説明

基板処理装置、二流体ノズルおよび液滴供給方法

【課題】純水と窒素ガスとを衝突させて純水の液滴を形成して供給する液滴供給方法、液滴を供給する二流体ノズルおよび液滴を基板に供給して基板処理を施す基板処理装置において、液滴の微粒化を高める。
【解決手段】液体吐出口342から純水が吐出されるとともに、液体吐出口342を挟み込むように設けられた気体吐出口341、343から窒素ガスが吐出され、純水と窒素ガスとの衝突によって純水の液滴が形成される。このように互いに異なる2経路で、しかも挟み込むように窒素ガスが純水の液流れに吐出されて純水に対してせん断力が作用する。しかも、いずれの気体吐出経路においても、窒素ガスが純水の液流れに対して直角に吐出されるため、上記せん断力がさらに高められる。その結果、微細な液滴が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体と気体とを衝突させて液体の液滴を形成して供給する液滴供給方法、液滴を供給する二流体ノズルおよび液滴を基板に供給して基板処理を施す基板処理装置に関するものである。なお、基板は、例えば半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display;電界放出ディスプレイ)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板(以下、単に「基板」という)を意味する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの電子部品の製造工程では、基板の表面に成膜やエッチングなどの処理を繰り返し施して微細パターンを形成していく工程が含まれる。ここで、微細加工を良好に行うためには基板表面を清浄な状態に保つ必要がある。そこで、必要に応じて基板の洗浄処理が行われる(特許文献1参照)。この特許文献1に記載の発明では、処理液(液体)に気体を衝突させて生成した処理液の液滴を基板に供給する二流体ノズルを備えている。この二流体ノズルはいわゆる外部混合方式の二流体ノズルであり、該二流体ノズルの先端部には円形の液体吐出口のまわりに環状の気体吐出口が形成されている。そして、二流体ノズルは液体吐出口から吐出された処理液に気体吐出口から吐出された気体を衝突させることで処理液の液滴を生成し、該液滴を基板に供給している。これにより、基板表面に付着しているパーティクル(微小汚物)が基板から除去され基板の洗浄処理が行われる。
【0003】
ところで、二流体ノズルを用いた洗浄処理では、次の技術事項が知られている。その技術事項とは、基板に供給される液体の液滴の数(以下、単に「液滴数」という)が多いほど、パーティクルが基板から除去される割合(以下「除去率」という)が向上することである。したがって、この知見に基づけば、液体の微粒化による液滴数の増加によって除去率を向上させることが可能である。そこで、液体の微粒化効率を高めるために、次のような二流体ノズルが提案されている。例えば、特許文献2に記載の二流体ノズルでは、液体および気体をそれぞれ環状吐出口(全体として2重の環状吐出口)から吐出させている。これにより、液体を薄膜状に吐出させて液体の微粒化効率を高めている。
【0004】
また、特許文献3に記載の二流体ノズルでは、ノズル中心に形成された中心空気流路のまわりに環状の液体流路(中間環状流路)が形成されている。また、環状の液体流路の外側に環状の外側空気流路(外側環状流路)が形成されている。そして、環状の液体流路からの水(液体)が中心空気流路から噴出される空気(気体)と衝突した後、環状の外側空気流路からの空気と衝突して二流体ノズルの先端部に設けられた開口より液滴が噴射される。
【0005】
【特許文献1】特開2004−349501号公報(図2)
【特許文献2】特開2005−288390号公報(図2)
【特許文献3】特許第3382573号(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように従来技術では、液体および気体の吐出態様を工夫することで液滴の微細化を図っている。しかしながら、近年、基板の表面に形成される配線パターンなどは微細化され、その結果、従来技術を越える液滴の微粒化が求められている。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、液体と気体とを衝突させて液体の液滴を形成して供給する液滴供給方法、液滴を供給する二流体ノズルおよび液滴を基板に供給して基板処理を施す基板処理装置において、液滴の微粒化を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる基板処理装置は、上記目的を達成するため、基板を保持する基板保持手段と、基板保持手段に保持された基板に液滴を供給する二流体ノズルとを備え、二流体ノズルは、液体を液体吐出口から基板に向けて吐出する液体吐出部と、液体吐出口を挟み込むように設けられ、液体吐出口から吐出された液体に気体を衝突させて液滴を形成する第1および第2気体吐出部とを有し、第1および第2気体吐出部の少なくとも一方は液体吐出口から吐出された液体の液流れに対して直角に気体を吐出することを特徴としている。
