説明

基板処理装置、基板処理方法、および記憶媒体

【課題】複雑な機構を用いることなく、効率的に薬液を回収することができる基板処理装置および基板処理方法を提供すること。
【解決手段】基板処理装置において、制御部121は、リンス液によるリンス処理後に薬液による薬液処理を制御する。この際に、最初に、リンス処理用の回転数以上の回転数で基板Wを回転させながら基板上に薬液を供給して排液カップを薬液により洗浄し、その際に排液カップ51で受けた液を廃棄ライン113によって廃棄する。その後、薬液処理用の回転数で基板を回転させながら基板上に薬液を供給して基板の薬液処理を行い、その際に排液カップで受けた液を回収ライン112によって回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウエハ等の基板に対して洗浄処理のような所定の液処理を行う基板処理装置および基板処理方法、ならびそのような方法を実行させるためのプログラムが記憶された記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、被処理基板である半導体ウエハやガラス基板に処理液を供給して液処理を行うプロセスが多用されている。このようなプロセスとしては、例えば、基板に付着したパーティクルやコンタミネーション等を除去する洗浄処理を挙げることができる。
【0003】
このような基板処理装置としては、基板である半導体ウエハをスピンチャックに保持し、基板を回転させた状態でウエハに薬液などの処理液を供給して洗浄処理を行うものが知られている。この種の装置では、通常、処理液は基板の中心に供給され、基板を回転させることにより処理液を外側に広げて液膜を形成し、処理液を基板の外方へ離脱させる。そして、このような洗浄処理の後、基板を薬液処理時より速く回転させた状態で基板に純水等のリンス液を供給してリンス液の液膜を形成し、リンス液を基板の外方へ離脱させるリンス処理を行う。このため、基板の外方へ振り切られた処理液やリンス液を受けて排液するための排液カップを基板の外側を囲繞するように設けている(例えば特許文献1)。
【0004】
ところで、この種の基板処理装置においては、薬液としてアルカリ性薬液や酸性薬液等を用いるが、これらの薬液は比較的高価であり、回収して循環使用することが提案されている(例えば特許文献2)。この特許文献2には、リンス処理としての水洗後、純水が混合して濃度が低くなった薬液を回収することを避けるため、複数のカップを切り替えて使用する方法と、水洗処理後の薬液処理の最初の数秒間、薬液をドレインラインに排出し、その後回収ラインに切り替えて薬液を回収する技術が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示された技術のうち、前者の場合には、装置が大型化し、複雑なものとなってしまう。また、後者の場合には、リンス処理を確実に行う観点から薬液処理時より速い回転数でリンスしているため、カップの高いところまでリンス液である純水が付着しており、純水を洗い流すのに時間がかかって廃棄する薬液が多くなってしまい、薬液回収率が低いという問題点がある。
【特許文献1】特開2002−368066号公報
【特許文献2】特開平5−243202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、複雑な機構を用いることなく、効率的に薬液を回収することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
また、このような基板処理方法を実行するためのプログラムが記憶された記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、基板を水平に保持し、基板とともに回転可能な基板保持部と、前記基板保持部を回転させる回転機構と、 薬液を貯留する薬液タンクを有し、この薬液タンクから基板に薬液を供給する薬液供給機構と、基板にリンス液を供給するリンス液供給機構と、前記基板保持部に保持された基板の外側を囲繞するように設けられ、回転する基板から飛散する薬液またはリンス液を受ける環状の排液カップと、前記排液カップに接続され、前記排液カップで受けた液を廃棄する廃棄ラインと、前記排液カップに接続され、前記排液カップで受けた液を前記薬液タンクに回収する回収ラインと、前記回収ラインによる液の回収および前記廃棄ラインによる液の廃棄を切り替える切替手段と、前記薬液供給機構による前記薬液の供給、前記リンス液供給機構による前記リンス液の供給、前記回転機構による基板の回転、前記切替手段による液の廃棄および回収の切り替えを制御する制御部とを具備し、前記制御部は、前記リンス液によるリンス処理後に前記薬液による薬液処理を行う際に、最初に、前記廃棄ラインが有効かつ前記回収ラインが無効の状態として、リンス処理用の回転数以上の回転数で基板を回転させながら基板上に前記薬液を供給して前記排液カップを薬液により洗浄し、その際に前記排液カップで受けた液を前記廃棄ラインによって廃棄し、その後、前記廃棄ラインが無効かつ前記回収ラインが有効の状態に切り替えるとともに、薬液処理用の回転数で基板を回転させながら基板上に前記薬液を供給して基板の薬液処理を行い、その際に前記排液カップで受けた液を前記回収ラインによって回収するように予設定されることを特徴とする基板処理装置を提供する。
【0008】
上記第1の観点において、前記基板保持部に保持された基板を囲繞するように、前記排液カップの内側に設けられ、前記基板保持部および基板とともに回転し、基板を回転した際に基板から振り切られた液を受けて前記排液カップに導くとともに、回転する際に前記排液カップに液の旋回流を形成する回転カップをさらに具備することができる。前記回転カップに、前記排液カップ内に挿入されかつ前記回転カップとともに回転して前記旋回流の形成をアシストする部材が接続されるようにすることができる。この場合に、前記旋回流の形成をアシストする部材は、前記回転カップの筒状の外側壁部の下側部分とすることができる。
【0009】
また、上記第1の観点において、前記制御部は、第1の基板を第1の回転速度で回転させながら前記第1の基板上に前記リンス液を供給してリンス処理を行う工程と、次に、前記第1の基板または新たな第2の基板である被処理基板を前記第1の回転速度以上の第2の回転速度で回転させながら前記被処理基板に前記薬液を供給して予備処理を行い、この際、前記廃棄ラインが有効かつ前記回収ラインが無効の状態として、前記排液カップで受けた液を前記廃棄ラインに送る工程と、次に、前記被処理基板を前記第1の回転速度未満の第3の回転速度で回転させながら前記被処理基板上に前記薬液を供給して薬液処理を行い、この際、前記廃棄ラインが無効かつ前記回収ラインが有効の状態として、前記排液カップで受けた液を前記回収ラインに送る工程とを実行するように予設定されるようにすることができる。
