説明

基板処理方法および基板処理装置

【課題】処理流体による基板処理の際に、基板表面上で顕著な変化を生じさせ、これにより、処理効率の向上を図ることができる基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【解決手段】ミキシングバルブ4の混合部40には、薬液供給源71〜74からの薬液原液ならびに純水供源からの常温純水および温純水を供給できる。ミキシングバルブ40から、処理液供給路3を介して、処理液ノズル2に処理液が供給され、この処理液が基板Wに供給される。処理液による基板Wの処理中に、薬液導入バルブ41〜44、流量調整バルブ101〜104、純水供給源バルブ51、温純水供給源バルブ52、純水バルブ5などの制御によって、プロセスパラメータに揺らぎが付与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理流体を用いて基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置などの製造工程で用いられる基板処理装置は、たとえば、1枚の基板をほぼ水平に保持して回転するスピンチャックと、スピンチャックに保持された基板に処理液(薬液またはリンス液)を供給する処理液ノズルとを備えている。処理液ノズルからは、一定の状態の処理液が吐出され、その処理液が基板の表面に到達するようになっている。すなわち、処理液ノズルから薬液が吐出される場合、その薬液の温度、濃度、組成、流量および圧力といったプロセスパラメータは、それぞれ一定の目標値に制御される。また、処理液ノズルからリンス液(たとえば純水(脱イオン化された純水))が吐出される場合にも、そのリンス液の温度、流量および圧力といったプロセスパラメータが一定に保持される。
【特許文献1】特開平4−171931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、処理液の状態を一定に保持していると、基板表面上の状態が一定になり、基板表面上で顕著な変化を生じさせることが難しい。
たとえば、基板表面のパーティクル(粒子)を除去するためにアンモニア過酸化水素水混合液(APM:ammonia-hydrogen peroxide mixture)を基板に供給する処理において、アンモニア過酸化水素水混合液の状態が一定であると、大きなパーティクル除去性能を発揮し難い。
【0004】
また、基板表面の金属汚染物を除去するために塩酸過酸化水素水混合液(HPM:hydrochloric acid/hydrogen peroxide mixture)を基板に供給する処理において、塩酸過酸化水素水混合液の状態が一定であると、大きな金属汚染除去性能を期待できない。
そこで、この発明の目的は、処理流体による基板処理の際に、基板表面上で顕著な変化を生じさせ、これにより、処理効率の向上を図ることができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板に処理流体を供給する処理流体供給工程と、この処理流体供給工程中に、基板に供給される処理流体に関するプロセスパラメータに揺らぎを付与する揺らぎ付与工程とを含む、基板処理方法である。
「揺らぎ」とは、一般に、「巨視的には一定であっても、微視的には平均値前後でたえず変動している現象」(広辞苑第五版)をいい、プロセスパラメータの「揺らぎ」とは、プロセスパラメータが、その巨視的な挙動(たとえば、一定、漸増または漸減)に対して十分に短い時間間隔で変動を示すことを意味する。「十分に短い時間間隔」とは、この場合、プロセスパラメータの巨視的な時間変化に対して十分に無視し得る時間間隔であり、目的とする基板処理を阻害しない程度の短い時間間隔である。
【0006】
「処理流体に関するプロセスパラメータ」とは、処理流体の状態を規定するパラメータのうち、基板処理に影響を及ぼすものをいう。
請求項1の発明によれば、基板に処理流体を供給しているときに、処理流体に関するプロセスパラメータに揺らぎが付与される。これにより、基板に供給される処理流体の状態に揺らぎが生じるので、それに応じて、基板表面の状態に顕著な変動(揺らぎ)を与えることができる。その結果、処理流体による処理効率を向上することができる。「基板表面の状態」とは、この場合、基板自体の表面の状態のほか、基板表面に存在する粒子、金属汚染その他これに類するものの状態を含む。
【0007】
プロセスパラメータに揺らぎを付与する際に、プロセスパラメータを連続的に変化させてもよいし、ステップ状(パルス状)に変化させてもよい。プロセスパラメータをステップ状に変化させることにより、より顕著な変化を基板表面に生じさせることができる。
請求項2記載の発明は、前記プロセスパラメータは、処理流体の活性度に関するパラメータを含む、請求項1記載の基板処理方法である。この発明によれば、処理流体の活性度に揺らぎが与えられることになるので、基板表面の状態に顕著な変化を生じさせることができ、処理流体による処理効率を高めることができる。
【0008】
請求項3に記載されているように、前記活性度に関するパラメータは、処理流体の温度および濃度の少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。これにより、温度または濃度に微視的な変化を与えることができるので、基板表面の状態に顕著な変化を生じさせることができ、処理流体による処理効率を確実に高めることができる。
請求項4記載の発明は、前記処理流体が、複数種類の流体を混合して調製される混合流体であり、前記活性度に関するパラメータは、前記混合流体の混合度を含む、請求項2または3記載の基板処理方法である。この発明によれば、混合流体の混合度に揺らぎを与えることで、活性度に揺らぎが生じる。これにより、基板表面の状態に揺らぎを付与することができ、混合流体による基板処理の効率を高めることができる。
【0009】
混合流体の例としては、硫酸および過酸化水素水を混合して調製される硫酸過酸化水素水混合液(SPM:sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture)を挙げることができる。硫酸過酸化水素水混合液は、硫酸と過酸化水素水とを混合することによって強い酸化力を生じ、かつ、反応熱によってその酸化力が一層強化されるもので、たとえば、基板表面のレジストを剥離するためのレジスト剥離液として用いられる。硫酸過酸化水素水混合液は、その混合度により酸化力の強弱が変化するので、混合度に揺らぎを与えることで、その活性度に揺らぎを生じさせることができる。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記プロセスパラメータは、処理流体の物理力に関するパラメータを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理方法である。この発明によれば、処理流体の物理力に揺らぎが付与されるので、基板表面の状態に顕著な変化を生じさせて、高効率での基板処理が可能になる。
請求項6に記載されているように、前記物理力に関するパラメータは、処理流体の温度、流量および圧力のうちの少なくともいずれか一つを含むことが好ましい。処理流体の温度に揺らぎを与えると、基板の膨張/収縮が生じるので、基板表面の状態に顕著な変化を与えることができる。また、流量または圧力に揺らぎを与えると、流体が基板表面に衝突するときの衝撃力に変化が生じる。このようにして、基板表面の状態に顕著な変化を生じさせることができる。
【0011】
請求項7記載の発明は、前記処理流体が、複数種類の流体を混合して調製される混合流体であり、前記プロセスパラメータが、前記混合流体の組成比を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理方法である。この発明によれば、混合流体の組成比に揺らぎが付与されることにより、基板表面の状態が顕著に変化する。これにより、処理流体による基板処理効率を向上できる。
【0012】
