説明

有機薄膜トランジスタ、ゲート絶縁膜、有機薄膜トランジスタの製造方法、及び表示装置

【課題】ゲート絶縁膜におけるリーク電流が抑止され、高い絶縁膜容量が得られ、低ゲート電圧で動作可能な有機薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】
基板11上に、ゲート電極18、ゲート絶縁膜17、有機半導体膜16、ドレイン電極14、及びソース電極15を備える有機薄膜トランジスタである。ゲート絶縁膜17は、低誘電体膜17aと高誘電体膜17bの二層構造を有し、低誘電体膜17aは高誘電体膜17bと有機半導体膜16との間に介装されているとともに、低誘電体膜17aは非共有電子対を有する官能基を持たず且つ分子構造内にπ電子結合を持たない有機高分子化合物を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜トランジスタ、トランジスタに用いられるゲート絶縁膜、該有機薄膜トランジスタの製造方法、及び該有機薄膜トランジスタを備える有機EL表示装置などの表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜トランジスタは、例えば、基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、有機半導体膜及び保護膜を積層した構造を有している。有機薄膜トランジスタは、印刷法などの常温・常圧下での低コスト製造プロセスによって得ることができ、しかも柔軟な基板への適合性が良い。その特性を活かして、有機薄膜トランジスタは、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、電気泳動表示装置等のフラットパネルディスプレイの画像駆動素子への適用や、シートディスプレイ、電子ペーパー、電子値札・電子荷札などの電子タグ、バイオセンサー等の電子機器の集積回路技術への適用が期待されている。
【0003】
このように期待される有機薄膜トランジスタの特性を向上させるために、チャネル層の有機半導体の移動度を高くすることが考えられている。その有機半導体の移動度がゲート絶縁膜の材質によって変化することが知られており(特許文献1及び特許文献2)、有機ゲート絶縁膜用の材料開発が盛んに行われるようになってきた。
【0004】
例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されている有機薄膜トランジスタでは、ドレイン電流を大きくとるには、ゲート絶縁膜の単位面積当りの電気容量が大きい方がよいので、高誘電率、少なくとも5の比誘電率を持つ、絶縁性の高いポリマー(シアノエチルプルランなど)をゲート絶縁膜に用いている。このシアノエチルプルランは比誘電率が18.5である。
【0005】
また、特許文献3において有機ゲート絶縁材料として、シアノ基を有するポリマーである、ポリアクリロニトリルが提案されている。ポリアクリロニトリルの比誘電率は4.5である。さらに、特許文献3ではゲート絶縁膜として、ポリイミド、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルクロライド、ポリビニルアルコール、ポリパラキシレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルフェノール、プルラン、パリレンなどのポリマー及びその誘導体が提案されている。特許文献4には、さらに、より効果的な電界効果を得るために誘電率を大きくするための材料を混入した複合材料を用いることが提案されている。
【特許文献1】特表平5−508745号公報
【特許文献2】米国特許5347144号公報
【特許文献3】特開2004−179542号公報
【特許文献4】特開平8−191162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの有機材料は、膜厚を大きく確保しておかないと、絶縁膜にトンネル現象によるゲートリーク電流が流れてしまい、絶縁性が保たれなくなってしまい、優れた特性を安定的に実現することができない場合があるとともに、高い絶縁膜容量を実現することができず、低ゲート電圧で動作可能にすることが難しい場合があった。
【0007】
本発明の目的は、ゲート絶縁膜におけるリーク電流が抑止され、高い絶縁膜容量が得られ、低ゲート電圧で動作可能な有機薄膜トランジスタ及びその製造方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、該有機薄膜トランジスタなどに用いられるゲート絶縁膜、及び該有機薄膜トランジスタを用いる表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来用いられていた有機ゲート絶縁膜材料を種々検討した結果、分子構造中に存在する官能基の電子対及びベンゼン環等のπ電子がリーク電流に影響していることに気づき、さらに検討した結果、非共有電子対を有する官能基を持たず且つ分子構造内にπ電子結合を持たない有機高分子化合物を用いて低誘電体膜を形成し、この低誘電体膜と高誘電体膜とを積層してゲート絶縁膜を構成することにより、該ゲート絶縁膜は良質でピンホールができにくい膜となり、ゲート絶縁膜におけるリーク電流が抑止され、高い絶縁膜容量が得られ、低ゲート電圧で動作可能な有機薄膜トランジスタが得られることを見出した。本発明者らはこの知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
かくして本発明によれば、基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、有機半導体膜、ソース電極、及びドレイン電極を備える有機薄膜トランジスタであって、前記ゲート絶縁膜は、高誘電体膜、及び該高誘電体膜と前記有機半導体膜との間に介装される、高誘電体膜と比較して低誘電率を有する低誘電体膜を有し、前記低誘電体膜は、非共有電子対を有する官能基を持たず且つ分子構造内にπ電子結合を持たない有機高分子化合物を含む有機薄膜トランジスタが提供される。
【0010】
また、高誘電体膜、及び高誘電体膜と比較して低誘電率を有する低誘電体膜を積層してなるゲート絶縁膜であって、前記低誘電体膜は、非共有電子対を有する官能基を持たず且つ分子構造内にπ電子結合を持たない有機高分子化合物を含むゲート絶縁膜が提供される。
【0011】
