説明

処理装置、処理方法、半導体装置の製造方法および電子機器の製造方法

【課題】一の基板上の各部において、処理条件を変えることができる処理装置を提供する。また、一の基板上の各部において、処理条件を変えることができる処理方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る処理装置は、天井部(105a)と、側壁部(105b)と、前記天井部と側壁部とで構成される処理空間を複数の処理室に分割する仕切り壁(105c)と、前記側壁部に設けられた排出孔(110)と、前記複数の処理室にそれぞれ接続された複数の第1のガスライン(107)と、を有するカバー(105)で、基板(100)の処理領域(E)を覆い、前記基板上に吐出された複数の吐出液(d)を前記処理室毎に処理する。かかる構成(方法)によれば、複数の処理室毎に処理条件を変化させることができ、成膜条件の最適化を容易に行うことができる。また、各処理室において、処理条件を変化させることで異なる膜を形成することができる。よって、半導体装置などの製造工程において、工程の簡略化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置および処理方法、特に、液滴吐出方法を用いて吐出された複数の吐出液の処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置などの各種構成膜は、CVD(化学気相成長、Chemical Vapor Deposition)法やスパッタリング法などを用いた成膜工程と、エッチング技術を用いたパターニング工程の繰り返しにより形成される。この構成膜を、液体材料を用いて成膜する技術が検討されている。即ち、構成材料を含む液体を液滴吐出装置等を用いて塗布した後、乾燥および焼成することにより膜を形成する。
【0003】
例えば、下記特許文献1においては、図5に、インクジェットヘッド(22)部を含む大きな空間が装置外壁(カバー14)で覆われた装置が示されている。
【特許文献1】特開2003−84124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、安価で生産性の高い半導体装置の製造技術として、半導体装置などの構成膜を液体材料を用いて形成すること(液体プロセス)を検討している。この場合、前述したように、構成材料を含む液体(前駆体液)を基板上に塗布した後、乾燥および焼成することにより膜を形成する。
【0005】
当該技術においては、前駆体液の乾燥又は焼成速度や、処理雰囲気などの条件により膜の性能が左右される。
【0006】
したがって、前駆体液に対する処理条件を各種設定し、特性の良い膜を形成するための条件出しを行う必要がある。また、液体プロセスに用いられる前駆体液中の材料および溶媒の組み合わせも多様であり、1の半導体装置の製造プロセスを決定するためには、多数の成膜試験を行わねばならない。
【0007】
このような場合、通常のプロセスと同様に、基板上に前駆体液を塗布し、種々の条件毎に乾燥および焼成を行い、膜特性を比較検討しなければならず、その工数が多大であった。
【0008】
よって、効率よく条件出しができる処理装置や処理方法の検討が望まれる。
【0009】
そこで、本発明に係る具体的態様は、一の基板上の各部において、処理条件を変えることができる処理装置を提供することを目的とする。また、一の基板上の各部において、処理条件を変えることができる処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る処理装置は、天井部と、側壁部と、前記天井部と側壁部とで構成される処理空間を複数の処理室に分割する仕切り壁と、前記複数の処理室にそれぞれ接続された複数の第1のガスラインと、前記側壁部に設けられた排出孔と、を有するカバーで、基板の処理領域を覆い、前記基板上に吐出された複数の吐出液を前記処理室毎に処理する。
【0011】
かかる構成によれば、複数の処理室毎に処理条件を変化させることができ、成膜条件の最適化を容易に行うことができる。また、各処理室において、処理条件を変化させることで異なる膜を形成することができる。よって、半導体装置などの製造工程において、工程の簡略化を図ることができる。
【0012】
