説明

動力伝達装置

【課題】ダンパ機構の偏心荷重が入力軸に加わった場合に、中空支持部および環状支持部が変形するのを抑制して、遊星歯車機構の噛み合いの悪化によるNV性能および耐久性の悪化を防止することができる動力伝達装置を提供すること。
【解決手段】トランスアクスルは、インプットシャフト28をケース25の中空支持部25cに支持するニードルベアリング55と、中空支持部25cの外周部に形成されたケース25の環状支持部25bにリングギヤ23Rの内周部を支持するボールベアリング53との回転中心軸を、インプットシャフト28の軸線方向に離隔させるとともに、ニードルベアリング55を回転中心軸の軸線方向中央部をケース25の壁部25dの軸線上に位置させたものから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関し、特に、遊星歯車機構のリングギヤと、内燃機関からトルクリミッタ付きのダンパ装置を介して動力が伝達される入力軸とが同一のケースに軸受を介して支持される動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用の動力伝達装置として、電動機を駆動源に用いるものに、電気自動車用の動力伝達装置や内燃機関と電動機を併用したハイブリッド式の動力伝達装置がある。ハイブリッド式の動力伝達装置としては、原動機としての内燃機関と、この内燃機関により駆動される発電機と、ディファレンシャル装置を介して車輪に駆動連結されたギヤ列とを遊星歯車機構を介して連結することで、内燃機関、発電機および車輪の3者間で相互に動力伝達を可能とし、内燃機関による発電機の駆動、発電機をモータとする駆動力のアシストや内燃機関の始動、車輪からディファレンシャル装置を介して遊星歯車機構に戻る慣性駆動力による発電機の回生等を走行状態に応じて自由に行えるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この動力伝達装置は、内燃機関の出力軸に連結される入力軸と、電動機の出力軸である電動機軸と、カウンタ出力軸と、入力軸と電動機軸とカウンタドライブギヤを有するカウンタ出力軸とを相互に動力伝達可能に駆動連結する遊星歯車機構と備え、入力軸がカウンタ出力軸の内周に同軸関係に配置されており、入力軸とカウンタ出力軸が遊星歯車機構の一方側で、電動機軸が連結された要素とは異なる他の2要素にそれぞれ連結され、カウンタ出力軸が、その両端部の外周を動力伝達装置のケースに支持され、入力軸が、その外周をカウンタ出力軸の内周に支持されて、カウンタ出力軸を介して動力伝達装置のケースに支持するようにしている。
【0004】
ところで、このような構成を有する動力伝達装置は、カウンタドライブギヤを有するカウンタ出力軸と遊星歯車機構とが入力軸の軸線方向に離隔して配設された別部材から構成されているため、入力軸の軸線方向に動力伝達装置が長くなってしまう。
【0005】
これに対して、遊星歯車機構のリングギヤとカウンタドライブギヤを一体化することにより、動力伝達装置の長さを短くして動力伝達装置の小型化を図るようにすることが考えられる。
【0006】
図4は、遊星歯車機構のリングギヤとカウンタドライブギヤを一体化した動力伝達装置の構成を示す図である。
図4において、インプットシャフト1には内燃機関のクランク軸10からトルクリミッタ付きダンパ装置2を介して動力が伝達されるようになっており、このインプットシャフト1は、ニードルベアリング3を介してケース4の中空支持部4aに回転自在に支持されている。
【0007】
インプットシャフト1には遊星歯車機構5のキャリア5Cが連結されている。また、遊星歯車機構5のサンギヤ5Sは、インプットシャフト1と同軸上に設けられた図示しない発電機のモータ軸6に連結されており、このサンギヤ5Sは、キャリア5Cに回転自在に設けられたピニオンギヤ5Pを介してリングギヤ5Rに連結されている。このリングギヤ5Rは、カウンタドライブギヤ7と一体的に設けられており、このカウンタドライブギヤ7は、ギヤ列を介して電動機のモータ軸に連結されるとともに、ディファレンシャル装置を介して車輪に連結されている。
【0008】
また、リングギヤ5Rは、リングギヤ5Rの内周部が一対のボールベアリング8、9を介してケース4の環状支持部4b、4cの外周部に回転自在に支持されている。この環状支持部4cは、中空支持部4aの外周部からインプットシャフト1と略直交する方向に延在する軸線を有するケース4の壁部4dに形成されている。