さらに、基板上にゲート電極を形成する第1工程と、前記ゲート電極を含む前記基板上に高誘電体膜を形成する第2工程と、前記高誘電体膜上に高誘電体膜と比較して低誘電率を有する低誘電体膜を形成する第3工程と、前記低誘電体膜上に有機半導体膜を形成する第4工程と、前記有機半導体膜上にソース電極及びドレイン電極を形成する第5工程とを備え、前記第3工程は、非共有電子対を有する官能基を持たず且つ分子構造内にπ電子結合を持たない有機高分子化合物を溶媒に溶かし溶液を得る工程、及び該溶液を流延させた後、溶媒を除去する工程を有する有機薄膜トランジスタの製造方法が提供される。また、前記有機薄膜トランジスタを備えてなる表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の有機薄膜トランジスタは、ゲート絶縁膜におけるリーク電流が抑止され、安定的に優れた性能を実現できるとともに、低いゲート電圧で動作させることができる。また、本発明のゲート絶縁膜は、薄い膜厚においても、ピンホールができにくい安定した膜であり、リーク電流を抑制することができ、高い絶縁膜容量を得ることができる。本発明の有機薄膜トランジスタの製造方法は、特性が安定しており、高い絶縁膜容量が得られ、低いゲート電圧で動作可能な有機薄膜トランジスタを製造することができる。本発明の有機薄膜トランジスタは、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、電気泳動表示装置等のフラットパネルディスプレイの画像駆動素子として、また、シートディスプレイ、電子ペーパー、電子値札・電子荷札などの電子タグ、バイオセンサー、ガスセンサー、メモリ素子等の電子機器の集積回路技術に適用できる。特に本発明の有機薄膜トランジスタは低電圧で動作できるということから、例えば有機EL表示装置の画像駆動素子に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
〔全体構成〕
本実施形態の有機薄膜トランジスタは、基板上に(A)有機半導体膜、(B)ゲート電極、(C)ソース電極、(D)ドレイン電極、及び低誘電率の(E1)低誘電体膜と該低誘電体膜よりも高誘電率の(E2)高誘電体膜とを積層して二層構造とした(E)ゲート絶縁膜を備えて構成される。有機薄膜トランジスタは、有機半導体膜に接したソース電極とドレイン電極を有し、その上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を有するトップゲート型と、ゲート電極を有し、その上にゲート絶縁膜を介して有機半導体膜で連結されたソース電極とドレイン電極を有するボトムゲート型とに大別される。
【0015】
本発明の有機薄膜トランジスタは、トップゲート型のものであっても、ボトムゲート型のものであっても良いが、ソース電極及びドレイン電極形成による有機半導体膜へのダメージを回避するという観点から、ボトムゲート型のものが好ましい。
【0016】
図1はトップゲート型の例である。図1(a)に示すトップゲート型(Stagger type)有機薄膜トランジスタでは、基板11上にポリマー又は、無機酸化物及び無機窒化物から選ばれる化合物を含む下引き層12を有し、下引き層12に接して有機半導体膜16、ドレイン電極14及びソース電極15を有し、有機半導体膜16の上に、低誘電体膜17aと高誘電体膜17bとを積層してなるゲート絶縁膜17を介してゲート電極18を有するものである。低誘電体膜17aは、有機半導体膜16と高誘電体膜17bとの間に介装・配置されている。また最外層として保護膜(封止膜)23が設けられている。図1(b)はドレイン電極及びソース電極と有機半導体膜の積層順序を入れ替えた構成(Coplanar type)のものである。
【0017】
図2はボトムゲート型の例である。図2(a)に示すボトムゲート型(Stagger type)有機薄膜トランジスタでは、基板11上にポリマー又は、無機酸化物及び無機窒化物から選ばれる化合物を含有する下引き層12を有し、下引き層12に接してゲート電極18、低誘電体膜17aと高誘電体膜17bとを積層してなるゲート絶縁膜17を介して有機半導体膜16を有している。低誘電体膜17aは、有機半導体膜16と高誘電体膜17bとの間に介装・配置されている。さらに有機半導体膜16に接してドレイン電極14及びソース電極15を有している。図2(b)はドレイン電極及びソース電極と有機半導体膜の積層順序を入れ替えた構成(Coplanar type)のものである。
【0018】
〔有機半導体膜〕
本実施形態の有機薄膜トランジスタを構成する(A)有機半導体膜は、有機半導体材料で形成されている。有機半導体材料としてはπ共役系材料が挙げられる。π共役系材料としては、例えばポリピロール、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)などのポリピロール類、ポリチオフェン、ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェンなどのポリチオフェン類、ポリイソチアナフテンなどのポリイソチアナフテン類、ポリチェニレンビニレンなどのポリチェニレンビニレン類、ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(p−フェニレンビニレン)類、ポリアニリン、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(3−置換アニリン)、ポリ(2,3−置換アニリン)などのポリアニリン類、ポリアセチレンなどのポリアセチレン類、ポリジアセチレンなどのポリジアセチレン類、ポリアズレンなどのポリアズレン類、ポリピレンなどのポリピレン類、ポリカルバゾール、ポリ(N−置換カルバゾール)などのポリカルバゾール類、ポリセレノフェンなどのポリセレノフェン類、ポリフラン、ポリベンゾフランなどのポリフラン類、ポリ(p−フェニレン)などのポリ(p−フェニレン)類、ポリインドールなどのポリインドール類、ポリピリダジンなどのポリピリダジン類、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン、ピレン、ジベンゾピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレン、サーカムアントラセンなどのポリアセン類およびポリアセン類の炭素の一部をN、S、Oなどの原子、カルボニル基などの官能基に置換した誘導体(トリフェノジオキサジン、トリフェノジチアジン、ヘキサセン−6,15−キノンなど)、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニレンスルフィドなどのポリマーや特開平11−195790号公報に記載された多環縮合体などを挙げることができる。
【0019】
また、これらのポリマーと同じ繰返し単位を有する、例えばチオフェン6量体であるα−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、スチリルベンゼン誘導体などのオリゴマーが挙げられる。
【0020】
さらに銅フタロシアニンや特開平11−251601号公報に記載のフッ素置換銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン類;ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(4−トリフルオロメチルベンジル)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロオクチル)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロブチル)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド及びN,N’−ジオクチルナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、ナフタレン2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミドなどのナフタレンテトラカルボン酸ジイミド類、及びアントラセン2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミドなどのアントラセンテトラカルボン酸ジイミド類などの縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;C60、C70、C76、C78、C84等のフラーレン類、SWNTなどのカーボンナノチューブ、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類などの色素などが挙げられる。
