説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】機能素子の可動部分を配置した空間の気密性の低下を抑制しつつ、小型化を実現できる半導体装置とその製造方法を提供する。
【解決手段】表面10aに凹部15が形成され、その凹部15内に配置された可動部分を有する機能素子100を備える変位検出用半導体チップ10と、変位検出用半導体チップ10の表面10a上で凹部15を囲んで環状に配置されたダイアタッチ材を含む結合部20と、可動部分の変位を検出した機能素子100が出力する検出信号を処理する処理回路300を有し、空洞を形成するように凹部15の上方を覆って結合部20上に配置された信号処理用半導体チップ30とを備え、結合部20によって凹部15が気密封止されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動部分を有する機能素子を有する半導体装置に係り、特に可動部分を有する半導体チップと、可動部分の変位による電気信号を処理する半導体チップとを有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可動部分を有する機能素子を有するMEMS(Micro Electro Mechanical System)素子、表面弾性波(SAW)素子、圧電材料を使用した圧電薄膜共振器(FBAR)等が、ジャイロセンサや圧力センサ等に使用されている。一般的に、MEMS素子、SAW素子、FBAR等は、振動子等の可動部分が形成され、可動部分の変位に応じた検出信号を出力する変位検出用の半導体チップと、その検出信号を処理する回路が配置された信号処理用の半導体チップとを含む。
【0003】
MEMSモジュール等の小型化のために、変位検出用の半導体チップと信号処理用の半導体チップを重ねて実装することが有効である。特に、変位検出用の半導体チップの凹部に可動部分が配置されている場合、信号処理用の半導体チップでこの凹部に蓋をするように配置して、凹部を封止することが有効である。例えば、変位検出用の半導体チップと信号処理用の半導体チップを、電気信号が伝搬するバンプを介して接続する方法等が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−183388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バンプを介して変位検出用の半導体チップと信号処理用の半導体チップを接続する方法では、可動部分を配置した空間の気密性が低下する。このため、凹部内への異物の混入や水分の浸入を防止できず、半導体装置の歩留りが低下するという問題があった。
【0005】
上記問題点を鑑み、本発明は、機能素子の可動部分を配置した空間の気密性の低下を抑制しつつ、小型化を実現できる半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、(イ)表面に凹部が形成され、その凹部内に配置された可動部分を有する機能素子を備える変位検出用半導体チップと、(ロ)変位検出用半導体チップの表面上で凹部を囲んで環状に配置されたダイアタッチ材を含む結合部と、(ハ)可動部分の変位を検出した機能素子が出力する検出信号を処理する処理回路を有し、空洞を形成するように凹部の上方を覆って結合部上に配置された信号処理用半導体チップとを備え、結合部によって凹部が気密封止されている半導体装置が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、(イ)変位検出用半導体チップに、その変位検出用半導体チップの表面に形成された凹部内に可動部分を有する機能素子を形成するステップと、(ロ)機能素子が出力する検出信号を処理する処理回路を有する信号処理用半導体チップの裏面上に、環状のダイアタッチ材を形成するステップと、(ハ)ダイアタッチ材が凹部を囲むようにダイアタッチ材と変位検出用半導体チップとを接合して、信号処理用半導体チップと変位検出用半導体チップを対向させて配置するステップとを含み、ダイアタッチ材によって凹部が気密封止される半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、機能素子の可動部分を配置した空間の気密性の低下を抑制しつつ、小型化を実現できる半導体装置及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0010】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
本発明の実施の形態における半導体装置1は、図1に示すように、表面10aに凹部15が形成され、その凹部15内に配置された可動部分を有する機能素子100を備える変位検出用半導体チップ10と、変位検出用半導体チップ10の表面10a上で凹部15を囲んで環状に配置されたダイアタッチ材を含む結合部20と、可動部分の変位を検出した機能素子100が出力する検出信号を処理する処理回路300を有し、空洞を形成するように凹部15の上方を覆って結合部20上に配置された信号処理用半導体チップ30とを備える。結合部20によって凹部15は気密封止される。