【0010】
この場合に、前記被処理基板は前記第2の基板であり、前記制御部は、前記リンス処理の前に、前記第1の基板を前記第3の回転速度で回転させながら前記第1の基板上に前記薬液を供給して前記薬液処理を行う工程を実行するように予設定されることができる。代わりに、前記被処理基板は前記第1の基板であり、前記制御部は、前記リンス処理の前に、前記第1の基板を前記第1の回転速度未満の回転速度で回転させながら前記第1の基板上に前記薬液と異なる薬液を供給して異なる薬液処理を行う工程を実行するように予設定されることができる。
【0011】
また、前記制御部は、前記リンス処理の際、前記廃棄ラインが有効かつ前記回収ラインが無効の状態として、前記排液カップで受けた液を前記廃棄ラインに送るように予設定されることができる。代わりに、前記制御部は、前記リンス処理の際、前記廃棄ラインとは異なる別の廃棄ラインが有効かつ前記回収ラインが無効の状態として、前記排液カップで受けた液を前記別の廃棄ラインに送るように予設定されることができる。
【0012】
また、前記廃棄ラインと前記回収ラインとは、共通の排出管を介して前記排液カップに接続され、前記切替手段は、前記廃棄ラインと前記回収ラインとが分岐する位置で前記排出管に配設されかつ前記制御部で制御される切り替えバルブを具備することができる。
【0013】
本発明の第2の観点では、基板ともに回転可能な基板保持部に保持された基板の外側を囲繞するように設けられ、回転する基板から飛散する液を受ける環状の排液カップの内側で、薬液およびリンス液を供給して基板処理を行う基板処理方法であって、薬液処理後の基板に前記リンス液を供給してリンス処理を行う工程と基板に前記薬液を供給して基板に対して薬液処理をする工程とを具備し、前記リンス液によるリンス処理後に前記薬液による薬液処理を行う際に、最初に、リンス処理用の回転数以上の回転数で基板を回転させながら基板上に前記薬液を供給して前記排液カップを薬液により洗浄し、その際に前記排液カップで受けた液を廃棄し、その後、薬液処理用の回転数で基板を回転させながら基板上に前記薬液を供給して基板の薬液処理を行い、その際に前記排液カップで受けた液を回収することを特徴とする基板処理方法を提供する。
【0014】
上記第2の観点において、前記基板保持部に保持された基板を囲繞するように、前記排液カップの内側に設けられ、前記基板保持部および基板とともに回転し、基板を回転した際に基板から振り切られた液を受けて前記排液カップに導く回転カップの回転にともなう旋回流で薬液の排出を促進するようにすることができる。この場合に、前記回転カップに、前記排液カップ内に挿入されかつ前記回転カップとともに回転して前記旋回流の形成をアシストする部材が接続されるようにすることができる。
【0015】
また、上記第2の観点において、第1の基板を第1の回転速度で回転させながら前記第1の基板上に前記リンス液を供給してリンス処理を行う工程と、次に、前記第1の基板または新たな第2の基板である被処理基板を前記第1の回転速度以上の第2の回転速度で回転させながら前記被処理基板に前記薬液を供給して予備処理を行い、この際、前記排液カップで受けた液を廃棄する工程と、次に、前記被処理基板を前記第1の回転速度未満の第3の回転速度で回転させながら前記被処理基板上に前記薬液を供給して薬液処理を行い、この際、前記排液カップで受けた液を回収する工程とを具備するようにすることができる。
【0016】
この場合に、前記被処理基板は前記第2の基板であり、前記方法は、前記リンス処理の前に、前記第1の基板を前記第3の回転速度で回転させながら前記第1の基板上に前記薬液を供給して前記薬液処理を行う工程を具備することができる。代わりに、前記被処理基板は前記第1の基板であり、前記方法は、前記リンス処理の前に、前記第1の基板を前記第1の回転速度未満の回転速度で回転させながら前記第1の基板上に前記薬液と異なる薬液を供給して異なる薬液処理を行う工程を具備することができる。
【0017】
また、上記第2の観点において、前記リンス処理の際、前記排液カップで受けた液を廃棄する工程を具備することができる。
【0018】
本発明の第3の観点では、コンピュータ上で動作し、基板処理装置を制御するためのプログラムが記憶されたコンピュータで読み取り可能な記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、前記基板処理装置を制御して、基板とともに回転可能な基板保持部に保持された基板の外側を囲繞するように設けられ、回転する基板から飛散する液を受ける環状の排液カップの内側で、薬液およびリンス液を供給して基板処理を行う基板処理方法を実行させ、前記方法は、基板に前記リンス液を供給してリンス処理を行う工程と、基板に前記薬液を供給して基板に対して薬液処理をする工程とを具備し、前記リンス液によるリンス処理後に前記薬液による薬液処理を行う際に、最初に、リンス処理用の回転数以上の回転数で基板を回転させながら基板上に前記薬液を供給して前記排液カップを薬液により洗浄し、その際に前記排液カップで受けた液を廃棄し、その後、薬液処理用の回転数で基板を回転させながら基板上に前記薬液を供給して基板の薬液処理を行い、その際に前記排液カップで受けた液を回収することを特徴とする記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、排液カップから排出管を介して薬液を回収可能な基板処理装置において、リンス液によるリンス処理後に薬液による薬液処理を行う際に、最初にリンス処理用の回転数以上の回転数で前記回転機構により基板を回転させながら前記薬液供給機構により薬液を供給して前記排液カップを薬液により洗浄し、その液を廃棄してから、その際の薬液処理の際の薬液を回収するので、薬液洗浄の際に薬液が排液カップに残存しているリンス液の高さまで容易に達し、薬液により短時間でリンス液を洗い流すことができる。このため、廃棄する薬液を少なくすることができ、その後の薬液処理の際に効率的に薬液を回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態について詳細に説明する。ここでは、本発明を半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)の表裏面洗浄を行う液処理装置に適用した場合について示す。
【0021】
図1は本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す断面図、図2はその平面図、図3は図1の基板処理装置の排気・排液部を拡大して示す断面図である。