【0009】
また、トルクリミッタ付きダンパ装置2は、放射方向内端がケース4の中空支持部4aから外方に吐出する突出部1Aにスプライン嵌合されるとともに、放射方向外端がリミッタ部12を介してクランク軸10の端部に設けられたフライホイール11に連結され、圧縮バネ13の弾性力によってインプットシャフト1とクランク軸10との間に生ずる変動トルクを吸収するダンパ部14を備えている。
【0010】
また、リミッタ部12は、ダンパ部14の放射方向外端に取付けられた摩擦材15a、15bと、フライホイール11に固定されるとともに摩擦材15a、15bを挟持し、インプットシャフト1とクランク軸10との間に生じる変動トルクが所定値を超えたときに摩擦材15a、15bに対して摺動することにより、ダンパ部14に対して相対回転するリング状部材16とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−191760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、遊星歯車機構5のリングギヤ5Rの内周部をケース4の環状支持部4b、4cの外周部にボールベアリング8、9を介して支持する場合には、ボールベアリング9とニードルベアリング3とがインプットシャフト1の軸線方向と直交する軸線上に配置されると、中空支持部4aおよび環状支持部4cが変形してしまうおそれがある。
【0013】
すなわち、トルクリミッタ付きダンパ装置2は、リミッタ部12のリング状部材16に摩擦材15a、15bを圧入するようにダンパ部14とリミッタ部12とが一体化されるようになっている。
【0014】
このため、ダンパ部14とリミッタ部12との組み付け精度が悪いと、ダンパ部14がリミッタ部12に対して正規の取付け位置からダンパ部14の放射方向に位置ずれしてしまうことがある。このようにダンパ部14とリミッタ部12との位置ずれが生じると、インプットシャフト1が回転するときに、トルクリミッタ付きダンパ装置2がインプットシャフト1の軸線方向に対して直交する方向に偏心回転してしまう。
【0015】
このため、図4の矢印P1で示すように、トルクリミッタ付きダンパ装置2の偏心荷重がインプットシャフト1に伝達され、この偏心荷重がニードルベアリング3から中空支持部4aに伝達されてしまう。
【0016】
これに加えて、遊星歯車機構5のリングギヤ5Rの内周部がケース4の環状支持部4cの外周部にボールベアリング9を介して支持されていることから、図4の矢印P2で示すように、リングギヤ5Rの反力がボールベアリング9を介して環状支持部4cに伝達されてしまう。
【0017】
したがって、ボールベアリング9とニードルベアリング3とがインプットシャフト1の軸線方向と直交する軸線上に配置されると、トルクリミッタ付きダンパ装置2の偏心荷重とリングギヤ5Rのギヤ反力との合力が中空支持部4aおよび環状支持部4cに加わってしまい、中空支持部4aおよび環状支持部4cが変形してしまうおそれがある。
【0018】
これに加えて、ニードルベアリング3の回転中心軸の軸線方向中央部がケース4の壁部4dからインプットシャフト1の軸線方向に距離Aだけオフセットされているため、トルクリミッタ付きダンパ装置2の偏心荷重がインプットシャフト1に伝達されたときに、ニードルベアリング3の回転中心軸の軸線方向中央部を支点にした回転モーメントMが中空支持部4aおよび環状支持部4cに加わってしまい、結果的に上記合力と相俟って中空支持部4aおよび環状支持部4cの変形を促進させてしまうおそれがある。
【0019】
そして、中空支持部4aおよび環状支持部4cが変形してしまうと、中空支持部4aおよび環状支持部4cの変形に伴って遊星歯車機構5のリングギヤ5R、ピニオンギヤ5Pおよびサンギヤ5Sの噛み合いが悪化してしまい、動力伝達装置のNV(ノイズ・バイブレーション)性能に加えて耐久性が悪化してしまうそれがある。
【0020】
このような点を改善するために、中空支持部4aおよび環状支持部4cの肉厚を増大して中空支持部4aおよび環状支持部4cの強度を高めることが考えられるが、中空支持部4aおよび環状支持部4cを肉厚にすると、ケース4の全体の重量が増大してしまい、その分だけ動力伝達装置の製造コストが増大してしまう。
