説明

半導体装置及び半導体装置の製造方法

【課題】ソース領域とドレイン領域間のリーク電流の発生が抑制された、LOCOS分離構造の半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板の上部の一部に互いに離間して形成された第1導電型のソース領域及びドレイン領域と、ソース領域とドレイン領域に挟まれた領域を含んで半導体基板上に配置されたゲート絶縁膜と、半導体基板上にゲート絶縁膜と連続して配置された、ゲート絶縁膜よりも膜厚の厚いLOCOS絶縁膜と、ゲート絶縁膜上及びゲート絶縁膜周囲のLOCOS絶縁膜上に渡り連続的に配置された多結晶シリコン膜からなるゲート電極とを備え、ゲート電極のチャネル幅方向の端部である周辺領域におけるゲート閾値電圧がゲート電極の中央領域におけるゲート閾値電圧よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LOCOS分離構造のMOSトランジスタを有する半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高耐圧のMOSトランジスタを実現するために、ドレイン電極と接する高不純物濃度のドレイン領域に隣接して、このドレイン領域よりも不純物濃度の低い領域(LDD領域)を形成した構造が採用されている。LDD領域を形成することによって、ドレイン領域近傍での電界を緩和できる。また、LOCOS法を用いてゲート絶縁膜よりも厚いフィールド絶縁膜(以下において「LOCOS絶縁膜」という。)を形成し、ゲート電極とドレイン領域間の電界を緩和する方法が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。ゲート絶縁膜よりも厚く形成されたLOCOS絶縁膜を有する構造を、以下において「LOCOS分離構造」という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−206163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LOCOS分離構造のMOSトランジスタにおいて、設計時のゲート閾値電圧よりも低いゲート・ソース間電圧の領域においてソース領域とドレイン領域間にリーク電流が流れる現象が生じることがある。
【0005】
本発明は、ソース領域とドレイン領域間のリーク電流の発生が抑制された、LOCOS分離構造の半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、(イ)半導体基板と、(ロ)半導体基板の上部の一部に互いに離間して形成された第1導電型のソース領域及びドレイン領域と、(ハ)ソース領域とドレイン領域に挟まれた領域を含んで半導体基板上に配置されたゲート絶縁膜と、(ニ)ソース領域とドレイン領域間に形成されるチャネル領域の周囲を囲んで半導体基板上にゲート絶縁膜と連続して配置された、ゲート絶縁膜よりも膜厚の厚いLOCOS絶縁膜と、(ホ)ソース領域とドレイン領域とに挟まれた領域において、ゲート絶縁膜上及びゲート絶縁膜周囲のLOCOS絶縁膜上に渡り連続的に配置された結晶シリコン膜からなるゲート電極とを備え、ゲート電極のチャネル幅方向の端部である周辺領域におけるゲート閾値電圧がゲート電極の中央領域におけるゲート閾値電圧よりも高い半導体装置が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、(イ)半導体基板の表面の一部にLOCOS法によってLOCOS絶縁膜を形成するステップと、(ロ)LOCOS絶縁膜が形成された領域の残余の領域において、LOCOS絶縁膜よりも膜厚の薄いゲート絶縁膜を、LOCOS絶縁膜と連続するように半導体基板の表面に形成するステップと、(ハ)ゲート絶縁膜上及びゲート絶縁膜周囲のLOCOS絶縁膜上に渡り連続的に、多結晶シリコン膜からなるゲート電極を形成するステップと、(ニ)ゲート電極が形成された領域を挟んで、半導体基板の上部に第1導電型のソース領域とドレイン領域を形成するステップと、(ホ)ゲート電極のチャネル幅方向の端部である周辺領域におけるゲート閾値電圧をゲート電極の中央領域におけるゲート閾値電圧よりも高くするステップであって、ゲート絶縁膜とLOCOS絶縁膜との境界からゲート電極の中央領域に向かって一定の距離に渡りゲート絶縁膜上のゲート電極に導電型不純物を注入するステップとを含む半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ソース領域とドレイン領域間のリーク電流の発生が抑制された、LOCOS分離構造の半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構造を示す模式的な平面図である。
