回路装置及び電子機器
【課題】低消費電力でキャリブレーションができる回路装置及び電子機器等を提供すること。
【解決手段】回路装置は、無線による送信処理を行う送信回路100と、送信回路100を制御する制御部110とを含む。制御部110は、第1の送信期間では、送信回路100のキャリブレーションパラメーターCLPとして、第1のキャリブレーションパラメーターCLP1を設定し、送信回路100は、第1の送信期間では、第1のキャリブレーションパラメーターCLP1に基づく第1の送信処理を行う。制御部110は、第2の送信期間では、キャリブレーションパラメーターCLPとして、第1の送信処理での送信状態の検出結果に基づいて更新された第2のキャリブレーションパラメーターCLP2を設定し、送信回路100は、第2の送信期間では、第2のキャリブレーションパラメーターCLP2に基づく第2の送信処理を行う。
【解決手段】回路装置は、無線による送信処理を行う送信回路100と、送信回路100を制御する制御部110とを含む。制御部110は、第1の送信期間では、送信回路100のキャリブレーションパラメーターCLPとして、第1のキャリブレーションパラメーターCLP1を設定し、送信回路100は、第1の送信期間では、第1のキャリブレーションパラメーターCLP1に基づく第1の送信処理を行う。制御部110は、第2の送信期間では、キャリブレーションパラメーターCLPとして、第1の送信処理での送信状態の検出結果に基づいて更新された第2のキャリブレーションパラメーターCLP2を設定し、送信回路100は、第2の送信期間では、第2のキャリブレーションパラメーターCLP2に基づく第2の送信処理を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
Bluetooth(登録商標)などに代表される近距離無線通信システムでは、通信を行う端末の一方又は双方が移動しながら行う場合があり、その際には端末に内蔵された電源(バッテリー等)を使用するために、消費電力の低減は重要な課題である。
【0003】
これらの近距離無線通信機器では、所望の周波数の信号を生成するためにPLL回路が使用されているが、製造工程でのプロセス変動、電源電圧の変動、使用時の温度変化や素子特性の経年変化などによってPLL回路の動作特性が変化する。これを補正するために、キャリブレーション処理が行われるが、キャリブレーション処理に時間がかかり、そのために消費電力が大きくなってしまうという問題がある。
【0004】
この課題に対して例えば特許文献1には、補正情報を記憶しておき、使用する度に補正情報をロードして設定する手法が開示されている。また、例えば特許文献2には、PLL回路に予め温度特性を持たせて温度変化による動作特性の変化を吸収する手法が開示されている。
【0005】
しかしながらこれらの手法では、キャリブレーション時間を短縮することが難しい、正確なキャリブレーションが難しいなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−112750号公報
【特許文献2】特開2008−5272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の幾つかの態様によれば、低消費電力でキャリブレーションができる回路装置及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、無線による送信処理を行う送信回路と、前記送信回路を制御する制御部とを含み、前記制御部は、第1の送信期間では、前記送信回路のキャリブレーションパラメーターとして、第1のキャリブレーションパラメーターを設定し、前記送信回路は、前記第1の送信期間では、前記第1のキャリブレーションパラメーターに基づく第1の送信処理を行い、前記制御部は、第2の送信期間では、前記キャリブレーションパラメーターとして、前記第1の送信処理での送信状態の検出結果に基づいて更新された第2のキャリブレーションパラメーターを設定し、前記送信回路は、前記第2の送信期間では、前記第2のキャリブレーションパラメーターに基づく第2の送信処理を行う回路装置に関係する。
【0009】
本発明の一態様によれば、制御部は、第1の送信期間での送信状態の検出結果に基づいて更新された第2のキャリブレーションパラメーターを設定することができるから、キャリブレーションのための期間を送信期間とは別に設ける必要がない。その結果、キャリブレーションのために消費される電力を削減することができるから、電池の寿命を延ばすことなどが可能になる。
【0010】
また本発明の一態様では、前記制御部は、第3の送信期間では、前記キャリブレーションパラメーターとして、前記第2の送信処理での送信状態の検出結果に基づいて更新された第3のキャリブレーションパラメーターを設定し、前記送信回路は、前記第3の送信期間では、前記第3のキャリブレーションパラメーターに基づく第3の送信処理を行ってもよい。
【0011】
このようにすれば、制御部は、第2の送信期間での送信状態の検出結果に基づいて更新された第3のキャリブレーションパラメーターを設定することができるから、キャリブレーションのための期間を別に設けることなしに、キャリブレーションパラメーターを更新することができる。
【0012】
また本発明の一態様では、前記制御部は、送信状態が所定の条件の送信状態になるまで前記キャリブレーションパラメーターの更新を繰り返してもよい。
【0013】
このようにすれば、制御部は、各送信期間におけるキャリブレーションパラメーターの更新を繰り返すことで、所定の条件の送信状態を実現するキャリブレーションパラメーターを設定することができる。
【0014】
また本発明の一態様では、記憶部を含み、前記第1のキャリブレーションパラメーターは、前記記憶部に記憶保持される初期キャリブレーションパラメーターであってもよい。
【0015】
このようにすれば、例えば工場出荷時に所定の条件の送信状態を実現するキャリブレーションパラメーターを初期キャリブレーションパラメーターとして記憶部に記憶保持することができる。その初期キャリブレーションパラメーターを用いることで、送信期間中でも送信処理に支障を与えずにキャリブレーションを行うことができる。
【0016】
また本発明の一態様では、環境測定センサーを含み、前記制御部は、前記環境測定センサーからの情報に基づいて、前記第1のキャリブレーションパラメーターを可変に設定してもよい。
【0017】
このようにすれば、制御部は、環境状態に応じて第1のキャリブレーションパラメーターを可変に設定することができるから、環境状態に適したキャリブレーションパラメーターを設定することができる。
【0018】
また本発明の一態様では、前記記憶部は、第1の環境状態〜第m(mは2以上の整数)の環境状態に応じた前記初期キャリブレーションパラメーターである第1の初期キャリブレーションパラメーター〜第mの初期キャリブレーションパラメーターを記憶し、前記制御部は、前記第1の環境状態〜前記第mの環境状態のうちの第i(iは1≦i≦mである整数)の環境状態である場合には、前記第1の初期キャリブレーションパラメーター〜前記第mの初期キャリブレーションパラメーターのうちの前記第iの初期キャリブレーションパラメーターに基づいて、前記第1のキャリブレーションパラメーターを設定してもよい。
【0019】
このようにすれば、制御部は、第1〜第mの環境状態に応じて第1のキャリブレーションパラメーターを設定することができるから、環境状態に適応するキャリブレーションパラメーターを設定することができる。
【0020】
また本発明の一態様では、前記送信回路は、送信用クロックを生成するPLL回路を含み、前記キャリブレーションパラメーターは、前記PLL回路を構成する回路素子のパラメーターであってもよい。
【0021】
このようにすれば、制御部は、キャリブレーションパラメーターを可変に設定することで、PLL回路の動作特性を可変に設定することができる。
【0022】
また本発明の一態様では、前記PLL回路は、電圧制御発振回路を含み、前記キャリブレーションパラメーターは、前記電圧制御発振回路の制御電圧と発振周波数との関係を設定するパラメーターであってもよい。
【0023】
このようにすれば、制御部は、キャリブレーションパラメーターを可変に設定することで、電圧制御発振回路の制御電圧と発振周波数との関係を可変に設定することができる。
【0024】
また本発明の一態様では、前記キャリブレーションパラメーターは、前記電圧制御発振回路の容量についてのパラメーターであってもよい。
【0025】
このようにすれば、制御部は、キャリブレーションパラメーターを可変に設定することで、電圧制御発振回路の容量を可変に設定することができる。
【0026】
また本発明の一態様では、前記送信状態の検出結果は、前記PLL回路のロック時間特定情報であり、前記制御部は、前記ロック時間特定情報に基づいてキャリブレーションパラメーターの更新を行ってもよい。
【0027】
このようにすれば、制御部は、PLL回路のロック時間特定情報に基づいてキャリブレーションパラメーターの更新を繰り返すことで、所定の送信状態を実現するキャリブレーションパラメーターを設定することができる。
【0028】
本発明の他の態様は、無線による受信処理を行う受信回路と、前記受信回路を制御する制御部とを含み、前記制御部は、第1の受信期間では、前記受信回路のキャリブレーションパラメーターとして、第1のキャリブレーションパラメーターを設定し、前記受信回路は、前記第1の受信期間では、前記第1のキャリブレーションパラメーターに基づく第1の受信処理を行い、前記制御部は、第2の受信期間では、前記キャリブレーションパラメーターとして、前記第1の受信処理での受信状態の検出結果に基づいて更新された第2のキャリブレーションパラメーターを設定し、前記受信回路は、前記第2の受信期間では、前記第2のキャリブレーションパラメーターに基づく第2の受信処理を行う回路装置に関係する。
【0029】
本発明の他の態様によれば、制御部は、第1の受信期間での受信状態の検出結果に基づいて更新された第2のキャリブレーションパラメーターを設定することができるから、キャリブレーションのための期間を受信期間とは別に設ける必要がない。その結果、キャリブレーションのために消費される電力を削減することができるから、電池の寿命を延ばすことなどが可能になる。
【0030】
また本発明の他の態様では、前記制御部は、第3の受信期間では、前記キャリブレーションパラメーターとして、前記第2の受信処理での受信状態の検出結果に基づいて更新された第3のキャリブレーションパラメーターを設定し、前記受信回路は、前記第3の受信期間では、前記第3のキャリブレーションパラメーターに基づく第3の受信処理を行ってもよい。
【0031】
このようにすれば、制御部は、第2の受信期間での受信状態の検出結果に基づいて更新された第3のキャリブレーションパラメーターを設定することができるから、キャリブレーションのための期間を別に設けることなしに、キャリブレーションパラメーターを更新することができる。
【0032】
また本発明の他の態様では、前記制御部は、受信状態が所定の条件の受信状態になるまで前記キャリブレーションパラメーターの更新を繰り返してもよい。
【0033】
このようにすれば、制御部は、各受信期間におけるキャリブレーションパラメーターの更新を繰り返すことで、所定の条件の受信状態を実現するキャリブレーションパラメーターを設定することができる。
【0034】
また本発明の他の態様では、記憶部を含み、前記第1のキャリブレーションパラメーターは、前記記憶部に記憶保持される初期キャリブレーションパラメーターであってもよい。
【0035】
このようにすれば、例えば工場出荷時に所定の条件の受信状態を実現するキャリブレーションパラメーターを初期キャリブレーションパラメーターとして記憶部に記憶保持することができる。その初期キャリブレーションパラメーターを用いることで、受信期間中でも受信処理に支障を与えずにキャリブレーションを行うことができる。
【0036】
本発明の他の態様は、上記いずれかに記載の回路装置を含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】回路装置の基本的な構成例。
【図2】図2(A)は、回路装置による無線通信手順の一例。図2(B)は、キャリブレーション処理を説明する図。
【図3】電圧制御発振回路の詳細な構成例。
【図4】電圧制御発振回路の容量設定を説明する図。
【図5】容量設定に対応する制御電圧と発振周波数との関係の一例。
【図6】図6(A)〜図6(C)は、製造プロセスの変動、供給電圧の変化、周囲温度の変化による発振周波数の変化の一例。
【図7】回路定数を可変に設定できるループフィルターの構成例。
【図8】PLL回路のロック時間を説明する図。
【図9】電圧制御発振回路の制御電圧の信号波形。
【図10】図10(A)、図10(B)は、ロック検出回路の第1の構成例及び動作を説明する図。
【図11】図11(A)、図11(B)は、ロック検出回路の第2の構成例及び動作を説明する図。
