいて、7群に分けられている。
【0003】
ABCトランスポーターは、体内の種々の重要な生理学的役割を担い、同時に外界からの有害な化合物に対して防御を提供する。さらに、同時に多くの場合、治療薬剤は、これらの分子によって標的細胞から運搬されるので、これらはそれ自体、重要な潜在的薬物標的を示すものでもある。
【0004】
ABCトランスポーター群の1メンバーであるCFTRは、上皮細胞中のcAMP−介在塩素分泌に応答することができ、かつ塩素イオンの分泌および正常な電解質の体中の運搬の維持に重要な役割を果たす、塩素イオンチャネルであると信じられている。CFTRは、それぞれ6個のトランスメンブランセグメントと、1個のヌクレオチド結合ドメインとを含む、2個の繰り返し要素で構成された約1480個のアミノ酸のタンパク質である。該2個の繰り返しは、多重潜在的リン酸化部位を含む、大きな、極性、調節(R)−ドメインによって分離される。
【0005】
遺伝子関連CFTRは、同定され、分類されている(非特許文献1;非特許文献2),(非特許文献3参照)。この遺伝子の欠点は、アメリカ合衆国で生まれる乳児の約2,500人に1人がかかるヒトにおける最も一般的な致死的遺伝子病である、嚢胞性線維症(以下、「CF」と言う)に導くことである。合衆国の一般住民にうち、1千万人までの人々が、弊害を発症することなく、欠陥遺伝子の単コピーを持っている。対照的に、CF関連遺伝子の2コピーを持つ個体は、慢性的な肺の破壊および死を始めとするCFの慢性効果を患う。
【0006】
CFを持つ患者において、気道細胞中のCF関連遺伝子の発現は、イオンおよび液体運搬において不均等を起こす、細胞の先端塩素イオン伝導率の減少を招く。これによって、膵管および気道で異常な粘液分泌が起こり、最終的に、CFの疾患進行に典型的に関連する肺感染症および上皮細胞損傷になることは、広く信じられている。呼吸器系の問題に加えて、CF患者は、普通、消化器系の問題および膵機能不全も患う。オスはほとんどの場合不妊であり、メスは受胎能が減少する。CF関連遺伝子の2コピーの深刻な結果とは対照的に、CF関連遺伝子の単コピーを持つ個体は、コレラに対しおよび下痢からくる脱水に対する耐性が増大することを示し、このことは、おそらく、CF遺伝子がヒトの間で比較的広く広がっていることを説明しているであろう。
【0007】
CF染色体のCFTR遺伝子の配列分析は、変異を起こす種々の疾患を明らかにしている(非特許文献4;非特許文献5;および非特許文献6;非特許文献7)。現在CF遺伝子中で1000を超える変異が同定されている(http://www.genet.sickkids.on.ca/cftr/)が、母集団試験によって、最も一般的なCF変異である、CFTRアミノ酸配列の508の位置にフェニルアラニンをエンコードする3ヌクレオチドの欠失は、嚢胞性線維症の場合の約70%と関連することが示唆された。変異CFTRタンパク質をDF508と言う。
【0008】
DF508−CFTR中の残基508の欠失によって、発生期のタンパク質が正しく折れ曲がることが阻止され、この変異体タンパク質を、小胞体(以下、「ER」と言う)から排出し、形質膜へ運ばれることを不可能にしていると考えられる。その結果、成熟したタンパク質の量が形質膜で不十分となり、上皮組織内の塩素イオン運搬が大きく減少する(非特許文献8)。したがって、ER機構による、CFTRのような他のタンパク質の欠損ERプロセシングの細胞現象は、広い範囲の独立した遺伝性の疾患に関する基本的な原因であることが示されている。ER機構を誤作動しうる2つのやり方は、分解へ導くタンパク質のER排出への結合の損失によるもの、あるいは、これらの欠損/誤って折り畳まれたタンパク質のER蓄積によるものがある[非特許文献9;非特許文献;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13]。しかし、研究によって、DF508−CFTRは、形質膜に存在する時、cAMP−応答性Clチャネルとして有効であることが示されている(非特許文献14;Denningら,前出;非特許文献15)。
【0009】
CFTRはアニオンに加えて、種々の分子も運搬するが、このアニオンを運搬する役割は、上皮細胞を通って、イオンおよび水を運搬する全細胞機構において、重要な要素を代表する。他の要素として、塩素イオンの細胞への取込みに応答しうる、上皮細胞性Naチャネル、ENaC、Na/2Cl/Kコトランスポーター、Na−K−ATP分解酵素ポンプ、および基底外側膜Kチャネルが挙げられる。
【0010】
これらの元素は、一緒に動作し、選択的発現によって上皮細胞を通る、方向性のある運搬と、細胞内の局在性を達成する。塩素イオン吸収は、(i)ENaCおよびCFTRが先端膜上に存在し、(ii)Na−K−ATP分解酵素ポンプとCl−チャネルが細胞の基底外側表面上で発現した、総合的活性によって行われる。内腔側からの塩素イオンの第2の活性運搬によって細胞内塩素イオンが蓄積され、次いで、Clチャネルを介して細胞を受動的に残す、ベクトル運搬となる。Na/2Cl/Kコトランスポーター、基底外側表面上のNa−K−ATP分解酵素ポンプおよび基底外側膜Kチャネル、並びに内腔側上のCFTRの配置によって、内腔側上のCFTRを介して、塩素イオンの分泌が調整される。おそらく水は決してそれ自身を能動的に運搬しないので、上皮を通るその流れは、ナトリウムおよび塩素イオンのバルク流によって生み出される極小の経上皮細胞性浸透圧勾配に依存する。
【0011】
CFに加えて、CFTR活性の変調は、分泌性疾患およびCFTRによって介在される他のタンパク質の折畳み疾患のような、CFTRにおける変異が直接の原因ではない他の疾患に対して好都合であるかもしれない。これらの疾患として、慢性閉塞性肺疾患(以下「COPD」という)、眼乾燥疾患、およびシェーグレン症候群が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
COPDは、進行性で、完全に回復する可能性のない、気流制限によって特徴付けられる。気流制限は、粘液の分泌過多、気腫、および細気管支炎によるものである。CFTRの変異体または野生型の活性化因子は、粘液分泌過多およびCOPDでは普通である、粘膜毛様体のクリアランス障害の実質的な治療を提供する。特に、CFTRを通るアニオン分泌が増加すると、気道表面液体への流体運搬が増強され、粘液を水和させ、流体粘度を容易に最適化する。これは、粘膜毛様体クリアランスを増強し、COPDに関連する症候を減らす。眼乾燥疾患は、涙液の産生の低下、および涙膜液、タンパク質および粘液プロファイルの異常によって特徴付けられる。ドライアイには多数の原因があるが、その中のいくつかとして、年齢、眼科手術、関節炎、投薬、薬品/熱による火傷、アレルギーおよびCFおよびシューグレン症候群のような疾患が挙げられる。CFTRを介するアニオン分泌の増加は、角膜内皮細胞および目の周りの分泌腺からの流体運搬を強化し、角膜の水和反応を増やす。これは、眼乾燥疾患に関連する症候を緩和する助けとなる。シューグレン症候群は、目、口、皮膚、呼吸器系組織、肝臓、膣および腸を含む全身の水分産生腺を免疫システムが攻撃する、自己免疫性疾患である。該症候として、ドライアイ、口および膣の乾き、さらに肺疾患も挙げられる。また、疾患は、リウマチ関節炎、全身性強皮症、全身性硬化および多発性筋炎/皮膚筋炎にも関連する。欠損タンパク質情報交換は、治療の選択肢が限られている疾患の原因であると信じられる。CFTR活性のモジュレータは、該疾患に冒される種々の臓器を水和させ、関連症候を緩和する助けをするのかもしれない。
【0013】
先に述べたように、ΔF508−CFTR中の残基508の欠失は、発生期のタンパク質が正しく折畳まれるのを妨害し、この変異体タンパク質がERから排出され、形質膜に運ばれるのを不能にする結果となることが信じられている。その結果、成熟したタンパク質の形質膜での量は不足し、上皮組織内での塩素イオン運搬は、大きく減少する。実際、ER機構による、ABCトランスポーターの欠損ERプロセシングのこの細胞現象は、CF疾患ばかりでなく、他の広い範囲の独立した遺伝性の疾患の基本的な原因であることが示されている。ER機構を誤作動しうる2つのやり方は、分解へ導くタンパク質のER排出への結合の損失によるもの、あるいは、これらの欠損/誤って折り畳まれたタンパク質のER蓄積によるものがある[非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19;非特許文献20]。
【0014】
ER誤作動の第1クラスに関連する疾患としては、CF(誤って折畳まれたΔF508−CFTRによる)、遺伝性気腫(α1−アンチトリプシンによる;非Piz変異体)、遺伝性ヘモクロマトーシス、タンパク質C欠乏症のような凝固−フィブリン溶解性欠乏症(coagulation−fibrinolysis deficiency)、1型遺伝性血管浮腫、家族性高コレステロール血症のような脂質プロセシング欠乏症(lipid processing deficiency)、1型遺伝性血管浮腫、無βリポ蛋白血症、I細胞疾患/偽ハーラー症候群(Pseudo−Hurler)のようなリソソーム蓄積症、ムコ多糖症(リソソームプロセシング酵素による)、ザントホフ/テイ−サックス病(β−ヘキソサミニダーゼによる)、クリグラー−ナジャーII型(UDP−グルクロニル−シアル酸トランスフェラーゼによる)、多発性内分泌腺症/高インスリン症、真性糖尿病(インシュリン受容体による)、ラロン小人症(成長ホルモン受容体による)、ミエロペルオキシダーゼ欠乏症、原発性副甲状腺機能低下症(プレプロ甲状腺ホルモンによる)、黒色腫(チロシナーゼによる)が挙げられる。ER誤作動の後のクラスに関連する疾患として、グリカノシスCDG1型(glycanosis CDG type 1)、遺伝性気腫(α1−アンチトリプシン(PiZ変異体)による、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症(I、II、IV型プロコラーゲンによる)、遺伝性低フィブリノーゲン血症(フィブリノゲンによる)、ACT欠乏症(αl−抗キモトリプシンによる)、尿崩症(DI)、ニューロフィシンDI(Neurophyseal DI)(バソプレシンホルモン/V2−受容体による)、腎性DI(Neprogenic DI)(アクアポリンIIによる)、シャルコー−マリー−ツース症候群(末梢性ミエリンタンパク質22による)、ペリツェウス−メルツバッハー病(Perlizaeus−Merzbacher disease)、アルツハイマー病のような神経変性疾患(βAPPおよびプレセニリンによる)、パーキンソン病、筋萎縮性側策硬化症、進行性核上麻痺、ピック病、ハンティングトン病のような数種のポリグルタミン神経疾患(polyglutamine neurological disorder)、脊髄小脳性運動失調I型、脊髄延髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(dentatorubal pallidoluysian)、および筋緊張性ジストロフィ、それに、遺伝性クロイツフェルト−ヤーコプ病(プリオンタンパク質プロセシング欠損)のような海綿状脳症、ファブリー病(リソソームα−ガラクトシターゼAによる)およびストロイスラー−シャインカー症候群(Straussler−Scheinker syndrome)(Prpプロセシング欠損による)が挙げられる。
【0015】
CFにおいて、CFTRが介在する塩素イオン運搬は低減し、疾患を特徴づける粘液分泌の異常を起こす。それに反して分泌性下痢では、上皮細胞性水運搬が劇的に増加し、その結果、分泌促進物質が塩素イオン運搬を活性化する。そのメカニズムは、cAMPの上昇とCFTRの刺激を伴う。
【0016】
下痢の原因は数多くあるが、過剰の塩素イオン運搬が原因である下痢疾患の主な結果は共通しており、脱水反応、アシドーシス、死および成長不全を含む。
【0017】
急性および慢性下痢は、世界中の多くの地域で主な医学的問題として取り上げられる。下痢は、5歳未満の子供では、栄養失調における重要なファクターであり、主な死因(1年で5百万人の死)でもある。
【0018】
また、分泌性下痢は、後天性免疫欠乏症候群(AIDS)および慢性炎症性腸疾患疾患(IBD)の患者にとって、危険な状態である。先進工業国から開発途上国への1千6百万人の旅行者が毎年下痢を発症し、旅行した国および地域によって、発病度と症例数は様々である。
【0019】
また、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、およびイヌのような家畜およびペットにおける下痢は、感染性下痢としても知られ、これら動物の死の主たる原因である。下痢は、離乳または物理的な移動のようなどのような主たる移行によっても起こりえるし、同時に種々の細菌性またはウィルス感染に対する応答においても起こりえる。そして一般的に、動物の生命の最初の数時間の間に起こる。
【0020】
最も一般的な下痢を起こす細菌は、K99線毛抗原を有する腸毒性大腸菌(ETEC)である。下痢の原因の一般的なウィルスとして、ロタウィルスおよびコロナウィルスが挙げられる。他の感染因子として、クリプトスポリジウム、ランブルべん毛虫、およびサルモネラ、その他が挙げられる。
【0021】
ロタウィルス感染の症状は、水様便の排泄、脱水反応および衰弱が含まれる。コロナウィルスは、新生児に対して、さらに重篤な病状を起こし、患者の死亡率はロタウィルス感染症より高い。しかし、しばしば、若い動物は、一度に複数のウィルス、またはウィルスと細菌性微生物との混合物に感染する。これは、疾患の重症化を劇的に増大する。
【非特許文献1】Gregory,R.J.ら「Nature」1990年,第347巻:382−386
【非特許文献2】Rich,D.P.ら「Nature」1990年,第347巻:358−362
【非特許文献3】Riordan,J.R.ら「Science」1989年,第245巻:1066−1073
【非特許文献4】Cutting,G.R.ら「Nature」1990年,第346巻:366−369
【非特許文献5】Dean,M.ら「Cell」1990年,第61巻:863:870
【非特許文献6】Kerem,B−S.ら「Science」1989年,第245巻:1073−1080
【非特許文献7】Kerem,B−S.ら「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」1990年,第87巻:8447−8451
【非特許文献8】Quinton,P.M.「FASEB J.」1990年,第4巻:2709−2727
【非特許文献9】Aridor Mら「Nature Med.」1999年,第5巻(7),pp745−751
【非特許文献10】Shastry,B.S.ら「Neurochem.International」2003年,第43巻,pp1−7
【非特許文献11】Rutishauser,J.ら「Swiss Med Wkly」2002年,第132巻,pp211−222
【非特許文献12】Morello,JPら「TIPS」2000年,第21巻,pp.466−469
【非特許文献13】Bross P.ら「Human Mut.」1999年,第14巻,pp.186−198
【非特許文献14】Dalemansら「Nature Lond.」1991年,第354号,526−528
【非特許文献15】PasykおよびFoskett「J.Cell.Biochem.」1995年,第270号:12347−50
【非特許文献16】Aridor Mら「Nature Med.」1999年,第5巻(7),pp745−751
【非特許文献17】Shastry,B.S.ら「Neurochem.International」2003年,第43巻,pp1−7
【非特許文献18】Rutishauser,J.ら「Swiss Med Wkly」2002年,第132巻,pp211−222
【非特許文献19】Morello,JPら「TIPS」2000年,第21巻,pp.466−469
【非特許文献20】Bross P.ら「Human Mut.」1999年,第14巻,pp.186−198
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、哺乳動物の細胞膜中におけるABCトランスポーターの活性を調整するために使用できる、ABCトランスポーター活性のモジュレータおよびその組成物が必要である。
【0023】
そのようなABCトランスポーター活性モジュレータを使用するABCトランスポーター仲介性疾患を処置する方法が必要である。
【0024】
哺乳動物のエキソビボ細胞膜において、ABCトランスポーター活性を調整する方法が必要である。
【0025】
哺乳動物の細胞膜においてCFTRの活性を調整するために使用できるCFTR活性のモジュレータが必要である。
【0026】
そのようなCFTR活性のモジュレータを使用する、CFTR−仲介性疾患の処置方法が必要である。
【0027】
エキソビボ哺乳動物の細胞膜において、CFTR活性を調整する方法が必要である。
【0028】
形質膜においてCFTRの活性および/または機能を強化するモジュレータが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0029】
(発明の要旨)
この発明の化合物およびその薬学的に受容可能な組成物が、ABCトランスポーター活性のモジュレータとして有用であることが今、発見された。
これらの化合物は、一般式I:
【0030】
【化10】