【図3】図2のIII−III方向に沿った断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置と比較例の電流電圧特性を示すグラフである。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その1)。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その2)。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その3)。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その4)。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その5)。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その6)。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その7)。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その8)。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構造を示す模式的な平面図である。
【図15】図14のXV−XV方向に沿った断面図である。
【図16】本発明の第2の実施形態の変形例に係る半導体装置の構造を示す模式的な平面図である。
【図17】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その1)。
【図18】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その2)。
【図19】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための工程断面図である(その3)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0011】
又、以下に示す第1及び第2の実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置1を、図1〜図3に示す。図1は、図2のI−I方向の沿った断面図であり、半導体装置1のゲート幅方向に沿ったチャネル領域での切断面を示す。図3は、図2のIII−III方向に沿った断面図であり、半導体装置1のゲート長方向に沿ったゲート電極50の中央領域の切断面を示す。図2の平面図では、ゲート絶縁膜40を省略している。
【0013】
図1〜図3に示すように、半導体装置1は、半導体基板10と、半導体基板10の上部の一部に互いに離間して形成された第1導電型のソース領域20及びドレイン領域30と、ソース領域20とドレイン領域30に挟まれた領域を含んで半導体基板10上に配置されたゲート絶縁膜40と、ゲート絶縁膜40よりも膜厚の厚いLOCOS絶縁膜60と、ソース領域20とドレイン領域30とに挟まれた領域において、ゲート絶縁膜40上及びゲート絶縁膜40周囲のLOCOS絶縁膜60上に渡り連続的に配置された第1導電型の多結晶シリコン膜からなるゲート電極50とを備える。LOCOS絶縁膜60は、ソース領域20とドレイン領域30間に形成されるチャネル領域の周囲を囲んで、半導体基板10上にゲート絶縁膜40と連続して配置されている。なお、第1導電型と第2導電型とは互いに反対導電型である。すなわち、第1導電型がn型であれば、第2導電型はp型であり、半導体装置1はn型チャネルMOSトランジスタである。また、第1導電型がp型であれば、第2導電型はn型であり、半導体装置1はp型チャネルMOSトランジスタである。
【0014】
