説明

プラズマ発生装置及び成膜装置、エッチング装置、表面処理装置、イオン注入装置

【課題】 均一で高密度な長尺のライン状プラズマを生成することが可能であるプラズマ発生装置、及びこのプラズマ発生装置を利用した大面積基板への成膜が可能である成膜装置、並びにエッチング装置、表面処理装置、イオン注入装置を提供すること。
【解決手段】 マイクロ波を発生するマイクロ波発生源と、前記マイクロ波発生源から発生したマイクロ波が導入されるとともに、該マイクロ波の伝播方向に延びるスリットを有する導波管と、前記スリットから誘電体窓を介して漏れ出すマイクロ波によってプラズマ化されるプラズマ生成用ガスが供給されるチャンバーと、前記プラズマに対して磁場を印加することによって前記チャンバー内に電子サイクロトロン共鳴を生じさせる磁場発生機構と、を備えていることを特徴とする電子サイクロトロン共鳴ラインプラズマ発生装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ発生装置及び成膜装置、エッチング装置、表面処理装置、イオン注入装置に関し、より詳しくは、電子サイクロトロン共鳴(ECR)ラインプラズマ発生装置及びこのプラズマ発生装置を利用した成膜装置、エッチング装置、表面処理装置、イオン注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロ波を利用するプラズマ発生装置として、マイクロ波が導入される矩形状の導波管に、マイクロ波の伝播方向を横切る方向に延びるスリットを設けた構造を有することにより、ライン状プラズマを生成することが可能なものが知られている(下記特許文献1参照)。
しかし、この特許文献1に開示されたプラズマ発生装置は、長尺のライン状プラズマを生成することが難しいため、大面積の基板等に対してプラズマ処理を行うための装置として使用することは困難であった。
【0003】
このような問題点を解決するための技術として、下記特許文献2には、マイクロ波が導入される矩形状の導波管に、マイクロ波の伝播方向に沿って延びるスリットを設けたプラズマ発生装置が開示されている。
この装置によれば、スリットを設けた導波管の長さを長くすることによって、長尺のライン状プラズマを生成することが可能となる。
しかし、この装置では、長尺のライン状プラズマを生成することはできるが、均一で高密度な長尺のライン状プラズマを生成することは困難であった。
【0004】
例えば、フレキシブルディスプレイ用の酸化亜鉛薄膜トランジスタの作製においては、基板の耐熱性の点からプロセス温度を150℃以下に設定しなければならないが、絶縁膜は150℃以下のプロセス温度では十分な性能を発揮することができない。
従って、基板温度を低温に保ったまま絶縁膜形成反応を促進させることが、低温で高性能な酸化亜鉛薄膜トランジスタを作製するために重要である。
一方、基板の大面積化に対する要求も強いことから、低温で絶縁膜を大面積に成膜することができる成膜装置の創出が望まれている。
【0005】
低温で絶縁膜を大面積に成膜するためには、均一で高密度な長尺のライン状プラズマを生成することができるプラズマ発生装置を使用することが最適であるが、従来このような装置は存在していなかった。
【0006】
また、大面積の対象物にエッチング処理を施すことが可能なエッチング装置や、表面改質に用いられる表面処理装置及びイオン注入装置に関してもライン状プラズマを生成可能なプラズマ発生装置を応用した装置は存在していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−48997号公報
【特許文献2】特開2006−269151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、均一で高密度な長尺のライン状プラズマを生成することが可能であるプラズマ発生装置、及びこのプラズマ発生装置を利用した大面積基板への成膜が可能である成膜装置、並びにエッチング装置、表面処理装置、イオン注入装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、マイクロ波を発生するマイクロ波発生源と、前記マイクロ波発生源から発生したマイクロ波が導入されるとともに、該マイクロ波の伝播方向に延びるスリットを有する導波管と、前記スリットから誘電体窓を介して漏れ出すマイクロ波によってプラズマ化されるプラズマ生成用ガスが供給されるチャンバーと、前記プラズマに対して磁場を印加することによって前記チャンバー内に電子サイクロトロン共鳴を生じさせる磁場発生機構と、を備えていることを特徴とする電子サイクロトロン共鳴ラインプラズマ発生装置に関する。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記磁場発生機構が、前記導波管上に前記スリットの上方に且つ長さ方向に沿って載置された永久磁石であることを特徴とする請求項1記載の電子サイクロトロン共鳴ラインプラズマ発生装置に関する。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記磁場発生機構が電磁石であることを特徴する請求項1記載の電子サイクロトロン共鳴ラインプラズマ発生装置に関する。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記導波管が互いに平行な方向に延びる複数のスリットを有しており、前記磁場発生機構が配置されることにより、夫々のスリットの下方のチャンバー内で電子サイクロトロン共鳴を生じさせることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の電子サイクロトロン共鳴ラインプラズマ発生装置に関する。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記マイクロ波の周波数が915MHzであることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の電子サイクロトロン共鳴ラインプラズマ発生装置に関する。
