説明

デバイスの製造方法及びデバイス

【課題】メモリ機能等を有する機能膜の水による劣化を防止すること。
【解決手段】成膜装置内で、機能膜が形成された基板上に、上記機能膜を覆うように、絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、形成した上記絶縁膜の表面をプラズマに曝すプラズマ処理工程とを繰り返すこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスの製造方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory; 以下、FeRAMと呼ぶ)は、強誘電体膜のメモリ機能を利用したデバイスであり、電源を切っても情報を消失しない不揮発性、高集積度、高速駆動、高耐久性、低消費電力という優れた特徴を有している。
【0003】
このFeRAMは、以下のように製造される。まず、トランジスタを形成した基板上に、層間絶縁膜と強誘電体キャパシタを順次形成する。次に、強誘電体キャパシタを覆うように、酸化シリコン膜をPCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)法で形成する。その後、この酸化シリコン膜をプラズマに曝す。このプラズマ処理により、酸化シリコン膜は、脱水され且つ膜質が改善される。これにより、以後の工程における、加熱と水による強誘電体キャパシタの劣化を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−273332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記酸化シリコン膜は、PCVD装置から取り出されると、大気中の水分を吸収する。この水分の一部が、脱水及び膜質改善のために行うプラズマ処理の間に強誘電体キャパシタに拡散し、強誘電体膜を劣化させてしまう。また、プラズマ処理により脱水しきれない水が、加熱処理を伴う後の工程により強誘電体キャパシタに拡散して強誘電体膜を劣化させる。
【0006】
このため、強誘電体キャパシタを覆う酸化シリコン膜をプラズマ処理するだけでは、FeRAMの特性(例えば、インプリント特性)の水による劣化を、十分に防止することはできなかった。
【0007】
そこで、本製造方法の目的は、強誘電体膜のように一定の機能(例えば、メモリ機能)を有する機能膜の、水による劣化を防止したデバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の一観点によれば、成膜装置内で、機能膜が形成された基板上に、前記機能膜を覆うように、絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、形成した前記絶縁膜の表面をプラズマに曝すプラズマ処理工程とを繰り返すデバイスの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本デバイスの製造方法によれば、水による機能膜の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1のFeRAMの構成を説明する断面図である。
【図2】実施の形態1のFeRAMの製造方法を説明する工程断面図である(その1)。
【図3】実施の形態1のFeRAMの製造方法を説明する工程断面図である(その2)。
【図4】実施の形態1のFeRAMの製造方法を説明する工程断面図である(その3)。
【図5】実施の形態1のFeRAMの製造方法を説明する工程断面図である(その4)。
【図6】実施の形態1のFeRAMの製造方法を説明する工程断面図である(その5)。
【図7】実施の形態1のFeRAMの製造方法を説明する工程断面図である(その6)。
【図8】第2の層間絶縁膜の形成工程を説明する図である。
【図9】絶縁膜のエッチング速度の、深さ方向における分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。尚、図面が異なっても対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0012】
(実施の形態1)
デバイス構成
図1は、本実施の形態のFeRAM2の構成を説明する断面図である。図1には、メモリセルの構成が示されており、周辺回路(ロジック回路、センスアンプ等)は省略されている。
【0013】
