説明

形状検査装置,形状検査方法

【課題】ディスク部材について,表裏各面と端面を形成するチャンファ部との境界部分において突起した形状欠陥を検出することができること。
【解決手段】1つの平面内の複数の位置各々に配置された複数のLED12からディスク基板1の測定部位Pに対し,順次異なる照射角度で光を照射し,その照射ごとに,計算機30により,測定部位Pからの反射光の像のカメラ20R,20Lで撮像し,さらに,計算機30により,各LED12に対応した撮像画像と光の照射角度φとに基づいて,測定部位Pの表面角度の分布を算出し,表面角度の変化が許容範囲内か否かの判別により表面形状の良否を判別し,表面形状の画像を,形状不良部分を明示しつつ画像表示装置に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ハードディスク用のアルミサブストレートやガラスサブストレートなどのディスク部材の端面の形状の良否を検査する形状検査装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク用のディスク基板は,アルミサブストレートやガラスサブストレートなどが採用され,その端面は研磨により面取り加工される。そして,ハードディスクの製造時においては,研磨により面取り加工されたディスク基板の端面であるチャンファ部の形状の欠陥検査(良否検査)が行われる。一般に,前記チャンファ部は,研磨加工が施されていることから,その表面は鏡面又は鏡面に近い光沢面となっている。
図15は,ディスク基板1における正常なチャンファ部1bの一例を表す模式図である。ここで,図15(a)は,前記ディスク基板1における前記チャンファ部1bの断面の模式図,図15(b)は,前記ディスク基板1における前記チャンファ部1bの位置を表す模式図である。
図15に示されるように,前記ディスク基板1は,その端面及びその近傍(表裏各面1aの縁部)に渡る部分が面取り加工されたチャンファ部1bとなっている。また,前記チャンファ部1bは,前記ディスク基板1の外周面の他,中央に形成された円形の開口の縁部となる内側の端面にも形成される。
従来,ディスク基板のチャンファ部の欠陥検査は,目視検査や,一部のサンプルについて触針による形状測定を行う抜き取り検査が一般的であった。これに対し,ディスク基板のチャンファ部の欠陥検査を自動化したいというニーズがある。
例えば,特許文献1には,前記チャンファ部に対し45°±5°の範囲の入射角で入射した光の正反射光を絞りを介して受光器により受光し,その受光信号のレベルの大きな低下を検出することにより,前記チャンファ部のチャック痕を検出することについて示されている。前記特許文献1に示される技術は,前記チャンファ部にチャック痕が存在する場合,そのチャンファ部に照射された光が散乱反射し,正反射光が減衰することを前提としている。
一方,特許文献2には,薄片試料の端部に対し順次異なる方向から光を照射しつつその正反射光の像を撮像し,その撮像画像と光の照射角度とに基づいて薄片試料の端部の表面形状を測定することについて示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−111830号公報
【特許文献2】特開2008−298546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで,ディスク基板のチャンファ部の形状欠陥は,そのディスク基板の前記表裏各面1aと前記チャンファ部1bとの境界部分において突起した形状欠陥である場合がある。その形状欠陥は,例えば,前記境界部分において前記表裏各面1a側又は端面側へ突起したものが考えられる。以下,そのような形状欠陥を境界部突起欠陥と称する。
図16は,ディスク基板1における形状欠陥を有するチャンファ部1bの一例を表す模式図である。ここで,図16(a)は,前記ディスク基板1の表裏各面1aと前記チャンファ部1bとの境界部分において,前記表裏各面1aの側へ突起した前記境界部突起欠陥2の一例を表す。また,図16(b)は,前記境界部分において,端面側(側面方向)へ突起した前記境界部突起欠陥2の一例を表す。
しかしながら,前記境界部突起欠陥を有する前記ディスク基板においては,照射光が必ずしもチャンファ部全体に入射するとは限らず,また,前記チャンファ部で反射した光を必ずしもカメラで受光できるとは限らない。そのため,前記特許文献1に示される欠陥検査方法では,前記境界部突起欠陥を検出することができないという問題点があった。
また,前記特許文献2には,半導体ウェハの端面など,表面形状が滑らかに変化する薄片試料の端面の形状を測定する技術について示されているものの,前記境界部突起欠陥をいかにして検出するかについては何ら開示も示唆もなされていない。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,ハードディスク用のアルミサブストレートなどのディスク部材について,表裏各面と端面を形成するチャンファ部との境界部分において突起した形状欠陥を検出することができる形状検査装置及びその検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明に係る形状検査装置は,ハードディスク用のアルミサブストレートやガラスサブストレートなどのディスク部材の端面の形状の良否を検査する装置であり,次の(1)〜(4)に示される各構成要素を備えている。
(1)前記ディスク部材における端面及びその近傍を含む検査部位に対して一の平面内の複数の位置から順次異なる照射角度で光を照射する光照射手段。
(2)前記検査部位での反射光の像を撮像する撮像手段。
(3)前記撮像手段の撮像画像における前記反射光の像の位置及び前記光照射手段による光の照射角度に基づいて前記検査部位の表面角度の分布を算出する表面角度分布算出手段。
(4)前記表面角度分布算出手段の算出結果における前記検査部位の表面角度の変化が予め設定された許容範囲内にあるか否かの判別により前記ディスク部材の端面の形状の良否を判別する良否判別手段。