【図12】図12(A)は、初期キャリブレーションパラメーターの一例。図12(B)は、送信用及び受信用の初期キャリブレーションパラメーターの一例。
【図13】受信回路を含む回路装置の基本的な構成例。
【図14】電子機器の基本的な構成例。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0039】
1.回路装置
図1に本実施形態の回路装置の基本的な構成例を示す。本実施形態の回路装置は、送信回路100、制御部110及び記憶部130を含む。なお、本実施形態の回路装置は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0040】
送信回路100は、無線による送信処理を行い、PLL回路120、基準クロック生成回路140、ロック検出回路150、変調用制御電圧生成回路160、パワーアンプPAを含む。
【0041】
制御部110は、送信回路100を制御する。例えば、送信データを生成して変調用制御電圧生成回路160に出力したり、送信に用いる周波数チャネルを設定したり、送信回路100のキャリブレーション処理の制御などを行う。このキャリブレーション処理は、後述するように、ロック検出回路150からのロック検出信号LDT(広義にはロック時間特定情報)に基づいて、PLL回路120に対してキャリブレーションパラメーターCLPを設定することで実行される。
【0042】
記憶部130は、例えばフラッシュメモリー、EEPROM、強誘電体メモリー等の不揮発性メモリーであって、キャリブレーション処理に用いられる初期キャリブレーションパラメーターが記憶保持される。
【0043】
PLL回路120は、位相比較器PFD、チャージポンプCP、ループフィルターLF、電圧制御発振回路VCO、可変分周器PDIVを含み、基準クロック生成回路140からの基準クロックVCKに基づいて所望の周波数の送信用クロック(搬送波の信号)を生成する。
【0044】
電圧制御発振回路VCOの発振周波数は、理論的にはインダクターのインダクタンス値とキャパシターの容量値で決定されるが、実際にはトランジスターのゲート容量や寄生容量が存在することや、製造工程でのプロセス変動、電源電圧の変動、使用時の温度によって容量値が変動する。この変動により、発振周波数が変化する。また回路素子の特性の経年変化によっても発振周波数が変化する。このような発振周波数の変化を補正するために、キャリブレーション処理が行われる。
【0045】
ロック検出回路150は、PLL回路120において発振周波数がロックされたことを検出し、ロック検出信号LDT(広義にはロック時間特定情報)を制御部110に出力する。制御部110は、このロック検出信号LDTに基づいてロック時間、すなわちPLL回路120が動作を開始してから発振周波数がロックされるまでの時間を計測する。
【0046】
変調用制御電圧生成回路160は、制御部110からの送信データに基づいて、電圧制御発振回路VCOに対して、変調用制御電圧信号VBを出力する。
【0047】
パワーアンプPAは、電圧制御発振回路VCOの出力信号VQを増幅し、アンテナANTに供給する。
【0048】
また、本実施形態の回路装置は、環境測定センサーSNをさらに含んでもよい。この環境測定センサーSNは、例えば温度センサーであって、回路装置の周囲の温度を測定する。制御部110は、環境測定センサーSNからの情報(例えば温度情報)に基づいて、第1のキャリブレーションパラメーターCLP1を可変に設定することができる。
【0049】
本実施形態の回路装置によれば、送信回路のキャリブレーション処理を送信期間中に行うことができる。すなわち、送信期間の前にキャリブレーションのための期間を別に設けるのではなく、データを送信するための期間(送信期間)において、データ送信処理を行うと共に、キャリブレーション処理を並行して行うことができる。
【0050】
図2(A)に、本実施形態の回路装置による無線通信手順の一例を示す。この無線通信手順は、例えばBluetooth(登録商標)Low Energyなどの省電力近距離無線通信システムで採用されている。図2(A)に示すように、本実施形態の回路装置を含む2つの無線機器(電子機器)の間の無線通信では、コネクションインターバルとよばれる所定の時間の長さの期間が設けられ、1つのコネクションインターバルでは、無線機器1及び無線機器2の双方に、送信期間TTX及び受信期間TRXが少なくとも1回設けられる。1つの送信期間TTX又は1つの受信期間TRXでは、1パケットのデータが送信又は受信される。
【0051】
具体的には、無線機器1の第1の送信期間TTX1では、無線機器1から無線機器2に対して1パケットのデータが送信される。この時、無線機器2は、第1の受信期間TRX1に設定される。次に無線機器2の第1の送信期間TTX1では、無線機器2から無線機器1に対して1パケットのデータが送信される。この時、無線機器1は、第1の受信期間TRX1に設定される。1つのコネクションインターバルに含まれる送信期間TTX又は受信期間TRXの数は、データ量や各無線機器におけるデータ処理能力などによって変化する。
【0052】
1つのコネクションインターバルにおいて送受信が終了すると、各無線機器は低消費電力モードLPMに設定され、この低消費電力モードLPMの期間では無線通信は行われない。そして次のコネクションインターバルが開始されると、再び第1の送信期間TTX1、第1の受信期間TRX1が開始され、データの送受信が行われる。
【0053】
なお、1つの送信期間において送信されるデータは1パケットに限定されるものではなく、1送信期間において複数のパケットを送信してもよい。
【0054】
図2(B)は、本実施形態の回路装置におけるキャリブレーション処理を説明する図である。図2(B)には、第1〜第5の送信期間TTX1〜TTX5におけるロック時間tLCK1〜tLCK5及びキャリブレーションパラメーターCLP1〜CLP4を示す。
【0055】
第1の送信期間TTX1では、制御部110は、送信回路100のキャリブレーションパラメーターとして、第1のキャリブレーションパラメーターCLP1を設定する。そして、送信回路100は、第1のキャリブレーションパラメーターCLP1に基づく第1の送信処理を行う。ここで第1のキャリブレーションパラメーターCLP1は、記憶部110に記憶保持された初期キャリブレーションパラメーターCLPinitであってもよい。
【0056】
第2の送信期間TTX2では、制御部110は、キャリブレーションパラメーターとして、第1の送信処理での送信状態の検出結果に基づいて更新された第2のキャリブレーションパラメーターCLP2を設定する。そして、送信回路100は、第2のキャリブレーションパラメーターCLP2に基づく第2の送信処理を行う。
【0057】
さらに第3の送信期間TTX3では、キャリブレーションパラメーターとして、第2の送信処理での送信状態の検出結果に基づいて更新された第3のキャリブレーションパラメーターCLP3を設定する。そして、送信回路100は、第3のキャリブレーションパラメーターCLP3に基づく第3の送信処理を行う。
【0058】
同様に第4の送信期間TTX4では、キャリブレーションパラメーターとして、第4のキャリブレーションパラメーターCLP4が設定され、これに基づいて第4の送信処理が行われる。
【0059】
このようにして、制御部110は、送信状態が所定の条件の送信状態になるまでキャリブレーションパラメーターの更新を繰り返す。送信状態が所定の条件の送信状態になれば、制御部110は、それ以降の送信期間ではキャリブレーションパラメーターの更新を行わない。
【0060】
キャリブレーションパラメーターは、具体的にはPLL回路120を構成する回路素子のパラメーターであって、例えば電圧制御発振回路VCOの制御電圧と発振周波数との関係を設定するパラメーターであり、より具体的には、例えば電圧制御発振回路VCOの容量についてのパラメーターである。
【0061】
送信状態の検出結果は、PLL回路120のロック時間特定情報であって、具体的にはPLL回路120が動作を開始してから発振周波数がロックされるまでの時間(ロック時間)である。
【0062】
所定の条件の送信状態とは、例えばキャリブレーションパラメーターが最適な値、或いは最適に近い値に設定された送信状態であって、具体的にはロック時間(広義にはロック時間特定情報)ができるだけ短くなる送信状態である。
【0063】
図2(B)を用いて、送信状態が所定の条件の送信状態になるまでの処理を説明する。例えば第1のキャリブレーションパラメーターCLP1(例えばVCOの容量値Cp1)による送信処理のロック時間tLCK1は80μsである。次に制御部110は、第2のキャリブレーションパラメーターCLP2として、VCOの容量を容量値Cp1より大きい容量値Cp2に設定し、第2の送信処理を行う。この時のロック時間tLCK2は、90μsである。
【0064】
ロック時間を比較すると、tLCK1<tLCK2であるから、制御部110は、第3のキャリブレーションパラメーターCLP3として、VCOの容量を容量値Cp1より小さい容量値Cp3に設定し、第3の送信処理を行う。この時のロック時間tLCK3は、70μsである。ロック時間を比較すると、tLCK1>tLCK3であるから、制御部110は、第4のキャリブレーションパラメーターCLP4として、VCOの容量を容量値Cp3よりさらに小さい容量値Cp4に設定し、第4の送信処理を行う。この時の送信処理のロック時間tLCK4は、75μsである。
【0065】
ロック時間を比較すると、tLCK3<tLCK4であるから、制御部110は、第3のキャリブレーションパラメーターCLP3(例えば容量値Cp3)が設定された状態が、所定の条件の送信状態であると判断する。そして第5の送信期間TTX5以降では、キャリブレーションパラメーターとして第3のキャリブレーションパラメーターCLP3を設定する。
【0066】
このように本実施形態の回路装置によれば、送信回路100のキャリブレーション処理を通信期間中に行うことができるから、キャリブレーション処理のための期間を別に設ける必要がない。その結果、キャリブレーション処理のために消費される電力を削減することができるから、携帯機器などの場合に、電池(バッテリー)の寿命を延ばすことなどが可能になる。
【0067】
特にBluetooth(登録商標)Low Energyなどの省電力近距離無線通信システムでは、図2(A)に示したように複数の送信期間が設けられるから、送信期間毎にキャリブレーション処理を行うことで、短時間で最適なキャリブレーションパラメーターを設定することができる。
【0068】
もっともキャリブレーションパラメーターの初期値が不適当である場合には、ロックしなかったり、ロック時間が長くなったりすることで通信に支障が出ることも考えられるが、予め最適値に近い値を初期キャリブレーションパラメーターCLPinitとして記憶部に130に記憶しておき、これを初期値とすることで通信に支障が出ないようにすることができる。初期キャリブレーションパラメーターCLPinitは、例えば工場出荷時にロック時間を実測して、その実測結果に基づいて決定することができる。初期キャリブレーションパラメーターCLPinitの具体例については、後述する。
【0069】
なお、上述したBluetooth(登録商標)Low Energyなどの省電力近距離無線通信システムでは、通信エラーが発生した場合には該当するデータを再送信することができるから、ロック時間が長くなったとしても通信に支障が出ないようにすることができる。
【0070】
図3に、本実施形態の電圧制御発振回路VCOの詳細な構成例を示す。なお、本実施形態の電圧制御発振回路VCOは図3の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0071】
本構成例の電圧制御発振回路VCOは、搬送周波数制御用のバラクター及び周波数変調用のバラクターを含むLCタンク型電圧制御発振回路(LC−VCO:Voltage Controlled Oscillator)である。具体的には、2つのN型トランジスターT1、T2、2つのインダクター(コイル)L1、L2、搬送周波数制御用バラクターC1、C2、周波数変調用バラクターC3、C4、電流源IS、キャリブレーション用キャパシターCA1〜CA3、CB1〜CB3及びスイッチ素子SW1a〜SW3a、SW1b〜SW3bを含む。
【0072】
インダクターL1、L2、搬送周波数制御用バラクターC1、C2及びキャリブレーション用キャパシターCA1〜CA3、CB1〜CB3は、LC共振回路を構成する。
【0073】
スイッチ素子SW1a〜SW3a、SW1b〜SW3bは、制御部110からの制御信号に基づいてオン・オフされ、キャリブレーション用キャパシターCA1〜CA3、CB1〜CB3の容量値(広義にはキャリブレーションパラメーター)が可変に設定される。
【0074】
バラクターC1、C2は、制御電圧信号入力ノードNAに入力される制御電圧信号VAによって、容量値が変化するから、制御電圧を変化させることで電圧制御発振回路VCOの発振周波数(搬送波の周波数)を変化させることができる。この制御電圧と発振周波数との関係は、キャリブレーション用キャパシターCA1〜CA3、CB1〜CB3の容量値(広義にはキャリブレーションパラメーター)を変化させることで、可変に設定することができる。