【0009】
また、この発明にかかる二流体ノズルは、液滴を供給する二流体ノズルであって、上記目的を達成するため、液体を液体吐出口から液滴供給方向に吐出する液体吐出部と、液体吐出口を挟み込むように設けられ、液体吐出口から吐出された液体に気体を衝突させて液滴を形成する第1および第2気体吐出部とを備え、第1および第2気体吐出部の少なくとも一方は液体吐出口から吐出された液体の液流れに対して直角に気体を吐出することを特徴としている。
【0010】
また、この発明にかかる液滴供給方法は、液体に気体を衝突させて形成した液体の液滴を所定方向に供給する液滴供給方法であって、上記目的を達成するため、液体を液滴供給方向に吐出する第1工程と、互いに異なる2つの気体吐出経路で、かつ液滴供給方向に吐出される液体を挟み込むように、気体を吐出することによって液体の液滴を形成する第2工程とを備え、第2工程では、2つの気体吐出経路の少なくとも一方では気体が液体の液流れに対して直角に吐出されることを特徴としている。
【0011】
このように構成された発明(基板処理装置、二流体ノズルおよび液滴供給方法)では、液体が所定方向に吐出されるとともに、この液体を挟み込むように互いに異なる2つの経路で気体が吐出され、液体と気体との衝突によって液体の液滴が形成される。このように互いに異なる2経路で気体が液体の液流れに吐出されて液体に対してせん断力が作用する。しかも、2つの気体経路の少なくとも一方では気体が液体の液流れに対して直角に吐出されるため、上記せん断力がさらに高められる。その結果、微細な液滴を形成することが可能となっている。
【0012】
ここで、液滴の微粒化と密接に関連するせん断力を高めるためには、二流体ノズルを構成する第1および第2気体吐出部がともに液体吐出口から吐出された液体の液流れに対して直角に気体を吐出するように構成するのが望ましい。
【0013】
また、二流体ノズルにおいて、気体を吐出する第1および第2気体吐出口ならびに液体吐出口を環状に形成してもよく、第1気体吐出口を環状液体吐出口の内側に設ける一方、第2気体吐出口を環状液体吐出口の外側に設けてもよい。例えば第1気体吐出口、液体吐出口および第2気体吐出口を同心円状に配置してもよい。このように液体吐出口を環状に形成することで液体吐出口のスリット径を小さくすることができ、液滴化が容易となる。また、液体吐出口を内側および外側から環状の気体吐出口で挟み込んでいるため、液体吐出口から吐出された液体を均一に液滴化することができ、液滴の均一化を図ることができる。
【0014】
また、環状液体吐出口の内側に位置する第1気体吐出口から吐出される気体を液流れに対して直角に吐出させる場合、第1気体吐出部を次のように構成してもよい。すなわち、第1気体吐出部が、液体吐出口からの液体の吐出方向と平行に気体を第1気体吐出口に案内する第1気体流路と、第1気体流路と直交するように第1気体吐出口に対向して設けられて第1気体吐出口から吐出された気体を第1気体流路と直交する全方位に案内する第1ガイド部材とを有するように構成することができる。
【0015】
一方、環状液体吐出口の外側に位置する第2気体吐出口から吐出される気体を液流れに対して直角に吐出させる場合、第2気体吐出部を次のように構成してもよい。すなわち、第2気体吐出部が、第2気体吐出口から吐出された気体の流れを液体の液流れに対して直交する方向に変更しながら気体を液流れに案内する第2ガイド部材を有するように構成することができる。
【0016】
さらに、液体吐出部が液体吐出口を複数個有するように構成してもよい。これによって、液体吐出口から吐出された時点で液体が複数に分離されており、液滴の微粒化に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<基板処理システム>