なお,前記検査部位は,前記ディスク部材における面取り加工された端面であるチャンファ部及びその近傍の部分である。
【0006】
本発明における前記撮像手段により得られる反射光の像,即ち,反射光の輝度分布は,照射光が前記ディスク部材の前記測定部位に正反射して前記撮像手段に到達した部分の輝度が最も高くなる。このため,前記表面角度分布演算手段は,光の入射角と反射角とが等しいという正反射の特性に基づいて,前記検査部位の表面角度の分布を求めることができる。その詳細については後述する。
なお,前記光照射手段における光源の点灯位置と前記撮像手段の配置位置とが,それぞれ略同一の平面内に位置する場合や,或いはそれぞれ異なる平面内に位置する場合が考えられる。
また,前記検査部位は,図16に示したような前記境界部突起欠陥が存在する場合,その表面角度が急変する。そのため,本発明によれば,前記良否判別手段の処理により,前記検査部位に前記境界部突起欠陥が存在するか否かの判別,即ち,形状の良否の判別を行うことができる。
また,本発明に係る形状検査装置が,さらに,次の(5)に示される構成要素を備えることが考えられる。
(5)前記表面角度分布算出手段の算出結果に基づいて前記検査部位の表面形状の画像を,その表面形状における表面角度の変化が前記許容範囲内にない部分を明示しつつ表示する表面形状画像表示手段。
これにより,前記検査部位における形状不良の部分が明示されるので,他の検査装置を用いて,その形状不良の部分のさらなる詳細な検査を行うことが容易となる。例えば,形状不良と判別された部分が,どのような種類の欠陥を有しているのか,或いは,異物の付着等によって形状欠陥であると誤検知された部分であるのか等について検査することができる。
【0007】
ところで,前記光照射手段による光の照射角度の変化幅(変更幅)をごく小さくすれば,光の照射角度を変化させるごとに,反射光の輝度が最も高くなる位置を求めることにより,高い空間分解能で検査部位の表面角度の分布を算出することができる。しかしながら,光の照射角度の変化幅を小さくすることには限界がある。また,光の照射角度の変化幅を小さくするほど,反射光の輝度分布を採取する回数が増え,測定時間が長くなり,データ点数が増えて必要メモリ容量の増大にもつながる。
そこで,前記表面角度分布算出手段が,次の(3a)に示される処理を行うものであれば好適である。
(3a)前記表面角度分布算出手段が,前記撮像手段の撮像範囲における複数の位置(以下,演算対象位置という)各々について,前記光の照射角度と前記反射光の輝度との対応関係に基づいて前記反射光の輝度がピークとなるときの前記光の照射角度を推定する演算を行い,その推定値に基づいて前記演算対象位置の表面角度を算出する。
ここで,前記反射光の輝度がピークとなるときの前記光の照射角度の推定値は,例えば,前記光の照射角度と前記反射光の輝度との対応関係に基づく内挿演算処理などによって求めることができる。
これにより,光の照射角度の変化幅が比較的大きくても,高い空間分解能で検査部位の表面角度の分布を算出することができる。
【0008】
また,前記光照射手段としては,例えば,一の平面内の複数の位置各々に配置された複数の光源を順次切り替えて点灯させることにより,前記検査部位に対して順次異なる照射角度で光を照射する切替型光照射手段であることが考えられる。この切替型光照射手段を採用する場合,複数の光源が,前記検査部位の配置位置を中心とする円弧に沿って配置されたものが考えられる。この構成によれば,可動機構のないシンプルかつ位置精度の高い装置を実現できる。
また,前記切替型光照射手段が,複数の光源を順次切り替えて点灯させる過程において,複数の前記撮像手段各々に対応する複数の光源を同時に点灯させるものが考えられる。これにより,測定時間を短縮できる。
なお,前記光照射手段が,所定の光源を一の平面内の複数の位置各々に順次移動させて点灯させることにより,前記検査部位に対して順次異なる照射角度で光を照射する移動型光照射手段であることも考えられる。この構成によれば,光源の数を少なくできる。
【0009】
ところで,前記撮像手段としてCCDカメラ等を用いる場合,1つの前記撮像手段による撮像範囲には制限がある。
そこで,本発明に係る形状検査装置が,前記検査部位に対して異なる方向に配置された複数の前記撮像手段を備えることが考えられる。この場合,前記表面角度分布算出手段は,複数の前記撮像手段各々の撮像画像ごとに前記検査部位の一部の領域の表面角度の分布を算出する。これにより,1つの前記撮像手段による撮像範囲の制限を超えて,一度に検査可能な前記検査部位の範囲を広げることができる。
【0010】
また,本発明は,以上に示した形状検査装置を用いた形状検査方法として捉えることもできる。
即ち,本発明に係る形状測定方法は,ディスク部材の端面の形状の良否を検査する方法であって,以下の(1')〜(4')に示す各工程を実行するものである。
(1')前記ディスク部材における端面及びその近傍を含む検査部位に対して一の平面内の複数の位置から順次異なる照射角度で光を照射する光照射工程。
(2')前記光照射工程の光照射によって前記検査部位で反射する反射光の像を撮像手段により撮像する撮像工程。
(3')前記光照射工程により順次異なる照射角度で光が照射されるごとに前記撮像工程により得られた撮像画像における前記反射光の像の位置及び前記光照射工程での光の照射角度に基づいて前記検査部位の表面角度の分布を算出する表面角度分布算出工程。
(4')前記表面角度分布算出工程の算出結果における前記検査部位の表面角度の変化が予め設定された許容範囲内にあるか否かの判別により前記ディスク部材の端面の形状の良否を判別する良否判別工程。
以上に示した各工程を実行する形状検査方法によれば,前述した本発明に係る形状検査装置と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば,ハードディスク用のアルミサブストレートなどのディスク部材について,表裏各面と端面を形成するチャンファ部との境界部分において突起した形状欠陥を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る形状検査装置Zの概略構成図。