【0075】
周波数変調用バラクターC3、C4は、変調用信号入力ノードNBに入力される変調用制御電圧信号VBによって容量値が変化するから、変調用制御電圧信号VBを変化させることで周波数変調を行うことができる。
【0076】
図4は、図3の電圧制御発振回路VCOのキャリブレーション用キャパシターCA1〜CA3、CB1〜CB3による容量設定を説明する図である。図4には、8段階の容量設定Cset1〜Cset8について、各スイッチ素子のオン・オフと総容量値とを示す。なお、図3に示すように、CA1、CB1の容量値をCcとし、CA2、CB2の容量値を2Ccとし、CA3、CB3の容量値を4Ccとした。
【0077】
例えば、容量設定Cset1は、全てのスイッチ素子がオン状態であり、総容量値は7Ccである。また、容量設定Cset2は、SW1a、SW1bがオフ状態で、他のスイッチ素子はオン状態であり、総容量値は6Ccである。また、容量設定Cset8は、全てのスイッチ素子がオフ状態であり、総容量値は0である。このように各スイッチ素子を制御することで、総容量値が0から7Ccの範囲で8段階の容量値を設定することができる。
【0078】
なお、容量設定の段階は8段階に限定されるものではなく、電圧制御発振回路VCOに含まれるキャリブレーション用キャパシター及びスイッチ素子の個数を増減することで、容量設定の段階数を増減することができる。
【0079】
図5に、容量設定Cset1〜Cset8に対応する制御電圧VAと発振周波数との関係の一例を示す。制御電圧VAは制御電圧調整範囲内で可変に設定され、それに応じて発振周波数は発振周波数出力範囲内で可変に設定される。
【0080】
PLL回路120がロックして安定した周波数の信号を出力し、ロック時間や位相ノイズなどの諸特性を満たすためには、周波数チャネルに応じた容量設定が必要となる。例えば図5の場合では、所望の周波数(搬送波の周波数)f1の場合は、容量設定はCset1〜Cset8の範囲で動作可能であるが、所望の周波数f2の場合は、容量設定をCset6〜Cset8の範囲にする必要がある。また、所望の周波数f3の場合は、容量設定をCset1又はCset2にする必要がある。このように複数の周波数チャネルを使用する回路装置(無線機器、電子機器)では、周波数チャネルに応じて容量設定を行う必要がある。
【0081】
図6(A)〜図6(C)に、製造プロセスの変動、供給電圧の変化、周囲温度の変化による発振周波数の変化の一例を示す。
【0082】
電圧制御発振回路VCOの発振周波数は、理論的にはインダクターのインダクタンス値とキャパシターの容量値で決定されるが、実際にはトランジスターのゲート容量や寄生容量が存在することや、製造工程でのプロセス変動、電源電圧の変動、使用時の温度によって容量値が変動する。この変動により、発振周波数が変化する。
【0083】
図6(A)に、製造工程でのプロセス変動によりトランジスターのしきい値電圧Vthが変化した場合の発振周波数特性を示す。図6(A)では、容量設定Cset1及びCset8の場合を示してあるが、他の容量設定の場合も同様の特性になる。図6(A)から分かるように、しきい値電圧Vthが標準値(Typ)を中心として上限値(High)と下限値(Low)との間で変動した(ばらついた)場合には、発振周波数が最大で50MHz程度変化する。
【0084】
図6(B)に、電圧制御発振回路VCOへの供給電圧(電源電圧)が変化した場合の発振周波数特性を示す。図6(B)から分かるように、供給電圧が1.6Vから1.8Vまで変化すると、発振周波数は最大で30MHz程度変化する。
【0085】
図6(C)に、周辺温度を変化させた場合の発振周波数特性を示す。図6(C)から分かるように、周辺温度が−40℃から80℃まで変化すると、発振周波数は最大で70MHz程度変化する。
【0086】
このように、プロセスの変動、供給電圧(電源電圧)の変化及び周辺温度の変化を全て考慮すると、発振周波数は例えば最大で150MHz程度変化することになる。従って、使用する周波数チャネルに対して上下に150MHz程度広げた周波数範囲でPLL回路120が動作する必要がある。
【0087】
キャリブレーション処理は、このようなプロセス変動等による発振周波数の変化を補正するためのものであって、具体的には、PLL回路120を構成する回路素子のパラメーター(例えば電圧制御発振回路VCOの容量)を最適な値に設定する処理である。そして設定されたパラメーターが最適な値(或いは最適値により近い値)であるか否かの判断は、PLL回路120のロック時間(広義にはロック時間特定情報)に基づいて行われる。すなわち、ロック時間ができるだけ短くなるように、キャリブレーションパラメーターが設定される。
【0088】
キャリブレーションパラメーターとしては、上述した電圧制御発振回路VCOの容量の他に、PLL回路120の比較周波数、チャージポンプCPの電流、ループフィルターLFの回路定数、電圧制御発振回路VCOのバイアス電流などがある。
【0089】
例えば、基準クロック生成回路140と位相比較器PFDとの間に可変分周器を設けて、基準クロックを分周して位相比較器PFDに入力することで、PLL回路の比較周波数を可変に設定することができる。比較周波数を高くすれば、ロック時間は短縮される。また、チャージポンプCPの電流及び電圧制御発振回路VCOのバイアス電流を大きくすれば、ロック時間は短縮される。
【0090】
ループフィルターLFは、低域を通過させるローパスフィルターであり、この回路定数を可変に設定することで、フィルターのカットオフ周波数を変化させることができる。例えば、カットオフ周波数を高くすれば、PLL回路の応答が速くなり、ロック時間は短縮される。図7に、回路定数を可変に設定できるループフィルターLFの構成例を示す。この構成例では、スイッチ素子S1〜S3をオン・オフすることで、ループフィルターLFのカットオフ周波数を変化させることができる。
【0091】
図8は、PLL回路120のロック時間を説明する図である。PLL回路120が動作を開始すると、電圧制御発振回路VCOの発振周波数は目標周波数(所望の搬送波周波数)に向かって上昇し、目標周波数を中心に上下に変動しながら最終的には目標周波数に安定する。ロック検出回路150は、発振周波数がほぼ一定になるタイミングで、ロック検出信号LDTを例えばHレベル(高電位レベル)に設定する。制御部110は、ロック検出信号LDTがLレベル(低電位レベル)からHレベルに変化することで、PLL回路120がロックしたことを認識する。こうすることで、制御部110は、PLL回路120の動作開始からロックまでの時間、すなわちロック時間を測定することができる。
【0092】
図9に、PLL回路120が動作を開始してからロックするまでの電圧制御発振回路VCOの制御電圧の信号波形を示す。図9には、容量設定Cset1〜Cset7に対応する制御電圧の信号波形を示してある。容量設定を変えることにより、すなわち電圧制御発振回路VCOのキャリブレーション用キャパシターの容量値を変えることにより、ロック時間が変化することが分かる。例えば、図9では容量設定Cset3の場合にロック時間が最も短くなり(図9のA1)、容量設定Cset7の場合にロック時間が最も長くなる(図9のA2)。また、図示していないが、容量設定Cset8の場合には、PLL回路120はロックしなくなる。
【0093】
図9から分かるように、ロック時間を計測して、ロック時間が最も短くなる容量設定(広義にはキャリブレーションパラメーター)を選ぶことで、キャリブレーションパラメーターを最適な値に設定することができる。
【0094】
図10(A)に、ロック検出回路150の第1の構成例を示す。本構成例は、2つのD型フリップフロップ回路DFF1、DFF2、2つのディレイ回路DLY1、DLY2、カウンター回路COUNT、5つのインバーター及び1つのANDゲートを含む。この回路は基準クロック生成回路140からの基準クロックVCKと可変分周器PDIVからのフィードバッククロックVFBとの位相を比較する。
【0095】
図10(B)は、ロック検出回路150の第1の構成例の動作を説明する図である。基準クロックVCKの立ち上がりエッジを中心に検出ウィンドウ期間TWが設定され、フィードバッククロックVFBの立ち上がりエッジがその検出ウィンドウ期間TW内に入っている場合にカウンター回路COUNTが1をカウントする。VFBの立ち上がりエッジが検出ウィンドウ期間TW内に入っていない場合には、カウンター回路COUNTはカウントしない。
【0096】
PLL回路120がロックしていない状態では、VCKとVFBの位相がずれているからVFBの立ち上がりエッジは検出ウィンドウ期間TW内に入らず、カウント値は0である。PLL回路120がロックしている状態では、VCKとVFBの位相が一致しているからVFBの立ち上がりエッジは検出ウィンドウ期間TW内に入り、1がカウントされる。ロック検出を確実にするために、例えば図10(B)に示すように、カウント値が5になった場合にロック検出信号LDTをHレベルに設定する。
【0097】
図11(A)に、ロック検出回路150の第2の構成例を示す。本構成例は、2つのコンパレーターCMP1、CMP2、基準電圧生成回路151及び検出信号生成回路152を含む。この回路は電圧制御発振回路VCOの制御電圧VAが所定の上限値VRHと所定の下限値VRLとの間に入っていることを検出する。
【0098】
図11(B)は、ロック検出回路150の第2の構成例の動作を説明する図である。第1のコンパレーターCMP1は、制御電圧VAが上限値VRHより高い場合に出力信号VC1をHレベルに設定する。また、第2のコンパレーターCMP2は、制御電圧VAが下限値VRLより低い場合に出力信号VC2をHレベルに設定する。検出信号生成回路152は、第1のコンパレーターCMP1の出力信号VC1の立ち下がりエッジから検出ウィンドウ期間TWを設定し、検出ウィンドウ期間TW内に第2のコンパレーターCMP2の出力信号VC2の立ち上がりエッジが検出されなかった場合にロック検出信号LDTをHレベルに設定する。
【0099】
本実施形態の回路装置では、初期キャリブレーションパラメーターCLPinitとして、第1〜第m(mは2以上の整数)の環境状態に応じた第1〜第mの初期キャリブレーションパラメーターを記憶部130に記憶することができる。例えば工場出荷時に第1〜第mの環境状態においてロック時間を実測し、その実測結果に基づいて第1〜第mの初期キャリブレーションパラメーターを記憶部130に記憶することができる。そして回路装置の環境状態が第1〜第mの環境状態のうちの第i(iは1≦i≦mである整数)の環境状態である場合には、制御部110は、第1〜第mの初期キャリブレーションパラメーターのうちの第iの初期キャリブレーションパラメーターに基づいて、第1のキャリブレーションパラメーターを設定する。
【0100】
さらに第1〜第mの初期キャリブレーションパラメーターは、複数の周波数チャネルを使用する場合には、それぞれの周波数チャネルについて設定する必要がある。例えば工場出荷時に、各周波数チャネルに対して、第1〜第mの環境状態におけるロック時間を実測し、その実測結果に基づいて各周波数チャネルに対して第1〜第mの初期キャリブレーションパラメーターをそれぞれ設定し、それらを記憶部130に記憶する。
【0101】
ここで第1〜第mの環境状態とは、回路装置の動作に影響を与える環境状態であって、例えば回路装置(無線機器、電子機器)の周辺温度(例えば高温、常温、低温など)である。
【0102】
図12(A)は、環境状態に応じた初期キャリブレーションパラメーターの一例である。図12(A)には、周波数チャネルCH1〜CH40ごとに、高温、常温、低温の3温度の環境状態(広義には第1〜第mの環境状態)に応じた初期容量設定(広義には第1〜第mの初期キャリブレーションパラメーター)を示す。例えば、周波数チャネルCH1については、高温ではCset3、常温ではCset4、低温ではCset4である。なお、例えば高温は85℃、常温は25℃、低温は−40℃である。
【0103】
本実施形態の回路装置によれば、温度センサー(広義には環境測定センサーSN)により回路装置の周囲の温度を測定し、測定された温度情報と図12(A)に示す初期キャリブレーションパラメーターとに基づいて、その温度環境に適したキャリブレーションパラメーターの初期値を設定することができる。このようにすることで、温度環境が変化した場合でも、キャリブレーション処理を短時間で確実に実行することができる。その結果、回路装置の消費電力を低減することができるから、携帯機器などの場合に、電池(バッテリー)の寿命を延ばすことなどが可能になる。
【0104】
2.受信回路を含む回路装置
図13に、本実施形態の受信回路170を含む回路装置の基本的な構成例を示す。図13の構成例は、上述した送信回路100、制御部110、記憶部130、環境測定センサーSNを含み、さらに無線による受信処理を行う受信回路170を含む。なお、本実施形態の回路装置は図13の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0105】
