説明

処理装置、耐食性部材および耐食性部材の製造方法

【課題】処理容器内壁の腐食の問題が生じ難い処理装置を提供すること。また、耐プラズマ性および耐腐食ガス性に優れた、処理装置に用いられる耐食性部材およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】被処理基板を収容する処理容器と、処理容器内の被処理基板に処理を施す処理機構とを具備する処理装置であって、処理容器は、基材と、その内壁に溶射により形成された周期律表第3a族素化合物を含む膜とを具備し、その溶射により形成された周期律表第3a族元素化合物を含む膜の表面が研磨されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置およびそれに用いられる耐食性部材および耐食性部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造においては、最近の高密度化および高集積化の要請に対応して、回路構成を多層配線構造にする傾向にあり、このため、下層の半導体デバイスと上層の配線層との接続部であるコンタクトホールや、上下の配線層同士の接続部であるビアホールなどの層間の電気的接続のための埋め込み技術が重要になっている。
【0003】
このようなコンタクトホールやビアホールの埋め込みには、一般的にAl(アルミニウム)やW(タングステン)、あるいはこれらを主体とする合金が用いられる。この中でAlまたはAl合金を用いた場合にはこのような金属や合金が下層のSi(シリコン)基板やAl配線と直接接触すると、これらの境界部分においてAlの吸い上げ効果等に起因して両金属の合金が形成されるおそれがある。このようにして形成される合金は抵抗値が大きく、このような合金が形成されることは近時デバイスに要求されている省電力化および高速動作の観点から好ましくない。また、WまたはW合金をコンタクトホールの埋め込み層として用いる場合には、埋め込み層の形成に用いるWFガスがSi基板に侵入して電気的特性等を劣化させる傾向となり、やはり好ましくない結果をもたらす。
【0004】
そこで、これらの不都合を防止するために、コンタクトホールやビアホールに埋め込み層を形成する前に、これらの内壁にバリア層を形成し、その上から埋め込み層を形成することが行われており、このようなバリア層としてTiN膜が用いられている。
【0005】
一方、高集積化にともない、キャパシタゲート材としては、スケールを変えることなく高いキャパシタンスを得るために、Ta等の高誘電率材を用いるようになってきている。しかし、このような高誘電率材は従来キャパシタゲート材として用いていたSiOに比べ安定でないために、従来よりその上部電極として用いられているpoly−Siを用いた場合には、キャパシタ作成後の熱履歴により酸化されてしまい、安定したデバイス素子の形成が不可能となってしまう。このため、より酸化されにくいTiN膜が上部電極として必要とされている。
【0006】
従来、このようなTiN膜は物理的蒸着(PVD)を用いて成膜されていたが、最近のようにデバイスの微細化および高集積化が特に要求され、デザインルールが特に厳しくなっており、埋め込み性の悪いPVDでは十分な特性を得ることが困難となっている。そこで、TiN膜をより良質の膜を形成することが期待できる化学的蒸着(CVD)で成膜することが行われている。具体的には、反応ガスとしてTiClとNH(アンモニア)またはMMH(モノメチルヒドラジン)を用い熱CVDにより成膜されている。
【0007】
ところで、このように熱CVDによってTiN膜を成膜する場合には、膜中にCl(塩素)が残留しやすい。Clが残留すると成膜される膜は比抵抗値が高くなり、キャパシタ上部電極に適用した場合に十分な特性が得られない。また、柱状結晶であるTiN膜は粒界拡散が生じやすいため、バリア性が低くなってしまう。特に、このバリア性の低さはTiN膜をCu配線のバリア層として用いる場合やキャパシタ上部電極のTa配線の酸素拡散バリアの場合に問題となる。つまり、残留塩素によるCu配線腐食や酸素の拡散によるTaの容量低下が問題となる。
【0008】
膜中のClは、成膜温度を高温にすることにより除去することは可能ではあるが、高温プロセスはCu,Al等の配線材料の腐食等の問題があり好ましくない。
【0009】
一方、プラズマCVDの一手法として、処理容器の一部として用いられるベルジャーの周囲にコイル等のアンテナ部材を設け、これに高周波電力を印加し、誘導電磁界を形成してプラズマを形成するICP(Inductively Coupled Plasma)−CVDがあり、このようなICP−CVDによってTiN膜を成膜する場合には、成膜されたTiN膜は低抵抗および低Clであり、低温成膜でもCl残留量は少ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このようなICP−CVD装置によりTiN膜を成膜する場合には、石英やアルミナ製のベルジャーが用いられているが、処理容器の一部として用いられるベルジャー内壁に処理ガスに起因する付着物がつきやすいという問題点がある。
【0011】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、処理容器内壁の腐食の問題が生じ難い処理装置を提供することを目的とする。また、耐プラズマ性および耐腐食ガス性に優れた、処理装置に用いられる耐食性部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によれば、被処理基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内の被処理基板に処理を施す処理機構と
を具備する処理装置であって、
前記処理容器は、基材と、その内壁に溶射により形成された周期律表第3a族素化合物を含む膜とを具備し、前記溶射により形成された周期律表第3a族元素化合物を含む膜の表面が研磨されていることを特徴とする処理装置が提供される。
【0013】
このように上記本発明の第1の観点においては、耐食性の高い周期律表第3a族元素化合物を含む膜を溶射により形成するので、処理容器の腐食の問題が生じ難い処理装置が実現される。処理機構がプラズマ処理、腐食性ガスによる処理を行うものである場合に、処理容器内壁の腐食が特に問題となるが、処理容器の内壁を前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜で構成することにより、このような場合であっても高い耐食性が実現される。また、前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜は耐熱性も高く、処理機構が加熱処理を行う場合にも有効である。
【0014】
上記第1の観点の処理装置において、前記処理機構として、被処理基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理機構を用いることができ、その場合に、前記プラズマ処理機構は、誘導結合型とすることができる。また、前記プラズマ処理機構は、平行平板型とすることもできる。平行平板型の場合に、エッチング処理を施すものであることが好ましい。
【0015】
本発明の第2の観点によれば、被処理基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内に設けられた上部電極と、
前記チャンバー内に前記上部電極と対向して設けられ、被処理基板を載置する下部電極と、