【図2】光照射角度及び表面角度の定義を表す図。
【図3】形状検査装置Zに採用され得るテレセントリックレンズ方式のカメラの特性を表す図。
【図4】形状検査装置Zにテレセントリックレンズ方式のカメラを採用した場合の検査部位の表面角度と光路との関係を模式的に表した図。
【図5】形状検査装置Zに採用され得る非テレセントリックレンズ方式のカメラの特性を表す図。
【図6】形状検査装置Zに非テレセントリックレンズ方式のカメラを採用した場合の検査部位の表面角度と光路との関係を模式的に表した図。
【図7】検査部位の形状及び形状検査装置Zのカメラによる撮影画像の第1例を模式的に表した図。
【図8】検査部位の形状及び形状検査装置Zのカメラによる撮影画像の第2例を模式的に表した図。
【図9】形状検査装置Zによる撮影画像の一例を表す図。
【図10】所定の演算対象位置における光照射角度と反射光輝度との対応関係の一例を表すグラフ。
【図11】形状検査装置Zによる測定手順を表すフローチャート。
【図12】形状検査装置Zにより算出された正常な検査部位の表面角度分布の一例を表すグラフ。
【図13】形状検査装置Zにより算出された欠陥を有する検査部位の表面角度分布の一例を表すグラフ。
【図14】形状検査装置Zによる検査部位の形状の表示画像の一例。
【図15】ディスク基板における正常なチャンファ部の一例を表す模式図。
【図16】ディスク基板における形状欠陥を有するチャンファ部の一例を表す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0014】
まず,図1を参照しつつ,本発明の実施形態に係る形状検査装置Zの構成について説明する。
前記形状検査装置Zは,ディスク部材の一例であるハードディスク用のアルミサブストレート等のディスク基板1の端部のチャンファ部の形状の良否を検査する装置である。なお,図1(a)は,前記形状検査装置Zの平面図(一部ブロック図),図1(b)は,前記形状検査装置Zの側面図(一部省略)である。
以下,検査対象となるディスク基板1の面取り加工された端面及びその近傍を含む領域を検査部位Pと称する。この検査部位Pには,前記ディスク基板1における面取り加工された端面と,表裏それぞれの面の一部(縁部)とが含まれる。
図1に示すように,前記形状検査装置Zは,光照射装置10と,複数のカメラ20と,パーソナルコンピュータ等の計算機30及びそれに接続された画像表示装置30aとを備えている。
前記光照射装置10は,電子回路基板として構成され,その電子回路基板には,前記ディスク基板1に光を照射する光源である複数のLED12と,そのLED12各々の点滅を切り替えるLED駆動回路11とが実装されている。なお,図1(b)には,一部のLED12について記載を省略している。
ここで,前記光照射装置10(電子回路基板)を平面視したときのほぼ中央部における所定位置を基準位置Qと称する。
【0015】
前記光照射装置10を構成する電子回路基板には,ディスク基板1の検査部位Pを前記基準位置Qに配置可能とするために,前記ディスク基板1が挿入される切り欠き部13が形成されている。即ち,前記基準位置Qが,前記検査部位Pの配置位置となる。図1(b)には,前記ディスク基板1の外周を形成する端部が,前記検査部位Pとして前記基準位置Qに配置されている例を示している。その他,前記ディスク基板1における中央に形成された円形の開口の縁部となる内側の端部が,前記検査部位Pとして前記基準位置Qに配置されることも考えられる。
また,図1に示されていないが,前記形状検査装置Zは,前記ディスク基板1を回転可能に支持する回転支持機構により支持されている。その回転支持機構によって前記ディスク基板1を回転させることにより,前記ディスク基板1における前記検査部位Pを容易に変更できる。これにより,前記ディスク基板1の外縁部又は内縁部の全体又は複数箇所の形状検査が容易となる。
また,全てのLED12は,その発光部が,基準位置Qを含む1つの平面内に位置するように円弧上に(円弧に沿って)電子回路基板に実装されている。以下,前記LED12の発光部が配置される平面を光源平面と称する。
前記LED12の発光部が形成する円弧の中心位置は,前記光源平面に直交する方向から見て,前記基準位置Qと一致する。
また,前記LED12各々は,前記ディスク基板1と干渉する位置を除き,例えば前記基準位置Qから見た方向が約2°ずつ異なるように等間隔(等角度の間隔)で配置されている。また,各LED12の前記基準位置Q(検査部位P)からの距離は,前記検査部位Pの奥行き寸法に対して十分に長い距離(例えば150mm程度)とする。
また,前記ディスク基板1は,そのおもて面及びうら面が前記光源平面に対して直交する状態で前記切り欠き部13に挿入され,その状態で検査が行われる。
また,前記形状検査装置Zにおいては,前記基準位置Qを含み前記光源平面に平行な平面51の両側のうちの一方に前記LED12の発光部が,他方に複数の前記カメラ20がそれぞれ配置されている。
【0016】
前記LED駆動回路11は,前記計算機30からの制御指令に従って,複数の前記LED12を順次切り替えて点滅させる。これにより,前記光照射装置10は,前記基準位置Qに配置された前記検査部位Pに対し,一の平面内の複数の位置から順次異なる照射角度で光を照射する(光照射手段,切替型光照射手段の一例)。
前記検査部位Pの一部である前記ディスク基板1の端面は,研磨加工が施されたチャンファ部であり,鏡面或いはそれに近い光沢のある面となっている。このため,前記LED12から出力された光は,前記検査部位Pにおいて概ね正反射し,ほとんど乱反射はしない。
【0017】