【0014】
請求項6に係る発明は、基板に対向して設けたターゲットにイオンを照射するイオン源を有し、前記ターゲットから放出された粒子を前記基板上に成膜させる成膜装置であって、前記イオン源が請求項1乃至5いずれかに記載のプラズマ発生装置から構成されることを特徴とする成膜装置に関する。
【0015】
請求項7に係る発明は、成膜用の原料ガスをプラズマ化して基板上に成膜させる成膜装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至5いずれかに記載のプラズマ発生装置から構成されることを特徴とする成膜装置に関する。
【0016】
請求項8に係る発明は、プラズマにより生成された活性種によってエッチング対象物をエッチングするエッチング装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至5いずれかに記載のプラズマ発生装置から構成されることを特徴とするプラズマエッチング装置に関する。
【0017】
請求項9に係る発明は、原料ガスをプラズマ化して被処理物の表面を改質するプラズマ表面処理装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至5いずれかに記載のプラズマ発生装置から構成されることを特徴とするプラズマ表面処理装置に関する。
【0018】
請求項10に係る発明は、ドーパントイオンを含むプラズマ発生源を有し、該プラズマ発生源からドーパントイオンを引き出し、該イオンを加速して基板にイオン注入するイオン注入装置であって、前記プラズマ発生源が請求項1乃至5いずれかに記載のプラズマ発生装置から構成されることを特徴とする非質量分離型ライン状ビームイオン注入装置に関する。
【0019】
請求項11に係る発明は、ドーパントイオンを含むプラズマ発生源を有し、該プラズマ発生源からイオンを引き出して質量分離した後に、基板にイオン注入するイオン注入装置であって、前記プラズマ発生源が請求項1乃至5いずれかに記載のプラズマ発生装置から構成されることを特徴とする質量分離型ライン状ビームイオン注入装置に関する。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によれば、マイクロ波を発生するマイクロ波発生源と、前記マイクロ波発生源から発生したマイクロ波が導入されるとともに、該マイクロ波の伝播方向に延びるスリットを有する導波管と、前記スリットから誘電体窓を介して漏れ出すマイクロ波によってプラズマ化されるプラズマ生成用ガスが供給されるチャンバーとを備えているため、導波管を長さ方向に延長することにより長尺で均一なライン状プラズマを生成することが可能である。また、プラズマに対して磁場を印加することによって電子サイクロトロン共鳴を生じさせる磁場発生機構を備えているため、高い電子密度を有する高密度プラズマを生成することができる。
【0021】
請求項2に係る発明によれば、前記磁場発生機構が、前記導波管上に前記スリットの上方に且つ長さ方向に沿って載置された永久磁石であるため、発生するライン状プラズマに効率的に磁場を印加することが可能となり、高密度の電子サイクロトロン共鳴プラズマを生成することができる。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、磁場発生機構が電磁石であるため、印加する磁場の強さが調節可能となり、発生するライン状プラズマに強力な磁場を印加することができ、高密度の電子サイクロトロン共鳴プラズマを生成可能となる。
【0023】
請求項4に係る発明によれば、導波管が互いに平行な方向に延びる複数のスリットを有しており、前記磁場発生機構が配置されることにより、夫々のスリットの下方のチャンバー内で電子サイクロトロン共鳴を生じさせることで、複数本の長尺で均一な高密度のライン状プラズマを生成することが可能となり、例えば、成膜装置に適用した場合、大面積の基板に対する成膜効率を向上させることができる。
【0024】
請求項5に係る発明によれば、導波管に導入されるマイクロ波の周波数が915MHzであることにより、導波管の作製がより容易になるとともに、スリット幅の選択範囲を広げることが可能となってより長尺の高密度ライン状プラズマを得ることが可能となる。
【0025】
請求項6に係る発明によれば、基板に対向して設けたターゲットにイオンを照射するイオン源を有し、前記ターゲットから放出された粒子を前記基板上に成膜させる成膜装置であって、前記イオン源が請求項1乃至5いずれかに記載のプラズマ発生装置から構成されることにより、高密度のプラズマにより大面積の基板に対する低温成膜を行うことが可能なプラズマスパッタ装置が得られる。
【0026】
請求項7に係る発明によれば、成膜用の原料ガスをプラズマ化して基板上に成膜させる成膜装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至5いずれかに記載のプラズマ発生装置から構成されることにより、高密度のプラズマにより大面積の基板に対する低温成膜を行うことが可能なプラズマCVD装置が得られる。
【0027】
