説明

半導体ヘテロ構造及びその製造

第1半導体材料の結晶基板と、結晶基板の表面上に配置されるマスク(11)とを含む半導体ヘテロ構造(10)である。マスク(11)は、900nm以下の幅(w)を有する複数の細長い開口部(13,14)を含む開口(12)を有する。細長い開口部の少なくとも第1開口部(13)は、複数の細長い開口部のうちの少なくとも1つの第2開口部(14)に対して非平行に配向される。半導体ヘテロ構造(10)は、開口(12)を充填してマスクをカバーする第2半導体材料のオーバーグロース結晶層をさらに含む。かかる半導体ヘテロ構造の製造方法も提示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ヘテロ構造及びその製造に関する。
【背景技術】
【0002】
第III列及び第V列の材料からなる半導体化合物又は合金は、そのエネルギーバンドの形状に起因して、重要な電気的及び/又は光学的特性を有することが多い。それらの多くは、例えばInP及びその関連化合物、GaAs及びその関連化合物、並びにGaN及びその関連化合物は、直接バンドギャップ半導体である。直接バンドギャップ半導体は、材料に応じて、遠赤外線から紫外線までの広い発光スペクトルレンジを有し、例えば発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)、変調器、及び検出器のような様々な光学要素に適用される。さらに、それらは、高いキャリア移動度及び高い飽和速度ゆえに、電子要素への適合性も高い。シリコンは、その間接バンドギャップゆえに光学特性は良好ではない。しかし、シリコンがエレクトロニクス産業全体で広く使用されているのは、いくつかの理由による。シリコンは、電気特性及び機械特性がかなり良好なので、成熟した製造技術を有する。そのウェハサイズは大きく、それは比較的安価である。シリコン及びIII−V半導体双方を利用するには、これら2つの材料を組み合わせることが重要である。
【0003】
III−V材料をシリコン上に堆積させてシード層を形成することは、MOVPE、MBE、又は他の任意の関連技術のような従来型エピタキシャル技術により可能である。しかし、かかるシード層は、堆積された材料とシリコンとの相対的に大きな格子不整合ゆえに、なおも高密度の転位を含む。一般的な方法では、エピタキシャル横方向オーバーグロース(ELO)を使用してかかる転位を除去している。しかし、これまでのところ、この方法に使用されるマスクの開口はマイクロメートルのオーダである。かかる方法のほとんどは、シード層から開口直上の成長層中への転位の伝搬を有効に避けることができなかった。その結果、マスク領域の上方に成長した層は、転位密度が非均質であり、マスク上方のELO層と比較して、開口上に非常に大きい転位密度を含んでいた。
【0004】
1つの例が、特許文献1に見出される。ここでは、パターンマスクを使用して作られた成長領域から開始することによってIII−V族化合物半導体層を基板上に成長させた。異なる成長領域からのファセット構造がともに成長して相対的に厚いカバー層を形成することができた。ここで、転位はファセットに追従することによってある程度低減された。しかし、成長層は相対的に厚く、異なるファセットが出会う領域においては転位が依然見られた。
【0005】
特許文献2においては、半導体ヘテロ構造及び製造方法が提示された。開口を備えるマスクが、当該開口内での成長中に貫通転位が減少する配向で基板の上方に配置された。狭く相対的に深い開口が好ましく、基板の結晶学的方向に対して45°の方向が好ましかった。しかし、異なるオーバーグロース領域が出会うときに深刻な格子欠陥が生じることが短所であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0066403号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/125040号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0099781号
【特許文献4】明細書米国特許出願公開第2006/0266281号明細書
【特許文献5】国際公開第2006/035212号パンフレット
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、転位密度が低く一般的に均質な半導体ヘテロ構造を与えることにある。さらなる目的は、かかる半導体ヘテロ構造であって、オーバーグロース層厚さが薄いものを与えることにある。