前記上部電極および下部電極の間に高周波電界を形成するための高周波電源と、前記チャンバー内に処理ガスを供給するガス供給手段と前記チャンバー内を排気する排気手段とを具備し、前記高周波電界によりプラズマを形成して処理を行う処理装置であって、
前記チャンバーの内壁およびチャンバー内に配置された部材の少なくとも一部が溶射により形成された周期律表第3a族元素化合物を含む膜をコーティングされて、前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜の表面が研磨されていることを特徴とする処理装置が提供される。
【0016】
本発明の第3の観点によれば、被処理基板を処理する処理装置に用いられる耐食性部材であって、基材と、その上に溶射により形成された周期律表第3a族元素化合物を含む膜とを具備し、前記溶射により形成された周期律表第3a族元素化合物を含む膜の表面が研磨されていることを特徴とする耐食性部材が提供される。
【0017】
このように上記本発明の第3の観点においては、周期律表第3a族元素化合物を含む膜を溶射により基材上に形成するので、腐食の問題が生じ難い耐食性部材が実現される。
【0018】
本発明の第4の観点によれば、被処理基板を処理する処理装置に用いられる耐食性部材の製造方法であって、
基材を準備し、その上に周期律表第3a族元素化合物を含む膜を溶射により形成し、前記溶射の周期律表第3a族元素化合物を含む膜の表面を研磨するを特徴とする耐食性部材の製造方法が提供される。
【0019】
上記いずれの発明においても、前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜としては、周期律表第3a族元素化合物単独であっても他の物質と複合されていてもよく、単独の場合にはYから実質的になるものとすることができる。また、他の物質と複合されたものとしてはYとAlとから実質的になるものが例示され、この場合にはAl/Y重量比を0.5以上とすることが好ましい。また、YとAlとから実質的になるものとしては、イットリウム・アルミニウム・ガーネットを含むものを挙げることができる。さらに、前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜としては、プラズマによる削れ量がAl部材の削れ量よりも小さいものが好ましい。さらに、前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜の厚さは50μm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、その処理容器内で被処理基板のプラズマ処理を行う処理装置において、処理容器の内壁に周期律表第3a族元素化合物を含む膜を溶射により形成するが、このような膜は耐食性が高いので、プラズマ処理を行っても腐食され難い処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るCVD成膜装置を示す断面図。
【図2】エッチングによる腐食試験のサンプルおよび評価基準を示す図。
【図3】Al/Y重量比=0.43の際の溶射膜のX線回折パターンを示す図。
【図4】Al/Y重量比=0.66の際の溶射膜のX線回折パターンを示す図。
【図5】Al/Y重量比=1.50の際の溶射膜のX線回折パターンを示す図。
【図6】溶射膜のAl/Y重量比を変化させた場合における複合酸化物の比率を示すグラフ。
【図7】溶射膜のAl/Y重量比とプラズマによる削れ量との関係を示す図。
【図8】YAGを用いて溶射を行った際の溶射膜のX線回折パターンを示す図。
【図9】膜厚と絶縁破壊電圧との関係を示すグラフ。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るCVD成膜装置を示す断面図。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るCVD成膜装置を示す断面図。
【図12】ガス吐出部材の他の例を示す斜視図。
【図13】ガス吐出部材のさらに他の例を示す斜視図。
【図14】本発明の第4の実施形態に係るCVD成膜装置を示す断面図。
【図15】図14に示したCVD成膜装置のシャワーヘッドを示す斜視図。
【図16】図15に示したシャワーヘッドの断面図。
【図17】シャワーヘッドの他の例を示す図。
【図18】本発明の第5の実施形態に係るCVD成膜装置を示す断面図。
【図19】図18に示したCVD成膜装置の変形例を示す断面図。
【図20】本発明の第6の実施形態に係るCVD成膜装置を示す断面図。
【図21】本発明の第7の実施形態に係る処理装置および耐食性部材が適用されるCVD成膜装置を示す断面図。
【図22】本発明の第8の実施形態に係る処理装置および耐食性部材が適用されるプラズマエッチング処理装置を示す断面図。
【図23】本発明の第9の実施形態に係る処理装置および耐食性部材が適用されるRTP装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るCVD成膜装置を示す断面図である。このCVD成膜装置はTiN薄膜を成膜するものであり、略円筒状のチャンバー11と、チャンバー11の上方にチャンバー11に連続して設けられた略円筒状のベルジャー12とを有しており、ベルジャー12は、チャンバー11よりも小径となっている。チャンバー11は、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムで構成されている。ベルジャー12は、例えばセラミックス材料からなる基材13と、その内壁に形成された周期律表第3a族元素化合物を含む膜14とで構成されている。
【0023】
周期律表第3a族元素化合物を含む膜14としては、Y、Sc、La、Ce、Eu、Dy等の酸化物、フッ化物等を含むものを挙げることができる。このような酸化物、フッ化物等としてはY、Sc、La、CeO、Eu、Dy、ScF、YF等が例示される。周期律表第3a族元素化合物を含む膜14に含まれる第3a族元素は単独であっても複数であってもよい。周期律表第3a族元素化合物を含む膜14は、周期律表第3a族元素化合物のみ、例えばYのみで構成されていてもよく、他の物質と複合されていてもよい。他の物質と複合されたものとしては、周期律表第3a族元素化合物とAlとから実質的になるものが挙げられる。このような膜としてはYとAlとから実質的になるものが例示され、この場合にはAl/Y重量比を0.5以上とすることが好ましい。また、Al/Y重量比は2.5以下が好ましい。より耐食性を良好にする観点からは、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)組成(YAl12)であるAl/Y重量比で0.75の組成が好ましい。また、必ずしもYAGが晶出している必要はないが、耐食性が特に優れたYAG結晶を含むことが一層好ましい。また、周期律表第3a族元素化合物を含む膜14としては、実施的にYからなる膜であっても高い耐食性を得ることができる。周期律表第3a族元素化合物を含む膜14は、溶射膜であっても焼結膜であってもよい。これらの中では比較的厚い膜を簡単に形成することができることから、溶射膜が好ましい。溶射膜でAl−Y膜を形成する場合には、AlおよびYの混合物を溶射してもよいし、YAG等の上記組成範囲内の複合酸化物の状態で溶射してもよい。周期律表第3a族元素化合物を含む膜14としてYAGの結晶を含む膜を確実に形成するためには焼結膜であることが好ましい。基材13を構成するセラミックスとしては、Al、石英やシリカガラス等のSiO、AlNが例示される。なお、ここではチャンバー11の内壁にはこのような膜を設けてはいないが、チャンバー11の内壁にもこのような膜を形成してもよい。