【0021】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、ダンパ機構の偏心荷重が入力軸に加わった場合に、中空支持部および環状支持部が変形するのを抑制して、遊星歯車機構の噛み合いの悪化によるNV性能および耐久性の悪化を防止することができる動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る動力伝達装置は、上記目的を達成するため、(1)動力伝達装置のケースの中空支持部に第1の軸受を介して回転自在に支持された入力軸と、前記中空支持部から外方に突出する前記入力軸の突出部に取付けられ、前記入力軸と内燃機関の出力軸との間に生ずる変動トルクを弾性力によって吸収するダンパ部、および前記出力軸と前記ダンパ部の間に介装され、前記変動トルクが所定値を超えたときに前記ダンパ部に対して相対回転するリミッタ部を有するダンパ機構と、前記入力軸を取り囲むようにして設けられ、前記出力軸から前記入力軸に伝達された動力を前記動力伝達装置の所定の構成要素に伝達するリングギヤを有する遊星歯車機構とを備え、前記ケースが、前記中空支持部の外周部から前記入力軸と略直交する方向に延在する軸線を有する壁部を有し、前記リングギヤの内周部が前記壁部に設けられた環状支持部に第2の軸受を介して回転自在に支持された動力伝達装置であって、前記第1の軸受と前記第2の軸受との回転中心軸を前記入力軸の軸線方向に離隔させるとともに、前記第1の軸受の回転中心軸の軸線方向中央部を前記壁部の軸線上に位置させるようにしたものから構成されている。
【0023】
この動力伝達装置は、入力軸をケースの中空支持部に支持する第1の軸受と、中空支持部の外周部に形成されたケースの環状支持部にリングギヤの内周部を支持する第2の軸受との回転中心軸を入力軸の軸線方向に離隔させたので、ダンパ機構の偏心荷重が入力軸に加わった場合に、第1の軸受を介して中空支持部が受ける偏心荷重と第2の軸受を介して環状支持部が受けるリングギヤの反力を入力軸の軸線方向に分散することができ、中空支持部および環状支持部の変形を抑制することができる。
【0024】
また、第1の軸受を回転中心軸の軸線方向中央部をケースの壁部の軸線上に位置させて第1の軸受の軸線方向中央部とケースの壁部とを軸方向に偏心させないようにしたので、ダンパ機構の偏心荷重によって中空支持部および環状支持部に回転モーメントが加わるのを抑制することができ、中空支持部および環状支持部が変形するのを抑制することができる。
【0025】
このように中空支持部および環状支持部が変形するのを抑制することができるので、遊星歯車機構の噛み合いが悪化するのを防止することができ、動力伝達装置のNV性能および耐久性が悪化するのを防止することができる。
【0026】
また、中空支持部が変形するのを抑制することができるため、入力軸を安定して中空支持部に支持することができるとともに、中空支持部および環状支持部の強度を高めるのを不要にして動力伝達装置の軽量化を図ることができ、動力伝達装置の製造コストが増大するのを防止することができる。
【0027】
上記(1)に記載の動力伝達装置において、(2)前記環状支持部が、前記第1の軸受に対して前記入力軸の軸線方向に離隔するように前記壁部から前記入力軸の軸線方向に沿って突出するものから構成されている。
【0028】
この動力伝達装置は、環状支持部が、第1の軸受と入力軸の軸線方向に離隔するように壁部から入力軸の軸線方向に沿って突出するので、第1の軸受を壁部の軸線上に位置させつつ第2の軸受を第1の軸受に対して入力軸の軸線方向に離隔させることができる。
【0029】
上記(1)または(2)に記載の動力伝達装置において、(3)前記入力軸と同軸の第1の回転軸を有する第1の電動機と、前記第1の回転軸と平行に設けられた第2の回転軸を有する第2の電動機とを有し、前記遊星歯車機構が、前記第1の回転軸に取付けられたサンギヤと、前記入力軸に連結されたキャリアと、動力伝達部を介して車軸と前記第2の電動機とに連結される前記リングギヤとを有し、前記リングギヤがカウンタドライブギヤと一体的に設けられ、前記カウンタドライブギヤが前記動力伝達部を介して前記第2の回転軸および前記車軸に連結されるものから構成されている。
【0030】
この動力伝達装置の遊星歯車機構は、サンギヤが第1の電動機の第1の回転軸に取付けられ、キャリアが入力軸に連結され、リングギヤがカウンタドライブギヤおよび動力伝達部を介して車軸と第2の電動機とに連結されるが、遊星歯車機構の噛み合いが悪化することが抑制されるので、遊星歯車機構を介して内燃機関、第1の電動機、第2の電動機および車軸との間で動力を円滑に伝達することができる。