前記カメラ20は,前記基準位置Qから所定間隔隔てた位置(例えば,50mm〜100mm程度)に固定され,前記検査部位Pからの正反射光を受光して光電変換する。即ち,前記カメラ20は,前記LED12から前記検査部位Pに照射された光の正反射方向への反射光の像を撮像する撮像手段の一例である。即ち,前記カメラ20の撮像画像は,前記測定部位Pでの正反射光の二次元の輝度分布の検出結果である。
図1に示す例では,前記形状検査装置Zは,前記検査部位Pからの反射光の像(輝度分布)を撮像する2台の前記カメラ20(20R及び20L)を備え,それらが,前記検査部位Pに対して各々異なる方向に配置されている。以下,それぞれ第1カメラ20R,第2カメラ20Lと称する。
【0018】
また,図1に示す例では,複数の前記カメラ20(20R,20L)は,前記光源平面と平行な1つの平面内に配置され,その正面方向が前記基準位置Qに向かうように設置されている。また,前記カメラ20(20R,20L)各々の焦点は,前記基準位置Qに設定されている。
さらに,図1に示す例では,2台の前記カメラ20R,20Lが,前記基準位置Qを基点として90°をなす方向に配置されている。より具体的には,2台の前記カメラ20R,20Lは,前記基準位置Qから見て,前記ディスク基板1の厚み方向中央における平断面52に対して±45°の方向に配置されている。これにより,2つの前記カメラ20R,20L各々は,前記検査部位Pの全領域(全面)のうちの一部の領域(各々の配置位置から見える領域)で反射した反射光の像を撮像する。
【0019】
前記計算機30は,前記光照射装置10における前記LED駆動回路11を制御すことによって前記LED12の点滅を制御する。さらに,前記計算機30は,前記カメラ20のシャッター制御と前記カメラ20による撮影画像の取り込みとを行う。その具体的な動作については後述する。ここで,図1には示していないが,前記計算機30は,前記LED駆動回路11や前記カメラ20との間で,信号の授受や画像データの取得を行うためのインターフェースを備えている。
なお,以下に示す前記計算機30の処理は,前記計算機30が備えるMPUが,同じく前記計算機30が備えるハードディスクドライブなどの記憶手段に予め記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
【0020】
次に,形状検査装置Zによる前記測定部位Pの表面角度分布(エッジプロファイル)の測定原理について説明する。
前記検査部位Pに光が照射されると,その光は,光沢のある前記検査部位Pにおいて正反射する。そして,前記カメラ20による撮影画像には,その反射光の輝度分布を表す像が含まれる。
図7は,前記検査部位Pの形状の一例(a)及びその検査部位Pのカメラ20による撮影画像の一例(b)を模式的に表した図である。
図7(a)には,表面角度が単純増加(或いは,単純減少)するような検査部位Pの形状を示している。なお,図7(a)における上下方向が,ディスク基板1の厚み方向である。
このような検査部位Pを,ある1つの前記LED12のみから光を照射しながら前記カメラ20により撮像すると,図7(b)に示すような像が得られる。その画像において,輝度のピークが生じる位置Xpeak(X座標方向の位置,以下,ピーク輝度位置という)は,前記LED12から発せられた光線が前記検査部位Pにおいて正反射した位置(正反射位置)に相当する。
また,前記検査部位Pにおける正反射位置の面において,その法線方向を基準とした光の入射角度と出射角度(反射方向の角度)とは等しい(左右対称)。このことから,前記カメラ20の撮影画像におけるピーク輝度位置Xpeakと,前記検査部位Pに対する光の照射方向(点灯した前記LED12から前記検査部位Pへ向かう方向)とに基づいて,前記検査部位Pにおいて光が正反射する位置(正反射位置)と,その正反射位置の表面角度とを一意に算出することが可能である。
【0021】
ここで,前記形状検査装置Zの測定原理を説明する前に,図2を参照しつつ,光の照射方向などを表す符号について説明する。なお,図2(a)は,前記形状検査装置Zを平面視した状態を模式的に表した図であり,図2(b)は,前記検査部位Pの部分を拡大して表した図である。また,図2に示す模式図は,便宜上,図1に示される例とは異なり,前記カメラ20が前記ディスク基板1の平断面の方向に配置された状況を示している。
図2に示すように,前記カメラ20の光軸方向(以下,カメラ正面方向という)を基準としたときの光の照射角度をφとする。また,前記検査部位Pにおける光の正反射Pxにおける,前記カメラ正面方向に直交する面(以下,撮影画像におけるX−Y平面に相当する面という意味で,X−Y面という)を基準とした表面角度をθとする。
【0022】
続いて,図4を参照しつつ,前記形状検査装置Zによる前記検査部位Pの表面角度分布測定の原理についてより詳細に説明する。ここでは,前記カメラ20が,テレセントリックレンズ方式のカメラである場合について説明する。
テレセントリックレンズ方式のカメラは,図3に示すような態様でCCD上に像を結ぶ。
前記反射光の輝度分布を検出する前記カメラ20が,図3に示すようなテレセントリックレンズ方式のカメラである場合,図4に示すように,前記カメラ20のCCD(受光部)に到達する反射光の方向と,前記カメラ20の正面方向とがほぼ平行となり,撮影画像において高輝のピークが存在するピーク輝度位置Xpeakは,そのまま検査部位Pにおける光の正反射位置Pxを表す。さらに,光の照射方向と反射方向とは,正反射位置Pxの面の法線に対して対称であることから,(90−θ−φ/2)=(90−φ)となり,次の(1)式が成立する。
θ=φ/2 …(1)
従って,撮影画像においてピーク輝度位置Xpeakを画像処理によって特定することにより,正反射位置Pxを特定できる。さらに,点灯した前記LED12の位置(既知の位置)に応じて定まる光照射角度φ(既知の角度)から,正反射位置Pxにおける表面角度θを特定できる。
【0023】
次に,図6を参照しつつ,テレセントリックレンズ方式ではない方式(以下,非テレセントリックレンズ方式という)の前記カメラ20を採用した形状検査装置Zによるエッジプロファイル測定について説明する。