【0021】
これらのπ共役系材料のうちでも、チオフェン、チェニレンビニレン、フェニレンビニレン、p−フェニレン、及びこれらの置換体の少なくとも1種を繰返し単位とし、かつ該繰返し単位の数nが4〜10であるオリゴマー並びに該繰返し単位の数nが20以上であるポリマー;ペンタセンなどの縮合多環芳香族化合物;フラーレン類;縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;並びに金属フタロシアニンよりなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0022】
また、その他の有機半導体材料としては、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体、などの有機分子錯体が挙げられる。さらにポリシラン、ポリゲルマンなどのσ共役系ポリマーや特開2000−260999号公報に記載の有機・無機混成材料が挙げられる。
【0023】
本実施形態においては、有機半導体膜に、例えば、アクリル酸、アセトアミド、ジメチルアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基などの官能基を有する材料や、ベンゾキノン誘導体、テトラシアノエチレンおよびテトラシアノキノジメタンやそれらの誘導体などのように電子を受容するアクセプターとなる材料や、例えばアミノ基、トリフェニル基、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、フェニル基などの官能基を有する材料、フェニレンジアミンなどの置換アミン類、アントラセン、ベンゾアントラセン、置換ベンゾアントラセン類、ピレン、置換ピレン、カルバゾールおよびその誘導体、テトラチアフルバレンとその誘導体などのように電子の供与体であるドナーとなるような材料を含有させてもよい。
【0024】
これら有機半導体膜の作製法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、プラズマ重合法、電解重合法、化学重合法、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法およびLB法等が挙げられる。
【0025】
有機半導体膜の膜厚は、用いられる有機半導体材料により異なるが、通常1μm以下、好ましくは一単分子層の厚み以上400nm以下である。
【0026】
〔電極〕
本実施形態の有機薄膜トランジスタを構成する、(B)ゲート電極、(C)ソース電極及び(D)ドレイン電極は、導電性材料で形成されている。導電性材料としては、例えば、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が挙げられる。またドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン(ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体など)が挙げられる。
【0027】
特に、ソース電極及びドレイン電極を形成する材料は、上に挙げた中で有機半導体膜との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましく、p型半導体の場合は特に、白金、金、銀、ITO、導電性ポリマーおよび炭素が好ましい。
【0028】
本実施形態に用いるゲート電極、ソース電極及びドレイン電極としては、上記の導電性材料を含む、溶液、ペースト、インク、分散液などの流動性電極材料を用いて形成したもの、特に、導電性ポリマー、または白金、金、銀、銅を含有する金属微粒子を含む流動性電極材料を用いて形成したものが好ましい。
【0029】
金属微粒子を含有する流動性電極材料としては、例えば公知の導電性ペーストなどを用いても良いが、好ましくは、平均粒子径が1〜50nm、好ましくは1〜10nmの金属微粒子を、必要に応じて分散安定剤を用いて、水や任意の有機溶剤である分散媒中に分散した材料を用いる。平均粒子径は光子相関法により測定することができる。
【0030】
金属微粒子の材料としては、前記した白金、金、銀、銅の他、ニッケル、クロム、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、亜鉛等であってもよい。
【0031】
このような金属微粒子の分散物の製造方法として、ガス中蒸発法、スパッタリング法、金属蒸気合成法などの物理的生成法や、コロイド法、共沈法などの、液相で金属イオンを還元して金属微粒子を生成する化学的生成法が挙げられる。これらの金属微粒子分散物を用いて電極を成形し、溶媒を乾燥させた後、必要に応じて100〜300℃、好ましくは150〜200℃の範囲で加熱することにより、金属微粒子を熱融着させ、目的の形状を有する電極パターンを形成するものである。
【0032】
電極の他の形成方法としては、前記導電性材料を原料としてスパッタリングや蒸着などにより導電性薄膜を形成し、次いでフォトレジストでパターンを形成した後にエッチングにより不要な薄膜を除去して電極パターンを形成するフォトリソグラフ法、基板上にメタルマスクを置いて、そのままスパッタリングや蒸着を行い、電極パターンを形成するメタルマスク法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写やインクジェット等によりフォトレジストのパターンを形成した後にエッチングにより不要な薄膜を除去して電極パターンを形成する方法などの公知の方法が挙げられる。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、金属微粒子を含有する分散液等を直接インクジェット法によりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーションなどにより形成してもよい。さらに導電性ポリマーや金属微粒子を含有する導電性インク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。電極の厚さは特に限定されないが、通常20〜500nm、好ましくは50〜200nmである。
【0033】
〔ゲート絶縁膜〕
本実施形態の有機薄膜トランジスタに用いる(E)ゲート絶縁膜は、比較的に低い誘電率を有する(E1)低誘電体膜、及び比較的に高い誘電率を有する(E2)高誘電体膜を積層した二層構造の膜である。但し、本実施形態では、二層構造のゲート絶縁膜について説明するが、本発明の目的を阻害しない範囲内で、ゲート絶縁膜は、二層以上の多層構造の膜であってもよい。本発明の有機薄膜トランジスタにおいては、(E1)低誘電体膜は有機半導体膜に接するように、(E2)高誘電体膜はゲート電極に接するように、それぞれ形成するのが好適である。