を有し、またはその薬学的に受容可能な塩である。式中、R、n、B、R、R、R、AおよびZは、一般的に記載し、以下のクラスおよびサブクラスに入る。
【0031】
これらの化合物および薬学的に受容可能な組成物は、種々の疾患、不全あるいは状態の処置または重症化の軽減のために有用である。疾患、不全あるいは状態として、嚢胞性線維症、遺伝性気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、タンパク質C欠乏症のような血管内凝固線溶症候群欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、家族性高コレステロール血症のような脂質プロセシング欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、無βリポ蛋白血症、I−細胞疾患/偽ハーラー症候群のようなリソソーム蓄積症、分泌性下痢または多発性嚢胞腎疾患、ムコ多糖症、ザントホフ/テイ−サックス病、クリグラー−ナジャーII型、多発性内分泌腺症/高インスリン症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠乏症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、グリカノシスCDG1型、遺伝性気腫、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT欠乏症、尿崩症(DI)、ニューロフィシンDI、腎性DI、シャルコー−マリー−ツース症候群、ペリツェウス−メルツバッハー病、アルツハイマー病のような神経変性疾患、パーキンソン病、筋萎縮性側策硬化症、進行性核上麻痺、ピック病、ハンティングトン病のような数種のポリグルタミン神経疾患、脊髄小脳性運動失調I型、脊髄延髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、および筋緊張性ジストロフィ、加えて遺伝性クロイツフェルト−ヤーコプ病(プリオンタンパク質プロセシング欠損による)のような海綿状脳症、ファブリー病、ストロイスラー−シャインカー症候群、COPD、眼乾燥疾患、およびシューグレン症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
(1.定義)
本明細書で使用される用語「ABCトランスポーター」は、少なくとも1つの結合性ドメインを含むABCトランスポータータンパク質またはそのフラグメントであって、タンパク質そのフラグメントは、インビボまたはインビトロで存在するものを意味する。本明細書で使用される用語「結合性ドメイン」は、モジュレータに結合することができるABCトランスポーター上の領域を言う。たとえば、Hwang,T.C.et al.,J.Gen.Physiol.(1998):111(3),477−90を参照。
【0033】
本明細書で使用される用語「CFTR」は、活性を部分的あるいは全体的に調整しうる、嚢胞性線維症経膜コンダクタンスモジュレータまたはその変異体を意味する。そのようなものとして、ΔF508CFTRおよびG551DCFTR(CFTR変異として、たとえば、http://www.genet.sickkids.on.ca/cftr/参照)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書で使用される用語「COPD」は、慢性閉塞性肺疾患を意味し、閉塞性慢性気管支炎および気腫を含む。
【0035】
本明細書で使用される用語「調整」は、測定可能な量で増加あるいは減少することを意味する。
【0036】
本発明の目的のため、化学的元素は、元素周期律表、CASバージョンおよびHandbook of Chemistry and Physics、第75版に従って同定される。さらに、有機化学の一般原則は、「Organic Chemistry」、Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999および「March’s Advanced Organci Chemistry」,5thEd.,Ed.:Smith,M.B. and March,J.,John Wiley&Sons,New York:2001,に記載されていて、ここに本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する。
【0037】
本明細書に記載するように、本発明の化合物は、場合によっては、1以上の置換基で置換されていてもよく、そのような置換基は、一般的に上記した、あるいは、本発明の特定のクラス、サブクラスおよび種によって例示する。語句「必要に応じて置換された」は、語句「置換されまたは置換されない」と互換的に使用されることは理解されるであろう。一般的に、用語「置換された」は、語句「必要に応じて(optionally)」が前についていてもいなくても、所定の構造内の水素が特定の置換基の残基で交換されることを言う。特に断らない限り、任意の置換基は、基の各置換しうる位置で置換基を有してよく、任意の構造における複数の位置が特定の基から選択される複数の置換基で置換される場合、該置換基は、各位置において、同じか違っていてもよい。本発明で想定される置換基の組み合わせは、適切な、あるいは化学的に実施可能な化合物の形成になるものが好ましい。本明細書で使用される用語「適切な」は、それらの製造、検出および、好ましくは、回収、精製および本明細書で記載した1以上の目的のための使用をする条件において、実質的に変化しない化合物を言う。ある実施形態では、適切な化合物または化学的に実施可能な化合物は、40℃以下の温度で水分の不存在下または他の化学反応性条件下に少なくとも1週間保たれた時、実質的に変化しないものである。
【0038】
本明細書で使用される用語「脂肪族」または「脂肪族基」は、直鎖(すなわち、分岐していない)または分岐状の、置換されまたは置換されていない炭化水素鎖であって、完全に飽和のまたは1以上の不飽和単位を含むもの、あるいは単環式、二環式または三環式の炭化水素であって、完全に飽和のあるいは1以上の芳香族ではない不飽和単位を含むもの(ここでは「炭素環式」「脂環式」または「シクロアルキル」とも言う)を意味し、分子の残りと1点の結合点を有する。他に特記しない限り、脂肪族基は、1〜20個の脂肪族炭素原子、すなわち((C−C20)アルキル)を含む。ある実施形態では、脂肪族基は、1〜10個の脂肪族炭素原子、すなわち((C−C10)アルキル)を含む。他の実施形態では、脂肪族基は、1〜8個の脂肪族炭素原子、すなわち((C−C)アルキルを含む。さらに他の実施形態では、脂肪族基は、1〜6個の脂肪族炭素原子、すなわち((C−C)アルキルを、またさらに別の実施形態では、脂肪族基は、1〜4個の脂肪族炭素原子、すなわち((C−C)アルキルを含む。ある実施形態では、「脂環式」(または「炭素環式」または「シクロアルキル」)は、C〜Cの炭化水素の単環式、またはC〜C12の炭化水素の二環式あるいは三環式であって、これらは、完全に飽和であるか、1以上の芳香族ではない不飽和単位を含み、分子の残りと単一の結合点を有し、前記二環式環システム中の任意の独立環は、3〜7員環である。適切な脂肪族基として、直鎖または分岐状の、置換または非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル基およびその(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルのような、ハイブリッドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用される用語「ヘテロ脂肪族」は、1または2個の炭素原子が、独立して、1個以上の酸素、イオウ、窒素、リンまたはケイ素で置換されている脂肪族基を意味する。ヘテロ脂肪族基は、置換あるいは非置換、分岐状あるいは非分岐状、環状あるいは非環状でもよく、「複素環」、「ヘテロシクリル」「ヘテロ脂環式」、および「複素環式」基も含んでもよい。
【0040】
本明細書で使用される用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロ脂環式」または「複素環式」は、1以上の環構成要素が独立してヘテロ原子から選択される、非芳香族、単環式、二環式または三環式の環システムを意味する。ある実施形態では、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロ脂環式」、「複素環式」基は、1個以上の環構成要素が独立して酸素、イオウ、窒素およびリンから選択される、ヘテロ原子である、3〜14個の環構成要素を有し、上記システム内の各環が3〜7個の環構成要素を有する。
【0041】
用語「ヘテロ原子」は、1個以上の酸素、イオウ、窒素、リンまたはケイ素(窒素、イオウ、リンまたはケイ素の任意の酸化された形、たとえば、(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリル中の)N、(ピロリジニル中の)NH、または(N置換ピロリジニル中の)NRのような任意の窒素または複素環式環の置換可能な窒素の四級化された形も含む)を意味する。
【0042】
本明細書で使用される用語「非飽和」は、1以上の不飽和単位を有する部分を言う。
【0043】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」または「チオアルキル」は、炭素主鎖に酸素(「アルコキシ」)またはイオウ(「チオアルキル」)原子を介して結合する、先に定義したアルキル基を言う。
【0044】
用語「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」、「ハロアルコキシ」は、アルキル、アルケニルまたはアルコキシが1個以上のハロゲン原子で置換されたものを意味する。用語「ハロゲン」はF、Cl、BrおよびIである。
【0045】
単独であるいはより大きな部分「アラルキル」、「アラルコキシ」、「アリールオキシアルキル」中の一部として使用される、用語「アリール」は、合計で5〜14個の環構成元素を有する単環式、二環式および三環式環システムであって、該システム中の少なくとも1つの環は芳香族であり、該システム中の各環は、3〜7個の環構成要素を含むものを言う。用語「アリール」は、用語「アリール環」と互換的に使用してもよい。また、用語「アリール」は以下に述べるヘテロアリール環システムを言うこともある。
【0046】
単独であるいはより大きな部分「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアリールアルコキシ」中の一部として使用される、用語「ヘテロアリール」は、合計で5〜14個の環構成元素を有する単環式、二環式および三環式環システムであって、該システム中の少なくとも1つの環は芳香族で、該システム中の少なくとも1つの環は1個以上のヘテロ原子を含み、該システム中の各環は、3〜7個の環構成要素を含むものを言う。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」または用語「複素環式芳香族」と互換的に使用してもよい。
【0047】
アリール(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなどを含む)またはヘテロアリール(ヘテロアラルキル、ヘテロアリールアルコキシなどを含む)基は、1以上の置換基を含んでもよい。アリールまたはヘテロアリール基の不飽和炭素原子上の適切な置換基は、ハロゲン;−R;−OR;−SR;1,2−メチレン−ジオキシ;1,2−エチレンジオキシ;Rで必要に応じて置換されたフェニル(Ph);Rで必要に応じて置換された−O(Ph);Rで必要に応じて置換された−(CH1−2(Ph)、Rで必要に応じて置換された−CH=CH(Ph)、−NO;−CN;−N(R;−NRC(O)R;−NRC(O)N(R;−NRCO;−NRNRC(O)R;−NRNRC(O)N(R;−NRNRCO;−C(O)C(O)R;−C(O)CHC(O)R;−CO;−C(O)R;−C(O)N(R;−OC(O)N(R;−S(O);−SON(R;−S(O)R;−NRSON(R;−NRSO;−C(=S)N(R;−C(=NH)−N(R;あるいは−(CH0−2NHC(O)Rから選択され、式中の各Rは、水素、必要に応じて置換された炭素数1〜6個の脂肪族、非置換の5〜6員のヘテロアリールまたは複素環式環、フェニル、−O(Ph)、または−CH(Ph)から選択される。上記定義とは別に、同じまたは相違する置換基上の2個の独立したRは、各Rが結合する原子と一緒になって独立して窒素、酸素、およびイオウから選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、3〜8員シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール環を形成してもよい。Rの脂肪族基の任意の置換基は、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、C1−4脂肪族、OH、O(C1−4脂肪族)、NO、CN、COH、CO(C1−4脂肪族)、O(ハロC1−4脂肪族)またはハロC1−4脂肪族から選択され、前述のRの各C1−4脂肪族基は置換されていない。
【0048】
脂肪族、ヘテロ脂肪族基、または非芳香族複素環式環は、1以上の置換基を含んでもよい。脂肪族またはヘテロ脂肪族基の、または非芳香族複素環式環の飽和炭素上の適切な置換基は、上記、アリールまたはヘテロアリール基の不飽和炭素で挙げたものから選択され、さらに、=O、=S、=NNHR、=NN(R、=NNHC(O)R、=NNHCO(アルキル)、=NNHSO(アルキル)または=NRを含み、各Rは、独立して、水素または必要に応じて置換された炭素数1〜6の脂肪族である。Rの脂肪族基上の任意の置換基は、NH、NH(C1−4脂肪族)、N(C1−4脂肪族)、ハロゲン、(C1−4)脂肪族、OH、O(C1−4)脂肪族)、NO、CN、COH、CO((C1−4)脂肪族)、O(ハロC1−4脂肪族)またはハロ(C1−4)脂肪族から選択され、前述のRの各(C1−4)脂肪族基は置換されていない。
【0049】
非芳香族複素環式環の窒素上の任意の置換基は、−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)C(O)R、−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(Rまたは−NRSO;式中、Rは、水素、必要に応じて置換された炭素数1−6の脂肪族、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換された−O(Ph)、必要に応じて置換されたCH(Ph)、必要に応じて置換された−(CH1−2(Ph);必要に応じて置換された−CH=CH(Ph);または酸素、窒素またはイオウから独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を有する非置換5〜6員ヘテロアリールまたは複素環式環から選択される。上記定義とは別に、同じまたは相違する置換基上の2個の独立したRは、各Rが結合する原子と一緒になって、独立して窒素、酸素、およびイオウから選択される0〜3個のヘテロ原子を有する、3〜8−員シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール環を形成してもよい。Rの脂肪族基またはフェニル環の任意の置換基は、NH、NH((C1−4)脂肪族)、N((C1−4)脂肪族)、ハロゲン、(C1−4)脂肪族、OH、O((C1−4脂肪族)、NO、CN、COH、CO((C1−4)脂肪族)、O(ハロ(C1−4)脂肪族)またはハロ((C1−4)脂肪族)から選択され、前述のRの各C1−4脂肪族基は置換されていない。
【0050】
用語「アルキリデン鎖」は、直鎖または分岐状の炭素鎖を言う。完全に飽和であっても、1以上の不飽和基を有してもよく、分子の残りと2点の結合点を有する。
【0051】
先に詳述したように、ある実施形態では、2個の独立したR(またはR、または本明細書中の他の任意の類似した変わりうる基、原子)が、その各変わりうる基、原子が結合する原子と一緒になって、それぞれ独立して窒素、酸素およびイオウから選択される、0〜3個のヘテロ原子を有する、3〜8員シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール環を形成する。2個の独立したR(またはR、または本明細書中の他の任意の類似した変わりうる基、原子)が、その各変わりうる基、原子が結合する原子と一緒になって形成する環の例として、これらに限定されないが、a)2個の独立したR(またはR、または本明細書中の他の任意の類似した変わりうる基、原子)が同じ原子に結合し、一緒になって環を形成する場合、たとえばN(R(式中、2つのRは、窒素原子と一緒になってピペリジン−1−イル、ピペラジン−1−イル、またはモルフォリン−4−イル基を形成し;b)2個の独立したR(またはR、または本明細書中の他の任意の類似した変わりうる基、原子)が違う原子に結合し、これらの原子と一緒になって環を形成する場合、たとえば、フェニル基が2個の
【0052】
【化11】

で置換され、これら2個のRは、それらが結合する酸素原子と一緒になって、縮合6−員酸素含有環:
【0053】
【化12】

を形成する。2個の独立したR(またはR、または本明細書中の他の任意の類似した変わりうる基、原子)が、その各変わりうる基、原子が結合する原子と一緒になって環を形成する場合、種々の他の環も形成することができ、上記した例示に限定されるものでないことは、理解されるであろう。
【0054】
また、特に明記しない限り、本明細書で示される構造は、その構造の全ての異性体(たとえば、鏡像異性、ジアステレオマーおよび幾何学的(または立体配置的))型を含む。たとえば、各不斉中心に関しR配座およびS配座、(Z)および(E)二重結合異性体、ならびに(Z)および(E)立体配置異性体が挙げられる。したがって、本化合物の混合物は、単一立体化学異性体とともに、鏡像異性、ジアステレオマーおよび幾何学的(または立体配置的)異性体の混合物も本発明の範囲内に包含される。特に明記しない限り、本発明化合物の全ての互変異性体も本発明の範囲内に包含される。さらに、特に明記しない限り、本明細書で示される構造は、また、1以上の同位体的に濃縮された原子の存在だけが異なる化合物を含むものである。たとえば、水素が重水素またはトリチウムで置換された、または炭素が13C−または14C−濃縮炭素で置換された本発明の化合物の構造をもつ化合物も、本発明の範囲内である。このような化合物は、たとえば、生物学的アッセイにおいて、分析ツールまたはプルーブとして有用である。
【0055】
(2.本発明の一般的な開示)
本発明は、式I:
【0056】
【化13】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩に関する。式中、
Aは、C(O)またはSO
およびRは、独立して、H、(C−C)アルキルおよびアリールから選択され、あるいは一緒になって(C−C)シクロアルキルまたは複素環を形成してもよく;
は、H、必要に応じてCN、NO、CF、OCF、OH、SR、S(O)R、SO、COOH、COOR、ORから選択される置換基で置換された(C−C)アルキル、またはRで必要に応じて置換されたフェニルであり;
Bは、アリールまたは複素環であり;
Zは、
【0057】
【化14】

(式中、Lは、(C−C)アルキリデン、−O−((C−C)アルキリデン)、((C−C)アルキリデン)−O−、または結合であり、L中のアルキリデンの2個までの炭素原子は独立してO、SまたはNで置換されてもよく;
Wは、アリール、複素環または(C−C)シクロアルキルである)であり;
mおよびnは、独立して、0〜5であり;
およびRは、独立して、R、R、R、RまたはRから選択される。
(式中、
は、オキソ、Rまたは((C−C)脂肪族)−Yであり;
nは0または1であり;
Yは、ハロ、CN、NO、CF、OCF、OH、SR、S(O)R、SO、NH、NHR、N(R、NR、N(R、COOH、COORまたはORであり;または隣接する環原子上の2個のRが一緒になって1,2−メチレンジオキシまたは1,2−エチレンジオキシを形成してもよく;
は、独立して、R、RまたはRから選択される2個までの置換基を含んでもよい脂肪族基であり;
は、独立して、R、R、RまたはRから選択される3個までの置換基を含んでもよい、脂環式、アリール、複素環式またはヘテロアリール環であり;
は、OR、OR、OC(O)R、OC(O)R、OC(O)OR、OC(O)OR、OC(O)N(R、OC(O)N(R、OC(O)N(R)、SR、SR、S(O)R、S(O)R、SO、SO、SON(R、SON(R、SONR、SO、SO、C(O)R、C(O)OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)N(R、C(O)N(R、C(O)N(R)、C(O)N(OR)R、C(O)N(OR)R、C(O)N(OR)R、C(O)N(OR)R、C(NOR)R、C(NOR)R、C(NOR)R、C(NOR)R、N(R、N(R、N(R)、NRC(O)R、NRC(O)R、NRC(O)R、NRC(O)R、NRC(O)OR、NRC(O)OR、NRC(O)OR、NRC(O)OR、NRC(O)N(R、NRC(O)NR、NRC(O)N(R、NRC(O)N(R、NRC(O)NR、NRC(O)N(R、NRSO、NRSO、NRSO、NRSO、NRSON(R、NRSON(R、NRSONR、NRSON(R、NRSONR、NRSON(R、N(OR)R、N(OR)R、N(OR)R、またはN(OR)Rであり;
は、3個までのR置換基を含んでもよい、脂環式、アリール、複素環式またはヘテロアリール環であり;
は、R置換基を含んでもよい、Hまたは脂肪族基であり;
は、脂環式、アリール、複素環式またはヘテロアリール環であり、各Rは、H、(C−C)直鎖または分岐状アルキル、(C−C)直鎖または分岐状のアルケニルまたはアルキニル、1,2−メチレンジオキシ、1,2−エチレンジオキシおよび(CH−Qから独立して選択される、2個までの置換基を含んでもよく;
Qは、ハロ、CN、NO、CF、OCF、OH、S−脂肪族、S(O)−脂肪族、SO−脂肪族、NH、NH(脂肪族)、N(脂肪族)、N(脂肪族)R、NHR、N(R、COOH、C(O)O−(脂肪族)およびO−脂肪族から選択され;
は、アミノ保護基である。
【0058】
用語「アミノ保護基」は、窒素原子に結合してもよい適切な化学基である。用語「保護する」は、指定されたアミノ基が適切な化学基(たとえばキャップ基)に結合することを言う。適切なアミノキャップ基の例は、T.W.Greene et al.,Protective Groups in Organic Synthesis,3d.Ed.,John Wiley and Sons(1999);L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994);L.Paquette,ed.Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)に記載され、本発明で使用される特定のある化合物が例示されている。
【0059】
式Iの化合物のある実施形態では、以下のものが挙げられる。
a)AがC(O)、Lが結合、Zがフェニル、RとRとが一緒になってシクロペンチルを形成し、Bがフェニルである場合、RおよびRは、メトキシではなく;
b)AがC(O)、Lが結合、Zがフェニル、RとRとが一緒になってシクロプロピルを形成し、Bがフェニルである場合、Rは水素ではない;
c)AがC(O)、Lが結合、Zがベンゾフラニル、RとRとが一緒になってシクロペンチルを形成し、Bがフェニルである場合、Rはメトキシではない;
d)AがC(O)、Lが結合、Zがフェニル、RとRとが一緒になってシクロペンチルを形成し、Bがフェニル、Rが水素である場合、Rはクロロではない;
e)AがC(O)、Lが結合、Zがフラニル、RとRとが一緒になってシクロペンチルを形成し、Bがフェニル、Rがメトキシである場合、Rはブロモではない;
f)AがC(O)、Lが結合、Zがフラニル、RとRとが一緒になってシクロペンチルを形成し、Bがフェニルである場合、Rは水素ではない;および
g)AがC(O)、Lが結合、Zがフェニル、RとRとが一緒になってシクロヘキシルを形成し、Bがフェニル、Rがメトキシ、nが2、Rがニトロである場合、mは2ではない。
【0060】
本発明の化合物のある実施形態では、RとRがそれぞれメチル、Rが水素、およびAがカルボニルである場合、以下の化合物が例示される。
【0061】
【化15−1】

