検査装置、検査方法、検査装置用プログラムおよび露光システム
【課題】パターン形状の測定精度を向上させた検査装置を提供する。
【解決手段】下地層の上に所定のパターンを有するウェハ5のパターンを検査する検査装置であって、対物レンズ7の瞳面もしくは該瞳面と共役な面における領域毎の光の強度情報を検出する撮像素子18と、パターンの形状変化に対しては強度情報の変化が異なり、下地層の変化に対しては強度情報の変化が同程度である、瞳面もしくは該瞳面と共役な面内の第1領域と第2領域の位置情報をそれぞれ記憶する記憶部と、撮像素子18で検出される、第1領域の強度情報と、第2領域の強度情報との差異に基づいてパターンの形状を求める演算処理部20とを備えている。
【解決手段】下地層の上に所定のパターンを有するウェハ5のパターンを検査する検査装置であって、対物レンズ7の瞳面もしくは該瞳面と共役な面における領域毎の光の強度情報を検出する撮像素子18と、パターンの形状変化に対しては強度情報の変化が異なり、下地層の変化に対しては強度情報の変化が同程度である、瞳面もしくは該瞳面と共役な面内の第1領域と第2領域の位置情報をそれぞれ記憶する記憶部と、撮像素子18で検出される、第1領域の強度情報と、第2領域の強度情報との差異に基づいてパターンの形状を求める演算処理部20とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程においてウェハの繰り返しパターンにおける線幅の変動を検出可能な検査装置、検査方法、および検査装置用プログラムに関し、さらには、このような検査装置を備えた露光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置は、処理の高速化や低消費電力化、記憶容量増加を図るために、パターンが微細化する傾向にある。また同時に、半導体装置の製造工程で発生する欠陥の検出性能や、線幅(以下、CD(クリティカル・ディメンジョンの略)とも称する)の管理要求も厳しくなってきている。露光工程で発生したウェハの欠陥やCD値変動が許容値を超えるものであった場合、該当するウェハまたはロットをリワーク工程に回し、且つ、問題の発生箇所を修正することで、良品の半導体ウェハを生産できるようにする。
【0003】
CD値管理には、CD−SEM(走査型電子顕微鏡)が広く使われ、CD値を定量的に計測し出力することができる。しかし、CD−SEMは、ウェハに電子線を照射するため、電子線によりフォトレジストが縮小化(シュリンク)する等のダメージを受ける。測定精度を上げようと電子線の加速電圧を上げるほど、そのダメージを大きくなる。また、計測時間は1視野あたり数秒を要するため、1ロット内で数枚の抜き取り測定となる。しかも、抜き取ったウェハの全面ではなく、抜き取った各ウェハの数ショット分について、露光ショット内の数点を計測しているにすぎない。
【0004】
また、欠陥検査装置として、半導体ウェハに照明光を照射してウェハ上の繰り返しパターンからの回折光を受光する装置がある。この装置では、ウェハに照明光を照射してウェハ上の繰り返しパターンからの回折光を受光し、欠陥からの回折光はCD値が異なるため回折光量が変化することを利用して、欠陥検出を行う。マクロ検査装置と呼ばれるこのような欠陥検査装置は、ウェハ全面一括撮像による高いスループットを有するので、生産ラインで大いに活躍している。ただし、繰り返しパターンからの回折光は、繰り返し周期が小さくなるほど回折角が大きくなるので、照明波長や光学系配置等といった装置構成上の制限を受け、140nm程度の繰り返しピッチより小さい繰り返しパターンからの回折光を受光するのは事実上不可能である。
【0005】
そのため、新たな手法として、繰り返しパターンの構造性複屈折効果を利用した欠陥検査装置が実用化されている(例えば、特許文献1を参照)。これらのマクロ検査装置では、装置の性質上、微小領域の高分解の検査やCD値変動量の定量的出力には限界がある。そこで、繰り返しパターンの構造性複屈折効果を利用してCD値を定量的に測定可能な検査装置の開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−343102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、繰り返しパターンの構造性複屈折効果による偏光状態変化を抽出してパターンの線幅を測定する場合、線幅以外の状態変化(例えば、下地(層)の膜厚変化や、下地のパターンの線幅変化)が線幅の測定結果に影響し、線幅の測定誤差の一因になるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、パターン形状の測定精度を向上させた検査装置、検査方法、検査装置用プログラムおよび露光システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的達成のため、本発明に係る検査装置は、下地層の上に所定のパターンを有する基板の前記パターンを検査する検査装置であって、前記パターンに対する瞳面を形成する対物レンズと、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における領域毎の光の強度情報を検出する検出部と、前記パターンの形状変化に対しては前記強度情報の変化が異なり、前記下地層の変化に対しては前記強度情報の変化が同程度である、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面内の第1領域と第2領域の位置情報をそれぞれ記憶する記憶部と、前記検出部で検出される、前記第1領域の強度情報と、前記第2領域の強度情報との差異に基づいて前記パターンの形状を求める演算部とを備えている。
【0010】
なお、上述の検査装置において、予め形状変化が既知な複数のパターンから前記検出部によって検出される強度情報に基づいて、前記第1領域と前記第2領域の位置情報を算出する算出部をさらに備えることが好ましい。
【0011】
また、上述の検査装置において、前記演算部は、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における前記第1領域および前記第2領域とは異なる第3領域での強度情報を利用して、前記第1領域および前記第2領域での前記強度情報から求まる前記形状を補正して前記パターンの形状を求めることが好ましい。
【0012】
また、上述の検査装置において、前記演算部が求める前記パターンの形状は、前記パターンの線幅、もしくは、前記パターンの延伸方向から見た断面形状であることが好ましい。
【0013】
また、上述の検査装置において、前記演算部で求められた前記パターンの形状に基づいて、前記パターンにおける異常の有無を検査する検査部を備えていることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る検査方法は、下地層の上に所定のパターンを有する基板の前記パターンを検査する検査方法であって、前記パターンに対する瞳面を形成する瞳面形成工程と、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における領域毎の光の強度情報を検出する検出工程と、前記パターンの形状変化に対しては前記強度情報の変化が異なり、前記下地層の変化に対しては前記強度情報の変化が同程度である、前記瞳面若しくは該瞳面と共役な面内の第1領域と第2領域をそれぞれ設定する設定工程と、前記検出工程で検出される、前記第1領域の強度情報と、前記第2領域の強度情報との差異に基づいて前記パターンの形状を求める演算工程とを有している。
【0015】
なお、上述の検査方法では、予め形状変化が既知な複数のパターンの前記領域毎の光の強度情報に基づいて、前記第1領域と前記第2領域の位置情報を算出する算出工程をさらに有することが好ましい。
【0016】
また、上述の検査方法では、前記演算工程において、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における前記第1領域および前記第2領域とは異なる第3領域での強度情報を利用して、前記第1領域および前記第2領域での前記強度情報から求まる前記形状を補正して前記パターンの形状を求めることが好ましい。
【0017】
また、上述の検査方法では、前記演算工程で求める前記パターンの形状は、前記パター
ンの線幅、もしくは、前記パターンの延伸方向から見た断面形状であることが好ましい。
【0018】
また、上述の検査方法では、前記演算工程で求めた前記パターンの形状に基づいて、前記パターンにおける異常の有無を検査する検査工程を有することが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る検査装置用プログラムは、下地層の上に所定のパターンを有する基板の前記パターンを検査する検査装置の作動を制御するプログラムであって、対物レンズの瞳面もしくは該瞳面と共役な面における領域毎の光の強度情報を検出する検出ステップと、前記パターンの形状変化に対しては前記強度情報の変化が異なり、前記下地層の変化に対しては前記強度情報の変化が同程度である、前記瞳面若しくは該瞳面と共役な面内の第1領域と第2領域をそれぞれ設定する設定ステップと、前記検出ステップで検出される、前記第1領域の前記強度情報と、前記第2領域の前記強度情報との差異に基づいて前記パターンの形状を求める演算ステップとを有している。
【0020】
なお、上述の検査装置用プログラムでは、予め形状変化が既知な複数のパターンの前記領域毎の光の強度情報に基づいて、前記第1領域と前記第2領域の位置情報を算出する算出ステップをさらに有することが好ましい。
【0021】
また、上述の検査装置用プログラムでは、前記演算ステップにおいて、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における前記第1領域および前記第2領域とは異なる第3領域での強度情報を利用して、前記第1領域および前記第2領域での前記強度情報から求まる前記形状を補正して前記パターンの形状を求めることが好ましい。
【0022】
また、上述の検査装置用プログラムでは、前記演算ステップで求める前記パターンの形状は、前記パターンの線幅、もしくは、前記パターンの延伸方向から見た断面形状であることが好ましい。
【0023】
また、上述の検査装置用プログラムでは、前記演算ステップで求めた前記パターンの形状に基づいて、前記パターンにおける異常の有無を検査する検査ステップを有することが好ましい。
【0024】
また、本発明に係る露光システムは、基板の表面に所定のパターンを露光する露光装置と、前記露光装置により露光されて表面に前記パターンが形成された基板の検査を行う検査装置とを備え、前記検査装置は、本発明に係る検査装置であって、前記演算部で求められた前記パターンの形状の情報を前記露光装置へ出力し、前記露光装置は、前記検査装置から入力された前記パターンの形状の情報に応じて、前記露光装置の設定を補正するようになっている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、パターン形状の測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】検査装置の概略構成図である。
【図2】撮像素子で検出した瞳の画像を示す図である。
【図3】瞳の画像を領域分割した状態を示す図である。
【図4】(a)(b)ともに繰り返しパターンの方向と入射光の偏光方向との関係を示す平面図である。
【図5】(a)は瞳像における線幅相関特定位置の一例を示す模式図であり、(b)は検量線の一例を示すグラフであり、(c)は乖離誤差のウェハマップである。
【図6】(a)は瞳像における第1の瞳内位置および第2の瞳内位置の一例を示す模式図であり、(b)は瞳内位置における線幅変化に対する階調変化量を示した3次元散布図であり、(c)は瞳内位置における下地の膜厚変化に対する階調変化量を示した3次元散布図である。
【図7】(a)は線幅に対する第1の瞳内位置での階調値を示すグラフであり、(b)は線幅に対する第2の瞳内位置での階調値を示すグラフであり、(c)は線幅と(2)式による換算値との関係を示すグラフである。
【図8】(a)は瞳像における第3の瞳内位置の一例を示す模式図であり、(b)は線幅に対する第3の瞳内位置での階調値のグラフであり、(c)は線幅と(3)式による換算値との関係を示すである。
【図9】3つの瞳内位置および(3)式の係数を求める方法を示すフローチャートである。
【図10】検査方法を示すフローチャートである。
【図11】露光システムの概要構成図である。
【図12】露光装置の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態の検査装置を図1に示しており、この検査装置1は、ステージ6と、対物レンズ7と、プリズム8と、照明光学系10と、検出光学系15と、演算処理部20とを主体に構成される。半導体ウェハ5(以下適宜、単にウェハ5と称する)は、露光装置(図示せず)によるフォトレジストへの露光・現像後、不図示の搬送系により、不図示のウェハカセットまたは現像装置から運ばれ、パターン(繰り返しパターン)の形成面を上にした状態でステージ6に載置される。
【0028】
ステージ6は、真空吸着等によりステージ6上に載置されたウェハ5を確実に保持する。また、ステージ6は、ウェハ5の表面に沿ってXY方向に移動可能に構成されるとともに、Z軸を中心軸として回転可能に構成されている。なお、図1の紙面と垂直な方向をX軸とし、図1における左右方向をY軸とし、図1における上下方向をZ軸とする。また、XY平面内でZ軸を中心とした回転角を方位角と称する。