請求項8記載の発明は、前記揺らぎ付与工程が、プロセスパラメータの増加と減少とを繰り返す工程を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理方法である。こうしてプロセスパラメータの増減が繰り返されることによって、プロセスパラメータに揺らぎが付与される。プロセスパラメータの増加幅と減少幅とは等しくてもよいし、等しくなくてもよい。すなわち、プロセスパラメータが一定振幅範囲内で変動するようにして、プロセスパラメータの巨視的な挙動を一定としてもよいし、プロセスパラメータに巨視的な時間変化を生じさせ、プロセスパラメータを巨視的に漸増または漸減するようにしてもよい。換言すれば、プロセスパラメータの時間平均値(プロセスパラメータの揺らぎに対して十分な時間に渡る平均値)は、一定でもよいし、漸増または漸減してもよい。
【0013】
請求項9記載の発明は、前記揺らぎ付与工程が、プロセスパラメータの増加と減少とを周期的に繰り返す工程を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理方法である。この発明により、プロセスパラメータに周期的な揺らぎを付与することができる。この場合、揺らぎの周期は、目的とする基板処理を阻害せず、かつ、基板表面の状態(基板の状態、基板表面の異物の状態等)に変化(揺らぎ)を生じさせることができるように定められればよい。
【0014】
請求項10記載の発明は、基板に処理流体を供給する処理流体供給手段(2〜5,9,61〜64,71〜74)と、この処理流体供給手段が供給する処理流体に関するプロセスパラメータに揺らぎを付与する揺らぎ付与手段(7,30,33,41〜44,51〜53,55,78,79,101〜104)とを含む、基板処理装置である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表している。
【0015】
この構成により、基板に処理流体を供給しているときに、処理流体に関するプロセスパラメータに揺らぎが付与される。これにより、基板に供給される処理流体の状態に揺らぎが生じるので、それに応じて、基板表面の状態に顕著な変動(揺らぎ)を与えることができる。その結果、処理流体による処理効率を向上することができる。
この基板処理装置の発明に関しても、基板処理方法の発明と同様な変形が可能である。
【0016】
基板に対する処理は、たとえば、基板の表面からパーティクル(粒子)や各種金属汚染物などの不要物を除去するエッチング(洗浄)処理であってもよいし、基板の表面に酸化膜を形成させる酸化処理であってもよい。あるいは、基板の表面のレジストを除去するレジスト剥離処理であってもよいし、基板の表面のレジスト残渣(ポリマー)を除去するポリマー除去処理であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を簡略化して示す図である。この基板処理装置は、半導体ウエハ等の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置である。この基板処理装置は、基板Wをほぼ水平に保持して回転するスピンチャック1を備えている。
【0018】
スピンチャック1は、鉛直方向に延びたスピン軸11と、スピン軸11の上端に取り付けられたスピンベース12と、このスピンベース12の周縁部に配設された複数個の挟持部材13とを有している。複数個の挟持部材13は、基板Wの外形に対応した円周上に配置されていて、基板Wの周面を異なる複数の位置で挟持することにより、基板Wをほぼ水平な姿勢で保持することができる。また、モータなどの駆動源を含む回転駆動機構14がスピン軸11に結合されていて、複数個の挟持部材13で基板Wを保持した状態で、回転駆動機構14からスピン軸11に駆動力を入力することにより、基板Wをほぼ水平な姿勢でスピン軸11の中心軸線まわりに回転させることができる。
【0019】
なお、スピンチャック1としては、このような構成のものに限らず、たとえば、基板Wの下面を真空吸着することにより、基板Wをほぼ水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直軸線まわりに回転することにより、その保持した基板Wを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
スピンチャック1の上方には、そのスピンチャック1に保持された基板Wの表面(上面)に処理液を供給するための処理液ノズル2が設けられている。処理液ノズル2は、たとえば、スピンチャック1の上方でほぼ水平な方向に延びたアーム(図示せず)の先端に、処理液を吐出するための吐出口を下方に向けて取り付けられており、そのアームをほぼ水平な面内で揺動(所定角度範囲内で往復旋回)させることによって、スピンチャック1に保持された基板Wの表面上で、処理液ノズル2からの処理液の着液点をスキャン(移動)させることができるようになっている。
【0020】
処理液ノズル2には、薬液またはリンス液が処理液供給路3から供給されるようになっている。リンス液は、この実施形態では、純水(DIW:脱イオン化された純水。常温のもの)または温純水(HDIW:脱イオン化された温純水。DIWよりも高温のもの)である。薬液は、この実施形態では、薬液原液とリンス液(常温の純水または温純水)との混合液である。
【0021】
処理液供給路3は、一端が処理液ノズル2に結合され、その他端がミキシングバルブ4に結合されている。ミキシングバルブ4は、処理液を混合するための混合部40と、この混合部40に結合された薬液導入バルブ41,42,43,44とを備えている。また、混合部40には、純水導入路5が結合されており、この純水導入路5を介して純水(DIWまたはHDIW)が供給されるようになっている。純水導入路5から混合部40に純水を導入している状態で、薬液導入バルブ41〜44のいずれか一つまたは2つ以上を開くことにより、薬液原液と純水とを混合して、基板Wに供給すべき薬液を調製することができる。このように、処理液ノズル2からの吐出直前に薬液を調製する構成なので、調製済みの薬液をタンクに貯留しておく構成に比較して、薬効成分の劣化を抑制でき、薬液による処理を効果的に行うことができる。
【0022】
薬液導入バルブ41,42,43,44には、それぞれ、薬液導入路61,62,63,64が結合されている。これらの薬液導入路61,62,63,64には、それぞれ、薬液供給源71,72,73,74から、薬液原液が供給されるようになっている。ここでいう「薬液原液」とは、純水によって希釈される前の薬液を意味している。
たとえば、薬液供給源71は過酸化水素水(H22)を薬液導入路61に供給し、薬液供給源72は塩酸(HCl)を薬液導入路62に供給し、薬液供給源73はアンモニア水(NH4OH)を薬液導入路63に供給し、薬液供給源74はふっ酸(HF)を薬液導入路64に供給する。
【0023】
薬液導入路61,62,63,64には、それぞれ、薬液供給源71〜74側から順に、フィルタ81,82,83,84、流量計91,92,93,94、および流量調整バルブ101,102,103,104が介装されている。また、流量計91,92,93,94と流量調整バルブ101,102,103,104との間には、それぞれ、圧力計86,87,88,89が配置されている。フィルタ81〜84は、供給される薬液原液中の異物を除去する。流量計91〜94は、薬液導入路61〜64を通る薬液原液の流量を計測する。流量調整バルブ101〜104は、薬液導入路61〜64を通る薬液原液の流量を可変設定する。圧力計86,87,88,89は、薬液導入路61〜64内の薬液原液の圧力を測定する。
【0024】