【0012】
半導体装置1は、機能素子100の可動部分を配置した空間を真空、減圧、或いは不活性ガス雰囲気に保持できる。また、凹部15内への異物の混入や水分の浸入が防止される。このため、変位検出用半導体チップ10の特性に変動が生じない。
【0013】
半導体装置1の結合部20は、図1に示すように、凹部15を囲むように変位検出用半導体チップ10の表面10a上に環状に配置されたスペーサ21、及びスペーサ21の周囲を覆うダイアタッチ材22を有する。結合部20と信号処理用半導体チップ30の裏面30bとの接触領域は、ダイアタッチ材22により覆われている。
【0014】
スペーサ21は、窒化シリコン(SiN)膜や酸化シリコン(SiO2)膜等の絶縁膜、多結晶シリコン(poly-Si)膜或いは金属膜が採用可能である。ダイアタッチ材22は、半導体チップをプリント基板上に実装する場合等に使用される部材を採用可能である。例えば、樹脂系接着剤、銀(Ag)ペースト、半田等をダイアタッチ材22として使用できる。樹脂系接着剤としては、ポリイミド系、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系等の感光性樹脂系接着剤や、スクリーン印刷や塗布可能な樹脂系接着剤を採用可能である。また、すず鉛(SnPb)、金すず(AuSn)、銀すず(SnAg)等の半田系接着剤もダイアタッチ材22に採用可能である。
【0015】
図1に示した半導体装置1は基板40上に配置されている。基板40はプリント配線基板等である。また、変位検出用半導体チップ10、結合部20及び信号処理用半導体チップ30は、モールド樹脂50で覆われている。凹部15は気密封止されているため、例えば加熱処理等によりモールド樹脂50から発生したガス、或いはモールド樹脂等は、機能素子100の可動部分を配置した空間に浸入しない。なお、モールド樹脂以外の封止材によって、変位検出用半導体チップ10、結合部20及び信号処理用半導体チップ30を覆ってもよいことはもちろんである。
【0016】
処理回路300は、信号処理用半導体チップ30に面する裏面30bと対向する表面30aに形成されている。図1に示した例では、信号処理用半導体チップ30の表面30a上に配置されたパッド351と、変位検出用半導体チップ10の表面10aに配置されたパッド151とがワイヤーボンディングされて、処理回路300と変位検出用半導体チップ10が電気的に接続される。また、信号処理用半導体チップ30の表面30a上に配置されたパッド352と基板40の表面40a上に配置されたパッド451とがワイヤーボンディングされて、処理回路300と基板40上の配線パターンが電気的に接続される。
【0017】
機能素子100の有する「可動部分」は、外部からの衝撃等の外因に応じて物理的に形状が変化したり、位置が変化したりする部分である。例えば、圧力センサやジャイロセンサの振動子等が可動部分である。
【0018】
図2に、機能素子100が有する可動部分の例を示す。ここでは、機能素子100が加速度センサである例を説明する。図2は、信号処理用半導体チップ30方向からみた変位検出用半導体チップ10の上面図である。図2に示すように、機能素子100の有する可動部分は、凹部15がなす空間に自由端が延在する片持ち梁をそれぞれ有する第1の可動部分110と第2の可動部分120とを有する。図1は、図2のI−I方向に沿った断面図である。
【0019】
第1の可動部分110は、複数の片持ち梁1111〜1114を有する梁部111と、片持ち梁1111〜1114の固定端と凹部15の内側面とを接続する接続部112とを備える。接続部112は固定部である。第2の可動部分120は、複数の片持ち梁1211〜1213を有する梁部121と、片持ち梁1211〜1213で共通の梁部121の固定端と凹部15の内側面とを接続する接続部122とを備える。接続部122は、一端が凹部15の内側面に固定され、他端が梁部121に接続されている。接続部122は多重に折り畳まれた構造を有し、外因に応じて可動する。図2に示すように、片持ち梁1111〜1114は、片持ち梁1211〜1213と交差指状に配置されている。
【0020】
図2のIII−III方向に沿った断面図を図3に示す。図3に示した例では、変位検出用半導体チップ10が、第1シリコン膜層101、酸化シリコン膜層102及び第2シリコン膜層103が積層された構造を有する。そして、凹部15の酸化シリコン膜層102がエッチング除去されて、第2シリコン膜層103をパターニングした第1の可動部分110の梁部111と第2の可動部分120が形成される。
【0021】