【0029】
照明光学系10は、図1の右側から左側へ向けて配置順に、光源11と、集光レンズ12と、波長選択フィルター13と、第1の偏光フィルター14とを有して構成される。光源11には、ハロゲンランプや青色励起型LED等の波長帯域に広い光源(白色光源)が用いられる。また、ハロゲンランプや青色励起型LEDからの光は広い波長域にわたっているため、波長選択フィルター13は、例えば、青色、緑色、赤色を透過させるようなフィルターであってもよい。したがって、波長選択フィルター13は、透過波長帯域の異なる複数のフィルターとして、光路中に挿脱することで選択的に波長や波長帯域を変更可能な構成とすることが好ましい。
【0030】
なお、光源11には、水銀ランプが用いられてもよい。水銀ランプは、複数の波長(以下、λと略す場合がある)の光、例えば、e線(λ=546nm)、g線(λ=436nm)、h線(λ=405nm)、j線(λ=313nm)、さらにはλ=250nm付近の光などを発生させる。これら複数の波長の光のうち、特定の波長の光のみを選択するために、波長選択フィルター13を用いることが好ましい。
【0031】
光源11から放出された光は、集光レンズ12および波長選択フィルター13を透過したのち、第1の偏光フィルター14を透過する。第1の偏光フィルター14は、透過光がX方向に偏光するように、すなわち、第1の偏光フィルター14を透過して得られる直線偏光の偏光方向PがX方向となるよう配置する。
【0032】
第1の偏光フィルター14を透過した光は、プリズム8で下方へ反射して、ウェハ5の方向へ向かう平行な入射光Iとなり、対物レンズ7を通してウェハ5に照射される。ウェハ5からの反射光は、対物レンズ7を通して平行な反射光Jとなり、プリズム8を透過して検出光学系15に達する。検出光学系15は、図1の下側から上側へ向けて配置順に、第2の偏光フィルター16と、リレーレンズ17と、2次元CCD等の撮像素子18とを有して構成される。プリズム8を透過した反射光は、第2の偏光フィルター16を透過し、リレーレンズ17によって光路延長・拡大(ないし縮小)された後、撮像素子18に入射する。撮像素子18に入射した反射光は撮像素子18により電気信号に光電変換され、反射光の検出信号が演算処理部20に出力される。
【0033】
第2の偏光フィルター16は、透過光がY方向に偏光するように、すなわち、第2の偏光フィルター16を透過して得られる直線偏光の偏光方向QがY方向となるよう配置する。このように入射側と受光側で偏光方向が直交している状態は、クロスニコルと呼ばれ、対物レンズ7およびプリズム8を透過した反射光Jのうち、入射光I(直線偏光)の偏光方向と垂直な偏光成分を撮像素子18(検出光学系15)で検出することになる。なお、入射側の第1の偏光フィルター14をポラライザと称し、受光側の第2の偏光フィルター16をアナライザと称することもある。
【0034】
撮像素子18は、対物レンズ7の瞳面(不図示)と共役な位置に設けられる。なお、撮像素子18としてカラーCCDを用いることが好ましく、赤(R)、緑(G)、青(B)のそれぞれの出力を使うことにより、波長選択フィルター13を不要とすることも可能である。なお、撮像素子18は画素単位若しくは複数の画素を1つの領域とした領域単位で、入射する光の強度情報つまり入射する光の強度に応じた信号を出力する。また、第1の偏光フィルター14と第2の偏光フィルター16はクロスニコルの状態に配置されているため、撮像素子18の画素単位若しくは複数の画素を1つの領域とした領域単位で、入射する光の強度は、偏光状態の変化に応じた信号といえる。
【0035】
また、入射光Iと反射光Jは同一光軸上であるが、入射光Iのうちの一部の入射光束I1に着目すれば、入射角Kでウェハ5に入射し、反射光束J1として撮像素子18に達する。換言すれば、撮像素子18上の位置19は、入射光束I1による反射光情報だけを受光していることになる。
【0036】
なお、検出光学系15に達した光の一部は、ハーフプリズム(図示せず)等を介して、ウェハ5の実像を撮像するための不図示の撮像装置に導かれる。撮像装置に撮像されたウェハ5の画像(実像)を画像表示装置(図示せず)に表示することで、オペレータがウェハ5の表面を拡大観察することが可能であり、ウェハ5のアライメント等を行うために用いられる。
【0037】
前述したように、繰り返しパターンの構造性複屈折効果による偏光状態変化を抽出してパターンの線幅を測定する場合、線幅以外の状態変化(例えば、下地(層)の膜厚変化や、下地のパターンの線幅変化)が線幅の測定結果に影響し、線幅の測定誤差、すなわち、算出した線幅値とCD−SEM等で実測した線幅値との間の乖離誤差の一因になるという問題がある。
【0038】
本実施形態では、このような乖離誤差を小さくするために、偏光状態変化を抽出する瞳内位置を複数設定し、設定した複数の瞳内位置における偏光の情報から正確に線幅値を求める方法、および、複数の瞳内位置を決定する方法を提供する。さらに、瞳内位置の組み合わせの数は膨大であるため、本実施形態では、最適な瞳内位置の組み合わせを迅速に決定する方法を提供する。
【0039】
まず図2に、撮像素子18で受光した瞳の画像(瞳像30)を瞳座標系(Px,Py)で示した。瞳座標系(Px,Py)のPxとは、x方向に光を透過する偏光子(ポラライザ)に対応した方向であり、Pyとは、y方向を透過する検光子(アナライザ)に対応した方向で、Pxとは直交する。なお、座標軸Pxと座標軸Pyとの交点Oが光軸である。
【0040】
本実施形態では、撮像素子18から出力された画素毎の信号は、所定の画素単位でまとめられて処理する。その様子を図3に示す。例えば、瞳像30をM列×N行(M,Nは自然数)に分割したとき、分割した一つの区画領域31内に含まれる画素の信号を合算したものを、その区画領域31での受光光量とする。なお、瞳像30は円形であることから、区画領域31の形状が正方形となるように列数Mおよび行数Nが決定される。このようにして、瞳画像から任意の区画領域31を選択することが可能である。なお、1つの画素を1つの区画領域としても構わない。また、光源11として白色光源を使用し、撮像素子18としてカラーCCDを使用した場合、波長RGB(Red,Green,Blue)を選択的に抽出することが可能である。
【0041】
瞳内には、Py=Pxと、Py=−Pxという2つの(区画領域31の集合体に対する)対角線があるが、線幅変化に最も感じる区画領域31は、これら2つのうちのいずれかの対角線上(もしくはこの近傍)に存在する。すなわち、線幅変化に最も敏感な区画領域31の瞳内位置は、入射光Iの偏光方向がX方向(座標軸Pxの方向)であるため、入射光Iの照射方向が当該入射光Iの偏光方向に対して45度近傍に傾いた照射条件に対応する瞳内位置となる。ここで、パターンに対する入射角、入射面の方位角、および入射面に対する偏光角度は、光軸Oに対して対称であり、このことは光学的に自明である。さらに、入射偏光特性が各対角線(Py=PxおよびPy=−Px)に対して対称であることも明らかである。したがって、すべての特性は、光軸Oと対角線に対する対称性を考えればよい。
【0042】
なお、Py=PxかPy=−Pxのいずれの対角線かは、入射光Iの偏光方向とパターンの繰り返し方向との関係によって決まる。図4(a)に示すように、ウェハ5の表面に形成された繰り返しパターン(ラインパターン)5aの繰り返し方向が入射光Iの偏光方向に対して(図4の反時計回りに)−45度傾いている場合、Py=−Pxで示される対角線上に、繰り返しパターン5aの線幅変化に最も感じる区画領域31が存在することが計算上明らかにされている。一方、図4(b)に示すように、繰り返しパターン5aの繰り返し方向が入射光Iの偏光方向に対して(図4の反時計回りに)+45度傾いている場合、Py=Pxで示される対角線上に、繰り返しパターン5aの線幅変化に最も感じる区画領域31が存在することが計算上明らかにされている。ただし、瞳座標の原点Oに近づくと、線幅変化以外の状態変化の影響を受けることがわかっており、線幅感度は低下すると言える。
【0043】
検量線(瞳面内階調値から線幅値に換算する換算式)の作成にあたっては、異なる線幅のパターンが形成された線幅基準ウェハ(ショット毎に露光量を変えるなどしてウェハ面内に異なる線幅のパターンを形成し、CD−SEM等の測定機であらかじめ線幅値を測定したウェハ)を使用する。線幅基準ウェハの線幅は、CD−SEM等により予め測定しておく。なお、CD−SEMは、1点の測定点の視野が狭いため、本実施形態の検査装置1の広い視野に相当する領域の中で複数の測定点について測定し、その平均値を求めておくことが好ましい。このようにして、CD−SEMにより測定した線幅値と、本実施形態の検査装置1の任意の瞳内位置での階調値との相関を、多数の異なる線幅のパターンに対して得ることができる。
【0044】
図5(b)は、前述の線幅基準ウェハ(図示せず)を用いて、図5(a)に示す(Py=−Pxとなる)対角線上の繰り返しパターン5aの線幅変化に最も感じる区画領域31
(以下、このような区画領域31の瞳内位置を線幅相関特定位置41と称する場合がある)の受光信号から作成した検量線を示すグラフである。なお、線幅基準ウェハにおいて異なる線幅のパターンから光を受光できるように、線幅基準ウェハを保持するステージ6を移動させ、各線幅のパターンに関する瞳像30をそれぞれ撮像素子18で受光(検出)する。図5(b)に示すグラフでは、このようにして受光した複数の瞳像30のうち、線幅相関特定位置41での受光信号S(信号強度として階調値を使用)を横軸とし、線幅基準ウェハ上の同じ場所をCD−SEMで測定したときの線幅CDを縦軸として表わしている。検量線は、k1,k2を係数とすると、次の(1)式で表わすことができ、この(1)式を用いて、線幅相関特定位置41での受光信号Sから線幅CDを換算することができる。
【0045】
CD=(k1×S)+k2 …(1)
【0046】
検量線を図5(b)では1次式としたが、構造性複屈折によるクロスニコル透過光量は、線幅変化に対して必ずしも線形に(1次式で)階調変化するとは限らない。特に、線幅変化の範囲が広い場合は直線からずれるので、その場合は、2次式等の多次式で換算することが好ましい。
【0047】
図5(b)では、検量線(図中の直線)から実際の測定値がばらついている。このばらつきは、CD−SEMとの乖離誤差(検量線により換算した線幅値からCD−SEMで測定した線幅値を引いたもの)となっている。この乖離誤差をウェハマップ(ウェハ座標系(x、y))で表わしたのが図5(c)である。図5(c)から、乖離誤差が同心円状に分布している様子がわかる。これは、線幅以外のウェハの表面状態がウェハ面内で同心円状に変化しているなかで、その変化の影響度合いが、CD−SEMと本実施形態の検査装置1で異なるからである。
【0048】
CD−SEMは、電子線を照射走査してパターンエッジから生じる2次電子を収集し、2次電子の強弱信号から所定の閾値のところを抽出してパターンの線幅としている。2次電子収集部の配置や、閾値の設定を最適化して、パターンの断面幅と相関のよい条件に設定しているものの、パターンの微妙な形状変化の影響を受ける。なお、基本的に電子線は、パターンの下層にまで達しないとされている。一方、本実施形態のように偏光状態変化量をパターンの線幅に置き換える方法の場合、構造性複屈折による偏光の位相変化は、パターンの線幅だけではなく、パターンの形状や高さ等の影響を受けるし、可視光はパターンの下層まで達する場合がある。また、偏光の位相変化や下層の影響は波長によっても異なるし、さらに、入射角、入射面とパターンとの方位角、偏光方向によっても異なる。
【0049】
このように、本実施形態はCD−SEMとは異なる検出原理に基づく方式であるので、線幅以外の状態の影響を受けることはやむを得ない。しかし、CD−SEMで半導体製造のプロセス管理をしてきた半導体製造ラインでは、CD−SEM管理に合わせた線幅計測性能が求められるので、CD−SEMとの乖離誤差を小さくする必要がある。そこで、本実施形態では、既述した、入射角、入射面とパターンとの方位角、偏光方向、波長等の、パターンの線幅と線幅以外の影響を受ける条件を適切に組み合わせることによって、線幅の測定精度を向上させる。
【0050】
図6(a)に、線幅変化に感度のある第1の区画領域および第2の区画領域の瞳内位置(以下、第1の瞳内位置51および第2の瞳内位置52と称する)を示す。図6(b)は、瞳内位置における線幅変化に対する階調変化量を示した3次元散布図であり、水平方向の座標軸X,Yがそれぞれ瞳像30の座標軸Px,Pyに対応し、縦軸が線幅変化に対する階調変化量を示している。また、図6(c)は、瞳内位置における下地の膜厚変化に対する階調変化量を示した3次元散布図であり、水平方向の座標軸X,Yがそれぞれ瞳像3
0の座標軸Px,Pyに対応し、縦軸が下地の膜厚変化に対する階調変化量を示している。図6(b)および図6(c)の縦軸は、0に近いほど感度が低く、+方向または−方向に0から離れるほど感度が高いと言える。このように図6(b)を見ると、第1の瞳内位置51と第2の瞳内位置52では線幅変化に対する感度(階調変化の仕方)が違うことが分かる。また同様に、図6(c)を見ると、第1の瞳内位置51と第2の瞳内位置52では下地の膜厚変化に対する感度(階調変化の仕方)がほぼ同じであることが分かる。
【0051】
このような2つの瞳内位置51,52を使うことにより、繰り返しパターン5aの下地の影響を補正(キャンセル)して、線幅情報のみを抽出することが可能となる。また、このような組合せは、下地の影響が近いという条件から瞳内位置が近いと言える。