基板Wの処理に用いられる薬液が塩酸過酸化水素水混合液(HPM)である場合には、ミキシングバルブ4において、薬液導入バルブ41を介して導入される過酸化水素水と、薬液導入バルブ42を介して導入される塩酸と、純水導入路5から導入される純水とが混合される。また、基板Wの処理に用いられる薬液がアンモニア過酸化水素水混合液(APM)である場合には、ミキシングバルブ4において、薬液導入バルブ41を介して導入される過酸化水素水と、薬液導入バルブ43を介して導入されるアンモニア水と、純水導入路5から導入される純水とが混合される。さらに、基板Wの処理に用いられる薬液が希ふっ酸(DHF)である場合には、ミキシングバルブ4において、薬液導入バルブ44を介して導入されるふっ酸と、純水導入路5から導入される純水とが混合される。
【0025】
これにより、たとえば、塩酸過酸化水素水混合液を用いた金属汚染除去処理、アンモニア過酸化水素水混合液を用いたパーティクル除去処理、および希ふっ酸を用いた自然酸化膜除去処理を行うことができる。その場合に、流量調整バルブ101,102,103,104の制御によって、薬液の濃度や混合組成を調整することができる。また、常温の純水と常温よりも高温の温純水とを切り換えることによって、薬液の温度を変化させることができる。
【0026】
薬液供給源71は、薬液原液75を貯留する薬液タンク76と、この薬液タンク76に接続された窒素ガス供給路77とを備えている。薬液タンク76内に貯留された薬液原液75中に薬液導入路61の一端が浸漬されている。薬液タンク76は、密閉容器で構成されており、この薬液タンク76内に窒素ガス供給路77から窒素ガス(N2)を導入することにより、薬液タンク76内の圧力が高まり、薬液原液75が薬液導入路61へと送り出される。窒素ガス供給路77には、窒素ガス圧力を調整するためのレギュレータ78と、窒素ガス供給路77を開閉する窒素ガスバルブ79とが介装されている。
【0027】
薬液供給源72〜74の構成は、薬液供給源71と実質的に同様であるので、図示および詳しい説明を省略する。
純水導入路5には、純水供給源バルブ51または温純水供給源バルブ52を介して、常温の純水(DIW)または温純水(HDIW)が選択的に供給されるようになっている。また、純水導入路5には、純水の流通方向に関して上流側から順に、純水導入路5に供給されてくる純水の流圧を調節するためのレギュレータ53と、純水導入路5を流れる純水の流量を計測する流量計54と、流量計54とミキシングバルブ4との間の流路を開閉する純水バルブ55とが介装されている。また、流量計54と純水バルブ55との間には、純水導入路5内の純水の圧力を測定する圧力計56が配置されている。
【0028】
図2は、この基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。この基板処理装置は、たとえば、マイクロコンピュータで構成される制御装置7を備えている。制御装置7には、回転駆動機構14、薬液導入バルブ41〜44、純水供給源バルブ51、温純水供給源バルブ52、レギュレータ53,78、流量計54,91〜94、純水バルブ55、圧力計56,86〜89、窒素ガスバルブ79、および流量調整バルブ101〜104が接続されている。制御装置7は、基板Wの処理のために、予め定められたプログラムに従って、回転駆動機構14およびレギュレータ53,78の動作を制御し、圧力計56,86〜89および流量計54,91〜94の出力をモニタし、また、窒素ガスバルブ79、薬液導入バルブ41〜44、純水供給源バルブ51、温純水供給源バルブ52および純水バルブ55の開閉を制御し、流量調整バルブ101〜104の開度を制御する。
【0029】
図3は、一枚の基板Wに対する処理工程の一例を説明するための流れ図である。処理対象の基板Wがスピンチャック1に搬入されると(ステップS1)、制御装置7は回転駆動機構14を駆動して、基板Wを所定の液処理速度で回転させる(ステップS2)。このとき、薬液導入バルブ41〜44、純水供給源バルブ51、温純水供給源バルブ52および純水バルブ55は、いずれも閉状態に制御されている。
【0030】
基板Wの回転速度が液処理速度に達すると、制御装置7は、純水供給源バルブ51、温純水供給源バルブ52、純水バルブ55、過酸化水素水用の薬液導入バルブ41およびアンモニア水用の薬液導入バルブ43などを制御することにより、処理液ノズル2から、基板Wの表面にアンモニア過酸化水素水混合液(APM)を吐出させる(ステップS3)。
より具体的には、純水供給源バルブ51または温純水供給源バルブ52が開かれ、さらに、純水バルブ55が開かれることによって、ミキシングバルブ4の混合部40に常温の純水または温純水が導入される。一方、薬液導入バルブ41,43が開かれることによって、薬液供給源71,73からの過酸化水素水およびアンモニア水が、ミキシングバルブ4の混合部40に導入される。これにより、薬液導入路61を通る過酸化水素水流量、薬液導入路63を通るアンモニア水流量、および純水導入路5を通る純水流量の比(流量比)に対応する混合比(組成比)で、過酸化水素水、アンモニア水および純水が混合され、アンモニア過酸化水素水混合液が調製される。この調製されたアンモニア過酸化水素水混合液が、処理液供給路3を介して処理液ノズル2へと送られ、回転状態の基板Wの表面に向けて吐出される。こうして、アンモニア過酸化水素水混合液が基板W表面に吐出されることによって、基板W表面のパーティクルが除去される。
【0031】
基板Wにアンモニア過酸化水素水混合液を供給している期間中に、アンモニア過酸化水素水処理条件に対して揺らぎを付与するAPM揺らぎ付与工程が行われる(ステップS4)。このAPM揺らぎ付与工程の詳細については、後述する。
所定時間に渡ってアンモニア過酸化水素水混合液による処理が行われた後、制御装置7は、薬液導入バルブ41,43を閉じる。これにより、ミキシングバルブ4には、純水導入路5からの純水のみが供給される状態となる。こうして、処理液ノズル2から基板Wの表面に向けて純水が供給され、基板W上のアンモニア過酸化水素水混合液を洗い流すための第1中間リンス工程が行われる(ステップS5)。
【0032】
所定時間に渡って第1中間リンス工程が行われた後には、制御装置7は、過酸化水素水用の薬液導入バルブ41と、塩酸用の薬液導入バルブ42とを開く。これにより、薬液供給源71,72からの過酸化水素水および塩酸が、ミキシングバルブ4の混合部40に導入される。これにより、薬液導入路61を通る過酸化水素水流量、薬液導入路62を通る塩酸流量、および純水導入路5を通る純水流量の比(流量比)に対応する混合比(組成比)で、過酸化水素水、塩酸および純水が混合され、塩酸過酸化水素水混合液(HPM)が調製される。この調製された塩酸過酸化水素水混合液が、処理液供給路3を介して処理液ノズル2へと送られ、回転状態の基板Wの表面に向けて吐出される(ステップS6)。こうして、塩酸過酸化水素水混合液が基板W表面に吐出されることによって、基板W表面の金属汚染物が除去される。
【0033】
基板Wに塩酸過酸化水素水混合液を供給している期間中に、塩酸過酸化水素水処理条件に対して揺らぎを付与するHPM揺らぎ付与工程が行われる(ステップS7)。このHPM揺らぎ付与工程の詳細については、後述する。
所定時間に渡って塩酸過酸化水素水混合液による処理が行われた後、制御装置7は、薬液導入バルブ41,42を閉じる。これにより、ミキシングバルブ4には、純水導入路5からの純水のみが供給される状態となる。こうして、処理液ノズル2から基板Wの表面に向けて純水が供給され、基板W上の塩酸過酸化水素水混合液を洗い流すための第2中間リンス工程が行われる(ステップS8)。
【0034】
所定時間に渡って第2中間リンス工程が行われた後には、制御装置7は、ふっ酸用の薬液導入バルブ44を開く。これにより、薬液供給源74からのふっ酸が、ミキシングバルブ4の混合部40に導入される。これにより、薬液導入路64を通るふっ酸流量および純水導入路5を通る純水流量の比(流量比)に対応する混合比(組成比)で、ふっ酸および純水が混合されて、希ふっ酸が調製され、この調製された希ふっ酸が、処理液供給路3を介して処理液ノズル2へと送られ、回転状態の基板Wの表面に向けて吐出される(ステップS9)。こうして、希ふっ酸が基板W表面に吐出されることによって、基板W表面の自然酸化膜が除去され、この自然酸化膜の表面の異物(パーティクル等)も同時に除去される。