【0031】
また、リングギヤとカウンタドライブギヤとを一体的に設けたので、動力伝達装置を小型化することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ダンパ機構の偏心荷重が入力軸に加わった場合に、中空支持部および環状支持部が変形するのを抑制して、遊星歯車機構の噛み合いの悪化によるNV性能および耐久性の悪化を防止することができる動力伝達装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る動力伝達装置の一実施の形態を示す図であり、ハイブリッド車両のトランスアクスルを中心とした動力系統の主なシステム構成図である。
【図2】本発明に係る動力伝達装置の一実施の形態を示す図であり、動力分配装置の断面図である。
【図3】本発明に係る動力伝達装置の一実施の形態を示す図であり、中空支持部および環状支持部に加わるリミッタ付きのダンパ装置の偏心荷重を示す図である。
【図4】リングギヤとカウンタドライブギヤとが一体的に設けられた動力分配装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る動力伝達装置の制御装置の実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1〜図3は、本発明に係る動力伝達装置の一実施の形態を示す図である。
まず、構成を説明する。
図1において、動力伝達装置としてのトランスアクスルは、内燃機関であるエンジン21の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する第1の電動機としてのモータジェネレータMG1と、エンジン21の補助動力源として機能する第2の電動機としてのモータジェネレータMG2と、エンジン21の出力をモータジェネレータMG1と駆動輪45とのそれぞれ2系統に分配する動力分配装置(動力伝達機構)22とを含んで構成されている。
【0035】
図1、図2に示すように、動力分配装置22は、遊星歯車機構から構成されており、複数の歯車要素の中心で自転する外歯歯車のサンギヤ23Sと、サンギヤ23Sに外接しながらサンギヤ23Sの周囲を自転しつつ公転する外歯歯車のピニオンギヤ23Pと、ピニオンギヤ23Pと噛合するように中空環状に形成された内歯歯車のリングギヤ23Rと、ピニオンギヤ23Pをピニオンシャフト23PSを介して回転自在に支持するとともにピニオンギヤ23Pの公転を通じて自転するキャリア23Cとを備えている。
【0036】
キャリア23Cには、エンジン21の逆回転を阻止するワンウェイクラッチ24が接続されており、ワンウェイクラッチ24は、トランスアクスルのケース25(本発明のケースに相当)に取付けられている。
【0037】
エンジン21を回転駆動することによって発生した回転トルクは、エンジン21の出力軸としてのクランク軸26およびコイルスプリング式のトルクリミッタ付きダンパ装置27を介して入力軸としてのインプットシャフト28に伝達されるようになっており、インプットシャフト28の軸線上にはオイルポンプ29が配設されている。
【0038】
このオイルポンプ29は、例えば、インプットシャフト28の回転トルクの供給を受けて作動するようになっており、オイルポンプ29としては、トロコイド式ポンプ、ギヤ式ポンプ等を用いることができる。
【0039】
オイルパン30にはオイルが充填されており、オイルポンプ29によって吸引された潤滑油は動力分配装置22等の各部の動力系統に搬送されて、各歯車要素および各軸の回転部分および摺動部分を循環し、各部を冷却するとともに、摩擦抵抗を低減し、腐食防止、気密保持の役割を果たすようになっている。
【0040】
モータジェネレータMG1は、インプットシャフト28の周囲にインプットシャフト28と同軸上に回転自在に配置された第1の回転軸としてのモータ軸31と、このモータ軸31に取付けられた永久磁石から成るロータ32Rと、3相巻線が巻回されたステータ32Sとを備えた交流同期発電機から構成されており、図示しないバッテリの充電やモータ駆動用の電力を供給するようになっている。
【0041】
また、モータジェネレータMG2は、インプットシャフト28と平行に回転自在に設置された第2の回転軸としてのモータ軸33と、モータ軸33に取付けられた永久磁石から成るロータ34Rと、3相巻線が巻回されたステータ34Sとを備えた交流同期発電機から構成されており、3相巻線に3相交流電流を供給することで、モータジェネレータMG2内に回転磁界を発生させ、所定の回転トルクを出力する。