半導体装置1の動作例を以下に説明する。処理回路300は、第1の可動部分110と第2の可動部分120間に電圧を印加する。半導体装置1に外力が加わると、外力の影響により第1の可動部分110の梁部111及び第2の可動部分120が機械的に振動し、片持ち梁1211〜1213と片持ち梁1211〜1213間の距離が変動する。機能素子100は、加速度に応じて第1の可動部分110の梁部111及び第2の可動部分120が変位して生じる片持ち梁1211〜1213と片持ち梁1211〜1213間の静電容量の変化を検出する。つまり、機能素子100の機械的な変位が静電容量の変化として検出される。機能素子100は、検出された静電容量の変化を検出信号で信号処理用半導体チップ30に配置された処理回路300に伝達する。処理回路300は、検出信号を処理して半導体装置1に生じた加速度を検出する。
【0022】
図3に示したように、機能素子100の上面の位置と変位検出用半導体チップ10の表面10aの位置は同一平面レベルである。上記のように、第1の可動部分110及び第2の可動部分120は機械的に振動する。このため、変位検出用半導体チップ10と信号処理用半導体チップ30とを隔てる結合部20の厚みdは、第1の可動部分110及び第2の可動部分120が振動しても信号処理用半導体チップ30の裏面30bに衝突しないように、一定の大きさが必要である。厚みdの値は、材料や形状に応じて定まる第1の可動部分110及び第2の可動部分120の振動幅に応じて設定される。結合部20の厚みdは数μm程度、例えば2μm程度に設定される。
【0023】
結合部20の厚みdが厚いほど機能素子100の可動部分が信号処理用半導体チップ30の裏面30bに接触する可能性は低くなる。しかし、半導体装置1の小型化という点では、変位検出用半導体チップ10と信号処理用半導体チップ30との間隔は狭いほうがよい。このため、結合部20の厚みdは10μm以下程度にすることが好ましい。
【0024】
図1に示した半導体装置1によれば、変位検出用半導体チップ10の表面10a上に形成された凹部15の蓋として信号処理用半導体チップ30を配置することにより、モジュールを小型化できる。更に、信号処理用半導体チップ30と変位検出用半導体チップ10との間にダイアタッチ材22を配置することにより、機能素子100の可動部分が配置された凹部15内を気密封止できる。
【0025】
このため、凹部15内への異物の混入や水分の浸入が防止され、半導体装置1の歩留りが向上する。また、モールド樹脂或いはモールド樹脂から発生するガスの凹部15への進入を防止できる。このため、モールド樹脂による半導体装置1の封止が可能であり、キャビティのあるセラミック製等のパッケージに半導体装置1を格納する必要がない。このため、半導体装置1を含むモジュールを小型化すると共に、モジュールの製造コストを低減できる。
【0026】
また、信号処理用半導体チップ30と変位検出用半導体チップ10間の空間を気密封止することにより、可動部分を配置した空間を真空、減圧、或いは不活性ガス雰囲気に保持することができる。このため、機能素子100の特性変化が防止される。
【0027】
更に、図1に示した半導体装置1では、変位検出用半導体チップ10と信号処理用半導体チップ30のチップサイズを同一にする必要がない。このため、変位検出用半導体チップ10と信号処理用半導体チップ30のチップサイズの制限が少ない。
【0028】
以上に説明したように、本発明の実施の形態に係る半導体装置1によれば、機能素子100の可動部分を配置した空間の気密性の低下を抑制しつつ、小型化された半導体装置を実現できる。
【0029】
図4〜図10を参照して、図1に示した半導体装置1の製造方法を説明する。なお、以下に述べる半導体装置の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0030】
(イ)図4に示すように、表面に複数の処理回路300が形成され、図面上では下面である表面にパッド351〜352が配置されたウェハ35の裏面上に、環状のダイアタッチ材22をそれぞれ形成する。ダイアタッチ材22の膜厚は、数μm〜50μm程度である。ダイアタッチ材22の形成方法は後述する。このとき、変位検出用半導体チップ10の表面10aにおける凹部15を囲む領域に対応させて、ダイアタッチ材22の位置が設定される。つまり、信号処理用半導体チップ30と変位検出用半導体チップ10が重ねられた場合に、凹部15を囲むようにダイアタッチ材22が配置される。例えば、幅100μm程度で、各辺が1mm程度の環状にダイアタッチ材22を配置する。このとき、ウェハ35の裏面には格子状にダイアタッチ材22が配置される。その後、図5に示すように、ウェハ35を分割して、複数の信号処理用半導体チップ30を作成する。
【0031】
(ロ)図6に示すように、第1シリコン膜層101、酸化シリコン膜層102及び第2シリコン膜層103が積層された変位検出用半導体チップ10の表面10aを熱酸化して酸化シリコン膜211を形成する。次いで、酸化シリコン膜211上にSiN膜212を形成する。
【0032】