本実施の形態のFeRAM2は、2T−2C(2 Transistor-2 Capacitor)型のFeRAMである。図1に示すように、本FeRAM2は、Si基板6と、このSi基板6の上部に設けられた各素子領域を分離する素子分離層8を有している。この素子分離層8で分離された各素子領域には、pウェル10が設けられている。図1に示すように、1つのpウェル10に対し、2つのトランジスタT1,T2が形成されている。
【0014】
このpウェル10の上には、2本のゲート電極12が相互に平行に形成されている。ゲート電極12の両側には、トランジスタT1,T2のソース/ドレインとなる低濃度n型不純物領域14a,14b及び高濃度n型不純物領域16a,16bが形成されている。尚、本メモリセルは、図1に示すように、左右対称な構造を有している(図1では、メモリセルの左端は省略されている。)。
【0015】
また、Si基板6の上には、ゲート電極12を覆うように、SIO(酸化シリコン)膜とSIN(窒化シリコン)膜を積層した被覆層18が形成されている。この被覆層18の上には第1の層間絶縁膜20が形成されている。この第1の層間絶縁膜20の上には、プラグ36aの酸化防止膜21が形成されている。酸化防止膜21は、SION膜(シリコン酸化及び窒化膜)とシリコン酸化膜の積層膜である。
【0016】
図1に示すように、酸化防止膜21の上には、アルミナ(酸化アルミニウム)膜22が形成されている。このアルミナ膜22の上には、下部電極24、強誘電体膜26及び上部電極28を、下からこの順で積層した強誘電体キャパシタ30が形成されている。
【0017】
この強誘電体キャパシタ30は、保護膜32により覆われている。この保護膜32は、アルミナ膜22と同様、酸化アルミニウムの薄膜である。保護膜32とアルミナ膜22は、一体となって強誘電体キャパシタ30を包み込み、強誘電体膜26への水素及び水の侵入を防止する。但し、保護膜32は、強誘電体キャパシタ30の側面で薄くなっているので、強誘電体膜26への水の侵入を十分には防止しない。尚、水素も水と同様、強誘電体膜26を劣化させる。
【0018】
この保護膜32の上には、第2の層間絶縁膜34が形成されている。第2の層間絶縁膜34は、(上部電極28及び保護膜32を間に挟んで)強誘電体膜26を覆い、夫々の表面がプラズマに曝された複数の絶縁膜を積層した絶縁層である。層間絶縁膜(上下に配置された配線層を分離する絶縁層)には、通常、誘電率の低い絶縁膜が用いられる。このような絶縁膜は、大気中の水を吸収しやすいという特質を有している。
【0019】
しかし、本実施の形態の第2の層間絶縁膜34は、表面がプラズマに曝され水を吸収し難くなった複数の絶縁膜を積層した絶縁層である。従って、第2の層間絶縁膜34が、水を吸収して、強誘電体膜26を劣化させることはない。
【0020】
次に、本FeRAM2には、この第2の層間絶縁膜34の上面から、トランジスタT1,T2の高濃度不純物領域16a,16bに到達するプラグ36a,36dが形成されている。
【0021】
更に、第2の層間絶縁膜34の上には、複数の配線を有する第1の配線層が形成されている。図1に示すように、第1の配線層に含まれる第1の配線42は、プラグ36cを介して強誘電体キャパシタ30の上部電極28に電気的に接続されている。この第1の配線42は、更に、プラグ36bを介して、プラグ36aに電気的に接続されている。また、第1の配線層に含まれる第2の配線44は、プラグ36eを介して、プラグ36dに電気的に接続されている。また、第1の配線層に含まれる第3の配線45は、プラグ36jを介して強誘電体キャパシタ30の下部電極24に電気的に接続されている。
【0022】
図1に示すように、第1の配線層(第1の配線42,第2の配線44、第3の配線45を含む配線層)及び第2の層間絶縁膜34の上には、第3の層間絶縁膜46が形成されている。この第3の層間絶縁膜46も、第2の層間絶縁膜34と同様、表面がプラズマに曝され水を吸収し難くなった複数の絶縁膜を積層した絶縁層である。従って、第3の層間絶縁膜46が、水を吸収して、強誘電体膜26を劣化させることはない。
【0023】
この第3の層間絶縁膜46の内部には、第1の配線層(第1の配線42,第2の配線44、第3の配線45を含む配線層)に電気的に接続する複数のWプラグ36fが形成されている。また、第3の層間絶縁膜46の上には、第4の配線48を含む第2の配線層が形成されている。図1に示すように、第2の配線層はプラグ36fに電気的に接続されている。
【0024】
同様に、第3の層間絶縁膜46及び第2の配線層(第4の配線48を含む配線層)の上には、第4の層間絶縁膜50、プラグ36g、第3の配線層(第5の配線52を含む配線層)が形成されている(図1参照)。
【0025】