【0052】
瞳内位置での階調値から線幅を換算する様子を図7(a)〜(c)に示す。図7(a)は線幅に対する第1の瞳内位置51での階調値を示すグラフであり、図7(b)は線幅に対する第2の瞳内位置52での階調値を示すグラフである。どちらの場合も下地の影響を受けて、線幅との相関は低い。ところが、第1の瞳内位置51での階調値と第2の瞳内位置52での階調値にそれぞれ係数を掛けて足し合わせることにより、下地の影響を低減させ、線幅との相関を高めることができる。例えば、第1の瞳内位置51での階調値(受光信号量)をS1とし、第2の瞳内位置52での階調値(受光信号量)をS2とし、係数をa,bとしたとき、線幅CDの換算式として次の(2)式を得ることができる。
【0053】
CD=(S1×a)+(S2×b) …(2)
【0054】
図7(c)は実際の線幅と換算値との関係を示しており、横軸がCD−SEMで測定した実際の線幅(単位:nm)であり、縦軸が(2)式から得られる換算値(乖離誤差)である。図7(c)より、下地の影響が低減し、線幅変化に対して感度が出ていることが分かる。
【0055】
しかしながら、(2)式を用いても、線幅との乖離誤差が残っている。そこで、さらなる補正について、図8(a)〜(c)を参照しながら説明する。図8(a)の瞳像30では、図6(a)の瞳像30に対し、新たに補正に使用する第3の区画領域の瞳内位置(以下、第3の瞳内位置53と称する)が追加で示されている。第3の瞳内位置53は、階調値に係数をかけて(2)式の換算値に足し合わせることで線幅との乖離誤差が小さくなるような瞳内位置である。例えば、第3の瞳内位置53での階調値(受光信号量)をS3とし、係数をc,dとしたとき、線幅CDの換算式として次の(3)式を得ることができる。
【0056】
CD=(S1×a)+(S2×b)+(S3×c)+d …(3)
【0057】
図8(b)は線幅に対する第3の瞳内位置53での階調値を示すグラフである。また、図8(c)は実際の線幅と換算値との関係を示しており、横軸がCD−SEMで測定した実際の線幅(単位:nm)であり、縦軸が(3)式から得られる換算値である。図8(c)より、(2)式と比較して(3)式の方が乖離誤差は小さく、線幅との相関も高いことが分かる。
【0058】
次に、第1の瞳内位置51、第2の瞳内位置52、および第3の瞳内位置53を選ぶ方法および、各係数a,b,c,dを求める方法について、図9に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、各瞳内位置および係数の算出には線幅基準ウェハを使用し、照明光として白色光を用いるものとする。まず、カラーCCD(撮像素子18)で検出した瞳像30で用いる色(例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の色成分)および瞳内位置の組合せを初期化する(ステップS101)。3つの瞳内位置を選ぶための計算は、瞳
像30の上端から順番に行う。そのため、初期設定として、第1の瞳内位置51、第2の瞳内位置52、および第3の瞳内位置53の候補を、瞳像30の座標軸Pyにおける最外周の区画領域31の瞳内位置に設定する。但し、第1の瞳内位置51および第2の瞳内位置52の候補については、同色の瞳内位置に設定する。
【0059】
初期化を行うと、線幅の異なるパターンの瞳像30を用いて、実際の線幅との乖離が最小となる(3)式の係数a,b,c,dを求める(ステップS102)。このとき、各係数a,b,c,dは、最小二乗法を使うことで算出することができる。なお、前述の説明では、補正の原理について分かりやすいように、(2)式と(3)式の2つのステップに分けて説明を行ったが、最終的に(3)式で計算した線幅換算値と実際の線幅との乖離が最小になれば良いので、全ての係数a,b,c,dについて1つのステップで一緒に計算すれば良い。
【0060】
各係数a,b,c,dを求めると、全ての瞳内位置および色の組合せについて計算が終了したか否か判定する(ステップS103)。全ての組合せについて計算が終了していない場合(判定がNOの場合)、ステップS104へ進み、まだ計算をしていない瞳内位置および色の組合せに変更した後、ステップS102に戻って計算を繰り返す。但し、ステップS104で瞳内位置および色の組合せを変える際、第1の瞳内位置51および第2の瞳内位置52の候補については、同色で、かつ、互いに近くの瞳内位置(具体的には、瞳直径の1/5程度内)に設定する。また、第3の瞳内位置53の候補については、瞳像30に区画設定された全ての区画領域31のうちいずれかの瞳内位置に設定する。
【0061】
一方、ステップS103で、全ての組合せについて計算が終了したと判断した場合(判定がYESの場合)、それまで計算した瞳内位置および色の組合せの中で、実際の線幅との乖離誤差が一番小さい条件(すなわち、3つの瞳内位置、各瞳内位置の色、および各係数a,b,c,d)を線幅換算の条件として決定する。これにより、線幅変化に対する感度に差があり、下地の影響度合いが近い2つの瞳内位置を含めた3つの瞳内位置と、(3)式のパラメータがそれぞれ決定し、(3)式により乖離誤差の小さい線幅換算を行うことができる。
【0062】
ここで、本実施形態による検査方法の一例について、図10に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、以下に述べる各ステップ(工程)では、検査装置1の不図示の記憶装置に記憶(インストール)された所定のコンピュータプログラムを実行することで、演算処理部20等の作動が制御されるようになっている。まず、演算処理部20の設定算出部(不図示)は、上述の方法により、瞳像30で用いる3つの瞳内位置とその色、および各係数a,b,c,dをそれぞれ求め、線幅換算の条件を設定する(ステップS201)。なお、求めた3つの瞳内位置とその色、および各係数a,b,c,dに関するデータは、演算処理部20の内部メモリ(不図示)に記憶される。
【0063】
次に、検査を行うウェハ5をステージ6に載置した後、照明光学系10を用いて検査対象となるウェハ5の表面に直線偏光を照射する(ステップS202)。このとき、図1に示すように、光源11から放出された光(例えば、白色光)は、集光レンズ12、波長選択フィルター13、および第1の偏光フィルター14を透過したのち、プリズム8で下方へ反射して平行な入射光I(直線偏光)となり、対物レンズ7を通してウェハ5に照射される。
【0064】
ウェハ5からの反射光は、対物レンズ7で受光される(ステップS203)。このとき、ウェハ5からの反射光は、対物レンズ7を通して平行な反射光Jとなり、プリズム8、第2の偏光フィルター16、およびリレーレンズ17を透過して、撮像素子18に入射する。そこで、対物レンズ7の瞳面(不図示)と共役な位置に設けられた撮像素子18を用
いて、入射光I(直線偏光)の偏光方向と垂直な偏光成分を検出する(ステップS204)。このとき、撮像素子18に入射した反射光は撮像素子18により電気信号に光電変換され、第2の偏光フィルター16を透過した反射光の検出信号(受光信号)が演算処理部20に出力される。
【0065】
そして、演算処理部20は、撮像素子18から入力された検出信号(受光信号)に基づいて、繰り返しパターン5aの線幅を求める(ステップS205)。このとき、演算処理部20の線幅演算部(不図示)は、ステップS201で求めた(3)式を用いて、撮像素子18により検出された瞳像30における(ステップS201で求めた色成分での)第1の瞳内位置51、第2の瞳内位置52、および第3の瞳内位置53での階調値S1〜S3から、検査対象となるウェハ5の繰り返しパターン5aの線幅を求める。なお、求めた線幅が所定の閾値から外れた場合、例えば、演算処理部20の検査部(不図示)がドーズ量異常と判定してその旨を画像表示装置(不図示)等に表示させることができる。
【0066】
以上のようにして、本実施形態によれば、瞳像30における第1の瞳内位置51および第2の瞳内位置52での階調値S1,S2に基づいて、繰り返しパターン5aの線幅を求めるため、繰り返しパターン5aの下地の影響を補正(キャンセル)して、線幅情報のみを抽出することで、下地の影響を低減させることができ、線幅(パターン形状)の測定精度を向上させることが可能になる。
【0067】
なお、CD−SEMは、ウェハ5に電子線を照射するため、電子線によりフォトレジストの縮小化(シュリンク)等のダメージを受ける。測定精度を上げようと電子線の加速電圧を上げるほど、そのダメージは大きくなる。本実施形態では、電子線を用いず、可視光を使っているので、ウェハ5へのダメージは全くない。
【0068】
また、瞳像30において、同色で、かつ、互いに近くの瞳内位置の中から、第1の瞳内位置51および第2の瞳内位置52をそれぞれ求めるため、下地の膜厚変化による影響(瞳像30での光の変化の仕方)が互いに同程度の瞳内位置の組合せに限定することで、候補となる瞳内位置の組合せの数を低減させることができ、第1の瞳内位置51および第2の瞳内位置52を迅速に求めることができる。なお、下地の膜厚変化による影響は、ウェハ5に対する光の入射角(すなわち瞳内位置)および波長、すなわちウェハ5で反射する光の光路長の違いによる干渉条件で決まるため、互いに近くの瞳内位置で、かつ、同じ色(波長)の光である場合、下地の膜厚変化による影響が同程度になる。
【0069】
また、瞳像30における第3の瞳内位置53での階調値S3を利用して、第1の瞳内位置51および第2の瞳内位置52での階調値S1,S2から求まる線幅換算値を補正して繰り返しパターン5aの線幅を求めるため、線幅(パターン形状)の測定精度をより向上させることが可能になる。
【0070】
また、瞳像30に区画設定された全ての瞳内位置の中から、補正に適した第3の瞳内位置53を選択的に求めるため、補正に最適な第3の瞳内位置53を確実に求めることができ、線幅(パターン形状)の測定精度をより向上させることが可能になる。
【0071】
なお、上述の実施形態において、各瞳内位置を決定する際、線幅基準ウェハだけではなく、量産ウェハを含めるようにしてもよい。このようにすれば、下地の状態変化のバリエーションが増えるので、下地の影響を補正する精度を向上させることができ、線幅(パターン形状)の測定精度をより向上させることが可能になる。
【0072】
また、上述の実施形態において、各瞳内位置を決定する際、線幅基準ウェハを用いているが、これに限られるものではなく、シミュレーションを行って、各瞳内位置を決定する
ようにしてもよい。
【0073】
また、上述の実施形態において、瞳像30において、同色で、かつ、互いに近くの瞳内位置の中から、第1の瞳内位置51および第2の瞳内位置52をそれぞれ求めているが、これに限られるものではなく、略同色の近似した色同士の組合せであってもよい。
【0074】
また、上述の実施形態において、各瞳内位置を決定する際、照明光として白色光を用いているが、これに限られるものではなく、例えば、波長選択フィルター13を用いて、赤(R)、緑(G)、青(B)に対応した波長を有する照明光を切り替えて照射し、それぞれの色に対応した瞳像を検出するようにしてもよい。
【0075】
また、上述の実施形態において、ウェハ5の表面に形成された繰り返しパターン5aの線幅を測定しているが、これに限られるものではなく、例えば、繰り返しパターン5aのサイドウォールアングル等、繰り返しパターン5aの延伸方向から見た断面形状のプロファイルを測定する場合においても、本実施形態を適用可能である。
【0076】
また、上述の実施形態において、ウェハ5の表面に形成された繰り返しパターン5aの線幅を測定しているが、これに限られるものではなく、例えば、液晶ガラス基板に対する測定を行う場合においても、本実施形態を適用可能である。
【0077】
また、上述の実施形態において、演算処理部20で求めた線幅換算値のデータを、演算処理部20から露光装置101に出力して、露光装置101の設定にフィードバックすることができる。そこで、前述の検査装置1を備えた露光システムについて、図11および図12を参照しながら説明する。この露光システム100は、レジストが塗布されたウェハ5の表面に所定のマスクパターン(繰り返しパターン)を投影露光する露光装置101と、露光装置101による露光工程および現像装置(図示せず)による現像工程等を経て、表面に繰り返しパターン5aが形成されたウェハ5の検査を行う検査装置1とを備えて構成される。
【0078】
露光装置101は、図11に示すように、照明系110と、レチクルステージ120と、投影ユニット130と、局所液浸装置140と、ステージ装置150と、主制御装置200(図12を参照)とを備えて構成される。なお、以下においては、図11に示した矢印X,Y,Zの方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向、Z軸方向として説明する。
【0079】
照明系110は、詳細な図示を省略するが、光源と、オプティカルインテグレータ等を備えた照度均一化光学系と、レチクルブラインド等を備えた照明光学系とを有し、レチクルブラインドで規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域を照明光(露光光)により略均一な照度で照明するように構成されている。照明光としては、例えば、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられる。
【0080】