請求項8に係る発明によれば、プラズマにより生成された活性種によってエッチング対象物をエッチングするエッチング装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至5いずれかに記載のプラズマ発生装置から構成されることにより、高密度のプラズマにより大面積のエッチング対象物に対してエッチング処理を行うことが可能なプラズマエッチング装置が得られる。
【0028】
請求項9に係る発明によれば、原料ガスをプラズマ化して被処理物の表面を改質するプラズマ表面処理装置であって、前記プラズマの発生源が請求項1乃至5いずれかに記載のプラズマ発生装置から構成されることにより、大面積のシート状合成樹脂表面を高密度のプラズマにより改質することが可能なプラズマ表面処理装置が得られる。
【0029】
請求項10に係る発明によれば、ドーパントイオンを含むプラズマ発生源を有し、該プラズマ発生源からドーパントイオンを引き出し、該イオンを加速して基板にイオン注入するイオン注入装置であって、前記プラズマ発生源が請求項1乃至5いずれかに記載のプラズマ発生装置から構成されることにより、種々のイオンをドーパントとして効率的にターゲットへ注入することができるイオン注入装置が得られる。
【0030】
請求項11に係る発明によれば、ドーパントイオンを含むプラズマ発生源を有し、該プラズマ発生源からイオンを引き出して質量分離した後に、基板にイオン注入するイオン注入装置であって、前記プラズマ発生源が請求項1乃至5いずれかに記載のプラズマ発生装置から構成されることにより、特定のイオンのみをドーパントとして効率的にターゲットへ注入することができるイオン注入装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るプラズマ発生装置の要部斜視図である。
【図2】本発明に係るプラズマ発生装置の導波管の周辺構成を示す図である。
【図3】本発明に係るプラズマ発生装置を利用した成膜装置(プラズマスパッタ装置)を示す概略断面図である。
【図4】本発明に係るプラズマ発生装置を利用した成膜装置(プラズマCVD装置)を示す概略断面図である。
【図5】本発明に係るプラズマ発生装置を利用したプラズマエッチング装置を示す概略断面図である。
【図6】本発明に係るプラズマ発生装置を利用したプラズマ表面処理装置を示す概略断面図である。
【図7】本発明に係るプラズマ発生装置を利用したイオン注入装置の一例を示す概略断面図である。
【図8】実施例で使用した装置の各部分の寸法を示す図である。
【図9】実施例及び比較例の装置の電子密度の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るプラズマ発生装置及び成膜装置、エッチング装置、表面処理装置、イオン注入装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係るプラズマ発生装置の要部斜視図、図2は本発明に係るプラズマ発生装置の導波管の周辺構成を示す図である。
本発明に係るプラズマ発生装置(1)は、マイクロ波発生源(2)と、導波管(3)と、チャンバー(4)と、磁場発生機構(5)を備えている。
【0033】
導波管(3)は、アルミニウムや真鍮等の導体で形成されており、図2に示すようにマイクロ波発生源(2)と接続されている。マイクロ波発生源(2)から発生したマイクロ波は、テーパ導波管(6)等を介して導波管(3)に導入される。
マイクロ波の伝播方向の終端部には、可動反射板を備えたプランジャ(7)がテーパ導波管(6)を介して接続されている。プランジャ(7)により可動反射板の位置を調整することにより、導波管(3)内を進行(伝播)するマイクロ波の波長(位相)を微調整することができる。
また、図2中、(23)はマイクロ波のチューナー、(24)は反射波を熱に変換するアイソレータである。
【0034】
導波管(3)は、高さより幅が大きい断面長方形状の内部空間を有する管であり、その長さ方向にマイクロ波が導入される。尚、図1において、上下方向が高さ方向、左右方向が幅方向、奥行き方向が長さ方向である。
高さは5〜10mm、幅は使用するマイクロ波の波長によって適宜設定される。長さについては特に限定されず、理論上は制限されずに延長可能である。
通常使用されるマイクロ波(周波数2.45GHz)の場合、幅を61〜62mmとした時に、導波管内の伝播波長が最も長くなり、プラズマ励起効率が最大になる。
また、上記した波長よりも長い波長のマイクロ波も使用可能であり、周波数915MHzのマイクロ波が好適である。周波数915MHzのマイクロ波を使用する場合、幅を163〜164mmとした時に、導波管内の伝播波長が最も長くなる。
【0035】
導波管(3)に対してマイクロ波(例えば2.45GHz、915MHz)を導入し、TE10モードがたつと、導波管内の波長(λ)は電磁気学の理論により、下式で表わされる。
【0036】

ここで、λは自由空間における電磁波の波長、μは比透磁率、εは比誘電率、Lは導波管の幅である。
【0037】
導波管の幅を遮断波長(遮断周波数)に対応した長さ付近のサイズとすると、導波管内波長は原理的に非常に長くなる。従って、導波管内に導入されたマイクロ波は導波管内全域で腹であるようなモードとなり、長さ方向にスリットを設けると、スリット全長に亘ってマイクロ波が漏れ出ることとなる。
具体的には、2.45GHzのマイクロ波の場合、その波長は自由空間では122.364mmであり、遮断波長は61.182mmである。一方、915MHzのマイクロ波の場合、その波長は自由空間では327.642mmであり、遮断波長は163.821mmである。従って、2.45GHzの場合は導波管の幅を61.182mm付近のサイズとし、915MHzの場合は163.821mm付近のサイズとすることが好ましい。