更に、第4の層間絶縁膜50の上には、第5の層間絶縁膜54及び第6の層間絶縁膜58が積層されている。また、第3の配線層(第5の配線52を含む配線層)の上には、プラグ36h、第4の配線層(第6の配線56を含む配線層)、プラグ36i、及び第5の配線層(第7の配線60を含む配線層)が順次積層されている。
【0026】
ここで、第4の層間絶縁膜50、第5の層間絶縁膜54、及び第6の層間絶縁膜58は、第2の層間絶縁膜34と同様、プラズマに曝され水を吸収し難くなった絶縁膜を積層した絶縁層である。従って、第4の層間絶縁膜50、第5の層間絶縁膜54、及び第6の層間絶縁膜58が、水を吸収して、強誘電体膜26を劣化させることはない。
【0027】
そして、第6の層間絶縁膜58及び第5の配線層(第7の配線60を含む配線層)の上には、第1のカバー膜62と第2のカバー膜64が形成されている。
【0028】
尚、FeRAM2は、ゲート12に電圧を印加して、トランジスタT1,T2を動作させることによって、情報を強誘電体キャパシタ30に書き込み或いは強誘電体キャパシタ30から情報を読み出すメモリである。この情報は、強誘電体膜26の残留分極として記録され、この残留分極の反転に伴って流れる電流により読み出される。
【0029】
製造方法
図2〜図7は、本実施の形態のFeRAM2の製造方法を説明する工程断面図である。
【0030】
(1)第1の層間絶縁膜及びプラグの形成工程(図2)
最初に、図2(a)に示す構造を形成するまでの工程を説明する。まず、Si基板6の上部にメモリセルのトランジスタT2,T4を形成する。この時、周辺回路のトランジスタも同時に形成する。次に、PCVDにより、厚さ20nmのSIO膜と厚さ80nmのSIN膜を順次堆積して、被覆層18を形成する。
【0031】
次に、図2(b)に示す構造を形成するまでの工程を説明する。まず、被覆層18の上に、厚さ1000nmのプラズマTEOS(Tetra-Ethyl-Ortho-Silicate )膜66aを形成する。ここで、プラズマTEOS膜とは、TEOSと酸素を含む混合ガスをプラズマ化することによって得られる酸化シリコン膜のことである。このプラズマTEOS膜は、シリコンの熱酸化膜より誘電率が低い酸化シリコン膜である。
【0032】
その後、CMP(Chemical Mechanical Polishing; 化学的機械研磨)法により、このプラズマTEOS膜を約300nm研磨して表面を平坦化する。この表面が平坦化されたプラズマTEOS膜が、第1の層間絶縁膜20である。
【0033】
次に、トランジスタT2,T4の高濃度n型不純物領域16a,16bに達するコンタクトホールを形成する。このコンタクトホールを形成したSi基板6の上側全面に、厚さが30nmのTi膜と厚さが20nmのTiN膜とを順次堆積して、グルー膜68を形成する。その後、Si基板6の上側全面に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法によりW(タングステン)を堆積して、第1の層間絶縁膜20上にW膜を形成するとともに、上記コンタクトホールにWを充填する。次に、CMP法により、第1の層間絶縁膜20上のW膜、TiN膜及びTi膜を除去して、Wが充填されたプラグ36a,36dを形成する。
【0034】
次に、厚さ100nmのSION膜と厚さ130nmのプラズマTEOSを順次堆積して、酸化防止膜21を形成する。この酸化防止膜21は、後述する強誘電体キャパシタ30の回復アニールによって、プラグ36a,36dのWが酸化されることを防止する。
【0035】
後述するように、プラズマTEOS膜やSION膜は、水を吸収しやすい膜である。従って、ここまでの工程により、第1の層間絶縁膜20は、大気中の水やCMP等に用いられた水を吸収している。N雰囲気中で温度が650℃の熱処理を行って、ここまでに第1の層間絶縁膜20や酸化防止膜21が吸収した水を除去する。
【0036】
以上の工程と並行して、周辺回路の形成領域にも、トランジスタ、層間絶縁膜、及びプラグを形成する。
【0037】
(2)強誘電体キャパシタの製造工程(図3)
次に、図3に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
【0038】
まず、酸化防止膜21の形成されたSi基板6の全面に、スパタリングにより酸化アルミニウムの薄膜(以下、AlO膜と呼ぶ)を堆積する。このAlO膜があることによって、その上に堆積するPt膜及び強誘電体膜の結晶性が向上する。
【0039】