レチクルステージ120上には、所定のパターン(例えば、ラインパターン)がそのパターン面(図11における下面)に形成されたレチクル(フォトマスク)Rが、例えば真空吸着により固定保持されている。レチクルステージ120は、例えばリニアモータ等を備えるレチクルステージ駆動装置121(図12を参照)によってXY平面内で移動可能であるとともに、走査方向(ここではY軸方向とする)に所定の走査速度で移動可能に構成されている。
【0081】
レチクルステージ120のXY平面内の位置情報(Z軸回りの回転方向の回転情報を含む)は、レチクルステージ120に設けられたY軸に直交する反射面を有する第1反射鏡123およびX軸に直交する反射面を有する第2反射鏡(図示せず)を介して、レチクル
干渉計125によって検出される。レチクル干渉計125により検出された当該位置情報は主制御装置200に送られ、主制御装置200は、その位置情報に基づいてレチクルステージ駆動装置121を介してレチクルステージ120の位置(および移動速度)を制御する。
【0082】
投影ユニット130は、レチクルステージ120の下方に配置され、鏡筒131と、鏡筒131内に保持された投影光学系135とを有して構成される。投影光学系135は、照明光の光軸AXに沿って配列された複数の光学素子(レンズエレメント)を有し、両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍または1/8倍など)を有するように構成されている。このため、照明系110から射出された照明光によってレチクルR上の照明領域が照明されると、投影光学系135の物体面とパターン面が略一致して配置されるレチクルRを透過した照明光により、投影光学系135を介してその照明領域内のレチクルRのパターンの縮小像が、投影光学系135の像面側に配置されたウェハ5上の露光領域(レチクルR上の照明領域に共役な領域)に形成される。そして、レチクルステージ120とウェハ5を保持するステージ装置150との同期駆動によって、照明領域に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に移動させるとともに、露光領域に対してウェハ5を走査方向(Y軸方向)に移動させることで、ウェハ5上の1つのショット領域の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターン(マスクパターン)が転写される。
【0083】
露光装置101には、液浸方式の露光を行うために局所液浸装置140が設けられている。局所液浸装置140は、図11および図12に示すように、液体供給装置141と、液体回収装置142と、液体供給管143Aと、液体回収管143Bと、ノズルユニット145とを有して構成される。ノズルユニット145は、投影光学系135を構成する最も像面側(ウェハ側)の光学素子、ここでは先端レンズ136を保持する鏡筒131の下端部周囲を取り囲むように、投影ユニット130を保持する不図示のフレーム部材(露光装置101を構成するフレーム部材)に支持されている。また、ノズルユニット145は、図11に示すように、その下端面が先端レンズ136の下端面と略同一面になるように設定されている。
【0084】
液体供給装置141は、詳細な図示を省略するが、液体を貯蔵するタンクと、加圧ポンプと、温度制御装置と、液体の流量を制御するためのバルブとを有して構成され、液体供給管143Aを介してノズルユニット145に接続されている。液体回収装置142は、詳細な図示を省略するが、回収した液体を貯蔵するタンクと、吸引ポンプと、液体の流量を制御するためのバルブとを有して構成され、液体回収管143Bを介してノズルユニット145に接続されている。
【0085】
主制御装置200は、図12に示すように、液体供給装置141の作動を制御して液体供給管143Aを介して先端レンズ136とウェハ5との間に液体(例えば、純水)を供給するとともに、液体回収装置142の作動を制御して液体回収管143Bを介して先端レンズ136とウェハ5との間から液体を回収する。このとき、主制御装置200は、供給される液体の量と回収される液体の量とが常に等しくなるように、液体供給装置141および液体回収装置142の作動を制御する。したがって、先端レンズ136とウェハ5との間には、一定量の液体が常に入れ替わって保持され、これにより液浸領域(液浸空間)が形成される。このように、露光装置101では、照明光を、液浸領域を形成する液体を介してウェハ5に照射することによって、ウェハ5に対する露光が行われる。
【0086】
ステージ装置150は、投影ユニット130の下方に配置されたウェハステージ151と、ウェハステージ151を駆動するステージ駆動装置155(図12を参照)とを有して構成される。ウェハステージ151は、不図示のエアスライダにより数μm程度のクリ
アランスを有してベース部材105の上方に浮上支持され、ウェハステージ151の上面においてウェハ5を真空吸着によって保持するように構成されている。そして、ウェハステージ151は、ステージ駆動装置155を構成するモータにより、ベース部材105の上面に沿ってXY平面内で移動可能になっている。
【0087】
ウェハステージ151のXY平面内の位置情報はエンコーダ装置156(図12を参照)によって検出される。エンコーダ装置156により検出された当該位置情報は主制御装置200に送られ、主制御装置200は、その位置情報に基づいてステージ駆動装置155を介してウェハステージ151の位置(および移動速度)を制御する。
【0088】
以上のように構成される露光装置101において、照明系110から射出された照明光によってレチクルR上の照明領域が照明されると、投影光学系135の物体面とパターン面が略一致して配置されるレチクルRを透過した照明光により、投影光学系135を介してその照明領域内のレチクルRのパターンの縮小像が、ウェハステージ151上に支持されて投影光学系135の像面側に配置されたウェハ5上の露光領域(レチクルR上の照明領域に共役な領域)に形成される。そして、レチクルステージ120とウェハ5を支持するウェハステージ151との同期駆動によって、照明領域に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に移動させるとともに、露光領域に対してウェハ5を走査方向(Y軸方向)に移動させることで、ウェハ5上の1つのショット領域の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。
【0089】
このようにして露光装置101による露光工程が実施されると、現像装置(図示せず)による現像工程等を経て、前述の実施形態に係る検査装置1により、表面に繰り返しパターン5aが形成されたウェハ5の表面検査を行う。またこのとき、検査装置1の演算処理部20は、前述のようにして、繰り返しパターン5aの線幅を求め、接続ケーブル(図示せず)等を介して、求めた線幅のデータを露光装置101に出力する。そして、露光装置101の主制御装置200に設けられた補正処理部210は、検査装置1から入力された求めた線幅のデータに基づいて、露光装置101の各種設定パラメータを補正する。
【0090】
これにより、本実施形態の露光システム100によれば、前述の実施形態に係る検査装置1から入力された線幅のデータに応じて、露光装置101の設定を補正するため、より精度の高い線幅のデータに基づいた補正が可能となり、露光装置101の設定をより適切に行うことができる。
【符号の説明】
【0091】
1 検査装置
5 ウェハ(基板) 7 対物レンズ
18 撮像素子(検出部) 20 演算処理部
30 瞳像
51 第1の瞳内位置(第1領域) 52 第2の瞳内位置(第2領域)
53 第3の瞳内位置(第3領域)
100 露光システム 101 露光装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程においてウェハの繰り返しパターンにおける線幅の変動を検出可能な検査装置、検査方法、および検査装置用プログラムに関し、さらには、このような検査装置を備えた露光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置は、処理の高速化や低消費電力化、記憶容量増加を図るために、パターンが微細化する傾向にある。また同時に、半導体装置の製造工程で発生する欠陥の検出性能や、線幅(以下、CD(クリティカル・ディメンジョンの略)とも称する)の管理要求も厳しくなってきている。露光工程で発生したウェハの欠陥やCD値変動が許容値を超えるものであった場合、該当するウェハまたはロットをリワーク工程に回し、且つ、問題の発生箇所を修正することで、良品の半導体ウェハを生産できるようにする。
【0003】
CD値管理には、CD−SEM(走査型電子顕微鏡)が広く使われ、CD値を定量的に計測し出力することができる。しかし、CD−SEMは、ウェハに電子線を照射するため、電子線によりフォトレジストが縮小化(シュリンク)する等のダメージを受ける。測定精度を上げようと電子線の加速電圧を上げるほど、そのダメージを大きくなる。また、計測時間は1視野あたり数秒を要するため、1ロット内で数枚の抜き取り測定となる。しかも、抜き取ったウェハの全面ではなく、抜き取った各ウェハの数ショット分について、露光ショット内の数点を計測しているにすぎない。
【0004】
また、欠陥検査装置として、半導体ウェハに照明光を照射してウェハ上の繰り返しパターンからの回折光を受光する装置がある。この装置では、ウェハに照明光を照射してウェハ上の繰り返しパターンからの回折光を受光し、欠陥からの回折光はCD値が異なるため回折光量が変化することを利用して、欠陥検出を行う。マクロ検査装置と呼ばれるこのような欠陥検査装置は、ウェハ全面一括撮像による高いスループットを有するので、生産ラインで大いに活躍している。ただし、繰り返しパターンからの回折光は、繰り返し周期が小さくなるほど回折角が大きくなるので、照明波長や光学系配置等といった装置構成上の制限を受け、140nm程度の繰り返しピッチより小さい繰り返しパターンからの回折光を受光するのは事実上不可能である。
【0005】
そのため、新たな手法として、繰り返しパターンの構造性複屈折効果を利用した欠陥検査装置が実用化されている(例えば、特許文献1を参照)。これらのマクロ検査装置では、装置の性質上、微小領域の高分解の検査やCD値変動量の定量的出力には限界がある。そこで、繰り返しパターンの構造性複屈折効果を利用してCD値を定量的に測定可能な検査装置の開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−343102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、繰り返しパターンの構造性複屈折効果による偏光状態変化を抽出してパターンの線幅を測定する場合、線幅以外の状態変化(例えば、下地(層)の膜厚変化や、下地のパターンの線幅変化)が線幅の測定結果に影響し、線幅の測定誤差の一因になるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、パターン形状の測定精度を向上させた検査装置、検査方法、検査装置用プログラムおよび露光システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的達成のため、本発明に係る検査装置は、下地層の上に所定のパターンを有する基板の前記パターンを検査する検査装置であって、前記パターンに対する瞳面を形成する対物レンズと、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における領域毎の光の強度情報を検出する検出部と、前記パターンの形状変化に対しては前記強度情報の変化が異なり、前記下地層の変化に対しては前記強度情報の変化が同程度である、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面内の第1領域と第2領域の位置情報をそれぞれ記憶する記憶部と、前記検出部で検出される、前記第1領域の強度情報と、前記第2領域の強度情報との差異に基づいて前記パターンの形状を求める演算部とを備えている。
【0010】
なお、上述の検査装置において、予め形状変化が既知な複数のパターンから前記検出部によって検出される強度情報に基づいて、前記第1領域と前記第2領域の位置情報を算出する算出部をさらに備えることが好ましい。
【0011】
また、上述の検査装置において、前記演算部は、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における前記第1領域および前記第2領域とは異なる第3領域での強度情報を利用して、前記第1領域および前記第2領域での前記強度情報から求まる前記形状を補正して前記パターンの形状を求めることが好ましい。
【0012】
また、上述の検査装置において、前記演算部が求める前記パターンの形状は、前記パターンの線幅、もしくは、前記パターンの延伸方向から見た断面形状であることが好ましい。
【0013】
また、上述の検査装置において、前記演算部で求められた前記パターンの形状に基づいて、前記パターンにおける異常の有無を検査する検査部を備えていることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る検査方法は、下地層の上に所定のパターンを有する基板の前記パターンを検査する検査方法であって、前記パターンに対する瞳面を形成する瞳面形成工程と、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における領域毎の光の強度情報を検出する検出工程と、前記パターンの形状変化に対しては前記強度情報の変化が異なり、前記下地層の変化に対しては前記強度情報の変化が同程度である、前記瞳面若しくは該瞳面と共役な面内の第1領域と第2領域をそれぞれ設定する設定工程と、前記検出工程で検出される、前記第1領域の強度情報と、前記第2領域の強度情報との差異に基づいて前記パターンの形状を求める演算工程とを有している。