受信回路170は、低雑音増幅器LNA、周波数変換回路MIX、フィルターBPF、復調回路DEMODを含む。低雑音増幅器LNAは、アンテナANTから入力される受信信号を増幅し、周波数変換回路MIXは、受信周波数から中間周波数へ周波数変換を行う。フィルターBPFは、不要な周波数成分を除去して所望の信号を出力する。復調回路DEMODは、所望波の信号を復調して必要なデータを取り出して、制御部110に出力する。
【0106】
図13の構成例では、PLL回路120は、送信回路100と受信回路170とで共用されている。すなわち、PLL回路120は2つの電圧制御発振回路VCO1、VCO2及び2つの切換スイッチ素子SWA、SWQを含み、制御部110からの制御信号に基づいてこれらの切換スイッチ素子を切り換えることにより、送信時にはVCO1を動作させ、受信時にはVCO2を動作させる。
【0107】
本実施形態の受信回路170においても、上述した送信回路100と同様のキャリブレーション処理を行うことができる。受信用の電圧制御発振回路VCO2は、上述した図3の電圧制御発振回路と同じ構成とすることができる。すなわち、電圧制御発振回路VCO2にキャリブレーション用キャパシターを設けて、キャリブレーションパラメーターCLPに基づいて容量値を可変に設定することができる。
【0108】
このキャリブレーションパラメーターCLPは、送信回路100について図2(B)で説明した処理と同様の処理によって、最適な値、或いは最適に近い値に設定される。
【0109】
すなわち、第1の受信期間では、制御部110は、受信回路170のキャリブレーションパラメーターとして、第1のキャリブレーションパラメーターCLP1を設定する。そして、受信回路170は、第1のキャリブレーションパラメーターCLP1に基づく第1の受信処理を行う。ここで第1のキャリブレーションパラメーターCLP1は、記憶部110に記憶保持された初期キャリブレーションパラメーターCLPinitであってもよい。
【0110】
第2の受信期間では、制御部110は、キャリブレーションパラメーターとして、第1の受信処理での受信状態の検出結果に基づいて更新された第2のキャリブレーションパラメーターCLP2を設定する。そして、受信回路170は、第2のキャリブレーションパラメーターCLP2に基づく第2の受信処理を行う。
【0111】
さらに第3の受信期間では、キャリブレーションパラメーターとして、第2の受信処理での受信状態の検出結果に基づいて更新された第3のキャリブレーションパラメーターCLP3を設定する。そして、受信回路170は、第3のキャリブレーションパラメーターCLP3に基づく第3の受信処理を行う。
【0112】
同様に第4の受信期間では、キャリブレーションパラメーターとして、第4のキャリブレーションパラメーターCLP4が設定され、これに基づいて第4の受信処理が行われる。
【0113】
このようにして、制御部110は、受信状態が所定の条件の受信状態になるまでキャリブレーションパラメーターの更新を繰り返す。受信状態が所定の条件の受信状態になれば、制御部110は、それ以降の受信期間ではキャリブレーションパラメーターの更新を行わない。
【0114】
キャリブレーションパラメーターは、具体的にはPLL回路120を構成する回路素子のパラメーターであって、例えば受信用電圧制御発振回路VCO2の制御電圧と発振周波数との関係を設定するパラメーターであり、より具体的には、例えば受信用電圧制御発振回路VCO2の容量についてのパラメーターである。
【0115】
受信状態の検出結果は、PLL回路120のロック時間特定情報であって、具体的にはPLL回路120が動作を開始してから発振周波数がロックされるまでの時間(ロック時間)である。
【0116】
所定の条件の受信状態とは、例えばキャリブレーションパラメーターが最適な値、或いは最適に近い値に設定された受信状態であって、具体的にはロック時間(広義にはロック時間特定情報)ができるだけ短くなる受信状態である。
【0117】
図12(B)は、送信用及び受信用の環境状態に応じた初期キャリブレーションパラメーターの一例である。例えば工場出荷時に、各周波数チャネルに対して、高温、常温、低温の3温度の環境状態における送信時のロック時間と受信時のロック時間をそれぞれ実測し、その実測結果に基づいて初期キャリブレーションパラメーターをそれぞれ設定し、それらを記憶部130に記憶する。
【0118】
このように本実施形態の回路装置によれば、送信回路100及び受信回路170のキャリブレーション処理を送信期間及び受信期間中に行うことができるから、キャリブレーション処理のための期間を別に設ける必要がない。さらに温度センサー(広義には環境測定センサーSN)により回路装置の周囲の温度を測定し、測定された温度情報と図12(B)に示す初期キャリブレーションパラメーターとに基づいて、その温度環境に適したキャリブレーションパラメーターの初期値を設定することができる。このようにすることで、温度環境が変化した場合でも、キャリブレーション処理を短時間で確実に実行することができる。その結果、回路装置の消費電力を低減することができるから、携帯機器などの場合に、電池(バッテリー)の寿命を延ばすことなどが可能になる。
【0119】
3.電子機器
図14に、本実施形態の回路装置300を含む電子機器400の基本的な構成例を示す。本実施形態の電子機器400は、回路装置300、センサー部410、A/D変換器420、記憶部430、ホスト440、操作部450を含む。
【0120】
電子機器400は、例えば温度・湿度計、脈拍計、歩数計等であって、検出したデータを無線により送信することができる。センサー部410は、温度センサー、湿度センサー、ジャイロセンサー、加速度センサー、フォトセンサー、圧力センサー等を含み、電子機器400の用途に応じたセンサーが用いられる。センサー部410は、センサーの出力信号(センサー信号)を増幅し、フィルターによりノイズを除去する。A/D変換器420は、増幅された信号をデジタル信号に変換して回路装置300へ出力する。ホスト440は、例えばマイクロコンピューター等で構成され、デジタル信号処理や或いは記憶部430に記憶された設定情報や操作部450からの信号に基づいて電子機器400の制御処理を行う。記憶部430は、例えばフラッシュメモリーなどで構成され、設定情報や検出したデータ等を記憶する。操作部450は、例えばキーパッド等で構成され、使用者が電子機器400を操作するために用いられる。
【0121】
本実施形態の回路装置300を含む電子機器400によれば、送信回路100及び受信回路170のキャリブレーション処理を送信期間中及び受信期間中に行うことができるから、キャリブレーション処理のための期間を別に設ける必要がない。その結果、電子機器の消費電力を低減することができるから、携帯機器などの場合に、電池(バッテリー)の寿命を延ばすことなどが可能になる。
【0122】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また回路装置及び電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0123】
100 送信回路、110 制御部、120 PLL回路、130 記憶部、
140 基準クロック生成回路、150 ロック検出回路、
160 変調用制御電圧生成回路、170 受信回路、300 回路装置、
400 電子機器、410 センサー部、420 A/D変換器、430 記憶部、
440 ホスト、450 操作部、
CLP キャリブレーションパラメーター、LDT ロック検出信号、
SN 環境測定センサー
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
Bluetooth(登録商標)などに代表される近距離無線通信システムでは、通信を行う端末の一方又は双方が移動しながら行う場合があり、その際には端末に内蔵された電源(バッテリー等)を使用するために、消費電力の低減は重要な課題である。
【0003】
これらの近距離無線通信機器では、所望の周波数の信号を生成するためにPLL回路が使用されているが、製造工程でのプロセス変動、電源電圧の変動、使用時の温度変化や素子特性の経年変化などによってPLL回路の動作特性が変化する。これを補正するために、キャリブレーション処理が行われるが、キャリブレーション処理に時間がかかり、そのために消費電力が大きくなってしまうという問題がある。
【0004】
この課題に対して例えば特許文献1には、補正情報を記憶しておき、使用する度に補正情報をロードして設定する手法が開示されている。また、例えば特許文献2には、PLL回路に予め温度特性を持たせて温度変化による動作特性の変化を吸収する手法が開示されている。
【0005】
しかしながらこれらの手法では、キャリブレーション時間を短縮することが難しい、正確なキャリブレーションが難しいなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−112750号公報
【特許文献2】特開2008−5272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の幾つかの態様によれば、低消費電力でキャリブレーションができる回路装置及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、無線による送信処理を行う送信回路と、前記送信回路を制御する制御部とを含み、前記制御部は、第1の送信期間では、前記送信回路のキャリブレーションパラメーターとして、第1のキャリブレーションパラメーターを設定し、前記送信回路は、前記第1の送信期間では、前記第1のキャリブレーションパラメーターに基づく第1の送信処理を行い、前記制御部は、第2の送信期間では、前記キャリブレーションパラメーターとして、前記第1の送信処理での送信状態の検出結果に基づいて更新された第2のキャリブレーションパラメーターを設定し、前記送信回路は、前記第2の送信期間では、前記第2のキャリブレーションパラメーターに基づく第2の送信処理を行う回路装置に関係する。
【0009】
本発明の一態様によれば、制御部は、第1の送信期間での送信状態の検出結果に基づいて更新された第2のキャリブレーションパラメーターを設定することができるから、キャリブレーションのための期間を送信期間とは別に設ける必要がない。その結果、キャリブレーションのために消費される電力を削減することができるから、電池の寿命を延ばすことなどが可能になる。
【0010】
また本発明の一態様では、前記制御部は、第3の送信期間では、前記キャリブレーションパラメーターとして、前記第2の送信処理での送信状態の検出結果に基づいて更新された第3のキャリブレーションパラメーターを設定し、前記送信回路は、前記第3の送信期間では、前記第3のキャリブレーションパラメーターに基づく第3の送信処理を行ってもよい。
【0011】
このようにすれば、制御部は、第2の送信期間での送信状態の検出結果に基づいて更新された第3のキャリブレーションパラメーターを設定することができるから、キャリブレーションのための期間を別に設けることなしに、キャリブレーションパラメーターを更新することができる。
【0012】
また本発明の一態様では、前記制御部は、送信状態が所定の条件の送信状態になるまで前記キャリブレーションパラメーターの更新を繰り返してもよい。
【0013】
このようにすれば、制御部は、各送信期間におけるキャリブレーションパラメーターの更新を繰り返すことで、所定の条件の送信状態を実現するキャリブレーションパラメーターを設定することができる。
【0014】
また本発明の一態様では、記憶部を含み、前記第1のキャリブレーションパラメーターは、前記記憶部に記憶保持される初期キャリブレーションパラメーターであってもよい。
【0015】
このようにすれば、例えば工場出荷時に所定の条件の送信状態を実現するキャリブレーションパラメーターを初期キャリブレーションパラメーターとして記憶部に記憶保持することができる。その初期キャリブレーションパラメーターを用いることで、送信期間中でも送信処理に支障を与えずにキャリブレーションを行うことができる。
【0016】
また本発明の一態様では、環境測定センサーを含み、前記制御部は、前記環境測定センサーからの情報に基づいて、前記第1のキャリブレーションパラメーターを可変に設定してもよい。
【0017】
このようにすれば、制御部は、環境状態に応じて第1のキャリブレーションパラメーターを可変に設定することができるから、環境状態に適したキャリブレーションパラメーターを設定することができる。
【0018】
また本発明の一態様では、前記記憶部は、第1の環境状態〜第m(mは2以上の整数)の環境状態に応じた前記初期キャリブレーションパラメーターである第1の初期キャリブレーションパラメーター〜第mの初期キャリブレーションパラメーターを記憶し、前記制御部は、前記第1の環境状態〜前記第mの環境状態のうちの第i(iは1≦i≦mである整数)の環境状態である場合には、前記第1の初期キャリブレーションパラメーター〜前記第mの初期キャリブレーションパラメーターのうちの前記第iの初期キャリブレーションパラメーターに基づいて、前記第1のキャリブレーションパラメーターを設定してもよい。
