ハイブリット車両の内燃機関制御装置、及びCVT車両の内燃機関制御装置
【課題】例えばエタノール等のアルコール系燃料を含む燃料を用いて効率良くエンジンを動作させる。
【解決手段】動作状態制御部101aは、燃料のオクタン価に応じて制御マップ選択部100fによって選択された新たな動作線上に動作点が設定されるように、エンジン200に供給される空気の供給量を制御する。空気の供給量に応じてエンジン200の出力トルクが増やされ、熱効率が最大となるように、又は最大となる状態に近づけるようにエンジン200の動作点が設定される。
【解決手段】動作状態制御部101aは、燃料のオクタン価に応じて制御マップ選択部100fによって選択された新たな動作線上に動作点が設定されるように、エンジン200に供給される空気の供給量を制御する。空気の供給量に応じてエンジン200の出力トルクが増やされ、熱効率が最大となるように、又は最大となる状態に近づけるようにエンジン200の動作点が設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエタノール等のアルコール系燃料を含む燃料を利用可能な内燃機関を備える、ハイブリット車両及びベルト式無段変速機(CVT;Continuously Variable Transmission、以下CVTと称す。)車両の内燃機関制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術の一例として、特許文献1に開示されたハイブリット車制御装置が挙げられる。特許文献1に開示されたハイブリット車制御装置は、エンジン特性マップに基づいて決定された車両駆動パワー要求値、エンジン回転数指令値、及びスロットル開度目標値に基づいて最も効率が良いエンジンの動作点を決定し、効率良くハイブリット車を駆動できる技術を提案している。特許文献2に開示された車両の駆動力制御装置は、バッテリの要求馬力に合わせてモータジェネレータを駆動しながらも、最適燃費でエンジン馬力を発生させることができる技術を提案している。
【0003】
また、近年では、自動車等の車両を駆動するためのエンジン等の内燃機関に供給される燃料としては、二酸化炭素の発生を低減する観点から、ガソリン、軽油等に限定されることなく、燃料の生成過程で発生する二酸化炭素を低減できるエタノール等のアルコール系燃料、或いはガソリン及びアルコール系燃料を混合した混合燃料が用いられる場合もある。
【0004】
【特許文献1】特開平10−98803号公報
【特許文献2】特開2000−179371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者等は、この種の技術によって制御される車両の内燃機関の燃料としてエタノール等のアルコール系燃料、或いはアルコール系燃料及びガソリンが混合された混合燃料が用いられた場合、そのオクタン価がガソリンに比べて相対的に高いことに起因して、ガソリンのみを燃料として用いた場合に比べてエンジン等の内燃機関における耐ノック性が優れていることを認識している。本願発明者等は、仮にノッキングがしない動作範囲でオクタン価が高い燃料を活用できれば、内燃機関の熱効率を高めることが可能であることを認識している。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術によって最適な動作線が設定された状態において燃料として混合燃料が供給された場合、耐ノック性に優れ、且つ熱効率が高い混合燃料の優位性が十分に反映された動作線に従ってハイブリット車の駆動を制御できるとは言い難い。よって、特許文献1に開示された技術は、混合燃料の優位性を利用することによって効率良くハイブリット車両を駆動することが困難である問題点を抱えていると言える。
【0007】
また、特許文献2には、特許文献1と同様に、燃料に応じて車両を駆動する際の駆動力を制御する技術についての記載が見られない。したがって、特許文献2に開示された技術は、混合燃料の優位性を十分に発揮させることによって効率良く車両の駆動力を制御することが困難である問題点を有している。
【0008】
加えて、使用者が燃料を継ぎ足すタイミング、或いはハイブリット車両の走行状況に応じてハイブリット車両に搭載される燃料のエタノール濃度は、断続的に大きく或いは経時的に徐々に変化してしまい、現実的にみて燃料のエタノール濃度を常時一定の濃度に維持することは困難である。したがって、ハイブリット車両の動力源である内燃機関が、その動作時に、燃料に含まれるエタノール濃度が考慮された上で最適な、即ち最も効率的な動作状態に制御されているとは言い難い問題点もある。
【0009】
よって、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、例えばエタノール等のアルコール系燃料を含む燃料を用いて動力を発生するハイブリット車両の内燃機関を制御可能なハイブリット車両の内燃機関制御装置、及びCVT車両の動力源である内燃機関を制御できるCVT車両の内燃機関制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置は上記課題を解決するために、ハイブリッド車両を駆動するための動力源である内燃機関を制御するためのハイブリッド車両の内燃機関制御装置であって、前記内燃機関に供給される燃料のオクタン価を特定するオクタン価特定手段と、前記内燃機関の動作を制御するための動作線を、前記特定されたオクタン価に応じて変更する動作線変更手段と、前記変更された動作線に基づいて、前記内燃機関の動作を制御する制御手段とを備える。
【0011】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置によれば、例えば内燃機関の暖気後、給油の度、或いは通常走行時等の動作時には、オクタン価特定手段によって、内燃機関に供給される燃料のオクタン価が特定される。ここで本発明の「燃料」とは、典型的にはガソリンではなく、例えばガソリンよりもオクタン価が高いエタノール等のアルコール系燃料、或いはガソリンにアルコール系燃料を混合させた混合燃料を意味するが、ガソリンのみであってもよい。
【0012】
本発明の「特定する」とは、オクタン価センサやアルコール濃度センサを用いて、直接又は間接的に検出する場合の他、オクタン価を規定するアルコール濃度等の各種パラメータから算出、推定、予想等する場合も含み、何らかの方式で、特定できれば足りる趣旨である。
【0013】
続いて、動作線変更手段によって、内燃機関の動作を制御するための動作線が、オクタン価特定手段によって特定されたオクタン価に応じて変更される。更に制御手段によって、動作線変更手段によって変更された動作線に基づいて、内燃機関の動作が制御される。ここで、既に述べたように本願発明者等の研究によれば、混合燃料を用いた場合、そのオクタン価がガソリンに比べて相対的に高いことに起因して、例えばガソリンのみを燃料として用いた場合に比べてエンジン等の内燃機関における耐ノック性が優れている。
【0014】
従って、動作線変更手段によって、例えばガソリンのみを燃料として用いた場合に比べてオクタン価が高い燃料の利点、即ち耐ノック性に優れている点を利用できるように、ノッキングが生じない動作範囲(即ち、回転数に対する出力トルクの範囲)を活用して、熱効率或いは燃料消費率又は燃費が高まるように動作線を変更すれば、制御手段による動作線に基づく制御によって、オクタン価の高さを有効活用した熱的或いはエネルギ的に効率的な内燃機関の駆動が可能になる。
【0015】
尚、「動作線に基づいて制御する」とは、典型的には、アクセルの踏込量に呼応して要求されている出力を達成する、動作線(即ち、設計上好ましいとされる或いは意図されている動作を行う際の回転数とトルクとの関係線)上で、回転数とトルクとの組み合わせを一つ決めることである。この際、組み合わせは、予め適切なものとして又は例えば燃料消費率に基づく学習により新たに適切なものとして設定されている動作線と、要求された出力に対応する等出力線との交点として、一義的に定められる。
【0016】
このように、本発明に係るハイブリット車両の内燃機関制御装置によれば、燃料のオクタン価に応じて、より具体的には、例えばエタノール等のアルコール系燃料の濃度に応じて、相対的に高い又は理想的には最も高い熱効率或いはエネルギ効率で、内燃機関が動作するように当該内燃機関を制御可能である。
【0017】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の一の態様では、前記動作線変更手段は、前記オクタン価の複数の値に応じて予め設定された複数の動作線の中から前記特定されたオクタン価に応じた一の動作線を選択し、該選択された一の動作線を前記変更された動作線としてもよい。
【0018】
この態様によれば、予め設定された複数の動作線から一の動作線を選択する際に、動作線変更手段によって迅速に動作線を変更することが可能である。
【0019】
この態様では、前記複数の動作線の夫々は、前記内燃機関にノッキングが起きない動作範囲内で設定されていてもよい。
【0020】
この態様によれば、例えばガソリンのみを燃料として用いた場合に比べてオクタン価が高い燃料の利点、即ち耐ノック性に優れている点を有効に利用でき、効率良く内燃機関を動作させることが可能である。尚、この態様において「ノッキングが生じない動作範囲」とは、例えば内燃機関の回転数における当該内燃機関の出力トルクの範囲を意味する。
【0021】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記動作線変更手段は、前記特定されたオクタン価において前記内燃機関の燃料消費率を高めるように前記動作線を変更してもよい。
【0022】
この態様において、「燃料消費率を高める」とは、好ましくは、燃料消費率を最高にする或いは最適化することであるが、従前の動作線と比べて大なり小なり燃料消費率が高くなるように動作線を更新すれば足りる趣旨である。この態様によれば、効率良くハイブリット車両を動作させることが可能である。
【0023】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記動作線変更手段は、前記オクタン価の複数の値に応じて用意された複数の動作線の中から前記特定されたオクタン価に応じた一の動作線を選択し、該選択された一の動作線を前記燃料消費率を高めるように変更してもよい。
【0024】
この態様において「用意された」とは、予め設定されることで存在する場合の他、従前の動作線の変更によって変更された、即ち燃料消費率を高めるように更新された動作線が存在する場合も含む意味である。この態様によれば、選択された一の動作線に応じて効率良くハイブリット車両を動作させることが可能である。
【0025】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記動作線変更手段は、前記内燃機関にノッキングが起きない動作範囲内で前記燃料消費率を高めてもよい。
【0026】
この態様では、予め設定されることで存在する場合の他、従前の動作線の変更によって変更された、即ち燃料消費率を高めるように更新された動作線が存在する場合に、例えばガソリンのみを燃料として用いた場合に比べてオクタン価が高い燃料の利点、即ち耐ノック性に優れている点を有効に利用でき、効率良く内燃機関を動作させることが可能である。
【0027】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記内燃機関に要求される要求トルクが所定のトルクより高いか否かを判定するトルク判定手段を更に備え、前記動作線変更手段は、前記要求トルクが前記所定のトルクより高いと判定された場合に、前記動作線を変更し、前記要求トルクが前記所定のトルクより低いと判定された場合に、前記動作線を変更しなくてもよい。
【0028】
この態様では、トルク判定手段によって判定された結果に応じて、続く動作線変更手段による動作線に関する処理が異なる。より具体的には、動作線変更手段は、要求トルクが所定のトルクより高いと判定された場合に、動作線を変更することによって、例えば熱的に或いはエネルギ的に効果的な動作が可能となる動作線に変更する。また、要求トルクが所定のトルクより低いと判定された場合には、動作線を変更することによって、例えば熱的に或いはエネルギ的に効果的な動作が可能にならないといえる場合が多いことから、動作線を変更しない。
【0029】
尚、「所定のトルク」とは、オクタン価特定手段によってオクタン価が特定された燃料と比較されるべき燃料を用いて内燃機関を動作させた場合に、内燃機関にノッキングが生じる出力トルクの限界値を意味する。ここで、「比較されるべき燃料」とは、本発明の「燃料」より相対的にオクタン価が低い燃料を意味し、より具体的には、例えば燃料がエタノール等のアルコール系燃料及びガソリンの混合燃料、又はアルコール系燃料である場合、ガソリンのみで構成される燃料、或いは混合燃料より相対的にオクタン価が低い燃料を意味する。「要求トルク」とは、ドライバがアクセルを踏み込んだ際にアクセルの踏み込み量に連動して内燃機関に要求される要求トルクであり、より具体的には、例えばエンジン等の内燃機関に加わるエンジン負荷である。
【0030】
この態様によれば、要求トルクに応じて、より効率良くハイブリット車両を動作可能であるか否かが判定されるため、その判定結果に応じて動作線を変更し、総合的に効率良くハイブリット車両の動作を制御できる。
【0031】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記内燃機関に供給される空気の供給量を規定する各種パラメータの設定値を既存の設定値から前記変更された動作線に応じた新たな設定値に変更することで、前記変更された動作線に応じて前記内燃機関の動作を制御してもよい。
【0032】
この態様において、「既存の設定値」とは、内燃機関に供給される空気の供給量に応じて各種パラメータの設定値を予め実験的或いは理論的に設定しておいた値である。「新たな設定値」とは、変更された動作線に応じて、熱的又はエネルギ的に有利な動作が可能になるように、例えばその変更時に内燃機関に供給されるべき空気の供給量に応じて実践的に設定された値を意味する。したがって、この態様によれば、動作線を変更した際における環境条件等の変動要因が考慮された上で、内燃機関に供給されるべき供給量で空気を供給できる。
【0033】
この態様では、前記制御手段は、前記変更された動作線に対応して前記内燃機関に供給される空気の供給量、及び前記既存の設定値に応じて供給されていた空気の供給量の差に基づいて、前記供給される空気に対応した実開度を前記新たな設定値毎に算出する実開度算出手段と、前記新たな設定値及び前記算出された実開度の関係を学習する学習手段とを有していてもよい。
【0034】
この態様によれば、変更された動作線に応じて最適な、又はより適した空気の供給量となるように実開度を算出でき、新たな設定値によって熱的或いはエネルギ的により効果的なハイブリット車両の動作が可能になる。学習手段は、新たな設定値及び算出された実開度を学習することから、次回動作線を変更する際には、以前に学習した学習結果に基づいて迅速、且つ効率良く新たな設定値が設定される。
【0035】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記オクタン価特定手段は、前記燃料の空燃比及び前記燃料と比較されるべき基準燃料の基準空燃比に基づいて前記オクタン価を算出してもよい。
【0036】
この態様では、オクタン価特定手段によって燃料のオクタン価を直接特定することなく、空燃比及び基準空燃比に基づいて燃料のオクタン価を算出できる。尚、この態様における「基準空燃比」とは、燃料に対して、例えば相対的にオクタン価が低い基準燃料を用いて内燃機関を駆動した場合における空燃比を意味する。この態様によれば、ハイブリット車両の搭載された既存の構成要素によって、間接的にオクタン価を算出できるため、ハイブリット車両の製造コスト及び新たな部品を搭載することによる製品コストの増大を低減できる。