図1はこの発明にかかる基板処理装置の一実施形態を装備した基板処理システムを示す平面レイアウト図である。基板処理システムは、半導体ウエハ等の基板Wに付着したパーティクルや各種金属不純物などの汚染物質を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板処理システムである。この基板処理システムは、基板処理部PSと、この基板処理部PSに結合されたインデクサ部IDとを備えている。インデクサ部IDは、複数枚の基板Wを収納したカセットC(複数の基板Wを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッド、OC(Open Cassette)など)から処理を行うべき基板Wを1枚ずつ搬出するとともに処理を終えた基板Wを再度カセットC内に搬入するためのインデクサロボット11を備えている。各カセットCは、複数枚の基板Wを微小な間隔をあけて上下方向に積層して保持するための複数段の棚(図示省略)を備えており、各段の棚に1枚ずつ基板Wを保持することができるようになっている。各段の棚は、基板Wの下面の周縁部に接触し、基板Wを下方から保持する構成となっており、基板Wはほぼ水平な姿勢でカセットCに収容されている。
【0018】
基板処理部PSは、平面視においてほぼ中央に配置された基板搬送ロボット12と、この基板搬送ロボット12が取付けられたフレーム100とを有している。また、このフレーム100には、基板搬送ロボット12を取り囲むように、複数個(この実施形態では4個)の基板処理装置10が設けられている。これらの基板処理装置10は後述するように同一構成を有しており、二流体ノズルから吐出される噴霧状の洗浄液(液滴)により基板洗浄を行う。
【0019】
基板搬送ロボット12は、4個の基板処理装置10に対して基板Wを搬送することが可能となっている。また、基板搬送ロボット12はインデクサ部IDに配置されたインデクサロボット11から未処理の基板Wを受け取るとともに、インデクサロボット11に処理済の基板Wを受け渡すように動作する。このため、未処理の基板Wはインデクサロボット11および基板搬送ロボット12によって基板処理装置10のいずれかに搬入されて当該基板処理装置10による基板洗浄処理を受け、また洗浄処理済の基板Wは基板搬送ロボット12によって基板処理装置10から搬出された後にインデクサロボット11を介してカセットCに戻される。
【0020】
<基板処理装置>
図2はこの発明にかかる基板処理装置の一実施形態を示す側面概要図である。この基板処理装置10は、基板を回転可能に支持するスピンチャック111と、このスピンチャック111に支持された基板Wの周囲に昇降可能に配設された洗浄液の飛散防止用カップ112と、スピンチャック111に支持された基板Wに液体と気体とが混合した噴霧状の洗浄液を供給する二流体ノズル301と、二流体ノズル301を基板Wの表面に沿って移動させる移動機構200とを備える。
【0021】
スピンチャック111は、モータ121の駆動により鉛直方向を向く軸を中心に回転する構成となっている。またスピンチャック111には、基台120上に複数の支持ピン122が本発明の「基板保持手段」として設けられて基板Wを保持可能となっている。そして、この基板Wの表面に沿って二流体ノズル301が移動機構200により水平移動する。
【0022】
移動機構200は、二流体ノズル301を支持する支持アーム202と、支持アーム202を軸203周りに回動させる駆動部とを有している。すなわち、スピンチャック111の上方位置で二流体ノズル301が支持アーム202の先端部に支持されている。また、支持アーム202の基端部は軸203の上端に一体回転可能に連結されている。そして、正逆回転可能なモータ204が制御部150からの信号に応じて作動することで支持アーム202が軸203周りに回動する。これにより、二流体ノズル301は、飛散防止用カップ112の側方の待機位置と、スピンチャック111に保持された基板W上との間で水平移動する。
【0023】
ここで、基板Wに対する二流体ノズル301の配設状態は任意であるが、基板Wへの液滴の供給方向が基板Wの表面の法線方向とほぼ一致するように、二流体ノズル301を配置してもよい。そして、このような配置姿勢を保ったまま、移動機構200は二流体ノズル301を基板Wの表面とほぼ平行に相対移動させてもよい。これによって、二流体ノズル301からの液滴を基板Wの表面に対して所定の液滴供給状態で供給することができ、基板Wの表面全体を均一に処理することができる。なお、二流体ノズル301の構成および動作については後で詳述する。
【0024】
モータ204には、ロータリエンコーダ205が付設されている。このロータリエンコーダ205は、例えば、軸203周りの回転に伴う支持アーム202の絶対角度θを監視するための情報を制御部150に出力する。また、支持アーム202の絶対角度θと、基板W上における二流体ノズル301の位置とは相互に対応するため、支持アーム202の絶対角度θを監視することによって基板洗浄中における二流体ノズル301の位置を監視することができる。