半導体装置1は、ゲート電極50のチャネル幅方向の端部である周辺領域Sにおけるゲート閾値電圧が、ゲート電極50の中央領域におけるゲート閾値電圧よりも高いMOSトランジスタである。なお、周辺領域Sを除いた領域をゲート電極50の中央領域とする。ここでゲート閾値電圧とは、半導体装置1を導通させるために必要なゲート電極50とソース領域20間に印加する電圧である。図1及び図2において、ゲート電極50の周辺領域Sを太線で囲んで示した(以下において同様。)。周辺領域Sは、ゲート絶縁膜40とLOCOS絶縁膜60との境界Tからゲート電極50の中央領域に向かって距離wまでの、ゲート絶縁膜40上に配置されたゲート電極50の領域を含む。また、図2において、ゲート電極50下方のLOCOS絶縁膜60の端部を破線で示している。
【0015】
半導体装置1においては、詳細は後述するが、ゲート電極50の周辺領域Sの第1導電体の不純物の濃度が、ゲート電極50の中央領域よりも低く形成されている。
【0016】
図1〜図3に示すように、半導体装置1は、LOCOS絶縁膜60を有するLOCOS分離構造である。LOCOS絶縁膜60をLOCOS法によって形成するため、半導体基板10の上面の一部にLOCOS絶縁膜60の下部が埋め込まれている。
【0017】
また、図1に示すように、ゲート電極50のゲート幅方向の両端部は、LOCOS絶縁膜60上に配置されている。また、ゲート電極50の側面に接してサイドウォール51が形成されている。
【0018】
半導体装置1のソース領域20は、ゲート電極50に近い領域に形成された第1導電型の低濃度ソース領域21と、低濃度ソース領域21よりも第1導電型の不純物の濃度が高い高濃度ソース領域22とが連結したLDS(lightly Doped Source)構造を有する。ドレイン領域30は、ゲート電極50に近い領域に形成された第1導電型の低濃度ドレイン領域31と、低濃度ドレイン領域31よりも第1導電型の不純物の濃度が高い高濃度ドレイン領域32とが連結したLDD(lightly Doped Drain)構造を有する。
【0019】
図1〜図3に示したように、半導体基板10は、第2導電型のシリコン基板11上に第1導電型のエピタキシャル層12を成長させ、エピタキシャル層12に第2導電型のウェル領域13を形成した構造である。ウェル領域13のLOCOS絶縁膜60で囲まれた領域に、半導体装置1のいわゆる「活性領域」が形成されている。
【0020】
LOCOS絶縁膜60の形成時に、LOCOS絶縁膜60下方のウェル領域13に拡散されていた不純物がLOCOS絶縁膜60の端部に吸収される。これにより、LOCOS絶縁膜60の端部近傍におけるウェル領域13の不純物濃度が低下する。その結果、LOCOS絶縁膜60の端部において、設計時のゲート閾値電圧よりも低いゲート・ソース間電圧(以下において「リーク電圧V(leak)」という。)においてソース領域20とドレイン領域30間にリーク電流が流れる。「設計時のゲート閾値電圧」とは、LOCOS絶縁膜60の端部近傍におけるウェル領域13の不純物濃度の低下がないとした場合の、予め設定された不純物濃度により定まる所定のゲート閾値電圧である。
【0021】
上記のリーク電流の発生は、特にn型チャネルMOSトランジスタにおいて多く観測される。このため、以下では、第1導電型がn型、第2導電型がp型である場合について、例示的に説明する。
【0022】
半導体装置1では、ゲート絶縁膜40とLOCOS絶縁膜60との境界T付近、即ちゲート電極50の周辺領域Sのn型不純物濃度が、ゲート電極50の中央領域のn型不純物濃度よりも低い。このため、ゲート電極50の周辺領域S下方に位置するLOCOS絶縁膜60の端部では、ゲート電極50の中央領域に比べてチャネル反転を起こしづらくなる。つまり、ゲート電極50の周辺領域Sにおいて部分的にゲート閾値電圧が上昇する。
【0023】
上記のように、半導体装置1において、ゲート電極50の周辺領域Sにおけるゲート閾値電圧(以下において、「周辺ゲート閾値電圧V(th)2」という。)は、ゲート電極50の中央領域におけるゲート閾値電圧(以下において、「中央ゲート閾値電圧V(th)1」という。)よりも高い。ゲート電極50の周辺領域S以外の領域において、ゲート閾値電圧は中央ゲート閾値電圧V(th)1である。また、中央ゲート閾値電圧V(th)1は設計時のゲート閾値電圧である。
【0024】
なお、中央ゲート閾値電圧V(th)1と周辺ゲート閾値電圧V(th)2との差が、設計時のゲート閾値電圧とリーク電圧V(leak)との差以上になるように、ゲート電極50の周辺領域Sのn型不純物濃度とゲート電極50の中央領域のn型不純物濃度との差が設定されることが好ましい。
【0025】
したがって、半導体装置1では、設計時のゲート閾値電圧よりも低いゲート・ソース間電圧において、LOCOS絶縁膜60の端部でソース領域20とドレイン領域30間でのリーク電流が発生しない。