【0008】
上記目的は、添付の特許請求の範囲に係る方法及び装置によって実現される。一般に、第1の側面によれば、半導体ヘテロ構造は、第1半導体材料の結晶基板と、結晶基板の表面上に配置されたマスクとを含む。マスクは、900nm以下の幅の複数の細長い開口部を含む開口を有する。複数の細長い開口部のうちの少なくとも1つの第1開口部は、複数の細長い開口部のうちの少なくとも1つの第2開口部に対して非平行に配向される。半導体ヘテロ構造は、開口を充填してマスクをカバーする第2半導体材料のオーバーグロース結晶層をさらに含む。
【0009】
第2の側面によれば、半導体ヘテロ構造を製造する方法は、第1半導体材料の結晶基板を与えることと、当該結晶基板の表面上にマスクを配置することとを含む。マスク内に開口が作られる。開口は、900nm以下の幅の複数の細長い開口部を含む。複数の細長い開口部のうちの少なくとも1つの第1開口部は、複数の細長い開口部のうちの少なくとも1つの第2開口部に対して非平行に配向される。第2半導体材料のオーバーグロース結晶層が成長して開口を充填し、かつ、マスクをカバーする。
【0010】
本発明の利点は、2μmという層厚さの、転位がほとんど存在しない均質なヘテロ構造半導体層が実現できることにある。
【0011】
添付の図面とともに以下の説明を参照することによって、本発明は、さらなる目的及び利点とともに、最も良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例に係るマスク形状を示す。
【図2】他のマスク形状を示す。
【図3】本発明に係るヘテロ構造の断面図である。
【図4】本発明に係る方法の一実施例のステップのフローチャートである。
【図5】本発明に係る方法の他実施例のステップのフローチャートである。
【図6】本発明の他実施例に係るマスク形状を示す。
【図7】本発明の他実施例に係るマスク形状を示す。
【図8】本発明の他実施例に係るマスク形状を示す。
【図9】本発明の他実施例に係るマスク形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面全体にわたり、類似又は対応する要素に対して同じ参照番号が使用される。
【0014】
本発明は、別の材料の基板上に成長する半導体材料に関する。本発明は、小さな開口から生じるエピタキシャル横方向オーバーグロース(ELO)を利用する方法に関する。
【0015】
図示される実施例は、シリコン上に成長するInP、GaAs、GaN、及びこれらの関連化合物のようなIII/V半導体材料に関する。特に、InPが最も徹底して研究された。しかし、他の材料の組み合わせも可能である。可能な基板の例には、Si、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)、サファイア、SiC、GaAs、及びInPが含まれるがこれらに限られない。成長材料は基板材料とは異なり、例えば、InP、GaAs、GaN、SiC、及びこれらの関連化合物が含まれるがこれらに限られない。
【0016】
本発明に係る半導体ヘテロ構造は、第1半導体材料の結晶基板を含む。結晶基板の表面上にはマスクが配置される。マスクは、下表面からオーバーグロースが開始可能な開口を有する。開口は、900nm以下の幅の複数の細長い開口部を含む。複数の細長い開口部のうちの少なくとも1つの第1開口部は、複数の細長い開口部のうちの少なくとも1つの第2開口部に対して非平行に配向される。このため、開口部の周縁は互いに非ゼロ角度で面する。第2半導体材料のオーバーグロース結晶層が、開口を充填してマスクをカバーする。
【0017】