例えば、前記処理領域は、略矩形であって、前記仕切り壁は、第1方向および第1方向と交差する第2方向のうちの前記第1方向に複数配置されている。このように、複数の処理室をライン状に配置してもよい。
【0013】
例えば、前記排出孔は、前記複数の処理室の前記第1方向側の端部に、処理室毎に設けられている。このように、処理室毎に排出孔を設けてもよい。
【0014】
本発明に係る処理方法は、液滴を順次吐出することにより基板上に複数のライン状の吐出液を形成する第1の工程と、仕切り壁で分割された複数の処理室を有するカバーを、前記基板上のライン状の吐出液毎に各処理室が対応するように配置する第2の工程と、前記複数の処理室毎に設けられた複数の第1のガスラインから所定のガスを供給しながら前記複数のライン状の吐出液を前記複数の処理室毎に処理する第3の工程と、を有する。
【0015】
かかる方法によれば、複数の処理室毎に処理条件を変化させることができ、成膜条件の最適化を容易に行うことができる。また、各処理室において、異なる膜を形成することができ、半導体装置などの製造工程において、工程の簡略化を図ることができる。
【0016】
例えば、前記吐出液を処理する工程は、前記複数の処理室の端部に処理室毎に設けられた排出孔から前記処理室内のガスを排気しながら行われる。このように複数の処理室を設けることで排気構成が容易となる。
【0017】
例えば、前記複数の処理室において、少なくとも2種類以上の処理条件で処理を行う。かかる方法によれば、成膜条件の最適化を容易に行うことができる。
【0018】
例えば、前記複数の処理室において、少なくとも2種類以上の処理条件で処理を行い、各処理条件によって異なる膜を形成する。かかる方法によれば、処理室毎に異なる膜を形成することができる。
【0019】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、複数の構成膜を有する半導体装置の製造方法であって、前記複数の構成膜のいずれかの膜の処理方法として、上記処理方法を有する。かかる方法によれば、半導体装置を生産性良く製造することができる。
【0020】
半発明に係る電子機器の製造方法は、半導体装置を有する電子機器の製造方法であって、前記半導体装置の製造方法として、上記半導体装置の製造方法を有する。かかる方法によれば、半導体装置を生産性良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同一の機能を有するものには同一もしくは関連の符号を付し、その繰り返しの説明を省略する。
【0022】
<実施の形態1>
(処理装置の構成)
図1は、本実施の形態の処理装置(乾燥・焼成装置、熱処理装置、成膜装置)を示す斜視図である。図2は、本実施の形態の処理装置のカバー部を示す平面図(裏面図)である。
【0023】
図示するように、本実施の形態の処理装置101は、基板搭載用のステージ103、カバー(囲い、覆い、蓋、下側に開口を有する箱状部材、ボックス)105を有する。カバー材料については、後述のカバー内での処理に耐え得る材料であれば特に限定はないが、例えば、ガラス材料、セラミックス材料、金属材料、樹脂材料などを用いることができる。例えば、高温で熱処理する場合は、膨張の少ない、ガラス材料やセラミックス材料が好ましく、また、不純物汚染が生じ得る処理には、ガラス材料の中でも石英ガラスを用いることが好ましい。
【0024】
このステージ103の内部にはヒータ(図示せず)が内蔵されている。また、カバー105は、天井板105aと側壁105bを有し、基板100上の処理領域Eを覆うよう配置される。さらに、カバー105の内側は、図2に示すように、仕切り板(仕切り壁)105cによって複数の処理室(小部屋、チャンバー)R11〜R55に分割されている。この複数の処理室には、供給用ガスライン107および排気用ガスライン109がそれぞれ接続されている。なお、供給用ガスライン107は、図示しないガスボンベと接続され、また、その内部には、ガス流量を調整する流量調整部(例えば、電磁弁、流量計など)がそれぞれ内蔵されている。また、排気用ガスライン109には、図示しない減圧ポンプに接続されている。
【0025】
また、基板100には、液滴吐出装置により吐出された吐出液(処理液、前駆体液、液滴溜り)dが所定の間隔を置いてマトリクス状に配置されている。即ち、各吐出液dは、基板100上の処理領域Eの分割領域であるE11〜E55に個別に配置されている。
【0026】