非テレセントリックレンズ方式のカメラは,図5に示すような態様でCCD上に像を結ぶ。
非テレセントリックレンズ方式の前記カメラ20を採用した場合,図6に示すように,検査部位Pにおける正反射位置Pxで反射し,前記カメラ20のCCDに到達して像を結ぶ反射光の角度(方向)を,前記カメラ正面方向を基準とする角度ψxとして表すと,2θ+ψx=φとなり,次の(2)式が成立する。但し,ψxは,前記カメラ20の座標系における位置(X軸方向の位置)ごとに予め求めておく。
θ=(φ−ψx)/2 …(2)
従って,撮影画像においてピーク輝度位置Xpeakを画像処理によって特定することにより,そのピーク輝度位置Xpeakと角度ψxと前記カメラ20から検査部位P間での距離とに基づいて,前記検査部位Pにおける正反射位置Pxを特定できる。さらに,点灯した前記LED12の位置(既知の位置)に応じて定まる光照射角度φ(既知の角度)から,(2)式に基づいて,正反射位置Pxにおける表面角度θを特定できる。
【0024】
また,点灯する前記LED12を順次切り替えるごとに(即ち,光照射角度φを切り替えるごとに)前記カメラ20を通じて前記検査部位Pの画像データを取得し,そのときの光照射角度φ及び表面角度θを求めれば,複数の正反射位置Px各々についての表面角度θ,即ち,前記検査部位Pにおける表面角度θの分布を求めることができる。
図9は,図7(a)に示したのと同様の形状を有する前記検査部位Pについて,光照射角度φごとに得られた画像データを表す映像(カメラ20の映像)の一例を表す。図9に向かって右方向が,前記カメラ20の座標系のX軸方向(即ち,前記ディスク基板1の厚み方向)である。
図9に示すように,光照射角度φの変化に応じて,前記検査部位Pにおける正反射Pxに対応する高輝度位置Xpeak(X方向の位置)が変化する。この高輝度位置Xpeakが,前記検査部位Pにおける正反射位置Pxに対応する。
なお,正反射位置Pxは,その位置に応じて前記LED12との距離が若干異なるため,以上の方法によって求めた表面角度θには,その距離差に応じた誤差が含まれる。しかしながら,前記検査部位Pの表面変位に対し,前記LED12と検査部位Pとの距離を十分に長くすることにより,その誤差は無視できる程度に抑えられる。
また,図9において,帯状の高輝度の部分において存在する輝度の分布は,前記検査部位Pの表面粗さや,前記カメラ20の実効Fナンバーに起因する。また,テレセントリックレンズ方式のカメラを採用した場合,前記カメラ正面方向に平行な反射光以外の反射光の一部が前記カメラ20のCCDに到達することにも起因する。
【0025】
一方,図8は,前記検査部位Pの形状の他の一例(a)及びその検査部位Pの前記カメラ20による撮影画像の一例(b)を模式的に表した図である。
図8(a)には,前記窪み形状を有する前記検査部位Pを示している。なお,図8(a)における上下方向が,前記ディスク基板1の厚み方向である。
このような検査部位Pを,ある1つの前記LED12のみによって光を照射しながら前記カメラ20により撮像すると,図8(b)に示すように,複数のピーク輝度位置Xpeakを有する像が得られる。この現象は,同じ表面角度φを有する正反射位置Pxが複数存在する場合に生じるが,表面角度の求め方は,前記検査部位Pが,図7(a)に示したような形状を有する場合と同様である。
前記形状検査装置Zを用いれば,このように前記検査部位Pが窪み形状を有する場合であっても,表面角度の分布を測定できる。
【0026】
次に,図11に示すフローチャートを参照しつつ,前記形状検査装置Zによる前記ディスク基板1の検査手順について説明する。以下,S1,S2,…は,処理手順(ステップ)の識別符号を表す。なお,前記ディスク基板1の前記検査部位Pが,前記基準位置Qに位置するように配置された状態で,図11に示す処理が開始されるものとする。
[ステップS1〜S5]
まず,前記計算機30は,前記LED12各々を識別する番号iを初期化(i=1)する(S1)。
そして,前記計算機30は,次のステップS2,S3の処理を,番号iを順次カウントアップ(S5)しながら,全ての前記LED12について点灯及び撮像が終了するまで繰り返す(S4)。
ステップS2において,前記計算機30は,前記LED駆動回路11を制御することによってi番目の前記LED12を点灯させる(S2)。
ステップS3において,前記計算機30は,i番目の前記LED12の点灯状態において前記カメラ20による前記検査部位Pの撮像(シャッターON)を行い,撮影画像を前記計算機30が備えるハードディスクなどの記憶手段に記憶させる。
なお,前記計算機30は,ステップS3において,光照射角度φが変更されるごとに,2台の前記カメラ20R,20L両方により画像データの撮像及び記憶を行うよう制御する。
このステップS1〜S4の処理により,前記光照射装置10によって前記検査部位Pに対して順次異なる照射角度φで光が照射される(S2)。さらに,異なる照射角度で光が照射されるごとに,前記計算機30により,前記検査部位Pでの反射光の像(輝度分布)を含む画像データ(撮影画像)が,前記カメラ20を通じて取得される。
【0027】
[ステップS6〜S10]
次に,前記計算機30は,以下に示すステップS6〜S10の処理を実行することにより,ステップS3の処理により取得された各LED12に対応した画像データ(反射光の像を含む画像)と,そのLED12によって前記検査部位Pに照射された光の照射角度φとに基づいて,前記検査部位Pの表面角度の分布を算出する。なお,ステップS6〜S10の処理を実行する前記計算機30が,前記表面角度分布算出手段の一例である。
ところで,前記光照射装置10による光の照射角度φの変化幅(ここでは,前記LED12の間隔)をごく小さくすれば,光の照射角度φを変化させるごとに,反射光の輝度が最も高くなる位置を求めることにより,高い空間分解能で前記検査部位Pの表面角度の分布を算出することができる。