図1は、第2半導体材料が与えられる前の、かかるヘテロ構造10の一実施例の上面図を示す。マスク3は、当該領域のほとんどをカバーするが、狭い開口11がメッシュ構造12内に与えられる。マスク3の材料は二酸化シリコン若しくは窒化シリコン又は他の任意の適切な不活性材料であってよい。メッシュ構造12は、この実施例においては2つの異なる方向に配向された細長い開口部13、14を含む。開口構造物の幅wは、900nm以下である。例えば、100nm又は500nmであり、最も好ましくは100nmよりも小さい。第1グループの開口部13は、図面においてほぼ水平に配置される。第2グループの開口部14は、図面においてほぼ垂直に配置される。この実施例において、基板はSiの(001)表面にあり、図面中に[110]方向が示されている。当該表面は典型的には(001)であり、又は<111>若しくは<110>に向かって2−8°ずれている。このため、第1グループの開口部13の方向は、基板の[110]方向に対して角度βで配向され、第2グループの開口部14は基板の[110]方向に対して角度αで配向される。これらの角度は、<100>及び<110>とは異なることが好ましい。一般的な基板表面において、角度が非ゼロ及び非垂直である。基板表面の他の任意の対称面とは異なるのが好ましい。すなわち、異なる配向の開口部の一方又は双方の長手方向が、当該結晶基板の表面の主結晶軸に対して非ゼロ角度に配向される。さらに、その長手方向は、当該結晶基板の表面のすべての対称面に対して非ゼロ角度に配向されるのが好ましい。偏差は、約5°よりも大きいことが好ましい。角度β−αは、5°より大きく、かつ、175°より小さいのが好ましい。図1の直線パターンにおける直線の傾斜α及びβは、15°及び60°、15°及び75°、15°及び105°、15°及び120°、30°及び60°、30°及び75°、30°及び105°、並びに30°及び120°のそれぞれの異なる組み合わせに対して試験された。かかる角度のすべては、シリコンウェハの[011]方向に対して画定される。
【0018】
図1の細長い開口部は、交差直線開口部として形成される。しかし、開口はまた、他形状の構成で与えられてよい。一例では、細長い開口部は、円弧部である。複数の円弧部が一緒になって、例えばリング構造開口又は一般的な曲線部を形成してよい。以下にさらに説明されるように、これらの円形部又は曲線部はまた、同心円リング開口又はらせん形状開口を形成してよい。上述のように、すべての場合において開口の幅は900nmよりも小さいのが好ましい。
【0019】
例えばシード層(以下をさらに参照のこと)内のマスク開口における成長開始後にそこから出てくる成長貫通転位は、開口を通って垂直方向に伝搬する。しかし、材料が側方に成長するマスク3の上方の領域15においては、かかる伝搬が妨げられる。すなわち、これらの転位がふるい分けられる。しかし、十分に小さな開口に対しては、これらの転位のふるい分けは、開口がナノサイズであることにも起因して存在する。このため、開口の上方であっても転位がほぼ存在しない領域が得られる。この結果、均質かつほぼ転位なしの層が、開口の上方及びマスクの上部の双方において得られる。したがって、本発明は、高い結晶性の半導体(例えばIII−V半導体)を基板(例えばシリコン)上に堆積する方法を与える。
【0020】
異なる方向に配向した狭い開口を与えることは、堆積された半導体の品質をさらに高める。例えば図2に示されるような平行な開口のみから開始されて、マスク上方の領域15内のオーバーグロースが行われると、対向方向からのオーバーグロースは、開口間の典型的には中間まで延びた距離すなわち合体領域に沿ってほぼ同時に出会う。この場合、合体領域において大量の結晶欠陥が発生する可能性が高い。しかし、その代わりに非平行な開口からオーバーグロースを開始すると、合流するオーバーグロース部分同士の間に移動境界が連続的に発生する。合体領域の活動部分は、マスク表面の上方を所定時間移動する。これにより、任意の結晶欠陥が最善の方法で緩和されたオーバーグロースが得られる。これにより、合体領域における欠陥密度が最小化される。
【0021】
本発明の実施例は、例えばシリコンのような基板表面上に、マスクが設けられる前に与えられるシード層を利用する方法に関する。かかる実施例は図3の断面図に示される。InPに係る本実施例において、シード層2が基板1(本実施例ではシリコン)上に成長する。予めInPが堆積されたシード層2は厚さが1.0−1.5μmであり、InPとSiとの大きな不整合に起因する高密度の貫通転位を典型的に含む。シード層の上部には、パターンマスク3(本実施例ではSiO)が与えられる。パターンマスクは、本実施例では厚さ40nmのSiOからなる。最終的には、水酸化物気相エピタキシーを利用することにより、上述の原理に従って半導体オーバ層4(本実施例ではInPからなる)がマスク上に成長する。よって本実施例は、基板表面1上に成長した所定のシード層2上に誘電体材料によって作られた小さな開口からのエピタキシャル横方向オーバーグロース(ELO)を利用する。上述のように、開口の幅は900nmを越えない寸法である。かかる幅寸法は、マスク領域(ELO層)上の成長層と開口上の成長層との双方へ伝搬することに起因するシード層内の転位をふるい分けるのに有効である。
