説明

動力出力装置およびその制御方法並びに車両

【課題】アクセルオフ時に生じ得る蓄電装置の過大な電力による放電を抑制する。
【解決手段】アクセル急減時には、時定数T1の緩変化処理により設定された要求トルクTr*とエンジンを効率よく運転する動作ラインとを用いてエンジンの目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定すると共に(S110〜S140)、時定数T1より小さな時定数T2を用いた緩変化処理により制御用トルクT*を設定し(S170)、目標回転数Ne*と目標トルクTe*でエンジンが運転されると共に制御用トルクT*がバッテリの入出力制限Win,Woutの範囲内で駆動軸に出力されるようモータトルク指令Tm1*,Tm2*を設定して制御する(S180〜S240)。これにより、制御状態を入力制限Winに近い電力によりバッテリを充電する状態とし、モータの制御モードが移行するときに生じ得る過大な電力によるバッテリの放電を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力出力装置およびその制御方法並びに車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の動力出力装置としては、エンジンと、エンジンの出力軸にキャリアが接続されると共に車軸側にリングギヤが接続されたプラネタリギヤと、プラネタリギヤのサンギヤに接続されたモータMG1と、車軸側に動力を出力するモータMG2と、二つのモータMG1,MG2と電力のやりとりを行なうバッテリとを備える車載用の装置であって、モータMG1,MG2の制御モードとして変調率が値1以下の正弦波制御モードと変調率が値1を超える過変調制御モードと矩形波信号による矩形波制御モードとを切り替える際には通常時より小さな時定数のなまし処理を行なうものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、これにより、バッテリの入出力許容制限を迅速に変化させ、モータMG1,MG2の制御モードが変更された際に生じ得るバッテリの過大な電力による充放電を抑制している。
【特許文献1】特開2006−174567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の動力出力装置では、アクセルを大きく踏み込んだ状態から急にアクセルオフするまで戻すと、エンジンの急激な出力変化と二つのモータMG1,MG2の制御モードの切り替えとが重なり、モータMG1,MG2の制御モードの切り替えの際のトルクの乱れにより、短時間ではあるが過大な電力によりバッテリを放電する場合が生じる。
【0004】
本発明の動力出力装置およびその制御方法並びに車両は、アクセルオフ時に生じ得るバッテリなどの蓄電装置の過大な電力による放電を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の動力出力装置およびその制御方法並びに車両は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の動力出力装置は、
駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
内燃機関と、
動力を入出力する発電機と、
前記駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され、該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、
前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、
前記発電機および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、
前記蓄電手段の状態に基づいて該蓄電手段を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限を設定する入出力制限設定手段と、
アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、
前記検出されたアクセル操作量に対して第1の緩変化処理を伴って要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、
前記設定された要求駆動力を前記駆動軸に出力するのに必要な要求パワーが所定の制約に基づいて前記内燃機関から出力されるように前記内燃機関の目標運転ポイントを設定する目標運転ポイント設定手段と、
前記アクセル操作量が比較的大きな所定操作量から急に値0とされるアクセル操作量急減時ではないときには前記設定された入出力制限の範囲内で前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されて前記設定された要求駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、前記アクセル操作量急減時であるときには前記設定された入出力制限の範囲内で前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されて前記検出されたアクセル操作量に対して前記第1の緩変化処理より大きく変化する第2の緩変化処理を伴って求められる駆動力である急減時駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の動力出力装置では、アクセル操作量が比較的大きな所定操作量から急に値0とされるアクセル操作量急減時ではないときには、蓄電手段の入出力制限の範囲内で目標運転ポイントで内燃機関が運転されてアクセル操作量に対して第1の緩変化処理を伴って設定した要求駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御し、アクセル操作量急減時であるときには、蓄電手段の入出力制限の範囲内で目標運転ポイントで内燃機関が運転されてアクセル操作量に対して第1の緩変化処理より大きく変化する第2の緩変化処理を伴って求められる駆動力である急減時駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する。即ち、アクセル操作量急減時ではないときにはアクセル操作量に対して第1の緩変化処理を伴って設定した要求駆動力が駆動軸に出力されるよう発電機と電動機とを制御し、アクセル操作量急減時であるときにはアクセル操作量に対して第1の緩変化処理より大きく変化する第2の緩変化処理を伴って求められる急減時駆動力が駆動軸に出力されるよう発電機と電動機とを制御するのである。アクセル急減時であるから、急減時駆動力は要求駆動力より小さくなり、これにより、アクセル操作量急減時に生じ得る蓄電手段の過大な電力による放電を抑制することができる。