しかしながら,光の照射角度φの変化幅を小さくすることには限界がある。また,光の照射角度φの変化幅を小さくするほど,前記カメラ20による撮像回数が増え,測定時間が長くなる。さらに,取得すべき画像データの数が増え,前記計算機30における必要メモリ容量の増大にもつながる。
そこで,本実施形態における前記計算機30は,以下に示す処理により,前記検査部位Pの表面角度の分布を算出する。
【0028】
まず,前記計算機30は,前記カメラ20の撮像範囲において予め定められたX座標方向の複数の位置(以下,演算対象位置Xjという)各々を識別する番号jを初期化(j=1)する(S6)。前記演算対象位置置Xjは,例えば,撮像画像におけるX軸方向の各画素の位置である。
そして,前記演算対象位置Xj各々について,光の照射角度φと反射光の輝度Eとの対応関係(以下,φ−E対応関係という)を導出する(S7)。
図10は,ある演算対象位置Xjにおける,光の照射角度φ(横軸)と反射光の輝度E(縦軸)との対応関係を表すグラフの一例である。
さらに,前記計算機30は,ステップS7で得られたφ−E対応関係に基づく所定の演算を行うことにより,反射光の輝度Eがピークとなるときの光の照射角度φpeak(以下,推定ピーク時照射角度という)を推定するとともに,その演算対象位置Xjにおける表面角度θjを算出して記憶する(S8)。
また,前記計算機30は,ステップS7及びS8において,2台の前記カメラ20R,20L各々を通じて得られた画像データごとに,その画像データ及び光の照射角度(推定ピーク時照射角度φpeak)に基づいて,前記検査部位Pにおける2方向から見たそれぞれの領域の表面角度θjの分布を算出する。
【0029】
図10に示したように,φ−E対応関係は,離散的なデータに基づくものである。ここで,前記光照射装置10における各LED12が,極端に広い間隔で配置されているような場合を除けば,図10に示したようなφ−E対応関係に基づく内挿演算処理により,推定ピーク時照射角度φpeakを推定することができる。その内挿演算処理の具体例としては,重心法に基づく内挿演算処理や,2次関数やガウス分布関数に回帰するフィッティング処理に基づく内挿演算処理などが考えられる。なお,内挿演算処理を施さず,単に最大の輝度を示すときの光照射角度φを,推定ピーク時照射角度φpeakとすることも考えられる。但し,この場合,各LED12の間隔によっては,誤差が大きくなる点に留意する必要がある。
また,推定ピーク時照射角度φpeakに基づく表面角度θjの算出方法は,前述した光照射角度φに基づく正反射位置Pxの表面角度θの算出方法と同様である。
そして,前記計算機30は,ステップS7〜S8の処理を,番号jを順次カウントアップ(S10)しながら,予め定められた全ての演算対象位置Xjについて行われるまで繰り返す(S9)。ステップS8で算出された各演算対象位置Xjの表面角度θjは,計算機30が備えるハードディスクなどの記憶手段に記憶される。
以上のステップS1〜S10の処理により,前記検査部位Pの表面角度θの分布,即ち,演算対象位置Xjと表面角度θjとの対応関係を表す情報が得られる。
但し,前記測定部位Pが,図16に示されるような前記境界部突起欠陥2を有する場合,対応する前記演算対象位置Xjについて一定レベル以上の輝度の反射光の像を観測できず,表面角度θjを算出できないことも生じ得る。従って,前記計算機30は,撮像画像において予め定められた下限レベル以上の輝度の反射光の像を観測できない前記演算対象位置Xjを以降の処理対象から除外する。
このように,前記計算機30は,前記カメラ20の撮像範囲における複数の演算対象位置Xj各々について,光照射角度φと反射光の輝度Eとの対応関係に基づいて,推定ピーク時照射角度φpeak(反射光の輝度がピークとなるときの光の照射角度)を推定する演算を行うことにより,演算対象位置Xj各々の表面角度θjを算出する(S7〜S10)。その結果,前記光照射装置10における各LED12を,非常に密に配置した場合と同様の高い空間分解能で,表面角度θjの分布を測定できる。理論上は,前記カメラ20の解像度(画素分解能)のレベルまで,表面角度分布の空間分解能を高めることができる。
【0030】
次に,前記計算機30は,ステップS6〜S10の処理によって得られた表面角度θjの分布に基づいて,予め定められた判別条件に従って,前記ディスク基板1の端面を含む前記検査部位Pの形状の良否を判別する(S11:良否判別処理)。
より具体的には,前記計算機30は,ステップS6〜S10の処理によって得られた結果における表面角度θjの変化Δθが,予め設定された許容範囲内にあるか否かの判別により前記ディスク基板1の端面の形状欠陥の有無及び位置を判別する(S11)。前記表面角度の変化Δθは,例えば,表面角度θjの分布における隣り合う前記演算対象位置Xj,Xj+1における表面角度θj,θj+1の差である。
【0031】
図12は,前記計算機30により算出された正常な前記検査部位Pの表面角度分布の一例を表すグラフである。なお,図12及び後述する図13のグラフにおける縦軸の表面角度θ(j)は,前記ディスク基板1の厚み方向中央における平断面52(図1(a)参照)に沿う方向を0°の方向として換算した角度である。
図12に示されるように,前記ディスク基板1の端面が,図15(a)に示されるように正常に面取り加工されている場合,表面角度の変化Δθは比較的小さい。
一方,図13は,前記計算機30により算出された欠陥を有する前記検査部位Pの表面角度分布の一例を表すグラフである。
図13に示されるように,前記ディスク基板1の端面が,例えば図16(a)に示されるような前記境界部突起欠陥2を有している場合,その境界部突起欠陥2が存在する前記演算対象位置の部分での表面角度の変化Δθが非常に大きくなる。