次に、このALO膜の上に、下部電極24となる厚さ150nmのPt膜と、強誘電体膜26となる厚さ150nmのPZT(Pb(Zr,Ti)O)非晶質膜と、上部電極28となる厚さ250nmのIrO膜を、スパッタリングにより順次堆積する。尚、下部電極24となるPt膜の代わりに、Ir膜、Ru膜、Rh膜、Re膜、Os膜、又はこれらの導電性酸化物を形成してもよい。同様に、上部電極28となるIrO膜の代わりに、Pt膜、Ru膜、Rh膜、Re膜、Os膜、又はこれらの導電性酸化物を形成してもよい。また、強誘電体膜26となるPZT非晶質膜の代わりに、他の強誘電体酸化物(例えば、SBT(SrBiTa))の非晶質膜を形成してもよい。
【0040】
次に、このPZT非晶質膜を、酸素を含む雰囲気中で熱処理する。この熱処理により、PZT非晶質膜は結晶化し、強誘電体膜26になる。尚、熱処理は、PZT非晶質膜を成膜した時点又はIrO膜の一部を成膜した時点で行ってもよい。
【0041】
次に、このPt膜と強誘電体膜とIrO膜の積層構造に、フォトリソグラフィ法とエッチングを施して、強誘電体キャパシタ30を形成する。同時に、周辺回路に含まれるキャパシタを形成する。この時、上述したAlO膜は、下部電極24の下側を残してエッチングされ、アルミナ膜22になる。
【0042】
次に、強誘電体キャパシタ30を覆うように、Si基板6の全面に厚さ50nmのAlO膜を形成する。このAlO膜が、保護膜32である。上述したように、この保護膜32とアルミナ膜22が一体となって、強誘電体キャパシタ30を包み込み、水素及び水の強誘電体キャパシタ30への侵入を防止する。その後、プラグ36a,36dの上部で、保護膜32を除去する。
【0043】
(3)第2の層間絶縁膜の形成工程(図4、図8)
次に、図4に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
【0044】
図8は、第2の層間絶縁膜34の形成工程を説明する図である。尚、図8では、保護膜32、酸化防止膜21、アルミナ膜22、プラグ36a,36d等は省略されている。
【0045】
まず、保護膜32を形成したSi基板6を成膜装置(例えば、PCVD装置;図示せず)に配置する。次に、この成膜装置内で、図8(a)に示すように、上部電極28及び保護膜32(図示せず)を間に挟んで、強誘電体膜26を覆うように、厚さ50nm以上250nm以下(例えば、150nm)の絶縁膜70を形成する。ここで、絶縁膜70は、プラズマTEOS膜である。また、絶縁膜70は、110nm以上190nm以下であってもよい。次に、同じ成膜装置内で、絶縁膜70の表面をプラズマに曝す。このプラズマ処理によって、絶縁膜70の表面には、改質層72が形成される。この改質層72は、膜質が改善されて水を吸収し難くなっている。
【0046】
ここで、プラズマ処理を成膜室内で行ので、絶縁膜70は水を吸収しない。従って、プラズマ処理の間に水が強誘電体キャパシタに、拡散して強誘電体膜を劣化させることはない。
【0047】
このような絶縁膜70を形成する工程(以下、絶縁膜形成工程と呼ぶ)と、形成した絶縁膜をプラズマに曝して改質層を形成する工程(以下、プラズマ処理工程と呼ぶ)を同一成長装置内で繰返して、例えば厚さ1500nmの絶縁層74を形成する(図8(b)参照)。
【0048】
ここで、絶縁膜70の成膜条件は、以下の通りである。
・TEOSガス流量 ・・・ 230〜690 sccm (好ましくは、460 sccm)
・He(TEOSのキャリアガス) ・・・ 240〜720 sccm (好ましくは、480 sccm)
・Oガス流量 ・・・ 350〜2000 sccm (好ましくは、700 sccm)
・圧力 ・・・ 4.5〜13.5 Torr (好ましくは、9.0 Torr)
・成膜温度 ・・・ 300〜450℃(好ましくは 390℃)
・高周波パワー ・・・ 200〜600W(好ましくは、400 W)
・高周波周波数 ・・・ 9〜20 MHz (好ましくは、13.56 MHz)
このように、本実施の形態では、TEOSと酸素の混合ガスに交流電界を印加してプラズマを発生し、酸化シリコン膜(プラズマTEOS膜)を形成する。この成膜条件によれば、層間絶縁膜として形成する一般的なプラズマTEOS膜より、水を吸収し難いプラズマTEOS膜を形成することができる。
【0049】
ところで、常圧化でTEOSをプラズマ化して酸化シリコン膜を形成すると、成膜を行っている間に、水が堆積膜に取り込まれてしまう。しかし、本実施の形態のように、減圧された成膜装置内で絶縁膜70を成膜すると、成膜を行っている間に、水が絶縁膜70に取り込まれることはない。
【0050】
次に、上記プラズマ処理の条件は、以下の通りである。
・NOガス流量 ・・・ 350〜1050 sccm (好ましくは、700 sccm)