【0026】
なお、ゲート電極50の周辺領域Sの導電型をp型にし、周辺領域S以外の領域における導電型をn型にしてもよい。この構造の半導体装置1においても、半導体装置1の周辺ゲート閾値電圧V(th)2を、中央ゲート閾値電圧V(th)1よりも高くできる。
【0027】
図4に示した特性Aは、第1の実施形態に係る半導体装置1のゲート・ソース間電圧Vgsとドレイン電流Idsとの関係を示す電流電圧特性であり、特性B〜特性Cは、比較例の電流電圧特性である。
【0028】
すなわち、特性Aは、ゲート絶縁膜40とLOCOS絶縁膜60との境界Tからゲート電極50の中央領域に向かって一定の距離wに渡ってゲート絶縁膜40上のゲート電極50のn型不純物の濃度が、ゲート電極50の中央領域におけるn型不純物の濃度よりも低い半導体装置1の電流電圧特性である。
【0029】
特性Bは、LOCOS絶縁膜60上のゲート電極50について、ゲート絶縁膜40とLOCOS絶縁膜60との境界Tまでの領域にp型不純物をイオン注入した比較例Bの電流電圧特性である。つまり、比較例Bは、境界TまでのLOCOS絶縁膜60上のゲート電極50のn型不純物の濃度が、ゲート電極50の中央領域におけるn型不純物の濃度よりも低い半導体装置である。
【0030】
特性Cは、ゲート電極50にp型不純物をイオン注入せずに、ゲート電極50のn型不純物の濃度が全領域で一様な比較例Cの電流電圧特性である。
【0031】
図4に示すように、特性B、Cに比べて、特性Aはゲート・ソース間電圧Vgsが低い領域でドレイン電流Idsが小さい。つまり、周辺領域Sにおけるゲート絶縁膜40上のゲート電極50のn型不純物の濃度を、ゲート電極50の中央領域におけるn型不純物の濃度よりも低くすることによって、リーク電流の発生を抑制できることが分かる。
【0032】
特性Bのように、ゲート電極50の周辺領域SにおいてLOCOS絶縁膜60上のゲート電極50にのみp型不純物を注入し、ゲート絶縁膜40上のゲート電極50にp型不純物を注入しない比較例Bの場合は、比較例Cよりも特性が若干改善されるものの、リーク電流を抑制することはできない。したがって、ゲート絶縁膜40とLOCOS絶縁膜60との境界Tからゲート電極50の中央領域に向かって一定の距離wにおいてゲート電極50の不純物濃度を低くしなければ、周辺ゲート閾値電圧V(th)2が中央ゲート閾値電圧V(th)1よりも高い半導体装置1を実現できないことが分かる。距離wは、例えば0.5μm程度である。
【0033】
以上に説明したように、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置1では、LOCOS絶縁膜60の端部近傍であるゲート電極50の周辺領域Sにおけるn型不純物濃度が、ゲート電極50の中央領域のn型不純物濃度よりも低い。このため、ゲート電極50の周辺領域Sにおける周辺ゲート閾値電圧V(th)2が、ゲート電極50の中央領域における中央ゲート閾値電圧V(th)1よりも高い。その結果、図1に示した半導体装置1によれば、LOCOS分離構造のMOSトランジスタにおいても、ソース領域20とドレイン領域30間でのリーク電流の発生を抑制できる。
【0034】
なお、上記では第1導電型がn型、第2導電型がp型である場合について説明したが、第1導電型がp型、第2導電型がn型である場合についても同様の効果が得られる。即ち、n型のウェル領域13にp型のソース領域20及びドレイン領域30が形成され、p型の多結晶シリコン膜からなるゲート電極50がゲート絶縁膜40及びLOCOS絶縁膜60上に配置された半導体装置1について、ゲート電極50の周辺領域Sにおけるp型の不純物濃度を、ゲート電極50の中央領域におけるp型の不純物濃度よりも低くする。これにより、ゲート電極50の周辺領域Sにおけるゲート閾値電圧をゲート電極50の中央領域におけるゲート閾値電圧よりも高くできる。また、上記の実施形態において、所望の特性を得るためにゲート電極の導電型及び不純物濃度は適宜変更してよい。
【0035】
以下に、ゲート電極50の周辺領域Sにおけるn型不純物濃度が、ゲート電極50の中央領域のn型不純物濃度よりも低い半導体装置1の製造方法の例を、図5〜図12を参照して説明する。以下に述べる半導体装置の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。なお、図5〜図12の各図において、図(a)は図2のI−I方向に沿った断面図、図(b)はIII−III方向に沿った断面図である。