(ハ)フォトレジスト膜をマスクにしたフォトリソグラフィ技術等を用いて酸化シリコン膜211及びSiN膜212の一部をエッチング除去して、酸化シリコン膜211及びSiN膜212をパターニングする。具体的には、図7に示すように、結合部20を形成する領域上の酸化シリコン膜211及びSiN膜212を残し、第1の可動部分110の梁部111と第2の可動部分120を形成する領域上の酸化シリコン膜211を残す。パッド151を配置する領域上の酸化シリコン膜211及びSiN膜212は除去される。
【0033】
(ニ)変位検出用半導体チップ10の表面10aにアルミニウム(Al)膜を配置する。フォトリソグラフィ技術等を用いてAl膜をパターニングすることにより、図8に示すように変位検出用半導体チップ10の表面10a上にパッド151を形成する。
【0034】
(ホ)図9に示すように、酸化シリコン膜211及びSiN膜212をマスクにして第2シリコン膜層103をエッチング除去し、第1の可動部分110と第2の可動部分120の側面部を形成する。ついで、図10に示すように、SiN膜212をマスクにして、第1シリコン膜層101の表面101aが露出するまで酸化シリコン膜211、及び酸化シリコン膜層102をエッチング除去して、第1の可動部分110の梁部111と第2の可動部分120を形成する。このとき、第1の可動部分110と第2の可動部分120上の酸化シリコン膜211がエッチング除去される。同時に、酸化シリコン膜211とSiN膜212が積層されたスペーサ21が形成される。
【0035】
(ヘ)図11に示すように、信号処理用半導体チップ30上のダイアタッチ材22と変位検出用半導体チップ10上のスペーサ21とを接合して、信号処理用半導体チップ30と変位検出用半導体チップ10を対向させて配置する。例えば125℃程度の熱圧着によってスペーサ21とダイアタッチ材22を仮止めした後、本キュアを行う。図11に示したようにダイアタッチ材22がスペーサ21の周囲を覆うようにダイアタッチ材22とスペーサ21は接合され、結合部20が形成される。その結果、信号処理用半導体チップ30が凹部15の上方を覆って空洞が形成される。
【0036】
(ト)変位検出用半導体チップ10の裏面を基板40上に搭載する。ワイヤーボンディング工程後、変位検出用半導体チップ10、結合部20及び信号処理用半導体チップ30をモールド樹脂50によって封止して、図1に示した半導体装置1が完成する。
【0037】
ダイアタッチ材22が感光性樹脂系接着剤である場合は、信号処理用半導体チップ30の裏面30b上にダイアタッチ材22をスピンコート等により貼り付ける。その後、フォトリソグラフィ技術によりダイアタッチ材22をパターニングする。
【0038】
ダイアタッチ材22がスクリーン印刷又は塗布可能な樹脂系接着剤である場合は、例えば信号処理用半導体チップ30の裏面30b上、又は変位検出用半導体チップ10の表面10a上で、スクリーン印刷或いは塗布によってダイアタッチ材22をパターニングする。ダイアタッチ材22が半田系接着剤である場合は、信号処理用半導体チップ30の裏面30b上と変位検出用半導体チップ10の表面10a上で、スパッタ法、蒸着法、或いはめっき法によってダイアタッチ材22をパターニングする。
【0039】
ダイシング時にウェハ35の裏面からダイアタッチ材22が剥離する可能性がある場合、或いはダイアタッチ材22の接着力が低下する可能性がある場合は、レーザダイシング等の、ダイアタッチ材22の特性に影響のないダイシング方法を選択する必要がある。
【0040】
ダイアタッチ材22がスクリーン印刷又は塗布可能な樹脂系接着剤である場合は、例えば酸化シリコン膜211及びSiN膜212をパターニングする工程の後に、変位検出用半導体チップ10の表面10a上にダイアタッチ材22を形成してもよい。これにより、ダイシングの影響によるダイアタッチ材22の特性の変化を排除できる。
【0041】
上記の製造方法では、変位検出用半導体チップ10の表面10a上に酸化シリコン膜211とSiN膜212を積層してスペーサ21を形成する例を示した。変位検出用半導体チップ10の表面10aの一部をエッチング除去してSi膜からなるスペーサ21を形成してもよい。また、スペーサ21を酸化シリコン膜211のみ、或いはSiN膜212のみで形成してもよい。例えばスペーサ21を酸化シリコン膜211のみで形成する場合は、スペーサ21をフォトレジスト膜等でマスクした状態で、酸化シリコン膜層102をエッチング除去する。
【0042】
スペーサ21には、第1シリコン膜層101及び酸化シリコン膜層102のエッチング工程によって選択的に影響を受けない材料を採用可能である。例えば、SiN膜や金属膜等がスペーサ21に採用可能である。
【0043】
信号処理用半導体チップ30上のダイアタッチ材22と変位検出用半導体チップ10上のスペーサ21との接合は、機能素子100の用途等に応じて、真空、減圧、或いは不活性ガス雰囲気中等において実施される。そのため、可動部分を配置した空間を真空、減圧、或いは不活性ガス雰囲気に保持することができる。更に、凹部15は気密封止されるため、凹部15への異物の混入や水分の浸入を防止できる。