したがって、吐出液d毎に、カバー105内の各処理室R11〜R55が対応するように、基板100上にカバー105を配置することにより、各吐出液dを種々の条件下で処理することができる。具体的には、各吐出液dに対し、供給ガスのガス種、流量などを変化させながらヒータ加熱することにより、乾燥および焼成処理を行うことができる。また、排気用ガスライン109により、各処理室内の減圧状態を変えることもできる。
【0027】
(処理装置を用いた成膜方法)
次いで、本実施の形態の処理装置101を用いた成膜方法を説明する。図3は、本実施の形態の処理装置101を用いた成膜方法を示す断面図である。
【0028】
まず、図3(A)に示すように、ステージ103に基板100を搭載し、液滴吐出装置(インクジェットヘッド)113を用いて液体材料を吐出する。ここでは、吐出液dをマトリクス状に配置する(図1参照)。
【0029】
次いで、前述のカバー105を、基板100の処理領域E11〜E55、ここでは、吐出液d毎に各処理室(R11〜R55)が対応するように位置合わせし(図3(B))、基板100上にカバー105を被せる(図3(C))。ここでは、基板100とカバー105の側壁105bや仕切り板105cを接触させる。これらの密着性を向上させるため、接触部(接触面)に樹脂材料などを設けてもよい。
【0030】
次いで、所望の処理条件下においてヒータ加熱を行い、各処理室毎に吐出液dを乾燥、焼成することにより、複数の膜を形成する。例えば、供給用ガスライン107を介して窒素(N2)をカバー105内に流入させると共に、排気用ガスライン109から反応ガス(分解ガス、揮発ガスなど)を排出しつつ加熱処理を行う。この際、窒素の供給流量や、処理室内のガスの排気速度などを処理室毎に変化させ、形成された膜の特性を測定することにより、特性の良好な膜を形成するための条件出しを行う。例えば、窒素の供給により処理雰囲気が不活性となり、吐出液と酸素や水との不所望な反応を防止することができる。また、乾燥や焼成時に生じた反応ガスが、順次、処理室外に排気され、反応ガスの再付着を防止することができる。また、窒素の供給流量や、処理室内のガスの排気速度などを変化させることで、吐出液dの乾燥速度を変えることができる。よって、例えば、膜中の酸素などの不純物濃度を測定することにより、窒素の供給流量や、処理室内のガスの排気速度などの最適化を図ることができる。
【0031】
このように、本実施の形態の処理装置または処理方法によれば、一の基板上の領域毎に処理条件(処理雰囲気)を変化させることができるため、複数種類の処理条件下で成膜を短時間で行うことができる。よって、成膜に最適な処理条件を容易に判定することができる。また、その結果を用いて、成膜を行うことにより、特性の良好な膜を形成することができる。
【0032】
<実施の形態2>
実施の形態1においては、マトリクス状に配置された吐出液dの条件出しを行ったが、吐出液dをライン状として条件出しを行ってもよい。
【0033】
(処理装置の構成)
図4は、本実施の形態の処理装置(乾燥・焼成装置、熱処理装置、成膜装置)を示す斜視図である。図5は、本実施の形態の処理装置のカバー部を示す平面図(裏面図)である。なお、実施の形態1と共通の箇所には同一の符号を付し、異なる箇所について説明する。
【0034】
図4および図5に示すように、本実施の形態においては、カバー105の内部が、一方向にのみ仕切り板105cによって分割されている。
【0035】
この複数の処理室(R11〜R15)には、供給用ガスライン107がそれぞれ接続されている。また、カバー105の側壁105bの底部には処理室毎に排出孔110が設けられ、各処理室内のガスは、この排出孔110から排出される。なお、排出孔110に変えて実施の形態1と同様に排気用ガスライン109を各処理室毎に設けてもよい。
【0036】
また、基板100には、液滴吐出装置により液滴が順次吐出され、ライン状の吐出液dが配置されている。
【0037】
したがって、吐出液d毎に、カバー105内の各処理室R11〜R15が対応するように、基板100上にカバー105を配置することにより、各吐出液dを種々の条件化で処理することができる。具体的には、各吐出液dに対し、供給ガスのガス種、流量などを変化させながらヒータ加熱することにより、乾燥および焼成処理を行うことができる。特に、配線(導電性膜)は、ライン状に形成されることが多く、上記処理装置は、配線(導電性膜)の成膜条件の条件出しに適する。