【0022】
開口の配向とともに狭い開口により、2μmよりも小さい、非常に薄いオーバーグロース層であっても良好な結晶性を実現することが可能となる。我々の方法により成長した層の厚さは、シード層の厚さに匹敵する。これにより、シリコン表面とオーバーグロース半導体表面との間の距離全体が最小化される。したがって、本発明の実施例は、ほぼ転位なしの均質なIII−V半導体層を実現する方法を説明する。このIII−V半導体層は、マスクの上方のみならず開口の上方においても2μmより小さな厚さである。成長層全体にわたる転位密度は劇的に低減される。
【0023】
図4は、本発明に係る方法の一実施例のステップのフローチャートを示す。半導体ヘテロ構造の製造方法はステップ200から始まる。ステップ210において、第1半導体材料の結晶基板が与えられる。ステップ214において、結晶基板の表面上にマスクが配置される。ステップ216において、マスク内に開口が作られる。開口は、900nm以下の幅の複数の細長い開口部を含む。複数の細長い開口部のうちの少なくとも1つの第1開口部は、複数の細長い開口部のうちの少なくとも1つの第2開口部に対して非平行に配向される。本発明において、マスク材料の開口のパターンは、リソグラフィ法又はインプリンティング法によって作られる。引き続いて、マスク層がエッチングされてナノスケールサイズの開口が形成される。ステップ218において、第2半導体材料のオーバーグロース結晶層を成長させる。オーバーグロース結晶層は、開口を充填してマスクをカバーする。好ましくは、オーバーグロースは、オーバーグロース結晶層がマスク上に2μmよりも小さな厚さを有する間に終了される。手順はステップ299にて終了する。
【0024】
図5は、本発明に係る方法の他実施例のステップのフローチャートを示す。実施例は、マスクを配置するステップ214の前に、結晶基板の表面をシード層でカバーするステップ212を付加的に含む。本発明のこの実施例に係る方法は、シード層及びマスク開口が与えられたシリコン上に低転位密度の均質層を実現するべくいくつかのステップを含む。二酸化シリコン若しくは窒化シリコン又は他の任意の適切な不活性材料のようなマスク材料が、シリコン上に与えられたシード層上に低温プロセスによって堆積される。開口がシード層を露出する一方で、マスク材料の開口していない部分はシード層を隠す。次に、シード層をさらに成長させるべく、シード層とそれほど異ならない格子定数を有する半導体材料を、露出開口を使用して成長させる。層厚さがマスクの厚さを越えるとすぐに、開口から始まる成長はマスク上で側方にも生じる。
【0025】
シード層によってシリコン上にInPを製造する方法の特定の実施例がここに提示される。
【0026】
第1に、約40nmの二酸化シリコン(SiO)のマスク材料が、プラズマ化学気相成長法(PE−CVD)によって1.0−1.5μm厚さのシード層上に堆積される。このシード層は、(001)Si基板上にあって、配向が<111>の方向に4°ずれている。上述されたように、他実施例において他の基板表面を利用することができる。ポリメチルメタクリレート(PMMA)の電子ビームレジストが、SiO上にスピンコーティングされる。電子ビームリソグラフィ手段、及び、トリフルオロメタン(CHF)をエッチングガスとして使用するその後のリアクティブイオンビームエッチング(RIBE)によってパターンが形成される。パターンは、40x40μmのサイズのフィールドに含まれる様々なメッシュからなる。このサイズは、この特定の例において使用される。しかし、他実施例においては、主に最終用途に応じてフィールドのサイズを相当大きくすることができる。また、当該用途が要求するのであれば小さなサイズを使用することもできる。
【0027】
第2に、パターンシード層を備えるサンプルが以下の手順により徹底的に清浄された。(i)パターンウェハをアセトンに約1分間浸漬することにより油脂を除去する;(ii)パターンウェハを2回、イソプロパノールで各約30秒間すすぐ;(iii)パターンウェハを脱イオン水で3回すすぐ;(iv)パターンウェハを市販の溶液Semicoclean(登録商標)で約2分間清浄する;(v)パターンウェハを脱イオン水で3回すすぐ;(vi)パターンウェハを濃硫酸(HSO)で約1分間清浄する;(vii)脱イオン水で3回すすぐ;(viii)パターンウェハを再びSemicocleanで約2分間清浄する;(ix)パターンウェハを脱イオン水で3回すすぐ;(x)パターンウェハをイソプロパノールに浸漬する;(xi)パターンウェハを取り出し窒素ガスで乾燥させる。