【0022】
この基板処理装置100は、図示しない液処理システムに複数台組み込まれている。図1および図2に示すように、液処理装置100は、ベースプレート1と、被処理基板であるウエハWを回転可能に保持するウエハ保持部2と、このウエハ保持部2を回転させる回転モータ3と、ウエハ保持部2に保持されたウエハWを囲繞するように設けられ、ウエハ保持部2とともに回転する回転カップ4と、ウエハWの表面に処理液を供給する表面側液供給ノズル5と、ウエハWの裏面に処理液を供給する裏面側液供給ノズル6と、回転カップ4の周縁部に設けられた排気・排液部7とを有している。また、排気・排液部7の周囲およびウエハWの上方を覆うようにケーシング8が設けられている。ケーシング8の上部には液処理システムのファン・フィルター・ユニット(FFU)からの気流を側部に設けられた導入口9aを介して導入する気流導入部9が設けられており、ウエハ保持部2に保持されたウエハWに清浄空気のダウンフローが供給されるようになっている。
【0023】
ウエハ保持部2は、水平に設けられた円板状をなす回転プレート11と、その裏面の中心部に接続され、下方鉛直に延びる円筒状の回転軸12とを有している。回転プレート11の中心部には、回転軸12内の孔12aに連通する円形の孔11aが形成されている。そして、裏面側液供給ノズル6を備えた昇降部材13が孔12aおよび孔11a内を昇降可能に設けられている。回転プレート11には、ウエハWの外縁を保持する保持部材14が設けられており、図2に示すように、これらは3つ等間隔で配置されている。この保持部材14は、ウエハWが回転プレート11から少し浮いた状態で水平にウエハWを保持するようになっている。この保持部材14はウエハWの端面を保持可能な保持部14aと、保持部14aから回転プレート裏面側中心方向に延材する着脱部14bと、保持部14aを垂直面内で回動させる回転軸14cとを有し、着脱部14bの先端部を図示しないシリンダ機構により上方に押し上げることにより、保持部14aが外側に回動してウエハWの保持が解除される。保持部材14は、図示しないバネ部材により保持部14aがウエハWを保持する方向に付勢されており、シリンダ機構を作動させない場合には保持部材14によりウエハWが保持された状態となる。
【0024】
回転軸12は、2つのベアリング15aを有する軸受け部材15を介してベースプレート1に回転可能に支持されている。回転軸12の下端部にはプーリー16が嵌め込まれており、プーリー16にはベルト17が巻き掛けられている。ベルト17はモータ3の軸に取り付けられたプーリー18にも巻き掛けられている。そして、モータ3を回転させることによりプーリー18、ベルト17およびプーリー16を介して回転軸12を回転するようになっている。
【0025】
表面側液供給ノズル5は、ノズル保持部材22に保持された状態でノズルアーム22aの先端に取り付けられており、ノズルアーム22a内に設けられた流路83aを通って薬液やリンス液としての純水が供給され、その内部に設けられたノズル孔5aを介して薬液や純水を吐出するようになっている。
【0026】
図2にも示すように、ノズルアーム22aは駆動機構81により軸23を中心として回動可能に設けられており、ノズルアーム22aを回動させることにより、表面側液供給ノズル5がウエハW中心上および外周上のウエハ洗浄位置と、ウエハWの外方の退避位置とを取り得るようになっている。また、ノズルアーム22aはシリンダ機構等の昇降機構82により上下動可能となっている。
【0027】
ノズルアーム22a内には流路83が設けられており、表面側液供給ノズル5のノズル孔5aは流路83の一端に繋がっている。また、流路83の他端には配管84aが接続されている。配管84aにはバルブ86、87が設けられている。バルブ86には配管88が接続されており、配管88の他端には薬液タンク89が接続されている。バルブ87には配管90が接続されており、配管90の他端には純水(DIW)を供給するDIW供給源91が接続されている。そして、薬液タンク89およびDIW供給源91から、配管84aおよび流路83を通って表面液供給ノズル5へそれぞれ薬液および純水を供給可能となっている。なお、薬液タンク89には、薬液を補充する薬液補充ライン97および薬液を希釈するための純水を供給する純水供給ライン98が接続されている。
【0028】
裏面側液供給ノズル6は昇降部材13の中心に設けられており、その内部に長手方向に沿って延びるノズル孔6aが形成されている。ノズル孔6aの下端には配管84bが接続されている。配管84bにはバルブ92、93が設けられている。バルブ92には配管94が接続されており、配管94の他端には上記薬液タンク89が接続されている。バルブ93には配管95が接続されており、配管95の他端には上記DIW供給源91が接続されている。そして、薬液タンク89およびDIW供給源91から、配管84bを通って裏面液供給ノズル6へそれぞれ薬液および純水を供給可能となっている。
【0029】
薬液としては、例えば酸薬液である希フッ酸(DHF)、アルカリ薬液であるアンモニア過水(SC1)等を挙げることができ、1種または2種以上の薬液を供給可能となっている。供給する薬液が2種以上の場合は、それぞれにタンクを設けて、同様に配管84a、84bに接続すればよい。
【0030】
昇降部材13の上端部にはウエハWを支持するウエハ支持台24を有している。ウエハ支持台24の上面には、ウエハWを支持するための3本のウエハ支持ピン25(2本のみ図示)を有している。そして、裏面側液供給ノズル6の下端には接続部材26を介してシリンダ機構27が接続されており、このシリンダ機構27によって昇降部材13を昇降させることによりウエハWを昇降させてウエハWのローディングおよびアンローディングが行われる。
【0031】
回転カップ4は、回転プレート11の端部上方から内側斜め上方に延びる円環状の庇部31と、庇部31の外端部から垂直下方へ延びる筒状の外側壁部32を有している。そして、図3の拡大図に示すように、外側壁部32と回転プレート11との間には円環状の隙間33が形成されており、この隙間33からウエハWが回転プレート11および回転カップ4とともに回転されて飛散した薬液やリンス液である純水が下方に導かれる。
【0032】
庇部31と回転プレート11との間にはウエハWとほぼ同じ高さの位置に板状をなす案内部材35が介在されている。図4に示すように、庇部31と案内部材35との間、案内部材35と回転プレート11との間には、それぞれ処理液やリンス液を通過させる複数の開口36および37を形成するための複数のスペーサ部材38および39が周方向に沿って配置されている。庇部31と、案内部材35と、回転プレート11と、これらの間のスペーサ部材38,39とは、ねじ40によりねじ止めされている。