【0036】
(イ)図5に示すように、p型のシリコン基板11上にエピタキシャル成長されたn型のエピタキシャル層12内に、p型のウェル領域13を形成する。これにより、半導体基板10が用意される。ウェル領域13は、例えばイオン注入法によってp型不純物をエピタキシャル層12の所定の位置にイオン注入した後、p型不純物を熱拡散させることによって形成される。
【0037】
(ロ)図6に示すように、エピタキシャル層12及びウェル領域13の表面の一部にLOCOS絶縁膜60を形成する。例えば、エピタキシャル層12及びウェル領域13の表面全体に窒化シリコン(SiN)膜を形成した後、フォトリソグラフィ技術などを用いてLOCOS絶縁膜60を形成する領域の窒化シリコン膜を除去する。そして、パターニングされた窒化シリコン膜をマスクにして、LOCOS法によってLOCOS絶縁膜60を選択的に形成させる。LOCOS絶縁膜60の膜厚は、例えば300nm〜600nm程度である。
【0038】
(ハ)半導体基板10上の窒化シリコン膜を除去した後、露出したウェル領域13の表面を熱酸化法などによって酸化して、LOCOS絶縁膜60よりも膜厚の薄いゲート絶縁膜40を形成する。ゲート絶縁膜40の膜厚は、例えば40nm〜60nm程度である。これにより、図7に示すように、LOCOS絶縁膜60が形成された領域の残余の領域において、LOCOS絶縁膜60と連続するゲート絶縁膜40が形成される。
【0039】
(ニ)化学気相成長(CVD)法などによって、n型多結晶シリコン膜を全面に形成する。次いで、フォトリソグラフィ技術などを用いてn型多結晶シリコン膜をパターニングし、図8に示すようにゲート電極50を形成する。つまり、ゲート絶縁膜40上及びゲート絶縁膜40周囲のLOCOS絶縁膜60上に渡り連続的に、n型多結晶シリコン膜からなるゲート電極50が形成される。なお、ノンドープ多結晶シリコン膜を形成した後に、n型不純物をイオン注入することでゲート電極50を形成してもよい。
【0040】
(ホ)ゲート電極50をマスクにしてリン(P)やヒ素(As)などのn型不純物をウェル領域13にイオン注入し、図9に示すように低濃度ソース領域21と低濃度ドレイン領域31を形成する。低濃度ソース領域21及び低濃度ドレイン領域31の表面不純物濃度は、例えば1×1017cm-3程度である。
【0041】
(ヘ)全面に窒化シリコン膜を形成した後、この窒化シリコン膜を反応性イオンエッチング(RIE)法などによって異方性エッチングする。その結果、図10に示すように、ゲート電極50の側面に接してサイドウォール51が形成される。サイドウォール51に酸化シリコン膜などを使用してもよい。
【0042】
(ト)フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングされたフォトレジスト膜やゲート電極50及びサイドウォール51をマスクにして、ウェル領域13の所定の領域にリンやヒ素などのn型不純物をイオン注入し、図11に示すように高濃度ソース領域22及び高濃度ドレイン領域32を形成する。高濃度ソース領域22及び高濃度ドレイン領域32の表面不純物濃度は、例えば2×1019cm-3程度である。図11に示すように、低濃度ソース領域21と高濃度ソース領域22は連結し、低濃度ドレイン領域31と高濃度ドレイン領域32は連結する。
【0043】
(チ)フォトレジスト膜90を全面に塗布した後、図12に示すように、ゲート絶縁膜40とLOCOS絶縁膜60との境界T領域の上方においてゲート電極50が露出するように、フォトレジスト膜90をパターニングする。このとき、ゲート電極50のチャネル幅方向の端部において、少なくともゲート絶縁膜40とLOCOS絶縁膜60との境界Tからゲート電極50の中央領域に向かって距離wに渡ってゲート電極50が露出するように、フォトレジスト膜90をパターニングする。次いで、フォトレジスト膜90をマスクにして、ボロン(B)などのp型不純物をゲート電極50にイオン注入する。これにより、ゲート電極50の周辺領域Sにp型不純物が注入される。p型不純物の注入量は、例えば1×1015cm-2程度である。その結果、ゲート電極50の周辺領域Sのn型不純物濃度が、ゲート電極50の中央領域のn型不純物濃度よりも低くなる。フォトレジスト膜90を除去して、図1に示した半導体装置1が完成する。
【0044】
上記では、LDS領域及びLDD領域を形成する場合について例示的に説明した。しかし、半導体装置1が、LDS領域及びLDD領域を有しない構造であってもよい。