【0028】
次に、水酸化物気相エピタキシー(HVPE)成長法により、当該パターン上に厚さ約1.5μmのリン化インジウム層が堆積される。このプロセスにおける気体前駆体は、塩化インジウム(塩化水素(HCl)及び溶融インジウムによってその場で発生する)及びホスフィン(PH)である。キャリアガスは水素(H)及び窒素(N)である。
【0029】
清浄されたパターンサンプルが、III−V半導体の成長を行うべく準備される。それが、サセプタ上のローディングチャンバにロードされる。次に、それは、ローディングチャンバから堆積チャンバへ自動的に移送される。圧力が20mbarまで下げられ、サンプルは温度約615℃に到達するまでリアクタ内で加熱される。すべての手順には約10分間かかり、少量の安定流量10sccmのPHを含む窒素環境にて行われる。温度が590℃に達すると、120sccmのPH及び12sccmのHClの全流量が開始される。HClは、リアクタ内に収容された液体インジウムの溶融を介して流れるが、温度は730℃という高温に維持される。流量約12sccmのInClがその場で生成される。全流量は900sccmである。ここで、45sccmがH、723sccmがNである。サセプタ上のシャッタを開けることにより成長が開始する。実施に係る成長は、2分15秒の間で完了した。成長後、圧力が大気圧まで上げられる。その後サンプルがローディングチャンバに戻されて冷却される。
【0030】
マスク層の開口は、InPの成長のための核として機能する。InPは、その高さがSiOの高さを越えるとすぐに側方への成長を始める。横方向成長の領域において、及び、成長が垂直方向であっても小さな開口上の領域において、転位がふるい分けられる。15°及び105°、15°及び120°のような適切な直線方向が選択された場合、異なる開口からの成長が出会う合体領域にはほとんど欠陥がない。この方法により、マスク上だけでなく開口上でも品質が均質な優れた結晶領域を大きな面積にわたって形成することができる。この方法により、結晶品質が良好なオーバーグロース層の厚さは、2μmよりも小さくなる。
【0031】
上述の詳細な例においてはシリコン基板上へのInPの堆積が使用されたが、本方法は、シリコン又は他の任意の適切な基板上で良好な結晶性を有する任意の半導体の堆積に適用することができる。したがって、本方法は、任意の結晶半導体材料の異なる結晶基板上への堆積に適用することができる。基板は、異なる半導体材料の天然基板が存在しない場合又はそのサイズが限られる場合のいずれかの場合に、異なる半導体材料の層を堆積するためのテンプレートを形成してよい。したがって、我々が提案する方法は、例えばInP、GaN、GaAs、AlN、ZnO等、及びこれらの関連化合物のような1つの特定材料が異なる材料(例えばシリコン)の基板上にある大面積ウェハを作ることも包括する。
【0032】
シード層がInPであったが、成長が意図される層にほぼ又は完全に格子整合する例えばIn1−xGaAs1−y(x=0.47y,0≦y≦1)のような他の任意の半導体材料をシード層として使用することができる。シード層は必ずしも単層である必要はなく、多層からなっていてもよい。
【0033】
ここでの開口サイズは100nm又は500nmであったが、例えば50、100、200、300、400、500、600、700、800、又は900nmのような、間隔が0<開口<900nmの他の任意の開口を使用してよい。好ましくは、100nmよりも小さい幅の開口が使用される。開口領域内のふるい分け効果及び全体的な品質は開口が小さいほど良好となる。さらにここでは、メッシュパターンにおいて使用される直線方向が、シリコンの[011]方向に対して15°、30°、60°、75°、105°、及び120°に設定された。しかし、上述の開口サイズと、相当の横方向成長率をもたらす適切な成長条件とを組み合わせて、任意の直線方向を使用することができる。
【0034】
リソグラフィとともにドライエッチングが使用されたが、ステップのいずれかにおいてウェットエッチングも使用できる。