【0025】
上述したモータ204とロータリエンコーダ205は昇降ベース206上に支持されている。この昇降ベース206は鉛直方向を向くガイド軸207に摺動自在に嵌め付けられているとともに、ガイド軸207に並設されているボールネジ208に螺合されている。このボールネジ208は昇降モータ209の回転軸に連動連結されている。なお、昇降モータ209の回転量はロータリエンコーダ211によって検出される。二流体ノズル301が基板Wの上方にあたる洗浄位置にある際に昇降モータ209を駆動すると、二流体ノズル301が昇降されて、基板W面からの二流体ノズル301の吐出孔の高さが調節される。これにより、二流体ノズル301と基板Wとの間隔が規定される。
【0026】
移動機構200は昇降モータ209により二流体ノズル301と基板Wとの間隔を所定の間隔(例えば6mm)に規定した状態でモータ204の駆動により二流体ノズル301を基板Wに対して水平移動させる。このように二流体ノズル301を基板Wの表面上で移動させることによって、基板Wの表面各部に安定した状態で液滴(噴霧状の洗浄液)を供給することができ、基板Wの表面を良好に洗浄することができる。
【0027】
二流体ノズル301は、気体としての窒素ガスを導入する配管302と、液体としての純水を供給する配管311とが連通接続された二流体ノズルを構成する。配管302は窒素ガス供給部303に接続されている。また、この配管302には、そこを流通する空気の圧力を制御部150から入力された制御信号に対応する圧力に調整する電空レギュレータ304と、そこを流通する空気の圧力を検出する圧力センサ305と、そこを流通する空気の流量を検出する流量センサ306とが配設されている。なお、窒素ガスの代わりに他の不活性ガスや空気を使用してもよい。
【0028】
また、配管311は、DIW(deionized water:脱イオン水)などの純水の供給源として機能する純水供給部307に接続されている。また、この配管311には、そこを流通する純水の圧力を制御部150から入力された制御信号に対応する圧力に調整する電空レギュレータ308と、そこを流通する純水の圧力を検出する圧力センサ309と、そこを流通する純水の流量を検出する流量センサ310とが配設されている。なお、純水の代わりに超純水や薬液等を使用してもよい。
【0029】
<二流体ノズルの構成>
図3は二流体ノズルの内部構造を模式的に示す図である。同図(a)は二流体ノズルの縦断面図であり、同図(b)は同図(a)のA−A線断面図であり、同図(c)は二流体ノズルの部分拡大図である。二流体ノズル301は、外径寸法が互いに異なる3種類の筒状部材、つまり外径寸法が大きい順に「外筒321」、「中間筒322」および「内筒323」を有している。
【0030】
これらのうち外筒321には、基端部(上方端部)の内径が先端部(下方端部)のそれよりも大きい貫通孔が形成されている。これにより外筒321の貫通孔に段差部が形成されている。また、外筒321の中空形状に対応する外径寸法で中間筒322が設けられている。より具体的には、中間筒322の基端部(上方端部)の外径が外筒321の基端部内径とほぼ同一に仕上げられるとともに、中間筒322の先端部(下方端部)の外径が外筒321の先端部内径よりも若干小さく仕上げられている。こうして、中間筒322の外側面に段差部が形成されている。そして、中間筒322が外筒321の基端部側から挿入され、中間筒322の段差部が外筒321の貫通孔に形成された段差部に係合して位置決めされるとともに、その段差部の上方側で外筒321と中間筒322とが相互に固定される。このようにして外筒321に対して中間筒322が位置決め固定されると、外筒321の先端側と中間筒322の先端部との間に環状の気体流路331が形成されるとともに、気体流路331の先端(下端)が円環状で且つスリット状に開口した気体吐出口343となっている。
【0031】
この中間筒322にも外筒321と同様の形状を有する貫通孔が設けられている。すなわち、中間筒322には、基端部(上方端部)の内径が先端部(下方端部)のそれよりも大きい貫通孔が形成されている。これにより中間筒322の貫通孔に段差部が形成されている。また、中間筒322の中空形状に対応する外径寸法で内筒323が設けられている。より具体的には、内筒323の基端部(上方端部)の外径が中間筒322の基端部内径とほぼ同一に仕上げられるとともに、内筒323の先端部(下方端部)の外径が中間筒322の先端部内径よりも若干小さく仕上げられている。こうして、内筒323の外側面に段差部が形成されている。そして、内筒323が中間筒322の基端部側から挿入され、内筒323の段差部が中間筒322の貫通孔に形成された段差部に係合して位置決めされるとともに、その段差部の上方側で中間筒322と内筒323とが相互に固定される。このようにして中間筒322に対して内筒323が位置決め固定されると、中間筒322の先端側と内筒323の先端部との間に環状の液体流路332が形成されるとともに、液体流路332の先端(下端)が円環状で且つスリット状に開口した液体吐出口342となっている。