【0019】
このようにすれば、制御部は、第1〜第mの環境状態に応じて第1のキャリブレーションパラメーターを設定することができるから、環境状態に適応するキャリブレーションパラメーターを設定することができる。
【0020】
また本発明の一態様では、前記送信回路は、送信用クロックを生成するPLL回路を含み、前記キャリブレーションパラメーターは、前記PLL回路を構成する回路素子のパラメーターであってもよい。
【0021】
このようにすれば、制御部は、キャリブレーションパラメーターを可変に設定することで、PLL回路の動作特性を可変に設定することができる。
【0022】
また本発明の一態様では、前記PLL回路は、電圧制御発振回路を含み、前記キャリブレーションパラメーターは、前記電圧制御発振回路の制御電圧と発振周波数との関係を設定するパラメーターであってもよい。
【0023】
このようにすれば、制御部は、キャリブレーションパラメーターを可変に設定することで、電圧制御発振回路の制御電圧と発振周波数との関係を可変に設定することができる。
【0024】
また本発明の一態様では、前記キャリブレーションパラメーターは、前記電圧制御発振回路の容量についてのパラメーターであってもよい。
【0025】
このようにすれば、制御部は、キャリブレーションパラメーターを可変に設定することで、電圧制御発振回路の容量を可変に設定することができる。
【0026】
また本発明の一態様では、前記送信状態の検出結果は、前記PLL回路のロック時間特定情報であり、前記制御部は、前記ロック時間特定情報に基づいてキャリブレーションパラメーターの更新を行ってもよい。
【0027】
このようにすれば、制御部は、PLL回路のロック時間特定情報に基づいてキャリブレーションパラメーターの更新を繰り返すことで、所定の送信状態を実現するキャリブレーションパラメーターを設定することができる。
【0028】
本発明の他の態様は、無線による受信処理を行う受信回路と、前記受信回路を制御する制御部とを含み、前記制御部は、第1の受信期間では、前記受信回路のキャリブレーションパラメーターとして、第1のキャリブレーションパラメーターを設定し、前記受信回路は、前記第1の受信期間では、前記第1のキャリブレーションパラメーターに基づく第1の受信処理を行い、前記制御部は、第2の受信期間では、前記キャリブレーションパラメーターとして、前記第1の受信処理での受信状態の検出結果に基づいて更新された第2のキャリブレーションパラメーターを設定し、前記受信回路は、前記第2の受信期間では、前記第2のキャリブレーションパラメーターに基づく第2の受信処理を行う回路装置に関係する。
【0029】
本発明の他の態様によれば、制御部は、第1の受信期間での受信状態の検出結果に基づいて更新された第2のキャリブレーションパラメーターを設定することができるから、キャリブレーションのための期間を受信期間とは別に設ける必要がない。その結果、キャリブレーションのために消費される電力を削減することができるから、電池の寿命を延ばすことなどが可能になる。
【0030】
また本発明の他の態様では、前記制御部は、第3の受信期間では、前記キャリブレーションパラメーターとして、前記第2の受信処理での受信状態の検出結果に基づいて更新された第3のキャリブレーションパラメーターを設定し、前記受信回路は、前記第3の受信期間では、前記第3のキャリブレーションパラメーターに基づく第3の受信処理を行ってもよい。
【0031】
このようにすれば、制御部は、第2の受信期間での受信状態の検出結果に基づいて更新された第3のキャリブレーションパラメーターを設定することができるから、キャリブレーションのための期間を別に設けることなしに、キャリブレーションパラメーターを更新することができる。
【0032】
また本発明の他の態様では、前記制御部は、受信状態が所定の条件の受信状態になるまで前記キャリブレーションパラメーターの更新を繰り返してもよい。
【0033】
このようにすれば、制御部は、各受信期間におけるキャリブレーションパラメーターの更新を繰り返すことで、所定の条件の受信状態を実現するキャリブレーションパラメーターを設定することができる。
【0034】
また本発明の他の態様では、記憶部を含み、前記第1のキャリブレーションパラメーターは、前記記憶部に記憶保持される初期キャリブレーションパラメーターであってもよい。
【0035】
このようにすれば、例えば工場出荷時に所定の条件の受信状態を実現するキャリブレーションパラメーターを初期キャリブレーションパラメーターとして記憶部に記憶保持することができる。その初期キャリブレーションパラメーターを用いることで、受信期間中でも受信処理に支障を与えずにキャリブレーションを行うことができる。
【0036】
本発明の他の態様は、上記いずれかに記載の回路装置を含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】回路装置の基本的な構成例。
【図2】図2(A)は、回路装置による無線通信手順の一例。図2(B)は、キャリブレーション処理を説明する図。
【図3】電圧制御発振回路の詳細な構成例。
【図4】電圧制御発振回路の容量設定を説明する図。
【図5】容量設定に対応する制御電圧と発振周波数との関係の一例。
【図6】図6(A)〜図6(C)は、製造プロセスの変動、供給電圧の変化、周囲温度の変化による発振周波数の変化の一例。
【図7】回路定数を可変に設定できるループフィルターの構成例。
【図8】PLL回路のロック時間を説明する図。
【図9】電圧制御発振回路の制御電圧の信号波形。
【図10】図10(A)、図10(B)は、ロック検出回路の第1の構成例及び動作を説明する図。
【図11】図11(A)、図11(B)は、ロック検出回路の第2の構成例及び動作を説明する図。
【図12】図12(A)は、初期キャリブレーションパラメーターの一例。図12(B)は、送信用及び受信用の初期キャリブレーションパラメーターの一例。
【図13】受信回路を含む回路装置の基本的な構成例。
【図14】電子機器の基本的な構成例。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0039】
1.回路装置
図1に本実施形態の回路装置の基本的な構成例を示す。本実施形態の回路装置は、送信回路100、制御部110及び記憶部130を含む。なお、本実施形態の回路装置は図1の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0040】
送信回路100は、無線による送信処理を行い、PLL回路120、基準クロック生成回路140、ロック検出回路150、変調用制御電圧生成回路160、パワーアンプPAを含む。
【0041】
制御部110は、送信回路100を制御する。例えば、送信データを生成して変調用制御電圧生成回路160に出力したり、送信に用いる周波数チャネルを設定したり、送信回路100のキャリブレーション処理の制御などを行う。このキャリブレーション処理は、後述するように、ロック検出回路150からのロック検出信号LDT(広義にはロック時間特定情報)に基づいて、PLL回路120に対してキャリブレーションパラメーターCLPを設定することで実行される。
【0042】
記憶部130は、例えばフラッシュメモリー、EEPROM、強誘電体メモリー等の不揮発性メモリーであって、キャリブレーション処理に用いられる初期キャリブレーションパラメーターが記憶保持される。
【0043】
PLL回路120は、位相比較器PFD、チャージポンプCP、ループフィルターLF、電圧制御発振回路VCO、可変分周器PDIVを含み、基準クロック生成回路140からの基準クロックVCKに基づいて所望の周波数の送信用クロック(搬送波の信号)を生成する。
【0044】
電圧制御発振回路VCOの発振周波数は、理論的にはインダクターのインダクタンス値とキャパシターの容量値で決定されるが、実際にはトランジスターのゲート容量や寄生容量が存在することや、製造工程でのプロセス変動、電源電圧の変動、使用時の温度によって容量値が変動する。この変動により、発振周波数が変化する。また回路素子の特性の経年変化によっても発振周波数が変化する。このような発振周波数の変化を補正するために、キャリブレーション処理が行われる。
【0045】
ロック検出回路150は、PLL回路120において発振周波数がロックされたことを検出し、ロック検出信号LDT(広義にはロック時間特定情報)を制御部110に出力する。制御部110は、このロック検出信号LDTに基づいてロック時間、すなわちPLL回路120が動作を開始してから発振周波数がロックされるまでの時間を計測する。
【0046】
変調用制御電圧生成回路160は、制御部110からの送信データに基づいて、電圧制御発振回路VCOに対して、変調用制御電圧信号VBを出力する。
【0047】
パワーアンプPAは、電圧制御発振回路VCOの出力信号VQを増幅し、アンテナANTに供給する。
【0048】
また、本実施形態の回路装置は、環境測定センサーSNをさらに含んでもよい。この環境測定センサーSNは、例えば温度センサーであって、回路装置の周囲の温度を測定する。制御部110は、環境測定センサーSNからの情報(例えば温度情報)に基づいて、第1のキャリブレーションパラメーターCLP1を可変に設定することができる。
【0049】
本実施形態の回路装置によれば、送信回路のキャリブレーション処理を送信期間中に行うことができる。すなわち、送信期間の前にキャリブレーションのための期間を別に設けるのではなく、データを送信するための期間(送信期間)において、データ送信処理を行うと共に、キャリブレーション処理を並行して行うことができる。
【0050】
図2(A)に、本実施形態の回路装置による無線通信手順の一例を示す。この無線通信手順は、例えばBluetooth(登録商標)Low Energyなどの省電力近距離無線通信システムで採用されている。図2(A)に示すように、本実施形態の回路装置を含む2つの無線機器(電子機器)の間の無線通信では、コネクションインターバルとよばれる所定の時間の長さの期間が設けられ、1つのコネクションインターバルでは、無線機器1及び無線機器2の双方に、送信期間TTX及び受信期間TRXが少なくとも1回設けられる。1つの送信期間TTX又は1つの受信期間TRXでは、1パケットのデータが送信又は受信される。
【0051】
具体的には、無線機器1の第1の送信期間TTX1では、無線機器1から無線機器2に対して1パケットのデータが送信される。この時、無線機器2は、第1の受信期間TRX1に設定される。次に無線機器2の第1の送信期間TTX1では、無線機器2から無線機器1に対して1パケットのデータが送信される。この時、無線機器1は、第1の受信期間TRX1に設定される。1つのコネクションインターバルに含まれる送信期間TTX又は受信期間TRXの数は、データ量や各無線機器におけるデータ処理能力などによって変化する。
【0052】
1つのコネクションインターバルにおいて送受信が終了すると、各無線機器は低消費電力モードLPMに設定され、この低消費電力モードLPMの期間では無線通信は行われない。そして次のコネクションインターバルが開始されると、再び第1の送信期間TTX1、第1の受信期間TRX1が開始され、データの送受信が行われる。
【0053】
なお、1つの送信期間において送信されるデータは1パケットに限定されるものではなく、1送信期間において複数のパケットを送信してもよい。
【0054】
図2(B)は、本実施形態の回路装置におけるキャリブレーション処理を説明する図である。図2(B)には、第1〜第5の送信期間TTX1〜TTX5におけるロック時間tLCK1〜tLCK5及びキャリブレーションパラメーターCLP1〜CLP4を示す。
【0055】
第1の送信期間TTX1では、制御部110は、送信回路100のキャリブレーションパラメーターとして、第1のキャリブレーションパラメーターCLP1を設定する。そして、送信回路100は、第1のキャリブレーションパラメーターCLP1に基づく第1の送信処理を行う。ここで第1のキャリブレーションパラメーターCLP1は、記憶部110に記憶保持された初期キャリブレーションパラメーターCLPinitであってもよい。
【0056】
第2の送信期間TTX2では、制御部110は、キャリブレーションパラメーターとして、第1の送信処理での送信状態の検出結果に基づいて更新された第2のキャリブレーションパラメーターCLP2を設定する。そして、送信回路100は、第2のキャリブレーションパラメーターCLP2に基づく第2の送信処理を行う。
【0057】
さらに第3の送信期間TTX3では、キャリブレーションパラメーターとして、第2の送信処理での送信状態の検出結果に基づいて更新された第3のキャリブレーションパラメーターCLP3を設定する。そして、送信回路100は、第3のキャリブレーションパラメーターCLP3に基づく第3の送信処理を行う。
【0058】