【0035】
低圧かつ615°にて成長が行われたが、他の圧力又は他の温度にて成長が行われてもよい。使用された流れは、得られる材料品質を最大限にするべく選択されたが、任意のドーパントガス(例えばHS)と同様に他の流れが使用されてもよい。さらに、ここで使用された成長方法は平衡近傍のプロセスHVPEであったので、使用されたマスクSiO上の直接核生成がない高選択性成長が与えられた。しかし、他のエピタキシャル成長法も同様に使用してよい。例えば金属・有機化学気相成長(MOVPE)、液相エピタキシー(LPE)又は分子線エピタキシー(MBE)、原子層エピタキシー(ALE)、及びこれらすべての方法のバリエーションである。マスク材料はここではSiOであったが、他のマスク材料を使用してもよい。例えば窒化シリコンSiN若しくは他の任意の不活性材料又は金属であってもよい。
【0036】
使用された方法に従って、及び、エピタキシャル横方向オーバーグロースという周知の方法においてマスク上だけでなく開口上でも転位のふるい分けに最も好都合かつ最善と思われる方法に従って、本発明が説明された。
【0037】
図6から図9は、本発明に係るマスク形状の他の4つの実施例を示す。図6は、上述のリング形成コンセプトを示す。ここでは、リングの一部すなわち円弧部13、14、16、17が細長い開口部を構成する。図7は、六方対称のマスク構造を示す。3グループの細長い開口部13、14、16が互いに異なる方向に配向される。図8は、円弧部13、14を有する同心円リングのマスク構造を示す。図9は、らせん形状のマスク構造を示す。曲線部13、14が異なる方向に配向される。当業者であれば誰でも、可能なマスクデザインの例が多数存在することがわかる。
【0038】
上述の実施例は、本発明の少数の例示によって理解される。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく実施例の様々な修正、組み合わせ、及び変更が行われてよいことがわかる。特に、異なる実施例における異なる部分的なソリューションを、技術的に可能な他の構成において組み合わせることができる。しかし、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって画定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ヘテロ構造(10)であって、
第1半導体材料の結晶基板(1)と、
900nm以下の幅(w)を有する複数の細長い開口部(12)を含む開口(11)を有し、前記結晶基板(1)の表面上に配置されるマスク(3)と、
前記開口(11)を充填し、かつ、前記マスク(3)をカバーする、第2半導体材料のオーバーグロース結晶層(4)と
を含み、
前記細長い開口部(12)の少なくとも1つの第1開口部(13)が、前記細長い開口部(12)の少なくとも1つの第2開口部(14)に対して非平行に配向される、半導体ヘテロ構造。
【請求項2】
前記細長い開口部(12)は、交差直線開口部である、請求項1に記載の半導体ヘテロ構造。
【請求項3】
前記第1開口部(13)及び前記第2開口部(14)の少なくとも一方の長手方向が、前記結晶基板(1)の前記表面の両方の主結晶軸に対して非ゼロの角度に配向される、請求項2に記載の半導体ヘテロ構造。
【請求項4】
前記第1開口部(13)及び前記第2開口部(14)の少なくとも一方の前記長手方向はさらに、前記結晶基板(1)の前記表面のすべての対称面に対して非ゼロの角度に配向される、請求項3に記載の半導体ヘテロ構造。
【請求項5】
前記結晶基板(1)の前記表面の両方の主結晶軸に対する前記非ゼロ角度、及び前記結晶基板(1)の前記表面のすべての対称面に対する前記非ゼロ角度の少なくとも一方は、5°より大きい、請求項2又は3に記載の半導体ヘテロ構造。
【請求項6】
第1開口部(13)の前記長手方向は、前記第2開口部(14)の前記長手方向に対して5°より大きく85°より小さい角度で配向される、請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体ヘテロ構造。
【請求項7】
前記細長い開口部(12)は曲線部又は円弧部である、請求項1に記載の半導体ヘテロ構造。
【請求項8】
前記開口は同心円リング又はらせんを形成する、請求項7に記載の半導体ヘテロ構造。
【請求項9】