【0034】
低誘電体膜の比誘電率は、通常、4以下の値に設定され、3.5以下の値で設定されることが好ましく、3以下の値で設定されることがより好ましい。比誘電率の下限としては、通常、2程度である。低誘電体膜の膜厚は、好ましくは5nm〜500nm、より好ましくは10nm〜300nmに設定される。高誘電体膜の比誘電率は、通常、5以上の値に設定され、7以上の値で設定されることが好ましく、10以上の値で設定されることがより好ましい。比誘電率の上限としては、通常、50程度である。高誘電体膜の膜厚は、好ましくは5nm〜500nm、より好ましくは10nm〜300nmに設定される。低誘電体膜の比誘電率及び膜厚と、高誘電体膜の比誘電率及び膜厚を適宜に設定することにより、ゲート絶縁膜全体としての有効誘電率を調節することができる。低誘電体膜と高誘電体膜を積層したゲート絶縁膜全体としての膜厚は、絶縁性が保たれればいかなる厚さを用いてもよいが、一般に好適に用いられるのは、10〜500nm、より好ましくは10〜300nmである。有機薄膜トランジスタ素子のサイズの微小化に従って、できるだけ薄くするのが望ましい。
【0035】
〔低誘電体膜〕
(E1)低誘電体膜は、非共有電子対を有する官能基を持たず且つ分子構造内にπ電子結合を持たない有機高分子化合物を含んでなる膜である。この低誘電体膜には、非共有電子対を有する官能基を持たず且つ分子構造内にπ電子結合を持たない有機高分子化合物の他に、本発明の所望の効果の発現を阻害しない範囲で前記官能基および/またはπ電子結合を持つ有機高分子化合物を含んでいてもよい。本明細書において、「官能基」とは有機高分子化合物の主鎖の骨格構造の形成に関与していない、主鎖に結合し主鎖から分枝した原子団をいう。
【0036】
本明細書において非共有電子対とは、原子の最外郭電子のうち、他の原子との結合にあずからないで、二つずつ対になっている電子である。孤立電子対や非結合電子対とも呼ばれるものである。本発明において非共有電子対を有する官能基は、主鎖に結合し主鎖から分枝した基であり、主鎖自体が基となっているものを含まない。例えばポリオキシエチレンのごとく主鎖自体にエーテル基(−O−)がある場合のエーテル基や、ポリアミンのごとく主鎖自体にイミノ基(>NH)が在る場合のイミノ基は非共有電子対を有する官能基に含まれない。ポリアクリロニトリルのごとき主鎖に結合した二トリル基が有る場合の二トリル基や、ポリテトラフルオロエチレンのごとき主鎖に結合したフッ素基がある場合のフッ素基は非共有電子対を有する官能基に含まれる。
【0037】
本明細書においてπ電子結合とは、π軌道に属する電子によってつくられる結合をいう。π軌道とは、分子内の電子を収容する軌道の一種であり、ひとつの結合の原子核を結ぶ軸(結合軸)に対して、垂直な方向に分布を有する軌道同士が分子面の上下でそれぞれ横方向に重なってつくる電子軌道である。π電子結合を有する結合の具体例としては、炭素−炭素間の二重結合及び三重結合、窒素と炭素間の三重結合、炭素と酸素間の二重結合、ベンゼンやナフタレンの二重結合などが挙げられる。
【0038】
本実施形態の低誘電体膜に含まれる有機高分子化合物は、上記のような、非共有電子対を有する官能基を持たず且つ分子構造内にπ電子結合を持たない化合物である。かかる化合物はいずれも本発明の所望の効果を奏し得る。本実施形態に使用する有機高分子化合物は比誘電率が小さく、通常、3以下である。なお、本発明において、比誘電率はLCRメーター(アジレントテクノロジー社製、品番4284A)を用いた容量法により測定することができる。このような有機高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン;脂環式オレフィンポリマー;ポリアミン;ポリエーテル;などが挙げられる。これらのうち、誘電率の周波数依存性が小さいという観点から脂環式オレフィンポリマーが好適である。
【0039】
本実施形態に好適に用いられる脂環式オレフィンポリマーは、主鎖および/または側鎖にシクロアルカン構造を有する重合体である。機械的強度や耐熱性などの観点から、主鎖にシクロアルカン構造を含有する重合体が好適である。また、シクロアルカン構造としては、単環や多環(縮合多環、橋架け環など)が挙げられる。シクロアルカン構造の一単位を構成する炭素原子数は、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械的強度、耐熱性、及び成形性の諸特性が高度にバランスされ好適である。また、本実施形態で使用される脂環式オレフィンポリマーは、通常、熱可塑性の樹脂である。
【0040】
脂環式オレフィンポリマーは、通常、シクロアルカン構造を有する繰り返し単位を脂環式オレフィンポリマーの主鎖における全繰り返し単位中に通常30〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%有する。シクロアルカン構造を有する繰り返し単位の割合がこれらの範囲にあれば耐熱性に優れる。
【0041】
脂環式オレフィンポリマーは、通常、環構造を有するオレフィンを付加重合又は開環重合し、そして必要に応じて不飽和結合部分及び芳香環部分を水素化することによって得られる。
【0042】
脂環式オレフィンポリマーを得るために使用される環構造を有するオレフィンとしては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4、7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの単環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物;ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロペンテンなどの脂環族ビニル化合物等が挙げられる。環構造を有するオレフィンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
環構造を有するオレフィンと共重合可能な単量体を必要に応じて付加共重合させることができる。そのような単量体の具体例として、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のエチレンまたはα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;1,3−ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン等が挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
環構造を有するオレフィンの重合は公知の方法に従って行うことができる。重合温度、圧力等は特に限定されないが、通常−50℃〜100℃の重合温度、0〜5MPaの重合圧力で重合させる。水素化反応は、公知の水素化触媒の存在下で、水素を吹き込んで行う。
【0045】