【0037】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記燃料は、アルコール系燃料を含んでおり、前記オクタン価特定手段は、前記燃料を前記内燃機関に供給するための燃料供給路部の途中に設けられた濃度センサによって測定された前記アルコール系燃料の濃度に基づいて前記オクタン価を特定してもよい。
【0038】
この態様によれば、濃度センサによってアルコール系燃料の濃度が直接測定されるため、オクタン価特定手段は、空燃比に基づいてオクタン価を算出する場合に比べて迅速にアルコール系燃料の濃度に基づいて迅速に燃料のオクタン価を特定できる。このような濃度センサは、内燃機関の温度による測定誤差を低減し、且つ燃料に含まれるアルコール系燃料の濃度を高精度で測定するために、例えば燃料を噴射するインジェクタ及び燃料タンク間に設けられた燃料供給路部の途中に設けられている。
【0039】
本発明に係るCVT車両の内燃機関制御装置は上記課題を解決するために、ベルト式無段変速機を備えたCVT車両を駆動するための動力源である内燃機関を制御するためのCVT車両の内燃機関制御装置であって、前記内燃機関に供給される燃料のオクタン価を特定するオクタン価特定手段と、前記内燃機関の動作を制御するための動作線を、前記特定されたオクタン価に応じて変更する動作線変更手段と、前記変更された動作線に基づいて、前記内燃機関の動作を制御する制御手段とを備える。
【0040】
本発明に係るCVT車両の内燃機関制御装置によれば、上述のハイブリット車両の内燃機関制御装置と同様に、燃料のオクタン価に応じて効率良く内燃機関を駆動させることが可能であり、熱的又はエネルギ的に効率良くCVT車両を動作させることが可能である。
【0041】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、図面を参照しながら本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置及びCVT車両の内燃機関制御装置の各実施形態を説明する。
【0043】
(第1実施形態)
<1−1:ハイブリッドシステムの構成>
先ず、図1を参照しながら本発明の第1実施形態に係るハイブリッドシステム10の構成を説明する。図1は、ハイブリッドシステム10のブロック図である。
【0044】
図1において、ハイブリッドシステム10は、制御装置100、本発明の「内燃機関」の一例であるエンジン200、モータジェネレータMG1、モータジェネレータMG2、動力分割機構300、インバータ400、バッテリ500、及び車速センサ600を備え、ハイブリッド車両20を制御するシステムである。
【0045】
制御装置100は、本発明の「制御手段」の一例である制御部101、本発明の「オクタン価特定手段」の一例であるオクタン価特定部100a、本発明の「動作線変更手段」の一例である動作線変更部100b、本発明の「トルク判定手段」の一例である要求トルク判定部100c、トルク算出部100d、燃費率算出部100e、制御マップ選択部100f、及び記憶部102を備えている。制御装置100は、ハイブリッドシステム10の動作全体を制御する、例えばECU(Engine Controlling Unit)等の制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の内燃機関制御装置」の一例として機能する。
【0046】
制御部101は、動作状態制御部101a、本発明の「実開度算出手段」の一例である実開度算出部101b、及び本発明の「学習手段」の一例である学習部101cを備えている。
【0047】
動作状態制御部100aは、エンジン200、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2、動力分割機構300、インバータ400、及びバッテリ500の動作状態を制御すると共に、エンジン200の動作線が変更された際には、変更された新たな動作線に基づいてエンジン200の動作を制御する。実開度算出部101b及び学習部101cについては、後に詳細に説明する。
【0048】
オクタン価特定部100aは、エンジン200に供給される燃料のオクタン価を特定する。本実施形態では、エンジン200に供給される燃料は、アルコール系燃料の一例であるエタノール及びガソリンを含んでなる混合燃料である。ここで、エタノールはガソリンに比べて1.6倍程度の高い発熱量を放出しながら燃焼するため、ガソリンにエタノールが含まれた混合燃料をエンジン200で燃焼させた場合の空燃比と、基準燃料の一例であるガソリンをエンジン200で燃焼させた場合の基準空燃比との差に基づいて、オクタン価特定部101aは、エンジン200に供給された燃料のオクタン価を特定できる。より具体的には、例えば、上述の空燃比及び基準空燃比の差に基づいて、燃料に含まれるエタノールの濃度を算出し、この算出結果に基づいてオクタン価を算出する。
【0049】
尚、空燃比を算出するために必要な空気の供給量、燃料噴射量及び発熱量のうち、エンジン200に供給される空気の供給量は、エンジン200に空気を供給する際の開度を設定するための各種パラメータの設定値、より具体的には、例えばVVTの開閉タイミング、作用角、及びリフト量等の設定値から求められる開度に基づいて算出される。燃料噴射量は、燃料噴射量を測定するセンサ等の測定手段から取得された測定値を用いればよい。加えて、発熱量は、温度センサによって測定されたエンジン200の温度の変化に基づいて算出される。作用角は、クランク角センサによって測定されていればよい。また、基準燃料の基準空燃比は、エンジン200について予め算出しておけばよい。したがって、オクタン価特定部100aによれば、エンジン200を構成する部品点数を増やすことなく、即ち、ハイブリット車両システム10の製造コストを増大させることなく、燃料のオクタン価を特定できる。
【0050】
エタノール等のアルコール系燃料のようにガソリンに比べてオクタン価が高い燃料は、ガソリンのみを燃料に用いた場合に比べて耐ノック性に優れている。したがって、後述するように、動作線変更部100bは、特定された燃料のオクタン価に応じてエンジン200にノッキングが発生しない動作範囲に動作線を変更する。
【0051】
記憶部102は、制御マップ記憶部102a、及びエンジン200に供給される空気の供給量を規定するVVT開閉タイミング等の各種パラメータの設定値を記憶する設定値記憶部102bを備えている。記憶部102は、例えばROM(Read Only Memory)などで構成された不揮発性記憶領域と、RAM(Random Access Memory)などで構成された揮発性記憶領域を有する記憶媒体である。
【0052】
制御マップ記憶部102aは、メモリ等の記憶装置であり、エンジン200に供給される燃料のオクタン価に応じてより最適な、即ち理想的には最大の熱効率でエンジン200を動作可能なようにエンジン200の動作を制御するための複数の制御マップをしかるべき形式で記憶している。
【0053】
ここで、図3を参照しながら、制御マップについて詳細に説明する。図3は、制御マップの一例を示した図である。図3において、制御マップ30は、縦軸にエンジン200の出力トルクTe、横軸にエンジン200の回転数Neを表してなる座標平面に動作線が記録されており、制御マップ30に基づいて動作状態制御部100aは、エンジン200の動作を制御する。制御マップ30は、予め制御マップ記憶部101aにおける不揮発性領域に燃料のオクタン価の複数の値に応じて予め設定された動作線を含んで複数格納されている。
【0054】
制御マップ30は、エンジン200の出力トルクTe及び回転数Neの夫々を縦軸及び横軸とする座標平面上において、エンジン200に供給されるオクタン価毎にエンジン200の燃費率が最適になるように設定された動作線を含んでいる。このような動作線は、座標平面上において、エンジン200に供給される燃料のエタノール濃度、即ち予めエンジン200の制御条件及び環境条件の一例である燃料のオクタン価に応じて互いに異なる燃費率等高線を踏まえて決定されている。例えば、オクタン価が高くなるにしたがって、燃費率等高線Sのうちより燃費率が高い等高線は、制御マップ30中において右上方にシフトし、これに伴い、エンジン200を動作させるための最適な動作線も変化してしまう。したがって、高い燃費率でエンジン200を動作させる観点からは、燃料のオクタン価に応じて燃費率等高線Sが変化する毎に最適な動作線を選択するのが望ましいと言える。よって、本実施形態では、後述するように燃料のエタノール濃度、即ちオクタン価に応じてエンジン200の燃料消費率を高めるように理想的には最適な制御マップが選択される。
【0055】
等出力線Pi(i=1,2,・・・,9)はエンジン200の出力値を一定とした場合のエンジントルクTeとエンジン回転数Neとの関係線である。図3においては、説明を簡略化するために、等出力線は9本しか描かれていないが、実際にはより細かく設定することが可能である。等出力線Piは、回転数及び出力トルクの積で定義される。
【0056】
動作状態制御部101aは、エンジン200を動作させる際、エンジン200の出力トルクがその都度求められる要求出力値に対応する等出力線上で予め設定されている動作点によって表されるエンジントルクTe及びエンジン回転数Neの組み合わせとなるように動作状態を決定する。動作線は、これら動作点を繋げたものとして規定される。
【0057】
動作線Qa及びQbは、互いに異なるエタノール濃度を有する燃料の夫々において、エンジン200の熱効率が最適となる動作線を夫々示している。動作線Qa及びQbの夫々が各等出力線Piと交差する交差点の夫々が、動作線Qa及びQbにおけるエンジン200の動作点Qa1、Qa2、・・・、Qa9、及びQb1、Qb2、・・・、Qb9である。
【0058】
後述するように、エンジン200では、等出力線上で動作点を変化させる際に、エンジン200に供給される空気の供給量、即ちVVTのバルブタイミング等の各種パラメータが制御され一の出力値が維持される。エンジン200の出力トルクは、出力トルクTe及びエンジン200の回転数Neの夫々を縦軸および横軸とする座標平面上において、等出力線と、制御マップ選択部100dによって選択された制御マップに予め設定された動作線、即ち変更された動作線との交差点に設定される。これにより、エンジン200は、出力値を維持しながら高い熱効率で動作される。
【0059】
尚、図3では、説明の便宜上同一座標平面に2つの動作線Qa及びQbを図示しているが、制御マップ記憶部101aがオクタン価の複数の値に応じて記憶している複数の制御マップの夫々には、一本ずつ最適な動作線が予め設定されている。
【0060】
再び、図1において、制御マップ選択部100fは、特定された燃料のオクタン価に応じて、制御マップ記憶部101aに記憶された複数の制御マップから最適な、又はより熱効率が高い状態でエンジン200の動作を制御できる制御マップを選択し、動作線変更部100bは、選択された制御マップに含まれる一の動作線を新たな動作線としてエンジン200の動作線を変更する。
【0061】
このように、動作線変更部100bは、エンジン200に供給された燃料のオクタン価に応じて動作線を自由に設定し直すことが可能である。加えて、燃料のオクタン価に応じて変化する熱効率の変化も選択された一の動作線に考慮されているため、例えば燃料に含まれるエタノールの濃度が、断続的に、或いは経時的に変化してしまい、実践的にみて燃料のエタノール濃度を常時一定の濃度に維持することは困難である場合でも、動作線変更部100bは、燃料のオクタン価に応じて選択された動作線に従って動作線を変更できる。
【0062】
動作状態制御部101aは、変更された動作線上に出力トルクが設定されるようにエンジン200の動作を制御する。動作状態制御部100aは、燃料のオクタン価に応じてエンジン200に供給される空気の供給量を増やすことを指示する指令を送信することによって、エンジン200の出力トルク及び回転数等で決まる出力値に対応付けられて設定された複数の動作点によって規定される動作線上に動作点を設置する。
【0063】
要求トルク判定部100cは、エンジン200に加わるエンジ負荷が所定のトルクより高いか否かを判定する。これにより、エンジン200に供給される燃料のエタノール濃度、即ちオクタン価に応じて最適な、又はより理想的に熱効率を高めることができる制御マップを選択するほうが相対的に高い熱効率でエンジン200を動作させることが可能であるか否かが判定されていることになる。
【0064】
ここで、図4を参照しながら、エンジン200から出力される出力トルク及び熱効率の関係を詳細に説明する。図4は、出力トルク及び熱効率の関係を模式的に示した関係図である。尚、説明の便宜上エンジン200の回転数Neを一定(N1)としており、図4において、エンジン200の出力トルクTeに対する熱効率曲線La、Lb及びLcを示している。
【0065】
図4において、熱効率曲線La、Lb及びLcの夫々は、燃料に含まれるエタノール濃度が0%、50%、100%である場合の熱効率曲線である。熱効率曲線Laでは、出力トルクT0でエンジン200の熱効率Qtheが最大値Qatheとなり、エンジン200の出力トルクを出力トルクT0より高めた場合にはノッキングが生じ、熱効率Qtheが低下する。
【0066】
他方、熱効率曲線Lb或いはLcの夫々では、エンジン200の熱効率Qtheが出力トルクT0より高い出力トルクT1或いはT2で最大となる(例えば、エタノール濃度が100%では、Qcthe。)。
【0067】
ここで、出力トルクT0において、熱効率曲線La、Lb及びLcにおけるエンジン200の熱効率を比較すると、熱効率曲線Lbでは熱効率曲線Laに比べてΔQatheだけ熱効率が高くなる。加えて、エンジン200の出力トルクを高め、例えば熱効率曲線Lcにおいて最大の熱効率を与える出力トルクT2では、熱効率の変化量ΔQctheが変化量ΔQatheに比べて更に大きくなる。したがって、オクタン価が相対的に高い燃料、例えばエタノール濃度が高い燃料を用いる場合には、比較されるべき燃料であるガソリンのみで構成される燃料を用いた場合に最大の熱効率を与える出力トルクT0より高い出力トルクをエンジン200に出力させることによって、熱効率を高めることが可能である。
【0068】
尚、例えばエタノール濃度が50%の燃料を用いた場合には熱効率曲線Lbに対応した動作線が選択され、トルクT0からT1のトルク範囲でエンジン200が動作される。また、エタノールのみで燃料が構成されている場合(エタノール濃度が100%の場合)には、熱効率曲線Lcに対応した動作線が選択され、トルクT0からT2のトルク範囲でエンジン200が動作される。これにより、各動作線上でノッキングを生じさせることなく相対的に高い熱効率でエンジン200が動作される。
【0069】
ここで、図4を参照しながらトルク判定部100cの具体的な処理動作を説明する。ここでは、エンジン200に供給される燃料のエタノール濃度が0%から100%に変化した場合を例に挙げる。
【0070】
図4において、エンジン200にエタノール濃度が0%である燃料が供給されている状態では、エンジン200は熱効率曲線Laに対応した動作線上で動作されている。エンジン200にエタノール濃度が100%の燃料、即ちエタノールのみで構成された燃料が供給された場合、エンジン200に加わるエンジン負荷、即ちドライバの踏み込み量に対応してエンジンに要求される要求トルクが、本発明の「所定のトルク」の一例である出力トルクT0より大きいと判定されると、熱効率曲線Lcに対応した動作線上にエンジン200の動作点を設定するほうが、熱効率曲線Laに対応した動作線上でエンジン200の動作点を維持する場合に比べて、相対的に高い熱効率でエンジン200を動作させることが可能である。このような場合、制御マップ選択部100fが、熱効率曲線Lcに対応した動作線を含む制御マップを選択し、動作状態制御部101aは、選択された制御マップに含まれる、即ち熱効率曲線Lcに対応する動作線上にエンジン200を動作させる。
【0071】