【0042】
モータジェネレータMG2は、エンジン21の補助動力源として、円滑な発進、加速をアシストする他、回生ブレーキ作動時には、車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、バッテリを充電するようになっている。
【0043】
図1、図2に示すように、動力分配装置22は、キャリア23Cがエンジン21のインプットシャフト28に連結されており、サンギヤ23Sがモータ軸31にスプライン嵌合している。
【0044】
また、リングギヤ23Rは、カウンタドライブギヤ35と一体的に設けられており、このカウンタドライブギヤ35は、動力伝達部を構成するギヤ列36を介してモータジェネレータMG2および車軸としてのドライブシャフト37に接続されている。
なお、本実施の形態では、モータジェネレータM2およびドライブシャフト37がトランスアクスルの所定の構成要素を構成している。
【0045】
なお、本実施の形態のリングギヤ23Rは、内歯の形成されている部位と内歯が形成されていない部位とを含んで構成されており、内歯が形成されていない部位がリングギヤ23Rの内周部を構成するものである。
【0046】
この動力分配装置22は、エンジン21の出力の一部をインプットシャフト28、キャリア23C、ピニオンギヤ23P、リングギヤ23Rおよびカウンタドライブギヤ35を介して駆動輪45に伝達する他、残りの一部をインプットシャフト28、キャリア23C、ピニオンギヤ23Pおよびサンギヤ23Sを介してモータジェネレータMG1のロータ32Rに伝達して発電に利用するようにしている。
【0047】
本実施の形態のトランスアクスルは、ギヤトレーンが4軸構成となっており、主軸上にはインプットシャフト28を中心としてモータジェネレータMG1、動力分配装置22およびカウンタドライブギヤ35が配置されている。
【0048】
また、第2軸上にはカウンタドライブギヤ35の回転トルクが伝達されるカウンタドリブンギヤ38と、カウンタドリブンギヤ38と一体的に設けられるとともに、カウンタドライブシャフト39の一端部に取付けられたカウンタドリブンギヤ40と、カウンタドライブシャフト39の他端部に設けられたデフドライブピニオン41とがカウンタドライブシャフト39を中心に配置されている。
なお、カウンタドリブンギヤ38、カウンタドリブンギヤ40およびデフドライブピニオン41がギヤ列36を構成している。
【0049】
第3軸上にはモータジェネレータMG2のモータ軸33と、モータ軸33の端部に設けられ、ロータ34Rの回転をカウンタドリブンギヤ40に伝達するカウンタドリブンギヤ42とが配置されている。
【0050】
第4軸上にはデフドライブピニオン41から動力が伝達されるデフリングギヤ43と、駆動輪45の内輪および外輪の回転差を吸収するように回転トルクを分配するディファレンシャル装置44と、ディファレンシャル装置44の差動出力を駆動輪45に伝達するドライブシャフト37とが配置されている。
【0051】
図2に示すように、モータジェネレータMG1のモータ軸31は、トランスアクスルのケース25にボールベアリング51を介して回転自在に取付けられており、動力分配装置22のリングギヤ23Rは、その内周部がケース25の環状支持部25a、25bにボールベアリング52、53を介して回転自在に支持されている。なお、ボールベアリング53は、第2の軸受を構成している。
【0052】
モータ軸31は、中空状に形成されており、モータ軸31の端部にはインプットシャフト28の端部がスプライン嵌合されている。また、インプットシャフト28の端部にはオイルポンプ駆動軸54の一端部が取付けられており、このオイルポンプ駆動軸54の他端部は、オイルポンプ29に連結されている。すなわち、オイルポンプ駆動軸54は、インプットシャフト28の動力をオイルポンプ29に伝達することにより、オイルポンプ29を駆動してオイルを吐出させる機能を有する。
【0053】
オイルポンプ駆動軸54の内部にはオイルポンプ駆動軸54の軸線方向に沿って延在する連通孔54aが形成されており、オイルポンプ29から吐出されるオイルは、連通孔54aを通してオイルポンプ駆動軸54の他端部から一端部に供給されるようになっている。
【0054】