【0035】
基板Wに希ふっ酸を供給している期間中に、希ふっ酸処理条件に対して揺らぎを付与するふっ酸揺らぎ付与工程が行われる(ステップS10)。このふっ酸揺らぎ付与工程の詳細については、後述する。
所定時間に渡って希ふっ酸による処理が行われた後には、制御装置7は、薬液導入バルブ41を閉じる。これにより、希ふっ酸による処理が終了し、ミキシングバルブ4には、純水導入路5からの純水のみが供給される状態となる。こうして、処理液ノズル2から基板Wの表面に向けて純水が供給され、基板W上の希ふっ酸を洗い流す最終リンス工程が行われる(ステップS11)。
【0036】
この最終リンス工程の期間中には、リンス処理条件に対して揺らぎを付与するリンス揺らぎ付与工程が行われる(ステップS12)。このリンス揺らぎ付与工程の詳細については後述する。
揺らぎを付与しながらの最終リンス工程が予め定める時間にわたって行われると、制御装置7は、純水バルブ55を閉じて処理液ノズル2からの純水の吐出を停止させる。さらに、制御装置7は、回転駆動機構14を制御することにより、スピンチャック1による基板Wの回転速度を予め定める乾燥速度(たとえば、3000rpm)まで加速する。これにより、洗浄後の基板Wの表面に付着している純水を遠心力で振り切って乾燥させる乾燥工程が行われる(ステップS13)。
【0037】
この乾燥工程が終了すると、スピンチャック1による基板Wの回転が止められて、図示しない搬送ロボットにより、スピンチャック1から処理後の基板Wが搬出されていく(ステップS14)。
複数枚の基板Wに対して処理を行うときには、上記のような処理が処理対象の基板Wの枚数だけ繰り返される。
【0038】
次に、APM揺らぎ付与工程(ステップS4)について説明する。
APM揺らぎ付与工程は、次のA1〜A7の工程のうちの少なくとも一つを含む。むろん、これらのうちの2つ以上の工程を組み合わせ、それらを順次または同時に行うことによって、APM揺らぎ付与工程を行ってもよい。
A1:過酸化水素水オン/オフ工程
A2:アンモニア水オン/オフ工程
A3:過酸化水素水流量変更工程
A4:アンモニア水流量変更工程
A5:純水オン/オフ工程
A6:純水温度切り換え工程
A7:純水流量変更工程
過酸化水素水オン/オフ工程A1は、過酸化水素水用薬液導入バルブ41を開閉制御することによって、ミキシングバルブ4の混合部40に過酸化水素水が供給される状態と供給されない状態とを切り換える工程である。たとえば、薬液導入バルブ41の開閉の周期は、4秒程度(たとえば、2秒間開いた後、2秒間閉じる)とするとよい。この過酸化水素水オン/オフ工程A1により、過酸化水素水が混合部40に間欠的に供給され、したがって、基板W表面への過酸化水素水の供給も間欠的になる。その結果、基板W表面の状態が短い周期で変化することになるから、基板W表面の状態に顕著な変化(揺らぎ)を与えることができる。
【0039】
アンモニア水オン/オフ工程A2は、アンモニア水用薬液導入バルブ43を開閉制御することによって、ミキシングバルブ4の混合部40にアンモニア水が供給される状態と供給されない状態とを切り換える工程である。たとえば、薬液導入バルブ43の開閉の周期は、4秒程度(たとえば、2秒間開いた後、2秒間閉じる)とするとよい。このアンモニア水オン/オフ工程A2により、アンモニア水が混合部40に間欠的に供給され、したがって、基板W表面へのアンモニア水の供給も間欠的になる。その結果、基板W表面の状態が短い周期で変化することになるので、基板W表面の状態に顕著な変化(揺らぎ)を与えることができる。
【0040】
過酸化水素水流量変更工程A3は、過酸化水素水用流量調整バルブ101の開度を増減することによって、ミキシングバルブ4の混合部40に導入される過酸化水素水の流量を増減する工程である。たとえば、5秒程度の周期で流量調整バルブ101の開度を増減するとよい。流量調整バルブ101の開度は、連続的に増減してもよいしステップ状に増減してもよい。この過酸化水素水流量変更工程A3により、過酸化水素水の基板W表面への供給流量が短い周期で変化することになる。これにより、基板W表面の状態に顕著な変化(揺らぎ)を与えることができる。つまり、基板W表面に供給される処理液中の過酸化水素水濃度(換言すれば処理液の組成)を短い周期で増減させることができる。
【0041】
アンモニア水流量変更工程A4は、アンモニア水用流量調整バルブ103の開度を増減することによって、ミキシングバルブ4の混合部40に導入されるアンモニア水の流量を増減する工程である。たとえば、5秒程度の周期で流量調整バルブ103の開度を増減するとよい。流量調整バルブ103の開度は、連続的に増減してもよいしステップ状に増減してもよい。このアンモニア水流量変更工程A4により、アンモニア水の基板W表面への供給流量が短い周期で変化することになる。これにより、基板W表面の状態に顕著な変化(揺らぎ)を与えることができる。つまり、基板W表面に供給される処理液中のアンモニア濃度(換言すれば処理液の組成)を短い周期で増減させることができる。
【0042】
純水オン/オフ工程A5は、純水バルブ55を開閉制御することによって、ミキシングバルブ4の混合部40に純水が供給される状態と供給されない状態とを切り換える工程である。たとえば、純水バルブ55の開閉の周期は、4秒程度(たとえば、2秒間開いた後、2秒間閉じる)とするとよい。これにより、基板W表面への純水の供給が間欠的になるので、基板W表面の状態を短い周期で時間変化させることができる。
【0043】
純水温度切り換え工程A6は、温純水供給源バルブ52を閉じ、純水供給源バルブ51を開いて常温の純水を純水導入路5に供給する状態と、純水供給源バルブ51を閉じ、温純水供給源バルブ52を開いて常温よりも高温の温純水を純水導入路5に供給する状態とを切り換える工程である。常温の純水と温純水との切り換え周期は、たとえば、10秒程度(たとえば、5秒間だけ常温の純水を供給した後、5秒間だけ温純水を供給)とするとよい。これにより、基板W表面に供給される処理液の温度が短い周期で時間変化することになるから、処理液の活性度に揺らぎを与えることができる。それに加えて、処理液の温度変化に伴って、基板Wの熱膨張および熱収縮が生じる。このようにして、基板W表面の状態に揺らぎを付与できる。
【0044】
純水流量変更工程A7は、レギュレータ53の調整圧力を変更することによって、純水導入路5を流通する純水(常温純水または温純水)の流量を増減する工程である。純水流量の増減は、たとえば、5秒程度の周期で行うとよい。これにより、純水流量が増減するので、処理液の濃度(換言すれば組成比)を短い周期で増減させることができる。こうして、基板Wの表面状態に顕著な変化を与えることができる。純水の流量は、連続的に増減してもよいし、ステップ状に増減してもよい。
【0045】
たとえば、アンモニア過酸化水素水混合液の濃度に揺らぎを付与するには、過酸化水素水流量変更工程A3およびアンモニア水流量変更工程A4を並行して行えばよい。この場合に、過酸化水素水流量およびアンモニア水流量を同期して増減させる。すなわち、過酸化水素水流量を増加させるときにはアンモニア水流量も増加させ、過酸化水素水流量を減少させるときにはアンモニア水流量も減少させる。これにより、アンモニア過酸化水素水混合液の濃度を増減させることができる。濃度の増減は、一定の振幅範囲内で行われる必要はなく、たとえば、濃度を増減させながら、徐々に高濃度側または低濃度側へとシフトしていくようにアンモニア過酸化水素水混合液の濃度を変更することもできる。
【0046】
前述の通り、アンモニア過酸化水素水混合液の濃度への揺らぎの付与は、純水流量変更工程A7によって行うこともできる。