他方、燃料に含まれるエタノール濃度が0%から100%に変化した場合であっても、エンジン200に加わるエンジン負荷が出力トルクT0より小さい場合には、エンジン200は、熱効率曲線Laに対応した動作線上でエンジン200を動作させる。エンジン負荷が出力トルクT0より小さい範囲では、動作線を変更することによって得られる熱効率の利得が小さく、動作線を変更してまで熱効率を高める利点が小さいためである。したがって、トルク判定部100cは、燃料のエタノール濃度、即ち燃料のオクタン価を考慮した上で、エンジン負荷が所定のトルクより高いが否かを判定することによって、動作線を変更するほうが熱効率、即ち燃料消費率を高めることができる可能性があるか否かを判定していることになる。
【0072】
次に、図5を参照しながら変更される前後の夫々の動作線の関係を説明する。図5は、エンジン200の動作線を示した図である。
【0073】
図5において、本発明の「予め設定された複数の動作線」の夫々一例である動作線Qa、Qb及びQcは、図4に示した熱効率曲線La、Lb及びLcに対応している。図4で説明したように燃料に含まれるエタノール濃度が高いほど、最大の熱効率を与えるエンジン200の出力トルクは高出力側にシフトするため、出力トルク及び回転数の夫々を縦軸及び横軸とする座標平面上において動作線は、燃料のオクタン価が高いほど高出力トルク側にシフトする。
【0074】
より具体的には、図5中、例えばガソリンのみで構成される燃料(エタノール濃度0%)の動作線Qaに比べて、エタノール濃度が50%及び100%である燃料の動作線Qb及びQcは上側に位置している。このため、オクタン価が相対的に高い燃料を用いる場合、エンジン200における熱効率を高めるためには、エンジン200から出力される出力トルクをエンジン200にノッキングが生じない動作範囲で出力トルクT0より高め、動作線を高出力トルク側にシフトさせることになる。
【0075】
したがって、例えばエタノール濃度が100%の燃料を用いた場合には、動作点は理想的には等出力線Pn及び動作線Qcの交差点である動作点Qc1(回転数;N1、出力トルク;T2)に設定される。
【0076】
エタノール濃度が100%の燃料を用いた場合であって、エンジン200の出力値を一定にすることを前提とする場合には、動作点は、理想的には等出力線線Pn及び動作線Qcが座標平面上で交差する交差点Qc1´に設定される。尚、選択される動作線は、すでに選択されている動作線に比べて相対的に高い熱効率、即ち高い燃料消費率でエンジン200を動作可能なように選択されていればよく、例えば、燃料に含まれるエタノール濃度が100%の場合に、燃料に含まれるエタノール濃度が50%である場合に最大の熱効率を与えうる動作線Qbを選択してもよい。
【0077】
図4及び図5では、エタノール濃度が0、50及び100%の例を挙げたが、燃料に含まれるエタノール濃度がこれら濃度と異なる場合であっても、これと同様に、燃料に含まれるエタノール濃度、即ち燃料のオクタン価に応じて選択された各動作線及び等出力線の交差点に動作点が維持されるように動作状態制御部101aによってエンジン200の動作が制御される。
【0078】
再び図1において、設定値記憶部102bは、変更された動作線上に出力トルクを設定する際にエンジン200に供給された空気の供給量、及び動作線を変更する前の既存の設定値に応じて供給されていた空気の供給量を記憶する。
【0079】
ここで、エンジン200の動作時においてその動作状態に変動を与える環境条件等の変動要因を全て考慮した上で、例えばVVT等の開閉タイミング等の各種パラメータの最適な設定値を決めることは困難である。より具体的には、制御マップ選択部100fによって選択された制御マップに予め設定された動作線上にエンジン200の動作点を設定する際に、実際にエンジン200に供給される空気の供給量が各種パラメータの設定値に応じて供給されるべきはずの空気の供給量と相違することが多く、エンジン200に供給された燃料のオクタン価に応じた最も高い、或いは相対的に高い熱効率でエンジン200を動作させることが困難になる場合が多い。
【0080】
そこで、実開度算出部101bは、燃料のオクタン価に応じて変更された動作線上に出力トルクを設定する際にエンジン200に供給されるべき空気の供給量と、動作線を変更する前の動作線における各種パラメータの設定値、即ち既存の設定値に応じて供給されていた空気の供給量との差に基づいて、変更された動作線における新たな設定値に対応する実開度を算出する。より具体的には、変更された動作線上に動作点を設定するために必要とされる空気が供給されるように設定されたVVTの開閉タイミング等の各種パラメータの新たな設定値と、既存の設定値との差に基づいて、変更された動作線に動作点を設定するために供給すべき空気を供給するためには、各種パラメータの設定値を具体的にどの程度に設定すればよいかが算出される。
【0081】
したがって、実開度算出部101bによって算出された新たな設定値は、エンジン200が動作する際の各種環境条件等の変動要因を考慮した上で、実質的に最適な、或いはより最適な供給量に近い空気の供給量を与える各種パラメータの設定値である。このような新たな設定値は、設定値記憶部102bに記憶される。
【0082】
学習部101cは、設定値記憶部102bに記憶された各種パラメータの新たな設定値と、この新たな設定値及び既存の設定値に基づいて実開度算出部101bが算出した実開度との関係を学習し、動作状態制御部100aによる次回のエンジン200の動作状態の制御に反映する。学習部101cによれば、次回に動作状態制御部100aがエンジン200の動作を制御する際に、迅速且つ簡便に燃料のオクタン価に応じた理想的に最適な熱効率でエンジン200を動作させることが可能である。より具体的には、燃料のオクタン価に応じて各種パラメータの最適な設定値が一度設定されていれば、再度同じオクタン価の燃料がエンジン200に供給された場合に、各種パラメータの最適な設定値を学習し直すことなく、迅速、且つ簡便に各種パラメータを最適な設定値に設定でき、高い熱効率でエンジン200を動作させることが可能である。
【0083】
また、学習部101cによる新たな設定値及び各種パラメータの関係が学習されていない燃料が供給された場合でも、動作状態制御部101aは、すでに学習部101cによって学習された学習結果に基づいて、学習結果を参照しない場合に比べて、オクタン価に応じて選択された動作線上で迅速にエンジン200を動作させることができる。動作状態制御部101aは、例えば、以前に学習された他の新たな設定値及び各種パラメータの関係から今回エンジン200に供給されたオクタン価に近いオクタン価を有する燃料についての学習結果を読み出し、今回供給されたオクタン価に応じた動作線上でエンジン200を動作できるように、読み出された以前の学習結果に基づいて各種パラメータを合わせこんでいくことが可能である。より具体的には、動作状態制御部101aは、以前に学習された新たな設定値及び各種パラメータの関係から出発して、実質的に供給される空気の供給量を調整し、今回選択された動作線上に迅速に動作線を変更する。
【0084】
燃料のオクタン価に応じて選択された動作線上に動作点を合わせこんでいく際には、各種パラメータが合わせこまれていく過程において、燃費率算出部100eが、エンジン200の回転数、出力トルク及び空気の供給量に基づいて各種パラメータが変更される度に燃費率を算出する。動作状態制御部101aは、算出された燃費率を参照しつつ燃費率が向上するようにオクタン価に応じて選択された動作線にエンジン200の各種パラメータを合わせこんでいき、今回供給された燃料のオクタン価に応じた動作線でエンジン200を動作させるための各種パラメータの新たな設定値が特定される。
【0085】
また、動作線変更部100bは、燃料のオクタン価の複数の値に応じて用意された複数の動作線の中から、今回特定されたオクタン価に応じた動作線を選択し、この選択された動作線を燃料消費率を高めるように変更してもよい。したがって、オクタン価が特定された時点で、動作線として燃料のオクタン価に応じてこれまで最高の熱効率を与えると考えられていた動作線を選択することに加えて、エンジン200の動作状態を変動させる環境条件の考慮した上で、選択された動作線を燃費消費率が向上するように変更することも可能である。
【0086】
より具体的には、エンジン200への空気の供給量を規定する各種パラメータを連続的に、或いは断続的に変更しながら空気の供給量を変更し、これに伴い動作線を燃料のオクタン価に応じた最適な動作線に近づけるように変更する。尚、このような場合でも、動作線変更部100bは、エンジン200にノッキングが生じない動作範囲で動作線を変更する。
【0087】
トルク算出部100dは、エンジン200の動作時に、エンジン200の出力トルクを算出する。動作状態制御部101aは、トルク算出部100dで算出された出力トルクを参照し、エンジン200の動作状態を制御する。
【0088】
エンジン200は、ハイブリッド車両20の主たる動力源として機能する。尚、エンジン200の詳細な構成については後述する。モータジェネレータMG1は、バッテリ500を充電するための発電機として、或いはエンジン200の駆動力をアシストする電動機として機能するように構成されている。モータジェネレータMG2は、エンジン200の出力をアシストする電動機として、或いはバッテリ500を充電するための発電機として機能するように構成されている。尚、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。但し、他の形式のモータジェネレータであっても構わない。動力分割機構300は、図示せぬサンギア、プラネタリキャリア、ピニオンギア、及びリングギアを備えた遊星歯車機構である。これら各ギアのうち、内周にあるサンギアの回転軸はモータジェネレータMG1に連結されており、外周にあるリングギアの回転軸は、モータジェネレータMG2に連結されている。サンギアとリングギアの中間にあるプラネタリキャリアの回転軸はエンジン200に連結されており、エンジン200の回転は、このプラネタリキャリアと更にピニオンギアとによって、サンギア及びリングギアに伝達され、エンジン200の動力が2系統に分割されるように構成されている。ハイブリッド車両20において、リングギアの回転軸は、ハイブリッド車両20における伝達機構21に連結されており、この伝達機構21を介して車輪22に駆動力が伝達される。
【0089】
インバータ400は、バッテリ500から取り出した直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給すると共に、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ500に供給することが可能に構成されている。バッテリ500はモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を駆動するための電源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池である。バッテリ500には、バッテリ500の残容量を検出するSOCセンサ510が設置されており、制御装置100と電気的に接続されている。車速センサ600は、ハイブリッド車両20の速度を検出するセンサであり、制御装置100と電気的に接続されている。
【0090】
<1−2:エンジンの詳細構成>
次に、図2を参照しながらエンジン200の詳細な構成を説明する。図2は、エンジン200の半断面システム系統図である。
【0091】
図2において、エンジン200は、シリンダ201内において点火プラグ202により混合気を爆発させると共に、爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクションロッド204を介してクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。以下に、エンジン200の要部構成を動作と共に説明する。
【0092】
シリンダ201内における燃料の燃焼に際し、外部から吸入された空気は吸気管206を通過し、インジェクタ207から噴射された燃料と混合されて混合気となる。インジェクタ207には、ガソリン及びエタノールが混合された混合燃料が燃料タンク223からフィルタ224を介して供給されている。インジェクタ207は、混合燃料を制御装置100の制御に従って吸気管206内に噴射する。尚、燃料タンク223には、燃料残量を検出するための燃料センサ225が設置されている。
【0093】
燃料タンク223からインジェクタ207に燃料を供給するための燃料供給路部227は、その途中に設けられたフィルタ224及び濃度センサ228を有している。
【0094】
濃度センサ228は、燃料タンク223からインジェクタ207に供給される燃料に含まれるエタノールの濃度を測定し、その測定結果をオクタン価特定部100aに送信する。オクタン価特定部100aは、濃度センサ228から送信された測定結果に基づいて燃料のオクタン価を特定する。これにより、燃料の空燃比等に基づいて燃料のオクタン価を算出する場合に比べて、迅速に燃料のオクタン価を算出できる。濃度センサ228は、エンジン200の温度による測定誤差を低減し、且つ燃料に含まれるエタノールの濃度を高精度で測定するために、エンジン200から十分に離れた燃料供給路部227の途中に設けられている。
【0095】
シリンダ201内部と吸気管206とは、吸気バルブ208の開閉によって連通状態が制御されている。シリンダ201内部で燃焼した混合気は排気ガスとなり吸気バルブ208の開閉に連動して開閉する排気バルブ209を通過して排気管210を介して排気される。
【0096】
吸気管206上には、クリーナ211が配設されており、外部から吸入される空気が浄化される。クリーナ211の下流側(シリンダ側)には、エアフローメータ212が配設されている。エアフローメータ212は、ホットワイヤー式と称される形態を有しており、吸入された空気の質量流量を直接測定することが可能に構成されている。吸気管206には更に、吸入空気の温度を検出するための吸気温センサ213が設置されている。
【0097】
吸気管206におけるエアフローメータ212の下流側には、シリンダ201内部への吸入空気量を調節するスロットルバルブ214が配設されている。このスロットルバルブ214には、スロットルポジションセンサ215が電気的に接続されており、その開度が検出可能に構成されている。更に、スロットルバルブ214の周囲には、運転者によるアクセルペダル226の踏み込み量を検出するアクセルポジションセンサ216、及びスロットルバルブ214を駆動するスロットルバルブモータ217も配設されている。
【0098】
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置を検出するクランクポジションセンサ218が設置されている。クランクポジションセンサ218は、クランクシャフト205の回転状態に基づいて、シリンダ201内部におけるピストン203の位置、及びエンジン200の回転数など取得することが可能に構成されている。また、シリンダ201を収容するシリンダブロックには、エンジン200のノック強度を測定可能なノックセンサ219が配設されており、シリンダブロック内のウォータージャケット内には、エンジン200の冷却水温度を検出するための水温センサ220が配設されている。
【0099】
排気管210には、三元触媒222が設置されている。三元触媒222は、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能な触媒である。排気管210における三元触媒222の上流側には、空燃比センサ221が配設されている。空燃比センサ221は、排気管210から排出される排気ガスから、エンジン200の空燃比を検出することが可能に構成されている。オクタン価特定部100aは、すでに述べたように空燃比センサ221から送信される測定結果に基づいて燃料のオクタン価を算出することも可能である。
【0100】
<1−3:エンジンの基本制御動作>
次に、図1及び図2を参照しながらエンジン200の基本的な制御動作について説明する。
【0101】