同様に第4の送信期間TTX4では、キャリブレーションパラメーターとして、第4のキャリブレーションパラメーターCLP4が設定され、これに基づいて第4の送信処理が行われる。
【0059】
このようにして、制御部110は、送信状態が所定の条件の送信状態になるまでキャリブレーションパラメーターの更新を繰り返す。送信状態が所定の条件の送信状態になれば、制御部110は、それ以降の送信期間ではキャリブレーションパラメーターの更新を行わない。
【0060】
キャリブレーションパラメーターは、具体的にはPLL回路120を構成する回路素子のパラメーターであって、例えば電圧制御発振回路VCOの制御電圧と発振周波数との関係を設定するパラメーターであり、より具体的には、例えば電圧制御発振回路VCOの容量についてのパラメーターである。
【0061】
送信状態の検出結果は、PLL回路120のロック時間特定情報であって、具体的にはPLL回路120が動作を開始してから発振周波数がロックされるまでの時間(ロック時間)である。
【0062】
所定の条件の送信状態とは、例えばキャリブレーションパラメーターが最適な値、或いは最適に近い値に設定された送信状態であって、具体的にはロック時間(広義にはロック時間特定情報)ができるだけ短くなる送信状態である。
【0063】
図2(B)を用いて、送信状態が所定の条件の送信状態になるまでの処理を説明する。例えば第1のキャリブレーションパラメーターCLP1(例えばVCOの容量値Cp1)による送信処理のロック時間tLCK1は80μsである。次に制御部110は、第2のキャリブレーションパラメーターCLP2として、VCOの容量を容量値Cp1より大きい容量値Cp2に設定し、第2の送信処理を行う。この時のロック時間tLCK2は、90μsである。
【0064】
ロック時間を比較すると、tLCK1<tLCK2であるから、制御部110は、第3のキャリブレーションパラメーターCLP3として、VCOの容量を容量値Cp1より小さい容量値Cp3に設定し、第3の送信処理を行う。この時のロック時間tLCK3は、70μsである。ロック時間を比較すると、tLCK1>tLCK3であるから、制御部110は、第4のキャリブレーションパラメーターCLP4として、VCOの容量を容量値Cp3よりさらに小さい容量値Cp4に設定し、第4の送信処理を行う。この時の送信処理のロック時間tLCK4は、75μsである。
【0065】
ロック時間を比較すると、tLCK3<tLCK4であるから、制御部110は、第3のキャリブレーションパラメーターCLP3(例えば容量値Cp3)が設定された状態が、所定の条件の送信状態であると判断する。そして第5の送信期間TTX5以降では、キャリブレーションパラメーターとして第3のキャリブレーションパラメーターCLP3を設定する。
【0066】
このように本実施形態の回路装置によれば、送信回路100のキャリブレーション処理を通信期間中に行うことができるから、キャリブレーション処理のための期間を別に設ける必要がない。その結果、キャリブレーション処理のために消費される電力を削減することができるから、携帯機器などの場合に、電池(バッテリー)の寿命を延ばすことなどが可能になる。
【0067】
特にBluetooth(登録商標)Low Energyなどの省電力近距離無線通信システムでは、図2(A)に示したように複数の送信期間が設けられるから、送信期間毎にキャリブレーション処理を行うことで、短時間で最適なキャリブレーションパラメーターを設定することができる。
【0068】
もっともキャリブレーションパラメーターの初期値が不適当である場合には、ロックしなかったり、ロック時間が長くなったりすることで通信に支障が出ることも考えられるが、予め最適値に近い値を初期キャリブレーションパラメーターCLPinitとして記憶部に130に記憶しておき、これを初期値とすることで通信に支障が出ないようにすることができる。初期キャリブレーションパラメーターCLPinitは、例えば工場出荷時にロック時間を実測して、その実測結果に基づいて決定することができる。初期キャリブレーションパラメーターCLPinitの具体例については、後述する。
【0069】
なお、上述したBluetooth(登録商標)Low Energyなどの省電力近距離無線通信システムでは、通信エラーが発生した場合には該当するデータを再送信することができるから、ロック時間が長くなったとしても通信に支障が出ないようにすることができる。
【0070】
図3に、本実施形態の電圧制御発振回路VCOの詳細な構成例を示す。なお、本実施形態の電圧制御発振回路VCOは図3の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0071】
本構成例の電圧制御発振回路VCOは、搬送周波数制御用のバラクター及び周波数変調用のバラクターを含むLCタンク型電圧制御発振回路(LC−VCO:Voltage Controlled Oscillator)である。具体的には、2つのN型トランジスターT1、T2、2つのインダクター(コイル)L1、L2、搬送周波数制御用バラクターC1、C2、周波数変調用バラクターC3、C4、電流源IS、キャリブレーション用キャパシターCA1〜CA3、CB1〜CB3及びスイッチ素子SW1a〜SW3a、SW1b〜SW3bを含む。
【0072】
インダクターL1、L2、搬送周波数制御用バラクターC1、C2及びキャリブレーション用キャパシターCA1〜CA3、CB1〜CB3は、LC共振回路を構成する。
【0073】
スイッチ素子SW1a〜SW3a、SW1b〜SW3bは、制御部110からの制御信号に基づいてオン・オフされ、キャリブレーション用キャパシターCA1〜CA3、CB1〜CB3の容量値(広義にはキャリブレーションパラメーター)が可変に設定される。
【0074】
バラクターC1、C2は、制御電圧信号入力ノードNAに入力される制御電圧信号VAによって、容量値が変化するから、制御電圧を変化させることで電圧制御発振回路VCOの発振周波数(搬送波の周波数)を変化させることができる。この制御電圧と発振周波数との関係は、キャリブレーション用キャパシターCA1〜CA3、CB1〜CB3の容量値(広義にはキャリブレーションパラメーター)を変化させることで、可変に設定することができる。
【0075】
周波数変調用バラクターC3、C4は、変調用信号入力ノードNBに入力される変調用制御電圧信号VBによって容量値が変化するから、変調用制御電圧信号VBを変化させることで周波数変調を行うことができる。
【0076】
図4は、図3の電圧制御発振回路VCOのキャリブレーション用キャパシターCA1〜CA3、CB1〜CB3による容量設定を説明する図である。図4には、8段階の容量設定Cset1〜Cset8について、各スイッチ素子のオン・オフと総容量値とを示す。なお、図3に示すように、CA1、CB1の容量値をCcとし、CA2、CB2の容量値を2Ccとし、CA3、CB3の容量値を4Ccとした。
【0077】
例えば、容量設定Cset1は、全てのスイッチ素子がオン状態であり、総容量値は7Ccである。また、容量設定Cset2は、SW1a、SW1bがオフ状態で、他のスイッチ素子はオン状態であり、総容量値は6Ccである。また、容量設定Cset8は、全てのスイッチ素子がオフ状態であり、総容量値は0である。このように各スイッチ素子を制御することで、総容量値が0から7Ccの範囲で8段階の容量値を設定することができる。
【0078】
なお、容量設定の段階は8段階に限定されるものではなく、電圧制御発振回路VCOに含まれるキャリブレーション用キャパシター及びスイッチ素子の個数を増減することで、容量設定の段階数を増減することができる。
【0079】
図5に、容量設定Cset1〜Cset8に対応する制御電圧VAと発振周波数との関係の一例を示す。制御電圧VAは制御電圧調整範囲内で可変に設定され、それに応じて発振周波数は発振周波数出力範囲内で可変に設定される。
【0080】
PLL回路120がロックして安定した周波数の信号を出力し、ロック時間や位相ノイズなどの諸特性を満たすためには、周波数チャネルに応じた容量設定が必要となる。例えば図5の場合では、所望の周波数(搬送波の周波数)f1の場合は、容量設定はCset1〜Cset8の範囲で動作可能であるが、所望の周波数f2の場合は、容量設定をCset6〜Cset8の範囲にする必要がある。また、所望の周波数f3の場合は、容量設定をCset1又はCset2にする必要がある。このように複数の周波数チャネルを使用する回路装置(無線機器、電子機器)では、周波数チャネルに応じて容量設定を行う必要がある。
【0081】
図6(A)〜図6(C)に、製造プロセスの変動、供給電圧の変化、周囲温度の変化による発振周波数の変化の一例を示す。
【0082】
電圧制御発振回路VCOの発振周波数は、理論的にはインダクターのインダクタンス値とキャパシターの容量値で決定されるが、実際にはトランジスターのゲート容量や寄生容量が存在することや、製造工程でのプロセス変動、電源電圧の変動、使用時の温度によって容量値が変動する。この変動により、発振周波数が変化する。
【0083】
図6(A)に、製造工程でのプロセス変動によりトランジスターのしきい値電圧Vthが変化した場合の発振周波数特性を示す。図6(A)では、容量設定Cset1及びCset8の場合を示してあるが、他の容量設定の場合も同様の特性になる。図6(A)から分かるように、しきい値電圧Vthが標準値(Typ)を中心として上限値(High)と下限値(Low)との間で変動した(ばらついた)場合には、発振周波数が最大で50MHz程度変化する。
【0084】
図6(B)に、電圧制御発振回路VCOへの供給電圧(電源電圧)が変化した場合の発振周波数特性を示す。図6(B)から分かるように、供給電圧が1.6Vから1.8Vまで変化すると、発振周波数は最大で30MHz程度変化する。
【0085】
図6(C)に、周辺温度を変化させた場合の発振周波数特性を示す。図6(C)から分かるように、周辺温度が−40℃から80℃まで変化すると、発振周波数は最大で70MHz程度変化する。
【0086】
このように、プロセスの変動、供給電圧(電源電圧)の変化及び周辺温度の変化を全て考慮すると、発振周波数は例えば最大で150MHz程度変化することになる。従って、使用する周波数チャネルに対して上下に150MHz程度広げた周波数範囲でPLL回路120が動作する必要がある。
【0087】
キャリブレーション処理は、このようなプロセス変動等による発振周波数の変化を補正するためのものであって、具体的には、PLL回路120を構成する回路素子のパラメーター(例えば電圧制御発振回路VCOの容量)を最適な値に設定する処理である。そして設定されたパラメーターが最適な値(或いは最適値により近い値)であるか否かの判断は、PLL回路120のロック時間(広義にはロック時間特定情報)に基づいて行われる。すなわち、ロック時間ができるだけ短くなるように、キャリブレーションパラメーターが設定される。
【0088】
キャリブレーションパラメーターとしては、上述した電圧制御発振回路VCOの容量の他に、PLL回路120の比較周波数、チャージポンプCPの電流、ループフィルターLFの回路定数、電圧制御発振回路VCOのバイアス電流などがある。
【0089】
例えば、基準クロック生成回路140と位相比較器PFDとの間に可変分周器を設けて、基準クロックを分周して位相比較器PFDに入力することで、PLL回路の比較周波数を可変に設定することができる。比較周波数を高くすれば、ロック時間は短縮される。また、チャージポンプCPの電流及び電圧制御発振回路VCOのバイアス電流を大きくすれば、ロック時間は短縮される。
【0090】
ループフィルターLFは、低域を通過させるローパスフィルターであり、この回路定数を可変に設定することで、フィルターのカットオフ周波数を変化させることができる。例えば、カットオフ周波数を高くすれば、PLL回路の応答が速くなり、ロック時間は短縮される。図7に、回路定数を可変に設定できるループフィルターLFの構成例を示す。この構成例では、スイッチ素子S1〜S3をオン・オフすることで、ループフィルターLFのカットオフ周波数を変化させることができる。
【0091】
図8は、PLL回路120のロック時間を説明する図である。PLL回路120が動作を開始すると、電圧制御発振回路VCOの発振周波数は目標周波数(所望の搬送波周波数)に向かって上昇し、目標周波数を中心に上下に変動しながら最終的には目標周波数に安定する。ロック検出回路150は、発振周波数がほぼ一定になるタイミングで、ロック検出信号LDTを例えばHレベル(高電位レベル)に設定する。制御部110は、ロック検出信号LDTがLレベル(低電位レベル)からHレベルに変化することで、PLL回路120がロックしたことを認識する。こうすることで、制御部110は、PLL回路120の動作開始からロックまでの時間、すなわちロック時間を測定することができる。
【0092】