【0038】
導波管(3)は、その下面にマイクロ波の伝播方向(導波管の長さ方向)に延びるスリット(8)を有している。
スリット(8)は、導波管(3)の長さ方向に必要な長さで形成されており、その幅は例えば3〜5mm程度に設定されるが、915MHzのマイクロ波の場合は10mm程度まで拡張可能である。
また、2.45GHzのマイクロ波の場合、導波管(3)の幅が約61mmと短いため、導波管(3)及びスリット(8)の長さを長く(例えば2m超)すると導波管(3)に歪みが生じてしまい、長尺のライン状プラズマを得ることができない。
これに対して、915MHzのマイクロ波を用いると、導波管(3)の幅を約164mmと長くすることができるため、導波管(3)及びスリット(8)の長さを長く(例えば2m超)しても導波管(3)に歪みが生じることなく、安定的に長尺のライン状プラズマを得ることが可能である。
【0039】
スリット(8)の上部には、スリット(8)を被覆するように誘電体窓(9)が配置されている。
誘電体窓(9)は、マイクロ波が透過可能な誘電体(例えば石英、アルミナなど)から構成されており、導波管(3)に導入されたマイクロ波は誘電体窓(9)を透過してスリット(8)からチャンバー(4)へと導かれる。
【0040】
チャンバー(4)は、導波管(3)の下方に配置されており、その内部にプラズマ生成用ガスを供給するためのプラズマ生成ガス供給口(図示略)が設けられている。また、チャンバー(4)には、その内部を減圧して高真空状態とするための減圧手段(図示略)が接続されている。
プラズマ生成用ガスの種類は特に限定されず、目的に応じて適宜変更される。例えば、アルゴン(Ar)、窒素(N)、ヘリウム(He)、キセノン(Xe)、クリプトン(Kr)、フッ素(F)等のマイクロ波の電磁エネルギーが作用した時にラジカル(遊離基)が生じやすいガスが好適に使用される。更に、酸化膜を成膜する場合は酸素(O)、亜酸化窒素(NO)、オゾン(O)等の酸化性ガスが使用され、シリコン(Si)膜の場合は水素(H)等が好適に使用される。
【0041】
プラズマ生成ガス供給口(図示略)から供給されたプラズマ生成用ガスは、スリット(8)の全長に亘って誘電体窓(9)を介して導かれる(漏れ出す)マイクロ波によってプラズマ化される。
これにより、チャンバー(4)内に均一なライン状プラズマが生成される。
ここで、導波管(3)の長さ(スリット(8)の長さ)を延長することにより、生成されるライン状プラズマを長尺化することが可能である。
尚、本願発明者らは、導波管(3)の長さ(スリット(8)の長さ)を1mとし、磁場発生機構(5)を設けない場合、即ち、電子サイクロトロン共鳴が生じない条件において、80cm程度の長尺なライン状プラズマが生成可能なことを確認している。
【0042】
磁場発生機構(5)は、磁場を発生するものであれば特に限定されず、例えば永久磁石や電磁石が好適に使用される。
図1は、永久磁石を使用する場合の図であり、永久磁石は導波管(3)上にスリット(8)の上方に且つ長さ方向に沿って載置され、例えばN極をスリット(8)の方向(下方)に向けて配置される。使用する永久磁石はサマリウムコバルト磁石(SmCo又はSmCo17)やネオジム磁石(NdFe14B)等の強力な磁石が好適である。
磁場発生機構(5)(永久磁石や電磁石)の種類やサイズ、配置する個数等は適宜変更される。
また、磁場発生機構(5)として電磁石を使用する場合、電磁石の設置場所はスリット(8)の上方に限定されず、電子サイクロトロン共鳴を生じさせることが可能な場所に配置される。
磁場発生機構(5)を配置することにより、チャンバー(4)内に生成されたプラズマに対して磁場が印加され、電子サイクロトロン共鳴が生じる。
これにより、高い電子密度(1011〜1013cm−3)を有する高密度ライン状プラズマを生成することができる。
【0043】
本発明に係るプラズマ発生装置(1)においては、導波管(3)に互いに平行に延びる複数のスリット(8)を設け、夫々のスリット(8)の下方のチャンバー(4)内で電子サイクロトロン共鳴を生じさせるように磁場発生機構(5)を配置する構成を採用してもよい。複数のスリット(8)を設ける場合においても、磁場発生機構(5)の設置場所は、例えば永久磁石はスリット(8)の上方に設置すればよく、電磁石は電子サイクロトロン共鳴を生じさせることが可能な場所であれば特に限定されない。
複数のスリット(8)を設けることで、複数本の高密度ライン状プラズマを生成することが可能となるため、例えば、成膜装置に適用した場合には、大面積の基板に対する成膜効率を向上させることができる。
【0044】
上記構成からなる本発明に係るプラズマ発生装置(1)は、スパッタ装置やプラズマCVD装置等の成膜装置、プラズマエッチング装置、プラズマ表面処理装置、イオン注入装置等のプラズマを使用する様々な装置に利用することが可能である。
【0045】
図3は本発明に係るプラズマ発生装置を利用した成膜装置を示す概略断面図である。
図3に示す成膜装置(11)は、基板(12)に対向して設けたターゲット(13)にイオンを照射するプラズマ源を有し、ターゲット(13)から放出された粒子を基板(12)上に成膜させる成膜装置(スパッタ装置)であり、プラズマ源として上記構成からなる本発明に係るプラズマ発生装置(1)が利用される。
【0046】
基板(12)は、成膜装置(11)の成膜室となるチャンバー(4)内の下方に配設された基板電極(14)上に載置されており、基板電極(14)にはパルス電源(15)あるいは高周波電源(図示略)が接続されている。尚、基板電極(14)には基板(12)を加熱可能なヒーターを設けてもよい。