図1及び図2において、トルク算出部100dは、エンジン200に要求される出力であるエンジン要求出力を一定の周期で繰り返し演算し、エンジン要求出力に対応した要求トルクを算出している。また、トルク算出部100dは、スロットルポジションセンサ215及び車速センサ600の出力信号に基づいてアクセル開度と車速とを取得し、記憶部102の不揮発性領域に記録されたマップを参照してアクセル開度及び車速に対応した出力トルク(伝達機構21に出力されるべきトルク)を求める。トルク算出部100dは、SOCセンサ510の出力信号に基づいて要求発電量を求める。トルク算出部100dは、要求発電量と各種の補機類(A/Cやパワーステアリングなど)の要求量とを参照して出力トルクを補正することにより、エンジンに要求されるエンジン要求出力を求める。尚、エンジン要求出力の演算方法は公知のハイブリッド車両で実行されている通りでよく、その細部は必要に応じて種々変更してよい。
【0102】
<1−4:エンジンの制御方法>
次に、図6乃至図9を参照しながら本実施形態の制御装置100が実行するハイブリット車両の内燃機関制御方法を説明する。図6は、本実施形態に係るハイブリット車両の内燃機関制御方法の処理ルーチンを示す流れ図である。図7は、エンジンに供給される空気の供給量及び出力トルクの関係を示す図であり、図8は熱効率が最大となる出力トルクにエンジンの出力トルクを近い付ける過程を説明するための図である。図9は、動作線に修正を施す処理を説明するための図である。
【0103】
図6において、オクタン価特定部100aが、エンジン200に供給される燃料のエタノール濃度(即ち、オクタン価)を特定する(S1010)。オクタン価特定部100aは、空燃比及び基準燃料を用いた場合の基準空燃比に基づいてエタノール濃度を算出してもよいし、濃度センサ228から供給された測定結果に基づいて燃料のエタノール濃度を特定してもよい。
【0104】
次に、要求トルク判定部100cが、エンジン負荷が所定のトルクより高いか否かを判定する(S1020)。要求トルクが所定のトルクより低いと判定された場合には、制御装置100は制御処理を終了し、次回の制御処理に備える。エンジン負荷が所定のトルクより高いと判定された場合には、制御マップ選択部100fが、エタノール濃度に応じて予め複数のオクタン価の複数の値毎に制御マップ記憶部102aに記憶されていた複数の制御マップから、特定されたオクタン価に応じた制御マップを制御マップ記憶部102aから選択する(S1030)。
【0105】
次に、制御マップ変更部100bは、オクタン価を特定するまでに設定されていた制御マップを、今回特定された燃料のエタノール濃度、即ちオクタン価に応じて選択された制御マップに変更する(S1040)。動作線変更部100bは、エンジン200の動作線を、選択された制御マップに含まれる動作線に変更する(S1050)。次に、動作状態制御部101aは、選択された制御マップに含まれる動作線に対応して予め設定されている各種パラメータの設定値(即ち、既存の設定値)と、この既存の設定値に応じて供給される空気の供給量(GA1)を特定する(S1060)。
【0106】
次に、動作状態制御部101aが、変更された動作線上でエンジン200を動作させるために、VVT等の各部にエンジン200への空気の供給量を増やすことを指示する指令を送信し、エンジン200に供給される空気の供給量の調整、即ち空気の供給量が増やされる(S1070)。
【0107】
ここで、図7及び図8を参照しながらエンジンに供給される空気の供給量及び出力トルクの関係と、エンジン200の出力トルク及び熱効率の関係を説明する。
【0108】
図7に示すように、エンジン200に供給される空気の供給量を連続的、又は断続的に増やすことによってエンジン200の出力トルクが、連続的、又は断続的に高められる。
【0109】
図8に示すように、例えば所定のトルクの一例である出力トルクT0より高いエンジン負荷がエンジン200に加わった場合に、例えば、燃料のエタノール濃度が0%の場合の熱効率曲線Laに対応した動作線上で動作されていたエンジン200が、燃料のエタノール濃度が100%の場合の熱効率曲線Lcに対応する動作線上で動作されるように、エンジン200に供給される空気の供給量が増やされ、これに伴い図中矢印で示すように出力トルクが、断続的に、又は連続的に、熱効率曲線Lcにおいて最も高い熱効率Qctheを与える出力トルクT2に近づくように高められる。
【0110】
再び、図6において、変更された動作線上にエンジン200の動作点が設定された際にエンジン200に供給されていた空気の供給量(GA2)が特定されると共に、そのときの各種パラメータの設定値、即ち燃料のオクタン価に応じて最適な熱効率を実際に与える、空気の供給量についての最適な設定値が特定される(S1080)。
【0111】
次に、設定値記憶部102bが、選択された制御マップに含まれる動作線に対応して予め設定されている各種パラメータの設定値(即ち、既存の設定値)及びこの既存の設定値に応じて供給される空気の供給量(GA1)と、変更された動作線における各種パラメータの最適な設定値及び空気の供給量(GA2)とを記憶する(S1090)。
【0112】
次に、実開度算出部101bは、ステップS1090で記憶されたデータを読み出して、エンジン200に設けられたVVT等の開閉タイミング等の各種パラメータに応じて決まる実開度を特定する(S1100)。これにより、変更された動作線にエンジン200の動作点を設定する際に供給される空気の供給量に対応した各種パラメータの既存の設定値が、実際に供給されるべき空気の供給量に対応していない場合でも、実際に最適な空気の供給量に対応した各種パラメータの新たな設定値を特定できる。より具体的には、エンジン200に供給される空気の供給量は、各種パラメータの指示値どおりにエンジン200に供給されているとは言い難く、各種変動要因によって実践上異なる場合が多い。このような場合でも、実開度を算出しておくことによって実際にエンジン200に必要とされる空気を供給するためには、各種パラメータをどの程度補正しておけばよいかが取得でき、これに伴い、変更された動作線に応じた空気を適切な供給量で供給できる。
【0113】
次に、学習部101cは、各種パラメータの新たな設定値及び実開度の関係を学習し(S1110)、次回に同じエタノール濃度の燃料(即ち、同じオクタン価を有する燃料)が供給された場合には、動作状態制御部101aは、学習部101cによる学習結果を参照することによって迅速に各種パラメータの新たな設定値を最適な設定値に、或いはより最適な設定値に近い値に設定できる。
【0114】
尚、図9に示すように燃料のオクタン価に応じて動作線を動作線Q1qから動作線Qnqに合わせ込む際には、エンジン200に供給される空気の供給量をリアルタイムで増やしながら、燃費率算出部100eによってその都度算出された燃費率を高めるように動作線に修正を施し、動作線Q1q、Q2q、・・・、Qn−1q、Qnqの順で動作線を目的の動作線Qnに近づけていってもよい。このような動作線の修正によれば、予め用意された複数の動作線の中に適切な動作線が含まれていない場合でも、より近い動作線を選択し、燃費率を算出しながら実践的にオクタン価に応じた最適な動作線を見つけ、その動作線にエンジン200の動作線を変更することも可能である。
【0115】
以上説明した制御装置10によって実行されるエンジン200の制御方法によれば、燃料のオクタン価に応じて、最適な、又はより最適な状態に近い熱効率でエンジン200を動作可能であり、燃料のオクタン価が変化した場合、より具体的には例えば燃料のエタノール濃度が変化した場合でも、生成時に二酸化炭素の発生が少ないエタノールを用いることによって環境に十分配慮した上で、エタノール濃度の変化に応じてより効率良くエンジンを動作させることが可能である。
【0116】
(第2実施形態)
次に、図10を参照しながら本発明の第2実施形態に係るCVT車両の内燃機関制御装置を説明する。本実施形態に係るCVT車両の内燃機関制御装置は、第1実施形態に係る制御装置と同様の構成を有しており、制御対象となるCVT車両がCVT機構を備えている点及びハイブリットシステムが構成されていない点で第1実施形態に係るハイブリット車両の内燃機関制御装置と相違する。以下では、第1実施形態と共通する部分に共通の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。尚、本実施形態に係るCVT車両の内燃機関制御装置をハイブリットシステムと組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【0117】
図10において、CVTシステム300は、本発明の第2の発明に係る「CVT車両の内燃機関制御装置」の一例である制御装置100と、CVT車両320を備えている。
【0118】
制御装置100は、第1実施形態と同様にCVT車両320が備えるエンジン200が、燃料のオクタン価に応じて最適な、又はより最適な熱効率で動作されるように、エンジン200の動作を制御している。CVT車両320は、制御装置100によってその動作が制御されるCVT機構31を備えており、制御装置100の制御の下で連続的にギア比を変化させることによって、変速比を連続的に変化可能なように構成されている。
【0119】
本実施形態に係る制御装置100によれば、第1実施形態と同様に、エンジン200に供給される燃料のエタノール濃度、即ちオクタン価に応じて高い熱効率でエンジンを動作させることが可能である。加えて、本実施形態に係るCVT車両の内燃機関制御装置によれば、MT(Manual Transmission)やAT(Automatic Transmission)のように、エンジンの回転数がドライバのアクセル踏込に素直に応じることなく動作線が勝手に連続的に変更されるので、次にどのような動作線が最適な動作線として選択されるかが確定しない場合でも、第1実施形態と同様に燃料消費率を算出しながら、動作線を最適な、或いはより最適な動作線に自動的に変更できる。
【0120】
以上説明したように、本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリット車両の内燃機関制御装置及びCVT車両の内燃機関制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】第1実施形態に係るハイブリットシステムのブロック図である。
【図2】第1実施形態に係るハイブリットシステムが備えるエンジンの半断面システム系統図である。
【図3】制御装置によって参照される制御マップを模式的に示した模式図である。
【図4】エンジンの出力トルク及び熱効率の関係を示した関係図である。
【図5】複数の動作線の相互関係を示した関係図である。
【図6】本実施形態に係るハイブリット車両の内燃機関制御装置によって実行される制御方法の処理ルーチンを示す流れ図である。
【図7】空気の供給量及び出力トルクの関係を示した関係図である。
【図8】出力トルクを高めることによって熱効率が高められる過程を示した図である。
【図9】動作線に修正を施すことによって、最適な動作線に動作線を近づける過程を示した図である。
【図10】第2実施形態に係るCVT車両の内燃機関制御装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0122】
10・・・ハイブリットシステム、20・・・ハイブリット車両、100・・・制御装置、100a・・・オクタン価特定部、100b・・・動作線変更部、100c・・・要求トルク判定部、101・・・制御部、101a・・・動作状態制御部、101b・・・実開度算出部、101c・・・学習部、102・・・記憶部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエタノール等のアルコール系燃料を含む燃料を利用可能な内燃機関を備える、ハイブリット車両及びベルト式無段変速機(CVT;Continuously Variable Transmission、以下CVTと称す。)車両の内燃機関制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術の一例として、特許文献1に開示されたハイブリット車制御装置が挙げられる。特許文献1に開示されたハイブリット車制御装置は、エンジン特性マップに基づいて決定された車両駆動パワー要求値、エンジン回転数指令値、及びスロットル開度目標値に基づいて最も効率が良いエンジンの動作点を決定し、効率良くハイブリット車を駆動できる技術を提案している。特許文献2に開示された車両の駆動力制御装置は、バッテリの要求馬力に合わせてモータジェネレータを駆動しながらも、最適燃費でエンジン馬力を発生させることができる技術を提案している。
【0003】
また、近年では、自動車等の車両を駆動するためのエンジン等の内燃機関に供給される燃料としては、二酸化炭素の発生を低減する観点から、ガソリン、軽油等に限定されることなく、燃料の生成過程で発生する二酸化炭素を低減できるエタノール等のアルコール系燃料、或いはガソリン及びアルコール系燃料を混合した混合燃料が用いられる場合もある。
【0004】
【特許文献1】特開平10−98803号公報
【特許文献2】特開2000−179371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者等は、この種の技術によって制御される車両の内燃機関の燃料としてエタノール等のアルコール系燃料、或いはアルコール系燃料及びガソリンが混合された混合燃料が用いられた場合、そのオクタン価がガソリンに比べて相対的に高いことに起因して、ガソリンのみを燃料として用いた場合に比べてエンジン等の内燃機関における耐ノック性が優れていることを認識している。本願発明者等は、仮にノッキングがしない動作範囲でオクタン価が高い燃料を活用できれば、内燃機関の熱効率を高めることが可能であることを認識している。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術によって最適な動作線が設定された状態において燃料として混合燃料が供給された場合、耐ノック性に優れ、且つ熱効率が高い混合燃料の優位性が十分に反映された動作線に従ってハイブリット車の駆動を制御できるとは言い難い。よって、特許文献1に開示された技術は、混合燃料の優位性を利用することによって効率良くハイブリット車両を駆動することが困難である問題点を抱えていると言える。
【0007】
また、特許文献2には、特許文献1と同様に、燃料に応じて車両を駆動する際の駆動力を制御する技術についての記載が見られない。したがって、特許文献2に開示された技術は、混合燃料の優位性を十分に発揮させることによって効率良く車両の駆動力を制御することが困難である問題点を有している。
【0008】
加えて、使用者が燃料を継ぎ足すタイミング、或いはハイブリット車両の走行状況に応じてハイブリット車両に搭載される燃料のエタノール濃度は、断続的に大きく或いは経時的に徐々に変化してしまい、現実的にみて燃料のエタノール濃度を常時一定の濃度に維持することは困難である。したがって、ハイブリット車両の動力源である内燃機関が、その動作時に、燃料に含まれるエタノール濃度が考慮された上で最適な、即ち最も効率的な動作状態に制御されているとは言い難い問題点もある。
【0009】
よって、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、例えばエタノール等のアルコール系燃料を含む燃料を用いて動力を発生するハイブリット車両の内燃機関を制御可能なハイブリット車両の内燃機関制御装置、及びCVT車両の動力源である内燃機関を制御できるCVT車両の内燃機関制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置は上記課題を解決するために、ハイブリッド車両を駆動するための動力源である内燃機関を制御するためのハイブリッド車両の内燃機関制御装置であって、前記内燃機関に供給される燃料のオクタン価を特定するオクタン価特定手段と、前記内燃機関の動作を制御するための動作線を、前記特定されたオクタン価に応じて変更する動作線変更手段と、前記変更された動作線に基づいて、前記内燃機関の動作を制御する制御手段とを備える。