【0038】
なお、実施の形態1および2において、処理領域毎に処理温度を変えることができるようステージ103内のヒータを構成してもよい。
【0039】
(処理装置を用いた成膜方法)
次いで、本実施の形態の処理装置101を用いた成膜方法を説明する。図6は、本実施の形態の処理装置101を用いた成膜方法を示す断面図である。
【0040】
まず、図6(A)に示すように、ステージ103に基板100を搭載し、液滴吐出装置を用いてライン状の液体材料を所定の間隔をおいて吐出する。
【0041】
次いで、前述のカバー105を、ライン状の吐出液d(処理領域E11〜E15)毎に各処理室R11〜R55が対応するように位置合わせし、基板100上にカバー105を被せる(図6(B))。
【0042】
次いで、所望の処理条件下においてヒータ加熱を行い、各処理室毎に吐出液dを乾燥、焼成することにより、複数の膜を形成する。例えば、供給用ガスライン107を介して窒素をカバー105内に流入させると共に、排気孔110から反応ガスを排出しつつ加熱処理を行う(図6(C))。この際、窒素の供給流量や、処理室内のガスの排気速度などを処理室毎に変化させ、形成された膜の特性、例えば、膜中の酸素などの不純物ガス濃度を測定することにより、特性の良好な膜を形成するための条件出しを行うことができる。
【0043】
このように、本実施の形態の処理装置または処理方法によれば、一の基板上の領域毎に処理条件(処理雰囲気)を変化させることができるため、成膜に最適な処理条件を容易に判定することができる。また、その結果を用いて、成膜を行うことにより、特性の良好な膜を形成することができる。
【0044】
<実施の形態3>
実施の形態1および2においては、図1および図4に示す処理装置101を、条件出しに用いたが、これらの処理装置を半導体装置の製造工程に用いることができる。ここでは、半導体装置として有機EL(エレクトロルミネッセンス:Electro-Luminescence)装置を例示し説明する。
【0045】
図7は、本実施の形態の有機EL装置の構成を示す回路図である。図7に示すように、有機EL装置を構成するアクティブマトリクス基板は、表示部(表示領域)1a内に、x方向に配置された複数のゲート線GLと、y方向に配置された複数のソース線SLとを有する。また、各画素は、ソース線SLとゲート線GLとの交点に、マトリクス状に複数配置される。この画素は、有機EL素子(OLED:Organic light-emitting diode)と素子駆動回路とを有している。OLEDは、画素電極と、共通電極(接地電位)と、これらの間に配置される機能層を有している。この機能層は正孔輸送層、発光層、電子注入層等からなる。素子駆動回路は、第1端子とゲート端子が、それぞれソース線SLとゲート線GLに接続されたスイッチング用のトランジスタT1と、このトランジスタT1の第2端子と電流供給線CLとの間に接続された保持容量Cと、ゲート端子がトランジスタT1の第2端子と接続され、第1、第2端子が、それぞれ電流供給線CLとOLED(画素電極)と接続された電流駆動用のトランジスタT2とを有する。例えば、ソース線SLは、Xドライバにより駆動され、また、ゲート線GLは、Yドライバにより駆動される。このようなドライバを含む駆動回路を周辺回路という。
【0046】
ソース線SLが駆動されてスイッチング用のトランジスタT1がオン状態となると、そのときのソース線SLの電位が保持容量Cに保持され、この保持容量Cの状態に応じて、電流駆動のトランジスタT2のオン/オフ状態が決まる。そして、電流駆動用のトランジスタT2のチャネルを介して、電流供給線CLから画素電極に電流がながれ、さらに機能層を介して共通電極に電流がながれる。機能層は、この流れる電流量に応じて発光する。各機能層の発光状態を制御することにより、所望の画像表示を行うことができる。
【0047】
図8〜図13は、本実施の形態の有機EL装置の製造工程を示す断面図又は斜視図である。図面を参照しながら、本実施の形態の有機EL装置の製造方法を説明する。図8に示すように、基板S10として、例えば、ガラス基板を準備する。この基板S10上に、島状の半導体膜17を形成する。半導体膜としては、アモルファスシリコン膜や多結晶シリコン膜が用いられ、CVD法やスパッター法などにより堆積される。このような半導体膜17を所望の形状にパターニングする。