脂環式オレフィンポリマーの具体例としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体の水素化物、ノルボルネン系単量体の付加重合体及びその水素化物、ノルボルネン系単量体とビニル化合物(エチレンや、α−オレフィンなど)との付加重合体及びその水素化物、単環シクロアルケンの重合体及びその水素化物、脂環式共役ジエン系単量体の重合体及びその水素化物、ビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素化物、芳香族ビニル化合物の重合体の芳香環を水素化した物などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環重合体の水素化物、ノルボルネン系単量体の付加重合体、ノルボルネン系単量体とビニル化合物(エチレンやα−オレフィンなど)との付加重合体、芳香族オレフィン重合体の芳香環水素化物が好ましく、特にノルボルネン系単量体の開環重合体の水素化物が好ましい。前記の脂環式オレフィンポリマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ここでノルボルネン系単量体とは化1に示すようなノルボルネン構造を有する単量体のことである。ノルボルネン系単量体を開環重合すると化2のような繰り返し単位を持つポリマーが得られ、これを水素化すると化3に示すような繰り返し単位を持つポリマーが得られる。
【化1】

【化2】

【化3】

【0046】
但し、化3中のR1及びR2は、非共有電子対を有さず且つπ電子結合の無い置換基を示し、R1とR2とが結合して環を形成してもよい。化1及び化2中のR1及びR2は、種々の製造工程を経て、最終的に得られる脂環式オレフィンポリマーが非共有電子対を有する官能基を持たず且つπ電子結合を持たないものになるのであれば、特に制限されないが、好ましくは、非共有電子対を有さず且つπ電子結合の無い置換基を示し、R1とR2とが結合して環を形成してもよい。
【0047】
本実施形態に用いる脂環式オレフィンポリマーは、その分子量によって特に制限されない。脂環式オレフィンポリマーの分子量は、シクロヘキサンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜250,000の範囲である。脂環式オレフィンポリマーの重量平均分子量(Mw)がこの範囲にあるときには、耐熱性、接着性、表面平滑性などがバランスされ好適である。
【0048】
脂環式オレフィンポリマーの分子量分布は、シクロヘキサンを溶媒とするGPCで測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で、通常5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。脂環式オレフィンポリマーのガラス転移温度は、好ましくは70℃以上、より好ましくは120℃以上、最も好ましくは140℃以上である。なお、ガラス転移温度は示差走査熱量計により測定することができる。
【0049】
本発明の低誘電体膜には、本発明の所望の効果の発現が阻害されない範囲であれば、非共有電子対を有する官能基を持たず且つ分子構造内にπ電子結合を持たない有機高分子化合物の他、その他の公知の有機高分子化合物が含まれていてもよい。非共有電子対を有する官能基を持たず且つ分子構造内にπ電子結合を持たない有機高分子化合物のゲート絶縁膜中の含有量としては、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%である。また、その他、顔料や染料のごとき着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤などの配合剤を適宜配合したものであってもよい。
【0050】
本発明の低誘電体膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、プラズマ重合法、電解重合法、化学重合法、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法およびLB法等が挙げられる。これらのうち、湿式法が好ましい。湿式法とは、低誘電体膜を構成する前記の有機高分子化合物及び所望により前記配合剤を溶媒に溶かし溶液を得、該溶液を流延させた後、溶媒を除去し、成膜する方法である。使用する溶媒は、使用する有機高分子化合物等に応じて公知の溶媒から適宜選択すればよい。湿式法としては、例えば、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、マイクロコンタクトプリンティング、マイクロモルディングなどのソフトリソグラフィーと呼ばれる印刷法などを適応することもできる。これらの湿式法のうち、スピンコート法が特に好ましい。
【0051】
〔高誘電体膜〕
本実施形態の有機薄膜トランジスタに用いる(E)ゲート絶縁膜の(E2)高誘電体膜の材料は、特に限定されないが、通常、絶縁性有機高分子単独、または絶縁性有機高分子と無機金属酸化物もしくは高誘電性絶縁体のナノ粒子との混合物を用いることができる。絶縁性有機高分子の選択や、絶縁性有機高分子と前記ナノ粒子の間の質量比を調節することによって、誘電率を調節することができる。このような材料を用い、上述した低誘電体膜と同様の形成方法に従って高誘電体膜を形成することができる。上述した形成方法のうち、湿式法が好ましく、スピンコート法が特に好ましい。
【0052】
絶縁性有機高分子としては、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニールアルコール、ポリビニールブチラール、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリカルボジイミド、ポリシロキサン、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリルアミド、ニトリルゴム、アクリルゴム、ポリエチレンテトラフルオリド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−ジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、ブチルゴム、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、スチレン−ブタイジエン共重合体、水添スチレン−ブタジエン共重合体、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、およびシアノエチル化セルロースからなる群より選択された1種以上の物質を用いることができる。
【0053】
無機金属酸化物のナノ粒子としては、特に制限はないが、例えば、Ta、Y、TiO、CeO及びZrOなどのナノ粒子が挙げられる。高誘電性絶縁体のナノ粒子としては、特に制限はないが、例えば、BaSr1−dTiO(式中、dは0<d<1を満たす。;BST)、PbZrTi1−e(式中、eは0<e<1を満たす。;PZT)、BiTi12、BaMgF、SrBi(Ta1−fNb(式中、fは0<f<1を満たす。)、Ba(Zr1−gTi)O(式中、gは0<g<1を満たす。;BZT)、BaTiO、SrTiO及びBiTi12などのナノ粒子が挙げられる。なお、BaSr1−dTiOは、Barium Strontium Titanateと呼称されるものであり、通常、BaTiOとSrTiOとを重量比(BaTiO:SrTiO)で1:9〜9:1の割合で混合して得られる。これらのナノ粒子は、それぞれ単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。前記ナノ粒子としては、誘電率が5以上のものが好ましく、かかる観点から、通常、高誘電性絶縁体のナノ粒子が好適に用いられる。ナノ粒子の平均粒子径は、通常、50nm以下、好ましくは1〜50nm、より好ましくは1〜30nmである。なお、誘電率はJIS K 6911に従って、平均粒子径は動的光散乱法により測定することができる。