【0033】
案内部材35は、その表裏面がウエハWの表裏面と略連続するように設けられている。そして、モータ3によりウエハ保持部2および回転カップ4をウエハWとともに回転させて表面側液供給ノズル5からウエハW表面の中心に処理液を供給した際には、処理液は遠心力でウエハWの表面を広がり、ウエハWの周縁から振り切られる。このウエハW表面から振り切られた処理液は、略連続して設けられた案内部材35の表面に案内されて開口36から外方へ排出され、外側壁部32によって下方へ導かれる。また、同様にウエハ保持部2および回転カップ4をウエハWとともに回転させて裏面側液供給ノズル6からウエハWの裏面の中心に処理液を供給した際には、処理液は遠心力でウエハWの裏面を広がり、ウエハWの周縁から振り切られる。このウエハW裏面から振り切られた処理液は、略連続して設けられた案内部材35の裏面に案内されて開口37から外方へ排出され、外側壁部32によって下方へ導かれる。このときスペーサ部材38、39および外側壁部32に到達した処理液には遠心力が作用しているから、これらがミストとなって内側へ戻ることが阻止される。
【0034】
また、案内部材35はこのようにウエハW表面および裏面から振り切られた処理液を案内するので、ウエハWの周縁から脱離した処理液が乱流化し難く、処理液をミスト化させずに回転カップ4外へ導くことができる。なお、図2に示すように、案内部材35には、ウエハ保持部材14に対応する位置に、ウエハ保持部材14を避けるように切り欠き部41が設けられている。
【0035】
排気・排液部7は、主に回転プレート11と回転カップ4に囲繞された空間から排出される気体および液体を回収するためのものであり、図3の拡大図にも示すように、回転カップ4から排出された処理液やリンス液を受ける環状をなす排液カップ51と、排液カップ51を収容するように排液カップ51と同心状の環状をなす排気カップ52とを備えている。
【0036】
図1および図3に示すように、排液カップ51は、回転カップ4の外側に、外側壁部32に近接して垂直に設けられた筒状をなす外周壁53と、外周壁53の下端部から内側に向かって延びる内側壁54とを有している。内側壁54の内周には内周壁54aが垂直に形成されている。これら外周壁53および内側壁54によって規定される環状の空間が回転カップ4から排出された処理液やリンス液を収容する液収容部56となっている。また、外周壁53の上端には、排液カップ51からの処理液の飛び出しを防止するために回転カップ4の上方部分に張り出した張り出し部53aが設けられている。液収容部56の保持部材14の外側に対応する位置には、内側壁54から回転プレート11の下面近傍まで延び、排液カップ51の周方向に沿って環状に設けられた仕切り壁55を有している。そして、液収容部56は、この仕切り壁55によって、隙間33から排出される液を受ける主カップ部56aと、保持部材14の保持部14a近傍部分から滴下される液を受ける副カップ部56bに分離されている。液収容部56の底面57は、仕切り壁55により主カップ部56aに対応する第1部分57aと、副カップ部56bに対応する第2部分57bとに分かれており、これらはいずれも外側から内側(回転中心側)に向かって上昇するように傾斜している。そして、第2部分57bの内側端は保持部材14の保持部14aよりも内側(回転中心側)に対応する位置に達している。仕切り壁55は、回転プレート11が回転した際に、保持部材14の回転プレート11の下方に突出した部分によって形成された気流がミストを随伴してウエハW側に到達することを阻止する役割を有している。仕切り壁55には、副カップ部56bから主カップ部56aに処理液を導くための孔58が形成されている(図1参照)。
【0037】
図1に示すように、排液カップ51の内側壁54の最外側部分には液収容部56から液を排出する1箇所の排液口60が設けられており、排液口60には液を排出する排液管61が接続されている。そして、排液管61には、切り替えバルブ111が設けられており、切り替えバルブ111には薬液を回収する薬液回収ライン112が接続されている。切り替えバルブ111は、排液管61を回収ライン112と廃棄ラインであるドレイン管113との間で切り替えるようになっている。
【0038】
排液カップ51内では、ウエハW、回転プレート11および回転カップ4が一体的に回転することにより、回転カップ4から排出されて貯留された処理液やリンス液の旋回流が形成され、排液口60および排液管61を介して排出される。この旋回流は、ウエハWの回転プレート11の回転のみによっても生じるが、回転カップ4が回転する際に排液カップ51内に挿入された外側壁部32の下端部分によって形成される旋回気流に排液カップ51内の処理液やリンス液が随伴することにより、ウエハWと回転プレート11のみで生じる旋回流よりも高速の旋回流を形成することができ、排液口60から液を排出する速度を高いものとすることができる。
【0039】
排気カップ52は、排液カップ51の外周壁53の外側部分に垂直に設けられた外側壁64と、保持部材14の内側部分に垂直にかつその上端が回転プレート11に近接するように設けられた内側壁65と、ベースプレート1上に設けられた底壁66と、外側壁64から上方へ湾曲するとともに、回転カップ4の上方を覆うように設けられた上側壁67とを有している。そして、排気カップ52は、その上側壁67と回転カップ4の庇部31との間の環状をなす導入口68から回転カップ4内およびその周囲の主にガス成分を取り込んで排気するようになっている。また、排気カップ52の下部には、図1および図3に示すように、排気口70が設けられており、排気口70には排気管71が接続されている。排気管71の下流側には図示しない吸引機構が設けられており、回転カップ4の周囲を排気することが可能となっている。排気口70は複数設けられており、処理液の種類に応じて切り替えて使用することが可能となっている。
【0040】
排液カップ51の外側壁である外周壁53と排気カップ52の外側壁64との間には環状をなす外側環状空間99aが形成されており、また排液カップ51の底部と排気カップ52の底部との間の排気口70の外側部分には、周方向に沿って多数の通気孔98が形成された環状の気流調整部材97が設けられている。そして、外側環状空間99aと気流調整部材97は排気カップ52に取り入れられ、排気口70に至る気流を調整して均一に排気する機能を有している。すなわち、このように環状の空間である外側環状空間99aを通って気流を全周に亘って均一に下方へ導き、多数の通気孔98を形成した気流調整部材97を設けて圧力損失つまり気流の抵抗を与えるとともに気流を分散することにより、排気口70からの距離によらず比較的均一に排気を行うことができる。