前記結晶基板(1)の前記表面と前記マスク(3)との間にシード層(2)が設けられる、請求項1から8のいずれか1項に記載の半導体ヘテロ構造。
【請求項10】
前記オーバーグロース結晶層(4)は、前記マスク上に2μmよりも小さい厚さを有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の半導体ヘテロ構造。
【請求項11】
前記細長い開口部(12)は、100nm以下の幅(w)を有する、請求項1から10のいずれか1項に記載の半導体ヘテロ構造。
【請求項12】
半導体ヘテロ構造を製造する方法であって、
第1半導体材料の結晶基板(1)を与えるステップ(210)と、
前記結晶基板(1)の表面上にマスク(3)を配置するステップ(214)と、
900nm以下の幅(w)を有する複数の細長い開口部(12)を含む開口(11)を、前記マスク(3)に作るステップ(216)と、
前記開口(11)を充填し、かつ、前記マスク(3)をカバーする、第2半導体材料のオーバーグロース結晶層(4)を成長させるステップ(218)と
を含み、
前記細長い開口部(12)の少なくとも1つの第1開口部(13)が、前記細長い開口部(12)の少なくとも1つの第2開口部(14)に対して非平行に配向される、方法。
【請求項13】
前記細長い開口部(12)は交差直線開口部である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1開口部(13)及び前記第2開口部(14)の少なくとも一方の長手方向が、前記結晶基板(1)の前記表面の両方の主結晶軸に対して非ゼロの角度に配向される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1開口部(13)及び前記第2開口部(14)の少なくとも一方の前記長手方向はさらに、前記結晶基板(1)の前記表面のすべての対称面に対して非ゼロの角度に配向される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記結晶基板(1)の前記表面の両方の主結晶軸に対する前記非ゼロ角度、及び前記結晶基板(1)の前記表面のすべての対称面に対する前記非ゼロ角度の少なくとも一方は、5°より大きい、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項17】
第1開口部(13)の前記長手方向は、前記第2開口部(14)の前記長手方向に対して5°より大きく85°より小さい角度で配向される、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記細長い開口部(12)は曲線部又は円弧部である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記開口は同心円リング又はらせんを形成する、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記マスク(3)を配置するステップ(214)の前に、前記結晶基板(1)の前記表面をシード層(2)でカバーするステップ(212)をさらに含む、請求項12から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記成長させるステップ(218)が、前記オーバーグロース結晶層(4)が前記マスク(3)上に2μmよりも小さい厚さを有している間に終了する、請求項12から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記細長い開口部(12)は、100nm以下の幅(w)を有する、請求項12から21のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−521810(P2010−521810A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553550(P2009−553550)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【国際出願番号】PCT/SE2008/050288
【国際公開番号】WO2008/115135
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(509257374)
【出願人】(509257385)
【Fターム(参考)】