アンモニア過酸化水素水混合液の組成比に揺らぎを付与するには、過酸化水素水流量変更工程A3を単独で行うか、アンモニア水流量変更工程A4を単独で行うか、過酸化水素水流量変更工程A3およびアンモニア水流量変更工程A4を並行して行うことによって、達成できる。過酸化水素水流量変更工程A3およびアンモニア水流量変更工程A4を並行して行う場合には、過酸化水素水流量の変化とアンモニア水流量の変化とが非同期になるように流量調整バルブ101,103を制御することが好ましい。たとえば、過酸化水素水流量を増加するときにアンモニア水流量を減少させ、過酸化水素水流量を減少させるときにアンモニア水流量を増加するようにすれば、アンモニア過酸化水素水混合液の組成に顕著な揺らぎを与えることができる。
【0047】
アンモニア過酸化水素水混合液の供給流量に揺らぎを付与するには、たとえば、過酸化水素水流量変更工程A3、アンモニア水流量変更工程A4および純水流量変更工程A7を並行して行えばよい。より具体的には、過酸化水素水流量、アンモニア水流量および純水流量を同期して変化させる。すなわち、過酸化水素水流量、アンモニア水流量および純水流量を同時に減少させたり増加させたりする。これにより、処理液ノズル2から基板W表面に供給されるアンモニア過酸化水素水混合液の流量に揺らぎを付与できる。
【0048】
その他、過酸化水素水オン/オフ工程A1、アンモニア水オン/オフ工程A2および純水オン/オフ工程を並行して行うことにより、アンモニア過酸化水素水混合液の供給を間欠的に行うようにして、基板W表面の状態に揺らぎを付与することもできる。
そして、純水温度切り換え工程A6をさらに組み合わせれば、基板W表面の状態により顕著な変動(揺らぎ)を生じさせることができる。
【0049】
このように基板W表面の状態に大きな揺らぎが生じることにより、基板Wおよびその表面のパーティクルのゼータ電位に揺らぎが生じ、その結果、アンモニア過酸化水素水混合液によるパーティクル除去効果を増強することができる。また、純水温度切り換え工程A6を行うことにより、基板Wの膨張および収縮が生じ、その結果、基板W表面のパーティクル除去効果をより一層高めることができる。
【0050】
次に、HPM揺らぎ付与工程(ステップS7)について説明する。
HPM揺らぎ付与工程は、次のB1〜B7の工程のうちの少なくとも一つを含む。むろん、これらのうちの2つ以上の工程を組み合わせ、それらを順次または同時に行うことによって、HPM揺らぎ付与工程を行ってもよい。
B1:過酸化水素水オン/オフ工程
B2:塩酸オン/オフ工程
B3:過酸化水素水流量変更工程
B4:塩酸水流量変更工程
B5:純水オン/オフ工程
B6:純水温度切り換え工程
B7:純水流量変更工程
過酸化水素水オン/オフ工程B1は、APM揺らぎ付与工程における過酸化水素水オン/オフ工程A1と同様にして行える。
【0051】
塩酸オン/オフ工程B2は、塩酸用薬液導入バルブ42を開閉制御することによって、ミキシングバルブ4の混合部40に塩酸が供給される状態と供給されない状態とを切り換える工程である。たとえば、薬液導入バルブ42の開閉の周期は、4秒程度(たとえば、2秒間開いた後、2秒間閉じる)とするとよい。この塩酸オン/オフ工程B2により、塩酸が混合部40に間欠的に供給され、したがって、基板W表面への塩酸の供給も間欠的になる。その結果、基板W表面の状態が短い周期で変化することになるので、基板W表面の状態に顕著な変化(揺らぎ)を与えることができる。
【0052】
過酸化水素水流量変更工程B3は、APM揺らぎ付与工程における過酸化水素水流量変更工程A3と同様にして行える。
塩酸流量変更工程B4は、塩酸用流量調整バルブ102の開度を増減することによって、ミキシングバルブ4の混合部40に導入される塩酸の流量を増減する工程である。たとえば、5秒程度の周期で流量調整バルブ102の開度を増減するとよい。流量調整バルブ102の開度は、連続的に増減してもよいしステップ状に増減してもよい。この塩酸流量変更工程B4により、塩酸の基板W表面への供給流量が短い周期で変化することになる。これにより、基板W表面の状態に顕著な変化(揺らぎ)を与えることができる。つまり、基板W表面に供給される処理液中の塩酸濃度(換言すれば処理液の組成)を短い周期で増減させることができる。
【0053】
純水オン/オフ工程B5は、APM揺らぎ付与工程における純水オン/オフ工程A5と同様にして行える。また、純水温度切り換え工程B6は、APM揺らぎ付与工程における純水温度切り換え工程A6と同様にして行える。さらに、純水流量変更工程B7は、APM揺らぎ付与工程における純水流量変更工程A7と同様にして行える。
たとえば、塩酸過酸化水素水混合液の濃度に揺らぎを付与するには、過酸化水素水流量変更工程B3および塩酸流量変更工程B4を並行して行えばよい。この場合に、過酸化水素水流量および塩酸流量を同期して増減させる。すなわち、過酸化水素水流量を増加させるときには塩酸流量も増加させ、過酸化水素水流量を減少させるときには塩酸流量も減少させる。これにより、塩酸過酸化水素水混合液の濃度を増減させることができる。濃度の変化は、一定の振幅範囲内で行われる必要はなく、たとえば、濃度を増減させながら、徐々に高濃度側または低濃度側へとシフトしていくように塩酸過酸化水素水混合液の濃度を変更することもできる。
【0054】
前述の通り、塩酸過酸化水素水混合液の濃度への揺らぎの付与は、純水流量変更工程B7によって行うこともできる。
塩酸過酸化水素水混合液の組成比に揺らぎを付与するには、過酸化水素水流量変更工程B3を単独で行うか、塩酸流量変更工程B4を単独で行うか、過酸化水素水流量変更工程B3および塩酸流量変更工程B4を並行して行えばよい。過酸化水素水流量変更工程B3および塩酸流量変更工程B4を並行して行う場合には、過酸化水素水流量の変化と塩酸流量の変化とが非同期になるように流量調整バルブ101,102を制御することが好ましい。たとえば、過酸化水素水流量を増加するときに塩酸流量を減少させ、過酸化水素水流量を減少させるときに塩酸流量を増加するようにすれば、塩酸過酸化水素水混合液の組成に顕著な揺らぎを与えることができる。
【0055】
塩酸過酸化水素水混合液の供給流量に揺らぎを付与するには、たとえば、過酸化水素水流量変更工程B3、塩酸流量変更工程B4および純水流量変更工程B7を並行して行えばよい。より具体的には、過酸化水素水流量、塩酸流量および純水流量を同期して変化させる。すなわち、過酸化水素水流量、塩酸流量および純水流量を同時に減少させたり増加させたりする。これにより、処理液ノズル2から基板W表面に供給される塩酸過酸化水素水混合液の流量に揺らぎを付与できる。
【0056】
その他、過酸化水素水オン/オフ工程B1、塩酸オン/オフ工程B2および純水オン/オフ工程を並行して行うことにより、塩酸過酸化水素水混合液の供給を間欠的に行うようにして、基板W表面の状態に揺らぎを付与することもできる。
そして、純水温度切り換え工程B6をさらに組み合わせれば、基板W表面の状態に顕著な変動(揺らぎ)を生じさせることができる。
【0057】
このように基板W表面の状態に大きな揺らぎが生じることにより、塩酸過酸化水素水混合液による金属汚染除去効果を増強することができる。また、純水温度切り換え工程A6を行うことにより、基板Wの膨張および収縮が生じ、その結果、基板W表面の金属汚染除去効果をより一層高めることができる。
ふっ酸揺らぎ付与工程(ステップS10)は、次のC1〜C5の工程のうちの少なくとも一つを含む。むろん、これらのうちの2つ以上の工程を組み合わせ、それらを順次または同時に行うことによって、ふっ酸揺らぎ付与工程を行ってもよい。
【0058】
C1:ふっ酸オン/オフ工程
C2:ふっ酸水流量変更工程
C3:純水オン/オフ工程
C4:純水温度切り換え工程
C5:純水流量変更工程
ふっ酸オン/オフ工程C1は、ふっ酸用薬液導入バルブ44を開閉制御することによって、ミキシングバルブ4の混合部40にふっ酸が供給される状態と供給されない状態とを切り換える工程である。たとえば、薬液導入バルブ42の開閉の周期は、5秒程度の周期とするとよい。このふっ酸オン/オフ工程C1により、ふっ酸が混合部40に間欠的に供給され、したがって、基板W表面へのふっ酸の供給も間欠的になる。その結果、基板W表面の状態が短い周期で変化することになるので、基板W表面の状態に顕著な変化(揺らぎ)を与えることができる。
【0059】