パルス電源(15)を使用する場合、両極性パルスバイアスを印加可能であることが好ましい。成膜時に基板(12)に対して両極性パルスバイアスを印加することにより、高速成膜時の膜質劣化を防止することができる。
また、成膜装置(11)は、基板(12)を導波管(3)の長さ方向(スリット(8)の長さ方向)と直交する方向(矢印の方向)に走査するための走査手段(図示略)を備えている。
【0047】
成膜の原材料となるターゲット(13)は、基板(12)の上方に且つスリット(8)を挟んだ対象位置に配置された左右一対のターゲット電極(25)の表面に設けられている。
左右一対のターゲット電極(25)は、図示の如く正面視ハの字状に配置されており、各ターゲット(13)の表面に対する垂直軸は、基板(12)の表面に対する垂直軸に対して例えば45°の角度で配置される。
また、ターゲット電極(25)には、高周波電源(16)あるいは直流(DC)電源(図示略)が接続されている。
ターゲット電極(25)は、距離方向に直径が大きくなる円筒状とすることもできる。
【0048】
スリット(8)の直下且つ左右一対のターゲット電極(22)よりやや上方位置には、プラズマ生成ガス供給口(10)が配置されている。
プラズマ生成ガス供給口(10)にはプラズマ生成ガス供給装置(17)が接続されており、プラズマ生成ガス供給口(10)からチャンバー(4)内にプラズマ生成ガスを供給し、プラズマを生成することができる。
プラズマ生成ガス供給口(10)に接続されるプラズマ生成ガス供給装置(17)に充填されるガスは、所望の膜に応じ適宜変更される。例えば、酸化膜を成膜する場合、酸素(O)亜酸化窒素(NO)、オゾン(O)等をプラズマ生成ガス供給装置(17)に充填し、チャンバー(4)内にオゾンを供給し、上記したガスを材料として活性な酸素ラジカルが生成される。
【0049】
チャンバー(4)の下部には、チャンバー(4)内の圧力を調整するための圧力調整バルブ(20)と、チャンバー(4)内の気体の大容量排気システムとしての大容量のターボ分子ポンプ(21)及びロータリーポンプ(22)が接続されている。このような大容量排気システムを設けることにより、材料ガスを大流量で供給した条件において低成膜圧力を実現することが可能となる。
【0050】
上記構成からなる成膜装置(11)によれば、プラズマ生成ガス供給口(10)からチャンバー(4)内に供給されたプラズマ生成用ガスが、スリット(8)の全長に亘って誘電体窓(9)を介して導かれる(漏れ出す)マイクロ波によってプラズマ化される。
これにより、チャンバー(4)内に均一なライン状プラズマが生成され、このライン状プラズマに対して磁場発生機構(5)により磁場が印加されて電子サイクロトロン共鳴が生じることにより、高い電子密度(1011〜1013cm−3)を有する高密度ライン状プラズマが生成される。尚、電子サイクロトロン共鳴点がターゲット(13)の近傍に位置するように、磁場発生機構(5)の種類やターゲット(13)の位置等が調整される。
生成されたプラズマ中のイオンは、ターゲット(13)へと照射されて衝突し、これによりターゲット(13)から粒子が放出され、放出された粒子は基板(12)上に成膜される。
【0051】
この成膜装置(11)では、プラズマ発生装置(1)から高密度な長尺のライン状プラズマが生成されるため、基板(12)を導波管(3)の長さ方向(スリット(8)の長さ方向)と直交する方向(矢印の方向)に走査することにより、大面積基板に対して成膜が可能となる。
【0052】
図4は本発明に係るプラズマ発生装置を利用した成膜装置の他の実施形態を示す概略断面図である。
図4に示す成膜装置(31)は、成膜用の原料ガスをプラズマ化して基板(12)上に成膜させる成膜装置(プラズマCVD装置)であり、プラズマの発生源として上記構成からなる本発明に係るプラズマ発生装置(1)が利用される。
【0053】
成膜装置(31)は、図3に示した成膜装置(11)と共通する構成が多いため、共通する構成については同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
成膜装置(31)の成膜室となるチャンバー(4)内の上方且つプラズマ生成ガス供給口(10)の下方には多孔電極(32)が配置されている。
多孔電極(32)は、多数の小孔が全面に設けられた多孔板からなり、チャンバー(4)内を水平面内で上下に仕切るように設けられ、接地されている。また、必要に応じて両極性のバイアスが印加される。
また、基板(12)の上方には、複数のガス供給口(18)が配置されている。これらのガス供給口(18)には、別々のバルブ及び流量制御器を介して、例えば有機金属材料ガス、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、アルゴン(Ar)、窒素(N)等の成膜に応じた複数のガス容器(19)が接続されている。これら複数のガス容器(19)に収容されたガスは、単独でもしくは2種以上を任意の割合で混合してガス供給口(18)からチャンバー(4)内へと供給することが可能となっている。
【0054】
図4に示した成膜装置(31)によれば、プラズマ生成ガス供給口(10)から供給されたプラズマ生成用ガスが、スリット(8)の全長に亘って誘電体窓(9)を介して導かれる(漏れ出す)マイクロ波によってプラズマ化される。
例えば、プラズマ生成ガス供給口(10)からチャンバー(4)内に大流量のオゾン(O)を供給することにより、オゾンを材料とする酸化性プラズマ(高酸化プラズマ)を生成することができる。
【0055】