【0045】
また、ゲート電極50の周辺領域Sにp型不純物を注入する工程は、単独の工程として行ってもよいし、他の半導体素子の製造工程と同時に行ってもよい。例えば、図示を省略するp型チャネルMOSトランジスタを半導体装置1と同時に半導体基板10上に形成する場合に、p型チャネルMOSトランジスタのソース領域やドレイン領域を形成するイオン注入工程においてゲート電極50の周辺領域Sにp型不純物を注入してもよい。
【0046】
なお、ゲート電極50の周辺領域Sに注入するp型不純物の濃度を高くすることによって、ゲート電極50の中央領域の導電型がn型のままで、ゲート電極50の周辺領域Sの導電型をp型にしてもよい。
【0047】
以上に説明したように、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置1の製造方法によれば、ゲート電極50の周辺領域Sのn型不純物濃度を、ゲート電極50の中央領域のn型不純物濃度よりも低くできる。その結果、半導体装置1のゲート絶縁膜40とLOCOS絶縁膜60との境界領域近傍における周辺ゲート閾値電圧V(th)2を、ゲート電極50の中央領域における中央ゲート閾値電圧V(th)1よりも高く設定することができる。このため、ソース領域20とドレイン領域30間でのリーク電流の発生が抑制された、LOCOS分離構造の半導体装置1を提供できる。
【0048】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る半導体装置1は、図13に示すように、ウェル領域13の周辺だけでなく、低濃度ソース領域21上及び低濃度ドレイン領域31上にLOCOS絶縁膜60が形成されていることが、図1に示した半導体装置1と異なる。図13に示したゲート電極50は、ゲート絶縁膜40上から低濃度ソース領域21上及び低濃度ドレイン領域31上に形成されたLOCOS絶縁膜60上に渡り、連続的に配置されている。
【0049】
図14に、図13に示した半導体装置1の平面図を示す。図13は、図14のXIII−XIII方向、即ち、半導体装置1のゲート長方向に沿ったゲート電極50の中央領域の切断面を示す。図14において、ゲート電極50下方のLOCOS絶縁膜60の端部を破線で示し、ゲート絶縁膜40を省略している。
【0050】
図14に示すように、高濃度ソース領域22上及び高濃度ドレイン領域32は、LOCOS絶縁膜60により周囲を囲まれている。低濃度ドレイン領域31上にLOCOS絶縁膜60を形成することによって、ゲート電極50とドレイン領域30間の耐圧が向上するという効果を奏する。
【0051】
図15に、図14のXV−XV方向、即ち、半導体装置1のゲート幅方向に沿ったチャネル領域での切断面を示す。図15に示した断面図は、図1に示した断面図と同様の構造を示す。
【0052】
図13〜図15に示す半導体装置1において、ゲート絶縁膜40と低濃度ソース領域21上及び低濃度ドレイン領域31上に形成されたLOCOS絶縁膜60との境界近傍のゲート電極50の周辺領域Sにおけるn型不純物の濃度が、ゲート電極50の中央領域におけるn型不純物の濃度よりも低く形成されている。このため、ゲート電極50の周辺領域S下方のLOCOS絶縁膜60の端部では、ゲート電極50の中央領域に比べてチャネル反転を起こしづらくなる。つまり、ゲート電極50の周辺領域Sにおいて部分的に閾値電圧が上昇する。
【0053】
したがって、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置1によれば、ゲート電極50の周辺領域Sにおける周辺ゲート閾値電圧V(th)2が、ゲート電極50の中央領域における中央ゲート閾値電圧V(th)1よりも高く設定される。その結果、第2の実施形態に係る半導体装置1によれば、LOCOSオフセット構造のMOSトランジスタにおいても、ソース領域20とドレイン領域30間でのリーク電流の発生を抑制できる。他は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0054】
図16に、第2の実施形態に係る半導体装置1の他の例を示す。図13〜図15に示した半導体装置1では、低濃度ソース領域21上及び低濃度ドレイン領域31上に形成されたLOCOS絶縁膜60とゲート絶縁膜40とのすべての境界領域上において、ゲート電極50のn型不純物の濃度が中央領域におけるn型不純物の濃度よりも低い。しかし、図16に示すように、ゲート電極50のチャネル幅方向の端部においてのみ、ゲート絶縁膜40とLOCOS絶縁膜60との境界Tからゲート電極50の中央領域に向かって距離wに渡って、ゲート電極50のn型不純物の濃度を中央領域におけるn型不純物の濃度よりも低くしてもよい。