【0062】
【化15−2】

別の実施形態では、本発明は、式II:
【0063】
【化16】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。式中、
Aは、C(O)またはSOであり;
およびRは一緒になって3〜6員シクロアルキル環または4−ピラニル環を形成し;
は、H、必要に応じて(C−C)アルキル、CN、NO、CF、OCF、OH、SR、S(O)R、SO、COOH、COOR、ORから選択される置換基で置換された(C−C)アルキル、またはRで必要に応じて置換されたフェニルであり;
Bは、フェニルであり;
Zは
【0064】
【化17】

であり、
(式中、
Lは、結合であり;
Wは、5−14員単環式、二環式または三環式複素環式またはヘテロアリール環であり;
mおよびnは、独立して、0〜5であり;または
Zは、ジフェニルメチル(式中、各フェニルは5個までのR置換基を有する);および
およびRは、独立して、R、R、R、RおよびRから選択される。
(式中、
は、オキソ、Rまたは((C−C)脂肪族)−Yであり;
nは0または1であり;
Yは、ハロ、CN、NO、CF、OCF、OH、SR、S(O)R、SO、NH、NHR、N(R、NR、COOH、COORまたはORであり;または隣接する環原子上の2個のR1が一緒になって1,2−メチレンジオキシまたは1,2−エチレンジオキシを形成し;
は、脂肪族基であり、各Rは、独立して、R、RまたはRから選択される2個までの置換基を含んでもよく;
は、独立して、R、R、RまたはRから選択される、3個までの置換基を含んでもよい、脂環式、アリール、複素環式またはヘテロアリール環であり;
は、OR、OR、OC(O)R、OC(O)R、OC(O)OR、OC(O)OR、OC(O)N(R、OC(O)N(R、OC(O)N(R)、SR、SR、S(O)R、S(O)R、SO、SO、SON(R、SON(R、SONR、SO、SO、C(O)R、C(O)OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)N(R、C(O)N(R、C(O)N(R)、C(O)N(OR)R、C(O)N(OR)R、C(O)N(OR)R、C(O)N(OR)R、C(NOR)R、C(NOR)R、C(NOR)R、C(NOR)R、N(R、N(R、N(R)、NRC(O)R、NRC(O)R、NRC(O)R、NRC(O)R、NRC(O)OR、NRC(O)OR、NRC(O)OR、NRC(O)OR、NRC(O)N(R、NRC(O)NR、NRC(O)N(R、NRC(O)N(R、NRC(O)NR、NRC(O)N(R、NRSO、NRSO、NRSO、NRSO、NRSON(R、NRSON(R、NRSONR、NRSON(R、NRSONR、NRSON(R、N(OR)R、N(OR)R、N(OR)R、またはN(OR)Rであり;
は、3個までのR置換基を含んでもよい、脂環式、アリール、複素環式またはヘテロアリール環であり;
は、Hまたは脂肪族であり、Rは、R置換基を含んでもよく;
は、脂環式、アリール、複素環式またはヘテロアリール環であり、各Rは、H、(C−C)直鎖または分岐状アルキル、(C−C)直鎖または分岐状のアルケニルまたはアルキニル、1,2−メチレンジオキシ、1,2−エチレンジオキシおよび(CH−Qから独立して選択される、2個までの置換基を含んでもよく;
Qは、ハロ、CN、NO、CF、OCF、OH、S−脂肪族、S(O)−脂肪族、SO−脂肪族、NH、NH(脂肪族)、N(脂肪族)、N(脂肪族)R、NHR、N(R、COOH、C(O)O−(脂肪族)およびO−脂肪族から選択され;
は、アミノ保護基であり;
ただし、
(i)RとRとが一緒になって4−ピラン環を形成し、Rが水素、AがC(O)であり、環WがRとmと一緒になって2−アミノ−ピラジン−3−イルを形成する場合、環Bは、(Rと一緒になって、フェニル、4−メチルフェニル、4−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、4−メトキシフェニル、2,4−ジフルオロフェニルまたは4−フルオロフェニルを形成しない;
(ii)RとRとが一緒になってシクロヘキシル環を形成し、Rが水素、AがC(O)およびLが2−メトキシ−ピリジン−3−イルの場合、環Bは(R)nと一緒になってフェニルを形成しない;
(iii)RとRとが一緒になってシクロブチル環を形成し、Rが水素、AがC(O)であり、環WがRおよびmと一緒になって2,5,7,8−テトラメチル−6−ヒドロキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−イルを形成する場合、環Bは(Rと一緒になって4−[(イミノ−チエン−2−イルメチル)アミノ]フェニルを形成しない;
(iv)RとRとが一緒になってシクロプロピル環を形成し、Rが水素、AがC(O)であり、環WがRおよびmと一緒になって2,5−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−1−メチル−5−オキソ−1H−ピロール−3−イルを形成する場合、環Bは(Rと一緒になってフェニルを形成しない;
(v)RとRとが一緒になってシクロプロピル環を形成し、Rが水素、AがC(O)であり、環WがRおよびmと一緒になって2,3,4,9−テトラヒドロ−3−[(3’−(2,6−ジイソプロピル)−ウレイド]−1H−カルバゾール−3−イルを形成する場合、環Bは、(Rと一緒になって4−クロロフェニルを形成しない;
(vi)RとRとが一緒になってシクロプロピル環を形成し、Rが水素、AがC(O)であり、環WがRおよびmと一緒になって9,10−ジヒドロ−9−オキソ−アクリジン−3−イルを形成する場合、環Bは(Rと一緒になって4−クロロフェニルを形成しない;
(vii)Rが水素、AがC(O)の場合、以下;
【0065】
【化18】

【0066】
【化19】

の化合物が除かれ、
(viii)RとRとが一緒になってシクロペンチル環を形成し、Rが水素、AがC(O)であり、環WがRおよびmと一緒になってジフェニルメチルを形成する場合、環Bは(Rと一緒になってフェニル、4−エトキシフェニル、4−ブトキシフェニル、4−イソブトキシフェニルまたは4−メトキシフェニルを形成しない。
【0067】
本発明の1実施形態では、AはC(O)である。あるいはAはSOである。
【0068】
1実施形態では、Rは水素である。あるいはRはC−Cアルキルである。
【0069】
他の実施形態では、RとRとが一緒になって4−ピラニル環を形成する。
【0070】
他の実施形態では、RとRとが一緒になって3〜6員シクロアルキル環を形成する。1実施形態では、RとRとが一緒になって5〜6員シクロアルキル環を形成する。
【0071】
他の実施形態では、RとRとが一緒になって5−員シクロアルキル環を形成する。または、RとRとが一緒になって6−員シクロアルキル環を形成する。
【0072】
他の実施形態では、Wは、必要に応じて置換されたインドリル、ベンゾフラニルまたはベンゾチエニルである。または、Wはインドール−2−イルまたはインドール−3−イルである。またはWはベンゾフラン−2−イルである。またはWはベンゾチエン−2−イルである。
【0073】
他の実施形態では、Wは、必要に応じて置換されたピラゾリルまたはインダゾリルである。
【0074】
他の実施形態では、Wは、必要に応じて置換されたピラゾール−3−イルまたはピラゾール−4−イルである。またはWは必要に応じて置換されたインダゾール−3−イルである。
【0075】
他の実施形態では、Wは必要に応じて置換されたフェニルである。
【0076】
他の実施形態では、Wは、O、SまたはNから選択される3個までのヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された6−員複素環式芳香族環である。ある実施形態では、Wはピリジルである。
【0077】
他の実施形態では、Zはジフェニルメチルである。
【0078】
ある実施形態では、Wは必要に応じて置換された、フラニル、チエニル、イソキサゾリルまたはピロリルから選択される環である。
【0079】
他の実施形態では、Wは必要に応じて置換された10〜12員二環式、複素環式芳香族環である。ある実施形態では、Wは、必要に応じて置換された、キノリニルまたはシンノリニル(cinnolinyl)から選択される環である。
【0080】
本発明の1実施形態では、RおよびRは、それぞれメチルである。
【0081】
好ましい実施形態によれば、Rは、アセチル、アリールスルフォニルまたはアルキルスルフォニルである。
【0082】
本発明の他の実施形態は、哺乳動物のABCトランスポーター仲介性疾患を処置する方法であって、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を含む組成物を該哺乳動物に投与する工程を含む方法を提供する。
【0083】
本実施形態の好ましい態様として、ABCトランスポーター仲介性疾患は、嚢胞性線維症、遺伝性気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、タンパク質C欠乏症のような血管内凝固線溶症候群欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、家族性高コレステロール血症のような脂質プロセシング欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、無βリポ蛋白血症、I−細胞疾患/偽ハーラー症候群のようなリソソーム蓄積症、分泌性下痢または多発性嚢胞腎疾患、ムコ多糖症、ザントホフ/テイ−サックス病、クリグラー−ナジャーII型、多発性内分泌腺症/高インスリン症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠乏症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、グリカノシスCDG1型、遺伝性気腫、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT欠乏症、尿崩症(DI)、ニューロフィシンDI、腎性DI、シャルコー−マリー−ツース症候群、ペリツェウス−メルツバッハー病、アルツハイマー病のような神経変性疾患、パーキンソン病、筋萎縮性側策硬化症、進行性核上麻痺、ピック病、ハンティングトン病のような数種のポリグルタミン神経疾患、脊髄小脳性運動失調I型、脊髄延髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症および筋緊張性ジストロフィ、並びに遺伝性クロイツフェルト−ヤーコプ病(プリオンタンパク質プロセシング欠損による)のような海綿状脳症、ファブリー病、ストロイスラー−シャインカー症候群、COPD、眼乾燥疾患またはシューグレン疾患から選択される。
【0084】
特に好ましい方法は疾患がCFの場合である。
【0085】
本発明他の実施形態は、
a.本発明の化合物と;
b.薬学的に受容可能なキャリアと;
c.粘液溶解剤、気管支拡張剤、抗生物質、抗感染薬、抗炎症剤、本発明の化合物とは違うCFTRモジュレータ、または栄養剤から選択される追加剤とを含む薬学的組成物を提供する。
【0086】
本発明の他の実施形態は、ABCトランスポーター活性を調整する方法であって、ABCトランスポーターを本発明の化合物に接触させる工程を含む方法を提供する。
【0087】
この実施形態の好ましい態様は、ABCトランスポーターまたはそのフラグメントが、インビボにあることである。他のこの実施形態の好ましい態様は、ABCトランスポーターまたはそのフラグメントがインビトロにあることである。他のこの実施形態の好ましい態様は、ABCトランスポーターがCFTRであることである。
【0088】
別の実施形態によれば、本発明は、細胞の膜内の機能的ABCトランスポーターの数を増やす方法であって、該細胞を式(I)の化合物に接触させる工程を含む方法を提供する。本明細書で使用される用語「機能的なABCトランスポーター」運搬活性が可能なABCトランスポーターを意味する。
【0089】
好ましい実施形態によれば、前記機能的なABCトランスポーターはCFTRである。
【0090】
本発明の他の実施形態は、生物学的サンプル内のABCトランスポーターまたはそのフラグメントの活性をインビトロまたはインビボで測定するために使用されるキットであって、
a.本発明の化合物を含む組成物と;
b.i)該組成物を生物学的サンプルに接触させ;
ii)ABCトランスポーターまたはそのフラグメントの活性を測定するための取り扱い説明書と、を含むキットを提供する。
【0091】
この実施形態の好ましい態様では、ABCトランスポーターがCFTRである。
【0092】
(3.代表的な化合物の説明)
先に一般的に記載したように、本発明の化合物に関し、RおよびRは、独立して、H、Cl−4アルキルおよびアリールから選択され、これらは一緒になって(C−C)シクロアルキルを形成してもよく;Bはアリールであり;Zは(C−C)アルキル、アリール、(C−Cアルキル)アリール、C−Cシクロアルキル、または((C1−4)アルキル)C5−7シクロアルキルである。
【0093】
本発明の好ましい実施形態では、AはC(O)で、Lは結合である。
【0094】
本発明の好ましい実施形態では、RとRとが一緒になって(C−C)シクロアルキルを形成する。
【0095】
本発明の特に好ましい実施形態では、RとRとが一緒になってシクロペンチルを形成する。
【0096】
他の本発明の特に好ましい実施形態では、RとRとが一緒になってシクロヘキシルを形成する。
【0097】
本発明の好ましい実施形態では、RとRとが一緒になって複素環を形成する。
【0098】
本発明の特に好ましい実施形態では、RとRとが一緒になってピラニルを形成する。ある実施形態では、RとRとが一緒になって4−ピラニルを形成する。
【0099】
さらに、他の本発明の特に好ましい実施形態では、RおよびRはHである。
【0100】
さらに他の本発明の特に好ましい実施形態では、RおよびRはメチルである。
【0101】
本発明の好ましい実施形態では、Bはアリールである。
【0102】
本発明の特に好ましい実施形態では、Bはフェニルである。
【0103】
本発明の好ましい実施形態では、Zはアリールである。
【0104】
他の本発明の好ましい実施形態では、Zはピリジニルである。
【0105】
他の本発明の好ましい実施形態では、Zはフェニルである。
【0106】
他の本発明の好ましい実施形態では、Zはベンゾフランである。
【0107】
他の本発明の好ましい実施形態では、Zはベンゾチオフェニルである。
【0108】
他の本発明の好ましい実施形態では、Zはインドリルである。
【0109】
他の本発明の好ましい実施形態では、Zはピラゾリルである。
【0110】
他の本発明の好ましい実施形態では、Zはフラニルである。
【0111】
他の本発明の好ましい実施形態では、Zはキノリニルである。
【0112】
他の本発明の好ましい実施形態では、Zはイソキノリニルである。
【0113】
他の本発明の好ましい実施形態では、Zはシンノリニルである。
【0114】
特に本発明の好ましい実施形態では、Zはベンゾフラニルであり、RとRとが一緒になってシクロヘキシルを形成する。
【0115】
他の特に好ましい実施形態では、Bは置換されたフェニルである。
【0116】
特に本発明の好ましい実施形態は、式IIで表される化合物であって、Zがベンゾフラニルであり、RとRとが一緒になってシクロヘキシルを形成し、Bが置換されたフェニルである化合物、
【0117】
【化20】

またはその薬学的に受容可能な塩
(式中、
は、独立して、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシおよびハロから、特にメチル、メトキシ、FまたはClから選択され;
nは0〜4;
は、独立して、ハロおよび(C−C)アルコキシから選択され;および
mは0〜5である)である。
【0118】
式IIIの化合物の好ましい実施形態は、mが3であり、Rがフルオロまたはメトキシ部分である化合物である。
【0119】
本発明の代表的な化合物を以下の表1に示す。
【0120】
【化21】

【0121】
【化22】

【0122】
【化23】

【0123】
【化24】

【0124】
【化25】

【0125】
【化26】

【0126】
【化27】

【0127】
【化28】

【0128】
【化29】

【0129】
【化30】

【0130】
【化31】

【0131】
【化32】

【0132】
【化33】

【0133】
【化34】

【0134】
【化35】

【0135】
【化36】

【0136】
【化37】

【0137】
【化38】

【0138】
【化39】

【0139】
【化40】

【0140】
【化41】

【0141】
【化42】

【0142】
【化43】

【0143】
【化44】

【0144】
【化45】

【0145】
【化46】

【0146】
【化47】

【0147】
【化48】

【0148】
【化49】

【0149】
【化50】

【0150】
【化51】

【0151】
【化52】

【0152】
【化53】

【0153】
【化54】

【0154】
【化55】

【0155】
【化56】

【0156】
【化57】

【0157】
【化58】

【0158】
【化59】

【0159】
【化60】

【0160】
【化61】

【0161】
【化62】

【0162】
【化63】

【0163】
【化64】

【0164】
【化65】

【0165】
【化66】

【0166】
【化67】

【0167】
【化68】

【0168】
【化69】

【0169】
【化70】

【0170】
【化71】

【0171】
【化72】

【0172】
【化73】

本発明の化合物は、当該技術分野で周知の方法によって製造することができる。本発明の化合物の代表的な製造方法を、以下のスキーム1〜3に示す。
【0173】
以下のスキーム1は、本発明の化合物用の、RおよびRが環化して環を形成したアミン中間体を製造する代表的な方法を示す。
【0174】
【化74】

i)XCH(CHn’X、NaH、THF(XはCl、Br、Iであり;n’は1〜4である)
ii)LiAlH、エーテル
必要に応じて置換された(R)2−フェニルアセトニトリルは、THFまたは類似の溶剤中で、適当なジハロ−アルキル化合物、水素化ナトリウムなどと反応する。得られたスピロ化合物は、水素化リチウムアルミニウムまたは類似の還元剤と反応して、所望の環状アミンを得る。
【0175】
以下のスキーム2は、本発明の化合物用の、RおよびRは環化せずに環を形成したアミン中間体を製造する代表的な方法を示す。
スキーム2:
【0176】
【化75】

i)RX、次いでRX、NaH、THF(XはCl、BrまたはI)
ii)LiAlH4、エーテル
下記スキーム3は、たとえば前記スキームIおよびスキームIIのアミン中間体を使用した、本発明の特定の化合物の代表的な製造方法である。
【0177】
【化76】