プラズマは、チャンバー(4)内に均一なライン状プラズマとして生成され、このライン状プラズマに対して磁場発生機構(5)により磁場が印加されて電子サイクロトロン共鳴が生じることにより、高い電子密度(1011〜1013cm−3)を有する高密度ライン状プラズマが生成される。
生成された高密度ライン状プラズマ(酸化性プラズマ)により、ガス供給口(18)から供給される成膜の原料となるガス(HMDS等)が励起分解され、酸化ケイ素(SiO)等の酸化膜が基板(12)上に成膜される。
このとき、高密度プラズマ中の粒子(イオン)は、多孔電極(32)に設けられた小孔を通過する際に減速されてエネルギーが減少する、あるいは多孔電極(32)にトラップされるため、高エネルギー粒子の衝突による基板(12)の損傷を防ぐことができる。
【0056】
この成膜装置(31)でも、プラズマ発生装置(1)から高密度な長尺のライン状プラズマが生成されるため、基板(12)を導波管(3)の長さ方向(スリット(8)の長さ方向)と直交する方向(矢印の方向)に走査することにより、大面積基板に対して成膜が可能となる。また、高密度プラズマにより低温での成膜が可能となる。
【0057】
尚、上記した成膜装置(11)(31)において、チャンバー(4)内に供給されるガスの種類は上記したものに限定されず、成膜される膜の種類に合わせて変更が可能であることは言うまでもない。
【0058】
本発明では、上記した成膜装置(11)(31)において、複数のプラズマ発生装置(1)を導波管(3)の幅方向に並べて設置してもよい。
これにより、複数本の高密度ライン状プラズマを生成することが可能となるため、大面積の基板に対する成膜効率を向上させることができる。
【0059】
本発明に係るプラズマ発生装置を利用した成膜装置以外の他の実施形態としては、プラズマエッチング装置、プラズマ表面処理装置、イオン注入装置である。
【0060】
図5は本発明に係るプラズマ発生装置を利用したプラズマエッチング装置を示す概略断面図である。
図5に示すプラズマエッチング装置(41)は、プラズマにより生成された活性種(電子、イオン、ラジカル)によってエッチング対象物(基板(12))にエッチング処理を施す。このプラズマエッチング装置(41)のプラズマの発生源として上記構成からなる本発明に係るプラズマ発生装置(1)が利用される。
【0061】
エッチング対象物(基板(12))は、プラズマエッチング装置(41)のエッチング処理室となるチャンバー(4)内の下方に配設された支持台(基板電極(14))上に載置されており、支持台(基板電極(14))にはパルス電源(15)あるいは高周波電源(図示略)が接続されている。パルス電源(15)を使用する場合、両極性パルスバイアスを印加可能であることが好ましい。
【0062】
活性種の原料となる反応性ガスは、プラズマ生成ガス供給口(10)からチャンバー(4)内に供給される。
活性種の原料となる反応性ガス(プラズマ生成ガス)は公知のものを使用することができ、例えばパーフルオロカーボン(PFCガス)やハイドロフルオロカーボン(HFCガス)、無機ハロゲンガス、炭化水素系ガス、アルゴン(Ar)やキセノン(Xe)等の希ガス、酸素(O)、窒素(N)等が挙げられ、エッチング対象物(基板(12))に応じて適宜変更される。
エッチング処理時にチャンバー(4)内を減圧するための真空排気系が備えられており、圧力調整バルブ(20)を介してターボ分子ポンプ(21)とロータリーポンプ(22)とが設置されている。
【0063】
上記構成からなるプラズマエッチング装置(41)によれば、プラズマ生成ガス供給口(10)からチャンバー(4)内に供給されたプラズマ生成ガスが、スリット(8)全長に亘って誘電体窓(9)を介して導かれる(漏れ出す)マイクロ波によってプラズマ化される。
これにより、チャンバー(4)内に均一なライン状プラズマが生成され、このライン状プラズマに対して磁場発生機構(5)により磁場が印加されて電子サイクロトロン共鳴が生じることにより、高い電子密度(1011〜1013cm−3)を有する高密度ライン状プラズマが生成される。
【0064】
このプラズマエッチング装置(41)では、プラズマ発生装置(1)から高密度な長尺のライン状プラズマが生成されるため、エッチング対象物(基板(12))を導波管(3)の長さ方向(スリット(8)の長さ方向)と直交する方向に走査することにより、大面積のエッチング対象物(基板(12))に対してエッチング処理が可能となる。
【0065】
図6は本発明に係るプラズマ発生装置を利用したプラズマ表面処理装置を示す概略断面図である。
図6に示すプラズマ表面処理装置(51)は、反応性ガスをプラズマ化して被処理物の表面を改質する。このプラズマ表面処理装置(51)のプラズマ発生源として上記構成からなる本発明に係るプラズマ発生装置(1)が利用される。
【0066】
プラズマ表面処理装置(51)は、図5に示したプラズマエッチング装置(41)と略同様の構成であるため、プラズマエッチング装置(41)と同じ符号を用いて説明する。
尚、本発明に係るプラズマ表面処理装置(51)は、上記した成膜装置(11)、(31)と略同様の構造としてもよい。
表面処理の被処理物、即ち表面処理の対象となるシート状合成樹脂(52)は、プラズマ表面処理装置の処理室となるチャンバー(4)の下方に配設された巻き取り装置(53)を備えた基板電極(14)上に載置される。基板電極(14)にはパルス電源(15)あるいは高周波電源(図示略)が接続される。
【0067】
反応性ガスは、プラズマ生成ガス供給口(10)からチャンバー(4)内に供給される。
この反応性ガスには酸素(O)、窒素(N)、アルゴン(Ar)等が用いられる。