【0024】
チャンバー11内の底部にはセラミックなどの絶縁板15および支持台16を介して、被処理体である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)Wを載置するための略円柱状のサセプタ17が設けられている。
【0025】
前記支持台16の内部には、冷媒室18が設けられており、この冷媒室18には冷媒が冷媒導入管19を介して導入され排出管20から排出されて循環し、その冷熱が前記サセプタ17を介してウエハWに伝熱される。また、サセプタ17には発熱体21が埋め込まれており、この発熱体21は電源22から給電されることによりウエハWを所定の温度に加熱する。電源22にはコントローラー23が接続されている。そして、冷媒の冷熱および発熱体21の熱によりウエハWの温度が制御される。
【0026】
前記サセプタ17は、その上にウエハWと略同形の静電チャック24が設けられている。静電チャック24は、絶縁材25の間に電極26が介在されており、電極26に接続された直流電源27から直流電圧が印加されることにより、クーロン力等によってウエハWを静電吸着する。
【0027】
ベルジャー12の上部には、アルミニウム、アルマイトニッケル合金等の金属材料、または、セラミックス材料で構成され、その外周面に前述したベルジャー12の内壁と同様に周期律表第3a族元素化合物を含む膜14が形成されたシャワーヘッド30が設けられている。このシャワーヘッド30には下方へガスを吐出するための多数のガス吐出孔30a、30bおよび30cが形成されている。そして、シャワーヘッド30にはガス供給機構40の配管55、56および57が接続されている。すなわち後述するようにガス吐出孔30aにはArガスを供給する配管56が接続されており、ガス吐出孔30bにはNHガスを供給する配管55が接続されており、ガス吐出孔30cにはTiClガスおよびArガス、または、ClFガスを供給する配管57が接続されていて、シャワーヘッド30を介してベルジャー12内へ所定のガスが導入されるようになっている。このようにシャワーヘッド30はマトリックスタイプであり、成膜ガスであるTiClガスおよびNHガスが異なる吐出孔から吐出され、吐出後に混合されるポストミックス方式が採用される。なお、ここではシャワーヘッド30の外周面に周期律表第3a族元素化合物を含む膜14を形成することによりシャワーヘッド30外周面の耐食性を高めた場合を示したが、シャワーヘッド30の外周面に周期律表第3a族元素化合物を含む膜14を形成することは必須ではない。
【0028】
ガス供給機構40は、クリーニングガスであるClFを供給するClF供給源41、成膜ガスであるTiClを供給するTiCl供給源42、キャリアガスとして用いられるArを供給する第1のAr供給源43、プラズマガスとして用いられるArを供給する第2のAr供給源44、成膜ガスであるNHを供給するNH供給源45を有している。そして、ClF供給源41にはガスライン46が、TiCl供給源42にはガスライン47が、第1のAr供給源43にはガスライン48が、第2のAr供給源44にはガスライン49が、NH供給源45にはガスライン50がそれぞれ接続されている。そして、各ガスラインにはバルブ51、マスフローコントローラ52およびバルブ53が設けられている。
【0029】
TiCl供給源42から延びるガスライン47は、バルブ51、マスフローコントローラ52およびバルブ53を介して配管57に通じており、この配管57には第1のAr供給源43から延びるガスライン48が合流しており、ガスライン47および配管57を通ってArガスにキャリアされたTiClガスがシャワーヘッド30に至り、ガス吐出孔30cからベルジャー12内へ導入可能となっている。また、ClF供給源41から延びるガスライン46は配管57に合流しており、ガスライン46に設けられたバルブ51および53を開けることにより、クリーニングガスであるClFがガスライン46および配管57を通ってシャワーヘッド30に至り、ガス吐出孔30cからベルジャー12内へ導入可能となっている。第2のAr供給源44から延びるガスライン49は配管56に通じており、第2のAr供給源44からのArガスはガスライン49および配管56を通ってシャワーヘッド30に至り、ガス吐出孔30aからベルジャー12内へ導入可能となっている。NH供給源45から延びるガスライン50は配管55に通じており、NH供給源45からのNHガスはガスライン50および配管55を通ってシャワーヘッド30に至り、ガス吐出孔30bからベルジャー12内へ導入可能となっている。なお、前記NHの代わりにモノメチルヒドラジン(MMH)を用いてもよい。
【0030】
チャンバー11の底壁には、排気管61が接続されており、この排気管61には真空ポンプを含む排気装置62が接続されている。そして排気装置62を作動させることによりチャンバー11およびベルジャー12内を所定の真空度まで減圧することができる。
【0031】
また、チャンバー11の側壁にはゲートバルブ63が設けられており、このゲートバルブ63を開にした状態でウエハWが隣接するロードロック室(図示せず)との間で搬送されるようになっている。
【0032】
ベルジャー12の周囲にはアンテナ部材としてのコイル65が巻回されており、コイル65には高周波電源66が接続されている。高周波電源66は例えば13.56MHzの周波数を有している。そして、高周波電源66からコイル65に高周波電力を供給することにより、ベルジャー12内に誘導電磁界が形成されるようになっている。コイル65は、ジャケット84により覆われており、このジャケット84内に冷媒供給装置83からの冷媒を冷媒導入管81を介して導入し、排出管82から排出して循環することによりコイル65を冷却することが可能である。
【0033】
このように構成される装置においては、ゲートバルブ63を開にして、チャンバー11内にウエハWを装入し、サセプタ17に設けられた静電チャック24上にウエハWを載置する。その後、ゲートバルブ63を閉じ、排気装置62によりチャンバー11およびベルジャー12内を排気して所定の減圧状態にし、引き続き、第2のAr供給源44からベルジャー12内にArガスを導入しつつ、高周波電源66からコイル65に高周波電力を供給してベルジャー12内に誘導電磁界を形成する。この高周波電界によりプラズマが生成されるとともに、電極26に直流電源27から直流電圧を印加することによりウエハWが静電チャック24に吸着される。
【0034】
その後、NH供給源45およびTiCl供給源42から、それぞれNHガスおよびTiClガスを所定の流量でベルジャー12内へ導入し、これらをプラズマ化させてチャンバー11内に導き、このプラズマによりウエハW上にTiN薄膜が成膜される。この際のTiN薄膜の成膜は、発熱体21への出力および冷媒の流量を制御して300〜450℃程度の温度で行う。
【0035】
成膜後、チャンバー11からウエハWが搬出され、ベルジャー12およびチャンバー11内にクリーニングガスであるClFガスが導入されてベルジャー12およびチャンバー11内がクリーニングされる。
【0036】