【0008】
こうした本発明の動力出力装置において、前記制御手段は、前記発電機および前記電動機の少なくとも一方を、変調率が値1以下の正弦波制御モードと変調率が値1を超える過変調制御モードと矩形波信号による矩形波制御モードとを切り替えて制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、アクセル操作量急減時に発電機や電動機の制御モードを切り替える際に生じ得るトルクの乱れに伴う蓄電手段の過大な電力による放電を抑制することができる。
【0009】
また、本発明の動力出力装置において、前記制御手段は、前記アクセル操作量急減時ではないときには前記設定された入出力制限の範囲内で前記設定された目標運転ポイントにおける回転数で前記内燃機関が回転するよう前記発電機を制御すると共に該発電機の制御と前記内燃機関の制御により前記駆動軸に作用する駆動力と前記要求駆動力との差の駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記電動機を制御し、前記アクセル操作量急減時であるときには前記設定された入出力制限の範囲内で前記設定された目標運転ポイントにおける回転数で前記内燃機関が回転するよう前記発電機を制御すると共に該発電機の制御と前記内燃機関の制御により前記駆動軸に作用する駆動力と前記急減時駆動力との差の駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記電動機を制御する手段であるものとすることもできる。
【0010】
さらに、本発明の動力出力装置において、前記第1の緩変化処理は第1の時定数を用いた緩変化処理であり、前記第2の緩変化処理は前記第1の時定数より小さな第2の時定数を用いた緩変化処理である、ものとすることもできる。こうすれば、容易に第2の緩変化処理を第1の緩変化処理より大きく変化する処理とすることができる。この他、緩変化処理としてレート処理を用いる場合には、第1の緩変化処理については第1のレート値を用いたレート処理とし、第2の緩変化処理としては第1のレート値より大きな第2のレート値を用いたレート処理とすることもできる。
【0011】
本発明の車両は、上述のいずれかの態様の本発明の動力出力装置、即ち、基本的には、駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、内燃機関と、動力を入出力する発電機と、前記駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され、該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、前記蓄電手段の状態に基づいて該蓄電手段を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限を設定する入出力制限設定手段と、アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、前記検出されたアクセル操作量に対して第1の緩変化処理を伴って要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、前記設定された要求駆動力を前記駆動軸に出力するのに必要な要求パワーが所定の制約に基づいて前記内燃機関から出力されるように前記内燃機関の目標運転ポイントを設定する目標運転ポイント設定手段と、前記アクセル操作量が比較的大きな所定操作量から急に値0とされるアクセル操作量急減時ではないときには前記設定された入出力制限の範囲内で前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されて前記設定された要求駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、前記アクセル操作量急減時であるときには前記設定された入出力制限の範囲内で前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されて前記検出されたアクセル操作量に対して前記第1の緩変化処理より大きく変化する第2の緩変化処理を伴って求められる駆動力である急減時駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する制御手段と、を備える動力出力装置を搭載し、車軸が前記駆動軸に連結されてなることを要旨とする。
【0012】
本発明の車両では、上述のいずれかの態様の本発明の動力出力装置を搭載するから、本発明の動力出力装置が奏する効果、例えば、アクセル操作量急減時に生じ得る蓄電手段の過大な電力による放電を抑制することができる効果などと同様の効果を奏することができる。
【0013】
本発明の動力出力装置の制御方法は、
内燃機関と、動力を入出力する発電機と、駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を備える動力出力装置の制御方法であって、
(a)前記蓄電手段の状態に基づいて該蓄電手段を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限を設定し、
(b)アクセル操作量に対して第1の緩変化処理を伴って要求駆動力を設定し、
(c)前記設定した要求駆動力を前記駆動軸に出力するのに必要な要求パワーが所定の制約に基づいて前記内燃機関から出力されるように前記内燃機関の目標運転ポイントを設定し、
(d)前記アクセル操作量が比較的大きな所定操作量から急に値0とされるアクセル操作量急減時ではないときには前記設定した入出力制限の範囲内で前記設定した目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されて前記設定した要求駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、前記アクセル操作量急減時であるときには前記設定した入出力制限の範囲内で前記設定した目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されて前記アクセル操作量に対して前記第1の緩変化処理より大きく変化する第2の緩変化処理を伴って求められる駆動力である急減時駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する、
ことを特徴とする。
【0014】