【0032】
この内筒323にも外筒321および中間筒322と同様の形状を有する貫通孔が設けられている。すなわち、内筒323には、基端部(上方端部)の内径が先端部(下方端部)のそれよりも大きい貫通孔が形成されている。これにより内筒323の貫通孔に段差部が形成されている。また、内筒323の中空形状に対応する外径寸法でセンターシャフト324が設けられている。より具体的には、センターシャフト324の基端部(上方端部)の外径が内筒323の基端部内径とほぼ同一に仕上げられるとともに、センターシャフト324の先端部(下方端部)の外径が内筒323の先端部内径よりも若干小さく仕上げられている。こうして、センターシャフト324の外側面に段差部が形成されている。そして、センターシャフト324が内筒323の基端部側から挿入され、センターシャフト324の段差部が内筒323の貫通孔に形成された段差部に係合して位置決めされるとともに、その段差部の上方側でセンターシャフト324と内筒323とが相互に固定される。このようにして内筒323に対してセンターシャフト324が位置決め固定されると、センターシャフト324の先端側と内筒323の先端部との間に環状の気体流路333が形成されるとともに、気体流路333の先端(下端)が円環状で且つスリット状に開口した気体吐出口341となっている。
【0033】
これら3つの筒状部材のうち中間筒322の側面中央部には、液体導入ポート352が設けられている。そして、この液体導入ポート352を介して液体流路332が純水供給部307と接続されている。したがって、純水供給部307から二流体ノズル301に純水が圧送されると、液体導入ポート352を介して液体流路332を流れ込み、液体吐出口342から支持ピン122に保持された基板Wに向けて吐出される。この吐出方向Xが本発明の「液体の吐出方向」や「液滴供給方向」に相当している。
【0034】
残りの筒状部材、つまり外筒321および内筒323の側面中央部には、ガス導入ポート351、353が設けられている。そして、ガス導入ポート351、353を介して気体流路331、333が窒素ガス供給部303と接続されている。したがって、窒素ガス供給部303から二流体ノズル301に窒素ガスが圧送されると、ガス導入ポート351、353を介して気体流路331、333を流れ込む。そして、純水の吐出方向(図3の上下方向)Xと平行に窒素ガスが気体吐出口341、343に圧送され、各気体吐出口341、343から吐出される。
【0035】
このように、本実施形態では、1つの環状液体吐出口342と、2つの環状気体吐出口341、343を有しているが、その配置関係は次のようなものとなっている。すなわち、図3(b)に示すように、環状液体吐出口342の内側に環状気体吐出口341が配置されるとともに、環状液体吐出口342の外側に環状気体吐出口343が配置されている。換言すると、2つの環状気体吐出口341、343は環状液体吐出口342を挟み込むように設けられている。したがって、気体吐出口341が本発明の「第1気体吐出口」に相当し、気体吐出口343が本発明の「第2気体吐出口」に相当する。
【0036】
さらに、この実施形態では、各吐出口341、342、343の近傍にガイド部材361、362が設けられている。同図(c)に示すように、ガイド部材361は内筒323の外径よりも若干小さな外径を有する円盤部位361aを有し、その円盤部位361aの上面中央部から上方に連結部位361bが突設されている。そして、連結部位361bがセンターシャフト324の先端部と当接するとともに円盤部位361aの上面周縁部が内筒323の先端部から下方に隙間を空けた状態でボルト371によりガイド部材361がセンターシャフト324に固定されている。このため、円盤部位361aの上面周縁部が気体流路333に対して直交しながら気体吐出口341に対向している。したがって、気体吐出口341から吐出された窒素ガスは気体流路333と直交する全方位(図3(b)における紙面全体)に案内されて液体吐出口342から吐出された純水の液流れに対して直角に吐出する。
【0037】