・Nガス流量 ・・・ 150〜300 sccm (好ましくは、200 sccm)
・圧力 ・・・ 1.5〜4.5 Torr (好ましくは、3.0 Torr)
・基板温度 ・・・ 300〜400℃(好ましくは 350℃)
・高周波パワー ・・・ 200〜700W(好ましくは、450 W)
・高周波周波数 ・・・ 9〜20 MHz (好ましくは、13.56 MHz)
尚、絶縁膜70をプラズマ曝す時間は、1〜5分間(好ましくは、2分間)である。このように、本実施の形態では、NOガスに交流電界を印加して、プラズマを発生する。尚、NOガスの代わりに、NOガス、Oガス、Oガス等を用いてもよい。
【0051】
次に、絶縁層74を形成したSi基板6を、成膜装置から大気中に取り出す。この時、絶縁層74は大気中の水分に曝される。しかし、絶縁層78は、プラズマに曝され膜質が改善された改質膜72によって表面が覆われているので、水を殆ど吸収しない。
【0052】
次に、図8(c)に示すように、CMP法により絶縁層74の表面を研磨して、表面を平坦化する。この平坦化された絶縁層74が、第2の層間絶縁膜34である。
【0053】
CMP法で絶縁層74の表面を研磨すると、絶縁層74の最表面を形成している改質層78は、研磨されて消失する。しかし、研磨後の表面(又は表面直下)には、絶縁層74の内部から、別の改質層80が出現する。このように研磨後の表面(又は表面直下)も改質層80によって覆われているので、研磨後の絶縁層74すなわち第2の層間絶縁膜34は水を殆ど吸収しない。
【0054】
故に、強誘電体膜26が、第2の層間絶縁膜34が吸収した水によって劣化することはない。尚、水による強誘電体層26の劣化は、後述するように第2の層間絶縁膜形成後の工程(例えば、W膜の形成工程)において、強誘電体膜26が高温に曝された際に起きる。或いは、FeRAMを長時間使用している間に、第2の層間絶縁膜34に吸収された水が除々に拡散して、強誘電体膜26を劣化させる。
【0055】
次に、プラズマ処理により、絶縁膜70が水を吸収し難くなる理由を説明する。絶縁膜70は、上述したように、プラズマ化したTEOSと酸素が反応して形成されたプラズマTEOS膜である。ところで化学式Si(OCで表されるTEOSは、酸素とシリコンと水素を含む化合物である。このような化合物をプラズマ化して得られる堆積膜中には、大量のSi−OH結合が発生する。このSi−OH結合は、水素結合により水(HO)と容易に結合する。このため、大気中の水等は、堆積膜中のSi−OH結合と結合して、容易に堆積膜に取り込まれる。但し、室温では、水は堆積膜の奥深くには浸入しないので、水は堆積膜の表面近傍に局在する。
【0056】
しかし、Si−OHを有する堆積膜がプラズマに曝されると、隣接するSi−OH結合が互いに反応してSi−O−Si結合を形成する。このSi−O−Si結合は、水とは結合しない。このため、プラズマに曝された絶縁膜70の表層部は、水を吸収しなくなる。更に、プラズマに曝された表層部は、水を通し難くなる。このような表層部が、上記改質層72である。従って、改質層72が表面に形成された絶縁膜70は、水を吸収し難くなる。
【0057】
図9は、絶縁膜70のエッチング速度の、深さ方向における分布を示す図である。横軸は、絶縁膜70の表面からの深さである。縦軸は、希釈したフッ化水素酸に対する絶縁膜のエッチング速度である。
【0058】
図9には、プラズマ処理を施した絶縁膜70のエッチング速度82が示されている。また、図9には、プラズマ処理を施こさなかった絶縁膜のエッチング速度84と、シリコン基板を熱酸化して得た、熱酸化膜のエッチング速度86が示されている。
【0059】
図9に示すように、プラズマ処理を施した絶縁膜70のエッチング速度82は、表面では、Si−OH結合を含まない熱酸化膜のエッチング速度86に接近している。一方、表面から40〜50nm以上奥では、絶縁膜70のエッチング速度82は、プラズマ処理を施さなかった絶縁膜70のエッチング速度84と略同じになる。この事実は、改質層の厚さが、40〜50nmであることを示している。
【0060】
従って、絶縁膜70の厚さが50nm以下であれば、絶縁膜70の略全体を非吸水性にすることができる。しかし、このように薄い絶縁膜70の成膜とプラズマ処理を繰返するには、長時間を要する。
【0061】
本実施の形態では、上述したように、厚さ50〜250nmの絶縁膜70の成膜とプラズマ処理を繰返して、絶縁層74を形成する。このようにすれば、絶縁層74の形成時間が、長くなり過ぎることはない。尚、絶縁膜70の厚さは、100〜200nmであってもよい。或いは、絶縁膜70の厚さを50nm以下にして、絶縁層74全体を非吸水性にしてもよい。