以上の処理においては、ベルジャー12内に生成されるプラズマによりベルジャー12の内壁がアタックされ、クリーニング時には腐食性ガスであるClFガスに曝される。このような環境下では、従来の石英やAl製のベルジャーでは、耐腐食性が十分ではなく、寿命が短いという欠点があったが、本実施形態では、ベルジャー12の内壁を上記構成の耐食性の高い周期律表第3a族元素化合物を含む膜14で形成しているので、プラズマやクリーニングガスが接触しても腐食し難くベルジャーの寿命を長くすることができる。さらに、基材13の材料はセラミックスに限らず、硬質プラスチック(エンジニアリングプラスチック)であってもよい。また、周期律表第3a族元素化合物を含む膜14は通常絶縁膜であるから、基材13の材料としてアルミニウム等の金属もしくはステンレス鋼等の合金を用いることも可能である。また、周期律表第3a族元素化合物を含む膜14として溶射膜を用いる場合には、溶射膜は焼結品に比較して低コストであり、膜形成が短時間に行えるといった大きな利点がある。なお、上述のように、チャンバー11の内壁にも周期律表第3a族元素化合物を含む膜を形成することができ、チャンバー11の内壁にこのような膜を形成することによりチャンバー11の耐食性をも向上させることができる。
【0037】
次に、このような膜の耐食性を確認した実験結果について説明する。
ここでは、平行平板型プラズマエッチング装置を用い、13.56MHzで1300Wの高周波電力を印加し、チャンバー内圧力:133.3Pa(1000mTorr)、ガス流量比CF:Ar:O=95:950:10(トータル流量1.055L/min(1055sccm))として20時間プラズマを照射した。
【0038】
本発明例のサンプルとしては、20×20×2mmのアルミニウム基材にAlおよびYからなる溶射膜、ならびに、Y、Sc、ScF、YF、La、CeO、EuおよびDyの溶射膜を、それぞれ200μmの厚さで形成し、表面を研磨したものを用いた。AlおよびYからなる溶射膜としては、具体的には重量比でAl/Y=0.5として溶射したもの、および純度99.9%のYAG(YAl12;重量比でAl/Y=0.75)を溶射したものを用いた。図2の(a)に示すように、このようなサンプルの中央部10mm角を残して外周部をポリイミドフィルムマスキングしてプラズマを照射した。そして、耐プラズマ性をプラズマによる削れ量で評価した。削れ量は、表面粗さ計を用いて、図2の(b)に示すように深さで評価した。比較のため、他の材料のサンプルも同様に耐食性を評価した。その結果を表1に示す。表1の削れ量は、アルミナの削れ量を1として規格化して示す。
【0039】
【表1】

【0040】
この表に示すように、周期律表第3a族元素化合物を含む膜は、他の材料よりもプラズマに対する耐食性が著しく高いことが確認された。また、このような膜のうち、AlおよびYからなる溶射膜は、YAG組成とすることにより特に高い耐食性を示した。
【0041】
次に、Al/Yの重量比をそれぞれ0.43、0.66、1.50とし、これら混合粉をアルミニウム基材に溶射して溶射膜を形成した。これらのX線回折パターンを図3、4、5に示す。これらの図に示すように、いずれの溶射膜もAlおよびYの結晶に対応する回折ピークが主体であったが、YAlOやYAlといった複合酸化物の回折ピークも確認された。これら複合酸化物の生成率は、図6に示すように、Al/Yの重量比が増加するに従って増加することがわかる。
【0042】
これらサンプルについて、前述と同様にしてプラズマによる耐食性試験を実施した。削れ量の評価は、上記10mm角の部分のうちのエッジ部分を除く中央部分の深さを計測することにより行った。その結果を図7に示す。この図から、Al/Yの重量比が0.5以上で耐食性が良好になることがわかる。上述したようにAl/Yの重量比が増加するに従って、複合酸化物の生成率が増加していることから、複合酸化物が耐食性に寄与している可能性がある。
【0043】
一方、最初の試験において耐食性を評価したYAGの溶射膜は、X線回折パターンが図8に示すようにほぼ非晶質であった。このことから、YAG組成は非晶質でも高い耐食性が得られることがわかる。
【0044】
次に、周期律表第3a族元素化合物を含む膜の厚さと、耐絶縁性および耐電圧性との関係について説明する。アルミニウムからなる基材に膜厚50〜350μmのYAG組成の溶射膜を形成し、直流電圧を印加してそれぞれの膜厚における絶縁破壊電圧の大きさを測定した。結果を図9に示す。図9より、膜厚50μm以上とすることにより、十分に高い絶縁破壊電圧を得られることが確認された。
【0045】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図10は本発明の第2の実施形態に係るCVD成膜装置を示す断面図である。本実施形態ではベルジャーおよびシャワーヘッドの構造が第1の実施形態と異なっているが、他は実質的に同じであるから、図10中図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0046】
この装置では、チャンバー11の上方に設けられたベルジャー12’は、Al、SiO、AlN等のセラミックス材料からなっている。また、ベルジャー12’の上部に設けられ、アルミニウム、アルマイトニッケル合金等の金属材料、または、セラミックス材料で構成されたシャワーヘッド70には、下方へガスを吐出するためのガス吐出孔70a,70b,70cが形成されている。そして、シャワーヘッド70にはガス供給機構40の配管が接続されており、後述するようにガス吐出孔70aにはArガスを供給する配管56が接続されており、ガス吐出孔70bにはNHガスを供給する配管55が接続されており、ガス吐出孔70cにはArガスにキャリアされたTiClガスまたはクリーニングガスであるClFを供給する配管57が接続されている。ガス吐出孔70bおよび70cには、それぞれチャンバー11の上部まで延びるガス吐出部材71および72が接続されており、ガス吐出部材71の内部にはガス吐出孔71aが、ガス吐出部材72の内部にはガス吐出孔72aが形成されている。
【0047】
このように構成されるCVD成膜装置においては、第1の実施形態と同様にウエハWをチャンバー11内に搬入した後、Arガスをプラズマ生成ガスとして用いてシャワーヘッド70のガス吐出孔70aを介してベルジャー12’内に導入し、コイル65に高周波電源66から高周波電力を供給することによりベルジャー12’内に形成された誘導電磁界によりArガスのプラズマが発生する。一方、成膜ガスであるTiClガスおよびNHガスは、それぞれガス吐出部材71および72を介して直接にチャンバー11に導入され、ベルジャー12’からチャンバー11に拡散したArガスのプラズマにより励起されてチャンバー11内でプラズマ化する。これによりウエハWの表面で反応が生じてウエハW上にTiN薄膜が成膜される。
【0048】
この実施形態においても、成膜後、チャンバー11からウエハWが搬出され、ベルジャー12’およびチャンバー11内にクリーニングガスであるClFガスが導入されてベルジャー12’およびチャンバー11内がクリーニングされる。
【0049】
ベルジャーの上方から成膜ガスを導入するタイプのCVD成膜装置は、ベルジャー内壁に付着物が付着しやすく、TiN膜を成膜する場合には導電性膜が付着してプラズマが減衰し、成膜が困難になる場合が生じるが、本実施形態においては、ベルジャー12’にはプラズマ生成用のArガスのみ供給し、成膜ガスであるTiClガスおよびNHガスはガス吐出部材71および72を介してチャンバー11内に直接供給されるので、成膜ガスはベルジャー12’の内壁にほとんど到達せず、ベルジャー12’の内壁には成膜ガスに起因する付着物がほとんど付着しない。したがって、従来のように成膜ガスによってベルジャー内壁に導電性膜が付着してプラズマが減衰し、成膜が困難になるといった不都合が生じない。