この本発明の動力出力装置の制御方法では、アクセル操作量が比較的大きな所定操作量から急に値0とされるアクセル操作量急減時ではないときには、蓄電手段の入出力制限の範囲内で目標運転ポイントで内燃機関が運転されてアクセル操作量に対して第1の緩変化処理を伴って設定した要求駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御し、アクセル操作量急減時であるときには、蓄電手段の入出力制限の範囲内で目標運転ポイントで内燃機関が運転されてアクセル操作量に対して第1の緩変化処理より大きく変化する第2の緩変化処理を伴って求められる駆動力である急減時駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する。即ち、アクセル操作量急減時ではないときにはアクセル操作量に対して第1の緩変化処理を伴って設定した要求駆動力が駆動軸に出力されるよう発電機と電動機とを制御し、アクセル操作量急減時であるときにはアクセル操作量に対して第1の緩変化処理より大きく変化する第2の緩変化処理を伴って求められる急減時駆動力が駆動軸に出力されるよう発電機と電動機とを制御するのである。アクセル急減時であるから、急減時駆動力は要求駆動力より小さくなり、これにより、アクセル操作量急減時に生じ得る蓄電手段の過大な電力による放電を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の一実施例である動力出力装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、動力出力装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0017】
エンジン22は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射して吸入された空気とガソリンとを混合し、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化装置(三元触媒)134を介して外気へ排出される。
【0018】
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24は、CPU24aを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU24aの他に処理プログラムを記憶するROM24bと、データを一時的に記憶するRAM24cと、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温,燃焼室内に取り付けられた圧力センサ143からの筒内圧力Pin,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ146からのスロットルポジション,吸気管に取り付けられたエアフローメータ148からのエアフローメータ信号AF,同じく吸気管に取り付けられた温度センサ149からの吸気温,空燃比センサ135aからの空燃比AF,酸素センサ135bからの酸素信号などが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号、例えば、燃料噴射弁126への駆動信号や、スロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号、イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号、吸気バルブ128の開閉タイミングの変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。なお、エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0019】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0020】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0021】
バッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池として構成されており、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された電圧センサ51aからのバッテリ電圧Vb,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた電流センサ51bからの充放電電流Ib,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51cからの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサ51bにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。図3に電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示し、図4にバッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す。
【0022】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0023】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0024】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。図5はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0025】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Woutなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、エンジン22の回転数Neはクランクポジションセンサ140からの信号に基づいて演算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。さらに、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
【0026】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき仮トルクTtmpを設定すると共に(ステップS110)、設定した仮トルクTtmpと前回このルーチンが実行されたときに設定された要求トルクTr*(以下、前回要求トルクTr*という。)とに対して時定数T1を用いた緩変化処理(例えば、なまし処理など)を施して前回要求トルクTr*から仮トルクTtmpに近づくよう要求トルクTr*を設定する(ステップS120)。ここで、仮トルクTtmpは、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと仮トルクTtmpとの関係を予め定めて仮トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する仮トルクTtmpを導出して設定するものとした。図6に仮トルク設定用マップの一例を示す。仮トルクTtmpに緩変化処理を施して要求トルクTr*を設定するのは、要求トルクTr*の急変に対するエンジン22の応答遅れが大きくなりすぎることによりバッテリ50を過大な電力で充放電したり制御に破綻が生じたりしないようにするためである。したがって、時定数T1は、エンジン22の応答遅れを考慮して設定することができる。