【0054】
高誘電体膜の材料としては、上述したような絶縁性有機高分子に、前記ナノ粒子に代えて、チタニウム化合物、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物及びアルミニウム化合物からなる群より選択された少なくとも一種の有機金属化合物を混合したものを用いてもよい。この場合にも、5以上の比誘電率を有する有機金属化合物を用いるのが好ましい。
【0055】
〔保護膜及び基板〕
本実施形態の有機薄膜トランジスタは、最外層に保護膜(例えば、図1及び図2における保護膜23)を有してもよい。保護膜は、例えば、CVD法やスパッタリング法によって形成した酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸窒化シリコン膜;熱CVD法によって形成したポリパラキシレン膜;あるいは、前記のような湿式法に従って形成したポリイミド膜、脂環式オレフィンポリマー膜、紫外線硬化エポキシ樹脂膜、アクリル系樹脂膜等が好ましい。該保護膜の膜厚としては、通常、100nm〜10μmが好ましい。
【0056】
図1及び図2に示す有機薄膜トランジスタでは、薄膜状の有機薄膜トランジスタを支持するために基板11が用いられている。基板は特に限定されず、いかなる物を用いても良い。一般に好適に用いられる物は、ポリカーボネート、ポリイミドやポリエチレンテレフタレート(PET)の他、脂環式オレフィンポリマーなどの柔軟性のあるプラスチック基板であるが、石英、ソーダガラス、無機アルカリガラスなどのガラス基板やシリコンウェハー等も用いることができる。
【0057】
本実施形態の有機薄膜トランジスタは、前記基板及び/又は保護膜が、前述の脂環式オレフィンポリマーからなるものであることが好ましい。脂環式オレフィンポリマーは透湿度やガス透過度が低いので、前記基板及び/又は保護膜が前述の脂環式オレフィンポリマーからなるものであれば、有機半導体膜の劣化を防止する効果が高い。
【0058】
〔下引き層〕
本発明の実施態様の一例である図1及び図2に示す有機薄膜トランジスタにおいては、ポリマー又は無機酸化物及び無機窒化物から選ばれる化合物を含有する下引き層12を有している。
【0059】
下引き層に含有される無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル等が挙げられる。また無機窒化物としては窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、窒化ケイ素である。
【0060】
ポリマーを含む下引き層に用いるポリマーとしては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノキシ樹脂、ノルボルネン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体、ポリアミド樹脂、エチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、脂環式オレフィン樹脂等を挙げることができる。
【0061】
下引き層はその形成方法によって特に制限されない。下引き層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などのドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷やインクジェットなどのパターニングによる方法などのウェットプロセスが挙げられる。
【0062】
〔表示装置〕
本実施形態の表示装置は、前記有機薄膜トランジスタを備えたものである。この表示装置をより具体的に説明するために、有機EL表示装置を一例にして説明する。この有機EL表示装置は、基板上にマトリクス配列して形成された各画素が、少なくとも1つの有機EL素子と、該有機EL素子を駆動するための少なくとも2つの有機薄膜トランジスタとを有するものである。そして、該有機薄膜トランジスタの少なくとも1つは前述の有機薄膜トランジスタである。
【0063】
有機EL素子は、特に制限されず、例えば陽極となる正孔注入電極と陰極となる電子注入電極との間に正孔輸送層と発光材料層とが形成された構造(SH−A構造)のもの、正孔注入電極と電子注入電極との間に発光材料層と電子輸送層とが形成された構造(SH−B構造)のもの、又は正孔注入電極と電子注入電極との間に、正孔輸送層と発光材料層と電子輸送層とが形成された構造(DH構造)のものなどが挙げられる。いずれの構造の場合でも、有機EL素子は正孔注入電極(陽極)から注入された正孔と電子注入電極(陰極)から注入された電子が、発光材料層と正孔(または電子)輸送層の界面、および発光材料層内で再結合して発光するという原理で作動する。
【0064】
図3に典型的な有機EL素子の構成例を示す。図3に示す有機EL素子は、透明基板11’、下部電極層(陽極)54、発光材料層62、上部電極層(陰極)55とから構成されている。また最外層として保護膜23が設けられている。透明基板11’としては、400〜700nmの可視領域の光の透過率が、50%以上で、平滑であり、かつ電極や有機EL素子の各層を形成する際に特性が変化しないものであることが好ましい。
【0065】
透明基板11’は、プラスチック、ガラス、石英、シリコンおよびセラミックよりなる群から選択された材料で形成することができる。特に、基板材料としてプラスチックを用いると、フレキシブルで軽量な有機ELディスプレイを得ることができる。プラスチックとしては、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂および脂環式オレフィンポリマーよりなる群から選択されると、好適である。基板の平均厚みは、通常30μm〜3mmで好ましくは50〜300μmである。
【0066】
下部電極層54を構成する材料としては、下部電極層から光を出光させるための材料が挙げられ、具体的には導電性の金属酸化物や半透明の金属またはその積層体が挙げられる。具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、およびそれらの複合体である酸化インジウム・スズ(ITO)、酸化インジウム・亜鉛等からなる導電性ガラス(NESAなど)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、中でもITO、酸化インジウム・亜鉛、酸化スズが好ましい。また下部電極層として、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェンなどの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0067】