ふっ酸流量変更工程C2は、ふっ酸用流量調整バルブ104の開度を増減することによって、ミキシングバルブ4の混合部40に導入されるふっ酸の流量を増減する工程である。たとえば、10秒程度の周期で流量調整バルブ104の開度を増減するとよい。流量調整バルブ104の開度は、連続的に増減してもよいしステップ状に増減してもよい。このふっ酸流量変更工程C3により、ふっ酸の基板W表面への供給流量が短い周期で変化することになる。これにより、基板W表面の状態に顕著な変化(揺らぎ)を与えることができる。つまり、基板W表面に供給される処理液中のふっ酸濃度(換言すれば処理液の組成)を短い周期で増減させることができる。
【0060】
純水オン/オフ工程C3は、APM揺らぎ付与工程における純水オン/オフ工程A5と同様にして行える。また、純水温度切り換え工程C4は、APM揺らぎ付与工程における純水温度切り換え工程A6と同様にして行える。さらに、純水流量変更工程C5は、APM揺らぎ付与工程における純水流量変更工程A7と同様にして行える。
たとえば、希ふっ酸の濃度に揺らぎを付与するには、ふっ酸流量変更工程C2を行えばよい。濃度の変化は、一定の振幅範囲内で行われる必要はなく、たとえば、濃度を増減させながら、徐々に高濃度側または低濃度側へとシフトしていくように希ふっ酸の濃度を変更することもできる。前述の通り、希ふっ酸の濃度への揺らぎの付与は、純水流量変更工程C5によって行うこともできる。希ふっ酸中のふっ酸濃度の変動により、その組成も変動するので、希ふっ酸の濃度に揺らぎを与える工程は、希ふっ酸の組成に揺らぎを与える工程でもある。
【0061】
希ふっ酸の供給流量に揺らぎを付与するには、たとえば、ふっ酸流量変更工程C2および純水流量変更工程C5を並行して行えばよい。より具体的には、ふっ酸流量および純水流量を同期して変化させる。すなわち、ふっ酸流量および純水流量を同時に減少させたり増加させたりする。これにより、処理液ノズル2から基板W表面に供給される希ふっ酸の流量に揺らぎを付与できる。
【0062】
その他、ふっ酸オン/オフ工程C1および純水オン/オフ工程を並行して行うことにより、希ふっ酸の供給を間欠的に行うようにして、基板W表面の状態に揺らぎを付与することもできる。
そして、純水温度切り換え工程C4をさらに組み合わせれば、基板W表面の状態に顕著な変動(揺らぎ)を生じさせることができる。
【0063】
このように基板W表面の状態に大きな揺らぎが生じることにより、希ふっ酸による自然酸化膜除去効果を増強することができる。希ふっ酸には金属汚染除去効果もあるので、この金属汚染除去効果も併せて増強されることになる。また、純水温度切り換え工程C4を行うことにより、基板Wの膨張および収縮が生じ、その結果、基板W表面の自然酸化膜除去効果および金属汚染除去効果をより一層高めることができる。
【0064】
リンス揺らぎ付与工程(ステップS12)は、次のD1〜D3の工程のうちの少なくとも一つを含む。むろん、これらのうちの2つ以上の工程を組み合わせ、それらを順次または同時に行うことによって、リンス揺らぎ付与工程を行ってもよい。
D1:純水オン/オフ工程
D2:純水温度切り換え工程
D3:純水流量変更工程
純水オン/オフ工程D1は、APM揺らぎ付与工程における純水オン/オフ工程A5と同様にして行える。また、純水温度切り換え工程D2は、APM揺らぎ付与工程における純水温度切り換え工程A6と同様にして行える。さらに、純水流量変更工程D3は、APM揺らぎ付与工程における純水流量変更工程A7と同様にして行える。
【0065】
これらの工程D1〜D3を、単独で、または2つ以上を組み合わせて行うことにより、リンス工程中に基板W表面の状態に大きな揺らぎが生じる。これにより、基板W上の薬液を効率的に洗い流して基板W外に排除することができる。
このように、この実施形態では、アンモニア過酸化水素水による処理工程、塩酸過酸化水素水による処理工程、および最終リンス工程において、処理液の供給流量の変動や処理液供給のオン/オフといった処理液の物理力に関するプロセスパラメータに揺らぎを付与したり、処理液の濃度や温度といった処理液の活性度に関するプロセスパラメータに揺らぎを付与したりしている。これにより、薬液処理およびリンス処理の効率を高めることができ、高品質な基板処理が可能になる。
【0066】
なお、処理液の物理力に関するプロセスパラメータとしては、ほかにも、処理液の圧力を挙げることができる。処理液の圧力に揺らぎを付与して、処理液が基板Wに当たるときの衝撃力を変動させるには、レギュレータ53,78の調整圧力に揺らぎを付与したり、処理液流量に揺らぎを付与したりすればよい。
図4は、この発明の他の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解図である。この図4において、前述の図1に示された各部に対応する部分には、同一の参照符号を付すこととし、説明を省略する。また、前述の図2を併せて参照する。
【0067】
この実施形態の基板処理装置は、ドライエッチングやイオン注入のためのマスクとして用いられた使用済みレジストを基板W表面から剥離するためのレジスト剥離処理を行うためのものである。
この実施形態では、ミキシングバルブ4は、2つの導入口(インレット)を有する混合部40と、その2つの導入口に接続された2つの薬液導入バルブ41,42とを備えている。薬液導入バルブ41に接続された薬液導入路61には、過酸化水素水を供給する薬液供給源71が接続されている。また、薬液導入バルブ42に接続された薬液導入路62には、硫酸(たとえば80℃に加熱された濃硫酸)を供給する薬液供給源72が接続されている。この構成により、ミキシングバルブ4は、過酸化水素水および硫酸を混合して硫酸過酸化水素水混合液(SPM:sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture)を生成し、これを処理液供給路3に導出することができる。
【0068】
処理液供給路3は、制御装置7によって制御される三方弁30によって、2つの分岐管31,32に分岐されており、これらは処理液ノズル2の手前で合流している。一方の分岐管31には、撹拌フィン付流通管33が介装されており、他方の分岐管32には撹拌フィン付流通管33は介装されていない。
撹拌フィン付流通管33は、管部材内に、それぞれ液体流通方向を軸にほぼ180度のねじれを加えた長方形板状体からなる複数の撹拌フィンを、液体流通方向に沿う管中心軸まわりの回転角度を90度ずつ交互に異ならせて管軸方向に沿って配列した構成のものであり、たとえば、株式会社ノリタケカンパニーリミテド・アドバンス電気工業株式会社製の商品名「MXシリーズ:インラインミキサー」を用いることができる。
【0069】
薬液導入バルブ41,42を開くと、ミキシングバルブ4において硫酸および過酸化水素水が合流して混合され、硫酸と過酸化水素水との化学反応(H2SO4+H22→H2SO5+H2O)が生じて、強い酸化力を有するカロ酸(H2SO5)を含むレジスト剥離液(SPM:硫酸過酸化水素水混合液)が生成される。むろん、混合の度合いが高いほど、カロ酸が多く生成して酸化力が高まる。また、混合の度合いが高ければ高いほど、化学反応による発熱(反応熱)が生じ、この発熱により、レジスト剥離液の液温は、基板Wからレジストを良好に剥離可能な高温(たとえば、80℃〜150℃)にまで確実に上昇する。
【0070】
ミキシングバルブ4で硫酸および過酸化水素水を合流させるだけでは、硫酸および過酸化水素水は十分に均一な混合状態には至っていない。そこで、ミキシングバルブ4で合流した硫酸および過酸化水素水を撹拌フィン付流通管33に通過させることによって、硫酸および過酸化水素水の混合を促進させ、かつこの混合液を十分に均一に撹拌することができる。
【0071】
三方弁30の切り換えにより、処理液ノズル2には、分岐管31に介装された撹拌フィン付流通管33で十分に撹拌された活性度の比較的高いレジスト剥離液と、分岐管32を通って撹拌フィン付流通管33を迂回した活性度の比較的低いレジスト剥離液とを選択して供給することができる。したがって、制御装置7(図2参照)によって三方弁30を周期的に切り換えることで、基板W表面に供給されるレジスト剥離液の活性度に揺らぎを付与することができる。