図9に、PLL回路120が動作を開始してからロックするまでの電圧制御発振回路VCOの制御電圧の信号波形を示す。図9には、容量設定Cset1〜Cset7に対応する制御電圧の信号波形を示してある。容量設定を変えることにより、すなわち電圧制御発振回路VCOのキャリブレーション用キャパシターの容量値を変えることにより、ロック時間が変化することが分かる。例えば、図9では容量設定Cset3の場合にロック時間が最も短くなり(図9のA1)、容量設定Cset7の場合にロック時間が最も長くなる(図9のA2)。また、図示していないが、容量設定Cset8の場合には、PLL回路120はロックしなくなる。
【0093】
図9から分かるように、ロック時間を計測して、ロック時間が最も短くなる容量設定(広義にはキャリブレーションパラメーター)を選ぶことで、キャリブレーションパラメーターを最適な値に設定することができる。
【0094】
図10(A)に、ロック検出回路150の第1の構成例を示す。本構成例は、2つのD型フリップフロップ回路DFF1、DFF2、2つのディレイ回路DLY1、DLY2、カウンター回路COUNT、5つのインバーター及び1つのANDゲートを含む。この回路は基準クロック生成回路140からの基準クロックVCKと可変分周器PDIVからのフィードバッククロックVFBとの位相を比較する。
【0095】
図10(B)は、ロック検出回路150の第1の構成例の動作を説明する図である。基準クロックVCKの立ち上がりエッジを中心に検出ウィンドウ期間TWが設定され、フィードバッククロックVFBの立ち上がりエッジがその検出ウィンドウ期間TW内に入っている場合にカウンター回路COUNTが1をカウントする。VFBの立ち上がりエッジが検出ウィンドウ期間TW内に入っていない場合には、カウンター回路COUNTはカウントしない。
【0096】
PLL回路120がロックしていない状態では、VCKとVFBの位相がずれているからVFBの立ち上がりエッジは検出ウィンドウ期間TW内に入らず、カウント値は0である。PLL回路120がロックしている状態では、VCKとVFBの位相が一致しているからVFBの立ち上がりエッジは検出ウィンドウ期間TW内に入り、1がカウントされる。ロック検出を確実にするために、例えば図10(B)に示すように、カウント値が5になった場合にロック検出信号LDTをHレベルに設定する。
【0097】
図11(A)に、ロック検出回路150の第2の構成例を示す。本構成例は、2つのコンパレーターCMP1、CMP2、基準電圧生成回路151及び検出信号生成回路152を含む。この回路は電圧制御発振回路VCOの制御電圧VAが所定の上限値VRHと所定の下限値VRLとの間に入っていることを検出する。
【0098】
図11(B)は、ロック検出回路150の第2の構成例の動作を説明する図である。第1のコンパレーターCMP1は、制御電圧VAが上限値VRHより高い場合に出力信号VC1をHレベルに設定する。また、第2のコンパレーターCMP2は、制御電圧VAが下限値VRLより低い場合に出力信号VC2をHレベルに設定する。検出信号生成回路152は、第1のコンパレーターCMP1の出力信号VC1の立ち下がりエッジから検出ウィンドウ期間TWを設定し、検出ウィンドウ期間TW内に第2のコンパレーターCMP2の出力信号VC2の立ち上がりエッジが検出されなかった場合にロック検出信号LDTをHレベルに設定する。
【0099】
本実施形態の回路装置では、初期キャリブレーションパラメーターCLPinitとして、第1〜第m(mは2以上の整数)の環境状態に応じた第1〜第mの初期キャリブレーションパラメーターを記憶部130に記憶することができる。例えば工場出荷時に第1〜第mの環境状態においてロック時間を実測し、その実測結果に基づいて第1〜第mの初期キャリブレーションパラメーターを記憶部130に記憶することができる。そして回路装置の環境状態が第1〜第mの環境状態のうちの第i(iは1≦i≦mである整数)の環境状態である場合には、制御部110は、第1〜第mの初期キャリブレーションパラメーターのうちの第iの初期キャリブレーションパラメーターに基づいて、第1のキャリブレーションパラメーターを設定する。
【0100】
さらに第1〜第mの初期キャリブレーションパラメーターは、複数の周波数チャネルを使用する場合には、それぞれの周波数チャネルについて設定する必要がある。例えば工場出荷時に、各周波数チャネルに対して、第1〜第mの環境状態におけるロック時間を実測し、その実測結果に基づいて各周波数チャネルに対して第1〜第mの初期キャリブレーションパラメーターをそれぞれ設定し、それらを記憶部130に記憶する。
【0101】
ここで第1〜第mの環境状態とは、回路装置の動作に影響を与える環境状態であって、例えば回路装置(無線機器、電子機器)の周辺温度(例えば高温、常温、低温など)である。
【0102】
図12(A)は、環境状態に応じた初期キャリブレーションパラメーターの一例である。図12(A)には、周波数チャネルCH1〜CH40ごとに、高温、常温、低温の3温度の環境状態(広義には第1〜第mの環境状態)に応じた初期容量設定(広義には第1〜第mの初期キャリブレーションパラメーター)を示す。例えば、周波数チャネルCH1については、高温ではCset3、常温ではCset4、低温ではCset4である。なお、例えば高温は85℃、常温は25℃、低温は−40℃である。
【0103】
本実施形態の回路装置によれば、温度センサー(広義には環境測定センサーSN)により回路装置の周囲の温度を測定し、測定された温度情報と図12(A)に示す初期キャリブレーションパラメーターとに基づいて、その温度環境に適したキャリブレーションパラメーターの初期値を設定することができる。このようにすることで、温度環境が変化した場合でも、キャリブレーション処理を短時間で確実に実行することができる。その結果、回路装置の消費電力を低減することができるから、携帯機器などの場合に、電池(バッテリー)の寿命を延ばすことなどが可能になる。
【0104】
2.受信回路を含む回路装置
図13に、本実施形態の受信回路170を含む回路装置の基本的な構成例を示す。図13の構成例は、上述した送信回路100、制御部110、記憶部130、環境測定センサーSNを含み、さらに無線による受信処理を行う受信回路170を含む。なお、本実施形態の回路装置は図13の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0105】
受信回路170は、低雑音増幅器LNA、周波数変換回路MIX、フィルターBPF、復調回路DEMODを含む。低雑音増幅器LNAは、アンテナANTから入力される受信信号を増幅し、周波数変換回路MIXは、受信周波数から中間周波数へ周波数変換を行う。フィルターBPFは、不要な周波数成分を除去して所望の信号を出力する。復調回路DEMODは、所望波の信号を復調して必要なデータを取り出して、制御部110に出力する。
【0106】
図13の構成例では、PLL回路120は、送信回路100と受信回路170とで共用されている。すなわち、PLL回路120は2つの電圧制御発振回路VCO1、VCO2及び2つの切換スイッチ素子SWA、SWQを含み、制御部110からの制御信号に基づいてこれらの切換スイッチ素子を切り換えることにより、送信時にはVCO1を動作させ、受信時にはVCO2を動作させる。
【0107】
本実施形態の受信回路170においても、上述した送信回路100と同様のキャリブレーション処理を行うことができる。受信用の電圧制御発振回路VCO2は、上述した図3の電圧制御発振回路と同じ構成とすることができる。すなわち、電圧制御発振回路VCO2にキャリブレーション用キャパシターを設けて、キャリブレーションパラメーターCLPに基づいて容量値を可変に設定することができる。
【0108】
このキャリブレーションパラメーターCLPは、送信回路100について図2(B)で説明した処理と同様の処理によって、最適な値、或いは最適に近い値に設定される。
【0109】
すなわち、第1の受信期間では、制御部110は、受信回路170のキャリブレーションパラメーターとして、第1のキャリブレーションパラメーターCLP1を設定する。そして、受信回路170は、第1のキャリブレーションパラメーターCLP1に基づく第1の受信処理を行う。ここで第1のキャリブレーションパラメーターCLP1は、記憶部110に記憶保持された初期キャリブレーションパラメーターCLPinitであってもよい。
【0110】
第2の受信期間では、制御部110は、キャリブレーションパラメーターとして、第1の受信処理での受信状態の検出結果に基づいて更新された第2のキャリブレーションパラメーターCLP2を設定する。そして、受信回路170は、第2のキャリブレーションパラメーターCLP2に基づく第2の受信処理を行う。
【0111】
さらに第3の受信期間では、キャリブレーションパラメーターとして、第2の受信処理での受信状態の検出結果に基づいて更新された第3のキャリブレーションパラメーターCLP3を設定する。そして、受信回路170は、第3のキャリブレーションパラメーターCLP3に基づく第3の受信処理を行う。
【0112】
同様に第4の受信期間では、キャリブレーションパラメーターとして、第4のキャリブレーションパラメーターCLP4が設定され、これに基づいて第4の受信処理が行われる。
【0113】
このようにして、制御部110は、受信状態が所定の条件の受信状態になるまでキャリブレーションパラメーターの更新を繰り返す。受信状態が所定の条件の受信状態になれば、制御部110は、それ以降の受信期間ではキャリブレーションパラメーターの更新を行わない。
【0114】
キャリブレーションパラメーターは、具体的にはPLL回路120を構成する回路素子のパラメーターであって、例えば受信用電圧制御発振回路VCO2の制御電圧と発振周波数との関係を設定するパラメーターであり、より具体的には、例えば受信用電圧制御発振回路VCO2の容量についてのパラメーターである。
【0115】
受信状態の検出結果は、PLL回路120のロック時間特定情報であって、具体的にはPLL回路120が動作を開始してから発振周波数がロックされるまでの時間(ロック時間)である。
【0116】
所定の条件の受信状態とは、例えばキャリブレーションパラメーターが最適な値、或いは最適に近い値に設定された受信状態であって、具体的にはロック時間(広義にはロック時間特定情報)ができるだけ短くなる受信状態である。
【0117】
図12(B)は、送信用及び受信用の環境状態に応じた初期キャリブレーションパラメーターの一例である。例えば工場出荷時に、各周波数チャネルに対して、高温、常温、低温の3温度の環境状態における送信時のロック時間と受信時のロック時間をそれぞれ実測し、その実測結果に基づいて初期キャリブレーションパラメーターをそれぞれ設定し、それらを記憶部130に記憶する。
【0118】
このように本実施形態の回路装置によれば、送信回路100及び受信回路170のキャリブレーション処理を送信期間及び受信期間中に行うことができるから、キャリブレーション処理のための期間を別に設ける必要がない。さらに温度センサー(広義には環境測定センサーSN)により回路装置の周囲の温度を測定し、測定された温度情報と図12(B)に示す初期キャリブレーションパラメーターとに基づいて、その温度環境に適したキャリブレーションパラメーターの初期値を設定することができる。このようにすることで、温度環境が変化した場合でも、キャリブレーション処理を短時間で確実に実行することができる。その結果、回路装置の消費電力を低減することができるから、携帯機器などの場合に、電池(バッテリー)の寿命を延ばすことなどが可能になる。
【0119】
3.電子機器
図14に、本実施形態の回路装置300を含む電子機器400の基本的な構成例を示す。本実施形態の電子機器400は、回路装置300、センサー部410、A/D変換器420、記憶部430、ホスト440、操作部450を含む。
【0120】
電子機器400は、例えば温度・湿度計、脈拍計、歩数計等であって、検出したデータを無線により送信することができる。センサー部410は、温度センサー、湿度センサー、ジャイロセンサー、加速度センサー、フォトセンサー、圧力センサー等を含み、電子機器400の用途に応じたセンサーが用いられる。センサー部410は、センサーの出力信号(センサー信号)を増幅し、フィルターによりノイズを除去する。A/D変換器420は、増幅された信号をデジタル信号に変換して回路装置300へ出力する。ホスト440は、例えばマイクロコンピューター等で構成され、デジタル信号処理や或いは記憶部430に記憶された設定情報や操作部450からの信号に基づいて電子機器400の制御処理を行う。記憶部430は、例えばフラッシュメモリーなどで構成され、設定情報や検出したデータ等を記憶する。操作部450は、例えばキーパッド等で構成され、使用者が電子機器400を操作するために用いられる。
【0121】
本実施形態の回路装置300を含む電子機器400によれば、送信回路100及び受信回路170のキャリブレーション処理を送信期間中及び受信期間中に行うことができるから、キャリブレーション処理のための期間を別に設ける必要がない。その結果、電子機器の消費電力を低減することができるから、携帯機器などの場合に、電池(バッテリー)の寿命を延ばすことなどが可能になる。