また、インプットシャフト28の内部にはインプットシャフト28の軸線方向に沿って延在する連通孔28aが形成されており、この連通孔28aは、オイルポンプ駆動軸54の連通孔54aに連通している。また、連通孔28aには放射孔28bが形成されており、この放射孔28bは、連通孔28aからインプットシャフト28の放射方向に延在している。
【0055】
オイルポンプ29からオイルポンプ駆動軸54の連通孔54aおよびインプットシャフト28の連通孔28aに供給されるオイルは、インプットシャフト28の回転による遠心力によって放射孔28bから動力分配装置22に供給され、動力分配装置22が潤滑される。
【0056】
一方、インプットシャフト28は、第1の軸受としてのニードルベアリング55を介してケース25の中空支持部25cに回転自在に連結されているとともに、ニードルベアリング56を介してモータ軸31に回転自在に支持されている。
【0057】
ケース25は、中空支持部25cの外周部からインプットシャフト28と略直交する方向に延在する軸線を有する壁部25dを備えており、環状支持部25bは、ニードルベアリング55に対してインプットシャフト28の軸線方向に離隔するように壁部25dからインプットシャフト28の軸線方向に沿って突出している。
【0058】
このため、ボールベアリング53とニードルベアリング55との回転中心軸は、インプットシャフト28の軸線方向に離隔されて設置される。また、ニードルベアリング55の回転中心軸の軸線方向中央部は、壁部25dの軸線上に位置している。この結果、ボールベアリング53とニードルベアリング55とは、リングギヤ23Rおよびインプットシャフト28の間に位置して設置される。
【0059】
図2に示すように、ダンパ機構を構成するトルクリミッタ付きダンパ装置27は、ダンパ部61およびリミッタ部62を備えている。
ダンパ部61は、エンジン21のクランク軸26に固定されるフライホイール46の駆動トルクの変動を緩衝して吸収する機構である。リミッタ部62は、ダンパ部61とフライホイール46との間の変動トルクが所定値(リミットトルク値)に達すると、クランク軸26からインプットシャフト28への動力伝達を制限する機構である。
【0060】
ダンパ部61は、ハブ63と、サイドプレート64A、64Bと、ダンパ部材65と、ディスク66と、摩擦材67と、リベット68とを含んで構成されている。
【0061】
ハブ63は、放射方向に延在するフランジ部63Aおよび内スプラインを備えており、中空支持部25cから外方に突出するインプットシャフト28の突出部28Aの外周面に形成された外スプラインに連結されている。また、フランジ部63Aには、径方向外側に切欠いてなる切欠き部が複数設けられており、この切欠き部にはスプリングシートにより支持されるダンパ部材65が配置される。
【0062】
サイドプレート64A、64Bは、それぞれ外周側に貫通孔が設けられ、リベット68によってディスク66を支持するとともに、ハブ63と同軸かつ相対回転可能に配設されている。また、サイドプレート64A、64Bには、ダンパ部材65を収容するための複数個の窓穴が設けられている。
【0063】
ダンパ部材65は、コイルスプリングから構成されており、ハブ63とサイドプレート64A、64Bの対向する位置にそれぞれ形成される切欠き部および窓穴内に収容される。ディスク66は、サイドプレート64A、64Bの外周側に配置される略環状のディスクであり、ディスク66は、両外側からサイドプレート64A、64Bにより挟持され、ディスク66の軸線方向両側には、略環状の摩擦材67が固着されている。
【0064】
リミッタ部62は、略円状の開口部を有し、フライホイール46にボルト70によって固定されるプレート69A、69Bと、プレート69Aと共に摩擦材67を挟持する摩擦プレート71と、摩擦プレート71とプレート69Bとの間に介装され、摩擦プレート71をプレート69A側に付勢することにより、摩擦材67をプレート69Aおよび摩擦プレート71に挟持させる皿ばね72とを含んで構成されている。
【0065】
この皿ばね72の付勢力によってリミットトルク値が決定され、フライホイール46とダンパ部61がリミッタ部62を介して摩擦係合状態になり、ダンパ部61とフライホイール46との間の変動トルクがリミットトルク値を超えたときに、プレート69Aおよび摩擦プレート71に対して摩擦材67が滑ることにより、クランク軸26からインプットシャフト28への動力伝達を制限することができる。
【0066】
次に、作用を説明する。