【0015】
なお、上述の検査方法では、予め形状変化が既知な複数のパターンの前記領域毎の光の強度情報に基づいて、前記第1領域と前記第2領域の位置情報を算出する算出工程をさらに有することが好ましい。
【0016】
また、上述の検査方法では、前記演算工程において、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における前記第1領域および前記第2領域とは異なる第3領域での強度情報を利用して、前記第1領域および前記第2領域での前記強度情報から求まる前記形状を補正して前記パターンの形状を求めることが好ましい。
【0017】
また、上述の検査方法では、前記演算工程で求める前記パターンの形状は、前記パター
ンの線幅、もしくは、前記パターンの延伸方向から見た断面形状であることが好ましい。
【0018】
また、上述の検査方法では、前記演算工程で求めた前記パターンの形状に基づいて、前記パターンにおける異常の有無を検査する検査工程を有することが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る検査装置用プログラムは、下地層の上に所定のパターンを有する基板の前記パターンを検査する検査装置の作動を制御するプログラムであって、対物レンズの瞳面もしくは該瞳面と共役な面における領域毎の光の強度情報を検出する検出ステップと、前記パターンの形状変化に対しては前記強度情報の変化が異なり、前記下地層の変化に対しては前記強度情報の変化が同程度である、前記瞳面若しくは該瞳面と共役な面内の第1領域と第2領域をそれぞれ設定する設定ステップと、前記検出ステップで検出される、前記第1領域の前記強度情報と、前記第2領域の前記強度情報との差異に基づいて前記パターンの形状を求める演算ステップとを有している。
【0020】
なお、上述の検査装置用プログラムでは、予め形状変化が既知な複数のパターンの前記領域毎の光の強度情報に基づいて、前記第1領域と前記第2領域の位置情報を算出する算出ステップをさらに有することが好ましい。
【0021】
また、上述の検査装置用プログラムでは、前記演算ステップにおいて、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における前記第1領域および前記第2領域とは異なる第3領域での強度情報を利用して、前記第1領域および前記第2領域での前記強度情報から求まる前記形状を補正して前記パターンの形状を求めることが好ましい。
【0022】
また、上述の検査装置用プログラムでは、前記演算ステップで求める前記パターンの形状は、前記パターンの線幅、もしくは、前記パターンの延伸方向から見た断面形状であることが好ましい。
【0023】
また、上述の検査装置用プログラムでは、前記演算ステップで求めた前記パターンの形状に基づいて、前記パターンにおける異常の有無を検査する検査ステップを有することが好ましい。
【0024】
また、本発明に係る露光システムは、基板の表面に所定のパターンを露光する露光装置と、前記露光装置により露光されて表面に前記パターンが形成された基板の検査を行う検査装置とを備え、前記検査装置は、本発明に係る検査装置であって、前記演算部で求められた前記パターンの形状の情報を前記露光装置へ出力し、前記露光装置は、前記検査装置から入力された前記パターンの形状の情報に応じて、前記露光装置の設定を補正するようになっている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、パターン形状の測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】検査装置の概略構成図である。
【図2】撮像素子で検出した瞳の画像を示す図である。
【図3】瞳の画像を領域分割した状態を示す図である。
【図4】(a)(b)ともに繰り返しパターンの方向と入射光の偏光方向との関係を示す平面図である。
【図5】(a)は瞳像における線幅相関特定位置の一例を示す模式図であり、(b)は検量線の一例を示すグラフであり、(c)は乖離誤差のウェハマップである。
【図6】(a)は瞳像における第1の瞳内位置および第2の瞳内位置の一例を示す模式図であり、(b)は瞳内位置における線幅変化に対する階調変化量を示した3次元散布図であり、(c)は瞳内位置における下地の膜厚変化に対する階調変化量を示した3次元散布図である。
【図7】(a)は線幅に対する第1の瞳内位置での階調値を示すグラフであり、(b)は線幅に対する第2の瞳内位置での階調値を示すグラフであり、(c)は線幅と(2)式による換算値との関係を示すグラフである。
【図8】(a)は瞳像における第3の瞳内位置の一例を示す模式図であり、(b)は線幅に対する第3の瞳内位置での階調値のグラフであり、(c)は線幅と(3)式による換算値との関係を示すである。
【図9】3つの瞳内位置および(3)式の係数を求める方法を示すフローチャートである。
【図10】検査方法を示すフローチャートである。
【図11】露光システムの概要構成図である。
【図12】露光装置の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態の検査装置を図1に示しており、この検査装置1は、ステージ6と、対物レンズ7と、プリズム8と、照明光学系10と、検出光学系15と、演算処理部20とを主体に構成される。半導体ウェハ5(以下適宜、単にウェハ5と称する)は、露光装置(図示せず)によるフォトレジストへの露光・現像後、不図示の搬送系により、不図示のウェハカセットまたは現像装置から運ばれ、パターン(繰り返しパターン)の形成面を上にした状態でステージ6に載置される。
【0028】
ステージ6は、真空吸着等によりステージ6上に載置されたウェハ5を確実に保持する。また、ステージ6は、ウェハ5の表面に沿ってXY方向に移動可能に構成されるとともに、Z軸を中心軸として回転可能に構成されている。なお、図1の紙面と垂直な方向をX軸とし、図1における左右方向をY軸とし、図1における上下方向をZ軸とする。また、XY平面内でZ軸を中心とした回転角を方位角と称する。
【0029】
照明光学系10は、図1の右側から左側へ向けて配置順に、光源11と、集光レンズ12と、波長選択フィルター13と、第1の偏光フィルター14とを有して構成される。光源11には、ハロゲンランプや青色励起型LED等の波長帯域に広い光源(白色光源)が用いられる。また、ハロゲンランプや青色励起型LEDからの光は広い波長域にわたっているため、波長選択フィルター13は、例えば、青色、緑色、赤色を透過させるようなフィルターであってもよい。したがって、波長選択フィルター13は、透過波長帯域の異なる複数のフィルターとして、光路中に挿脱することで選択的に波長や波長帯域を変更可能な構成とすることが好ましい。
【0030】
なお、光源11には、水銀ランプが用いられてもよい。水銀ランプは、複数の波長(以下、λと略す場合がある)の光、例えば、e線(λ=546nm)、g線(λ=436nm)、h線(λ=405nm)、j線(λ=313nm)、さらにはλ=250nm付近の光などを発生させる。これら複数の波長の光のうち、特定の波長の光のみを選択するために、波長選択フィルター13を用いることが好ましい。
【0031】
光源11から放出された光は、集光レンズ12および波長選択フィルター13を透過したのち、第1の偏光フィルター14を透過する。第1の偏光フィルター14は、透過光がX方向に偏光するように、すなわち、第1の偏光フィルター14を透過して得られる直線偏光の偏光方向PがX方向となるよう配置する。
【0032】
第1の偏光フィルター14を透過した光は、プリズム8で下方へ反射して、ウェハ5の方向へ向かう平行な入射光Iとなり、対物レンズ7を通してウェハ5に照射される。ウェハ5からの反射光は、対物レンズ7を通して平行な反射光Jとなり、プリズム8を透過して検出光学系15に達する。検出光学系15は、図1の下側から上側へ向けて配置順に、第2の偏光フィルター16と、リレーレンズ17と、2次元CCD等の撮像素子18とを有して構成される。プリズム8を透過した反射光は、第2の偏光フィルター16を透過し、リレーレンズ17によって光路延長・拡大(ないし縮小)された後、撮像素子18に入射する。撮像素子18に入射した反射光は撮像素子18により電気信号に光電変換され、反射光の検出信号が演算処理部20に出力される。
【0033】
第2の偏光フィルター16は、透過光がY方向に偏光するように、すなわち、第2の偏光フィルター16を透過して得られる直線偏光の偏光方向QがY方向となるよう配置する。このように入射側と受光側で偏光方向が直交している状態は、クロスニコルと呼ばれ、対物レンズ7およびプリズム8を透過した反射光Jのうち、入射光I(直線偏光)の偏光方向と垂直な偏光成分を撮像素子18(検出光学系15)で検出することになる。なお、入射側の第1の偏光フィルター14をポラライザと称し、受光側の第2の偏光フィルター16をアナライザと称することもある。
【0034】
撮像素子18は、対物レンズ7の瞳面(不図示)と共役な位置に設けられる。なお、撮像素子18としてカラーCCDを用いることが好ましく、赤(R)、緑(G)、青(B)のそれぞれの出力を使うことにより、波長選択フィルター13を不要とすることも可能である。なお、撮像素子18は画素単位若しくは複数の画素を1つの領域とした領域単位で、入射する光の強度情報つまり入射する光の強度に応じた信号を出力する。また、第1の偏光フィルター14と第2の偏光フィルター16はクロスニコルの状態に配置されているため、撮像素子18の画素単位若しくは複数の画素を1つの領域とした領域単位で、入射する光の強度は、偏光状態の変化に応じた信号といえる。
【0035】
また、入射光Iと反射光Jは同一光軸上であるが、入射光Iのうちの一部の入射光束I1に着目すれば、入射角Kでウェハ5に入射し、反射光束J1として撮像素子18に達する。換言すれば、撮像素子18上の位置19は、入射光束I1による反射光情報だけを受光していることになる。
【0036】
なお、検出光学系15に達した光の一部は、ハーフプリズム(図示せず)等を介して、ウェハ5の実像を撮像するための不図示の撮像装置に導かれる。撮像装置に撮像されたウェハ5の画像(実像)を画像表示装置(図示せず)に表示することで、オペレータがウェハ5の表面を拡大観察することが可能であり、ウェハ5のアライメント等を行うために用いられる。
【0037】
前述したように、繰り返しパターンの構造性複屈折効果による偏光状態変化を抽出してパターンの線幅を測定する場合、線幅以外の状態変化(例えば、下地(層)の膜厚変化や、下地のパターンの線幅変化)が線幅の測定結果に影響し、線幅の測定誤差、すなわち、算出した線幅値とCD−SEM等で実測した線幅値との間の乖離誤差の一因になるという問題がある。
【0038】
本実施形態では、このような乖離誤差を小さくするために、偏光状態変化を抽出する瞳内位置を複数設定し、設定した複数の瞳内位置における偏光の情報から正確に線幅値を求める方法、および、複数の瞳内位置を決定する方法を提供する。さらに、瞳内位置の組み合わせの数は膨大であるため、本実施形態では、最適な瞳内位置の組み合わせを迅速に決定する方法を提供する。
【0039】
まず図2に、撮像素子18で受光した瞳の画像(瞳像30)を瞳座標系(Px,Py)で示した。瞳座標系(Px,Py)のPxとは、x方向に光を透過する偏光子(ポラライザ)に対応した方向であり、Pyとは、y方向を透過する検光子(アナライザ)に対応した方向で、Pxとは直交する。なお、座標軸Pxと座標軸Pyとの交点Oが光軸である。
【0040】
本実施形態では、撮像素子18から出力された画素毎の信号は、所定の画素単位でまとめられて処理する。その様子を図3に示す。例えば、瞳像30をM列×N行(M,Nは自然数)に分割したとき、分割した一つの区画領域31内に含まれる画素の信号を合算したものを、その区画領域31での受光光量とする。なお、瞳像30は円形であることから、区画領域31の形状が正方形となるように列数Mおよび行数Nが決定される。このようにして、瞳画像から任意の区画領域31を選択することが可能である。なお、1つの画素を1つの区画領域としても構わない。また、光源11として白色光源を使用し、撮像素子18としてカラーCCDを使用した場合、波長RGB(Red,Green,Blue)を選択的に抽出することが可能である。
【0041】
瞳内には、Py=Pxと、Py=−Pxという2つの(区画領域31の集合体に対する)対角線があるが、線幅変化に最も感じる区画領域31は、これら2つのうちのいずれかの対角線上(もしくはこの近傍)に存在する。すなわち、線幅変化に最も敏感な区画領域31の瞳内位置は、入射光Iの偏光方向がX方向(座標軸Pxの方向)であるため、入射光Iの照射方向が当該入射光Iの偏光方向に対して45度近傍に傾いた照射条件に対応する瞳内位置となる。ここで、パターンに対する入射角、入射面の方位角、および入射面に対する偏光角度は、光軸Oに対して対称であり、このことは光学的に自明である。さらに、入射偏光特性が各対角線(Py=PxおよびPy=−Px)に対して対称であることも明らかである。したがって、すべての特性は、光軸Oと対角線に対する対称性を考えればよい。
【0042】