【0041】
また、排液カップ51の内周壁54aと排気カップ52の内側壁65との間には環状をなす内側環状空間99bが形成されており、さらに、排液カップ51の内周側には排気カップ52の底壁との間の隙間77が形成されている。そして、導入口68から取り入れられた気体成分は、外側環状空間99aのみならず、排液カップ51の液収容部56にも多少流れ、その気流は液収容部56から内側環状空間99bを通って全周に亘って均一に下方に導かれ、隙間77を通って排気口70から比較的均一に排気を行うことができる。
【0042】
このように、排液カップ51からの排液と排気カップ52からの排気が独立して行われるようになっているので、排液と排気を分離した状態で導くことが可能となる。また、排液カップ51からミストが漏出しても排気カップ52がその周囲を囲繞しているので速やかに排気口70を介して排出され、ミストが外部に漏出することが確実に防止される。
【0043】
基板処理装置100はマイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるプロセスコントローラ121を有しており、基板処理装置100の各構成部、例えば回転モータ3、バルブ類、シリンダの駆動機構等がこのプロセスコントローラ121に接続されて制御される構成となっている。また、プロセスコントローラ121には、工程管理者が基板処理装置100の各構成部を管理するためにコマンドの入力操作などを行うキーボードや、基板処理装置100の各構成部の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース122が接続されている。さらに、プロセスコントローラ121には、基板処理装置100で実行される各種処理をプロセスコントローラ121の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて液処理装置100の各構成部に所定の処理を実行させるための制御プログラムすなわちレシピが格納された記憶部123が接続されている。レシピは記憶部123の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスク等の固定的なものであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0044】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース122からの指示等にて任意のレシピを記憶部123から呼び出してプロセスコントローラ121に実行させることで、プロセスコントローラ121の制御下で、基板処理装置100での所望の処理が行われる。
【0045】
次に、以上のように構成される基板処理装置100の動作について図5〜7に基づいて説明する。本実施形態における以下の洗浄処理動作は、記憶部123に格納されたレシピに基づいてプロセスコントローラ121によって制御される。
【0046】
まず、図5の(a)に示すように、昇降部材13を上昇させた状態で、図示しない搬送アームからウエハ支持台24の支持ピン25上にウエハWを受け渡す。次いで、図5の(b)に示すように、昇降部材13を、ウエハWを保持部材14により保持可能な位置まで下降させ、保持部材14によりウエハWをチャッキングする。そして、図5の(c)に示すように、表面側液供給ノズル5を退避位置からウエハ洗浄位置に移動させる。
【0047】
この状態で、図5の(d)に示すように、回転モータ3によりウエハWを保持部材2および回転カップ4とともに回転させながら、表面側液供給ノズル5および裏面側液供給ノズル6から処理液として所定の薬液を供給してウエハWの洗浄処理を行う。
【0048】
このウエハ洗浄処理においては、ウエハWが回転された状態で、表面側液供給ノズル5および裏面側液供給ノズル6からウエハWの表面および裏面の中央に薬液が供給される。これにより、薬液が遠心力によりウエハWの外側に広がり、その過程で洗浄処理がなされる。そして、このように洗浄処理に供された薬液は、ウエハWの周縁から振り切られる。振り切られた薬液は、排液カップ51に至り、基本的に排液管61および回収配管112を介して薬液タンク89に回収され、循環使用される。
【0049】
この薬液処理の際のウエハWの回転数は、200〜700rpmの範囲であることが好ましい。また、薬液の供給量は、2.0〜4.0L/minであることが好ましい。
【0050】
このような薬液処理の後、処理液をリンス液である純水に切り替えて、薬液処理のときと同様、図5の(d)に示すように回転モータ3によりウエハWを保持部材2および回転カップ4とともに回転させながら、表面側液供給ノズル5および裏面側液供給ノズル6からリンス液である純水を供給してウエハWのリンス処理を行う。この際、切り替えバルブ111を回収配管112からドレイン管113側へ切り替えて排液カップ51で受けた液を廃棄する。このリンス処理の際のウエハの回転数は、300〜1500rpmの範囲であることが好ましい。また、純水の供給量は、2.0〜4.0L/minであることが好ましい。
【0051】
ウエハWの洗浄処理やリンス処理においては、ウエハWの外側を囲繞するように設けられているカップがウエハWとともに回転する回転カップ4であるから、ウエハWから振り切られた薬液やリンス液が回転カップ4に当たった際に処理液に遠心力が作用し、固定カップの場合のような飛び散り(ミスト化)は発生し難い。そして回転カップ4に達した処理液は下方に導かれ、隙間33から排液カップ51における液収容部56の主カップ部56aに排出される。一方、回転プレート11の保持部材14の取り付け位置には、保持部14aを挿入する穴が設けられているため、その部分から排液カップ51の副カップ部56bに処理液が滴下される。そして、このようにして排液カップ51に受け止められた薬液やリンス液は、その中を旋回しながら排液口60から排液管61を通って排出されるが、回転カップ4の回転にともなって外側壁部32より排液カップ51内に形成される旋回気流が形成され、排液カップ51内の薬液やリンス液がこの旋回気流に随伴することにより、より高速な旋回流となって排液口60から排液管61を通って極めて短時間に排出させることができる。
【0052】
また、排気カップ52には、その上側壁67と回転カップ4の庇部31との間の環状をなす導入口68から回転カップ4内およびその周囲の主にガス成分が取り込まれ排気口70から排気管71を通って排気される。
【0053】
このようにして薬液処理および純水によるリンス処理が行われた後、次の薬液処理が、異なる薬液を使用して同じウエハウエハに対して行われるか、あるいは同じ薬液を使用して次のウエハに対して行われる。しかしながら、リンス処理の際の純水は完全に排出することはできず、次の薬液処理の開始時点では、図6に示すように、排液カップ51に残留純水130が存在する。