【0044】
以上に説明したように、本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造法によれば、機能素子100の可動部分を配置した空間の気密性の低下を抑制しつつ、小型化された半導体装置1を提供できる。
【0045】
<変形例>
図12に、本発明の実施の形態の変形例に係る半導体装置1を示す。図12に示した半導体装置1は、結合部20がダイアタッチ材22のみである。その他の構成については、図1に示す半導体装置1と同様である。
【0046】
ダイアタッチ材22が一定の硬度を有する材料である場合、変位検出用半導体チップ10の表面10a上にスペーサ21を形成しなくても、変位検出用半導体チップ10と信号処理用半導体チップ30をダイアタッチ材22を介して接合することにより、変位検出用半導体チップ10と信号処理用半導体チップ30間に一定の間隔を保てる。つまり、ダイアタッチ材22のみより、結合部20が形成される。
【0047】
例えば、信号処理用半導体チップ30の裏面30b上に環状のダイアタッチ材22を、膜厚20μm程度で形成する。ダイアタッチ材22を変位検出用半導体チップ10の表面10a上に熱圧着した場合に、ダイアタッチ材22の膜厚を15μm程度で安定させて、ダイアタッチ材22のみで結合部20を構成できる。或いは、変位検出用半導体チップ10と信号処理用半導体チップ30間の間隔を一定に保った状態でダイアタッチ材22を硬化させる。
【0048】
図12に示した半導体装置1によれば、変位検出用半導体チップ10の表面10a上にスペーサ21を形成する工程が必要ないため、製造工程を削減できる。
【0049】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0050】
既に述べた実施の形態の説明においては、変位検出用半導体チップ10に形成された機能素子100が加速度センサである例を示したが、変位検出用半導体チップ10がMEMS素子以外の、例えばSAW素子或いはFBARであってもよい。
【0051】
また、変位検出用半導体チップ10と信号処理用半導体チップ30とをワイヤーボンディングにより接続する例を示したが、変位検出用半導体チップ10と信号処理用半導体チップ30とをワイヤーボンディング以外の方法により電気的に接続してもよい。例えば、図13(a)、図13(b)に示すように、変位検出用半導体チップ10の表面10a及び信号処理用半導体チップ30の裏面30bそれぞれにおいて結合部20と接する領域以外の残余の領域にバンプ250を配置する。そして、バンプ250により変位検出用半導体チップ10と信号処理用半導体チップ30とを電気的に接続する。また、変位検出用半導体チップ10を貫通するビア150及びバンプ450を介して、変位検出用半導体チップ10及び信号処理用半導体チップ30と基板40とを電気的に接続する。図13(a)は、結合部20の内側にバンプ250を配置した例である。図13(b)は、結合部20の外側にバンプ250を配置した例である。
【0052】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態に係る半導体装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る半導体装置の機能素子の構成を示す模式図である。
【図3】図2に示した機能素子のIII−III方向に沿った断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その1)。
【図5】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その2)。
【図6】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その3)。
【図7】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その4)。
【図8】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その5)。
【図9】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その6)。
【図10】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その7)。
【図11】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その8)。
【図12】本発明の実施の形態の変形例に係る半導体装置の構成を示す模式図である。
【図13】本発明のその他の実施の形態に係る半導体装置の構成を示す模式図であり、図13(a)は結合部の内側にバンプを配置した例であり、図13(b)は結合部の外側にバンプを配置した例である。
【符号の説明】
【0054】