なお、Py=PxかPy=−Pxのいずれの対角線かは、入射光Iの偏光方向とパターンの繰り返し方向との関係によって決まる。図4(a)に示すように、ウェハ5の表面に形成された繰り返しパターン(ラインパターン)5aの繰り返し方向が入射光Iの偏光方向に対して(図4の反時計回りに)−45度傾いている場合、Py=−Pxで示される対角線上に、繰り返しパターン5aの線幅変化に最も感じる区画領域31が存在することが計算上明らかにされている。一方、図4(b)に示すように、繰り返しパターン5aの繰り返し方向が入射光Iの偏光方向に対して(図4の反時計回りに)+45度傾いている場合、Py=Pxで示される対角線上に、繰り返しパターン5aの線幅変化に最も感じる区画領域31が存在することが計算上明らかにされている。ただし、瞳座標の原点Oに近づくと、線幅変化以外の状態変化の影響を受けることがわかっており、線幅感度は低下すると言える。
【0043】
検量線(瞳面内階調値から線幅値に換算する換算式)の作成にあたっては、異なる線幅のパターンが形成された線幅基準ウェハ(ショット毎に露光量を変えるなどしてウェハ面内に異なる線幅のパターンを形成し、CD−SEM等の測定機であらかじめ線幅値を測定したウェハ)を使用する。線幅基準ウェハの線幅は、CD−SEM等により予め測定しておく。なお、CD−SEMは、1点の測定点の視野が狭いため、本実施形態の検査装置1の広い視野に相当する領域の中で複数の測定点について測定し、その平均値を求めておくことが好ましい。このようにして、CD−SEMにより測定した線幅値と、本実施形態の検査装置1の任意の瞳内位置での階調値との相関を、多数の異なる線幅のパターンに対して得ることができる。
【0044】
図5(b)は、前述の線幅基準ウェハ(図示せず)を用いて、図5(a)に示す(Py=−Pxとなる)対角線上の繰り返しパターン5aの線幅変化に最も感じる区画領域31
(以下、このような区画領域31の瞳内位置を線幅相関特定位置41と称する場合がある)の受光信号から作成した検量線を示すグラフである。なお、線幅基準ウェハにおいて異なる線幅のパターンから光を受光できるように、線幅基準ウェハを保持するステージ6を移動させ、各線幅のパターンに関する瞳像30をそれぞれ撮像素子18で受光(検出)する。図5(b)に示すグラフでは、このようにして受光した複数の瞳像30のうち、線幅相関特定位置41での受光信号S(信号強度として階調値を使用)を横軸とし、線幅基準ウェハ上の同じ場所をCD−SEMで測定したときの線幅CDを縦軸として表わしている。検量線は、k1,k2を係数とすると、次の(1)式で表わすことができ、この(1)式を用いて、線幅相関特定位置41での受光信号Sから線幅CDを換算することができる。
【0045】
CD=(k1×S)+k2 …(1)
【0046】
検量線を図5(b)では1次式としたが、構造性複屈折によるクロスニコル透過光量は、線幅変化に対して必ずしも線形に(1次式で)階調変化するとは限らない。特に、線幅変化の範囲が広い場合は直線からずれるので、その場合は、2次式等の多次式で換算することが好ましい。
【0047】
図5(b)では、検量線(図中の直線)から実際の測定値がばらついている。このばらつきは、CD−SEMとの乖離誤差(検量線により換算した線幅値からCD−SEMで測定した線幅値を引いたもの)となっている。この乖離誤差をウェハマップ(ウェハ座標系(x、y))で表わしたのが図5(c)である。図5(c)から、乖離誤差が同心円状に分布している様子がわかる。これは、線幅以外のウェハの表面状態がウェハ面内で同心円状に変化しているなかで、その変化の影響度合いが、CD−SEMと本実施形態の検査装置1で異なるからである。
【0048】
CD−SEMは、電子線を照射走査してパターンエッジから生じる2次電子を収集し、2次電子の強弱信号から所定の閾値のところを抽出してパターンの線幅としている。2次電子収集部の配置や、閾値の設定を最適化して、パターンの断面幅と相関のよい条件に設定しているものの、パターンの微妙な形状変化の影響を受ける。なお、基本的に電子線は、パターンの下層にまで達しないとされている。一方、本実施形態のように偏光状態変化量をパターンの線幅に置き換える方法の場合、構造性複屈折による偏光の位相変化は、パターンの線幅だけではなく、パターンの形状や高さ等の影響を受けるし、可視光はパターンの下層まで達する場合がある。また、偏光の位相変化や下層の影響は波長によっても異なるし、さらに、入射角、入射面とパターンとの方位角、偏光方向によっても異なる。
【0049】
このように、本実施形態はCD−SEMとは異なる検出原理に基づく方式であるので、線幅以外の状態の影響を受けることはやむを得ない。しかし、CD−SEMで半導体製造のプロセス管理をしてきた半導体製造ラインでは、CD−SEM管理に合わせた線幅計測性能が求められるので、CD−SEMとの乖離誤差を小さくする必要がある。そこで、本実施形態では、既述した、入射角、入射面とパターンとの方位角、偏光方向、波長等の、パターンの線幅と線幅以外の影響を受ける条件を適切に組み合わせることによって、線幅の測定精度を向上させる。
【0050】
図6(a)に、線幅変化に感度のある第1の区画領域および第2の区画領域の瞳内位置(以下、第1の瞳内位置51および第2の瞳内位置52と称する)を示す。図6(b)は、瞳内位置における線幅変化に対する階調変化量を示した3次元散布図であり、水平方向の座標軸X,Yがそれぞれ瞳像30の座標軸Px,Pyに対応し、縦軸が線幅変化に対する階調変化量を示している。また、図6(c)は、瞳内位置における下地の膜厚変化に対する階調変化量を示した3次元散布図であり、水平方向の座標軸X,Yがそれぞれ瞳像3
0の座標軸Px,Pyに対応し、縦軸が下地の膜厚変化に対する階調変化量を示している。図6(b)および図6(c)の縦軸は、0に近いほど感度が低く、+方向または−方向に0から離れるほど感度が高いと言える。このように図6(b)を見ると、第1の瞳内位置51と第2の瞳内位置52では線幅変化に対する感度(階調変化の仕方)が違うことが分かる。また同様に、図6(c)を見ると、第1の瞳内位置51と第2の瞳内位置52では下地の膜厚変化に対する感度(階調変化の仕方)がほぼ同じであることが分かる。
【0051】
このような2つの瞳内位置51,52を使うことにより、繰り返しパターン5aの下地の影響を補正(キャンセル)して、線幅情報のみを抽出することが可能となる。また、このような組合せは、下地の影響が近いという条件から瞳内位置が近いと言える。
【0052】
瞳内位置での階調値から線幅を換算する様子を図7(a)〜(c)に示す。図7(a)は線幅に対する第1の瞳内位置51での階調値を示すグラフであり、図7(b)は線幅に対する第2の瞳内位置52での階調値を示すグラフである。どちらの場合も下地の影響を受けて、線幅との相関は低い。ところが、第1の瞳内位置51での階調値と第2の瞳内位置52での階調値にそれぞれ係数を掛けて足し合わせることにより、下地の影響を低減させ、線幅との相関を高めることができる。例えば、第1の瞳内位置51での階調値(受光信号量)をS1とし、第2の瞳内位置52での階調値(受光信号量)をS2とし、係数をa,bとしたとき、線幅CDの換算式として次の(2)式を得ることができる。
【0053】
CD=(S1×a)+(S2×b) …(2)
【0054】
図7(c)は実際の線幅と換算値との関係を示しており、横軸がCD−SEMで測定した実際の線幅(単位:nm)であり、縦軸が(2)式から得られる換算値(乖離誤差)である。図7(c)より、下地の影響が低減し、線幅変化に対して感度が出ていることが分かる。
【0055】
しかしながら、(2)式を用いても、線幅との乖離誤差が残っている。そこで、さらなる補正について、図8(a)〜(c)を参照しながら説明する。図8(a)の瞳像30では、図6(a)の瞳像30に対し、新たに補正に使用する第3の区画領域の瞳内位置(以下、第3の瞳内位置53と称する)が追加で示されている。第3の瞳内位置53は、階調値に係数をかけて(2)式の換算値に足し合わせることで線幅との乖離誤差が小さくなるような瞳内位置である。例えば、第3の瞳内位置53での階調値(受光信号量)をS3とし、係数をc,dとしたとき、線幅CDの換算式として次の(3)式を得ることができる。
【0056】
CD=(S1×a)+(S2×b)+(S3×c)+d …(3)
【0057】
図8(b)は線幅に対する第3の瞳内位置53での階調値を示すグラフである。また、図8(c)は実際の線幅と換算値との関係を示しており、横軸がCD−SEMで測定した実際の線幅(単位:nm)であり、縦軸が(3)式から得られる換算値である。図8(c)より、(2)式と比較して(3)式の方が乖離誤差は小さく、線幅との相関も高いことが分かる。
【0058】
次に、第1の瞳内位置51、第2の瞳内位置52、および第3の瞳内位置53を選ぶ方法および、各係数a,b,c,dを求める方法について、図9に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、各瞳内位置および係数の算出には線幅基準ウェハを使用し、照明光として白色光を用いるものとする。まず、カラーCCD(撮像素子18)で検出した瞳像30で用いる色(例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)の色成分)および瞳内位置の組合せを初期化する(ステップS101)。3つの瞳内位置を選ぶための計算は、瞳
像30の上端から順番に行う。そのため、初期設定として、第1の瞳内位置51、第2の瞳内位置52、および第3の瞳内位置53の候補を、瞳像30の座標軸Pyにおける最外周の区画領域31の瞳内位置に設定する。但し、第1の瞳内位置51および第2の瞳内位置52の候補については、同色の瞳内位置に設定する。
【0059】
初期化を行うと、線幅の異なるパターンの瞳像30を用いて、実際の線幅との乖離が最小となる(3)式の係数a,b,c,dを求める(ステップS102)。このとき、各係数a,b,c,dは、最小二乗法を使うことで算出することができる。なお、前述の説明では、補正の原理について分かりやすいように、(2)式と(3)式の2つのステップに分けて説明を行ったが、最終的に(3)式で計算した線幅換算値と実際の線幅との乖離が最小になれば良いので、全ての係数a,b,c,dについて1つのステップで一緒に計算すれば良い。
【0060】
各係数a,b,c,dを求めると、全ての瞳内位置および色の組合せについて計算が終了したか否か判定する(ステップS103)。全ての組合せについて計算が終了していない場合(判定がNOの場合)、ステップS104へ進み、まだ計算をしていない瞳内位置および色の組合せに変更した後、ステップS102に戻って計算を繰り返す。但し、ステップS104で瞳内位置および色の組合せを変える際、第1の瞳内位置51および第2の瞳内位置52の候補については、同色で、かつ、互いに近くの瞳内位置(具体的には、瞳直径の1/5程度内)に設定する。また、第3の瞳内位置53の候補については、瞳像30に区画設定された全ての区画領域31のうちいずれかの瞳内位置に設定する。
【0061】
一方、ステップS103で、全ての組合せについて計算が終了したと判断した場合(判定がYESの場合)、それまで計算した瞳内位置および色の組合せの中で、実際の線幅との乖離誤差が一番小さい条件(すなわち、3つの瞳内位置、各瞳内位置の色、および各係数a,b,c,d)を線幅換算の条件として決定する。これにより、線幅変化に対する感度に差があり、下地の影響度合いが近い2つの瞳内位置を含めた3つの瞳内位置と、(3)式のパラメータがそれぞれ決定し、(3)式により乖離誤差の小さい線幅換算を行うことができる。
【0062】
ここで、本実施形態による検査方法の一例について、図10に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、以下に述べる各ステップ(工程)では、検査装置1の不図示の記憶装置に記憶(インストール)された所定のコンピュータプログラムを実行することで、演算処理部20等の作動が制御されるようになっている。まず、演算処理部20の設定算出部(不図示)は、上述の方法により、瞳像30で用いる3つの瞳内位置とその色、および各係数a,b,c,dをそれぞれ求め、線幅換算の条件を設定する(ステップS201)。なお、求めた3つの瞳内位置とその色、および各係数a,b,c,dに関するデータは、演算処理部20の内部メモリ(不図示)に記憶される。
【0063】
次に、検査を行うウェハ5をステージ6に載置した後、照明光学系10を用いて検査対象となるウェハ5の表面に直線偏光を照射する(ステップS202)。このとき、図1に示すように、光源11から放出された光(例えば、白色光)は、集光レンズ12、波長選択フィルター13、および第1の偏光フィルター14を透過したのち、プリズム8で下方へ反射して平行な入射光I(直線偏光)となり、対物レンズ7を通してウェハ5に照射される。
【0064】
ウェハ5からの反射光は、対物レンズ7で受光される(ステップS203)。このとき、ウェハ5からの反射光は、対物レンズ7を通して平行な反射光Jとなり、プリズム8、第2の偏光フィルター16、およびリレーレンズ17を透過して、撮像素子18に入射する。そこで、対物レンズ7の瞳面(不図示)と共役な位置に設けられた撮像素子18を用
いて、入射光I(直線偏光)の偏光方向と垂直な偏光成分を検出する(ステップS204)。このとき、撮像素子18に入射した反射光は撮像素子18により電気信号に光電変換され、第2の偏光フィルター16を透過した反射光の検出信号(受光信号)が演算処理部20に出力される。
【0065】