【0055】
図13〜図15に示した半導体装置1を製造するには、例えば以下のような製造方法を採用可能である。即ち、図17に示すように、ウェル領域13に低濃度ソース領域21及び低濃度ドレイン領域31を形成する。低濃度ソース領域21及び低濃度ドレイン領域31は、例えばフォトリソグラフィ技術を用いて形成したフォトレジスト膜をマスクにして、イオン注入により形成される。
【0056】
次いで、図18に示すように、LOCOS絶縁膜60を形成する場合に、低濃度ソース領域21上及び低濃度ドレイン領域31上にLOCOS絶縁膜60を形成する。
【0057】
その後、図7〜図8を参照して説明したように、ゲート絶縁膜40、ゲート電極50を形成する。次いで、図10〜図11を参照して説明したように、サイドウォール51、高濃度ソース領域22及び高濃度ドレイン領域32を形成する。
【0058】
更に、フォトレジスト膜91を全面に塗布した後、図19に示すように、低濃度ソース領域21上及び低濃度ドレイン領域31上に形成されたLOCOS絶縁膜60とゲート絶縁膜40との境界領域の上方においてゲート電極50が露出するように、フォトレジスト膜91をパターニングする。このとき、ゲート電極50のチャネル幅方向の端部において、少なくともゲート絶縁膜40とLOCOS絶縁膜60との境界Tからゲート電極50の中央領域に向かって距離wに渡ってゲート電極50が露出するように、フォトレジスト膜91をパターニングする。
【0059】
次いで、フォトレジスト膜91をマスクにして、ボロン(B)などのp型不純物をゲート電極50にイオン注入する。これにより、ゲート電極50の周辺領域Sにp型不純物が注入される。その結果、ゲート電極50の周辺領域Sのn型不純物濃度が、ゲート電極50の中央領域のn型不純物濃度よりも低くなる。フォトレジスト膜91を除去して、図13〜図15に示した半導体装置1が完成する。
【0060】
以上に説明した第2の実施形態に係る半導体装置1の製造方法によれば、半導体装置1のゲート絶縁膜40と低濃度ソース領域21上及び低濃度ドレイン領域31上に形成されたLOCOS絶縁膜60との境界領域近傍における周辺ゲート閾値電圧V(th)2を、ゲート電極50の中央領域における中央ゲート閾値電圧V(th)1よりも高く設定することができる。このため、ソース領域20とドレイン領域30間でのリーク電流の発生が抑制された、LOCOSオフセット構造の半導体装置1を提供できる。
【0061】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1及び第2の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0062】
例えば、半導体基板10としてエピタキシャル層12及びウェル領域13が形成されていないシリコン基板を採用し、このシリコン基板にソース領域20やドレイン領域30を形成してもよい。
【0063】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0064】
1…半導体装置
10…半導体基板
11…シリコン基板
12…エピタキシャル層
13…ウェル領域
20…ソース領域
21…低濃度ソース領域
22…高濃度ソース領域
30…ドレイン領域
31…低濃度ドレイン領域
32…高濃度ドレイン領域
40…ゲート絶縁膜
50…ゲート電極
51…サイドウォール
60…LOCOS絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の上部の一部に互いに離間して形成された第1導電型のソース領域及びドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域に挟まれた領域を含んで前記半導体基板上に配置されたゲート絶縁膜と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域間に形成されるチャネル領域の周囲を囲んで前記半導体基板上に前記ゲート絶縁膜と連続して配置された、前記ゲート絶縁膜よりも膜厚の厚いLOCOS絶縁膜と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域とに挟まれた領域において、前記ゲート絶縁膜上及び前記ゲート絶縁膜周囲の前記LOCOS絶縁膜上に渡り連続的に配置された多結晶シリコン膜からなるゲート電極と