下部電極層の平均厚みは、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜選択することができるが、通常10nm〜10μmであり、好ましくは100〜500nmである。下部電極層は透明又は半透明であることが、発光の取出し効率がよく好都合である。下部電極層の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を熱圧着するラミネート法が挙げられる。
【0068】
発光材料層62を構成する材料は、特に制限はなく、有機EL素子における発光材料として公知のものを用いることができる。このような発光材料の具体例としては、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤や、金属キレート化オキシノイド化合物、スチリルベンゼン系化合物、ジスチリルピラジン誘導体、芳香族ジメチリジン化合物などが挙げられる。発光材料層に2種類以上の発光材料を混合して使用してもよく、2層以上の発光材料層が積層されていてもよい。発光材料層の作製方法としては、真空蒸着法、キャスト法などが挙げられる。発光材料層の平均厚みは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、通常は1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmである。
【0069】
上部電極層55(陰極)を構成する材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましく、発光材料層から上部電極層側に向かう発光光を反射させ、下部電極層側に向かわせるため鏡面体であることがさらに好ましい。具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、およびこれらから選ばれる2つ以上の金属の合金、若しくはこれらから選ばれる1つ以上の金属と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、及び錫の中から選ばれる1つ以上の金属との合金、グラファイト若しくはグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などが挙げられる。上部電極層は2層以上の積層構造としてもよい。上部電極層の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などが挙げられる。上部電極層の平均厚みは、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができるが、通常10nm〜10μm、好ましくは100〜500nmである。
【0070】
有機EL素子には、透明基板11’と、下部電極層54、発光材料層62、上部電極層55、及び保護膜23のほかに他の層を有していてもよい。他の層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層が挙げられる。正孔注入層とは、陽極に隣接して設ける層であり、陽極からの正孔注入効率を改善する機能を有する層をいう。正孔注入層の平均厚みは、通常1nm〜100nm、好ましくは2nm〜50nmである。正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する層をいう。正孔輸送層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。したがって、正孔輸送層の平均厚みは、通常1nm〜1μm、好ましくは2nm〜500nmである。正孔注入層や正孔輸送層に用いる材料としては、有機EL素子における正孔伝達化合物として公知のものが挙げられる。
【0071】
電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する層をいう。電子輸送層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、有機EL素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。したがって、電子輸送層の平均厚さは、通常1nm〜1μm、好ましくは2nm〜500nmである。電子注入層とは、陰極に隣接して設けた層であって、陰極からの電子注入効率を改善する機能を有し、素子の駆動電圧を下げる効果を有するものをいう。電子注入層の平均厚みは、通常1nm〜100nmであり、好ましくは2nm〜50nmである。電子輸送層、電子注入層に用いる材料としては、有機EL素子における電子伝達化合物として公知のものが挙げられる。以上のその他の層の作製方法としては、スピンコート法、キャスト法、真空蒸着法などが挙げられる。
【0072】
図4は本実施形態の有機EL表示装置の一画素分の回路構成例である。有機EL表示装置の一画素分の構成としては、通常、少なくとも1つの有機EL素子に対し、該EL素子を駆動するための有機薄膜トランジスタとして少なくとも2つ、すなわち、駆動トランジスタと書き込みトランジスタが必要であるが、図4の構成例では駆動トランジスタのみを示し、書き込みトランジスタは省略してある。駆動トランジスタと書き込みトランジスタの少なくとも1つは本実施形態の有機薄膜トランジスタにより構成される。
【0073】
図4では、前記有機EL素子6の陽極54と前記有機薄膜トランジスタ5(駆動トランジスタ)のドレイン電極14とが接続されている。そして、例えば図5に示すようなアクティブマトリックス方式の回路において、水平駆動回路に接続された走査電極1に順じ印加された電圧により有機薄膜トランジスタ2(書き込みトランジスタ)がオン状態になり、垂直駆動回路に接続されたデータ電極3からの表示信号に応じた電荷量がコンデンサ4に蓄積される。コンデンサ4に蓄積された電荷量により駆動トランジスタ5が動作し、有機EL素子6に電流が供給され有機EL素子が点灯する。走査電極1に電圧が印加されるまでの間この点灯状態が保持されることになる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。本実施例では、本発明を適用して、図2(a)に示すようなボトムゲート型(Stagger type)の有機薄膜トランジスタ(TFT)を製造した。基板として、ポリエチレンテレフタレートフィルム基板(25mm×10mm×0.5mmの大きさ)を用いた。ゲート電極は基板上にアルミニウムを蒸着して形成した。アルミニウムの蒸着は、真空度が1×10−2Pa未満、基板の温度がRT(室温)で、膜厚が約200nmになるように行った。
【0075】
二層構造を有するゲート絶縁膜の1層目である高誘電体膜は、シアノエチル化セルロース(信越化学社製:シアノレジンCR−S(商品名))をシクロペンタノンに溶解させて、3〜7重量%の濃度の溶液を製造した。この溶液を、回転数3000rpmで30秒間、スピンコート法を用いて塗布し、100℃で2分間、乾燥させることにより形成した。この高誘電体膜の膜厚は約300nm、比誘電率は17であった。
【0076】