【0027】
こうして要求トルクTr*を設定すると、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和としてエンジン22に要求される要求パワーPe*を設定し(ステップS130)、設定した要求パワーPe*に基づいてエンジン22を運転すべき運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS140)。目標回転数Ne*と目標トルクTe*との設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと要求パワーPe*とに基づいて行なわれる。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図7に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。なお、要求パワーPe*を設定する際に用いるリングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じること(Nr=k・V)によって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ること(Nr=Nm2/Gr)によって求めることができる。
【0028】
続いて、アクセル開度Accが比較的大きな値からアクセルオフされたアクセル急減時であるか否かを判定し(ステップS150)、アクセル急減時ではないときには、制御用トルクT*として要求トルクTr*を設定する(ステップS160)。
【0029】
次に、エンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とに基づいて式(2)によりモータMG1から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm1tmpを計算する(ステップS180)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図8に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0030】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/ρ (1)
Tm1tmp=ρ・Te*/(1+ρ)+k1(Nm1*-Nm1)+k2∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
【0031】
続いて、式(3)および式(4)を共に満たすモータMG1から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm1min,Tm1maxを設定し(ステップS190)、設定した仮トルクTm1tmpを式(5)によりトルク制限Tm1min,Tm1maxで制限してモータMG1のトルク指令Tm1*を設定する(ステップ200)。ここで、式(3)はモータMG1やモータMG2によりリングギヤ軸32aに出力されるトルクの総和が値0から制御用トルクT*までの範囲内となる関係であり、式(4)はモータMG1とモータMG2とにより入出力される電力の総和が入出力制限Win,Woutの範囲内となる関係である。トルク制限Tm1min,Tm1maxの一例を図9に示す。トルク制限Tm1min,Tm1maxは、図中斜線で示した領域内のトルク指令Tm1*の最大値と最小値として求めることができる。
【0032】
0≦−Tm1/ρ+Tm2・Gr≦T* (3)
Win≦Tm1・Nm1+Tm2・Nm2≦Wout (4)
Tm1*=max(min(Tm1tmp,Tm1max),Tm1min) (5)
【0033】
そして、制御用トルクT*に設定したトルク指令Tm1*を動力分配統合機構30のギヤ比ρで除したものを加えて更に減速ギヤ35のギヤ比Grで除してモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpを次式(6)により計算すると共に(ステップS210)、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと設定したトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを次式(7)および式(8)により計算すると共に(ステップS220)、設定した仮トルクTm2tmpを式(9)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS230)。ここで、式(6)は、図8の共線図から容易に導くことができる。
【0034】
Tm2tmp=(T*+Tm1*/ρ)/Gr (6)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (7)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (8)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (9)
【0035】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS240)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でエンジン22を効率よく運転して駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*をそのまま設定した制御用トルクT*を出力して走行することができる。
【0036】