表面処理時にチャンバー(4)内を減圧するための真空排気系が備えられており、圧力調整バルブ(20)を介してターボ分子ポンプ(21)とロータリーポンプ(22)とが設置されている。
【0068】
このプラズマ表面処理装置(51)では、プラズマ発生装置(1)から高密度な長尺のライン状プラズマが生成されるため、被処理物(シート状合成樹脂(52))を導波管(3)の長さ方向(スリット(8)の長さ方向)と直交する方向に巻き取る(図6中矢印方向)ことにより、大面積の被処理物の表面に対して改質処理を施すことが可能となる。
【0069】
本発明に係るプラズマ発生装置は、非質量分離型あるいは質量分離型のイオン注入装置のいずれにおいても好適に利用することができる。
【0070】
図7は本発明に係るプラズマ発生装置を利用したイオン注入装置の一例を示す概略断面図であり、非質量分離型イオン注入装置の一実施形態を示す図である。
図7に示す非質量分離型イオン注入装置(61)は、ドーパントイオンを含むプラズマを発生するプラズマ発生源を有し、該プラズマ発生源からドーパントイオンを引き出してイオンビーム化し、該イオンビームを加速して基板にイオン注入するものであり、プラズマ発生源として上記した本発明に係るプラズマ発生装置が利用される。
【0071】
非質量分離型イオン注入装置(61)は、主にプラズマ発生源(プラズマ発生装置(1))を含む高圧部(62)と、イオン注入対象となる基板にイオンを注入するイオン注入部(63)(チャンバー(4))とから構成されている。高圧部(62)とイオン注入部(63)の間には、必要に応じてイオン加速部(64)やイオンビーム加工部(65)が設置される。
イオン注入部(63)には、イオン注入対象となる基板(12)を載置する基板電極(141)が配置される。
【0072】
高圧部(62)は、例えば100kVの高圧に昇圧されて外部から絶縁された状態とされる。高圧部(62)内に設置されたプラズマ発生源(プラズマ発生装置(1))のスリット(8)の下方には引き出し電極(66)が配設される。この引き出し電極(66)により当該電圧を引き出し電圧として、プラズマ発生源(プラズマ発生装置(1))のスリット(8)からドーパントイオンを引き出してイオンビーム化する。
生成されたイオンビームは、イオン加速部(64)を通過する間に加速された後、イオンビーム加工部(65)を通過してイオン注入部(63)に導入され、イオン注入部(63)に設置された基板電極(141)上の基板(12)に注入される。尚、基板電極(141)には基板を加熱するヒーターは内設されない。
【0073】
このイオン注入装置(61)には、本発明に係るプラズマ発生装置(1)が利用されるため、発生初期から長尺のライン状イオンビームを得ることができるとともに、イオンビームを長尺化するための装置を不要とすることが可能となる。
ライン状イオンビームが得られるため、イオン注入対象である基板(12)をスリット(8)の長さ方向と直交する方向に走査することにより、大面積基板に対してもイオン注入が可能となる。
【0074】
また、質量分離型イオン注入装置(図示略)は、上記した非質量分離型イオン注入装置と略同様の構成であり、高圧部(62)と、イオン注入部(63)とから構成されるが、更に、発生するイオンビームの中からドーパントとなるイオン種を選別するイオン質量分析器部が備えられている。また、必要に応じてイオンビームにエネルギーを付加するイオン加速部(64)を設け、イオンを加速することも可能である。この他の装置構成は上記した非質量分離型イオン注入装置(61)と同様とすることができる。
【0075】
質量分離型イオン注入装置においても、本発明に係るプラズマ発生装置(1)が利用されるため、発生初期から長尺のライン状イオンビームを得ることができるとともに、イオンビームを長尺化するための装置を不要とすることが可能となる。
ライン状イオンビームが得られるため、イオン注入対象である基板(12)をスリット(8)の長さ方向と直交する方向に走査することにより、大面積基板に対してもイオン注入が可能となる。
【0076】
上記したように、本発明に係るプラズマ発生装置(1)を用いると長尺なライン状イオンビームを得ることができるとともに、高密度なイオンビームとすることができるため、非質量分離型あるいは質量分離型のいずれであっても、大面積の基板に対してもイオン注入することが可能となる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明に係るプラズマ発生装置の実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明は以下の実施例には限定されない。
【0078】
(実施例)
図1及び図2に示す構成を備えた本発明に係るプラズマ発生装置(図8に装置の各部分の寸法を示す)を使用し、スリット(8)間における電子密度を、スリット下面からの距離が異なる垂直方向(図8中のZ方向)の複数箇所において測定した。
マイクロ波の周波数は2.45GHzとし、スリット(8)の幅は3mmとした。磁場発生機構(5)は、875Gaussの共鳴磁場を形成できる厚さ20mm×幅50mmのネオジム磁石を使用した。チャンバー(4)内に供給されるプラズマ生成用ガスとしてはArガスを使用し、チャンバー内の圧力は4.8Torrとした。
(比較例)
実施例の装置から磁場発生機構(5)を取り外したものを比較例とし、他は実施例と同じ条件で同様の測定を行った。
【0079】
測定結果を図9に示す。尚、図9において丸印が実施例、四角印が比較例のプロットである。