【0011】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置によれば、例えば内燃機関の暖気後、給油の度、或いは通常走行時等の動作時には、オクタン価特定手段によって、内燃機関に供給される燃料のオクタン価が特定される。ここで本発明の「燃料」とは、典型的にはガソリンではなく、例えばガソリンよりもオクタン価が高いエタノール等のアルコール系燃料、或いはガソリンにアルコール系燃料を混合させた混合燃料を意味するが、ガソリンのみであってもよい。
【0012】
本発明の「特定する」とは、オクタン価センサやアルコール濃度センサを用いて、直接又は間接的に検出する場合の他、オクタン価を規定するアルコール濃度等の各種パラメータから算出、推定、予想等する場合も含み、何らかの方式で、特定できれば足りる趣旨である。
【0013】
続いて、動作線変更手段によって、内燃機関の動作を制御するための動作線が、オクタン価特定手段によって特定されたオクタン価に応じて変更される。更に制御手段によって、動作線変更手段によって変更された動作線に基づいて、内燃機関の動作が制御される。ここで、既に述べたように本願発明者等の研究によれば、混合燃料を用いた場合、そのオクタン価がガソリンに比べて相対的に高いことに起因して、例えばガソリンのみを燃料として用いた場合に比べてエンジン等の内燃機関における耐ノック性が優れている。
【0014】
従って、動作線変更手段によって、例えばガソリンのみを燃料として用いた場合に比べてオクタン価が高い燃料の利点、即ち耐ノック性に優れている点を利用できるように、ノッキングが生じない動作範囲(即ち、回転数に対する出力トルクの範囲)を活用して、熱効率或いは燃料消費率又は燃費が高まるように動作線を変更すれば、制御手段による動作線に基づく制御によって、オクタン価の高さを有効活用した熱的或いはエネルギ的に効率的な内燃機関の駆動が可能になる。
【0015】
尚、「動作線に基づいて制御する」とは、典型的には、アクセルの踏込量に呼応して要求されている出力を達成する、動作線(即ち、設計上好ましいとされる或いは意図されている動作を行う際の回転数とトルクとの関係線)上で、回転数とトルクとの組み合わせを一つ決めることである。この際、組み合わせは、予め適切なものとして又は例えば燃料消費率に基づく学習により新たに適切なものとして設定されている動作線と、要求された出力に対応する等出力線との交点として、一義的に定められる。
【0016】
このように、本発明に係るハイブリット車両の内燃機関制御装置によれば、燃料のオクタン価に応じて、より具体的には、例えばエタノール等のアルコール系燃料の濃度に応じて、相対的に高い又は理想的には最も高い熱効率或いはエネルギ効率で、内燃機関が動作するように当該内燃機関を制御可能である。
【0017】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の一の態様では、前記動作線変更手段は、前記オクタン価の複数の値に応じて予め設定された複数の動作線の中から前記特定されたオクタン価に応じた一の動作線を選択し、該選択された一の動作線を前記変更された動作線としてもよい。
【0018】
この態様によれば、予め設定された複数の動作線から一の動作線を選択する際に、動作線変更手段によって迅速に動作線を変更することが可能である。
【0019】
この態様では、前記複数の動作線の夫々は、前記内燃機関にノッキングが起きない動作範囲内で設定されていてもよい。
【0020】
この態様によれば、例えばガソリンのみを燃料として用いた場合に比べてオクタン価が高い燃料の利点、即ち耐ノック性に優れている点を有効に利用でき、効率良く内燃機関を動作させることが可能である。尚、この態様において「ノッキングが生じない動作範囲」とは、例えば内燃機関の回転数における当該内燃機関の出力トルクの範囲を意味する。
【0021】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記動作線変更手段は、前記特定されたオクタン価において前記内燃機関の燃料消費率を高めるように前記動作線を変更してもよい。
【0022】
この態様において、「燃料消費率を高める」とは、好ましくは、燃料消費率を最高にする或いは最適化することであるが、従前の動作線と比べて大なり小なり燃料消費率が高くなるように動作線を更新すれば足りる趣旨である。この態様によれば、効率良くハイブリット車両を動作させることが可能である。
【0023】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記動作線変更手段は、前記オクタン価の複数の値に応じて用意された複数の動作線の中から前記特定されたオクタン価に応じた一の動作線を選択し、該選択された一の動作線を前記燃料消費率を高めるように変更してもよい。
【0024】
この態様において「用意された」とは、予め設定されることで存在する場合の他、従前の動作線の変更によって変更された、即ち燃料消費率を高めるように更新された動作線が存在する場合も含む意味である。この態様によれば、選択された一の動作線に応じて効率良くハイブリット車両を動作させることが可能である。
【0025】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記動作線変更手段は、前記内燃機関にノッキングが起きない動作範囲内で前記燃料消費率を高めてもよい。
【0026】
この態様では、予め設定されることで存在する場合の他、従前の動作線の変更によって変更された、即ち燃料消費率を高めるように更新された動作線が存在する場合に、例えばガソリンのみを燃料として用いた場合に比べてオクタン価が高い燃料の利点、即ち耐ノック性に優れている点を有効に利用でき、効率良く内燃機関を動作させることが可能である。
【0027】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記内燃機関に要求される要求トルクが所定のトルクより高いか否かを判定するトルク判定手段を更に備え、前記動作線変更手段は、前記要求トルクが前記所定のトルクより高いと判定された場合に、前記動作線を変更し、前記要求トルクが前記所定のトルクより低いと判定された場合に、前記動作線を変更しなくてもよい。
【0028】
この態様では、トルク判定手段によって判定された結果に応じて、続く動作線変更手段による動作線に関する処理が異なる。より具体的には、動作線変更手段は、要求トルクが所定のトルクより高いと判定された場合に、動作線を変更することによって、例えば熱的に或いはエネルギ的に効果的な動作が可能となる動作線に変更する。また、要求トルクが所定のトルクより低いと判定された場合には、動作線を変更することによって、例えば熱的に或いはエネルギ的に効果的な動作が可能にならないといえる場合が多いことから、動作線を変更しない。
【0029】
尚、「所定のトルク」とは、オクタン価特定手段によってオクタン価が特定された燃料と比較されるべき燃料を用いて内燃機関を動作させた場合に、内燃機関にノッキングが生じる出力トルクの限界値を意味する。ここで、「比較されるべき燃料」とは、本発明の「燃料」より相対的にオクタン価が低い燃料を意味し、より具体的には、例えば燃料がエタノール等のアルコール系燃料及びガソリンの混合燃料、又はアルコール系燃料である場合、ガソリンのみで構成される燃料、或いは混合燃料より相対的にオクタン価が低い燃料を意味する。「要求トルク」とは、ドライバがアクセルを踏み込んだ際にアクセルの踏み込み量に連動して内燃機関に要求される要求トルクであり、より具体的には、例えばエンジン等の内燃機関に加わるエンジン負荷である。
【0030】
この態様によれば、要求トルクに応じて、より効率良くハイブリット車両を動作可能であるか否かが判定されるため、その判定結果に応じて動作線を変更し、総合的に効率良くハイブリット車両の動作を制御できる。
【0031】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記内燃機関に供給される空気の供給量を規定する各種パラメータの設定値を既存の設定値から前記変更された動作線に応じた新たな設定値に変更することで、前記変更された動作線に応じて前記内燃機関の動作を制御してもよい。
【0032】
この態様において、「既存の設定値」とは、内燃機関に供給される空気の供給量に応じて各種パラメータの設定値を予め実験的或いは理論的に設定しておいた値である。「新たな設定値」とは、変更された動作線に応じて、熱的又はエネルギ的に有利な動作が可能になるように、例えばその変更時に内燃機関に供給されるべき空気の供給量に応じて実践的に設定された値を意味する。したがって、この態様によれば、動作線を変更した際における環境条件等の変動要因が考慮された上で、内燃機関に供給されるべき供給量で空気を供給できる。
【0033】
この態様では、前記制御手段は、前記変更された動作線に対応して前記内燃機関に供給される空気の供給量、及び前記既存の設定値に応じて供給されていた空気の供給量の差に基づいて、前記供給される空気に対応した実開度を前記新たな設定値毎に算出する実開度算出手段と、前記新たな設定値及び前記算出された実開度の関係を学習する学習手段とを有していてもよい。
【0034】
この態様によれば、変更された動作線に応じて最適な、又はより適した空気の供給量となるように実開度を算出でき、新たな設定値によって熱的或いはエネルギ的により効果的なハイブリット車両の動作が可能になる。学習手段は、新たな設定値及び算出された実開度を学習することから、次回動作線を変更する際には、以前に学習した学習結果に基づいて迅速、且つ効率良く新たな設定値が設定される。
【0035】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記オクタン価特定手段は、前記燃料の空燃比及び前記燃料と比較されるべき基準燃料の基準空燃比に基づいて前記オクタン価を算出してもよい。
【0036】
この態様では、オクタン価特定手段によって燃料のオクタン価を直接特定することなく、空燃比及び基準空燃比に基づいて燃料のオクタン価を算出できる。尚、この態様における「基準空燃比」とは、燃料に対して、例えば相対的にオクタン価が低い基準燃料を用いて内燃機関を駆動した場合における空燃比を意味する。この態様によれば、ハイブリット車両の搭載された既存の構成要素によって、間接的にオクタン価を算出できるため、ハイブリット車両の製造コスト及び新たな部品を搭載することによる製品コストの増大を低減できる。
【0037】
本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置の他の態様では、前記燃料は、アルコール系燃料を含んでおり、前記オクタン価特定手段は、前記燃料を前記内燃機関に供給するための燃料供給路部の途中に設けられた濃度センサによって測定された前記アルコール系燃料の濃度に基づいて前記オクタン価を特定してもよい。
【0038】
この態様によれば、濃度センサによってアルコール系燃料の濃度が直接測定されるため、オクタン価特定手段は、空燃比に基づいてオクタン価を算出する場合に比べて迅速にアルコール系燃料の濃度に基づいて迅速に燃料のオクタン価を特定できる。このような濃度センサは、内燃機関の温度による測定誤差を低減し、且つ燃料に含まれるアルコール系燃料の濃度を高精度で測定するために、例えば燃料を噴射するインジェクタ及び燃料タンク間に設けられた燃料供給路部の途中に設けられている。
【0039】
本発明に係るCVT車両の内燃機関制御装置は上記課題を解決するために、ベルト式無段変速機を備えたCVT車両を駆動するための動力源である内燃機関を制御するためのCVT車両の内燃機関制御装置であって、前記内燃機関に供給される燃料のオクタン価を特定するオクタン価特定手段と、前記内燃機関の動作を制御するための動作線を、前記特定されたオクタン価に応じて変更する動作線変更手段と、前記変更された動作線に基づいて、前記内燃機関の動作を制御する制御手段とを備える。
【0040】
本発明に係るCVT車両の内燃機関制御装置によれば、上述のハイブリット車両の内燃機関制御装置と同様に、燃料のオクタン価に応じて効率良く内燃機関を駆動させることが可能であり、熱的又はエネルギ的に効率良くCVT車両を動作させることが可能である。
【0041】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、図面を参照しながら本発明に係るハイブリッド車両の内燃機関制御装置及びCVT車両の内燃機関制御装置の各実施形態を説明する。
【0043】
(第1実施形態)
<1−1:ハイブリッドシステムの構成>
先ず、図1を参照しながら本発明の第1実施形態に係るハイブリッドシステム10の構成を説明する。図1は、ハイブリッドシステム10のブロック図である。
【0044】
図1において、ハイブリッドシステム10は、制御装置100、本発明の「内燃機関」の一例であるエンジン200、モータジェネレータMG1、モータジェネレータMG2、動力分割機構300、インバータ400、バッテリ500、及び車速センサ600を備え、ハイブリッド車両20を制御するシステムである。
【0045】
制御装置100は、本発明の「制御手段」の一例である制御部101、本発明の「オクタン価特定手段」の一例であるオクタン価特定部100a、本発明の「動作線変更手段」の一例である動作線変更部100b、本発明の「トルク判定手段」の一例である要求トルク判定部100c、トルク算出部100d、燃費率算出部100e、制御マップ選択部100f、及び記憶部102を備えている。制御装置100は、ハイブリッドシステム10の動作全体を制御する、例えばECU(Engine Controlling Unit)等の制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の内燃機関制御装置」の一例として機能する。
【0046】
制御部101は、動作状態制御部101a、本発明の「実開度算出手段」の一例である実開度算出部101b、及び本発明の「学習手段」の一例である学習部101cを備えている。
【0047】
動作状態制御部100aは、エンジン200、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2、動力分割機構300、インバータ400、及びバッテリ500の動作状態を制御すると共に、エンジン200の動作線が変更された際には、変更された新たな動作線に基づいてエンジン200の動作を制御する。実開度算出部101b及び学習部101cについては、後に詳細に説明する。
【0048】
オクタン価特定部100aは、エンジン200に供給される燃料のオクタン価を特定する。本実施形態では、エンジン200に供給される燃料は、アルコール系燃料の一例であるエタノール及びガソリンを含んでなる混合燃料である。ここで、エタノールはガソリンに比べて1.6倍程度の高い発熱量を放出しながら燃焼するため、ガソリンにエタノールが含まれた混合燃料をエンジン200で燃焼させた場合の空燃比と、基準燃料の一例であるガソリンをエンジン200で燃焼させた場合の基準空燃比との差に基づいて、オクタン価特定部101aは、エンジン200に供給された燃料のオクタン価を特定できる。より具体的には、例えば、上述の空燃比及び基準空燃比の差に基づいて、燃料に含まれるエタノールの濃度を算出し、この算出結果に基づいてオクタン価を算出する。
【0049】
尚、空燃比を算出するために必要な空気の供給量、燃料噴射量及び発熱量のうち、エンジン200に供給される空気の供給量は、エンジン200に空気を供給する際の開度を設定するための各種パラメータの設定値、より具体的には、例えばVVTの開閉タイミング、作用角、及びリフト量等の設定値から求められる開度に基づいて算出される。燃料噴射量は、燃料噴射量を測定するセンサ等の測定手段から取得された測定値を用いればよい。加えて、発熱量は、温度センサによって測定されたエンジン200の温度の変化に基づいて算出される。作用角は、クランク角センサによって測定されていればよい。また、基準燃料の基準空燃比は、エンジン200について予め算出しておけばよい。したがって、オクタン価特定部100aによれば、エンジン200を構成する部品点数を増やすことなく、即ち、ハイブリット車両システム10の製造コストを増大させることなく、燃料のオクタン価を特定できる。