【0054】
このように残留純水130が存在する状態で次の薬液処理を行うと排液カップ51に到達した薬液に残留純水130が混合され、薬液濃度が低下してしまう。このため、最初の薬液は残留純水130を洗い流す、いわゆる「共洗い」に用いる。すなわち、まず、切り替えバルブ111をドレイン管113側に接続して(廃棄ライン113が有効かつ回収ライン112が無効の状態として)排液カップ51の薬液を廃棄する。そして、残留純水が消失してから切り替えバルブ111を回収ライン112側に切り替えて(廃棄ライン113が無効かつ回収ライン112が有効の状態として)薬液の回収を開始する。
【0055】
しかしながら、リンス処理の際は回転数が上述したように300〜1500rpmと比較的高く、飛散した純水が排液カップ51の外周壁53内側の上部まで達するのに対し、薬液処理の際にはリンス処理の際よりも回転数が低く、具体的には200〜700rpmであるため、図7の(a)に示すように、薬液が排液カップ51の外周壁53の内側上部まで到達し難い。このため、薬液による共洗いの時間を長くせざるを得ず、回収されずに廃棄される薬液の量が多くなって薬液の回収率が低下してしまう。
【0056】
そこで、本実施形態では、リンス処理後の薬液処理において、最初にリンス処理の際と同じ回転数かまたはそれ以上の回転数で回転モータ3によりウエハWを回転させながら、ウエハWに薬液を供給して排液カップ51を共洗いする。これにより、図7の(b)に示すように、薬液が排液カップの残留純水130の位置まで速やかに到達し、短時間で残留純水130を洗い流すことができるので、薬液による共洗いの時間を短縮することができる。
【0057】
その後、ウエハWの回転数を上述した200〜700rpmの通常の薬液処理の回転数に落とし、切り替えバルブ111を回収ライン112側へ切り替えて薬液の回収を開始して、薬液処理を継続する。
【0058】
このように、共洗いの際にリンス処理の際と同じかまたはそれ以上の回転数で回転させることにより、共洗いの時間を短縮することができるので、廃棄する薬液の量が減少し、洗浄処理における薬液の回収率を上昇させることができる。
【0059】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図8は、本発明の他の実施形態に係る基板処理装置の排液カップを示す断面図である。上記実施形態では、回転カップ4を有する装置に本発明を適用する例に付いて示したが、本実施形態では、回転カップを用いない例について説明する。
【0060】
本実施形態の基板処理装置は、回転カップを設けていない他は、基本的に従前の実施形態の基板処理装置と同様に構成されている。このような基板処理装置では、回転カップが存在していないことから、ウエハWから飛散した液体が直接排液カップ51に達する。そして、従前の実施形態と同様に薬液処理を行い、引き続きリンス処理を行った後は、図8に示すように排液カップ51の外周壁53の内側等へ残留純水130が存在する。
【0061】
このように回転カップが存在しない場合でも、リンス処理の後に次の薬液処理が行われる際に、最初に、リンス時の回転数と同じかまたはそれ以上の回転数でウエハWを回転させることにより、図9に示すように、リンス処理時に存在する最上部の残留純水130に速やかに達することができ、薬液の共洗い時間を短時間にすることができる。
【0062】
しかし、従前の実施形態の場合には、回転カップ4の回転により排液カップ51内に旋回流を生じさせ、その旋回流によって排液カップ51内の液を迅速に排出することができるのに対し、本実施形態の場合には、このような回転カップの旋回流が存在しないため、従前の実施形態よりも共洗いの薬液の排出時間が従前の実施形態よりも長くなってしまう。すなわち、本実施形態では薬液処理の最初の段階でリンス液と同等またはそれ以上の回転数でウエハWを回転させることによる共洗いの短時間化という効果は得られるが、回転カップを有する従前の実施形態では、このような共洗いの短時間化という効果に加え、共洗い薬液の排出の迅速化という効果も得られるため、従前の実施形態のほうが薬液回収率を高くすることができる。
【0063】
図10は、本発明の他の実施形態に係る基板処理装置(液処理装置)の排液系統を給液系統のタンクとともに示す図である。
【0064】
図1に示す液処理装置100においては、理解を容易にするため、1つの薬液についてのみ示している。しかし、液処理装置は、各ウエハWに対して、アルカリ薬液と酸薬液とを連続工程で使用して洗浄処理を行うように構成される場合がある。図10は、そのような液処理装置の排液系統を示す。
【0065】
具体的には、排液管61には排液切替部111Xが接続されており、排液切替部111Xに、酸排液を廃棄するための酸廃棄ライン113a、アルカリ排液を廃棄するためのアルカリ廃棄ライン113b、酸薬液を回収するための酸回収ライン112a、アルカリ薬液を回収するためのアルカリ回収ライン112bが接続される。酸回収ライン112a、アルカリ回収ライン112bは、給液系統の酸薬液(例えば、希フッ酸(DHF))のタンク89aおよびアルカリ薬液(例えば、アンモニア過水(SC1))のタンク89bに夫々接続される。酸廃棄ライン113a、アルカリ廃棄ライン113b、酸回収ライン112a、アルカリ回収ライン112bには、それぞれバルブ114が設けられている。
【0066】
この構成によれば、各ウエハWに対して以下のようなシーケンスで処理工程を行うことにより、処理液の種類に応じて分別可能となる。これにより、各ウエハWに対して複数の薬液を使用する場合でも、先の実施形態と同様な効果を得ることができる。なお、以下の説明では、基板の回転については、図5〜7を参照して説明したシーケンスと実質的に同じであるため、説明を省略する。また、希フッ酸(DHF)洗浄とアンモニア過水(SC1)洗浄との順序は、以下の説明の逆であってもよい。
【0067】
すなわち、希フッ酸(DHF)洗浄の際には排液切替部111Xを酸回収ライン112aに切り替えて希フッ酸(DHF)排液を回収する。希フッ酸(DHF)洗浄の後のリンス処理の際には排液切替部111Xを酸廃棄ライン113aに切り替えて希フッ酸(DHF)にリンス液が混合した排液を廃棄する。
【0068】
このリンス処理後の、アンモニア過水(SC1)洗浄の際には、前述の共洗い処理として、まず、排液切替部111Xをアルカリ廃棄ライン113bに切り替えてアンモニア過水(SC1)にリンス液が混合した排液を廃棄する。続いて、排液切替部111Xをアルカリ回収ライン112bに切り替えてアンモニア過水(SC1)排液を回収する。アンモニア過水(SC1)洗浄後のリンス処理の際には排液切替部111Xをアルカリ廃棄ライン113bに切り替えてアンモニア過水(SC1)にリンス液が混合した排液を廃棄する。