【0062】
(4)コンタクトホールの形成工程(図5)
次に、図5に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
【0063】
まず、フォトリソグラフィ法とドライエッチング技術により、強誘電体キャパシタ30の上部電極28に達するコンタクト88と、強誘電体キャパシタ30の下部電極24に達するコンタクト90を形成する。
【0064】
次に、コンタクトホール88,90を形成したSi基板を、酸素雰囲気中で、温度が500℃で時間が60分の条件で、熱処理(回復アニール)する。この熱処理により、ドライエッチング等により強誘電体膜26に発生した損傷が回復する。
【0065】
次に、フォトリソグラフィ法とドライエッチング技術により、プラグ36a,36dに達するコンタクト92を形成する。
【0066】
(5)プラグの形成工程(図6)
次に、図6に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
【0067】
コンタクトホール88,90,92を形成したSi基板6の上側全面に、スパッタリングにより、厚さが100nmのTiN膜と厚さが650nmのW膜とを順次堆積して、コンタクトホール88,90,92をWで充填する。ここで、TiN膜は密着層94である。
【0068】
次に、CMP法により、第2の層間絶縁膜34上のW膜及びTiN膜を除去して、Wが充填されたプラグ36b,36c,36e,36jを形成する。この時、第2の層間絶縁膜34の表面も研磨される。しかし、研磨後の表面(又は表面直下)には改質層が出現するので、第2の層間絶縁膜34は殆ど水を吸収しない。
【0069】
(6)配線層の形成工程(図7)
次に、図7に示す構造を形成するまでの工程を説明する。
【0070】
まず、プラグ36b,36c,36e,36jを形成したSi基板6の上側全面に、スパッタリングにより、TiNを70nm、、Tiを5nm、Al−Cu合金を360nm、Tiを5nm、TiNを70nmの厚さで順次堆積したアルミニウム積層膜を形成する。
【0071】
次に、フォトリソグラフィ法及びエッチング法により、このアルミニウム積層膜をパターニングして、第1配線層96の配線を形成する。この時、第1の配線層96に含まれる各配線42,44,45がショートしないように、第2の層間絶縁膜34を少しエッチングする。この時、第2の層間絶縁膜34の表面(又は表面直下)を覆う改質層がエッチングされるが、エッチング後の表面(又は表面直下)には別の改質層が出現する。従って、第2の層間絶縁膜34は水を殆ど吸収しない。
【0072】
次に、第1の配線層96の形成されたSi基板6の上に、第2の層間絶縁膜34の形成工程と同様の工程により、第3の層間絶縁膜46を形成する。すなわち、表面がプラズマに曝された複数の絶縁膜70を積層して絶縁層74を形成し、その表面をCMP法により平坦化する(図8参照)。
【0073】
(7)上部配線構造の形成工程
その後、図8を参照して説明した第2の層間絶縁膜34の形成工程、コンタクトホール92の形成工程、プラグ36b,36eの形成工程、及び第1の配線層96の形成工程と同様の工程を繰返する。この繰り返しによって、第4の層間絶縁膜50〜第6の層間絶縁膜58、第2の配線層(第4の配線48を含む配線層)〜第5の配線層(第7の配線60を含む配線層)を形成する。尚、TiN膜はMo−CVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法で形成する。
【0074】
更に、第6の層間絶縁膜58の上に、厚さ720nmのHDP−USG(High Density Plasma-Undoped Silicon Glass)膜と厚さ500nmのSIN膜(窒化シリコン膜)を形成する。このUDP−USG及びSIN膜は、夫々、第1のカバー膜62及び第2のカバー膜64になる。
【0075】
以上の説明から明らかように、第2の層間絶縁膜34〜第6の層間絶縁膜58は、繰り返し表面がエッチングされる。しかし、エッチング後の表面(又は、表面近傍)には新たな改質層が出現するので、第2の層間絶縁膜34〜第6の層間絶縁膜58は、殆ど水を吸収しない。
【0076】
従って、第2の層間絶縁膜34〜第6の層間絶縁膜58に吸収された水が拡散して、強誘電体膜26を劣化させることはない。尚、第1の層間絶縁膜20に吸収された水は、保護膜32及びアムミナ膜22に阻止されて、強誘電体膜26まで拡散することはない。このため、第1の層間絶縁膜20に吸収された水が、強誘電体膜26を劣化させることはない。