ステップS150でアクセル急減時であると判定されると、設定した仮トルクTtmpと前回このルーチンが実行されたときに設定された制御用トルクT*(以下、前回制御用トルクT*という。)とに対して要求トルクTr*を設定したときに用いた時定数T1より小さな値の時定数T2を用いた緩変化処理(例えば、なまし処理など)を施して前回制御用トルクT*から仮トルクTtmpに近づくよう制御用トルクT*を設定し(ステップS170)、設定した制御用トルクT*がバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるよう上述したステップS180〜S230の処理によりモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定し、目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、トルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS240)、駆動制御ルーチンを終了する。時定数T2を用いて設定した制御用トルクT*は、時定数T2がアクセル急減時ではないときの時定数T1より小さいことから、アクセル急減時ではないときの制御用トルクT*に比して増減のスピード(変化の早さ)が大きいものとなる。アクセル開度Accをステップ応答的に減少したときのアクセル急減時の制御用トルクT*の時間変化とアクセル急減時ではないときの制御用トルクT*の時間変化の一例を図10に示す。図中、実線がアクセル急減時の制御用トルクT*であり、破線がアクセル急減時ではないときの制御用トルクT*である。図示するように、小さな時定数T2を用いて設定した制御用トルクT*は、大きな時定数T1を用いて設定した制御用トルクT*に比して迅速に低下する。一方、エンジン22に要求される要求パワーPe*は、時定数T1を用いた緩変化処理により設定された要求トルクTr*によって設定されているから、アクセル急減時では、エンジン22の運転ポイント(目標回転数Ne*,目標トルクTe*)の応答性は制御用トルクT*の応答性に比して低いものとなる。このため、エンジン22からは制御用トルクT*に対応するパワーより大きいパワーが出力されることになり、その差分のパワーでバッテリ50を充電することになる。バッテリ50を充電する電力は、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*がバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で設定されることを考えると、バッテリ50の入力制限Winに近いものとなる。この状態について更に説明する。
【0037】
実施例のハイブリッド自動車20のモータECU40では、モータMG1,MG2を、その回転数と出力するトルクとに応じて、回転数およびトルクが小さい領域から順に、変調率が値1以下の正弦波制御モード,変調率が値1を超える過変調制御モード,矩形波信号による矩形波制御モードを切り替えて制御している。モータ回転数および出力トルクと制御モードとの関係の一例を図11に示す。アクセル急減時では、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべきトルクが急減するため、エンジン22の要求パワーPe*も急減し、エンジン22の目標回転数Ne*も急減する。このため、モータMG1については、アクセル急減時の直前では比較的大きな回転数で大きなトルクを出力しているが、アクセル急減時には急激に回転数と出力トルクを低下させることになる。図11中の矢印線がモータMG1の駆動状態の変化の様子を示している。このとき、モータMG1の制御モードは、矩形波制御モードから短時間のうちに過変調制御モードを介して正弦波制御モードに移行する。このとき、モータMG1の出力トルクに乱れが生じる場合があり、このトルクの乱れにより短時間ではあるが予期しないモータMG1による比較的大きな電力消費が行なわれる場合が生じる。中速以上の車速におけるアクセル急減時では、モータMG2についても、アクセル急減時の直前では比較的大きな回転数で大きなトルクを出力しているが、アクセル急減時には急激に回転数と出力トルクを低下させることになり、モータMG2の制御モードも、モータMG1と同様に、矩形波制御モードから短時間のうちに過変調制御モードを介して正弦波制御モードに移行し、制御モードの移行時に生じるトルクも乱れに伴う予期しない短時間のモータMG2による電力消費が行なわれる場合が生じる。実施例では、アクセル急減時の制御状態としてはバッテリ50を入力制限Winに近い電力で充電する状態としているから、モータMG1やモータMG2の制御モードの移行に伴う短時間の電力消費が生じても、この電力消費を出力制限Woutの範囲内のバッテリ50からの放電で賄うことができる。即ち、アクセル急減時には小さな時定数T2を用いて設定される制御用トルクT*を用いて動力出力装置の制御状態を入力制限Winに近い電力でバッテリ50が充電される状態とすることにより、モータMG1やモータMG2の制御モードの移行に伴う短時間の電力消費が生じても、過大な電力によるバッテリ50の放電を抑制することができるのである。アクセル急減時のアクセル開度Accと動力出力装置の制御状態とモータMG1,MG2の制御モードとバッテリ50を入出力する実際の電力(実電力)の時間変化の一例を図12に示す。図示するように、動力出力装置の制御状態を入力制限Winの電力によりバッテリ50を充電する状態とすることにより、モータMG1,MG2の制御モードが移行するときにモータMG1,MG2による短時間の電力消費が生じても過大な電力によるバッテリ50の放電を抑止することができる。
【0038】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、アクセル急減時には、時定数T1の緩変化処理により設定された要求トルクTr*とエンジン22を効率よく運転する動作ラインとを用いてエンジン22の運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定すると共に要求トルクTr*の設定に用いる緩変化処理の時定数T1より小さな時定数T2を用いた緩変化処理により制御用トルクT*を設定し、目標回転数Ne*と目標トルクTe*との運転ポイントでエンジン22が運転されると共に制御用トルクT*がバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2を制御して、動力出力装置の制御状態を入力制限Winに近い電力によりバッテリ50を充電する状態とすることにより、モータMG1,MG2の制御モードが移行するときにモータMG1,MG2による短時間の電力消費が生じても、過大な電力によるバッテリ50の放電を抑制することができる。もとより、アクセル急減時ではないときには要求トルクTr*がそのまま設定された制御用トルクT*がバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1,MG2を制御するから、バッテリ50を過充電したり過放電したりすることなく要求トルクTr*をリングギヤ軸32aに出力して走行することができる。
【0039】