【0048】
次いで、半導体膜17上を含む基板S10上の全面上に、ゲート絶縁膜(絶縁膜)19として、例えば、酸化シリコン膜をCVD法により堆積した後、ゲート絶縁膜19上に、導電性膜として例えばアルミニウム(Al)などの金属膜をスパッタリング法により堆積し、パターニングすることによりゲート電極(ゲート線GL)Gを形成する。次いで、ゲート電極Gをマスクに半導体膜17中にn型又はp型の不純物を注入し、ソース、ドレイン領域を形成する。以上の工程により、トランジスタT2が形成される。なお、ここでは図示を省略しているトランジスタT1も同様の工程で形成することができる。
【0049】
次いで、トランジスタT2上に層間絶縁膜23として例えば酸化シリコン膜をCVD法で堆積し、ソース、ドレイン領域上にコンタクトホールを形成する。次いで、コンタクトホール内を含む層間絶縁膜23上に導電性膜として例えばAl膜をスパッタリング法で堆積し、パターニングすることにより配線Mを形成する。次いで、配線M上を含む層間絶縁膜23上に、層間絶縁膜25を堆積し、配線M上の層間絶縁膜25をエッチングすることによりコンタクトホールを形成する。次いで、コンタクトホール内を含む層間絶縁膜25上に導電性膜として例えばITO(酸化インジウムスズ:Indium Tin Oxide)膜をスパッタリング法で堆積し、パターニングすることにより画素電極PEを形成する。この後、画素電極PE上に絶縁膜27を形成し、画素電極PE上を開口することにより、画素電極PEの周囲にバンクを形成する。その結果、図9に示すように、その底部から画素電極PEが露出した開口部がマトリクス状に形成される。
【0050】
次いで、図10に示すように、液滴吐出装置を用いて有機EL材料を画素電極PE上(開口部内)に吐出する。この際、図11(A)に示すように、各開口部に赤色に発光する有機EL材料29Rl、緑色に発光する有機EL材料29Gl、および青色に発光する有機EL材料29Bを繰り返し配置されるように吐出する。ここでは、x方向に赤色(29Rl)、緑色(29Gl)および青色(29Bl)の有機EL材料が繰り返し配置され、y方向には、同じ色の有機EL材料が並ぶよう配置されている。なお、図10においては、赤色に発光する有機EL材料29Rl部の断面を一例として示してある。
【0051】
この後、図11(B)に示すように、実施の形態2で詳細に説明したカバー105、即ち、ライン状の複数の処理室(小部屋)R11〜R16に分割されているカバー105を、各処理室R11〜R16が、それぞれ赤色(29Rl)、緑色(29Gl)および青色(29Bl)の有機EL材料列と対応するように、基板上に配置する(図11(B))。
【0052】
次いで、ヒータ加熱しながら、供給用ガスライン107を介して例えば、窒素をカバー105内に流入させると共に、排気孔110から反応ガスを排出しつつ乾燥および焼成処理を行う。その結果、図12に示すように、赤色、緑色および青色の有機EL層(機能層)29R、29G、29Bが形成される。なお、機能層の一部として正孔輸送層や電子注入層等を形成してもよい。
【0053】
次いで、図13に示すように、有機EL層上に導電性膜を成膜し、共通電極31を形成することにより、有機EL装置が形成される。
【0054】
このように、本実施の形態によれば、各色の有機EL材料ごとに、ライン状の複数の処理室R11〜R16が対応するようカバー105で覆い処理を行ったので、例えば、各材料が混合することなく、個別に反応ガス雰囲気を制御することができるため、各色の有機EL材料を一度に処理することができる。
【0055】
また、処理室ごとに処理条件、例えば、窒素の供給量などを個別に設定することができるため、各材料に適した処理条件で効率よく処理を行うことができる。また、実施の形態1で説明した排気用のガスライン(109)を各処理室R11〜R16に設け、当該ガスラインにより排気を行えば、各処理室の排気ガス成分を個別に排気することができる。よって、排気ガス同士の不所望な反応を防止し、有害ガスなどの発生を防止することができる。
【0056】
<実施の形態4>
実施の形態3においては、有機EL層(29R、29G、29B)の形成を例に説明したが、本発明の処理装置(処理方法)は、アクティブマトリクス基板を構成する半導体層や、配線層などの形成にも適用可能である。また、実施の形態3の有機EL装置の各構成部を液体プロセスを用いて形成することができる。