【0069】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、ウエハの表裏面洗浄を行う洗浄処理装置を例にとって示したが、本発明はこれに限らず、表面のみまたは裏面のみの洗浄処理を行う洗浄処理装置であってもよく、また、洗浄処理に限らず、他の液処理であっても構わない。さらに、上記実施形態では被処理基板として半導体ウエハを用いた場合について示したが、液晶表示装置(LCD)用のガラス基板に代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板等、他の基板に適用可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、半導体ウエハに付着したパーティクルやコンタミネーションを除去するための洗浄装置に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す断面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る基板処理装置を一部切り欠いて示す概略平面図。
【図3】図1の基板処理装置の排気・排液部を拡大して示す断面図。
【図4】図1の基板処理装置の回転カップおよび案内部材の取り付け状態を説明するための図。
【図5】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の洗浄処理の動作を説明するための図。
【図6】排液カップにおけるリンス処理後の残留純水の状態を示す断面図。
【図7】リンス処理後の薬液による共洗いの際にリンス処理の際よりもウエハの回転数を低くした場合および本実施形態に従ってリンス処理の際のウエハの回転数と同等またはそれ以上にした場合の排液カップの状態を模式的に示す断面図。
【図8】本発明の他の実施形態に係る基板処理装置の排液カップを示す断面図。
【図9】図8の状態から本発明の実施形態に従ってウエハの回転数をリンス処理の際の回転数と同等またはそれ以上にした場合の排液カップの状態を示す断面図。
【図10】本発明の他の実施形態に係る基板処理装置(液処理装置)の排液系統を給液系統のタンクとともに示す図。
【符号の説明】
【0072】
1;ベースプレート
2;ウエハ保持部
3;回転モータ
4;回転カップ
5;表面側液供給ノズル
6;裏面側液供給ノズル
7;排気・排液部
8;ケーシング
9;気流導入部
11;回転プレート
12;回転軸
13;昇降部材
14;保持部材
22;ノズル保持部材
22a;ノズルアーム
31;庇部
32;外側壁部
33;隙間
35;案内部材
51;排液カップ
52;排気カップ
53;外周壁
54;内側壁
56;液収容部
61;排液管
84a;薬液供給配管
88;薬液タンク
100;基板処理装置
111;切り替えバルブ
111X;排液切替部
112;回収配管
112a;酸回収ライン
112b;アルカリ回収ライン
113;廃棄ライン
113a;酸廃棄ライン
113b;アルカリ廃棄ライン
114;バルブ
121;プロセスコントローラ
122;ユーザーインターフェース
123;記憶部
130;残留純水
W;ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持し、基板とともに回転可能な基板保持部と、
前記基板保持部を回転させる回転機構と、
薬液を貯留する薬液タンクを有し、この薬液タンクから基板に薬液を供給する薬液供給機構と、
基板にリンス液を供給するリンス液供給機構と、
前記基板保持部に保持された基板の外側を囲繞するように設けられ、回転する基板から飛散する薬液またはリンス液を受ける環状の排液カップと、
前記排液カップに接続され、前記排液カップで受けた液を廃棄する廃棄ラインと、
前記排液カップに接続され、前記排液カップで受けた液を前記薬液タンクに回収する回収ラインと、
前記回収ラインによる液の回収および前記廃棄ラインによる液の廃棄を切り替える切替手段と、
前記薬液供給機構による前記薬液の供給、前記リンス液供給機構による前記リンス液の供給、前記回転機構による基板の回転、前記切替手段による液の廃棄および回収の切り替えを制御する制御部と
を具備し、
前記制御部は、前記リンス液によるリンス処理後に前記薬液による薬液処理を行う際に、
最初に、前記廃棄ラインが有効かつ前記回収ラインが無効の状態として、リンス処理用の回転数以上の回転数で基板を回転させながら基板上に前記薬液を供給して前記排液カップを薬液により洗浄し、その際に前記排液カップで受けた液を前記廃棄ラインによって廃棄し、
その後、前記廃棄ラインが無効かつ前記回収ラインが有効の状態に切り替えるとともに、薬液処理用の回転数で基板を回転させながら基板上に前記薬液を供給して基板の薬液処理を行い、その際に前記排液カップで受けた液を前記回収ラインによって回収するように予設定されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記基板保持部に保持された基板を囲繞するように、前記排液カップの内側に設けられ、前記基板保持部および基板とともに回転し、基板を回転した際に基板から振り切られた液を受けて前記排液カップに導くとともに、回転する際に前記排液カップに液の旋回流を形成する回転カップをさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記回転カップに、前記排液カップ内に挿入されかつ前記回転カップとともに回転して前記旋回流の形成をアシストする部材が接続されることを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記旋回流の形成をアシストする部材は、前記回転カップの筒状の外側壁部の下側部分であることを特徴とする請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、第1の基板を第1の回転速度で回転させながら前記第1の基板上に前記リンス液を供給してリンス処理を行う工程と、
次に、前記第1の基板または新たな第2の基板である被処理基板を前記第1の回転速度以上の第2の回転速度で回転させながら前記被処理基板に前記薬液を供給して予備処理を行い、この際、前記廃棄ラインが有効かつ前記回収ラインが無効の状態として、前記排液カップで受けた液を前記廃棄ラインに送る工程と、
次に、前記被処理基板を前記第1の回転速度未満の第3の回転速度で回転させながら前記被処理基板上に前記薬液を供給して薬液処理を行い、この際、前記廃棄ラインが無効かつ前記回収ラインが有効の状態として、前記排液カップで受けた液を前記回収ラインに送る工程と