【0050】
次に本発明の第3の実施形態について説明する。図11は本発明の第3の実施形態に係るCVD成膜装置を示す断面図である。本実施形態の装置は第1の実施形態と同様、例えばセラミックス材料からなる基材13と、周期律表第3a族元素化合物を含む膜14とからなるベルジャー12を有しており、シャワーヘッド70の外周面も周期律表第3a族元素化合物を含む膜14で構成されているが、他は第2の実施形態と略同様に構成されている。
【0051】
したがって、第3の実施形態によれば、ベルジャー12の内壁を周期律表第3a族元素化合物を含む膜14で構成しているので、プラズマやクリーニングガスが接触しても腐食し難くベルジャーの寿命を長くすることができるとともに、ベルジャー12内壁には成膜ガスに起因する付着物がほとんど付着しないので、従来のように成膜ガスによってベルジャー内壁に導電性膜が付着してプラズマが減衰し、成膜が困難になるといった不都合が生じない。また、シャワーヘッド70の側壁も周期律表第3a族元素化合物を含む膜14で構成しているのでシャワーヘッド70の耐食性も高められている。
【0052】
なお、第2および第3の実施形態においても、チャンバー11の内壁に上記の膜を形成することができ、チャンバー11の内壁にこのような膜を形成することによりチャンバー11の耐食性をも向上させることができる。
【0053】
また、上記第2および第3の実施形態において、成膜ガスをチャンバーに導入するために複数のガス吐出部材を用いたが、これに限らず、図12のように1本のガス導入部材91によりベルジャーの上部からチャンバーの上部へ成膜ガスを導き、その下端に連続するらせん状のガス吐出部92の下面に形成された多数のガス吐出孔から成膜ガスを供給するようにしてもよいし、図13に示すように、1本のガス導入部材93によりベルジャーの上部からチャンバーの上部へ成膜ガスを導き、その下端から分岐した複数のガス吐出部94の下面に形成された多数のガス吐出孔から成膜ガスを供給するようにしてもよい。また、2種類の成膜ガスを別個に導入するようにしたが、一緒に導入するようにしてもよい。
【0054】
次に本発明の第4の実施形態について説明する。図14は本発明の第4の実施形態に係るCVD成膜装置を示す断面図であり、図15は本実施形態におけるシャワーヘッドの斜視図、図16(a)、(b)および(c)はシャワーヘッドの断面図である。本実施形態の装置では、シャワーヘッドの構造およびその位置が第1の実施例と異なっているが、他は実質的に同じであるから、図14中図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0055】
図14に示すように、このCVD成膜装置においては、ベルジャー12’’およびチャンバー11内にガス供給するシャワーヘッド100が、ベルジャー12’’とチャンバー11との間に配置されている。また、ベルジャー12’’の上部には、内壁が周期律表第3a族元素化合物を含む膜14で構成された蓋体85が設けられている。なお、膜14が絶縁性であれば蓋体85は導体で構成してもよい。
【0056】
図15および図16(a)、(b)および(c)に示すように、シャワーヘッド100は、円環状の形状を有しており、いずれもアルミニウム、アルマイトニッケル合金等の金属材料、または、セラミックス材料で構成された、上側部材100bと、中央部材100aと、下側部材100cとが重なり合った三層構造となっている。中央部材100aの外周側には、ガス供給機構40の配管56が接続され、Arガスが導入されるガス導入孔101aと、ガス供給機構40の配管55が接続され、NHガスが導入されるガス導入孔101bと、ガス供給機構40の配管57が接続され、TiClガスまたはClFガスが導入されるガス導入孔101cとが設けられている。また、中央部材100aの内周側の全周にわたって、Arガスを吐出するガス吐出孔105aと、NHガスを吐出するガス吐出孔105bと、TiClガスまたはClFガスを吐出するガス吐出孔105cとのそれぞれ複数が、所定のパターンを繰り返すように設けられている。
【0057】
ガス導入孔101aは、中央部材100aに設けられた環状の流路102aを介してガス吐出孔105aと連通しており、ガス導入孔101bは、上側部材100bに設けられた環状の流路102bを介してガス吐出孔105bと連通しており、ガス導入孔101cは、下側部材100cに設けられた環状の流路102cを介してガス吐出孔105cと連通している。このようにシャワーヘッド100はマトリックスタイプであり、Arガス、TiClガスおよびNHガスが異なる吐出孔から吐出され、成膜ガスであるTiClガスおよびNHガスが吐出後に混合されるポストミックス方式が採用される。また、このシャワーヘッド100においては、1つおきに配置されたガス吐出孔105aの間に交互にガス吐出孔105bまたはガス吐出孔105cが配置されているので、ベルジャー12’’およびチャンバー11内に均一にガス吐出することができる。
【0058】
このように、第4の実施形態によれば、ベルジャー12’’とチャンバー11との間にシャワーヘッド100を設けたので、ベルジャーの上方から成膜ガスを導入する場合に問題となるベルジャー12’’内壁への付着物の付着はほとんど生じない。かつ、ベルジャー12’’の上部に内壁を周期律表第3a族元素化合物を含む膜14で構成した蓋体85を設けたので、ベルジャー12’’の内壁全体を周期律表第3a族元素化合物を含む膜14で構成することができ、これによりベルジャー12’’の内壁全体を腐食し難くしてベルジャーの寿命を極めて長くすることができる。
【0059】
なお、本実施形態におけるシャワーヘッド100において、ガス吐出孔105a、ガス吐出孔105bおよびガス吐出孔105cを配列するパターンは図15に示したものに限られるものではなく、均一にガス吐出することができることを条件に、変更することが可能である。また、ガス吐出孔105a、ガス吐出孔105bおよびガス吐出孔105cを一列に配列することは必須ではなく、例えば、図17に示すシャワーヘッド100’のように、中央部材100a’にArガスを吐出するガス吐出孔105aを設け、上側部材100b’にNHガスを吐出するガス吐出孔105bを設け、下側部材100c’にTiClガスまたはClFガスを吐出するガス吐出孔105cを設けた三段の配列としてもかまわない。この場合にも、ガス吐出孔105a、ガス吐出孔105bおよびガス吐出孔105cを配列するパターンは変更してもよい。さらに、シャワーヘッド100の表面に、周期律表第3a族元素化合物を含む膜を形成してもよい。
【0060】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図18は本発明の第5の実施形態に係るCVD成膜装置を示す断面図である。本実施形態の装置では、ベルジャーの構造等の一部が第4の実施例と異なっているが、他は実質的に同じであるから、図18中図14と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0061】