そして、演算処理部20は、撮像素子18から入力された検出信号(受光信号)に基づいて、繰り返しパターン5aの線幅を求める(ステップS205)。このとき、演算処理部20の線幅演算部(不図示)は、ステップS201で求めた(3)式を用いて、撮像素子18により検出された瞳像30における(ステップS201で求めた色成分での)第1の瞳内位置51、第2の瞳内位置52、および第3の瞳内位置53での階調値S1〜S3から、検査対象となるウェハ5の繰り返しパターン5aの線幅を求める。なお、求めた線幅が所定の閾値から外れた場合、例えば、演算処理部20の検査部(不図示)がドーズ量異常と判定してその旨を画像表示装置(不図示)等に表示させることができる。
【0066】
以上のようにして、本実施形態によれば、瞳像30における第1の瞳内位置51および第2の瞳内位置52での階調値S1,S2に基づいて、繰り返しパターン5aの線幅を求めるため、繰り返しパターン5aの下地の影響を補正(キャンセル)して、線幅情報のみを抽出することで、下地の影響を低減させることができ、線幅(パターン形状)の測定精度を向上させることが可能になる。
【0067】
なお、CD−SEMは、ウェハ5に電子線を照射するため、電子線によりフォトレジストの縮小化(シュリンク)等のダメージを受ける。測定精度を上げようと電子線の加速電圧を上げるほど、そのダメージは大きくなる。本実施形態では、電子線を用いず、可視光を使っているので、ウェハ5へのダメージは全くない。
【0068】
また、瞳像30において、同色で、かつ、互いに近くの瞳内位置の中から、第1の瞳内位置51および第2の瞳内位置52をそれぞれ求めるため、下地の膜厚変化による影響(瞳像30での光の変化の仕方)が互いに同程度の瞳内位置の組合せに限定することで、候補となる瞳内位置の組合せの数を低減させることができ、第1の瞳内位置51および第2の瞳内位置52を迅速に求めることができる。なお、下地の膜厚変化による影響は、ウェハ5に対する光の入射角(すなわち瞳内位置)および波長、すなわちウェハ5で反射する光の光路長の違いによる干渉条件で決まるため、互いに近くの瞳内位置で、かつ、同じ色(波長)の光である場合、下地の膜厚変化による影響が同程度になる。
【0069】
また、瞳像30における第3の瞳内位置53での階調値S3を利用して、第1の瞳内位置51および第2の瞳内位置52での階調値S1,S2から求まる線幅換算値を補正して繰り返しパターン5aの線幅を求めるため、線幅(パターン形状)の測定精度をより向上させることが可能になる。
【0070】
また、瞳像30に区画設定された全ての瞳内位置の中から、補正に適した第3の瞳内位置53を選択的に求めるため、補正に最適な第3の瞳内位置53を確実に求めることができ、線幅(パターン形状)の測定精度をより向上させることが可能になる。
【0071】
なお、上述の実施形態において、各瞳内位置を決定する際、線幅基準ウェハだけではなく、量産ウェハを含めるようにしてもよい。このようにすれば、下地の状態変化のバリエーションが増えるので、下地の影響を補正する精度を向上させることができ、線幅(パターン形状)の測定精度をより向上させることが可能になる。
【0072】
また、上述の実施形態において、各瞳内位置を決定する際、線幅基準ウェハを用いているが、これに限られるものではなく、シミュレーションを行って、各瞳内位置を決定する
ようにしてもよい。
【0073】
また、上述の実施形態において、瞳像30において、同色で、かつ、互いに近くの瞳内位置の中から、第1の瞳内位置51および第2の瞳内位置52をそれぞれ求めているが、これに限られるものではなく、略同色の近似した色同士の組合せであってもよい。
【0074】
また、上述の実施形態において、各瞳内位置を決定する際、照明光として白色光を用いているが、これに限られるものではなく、例えば、波長選択フィルター13を用いて、赤(R)、緑(G)、青(B)に対応した波長を有する照明光を切り替えて照射し、それぞれの色に対応した瞳像を検出するようにしてもよい。
【0075】
また、上述の実施形態において、ウェハ5の表面に形成された繰り返しパターン5aの線幅を測定しているが、これに限られるものではなく、例えば、繰り返しパターン5aのサイドウォールアングル等、繰り返しパターン5aの延伸方向から見た断面形状のプロファイルを測定する場合においても、本実施形態を適用可能である。
【0076】
また、上述の実施形態において、ウェハ5の表面に形成された繰り返しパターン5aの線幅を測定しているが、これに限られるものではなく、例えば、液晶ガラス基板に対する測定を行う場合においても、本実施形態を適用可能である。
【0077】
また、上述の実施形態において、演算処理部20で求めた線幅換算値のデータを、演算処理部20から露光装置101に出力して、露光装置101の設定にフィードバックすることができる。そこで、前述の検査装置1を備えた露光システムについて、図11および図12を参照しながら説明する。この露光システム100は、レジストが塗布されたウェハ5の表面に所定のマスクパターン(繰り返しパターン)を投影露光する露光装置101と、露光装置101による露光工程および現像装置(図示せず)による現像工程等を経て、表面に繰り返しパターン5aが形成されたウェハ5の検査を行う検査装置1とを備えて構成される。
【0078】
露光装置101は、図11に示すように、照明系110と、レチクルステージ120と、投影ユニット130と、局所液浸装置140と、ステージ装置150と、主制御装置200(図12を参照)とを備えて構成される。なお、以下においては、図11に示した矢印X,Y,Zの方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向、Z軸方向として説明する。
【0079】
照明系110は、詳細な図示を省略するが、光源と、オプティカルインテグレータ等を備えた照度均一化光学系と、レチクルブラインド等を備えた照明光学系とを有し、レチクルブラインドで規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域を照明光(露光光)により略均一な照度で照明するように構成されている。照明光としては、例えば、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられる。
【0080】
レチクルステージ120上には、所定のパターン(例えば、ラインパターン)がそのパターン面(図11における下面)に形成されたレチクル(フォトマスク)Rが、例えば真空吸着により固定保持されている。レチクルステージ120は、例えばリニアモータ等を備えるレチクルステージ駆動装置121(図12を参照)によってXY平面内で移動可能であるとともに、走査方向(ここではY軸方向とする)に所定の走査速度で移動可能に構成されている。
【0081】
レチクルステージ120のXY平面内の位置情報(Z軸回りの回転方向の回転情報を含む)は、レチクルステージ120に設けられたY軸に直交する反射面を有する第1反射鏡123およびX軸に直交する反射面を有する第2反射鏡(図示せず)を介して、レチクル
干渉計125によって検出される。レチクル干渉計125により検出された当該位置情報は主制御装置200に送られ、主制御装置200は、その位置情報に基づいてレチクルステージ駆動装置121を介してレチクルステージ120の位置(および移動速度)を制御する。
【0082】
投影ユニット130は、レチクルステージ120の下方に配置され、鏡筒131と、鏡筒131内に保持された投影光学系135とを有して構成される。投影光学系135は、照明光の光軸AXに沿って配列された複数の光学素子(レンズエレメント)を有し、両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍または1/8倍など)を有するように構成されている。このため、照明系110から射出された照明光によってレチクルR上の照明領域が照明されると、投影光学系135の物体面とパターン面が略一致して配置されるレチクルRを透過した照明光により、投影光学系135を介してその照明領域内のレチクルRのパターンの縮小像が、投影光学系135の像面側に配置されたウェハ5上の露光領域(レチクルR上の照明領域に共役な領域)に形成される。そして、レチクルステージ120とウェハ5を保持するステージ装置150との同期駆動によって、照明領域に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に移動させるとともに、露光領域に対してウェハ5を走査方向(Y軸方向)に移動させることで、ウェハ5上の1つのショット領域の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターン(マスクパターン)が転写される。
【0083】
露光装置101には、液浸方式の露光を行うために局所液浸装置140が設けられている。局所液浸装置140は、図11および図12に示すように、液体供給装置141と、液体回収装置142と、液体供給管143Aと、液体回収管143Bと、ノズルユニット145とを有して構成される。ノズルユニット145は、投影光学系135を構成する最も像面側(ウェハ側)の光学素子、ここでは先端レンズ136を保持する鏡筒131の下端部周囲を取り囲むように、投影ユニット130を保持する不図示のフレーム部材(露光装置101を構成するフレーム部材)に支持されている。また、ノズルユニット145は、図11に示すように、その下端面が先端レンズ136の下端面と略同一面になるように設定されている。
【0084】
液体供給装置141は、詳細な図示を省略するが、液体を貯蔵するタンクと、加圧ポンプと、温度制御装置と、液体の流量を制御するためのバルブとを有して構成され、液体供給管143Aを介してノズルユニット145に接続されている。液体回収装置142は、詳細な図示を省略するが、回収した液体を貯蔵するタンクと、吸引ポンプと、液体の流量を制御するためのバルブとを有して構成され、液体回収管143Bを介してノズルユニット145に接続されている。
【0085】
主制御装置200は、図12に示すように、液体供給装置141の作動を制御して液体供給管143Aを介して先端レンズ136とウェハ5との間に液体(例えば、純水)を供給するとともに、液体回収装置142の作動を制御して液体回収管143Bを介して先端レンズ136とウェハ5との間から液体を回収する。このとき、主制御装置200は、供給される液体の量と回収される液体の量とが常に等しくなるように、液体供給装置141および液体回収装置142の作動を制御する。したがって、先端レンズ136とウェハ5との間には、一定量の液体が常に入れ替わって保持され、これにより液浸領域(液浸空間)が形成される。このように、露光装置101では、照明光を、液浸領域を形成する液体を介してウェハ5に照射することによって、ウェハ5に対する露光が行われる。
【0086】
ステージ装置150は、投影ユニット130の下方に配置されたウェハステージ151と、ウェハステージ151を駆動するステージ駆動装置155(図12を参照)とを有して構成される。ウェハステージ151は、不図示のエアスライダにより数μm程度のクリ
アランスを有してベース部材105の上方に浮上支持され、ウェハステージ151の上面においてウェハ5を真空吸着によって保持するように構成されている。そして、ウェハステージ151は、ステージ駆動装置155を構成するモータにより、ベース部材105の上面に沿ってXY平面内で移動可能になっている。
【0087】
ウェハステージ151のXY平面内の位置情報はエンコーダ装置156(図12を参照)によって検出される。エンコーダ装置156により検出された当該位置情報は主制御装置200に送られ、主制御装置200は、その位置情報に基づいてステージ駆動装置155を介してウェハステージ151の位置(および移動速度)を制御する。
【0088】
以上のように構成される露光装置101において、照明系110から射出された照明光によってレチクルR上の照明領域が照明されると、投影光学系135の物体面とパターン面が略一致して配置されるレチクルRを透過した照明光により、投影光学系135を介してその照明領域内のレチクルRのパターンの縮小像が、ウェハステージ151上に支持されて投影光学系135の像面側に配置されたウェハ5上の露光領域(レチクルR上の照明領域に共役な領域)に形成される。そして、レチクルステージ120とウェハ5を支持するウェハステージ151との同期駆動によって、照明領域に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に移動させるとともに、露光領域に対してウェハ5を走査方向(Y軸方向)に移動させることで、ウェハ5上の1つのショット領域の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。
【0089】
このようにして露光装置101による露光工程が実施されると、現像装置(図示せず)による現像工程等を経て、前述の実施形態に係る検査装置1により、表面に繰り返しパターン5aが形成されたウェハ5の表面検査を行う。またこのとき、検査装置1の演算処理部20は、前述のようにして、繰り返しパターン5aの線幅を求め、接続ケーブル(図示せず)等を介して、求めた線幅のデータを露光装置101に出力する。そして、露光装置101の主制御装置200に設けられた補正処理部210は、検査装置1から入力された求めた線幅のデータに基づいて、露光装置101の各種設定パラメータを補正する。
【0090】
これにより、本実施形態の露光システム100によれば、前述の実施形態に係る検査装置1から入力された線幅のデータに応じて、露光装置101の設定を補正するため、より精度の高い線幅のデータに基づいた補正が可能となり、露光装置101の設定をより適切に行うことができる。
【符号の説明】
【0091】