を実行するように予設定されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記被処理基板は前記第2の基板であり、前記制御部は、前記リンス処理の前に、前記第1の基板を前記第3の回転速度で回転させながら前記第1の基板上に前記薬液を供給して前記薬液処理を行う工程を実行するように予設定されることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記被処理基板は前記第1の基板であり、前記制御部は、前記リンス処理の前に、前記第1の基板を前記第1の回転速度未満の回転速度で回転させながら前記第1の基板上に前記薬液と異なる薬液を供給して異なる薬液処理を行う工程を実行するように予設定されることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記リンス処理の際、前記廃棄ラインが有効かつ前記回収ラインが無効の状態として、前記排液カップで受けた液を前記廃棄ラインに送るように予設定される請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記リンス処理の際、前記廃棄ラインとは異なる別の廃棄ラインが有効かつ前記回収ラインが無効の状態として、前記排液カップで受けた液を前記別の廃棄ラインに送るように予設定されることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記廃棄ラインと前記回収ラインとは、共通の排出管を介して前記排液カップに接続され、前記切替手段は、前記廃棄ラインと前記回収ラインとが分岐する位置で前記排出管に配設されかつ前記制御部で制御される切り替えバルブを具備することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
基板ともに回転可能な基板保持部に保持された基板の外側を囲繞するように設けられ、回転する基板から飛散する液を受ける環状の排液カップの内側で、薬液およびリンス液を供給して基板処理を行う基板処理方法であって、
薬液処理後の基板に前記リンス液を供給してリンス処理を行う工程と
基板に前記薬液を供給して基板に対して薬液処理をする工程と
を具備し、
前記リンス液によるリンス処理後に前記薬液による薬液処理を行う際に、
最初に、リンス処理用の回転数以上の回転数で基板を回転させながら基板上に前記薬液を供給して前記排液カップを薬液により洗浄し、その際に前記排液カップで受けた液を廃棄し、
その後、薬液処理用の回転数で基板を回転させながら基板上に前記薬液を供給して基板の薬液処理を行い、その際に前記排液カップで受けた液を回収することを特徴とする基板処理方法。
【請求項12】
前記基板保持部に保持された基板を囲繞するように、前記排液カップの内側に設けられ、前記基板保持部および基板とともに回転し、基板を回転した際に基板から振り切られた液を受けて前記排液カップに導く回転カップの回転にともなう旋回流で、薬液の排出を促進することを特徴とする請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記回転カップに、前記排液カップ内に挿入されかつ前記回転カップとともに回転して前記旋回流の形成をアシストする部材が接続されることを特徴とする請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
第1の基板を第1の回転速度で回転させながら前記第1の基板上に前記リンス液を供給してリンス処理を行う工程と、
次に、前記第1の基板または新たな第2の基板である被処理基板を前記第1の回転速度以上の第2の回転速度で回転させながら前記被処理基板に前記薬液を供給して予備処理を行い、この際、前記排液カップで受けた液を廃棄する工程と、
次に、前記被処理基板を前記第1の回転速度未満の第3の回転速度で回転させながら前記被処理基板上に前記薬液を供給して薬液処理を行い、この際、前記排液カップで受けた液を回収する工程と
を具備することを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記被処理基板は前記第2の基板であり、前記方法は、前記リンス処理の前に、前記第1の基板を前記第3の回転速度で回転させながら前記第1の基板上に前記薬液を供給して前記薬液処理を行う工程を具備することを特徴とする請求項14に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記被処理基板は前記第1の基板であり、前記方法は、前記リンス処理の前に、前記第1の基板を前記第1の回転速度未満の回転速度で回転させながら前記第1の基板上に前記薬液と異なる薬液を供給して異なる薬液処理を行う工程を具備することを特徴とする請求項14に移載の基板処理方法。
【請求項17】
前記リンス処理の際、前記排液カップで受けた液を廃棄する工程を具備することを特徴とする請求項11から請求項16のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項18】
コンピュータ上で動作し、基板処理装置を制御するためのプログラムが記憶されたコンピュータで読み取り可能な記憶媒体であって、
前記プログラムは、実行時に、前記基板処理装置を制御して、基板とともに回転可能な基板保持部に保持された基板の外側を囲繞するように設けられ、回転する基板から飛散する液を受ける環状の排液カップの内側で、薬液およびリンス液を供給して基板処理を行う基板処理方法を実行させ、前記方法は、
基板に前記リンス液を供給してリンス処理を行う工程と、
基板に前記薬液を供給して基板に対して薬液処理をする工程と、
を具備し、
前記リンス液によるリンス処理後に前記薬液による薬液処理を行う際に、
最初に、リンス処理用の回転数以上の回転数で基板を回転させながら基板上に前記薬液を供給して前記排液カップを薬液により洗浄し、その際に前記排液カップで受けた液を廃棄し、
その後、薬液処理用の回転数で基板を回転させながら基板上に前記薬液を供給して基板の薬液処理を行い、その際に前記排液カップで受けた液を回収することを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−76878(P2009−76878A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204313(P2008−204313)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】