【0057】
図14は、本実施の形態の有機EL装置の製造工程を示す平面図である。例えば、アクティブマトリクス基板を構成する半導体膜17と、周辺回路中の層間絶縁膜(絶縁膜40)を短工程で形成することができる。
【0058】
即ち、処理領域(処理室R2)E2に窒素などの不活性ガスを導入しながら半導体膜17を焼成すると同時に、処理領域(処理室R1)E1に窒素などの不活性ガスを導入し、一度、半導体膜を形成した後、導入ガスを切り替え酸素ガスなどの酸化性ガスを導入することにより、半導体膜を酸化し、酸化膜40を形成する。
【0059】
このように、処理室毎に導入ガスを変えることにより、種々の膜を同一又は連続した工程で効率よく形成することができる。
【0060】
<実施の形態5>
また、本発明の処理装置(処理方法)は、各処理室において、吐出された各種材料を個別に処理することができるため、吐出および処理を繰り返すことにより、処理室毎に異なる構成膜を積層させることができる。即ち、処理室毎に異なる半導体素子(半導体装置)を形成することができる。例えば、駆動能力の異なる複数のトランジスタや、また、複数のトランジスタを適宜接続した回路などを処理室毎に形成することができる。図15は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を示す平面図である。
【0061】
図15(A)に示すように、液体プロセスにおいて、処理室毎に個別の処理を繰り返し、基板S10上の各領域E11〜E23に、異なる素子D11〜D23を形成する。
【0062】
この後、各素子を転写技術などを用いて所望の基板S20、S30に適宜転写、搭載することにより、複数の装置を形成する(図15(B)〜(E))。なお、対象素子のみにレーザーなどを照射することで、構成膜の一部をアブレーションさせれば容易に部分的な剥離が可能となる。
【0063】
<電子機器>
次に、上述した有機EL装置を備えた電子機器の具体例について説明する。
【0064】
図16は、有機EL装置を備えた電子機器の具体例を示す斜視図である。図16(A)は、電子機器の一例である携帯電話機を示す斜視図である。この携帯電話機1000は、例えば、上記有機EL装置を用いて構成された表示部1001を備えている。図16(B)は、電子機器の一例である腕時計を示す斜視図である。この腕時計1100は、例えば、上記有機EL装置を用いて構成された表示部1101を備えている。図16(C)は、電子機器の一例である携帯型情報処理装置1200を示す斜視図である。この携帯型情報処理装置1200は、キーボード等の入力部1201、演算手段や記憶手段などが格納された本体部1202、及び表示部1203を備え、この表示部1203に上記有機EL装置を組み込むことができる。
【0065】
なお、上記においては、有機EL装置を例に説明したが、本発明の処理装置(処理方法)は、広く種々の成膜に用いることができる。
【0066】
また、上記実施の形態を通じて説明された実施例や応用例は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施の形態の記載に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施の形態1の処理装置(乾燥・焼成装置、熱処理装置、成膜装置)を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1の処理装置のカバー部を示す平面図である。
【図3】実施の形態1の処理装置を用いた成膜方法を示す断面図である。
【図4】実施の形態2の処理装置(乾燥・焼成装置、熱処理装置、成膜装置)を示す斜視図である。
【図5】実施の形態2の処理装置のカバー部を示す平面図である。
【図6】実施の形態2の処理装置を用いた成膜方法を示す断面図である。
【図7】実施の形態3の有機EL装置の構成を示す回路図である。
【図8】実施の形態3の有機EL装置の製造工程を示す断面図である。
【図9】実施の形態3の有機EL装置の製造工程を示す斜視図である。
【図10】実施の形態3の有機EL装置の製造工程を示す断面図である。
【図11】実施の形態3の有機EL装置の製造工程を示す断面図および斜視図である。
【図12】実施の形態3の有機EL装置の製造工程を示す断面図および斜視図である。
【図13】実施の形態3の有機EL装置の製造工程を示す断面図である。