(i)EtN、CHCNまたはDMF、HATU、RNH(上記スキームlまたはスキーム2からのアミン中間体)
(ii)KHMDS、トルエンまたはDMF、ROH。
【0178】
他の好ましい実施形態によれば、ABCトランスポーター仲介性疾患は、嚢胞性線維症、COPD、喘息、慢性膵炎、肺炎、多発性嚢胞腎疾患、遺伝性気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、タンパク質C欠乏症のような血管内凝固線溶症候群欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、家族性高コレステロール血症のような脂質プロセシング欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、無βリポ蛋白血症、I細胞疾患/偽ハーラー症候群のようなリソソーム蓄積症、ムコ多糖症、ザントホフ/テイ−サックス病、クリグラー−ナジャーII型、多発性内分泌腺症/高インスリン症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠乏症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫から選択される。ER誤作動の後のクラスに関連する疾患は、グリカノシスCDG1型、遺伝性気腫、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT欠乏症、尿崩症(DI)、ニューロフィシンDI、腎性DI、シャルコー−マリー−ツース症候群、ペリツェウス−メルツバッハー病、アルツハイマー病のような神経変性疾患、パーキンソン病、筋萎縮性側策硬化症、進行性核上麻痺、ピック病、ハンティングトン病のような数種のポリグルタミン神経疾患、脊髄小脳性運動失調I型、脊髄延髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症および筋緊張性ジストロフィ、さらに遺伝性のクロイツフェルト−ヤーコプ病(プリオンタンパク質プロセシング欠損による)のような海綿状脳症、ファブリー病およびストロイスラー−シャインカー症候群である。
【0179】
更に好ましくは、ABCトランスポーター仲介性疾患は嚢胞性線維症である。
【0180】
本発明の他の実施形態は、嚢胞性線維症、COPD、喘息、慢性膵炎、肺炎、多発性嚢胞腎疾患、遺伝性気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、タンパク質C欠乏症のような血管内凝固線溶症候群欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、家族性高コレステロール血症のような脂質プロセシング欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、無βリポ蛋白血症、I細胞疾患/偽ハーラー症候群のようなリソソーム蓄積症、ムコ多糖症、ザントホフ/テイ−サックス病、クリグラー−ナジャーII型、多発性内分泌腺症/高インスリン症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠乏症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、グリカノシスCDG1型、遺伝性気腫、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT欠乏症、尿崩症(DI)、ニューロフィシンDI、腎性DI、シャルコー−マリー−ツース症候群、ペリツェウス−メルツバッハー病、アルツハイマー病のような神経変性疾患、パーキンソン病、筋萎縮性側策硬化症、進行性核上麻痺、ピック病、ハンティングトン病のような数種のポリグルタミン神経疾患、脊髄小脳性運動失調I型、脊髄延髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、および筋緊張性ジストロフィ、さらに遺伝性のクロイツフェルト−ヤーコプ病のような海綿状脳症、ファブリー病またはストロイスラー−シャインカー症候群から選択される疾患を処置する方法であって、哺乳動物に、本発明による化合物を含む組成物を有効量投与する工程を含む方法を提供する。
【0181】
更に好ましい実施形態によれば、そのように処置する疾患としては、タンジール病、シュタルガルト病1、老化性黄斑変ジストロフィー2、色素性網膜炎、不全リンパ球症候群、PFIC−3、貧血、進行性の肝内胆汁うっ滞−2、ダブリン−ジョンソン症候群、弾性線維偽黄色腫、嚢胞性線維症、家族性幼児持続性高インシュリン性低血糖症、副腎脳白質ジストロフィー、フィトステロール血、慢性閉塞性肺疾患、喘息、播種性気管支拡張症、慢性膵炎、男性不妊症、気腫または肺炎から選択される。
【0182】
他のより好ましい実施形態によれば、ABCトランスポーター仲介性疾患は、哺乳動物における分泌性下痢、COPDまたは多発性嚢胞腎疾患である。
【0183】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、嚢胞性線維症または分泌性下痢を処置する方法であって、哺乳動物に、本発明の、あるいは上記した好ましい実施形態の化合物を含む組成物を投与する工程を含む方法を提供する。最も好ましくは、疾患は嚢胞性線維症である。
【0184】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、必要とする哺乳動物の細胞膜(「増強」)におけるCFTR活性を調整する方法であって、哺乳動物に、上記した本発明の化合物を含む組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0185】
CFTR活性の増強において有用な本発明の化合物の好ましい実施形態として、上記した本発明の好ましい実施形態のものが挙げられる。
【0186】
別の実施形態によれば、本発明は、細胞の膜内の機能的なABCトランスポーターの数を増加する方法であって、細胞を本発明の化合物と接触させる工程を含む方法を提供する。本明細書で使用される用語「機能的なABCトランスポーター」は、運搬活性しうるABCトランスポーターを意味する。
【0187】
好ましい実施形態によれば、機能的なABCトランスポーターはCFTRである。
【0188】
機能的なABCトランスポーターの数の増加において有用な本発明の化合物の好ましい実施形態として、上記した本発明の化合物の好ましい実施形態のものが挙げられる。
【0189】
他の実施形態によれば、本発明は、アニオンチャネルの活性をインビトロまたはインビボで調整する方法であって、該チャネルを本発明の化合物と接触させる工程を含む方法を提供する。アニオンチャネルとしては、塩素イオンチャネルまたは炭酸水素イオンチャネルが好ましい。アニオンチャネルは塩素イオンチャネルがさらに好ましい。
【0190】
さらに他の実施形態によれば、本発明は、哺乳動物のアニオンチャネル仲介性疾患を処置する方法であって、哺乳動物に、本発明による化合物を含む組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0191】
他の実施形態によれば、本発明は、
(i)上記した本発明の化合物と;
(ii)薬学的に受容可能なキャリアと;
(iii)粘液溶解剤、気管支拡張剤、抗生物質、抗感染薬、抗炎症剤、本発明の化合物以外のCFTRモジュレータまたは栄養剤から選択される追加剤と、を含む薬学的組成物を提供する。
【0192】
前記薬学的組成物における本発明の化合物の好ましい実施形態は、先に記載したものである。
【0193】
他の実施形態によれば、本発明は、生物学的サンプル内のABCトランスポーターまたはそのフラグメントの活性をインビトロまたはインビボで測定するために使用されるキットであって、
(i)本発明の化合物を含む組成物と;
(ii)a)該組成物を生物学的サンプルに接触させ;
b)ABCトランスポーターまたはそのフラグメントの活性を測定するための取り扱い説明書と、を含むキットを提供する。
【0194】
好ましい実施形態によれば、キットは、CFTRの活性を測定するのに有用である。
【0195】
(4.一般的な合成方法)
本発明の化合物は、一般的に、以下の一般的スキームおよびそれに続く製造実施例に記載するように、類縁化合物に関する当業者に知られている方法によって製造してもよい。出発物質は、アルドリッチケミカル社、シグマケミカル社、ケンブリッジ社などの代表的な化学試薬供給会社から市販されている。市販されていない化合物は参考書「Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis」,Volumes 1〜15,John Wiley and Sons,1991;「Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds」第1〜5巻およびSupplementals,Elservier Science Publishers, 1989;およびOrganic.Reactions」,Volumes1−40,John Wiley and Sons,1991.に記載される以下の手順で、当業者によって、製造することができる。
【0196】
一般的に、本発明の化合物は、必要に応じて置換されたカルボンまたは酸塩化物と必要に応じて置換された一級アミンとの間での機能的なアミン形成によって製造される。
【0197】
また特に明記しない限り、本明細書で示される構造は、全ての構造の立体化学的形態、すなわち各不斉中心に関し、R配座およびS配座を含む。したがって、単一立体化学異性体も、鏡像異性およびジアステレオマー混合物も本発明の範囲内である。また特に明記しない限り、本明細書で示される構造は、1以上の同位体的に濃縮された原子の存在だけが異なる化合物を含むものである。たとえば、水素が重水素またはトリチウムで置換された、または炭素が13C−または14C−濃縮炭素で置換された本発明の化合物の構造をもつ化合物も、本発明の範囲内である。このような化合物は、たとえば、生物学的アッセイにおいて、分析ツールまたはプルーブとして有用である。
【0198】
(5.用途、製剤および投与)
(薬学的に受容可能な組成物)
先に論じたように、本発明は、ABCトランスポーターのモジュレータとして有用な、したがって、嚢胞性線維症、COPD、慢性膵炎、肺炎、多発性嚢胞腎疾患、遺伝性気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、タンパク質C欠乏症のような血管内凝固線溶症候群欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、家族性高コレステロール血症のような脂質プロセシング欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、無βリポ蛋白血症、I細胞疾患/偽ハーラー症候群のようなリソソーム蓄積症、ムコ多糖症、ザントホフ/テイ−サックス病、クリグラー−ナジャーII型、多発性内分泌腺症/高インスリン症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠乏症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、グリカノシスCDG1型、遺伝性気腫、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT欠乏症、尿崩症(DI)、ニューロフィシンDI、腎性DI、シャルコー−マリー−ツース症候群、ペリツェウス−メルツバッハー病、アルツハイマー病のような神経変性疾患、パーキンソン病、筋萎縮性側策硬化症、進行性核上麻痺、ピック病、ハンティングトン病のような数種のポリグルタミン神経疾患、脊髄小脳性運動失調I型、脊髄延髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症および筋緊張性ジストロフィ、さらに遺伝性のクロイツフェルト−ヤーコプ病のような海綿状脳症、ファブリー病またはストロイスラー−シャインカー症候群から選択される疾患を処置する上で、有用な化合物を提供する。
【0199】
したがって、本発明の他の態様では、薬学的に受容可能な組成物が提供され、これらの組成物は、本明細書に記載する任意の化合物を含み、場合によっては、薬学的に受容可能なキャリア、補助剤または賦形剤を含む。ある実施形態では、これらの組成物は、場合によっては、さらに1以上の追加の治療剤も含む。
【0200】
本発明の化合物のある物は、処置のために遊離した状態で存在することができ、あるいはそれらの適当な、薬学的に受容可能な誘導体の形でも存在しうることも理解されるであろう。本発明によれば、薬学的に受容可能な誘導体として、薬学的に受容可能な塩、エステル類、そのようなエステル類の塩、またはそれを必要とする患者への投与の際に、直接または間接的に提供しうる、任意の他の付加物または誘導体、またはそれらの代謝物あるいは残基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0201】
本明細書で使用される用語「薬学的に受容可能な塩」は、正常な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応なしに、ヒトおよび下等動物の組織との接触用途に適し、かつ合理的な利益/リスク比率にみあう塩を言う。「薬学的に受容可能な塩」は、本発明の化合物の任意の非毒性塩またはそのエステルであって、被投与者への投与の際、直接または間接的に本発明の化合物、その非抑制的な活性代謝物または残基を提供することができる塩を意味する。
【0202】
薬学的に受容可能な塩は当該技術分野でよく知られている。たとえば、S.M.Berge,et al.は、薬学的に受容可能な塩について詳細にJ.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1−19に記載し、ここに本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する。本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩は、適切な無機酸および有機酸および塩基から誘導されるものを含む。薬学的に受容可能な、非毒性酸付加塩の例として、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸のような無機酸または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、またはマロン酸のような有機酸と形成する、イオン交換のような当該技術分野で使用されている他の方法を使用した、アミノ基の塩が挙げられる。他の薬学的に受容可能な塩として、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ベンゾエート、重硫酸塩、ボロン酸塩、ブチル酸塩、カンファレート、カンファスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマール酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、りんご酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニル−プロピオン酸塩、リン酸塩、ピリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアネート、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。適当な塩基から誘導される塩として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、およびN(C14アルキル)4塩が挙げられる。また、本発明は、本明細書で開示する化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化も想定する。水あるいは油溶性または水あるいは油分散性製品は、そのような四級化によって得てもよい。代表的なアルカリ金属またはアルカリ土類金属として、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、などが挙げられる。さらに、薬学的に受容可能な塩として、適当な場合、ハライド、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩のような対イオンを使用して、形成される非毒性アンモニウム、四級アンモニウムおよびアミンカチオンが挙げられる。
【0203】
先に記載したように、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、追加として、本明細書で使用される薬学的に受容可能なキャリア、補助剤または賦形剤を含み、所望の特定の投与形態にあうように、ありとあらゆる溶剤、希釈剤または他の液状賦形剤、分散または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、防腐剤、個体結合剤、潤滑剤などを含む。Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版、E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は、薬学的に受容可能な組成物を製剤する際使用される種々のキャリアおよびその製造のための公知の技術を開示する。従来のキャリア媒体が本発明の化合物と相溶性がない場合、たとえば、望ましくない生物学的効果を生み出す、あるいは薬学的に受容可能な組成物の他の成分と有害なやり方で相互作用を起こす場合を除いて、前記媒体の使用は、本発明の範囲内であると考えられる。薬学的に受容可能なキャリアとして供しえる材料のいくつかの例示として、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レチシン、ヒト血清アルブミンのような血清タンパク質、リン酸塩のような緩衝物質、グリシン、ソルビン酸またはソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、またはプロタミン硫酸塩のような電解質液、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、トリケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック重合体、羊毛脂、ラクトース、グルコースおよびサッカロースのような糖類、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンのようなデンプン、セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよびセルロースアセテートのようなその誘導体、トラガカント粉末、モルト、ゼラチン、タルク、ココアバターおよび座剤用ワックスのような補形剤、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、および大豆油のような油、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールのようなグリコール、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのようなエステル類、寒天、マグネシウム水酸化物およびアルミニウム水酸化物のような緩衝液、アルギニン酸、物質除去蒸留水、等張生理食塩水、リンゲル液、エチルアルコールおよびリン酸塩緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムのような他の非毒性で相溶性のある潤滑剤、さらに着色剤、離型剤、塗料、甘味料、香味料、芳香剤、防腐剤、酸化防止剤もまた製剤者の判断によって本組成物に存在させることができる。
【0204】
(6.化合物および薬学的に受容可能な組成物の用途)
さらに本発明の他の態様は、ABCトランスポーター活性が関与する状態、疾患または不全を処置する方法を提供する。ある実施形態では、本発明は、ABCトランスポーター活性の欠乏症が関与する状態、疾患または不全を処置する方法であって、式Iの化合物を含む組成物を、それを必要とする対象、好ましくは哺乳動物に投与することを含む方法を提供する。
【0205】
ある好ましい実施形態では、本発明は、嚢胞性線維症、遺伝性気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、タンパク質C欠乏症のような凝固−フィブリン溶解性欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、家族性高コレステロール血症のような脂質プロセシング欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、無βリポ蛋白血症、I細胞疾患/偽ハーラー症候群のようなリソソーム蓄積症、分泌性下痢または多発性嚢胞腎疾患、ムコ多糖症、ザントホフ/テイ−サックス病、クリグラー−ナジャーII型、多発性内分泌腺症/高インスリン症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠乏症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、グリカノシスCDG1型、遺伝性気腫、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT欠乏症、尿崩症(DI)、ニューロフィシンDI、腎性DI、シャルコー−マリー−ツース症候群、ペリツェウス−メルツバッハー病、アルツハイマー病のような神経変性疾患、パーキンソン病、筋萎縮性側策硬化症、進行性核上麻痺、ピック病、ハンティングトン病のような数種のポリグルタミン神経疾患、脊髄小脳性運動失調I型、脊髄延髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症および筋緊張性ジストロフィ、さらに遺伝性のクロイツフェルト−ヤーコプ病(プリオンタンパク質プロセシング欠損による)のような海綿状脳症、ファブリー病、ストロイスラー−シャインカー症候群、COPD、眼乾燥疾患、またはシェーグレン病を処置する方法であって、哺乳動物に、式Iの化合物、または好ましくは前記実施形態の化合物を含む組成物を有効量投与する工程を含む方法を投与する。
【0206】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、嚢胞性線維症を処置する方法であって、哺乳動物に、本発明の化合物を含む組成物を有効量投与する工程を含む方法を提供する。
【0207】
本発明によれば、化合物または薬学的に受容可能な組成物の「有効量」は、嚢胞性線維症、遺伝性気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、タンパク質C欠乏症のような凝固−フィブリン溶解性欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、家族性高コレステロール血症のような脂質プロセシング欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、無βリポ蛋白血症、I細胞疾患/偽ハーラー症候群のようなリソソーム蓄積症、分泌性下痢または多発性嚢胞腎疾患、ムコ多糖症、ザントホフ/テイ−サックス病、クリグラー−ナジャーII型、多発性内分泌腺症/高インスリン症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠乏症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、グリカノシスCDG1型、遺伝性気腫、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT欠乏症、尿崩症(DI)、ニューロフィシンDI、腎性DI、シャルコー−マリー−ツース症候群、ペリツェウス−メルツバッハー病、アルツハイマー病のような神経変性疾患、パーキンソン病、筋萎縮性側策硬化症、進行性核上麻痺、ピック病、ハンティングトン病のような数種のポリグルタミン神経疾患、脊髄小脳性運動失調I型、脊髄延髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症および筋緊張性ジストロフィ、さらに遺伝性のクロイツフェルト−ヤーコプ病(プリオンタンパク質プロセシング欠損による)のような海綿状脳症、ファブリー病、ストロイスラー−シャインカー症候群、COPD、眼乾燥疾患、またはシェーグレン病を処置するまたは重症化を軽減するために有効な量である。
【0208】
本発明の方法による化合物および組成物は、嚢胞性線維症、遺伝性気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、タンパク質C欠乏症のような凝固−フィブリン溶解性欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、家族性高コレステロール血症のような脂質プロセシング欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、無βリポ蛋白血症、I細胞疾患/偽ハーラー症候群のようなリソソーム蓄積症、分泌性下痢または多発性嚢胞腎疾患、ムコ多糖症、ザントホフ/テイ−サックス病、クリグラー−ナジャーII型、多発性内分泌腺症/高インスリン症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠乏症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、グリカノシスCDG1型、遺伝性気腫、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT欠乏症、尿崩症(DI)、ニューロフィシンDI、腎性DI、シャルコー−マリー−ツース症候群、ペリツェウス−メルツバッハー病、アルツハイマー病のような神経変性疾患、パーキンソン病、筋萎縮性側策硬化症、進行性核上麻痺、ピック病、ハンティングトン病のような数種のポリグルタミン神経疾患、脊髄小脳性運動失調I型、脊髄延髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症および筋緊張性ジストロフィ、さらに遺伝性のクロイツフェルト−ヤーコプ病(プリオンタンパク質プロセシング欠損による)のような海綿状脳症、ファブリー病、ストロイスラー−シャインカー症候群、COPD、眼乾燥疾患またはシェーグレン病を処置するまたは重症化を軽減するために有効な任意の量および任意の投与経路を使用して投与されてもよい。要求される正確な量は、対象によって異なり、対象の種、年齢および一般的状態、感染重症化の度合い、特定の剤、投与の形態などに依る。本発明の化合物は、投与を容易かつ用量を均一化するために単位用量形態で製剤されるのが好ましい。本明細書で使用される表現「単位用量形態」は、処置すべき患者にとって適当な剤の物理的に分離する単位を言う。しかし、本発明の化合物および組成物の合計日用量は、正当な医学的判断の範囲内で担当医によって決定されることは理解されるであろう。個々の患者または生体のための特定の有効用量レベルは、処置すべき不全および不全の重症化の度合い;使用する特定の化合物活性;使用する特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的健康状態、性および食習慣;使用する特定の化合物の投与時間、投与経路および排泄経路;処置期間;使用する特定の化合物と組み合わせてあるいは同時に使用される薬剤など、薬剤業界でよく知られている要因を始めとする、種々の要因に依って決まる。本明細書で使用される用語「患者」は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0209】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、ヒトおよび他の動物に、処置すべき感染の重症化の度合いに応じて、経口的に、直腸経由で、非経口的に、大槽内に、膣内的に、腹腔内的に、局所的に(散剤、外用薬、または点滴として)、経口用スプレーまたは鼻スプレーとして口腔的に投与することができる。ある実施形態では、本発明の化合物は、所望の治療効果を得るために、経口的あるいは非経口的に、約0.01mg/kg〜約50mg/kg、好ましくは約1mg/kg〜約25mg/対象体重kg/日の用量レベルで、1日1回以上投与されてもよい。
【0210】
経口投与のための液体投与形態は、薬学的に受容可能な乳剤、微乳剤、溶液、懸濁剤、シロップおよびエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。活性化合物に加えて、液体投与形態では、たとえば、水またはその他の溶剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ギ酸ジメチルのような可溶化剤および乳化剤、油類(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタン脂肪酸エステル類、およびこれらの混合物のような、当該技術分野で一般的に用いられる不活性希釈剤を含んでもよい。また不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味料、香味料および芳香剤のような補助剤も含むことができる。
【0211】
注射用製剤、たとえば、無菌の注射用水性または油性懸濁剤は、適切な分散剤または湿潤剤、および懸濁剤を用いて、公知の技術によって製剤してもよい。また、無菌の注射用製剤は、非毒性で非経口的に許容しうる希釈剤または溶剤中の、たとえば溶液として1,3−ブタンジオール中の無菌の注射用溶液、懸濁剤または乳剤であってもよい。使用してもよい、許容しうる賦形剤および溶剤の中でも、水、リンガー液、U.S.P.および等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。さらに、無菌の不揮発性油は、溶剤または懸濁溶媒として従来より使用されている。この目的のため、合成モノ−またはジグリセリドを始めとする任意の無刺激性不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸のような脂肪酸も注射用製剤において使用される。
【0212】
注射用製剤は、たとえば、細菌固定フィルターを使用するろ過によって、あるいは使用前に無菌水または他の無菌注射用媒体に溶解または分散することのできる無菌固体組成物の形で、滅菌剤を導入することによって、滅菌することができる。
【0213】
本発明の化合物の効果を長引かせるために、皮下注射または筋肉注射で化合物の吸収をゆっくり行うことがしばしば望まれる。これは、水への溶解度が低い結晶性または無定形材料の液状懸濁剤を使用することによって達成できるかもしれない。化合物の吸収速度は、その溶解速度に依り、すなわち、結晶サイズおよび結晶型に依る。あるいは、化合物の非経口的投与型吸収の遅延は、油系賦形剤中に化合物を溶解または懸濁することによって達成される。注射用デポー形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドのような生分解性重合体中で、化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって造られる。化合物の重合体に対する比および使用する特定の重合体の性質によって、化合物放出の速度を調整することができる。他の生分解性重合体の例として、ポリ(オルトエステル類)およびポリ(無水物)が挙げられる。また、デポー注射用製剤は、化合物を体組織と相溶性のあるリポソームまたはマイクロ乳剤中に密閉することによって製造される。
【0214】
直腸または膣経由投与用の組成物としては、ココアバター、ポリエチレングリコールのような適切な無刺激性賦形剤やキャリアと本発明の化合物とを混合することによって製造することのできる座剤、または室温では固体だが体温で液体になり、したがって、肛門または膣腔で融解して活性化合物を放出する座剤ワックスが好ましい。
【0215】
経口投与用の固形の剤形としては、カプセル、錠剤、丸薬、粉剤、および顆粒剤が挙げられる。そのような固形の剤形では、活性化合物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸カルシウムのような不活性な薬学的に受容可能な賦形剤またはキャリアおよび/またはa)デンプン、ラクトース、サッカロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸のような充填剤または増量剤、b)たとえば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、サッカロースおよびアカシアのようなバインダー、c)グリセロールのような保湿剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギニン酸、特定のケイ酸塩、ケイ酸塩および炭酸ナトリウムのような崩解剤、e)パラフィンのような溶液緩染剤、f)四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤、g)たとえば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートのような湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイトクレーのような吸収剤、およびi)タルク、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、固体状ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムのような潤滑剤、およびこれらの混合物の少なくとも1つと混合される。またカプセル剤、錠剤および丸薬の場合、用剤形は、緩衝剤を含んでもよい。
【0216】
また、類似の型の固形組成物は、ラクトースまたは乳糖、および高分子ポリエチレングリコールなどとしてそのような賦形剤を使用する柔らかいあるいは硬いゼラチンカプセルにおいて、充填剤として使用してもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬および顆粒剤の固形の剤形は、腸溶コーティングや製剤当該技術分野でよく知られている他の皮膜のような皮膜および外皮によって製造することができる。それらは、場合によっては乳白剤を含んでもよく、また活性成分のみを放出する組成物または腸管のある部分では、優先的に、場合によっては徐放的に放出する組成物であってもよい。使用することのできる埋め込み組成物の例として、重合体物質およびワックスが挙げられる。また、類似の型の固体組成物は、ラクトースまたは乳糖、および高分子ポリエチレングリコールなどとしてそのような賦形剤を使用する柔らかいあるいは硬いゼラチンカプセルにおいて、充填剤として、使用してもよい。
【0217】
また活性化合物は、上記した1以上の賦形剤とともに、マイクロカプセル化された形であってもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬、および顆粒剤の固形の剤形は、腸溶コーティング、放出調整皮膜、および製剤当該技術分野でよく知られている他の皮膜のような皮膜および外皮によって製造することができる。そのような固形の剤形では、活性化合物を、サッカロース、ラクトースまたはデンプンのような不活性希釈剤の少なくとも1つと混ぜ合わせてもよい。そのような剤形は、また、通常の慣例のように、不活性希釈剤以外の追加の物質、たとえば、錠剤成形用潤滑剤およびステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースのような他の錠剤成形用助剤を含んでもよい。カプセル、錠剤、および丸薬の場合、剤形は、また、緩衝剤を含んでもよい。それらは、場合によっては乳白剤を含んでもよく、また活性成分のみを放出する組成物または腸管のある部分では、優先的に、場合によっては徐放的に放出する組成物であってもよい。使用することのできる埋め込み組成物の例として、重合体物質およびワックスが挙げられる。
【0218】
本発明の化合物の局所または経皮的投与の剤形として、外用薬、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉剤、溶液、スプレー剤、吸入製剤またはパッチが挙げられる。活性成分を、無菌の条件の下、薬学的に受容可能なキャリアおよび任意の必要な防腐剤または緩衝材と、必要に応じて混合する。眼用製剤、点耳剤、点眼剤もまた本発明の範囲内である。さらに、本発明は、化合物を体に運搬する際、調整された運搬を提供する利点を加える経皮的パッチの使用も意図する。そのような剤形は、適切な媒体中の化合物を溶解または分配することによって製造する。また、吸収強化剤は、皮膚を通して化合物を流れていくのを増大するために、使用することができる。その速度は、速度調整膜を置くことによって、または重合体マトリックスまたはゲル中の化合物を拡散することによって、調整することができる。
【0219】
先に一般的に記載したように、本発明の化合物は、ABCトランスポーターのモジュレータとして有用である。したがって、どのような特定の理論に拘泥されるものではないが、該化合物および組成物は、ABCトランスポーターの過活性または不活性が、疾患、状態または不全にかかわっているその疾患、状態または不全を処置するまたは重症化の度合いを軽減するために、特に有用である。ABCトランスポーターの過活性または不活性が疾患、状態または不全に関わっている場合、その疾患、状態または不全も、また、「ABCトランスポーター仲介性疾患、状態または不全」と言う。したがって、他の態様では、本発明は、ABCトランスポーターの過活性または不活性が疾患状態に関わっている疾患、状態または不全を処置するまたは重症化の度合いを軽減する方法を提供する。
【0220】
ABCトランスポーターのモジュレータとして本発明で利用される化合物の活性は、当該技術分野で一般的に記載されている方法および本明細書の実施例によって分析してもよい。
【0221】
また、本発明の化合物および薬学的に受容可能な組成物は、複合治療においても使用することができる。すなわち、化合物および薬学的に受容可能な組成物は、1以上の他の所望の治療または医学的処置と同時に、またはその前あるいは後に、投与することができることは理解されるであろう。複合治療体制において使用される治療(治療または処置)の特定の組み合わせは、所望の治療および/または処置、および達成すべき所望の治療効果の適合性を考慮に入れられる。使用される治療が、同じ不全のために望まれる効果を達成する(たとえば、本発明の化合物が、同じ不全を治療するために使用されるほかの剤と同時に投与される場合)、あるいは、違う効果を達成する(たとえば、任意の副作用を抑える)ことは理解されるであろう。本明細書で使用されるように、特定の疾患または状態を治療するまたは阻害するために、通常投与される追加の治療剤は、「治療されている疾患または状態のために適当なものである」として知られている。
【0222】
本発明の組成物中に存在する追加の治療剤の量は、その治療剤を活性剤としてのみ含む組成物で普通に投与される量を超えない。開示した組成物中に存在する追加の治療剤量は、その治療剤を活性剤としてのみ含む組成物で普通に投与される量の約50%〜100%の範囲が好ましい。
【0223】
また、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な組成物は、プロテーゼ、人工弁、人工血管、ステントおよびカテーテルのような埋込み式医療装置を塗布するための組成物に加えてもよい。したがって、他の態様で、本発明は、埋込み式装置を塗布する組成物であって、先に一般的に記載した本発明の化合物、および本明細書のクラスおよびサブクラスと、埋込み式装置を塗布するのに適切なキャリアとを含む組成物も含む。さらに他の態様では、本発明は、先に一般的に記載した本発明の化合物、および本明細書のクラスおよびサブクラスと、埋込み式装置を塗布するのに適切なキャリアとを含む組成物が塗布された埋込み式装置も含む。適切な塗膜、および塗布された埋込み式装置の一般的な製造法は、米国特許第6,099,562号明細書;第5,886,026号明細書;および第5,304,121号明細書に記載されている。塗膜としては、典型的には、ヒドロゲル重合体ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレンビニルアセテートおよびこれらの混合物のような生体適合性重合体材料が挙げられる。場合によっては、塗膜をさらに、フルオロケイ素樹脂、多糖類、ポリエチレングリコール、リン脂質またはこれらの組み合わせのような適切なトップコートによって覆い、組成物の放出特性を調整してもよい。
【0224】
本発明の他の態様は、生物学的サンプルまたは患者(たとえばインビトロまたはインビボで)において、ABCトランスポーター活性を調整することに関し、該方法は、本発明の化合物または該化合物を含む組成物を患者に投与する、または生物学的サンプルと接触させることを含む。本明細書で使用される用語「生物学的サンプル」は、細胞培養物またはその抽出物;哺乳動物またはその抽出物から得た生検材料;および血液、唾液、尿、糞便、精液、涙、または他の体液またはその抽出物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0225】
生物学的サンプルにおけるABCトランスポーター活性の変調は、当業者に知られている種々の目的のために有用である。そのような目的の例として、生物学および病理学上の現象におけるABCトランスポーターの研究、およびABCトランスポーターの新しいモジュレータの比較評価などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0226】
さらに他の実施形態では、アニオンチャネルの活性をインビトロまたはインビボで調整する方法であって、チャネルを本発明の化合物と接触させる工程を含む方法を提供する。好ましい実施形態では、アニオンチャネルは、塩素イオンチャネルまたは炭酸水素イオンチャネルである。他の好ましい実施形態では、アニオンチャネルは、塩素イオンチャネルである。
【0227】
別の実施形態によれば、本発明は、細胞の膜内の機能的なABCトランスポーターの数を増やす方法であって、細胞を本発明の化合物と接触させる工程を含む方法を提供する。本明細書で使用される用語「機能的なABCトランスポーター」は、運搬活性可能なABCトランスポーターを意味する。好ましい実施形態では、機能的なABCトランスポーターはCFTRである。
【0228】
他の好ましい実施形態によれば、ABCトランスポーターの活性は、膜内外電圧電位を測定することによって測定する。生物学的サンプル内の通る電圧電位の測定は、光学膜電位アッセイまたは他の電気生理学的方法のような任意の当該技術分野で公知の方法を使用してよい。
【0229】
光学膜電位アッセイは、GonzalezおよびTsienによって記載された電圧感応性FRETセンサー(Gonzalez,J.E.and R.Y.Tsien(1995)「Voltage sensing by fluorescence resonance energy transfer in single cells」Biophys J69(4):1272−80,およびGonzalez,J.E.and R.Y.Tsien(1997)「Improved indicators of cell membrane potential that use fluorescence resonance energy transfer」Chem Biol4(4):269−77参照)を、電圧/イオンプローブリーダー(VIPR)(Gonzalez,J.E.,K.Oades,et al.(1999)「Cell−based assays and instrumentation for screening ion−channel targets」Drug Discov Today4(9):431−439参照)のような蛍光変化を測定する機器設備と組み合わせて利用する。
【0230】
これらの電圧感応性アッセイは、膜溶解性、電圧感応性染料DiSBAC2(3)と蛍光形質膜の外葉に結合し、FRETドナーとして作用する、リン脂質CC2−DMPEとの間の蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)の変化に基礎を置く。膜電圧(Vm)の変化は、負に帯電したDiSBAC2(3)を、形質膜を通って再分布させ、CC2−DMPEからのエネルギー転移の量は、それに従う。蛍光発光の変化は、一体化された液体ハンドラーであって、96−または384−ウェルマイクロタイタープレート中で細胞スクリーンを行うように設計された蛍光検出器である、VIPRTMIIを使用してモニタリングできる。
【0231】
他の態様では、本発明は、生物学的サンプル内のABCトランスポーターまたはそのフラグメントの活性をインビトロまたはインビボで測定するためのキットであって、(i)本発明の化合物を含む組成物と;ii)a)該組成物を生物学的サンプルに接触させ;b)ABCトランスポーターまたはそのフラグメントの活性を測定するための取り扱い説明書とを含むキットを提供する。1実施形態では、該キットは、さらに、a)追加の組成物を生物学的サンプルと接触させ、b)追加の化合物の存在下でABCトランスポーターまたはそのフラグメントの活性を測定し、c)追加の化合物の存在下で、ABCトランスポーターの活性を、本発明の組成物の存在下でのABCトランスポーターの濃度と比較するための取り扱い説明書を含む。好ましい実施形態では、キットはCFTRの濃度を測定するために使用される。
【0232】
本明細書に記載の発明を更に詳しく理解するために、以下の実施例を挙げる。これらの実施例は説明を目的とするためだけに挙げられるものであり、どのような方法であれ、本発明を限定するように解釈されるのではないことは、理解されるべきである。
【実施例】
【0233】
(一般的手順)
全ての試薬および溶剤は、さらに精製することなく受け取ったまま使用した。薄層クロマトグラフィーは、EMサイエンス社製の蛍光染料をプレコートした、裏がガラスのシリカゲル60プレート上で行った。マススペクトル分析は、陽性モードで、PE SCIEX EX150マススペクトロメーター上で行った。純度は観察された全イオン電流によって、紫外線吸収は、220nmおよび254nmで測定した。
【0234】
(実施例1)
(代表的な特定アミンの製造)
(C−[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンチル]−メチルアミン)
250mL丸底フラスコ中で、(3,4−ジメトキシフェニル)−アセトニトリル(5.00g、28.2mmol)を60mLの無水テトラヒドロフラン中に溶解した。水素化ナトリウム(2.03g、84.6mmol)をゆっくり加え、反応混合物を50〜60℃に暖めた。次いで、1,4−ジクロロブタン(4.30g、33.9mmol)を加え、反応混合物を加熱し、16時間還流した。1,4−ジクロロブタン(4.30g、33.9mmol)の追加のアリコートを加え、反応混合物をさらに24時間還流した。反応混合物を室温まで冷却し、メタノールをゆっくり加えて反応停止させた。反応混合物を蒸発乾固し、シリカゲルによるカラムクロマトグラフィーによって精製し、淡黄色油状物(1.61g、6.98mmol、24.8%)を得た。得られた1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンタンカルボニトリル(363mg、1.57mmol)を乾燥エーテル(4mL)に溶解し、窒素雰囲気下で0℃に冷却した。水素化リチウムアルミニウム1.57mL、エーテル中1M)をゆっくり加え、反応混合物を室温まで暖め、16時間撹拌した。反応混合物にメタノールをゆっくり加えて反応を停止した。反応混合物を飽和ナトリウム塩素イオン水溶液で洗浄し、分離し、蒸発乾固し、無色油状物(356mg、1.38mmol、87.9%)ESI−MS m/z計算値:235.3、測定値:236.2(M+1) 保持時間:1.64分
([2−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−メチル]−プロピルアミン)
3,4−ジメトキシフェニルアセトニトリル(lg、5.64mmol)から出発して、C−[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンチル]−メチルアミンの製造で報告した手順と類似の手順で、250mg(収率:21%、2ステップ)の[2−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−メチル]−プロピルアミンを無色油状物として得た。ESI−MS m/z 計算値:209.3、測定値:
【0235】
【化77】