ゲート絶縁膜の2層目である低誘電体膜は、脂環式オレフィンポリマー(日本ゼオン社製:ZEONEX(登録商標)480R)の5%シクロヘキサン溶液5mlを回転数5000rpmで30秒間、スピンコート法を用いて塗布し、60℃で2分間、乾燥させることにより形成した。この低誘電体膜の膜厚は約300nm、比誘電率は2.2であった。
【0077】
有機半導体膜は、ゲート絶縁膜上にペンタセンを蒸着して形成した。ペンタセンの蒸着は、真空度が2×10−3Pa未満、基板温度がRT(室温)、蒸着温度が185℃、蒸着速度が0.06nm/sで膜厚が約50nmになるように行った。ソース電極及びドレイン電極(W=5mm;L=20−70μm)は、有機半導体膜上にメタルマスクを覆い、そこに金を蒸着して形成した。金の蒸着は、真空度が1×10−2Pa未満、基板の温度がRT(室温)で、膜厚が約200nmになるように行った。
【0078】
このようにして製造した有機薄膜トランジスタ(有機TFT)の電気的特性を電流―電圧曲線の測定より評価し、その結果を図6及び図7に示す。測定装置はR6425 2 Channel Current−Voltage Source/Monitorである。
【0079】
図6は、Vを一定状態でVを+10Vと−30Vとの間で変化させたときのV−I線図であり、図7はVを一定状態(−30V)でVを+10Vと−30Vとの間で変化させたときのV−I線図である。これらの結果から、本実施例の有機TFTは、低い駆動電圧で動作させることができ、ヒステリシス性の非常に少ない良好な特性をもつことが分かる。
【0080】
なお、以上説明した実施形態及び実施例は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態及び実施例に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1(a)は本実施形態のトップゲート型(Stagger type)有機薄膜トランジスタの例を示す図、図1(b)は本実施形態のトップゲート型(Coplanar type)有機薄膜トランジスタの例を示す図である。
【図2】図2(a)は本実施形態のボトムゲート型(Stagger type)有機薄膜トランジスタの例を示す図、図2(b)は本実施形態のボトムゲート型(Coplanar type)有機薄膜トランジスタの例を示す図である。
【図3】図3は本実施形態の有機EL素子の構成例を示す図である。
【図4】図4は本実施形態の有機EL表示装置の一画素分の構成例を示す図である。
【図5】図5は実施形態のアクティブマトリックス方式の有機EL表示装置の回路の一例を示す図である。
【図6】図6は実施例における有機TFTのV−I線図である。
【図7】図7は実施例における有機TFTのV−I線図である。
【符号の説明】
【0082】
2、5:有機薄膜トランジスタ;
4:コンデンサ;
6:有機EL素子;
11:基板;
11’:透明基板;
12:下引き層;
14:ドレイン電極;
15:ソース電極;
16:有機半導体膜;
17:ゲート絶縁膜;
17a:低誘電体膜;
17b:高誘電体膜;
18:ゲート電極;
23:保護膜(封止膜);
54:下部電極層(陽極);
55:上部電極層(陰極);
62:発光材料層;

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、有機半導体膜、ソース電極、及びドレイン電極を備える有機薄膜トランジスタであって、
前記ゲート絶縁膜は、高誘電体膜、及び該高誘電体膜と前記有機半導体膜との間に介装される、高誘電体膜と比較して低誘電率を有する低誘電体膜を有し、
前記低誘電体膜は、非共有電子対を有する官能基を持たず且つ分子構造内にπ電子結合を持たない有機高分子化合物を含む有機薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記ゲート絶縁膜が湿式法によって形成されたものである請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記有機高分子化合物が脂環式オレフィンポリマーである請求項1又は2に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記高誘電体膜の比誘電率は5以上であり、前記低誘電体膜の比誘電率は4以下である請求項1〜3のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記基板上に、前記ゲート電極、前記高誘電体膜、前記低誘電体膜、前記有機半導体膜をこの順に積層し、該有機半導体膜上に前記ソース電極及び前記ドレイン電極を配置した請求項1〜4のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項6】
さらに保護膜を有する請求項1〜5のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記基板及び前記保護膜の少なくとも一方が脂環式オレフィンポリマーからなるものである請求項6に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項8】
高誘電体膜、及び高誘電体膜と比較して低誘電率を有する低誘電体膜を積層してなるゲート絶縁膜であって、
前記低誘電体膜は、非共有電子対を有する官能基を持たず且つ分子構造内にπ電子結合を持たない有機高分子化合物を含むゲート絶縁膜。
【請求項9】
前記有機高分子化合物が脂環式オレフィンポリマーである請求項8に記載のゲート絶縁膜。
【請求項10】
基板上にゲート電極を形成する第1工程と、
前記ゲート電極を含む前記基板上に高誘電体膜を形成する第2工程と、
前記高誘電体膜上に高誘電体膜と比較して低誘電率を有する低誘電体膜を形成する第3工程と、
前記低誘電体膜上に有機半導体膜を形成する第4工程と、
前記有機半導体膜上にソース電極及びドレイン電極を形成する第5工程とを備え、
前記第3工程は、非共有電子対を有する官能基を持たず且つ分子構造内にπ電子結合を持たない有機高分子化合物を溶媒に溶かし溶液を得る工程、及び該溶液を流延させた後、溶媒を除去する工程を有する有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項11】
前記第3工程では、前記溶液をスピンコート法を用いて流延させるようにした請求項10に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタを備えてなる表示装置。
【請求項13】
基板上にマトリクス配列して形成された各画素が、少なくとも1つの有機EL素子と、該有機EL素子を駆動するための少なくとも2つの有機薄膜トランジスタとを有し、
該有機薄膜トランジスタの少なくとも1つが請求項1〜7のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタである有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−34090(P2010−34090A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319184(P2006−319184)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】