【0122】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また回路装置及び電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0123】
100 送信回路、110 制御部、120 PLL回路、130 記憶部、
140 基準クロック生成回路、150 ロック検出回路、
160 変調用制御電圧生成回路、170 受信回路、300 回路装置、
400 電子機器、410 センサー部、420 A/D変換器、430 記憶部、
440 ホスト、450 操作部、
CLP キャリブレーションパラメーター、LDT ロック検出信号、
SN 環境測定センサー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線による送信処理を行う送信回路と、
前記送信回路を制御する制御部とを含み、
前記制御部は、第1の送信期間では、前記送信回路のキャリブレーションパラメーターとして、第1のキャリブレーションパラメーターを設定し、
前記送信回路は、前記第1の送信期間では、前記第1のキャリブレーションパラメーターに基づく第1の送信処理を行い、
前記制御部は、第2の送信期間では、前記キャリブレーションパラメーターとして、前記第1の送信処理での送信状態の検出結果に基づいて更新された第2のキャリブレーションパラメーターを設定し、
前記送信回路は、前記第2の送信期間では、前記第2のキャリブレーションパラメーターに基づく第2の送信処理を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、第3の送信期間では、前記キャリブレーションパラメーターとして、前記第2の送信処理での送信状態の検出結果に基づいて更新された第3のキャリブレーションパラメーターを設定し、
前記送信回路は、前記第3の送信期間では、前記第3のキャリブレーションパラメーターに基づく第3の送信処理を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御部は、送信状態が所定の条件の送信状態になるまで前記キャリブレーションパラメーターの更新を繰り返すことを特徴とする回路装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
記憶部を含み、
前記第1のキャリブレーションパラメーターは、前記記憶部に記憶保持される初期キャリブレーションパラメーターであることを特徴とする回路装置。
【請求項5】
請求項4において、
環境測定センサーを含み、
前記制御部は、前記環境測定センサーからの情報に基づいて、前記第1のキャリブレーションパラメーターを可変に設定することを特徴とする回路装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記記憶部は、第1の環境状態〜第m(mは2以上の整数)の環境状態に応じた前記初期キャリブレーションパラメーターである第1の初期キャリブレーションパラメーター〜第mの初期キャリブレーションパラメーターを記憶し、
前記制御部は、前記第1の環境状態〜前記第mの環境状態のうちの第i(iは1≦i≦mである整数)の環境状態である場合には、前記第1の初期キャリブレーションパラメーター〜前記第mの初期キャリブレーションパラメーターのうちの前記第iの初期キャリブレーションパラメーターに基づいて、前記第1のキャリブレーションパラメーターを設定することを特徴とする回路装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記送信回路は、送信用クロックを生成するPLL回路を含み、
前記キャリブレーションパラメーターは、前記PLL回路を構成する回路素子のパラメーターであることを特徴とする回路装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記PLL回路は、電圧制御発振回路を含み、
前記キャリブレーションパラメーターは、前記電圧制御発振回路の制御電圧と発振周波数との関係を設定するパラメーターであることを特徴とする回路装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記キャリブレーションパラメーターは、前記電圧制御発振回路の容量についてのパラメーターであることを特徴とする回路装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかにおいて、
前記送信状態の検出結果は、前記PLL回路のロック時間特定情報であり、
前記制御部は、前記ロック時間特定情報に基づいてキャリブレーションパラメーターの更新を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項11】
無線による受信処理を行う受信回路と、
前記受信回路を制御する制御部とを含み、
前記制御部は、第1の受信期間では、前記受信回路のキャリブレーションパラメーターとして、第1のキャリブレーションパラメーターを設定し、
前記受信回路は、前記第1の受信期間では、前記第1のキャリブレーションパラメーターに基づく第1の受信処理を行い、
前記制御部は、第2の受信期間では、前記キャリブレーションパラメーターとして、前記第1の受信処理での受信状態の検出結果に基づいて更新された第2のキャリブレーションパラメーターを設定し、
前記受信回路は、前記第2の受信期間では、前記第2のキャリブレーションパラメーターに基づく第2の受信処理を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記制御部は、第3の受信期間では、前記キャリブレーションパラメーターとして、前記第2の受信処理での受信状態の検出結果に基づいて更新された第3のキャリブレーションパラメーターを設定し、
前記受信回路は、前記第3の受信期間では、前記第3のキャリブレーションパラメーターに基づく第3の受信処理を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項13】
請求項12において、
前記制御部は、受信状態が所定の条件の受信状態になるまで前記キャリブレーションパラメーターの更新を繰り返すことを特徴とする回路装置。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれかにおいて、
記憶部を含み、
前記第1のキャリブレーションパラメーターは、前記記憶部に記憶保持される初期キャリブレーションパラメーターであることを特徴とする回路装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の回路装置を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
無線による送信処理を行う送信回路と、
前記送信回路を制御する制御部とを含み、
前記制御部は、第1の送信期間では、前記送信回路のキャリブレーションパラメーターとして、第1のキャリブレーションパラメーターを設定し、
前記送信回路は、前記第1の送信期間では、前記第1のキャリブレーションパラメーターに基づく第1の送信処理を行い、
前記制御部は、第2の送信期間では、前記キャリブレーションパラメーターとして、前記第1の送信処理での送信状態の検出結果に基づいて更新された第2のキャリブレーションパラメーターを設定し、
前記送信回路は、前記第2の送信期間では、前記第2のキャリブレーションパラメーターに基づく第2の送信処理を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、第3の送信期間では、前記キャリブレーションパラメーターとして、前記第2の送信処理での送信状態の検出結果に基づいて更新された第3のキャリブレーションパラメーターを設定し、
前記送信回路は、前記第3の送信期間では、前記第3のキャリブレーションパラメーターに基づく第3の送信処理を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御部は、送信状態が所定の条件の送信状態になるまで前記キャリブレーションパラメーターの更新を繰り返すことを特徴とする回路装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
記憶部を含み、
前記第1のキャリブレーションパラメーターは、前記記憶部に記憶保持される初期キャリブレーションパラメーターであることを特徴とする回路装置。
【請求項5】
請求項4において、
環境測定センサーを含み、
前記制御部は、前記環境測定センサーからの情報に基づいて、前記第1のキャリブレーションパラメーターを可変に設定することを特徴とする回路装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記記憶部は、第1の環境状態〜第m(mは2以上の整数)の環境状態に応じた前記初期キャリブレーションパラメーターである第1の初期キャリブレーションパラメーター〜第mの初期キャリブレーションパラメーターを記憶し、
前記制御部は、前記第1の環境状態〜前記第mの環境状態のうちの第i(iは1≦i≦mである整数)の環境状態である場合には、前記第1の初期キャリブレーションパラメーター〜前記第mの初期キャリブレーションパラメーターのうちの前記第iの初期キャリブレーションパラメーターに基づいて、前記第1のキャリブレーションパラメーターを設定することを特徴とする回路装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記送信回路は、送信用クロックを生成するPLL回路を含み、
前記キャリブレーションパラメーターは、前記PLL回路を構成する回路素子のパラメーターであることを特徴とする回路装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記PLL回路は、電圧制御発振回路を含み、
前記キャリブレーションパラメーターは、前記電圧制御発振回路の制御電圧と発振周波数との関係を設定するパラメーターであることを特徴とする回路装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記キャリブレーションパラメーターは、前記電圧制御発振回路の容量についてのパラメーターであることを特徴とする回路装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかにおいて、
前記送信状態の検出結果は、前記PLL回路のロック時間特定情報であり、
前記制御部は、前記ロック時間特定情報に基づいてキャリブレーションパラメーターの更新を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項11】
無線による受信処理を行う受信回路と、
前記受信回路を制御する制御部とを含み、
前記制御部は、第1の受信期間では、前記受信回路のキャリブレーションパラメーターとして、第1のキャリブレーションパラメーターを設定し、
前記受信回路は、前記第1の受信期間では、前記第1のキャリブレーションパラメーターに基づく第1の受信処理を行い、
前記制御部は、第2の受信期間では、前記キャリブレーションパラメーターとして、前記第1の受信処理での受信状態の検出結果に基づいて更新された第2のキャリブレーションパラメーターを設定し、
前記受信回路は、前記第2の受信期間では、前記第2のキャリブレーションパラメーターに基づく第2の受信処理を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記制御部は、第3の受信期間では、前記キャリブレーションパラメーターとして、前記第2の受信処理での受信状態の検出結果に基づいて更新された第3のキャリブレーションパラメーターを設定し、
前記受信回路は、前記第3の受信期間では、前記第3のキャリブレーションパラメーターに基づく第3の受信処理を行うことを特徴とする回路装置。
【請求項13】
請求項12において、
前記制御部は、受信状態が所定の条件の受信状態になるまで前記キャリブレーションパラメーターの更新を繰り返すことを特徴とする回路装置。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれかにおいて、
記憶部を含み、
前記第1のキャリブレーションパラメーターは、前記記憶部に記憶保持される初期キャリブレーションパラメーターであることを特徴とする回路装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれかに記載の回路装置を含むことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−142803(P2012−142803A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294517(P2010−294517)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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