(C−[(1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロヘキシル]−メチルアミン)
250mLの丸底フラスコ中で、(3,4−ジメトキシフェニル)−アセトニトリル(5.00g、28.2mmol)を60mLの無水テトラヒドロフランに溶解した。水素化ナトリウム(2.03g、84.6mmol)をゆっくり加え、反応混合物を50〜60℃に暖めた。次いで、1,4−ジクロロペンタン(4.78g、33.9mmol)を加え、反応混合物を加熱し、16時間還流した。反応混合物を室温まで冷却し、メタノールをゆっくり加えて反応停止した。反応混合物を蒸発乾固し、シリカゲルによるカラムクロマトグラフィーで精製し、淡黄色油分(3.65g、14.9mmol、52.8%)を得た。得られた1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロヘキサンカルボニトリル(2.00g、8.15 mmol)を乾燥エーテル(40mL)に溶解し、窒素雰囲気下で0℃に冷却した。水素化リチウムアルミニウム(8.15mL、エーテル中1M)をゆっくり加え、反応混合物を室温まで暖め、16時間撹拌した。反応混合物を0℃まで冷却し、0.34mLの水、0.34mLの15%水酸化ナトリウム、次いでさらに1.4mLの水で反応を停止した。次いで、反応混合物をセライトでろ過し、水、および飽和ナトリウム塩素イオン水溶液で洗浄した。ろ液を蒸発乾固し、無色油状物(1.91g、7.66mmol、94.0%)を得た。ESI−MS m/z計算値:249.2、測定値:250.2(M+1) 保持時間:1.76分
(実施例2)
(式Iの代表的な化合物の製造)
(ベンゾフラン−2−カルボン酸[1−(3,4−ジメトキシフェニル)シクロペンチルメチル]−アミド)
C−[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンチル]−メチルアミン(141mg、0.600mmol)をトリエチルアミン(167μL、1.20mmol)を含む無水1,4−ジオキサン(2mL)に溶解した。次いで、ベンゾフラン−2−カルボニル塩素イオン(108mg、0.600mmol)を加え、反応混合物を16時間撹拌した。反応混合物をろ過し、蒸発乾固し、ヘキサン中5〜50%の酢酸エチル勾配を使用して、シリカゲルによるカラムクロマトグラフィーで精製した。純生成物画分を集め、蒸発乾固し、白色固体(0.1775g、0.4678mmol、78.0%)を得た。ESI−MS m/z計算値:379.5、測定値:380.2(M+1)、保持時間:3.36分。
【0236】
【化78】