【図14】実施の形態4の有機EL装置の製造工程を示す平面図である。
【図15】実施の形態5の半導体装置の製造工程を示す平面図および断面図である。
【図16】有機EL装置を備えた電子機器の具体例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
1a…表示部、17…半導体膜、19…ゲート絶縁膜、23、25…層間絶縁膜、27…絶縁膜、29Rl…赤色有機EL材料、29Gl…緑色有機EL材料、29Bl…青色有機EL材料、29R…赤色有機EL層、29G…緑色有機EL層、29B…青色有機EL層、31…共通電極、40…酸化膜、100…基板、101…処理装置、103…ステージ、105…カバー、105a…天井板、105b…側壁、105c…仕切り板、107…供給用ガスライン、109…排気用ガスライン、110…排出孔、113…液滴吐出装置、1000…携帯電話機、1001…表示部、1100…腕時計、1101…表示部、1200…携帯型情報処理装置、1201…入力部、1202…本体部、1203…表示部、C…保持容量、CL…電流供給線、d…吐出液、D11〜D23…素子、E…処理領域、E1、E2…処理領域、E11〜E15…処理領域、E11〜E23…処理領域、E11〜E55…処理領域、G…ゲート電極、GL…ゲート線、M…配線、PE…画素電極、R1、R2…処理室、R11〜R15…処理室、R11〜R23…処理室、R11〜R55…処理室、S10、S20、S30…基板、SL…ソース線、T1、T2…トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井部と、側壁部と、前記天井部と側壁部とで構成される処理空間を複数の処理室に分割する仕切り壁と、前記複数の処理室にそれぞれ接続された複数の第1のガスラインと、前記側壁部に設けられた排出孔と、を有するカバーで、
基板の処理領域を覆い、前記基板上に吐出された複数の吐出液を前記処理室毎に処理することを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記処理領域は、略矩形であって、
前記仕切り壁は、第1方向および第1方向と交差する第2方向のうちの前記第1方向に複数配置されていることを特徴とする請求項1記載の処理装置。
【請求項3】
前記排出孔は、前記複数の処理室の前記第1方向側の端部に、処理室毎に設けられていることを特徴とする請求項2記載の処理装置。
【請求項4】
液滴を順次吐出することにより基板上に複数のライン状の吐出液を形成する第1の工程と、
仕切り壁で分割された複数の処理室を有するカバーを、前記基板上のライン状の吐出液毎に各処理室が対応するように配置する第2の工程と、
前記複数の処理室毎に設けられた複数の第1のガスラインから所定のガスを供給しながら前記複数のライン状の吐出液を前記複数の処理室毎に処理する第3の工程と、
を有することを特徴とする処理方法。
【請求項5】
前記吐出液を処理する工程は、前記複数の処理室の端部に処理室毎に設けられた排出孔から前記処理室内のガスを排気しながら行われることを特徴とする請求項4記載の処理方法。
【請求項6】
前記複数の処理室において、少なくとも2種類以上の処理条件で処理を行うことを特徴とする請求項4又は5記載の処理方法。
【請求項7】
前記複数の処理室において、少なくとも2種類以上の処理条件で処理を行い、各処理条件によって異なる膜を形成することを特徴とする請求項4又は5記載の処理方法。
【請求項8】
複数の構成膜を有する半導体装置の製造方法であって、
前記複数の構成膜のいずれかの膜の処理方法として、請求項4乃至7のいずれか一項記載の処理方法を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
半導体装置を有する電子機器の製造方法であって、
前記半導体装置の製造方法として、請求項8記載の半導体装置の製造方法を有する電子機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−290017(P2009−290017A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141453(P2008−141453)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】