図18に示すように、このCVD成膜装置においては、例えばセラミックス材料からなる基材121と、周期律表第3a族元素化合物を含む膜122とからなるベルジャー120が半球状に形成されており、この半球状のベルジャー120の外周にアンテナ部材としてのコイル123が巻回され、コイル123には高周波電源124が接続されている。また、サセプタ17には交流電源29が接続されており、サセプタ17に所定の電力を印加しながらプラズマ処理を行うことができるように構成されている。ただし、交流電源29は必須の構成ではなく、省略することが可能である。チャンバー11の底壁には排気管61が設けられている。
【0062】
本実施形態によれば、ベルジャー120の壁面を表面積/体積の比が小さい球面とすることにより、腐食されたり付着物が付着するベルジャー12内壁の面積を最小限とすることができ、これに加えてベルジャー120内壁の全面を周期律表第3a族元素化合物を含む膜122で構成することとにより、ベルジャー120の腐食を一層効果的に防止し、ベルジャー120の寿命を極めて長くすることができる。
【0063】
なお、本実施形態におけるベルジャーの形状は図18に示した半球状のものに限られるものではなく、例えば図19に示すCVD成膜装置におけるベルジャー120’のように、円筒状の下部120’aの上方に球面部120’bが接続されたドーム状に構成してもよい。この場合に、球面部120’bの形状は半球に限られず、必要に応じて、球の部分的な形状とすることができる。
【0064】
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。図20は本発明の第6の実施形態に係るCVD成膜装置を示す断面図である。本実施形態の装置では、ベルジャーおよびアンテナの構造が異なる点で第5の実施例と異なるが他は実質的に同じであるから、図20中図18と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0065】
図20に示すように、このCVD成膜装置におけるベルジャー130は、断面コの字型の有蓋円筒状の形状を有し、ベルジャー130の側壁および天壁は基材132とその内壁を構成する周期律表第3a族元素化合物を含む膜131から構成されている。このベルジャー130の外周にはアンテナ部材としてのコイル133が巻回されており、コイル133には高周波電源134が接続されている。また、ベルジャー130の天壁上方には同じくアンテナ部材としての渦巻き状コイル135が配置されており、渦巻き状コイル135には高周波電源136が接続されている。
【0066】
このCVD成膜装置においては、ベルジャー130のシャワーヘッド100上部からの高さHは0.65〜10cmとすることが好ましい。また、ベルジャー130のウエハW上面からの高さhは3.8〜30cmとすることが好ましい。より好ましいHの範囲は0.65〜5cm、hの範囲は3.8〜20cmである。
【0067】
上記のように構成されたCVD成膜装置においては、コイル133および渦巻き状コイル135に高周波電力を供給することによりベルジャー130内に誘導電磁界を形成し、この高周波電界によりプラズマを生成し、上記の実施形態と同様にしてCVD成膜を行うことができる。このように、第1から第5の実施形態とは誘導電界を形成する手法の異なる本実施形態のCVD成膜装置においても、ベルジャー130の内壁に周期律表第3a族元素化合物を含む膜131を形成することにより、プラズマやクリーニングガスが接触してもベルジャー130を腐食し難くすることができ、ベルジャー130の寿命を長くすることができる。
【0068】
なお、以上の実施形態ではCVD成膜装置としてTiN薄膜形成用のものについて示したが、これに限らず他の膜を形成するものであってもよい。特に、Ti含有材料またはSi含有材料を成膜する際には塩素含有ガスを原料ガスとして用いるので、本発明はこれらの材料を成膜する装置に対して有効である。このような材料としては、TiNの他、Ti、TiSiNや、近時、低誘電率の層間絶縁膜として用いられているSiOF等のlowk材料、さらにはCuのバリアやエッチングストップとして用いられているSiNが挙げられる。また、Ta含有材料を成膜するものであってもよい。Ta含有材料としてはバリア膜として用いられているTa、TaN、キャパシターの絶縁膜として用いられているTaが挙げられる。さらに、Taと同様にキャパシターの絶縁膜として用いられるBST、RuO、ZrOの成膜に適用することもできる。
【0069】
次に本発明の第7の実施形態について説明する。図21は、本発明の第7の実施形態に係るCVD成膜装置を示す断面図である。
このCVD成膜装置150はWSi成膜用のものであり、アルミニウム等の金属からなるチャンバー(処理容器)152を有しており、このチャンバー152内には、ウエハW(被処理体)を載置するためのサセプタ153が設けられている。サセプタ153は円筒状の支持部材154により支持されている。ウエハWの外側上方を覆うようにシールドリング155が設けられている。このシールドリング155は、支持部材154に支持されており、サセプタ153の裏面等、下部側への成膜を防止、および後述するハロゲンランプ157の熱線が上方に照射されることを防止するとともに、クリーニング時にクリーニングガスの流路を確保する機能を有している。サセプタ153の真下の処理室底部には、石英等の熱線透過材料よりなる透過窓156が設けられ、その下方にはハロゲンランプ157を収容する加熱室158が設けられている。ハロゲンランプ157から放出された熱線は、透過窓156を透過してサセプタ153の下面を照射してこれを加熱し得るようになっている。チャンバー152の天井部には、処理ガスや洗浄ガス等を導入するためのシャワーヘッド159が設けられている。このシャワーヘッド159の下面には多数のガス吐出孔160が形成されており、その上面にはガス導入管161が接続されている。そして、このガス導入管161には、例えばそれぞれWFガスおよびSiHClガスを供給する処理ガス源162,163が接続されており、さらに、ClFガス等のハロゲン含有洗浄ガスを供給する洗浄ガス源164が接続されている。また、チャンバー152の底部近傍には排気口165が設けられており、図示しない真空ポンプによりこの排気口165を介してチャンバー152内が排気され、その中が、例えば0.7Torrの真空度に維持し得るようになっている。
【0070】
このCVD成膜装置150において、チャンバー152の内壁を周期律表第3a族元素化合物を含む膜152aで構成することができる。このようにすることで、チャンバー152のClFガス等のハロゲン含有ガスに対する耐食性を高くすることができ、処理ガスによる成膜処理の後、ClFガスからなる洗浄ガスに切り換えて洗浄ガスをチャンバー152内に導入し、チャンバー152内をin−situクリーニングする際に、チャンバー152をエッチングされ難くすることができる。
【0071】
また、サセプタ153、支持部材154、シールドリング155、シャワーヘッド159として、それぞれの基材上に周期律表第3a族元素化合物を含む膜153a、154a、155a、159aを形成した構成とすることができる。これにより、これらの部材のClFガス等のハロゲン含有ガスに対する耐食性を高くすることができ、クリーニングの際にこれらの部材をエッチングされ難くすることができる。
【0072】
次に本発明の第8の実施形態について説明する。図22は、本発明の第8の実施形態に係るプラズマエッチング処理装置を示す断面図である。このプラズマエッチング処理装置200は、電極板が上下平行に対向し、一方にプラズマ形成用電源が接続された容量型平行平板エッチング装置として構成されている。