【0077】
ところで、第2の層間絶縁膜34〜第6の層間絶縁膜58となる絶縁層74は、種々の形態の成膜装置により形成することができる。例えば、成膜機能及びプラズマ処理機能の双方を備えたチャンバーを備えた成膜装置内で、絶縁膜70の形成と絶縁膜70のプラズマ処理を交互に行って、絶縁層74を形成してもよい。
【0078】
或いは、成膜室とプラズマ処理室とを備えた成膜装置を用い、成膜室内で絶縁膜70を形成し、プラズマ処理室内で絶縁膜70の表面をプラズマに曝して改質層72を形成してもよい。この場合、成膜室とプラズマ処理室の間におけるSi基板6の搬送は、成膜室、プラズマ処理室、及び両室を連結する連結部を真空に排気した状態で行う。従って、絶縁膜70の表面は、大気に触れない。或いは、成膜室、プラズマ処理室、及び連結部を、乾燥ガス(不活性ガス、N、O、NO等)で満した状態で、Si基板6の搬送を行ってもよい。
【0079】
(実施の形態2)
本実施の形態のデバイスも、FeRAMである。本FeRAMの基本構造は、実施の形態1のFeRAMと同じである。
【0080】
本実施の形態のデバイスは、Si基板6から強誘電体キャパシタ30までは、実施の形態1のFeRAM2と同じ構造を有している。また、第1の配線層〜第5の配線層、各プラグ、カバー膜等の構造も、実施の形態1の対応する部分と略同じ物である。
【0081】
一方、本実施の形態の第2の層間絶縁膜34は、表面が平坦化された絶縁層74と、この絶縁層74の上に形成したAlO膜と、このAlO膜の上に形成したプラズマTEOS膜を有している。ここで、絶縁層74は、表面がプラズマに曝された複数の絶縁膜を積層した絶縁層(図8(c)参照)である。一方、第3の層間絶縁膜46〜第6の層間絶縁膜62は、通常のプラズマTEOS膜である。
【0082】
本実施の形態のデバイスの製造方法は、強誘電体キャパシタ30を形成するまでは、実施の形態1の製造方法と同じである。
【0083】
本実施の形態では、強誘電体キャパシタ30の形成後、実施の形態1と同様に、絶縁膜70の形成と、形成した絶縁膜70のプラズマ処理を繰返して絶縁層74を形成する。その後、形成した絶縁層74の表面を平坦化する(図8参照)。次に、平坦化した絶縁層74の上にAlO膜を堆積する。更に、厚さ250nmのプラズマTEOS膜を成長する。
【0084】
このように絶縁層74とAlO膜とプラズマTEOS膜を積層した積層膜が、第2の層間絶縁膜34になる。
【0085】
尚、上記プラズマTEOS膜の成膜条件は、以下の通りである。
・TEOSガス流量 ・・・ 1800 sccm
・Oガス流量 ・・・ 8000 sccm
・圧力 ・・・ 2.2 Torr
・成膜温度 ・・・ 350 ℃
・第1高周波の周波数 ・・・ 13.56 MHz
・第1高周波のパワー ・・・ 400W
・第2高周波の周波数 ・・・ 2 MHz
・第2高周波のパワー ・・・ 600W
実施の形態1における第1の層間絶縁膜20も、この条件で形成することができる。
【0086】
その後、第3の層間絶縁膜46〜第6の層間絶縁膜62、第1の配線層〜第5の配線層、各プラグ、カバー膜等を形成して、FeRAMを完成する。ここで、第3の層間絶縁膜46〜第6の層間絶縁膜62は、上記成膜条件により形成する。
【0087】
このように、本実施の形態では、第2の層間絶縁膜34の途中に形成したAlO膜より上方の層間絶縁膜は、通常のプラズマTEOS膜である。上述したように、プラズマTEOS膜は、水を吸収しやすい。しかし、このAlOが下方への水の拡散を阻止するので、強誘電体膜26が水により劣化することない。
【0088】
尚、AlO膜を形成する層間絶縁膜は、第2の層間絶縁膜34〜第6の層間絶縁膜58のいずれの層間絶縁膜あってもよい。この場合、AlO膜より基板側の層間絶縁層は、絶縁膜の形成と、形成した絶縁膜のプラズマ処理を繰返して形成する。
【0089】
ところで、実施の形態1及び2のデバイスは、FeRAMである。しかし、機能膜を有する他のデバイス、例えば、絶縁体層に酸化マグネシウム膜(MgO)を用いる磁気抵抗素子や、このような磁気抵抗素子を有するMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)に、実施の形態1及び2を適用してもよい。尚、このMRAMの機能膜は、酸化マグネシウム膜である。
【0090】
また、上記実施の形態で機能膜を覆う絶縁層74は、表面を改質した複数のプラズマTEOS膜を積層した積層膜である。しかし、機能膜を覆う絶縁層74は、他の絶縁膜(例えばSiOF膜やSiOC膜)の表面をプラズマに曝し、この絶縁膜を積層した絶縁層であってもよい。尚、SiOF膜とは、SiO膜に数%フッ素をドーピングした低誘電率膜である。また、SiOC膜とは、SiO膜に炭素をドーピングした低誘電率膜である。