(ベンゾフラン−2−カルボン酸[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロヘキシルメチル]−アミド)
C−[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロヘキシル]−メチルアミン(276mg、1.12mmol)およびベンゾフラン−2−カルボニルクロライド(223mg、1.23mmol)を6mLのトリエチルアミン含有1,4−ジオキサン(312μL、2,24mmol)に0℃で溶解した。反応混合物を蒸発乾燥固し、ジクロロメタンに再溶解し、1M塩酸、1M水酸化ナトリウムおよび水酸化ナトリウムの飽和水溶液で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発乾固した。次いで、ヘキサン中0〜20%の酢酸エチル勾配を使用して、粗成生物をシリカゲルによるカラムクロマトグラフィーで精製した。純生成物画分を組み合わせ、それを蒸発乾固し、白色固体(195mg、0.496mmol、44.2%)を得た。ESI−MS m/z計算値:393.2、測定値:394.2(M+1) 保持時間:2.96分。
【0237】
【化79】

(キノリン−2−カルボン酸[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンチルメチル]−アミド)
キノリン−2−カルボン酸(0.502g、2.90mmol)およびC−[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンチル]−メチルアミン(0.678g、2.90mmol)をトリエチルアミン(894μL、6.38mmol)含有アセトニトリル(20mL)に溶解した。O−(7−アゾベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(1.54g、4.06mmol)を加え、溶液を16時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固し、ヘキサン中0〜40%の酢酸エチル勾配を使用して、シリカゲルによるカラムクロマトグラフィーで精製した。純生成物画分を組み合わせ、蒸発乾固し、白色固体(0.426g、1.09mmol、37.7%)を得た。ESI−MS m/z計算値:390.2、測定値:391.2(M+1) 保持時間:3.94分。
【0238】
【化80】

(2−フルオロ−N−フェネチル−ニコチンアミド)
2−フルオロ−ニコチン酸(0.793g、5.59mmol)およびフェネチルアミン(0.705mL、5.59mmol)をトリエチルアミン(1.56mL、11.2mmol)含有アセトニトリル(20mL)に溶解した。O−(7−アゾベンゾトリアゾ−ル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(2.97g、7.83mmol)を加え、溶液を16時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固し、ヘキサン中0〜40%の酢酸エチルの勾配を使用して、シリカゲルによるカラムクロマトグラフィーで精製した。純生成物画分を組み合わせ、蒸発乾固し、白色固体(0.196g、0.802mmol、14.3%)を得た。ESI−MS m/z計算値:244.1、測定値:245.2(M+1) 保持時間:2.76分。
【0239】
(2−ブトキシ−N−フェネチルニコチンアミド)
2−フルオロ−N−フェネチルニコチンアミド(196mg、0.802mmol)、n−ブタノール(700μL、7.65mmol)およびカリウムビス(トリメチルシリル)アミド(トルエン中2.5mL、0.5M)を混合し、室温で5分間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固し、ヘキサン中0〜20%の酢酸エチル勾配を使用して、シリカゲルによるカラムクロマトグラフィーで精製した。純生成物画分を組み合わせ、蒸発乾固し、無色油状物(207mg、0.694mmol、86.5%)を得た。ESI−MSm/z 計算値:298.2、測定値:299.2(M+1) 保持時間:3.46分。
【0240】
【化81】

(ベンゾフラン−2−カルボン酸[2−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−メチル−プロピル]−アミド)
2−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−メチル−プロピルアミン(106mg、0.506mmol)およびベンゾフラン−2−カルボニルクロライド(90.7mg、0.502mmol)をトリエチルアミン(139μL、1.00mmol)を含む2mLの1,4−ジオキサンに溶解した。反応混合物を15時間撹拌し、蒸発乾固し、ジクロロメタンに再溶解し、1Mの塩酸、1Mの水酸化ナトリウムおよび水酸化ナトリウムの飽和水溶液で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発乾固した。次いで、粗成生物を、ヘキサン中1〜30%酢酸エチルの勾配を使用して、シリカゲルによるカラムクロマトグラフィーで精製した。純生成物画分を組み合わせ、蒸発乾固し、白色固体(153mg、0.433mmol、86.3%)を得た。ESI−MS m/z計算値:353.2、測定値:354.2(M+1) 保持時間:2.99分。
【0241】
【化82】

(ベンゾフラン−2−カルボン酸[1−(3,4,5−トリメトキシ−フェニル)−シクロペンチルメチル]−アミド)
C−[1−(3,4,5−トリメトキシ−フェニル)−シクロペンチル]−メチルアミン(53.1mg、0.200mmol)およびベンゾフラン−2−カルボニルクロライド(36.1mg、0.200mmol)を、トリエチルアミン(84μL、0.60mmol)を含む2mLの1,4−ジオキサンに溶解した。反応混合物を15時間撹拌し、蒸発乾固し、逆相分取液体クロマトグラフィーで精製し、精製物(9.59mg、0.0234mmol、11.7%)を得た。ESI−MS m/z計算値:409.2、測定値:410.4(M+1) 保持時間:3.29分。
【0242】
(ベンゾフラン−2−カルボン酸(1−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−シクロペンチルメチル)−アミド)
C−(1−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−シクロペンチル)−メチルアミン(43.8mg、0.200mmol)およびベンゾフラン−2−カルボニルクロライド(36.1mg、0.200mmol)を、トリエチルアミン(83.6μL、0.600mmol)を含む2mLの1,4−ジオキサンに溶解した。反応混合物を15時間撹拌し、蒸発乾固し、逆相分取液体クロマトグラフィーで精製し、精製物(13.0mg、0.0358mmol、17.8%)を得た。ESI−MS m/z計算値:363.2、測定値:364.2(M+1) 保持時間:4.22分。
【0243】
(2−シクロペンチルオキシ−N−フェネチルニコチンアミド)
2−フルオロ−ニコチン酸(84.7mg、0.600mmol)、シクロペンタノール(51.6mg、0.600mmol)およびカリウムビス(トリメチルシリル)アミド(478mg、2.40mmol)を0.6mLのN,N−ジメチルホルムアミド中で混合し、180℃で3分間マイクロ照射を当てた。フェネチルアミン(72.7mg、0.600mmol)およびO−(7−アゾベンゾトリアゾ−ル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(304mg、0.800mmol)を加え、溶液を16時間撹拌した。次いで、混合物を逆相分取液体クロマトグラフィーで精製し、精製物(2.9mg、0.0093mmol、1.6%)を得た。ESI−MS m/z計算値:310.2、測定値:311.2(M+1) 保持時間:3.40分。
【0244】
(N−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)−エチル]−N−メチル−2−(3−メチル−ブトキシ)−ニコチンアミド)
2−フルオロ−ニコチン酸(84.7mg、0.600mmol)、3−メチル−ブタン−1−オール(52.9mg、0.600mmol)およびカリウムビス(トリメチルシリル)アミド(478mg、2.40mmol)を、0.6mLのN,N−ジメチルホルムアミド中で混合し、180℃で3分間マイクロ照射を当てた。
[2−(3,4−ジメトキシフェニル)−エチル]−メチルアミン(117mg、0.600mmol)およびO−(7−アゾベンゾトリアゾ−ル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(304mg、0.800mmol)を加え、溶液を16時間撹拌した。次いで、混合物を逆相分取液体クロマトグラフィーで精製し、精製物(1.5mg、0.0039mmol、0.65%)を得た。ESI−MS m/z計算値:386.2、測定値:387.4(M+1) 保持時間:2.98分。
【0245】
(1H−インダゾール−3−カルボン酸[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンチルメチル]−アミド)
1H−インダゾール−3−カルボン酸(32.4mg、0.200mmol)およびC−[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンチル]−メチルアミン(47.1g、0.200mmol)を、トリエチルアミン(83.6μL、0.600mmol)を含むアセトニトリル(1mL)に溶解した。O−(7−アゾベンゾトリアゾ−ル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(76.0mg、0.200mmol)を加え、溶液を16時間撹拌した。次いで、混合物を逆相分取液体クロマトグラフィーで精製し、精製物(7.47mg、0.0197mmol、9.84%)を得た。ESI−MS m/z計算値:379.2、測定値:380.4(M+l) 保持時間:3.02分。
【0246】
(4−ベンジル−N−[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンチルメチル]−ベンズアミド)
4−ベンジル−安息香酸(21.2mg、0.100mmol)およびC−[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンチル]−メチルアミン(23.5g、0.100mmol)を、トリエチルアミン(41.8μL、0.300mmol)を含むアセトニトリル(1mL)に溶解した。O−(7−アゾベンゾトリアゾ−ル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(38.0mg、0.100mmol)を加え、溶液を16時間撹拌した。次いで、混合物を逆相分取液体クロマトグラフィーで精製し、精製物(24.1mg、0.0561mmol、56.1%)を得た。ESI−MS m/z計算値:429.2、測定値:430.4(M+l) 保持時間:3.75分。
【0247】
(N−[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンチルメチル]−2,2−ジフェニル−アセトアミド)
ジフェニル−酢酸(42.4mg、0.200mmol)およびC−[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンチル]−メチルアミン(47.1g、0.200mmol)を、トリエチルアミン(83.6μL、0.600mmol)を含むアセトニトリル(1mL)に溶解した。O−(7−アゾベンゾトリアゾ−ル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(76.0mg、0.200mmol)を加え、溶液を16時間撹拌した。次いで、混合物を逆相分取液体クロマトグラフィーで精製し、精製物(13.3mg、0.0310mmol、15.5%)を得た。ESI−MS m/z計算値:429.2、測定値:430.2(M+l) 保持時間:3.47分。
【0248】
(2−メチル−5−フェニル−フラン−3−カルボン酸[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンチルメチル]−アミド)
2−メチル−5−フェニル−フラン−3−カルボン酸(40.4mg、0.200mmol)およびC−[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンチル]−メチルアミン(47.1g、0.200mmol)を、トリエチルアミン(83.6μL、0.600mmol)を含むアセトニトリル(1mL)に溶解した。O−(7−アゾベンゾトリアゾ−ル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(76.0mg、0.200mmol)を加え、溶液を16時間混合した。次いで、混合物を逆相分取液体クロマトグラフィーで精製し、精製物(17.0mg、0.0405mmol、20.3%)を得た。ESI−MS m/z計算値:419.2、測定値:420.4(M+l) 保持時間:3.62分。
【0249】
(N−[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンチルメチル]−2−フェニルスルファニル−アセトアミド)
フェニルスルファニル−酢酸(33.6mg、0.200mmol)およびC−[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンチル]−メチルアミン(47.1g、0.200mmol)を、トリエチルアミン(83.6μL、0.600mmol)を含むアセトニトリル(1mL)に溶解する。O−(7−アゾベンゾトリアゾ−ル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(76.0mg、0.200mmol)を加え、溶液を16時間撹拌した。次いで、混合物を逆相分取液体クロマトグラフィーで精製し、精製物(11.3mg、0.0293mmol、14.6%)を得た。ESI−MS m/z計算値:385.2、測定値:386.0(M+l) 保持時間:3.12分。
【0250】
(N−[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンチルメチル]−3−フェニル−プロピオンアミド)
3−フェニル−プロピオン酸(30.0mg、0.200mmol)およびC−[1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンチル]−メチルアミン(47.1g、0.200mmol)を、トリエチルアミン(83.6μL、0.600mmol)を含むアセトニトリル(1mL)に溶解した。O−(7−アゾベンゾトリアゾ−ル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(76.0mg、0.200mmol)を加え、溶液を16時間撹拌した。次いで、混合物を逆相分取液体クロマトグラフィーで精製し、精製物(19.0mg、0.0517mmol、25.8%)を得た。ESI−MS m/z計算値:367.2、測定値:367.5(M+1) 保持時間:3.05分。
【0251】
本発明の化合物の特徴データを以下の表2に示す。
【0252】
【化83】

(実施例3)
(式Iの追加の化合物の製造)
明細書中で考えられた手順および先の実施例に従って、式Iの以下の化合物を製造することができる。
【0253】
【化84】