【0072】
一方、この実施形態では、処理液ノズル2とは別に、リンス液ノズル9が設けられている。このリンス液ノズル9には、純水導入路5が接続されている。これにより、レジスト剥離液とは別系統で、基板W上に純水を供給して、リンス処理を行えるようになっている。リンス液ノズル9は、基板W表面に沿って水平移動するスキャンノズルであってもよいし、固定位置から基板Wの回転中心付近に向けてリンス液を吐出する固定ノズルであってもよい。
【0073】
図5は、1枚の基板Wに対する処理の一例を説明するための流れ図である。処理対象の基板Wがスピンチャック1に搬入されると(ステップS21)、制御装置7は回転駆動機構14を駆動して、基板Wを所定の液処理速度で回転させる(ステップS22)。このとき、薬液導入バルブ41,42、純水供給源バルブ51、温純水供給源バルブ52および純水バルブ55は、いずれも閉状態に制御されている。
【0074】
基板Wの回転速度が液処理速度に達すると、制御装置7は、過酸化水素水用の薬液導入バルブ41および硫酸用の薬液導入バルブ42を制御することにより、処理液ノズル2から、基板Wの表面にレジスト剥離液としての硫酸過酸化水素水混合液(SPM)を吐出させる(ステップS23)。より具体的には、薬液導入バルブ41,42が開かれることによって、薬液導入路61を通る過酸化水素水流量、および薬液導入路62を通る硫酸流量の比(流量比)に対応する混合比(組成比)で、過酸化水素水および硫酸が混合され、硫酸過酸化水素水混合液からなるレジスト剥離液が調製される。この調製されたレジスト剥離液が、処理液供給路3を介して処理液ノズル2へと送られ、回転状態の基板Wの表面に向けて吐出される。こうして、レジスト剥離液が基板W表面に吐出されることによって、基板W表面のレジストが剥離される。
【0075】
基板Wにレジスト剥離液を供給している期間中に、レジスト剥離液による処理条件に対して揺らぎを付与するレジスト剥離揺らぎ付与工程が行われる(ステップS24)。このレジスト剥離揺らぎ付与工程の詳細については、後述する。
所定時間に渡ってレジスト剥離液による処理が行われた後、制御装置7は、薬液導入バルブ41,42を閉じる。これにより、処理液ノズル2からのレジスト剥離液の吐出が停止される(ステップS25)。
【0076】
次いで、制御装置7は、純水供給源バルブ51または温純水供給源バルブ52を開き、さらに、純水バルブ55を開く。これにより、純水導入路5からリンス液ノズル9に純水(常温または常温よりも高温のもの)が供給され、この純水がスピンチャック1によって回転されている基板Wの表面に向けて吐出される。こうして、基板W上のレジスト剥離液を洗い流して基板W外に排除するためのリンス工程が行われる(ステップS26)。
【0077】
このリンス工程の期間中には、リンス処理条件に対して揺らぎを付与するリンス揺らぎ付与工程が行われる(ステップS27)。このリンス揺らぎ付与工程は、たとえば、前述の第1の実施形態におけるリンス揺らぎ付与工程(図3のステップS12)と同様の工程であってもよい。
揺らぎを付与しながらのリンス工程が予め定める期間にわたって行われると、制御装置7は、純水バルブ55を閉じてリンス液ノズル9の純水の吐出を停止させる。さらに、制御装置7は、回転駆動機構14を制御することにより、スピンチャック1による基板Wの回転速度を予め定める乾燥速度(たとえば、3000rpm)まで加速する。これにより、洗浄後の基板Wの表面に付着している純水を遠心力で振り切って乾燥させる乾燥工程が行われる(ステップS28)。
【0078】
この乾燥工程が終了すると、スピンチャック1による基板Wの回転が止められて、図示しない搬送ロボットにより、スピンチャック1から処理後の基板Wが搬出されていく(ステップS29)。
レジスト剥離揺らぎ付与工程は、次のE1〜E5の工程のうちの少なくとも一つを含む。むろん、これらのうちの2つ以上の工程を組み合わせ、それらを順次または同時に行うことによって、レジスト剥離揺らぎ付与工程を行ってもよい。
【0079】
E1:過酸化水素水オン/オフ工程
E2:硫酸オン/オフ工程
E3:過酸化水素水流量変更工程
E4:硫酸流量変更工程
E5:混合度変更工程
過酸化水素水オン/オフ工程E1は、過酸化水素水用薬液導入バルブ41を開閉制御することによって、ミキシングバルブ4の混合部40に過酸化水素水が供給される状態と供給されない状態とを切り換える工程である。たとえば、薬液導入バルブ41の開閉の周期は、4秒程度(たとえば、2秒間開いた後、2秒間閉じる)とするとよい。この過酸化水素水オン/オフ工程E1により、過酸化水素水が混合部40に間欠的に供給され、したがって、基板W表面への過酸化水素水の供給も間欠的になる。その結果、基板W表面の状態が短い周期で変化することになるから、基板W表面の状態に顕著な変化(揺らぎ)を与えることができる。
【0080】
硫酸オン/オフ工程E2は、硫酸用薬液導入バルブ42を開閉制御することによって、ミキシングバルブ4の混合部40に硫酸が供給される状態と供給されない状態とを切り換える工程である。たとえば、薬液導入バルブ42の開閉の周期は、4秒程度(たとえば、2秒間開いた後、2秒間閉じる)とするとよい。この硫酸オン/オフ工程E2により、硫酸が混合部40に間欠的に供給され、したがって、基板W表面への硫酸の供給も間欠的になる。その結果、基板W表面の状態が短い周期で変化することになるので、基板W表面の状態に顕著な変化(揺らぎ)を与えることができる。
【0081】
過酸化水素水流量変更工程E3は、過酸化水素水用流量調整バルブ101の開度を増減することによって、ミキシングバルブ4の混合部40に導入される過酸化水素水の流量を増減する工程である。たとえば、5秒程度の周期で流量調整バルブ101の開度を増減するとよい。流量調整バルブ101の開度は、連続的に増減してもよいしステップ状に増減してもよい。この過酸化水素水流量変更工程E3により、過酸化水素水の基板W表面への供給流量が短い周期で変化することになる。これにより、基板W表面の状態に顕著な変化(揺らぎ)を与えることができる。つまり、基板W表面に供給されるレジスト剥離液中の過酸化水素水濃度(換言すれば処理液の組成)を短い周期で増減させることができる。
【0082】
硫酸流量変更工程E4は、硫酸用流量調整バルブ102の開度を増減することによって、ミキシングバルブ4の混合部40に導入される硫酸の流量を増減する工程である。たとえば、5秒程度の周期で流量調整バルブ102の開度を増減するとよい。流量調整バルブ102の開度は、連続的に増減してもよいしステップ状に増減してもよい。この硫酸流量変更工程E4により、硫酸の基板W表面への供給流量が短い周期で変化することになる。これにより、基板W表面の状態に顕著な変化(揺らぎ)を与えることができる。つまり、基板W表面に供給されるレジスト剥離液中の硫酸濃度(換言すれば処理液の組成)を短い周期で増減させることができる。
【0083】
混合度変更工程E5は、制御装置7によって三方弁30を制御し、レジスト剥離液の流通路を分岐管31側と分岐管32側とで切り換えることにより、レジスト剥離液を撹拌フィン付流通管33に通して撹拌した後に基板W表面に供給する状態と、そのような撹拌なしにレジスト剥離液を基板Wに供給する状態とで切り換える工程である。三方弁30の切り換え周期は、たとえば4秒程度(たとえば、2秒間分岐管31側に開いた後、2秒間分岐管32側に開く)とするとよい。これにより、基板W表面に供給されるレジスト剥離液の混合度(撹拌度合い)が短い周期で時間変化することになるから、基板W表面のレジスト剥離液の活性度に揺らぎを与えることができる。それに加えて、レジスト剥離液の混合の度合いが異なる結果、発生する反応熱に揺らぎが生じるので、それに応じて、基板Wの熱膨張および熱収縮が生じる。このようにして、基板W表面の状態に揺らぎを付与できる。
【0084】