そこで,前記計算機30は,表面角度の変化Δθが,予め設定された許容範囲外にある場合に,その変化が大きい前記演算対象位置及びその近傍を含む領域(位置)に,形状欠陥が存在すると判別する(S11)。なお,前記形状欠陥と判別された部分は,別途の詳細検査が必要な部分,即ち,必ずしも正常とはいえない部分であることを意味する。従って,前記形状欠陥と判別された部分は,実際にその部分に形状欠陥が存在する部分である場合と,付着物等によって形状欠陥と同様の検査結果が得られる状況になっているだけの部分である場合とが考えられる。
また,前記計算機30は,表面角度の変化Δθが前記許容範囲を超えている前記演算対象位置を,それを検出した前記表面角度θjの分布情報に対応づけて前記ハードディスク等の記憶手段に記憶させる。図12及び図13に示される例では,例えば,前記許容範囲が30°程度に設定されていればよい。
【0032】
次に,前記計算機30は,ステップS6〜S10の処理によって得られた表面角度θjの分布に基づいて,前記検査部位Pの表面形状を算出して記憶手段に記憶させる(S12)。
ここで,前記検査部位Pにおけるある演算対象位置Xjの表面高さと,その隣りの演算対象位置Xj+1の表面高さとの差Δhjは,次の(3)式により計算できる。
Δhj=d・tanθj …(3)
ただし,dは,前記検査部位Pにおける隣り合う演算対象位置Xjの距離(X軸方向の距離)である。ここでは,前記カメラ20のX軸方向の画素間距離を,実空間に換算した距離である。
この(3)式を,演算対象位置Xjの基点から順次適用することにより,前記検査部位Pの高さ分布,即ち,表面形状を算出できる。
【0033】
最後に,前記計算機30は,ステップS12で算出した前記検査部位Pの表面形状の画像を,前記計算機30に接続された液晶ディスプレイ等の画像表示装置30aに表示させる(S13:表面形状画像出力処理)。その際,前記計算機30は,ステップS11において前記形状欠陥として判別した部分,即ち,表面角度の変化Δθが前記許容範囲外超えている部分を明示しつつ前記検査部位Pの表面形状の画像を表示させる。なお,ステップS13の処理を行う前記計算機30及び前記画像表示装置30aが,前記表面形状画像表示手段の一例である。
図14は,前記計算機30がステップS13において前記画像表示装置を通じて出力する前記検査部位Pの形状の表示画像の一例(模式図)である。
図14に示す例では,ステップS13での表示画像に,前記形状欠陥として判別した部分以外について,前記検査部位Pの形状を表す輪郭線g1の画像が含まれる。また,ステップS13での表示画像における前記形状欠陥として判別した部分には,例えば,前記輪郭線g1とは異なる色や太さで形状欠陥部分であることを示すマークg2が表示される。
【0034】
次に,図11に示した前記計算機30の処理の応用例について説明する。
例えば,前記計算機30が,前記LED駆動回路11を通じて複数のLED12を順次切り替えて点灯させる過程(ステップS1〜S5)において,一部のLED12については,複数の前記カメラ20R,20L各々に対応する複数のLED12を同時に点灯させるよう制御することが考えられる(切替型光照射手段の一例)。
図1に示すように,円弧上に複数配列されたLED12のうち,一方の第1カメラ20Rに対し,他方の第2カメラ20Lとは反対側に配置されているLED12Rの一部(例えば,LED12Ra)については,その出力光は,前記ディスク基板1により遮断されて前記第2カメラ20Lには到達しない(検出されない)。
同様に,前記第2カメラ20Lに対し,前記第1カメラ20Rとは反対側に配置されているLED12Lの一部(例えば,LED12La)については,その出力光は,前記ディスク基板1により遮断されて前記第2カメラ20Lには到達しない。
そこで,前記計算機30が,ステップS2において,前記第1カメラ20Rに対応する一部のLED(LED12Raなど)と,前記第2カメラ20Lに対応する一部のLED(LED12Laなど)とが同時に点灯するようLED駆動回路11を制御することが考えられる。
これにより,測定時間を短縮できる。
なお,図1に示した前記形状検査装置Zは,2台の前記カメラ20(20R,20L)を備えるものであるが,3台以上の前記カメラ20を備えた構成としても,同様の作用効果が得られる。
【0035】
以上に示した実施形態では,拡散光源である前記LED12をそのまま光源として採用している。このような構成を採用できる理由は,各LED12が,前記検査部位Pの大きさ(奥行きの長さ)に比べて十分に遠い距離に配置されており,前記LED12の光が前記検査部位Pにおいて平行光とみなせるためである。
一方,前記LED12等の光源を前記検査部位Pに近づけて配置する場合,その光源の光を,レンズを用いて平行光とした上で検査部位Pに照射することが望ましい。
また,前述した実施形態では,光源として前記LED12を採用しているが,レーザダイオードや白熱電球,蛍光灯など,他の種類の光源を採用してもかまわない。
また,前記カメラ20は,目的に応じて前述の実施形態とは異なる位置及び向きで設置されることも考えられる。
また,一般的な前記ディスク基板1の形状検査では,前記検査部位P各々について,一次元方向(前記ディスク基板1の厚み方向)の表面角度分布を測定できれば十分である。このため,前記検査部位Pからの反射光の像を撮像する手段として,複数の光電変換素子が一列に(1次元方向に)配列されて構成された一次元の受光器を用いることも考えられる。
【0036】
また,前述した実施形態では,前記検査部位Pからの反射光を直接的に前記カメラ20に入射させる構成を示した。しかしながら,前記検査部位Pからの反射光を変向させる光学機器(ミラーなど)を設け,その光学機器により変向された反射光を前記カメラ20に入射させる構成も考えられる。
また,前述した実施形態における前記光照射装置10は,複数の光源(LED12)を順次切り替えて点灯させる切替型の光照射装置であった。しかしながら,光照射装置としては,1つ又は比較的少数の光源(LED等)を一の平面内の複数の位置(例えば,光照射装置10において各LED12が配置された位置)各々に順次移動させる光源移動機構を備え,その移動先の各位置で光源を点灯させる移動型の光照射装置も考えられる。このような移動型の光照射装置によっても,前記光照射装置10と同様に,検査部位Pに対して順次異なる照射角度φで光を照射する装置を構成できる。