実施例のハイブリッド自動車20では、要求トルクTr*を設定するのに時定数T1の緩変化処理(例えば、なまし処理)を用い、アクセル急減時の制御用トルクT*を設定するのに時定数T1より小さい時定数T2の緩変化処理(例えば、なまし処理)を用いたが、緩変化処理として「なまし処理」以外の処理、例えばレート処理などを用いるものとしてもよい。緩変化処理としてレート処理を用いる場合、アクセル急減時の制御用トルクT*を設定するときに用いるレート値を要求トルクTr*を設定するときに用いるレート値より大きい値とすればよい。
【0040】
実施例のハイブリッド自動車20では、上述した式(3),(4)を満たす範囲内でモータMG1の仮トルクTm1tmpを制限するトルク制限Tm1min,Tm1maxを求めてモータMG1のトルク指令Tm1*を設定すると共に式(7),(8)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxを求めてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定したが、式(3),(4)を満たす範囲内によるトルク制限Tm1min,Tm1maxの制限を受けることなく仮トルクTm1tmpをそのままモータMG1のトルク指令Tm1*として設定すると共にこのトルク指令Tm1*を用いて式(7),(8)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxを求めてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定するものとしても構わない。この他、モータMG2の回転数Nm2や予想モータ回転数Nm2estを用いてバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定するものであれば、如何なる手法を用いるものとしても構わない。
【0041】
実施例のハイブリッド自動車20では、減速ギヤ35を介して駆動軸としてのリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしたが、リングギヤ軸32aにモータMG2を直接取り付けるものとしてもよいし、減速ギヤ35に代えて2段変速や3段変速,4段変速などの変速機を介してリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしても構わない。
【0042】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図13の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図13における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
【0043】
また、こうしたハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、自動車以外の車両や船舶,航空機などの移動体に搭載される動力出力装置の形態や建設設備などの移動しない設備に組み込まれた動力出力装置の形態としても構わない。さらに、こうした動力出力装置の制御方法の形態としてもよい。
【0044】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当する。モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当し、電流センサ51bにより検出された充放電電流の積算値に基づくバッテリ50の残容量(SOC)とバッテリ50の電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算するバッテリECU52が「入出力制限設定手段」に相当し、アクセルペダルポジションセンサ84が「アクセル操作量検出手段」に相当し、アクセル開度Accと車速Vとに基づく仮トルクTtmpと前回の要求トルクTr*とに時定数T1の緩変化処理を施して要求トルクTr*を設定する図5の駆動制御ルーチンのステップS110,S120の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「要求駆動力設定手段」に相当し、要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和としてエンジン22に要求される要求パワーPe*を設定すると共に要求パワーPe*とエンジン22を効率よく運転する動作ラインとに基づいてエンジン22を運転すべき運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する図5の駆動制御ルーチンのステップS130,S140の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「目標運転ポイント設定手段」に相当し、アクセル急減時ではないときには、時定数T1の緩変化処理により設定された要求トルクTr*とエンジン22を効率よく運転する動作ラインとを用いて設定された目標回転数Ne*と目標トルクTe*の運転ポイントでエンジン22が運転されると共に要求トルクTr*をそのまま設定した制御用トルクT*がバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定し、設定した目標回転数Ne*,目標トルクTe*,トルク指令Tm1*,Tm2*をエンジンECU24とモータECU40とに送信し、アクセル急減時には、時定数T1の緩変化処理により設定された要求トルクTr*とエンジン22を効率よく運転する動作ラインとを用いて設定された目標回転数Ne*と目標トルクTe*の運転ポイントでエンジン22が運転されると共に要求トルクTr*の設定に用いる緩変化処理の時定数T1より小さな時定数T2を用いた緩変化処理により設定された制御用トルクT*がバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定し、設定した目標回転数Ne*,目標トルクTe*,トルク指令Tm1*,Tm2*をエンジンECU24とモータECU40とに送信する図5の駆動制御ルーチンのステップS150〜S240の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてエンジン22を制御するエンジンECU24とトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するモータECU40とが「制御手段」に相当する。ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力するものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる差動作用を有するものなど、駆動軸と内燃機関の出力軸と発電機の回転軸との3軸に接続され3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「蓄電手段」としては、二次電池としてのバッテリ50に限定されるものではなく、キャパシタなど、発電機や電動機と電力のやりとりが可能であれば如何なるものとしても構わない。