図9から明らかなように、実施例の装置では電子マグネトロン共鳴点付近で1012cm−3を超える電子密度が得られた。この測定値は、非共鳴領域よりもオーダーが1桁高いものであった。
一方、比較例の装置では、電子密度の測定値は実施例の非共鳴領域と同等の1011cm−3オーダーであった。
この結果から、本発明(実施例)に係るプラズマ発生装置によれば、従来(比較例)の装置に比べて格段に高密度のプラズマが得られることが確認された。
また、実施例の装置において、スリット(8)の長さ方向における電子密度の差は5%以内であり、均一な高密度ライン状プラズマが得られることも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係るプラズマ発生装置は、例えばプラズマスパッタ装置やプラズマCVD装置等の成膜装置、プラズマエッチング装置、プラズマ表面処理装置、イオン注入装置等に好適に利用することが可能であり、本発明に係る成膜装置は、例えばフレキシブルディスプレイ用の酸化亜鉛薄膜トランジスタや、次世代ディスプレイのための大面積有機エレクトロルミネッセンス並びに大面積液晶ディスプレイのシリコン薄膜トランジスタの作製等に好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 プラズマ発生装置
2 マイクロ波発生源
3 導波管
4 チャンバー
5 磁場発生機構
8 スリット
9 誘電体窓
11 成膜装置(プラズマスパッタ装置)
12 基板
13 ターゲット
31 成膜装置(プラズマCVD装置)
41 プラズマエッチング装置
51 プラズマ表面処理装置
61 イオン注入装置(非質量分離型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を発生するマイクロ波発生源と、
前記マイクロ波発生源から発生したマイクロ波が導入されるとともに、該マイクロ波の伝播方向に延びるスリットを有する導波管と、
前記スリットから誘電体窓を介して漏れ出すマイクロ波によってプラズマ化されるプラズマ生成用ガスが供給されるチャンバーと、
前記プラズマに対して磁場を印加することによって前記チャンバー内に電子サイクロトロン共鳴を生じさせる磁場発生機構と、
を備えていることを特徴とする電子サイクロトロン共鳴ラインプラズマ発生装置。
【請求項2】
前記磁場発生機構が、前記導波管上に前記スリットの上方に且つ長さ方向に沿って載置された永久磁石であることを特徴とする請求項1記載の電子サイクロトロン共鳴ラインプラズマ発生装置。
【請求項3】
前記磁場発生機構が電磁石であることを特徴する請求項1記載の電子サイクロトロン共鳴ラインプラズマ発生装置。
【請求項4】
前記導波管が互いに平行な方向に延びる複数のスリットを有しており、
前記磁場発生機構が配置されることにより、夫々のスリットの下方のチャンバー内で電子サイクロトロン共鳴を生じさせることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の電子サイクロトロン共鳴ラインプラズマ発生装置。
【請求項5】
前記マイクロ波の周波数が915MHzであることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の電子サイクロトロン共鳴ラインプラズマ発生装置。
【請求項6】
基板に対向して設けたターゲットにイオンを照射するイオン源を有し、前記ターゲットから放出された粒子を前記基板上に成膜させる成膜装置であって、
前記イオン源が請求項1乃至5いずれかに記載のプラズマ発生装置から構成されることを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
成膜用の原料ガスをプラズマ化して基板上に成膜させる成膜装置であって、
前記プラズマの発生源が請求項1乃至5いずれかに記載のプラズマ発生装置から構成されることを特徴とする成膜装置。
【請求項8】
プラズマにより生成された活性種によってエッチング対象物をエッチングするエッチング装置であって、
前記プラズマの発生源が請求項1乃至5いずれかに記載のプラズマ発生装置から構成されることを特徴とするプラズマエッチング装置。
【請求項9】
原料ガスをプラズマ化して被処理物の表面を改質するプラズマ表面処理装置であって、
前記プラズマの発生源が請求項1乃至5いずれかに記載のプラズマ発生装置から構成されることを特徴とするプラズマ表面処理装置。
【請求項10】
ドーパントイオンを含むプラズマ発生源を有し、該プラズマ発生源からドーパントイオンを引き出し、該イオンを加速して基板にイオン注入するイオン注入装置であって、
前記プラズマ発生源が請求項1乃至5いずれかに記載のプラズマ発生装置から構成されることを特徴とする非質量分離型ライン状ビームイオン注入装置。
【請求項11】
ドーパントイオンを含むプラズマ発生源を有し、該プラズマ発生源からイオンを引き出して質量分離した後に、必要に応じて該イオンを加速して基板にイオン注入するイオン注入装置であって、
前記プラズマ発生源が請求項1乃至5いずれかに記載のプラズマ発生装置から構成されることを特徴とする質量分離型ライン状ビームイオン注入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−103257(P2011−103257A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258405(P2009−258405)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(509093026)公立大学法人高知工科大学 (95)
【Fターム(参考)】