エンジン21を回転駆動することによって発生した回転トルクは、エンジン21のクランク軸26およびトルクリミッタ付きダンパ装置27を介してインプットシャフト28に伝達され、回転トルクが動力分配装置22によってモータジェネレータM1と駆動輪45とに分配される。
【0067】
ここで、トルクリミッタ付きダンパ装置27をインプットシャフト28とフライホイール46との間に組み付ける場合には、摩擦材67が摩擦プレート71および皿ばね72と共にプレート69A、69Bの間に挟持されるようにしてダンパ部61とリミッタ部62とが組み付けられる。
【0068】
このため、ダンパ部61とリミッタ部62との組み付け精度が悪いと、ダンパ部61がリミッタ部62に対して正規の取付け位置からダンパ部61の放射方向に位置ずれしてしまい、インプットシャフト28が回転するときに、トルクリミッタ付きダンパ装置27がインプットシャフト28の軸線方向に対して直交する方向に偏心回転してしまう。
【0069】
このとき、トルクリミッタ付きダンパ装置27の偏心荷重がインプットシャフト28に伝達され、この偏心荷重がニードルベアリング55から中空支持部25cに伝達されてしまうとともに、リングギヤ23Rの反力がボールベアリング53を介して環状支持部25bに伝達されてしまう。
【0070】
これに対して、本実施の形態では、インプットシャフト28をケース25の中空支持部25cに支持するニードルベアリング55と、中空支持部25cの外周部に形成されたケース25の環状支持部25bにリングギヤ23Rの内周部を支持するボールベアリング53との回転中心を、インプットシャフト28の軸線方向に離隔させた。
このため、図3において、トルクリミッタ付きダンパ装置27の偏心荷重が、例えば、時計回転方向にインプットシャフト28に加わった場合に、ニードルベアリング55を介して中空支持部25cが受ける偏心荷重(矢印P3で示す)とボールベアリング53を介して環状支持部25bが受けるリングギヤ23Rの反力(矢印P4で示す)をインプットシャフト28の軸線方向に分散することができ、中空支持部25cおよび環状支持部25bの変形を抑制することができる。
【0071】
また、ニードルベアリング55を回転中心軸の軸線方向中央部をケース25の壁部25dの軸線上に位置させることにより、ニードルベアリング55の軸線方向中央部とケース25の壁部25dとを軸方向に偏心させないようにすることができる。
このため、トルクリミッタ付きダンパ装置27の偏心荷重によって中空支持部25cおよび環状支持部25bに従来のような回転モーメントM1(仮想線で示す)が加わるのを抑制することができ、中空支持部25cおよび環状支持部25bが変形するのを抑制することができる。
【0072】
このように、本実施の形態では、中空支持部25cおよび環状支持部25bが変形するのを抑制することができるため、動力分配装置22を構成する遊星歯車機構の噛み合いが悪化するのを防止することができ、トランスアクスルのNV性能および耐久性が悪化するのを防止することができる。
【0073】
また、中空支持部25cが変形するのを抑制することができるため、インプットシャフト28を安定して中空支持部25cに支持することができるとともに、中空支持部25cおよび環状支持部25bの強度を高めるのを不要にしてトランスアクスルの軽量化を図ることができ、トランスアクスルの製造コストが増大するのを防止することができる。
【0074】
また、本実施の形態では、環状支持部25bを、ニードルベアリング55に対してインプットシャフト28の軸線方向に離隔するように壁部25dからインプットシャフト28の軸線方向に沿って突出させたので、ニードルベアリング55を壁部25dの軸線上に位置させつつ、ボールベアリング53をニードルベアリング55に対してインプットシャフト28の軸線方向に離隔させることができる。
【0075】
また、本実施の形態では、エンジン21のクランク軸26に連結されるインプットシャフト28と同軸のモータ軸31を有するモータジェネレータM1と、モータ軸31と平行に設けられたモータ軸33を有するモータジェネレータM2とを有し、動力分配装置22を構成する遊星歯車機構が、モータジェネレータM1に回転自在に取付けられたサンギヤ23Sと、インプットシャフト28に連結されたキャリア23Cと、ギヤ列36を介してドライブシャフト37とモータジェネレータM2とに連結されるリングギヤ23Rとを有し、リングギヤ23Rがカウンタドライブギヤ35と一体的に設けられ、カウンタドライブギヤ35がギヤ列36を介してモータジェネレータM2のモータ軸33およびドライブシャフト37に連結されるように構成される。