「入出力制限設定手段」としては、バッテリ50の残容量(SOC)とバッテリ50の電池温度Tbとに基づいて入出力制限Win,Woutを演算するものに限定されるものではなく、残容量(SOC)や電池温度Tbの他に例えばバッテリ50の内部抵抗などに基づいて演算するものなど、蓄電手段の状態に基づいて蓄電手段を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「アクセル操作量検出手段」としては、アクセルペダルポジションセンサ84に限定されるものではなく、アクセルペダル83に代えてアクセルレバーを備える装置ではアクセルレバーポジションセンサとするなど、アクセル操作量を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「要求駆動力設定手段」としては、アクセル開度Accと車速Vとに基づく仮トルクTtmpと前回の要求トルクTr*とに時定数T1の緩変化処理を施して要求トルクTr*を設定するものに限定されるものではなく、アクセル開度Accだけに基づく仮トルクと前回の要求トルクTr*とに時定数T1の緩変化処理を施して要求トルクTr*を設定するものとするなど、アクセル操作量に対して第1の緩変化処理を伴って要求駆動力を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「目標運転ポイント設定手段」としては、要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和としてエンジン22に要求される要求パワーPe*を設定すると共に要求パワーPe*とエンジン22を効率よく運転する動作ラインとに基づいてエンジン22を運転すべき運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定するものに限定されるものではなく、エンジン22を効率よく運転する動作ラインに代えてエンジン22から大きなトルクを出力する動作ラインを用いるなど、要求駆動力を駆動軸に出力するのに必要な要求パワーが所定の制約に基づいて内燃機関から出力されるように内燃機関の目標運転ポイントを設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、アクセル急減時ではないときには、時定数T1の緩変化処理により設定された要求トルクTr*とエンジン22を効率よく運転する動作ラインとを用いて設定された目標回転数Ne*と目標トルクTe*の運転ポイントでエンジン22が運転されると共に要求トルクTr*をそのまま設定した制御用トルクT*がバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御し、アクセル急減時には、時定数T1の緩変化処理により設定された要求トルクTr*とエンジン22を効率よく運転する動作ラインとを用いて設定された目標回転数Ne*と目標トルクTe*の運転ポイントでエンジン22が運転されると共に要求トルクTr*の設定に用いる緩変化処理の時定数T1より小さな時定数T2を用いた緩変化処理により設定された制御用トルクT*がバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するものに限定されるものではなく、緩変化処理としてレート処理を用いて要求トルクTr*や制御用トルクT*を設定するものとするなど、アクセル操作量が比較的大きな所定操作量から急に値0とされるアクセル操作量急減時ではないときには蓄電手段の入出力制限の範囲内で目標運転ポイントで内燃機関が運転されて要求駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御し、アクセル操作量急減時であるときには蓄電手段の入出力制限の範囲内で目標運転ポイントで内燃機関が運転されてアクセル操作量に対して第1の緩変化処理より大きく変化する第2の緩変化処理を伴って求められる駆動力である急減時駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0045】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、動力出力装置や車両の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】エンジン22の構成の概略を示す構成図である。
【図3】バッテリ50における電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示す説明図である。
【図4】バッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す説明図である。
【図5】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図6】仮トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図7】エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を示す説明図である。
【図8】エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図9】トルク制限Tm1min,Tm1maxを設定する様子を説明する説明図である。
【図10】アクセル開度Accをステップ応答的に減少したときのアクセル急減時の制御用トルクT*の時間変化とアクセル急減時ではないときの制御用トルクT*の時間変化の一例を示す説明図である。
【図11】モータ回転数および出力トルクと制御モードとの関係の一例を示す説明図である。
【図12】アクセル急減時のアクセル開度Accと動力出力装置の制御状態とモータMG1,MG2の制御モードとバッテリ50を入出力する実際の電力(実電力)の時間変化の一例を示す説明図である。
【図13】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0048】
20,120 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、24a CPU、24b ROM、24c RAM、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51a 電圧センサ、51b 電流センサ、51c 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、135a 空燃比センサ、135b 酸素センサ、136 スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、143 圧力センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