【0254】
【化85】

3−1:5−メトキシ−N((1−(3,4−ジメトキシフェニル)シクロヘキシル)メチル)ベンゾフラン−2−カルボキシアミド
3−2:N−((1−(2−フルオロ−3,4−ジメトキシフェニル)シクロヘキシル)メチル)ベンゾフラン−2−カルボキシアミド
3−3:N−((1−(2−フルオロ−4,5−ジメトキシフェニル)シクロヘキシル)メチル)ベンゾフラン−2−カルボキシアミド
3−4:N−((1−(4−エトキシ−3−メトキシフェニル)シクロヘキシル)メチル)ベンゾフラン−2−カルボキシアミド
3−5:5−フルオロ−N−((1−(3,4−ジメトキシフェニル)シクロヘキシル)メチル)ベンゾフラン−2−カルボキシアミド
3−6:N−((1−(3,4−ジメトキシフェニル)シクロヘキシル)メチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボキシアミド
3−7:5−クロロ−N−((1−(3,4−ジメトキシフェニル)シクロヘキシル)メチル)ベンゾフラン−2−カルボキシアミド
3−8:N−((1−(3−フルオロ−4,5−ジメトキシフェニル)シクロヘキシル)メチル)ベンゾフラン−2−カルボキシアミド
3−9:N−((1−(3−エトキシ−4−メトキシフェニル)シクロヘキシル)メチル)ベンゾフラン−2−カルボキシアミド。
【0255】
(実施例4)
(検出および測定のアッセイ)
(化合物のΔF508−CFTR修正特性)
(化合物のΔF508−CFTR変調特性を分析するための膜光学ポテンシャル法)
光学膜電位アッセイは、GonzalezおよびTsienによって記載された電圧感応性FRETセンサー(Gonzalez,J.E.and R.Y.Tsien(1995)「Voltage sensing by fluorescence resonance energy transfer in single cells」Biophys J69(4):1272−80およびGonzalez,J.E.およびR.Y.Tsien(1997)「Improved indicators of cell membrane potential that use fluorescence resonance energy transfer」Chem Biol4(4):269−77参照)を、電圧/イオンプローブリーダー(VIPR)(Gonzalez,J.E.,K.Oades,et al.(1999)「Cell−based assays and instrumentation for screening ion−channel targets」Drug Discov Today4(9):431−439参照)のような蛍光変化を測定する機器装備と組み合わせて利用した。
【0256】
これらの電圧感応性アッセイは、膜溶解性、電圧感応性染料DiSBAC(3)と、蛍光形質膜の外葉に結合しFRETドナーとして作用するリン脂質CC2−DMPEとの間の蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)の変化に基礎を置く。膜電圧(V)の変化は、負に帯電したDiSBAC(3)を、形質膜を通って再分布させ、CC2−DMPEからのエネルギー転移の量はそれに従う。蛍光発光の変化は、一体化された液体ハンドラーであって、96−または384−ウェルマイクロタイタープレート中で細胞スクリーンを行うように設計された蛍光検出器である、VIPR(商標)IIを使用してモニタリングできる。
【0257】
(修正化合物の同定)
ΔF508−CFTRに関連する欠損の情報交換を修正する低分子を同定するために、シングル付加HTSアッセイフォーマットが開発された。細胞は、血清のない培地で、試験化合物の存在下または非存在下(ネガティブ対照)で、37℃、16時間培養した。ポジティブ対照として、384−ウェルプレート内で平板培養された細胞を、27℃、16時間培養してΔF508−CFTRを「温度−修正」した。引き続き、細胞をクレブスリンガー液で3回濯ぎ、電圧感応性染料を置いた。ΔF508−CFTRを活性化するために、10μMのフォースコリンおよびCFTR増強物質またはゲニステイン(20μM)を、Clのない培地とともに、各ウェルに加えた。Clのない培地の追加によって、ΔF508−CFTR活性化に応答して、Clの流出を促進し、得られた膜脱分極は、FRETベースの電圧センサー染料を使用して、光学的にモニタリングした。
【0258】
(増強化合物の同定)
ΔF508−CFTRの増強物質を同定するために、ダブル付加HTSアッセイフォメーションが開発された。最初の付加の間、試験化合物を含むあるいは含まないClのない培地を各ウェルに加えた。22秒後、第二の付加として2〜10μMのフォースコリンを含むClのない培地を活性化ΔF508−CFTRに加えた。2回の付加に続く細胞外のCl濃度は、28mMであり、これは、ΔF508−CFTR活性化に応答したCl排出を促進し、得られた脱分極は、FRETベースの電圧センサー染料を使用して、光学的にモニタリングした。
【0259】
(溶液)
浴溶液番号1:(mM中) NaCl 160、KCl 4.5、CaCl 2、MgCl 1、HEPES 10、NaOHによってpH7.4
塩素イオンのない浴溶液:浴溶液中の塩化塩番号1はグルコン酸塩で置換されている。
CC2−DMPE:DMSO中10mM原液として製造し、−20℃で保存
DiSBAC(3):DMSO中10mM原液として製造し、−20℃で保存
(細胞培養物)
ΔF508−CFTRを安定して発現するNIH3T3マウス線維芽細胞を膜電位の光学的測定のために使用する。細胞は、37℃、5%COおよび湿度90%で、175cmの培養フラスコ中の2mMのグルタミン、10%ウシ胎児血清、1×NEAA、β−ME、1×pen/strepおよび25mMのHEPESを補足したダルベッコ変法イーグル培地中に維持する。全光学アッセイに関し、マトリゲルが塗布された384ウェルプレートに各ウェルにつき30,000個の細胞を接種し、増強物質アッセイのための27℃での24時間の培養の前に、37℃で2時間培養した。修正アッセイは、細胞を、化合物とともにあるいはなしで、27℃または37℃で16〜24時間培養する。
【0260】
(化合物のΔF508−CFTR変調特性を分析する電気生理学的アッセイ)
(1.ウッシングチャンバーアッセイ)
極性化されたΔF508−CFTRを発現する上皮細胞上でウッシングチャンバー試験を行い、さらに、光学アッセイにおいて同定されたΔF508−CFTRモジュレータを特徴付けた。コースタースナップウェル細胞培養物上で成長したFRTΔ508−CFTR上皮細胞挿入物を、ウッシングチャンバー(フィジオロジックインストルメント社、サンディエゴ、カリフォルニア州)中に据付け、電圧固定システム(アイオワ大学、バイオエンジニアリング部、アイオワ州、およびフィジオロジックインストルメント社、サンディエゴ、カリフォルニア州)を使用して、単一層を連続的に短絡させた。経上皮細胞性抵抗を2mVのパルスをかけて測定した。このような条件下で、FRT上皮は、4KΩ/cm以上の抵抗を示した。溶液を27℃に保ち、空気でバブリングした。電極オフセット電位および流体抵抗を、細胞のない挿入物を使用して修正した。これらの条件下で、電流は、先端膜において発現されたΔF508−CFTRを通るClの流れを反映する。Iscは、MP100A−CEインターフェースおよびアクノレッジソフトウェア(バージョン3.2.6;バイオパックシステムス社、サンタバーバラ、カルフォルニア州)を使用して、デジタル的に取得した。
【0261】
(修正化合物の同定)
代表的なプロトコルは、先端膜Cl濃度勾配に対する基底外側を利用した。この勾配を設定するために、基底外側膜上で通常のリンガーを使用し、一方、先端NaClを等モルのグルコン酸ナトリウム(NaOHでpH7.4に滴定)で置き換え、上皮細胞を横切る大きなCl濃度勾配を得た。全試験を無処理単一層で行った。ΔF508−CFTRを完全に活性化するため、フォースコリン(10μM)およびPDE抑制剤、IBMX(100μM)を塗布し、CFTR増強物質、ゲニステイン(50μM)を加えた。
【0262】
他の細胞型で観察されたように、ΔF508−CFTRを安定的に発現するFRT細胞を低温で培養すると、形質膜においてCFTRの機能的な濃度が増加する。修正化合物の活性を測定するために、細胞を10μMの試験化合物で24時間、37℃で培養し、引き続き、記録する前に3回洗浄した。化合物で処置された細胞におけるcAMPおよびゲニステイン−介在Iscは、27℃および37℃コントロールに基準化し、活性百分率として表した。修正化合物を使用した細胞の予備培養は、37℃コントロールに比べて、cAMP−およびゲニステイン−介在Iscを大きく増加させた。
【0263】
(増強化合物の同定)
代表的なプロトコルは、先端膜Cl濃度勾配に対する基底外側を利用した。この勾配を設定するために、基底外側膜上で通常のリンガーを使用し、ナイスタチン(360μg/ml)で透過化処理を行い、一方、先端NaClを等モルのグルコン酸ナトリウム(NaOHでpH7.4に滴定)で置き換え、上皮細胞を横切る大きなCl濃度勾配を得た。全試験をナイスタチン透過化後30分に行った。フォースコリン(10μM)および全試験化合物を細胞培養物挿入物の両側に加えた。推定ΔF508−CFTR増強物質の効率を公知の増強物質、ゲニステインと比較した。
【0264】
(溶液)
基底外側溶液(mM中):NaCl(135)、CaCl(1.2)、MgCl(1.2)、KHPO(2.4)、KHPO(0.6)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)(10)、およびデキストロース(10)。溶液をNaOHでpH7.4に滴定した。
先端溶液(mM中):NaClを含む、グルコン酸Naで置換えられた基底外側溶液(135)と同じ
(細胞培養物)
ΔF508−CFTR(FRTΔF508−CFTR)を発現するフィッシャーラット上皮細胞性(FRT)細胞を、本発明者らの光学アッセイから同定された推定ΔF508−CFTRモジュレータのウッシングチャンバー試験に使用した。細胞をコースタースナップウェル細胞培養物挿入物上で、5日間37℃5%COで、クーンの5%ウシ胎児血清、100U/ml ペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを補給した修正ハムF−12培地で培養した。化合物の増強物質活性を特徴づける前に、27℃で16〜48時間培養し、ΔF508−CFTRの修正を行った。修正化合物の活性を測定するために、細胞を、化合物とともにまたはなしで、27℃または37℃で化合物を24時間培養した。
【0265】
(2.ホールセル記録)
肉眼で見えるΔF508−CFTR電圧(IΔF508)で、ΔF508−CFTRを安定的に発現する温度および試験化合物で修正されたNIH3T3細胞を、貫通したパッチ、ホールセル記録を使用してモニタリングした。要約すると、IΔF508の電圧固定記録を、室温で、アクソパッチ200Bパッチクランプアンプ(アクソンインストルメント社、フォスターシティー、カリフォルニア州)を使用して行った。全記録を10kHzのサンプリング周波数で得、1kHzでローパスフィルタリングした。細胞内溶液で一杯にした時、ピペットの抵抗は、5〜6MΩであった。これらの記録条件下、Clの逆転電位の計算値(Ecl)は−28mVであった。全記録は、シール抵抗が>20GΩであり、直列抵抗が<15MΩであった。パルス発生、データ収集、および分析は、Clampex8(アクソンインストルメント社)と連結した、デジデータ1320A/Dインターフェースを装備したPCを使用して行った。浴は、<250μlの食塩水を含み、動力駆動式還流システムを使用して、2ml/分の速さで連続的に還流した。
【0266】
(修正化合物の同定)
形質膜中の機能的ΔF508−CFTRの濃度を高める修正化合物の活性を測定するため、本発明者らは、前記の有孔−パッチ−記録技術を使用し、修正化合物を用いた24時間処置後の電流密度を測定した。ΔF508−CFTRを充分活性化するために、10μMのフォースコリンと20μMのゲニステインとを細胞に加えた。本発明者らの記録条件においては、27℃での24時間培養の後の電流密度は、37℃での24時間培養の後に観察される電流密度より高かった。これらの結果は、形質膜内のΔF508−CFTRの濃度における低温度培養の知られている結果と一致している。電流密度における修正化合物の効果を測定するために、細胞を、10μMの試験化合物を用いて、24時間37℃で培養し、電流密度を27℃および37℃コントロールと比較した(活性百分率)。記録する前に、細胞を3回細胞外の記録培地で洗浄し、残っている試験化合物を除去した。10μMの修正化合物を使用した予備培養によって、cAMP−およびゲニステイン−依存電流は37℃コントロールに比べて大きく増加した。
【0267】
(増強化合物の同定)
また、ΔF508−CFTRを安定的に発現するNIH3T3細胞内の肉眼的なΔF508−CFTRCl電流(IΔF508)を増加させるΔF508−CFTR増強物質の活性も、有孔−パッチ−記録技術を使用して調べた。光学アッセイで同定された増強物質は、光学アッセイで観察された同様の力価および効能を持つIΔF508において、用量依存的増加を誘導した。調べた全細胞において、増強物質の適応前および適応中の逆転電位は、約−30mVであり、計算値Eclは(−28mV)である。
【0268】
(溶液)
細胞内溶液(mM中):アスパラギン酸Cs(90)、CsCl(50)、MgCl(1)、HEPES(10)および240μg/mlのアムフォテリシンB(CsOHでpHを7.35に調整)
細胞外溶液(mM中):N−メチル−D−グルカミン(NMDG)−Cl(150)、MgCl(2)、CaCl(2)、HEPES(10)(HClでpHを7.35に調整)。
【0269】
(細胞培養物)
ΔF508−CFTRを安定的に発現するNIH3T3マウス線維芽細胞を、ホールセル記録用に使用する。細胞を、37℃、5%COおよび湿度90%で、175cm培養フラスコ中の2mMのグルタミン、10%ウシ胎児血清、1×NEAA、β−ME、1×pen/strep、および25mMのHEPESを補足したダルベッコ変法イーグル培地中で保持する。ホールセル記録のために、2,500〜5,000個の細胞をポリ−L−リジンを塗布したガラスカバースリップに接種し、増強物質の活性を試験するために使用する前に、27℃で24〜48時間培養し、修正物質の活性の測定のために、37℃で修正化合物とともにあるいはなしで培養した。
【0270】
(3.シングルチャネル記録)
NIH3T3細胞において安定的に発現された温度修正ΔF508−CFTRのシングルチャネル活性、および増強物質化合物の活性は、切除したインサイドアウト膜パッチを使用して観察した。要約すると、シングルチャネル活性の電圧固定記録は、アクソパッチ200Bパッチクランプアンプ(アクソンインストルメント社)を使用して室温で行った。全記録を10kHzのサンプリング周波数で得、400Hzでローパスフィルタリングした。パッチピペットは、コーニングコバールシーリング#7052ガラス(ワールドプリシジョンインスツルメント社、サラソータ、フロリダ州)から製造し、細胞外溶液を充填した時の抵抗は、5〜8MΩであった。切除後、1mMのMg−ATP、および75nMのcAMP依存タンパク質キナーゼ、触媒サブユニット(PKA;プロメガ社、マジソン、ウィスコン州)を加えることによって、ΔF508−CFTRを活性化した。チャネル活性を安定化させた後、動力駆動式微小還流システムを使用してパッチを還流した。流入量は、パッチにあわせて配置され、その結果、溶液は1〜2秒以内に完全に交換された。高速還流の間ΔF508−CFTR活性を維持するために、非特定リン酸塩抑制剤F(10mMのNaF)を浴溶液に加えた。このような記録条件の下に、チャネル活性をパッチ記録の間中(60分まで)一定に保った。細胞内溶液から細胞外溶液へ動く正の電荷(反対方向に動くアニオン)によって造られる電流は正の電流として示される。ピペット電圧(V)は80mVに維持された。
【0271】
チャネル活性を2以上の活性チャネルを含む膜パッチから分析した。試験の途中で連立開口の最大数によって活性チャネルの数を測定した。シングルチャネル電流の振幅を測定するために、ΔF508−CFTR活性の120秒から記録したデータを100Hzでろ過「オフライン」とし、次いでバイオパッチ分析ソフトウェア(バイオロジック社、フランス)を使用して、マルチガウス機能に合わせた全点振幅ヒストグラムを構成するためにに使用した。合計ミクロ電流および開放確率(P)をチャネル活性の120秒から測定した。Pは、バイオパッチソフトウェアを使用して、または関係式P=I/i(N)(式中、I=平均電流、i=シングルチャネル電流の振幅、およびN=パッチ中の活性チャネルの数)から求めた。
【0272】
(溶液)
細胞外溶液(mM中):NMDG(150)、アスパラギン酸(150)、CaCl(5)、MgCl(2)およびHEPES(10)(pHはトリス塩基で7.35に調整)
細胞内溶液(mM中):NMDG−C1(150)、MgCl(2)、EGTA(5)、TES(10)およびトリス塩基(14)(pHはHClで7.35に調整)。
【0273】
(細胞培養物)
ΔF508−CFTRを安定的に発現するNIH3T3マウス線維芽細胞を摘出膜パッチクランプ記録のために使用する。細胞を、37℃、5%COおよび湿度90%で、175cm培養フラスコ中の2mMのグルタミン、10%ウシ胎児血清、1×NEAA、β−ME、1×pen/strep、および25mMのHEPESを補足したダルベッコ変法イーグル培地中で保持する。シングルチャネル記録のために、2,500〜5,000個の細胞をポリ−L−リジンを塗布したガラスカバースリップに接種し、使用する前に、27℃で24〜48時間培養した。
【0274】
本発明の化合物は、ATP結合カッセトトランスポーター、特にCFTRのモジュレータとしての活性を示した。
【0275】
(実施例5)
(特定化合物のcAMP測定)
この実施例では、類似の構造を持つ特定化合物が、cAMP(アデノシン3,5−環状モノリン酸塩)濃度で種々の効果をもつことを示す。ABC運搬タンパク質および、特にCFTRは、cAMP調整イオンチャネルである。理想的には、そのようなタンパク質のモジュレータ化合物は、cAMP濃度で変化を起こすべきではない。
【0276】
以下の実施例では、表1からの3つの構造的に類似する化合物によるcAMP濃度における効果を、正規化参考測定として20μMのフォースコリンからcAMP濃度を用いて測定した。
【0277】
(cAMPの測定用のトロピックス(登録商標)アッセイ)
0.5μMのフォースコリンまたは試験化合物の適応の後のFRT細胞中のcAMPの濃度を、トロピックス(登録商標)(アプライドバイオシステム社、ベッドフォード、マサチューセッツ州)と呼ばれる、市販の哺乳動物細胞用化学発光イムノアッセイシステムを使用して測定した。要約すれば、FRT細胞を0.5μMのフォースコリンの存在下または非存在下で、試験化合物とともに15分培養した。化合物を吸引し、次いで細胞を溶解し、溶解緩衝液とともに96−ウェルトロピックス(登録商標)ELISAプレートに移した。次いで、cAMP−Alkリン酸塩結合体をアッセイプレートに加え、cAMP抗体を追加した。数回の洗浄および吸引工程の後、サファイアブルーII溶液を加え、蛍光発光をトップコート蛍光読み取り器で読み、cAMP濃度を各プレートに備えられたcAMP標準カーブで測定した。
【0278】
(結果)
化合物N−((1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロペンチル)メチル)ベンゾフラン−2−カルボキシアミド(表1の化合物49)は、先にΔF508−CFTRの増強物質として文献に報告されている(J Biol Chem;277(40):37235−41,2002)。著者は、この活性化のメカニズムは、細胞cAMPにおける上昇によって起こることを示している。この化合物は、cAMP含量だけを増加し、また、20μMのフォースコリンに関する測定値と同様に、フォースコリンの低い濃度(0.5μM)によって引出されるcAMP上昇を増強することが示された。本発明者らはトロピックス(登録商標)システムにおいても類似の結果を得ることができた。化合物49だけで、20μMのフォースコリンによって生み出されたcAMPの平均で40.3±3.5%を生み出し、これは、DMSOコントロール、20μMフォースコリンの24.8±3.9%、n=4、p<0.05と比較して、大きな増加であった。0.5μMのフォースコリンの存在下、化合物49は、20μMのフォースコリンによって生み出されたcAMPの平均で92.3±2.7%を生み出し、これも、0.5μMフォースコリンコントロール、20μMフォースコリンの45.9±3.0%、n=4、p<0.05と比較して、大きな増加であった。
【0279】
類似の構造を持つ化合物が、このcAMPアッセイにおいて、統計学的に大きく変動する活性濃度を示すことは、驚くべき発見である。たとえば、化合物N−(2−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−メチルプロピル)ベンゾフラン−2−カルボキシアミド(表1、化合物29)だけで、20μMのフォースコリンによって生み出されたcAMPの平均で24.4±1.1%を生み出し、これは、DMSOコントロール、20μMフォースコリンの24.8±3.9%、n=4と比較するとそれほど大きな増加ではなかった。しかし、0.5μMのフォースコリンの存在下、化合物29は、20μMのフォースコリンによって生み出されたcAMPの平均で61.5±1.8%を生み出し、これは、0.5μMフォースコリンコントロール、20μMフォースコリンの45.9±3.0%、n=4、p<0.05と比較すると、大きな増加であった。
【0280】
これに対し、化合物N−((1−(3,4−ジメトキシフェニル)−シクロヘキシル)メチル)ベンゾフラン−2−カルボキシアミド、表1、化合物21、それ自身は、20μMのフォースコリンによって生み出されたcAMPの平均で7.9±1.1%を生み出し、これは、DMSOコントロール、20μMフォースコリンの8.4±2.8%、n=4と比較するとそれほど大きな増加ではなかった。驚くべきことに、0.5μMのフォースコリン存在下の化合物21は、20μMのフォースコリンによって生み出されたcAMPの平均で27.1±1.8%を生み出し、これは、0.5μMフォースコリンコントロール、20μMフォースコリンの32.2±3.2%、n=4と比較しても、それほど大きな増加ではなかった。
【0281】
実施例は、cAMP濃度の増大を伴わなくても化合物が増強物質活性を持つことができることを教示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式II:
【化1】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで:
Aは、C(O)またはSOであり;
およびRは、一緒になって3〜6員のシクロアルキル環または4−ピラニル環を形成し;
は、H、必要に応じて(C−C)アルキル、CN、NO、CF、OCF、OH、SR、S(O)R、SO、COOH、COOR、ORから選択される置換基で置換された(C−C)アルキル、またはRで必要に応じて置換されたフェニルであり;
Bは、フェニルであり;
Zは:
【化2】

であり;
ここで、
Lは、結合であり;
Wは、5〜14員の単環式、二環式もしくは三環式の複素環式環またはヘテロアリール環であり;
mおよびnは、独立して、0〜5であり;または
Zは、ジフェニルメチルであり、式中、各フェニルは5個までのRを有し、該Rは、置換基であり;そして
およびRは、独立して、R、R、R、RまたはRから選択され、式中:
は、オキソ、Rまたは((C−C)脂肪族)−Yであり;
nは0または1であり;
Yは、ハロ、CN、NO、CF、OCF、OH、SR、S(O)R、SO、NH、NHR、N(R、NR、COOH、COORまたはORであるか;あるいは、隣接する環原子上の2個のRは、一緒になって、1,2−メチレンジオキシまたは1,2−エチレンジオキシを形成し;
は、脂肪族であり、ここで各Rは、独立してR、RまたはRから選択される2個までの置換基を必要に応じて含み;
は、独立してR、R、RまたはRから選択される、3個までの置換基を必要に応じて含む、脂環式環、アリール環、複素環式環またはヘテロアリール環であり;
は、OR、OR、OC(O)R、OC(O)R、OC(O)OR、OC(O)OR、OC(O)N(R、OC(O)N(R、OC(O)N(R)、SR、SR、S(O)R、S(O)R、SO、SO、SON(R、SON(R、SONR、SO、SO、C(O)R、C(O)OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)N(R、C(O)N(R、C(O)N(R)、C(O)N(OR)R、C(O)N(OR)R、C(O)N(OR)R、C(O)N(OR)R、C(NOR)R、C(NOR)R、C(NOR)R、C(NOR)R、N(R、N(R、N(R)、NRC(O)R、NRC(O)R、NRC(O)R、NRC(O)R、NRC(O)OR、NRC(O)OR、NRC(O)OR、NRC(O)OR、NRC(O)N(R、NRC(O)NR、NRC(O)N(R、NRC(O)N(R、NRC(O)NR、NRC(O)N(R、NRSO、NRSO、NRSO、NRSO、NRSON(R、NRSON(R、NRSONR、NRSON(R、NRSONR、NRSON(R、N(OR)R、N(OR)R、N(OR)R、またはN(OR)Rであり;
は、必要に応じて3個までのR置換基を含む、脂環式環、アリール環、複素環式環またはヘテロアリール環であり;
は、Hまたは脂肪族であり、ここでRは、必要に応じてR置換基を含み;
は、脂環式環、アリール環、複素環式環またはヘテロアリール環であり、各Rは、H、(C−C)直鎖アルキルもしくは(C−C)分岐状アルキル、(C−C)直鎖アルケニルもしくは(C−C)分岐状アルケニルまたは(C−C)直鎖アルキニルもしくは(C−C)分岐状アルキニル、1,2−メチレンジオキシ、1,2−エチレンジオキシ、あるいは(CH−Qから独立して選択される、2個までの置換基を必要に応じて含み;
Qは、ハロ、CN、NO、CF、OCF、OH、S−脂肪族、S(O)−脂肪族、SO−脂肪族、NH、NH(脂肪族)、N(脂肪族)、N(脂肪族)R、NHR、N(R、COOH、C(O)O−(脂肪族)、またはO−脂肪族から選択され;そして
は、アミノ保護基であり;
ただし:
(i)RおよびRが一緒になって4−ピラン環を形成し、Rが水素であり、AがC(O)であり、そしてRおよびmと一緒になった環Wが2−アミノ−ピラジン−3−イルである場合、(Rと一緒になった環Bは、フェニル、4−メチルフェニル、4−クロロフェニル、3−フルオロフェニル、4−メトキシフェニル、2,4−ジフルオロフェニルまたは4−フルオロフェニルではなく;
(ii)RおよびRが一緒になってシクロヘキシル環を形成し、Rが水素であり、AがC(O)であり、そしてLが2−メトキシ−ピリジン−3−イルである場合、(R)nと一緒になった環Bはフェニルではない;
(iii)RおよびRが一緒になってシクロブチル環を形成し、Rが水素であり、AがC(O)であり、そしてRおよびmと一緒になった環Wが2,5,7,8−テトラメチル−6−ヒドロキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−イルである場合、(Rと一緒になった環Bは4−[(イミノ−チエン−2−イルメチル)アミノ]フェニルではない;
(iv)RおよびRが一緒になってシクロプロピル環を形成し、Rが水素であり、AがC(O)であり、そしてRおよびmと一緒になった環Wが2,5−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−1−メチル−5−オキソ−1H−ピロール−3−イルである場合、(Rと一緒になった環Bはフェニルではない;
(v)RおよびRが一緒になってシクロプロピル環を形成し、Rが水素であり、AがC(O)であり、Rおよびmと一緒になった環Wが2,3,4,9−テトラヒドロ−3−[(3’−(2,6−ジイソプロピル)−ウレイド]−1H−カルバゾール−3−イルである場合、(Rと一緒になった環Bは、4−クロロフェニルではない;
(vi)RおよびRが一緒になってシクロプロピル環を形成し、Rが水素であり、AがC(O)であり、Rおよびmと一緒になった環Wが9,10−ジヒドロ−9−オキソ−アクリジン−3−イルである場合、(Rと一緒になった環Bは4−クロロフェニルではない;
(vii)Rが水素であり、AがC(O)である場合、以下の化合物;
【化3】