たとえば、レジスト剥離液の組成比に揺らぎを付与するには、過酸化水素水流量変更工程E3を単独で行うか、硫酸流量変更工程E4を単独で行うか、過酸化水素水流量変更工程E3および硫酸流量変更工程E4を並行して行えばよい。過酸化水素水流量変更工程E3および硫酸流量変更工程E4を並行して行う場合には、過酸化水素水流量の変化と硫酸流量の変化とが非同期になるように流量調整バルブ101,102を制御することが好ましい。たとえば、過酸化水素水流量を増加するときに硫酸流量を減少させ、過酸化水素水流量を減少させるときに硫酸流量を増加するようにすれば、硫酸過酸化水素水混合液の組成に顕著な揺らぎを与えることができる。
【0085】
硫酸過酸化水素水混合液の供給流量に揺らぎを付与するには、たとえば、過酸化水素水流量変更工程E3および硫酸流量変更工程E4を並行して行えばよい。より具体的には、過酸化水素水流量および硫酸流量を同期して変化させる。すなわち、過酸化水素水流量および硫酸流量を同時に減少させたり増加させたりする。これにより、処理液ノズル2から基板W表面に供給される硫酸過酸化水素水混合液の流量に揺らぎを付与できる。
【0086】
その他、過酸化水素水オン/オフ工程E1および硫酸オン/オフ工程E2を並行して行うことにより、硫酸過酸化水素水混合液の供給を間欠的に行うようにして、基板W表面の状態に揺らぎを付与することもできる。
そして、混合度変更工程E5をさらに組み合わせれば、基板W表面の状態に顕著な変動(揺らぎ)を生じさせることができる。
【0087】
このように基板W表面の状態に大きな揺らぎが生じることにより、基板Wおよびその表面のレジスト膜の状態に揺らぎが生じ、その結果、レジスト剥離処理を効率的に行うことができるようになる。
以上、この発明の2つの実施形態を説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の第1の実施形態において、第1および/または第2中間リンス工程(図3のステップS5,S8)においても、リンス液としての純水の状態に揺らぎを付与するようにしてもよい。
【0088】
また、前述の実施形態では、純水の温度を変更する例について説明したが、薬液原液の温度に揺らぎを与える構成としてもよい。たとえば、温度の異なる複数の同一種の薬液原液を薬液導入バルブを介してミキシングバルブ4に導入できるようにしておき、いずれかの温度の薬液原液を選択してミキシングバルブ4の混合部40に導入するようにすればよい。
【0089】
また、薬液の濃度に変動を与える場合に、濃度の異なる同一種薬液原液を薬液導入バルブを介してミキシングバルブ4に選択的に導入できるようにしておき、いずれかの濃度の薬液原液を選択してミキシングバルブ4の混合部40に導入するようにしてもよい。
さらに、また、前述の実施形態では、処理流体として処理液を用いて基板Wを処理する例について説明したが、この発明は、処理ガスの形態の処理流体を用いる基板処理に対しても適用可能である。
【0090】
また、気体と液体とを混合して液滴噴流を生成する二流体ノズルを用いた基板処理に対しても、この発明を適用することができる。この場合に、たとえば、二流体ノズルに供給される気体および/または液体の流量に揺らぎを付与してもよい。また、二流体ノズルに供給される気体および/または液体の温度に揺らぎを付与してもよい。さらに、二流体ノズルに供給される液体の濃度に揺らぎを付与してもよい。さらにまた、二流体ノズルに供給される気体および/または液体をオン/オフ制御してもよい。具体的には、気体のみをオン/オフ制御して、液滴噴流が基板に供給される状態と、液体がノズルから流出して基板表面に至る状態とを交互に切り換えるようにしてもよい。また、気体および液体を同時にオン/オフ制御して、液滴噴流が供給される状態と、液滴噴流が供給されない状態とを切り換えるようにしてもよい。
【0091】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を簡略化して示す図である。
【図2】前記基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】基板に対する処理工程の一例を説明するための流れ図である。
【図4】この発明の他の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解図である。
【図5】図4の装置による処理の一例を説明するための流れ図である。
【符号の説明】
【0093】
1 スピンチャック
2 処理液ノズル
3 処理液供給路
4 ミキシングバルブ
5 純水導入路
7 制御装置
9 リンス液ノズル
11 スピン軸
12 スピンベース
13 挟持部材
14 回転駆動機構
30 三方弁
31 分岐管
32 分岐管
33 撹拌フィン付流通管
40 混合部
41〜44 薬液導入バルブ
51 純水供給源バルブ
52 温純水供給源バルブ
53 レギュレータ
54 流量計
55 純水バルブ
56 圧力計
61〜64 薬液導入路
71〜74 薬液供給源
75 薬液原液
76 薬液タンク
77 窒素ガス供給路
78 レギュレータ
79 窒素ガスバルブ
81〜84 フィルタ
86〜89 圧力計
91〜94 流量計
101〜104 流量調整バルブ
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に処理流体を供給する処理流体供給工程と、
この処理流体供給工程中に、基板に供給される処理流体に関するプロセスパラメータに揺らぎを付与する揺らぎ付与工程とを含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記プロセスパラメータは、処理流体の活性度に関するパラメータを含む、請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記活性度に関するパラメータは、処理流体の温度および濃度の少なくともいずれか一方を含む、請求項2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記処理流体が、複数種類の流体を混合して調製される混合流体であり、
前記活性度に関するパラメータは、前記混合流体の混合度を含む、請求項2または3記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記プロセスパラメータは、処理流体の物理力に関するパラメータを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記物理力に関するパラメータは、処理流体の温度、流量および圧力のうちの少なくともいずれか一つを含む、請求項5記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記処理流体が、複数種類の流体を混合して調製される混合流体であり、
前記プロセスパラメータが、前記混合流体の組成比を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記揺らぎ付与工程が、プロセスパラメータの増加と減少とを繰り返す工程を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記揺らぎ付与工程が、プロセスパラメータの増加と減少とを周期的に繰り返す工程を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
基板に処理流体を供給する処理流体供給手段と、
この処理流体供給手段が供給する処理流体に関するプロセスパラメータに揺らぎを付与する揺らぎ付与手段とを含む、基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−258437(P2008−258437A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99633(P2007−99633)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】