【0073】
このプラズマエッチング処理装置200は、例えば表面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなり円筒状をなすチャンバー202を有しており、このチャンバー202内の底部には、ウエハWを載置するための略円柱状のサセプタ203が設けられている。サセプタ203内には図示しない冷媒体流路が設けられており、そこを通流する液体窒素等の冷媒により前記サセプタ203を介してウエハWが冷却される。このサセプタ203は下部電極として機能する。
【0074】
前記サセプタ203は、その上中央部が凸状の円板状に成形され、その上にウハWと略同形の静電チャック204が設けられている。静電チャック204は、絶縁材の間に電極205が介在されており、電極205に直流電源206から例えば1.5kVの直流電圧が印加されることにより、例えばクーロン力によってウエハWを静電吸着する。前記サセプタ203の上端周縁部には、静電チャック204上に載置されたウエハWを囲むように、環状のフォーカスリング207が配置されている。このフォーカスリング207によりエッチングの均一性が向上される。サセプタ203は、昇降機構208により昇降可能となっており、サセプタ203の下方中央の駆動部分は大気雰囲気となっており、その部分はベローズ209で覆われ、真空部分と大気部分が分離されている。
【0075】
前記サセプタ203上方には、このサセプタ203と平行に対向して上部電極210が設けられている。この上部電極210は、絶縁材215を介して、チャンバー202の上部に支持されており、サセプタ203との対向面を構成するとともに多数のガス吐出孔212を有する電極板211と、この電極板211を支持し例えば表面がアルマイト処理されたアルミニウムからなる電極支持体213とによって構成されている。電極板211の下面外周部にはシールドリング220が設けられている。前記電極支持体213にはガス導入口216が設けられ、このガス導入口216には、ガス導入管217が接続されている。そして、このガス導入管217には、エッチングガスとして例えばCFガス等のハロゲン含有ガスを導入するための処理ガス源218と、エッチングガスとしてOガス等の他のガスを導入するための処理ガス源219とが接続されており、これら処理ガスがガス導入管217、ガス導入口216を経て電極支持体213の内部に至り、電極板211のガス吐出孔212からチャンバー202内に吐出される。チャンバー202の底部近傍には排気口221が設けられており、図示しない真空ポンプによりこの排気口221を介してチャンバー202内が排気され、その中が所定の真空状態に維持し得るようになっている。またチャンバー202の内周面にはエッチングの際の副生成物がチャンバー202の内壁に付着することを防止するためのデポシールド222が着脱自在に設けられている。さらにチャンバー202の側壁にはゲートバルブ223が設けられており、このゲートバルブ223を開にした状態でウエハWの搬入出が行われる。
【0076】
上部電極210には、整合器224を介してプラズマ形成用の第1の高周波電源225が接続されている。この第1の高周波電源225から上部電極210に例えば60MHzの高周波電力を印加することによりチャンバー202内にプラズマを形成する。下部電極としてのサセプタ203には、イオン引き込み用の第2の高周波電源227が接続されており、その給電線には整合器226が介在されている。この第2の高周波電源227からサセプタ203に例えば2MHzの高周波電力を印加することによりエッチングの際にウエハWにイオンを引き込む。
【0077】
このプラズマエッチング装置200において、チャンバー202の内壁、すなわちデポシールド222の内壁を周期律表第3a族元素化合物を含む膜222aで構成することができる。また、チャンバー202内に配置された部材である、サセプタ203、フォーカスリング207、上部電極210の電極板211、シールドリング220として、それぞれの基材上に周期律表第3a族元素化合物を含む膜203a、207a、211a、220aを形成した構成とすることができる。
【0078】
このようなプラズマエッチング装置200においては、ウエハWをチャンバー202内に搬入し、チャンバー202を所定の真空度に維持し、ウエハWを静電チャック204に吸着させた状態でエッチングのための処理ガスを導入しつつ、上部電極210に高周波電力を印加してチャンバー202内にプラズマを形成し、ウエハW上の所定の膜にエッチング処理を施すが、チャンバー202の内壁を周期律表第3a族元素化合物を含む膜222aで構成することにより処理ガスとして用いるハロゲン含有ガスに対するチャンバー202の耐食性を高めることができる。また、上記の部材をそれぞれの基材上に周期律表第3a族元素化合物を含む膜203a、207a、211a、220aを形成した構成とすることにより、これらの部材のハロゲン含有ガスに対する耐食性を高めることができる。
【0079】
次に本発明の第9の実施形態について説明する。図23は、本発明の第9の実施形態に係るRTP装置を示す断面図である。このRTP装置は、ウエハWに不純物をドープした後のアニール処理等に適用される。図23において、RTP装置250はチャンバー251を有し、このチャンバー251は上部チャンバー251aおよび下部チャンバー251bに分離可能となっている。上部チャンバー251aおよび下部チャンバー251bの間には石英窓252が設けられている。チャンバー251の上方には発熱部253が着脱可能に設けられている。発熱部253は、水冷構造のジャケット254と、その下面に複数配列されたタングステンランプ255とを有している。チャンバー251の下方には半導体ウエハWを保持する水冷構造のプラテン256が着脱可能に設けられている。このプラテン256の上面にはウエハ支持ピン257が設けられており、ウエハWはこのウエハ支持ピン257に支持される。発熱部253のジャケット254と上部チャンバー251aとの間、上部チャンバー251aと石英窓252との間、石英窓252と下部チャンバー251bとの間、下部チャンバー251bとプラテン256との間にはシール部材Sが介在されており、チャンバー251は気密状態となる。チャンバー251内は図示しない排気装置により減圧可能となっている。
【0080】
このようなRTP装置においては、チャンバー251内にウエハWをセットし、その中に気密な空間を形成し、排気装置により排気してその中を真空状態とする。次いで、発熱部253のタングステンランプ255をオンにすると、タングステンランプ255で発生した熱が石英窓252を通過してウエハWに至り、ウエハWが急速に加熱される。加熱が終了した後は、チャンバー251内を大気圧に戻し、発熱部253を退避させるとともに、プラテン256を下降させてウエハWを急速に冷却する。このようにして、所望の急速加熱処理が実現される。
【0081】
ここで、下部チャンバー251bの内壁を周期律表第3a族元素化合物を含む膜251cで構成することができる。また、プラテン256として、基材上に周期律表第3a族元素化合物を含む膜256aを形成した構成とすることができる。周期律表第3a族元素化合物を含む膜は耐熱性も高いので、上記のような加熱処理に対しても高い耐性を示す。
【0082】
なお、上記実施形態では基板として半導体ウエハを用いた場合について示したが、これに限らず液晶表示装置(LCD)のガラス基板であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