【化4】

【化5】

は除かれ;
(viii)RおよびRとが一緒になってシクロペンチル環を形成し、Rが水素であり、AがC(O)であり、そしてRおよびmと一緒になった環Wがジフェニルメチルである場合、(Rと一緒になった環Bは、フェニル、4−エトキシフェニル、4−ブトキシフェニル、4−イソブトキシフェニルまたは4−メトキシフェニルではない、
化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項2】
AがC(O)である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
AがSOである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
およびRが、一緒になって、4−ピラニル環を形成する、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
およびRが、一緒になって、3〜6員のシクロアルキル環を形成する、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
およびRが、一緒になって、5〜6員のシクロアルキル環を形成する、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
およびRが、一緒になって、5員シクロアルキル環を形成する、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
およびRが、一緒になって、6員シクロアルキル環を形成する、請求項6記載の化合物。
【請求項9】
Wが、必要に応じて置換されたインドリル、ベンゾフラニルまたはベンゾチエニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物が、インドール−2−イル、インドール−3−イル、ベンゾフラン−2−イル、またはベンゾチエン−2−イルである、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
Wが、必要に応じて置換されたピラゾリルまたはインダゾリルである、請求項1記載の化合物。
【請求項12】
Wが、必要に応じて置換されたピラゾール−3−イル、ピラゾール−4−イル、またはインダゾール−3−イルである、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
Zがジフェニルメチルである、請求項1記載の化合物。
【請求項15】
Wが、O、SまたはNから独立して選択される2個までのヘテロ原子を有する、必要に応じて置換された6員の複素環式芳香族環である、請求項1記載の化合物。
【請求項16】
Wが、フラニル、チエニル、イソキサゾリルまたはピロリルから選択される必要に応じて置換された環である、請求項1記載の化合物。
【請求項17】
Wが、必要に応じて置換された、10〜12員の二環式複素環式芳香族環である、請求項1記載の化合物。
【請求項18】
Wが、キノリニルまたはシンノリニルから選択される必要に応じて置換された環である、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
式I:
【化6】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで:
Aは、C(O)またはSOであり;
およびRは、独立して、H、(C−C)アルキルおよびアリールから選択されるか、またはRおよびRは、一緒になって(C−C)シクロアルキルまたは複素環を形成し得;
は、H、必要に応じてCN、NO、CF、OCF、OH、SR、S(O)R、SO、COOH、COOR、ORから選択される置換基で置換された(C−C)アルキル、またはRで必要に応じて置換されたフェニルであり;
Bは、アリールまたは複素環であり;
Zは:
【化7】

であり、ここで
Lは、(C−C)アルキリデン、−O−((C−C)アルキリデン)、((C−C)アルキリデン)−O−、または結合であり、ここでL中の該アルキリデンの2個までの炭素原子は、独立してO、SまたはNで置換され;
Wは、アリール、複素環または(C−C)シクロアルキルであり;
mおよびnは、独立して、0〜5であり;そして
およびRは、独立して、R、R、R、RまたはRから選択され、ここで:
は、オキソ、Rまたは((C−C)脂肪族)−Yであり;
nは0または1であり;
Yは、ハロ、CN、NO、CF、OCF、OH、SR、S(O)R、SO、NH、NHR、N(R、NR、N(R、COOH、COORもしくはORであるか;または、隣接する環原子上の2個のRが、一緒になって、1,2−メチレンジオキシまたは1,2−エチレンジオキシを形成し;
は、脂肪族であり、ここで各Rは、独立して、R、RまたはRから選択される2個までの置換基を必要に応じて含み;
は、独立してR、R、RまたはRから選択される、3個までの置換基を必要に応じて含む、脂環式環、アリール環、複素環式環またはヘテロアリール環であり;
は、OR、OR、OC(O)R、OC(O)R、OC(O)OR、OC(O)OR、OC(O)N(R、OC(O)N(R、OC(O)N(R)、SR、SR、S(O)R、S(O)R、SO、SO、SON(R、SON(R、SONR、SO、SO、C(O)R、C(O)OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)N(R、C(O)N(R、C(O)N(R)、C(O)N(OR)R、C(O)N(OR)R、C(O)N(OR)R、C(O)N(OR)R、C(NOR)R、C(NOR)R、C(NOR)R、C(NOR)R、N(R、N(R、N(R)、NRC(O)R、NRC(O)R、NRC(O)R、NRC(O)R、NRC(O)OR、NRC(O)OR、NRC(O)OR、NRC(O)OR、NRC(O)N(R、NRC(O)NR、NRC(O)N(R、NRC(O)N(R、NRC(O)NR、NRC(O)N(R、NRSO、NRSO、NRSO、NRSO、NRSON(R、NRSON(R、NRSONR、NRSON(R、NRSONR、NRSON(R、N(OR)R、N(OR)R、N(OR)R、またはN(OR)Rであり;
は、3個までのR置換基を必要に応じて含む、脂環式環、アリール環、複素環式環またはヘテロアリール環であり;
は、Hまたは脂肪族であり、ここでRは、R置換基を必要に応じて含み;
は、脂環式環、アリール環、複素環式環またはヘテロアリール環であり、そして各Rは、H、(C−C)直鎖アルキルもしくは(C−C)分岐状アルキル、(C−C)直鎖アルケニルもしくは(C−C)分岐状アルケニルまたは(C−C)直鎖アルキニルもしくは(C−C)分岐状アルキニル、1,2−メチレンジオキシ、1,2−エチレンジオキシ、あるいは(CH−Qから独立して選択される、2個までの置換基を必要に応じて含み;
Qは、ハロ、CN、NO、CF、OCF、OH、S−脂肪族、S(O)−脂肪族、SO−脂肪族、NH、NH(脂肪族)、N(脂肪族)、N(脂肪族)R、NHR、N(R、COOH、C(O)O−(脂肪族)、またはO−脂肪族から選択され;そして
は、アミノ保護基であり;
ただし、
a)AがC(O)であり、Lが結合であり、Zがフェニルであり、RとRとが一緒になってシクロペンチルであり、Bがフェニルである場合、RおよびRは、メトキシではなく;
b)AがC(O)であり、Lが結合であり、Zがフェニルであり、RおよびRが一緒になってシクロプロピルであり、Bがフェニルである場合、Rは水素ではなく;
c)AがC(O)であり、Lが結合であり、Zがベンゾフラニルであり、RおよびRが一緒になってシクロペンチルであり、Bがフェニルである場合、Rはメトキシではなく;
d)AがC(O)であり、Lが結合であり、Zがフェニルであり、RおよびRが一緒になってシクロペンチルであり、Bがフェニルであり、Rが水素である場合、Rはクロロではなく;
e)AがC(O)であり、Lが結合であり、Zがフラニルであり、RおよびRが一緒になってシクロペンチルであり、Bがフェニルであり、Rがメトキシである場合、Rはブロモではなく;
f)AがC(O)であり、Lが結合であり、Zがフラニルであり、RおよびRが一緒になってシクロペンチルであり、Bがフェニルである場合、Rは水素ではなく;そして
g)AがC(O)であり、Lが結合であり、Zがフェニルであり、RおよびRが一緒になってシクロヘキシルであり、Bがフェニルであり、Rがメトキシであり、nが2であり、Rがニトロである場合、mは2ではない、
化合物、またはその薬学的に受容可能な塩。
【請求項20】
AがC(O)であり、そしてLが結合である、請求項19記載の化合物。
【請求項21】
およびRが、一緒に、シクロペンチルを形成する、請求項19記載の化合物。
【請求項22】
およびRが、一緒に、シクロヘキシルを形成する、請求項19記載の化合物。
【請求項23】
およびRが水素である、請求項19記載の化合物。
【請求項24】
およびRがメチルである、請求項19記載の化合物。
【請求項25】
Wが、必要に応じて置換されたアリールである、請求項19記載の化合物。
【請求項26】
Wが、必要に応じて置換された複素環である、請求項19記載の化合物。
【請求項27】
Wが、必要に応じて置換されたシクロアルキルである、請求項19記載の化合物。
【請求項28】
Zがフェニルである、請求項19記載の化合物。
【請求項29】
Wが、必要に応じて置換されたベンゾフランである、請求項1記載の化合物。
【請求項30】
Wが、必要に応じて置換されたベンゾチオフェニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項31】
Wが、必要に応じて置換されたインドリルである、請求項1記載の化合物。
【請求項32】
Wが、必要に応じて置換されたピラゾリルまたはオキサゾリルである、請求項1記載の化合物。
【請求項33】
Wが、必要に応じて置換されたフラニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項34】
Wが、必要に応じて置換されたキノリニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項35】
Wが、必要に応じて置換されたイソキノリニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項36】
Wが、必要に応じて置換されたシンノリニルである、請求項19記載の化合物。
【請求項37】
およびRが、一緒になって、シクロヘキシルを形成する、請求項1または19記載の化合物。
【請求項38】
Bがフェニルである、請求項37記載の化合物。
【請求項39】
nが2である、請求項1または19記載の化合物。
【請求項40】
nが2であり、そして各Rが(C−C)アルコキシである、請求項39記載の化合物。
【請求項41】
がメトキシである、請求項40記載の化合物。
【請求項42】
nが3である、請求項1または19記載の化合物。
【請求項43】
各Rが(C−C)アルコキシまたはフルオロである、請求項42記載の化合物。
【請求項44】
請求項1〜43のいずれか1項に記載の化合物と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的組成物。
【請求項45】
ABCトランスポーター活性を調節する方法であって、該方法は、該トランスポーターを式I:
【化8】

の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、あるいはその薬学的に受容可能な塩と接触させる工程を包含する方法であって、ここで:
Aは、C(O)またはSOであり;
およびRは、独立して、H、(C−C)アルキルおよびアリールから選択されるか、あるいはRおよびRは、一緒になって(C−C)シクロアルキルまたは複素環を形成し得;
は、H、必要に応じてCN、NO、CF、OCF、OH、SR、S(O)R、SO、COOH、COOR、ORから選択される置換基で置換された(C−C)アルキル、またはRで必要に応じて置換されたフェニルであり;
Bは、アリールまたは複素環であり;
Zは:
【化9】

であり、ここで
Lは、(C−C)アルキリデン、−O−((C−C)アルキリデン)、((C−C)アルキリデン)−O−、または結合であり、L中の該アルキリデンの2個までの炭素原子は、独立してO、SまたはNで置換され;
Wは、アリール、複素環または(C−C)シクロアルキルであり;
mおよびnは、独立して、0〜5であり;そして
およびRは、独立して、R、R、R、RまたはRから選択され、ここで:
は、オキソ、Rまたは((C−C)脂肪族)−Yであり;
nは0または1であり;
Yは、ハロ、CN、NO、CF、OCF、OH、SR、S(O)R、SO、NH、NHR、N(R、NR、N(R、COOH、COOR、またはORであるか;あるいは、隣接する環原子上の2個のRが、一緒になって、1,2−メチレンジオキシまたは1,2−エチレンジオキシを形成し;
は、脂肪族であり、ここで各Rは、独立してR、RまたはRから選択される2個までの置換基を必要に応じて含み;
は、独立してR、R、RまたはRから選択される3個までの置換基を必要に応じて含む、脂環式環、アリール環、複素環式環またはヘテロアリール環であり;
は、OR、OR、OC(O)R、OC(O)R、OC(O)OR、OC(O)OR、OC(O)N(R、OC(O)N(R、OC(O)N(R)、SR、SR、S(O)R、S(O)R、SO、SO、SON(R、SON(R、SONR、SO、SO、C(O)R、C(O)OR、C(O)R、C(O)OR、C(O)N(R、C(O)N(R、C(O)N(R)、C(O)N(OR)R、C(O)N(OR)R、C(O)N(OR)R、C(O)N(OR)R、C(NOR)R、C(NOR)R、C(NOR)R、C(NOR)R、N(R、N(R、N(R)、NRC(O)R、NRC(O)R、NRC(O)R、NRC(O)R、NRC(O)OR、NRC(O)OR、NRC(O)OR、NRC(O)OR、NRC(O)N(R、NRC(O)NR、NRC(O)N(R、NRC(O)N(R、NRC(O)NR、NRC(O)N(R、NRSO、NRSO、NRSO、NRSO、NRSON(R、NRSON(R、NRSONR、NRSON(R、NRSONR、NRSON(R、N(OR)R、N(OR)R、N(OR)R、またはN(OR)Rであり;
は、3個までのR置換基を必要に応じて含む、脂環式環、アリール環、複素環式環またはヘテロアリール環であり;
は、Hまたは脂肪族であり、ここでRは、R置換基を必要に応じて含み;
は、脂環式環、アリール環、複素環式環またはヘテロアリール環であり、そして各Rは、H、(C−C)直鎖アルキルもしくは(C−C)分岐状アルキル、(C−C)直鎖アルケニルもしくは(C−C)分岐状アルケニルまたは(C−C)直鎖アルキニルもしくは(C−C)分岐状アルキニル、1,2−メチレンジオキシ、1,2−エチレンジオキシ、あるいは(CH−Qから独立して選択される、2個までの置換基を必要に応じて含み;
Qは、ハロ、CN、NO、CF、OCF、OH、S−脂肪族、S(O)−脂肪族、SO−脂肪族、NH、NH(脂肪族)、N(脂肪族)、N(脂肪族)R、NHR、N(R、COOH、C(O)O−(脂肪族)、またはO−脂肪族から選択され;そして
は、アミノ保護基である、
方法。
【請求項46】
前記化合物が、請求項1〜44のいずれか1項に記載の化合物から選択される、請求項45記載の方法。
【請求項47】
疾患が、嚢胞性線維症、遺伝性気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、タンパク質C欠乏症のような凝固−フィブリン溶解性欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、家族性高コレステロール血症のような脂質プロセシング欠乏症、1型乳び血症、無βリポ蛋白血症、I細胞疾患/偽ハーラー症候群のようなリソソーム蓄積症、分泌性下痢または多発性嚢胞腎疾患、ムコ多糖症、ザントホフ/テイ−サックス病、クリグラー−ナジャーII型、多発性内分泌腺症/高インスリン症、真性糖尿病、ラロン小人症、ミエロペルオキシダーゼ欠乏症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、グリカノシスCDG1型、遺伝性気腫、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT欠乏症、尿崩症(DI)、ニューロフィシンDI、腎性DI、シャルコー−マリー−ツース症候群、ペリツェウス−メルツバッハー病、アルツハイマー病のような神経変性疾患、パーキンソン病、筋萎縮性側策硬化症、進行性核上麻痺、ピック病、ハンティングトン病のような1または数種のポリグルタミン神経疾患、脊髄小脳性運動失調I型、脊髄延髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症および筋緊張性ジストロフィ、ならびに遺伝性のクロイツフェルト−ヤーコプ病(プリオンタンパク質プロセシング欠損に起因する)のような海綿状脳症、ファブリー病、ストロイスラー−シャインカー症候群、COPD、眼乾燥疾患またはシェーグレン病から選択される、請求項45記載の方法。
【請求項48】
前記疾患が、嚢胞性線維症である、請求項45記載の方法。
【請求項49】
アニオンチャネルの活性をインビトロまたはインビボで調節する方法であって、該方法は、該チャネルを請求項1〜45のいずれか1項に記載の化合物と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項50】
前記アニオンチャネルが、塩素イオンチャネルまたは炭酸水素イオンチャネルである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記アニオンチャネルが、塩素イオンチャネルである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
哺乳動物においてアニオンチャネル仲介性疾患を処置する方法であって、該方法は、請求項1〜45のいずれか1項に記載の化合物を含む組成物を該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項53】
前記疾患が、嚢胞性線維症である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
薬学的組成物であって、
(i)請求項1〜43のいずれか1項に記載の化合物;
(ii)薬学的に受容可能なキャリア;および
(iii)粘液溶解剤、気管支拡張薬、抗生物質、抗感染剤、抗炎症剤、CFTRモジュレータまたは栄養剤から選択される追加剤
を含む、薬学的組成物。
【請求項55】
インビトロまたはインビボの生物学的サンプルにおけるABCトランスポーターまたはそのフラグメントの活性を測定する際に使用するためのキットであって、該キットは、
(i)請求項1〜43のいずれか1項に記載の化合物を含む組成物;および
(ii)説明書
を備え、該説明書は、
a)該組成物を該生物学的サンプルと接触させること、
b)該ABCトランスポーターまたはそのフラグメントの活性を測定すること
についてのものである、キット。
【請求項56】
前記ABCトランスポーターがCFTRである、請求項55記載のキット。

【公表番号】特表2007−509044(P2007−509044A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534421(P2006−534421)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/033367
【国際公開番号】WO2005/035514
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】