【0050】
エタノール等のアルコール系燃料のようにガソリンに比べてオクタン価が高い燃料は、ガソリンのみを燃料に用いた場合に比べて耐ノック性に優れている。したがって、後述するように、動作線変更部100bは、特定された燃料のオクタン価に応じてエンジン200にノッキングが発生しない動作範囲に動作線を変更する。
【0051】
記憶部102は、制御マップ記憶部102a、及びエンジン200に供給される空気の供給量を規定するVVT開閉タイミング等の各種パラメータの設定値を記憶する設定値記憶部102bを備えている。記憶部102は、例えばROM(Read Only Memory)などで構成された不揮発性記憶領域と、RAM(Random Access Memory)などで構成された揮発性記憶領域を有する記憶媒体である。
【0052】
制御マップ記憶部102aは、メモリ等の記憶装置であり、エンジン200に供給される燃料のオクタン価に応じてより最適な、即ち理想的には最大の熱効率でエンジン200を動作可能なようにエンジン200の動作を制御するための複数の制御マップをしかるべき形式で記憶している。
【0053】
ここで、図3を参照しながら、制御マップについて詳細に説明する。図3は、制御マップの一例を示した図である。図3において、制御マップ30は、縦軸にエンジン200の出力トルクTe、横軸にエンジン200の回転数Neを表してなる座標平面に動作線が記録されており、制御マップ30に基づいて動作状態制御部100aは、エンジン200の動作を制御する。制御マップ30は、予め制御マップ記憶部101aにおける不揮発性領域に燃料のオクタン価の複数の値に応じて予め設定された動作線を含んで複数格納されている。
【0054】
制御マップ30は、エンジン200の出力トルクTe及び回転数Neの夫々を縦軸及び横軸とする座標平面上において、エンジン200に供給されるオクタン価毎にエンジン200の燃費率が最適になるように設定された動作線を含んでいる。このような動作線は、座標平面上において、エンジン200に供給される燃料のエタノール濃度、即ち予めエンジン200の制御条件及び環境条件の一例である燃料のオクタン価に応じて互いに異なる燃費率等高線を踏まえて決定されている。例えば、オクタン価が高くなるにしたがって、燃費率等高線Sのうちより燃費率が高い等高線は、制御マップ30中において右上方にシフトし、これに伴い、エンジン200を動作させるための最適な動作線も変化してしまう。したがって、高い燃費率でエンジン200を動作させる観点からは、燃料のオクタン価に応じて燃費率等高線Sが変化する毎に最適な動作線を選択するのが望ましいと言える。よって、本実施形態では、後述するように燃料のエタノール濃度、即ちオクタン価に応じてエンジン200の燃料消費率を高めるように理想的には最適な制御マップが選択される。
【0055】
等出力線Pi(i=1,2,・・・,9)はエンジン200の出力値を一定とした場合のエンジントルクTeとエンジン回転数Neとの関係線である。図3においては、説明を簡略化するために、等出力線は9本しか描かれていないが、実際にはより細かく設定することが可能である。等出力線Piは、回転数及び出力トルクの積で定義される。
【0056】
動作状態制御部101aは、エンジン200を動作させる際、エンジン200の出力トルクがその都度求められる要求出力値に対応する等出力線上で予め設定されている動作点によって表されるエンジントルクTe及びエンジン回転数Neの組み合わせとなるように動作状態を決定する。動作線は、これら動作点を繋げたものとして規定される。
【0057】
動作線Qa及びQbは、互いに異なるエタノール濃度を有する燃料の夫々において、エンジン200の熱効率が最適となる動作線を夫々示している。動作線Qa及びQbの夫々が各等出力線Piと交差する交差点の夫々が、動作線Qa及びQbにおけるエンジン200の動作点Qa1、Qa2、・・・、Qa9、及びQb1、Qb2、・・・、Qb9である。
【0058】
後述するように、エンジン200では、等出力線上で動作点を変化させる際に、エンジン200に供給される空気の供給量、即ちVVTのバルブタイミング等の各種パラメータが制御され一の出力値が維持される。エンジン200の出力トルクは、出力トルクTe及びエンジン200の回転数Neの夫々を縦軸および横軸とする座標平面上において、等出力線と、制御マップ選択部100dによって選択された制御マップに予め設定された動作線、即ち変更された動作線との交差点に設定される。これにより、エンジン200は、出力値を維持しながら高い熱効率で動作される。
【0059】
尚、図3では、説明の便宜上同一座標平面に2つの動作線Qa及びQbを図示しているが、制御マップ記憶部101aがオクタン価の複数の値に応じて記憶している複数の制御マップの夫々には、一本ずつ最適な動作線が予め設定されている。
【0060】
再び、図1において、制御マップ選択部100fは、特定された燃料のオクタン価に応じて、制御マップ記憶部101aに記憶された複数の制御マップから最適な、又はより熱効率が高い状態でエンジン200の動作を制御できる制御マップを選択し、動作線変更部100bは、選択された制御マップに含まれる一の動作線を新たな動作線としてエンジン200の動作線を変更する。
【0061】
このように、動作線変更部100bは、エンジン200に供給された燃料のオクタン価に応じて動作線を自由に設定し直すことが可能である。加えて、燃料のオクタン価に応じて変化する熱効率の変化も選択された一の動作線に考慮されているため、例えば燃料に含まれるエタノールの濃度が、断続的に、或いは経時的に変化してしまい、実践的にみて燃料のエタノール濃度を常時一定の濃度に維持することは困難である場合でも、動作線変更部100bは、燃料のオクタン価に応じて選択された動作線に従って動作線を変更できる。
【0062】
動作状態制御部101aは、変更された動作線上に出力トルクが設定されるようにエンジン200の動作を制御する。動作状態制御部100aは、燃料のオクタン価に応じてエンジン200に供給される空気の供給量を増やすことを指示する指令を送信することによって、エンジン200の出力トルク及び回転数等で決まる出力値に対応付けられて設定された複数の動作点によって規定される動作線上に動作点を設置する。
【0063】
要求トルク判定部100cは、エンジン200に加わるエンジ負荷が所定のトルクより高いか否かを判定する。これにより、エンジン200に供給される燃料のエタノール濃度、即ちオクタン価に応じて最適な、又はより理想的に熱効率を高めることができる制御マップを選択するほうが相対的に高い熱効率でエンジン200を動作させることが可能であるか否かが判定されていることになる。
【0064】
ここで、図4を参照しながら、エンジン200から出力される出力トルク及び熱効率の関係を詳細に説明する。図4は、出力トルク及び熱効率の関係を模式的に示した関係図である。尚、説明の便宜上エンジン200の回転数Neを一定(N1)としており、図4において、エンジン200の出力トルクTeに対する熱効率曲線La、Lb及びLcを示している。
【0065】
図4において、熱効率曲線La、Lb及びLcの夫々は、燃料に含まれるエタノール濃度が0%、50%、100%である場合の熱効率曲線である。熱効率曲線Laでは、出力トルクT0でエンジン200の熱効率Qtheが最大値Qatheとなり、エンジン200の出力トルクを出力トルクT0より高めた場合にはノッキングが生じ、熱効率Qtheが低下する。
【0066】
他方、熱効率曲線Lb或いはLcの夫々では、エンジン200の熱効率Qtheが出力トルクT0より高い出力トルクT1或いはT2で最大となる(例えば、エタノール濃度が100%では、Qcthe。)。
【0067】
ここで、出力トルクT0において、熱効率曲線La、Lb及びLcにおけるエンジン200の熱効率を比較すると、熱効率曲線Lbでは熱効率曲線Laに比べてΔQatheだけ熱効率が高くなる。加えて、エンジン200の出力トルクを高め、例えば熱効率曲線Lcにおいて最大の熱効率を与える出力トルクT2では、熱効率の変化量ΔQctheが変化量ΔQatheに比べて更に大きくなる。したがって、オクタン価が相対的に高い燃料、例えばエタノール濃度が高い燃料を用いる場合には、比較されるべき燃料であるガソリンのみで構成される燃料を用いた場合に最大の熱効率を与える出力トルクT0より高い出力トルクをエンジン200に出力させることによって、熱効率を高めることが可能である。
【0068】
尚、例えばエタノール濃度が50%の燃料を用いた場合には熱効率曲線Lbに対応した動作線が選択され、トルクT0からT1のトルク範囲でエンジン200が動作される。また、エタノールのみで燃料が構成されている場合(エタノール濃度が100%の場合)には、熱効率曲線Lcに対応した動作線が選択され、トルクT0からT2のトルク範囲でエンジン200が動作される。これにより、各動作線上でノッキングを生じさせることなく相対的に高い熱効率でエンジン200が動作される。
【0069】
ここで、図4を参照しながらトルク判定部100cの具体的な処理動作を説明する。ここでは、エンジン200に供給される燃料のエタノール濃度が0%から100%に変化した場合を例に挙げる。
【0070】
図4において、エンジン200にエタノール濃度が0%である燃料が供給されている状態では、エンジン200は熱効率曲線Laに対応した動作線上で動作されている。エンジン200にエタノール濃度が100%の燃料、即ちエタノールのみで構成された燃料が供給された場合、エンジン200に加わるエンジン負荷、即ちドライバの踏み込み量に対応してエンジンに要求される要求トルクが、本発明の「所定のトルク」の一例である出力トルクT0より大きいと判定されると、熱効率曲線Lcに対応した動作線上にエンジン200の動作点を設定するほうが、熱効率曲線Laに対応した動作線上でエンジン200の動作点を維持する場合に比べて、相対的に高い熱効率でエンジン200を動作させることが可能である。このような場合、制御マップ選択部100fが、熱効率曲線Lcに対応した動作線を含む制御マップを選択し、動作状態制御部101aは、選択された制御マップに含まれる、即ち熱効率曲線Lcに対応する動作線上にエンジン200を動作させる。
【0071】
他方、燃料に含まれるエタノール濃度が0%から100%に変化した場合であっても、エンジン200に加わるエンジン負荷が出力トルクT0より小さい場合には、エンジン200は、熱効率曲線Laに対応した動作線上でエンジン200を動作させる。エンジン負荷が出力トルクT0より小さい範囲では、動作線を変更することによって得られる熱効率の利得が小さく、動作線を変更してまで熱効率を高める利点が小さいためである。したがって、トルク判定部100cは、燃料のエタノール濃度、即ち燃料のオクタン価を考慮した上で、エンジン負荷が所定のトルクより高いが否かを判定することによって、動作線を変更するほうが熱効率、即ち燃料消費率を高めることができる可能性があるか否かを判定していることになる。
【0072】
次に、図5を参照しながら変更される前後の夫々の動作線の関係を説明する。図5は、エンジン200の動作線を示した図である。
【0073】
図5において、本発明の「予め設定された複数の動作線」の夫々一例である動作線Qa、Qb及びQcは、図4に示した熱効率曲線La、Lb及びLcに対応している。図4で説明したように燃料に含まれるエタノール濃度が高いほど、最大の熱効率を与えるエンジン200の出力トルクは高出力側にシフトするため、出力トルク及び回転数の夫々を縦軸及び横軸とする座標平面上において動作線は、燃料のオクタン価が高いほど高出力トルク側にシフトする。
【0074】
より具体的には、図5中、例えばガソリンのみで構成される燃料(エタノール濃度0%)の動作線Qaに比べて、エタノール濃度が50%及び100%である燃料の動作線Qb及びQcは上側に位置している。このため、オクタン価が相対的に高い燃料を用いる場合、エンジン200における熱効率を高めるためには、エンジン200から出力される出力トルクをエンジン200にノッキングが生じない動作範囲で出力トルクT0より高め、動作線を高出力トルク側にシフトさせることになる。
【0075】
したがって、例えばエタノール濃度が100%の燃料を用いた場合には、動作点は理想的には等出力線Pn及び動作線Qcの交差点である動作点Qc1(回転数;N1、出力トルク;T2)に設定される。
【0076】
エタノール濃度が100%の燃料を用いた場合であって、エンジン200の出力値を一定にすることを前提とする場合には、動作点は、理想的には等出力線線Pn及び動作線Qcが座標平面上で交差する交差点Qc1´に設定される。尚、選択される動作線は、すでに選択されている動作線に比べて相対的に高い熱効率、即ち高い燃料消費率でエンジン200を動作可能なように選択されていればよく、例えば、燃料に含まれるエタノール濃度が100%の場合に、燃料に含まれるエタノール濃度が50%である場合に最大の熱効率を与えうる動作線Qbを選択してもよい。
【0077】
図4及び図5では、エタノール濃度が0、50及び100%の例を挙げたが、燃料に含まれるエタノール濃度がこれら濃度と異なる場合であっても、これと同様に、燃料に含まれるエタノール濃度、即ち燃料のオクタン価に応じて選択された各動作線及び等出力線の交差点に動作点が維持されるように動作状態制御部101aによってエンジン200の動作が制御される。
【0078】
再び図1において、設定値記憶部102bは、変更された動作線上に出力トルクを設定する際にエンジン200に供給された空気の供給量、及び動作線を変更する前の既存の設定値に応じて供給されていた空気の供給量を記憶する。
【0079】
ここで、エンジン200の動作時においてその動作状態に変動を与える環境条件等の変動要因を全て考慮した上で、例えばVVT等の開閉タイミング等の各種パラメータの最適な設定値を決めることは困難である。より具体的には、制御マップ選択部100fによって選択された制御マップに予め設定された動作線上にエンジン200の動作点を設定する際に、実際にエンジン200に供給される空気の供給量が各種パラメータの設定値に応じて供給されるべきはずの空気の供給量と相違することが多く、エンジン200に供給された燃料のオクタン価に応じた最も高い、或いは相対的に高い熱効率でエンジン200を動作させることが困難になる場合が多い。
【0080】
そこで、実開度算出部101bは、燃料のオクタン価に応じて変更された動作線上に出力トルクを設定する際にエンジン200に供給されるべき空気の供給量と、動作線を変更する前の動作線における各種パラメータの設定値、即ち既存の設定値に応じて供給されていた空気の供給量との差に基づいて、変更された動作線における新たな設定値に対応する実開度を算出する。より具体的には、変更された動作線上に動作点を設定するために必要とされる空気が供給されるように設定されたVVTの開閉タイミング等の各種パラメータの新たな設定値と、既存の設定値との差に基づいて、変更された動作線に動作点を設定するために供給すべき空気を供給するためには、各種パラメータの設定値を具体的にどの程度に設定すればよいかが算出される。
【0081】
したがって、実開度算出部101bによって算出された新たな設定値は、エンジン200が動作する際の各種環境条件等の変動要因を考慮した上で、実質的に最適な、或いはより最適な供給量に近い空気の供給量を与える各種パラメータの設定値である。このような新たな設定値は、設定値記憶部102bに記憶される。
【0082】