11;チャンバー
12,12’,12’’,120,120’,130;ベルジャー
13;基材
14;周期律表第3a族元素化合物を含む膜
30,70,100,100’;シャワーヘッド
40;ガス供給機構
41;ClF供給源
42;TiCl供給源
43;第1のAr供給源
44;第2のAr供給源
45;NH供給源
71,72;ガス吐出部材
W;半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板を収容する処理容器と、
前記処理容器内の被処理基板に処理を施す処理機構と
を具備する処理装置であって、
前記処理容器は、基材と、その内壁に溶射により形成された周期律表第3a族素化合物を含む膜とを具備し、前記溶射により形成された周期律表第3a族元素化合物を含む膜の表面が研磨されていることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜は、Yから実質的になることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜は、YとAlとから実質的になることを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項4】
前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜は、プラズマによる削れ量がAl部材の削れ量よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項5】
前記処理機構は、被処理基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理機構であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項6】
前記プラズマ処理機構は、誘導結合型であることを特徴とする請求項5に記載の処理装置。
【請求項7】
前記プラズマ処理機構は、平行平板型であることを特徴とする請求項5に記載の処理装置。
【請求項8】
被処理基板にエッチング処理を施すことを特徴とする請求項7に記載の処理装置。
【請求項9】
被処理基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内に設けられた上部電極と、
前記チャンバー内に前記上部電極と対向して設けられ、被処理基板を載置する下部電極と、
前記上部電極および下部電極の間に高周波電界を形成するための高周波電源と、前記チャンバー内に処理ガスを供給するガス供給手段と前記チャンバー内を排気する排気手段とを具備し、前記高周波電界によりプラズマを形成して処理を行う処理装置であって、
前記チャンバーの内壁およびチャンバー内に配置された部材の少なくとも一部が溶射により形成された周期律表第3a族元素化合物を含む膜をコーティングされて、前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜の表面が研磨されていることを特徴とする処理装置。
【請求項10】
前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜は、Yから実質的になることを特徴とする請求項9に記載の処理装置。
【請求項11】
前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜は、YとAlとから実質的になることを特徴とする請求項9に記載の処理装置。
【請求項12】
前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜は、プラズマによる削れ量がAl部材の削れ量よりも小さいことを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項13】
前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜の厚さは50μm以上であることを特徴とする請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項14】
被処理基板を処理する処理装置に用いられる耐食性部材であって、基材と、その上に溶射により形成された周期律表第3a族元素化合物を含む膜とを具備し、前記溶射により形成された周期律表第3a族元素化合物を含む膜の表面が研磨されていることを特徴とする耐食性部材。
【請求項15】
前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜は、Yから実質的になることを特徴とする請求項14に記載の耐食性部材。
【請求項16】
前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜は、YとAlとから実質的になることを特徴とする請求項14に記載の耐食性部材。
【請求項17】
前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜は、プラズマによる削れ量がAl部材の削れ量よりも小さいことを特徴とする請求項14から請求項16のいずれか1項に記載の耐食性部材。
【請求項18】
前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜の厚さは50μm以上であることを特徴とする請求項14から請求項17のいずれか1項に記載の耐食性部材。
【請求項19】
被処理基板を処理する処理装置に用いられる耐食性部材の製造方法であって、
基材を準備し、その上に周期律表第3a族元素化合物を含む膜を溶射により形成し、前記溶射の周期律表第3a族元素化合物を含む膜の表面を研磨するを特徴とする耐食性部材の製造方法。
【請求項20】
前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜は、Yから実質的になることを特徴とする請求項19に記載の耐食性部材の製造方法。
【請求項21】
前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜は、YとAlとから実質的になることを特徴とする請求項19に記載の耐食性部材の製造方法。
【請求項22】
前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜は、プラズマによる削れ量がAl部材の削れ量よりも小さいことを特徴とする請求項19から請求項21のいずれか1項に記載の耐食性部材の製造方法。
【請求項23】
前記周期律表第3a族元素化合物を含む膜の厚さは50μm以上であることを特徴とする請求項19から請求項22のいずれか1項に記載の耐食性部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−18928(P2012−18928A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158335(P2011−158335)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【分割の表示】特願2007−133877(P2007−133877)の分割
【原出願日】平成12年12月8日(2000.12.8)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】