もう一方のガイド部材362は外筒321と同一外径を有する円環部材であり、その内径は中間筒322の貫通孔よりも若干広くなっている。このガイド部材362の上面外周縁部362aは外筒321の先端部と係合する形状に仕上げられている。そして、同図(c)に示すように、上面外周縁部362aが外筒321の先端部と当接するとともにガイド部材362の上面内周縁部362bが中間筒322の先端部から下方に隙間を空けた状態でボルト372によりガイド部材362が外筒321に固定されている。このため、ガイド部材362の上面内周縁部362bが気体流路33に対して直交しながら気体吐出口343に対向している。したがって、気体吐出口343から吐出された窒素ガスは気体流路333と直交し、しかも液体吐出口342から吐出された純水の液流れに向かう方位に案内されて純水の液流れに対して直角に吐出する。なお、本実施形態では、ガイド部材361、362をボルト371、372によりセンターシャフト324,外筒321に取り付けているが、取付方式や取付態様はこれに限定されるものではない。例えばガイド部材362と外筒321を一体的に成形してもよい。
【0038】
このように純水の液流れに対して窒素ガスが吐出され、純水と窒素ガスとの衝突によって純水の液滴が形成される。そして、ガイド部材361、362の環状の隙間381から液滴が基板Wに向けて供給される。
【0039】
以上のように、この実施形態によれば、純水が所定の液滴供給方向に吐出されるとともに、この純水を挟み込むように互いに異なる2つの経路、つまり図3(c)の1点鎖線で示す2つの気体吐出経路で窒素ガスが吐出され、純水と窒素ガスとの衝突によって純水の液滴が形成される。このように互いに異なる2経路で、しかも挟み込むように窒素ガスが純水の液流れに吐出されて純水に対してせん断力が作用する。しかも、この実施形態では、2つの気体吐出経路のいずれにおいても、窒素ガスが純水の液流れに対して直角に吐出されるため、上記せん断力がさらに高められる。その結果、微細な液滴が形成され、該液滴により基板Wに対して洗浄処理を行うため、基板Wに対してダメージを与えることなく、優れた除去率で基板洗浄を良好に行うことができる。
【0040】
また、窒素ガスが純水の液流れに対して直角に吐出されるため、液体吐出口342の直近で液滴形成が行われる。そして、こうして形成された液滴を直ちに基板Wに供給することができる。したがって、二流体ノズルと基板Wとの距離を近づけることができ、基板Wへのダメージを大幅に抑制することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、中間筒322および内筒323により純水を液体吐出口342から液滴供給方向Xに吐出させる「液体吐出部」が構成されている。また、液体吐出口342の内側に本発明の「第1気体吐出部」が設けられている。この実施形態では、内筒323、センターシャフト324およびガイド部材361により第1気体吐出部が構成されており、ガイド部材361が本発明の「第1ガイド部材」に相当している。さらに、液体吐出口342の外側に本発明の「第2気体吐出部」が設けられている。この実施形態では、外筒321、内筒323およびガイド部材362により第2気体吐出部が構成されており、ガイド部材362が本発明の「第2ガイド部材」に相当している。
【0042】
ここで、上記実施形態による液滴の微粒化効果を検証するために、次のような実験を行った。すなわち、上記実施形態にかかる二流体ノズル301として、液体吐出口342の開口幅(スリット幅)を0.1mmに設定する一方、気体吐出口341、343の開口幅(スリット幅)を0.3mmに設定したものを準備した。また、比較例として、純水(液体)への窒素ガスの吐出角α(図4参照)が30゜である点を除き、実施形態と同一構成の二流体ノズルを準備した。そして、表1に示すように、窒素ガスの流量(気体流量)と純水の流量(液体流量)を種々に設定しながら、各設定条件での液滴平均速度、ザウター平均径、算術平均径をLavision社製のSizingMasterを用いて測定した。それらの結果を同表にまとめている。また、液滴平均速度とザウター平均径との関係をグラフにプロットしている(図4参照)。
【0043】
【表1】

【0044】
同表および図4から明らかなように、液流れに対して直交、つまり吐出角αを90゜に設定することによって液滴を微粒化することができる。また、直交吐出により、液滴平均速度が比較的遅くなるように液体流量や気体流量を設定したとしても、液滴を十分に微粒化することができる。このように液滴平均速度を抑制することは基板Wのダメージ抑制を図る上で好適であり、ダメージ抑制を達成しながらも液滴の微粒化によってパーティクル除去率を高めることができるという優れた作用効果が得られる。
【0045】