学習部101cは、設定値記憶部102bに記憶された各種パラメータの新たな設定値と、この新たな設定値及び既存の設定値に基づいて実開度算出部101bが算出した実開度との関係を学習し、動作状態制御部100aによる次回のエンジン200の動作状態の制御に反映する。学習部101cによれば、次回に動作状態制御部100aがエンジン200の動作を制御する際に、迅速且つ簡便に燃料のオクタン価に応じた理想的に最適な熱効率でエンジン200を動作させることが可能である。より具体的には、燃料のオクタン価に応じて各種パラメータの最適な設定値が一度設定されていれば、再度同じオクタン価の燃料がエンジン200に供給された場合に、各種パラメータの最適な設定値を学習し直すことなく、迅速、且つ簡便に各種パラメータを最適な設定値に設定でき、高い熱効率でエンジン200を動作させることが可能である。
【0083】
また、学習部101cによる新たな設定値及び各種パラメータの関係が学習されていない燃料が供給された場合でも、動作状態制御部101aは、すでに学習部101cによって学習された学習結果に基づいて、学習結果を参照しない場合に比べて、オクタン価に応じて選択された動作線上で迅速にエンジン200を動作させることができる。動作状態制御部101aは、例えば、以前に学習された他の新たな設定値及び各種パラメータの関係から今回エンジン200に供給されたオクタン価に近いオクタン価を有する燃料についての学習結果を読み出し、今回供給されたオクタン価に応じた動作線上でエンジン200を動作できるように、読み出された以前の学習結果に基づいて各種パラメータを合わせこんでいくことが可能である。より具体的には、動作状態制御部101aは、以前に学習された新たな設定値及び各種パラメータの関係から出発して、実質的に供給される空気の供給量を調整し、今回選択された動作線上に迅速に動作線を変更する。
【0084】
燃料のオクタン価に応じて選択された動作線上に動作点を合わせこんでいく際には、各種パラメータが合わせこまれていく過程において、燃費率算出部100eが、エンジン200の回転数、出力トルク及び空気の供給量に基づいて各種パラメータが変更される度に燃費率を算出する。動作状態制御部101aは、算出された燃費率を参照しつつ燃費率が向上するようにオクタン価に応じて選択された動作線にエンジン200の各種パラメータを合わせこんでいき、今回供給された燃料のオクタン価に応じた動作線でエンジン200を動作させるための各種パラメータの新たな設定値が特定される。
【0085】
また、動作線変更部100bは、燃料のオクタン価の複数の値に応じて用意された複数の動作線の中から、今回特定されたオクタン価に応じた動作線を選択し、この選択された動作線を燃料消費率を高めるように変更してもよい。したがって、オクタン価が特定された時点で、動作線として燃料のオクタン価に応じてこれまで最高の熱効率を与えると考えられていた動作線を選択することに加えて、エンジン200の動作状態を変動させる環境条件の考慮した上で、選択された動作線を燃費消費率が向上するように変更することも可能である。
【0086】
より具体的には、エンジン200への空気の供給量を規定する各種パラメータを連続的に、或いは断続的に変更しながら空気の供給量を変更し、これに伴い動作線を燃料のオクタン価に応じた最適な動作線に近づけるように変更する。尚、このような場合でも、動作線変更部100bは、エンジン200にノッキングが生じない動作範囲で動作線を変更する。
【0087】
トルク算出部100dは、エンジン200の動作時に、エンジン200の出力トルクを算出する。動作状態制御部101aは、トルク算出部100dで算出された出力トルクを参照し、エンジン200の動作状態を制御する。
【0088】
エンジン200は、ハイブリッド車両20の主たる動力源として機能する。尚、エンジン200の詳細な構成については後述する。モータジェネレータMG1は、バッテリ500を充電するための発電機として、或いはエンジン200の駆動力をアシストする電動機として機能するように構成されている。モータジェネレータMG2は、エンジン200の出力をアシストする電動機として、或いはバッテリ500を充電するための発電機として機能するように構成されている。尚、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。但し、他の形式のモータジェネレータであっても構わない。動力分割機構300は、図示せぬサンギア、プラネタリキャリア、ピニオンギア、及びリングギアを備えた遊星歯車機構である。これら各ギアのうち、内周にあるサンギアの回転軸はモータジェネレータMG1に連結されており、外周にあるリングギアの回転軸は、モータジェネレータMG2に連結されている。サンギアとリングギアの中間にあるプラネタリキャリアの回転軸はエンジン200に連結されており、エンジン200の回転は、このプラネタリキャリアと更にピニオンギアとによって、サンギア及びリングギアに伝達され、エンジン200の動力が2系統に分割されるように構成されている。ハイブリッド車両20において、リングギアの回転軸は、ハイブリッド車両20における伝達機構21に連結されており、この伝達機構21を介して車輪22に駆動力が伝達される。
【0089】
インバータ400は、バッテリ500から取り出した直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給すると共に、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ500に供給することが可能に構成されている。バッテリ500はモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を駆動するための電源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池である。バッテリ500には、バッテリ500の残容量を検出するSOCセンサ510が設置されており、制御装置100と電気的に接続されている。車速センサ600は、ハイブリッド車両20の速度を検出するセンサであり、制御装置100と電気的に接続されている。
【0090】
<1−2:エンジンの詳細構成>
次に、図2を参照しながらエンジン200の詳細な構成を説明する。図2は、エンジン200の半断面システム系統図である。
【0091】
図2において、エンジン200は、シリンダ201内において点火プラグ202により混合気を爆発させると共に、爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクションロッド204を介してクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。以下に、エンジン200の要部構成を動作と共に説明する。
【0092】
シリンダ201内における燃料の燃焼に際し、外部から吸入された空気は吸気管206を通過し、インジェクタ207から噴射された燃料と混合されて混合気となる。インジェクタ207には、ガソリン及びエタノールが混合された混合燃料が燃料タンク223からフィルタ224を介して供給されている。インジェクタ207は、混合燃料を制御装置100の制御に従って吸気管206内に噴射する。尚、燃料タンク223には、燃料残量を検出するための燃料センサ225が設置されている。
【0093】
燃料タンク223からインジェクタ207に燃料を供給するための燃料供給路部227は、その途中に設けられたフィルタ224及び濃度センサ228を有している。
【0094】
濃度センサ228は、燃料タンク223からインジェクタ207に供給される燃料に含まれるエタノールの濃度を測定し、その測定結果をオクタン価特定部100aに送信する。オクタン価特定部100aは、濃度センサ228から送信された測定結果に基づいて燃料のオクタン価を特定する。これにより、燃料の空燃比等に基づいて燃料のオクタン価を算出する場合に比べて、迅速に燃料のオクタン価を算出できる。濃度センサ228は、エンジン200の温度による測定誤差を低減し、且つ燃料に含まれるエタノールの濃度を高精度で測定するために、エンジン200から十分に離れた燃料供給路部227の途中に設けられている。
【0095】
シリンダ201内部と吸気管206とは、吸気バルブ208の開閉によって連通状態が制御されている。シリンダ201内部で燃焼した混合気は排気ガスとなり吸気バルブ208の開閉に連動して開閉する排気バルブ209を通過して排気管210を介して排気される。
【0096】
吸気管206上には、クリーナ211が配設されており、外部から吸入される空気が浄化される。クリーナ211の下流側(シリンダ側)には、エアフローメータ212が配設されている。エアフローメータ212は、ホットワイヤー式と称される形態を有しており、吸入された空気の質量流量を直接測定することが可能に構成されている。吸気管206には更に、吸入空気の温度を検出するための吸気温センサ213が設置されている。
【0097】
吸気管206におけるエアフローメータ212の下流側には、シリンダ201内部への吸入空気量を調節するスロットルバルブ214が配設されている。このスロットルバルブ214には、スロットルポジションセンサ215が電気的に接続されており、その開度が検出可能に構成されている。更に、スロットルバルブ214の周囲には、運転者によるアクセルペダル226の踏み込み量を検出するアクセルポジションセンサ216、及びスロットルバルブ214を駆動するスロットルバルブモータ217も配設されている。
【0098】
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置を検出するクランクポジションセンサ218が設置されている。クランクポジションセンサ218は、クランクシャフト205の回転状態に基づいて、シリンダ201内部におけるピストン203の位置、及びエンジン200の回転数など取得することが可能に構成されている。また、シリンダ201を収容するシリンダブロックには、エンジン200のノック強度を測定可能なノックセンサ219が配設されており、シリンダブロック内のウォータージャケット内には、エンジン200の冷却水温度を検出するための水温センサ220が配設されている。
【0099】
排気管210には、三元触媒222が設置されている。三元触媒222は、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能な触媒である。排気管210における三元触媒222の上流側には、空燃比センサ221が配設されている。空燃比センサ221は、排気管210から排出される排気ガスから、エンジン200の空燃比を検出することが可能に構成されている。オクタン価特定部100aは、すでに述べたように空燃比センサ221から送信される測定結果に基づいて燃料のオクタン価を算出することも可能である。
【0100】
<1−3:エンジンの基本制御動作>
次に、図1及び図2を参照しながらエンジン200の基本的な制御動作について説明する。
【0101】
図1及び図2において、トルク算出部100dは、エンジン200に要求される出力であるエンジン要求出力を一定の周期で繰り返し演算し、エンジン要求出力に対応した要求トルクを算出している。また、トルク算出部100dは、スロットルポジションセンサ215及び車速センサ600の出力信号に基づいてアクセル開度と車速とを取得し、記憶部102の不揮発性領域に記録されたマップを参照してアクセル開度及び車速に対応した出力トルク(伝達機構21に出力されるべきトルク)を求める。トルク算出部100dは、SOCセンサ510の出力信号に基づいて要求発電量を求める。トルク算出部100dは、要求発電量と各種の補機類(A/Cやパワーステアリングなど)の要求量とを参照して出力トルクを補正することにより、エンジンに要求されるエンジン要求出力を求める。尚、エンジン要求出力の演算方法は公知のハイブリッド車両で実行されている通りでよく、その細部は必要に応じて種々変更してよい。
【0102】
<1−4:エンジンの制御方法>
次に、図6乃至図9を参照しながら本実施形態の制御装置100が実行するハイブリット車両の内燃機関制御方法を説明する。図6は、本実施形態に係るハイブリット車両の内燃機関制御方法の処理ルーチンを示す流れ図である。図7は、エンジンに供給される空気の供給量及び出力トルクの関係を示す図であり、図8は熱効率が最大となる出力トルクにエンジンの出力トルクを近い付ける過程を説明するための図である。図9は、動作線に修正を施す処理を説明するための図である。
【0103】
図6において、オクタン価特定部100aが、エンジン200に供給される燃料のエタノール濃度(即ち、オクタン価)を特定する(S1010)。オクタン価特定部100aは、空燃比及び基準燃料を用いた場合の基準空燃比に基づいてエタノール濃度を算出してもよいし、濃度センサ228から供給された測定結果に基づいて燃料のエタノール濃度を特定してもよい。
【0104】
次に、要求トルク判定部100cが、エンジン負荷が所定のトルクより高いか否かを判定する(S1020)。要求トルクが所定のトルクより低いと判定された場合には、制御装置100は制御処理を終了し、次回の制御処理に備える。エンジン負荷が所定のトルクより高いと判定された場合には、制御マップ選択部100fが、エタノール濃度に応じて予め複数のオクタン価の複数の値毎に制御マップ記憶部102aに記憶されていた複数の制御マップから、特定されたオクタン価に応じた制御マップを制御マップ記憶部102aから選択する(S1030)。
【0105】
次に、制御マップ変更部100bは、オクタン価を特定するまでに設定されていた制御マップを、今回特定された燃料のエタノール濃度、即ちオクタン価に応じて選択された制御マップに変更する(S1040)。動作線変更部100bは、エンジン200の動作線を、選択された制御マップに含まれる動作線に変更する(S1050)。次に、動作状態制御部101aは、選択された制御マップに含まれる動作線に対応して予め設定されている各種パラメータの設定値(即ち、既存の設定値)と、この既存の設定値に応じて供給される空気の供給量(GA1)を特定する(S1060)。
【0106】
次に、動作状態制御部101aが、変更された動作線上でエンジン200を動作させるために、VVT等の各部にエンジン200への空気の供給量を増やすことを指示する指令を送信し、エンジン200に供給される空気の供給量の調整、即ち空気の供給量が増やされる(S1070)。
【0107】
ここで、図7及び図8を参照しながらエンジンに供給される空気の供給量及び出力トルクの関係と、エンジン200の出力トルク及び熱効率の関係を説明する。
【0108】
図7に示すように、エンジン200に供給される空気の供給量を連続的、又は断続的に増やすことによってエンジン200の出力トルクが、連続的、又は断続的に高められる。
【0109】
図8に示すように、例えば所定のトルクの一例である出力トルクT0より高いエンジン負荷がエンジン200に加わった場合に、例えば、燃料のエタノール濃度が0%の場合の熱効率曲線Laに対応した動作線上で動作されていたエンジン200が、燃料のエタノール濃度が100%の場合の熱効率曲線Lcに対応する動作線上で動作されるように、エンジン200に供給される空気の供給量が増やされ、これに伴い図中矢印で示すように出力トルクが、断続的に、又は連続的に、熱効率曲線Lcにおいて最も高い熱効率Qctheを与える出力トルクT2に近づくように高められる。
【0110】
再び、図6において、変更された動作線上にエンジン200の動作点が設定された際にエンジン200に供給されていた空気の供給量(GA2)が特定されると共に、そのときの各種パラメータの設定値、即ち燃料のオクタン価に応じて最適な熱効率を実際に与える、空気の供給量についての最適な設定値が特定される(S1080)。
【0111】
次に、設定値記憶部102bが、選択された制御マップに含まれる動作線に対応して予め設定されている各種パラメータの設定値(即ち、既存の設定値)及びこの既存の設定値に応じて供給される空気の供給量(GA1)と、変更された動作線における各種パラメータの最適な設定値及び空気の供給量(GA2)とを記憶する(S1090)。
【0112】