1…半導体装置
10…変位検出用半導体チップ
15…凹部
20…結合部
21…スペーサ
22…ダイアタッチ材
30…信号処理用半導体チップ
35…ウェハ
40…基板
50…モールド樹脂
100…機能素子
101…第1シリコン膜層
102…酸化シリコン膜層
103…第2シリコン膜層
110…第1の可動部分
120…第2の可動部分
211…酸化シリコン膜
212…SiN膜
300…処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹部が形成され、該凹部内に配置された可動部分を有する機能素子を備える変位検出用半導体チップと、
前記変位検出用半導体チップの前記表面上で前記凹部を囲んで環状に配置されたダイアタッチ材を含む結合部と、
前記可動部分の変位を検出した前記機能素子が出力する検出信号を処理する処理回路を有し、空洞を形成するように前記凹部の上方を覆って前記結合部上に配置された信号処理用半導体チップと
を備え、前記結合部によって前記凹部が気密封止されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記結合部が、前記変位検出用半導体チップ上に配置されたスペーサ、及び該スペーサの周囲を覆うダイアタッチ材を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記スペーサが絶縁膜又は多結晶シリコン膜であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記結合部がダイアタッチ材であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記変位検出用半導体チップの前記表面と前記可動部分の上面が同一平面に位置することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記変位検出用半導体チップ、前記結合部及び前記信号処理用半導体チップがモールド樹脂で覆われていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記変位検出用半導体チップと前記信号処理用半導体チップとを隔てる前記結合部の厚みが2μm以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記処理回路が、前記信号処理用半導体チップに面する裏面と対向する表面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記機能素子が、MEMS素子、表面弾性波素子、圧電薄膜共振器のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記可動部分が、前記凹部の内側面に固定端が固定され、該固定端から前記凹部がなす空間に自由端が延在する片持ち梁を有する加速度センサであることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
変位検出用半導体チップに、該変位検出用半導体チップの表面に形成された凹部内に可動部分を有する機能素子を形成するステップと、
前記機能素子が出力する検出信号を処理する処理回路を有する信号処理用半導体チップの裏面上に、環状のダイアタッチ材を形成するステップと、
前記ダイアタッチ材が前記凹部を囲むように前記ダイアタッチ材と前記変位検出用半導体チップとを接合して、前記信号処理用半導体チップと前記変位検出用半導体チップを対向させて配置するステップと
を含み、前記ダイアタッチ材によって前記凹部が気密封止されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記ダイアタッチ材と接する前記変位検出用半導体チップ上の位置にスペーサを形成するステップを更に含む請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記スペーサが絶縁膜又は多結晶シリコン膜であることを特徴とする請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記変位検出用半導体チップ、前記結合部及び前記信号処理用半導体チップをモールド封止するステップを更に含むことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記処理回路が、前記ダイアタッチ材が形成された前記裏面と対向する前記信号処理用半導体チップの表面に形成されていることを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−73919(P2010−73919A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240376(P2008−240376)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】