1 検査装置
5 ウェハ(基板) 7 対物レンズ
18 撮像素子(検出部) 20 演算処理部
30 瞳像
51 第1の瞳内位置(第1領域) 52 第2の瞳内位置(第2領域)
53 第3の瞳内位置(第3領域)
100 露光システム 101 露光装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地層の上に所定のパターンを有する基板の前記パターンを検査する検査装置であって、
前記パターンに対する瞳面を形成する対物レンズと、
前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における領域毎の光の強度情報を検出する検出部と、
前記パターンの形状変化に対しては前記強度情報の変化が異なり、前記下地層の変化に対しては前記強度情報の変化が同程度である、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面内の第1領域と第2領域の位置情報をそれぞれ記憶する記憶部と、
前記検出部で検出される、前記第1領域の強度情報と、前記第2領域の強度情報との差異に基づいて前記パターンの形状を求める演算部とを備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
予め形状変化が既知な複数のパターンから前記検出部によって検出される強度情報に基づいて、前記第1領域と前記第2領域の位置情報を算出する算出部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における前記第1領域および前記第2領域とは異なる第3領域での強度情報を利用して、前記第1領域および前記第2領域での前記強度情報から求まる前記形状を補正して前記パターンの形状を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記演算部が求める前記パターンの形状は、前記パターンの線幅、もしくは、前記パターンの延伸方向から見た断面形状であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記演算部で求められた前記パターンの形状に基づいて、前記パターンにおける異常の有無を検査する検査部を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項6】
下地層の上に所定のパターンを有する基板の前記パターンを検査する検査方法であって、
前記パターンに対する瞳面を形成する瞳面形成工程と、
前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における領域毎の光の強度情報を検出する検出工程と、
前記パターンの形状変化に対しては前記強度情報の変化が異なり、前記下地層の変化に対しては前記強度情報の変化が同程度である、前記瞳面若しくは該瞳面と共役な面内の第1領域と第2領域をそれぞれ設定する設定工程と、
前記検出工程で検出される、前記第1領域の強度情報と、前記第2領域の強度情報との差異に基づいて前記パターンの形状を求める演算工程とを有することを特徴とする検査方法。
【請求項7】
予め形状変化が既知な複数のパターンの前記領域毎の光の強度情報に基づいて、前記第1領域と前記第2領域の位置情報を算出する算出工程をさらに有することを特徴とする請求項6に記載の検査方法。
【請求項8】
前記演算工程において、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における前記第1領域および前記第2領域とは異なる第3領域での強度情報を利用して、前記第1領域および前記第2領域での前記強度情報から求まる前記形状を補正して前記パターンの形状を求めることを特徴とする請求項6または7に記載の検査方法。
【請求項9】
前記演算工程で求める前記パターンの形状は、前記パターンの線幅、もしくは、前記パターンの延伸方向から見た断面形状であることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項10】
前記演算工程で求めた前記パターンの形状に基づいて、前記パターンにおける異常の有無を検査する検査工程を有することを特徴とする請求項6から9のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項11】
下地層の上に所定のパターンを有する基板の前記パターンを検査する検査装置の作動を制御するプログラムであって、
対物レンズの瞳面もしくは該瞳面と共役な面における領域毎の光の強度情報を検出する検出ステップと、
前記パターンの形状変化に対しては前記強度情報の変化が異なり、前記下地層の変化に対しては前記強度情報の変化が同程度である、前記瞳面若しくは該瞳面と共役な面内の第1領域と第2領域をそれぞれ設定する設定ステップと、
前記検出ステップで検出される、前記第1領域の前記強度情報と、前記第2領域の前記強度情報との差異に基づいて前記パターンの形状を求める演算ステップとを有することを特徴とする検査装置用プログラム。
【請求項12】
予め形状変化が既知な複数のパターンの前記領域毎の光の強度情報に基づいて、前記第1領域と前記第2領域の位置情報を算出する算出ステップをさらに有することを特徴とする請求項11に記載の検査装置用プログラム。
【請求項13】
前記演算ステップにおいて、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における前記第1領域および前記第2領域とは異なる第3領域での強度情報を利用して、前記第1領域および前記第2領域での前記強度情報から求まる前記形状を補正して前記パターンの形状を求めることを特徴とする請求項11または12に記載の検査装置用プログラム。
【請求項14】
前記演算ステップで求める前記パターンの形状は、前記パターンの線幅、もしくは、前記パターンの延伸方向から見た断面形状であることを特徴とする請求項11から13のいずれか一項に記載の検査装置用プログラム。
【請求項15】
前記演算ステップで求めた前記パターンの形状に基づいて、前記パターンにおける異常の有無を検査する検査ステップを有することを特徴とする請求項11から14のいずれか一項に記載の検査装置用プログラム。
【請求項16】
基板の表面に所定のパターンを露光する露光装置と、前記露光装置により露光されて表面に前記パターンが形成された基板の検査を行う検査装置とを備え、
前記検査装置は、請求項1から5のいずれか一項に記載の検査装置であって、前記演算部で求められた前記パターンの形状の情報を前記露光装置へ出力し、
前記露光装置は、前記検査装置から入力された前記パターンの形状の情報に応じて、前記露光装置の設定を補正することを特徴とする露光システム。
【請求項1】
下地層の上に所定のパターンを有する基板の前記パターンを検査する検査装置であって、
前記パターンに対する瞳面を形成する対物レンズと、
前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における領域毎の光の強度情報を検出する検出部と、
前記パターンの形状変化に対しては前記強度情報の変化が異なり、前記下地層の変化に対しては前記強度情報の変化が同程度である、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面内の第1領域と第2領域の位置情報をそれぞれ記憶する記憶部と、
前記検出部で検出される、前記第1領域の強度情報と、前記第2領域の強度情報との差異に基づいて前記パターンの形状を求める演算部とを備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
予め形状変化が既知な複数のパターンから前記検出部によって検出される強度情報に基づいて、前記第1領域と前記第2領域の位置情報を算出する算出部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における前記第1領域および前記第2領域とは異なる第3領域での強度情報を利用して、前記第1領域および前記第2領域での前記強度情報から求まる前記形状を補正して前記パターンの形状を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記演算部が求める前記パターンの形状は、前記パターンの線幅、もしくは、前記パターンの延伸方向から見た断面形状であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記演算部で求められた前記パターンの形状に基づいて、前記パターンにおける異常の有無を検査する検査部を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項6】
下地層の上に所定のパターンを有する基板の前記パターンを検査する検査方法であって、
前記パターンに対する瞳面を形成する瞳面形成工程と、
前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における領域毎の光の強度情報を検出する検出工程と、
前記パターンの形状変化に対しては前記強度情報の変化が異なり、前記下地層の変化に対しては前記強度情報の変化が同程度である、前記瞳面若しくは該瞳面と共役な面内の第1領域と第2領域をそれぞれ設定する設定工程と、
前記検出工程で検出される、前記第1領域の強度情報と、前記第2領域の強度情報との差異に基づいて前記パターンの形状を求める演算工程とを有することを特徴とする検査方法。
【請求項7】
予め形状変化が既知な複数のパターンの前記領域毎の光の強度情報に基づいて、前記第1領域と前記第2領域の位置情報を算出する算出工程をさらに有することを特徴とする請求項6に記載の検査方法。
【請求項8】
前記演算工程において、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における前記第1領域および前記第2領域とは異なる第3領域での強度情報を利用して、前記第1領域および前記第2領域での前記強度情報から求まる前記形状を補正して前記パターンの形状を求めることを特徴とする請求項6または7に記載の検査方法。
【請求項9】
前記演算工程で求める前記パターンの形状は、前記パターンの線幅、もしくは、前記パターンの延伸方向から見た断面形状であることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項10】
前記演算工程で求めた前記パターンの形状に基づいて、前記パターンにおける異常の有無を検査する検査工程を有することを特徴とする請求項6から9のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項11】
下地層の上に所定のパターンを有する基板の前記パターンを検査する検査装置の作動を制御するプログラムであって、
対物レンズの瞳面もしくは該瞳面と共役な面における領域毎の光の強度情報を検出する検出ステップと、
前記パターンの形状変化に対しては前記強度情報の変化が異なり、前記下地層の変化に対しては前記強度情報の変化が同程度である、前記瞳面若しくは該瞳面と共役な面内の第1領域と第2領域をそれぞれ設定する設定ステップと、
前記検出ステップで検出される、前記第1領域の前記強度情報と、前記第2領域の前記強度情報との差異に基づいて前記パターンの形状を求める演算ステップとを有することを特徴とする検査装置用プログラム。
【請求項12】
予め形状変化が既知な複数のパターンの前記領域毎の光の強度情報に基づいて、前記第1領域と前記第2領域の位置情報を算出する算出ステップをさらに有することを特徴とする請求項11に記載の検査装置用プログラム。
【請求項13】
前記演算ステップにおいて、前記瞳面もしくは該瞳面と共役な面における前記第1領域および前記第2領域とは異なる第3領域での強度情報を利用して、前記第1領域および前記第2領域での前記強度情報から求まる前記形状を補正して前記パターンの形状を求めることを特徴とする請求項11または12に記載の検査装置用プログラム。
【請求項14】
前記演算ステップで求める前記パターンの形状は、前記パターンの線幅、もしくは、前記パターンの延伸方向から見た断面形状であることを特徴とする請求項11から13のいずれか一項に記載の検査装置用プログラム。
【請求項15】
前記演算ステップで求めた前記パターンの形状に基づいて、前記パターンにおける異常の有無を検査する検査ステップを有することを特徴とする請求項11から14のいずれか一項に記載の検査装置用プログラム。
【請求項16】
基板の表面に所定のパターンを露光する露光装置と、前記露光装置により露光されて表面に前記パターンが形成された基板の検査を行う検査装置とを備え、
前記検査装置は、請求項1から5のいずれか一項に記載の検査装置であって、前記演算部で求められた前記パターンの形状の情報を前記露光装置へ出力し、
前記露光装置は、前記検査装置から入力された前記パターンの形状の情報に応じて、前記露光装置の設定を補正することを特徴とする露光システム。
【図1】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−103052(P2012−103052A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250127(P2010−250127)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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