【0076】
そして、本実施の形態では、遊星歯車機構の噛み合いが悪化するのを防止することができるため、動力分配装置22を介してエンジン21、モータジェネレータM1、モータジェネレータM2およびドライブシャフト37との間で動力を円滑に伝達することができる。
【0077】
また、本実施の形態では、リングギヤ23Rとカウンタドライブギヤ35とを一体的に設けたので、トランスアクスルを小型化することができる。
【0078】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0079】
以上のように、本発明に係る動力伝達装置は、ダンパ機構の偏心荷重が入力軸に加わった場合に、中空支持部および環状支持部が変形するのを抑制して、遊星歯車機構の噛み合いの悪化によるNV性能および耐久性の悪化を防止することができるという効果を有し、遊星歯車機構のリングギヤと、内燃機関からトルクリミッタ付きのダンパ装置を介して動力が伝達される入力軸とが同一のケースに軸受を介して支持される動力伝達装置等として有用である。
【符号の説明】
【0080】
21 エンジン(内燃機関)
22 動力分配装置(動力伝達機構)
23C キャリア
23R リングギヤ
23S サンギヤ
25 ケース
25b 環状支持部
25c 中空支持部
25d 壁部
27 トルクリミッタ付きダンパ装置(ダンパ機構)
28 インプットシャフト(入力軸)
28A 突出部
31 モータ軸(第1の回転軸)
33 モータ軸(第2の回転軸)
37 ドライブシャフト(駆動軸、所定の構成要素)
53 ボールベアリング(第2の軸受)
55 ニードルベアリング(第1の軸受)
61 ダンパ部
62 リミッタ部
MG1 モータジェネレータ(第1の電動機)
MG2 モータジェネレータ(第2の電動機、所定の構成要素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達装置のケースの中空支持部に第1の軸受を介して回転自在に支持された入力軸と、
前記中空支持部から外方に突出する前記入力軸の突出部に取付けられ、前記入力軸と内燃機関の出力軸との間に生ずる変動トルクを弾性力によって吸収するダンパ部、および前記出力軸と前記ダンパ部の間に介装され、前記変動トルクが所定値を超えたときに前記ダンパ部に対して相対回転するリミッタ部を有するダンパ機構と、
前記入力軸を取り囲むようにして設けられ、前記出力軸から前記入力軸に伝達された動力を前記動力伝達装置の所定の構成要素に伝達するリングギヤを有する遊星歯車機構とを備え、
前記ケースが、前記中空支持部の外周部から前記入力軸と略直交する方向に延在する軸線を有する壁部を有し、前記リングギヤの内周部が前記壁部に設けられた環状支持部に第2の軸受を介して回転自在に支持された動力伝達装置であって、
前記第1の軸受と前記第2の軸受との回転中心軸を前記入力軸の軸線方向に離隔させるとともに、前記第1の軸受の回転中心軸の軸線方向中央部を前記壁部の軸線上に位置させるようにしたことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記環状支持部が、前記第1の軸受に対して前記入力軸の軸線方向に離隔するように前記壁部から前記入力軸の軸線方向に沿って突出することを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記入力軸と同軸の第1の回転軸を有する第1の電動機と、前記第1の回転軸と平行に設けられた第2の回転軸を有する第2の電動機とを有し、
前記遊星歯車機構が、前記第1の回転軸に取付けられたサンギヤと、前記入力軸に連結されたキャリアと、動力伝達部を介して車軸と前記第2の電動機とに連結される前記リングギヤとを有し、
前記リングギヤがカウンタドライブギヤと一体的に設けられ、前記カウンタドライブギヤが前記動力伝達部を介して前記第2の回転軸および前記車軸に連結されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−137115(P2012−137115A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288082(P2010−288082)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】