次に、実開度算出部101bは、ステップS1090で記憶されたデータを読み出して、エンジン200に設けられたVVT等の開閉タイミング等の各種パラメータに応じて決まる実開度を特定する(S1100)。これにより、変更された動作線にエンジン200の動作点を設定する際に供給される空気の供給量に対応した各種パラメータの既存の設定値が、実際に供給されるべき空気の供給量に対応していない場合でも、実際に最適な空気の供給量に対応した各種パラメータの新たな設定値を特定できる。より具体的には、エンジン200に供給される空気の供給量は、各種パラメータの指示値どおりにエンジン200に供給されているとは言い難く、各種変動要因によって実践上異なる場合が多い。このような場合でも、実開度を算出しておくことによって実際にエンジン200に必要とされる空気を供給するためには、各種パラメータをどの程度補正しておけばよいかが取得でき、これに伴い、変更された動作線に応じた空気を適切な供給量で供給できる。
【0113】
次に、学習部101cは、各種パラメータの新たな設定値及び実開度の関係を学習し(S1110)、次回に同じエタノール濃度の燃料(即ち、同じオクタン価を有する燃料)が供給された場合には、動作状態制御部101aは、学習部101cによる学習結果を参照することによって迅速に各種パラメータの新たな設定値を最適な設定値に、或いはより最適な設定値に近い値に設定できる。
【0114】
尚、図9に示すように燃料のオクタン価に応じて動作線を動作線Q1qから動作線Qnqに合わせ込む際には、エンジン200に供給される空気の供給量をリアルタイムで増やしながら、燃費率算出部100eによってその都度算出された燃費率を高めるように動作線に修正を施し、動作線Q1q、Q2q、・・・、Qn−1q、Qnqの順で動作線を目的の動作線Qnに近づけていってもよい。このような動作線の修正によれば、予め用意された複数の動作線の中に適切な動作線が含まれていない場合でも、より近い動作線を選択し、燃費率を算出しながら実践的にオクタン価に応じた最適な動作線を見つけ、その動作線にエンジン200の動作線を変更することも可能である。
【0115】
以上説明した制御装置10によって実行されるエンジン200の制御方法によれば、燃料のオクタン価に応じて、最適な、又はより最適な状態に近い熱効率でエンジン200を動作可能であり、燃料のオクタン価が変化した場合、より具体的には例えば燃料のエタノール濃度が変化した場合でも、生成時に二酸化炭素の発生が少ないエタノールを用いることによって環境に十分配慮した上で、エタノール濃度の変化に応じてより効率良くエンジンを動作させることが可能である。
【0116】
(第2実施形態)
次に、図10を参照しながら本発明の第2実施形態に係るCVT車両の内燃機関制御装置を説明する。本実施形態に係るCVT車両の内燃機関制御装置は、第1実施形態に係る制御装置と同様の構成を有しており、制御対象となるCVT車両がCVT機構を備えている点及びハイブリットシステムが構成されていない点で第1実施形態に係るハイブリット車両の内燃機関制御装置と相違する。以下では、第1実施形態と共通する部分に共通の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。尚、本実施形態に係るCVT車両の内燃機関制御装置をハイブリットシステムと組み合わせてもよいことは言うまでもない。
【0117】
図10において、CVTシステム300は、本発明の第2の発明に係る「CVT車両の内燃機関制御装置」の一例である制御装置100と、CVT車両320を備えている。
【0118】
制御装置100は、第1実施形態と同様にCVT車両320が備えるエンジン200が、燃料のオクタン価に応じて最適な、又はより最適な熱効率で動作されるように、エンジン200の動作を制御している。CVT車両320は、制御装置100によってその動作が制御されるCVT機構31を備えており、制御装置100の制御の下で連続的にギア比を変化させることによって、変速比を連続的に変化可能なように構成されている。
【0119】
本実施形態に係る制御装置100によれば、第1実施形態と同様に、エンジン200に供給される燃料のエタノール濃度、即ちオクタン価に応じて高い熱効率でエンジンを動作させることが可能である。加えて、本実施形態に係るCVT車両の内燃機関制御装置によれば、MT(Manual Transmission)やAT(Automatic Transmission)のように、エンジンの回転数がドライバのアクセル踏込に素直に応じることなく動作線が勝手に連続的に変更されるので、次にどのような動作線が最適な動作線として選択されるかが確定しない場合でも、第1実施形態と同様に燃料消費率を算出しながら、動作線を最適な、或いはより最適な動作線に自動的に変更できる。
【0120】
以上説明したように、本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリット車両の内燃機関制御装置及びCVT車両の内燃機関制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】第1実施形態に係るハイブリットシステムのブロック図である。
【図2】第1実施形態に係るハイブリットシステムが備えるエンジンの半断面システム系統図である。
【図3】制御装置によって参照される制御マップを模式的に示した模式図である。
【図4】エンジンの出力トルク及び熱効率の関係を示した関係図である。
【図5】複数の動作線の相互関係を示した関係図である。
【図6】本実施形態に係るハイブリット車両の内燃機関制御装置によって実行される制御方法の処理ルーチンを示す流れ図である。
【図7】空気の供給量及び出力トルクの関係を示した関係図である。
【図8】出力トルクを高めることによって熱効率が高められる過程を示した図である。
【図9】動作線に修正を施すことによって、最適な動作線に動作線を近づける過程を示した図である。
【図10】第2実施形態に係るCVT車両の内燃機関制御装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0122】
10・・・ハイブリットシステム、20・・・ハイブリット車両、100・・・制御装置、100a・・・オクタン価特定部、100b・・・動作線変更部、100c・・・要求トルク判定部、101・・・制御部、101a・・・動作状態制御部、101b・・・実開度算出部、101c・・・学習部、102・・・記憶部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車両を駆動するための動力源である内燃機関を制御するためのハイブリッド車両の内燃機関制御装置であって、
前記内燃機関に供給される燃料のオクタン価を特定するオクタン価特定手段と、
前記内燃機関の動作を制御するための動作線を、前記特定されたオクタン価に応じて変更する動作線変更手段と、
前記変更された動作線に基づいて、前記内燃機関の動作を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項2】
前記動作線変更手段は、前記オクタン価の複数の値に応じて予め設定された複数の動作線の中から前記特定されたオクタン価に応じた一の動作線を選択し、該選択された一の動作線を前記変更された動作線とすること
を特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項3】
前記複数の動作線の夫々は、前記内燃機関にノッキングが起きない動作範囲内で設定されていること
を特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項4】
前記動作線変更手段は、前記特定されたオクタン価において前記内燃機関の燃料消費率を高めるように前記動作線を変更すること
を特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項5】
前記動作線変更手段は、前記オクタン価の複数の値に応じて用意された複数の動作線の中から前記特定されたオクタン価に応じた一の動作線を選択し、該選択された一の動作線を前記燃料消費率を高めるように変更すること
を特徴とする請求項4に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項6】
前記動作線変更手段は、前記内燃機関にノッキングが起きない動作範囲内で前記燃料消費率を高めること
を特徴とする請求項4又は5に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項7】
前記内燃機関に要求される要求トルクが所定のトルクより高いか否かを判定するトルク判定手段を更に備え、
前記動作線変更手段は、前記要求トルクが前記所定のトルクより高いと判定された場合に、前記動作線を変更し、前記要求トルクが前記所定のトルクより低いと判定された場合に、前記動作線を変更しないこと
を特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記内燃機関に供給される空気の供給量を規定する各種パラメータの設定値を既存の設定値から前記変更された動作線に応じた新たな設定値に変更することで、前記変更された動作線に応じて前記内燃機関の動作を制御すること
を特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は、
前記変更された動作線に対応して前記内燃機関に供給される空気の供給量、及び前記既存の設定値に応じて供給されていた空気の供給量の差に基づいて、前記供給される空気に対応した実開度を前記新たな設定値毎に算出する実開度算出手段と、
前記新たな設定値及び前記算出された実開度の関係を学習する学習手段と
を有することを特徴とする請求項8に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項10】
前記オクタン価特定手段は、前記燃料の空燃比及び前記燃料と比較されるべき基準燃料の基準空燃比に基づいて前記オクタン価を算出すること
を特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項11】
前記燃料は、アルコール系燃料を含んでおり、
前記オクタン価特定手段は、前記燃料を前記内燃機関に供給するための燃料供給路部の途中に設けられた濃度センサによって測定された前記アルコール系燃料の濃度に基づいて前記オクタン価を特定すること
を特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項12】
ベルト式無段変速機を備えたCVT車両を駆動するための動力源である内燃機関を制御するためのCVT車両の内燃機関制御装置であって、
前記内燃機関に供給される燃料のオクタン価を特定するオクタン価特定手段と、
前記内燃機関の動作を制御するための動作線を、前記特定されたオクタン価に応じて変更する動作線変更手段と、
前記変更された動作線に基づいて、前記内燃機関の動作を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするCVT車両の内燃機関制御装置。
【請求項1】
ハイブリッド車両を駆動するための動力源である内燃機関を制御するためのハイブリッド車両の内燃機関制御装置であって、
前記内燃機関に供給される燃料のオクタン価を特定するオクタン価特定手段と、
前記内燃機関の動作を制御するための動作線を、前記特定されたオクタン価に応じて変更する動作線変更手段と、
前記変更された動作線に基づいて、前記内燃機関の動作を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項2】
前記動作線変更手段は、前記オクタン価の複数の値に応じて予め設定された複数の動作線の中から前記特定されたオクタン価に応じた一の動作線を選択し、該選択された一の動作線を前記変更された動作線とすること
を特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項3】
前記複数の動作線の夫々は、前記内燃機関にノッキングが起きない動作範囲内で設定されていること
を特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項4】
前記動作線変更手段は、前記特定されたオクタン価において前記内燃機関の燃料消費率を高めるように前記動作線を変更すること
を特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項5】
前記動作線変更手段は、前記オクタン価の複数の値に応じて用意された複数の動作線の中から前記特定されたオクタン価に応じた一の動作線を選択し、該選択された一の動作線を前記燃料消費率を高めるように変更すること
を特徴とする請求項4に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項6】
前記動作線変更手段は、前記内燃機関にノッキングが起きない動作範囲内で前記燃料消費率を高めること
を特徴とする請求項4又は5に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項7】
前記内燃機関に要求される要求トルクが所定のトルクより高いか否かを判定するトルク判定手段を更に備え、
前記動作線変更手段は、前記要求トルクが前記所定のトルクより高いと判定された場合に、前記動作線を変更し、前記要求トルクが前記所定のトルクより低いと判定された場合に、前記動作線を変更しないこと
を特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記内燃機関に供給される空気の供給量を規定する各種パラメータの設定値を既存の設定値から前記変更された動作線に応じた新たな設定値に変更することで、前記変更された動作線に応じて前記内燃機関の動作を制御すること
を特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は、
前記変更された動作線に対応して前記内燃機関に供給される空気の供給量、及び前記既存の設定値に応じて供給されていた空気の供給量の差に基づいて、前記供給される空気に対応した実開度を前記新たな設定値毎に算出する実開度算出手段と、
前記新たな設定値及び前記算出された実開度の関係を学習する学習手段と
を有することを特徴とする請求項8に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項10】
前記オクタン価特定手段は、前記燃料の空燃比及び前記燃料と比較されるべき基準燃料の基準空燃比に基づいて前記オクタン価を算出すること
を特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項11】
前記燃料は、アルコール系燃料を含んでおり、
前記オクタン価特定手段は、前記燃料を前記内燃機関に供給するための燃料供給路部の途中に設けられた濃度センサによって測定された前記アルコール系燃料の濃度に基づいて前記オクタン価を特定すること
を特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載のハイブリッド車両の内燃機関制御装置。
【請求項12】
ベルト式無段変速機を備えたCVT車両を駆動するための動力源である内燃機関を制御するためのCVT車両の内燃機関制御装置であって、
前記内燃機関に供給される燃料のオクタン価を特定するオクタン価特定手段と、
前記内燃機関の動作を制御するための動作線を、前記特定されたオクタン価に応じて変更する動作線変更手段と、
前記変更された動作線に基づいて、前記内燃機関の動作を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするCVT車両の内燃機関制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−162649(P2007−162649A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363170(P2005−363170)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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