このような作用効果は吐出角αを80゜程度まで変更した場合にも得られることが検証されており、本願における「液体の液流れに対して直角」とは、吐出角αが80゜〜90゜の範囲を意味している。
【0046】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、2つの気体吐出経路のいずれにおいても、純水の液流れに対して窒素ガスを直角に吐出しているが、いずれか一方のみにおいて直角吐出させるように構成してもよい。例えば図5に示すように、液体吐出口342を挟み込むように第1および第2気体吐出部を設けながらも、液体吐出口342の外側に設けられた第2気体吐出部のみが液体吐出口342から吐出された純水の液流れに対して窒素ガスを直角に吐出させている。逆に、図6に示す実施形態では、液体吐出口342の内側に設けられた第1気体吐出部のみが液体吐出口342から吐出された純水の液流れに対して窒素ガスを直角に吐出させている。これらの構成を採用した二流体ノズル301においても、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0047】
また、上記実施形態では、第1気体吐出部の気体流路331と、第2気体吐出部の気体流路333とが配管302に接続されて同一流量の窒素ガスが供給されるように構成されているが、異なる流量の窒素ガスを供給するように構成してもよい。この場合、各気体吐出部に供給される窒素ガスをコントロールすることで隙間381から供給される液滴の供給特性(例えば液滴の広がり方、液滴平均速度など)を調整することができる。
【0048】
また、上記実施形態では、1つの液体吐出口342から純水を吐出させているが、液体吐出部が液体吐出口を複数個有するように構成してもよい。これによって、液体吐出口から吐出された時点で液体が複数に分離されており、液滴の微粒化に好適である。
【0049】
また、上記実施形態では、純水による基板洗浄を行う基板処理装置に本発明を適用しているが、二流体ノズルを用いて基板に液滴を供給して所定の基板処理を施す基板処理装置全般に本発明を適用することができる。さらに、本発明にかかる二流体ノズルおよび液滴供給方法については、上記したように基板処理装置に適用するのが好適であるが、その適用対象はこれに限定されるものではなく、液体に気体を衝突させて形成した液体の液滴を所定方向に供給する二流体ノズルおよび液滴供給方法全般に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明は、液体と気体とを衝突させて液体の液滴を形成して供給する液滴供給方法および液滴を供給する二流体ノズルに適用することができる。また、液滴供給方法や二流体ノズルを用いて基板に液体の液滴を供給して所定の基板処理を施す基板処理装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明にかかる基板処理装置の一実施形態を装備した基板処理システムを示す平面レイアウト図である。
【図2】この発明にかかる基板処理装置の一実施形態を示す側面概要図である。
【図3】二流体ノズルの内部構造を模式的に示す図である。
【図4】図3の二流体ノズルによる作用効果を示すグラフである。
【図5】この発明にかかる二流体ノズルの他の実施形態を示す図である。
【図6】この発明にかかる二流体ノズルの別の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
10…基板処理装置
122…支持ピン(基板保持手段)
301…二流体ノズル
321…外筒
322…中間筒
323…内筒
324…センターシャフト
331…第1気体流路
332…液体流路
333…第2気体流路
341…第1気体吐出口
342…液体吐出口
343…第2気体吐出口
361…第1ガイド部材
362…第2ガイド部材
W…基板
X…純水の吐出方向(液滴吐出方向、液滴供給方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板に液滴を供給する二流体ノズルとを備え、
前記二流体ノズルは、
液体を液体吐出口から前記基板に向けて吐出する液体吐出部と、
前記液体吐出口を挟み込むように設けられ、前記液体吐出口から吐出された液体に気体を衝突させて前記液滴を形成する第1および第2気体吐出部とを有し、
前記第1および第2気体吐出部の少なくとも一方は前記液体吐出口から吐出された前記液体の液流れに対して直角に前記気体を吐出する