内燃機関と、
動力を入出力する発電機と、
前記駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され、該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、
前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、
前記発電機および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、
前記蓄電手段の状態に基づいて該蓄電手段を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限を設定する入出力制限設定手段と、
アクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、
前記検出されたアクセル操作量に対して第1の緩変化処理を伴って要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、
前記設定された要求駆動力を前記駆動軸に出力するのに必要な要求パワーが所定の制約に基づいて前記内燃機関から出力されるように前記内燃機関の目標運転ポイントを設定する目標運転ポイント設定手段と、
前記アクセル操作量が比較的大きな所定操作量から急に値0とされるアクセル操作量急減時ではないときには前記設定された入出力制限の範囲内で前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されて前記設定された要求駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、前記アクセル操作量急減時であるときには前記設定された入出力制限の範囲内で前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されて前記検出されたアクセル操作量に対して前記第1の緩変化処理より大きく変化する第2の緩変化処理を伴って求められる駆動力である急減時駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備える動力出力装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記発電機および前記電動機の少なくとも一方を、変調率が値1以下の正弦波制御モードと変調率が値1を超える過変調制御モードと矩形波信号による矩形波制御モードとを切り替えて制御する手段である請求項1記載の動力出力装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記アクセル操作量急減時ではないときには前記設定された入出力制限の範囲内で前記設定された目標運転ポイントにおける回転数で前記内燃機関が回転するよう前記発電機を制御すると共に該発電機の制御と前記内燃機関の制御により前記駆動軸に作用する駆動力と前記要求駆動力との差の駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記電動機を制御し、前記アクセル操作量急減時であるときには前記設定された入出力制限の範囲内で前記設定された目標運転ポイントにおける回転数で前記内燃機関が回転するよう前記発電機を制御すると共に該発電機の制御と前記内燃機関の制御により前記駆動軸に作用する駆動力と前記急減時駆動力との差の駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記電動機を制御する手段である請求項1または2記載の動力出力装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか記載の動力出力装置であって、
前記第1の緩変化処理は、第1の時定数を用いた緩変化処理であり、
前記第2の緩変化処理は、前記第1の時定数より小さな第2の時定数を用いた緩変化処理である、
動力出力装置。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか記載の動力出力装置を搭載し、車軸が前記駆動軸に連結されてなる車両。
【請求項6】
内燃機関と、動力を入出力する発電機と、駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を出力可能な電動機と、前記発電機および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を備える動力出力装置の制御方法であって、
(a)前記蓄電手段の状態に基づいて該蓄電手段を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限を設定し、
(b)アクセル操作量に対して第1の緩変化処理を伴って要求駆動力を設定し、
(c)前記設定した要求駆動力を前記駆動軸に出力するのに必要な要求パワーが所定の制約に基づいて前記内燃機関から出力されるように前記内燃機関の目標運転ポイントを設定し、
(d)前記アクセル操作量が比較的大きな所定操作量から急に値0とされるアクセル操作量急減時ではないときには前記設定した入出力制限の範囲内で前記設定した目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されて前記設定した要求駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、前記アクセル操作量急減時であるときには前記設定した入出力制限の範囲内で前記設定した目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されて前記アクセル操作量に対して前記第1の緩変化処理より大きく変化する第2の緩変化処理を伴って求められる駆動力である急減時駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する、
ことを特徴とする動力出力装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−254650(P2008−254650A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100701(P2007−100701)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】