この移動型の照明装置としては,例えば,前記基準位置Qを中心とする円弧状にレールと,そのレールに沿ってLED等の光源を移動させる移動機構と,この移動機構によってLEDが予め定められた複数の位置各々に到達したことを検知する位置センサと,光源がその位置センサにより検知される各位置へ順次移動するよう前記移動機構を制御する制御装置とを備えたものが考えられる。
【0037】
ところで,複数の光源(前述の実施形態ではLED12)を切り替えて検査部位Pに光を照射する前記光照射装置10を用いる場合,光源それぞれの個体差により,各光源から前記基準位置Qの検査部位Pに照射される光の光量(強度)にばらつきが生じ得る。そこで,そのばらつきが極力小さくなるよう予め調整することが重要である。
具体的には,前記検査部位Pが配置される前記基準位置Qに光センサを配置し,各光源を順次切り替えて点灯させたときに,その光センサで検出される光強度がほぼ一定のレベルとなるように各光源に供給する電力(電圧や電流),即ち,各光源の発光量(発光強度)を予め調整しておく。
例えば,光源がLEDである場合,各LEDに対する電力供給ラインに可変抵抗を設け,この可変抵抗の抵抗値を調整することによって各LEDへの供給電流を予め調整する。或いは,各LEDに対する電力供給をパルス幅変調(PWM)によって制御可能とするパルス幅変調装置を設け,これによって各LEDへの供給電力を予め調整する。
その他,前記検査部位Pが配置される前記基準位置Qに反射方向や反射率が既知の反射部材(鏡など)を配置し,各光源を順次切り替えて点灯させたときに前記カメラ20で検出される光強度のばらつきに基づいて,光源ごとの光強度の補正係数を予め算出して記憶しておくことも考えられる。そして,実際の測定時には,その補正係数に基づく補正後の測定値(光強度分布)を用いて測定する。
以上に示すような調整を行うことにより,光源の特性のばらつきに起因する測定誤差が発生することを回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は,ハードディスク用のアルミサブストレートなどのディスク部材の形状検査への利用が可能である。
【符号の説明】
【0039】
Z :形状検査装置
1 :ディスク基板
10:光照射装置
11:LED駆動回路
12:LED
13:切り欠き部
20,20R,20L:カメラ
30:計算機
51:検査部位におけるディスク基板の厚み方向の断面を含む平面
52:ディスク基板の厚み方向中央における平断面
S1,S2,…:処理手順(ステップ)の識別符号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク部材の端面の形状の良否を検査する形状検査装置であって,
前記ディスク部材における端面及びその近傍を含む検査部位に対して一の平面内の複数の位置から順次異なる照射角度で光を照射する光照射手段と,
前記検査部位での反射光の像を撮像する撮像手段と,
前記撮像手段の撮像画像における前記反射光の像の位置及び前記光照射手段による光の照射角度に基づいて前記検査部位の表面角度の分布を算出する表面角度分布算出手段と,
前記表面角度分布算出手段の算出結果における前記検査部位の表面角度の変化が予め設定された許容範囲内にあるか否かの判別により前記ディスク部材の端面の形状の良否を判別する良否判別手段と,
を具備してなることを特徴とする形状検査装置。
【請求項2】
前記表面角度分布算出手段の算出結果に基づいて前記検査部位の表面形状の画像を,該表面形状における表面角度の変化が前記許容範囲内にない部分を明示しつつ表示する表面形状画像表示手段を具備してなる請求項1に記載の形状検査装置。
【請求項3】
前記表面角度分布算出手段が,前記撮像手段の撮像範囲における複数の演算対象位置各々について,前記光の照射角度と前記反射光の輝度との対応関係に基づいて前記反射光の輝度がピークとなるときの前記光の照射角度を推定する演算を行い,その推定値に基づいて前記演算対象位置の表面角度を算出してなる請求項1又は2のいずれかに記載の形状検査装置。
【請求項4】
前記光照射手段が,前記一の平面内の複数の位置各々に配置された複数の光源を順次切り替えて点灯させることにより,前記検査部位に対して順次異なる照射角度で光を照射する切替型光照射手段である請求項1〜3のいずれかに記載の形状検査装置。
【請求項5】
前記切替型光照射手段における複数の光源が,前記検査部位の配置位置を中心とする円弧に沿って配置されてなる請求項4に記載の形状検査装置。
【請求項6】
ディスク部材の端面の形状の良否を検査する形状検査方法であって,
前記ディスク部材における端面及びその近傍を含む検査部位に対して一の平面内の複数の位置から順次異なる照射角度で光を照射する光照射工程と,
前記光照射工程の光照射によって前記検査部位で反射する反射光の像を撮像手段により撮像する撮像工程と,
前記光照射工程により順次異なる照射角度で光が照射されるごとに前記撮像工程により得られた撮像画像における前記反射光の像の位置及び前記光照射工程での光の照射角度に基づいて前記検査部位の表面角度の分布を算出する表面角度分布算出工程と,
前記表面角度分布算出工程の算出結果における前記検査部位の表面角度の変化が予め設定された許容範囲内にあるか否かの判別により前記ディスク部材の端面の形状の良否を判別する良否判別工程と,
を有してなることを特徴とする形状検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−256217(P2010−256217A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107859(P2009−107859)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】