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記第1および第2気体吐出部はともに前記液体吐出口から吐出された前記液体の液流れに対して直角に前記気体を吐出する請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1気体吐出部は前記気体を吐出する第1気体吐出口を有し、前記第2気体吐出部は前記気体を吐出する第2気体吐出口を有しており、
前記基板保持手段に保持された基板側から見た、前記第1および第2気体吐出口ならびに前記液体吐出口の形状は環状であり、
前記第1気体吐出口は前記環状液体吐出口の内側に設けられる一方、前記第2気体吐出口は前記環状液体吐出口の外側に設けられている請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1気体吐出部は、前記液体吐出口からの前記液体の吐出方向と平行に気体を前記第1気体吐出口に案内する第1気体流路と、前記第1気体流路と直交するように前記第1気体吐出口に対向して設けられて前記第1気体吐出口から吐出された気体を前記第1気体流路と直交する全方位に案内する第1ガイド部材とを有する請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第2気体吐出部は、前記第2気体吐出口から吐出された気体の流れを前記液体の液流れに対して直交する方向に変更しながら前記気体を前記液流れに案内する第2ガイド部材を有する請求項3または4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記液体吐出部は前記液体吐出口を複数個有している請求項1ないし5のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項7】
液滴を供給する二流体ノズルにおいて、
液体を液体吐出口から液滴供給方向に吐出する液体吐出部と、
前記液体吐出口を挟み込むように設けられ、前記液体吐出口から吐出された液体に気体を衝突させて前記液滴を形成する第1および第2気体吐出部とを備え、
前記第1および第2気体吐出部の少なくとも一方は前記液体吐出口から吐出された前記液体の液流れに対して直角に前記気体を吐出する
ことを特徴とする二流体ノズル。
【請求項8】
前記第1および第2気体吐出部はともに前記液体吐出口から吐出された前記液体の液流れに対して直角に前記気体を吐出する請求項7記載の二流体ノズル。
【請求項9】
前記第1気体吐出部は前記気体を吐出する第1気体吐出口を有し、前記第2気体吐出部は前記気体を吐出する第2気体吐出口を有しており、
前記液滴供給方向の下流側から上流側を見た、前記第1および第2気体吐出口ならびに前記液体吐出口の形状は環状であり、
前記第1気体吐出口は前記環状液体吐出口の内側に設けられる一方、前記第2気体吐出口は前記環状液体吐出口の外側に設けられている請求項7または8記載の二流体ノズル。
【請求項10】
前記第1気体吐出部は、前記液滴供給方向と平行に気体を前記第1気体吐出口に案内する第1気体流路と、前記第1気体流路と直交するように前記第1気体吐出口に対向して設けられて前記第1気体吐出口から吐出された気体を前記第1気体流路と直交する全方位に案内する第1ガイド部材とを有する請求項9記載の二流体ノズル。
【請求項11】
前記第2気体吐出部は、前記第2気体吐出口から吐出された気体の流れを前記液体の液流れに対して直交する方向に変更しながら前記気体を前記液流れに案内する第2ガイド部材を有する請求項9または10記載の二流体ノズル。
【請求項12】
前記液体吐出部は前記液体吐出口を複数個有している請求項7ないし11のいずれかに記載の二流体ノズル。
【請求項13】
液体に気体を衝突させて形成した前記液体の液滴を所定方向に供給する液滴供給方法であって、
前記液体を液滴供給方向に吐出する第1工程と、
互いに異なる2つの気体吐出経路で、かつ前記液滴供給方向に吐出される前記液体を挟み込むように、前記気体を吐出することによって前記液体の液滴を形成する第2工程とを備え、
前記第2工程では、前記2つの気体吐出経路の少なくとも一方では気体が液体の液流れに対して直角に吐出される
ことを特徴とする液滴供給方法。
【請求項14】
前記第1および第2工程前に、前記液滴供給方向の下流側に基板を設ける第3工程を備え、
前記第1工程では、前記液体として、前記基板を洗浄する処理液を吐出する請求項13記載の液滴供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−88079(P2009−88079A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253337(P2007−253337)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】