【0091】
また、上記実施の形態の基板は、Si基板である。しかし、化合物半導体基板、金属基板、セラミック基板等の他の基板を用いてもよい。
【0092】
以上の実施の形態1及び2を含む実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0093】
(付記1)
成膜装置内で、機能膜が形成された基板上に、前記機能膜を覆うように、絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、形成した前記絶縁膜の表面をプラズマに曝すプラズマ処理工程とを繰り返す、
デバイスの製造方法。
【0094】
(付記2)
付記1に記載のデバイスの製造方法において、
前記機能膜が、強誘電体膜であることを、
特徴とするデバイスの製造方法。
【0095】
(付記3)
付記1又は2に記載のデバイスの製造方法において、
前記絶縁膜形成工程において、TEOSを原料とするプラズマCVD法で前記絶縁膜を形成することを、
特徴とするデバイスの製造方法。
【0096】
(付記4)
付記1乃至3のいずれか1項に記載のデバイスの製造方法において、
前記プラズマ処理工程において、NO、NO、O、及びOからなる群から選ばれた何れかのガスに交流電界を印加して、前記プラズマを発生することを、
特徴とするデバイスの製造方法。
【0097】
(付記5)
付記1乃至4のいずれか1項に記載のデバイスの製造方法において、
前記成膜装置内が減圧されていることを、
特徴とするデバイスの製造方法。
【0098】
(付記6)
付記1乃至5のいずれか1項に記載のデバイスの製造方法において、
前記絶縁膜形成工程において、厚さ50nm以上250nm以下の前記絶縁膜を形成することを、
特徴とするデバイスの製造方法。
【0099】
(付記7)
付記1乃至6のいずれか1項に記載のデバイスの製造方法において、
前記成膜装置が、成膜室と前記成膜室に連結されたプラズマ処理室を有し、
前記絶縁膜形成工程において、前記成膜室内で、前記絶縁膜を形成し、
前記プラズマ処理工程において、前記プラズマ処理室内で、前記絶縁膜の表面を前記プラズマに曝すことを、
特徴とするデバイスの製造方法。
【0100】
(付記8)
基板と、
前記基板上に形成された機能膜と、
前記機能膜を覆い、表面がプラズマに曝された複数の絶縁膜が積層された絶縁層を、
有するデバイス。
【符号の説明】
【0101】
2・・・FeRAM
6・・・Si基板
70・・・絶縁膜
74・・・絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜装置内で、機能膜が形成された基板上に、前記機能膜を覆うように、絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、形成した前記絶縁膜の表面をプラズマに曝すプラズマ処理工程とを繰り返す、
デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスの製造方法において、
前記絶縁膜形成工程において、TEOSを原料とするプラズマCVD法で前記絶縁膜を形成することを、
特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のデバイスの製造方法において、
前記プラズマ処理工程において、NO、NO、O、及びOからなる群から選ばれた何れかのガスに交流電界を印加して、前記プラズマを発生することを、
特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデバイスの製造方法において、
前記絶縁膜形成工程において、厚さ50nm以上250nm以下の前記絶縁膜を形成することを、
特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項5】
基板と、
前記基板上に形成された機能膜と、
前記機能膜を覆い、表面がプラズマに曝された複数の絶縁膜を積層した絶縁層を、
有するデバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−23390(P2011−23390A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164548(P2009−164548)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】