を備え、前記ゲート電極のチャネル幅方向の端部である周辺領域におけるゲート閾値電圧が前記ゲート電極の中央領域におけるゲート閾値電圧よりも高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート絶縁膜と前記LOCOS絶縁膜との境界から前記ゲート電極の中央領域に向かって一定の距離に渡り前記ゲート絶縁膜上の前記ゲート電極の導電型不純物濃度が、前記ゲート電極の中央領域における導電型不純物濃度と異なることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記境界から前記一定の距離に渡って前記ゲート絶縁膜上の前記ゲート電極の導電型が第2導電型であり、前記ゲート電極の中央領域における導電型が第1導電型であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ソース領域が、前記ゲート電極に近い領域に形成された第1導電型の低濃度ソース領域と、前記低濃度ソース領域よりも第1導電型の不純物濃度が高い高濃度ソース領域とが連結した構造であり、
前記ドレイン領域が、前記ゲート電極に近い領域に形成された第1導電型の低濃度ドレイン領域と、前記低濃度ドレイン領域よりも第1導電型の不純物濃度が高い高濃度ドレイン領域とが連結した構造である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記低濃度ソース領域及び前記低濃度ドレイン領域上に、前記LOCOS絶縁膜が配置されていることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体基板の表面の一部に、LOCOS法によってLOCOS絶縁膜を形成するステップと、
前記LOCOS絶縁膜が形成された領域の残余の領域において、前記LOCOS絶縁膜よりも膜厚の薄いゲート絶縁膜を、前記LOCOS絶縁膜と連続するように前記半導体基板の表面に形成するステップと、
前記ゲート絶縁膜上及び前記ゲート絶縁膜周囲の前記LOCOS絶縁膜上に渡り連続的に、多結晶シリコン膜からなるゲート電極を形成するステップと、
前記ゲート電極が形成された領域を挟んで、前記半導体基板の上部に第1導電型のソース領域とドレイン領域を形成するステップと、
前記ゲート電極のチャネル幅方向の端部である周辺領域におけるゲート閾値電圧を前記ゲート電極の中央領域におけるゲート閾値電圧よりも高くするステップであって、前記ゲート絶縁膜と前記LOCOS絶縁膜との境界から前記ゲート電極の中央領域に向かって一定の距離に渡り前記ゲート絶縁膜上の前記ゲート電極に導電型不純物を注入するステップと
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記ソース領域を形成するステップが、前記ゲート電極に近い領域に第1導電型の低濃度ソース領域を形成するステップと、前記低濃度ソース領域よりも第1導電型の不純物濃度が高い高濃度ソース領域を前記低濃度ソース領域と連結させて形成するステップとを含み、
前記ドレイン領域を形成するステップが、前記ゲート電極に近い領域に第1導電型の低濃度ドレイン領域を形成するステップと、前記低濃度ドレイン領域よりも第1導電型の不純物濃度が高い高濃度ドレイン領域を前記低濃度ドレイン領域と連結させて形成するステップとを含む
ことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記低濃度ソース領域上及び前記低濃度ドレイン領域上に、前記LOCOS絶縁膜を形成することを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記ゲート電極に第2導電型の不純物を注入するステップによって、前記ゲート電極の前記周辺領域を第2導電型にすることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−129348(P2012−129348A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279165(P2010−279165)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】